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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-13
(45)【発行日】2022-01-25
(54)【発明の名称】カメラ及び焦点調節方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 7/04 20210101AFI20220118BHJP
   G02B 7/02 20210101ALI20220118BHJP
   G02B 7/08 20210101ALI20220118BHJP
   G02B 7/40 20210101ALI20220118BHJP
   G03B 13/36 20210101ALI20220118BHJP
   G03B 15/05 20210101ALI20220118BHJP
   G03B 17/08 20210101ALI20220118BHJP
   H04N 5/225 20060101ALI20220118BHJP
【FI】
G02B7/04 D
G02B7/02 C
G02B7/08 Z
G02B7/40
G03B13/36
G03B15/05
G03B17/08
H04N5/225 100
【請求項の数】 15
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019020710
(22)【出願日】2019-02-07
(65)【公開番号】P2019191561
(43)【公開日】2019-10-31
【審査請求日】2019-06-07
【審判番号】
【審判請求日】2021-03-22
(31)【優先権主張番号】10 2018 102 917.9
(32)【優先日】2018-02-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591005615
【氏名又は名称】ジック アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110001069
【氏名又は名称】特許業務法人京都国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フローリアン シュナイダー
(72)【発明者】
【氏名】トーマス プフレングレ
【合議体】
【審判長】瀬川 勝久
【審判官】松川 直樹
【審判官】吉野 三寛
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-152035(JP,A)
【文献】特開2015-23412(JP,A)
【文献】特開2006-317191(JP,A)
【文献】特表2010-500626(JP,A)
【文献】特開2014-178643(JP,A)
【文献】特開2009-43260(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B7/02-7/105
G02B7/12-7/16
G02B7/28-7/36
G03B13/36
H04N5/222-5/257
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出領域(14)から画像データを取得するための画像センサ(18)と、前記画像センサ(18)の前に配置された受光光学系(16)と、前記受光光学系(16)の焦点位置を回転運動により変更するためのネジ(24)を有する焦点調節部(24、28)と、カメラ(10)の内部空間を保護するための、カメラ(10)のケーシング(30)のうち受信光(12)が入射する前側の領域を閉鎖する前面パネル(32)とを備える、手動で焦点が調節されるカメラ(10)において、
前記受光光学系(16)を外側から前記ネジ(24)の内部において回転させることによって焦点を調節するために、該受光光学系(16)が、前記前面パネル(32)を通じてアクセス可能な、保護された前記内部空間より外側にある内側輪郭(28)を前側の領域に備え、該内側輪郭(28)が外側から前記前面パネル(32)を通じて工具と嵌合されることを特徴とするカメラ(10)。
【請求項2】
前記前面パネル(32)が、前記内側輪郭(28)を外側から自由にアクセス可能な状態にするために開口(34)を備えていることを特徴とする請求項1に記載のカメラ(10)。
【請求項3】
前記受光光学系(16)が前記開口(34)内に密閉状態で配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のカメラ(10)。
【請求項4】
前記受光光学系(16)が前記内側輪郭(28)と光学素子(20)との間に保護要素(38)を備えていることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のカメラ(10)。
【請求項5】
前記受光光学系(16)の現在位置を特定するための焦点位置測定部(46、48)を備えていることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載のカメラ(10)。
【請求項6】
前記焦点位置測定部(46、48)が磁気要素(48)とホールセンサ(46)とを備えていることを特徴とする請求項5に記載のカメラ(10)。
【請求項7】
前記焦点位置測定部(46、48)が前記磁気要素(48)を有するキャリッジ要素(58)を備え、該キャリッジ要素(58)が前記受光光学系(16)の外周部に接触して配置され、弾性力(66)により背後から軸方向に前記受光光学系(16、36、60)に押圧されていることを特徴とする請求項6に記載のカメラ(10)。
【請求項8】
撮影対象の物体までの距離を特定するための距離測定部(44)を備えていることを特徴とする請求項1~7のいずれかに記載のカメラ(10)。
【請求項9】
前記距離測定部(44)が発光器、受光器、及び、光信号の送出から再検出までの光伝播時間を測定するための光伝播時間測定部を備えていることを特徴とする請求項8に記載のカメラ(10)。
【請求項10】
所要の焦点位置を表示するための第1の表示部(50)、及び/又は、前記受光光学系(16)の現在位置を表示するための第2の表示部(52)を備えていることを特徴とする請求項1~9のいずれかに記載のカメラ(10)。
【請求項11】
前記第1の表示部(50)及び/又は前記第2の表示部(52)が桟状ライト、特に光源(50a、52a)を一列に配置したものを備えていることを特徴とする請求項10に記載のカメラ(10)。
【請求項12】
前記第1の表示部(50)及び前記第2の表示部(52)が比較可能な目盛と共に互いに近接して配置されていることを特徴とする請求項10又は11に記載のカメラ(10)。
【請求項13】
前記画像データの中でコード領域を識別してそのコード内容を読み出すように構成された制御及び評価部(54)を備えていることを特徴とする請求項1~12のいずれかに記載のカメラ(10)。
【請求項14】
画像センサ(18)とカメラ(10)の内部空間を保護するための、カメラ(10)のケーシング(30)のうち受信光(12)が入射する前側の領域を閉鎖する前面パネル(32)を有するカメラ(10)の手動での焦点調節方法であって、前記画像センサ(18)の前に配置された受光光学系(16)の焦点位置をネジ(24)の内部における回転運動により変更する方法において、
前記受光光学系(28)の前側の領域に設けられた、保護された前記内部空間より外側にある内側輪郭(28)に前記前面パネル(32)の開口(34)を通じて外側から工具を嵌合させて該工具で前記受光光学系(28)を前記ネジの内部において回転させることにより前記回転運動を外側から生じさせることを特徴とする方法。
【請求項15】
所要の焦点位置を撮影対象の物体までの距離として、また実際の焦点位置を前記受光光学系(16)の位置として、それぞれ測定及び表示し、前記ネジ(24)の内部における前記受光光学系(16)の回転により、実際の焦点位置と所要の焦点位置が一致するまで実際の焦点位置を変更することを特徴とする請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1又は14のプレアンブルに記載のカメラ及び焦点調節方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カメラは産業上の用途において、例えば物品の検査や測定等の目的で、物品の特性を自動的に捕らえるために多様な方法で用いられる。その場合、物品の画像が撮影され、業務に応じた画像処理法により評価される。カメラの別の用途としてコードの読み取りがある。画像センサを用いて、表面にコードが付された物品が撮影され、その画像内でコード領域が識別され、復号される。カメラベースのコードリーダは1次元バーコード以外の種類のコードでも問題なく処理できる。そのコードをマトリックスコードのように2次元的に構成すればより多くの情報を利用できる。印刷された住所や手書き文書の自動的なテキスト認識(光学式文字認識:OCR)も原理的にはコードの読み取りである。コードリーダの典型的な利用分野としては、スーパーマーケットのレジ、荷物の自動識別、郵便物の仕分け、空港での荷物の発送準備、その他の物流での利用が挙げられる。
【0003】
よくあるのは、カメラをベルトコンベアの上方に取り付けて物品を検出するという状況である。カメラはベルトコンベア上で物品の流れが相対運動している間、画像を撮影し、取得された物品特性に応じてその後の処理ステップを開始する。このような処理ステップでは、搬送中の物品に作用する機械の上で具体的な物品に合わせて更なる処理を行ったり、物品の流れの中から品質管理の枠組み内で特定の物品を通過させること又は物品の流れを複数の物品の流れに分岐させることにより物品の流れを変化させたりする。カメラがカメラベースのコードリーダである場合、物品の正しい選別といった処理ステップのために、各物品がそれに付されたコードに基づいて識別される。
【0004】
様々な距離にある構造物を検出してコードを読み取ることができるようにするには、カメラの焦点位置の調節、口語的に言えば画像のピント合わせが必要である。そのためには様々な技術がある。典型的には、集光位置を変更するために、対物レンズの位置、つまり対物レンズと画像センサの間の距離を変える。これをパルスモータ等を用いて自動的に行わせることも多い。もっとも、まさに簡単なカメラや、焦点位置を比較的長い動作時間にわたって一定に維持してもよいようなカメラの場合、手動で焦点調節を行うことも決して珍しくはない。
【0005】
特許文献1はモータ駆動のカムと対物レンズの平行ガイドとを用いて焦点位置の変更を行うことを提案している。カムは原理的には手で回すこともできる。しかし、平行ガイドは高価である上、広い設置スペースを要する。
【0006】
別の方法として焦点位置をネジの内部における回転運動で調節することが知られている。これにより所要スペースは最適化されるが、別の問題が生じる。IP54、IP65又はIP67といった保護等級の規定を満たすには、対物レンズを覆う保護カバー又は機器前面パネルがなければならない。しかしその場合、集光位置を変更する度に、対物レンズを回すことができるようにするために保護カバーを外さなければならない。その上、ネジの場合は焦点位置を視覚化することが難しい。確かに、対物レンズ上に適宜のマークを付すことはできる。しかし、まさに広い焦点調節範囲を持つ長焦点の対物レンズの場合、必然的に対物レンズの移動範囲が長くなり、そのためにはネジを複数回回転させる必要がある。この多義性を直ちに認識できる方法で対物レンズの上に視覚化することはまさに非常に難しく、少なくとも簡単にマークを付すだけではそれはできない。
【0007】
特許文献2から手動で調節可能な焦点を持つ監視カメラが知られている。焦点位置の調節のために外側から工具が間接的な調節機構に嵌合されるが、その機構についてはそれ以上の記述がない。
【0008】
特許文献3にはライブ画像表示部を備えるカメラが記載されている。手動焦点調節のためのグラフィカルなユーザガイド部に、測定値から計算された目標の焦点と、現在設定されている焦点が表示される。本来の調節動作は全く従来どおり焦点リング又はツマミを用いて行われる。ライブ画像を表示するというこの着想は簡単なカメラには適していない。その上、説明はないものの、集光位置の変更の度に取り外される保護カバーのような追加の密閉手段がなければ特定の保護等級の規定を満たすことができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】EP 2 498 113 A1
【文献】US 9 591 299 B2
【文献】US 2015/0103223 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
故に、本発明の課題は、改良されたカメラ用焦点調節装置を提示することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この課題は、請求項1又は14に記載のカメラ及び焦点調節方法により解決される。本カメラは受光光学系を有する画像センサを含む。受光光学系の焦点は、該光学系を回転させることにより画像センサまでの距離を変化させるネジ機構を通じて調節できる。前面パネルがカメラ又はそのケーシングをその前面、つまりカメラの視線方向において閉鎖しており、これにより、例えば、前面パネルを貫通して検出領域を照明する光を生成するカメラの照明部を保護する。
【0012】
本発明の出発点となる基本思想は、受光光学系をいわば前面パネルを貫通して捻転させ、以て焦点を手動で調整できるようにすることである。そのために、受光光学系がその前側又は外側の領域に内側輪郭を備えている。それ故、適当な工具を外側から内側輪郭に嵌合させて、該工具で受光光学系をネジの内部において捻転させることができる。
【0013】
本発明には、ネジを基にした焦点調節装置が非常に簡単かつ省スペースな形のまま用いられているため、カメラを小型にできるという利点がある。また、ライブ画像用の表示装置のような高価な構成要素は必要ない。前面パネルを開けずに受光光学系の表面の内側輪郭を通じて位置調節を行うため、IP54、IP65又はIP67といった機器の保護等級の規定を満たしながらも、いつでもアクセス可能な形で高速且つ簡単に集光位置を変更することができる。しかも、前記構造によれば、カメラ自身の能動的な照明による光学的な混信から受光路を保護する光学的なチャンネル分離部が一体的に得られる。
【0014】
前面パネルは、内側輪郭を外側から自由にアクセス可能な状態にするために開口を備えていることが好ましい。これには同時に複数の利点がある。まず、内側輪郭が、いつでも工具で到達可能な開放状態のままになる。つまり、集光位置の変更の度に予め前面パネルの開放や対物レンズの保護カバーの取り外し等の作業を行う必要はない。その上、例えば光学的な要求の少ないプラスチックで製造された前面パネル等、都合のよい前面パネルを使用できる。なぜなら、受光対物レンズに至る受信光の通過領域には明らかに高い光学的な要求が存在するが、この領域は空けて残してあるからである。
【0015】
受光光学系は前記開口内に密閉状態で配置されていることが好ましい。そのためには例えば受光光学系の外周部において前面パネルに当てられるパッキンリングが役立つ。これは、前面パネルに開口を設けて外側から内側輪郭への常時アクセスを可能にしながらも所望の保護等級を維持するための1つの可能な手段である。
【0016】
受光光学系は内側輪郭と光学素子との間に保護要素を備えていることが好ましい。保護要素は、好ましくは保護ガラス又は適宜のプラスチック製要素であり、これによりカメラの内部空間を隔離することで、より簡単に特定の保護等級の規定が満たされる。焦点位置を調節するための内側輪郭はその外にあり、自由にアクセス可能である一方、本来の受光光学系、つまりレンズ等の光学素子は保護されたままである。保護要素は高い光学的品質を有することが可能であり、焦点調節の間もその場所に留まっている。
【0017】
本カメラは受光光学系の現在位置を特定するための焦点位置測定部を備えていることが好ましい。焦点位置測定部は受光光学系の現在の位置を表す測定値を出力する。本来の関心の対象である測定値は受光光学系と画像センサの間の距離、つまり実際の焦点位置である。そのためには、ネジの内部における受光光学系の回転位置を、好ましくは複数回の完全な回転を考慮して測定するか、あるいは直接に等しいやり方として、受光光学系の光軸に沿った移動を測定すればよい。
【0018】
焦点位置測定部は磁気要素、好ましくは磁気ストライプと、ホールセンサとを備えていることが好ましい。磁気要素は焦点調節の際に受光素子と一緒に前進及び後退運動を行うが、ホールセンサはその運動を行わない。この相対運動は逆の配置でも生じ得るが、その場合、可動のホールセンサに対して給電と制御を行う必要がある。ホールセンサは位置値を直接出力する付属の電子機器を含む高度集積部品であることが好ましい。
【0019】
好ましくは、焦点位置測定部が前記磁気要素を有するキャリッジ要素を備え、該キャリッジ要素が受光光学系の外周部に接触して配置され、弾性力により背後から軸方向に受光光学系に押圧されている。また好ましくは、受光光学系がその前側の領域において半径が大きくなっており、その結果、そこに一種の後壁が生じ、そこにキャリッジを内側から押圧することができる。キャリッジ要素が弾性力を受けつつ案内されることにより、受光光学系はどちらの方向に位置調節が行われても極力スリップせずに磁気要素と共に移動する。
【0020】
本カメラは、撮影対象の物体までの距離を特定するための距離測定部を備えていることが好ましい。距離測定部の測定値から、撮影対象の物体にピントが合うように受光光学系を配置するための所要の焦点位置が特定される。
【0021】
距離測定部は発光器、受光器、及び、光信号の送出から再検出までの光伝播時間を測定するための光伝播時間測定部を備えていることが好ましい。これにより、前記距離が光伝播時間法、特にパルス法、パルス平均法又は位相法で特定される。距離測定部は高度集積型で距離値を直接出力するものであることが好ましい。
【0022】
本カメラは、所要の焦点位置を表示するための第1の表示部、及び/又は、受光光学系の現在位置を表示するための第2の表示部を備えていることが好ましい。これにより実際の焦点位置及び/又は所要の焦点位置が視覚化される。好ましくは、距離測定部と焦点位置測定部のその都度の測定値が表示される。場合によってはまだ測定値を換算して線形的又は非線形的に目盛を付け直す必要がある。測定値を表示する代わりに特定の動作モードの出荷時設定又はパラメータを表示することも原理的には考えられる。
【0023】
第1の表示部及び/又は第2の表示部は桟状ライトを備えていることが好ましい。「桟状ライト」とは複数箇所で点灯可能な装置であって、各箇所がスカラーの測定量(ここでは焦点位置)の様々な段階的に増加する値を視覚的に表すものをいう。実装例の1つは、光源(特にLED)を一列に配置し、各時点において最も良く測定値を表す箇所が点灯するようにしたものである。これと等価な発光パターンとして、例えば測定値に合致する箇所まで、又はその箇所から、又はその箇所を除く全ての箇所を点灯させることも同様に考えられる。桟状ライトの使用により、簡単な表示でありながら多数の焦点位置をすぐに直感的に認識できるようになるため、非常に容易且つ迅速にカメラの起動又は適合化を行うことができる。また、ネジにマークを付す場合と違い、対象の焦点範囲に対して対物レンズを1回転より大きく回転させる必要がある受光光学系でも多義性は生じない。ライブ画像用の画像表示部及びそのためのユーザインターフェイスに係るコストは発生しない。
【0024】
第1の表示部及び第2の表示部は比較可能な目盛と共に互いに近接して配置されていることが好ましい。これによりユーザは、所要の焦点位置と実際の焦点位置の間にまだ不一致がある場合にそれを直ちに認識できる。工具を受光光学系の内側輪郭に入れ、両方の表示が一致するまで該光学系を回転させることにより、正しい焦点位置が非常に簡単に設定される。好ましくは、2つの表示部が上下に配置された同じ桟状ライトから成り、可能であればその色がまだ異なるようにする。原理的には、該桟状ライトが所要の焦点位置又は実際の焦点位置のいずれに対応しているかは、各桟状ライトの位置が既に記号的に表している。また、桟状ライトの色を用いる代わりに文字による説明でそれを示してもよい。なお、単一の桟状ライトが両方の表示部を兼ねるという構成も考えられる。この場合、実際の焦点位置と所要の焦点位置がある一箇所で一致して一緒に表示されるようになるまで焦点位置を調節する。これに多色LEDを用いて、例えば実際の焦点位置は赤、所要の焦点位置は青、そして場合によっては両者の一致の際に緑を表示するようにすれば多少便利になる。
【0025】
第1の表示部及び/又は第2の表示部により表される焦点位置の単位を目盛で示すことが好ましい。このようにすれば相対的な焦点位置だけでなく絶対的な焦点位置も読み取り可能になる。好ましくは、両方の表示部に対して目盛が1つだけ設けられる。この場合、両方の表示部が直接比較できるように同じ単位で作動する。特に、1つの桟状ライトの各位置に単位を割り当てる固定的な目盛を印字するだけで済む。
【0026】
本カメラは、画像データの中でコード領域を識別してそのコード内容を読み出すように構成された制御及び評価部を備えていることが好ましい。これにより、本カメラは様々な規格のバーコード及び/又は2次元コードに対応したカメラベースのコードリーダとなり、場合によってはテキスト認識(OCR、光学的文字読み取り)にも対応する。なお、コード読み取り機能を持たず、画像の撮影、照明、実際の焦点位置と所要の焦点位置の測定及びその表示等、カメラ内の様々な作業を制御したり実行したりする制御及び評価部を設けてもよい。
【0027】
本発明に係る方法は、前記と同様のやり方で仕上げていくことが可能であり、それにより同様の効果を奏する。そのような効果をもたらす特徴は、例えば本願の独立請求項に続く従属請求項に模範的に記載されているが、それらに限られるものではない。
【0028】
好ましくは、所要の焦点位置を撮影対象の物体までの距離として、また実際の焦点位置を受光光学系の位置として、それぞれ測定及び表示し、ネジの内部における受光光学系の回転により、実際の焦点位置と所要の焦点位置が一致するまで実際の焦点位置を変更する。両方の表示に同じ種類の桟状ライトを使用し、受光光学系の回転によって両方を一致させるようにすれば、その一致が非常に容易に認識可能になる。これにより確実で使いやすい手動の焦点合わせが達成される。その際にカメラを開ける必要はないため、簡単な手段で機器の保護等級の規定が満たされる。
【0029】
以下、本発明について、更なる特徴及び利点をも考慮しつつ、模範的な実施形態に基づき、添付の図面を参照しながら詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】焦点調節装置を有するカメラの、上から見た概略断面図。
図2】カメラの正面図。
図3】横から見たカメラの3次元断面図。
図4】焦点位置測定部を有する受光光学系の3次元図。
図5】別の焦点位置測定部の3次元図。
図6】測定された焦点位置と所要の焦点位置の表示の概略図。
図7】カメラをベルトコンベアの近くに取り付けて使用する模範例を示す3次元図。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1はカメラ10の概略断面図である。検出領域14からの受信光12が受光光学系16に入射し、該光学系が受信光12を画像センサ18へ導く。受光光学系16の光学素子は複数のレンズ及び他の光学素子(絞り、プリズム等)から形成されていること好ましいが、ここでは簡単のため1枚のレンズ20だけで表されている。
【0032】
カメラ10は手動の焦点調節装置を備えている。第1の矢印22で示したように、受光光学系16はネジ24(図では概略的にしか描かれていない)の内部で回転させることが可能であり、それにより第2の矢印26のように光軸に沿って前後に移動する。その際に受光光学系16と画像センサ18の間の距離が変化することで集光位置が変わる。
【0033】
受光光学系16を捻転させることができるようにするため、その外側又は前側の領域に内側輪郭28が設けられている。この内側輪郭28は図2の正面図を見ればより良く分かるが、図3に示した横からの3次元断面図でも認識できる。なお、カメラ10の他の特徴部分についてもこの図を補足的に参照されたい。
【0034】
図示した実施例において、内側輪郭28は内側に六面角を持ち、そこに適宜の工具を嵌合させることで、特別な力を用いなくてもそれを正確に回転させることができる。もっとも本発明はこれに限定されない。まず、6以外の任意の数の角を持つ他の輪郭も考えられるし、更に十字スリットや星形等、他のパターンもある。また、その輪郭を、硬貨等、規格化されていてほぼ何時でも利用できる物品に合わせることもできる。例えば、クレジットカードの角部をマイナスドライバーのように用いることができる。重要なのは、受光光学系16を正確に所望の位置まで回転させるのに十分な回転モーメントを作用させるために確実な嵌合を行うことである。それ故、単なるスリットよりは複雑な輪郭が好ましい。また、代案として、図1とは違って受光光学系16をカメラ10から少しだけ突出させ、その外周部に、例えば面的に当接させたクレジットカードを嵌合させるための輪郭を設けることも考えられる。
【0035】
カメラ10はケーシング20で保護されている。ケーシング20のうち受信光12が入射する前側の領域は前面パネル32で閉鎖されている。この前面パネル32は開口34を有している。この開口は受光光学系16で塞がれている。本実施例の前面パネル32は、その開口34の領域において、焦点調節の際にも受光光学系16がカメラ10から突出せずに前面パネル32と接触した状態を保つように形成されている。
【0036】
受光光学系16の外周部は、内側と外側を分ける隔壁としての保護ガラス38を備える一種のケース36として形成されている。保護ガラスは内側でレンズ20を保護する一方、外側では内側輪郭28を開放してそこへのアクセスを可能にしている。前面パネル32とケース36の間にはパッキンリング40がある。これは受光光学系16をその位置に保持することを補助する働きもする。
【0037】
ケーシング30と前面パネル32、そして好ましくは保護ガラス38とパッキンリング40も用いて、カメラ10はIP54、IP65又はIP67といった所望の保護等級に達する。内側輪郭28は保護された内部空間より外側にあるため、集光位置の変更は保護等級に何の影響も及ぼさない。また、仮にケーシング30、前面パネル32又は受光光学系16の保護キャップを開けると、その後で元の保護等級に戻す処置が必要になるが、そのような処置をその都度講じる必要はない。
【0038】
図1の実施例のカメラには他にも任意選択の特徴的要素がある。照明部42(ここでは模範例として2つの光源で表されている)が各画像撮影の間、検出領域14内に十分な照明条件を作り出す。照明部42の光は前面パネル32を通って外部に達する。ケース36を有する受光光学系16がネジ24の内部に横たえられている図の構造には、発射光と受光対物レンズの間に追加のチャンネル分離部を組み込む必要がないという利点がある。ケース36が既にチャンネル分離部となっている。
【0039】
TOF(Time Of Flight)という符号が付された距離センサ44は検出領域14内の物体までの距離を測定することができる。この距離からその都度必要な(所要の)焦点位置を特定することができる。距離センサ44は光伝播時間法で作動する。この方法では、光信号が送出され、物体の表面で反射されて再び受信される。光伝播時間は、定数である光速を介して距離に対応する直接的な尺度である。好ましくは、発光器、受光器並びに必要な制御部及び評価部を有し、距離値を直接出力する高度集積部品を距離センサ44として用いる。もっとも、物体の距離を測定して所要の焦点位置を求めるための部品及び測定原理は他にもある。
【0040】
HALLという符号が付された焦点位置センサ46は、受光光学系16上で一緒に案内される磁気要素48と共同して、受光光学系16の光軸に沿った該光学系の現在位置を測定し、以て現在の実際の焦点位置を特定する。これについては引き続き図4及び5を参照してもう少し詳しく説明する。
【0041】
第1の表示部50と第2の表示部52は所要の焦点位置と実際の焦点位置をユーザに提示する。図1の表示部50、52の位置及び形態は概略的且つ模範的なものに過ぎない。焦点位置の表示については後で図6を参照して更に説明する。
【0042】
制御及び評価部54は、先に言及した各電子部品と接続され、カメラ10内の制御、評価及びその他の調整的な任務を担当している。即ち、制御及び評価部54は画像センサ18から画像データを読み出し、それを処理してインターフェース56に出力する。画像データを独自に評価することも考えられる。特に、画像データ内のコード領域の復号を行えば、カメラ10はカメラベースのコードリーダとなる。また、制御及び評価部54は距離センサ44と焦点位置センサ46からそれぞれ測定値を受け取り、それらの値から導き出された所要の焦点位置と実際の焦点位置を表示部50、52に表示する。距離センサ44と焦点位置センサ46を高度集積化せず、単に未処理の測定信号を出力するものとし、その信号を制御及び評価部54において更に処理することも考えられる。
【0043】
図4は焦点位置センサ46の実施形態を説明するための受光光学系16の3次元図である。この焦点位置センサ46はホールセンサであり、好ましくは、回路基板上にあり、位置値を直接出力する高度集積型センサである。このような位置値は、最初はホールセンサにより準備された単位で表される受光光学系16の位置でしかないが、制御及び評価部54はそれを焦点位置に変換することができる。この変換は、例えば製造工程における適宜の測定値、換算規則又は参照テーブルを用いて行う。本発明はホールセンサに限定されず、直線的な位置特定のための他の検出原理も含む。
【0044】
集光位置を変更する間、受光光学系16の前進又は後退方向の回転により、受光光学系16と一緒に案内される磁気要素48が焦点位置センサ46の下で移動する。そのために、ここでは磁気ストライプの形で実装された磁気要素48がキャリッジ58内に収納されている。キャリッジ58はガイド60内でバネ(図示せず)により背後から受光光学系16のケース36内の段部62に押圧されている。キャリッジ58はガイド60用のガイド棒64及びバネ構造とともにプラスチック射出成形部品の形にすることができる。
【0045】
図5は、磁気要素48が受光光学系16と一緒に動くようにするための手段であるキャリッジ58の別の実施形態を示している。本発明が特定の形状に固定されてはいないことを例示するため、このキャリッジ58は異なる形状にしている。また、ここではキャリッジ58を背後からケース36に押圧するためのバネ66が示されている。このバネは、キャリッジ58と一緒に1つの部品としてインサート成形するのではなく、別体のコイルバネとして形成することが好ましい。
【0046】
別の実施形態では、キャリッジ58が背後から段部62に作用するのではなく、例えば受光光学系16やケース36に形成したノッチ等、別の作用点を用いる。
【0047】
図6は焦点位置を視覚化するための表示部50、52の可能な実施形態を概略的に示している。第1の表示部50は距離センサ44の測定値、つまり所要の焦点位置の目標値(Soll-Wert)を示すものであり、第2の表示部52は焦点位置センサ46の測定値、つまり現在設定されている受光光学系16の焦点位置の実際値(Ist-Wert)を示すものである。任意選択の目盛68が、表示された焦点位置に単位を補足している。目盛はこの例では非線形であるが、より細かく又は粗くしてもよいし、線形でもよい。
【0048】
この例の表示部50、52は複数の光源50a、52aを一列に配置した桟状ライト(特にLED配列)として構成されている。このライトは、表示すべき焦点位置に最も良く対応する光源50a、52aをその都度点灯する。中間の位置は隣接する2つの光源50a、52aの点灯により可視化することができる。また、別の光源(図示せず)を設けて、実際の焦点位置と所要の焦点位置が正確に一致する状態になったときにこの光源を点灯させてもよい。なお、この一致ついては許容範囲が予め設定されている。識別性を高めるために表示部50、52に異なる色を使ってもよい。表示部50、52は図1に示したように前面パネル32の上部の領域を通して見えるように表示を行うものとすることができる。もっとも、他のいかなる位置も考えられる。
【0049】
この表示部50、52を用いて以下のようにカメラ10の焦点を合わせることができる。撮影対象の物体は検出領域14においてカメラ10から適宜の距離にある。最初のステップでは距離センサ44の距離測定部を一定の時間だけ作動させる。これは制御及び評価部54の指示により発動してもよいし、カメラ10のキー(図示せず)の押下によってもよい。測定された距離値は目盛68に合った単位に換算され、それに対応する第1の表示部50の光源50aが点灯される。この光源は例えば青色で発光し、所要の焦点位置を示す。
【0050】
第2の表示部52でも同様に、焦点位置センサ46により測定された受光光学系16の実際の焦点位置に対応する光源52aが、例えば赤色で発光する。次のステップでは、ユーザが内部輪郭28に嵌合させた工具を用いて受光光学系16を回転させることにより実際の焦点位置を所要の焦点位置に設定する。そのためには、回転中に第2の表示部52上で移動する赤い光が第1の表示部50上の青い光と重なる位置に来るまで、受光光学系16を回転させるだけでよい。実際の焦点位置と所要の焦点位置が許容範囲内で正確に一致していることを示すための追加の光源がある場合は、その光源が点灯するまで受光光学系16を回転させればよい。その際、表示部50は、そのためにどのような修正が必要かについて非常に有用な情報を与えてくれる。
【0051】
図示せぬ別の実施形態では、両方の表示部50、52が単一の桟状ライト又はLED配列にまとめられている。この場合、所要の焦点位置と実際の焦点位置がまだ一致していない間は2つの異なる位置の光源50a、52aが点灯する。多色LEDを用いれば、それぞれどちらの値であるかを直接区別することさえできる。
【0052】
図7はカメラ10をベルトコンベア70の近くに取り付けて利用できることを示している。ベルトコンベア70は、矢印74で示したように、カメラ10の検出領域14を通り抜けるように物品72を搬送する。物品72はその外面にコード領域76を持っている可能性がある。カメラ10の課題は物品72の特性を捕らえること、そしてコードリーダとしての好ましい利用形態においては、コード領域76を認識し、そこに付されたコードを読み取り、それを復号して、該当する物品72に割り当てることである。側面に付されたコード領域78も検出するために、異なる視点から追加のカメラ10(図示せず)を用いることが好ましい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7