(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-13
(45)【発行日】2022-01-25
(54)【発明の名称】拭き取り用シート及び当該拭き取り用シートの製造方法
(51)【国際特許分類】
D04H 1/64 20120101AFI20220118BHJP
A47K 7/02 20060101ALI20220118BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20220118BHJP
A47L 13/16 20060101ALI20220118BHJP
D21H 11/18 20060101ALI20220118BHJP
【FI】
D04H1/64
A47K7/02 C
B05D7/24 303G
A47L13/16 A
D21H11/18
(21)【出願番号】P 2019132461
(22)【出願日】2019-07-18
【審査請求日】2021-04-02
(73)【特許権者】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】山下 晶子
【審査官】櫛引 明佳
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第01/054640(WO,A1)
【文献】特開2003-103677(JP,A)
【文献】特開2018-035469(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0211487(US,A1)
【文献】特開2013-103740(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D04H 1/00-18/04
D21H 11/00-27/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
不織布
の外層にセルロースナノファイバーを含有
し、繊維密度が相対的に高い凹部であるパターン部と、前記セルロースナノファイバーを含有しない
、繊維密度が相対的に低い凸部である非パターン部と、を備えることを特徴とする拭き取り用シート。
【請求項2】
前記パターン部の面積が不織布全体の大きさの10~60%であることを特徴とする請求項1記載の拭き取り用シート。
【請求項3】
不織布の片面のみに前記パターン部が形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の拭き取り用シート。
【請求項4】
不織布
の外層に、0.75%~2.00%のセルロースナノファイバー溶液を設定されたパターンに従って塗布することで
、セルロースナノファイバーを含有するパターン部と
、前記セルロースナノファイバーを含有しない非パターン部と、を形成する塗布ステップと、
セルロースナノファイバー溶液が塗布された不織布を熱乾燥させ
て、前記パターン部の繊維密度を前記非パターン部よりも相対的に高くすることで、それぞれ前記パターン部を凹部、前記非パターン部を凸部とする乾燥ステップと、
を有することを特徴とする拭き取り用シートの製造方法。
【請求項5】
前記塗布ステップは、不織布全体の大きさの10~60%の塗布面積に塗布することを特徴とする請求項4記載の拭き取り用シートの製造方法。
【請求項6】
前記塗布ステップは、スプレーにより塗布することを特徴とする請求項4又は5記載の拭き取り用シートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、拭き取り用シート及び当該拭き取り用シートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
拭き取り用シートの原料である不織布にパターン部を形成するための方法は、スパンレース法などのウェブ繊維を結合する際に形成する方法や、無地の不織布に熱エンボス加工する方法などがある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、スパンレース法では不織布にパターン部により凹凸を形成することが難しい。また、熱エンボス加工を行うには相応の設備が必要である。そのため、容易に不織布にパターン部により凹凸を形成する方法が望まれていた。
【0005】
本発明の目的は、容易に不織布にパターン部により凹凸を形成することができる拭き取り用シート及び当該拭き取り用シートの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、請求項1記載の発明は、
拭き取り用シートであって、
不織布の外層にセルロースナノファイバーを含有し、繊維密度が相対的に高い凹部であるパターン部と、前記セルロースナノファイバーを含有しない、繊維密度が相対的に低い凸部である非パターン部と、を備えることを特徴とする。
【0007】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の拭き取り用シートにおいて、
前記パターン部の面積が不織布全体の大きさの10~60%であることを特徴とする。
【0008】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の拭き取り用シートにおいて、
不織布の片面のみに前記パターン部が形成されていることを特徴とする。
【0009】
請求項4記載の発明は、拭き取り用シートの製造方法であって、
不織布の外層に、0.75%~2.00%のセルロースナノファイバー溶液を設定されたパターンに従って塗布することで、セルロースナノファイバーを含有するパターン部と、前記セルロースナノファイバーを含有しない非パターン部と、を形成する塗布ステップと、
セルロースナノファイバー溶液が塗布された不織布を熱乾燥させて、前記パターン部の繊維密度を前記非パターン部よりも相対的に高くすることで、それぞれ前記パターン部を凹部、前記非パターン部を凸部とする乾燥ステップと、
を有することを特徴とする。
【0010】
請求項5記載の発明は、請求項4記載の拭き取り用シートの製造方法において、
前記塗布ステップは、不織布全体の大きさの10~60%の塗布面積に塗布することを特徴とする。
【0011】
請求項6記載の発明は、請求項4又は5記載の拭き取り用シートの製造方法において、
前記塗布ステップは、スプレーにより塗布することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、容易に不織布にパターン部により凹凸を形成することができる拭き取り用シート及び当該拭き取り用シートの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施形態に係る不織布へのパターン部の形成方法の一例を示す図である。
【
図2】実施形態に係る不織布のパターン部の一例を示す図である。
【
図3】実施形態に係る拭き取り用シートの製造方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[拭き取り用シート]
本発明に係る拭き取り用シートPは、例えば不織布等のシート状の繊維集合基材の片面に対して、精製水に各種成分を添加した溶液を塗布し、熱乾燥させたものである。
拭き取り用シートPは、例えば、
図1に示すように、全面のうち、格子ドット状に形成されたパターン部1と、それ以外の部分である非パターン部2と、を備える。
【0015】
パターン部1は、セルロースナノファイバー(以下、CNF)が含有されており、熱収縮により繊維密度が非パターン部2よりも高くなっている。
非パターン部2は、CNFが含有されていない部分であり、パターン部1に比べて繊維密度が低くなっている。
パターン部1は、熱収縮により凹むため、拭き取り用シートPは、パターン部1と非パターン部2により凹凸が形成される。より具体的には、CNFが塗布された部分が過熱されると、CNF溶液中の水が蒸発し、CNF同士の水素結合がより強固になることで、CNFが塗布された部分の不織布繊維が凝縮(収縮)し、非パターン部2と高低差が生じる。一方、例えば、カルボキシメチルセルロース(以下、CMC)は、CNFと比べて水素結合の数が多くないため、不織布にCMCを塗布し、当該部分が過熱されても、不織布繊維が凝縮(収縮)せず、非パターン部2と高低差は生じ難い。
【0016】
なお、パターン部1の形状、配置、向きは任意であり、塗布により形成可能なパターンであれば、いかなるものであってもよい。
例えば、拭き取り用シートPは、
図2(a)に示すように、縦向きの垂線状に形成されたパターン部1と、それ以外の非パターン部2と、を備える形状であってもよい。また、パターン部1は、
図2(b)に示すように斜め格子ドット状であってもよいし、
図2(c)に示すように横向きの垂線状であってもよい。また、
図2(d)に示すように直線波形状であってもよいし、
図2(e)に示すように斜線状であってもよい。
【0017】
また、このとき、拭き取り用シートP全体に適度な凹凸感を付与するために、パターン部1の面積が不織布全体の大きさの10~60%になるようにCNF溶液を塗布することが好ましい。パターン部1の面積が10%より小さい場合、凹凸が少なく、拭き取り性や、かきとり性が発揮されないからである。また、パターン部1の面積が60%より大きい場合、パターン部1が多くなり柔らかさが損なわれるからである。
【0018】
拭き取り用シートPは、製品形態では、複数枚積層された積層体の状態として、開閉蓋により密閉可能とされたシート取出口を有する密閉容器や袋等の包装手段内に収容することができる。
使用に際しては、拭き取り用シートPを容器又は袋内に直に入れたもの、あるいは拭き取り用シートPを直に入れた袋を容器内に入れたものから、使用者が取出口を開けて内部のシートを引き出して使用する。
かかる拭き取り用シートPは、例えば、身体拭きシート、床等の清掃用シートなど、広範な用途に用いられる。
【0019】
[繊維集合基材]
繊維集合基材としては、所定の繊維を繊維素材として、例えば、スパンレース、エアスルー、エアレイド、ポイントボンド、スパンボンド、ニードルパンチ等の周知の技術により製造される不織布を用いることができる。
所定の繊維としては、天然、再生、合成を問わず用いることができるが、例えば、レーヨン、リヨセル、テンセル、コットン等のセルロース系繊維、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルアルコール等のポリオレフィン系繊維、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル繊維、ナイロン等のポリアミド系繊維が挙げられる。これらは単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
本発明では少なくとも親水性繊維を含有するものが好ましい。拭き取り用シートPは、親水性繊維を含んだ不織布のほうが親水性繊維を含まない不織布と比べて、汚れの拭き取り効果が高いためである。
【0020】
(親水性繊維)
親水性繊維としては、綿、パルプなどの天然繊維、レーヨン、キュプラなどの再生繊維などを使用することができる。これらの繊維の中でも特にはレーヨンが好適である。レーヨンは、吸水性に富み、取り扱いが容易であると共に、一定長の繊維を安価に入手することができる。かかる親水性繊維は、基材中に40~70質量%の含有比で配合するのがより望ましい。親水性繊維の含有量が40質量%未満である場合には、十分な柔軟性と保水性を与えることが出来ず、70質量%を超える場合には、湿潤時強度が低すぎて破れなどが生じ易くなるとともに、容器からポップアップ式で取り出す際に伸びが生じ過ぎるようになる。
【0021】
(目付け)
本発明の拭き取り用シートPの場合、シートの目付け量は20~80g/m2、特に30~60g/m2程度であるのが好ましい。シートの目付け量が20g/m2未満では汚れの保持能力が乏しくなり、80g/m2を超えると柔軟性が乏しくなる。
【0022】
[CNF]
CNFは、水分を保持する特性を有し、且つ安全性が高い素材であって、パルプ繊維を解繊して得られる微細なセルロース繊維であり、一般的に繊維幅がナノサイズ(1nm以上、1000nm以下)のセルロース微細繊維を含むセルロース繊維をいうが、平均繊維幅は、100nm以下の微細繊維が好ましい。平均繊維幅の算出は、例えば、一定数の数平均、メジアン、モード径(最頻値)などを用いる。
【0023】
(CNFに使用可能なパルプ繊維)
CNFとして使用可能なパルプ繊維としては、例えば、広葉樹パルプ(LBKP)、針葉樹パルプ(NBKP)等の化学パルプ、晒サーモメカニカルパルプ(BTMP)、ストーングランドパルプ(SGP)、加圧ストーングランドパルプ(PGW)、リファイナーグランドパルプ(RGP)、ケミグランドパルプ(CGP)、サーモグランドパルプ(TGP)、グランドパルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)、リファイナーメカニカルパルプ(RMP)等の機械パルプ、茶古紙、クラフト封筒古紙、雑誌古紙、新聞古紙、チラシ古紙、オフィス古紙、段ボール古紙、上白古紙、ケント古紙、模造古紙、地券古紙、更紙古紙等から製造される古紙パルプ、古紙パルプを脱墨処理した脱墨パルプ(DIP)などが挙げられる。これらは、本発明の効果を損なわない限り、単独で用いてもよく、複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0024】
(解繊方法)
CNFの製造に用いられる解繊方法としては、例えば、高圧ホモジナイザー法、マイクロフリュイダイザー法、グラインダー磨砕法、ビーズミル凍結粉砕法、超音波解繊法等の機械的手法が挙げられるが、これらの方法に限定されるものではない。
なお、上記解繊方法などにより機械的処理のみ施した(変性させていない)CNF、即ち、官能基未修飾のCNFは、リン酸基やカルボキシメチル基などの官能基修飾されたものに対し、熱安定性が高いため、より幅広い用途に使用可能であるが、リン酸基やカルボキシメチル基などの官能基修飾されたCNFを本発明に使用することも可能である。
また、例えば、パルプ繊維に対して機械的手法の解繊処理を施したものに、カルボキシメチル化等の化学的処理を施しても良いし、酵素処理を施してもよい。化学的処理を施したCNFとしては、例えば、TEMPO酸化CNF、リン酸エステル化CNF、亜リン酸エステル化CNF等の、直径が3~4nmとなるiCNF(individualized CNF) (シングルナノセルロース)が挙げられる。
また、化学的処理や酵素処理のみを施したCNFや、化学的処理や酵素処理を施したCNFに、機械的手法の解繊処理を施したCNFでもよい。
【0025】
[CMC]
なお、CNFの溶液中での凝集を防止するために、水溶性高分子であるCMCを添加してもよい。
CNFを水系溶媒に添加した場合、CNFのミクロフィブリル繊維同士が結合して凝集してしまうところ、CMCを添加してCNFとCMCを共存させることで、CNFのOH基と、CMCのOH基とが水素結合し、分子鎖の静電相互作用と立体障害効果によって、CNFの凝集が防止され、CNFを溶液中に均一に分散させることができる。
【0026】
なお、CMCは、セルロースを原料として得られ、緩やかな生分解性を有し、且つ使用後の焼却廃棄が可能であるため、環境に極めてやさしい素材であることから好ましく使用されるが、CNFの溶液中での凝集を防止できるものであれば、CMC以外の水溶性高分子を用いることとしても良い。
【0027】
また、CMCを添加する場合には、溶液全体を100.000質量%としたときに、水を93.000~99.790質量%、CNFを0.002~0.020質量%、及びCMCを0.100~1.000質量%の割合で含有していることが好ましい。
【0028】
また、溶液は、繊維集合基材の乾燥重量に対して100~500質量%の範囲内で含浸させることができるが、200~350質量%で含浸させることが好ましい。
【実施例】
【0029】
以下、実施例及び
図3に示す拭き取り用シートPの製造方法のフローチャートにより本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0030】
[サンプル作成]
まず、ドライ状態で秤量70g/m2の11cm×11cmの不織布(繊維配合;レーヨン:PET=50:50)を準備した。ドライ状態とは、薬液などの液体がシートに含浸されていない状態である。
次いで、上記不織布の片面のみに、実施例1-13及び比較例1-10の条件で溶液を塗布した(ステップS1)。
次いで、60℃恒温槽で各不織布を1日静置して熱乾燥させ(ステップS2)、拭き取り用シートPを作成した。
実施例1-13及び比較例1-10の条件は以下の通りである。
【0031】
(実施例1-4)
図1に示すように、直径2~3mmであり、互いに10~15mm離されるように、マイクロピペット(ニチペット EXII00-NPX2-1000)でそれぞれ濃度0.75%、1.00%、1.50%、2.00%の機械処理CNF溶液をドット状に塗布した。例えば、0.75%CNF溶液とは、溶媒の水:CNF=99.25%:0.75%である溶液である。
【0032】
(実施例5-8)
それぞれ濃度0.75%、1.00%、1.50%、2.00%の酵素処理CNF溶液を塗布した。
他の条件は、実施例1と同じである。
【0033】
(実施例9-11)
それぞれ濃度0.75%、1.00%、1.50%のTEMPO酸化CNF溶液を塗布した。
他の条件は、実施例1と同じである。
【0034】
(実施例12-13)
それぞれ濃度0.75%、1.00%のELLEX-☆溶液(亜リン酸エステル化CNF水分散液)を塗布した。
他の条件は実施例1と同じである。
【0035】
(比較例1)
濃度0.50%の機械処理CNF溶液を塗布した。
他の条件は実施例1と同じである。
【0036】
(比較例2)
濃度0.50%の酵素処理CNF溶液を塗布した。
他の条件は実施例1と同じである。
【0037】
(比較例3)
濃度0.50%のTEMPO酸化CNF溶液を塗布した。
他の条件は実施例1と同じである。
【0038】
(比較例4)
濃度0.50%のELLEX-☆溶液を塗布した。
他の条件は実施例1と同じである。
【0039】
(比較例5-9)
それぞれ濃度0.50%、0.75%、1.00%、1.50%、2.00%のCMC溶液を塗布した。
他の条件は、実施例1と同じである。
【0040】
(比較例10)
精製水を塗布した。
他の条件は、実施例1と同じである。
【0041】
上記実施例及び比較例のシートを用いて、以下の試験1-5を行った。
【0042】
[試験1.機械処理CNF溶液の濃度と凹凸の有無及び不織布の柔らかさの検討]
実施例1-4及び比較例1に対応するサンプルにつき、以下の2つの試験を行った。
【0043】
[評価方法]
(凹凸の官能評価)
実施例及び比較例のサンプルを10名の被験者に比較させた後、凹凸の有無につき評価を行った。
試験結果は、10人中7人以上が凹凸があると回答した場合を〇、10人中7人以上が凹凸がないと回答した場合を×、それ以外を△とした。
【0044】
(柔らかさの官能評価)
実施例及び比較例のサンプルを10名の被験者に比較させた後、柔らかさにつき評価を行った。
試験結果は、10人中7人以上がCNFを塗布していない不織布と同等以上の柔らかさと回答した場合を〇、10人中7人以上がCNFを塗布していない不織布と比べて固いと回答した場合を×、それ以外を△とした。
【0045】
試験の結果を表Iに示す。
【0046】
【0047】
[評価]
表Iの実施例1-4と比較例1をそれぞれ比較すると、機械処理CNF溶液においては、濃度0.75~2.00%、より好ましくは0.75~1.50%の溶液を塗布すると、凹凸の形成とシートPの柔らかさを両立させることができることがわかった。
【0048】
[試験2.酵素処理CNF溶液の濃度と凹凸の有無及び不織布の柔らかさの検討]
次に、実施例5-8及び比較例2に対応するサンプルにつき、試験1と同様の試験を行った結果を表IIに示す。
【0049】
【0050】
[評価]
表IIの実施例5-8と比較例2をそれぞれ比較すると、酵素処理CNFにおいても、濃度0.75~2.00%、より好ましくは1.00~1.50%の溶液を塗布すると、凹凸の形成とシートPの柔らかさを両立させることができることがわかった。
【0051】
[試験3.TEMPO酸化CNF溶液の濃度と凹凸の有無及び不織布の柔らかさの検討]
次に、実施例9-11及び比較例3に対応するサンプルにつき、試験1と同様の試験を行った結果を表IIIに示す。
【0052】
【0053】
[評価]
表IIIの実施例9-11と比較例3をそれぞれ比較すると、TEMPO酸化CNF溶液においても、濃度0.75~1.50%、より好ましくは1.50%の溶液を塗布すると、凹凸の形成とシートPの柔らかさを両立させることができることがわかった。
【0054】
[試験4.ELLEX-☆溶液の濃度と凹凸の有無及び不織布の柔らかさの検討]
次に、実施例12-13及び比較例4に対応するサンプルにつき、試験1と同様の試験を行った結果を表IVに示す。
【0055】
【0056】
[評価]
表IVの実施例12-13と比較例4をそれぞれ比較すると、ELLEX-☆溶液においても、濃度0.75~1.00%の溶液を塗布すると、凹凸の形成とシートPの柔らかさを両立させることができることがわかった。
【0057】
[試験5.CNFを含有しない液体を塗布した場合の凹凸の有無の検討]
次に、比較例5-10に対応するサンプルにつき、試験1と同様の試験を行った結果を表Vに示す。
【0058】
【0059】
[評価]
表Vの比較例5-10から、CNFを含有しない液体を塗布した場合は、熱乾燥を行っても凹凸が形成されないことがわかった。
【0060】
以上、試験1-5からわかるように、本実施形態によれば、濃度0.75~2.00%、好ましくは0.75~1.50%のCNF溶液を不織布に塗布し、熱乾燥することで、凹凸の形成と、柔軟性と、が確保されることがわかる。
また、試験1-4より、塗布する溶液に含ませるCNFは、いかなる方法で解繊されていてもよいことがわかる。
【0061】
[実施形態の効果]
拭き取り用シートPの製造工程においては、模様のない不織布にCNFを含有する溶液を塗布し、熱乾燥することで、容易にパターン部により凹凸を形成することができる。
【0062】
また、不織布の片面のみにパターン部1が形成されていることで、厚み感の付与と接触面積の増加がもたらされたCNF溶液塗布面で汚れを拭き取った後、平滑で柔らかいCNF溶液非塗布面で仕上げ拭きを行うことができ、1枚の拭き取り用シートPにつき、2つの効果を得ることができる。
【0063】
以上、本発明を実施形態に基づいて具体的に説明してきたが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
【0064】
例えば、上記実施の形態においては、拭き取り用シートPは清掃に用いられるものとして説明したが、その用途はこれに限定されるものではない。また、用途に応じて、溶液に添加される成分や塗布のパターンが変更されるのは勿論である。
【0065】
また、本発明における不織布は、製法や組成、目付には特に制限は持たない。また、上記実施形態に基づいて形成される凹凸は、ウェット状態でも崩れないものであるので、用途に応じてシートが乾性であるか湿性であるかも限定されるものではない。
【0066】
また、不織布へのCNFの塗布方法としては、均一に塗布することができる点などから、スプレー塗布であることが好ましいが、ディスペンサ等による液適状の塗布や、ロールに溶液を一度塗布し、シート面に接触させて塗布するロール塗布、フレキソ印刷機やグラビア印刷機等を用いたロール転写等、本発明の効果を損なわない限り、他の方法でも構わない。
【0067】
また、不織布の熱乾燥方法としては、乾燥時間の短さや、安価で導入可能である点などから、熱風乾燥であることが好ましいが、ヤンキードラム等の加熱ロールの表面に直接不織布を接触させて乾燥させる方法等、本発明の効果を損なわない限り、他の方法を単独で、また必要に応じて組み合わせて使用しても構わない。
【0068】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、本発明の範囲は、上述の実施の形態に限定するものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲とその均等の範囲を含む。
【符号の説明】
【0069】
P 拭き取り用シート
1 パターン部
2 非パターン部