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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-13
(45)【発行日】2022-01-25
(54)【発明の名称】注射デバイス
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/32 20060101AFI20220118BHJP
【FI】
A61M5/32 502
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2019530437
(86)(22)【出願日】2017-12-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-01-16
(86)【国際出願番号】 EP2017081309
(87)【国際公開番号】W WO2018104203
(87)【国際公開日】2018-06-14
【審査請求日】2020-11-20
(31)【優先権主張番号】16202659.5
(32)【優先日】2016-12-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】397056695
【氏名又は名称】サノフィ-アベンティス・ドイチュラント・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】ペーター・ノーバー
(72)【発明者】
【氏名】マティーアス・ラウ
(72)【発明者】
【氏名】ダーヴィト・タイセン
【審査官】磯野 光司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/140262(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0073224(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
注射デバイスであって:
一端に針を有するシリンジを保持するためのハウジングと;
該ハウジングに取外し可能に取り付けられたキャップであって、前記針を覆うためのニードルシールドを有するキャップと;
第1および第2のリニアギヤならびに2重ギヤを含むギヤアセンブリであって、
2重ギヤは、互いに対して固定され、共通の回転軸を共有する第1および第2の部分を含み、第1の部分は、第1のリニアギヤと係合するように構成され、第2の部分は、第2のリニアギヤと係合するように構成され、
第1のリニアギヤの第1の方向への移動が、2重ギヤを回転させ、第2のリニアギヤを駆動して、ニードルシールドを、ハウジングから遠ざかる方向に付勢して、針からニードルシールドの取り外しを容易にするように構成されたギヤアセンブリと;
ユーザが摺動させることによって、第1のリニアギヤを第1の方向に移動させるように構成されたアクチュエータと
を含む前記注射デバイス。
【請求項2】
ギヤアセンブリは、アクチュエータにかけられた力が、ニードルシールドにかけられるより大きな力に変換されるようなギヤ比を有するように構成される、請求項1に記載の注射デバイス。
【請求項3】
2重ギヤは、ハウジングに回転可能に連結される、請求項1または2に記載の注射デバイス。
【請求項4】
2重ギヤは、キャップに回転可能に連結される、請求項1または2に記載の注射デバイス。
【請求項5】
アクチュエータは、ニードルシールドをハウジングから遠ざかる方向に付勢するようにハウジングの長手方向に摺動可能である、請求項1~4のいずれか1項に記載の注射デバイス。
【請求項6】
アクチュエータはキャップの遠位端に位置し、アクチュエータは、ニードルシールドをハウジングから遠ざかる方向に付勢するように注射デバイスの近位端に向かって摺動可能である、請求項5に記載の注射デバイス。
【請求項7】
アクチュエータはキャップの遠位端に位置し、アクチュエータは、ニードルシールドをハウジングから遠ざかる方向に付勢するように注射デバイスの近位端から遠ざかる方向に摺動可能である、請求項5に記載の注射デバイス。
【請求項8】
アクチュエータは、患者の手指を受け入れるための空間を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の注射デバイス。
【請求項9】
第1のリニアギヤおよび/または第2のリニアギヤは、2重ギヤと係合するように構成される、請求項1~8のいずれか1項に記載の注射デバイス。
【請求項10】
第1のリニアギヤは、アクチュエータに対して固定される、請求項1~9のいずれか1項に記載の注射デバイス。
【請求項11】
第2のリニアギヤは、ニードルシールドに対して固定される、請求項1~10のいずれか1項に記載の注射デバイス。
【請求項12】
複数のギヤアセンブリを含む、請求項1~11のいずれか1項に記載の注射デバイス。
【請求項13】
ニードルシールドは、キャップがハウジングに取り付けられたときに前記シリンジと摩擦によって係合するように構成される、請求項1~12のいずれか1項に記載の注射デバイス。
【請求項14】
一端に針を有しハウジングに受け入れられたシリンジを含み、シリンジは薬剤を含む、請求項1~13のいずれか1項に記載の注射デバイス。
【請求項15】
注射デバイスのハウジングからキャップを取り外す方法であって、ハウジングは、一端に針を有するシリンジを保持し、キャップは、ハウジングに取外し可能に取り付けられており、針を覆うためのニードルシールドを有し、該方法は:
第1のリニアギヤを第1の方向に移動させて2重ギヤを回転させるように、アクチュエータをキャップまたはハウジングに対して摺動させることを含み、
2重ギヤは、互いに対して固定され、共通の回転軸を共有する第1および第2の部分を含み、
第1の部分は、第1のリニアギヤと係合するように構成され、第2の部分は、2重ギヤの前記回転が第2のリニアギヤを駆動して、ニードルシールドを、ハウジングから遠ざかる方向に付勢して、針からニードルシールドの取り外しを容易にするように2重ギヤに連結された第2のリニアギヤと係合するように構成される
前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、注射デバイス、および注射デバイスのハウジングからキャップを取り外す方法に関する。
【背景技術】
【0002】
当技術分野では、自動注射器など、患者の注射部位に薬剤を投薬するための注射デバイスが知られている。そのような注射デバイスは通常、本体およびキャップを含む。本体内にはニードルシリンジが位置する。キャップは、ニードルシリンジの針を隠すために本体に取外し可能に取り付けられている。薬剤を投薬するには最初に、本体からキャップを取り外して針を露出させる。次いで、注射部位において針を患者の体に挿入して薬剤を投薬する。
【0003】
注射デバイスの輸送および保管中に本体からキャップが偶然に外れることがないことを保証する十分な力でキャップが本体上に保持されることが重要である。このことは、針が滅菌された状態に保たれていることを保証し、さらに、鋭利な針が外傷の原因となることを防ぐ。しかしながら、キャップと本体を一体に保持するのに必要なこの力が、特に患者が高齢であったりまたは虚弱であったりする場合に、注射前に患者が意図的に本体からキャップを取り外すことを困難にすることがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、改良された注射デバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、注射デバイスが提供される。この注射デバイスは:一端に針を有するシリンジを保持するためのハウジングと;ハウジングに取外し可能に取り付けられたキャップであって、前記針を覆うためのニードルシールドを有するキャップと;第1および第2のリニアギヤならびに2重ギヤを含むギヤアセンブリであって、第1のリニアギヤの第1の方向への移動が、2重ギヤを回転させ、第2のリニアギヤを駆動して、ニードルシールドを、ハウジングから遠ざかる方向に付勢するように構成されたギヤアセンブリと;第1のリニアギヤを第1の方向に移動させるように構成されたアクチュエータとを含む。
【0006】
このギヤアセンブリおよびアクチュエータは、ニードルシールドを本体から遠ざかる方向に付勢するために患者がかけなければならない力を低減させるように構成することができる。したがって、本体からのニードルシールドの分離をより容易にすることができる。加えて、このギヤアセンブリおよびアクチュエータは、本体からのニードルシールドの制御された分離を可能にすることができる。さらに、2重ギヤは、比較的に容易に製作し組み立てることができるコンパクトなニードルシールド取外し機構を可能にすることができる。
【0007】
一実施形態において、2重ギヤは、互いに対して固定され、共通の回転軸を共有する第1および第2の部分を含む。一実施形態において、第1の部分は、第1のリニアギヤと係合するように構成されており、第2の部分は、第2のリニアギヤと係合するように構成されている。一実施形態において、アクチュエータは、ユーザが摺動させることによって、第1のリニアギヤを第1の方向に移動させるように構成されている。
【0008】
2重ギヤの第1の部分の直径と第2の部分の直径は同じとすることができる。代替実施形態において、第1の部分の直径と第2の部分の直径は異なる。
【0009】
一実施形態において、ギヤアセンブリは、アクチュエータにかけられた力が、ニードルシールドにかけられるより大きな力に変換されるようなギヤ比(gear ratio)を有するように構成されている。このことは、ニードルシールドをハウジングから遠ざかる方向に付勢するために患者がかけなければならない力を低減させる。
【0010】
一実施形態において、2重ギヤは、ハウジングに回転可能に連結されている。別の実施形態において、2重ギヤは、キャップに回転可能に連結されている。
【0011】
一実施形態において、アクチュエータは、ニードルシールドをハウジングから遠ざかる方向に付勢するようにハウジングの長手方向に摺動可能である。この摺動は、ハウジングからのニードルシールドのより制御された取外しを患者が実行することをより容易にすることができ、ハウジングからのニードルシールドのより制御された取外しを可能にすることができる。
【0012】
一実施形態において、アクチュエータはキャップの遠位端に位置し、アクチュエータは、ニードルシールドをハウジングから遠ざかる方向に付勢するように注射デバイスの近位端に向かって摺動可能である。したがって、患者は、テーブルの表面などの平坦面にアクチュエータを押し付けて、ニードルシールドを、ハウジングから遠ざかる方向に付勢することができる。この押し付ける運動は、特に患者が高齢であったりまたは虚弱であったりする場合にアクチュエータの操作を単純にする。
【0013】
別の実施形態において、アクチュエータはキャップの遠位端に位置し、アクチュエータは、ニードルシールドをハウジングから遠ざかる方向に付勢するように注射デバイスの近位端から遠ざかる方向に摺動可能である。したがって、患者は、アクチュエータを引っ張って、ニードルシールドを、ハウジングから遠ざかる方向に付勢することができる。この引っ張る運動は、特に患者が高齢であったりまたは虚弱であったりする場合にアクチュエータの操作を単純にする。
【0014】
一実施形態において、アクチュエータは、患者の手指を受け入れるための空間を含む。
【0015】
一実施形態において、第1のリニアギヤおよび/または第2のリニアギヤは、2重ギヤと係合するように構成されている。第1のリニアギヤは、アクチュエータに対して固定することができる。
【0016】
第2のリニアギヤは、ニードルシールドに対して固定することができる。
【0017】
一実施形態において、第1のリニアギヤおよび/または第2のリニアギヤは、ラックギヤを含む。
【0018】
一実施形態において、第2のリニアギヤと回転ギヤのうちの一方のギヤはハウジング上にあり、もう一方のギヤはキャップ上にある。代替実施形態において、第2のリニアギヤと回転ギヤのうちの前記一方のギヤは、ハウジング以外の注射デバイスの部分上、たとえば注射デバイスのニードルスリーブ上またはシリンジの部分上にある。
【0019】
一実施形態において、注射デバイスは、複数のギヤアセンブリを含む。これによって、ニードルシールドを本体から遠ざかる方向に付勢するためのより均等でより均衡の取れた力をニードルシールドにかけることを可能にすることができる。たとえば、注射デバイスが2つのギヤアセンブリを含む場合には、それらのギヤアセンブリを、注射デバイスの中心軸の反対側に配置して、中心軸の両側からニードルシールドに力を加えることができる。
【0020】
一実施形態において、ニードルシールドは、キャップがハウジングに取り付けられたときに前記シリンジと摩擦によって係合するように構成されている。
【0021】
一実施形態において、注射デバイスはさらに、一端に針を有しハウジングに受け入れられたシリンジを含み、シリンジは薬剤を含む。
【0022】
一実施形態において、注射デバイスは自動注射器である。
【0023】
本発明によれば、注射デバイスのハウジングからキャップを取り外す方法が提供される。この方法において、ハウジングは、一端に針を有するシリンジを保持し、キャップは、ハウジングに取外し可能に取り付けられており、針を覆うためのニードルシールドを有し、この方法は:第1のリニアギヤを第1の方向に移動させて2重ギヤを回転させるように、アクチュエータをキャップまたはハウジングに対して移動させることを含み、注射デバイスは、2重ギヤの前記回転が第2のリニアギヤを駆動して、ニードルシールドを、ハウジングから遠ざかる方向に付勢するように2重ギヤに連結された第2のリニアギヤを含む。
【0024】
本発明のこれらの態様およびその他の態様は、以下で説明する実施形態から明白となり、それらの実施形態を参照することで解明される。
【0025】
次に、添付図面を参照して本発明の実施形態を、単なる例として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1A】自動注射器のハウジングにキャップが取り付けられた、本発明を実施する自動注射器の概略側面図である。
図1B】ハウジングからキャップが取り外された、図1Aの自動注射器の概略側面図である。
図2】アクチュエータが第1の位置にある、本発明の第1の実施形態に基づく自動注射器の部分の概略側断面図である。
図3】アクチュエータが第1の位置にある、図2の自動注射器の部分の拡大概略側面図である。
図4】アクチュエータが第2の位置にある、図2の自動注射器の部分の概略側断面図である。
図5】アクチュエータが第1の位置にある、本発明の第2の実施形態に基づく自動注射器の部分の概略側断面図である。
図6】アクチュエータが第2の位置にある、図5の自動注射器の部分の概略側断面図である。
図7】アクチュエータが第2の位置にある、図5の自動注射器の部分の拡大概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本明細書に記載された薬物送達デバイスは、患者に薬剤を注射するように構成することができる。送達はたとえば、皮下、筋肉内または静脈内送達とすることができる。このようなデバイスは、患者、または看護士もしくは医師などの医療従事者が操作することができ、さまざまなタイプの安全シリンジ、ペン型注射器または自動注射器を含むことができる。このデバイスは、封止されたアンプルを使用前に穿孔する必要があるカートリッジベースのシステムを含むことができる。これらのさまざまなデバイスによって送達される薬剤の体積は、約0.5mlから約2mlの範囲とすることができる。別のデバイスは、「大」容量(通常約2mlから約10ml)の薬剤を送達するためにある時間(たとえば約5、15、30、60または120分)の間、患者の皮膚に粘着するように構成された大容量デバイス(「LVD」)またはパッチポンプ(patch pump)を含むことができる。
【0028】
必要な仕様の範囲内で動作させるために、特定の薬剤との組合せで、本明細書に記載されたデバイスをカスタマイズすることもできる。たとえば、ある時間(たとえば自動注射器では約3から約20秒、LVDでは約10分から約60分)のうちに薬剤を注射するように、デバイスをカスタマイズすることができる。他の仕様は、低レベルもしくは最低レベルの不快感、または人的要因、保管寿命、期限終了、生体適合性、環境的考慮などに関係したある種の条件を含むことができる。このような変更は、たとえば薬物が約3cPから約50cPの範囲の粘度を有することなど、さまざまな要因によって生じることがある。その結果、薬物送達デバイスはしばしば、約25から約31ゲージの範囲のサイズを有する中空針を含む。一般的なサイズは27および29ゲージである。
【0029】
本明細書に記載された送達デバイスはさらに、1つまたはそれ以上の自動化された機能(以後、自動機能)を含むことができる。たとえば、針挿入、薬剤注射および針後退のうちの1つまたはそれ以上を自動化することができる。1つまたはそれ以上の自動工程のためのエネルギーを、1つまたはそれ以上のエネルギー源によって供給することができる。エネルギー源はたとえば、機械、空気圧、化学または電気エネルギーを含むことができる。たとえば、機械エネルギー源は、ばね、てこ、エラストマー、またはエネルギーを蓄積もしくは解放する他の機械的機構を含むことができる。1つまたはそれ以上のエネルギー源を組み合わせて単一のデバイスとすることができる。デバイスはさらに、歯車、弁、またはエネルギーをデバイスの1つもしくはそれ以上の構成要素の運動に変換する他の機構を含むことができる。
【0030】
自動注射器の1つまたはそれ以上の自動機能を各々、起動機構によって起動することができる。そのような起動機構は、ボタン、レバー、ニードルスリーブおよび他の起動構成要素のうちの1つまたはそれ以上を含むことができる。自動機能の起動は、一工程プロセスまたは多工程プロセスとすることができる。すなわち、自動機能を行うために、ユーザは、1つまたはそれ以上の起動構成要素を起動する必要があることがある。たとえば、一工程プロセスでは、薬剤の注射を引き起こすために、ユーザは、体に対してニードルスリーブを押し下げることができる。他のデバイスは、自動機能の多工程起動を必要とすることがある。たとえば、注射を引き起こすために、ユーザは、ボタンを押し下げること、およびニードルシールドを後退させることを実行する必要があることがある。
【0031】
加えて、1つの自動機能の起動が、後続の1つまたはそれ以上の自動機能を起動し、それによって起動シーケンスを形成することができる。たとえば、第1の自動機能の起動が、針挿入、薬剤注射および針後退のうちの少なくとも2つを起動することができる。いくつかのデバイスはさらに、1つまたはそれ以上の自動機能を実行するために、特定の工程シーケンスを必要とすることがある。他のデバイスは、独立した工程のシーケンスによって動作することができる。
【0032】
いくつかの送達デバイスは、安全シリンジ、ペン型注射器または自動注射器の1つまたはそれ以上の機能を含むことができる。たとえば、送達デバイスは、薬剤を自動的に注射するように構成された(自動注射器で通常見られるような)機械エネルギー源、および(ペン型注射器で通常見られるような)用量設定機構を含むことができる。
【0033】
本開示のいくつかの実施形態に従って、例示的な薬物送達デバイス10が図1Aおよび1Bに示されている。上述のデバイス10は、患者の体内に薬剤を注射するように構成されている。デバイス10はハウジング11を含み、ハウジング11は通常、注射される薬剤を含むリザーバ(たとえばシリンジ)と、送達プロセスの1つまたはそれ以上の工程を容易にするのに必要な構成要素とを含む。デバイス10はさらに、ハウジング11に取外し可能に取り付けることができるキャップアセンブリ12を含むことができる。通常、ハウジング11からキャップ12を取り外した後でなければ、ユーザはデバイス10を操作することができない。
【0034】
示されているように、ハウジング11は実質的に円筒形であり、長手方向軸A-Aに沿って実質的に一定の直径を有する。ハウジング11は、遠位領域Dおよび近位領域Pを有する。用語「遠位」は、注射部位に相対的に近い位置を指し、用語「近位」は、注射部位から相対的に遠い位置を指す。
【0035】
デバイス10はさらに、ニードルスリーブ19を含むことができ、ニードルスリーブ19は、ハウジング11に対するスリーブ19の移動を可能にするようにハウジング11に連結されている。たとえば、スリーブ19は、長手方向軸A-Aに平行な長手方向に移動することができる。具体的には、スリーブ19を近位方向へ移動させることによって、ハウジング11の遠位領域Dから針17を延出させることができる。
【0036】
針17の挿入は、いくつかの機構によって実行することができる。たとえば、ハウジング11に対して固定された状態に針17を配置し、最初は、針17を、延出したニードルスリーブ19内に配置する。スリーブ19の遠位端を患者の体にあてがい、ハウジング11を遠位方向に移動させることによりスリーブ19を近位方向に移動させると、針17の遠位端が露出する。このような相対的移動によって、針17の遠位端は、患者の体内に延入することができる。このような挿入は、スリーブ19に対するハウジング11の移動を患者が手動で行うことによって針17が手動で挿入されるため、「手動」挿入と呼ばれる。
【0037】
別の形態の挿入は「自動」挿入であり、これによって針17はハウジング11に対して移動する。このような挿入は、スリーブ19の移動によって、またはたとえばボタン13などの別の起動形態によって行うことができる。図1Aおよび1Bに示されているように、ボタン13はハウジング11の近位端に位置する。しかしながら、他の実施形態では、ハウジング11の側面にボタン13を配置することもできる。
【0038】
他の手動または自動機能は、薬物注射もしくは針後退またはその両方を含むことができる。注射は、針17を通してシリンジ18から薬剤を押し出すために、シリンジ18内の近位位置からシリンジ18内のより遠位方向の位置まで、栓またはピストン14を移動させるプロセスである。いくつかの実施形態では、デバイス10が起動される前まで駆動ばね(図示せず)が圧縮されている。ハウジング11の近位領域Pの内部に駆動ばねの近位端を固定することができ、駆動ばねの遠位端を、ピストン14の近位表面に圧縮力を加えるように構成することができる。起動に続いて、駆動ばねに蓄えられたエネルギーの少なくとも一部を、ピストン14の近位表面に加えることができる。この圧縮力は、ピストン14に作用して、ピストン14を遠位方向に移動させることができる。このような遠位方向への移動は、シリンジ18内の液体薬剤を圧縮して、液体薬剤を針17から押し出すように作用する。
【0039】
注射後、スリーブ19内またはハウジング11内に針17を後退させることができる。後退は、ユーザが患者の体からデバイス10を取り外すときにスリーブ19が遠位方向に移動したときに起こりうる。この後退は、針17が、ハウジング11に対して固定された状態に配置されたままであるときに起こりうる。スリーブ19の遠位端が針17の遠位端を超えて移動し、針17が覆われた後、スリーブ19をロックすることができる。このようなロックは、ハウジング11に対するスリーブ19の近位方向への移動をロックすることを含むことができる。
【0040】
別の形態の針後退は、ハウジング11に対して針17を移動させる場合に起こりうる。このような移動は、ハウジング11内のシリンジ18をハウジング11に対して近位方向に移動させた場合に起こりうる。この近位方向への移動は、遠位領域Dに位置する後退ばね(図示せず)を使用することによって達成することができる。圧縮された後退ばねは、起動されたときに、シリンジ18を近位方向に移動させるのに十分な力をシリンジ18に供給することができる。十分な後退の後、針17とハウジング11の間の相対的移動をロッキング機構によってロックすることができる。加えて、必要に応じて、ボタン13またはデバイス10の他の構成要素をロックすることもできる。
【0041】
次に図2から4を参照すると、本発明の第1の実施形態に基づく注射デバイス20が示されている。注射デバイス20は、図1Aおよび1Bに関して上で説明した自動注射器10と同様の機能を有する自動注射器20の形態をとっており、これらの図では、同様の機能が同じ参照符号を保持している。違いは、上述の自動注射器10のキャップ12が省かれており、その代わりに代替キャップ21が使用されていることである。
【0042】
本発明の第1の実施形態の自動注射器20のキャップ21は、ニードルシールド22および外キャップ23を含む。ニードルシールド22は、外キャップ23の内側に位置し、外キャップ23に固定されている。ニードルシールド22は、不透過性材料の本体24を含み、本体24の近位端に凹部25を有する。
【0043】
凹部25は、本体24によって針17が隠されるようにニードルハブ18Aおよび針17を受け入れるように構成されている。凹部25を封止して凹部25への空気の進入を防ぐため、本体24の内面とニードルハブ18Aの外面は摩擦によって係合している。したがって、キャップ21がハウジング11に取り付けられているとき、針17は滅菌された状態に保たれる。
【0044】
キャップ21はさらに、一対のギヤアセンブリ26、およびアクチュエータ27を含む。各ギヤアセンブリ26は、第1のリニアギヤ28、第2のリニアギヤ29および2重ギヤ30を含む。各ギヤアセンブリ26の第1および第2のリニアギヤ28、29はラックギヤの形態をとる。
【0045】
アクチュエータ27は、第1および第2のアーム31A、31B、ならびに第1のアーム31Aの遠位端と第2のアーム31Bの遠位端との間に延びる連結部材32を含む。アクチュエータ27は概ねU字形である。
【0046】
外キャップ23は、第1および第2の壁23A、23Bを含む。第1の壁と第2の壁23A、23Bは平行であり、それらの壁は、外キャップ23の本体部分と一体に形成されている。第1および第2の壁23A、23Bはそれぞれ、自動注射器20の長手方向軸A-Aに平行な方向に壁23A、23Bを貫いて各々延びる第1および第2のスロット33A、33Bを含む。第1および第2のスロット33A、33Bは、外キャップ23の遠位端から近位端まで延びている。第1および第2のアーム31A、31Bはそれぞれ、第1および第2のスロット33A、33Bに摺動可能に受け入れられている。
【0047】
外キャップ23の第1および第2の壁23A、23Bはそれぞれさらに、第1および第2の切抜き部34A、34Bを含む。第1の切抜き部34Aは、第1の壁23Aの遠位端内へ、第1の壁23Aの近位端に向かって自動注射器20の長手方向軸A-Aの方向に延びている。第1の切抜き部34Aは概ね矩形であり、第1の切抜き部34Aの対向する縁に第1および第2の表面35A、35Bを含む。第1の表面と第2の表面35A、35Bは平行である。第2の切抜き部34Bは、第2の壁23Bの遠位端内へ、長手方向軸A-Aの方向に延びている。第2の切抜き部34Bは概ね矩形であり、第2の切抜き部34Bの対向する縁に第1および第2の表面(図示せず)を含む。第1の表面と第2の表面は平行である。
【0048】
各ギヤアセンブリ26の第1のリニアギヤ28は、第1および第2のアーム31A、31Bのうちのそれぞれのアームの表面の複数の歯28Aの形態をとる。各ギヤアセンブリ26の第2のリニアギヤ29は、第1および第2の切抜き部34A、34Bのうちのそれぞれの切抜き部の第1の表面35Aの複数の歯29Aの形態をとる。
【0049】
各ギヤアセンブリ26の2重ギヤ30は、第1および第2の回転ギヤ36、37を含む。第1の回転ギヤと第2の回転ギヤ36、37は互いに対して固定されており、共通の回転軸を共有している。したがって、第1の回転ギヤ36が所与の角変位だけ回転すると、これに対応して、第2の回転ギヤ37も同じ方向に等しい角変位だけ回転する。第1の回転ギヤと第2の回転ギヤ36、37は一体に形成することができ、または互いに対してたとえば接着剤によって取り付けることができる。一実施形態(図示せず)では、第1および第2の回転ギヤが、1本のシャフトに固定された状態で取り付けられている。
【0050】
各第1の回転ギヤ36は複数の歯36Aを含み、各第2の回転ギヤ37は複数の歯37Aを含む。各ギヤアセンブリ26の第1の回転ギヤ36は、第2の回転ギヤ37の直径よりも大きな直径を有する。
【0051】
この実施形態では、各2重ギヤ30の第1および第2の回転ギヤ36、37が平歯車(spur gear)である。しかしながら、第1および第2の回転ギヤ36、37は、その代わりに、異なる構成、たとえばはす歯(helical teeth)または2重はす歯を含む構成を有することもできることを認識すべきである。
【0052】
一対のギヤアセンブリ26の2重ギヤ30は、ハウジング11の外面に回転可能に連結されている。これらの2重ギヤ30は、互いにハウジング11の反対側に位置する。各2重ギヤ30は、第1の回転ギヤ36の方が第2の回転ギヤ37よりもハウジング11に近い位置にあるように配置されている。
【0053】
各ギヤアセンブリ26は、2重ギヤ30の回転軸の第2のリニアギヤ29がある側とは反対の側に第1のリニアギヤ28が位置するように配置されている。各2重ギヤ30の第1のリニアギヤ28は、第2のリニアギヤ29とは反対の方向を向いている。
【0054】
各ギヤアセンブリ26の第1の回転ギヤ36は、それぞれの第1のリニアギヤ28と係合するように構成されている。より詳細には、各第1のリニアギヤ28の歯28Aが、それぞれの第1の回転ギヤ36の歯36Aとかみ合う。したがって、各第1のリニアギヤ28が、直線的な第1の方向(図3の矢印「X」によって示されている)に近位側へ移動すると、その結果として、対応する2重ギヤ30が第2の方向(図3の矢印「Y」によって示されている)に回転する。
【0055】
キャップ21がハウジング11に取り付けられているとき、各ギヤアセンブリ26の第2の回転ギヤ37は、外キャップ23のそれぞれの切抜き部34A、34B内に位置する。各第2の回転ギヤ37は、それぞれの第2のリニアギヤ29と係合するように構成されている。より詳細には、各第2の回転ギヤ37の歯37Aが、それぞれの第2のリニアギヤ29の歯29Aとかみ合う。したがって、各2重ギヤ30が第2の方向Yに回転すると、その結果として、各第2のリニアギヤ29が、直線的な第3の方向(図3の矢印「Z」によって示されている)に遠位側へ移動する。
【0056】
アクチュエータ27は、外キャップ23に対して、初期の第1の位置(図2および3に示されている)から第2の位置(図4に示されている)まで移動可能である。アクチュエータ27が第1の位置にあるとき、連結部材32は、外キャップ23の遠位端から、自動注射器20の長手方向軸A-Aの方向に離隔している。アクチュエータ27を第2の位置まで移動させると、アクチュエータ27は、連結部材32が外キャップ23の遠位端に向かって移動するように、外キャップ23に対して、第1の方向Xに近位側へ摺動する。アクチュエータ27が第1の方向Xに移動すると、第1および第2のアーム31A、31Bが、それぞれの第1および第2のスロット33A、33B内で摺動し、それによって第1のリニアギヤ28を移動させてそれぞれの2重ギヤ30を第2の方向Yに駆動するようにし、それによって第2のリニアギヤ29を第3の方向Zに付勢する。
【0057】
キャップ21は最初に、(図2に示されているように)ニードルハブ18Aがニードルシールド22の凹部25に完全に受け入れられ、アクチュエータ27が第1の位置にあるようにハウジング11に取り付けられる。したがって、針17は、針17を滅菌された状態に保つため、および針17が患者の外傷の原因となることを防ぐために、ニードルシールド22によって覆われる。
【0058】
薬剤を注射するには最初に、ハウジング11からキャップ21を取り外す。ハウジング11からのキャップ21の取外しは、患者がアクチュエータ27の連結部材32に力をかけて、アクチュエータ27を、外キャップ23に対して第1の方向Xに摺動するように付勢することによって達成される。これによって、各第1の回転ギヤ36は、2重ギヤ30がハウジング11に対して第2の方向Yに回転するように駆動される。2重ギヤ30が第2の方向Yに回転することにより、各2重ギヤ30の第2の回転ギヤ37が、それぞれの第2のリニアギヤ29をハウジング11に対して第3の方向Zに駆動し、それによって外キャップ23およびニードルシールド22を軸方向に付勢してハウジング11から遠ざける。
【0059】
針17は、ハウジング11に対して固定されている。したがって、患者がアクチュエータ27を第1の方向Xに移動させることによりニードルシールド22が付勢されてハウジング11から遠ざかると、ニードルシールド22は軸方向に付勢されて針17から遠ざかる。患者は、アクチュエータ27が第2の位置(図4に示されている)に到達するまで、アクチュエータ27を、第1の位置から遠ざかる方向に移動させ続ける。第2の位置ではもはや、ニードルハブ18Aの大部分が針シールド22の凹部25に受け入れられていない。凹部25からニードルハブ18Aの大部分が取り外された後、ニードルシールド22とニードルハブ18Aとの間の摩擦は、単純に外キャップ23をハウジング11から第3の方向Zに遠位側へ引き離すことによってキャップ21をハウジング11から容易に取り外すことができるようなものに低減している。代替実施形態(図示せず)では、アクチュエータ27が第2の位置まで移動することにより、ニードルシールド22が、ニードルシールド22の凹部25からニードルハブ18Aが完全に取り外されるように、第3の方向Zに移動する。
【0060】
キャップ21が最初にハウジング11に取り付けられたとき、外キャップ23は、ニードルスリーブ19に抗するように付勢されて、ニードルスリーブ19を、バイアス部材(baiasing member)(図示せず)の力に逆らって後退位置に保持する。後退位置では、ニードルスリーブ19の遠位端がハウジング11内に配置されている。アクチュエータ27を第2の位置まで移動させると、外キャップ23は第3の方向Zに遠位側へ移動し、したがってニードルスリーブ19も、バイアス部材の力の下で遠位方向に移動することができる。
【0061】
キャップ21が取り外されると、バイアス部材がニードルスリーブ19を伸長位置まで付勢する。伸長位置では、ニードルスリーブ19がハウジング11の遠位端から延出して、針17を隠す。次いで、ニードルスリーブ19の遠位端を患者の注射部位に押し当てて、ニードルスリーブ19がハウジング11内へ後退し、針17が注射部位に進入するようにする。次いで、投薬ボタン(図示せず)を押して注射部位に薬剤を投薬する。
【0062】
ギヤアセンブリ26は、針17からニードルシールド22を取り外すために患者がかけなければならない力を低減させるように構成される。より詳細には、アクチュエータ27を介して患者が第1のリニアギヤ28に第1の力をかけた結果、第1の力よりも大きな第2の力が第2のリニアギヤ29によってニードルシールド22にかけられるようなギヤ比を有するように、各ギヤアセンブリ26が構成される。その結果、アクチュエータ27をハウジング11に対して第1の方向Xに第1の距離だけ移動させると、その結果として、外キャップ23が、ハウジング11に対して第3の方向Zに、第1の距離よりも小さい第2の距離だけ移動する。この低減されたギヤ比は、各2重ギヤ30の第1の回転ギヤ36の直径を第2の回転ギヤ37の直径よりも大きくすることによって達成することができる。したがって、ギヤアセンブリ26は、ハウジング11からのキャップ21の取外しをより容易にする。これは、患者がアクチュエータ27にかけた力が、針17から遠ざかる方向にニードルシールド22を付勢するようにニードルシールド22に作用するより大きな力に変換されるためである。さらに、ギヤアセンブリ26およびアクチュエータ27のこの配置は、針17からニードルシールド22を分離する円滑で制御された分離を容易にする。
【0063】
加えて、アクチュエータ27は外キャップ23の遠位端に位置し、ニードルシールド22を取り外すためには、アクチュエータ27を近位側の第1の方向Xに移動させるため、患者は、ハウジング11を片手で掴み、アクチュエータ27を水平面、たとえばテーブルの表面に押し当てて、第1のリニアギヤ28を第1の方向Xに駆動することにより、ニードルシールド22を針17から遠ざかる方向に都合よく付勢することができる。
【0064】
2重ギヤ30は、コンパクトなニードルシールド取外し機構を可能にする。たとえば、第1および第2のリニアギヤ28、29ならびに2重ギヤ30の第1および第2の回転ギヤ36、37を全て注射デバイス20の長手方向に位置合わせさせて、長手方向の注射デバイス20のサイズを縮小することができる。さらに、注射デバイス20に回転可能に取り付ける必要があるのは2重ギヤ30だけである。ギヤアセンブリ26の残りの構成要素、すなわち第1および第2のリニアギヤ28、29は、注射デバイス20に対して、たとえばアクチュエータ27およびニードルシールド22に対して固定することができる。このことは、注射デバイス20の複雑さを低減させ、したがって製造および組立てを単純にする。
【0065】
次に図5から7を参照すると、本発明の第2の実施形態に基づく注射デバイス40の部分が示されている。注射デバイス40は、図2から4に関して上で説明した自動注射器20と同様の機能を有する自動注射器40の形態をとっており、これらの図では、同様の機能が同じ参照符号を保持している。
【0066】
違いは、上述の自動注射器20のキャップ21が省かれており、その代わりに、それぞれの切抜き部34A、34Bの第2の表面35Bに形成された第2のリニアギヤ29を有する代替キャップ41が使用されていることである。したがって、各第1のリニアギヤ28とそれぞれの第2のリニアギヤ29は、2重ギヤ30の回転軸の同じ側に位置する。したがって、第1および第2のリニアギヤ28、29は同じ方向を向いている。
【0067】
各ギヤアセンブリ26の第1の回転ギヤ36は、それぞれの第1のリニアギヤ28と係合するように構成されている。より詳細には、各第1のリニアギヤ28の歯28Aが、それぞれの第1の回転ギヤ36の歯36Aとかみ合う。したがって、各第1のリニアギヤ28が、直線的な第1の方向(図7の矢印「X」によって示されている)に遠位側へ移動すると、その結果として、対応する2重ギヤ30が第2の方向(図7の矢印「Y」によって示されている)に回転する。
【0068】
キャップ21がハウジング11に取り付けられているとき、各ギヤアセンブリ26の第2の回転ギヤ37は、外キャップ23のそれぞれの切抜き部34A、34B内に位置する。各第2の回転ギヤ37は、それぞれの第2のリニアギヤ29と係合するように構成されている。より詳細には、各第2の回転ギヤ37の歯37Aが、それぞれの第2のリニアギヤ29の歯29Aとかみ合う。しかしながら、各第2のリニアギヤ29は、それぞれの切抜き部34A、34Bの第2の表面35Bに、各第2のリニアギヤ29とそれぞれの第1のリニアギヤ28とが2重ギヤ30の回転軸の同じ側に位置するように形成されているため、各2重ギヤ30が第2の方向Yに回転すると、各第2のリニアギヤ29は、第1の方向Xに遠位側へ移動する。
【0069】
アクチュエータ27は、外キャップ23に対して、初期の第1の位置(図5に示されている)から第2の位置(図6および7に示されている)まで移動可能である。アクチュエータ27が第1の位置にあるとき、連結部材32は、アクチュエータ27が、連結部材32と外キャップ23との間に位置する空間27Aを含むように、外キャップ23の遠位端から、自動注射器40の長手方向軸A-Aの方向に離隔している。アクチュエータ27を第2の位置まで移動させると、アクチュエータ27は、連結部材32が外キャップ23の遠位端から遠ざかる方向に移動するように、外キャップ23に対して、第1の方向Xに遠位側へ摺動する。したがって、空間27Aのサイズは増大する。アクチュエータ27が第1の方向Xに移動すると、第1および第2のアーム31A、31Bが、それぞれの第1および第2のスロット33A、33B内で摺動し、それによって第1のリニアギヤ28を移動させてそれぞれの2重ギヤ30を第2の方向Yに駆動するようにし、それによって第2のリニアギヤ29を第1の方向Xに付勢する。
【0070】
キャップ41は最初に、(図5に示されているように)ニードルハブ18Aがニードルシールド22の凹部25に完全に受け入れられ、アクチュエータ27が第1の位置にあるようにハウジング11に取り付けられる。ハウジング11からのキャップ41の取外しは、患者が、アクチュエータ27の空間27Aに1本またはそれ以上の手指を挿入し、アクチュエータ27に力をかけて、アクチュエータ27をハウジング11に対して第1の方向Xに遠位側へ引っ張ることによって達成される。これによって、各第1の回転ギヤ36は、2重ギヤ30がハウジング11に対して第2の方向Yに回転するように駆動される。2重ギヤ30が第2の方向Yに回転することにより、各2重ギヤ30の第2の回転ギヤ37が、それぞれの第2のリニアギヤ29を第1の方向Xに駆動し、それによって外キャップ23およびニードルシールド22を軸方向に付勢してハウジング11から遠ざける。
【0071】
針17は、ハウジング11に対して固定されている。したがって、患者がアクチュエータ27を第1の方向Xに移動させることによりニードルシールド22が付勢されてハウジング11から遠ざかると、ニードルシールド22は軸方向に針17から遠ざかる。患者は、アクチュエータ27が第2の位置に到達するまで、アクチュエータ27を、第1の位置から遠ざかる方向に移動させ続ける。第2の位置ではもはや、ニードルハブ18Aの大部分が針シールド22の凹部25に受け入れられていない。ニードルシールド22の凹部25からニードルハブ18Aの大部分が取り外された後、ニードルシールド22とニードルハブ18Aとの間の摩擦は、単純にアクチュエータ27、したがってギヤアセンブリ26によってアクチュエータ27に連結された外キャップ23を第1の方向Xにハウジング11から引き離し続けることによってキャップ41をハウジング11から容易に取り外すことができるようなものに低減している。代替実施形態(図示せず)では、アクチュエータ27が第2の位置まで移動することにより、ニードルシールド22が、ニードルシールド22の凹部25からニードルハブ18Aが完全に取り外されるように、第1の方向Xに移動する。
【0072】
本発明の第1の実施形態と同様に、ギヤアセンブリ26のギヤ比は、針17からニードルシールド22を取り外すために患者がかけなければならない力を低減させる。加えて、アクチュエータ27を第1の位置から第2の位置まで移動させるのに必要なこの引っ張る運動は、針17からニードルシールド22を分離する円滑で制御された分離を可能にする。
【0073】
上述の実施形態では、自動注射器20、40が一対のギヤアセンブリ26を含む。しかしながら、自動注射器20、40は、その代わりに、異なる数のギヤアセンブリ、たとえば3つまたはそれ以上のギヤアセンブリを含むことができることを認識すべきである。一実施形態(図示せず)では、自動注射器が単一のギヤアセンブリを含む。複数のギヤアセンブリを有する実施形態は、アクチュエータ27を第1の位置から第2の位置まで移動させるときに外キャップ23とハウジング11の位置合わせを有利に維持すること、たとえば、外キャップ23のねじれを防ぎ、したがってハウジング11の長手方向軸と外キャップ23の長手方向軸との位置合わせを維持することが分かっている。
【0074】
上述の実施形態では、ギヤアセンブリ26のギヤ比が、針17からニードルシールド22を取り外すために患者がかけなければならない力を低減させるようなギヤ比である。代替実施形態(図示せず)では、ギヤアセンブリのギヤ比が、アクチュエータ27を第1の距離だけ移動させると、その結果として、ニードルシールド22が、第1の距離よりも大きな第2の距離だけ移動するようなギヤ比である。これはたとえば、第1の回転ギヤ36の直径を第2の回転ギヤ37の直径よりも小さくすることによって達成することができる。別の実施形態(図示せず)では、ギヤアセンブリ26のギヤ比が1:1である。このことは、アクチュエータ27を第1の距離だけ移動させると、その結果として、ニードルシールド22が同じ距離だけ移動することを意味する。
【0075】
上述の実施形態では、各2重ギヤ30がハウジング11に回転可能に連結されており、各第2のラックギヤ29が外キャップ23に対して固定されている。たとえば、それぞれの切抜き部34A、34Bの第1または第2の表面35A、35Bに各第2のラックギヤ29が形成されている。しかしながら、代替実施形態(図示せず)では、各2重ギヤ30が外キャップ23に回転可能に連結されており、各第2のリニアギヤ29がハウジング11に対して固定されている。たとえば、各第2のリニアギヤ29は、長手方向軸A-Aの反対側のハウジング11の外面に形成された複数の歯を含むことができる。あるいは、第2のリニアギヤ29は、ハウジング11に固定された状態で取り付けられたラックギヤを含むこともできる。
【0076】
上述の実施形態では、アクチュエータ27が、外キャップ23に摺動可能に取り付けられている。しかしながら、代替実施形態(図示せず)では、その代わりに、アクチュエータ27がハウジング11に摺動可能に取り付けられている。
【0077】
上述の実施形態では、第1のリニアギヤ28がアクチュエータ27と一体に形成されており、第2のリニアギヤ29が外キャップ23と一体に形成されている。代替実施形態(図示せず)では、第1のリニアギヤ28が、固定された状態でアクチュエータ27に取り付けられており、かつ/または第2のリニアギヤ29が、固定された状態で外キャップ23に取り付けられている。たとえば、第1のリニアギヤ28をアクチュエータ27に接着することができ、かつ/または第2のリニアギヤ29を外キャップ23に接着することができる。
【0078】
上述の実施形態では、アクチュエータ27が、外キャップ23の遠位端に位置する。しかしながら、代替実施形態(図示せず)では、アクチュエータ27を、外キャップ23の半径方向に配置することもできる。そのような一実施形態(図示せず)では、アクチュエータ27が、外キャップ23から半径方向に延びるスライダを含む。患者は、このスライダを摺動させて、アクチュエータ27を第1の位置から第2の位置まで移動させることができる。
【0079】
いくつかの実施形態では、第1および第2のリニアギヤならびに2重ギヤが各々、複数の歯を含む。しかしながら、代替実施形態(図示せず)では、それらの歯が省かれ、その代わりに、第1のリニアギヤおよび/または第2のリニアギヤが2重ギヤと摩擦によって係合する。いくつかの実施形態では、第1および第2のリニアギヤならびに/または2重ギヤが、テクスチャが付けられた表面、たとえばリニアギヤと2重ギヤの間の摩擦を増大させる突起、凹部またはスコア線(score line)を有する表面を含む。それに加えて、またはその代わりに、リニアギヤおよび/または2重ギヤの表面を、高い摩擦係数を有する材料、たとえばゴムから製作することもできる。
【0080】
いくつかの実施形態では、第2のリニアギヤと回転ギヤのうちの一方のギヤがハウジングに固定され、もう一方のギヤがキャップに固定される。代替実施形態(図示せず)では、第2のリニアギヤと回転ギヤのうちの一方のギヤが、ハウジング以外の注射デバイスの部分に固定される。たとえば、第2のリニアギヤと回転ギヤのうちの前記一方のギヤをニードルスリーブに固定し、第2のリニアギヤと回転ギヤのうちのもう一方のギヤをキャップに固定することができる。あるいは、第2のリニアギヤと回転ギヤのうちの前記一方のギヤをシリンジに固定し、第2のリニアギヤと回転ギヤのうちのもう一方のギヤをキャップに固定することもできる。
【0081】
いくつかの実施形態では、第1のリニアギヤがアクチュエータに対して固定されている。別の実施形態(図示せず)では、第1のリニアギヤを第1の方向に移動させるために、アクチュエータが、第1のリニアギヤに対して移動するように構成される。一実施形態(図示せず)では、第1のリニアギヤを第1の方向に移動させるために、アクチュエータが、第1のリニアギヤに対して付勢される。一実施形態(図示せず)では、アクチュエータが、中間部材(図示せず)に対して固定されており、第1のリニアギヤを第1の方向に移動させるために、アクチュエータが、第1のリニアギヤに対して中間部材を付勢するように移動可能である。この中間部材はたとえば、第1のリニアギヤに対して付勢されるように摺動または枢動することができる。
【0082】
本明細書で使用する用語「薬物」または「薬剤」は、1つまたはそれ以上の薬学的に活性な化合物を説明するために本明細書において使用される。以下に説明されるように、薬物または薬剤は、1つまたはそれ以上の疾患を処置するための、さまざまなタイプの製剤の少なくとも1つの低分子もしくは高分子、またはその組合せを含むことができる。例示的な薬学的に活性な化合物は、低分子;ポリペプチド、ペプチド、およびタンパク質(たとえばホルモン、成長因子、抗体、抗体フラグメント、および酵素);炭水化物および多糖類;ならびに核酸、二本鎖または一本鎖DNA(裸およびcDNAを含む)、RNA、アンチセンスDNAおよびRNAなどのアンチセンス核酸、低分子干渉RNA(siRNA)、リボザイム、遺伝子、およびオリゴヌクレオチドを含むことができる。核酸は、ベクター、プラスミド、またはリポソームなどの分子送達システムに組み込むことができる。これらの薬物の1つまたはそれ以上の混合物もまた、企図される。
【0083】
用語「薬物送達デバイス」は、薬物をヒトまたは動物の体内に投薬するように構成されたあらゆるタイプのデバイスまたはシステムを包含するものである。限定されることなく、薬物送達デバイスは、注射デバイス(たとえばシリンジ、ペン型注射器、自動注射器、大容量デバイス、ポンプ、かん流システム、または眼内、皮下、筋肉内、もしくは血管内送達にあわせて構成された他のデバイス)、皮膚パッチ(たとえば、浸透圧性、化学的、マイクロニードル)、吸入器(たとえば鼻用または肺用)、埋め込み(たとえば、コーティングされたステント、カプセル)、または胃腸管用の供給システムとすることができる。ここに説明される薬物は、針、たとえば小ゲージ針を含む注射デバイスで特に有用であることができる。
【0084】
薬物または薬剤は、薬物送達デバイスで使用するように適用された主要パッケージまたは「薬物容器」内に含むことができる。薬物容器は、たとえば、カートリッジ、シリンジ、リザーバ、または1つまたはそれ以上の薬学的に活性な化合物の保存(たとえば短期または長期保存)に適したチャンバを提供するように構成された他の容器とすることができる。たとえば、一部の場合、チャンバは、少なくとも1日(たとえば1日から少なくとも30日まで)の間薬物を保存するように設計することができる。一部の場合、チャンバは、約1カ月から約2年の間薬物を保存するように設計することができる。保存は、室温(たとえば約20℃)または冷蔵温度(たとえば約-4℃から約4℃まで)で行うことができる。一部の場合、薬物容器は、薬物製剤の2つまたはそれ以上の成分(たとえば薬物および希釈剤、または2つの異なるタイプの薬物)を別々に、各チャンバに1つずつ保存するように構成された二重チャンバカートリッジとすることができ、またはこれを含むことができる。そのような場合、二重チャンバカートリッジの2つのチャンバは、ヒトまたは動物の体内に投薬する前、および/または投薬中に薬物または薬剤の2つまたはそれ以上の成分間で混合することを可能にするように構成することができる。たとえば、2つのチャンバは、これらが(たとえば2つのチャンバ間の導管によって)互いに流体連通し、所望の場合、投薬の前にユーザによって2つの成分を混合することを可能にするように構成することができる。代替的に、またはこれに加えて、2つのチャンバは、成分がヒトまたは動物の体内に投薬されているときに混合することを可能にするように構成することができる。
【0085】
本明細書において説明される薬物送達デバイスおよび薬物は、数多くの異なるタイプの障害の処置および/または予防に使用することができる。例示的な障害は、たとえば、糖尿病、または糖尿病性網膜症などの糖尿病に伴う合併症、深部静脈血栓塞栓症または肺血栓塞栓症などの血栓塞栓症を含む。さらなる例示的な障害は、急性冠症候群(ACS)、狭心症、心筋梗塞、がん、黄斑変性症、炎症、枯草熱、アテローム性動脈硬化症および/または関節リウマチである。
【0086】
糖尿病または糖尿病に伴う合併症の処置および/または予防のための例示的な薬物は、インスリン、たとえばヒトインスリン、またはヒトインスリン類似体もしくは誘導体、グルカゴン様ペプチド(GLP-1)、GLP-1類似体もしくはGLP-1受容体アゴニスト、またはその類似体もしくは誘導体、ジペプチジルペプチダーゼ-4(DPP4)阻害剤、または薬学的に許容される塩もしくはその溶媒和物、またはそれらの任意の混合物を含む。本明細書において使用される用語「誘導体」は、元の物質と構造的に十分同様のものであり、それによって同様の機能または活性(たとえば治療効果性)を有することができる任意の物質を指す。
【0087】
例示的なインスリン類似体は、Gly(A21),Arg(B31),Arg(B32)ヒトインスリン(インスリングラルギン);Lys(B3),Glu(B29)ヒトインスリン;Lys(B28),Pro(B29)ヒトインスリン;Asp(B28)ヒトインスリン;B28位におけるプロリンがAsp、Lys、Leu、Val、またはAlaで置き換えられており、B29位において、LysがProで置き換えられていてもよいヒトインスリン;Ala(B26)ヒトインスリン;Des(B28-B30)ヒトインスリン;Des(B27)ヒトインスリンおよびDes(B30)ヒトインスリンである。
【0088】
例示的なインスリン誘導体は、たとえば、B29-N-ミリストイル-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-パルミトイル-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-ミリストイルヒトインスリン;B29-N-パルミトイルヒトインスリン;B28-N-ミリストイルLysB28ProB29ヒトインスリン;B28-N-パルミトイル-LysB28ProB29ヒトインスリン;B30-N-ミリストイル-ThrB29LysB30ヒトインスリン;B30-N-パルミトイル-ThrB29LysB30ヒトインスリン;B29-N-(N-パルミトイル-γ-グルタミル)-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-(N-リトコリル-γ-グルタミル)-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-(ω-カルボキシヘプタデカノイル)-des(B30)ヒトインスリン、およびB29-N-(ω-カルボキシヘプタデカノイル)ヒトインスリンである。例示的なGLP-1、GLP-1類似体およびGLP-1受容体アゴニストは、たとえば:リキシセナチド(Lixisenatide)/AVE0010/ZP10/リキスミア(Lyxumia)、エキセナチド(Exenatide)/エクセンディン-4(Exendin-4)/バイエッタ(Byetta)/ビデュリオン(Bydureon)/ITCA650/AC-2993(アメリカドクトカゲの唾液腺によって産生される39アミノ酸ペプチド)、リラグルチド(Liraglutide)/ビクトザ(Victoza)、セマグルチド(Semaglutide)、タスポグルチド(Taspoglutide)、シンクリア(Syncria)/アルビグルチド(Albiglutide)、デュラグルチド(Dulaglutide)、rエクセンディン-4、CJC-1134-PC、PB-1023、TTP-054、ラングレナチド(Langlenatide)/HM-11260C、CM-3、GLP-1エリゲン、ORMD-0901、NN-9924、NN-9926、NN-9927、ノデキセン(Nodexen)、ビアドール(Viador)-GLP-1、CVX-096、ZYOG-1、ZYD-1、GSK-2374697、DA-3091、MAR-701、MAR709、ZP-2929、ZP-3022、TT-401、BHM-034、MOD-6030、CAM-2036、DA-15864、ARI-2651、ARI-2255、エキセナチド(Exenatide)-XTENおよびグルカゴン-Xtenである。
【0089】
例示的なオリゴヌクレオチドは、たとえば:家族性高コレステロール血症の処置のためのコレステロール低下アンチセンス治療薬である、ミポメルセン(mipomersen)/キナムロ(Kynamro)である。
【0090】
例示的なDPP4阻害剤は、ビルダグリプチン(Vildagliptin)、シタグリプチン(Sitagliptin)、デナグリプチン(Denagliptin)、サキサグリプチン(Saxagliptin)、ベルベリン(Berberine)である。
【0091】
例示的なホルモンは、ゴナドトロピン(フォリトロピン、ルトロピン、コリオンゴナドトロピン、メノトロピン)、ソマトロピン(ソマトロピン)、デスモプレシン、テルリプレシン、ゴナドレリン、トリプトレリン、ロイプロレリン、ブセレリン、ナファレリン、およびゴセレリンなどの、脳下垂体ホルモンまたは視床下部ホルモンまたは調節性活性ペプチドおよびそれらのアンタゴニストを含む。
【0092】
例示的な多糖類は、グルコサミノグリカン、ヒアルロン酸、ヘパリン、低分子量ヘパリン、もしくは超低分子量ヘパリン、またはそれらの誘導体、または上述の多糖類の硫酸化形態、たとえば、ポリ硫酸化形態、および/または、薬学的に許容されるそれらの塩を含む。ポリ硫酸化低分子量ヘパリンの薬学的に許容される塩の例としては、エノキサパリンナトリウムがある。ヒアルロン酸誘導体の例としては、HylanG-F20/Synvisc、ヒアルロン酸ナトリウムがある。
【0093】
本明細書において使用する用語「抗体」は、免疫グロブリン分子またはその抗原結合部分を指す。免疫グロブリン分子の抗原結合部分の例は、抗原を結合する能力を保持するF(ab)およびF(ab’)2フラグメントを含む。抗体は、ポリクローナル、モノクローナル、組換え型、キメラ型、非免疫型またはヒト化、完全ヒト型、非ヒト型(たとえばマウス)、または一本鎖抗体とすることができる。いくつかの実施形態では、抗体はエフェクター機能を有し、補体を固定することができる。いくつかの実施形態では、抗体は、Fc受容体と結合する能力が低く、または結合することはできない。たとえば、抗体は、アイソタイプもしくはサブタイプ、抗体フラグメントまたは変異体とすることができ、Fc受容体との結合を支持せず、たとえば、これは、突然変異したまたは欠失したFc受容体結合領域を有する。
【0094】
用語「フラグメント」または「抗体フラグメント」は、全長抗体ポリペプチドを含まないが、抗原と結合することができる全長抗体ポリペプチドの少なくとも一部分を依然として含む、抗体ポリペプチド分子(たとえば、抗体重鎖および/または軽鎖ポリペプチド)由来のポリペプチドを指す。抗体フラグメントは、全長抗体ポリペプチドの切断された部分を含むことができるが、この用語はそのような切断されたフラグメントに限定されない。本発明に有用である抗体フラグメントは、たとえば、Fabフラグメント、F(ab’)2フラグメント、scFv(一本鎖Fv)フラグメント、直鎖抗体、二重特異性、三重特異性、および多重特異性抗体(たとえば、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ)などの単一特異性または多重特異性抗体フラグメント、ミニボディ、キレート組換え抗体、トリボディまたはバイボディ、イントラボディ、ナノボディ、小モジュラー免疫薬(SMIP)、結合ドメイン免疫グロブリン融合タンパク質、ラクダ化抗体、およびVHH含有抗体を含む。抗原結合抗体フラグメントのさらなる例は、当技術分野で知られている。
【0095】
用語「相補性決定領域」または「CDR」は、特異的抗原認識を仲介する役割を主に担う重鎖および軽鎖両方のポリペプチドの可変領域内の短いポリペプチド配列を指す。用語「フレームワーク領域」は、CDR配列ではなく、CDR配列の正しい位置決めを維持して抗原結合を可能にする役割を主に担う重鎖および軽鎖両方のポリペプチドの可変領域内のアミノ酸配列を指す。フレームワーク領域自体は、通常、当技術分野で知られているように、抗原結合に直接的に関与しないが、特定の抗体のフレームワーク領域内の特定の残基が、抗原結合に直接的に関与することができ、またはCDR内の1つまたはそれ以上のアミノ酸が抗原と相互作用する能力に影響を与えることができる。
【0096】
例示的な抗体は、アンチPCSK-9mAb(たとえばアリロクマブ(Alirocumab))、アンチIL-6mAb(たとえばサリルマブ(Sarilumab))、およびアンチIL-4mAb(たとえばデュピルマブ(Dupilumab))である。
【0097】
本明細書において説明される化合物は、(a)化合物または薬学的に許容されるその塩、および(b)薬学的に許容される担体を含む医薬製剤において使用することができる。化合物はまた、1つまたはそれ以上の他の医薬品有効成分を含む医薬製剤、または存在する化合物またはその薬学的に許容される塩が唯一の有効成分である医薬製剤において使用することもできる。したがって、本開示の医薬製剤は、本明細書において説明される化合物および薬学的に許容される担体を混合することによって作られる任意の製剤を包含する。
【0098】
本明細書において説明される任意の薬物の薬学的に許容される塩もまた、薬物送達デバイスにおける使用に企図される。薬学的に許容される塩は、たとえば酸付加塩および塩基性塩である。酸付加塩は、たとえば、HClまたはHBr塩である。塩基性塩は、たとえば、アルカリもしくはアルカリ土類金属、たとえばNa+、もしくはK+、もしくはCa2+、またはアンモニウムイオンN+(R1)(R2)(R3)(R4)(式中、R1からR4は互いに独立して:水素、場合により置換されたC1~C6-アルキル基、場合により置換されたC2~C6-アルケニル基、場合により置換されたC6~C10-アリル基、または場合により置換されたC6~C10-ヘテロアリール基を意味する)から選択されるカチオンを有する塩である。薬学的に許容される塩のさらなる例は、当業者に知られている。
【0099】
薬学的に許容される溶媒和物は、たとえば、水和物またはメタノラート(methanolate)またはエタノラート(ethanolate)などのアルカノラート(alkanolate)である。
【0100】
本明細書に記載された物質、配合、装置、方法、システムおよび実施形態のさまざまな構成要素の変更(付加および/または除去)を、本発明の完全な範囲および趣旨から逸脱することなく実施することができ、本発明の完全な範囲および趣旨は、このような変更およびそれらの全ての均等物を包含することを当業者は理解するであろう。
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7