(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-13
(45)【発行日】2022-02-10
(54)【発明の名称】会合が制御された熱会合性の添加剤組成物、及び該組成物を含有する潤滑性組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 101/06 20060101AFI20220203BHJP
C08L 33/14 20060101ALI20220203BHJP
C08K 5/55 20060101ALI20220203BHJP
C08F 220/12 20060101ALI20220203BHJP
C08F 220/26 20060101ALI20220203BHJP
C08F 212/08 20060101ALI20220203BHJP
C10M 145/04 20060101ALI20220203BHJP
C10M 139/00 20060101ALI20220203BHJP
C10M 145/14 20060101ALI20220203BHJP
C10M 143/00 20060101ALI20220203BHJP
C10M 143/10 20060101ALI20220203BHJP
C10M 169/04 20060101ALI20220203BHJP
【FI】
C08L101/06
C08L33/14
C08K5/55
C08F220/12
C08F220/26
C08F212/08
C10M145/04
C10M139/00 A
C10M145/14
C10M143/00
C10M143/10
C10M169/04
(21)【出願番号】P 2019547788
(86)(22)【出願日】2017-11-21
(86)【国際出願番号】 FR2017053189
(87)【国際公開番号】W WO2018096253
(87)【国際公開日】2018-05-31
【審査請求日】2020-10-09
(32)【優先日】2016-11-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】505036674
【氏名又は名称】トータル・マーケティング・サービシーズ
(73)【特許権者】
【識別番号】506316557
【氏名又は名称】サントル ナショナル ドゥ ラ ルシェルシュ シアンティフィック
(73)【特許権者】
【識別番号】519181674
【氏名又は名称】エコール シュペリウール ドゥ フィジック エ ドゥ シミ アンデュストリエル ドゥ ラ ヴィル ドゥ パリ
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ドリュイノー ティボー
(72)【発明者】
【氏名】ブリアン ファンヌ
(72)【発明者】
【氏名】デクロワ グレゴリー
(72)【発明者】
【氏名】ニコレイ レナウド
【審査官】岡部 佐知子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/113229(WO,A1)
【文献】特表2017-507228(JP,A)
【文献】特公昭47-045161(JP,B1)
【文献】米国特許第03152166(US,A)
【文献】国際公開第2014/098161(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08K 3/00-13/08
C08L 1/00-101/16
C08F 6/00-246/00;301/00
C10M 145/04
C10M 139/00
C10M 145/14
C10M 143/00
C10M 143/10
C10M 169/04
C10N 20/04
C10N 30/06
C10N 40/25
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種のポリジオールランダムコポリマーA1と、
少なくとも2個のボロン酸エステル官能基を有する少なくとも1種の化合物A2と、
式(
XIA):
【化1】
(式中、
G
1
、G
2
、G
3
、G
4
及びG
5
は、同一又は異なってよく、水素原子及び1個~24個の炭素原子を有する炭化水素を基礎とする鎖を表し、
gは、0又は1を表す)に相当する化合物から選択される少なくとも1種の外部性化合物A5と、
を混合することにより得られる組成物
であって、
前記ランダムコポリマーA1のジオール官能基に対する前記外部性化合物A5のモル百分率は、0.025%~5000%の範囲である、組成物。
【請求項2】
前記外部性化合物A5は、式(XI B):
【化2】
に相当する化合物から選択される、請求項
1に記載の組成物。
【請求項3】
前記外部性化合物A5は、式(XI B)に相当し、その式中のgが0であり、G
4がHであり、かつG
5がC
1~C
24アルキルを表す化合物から選択される、請求項
2に記載の組成物。
【請求項4】
前記ランダムコポリマーA1は、
一般式(I):
【化3】
(式中、
R
1は、-H、-CH
3、及び-CH
2-CH
3により構成される群から選択され、
xは、1~18の範囲の整数であり、
yは、0又は1に等しい整数であり、
X
1及びX
2は、同一若しくは異なってよく、水素、テトラヒドロピラニル、メチルオキシメチル、tert-ブチル、ベンジル、トリメチルシリル、及びt-ブチルジメチルシリルにより構成される群から選択されるか、又は、
X
1及びX
2は、酸素原子と共に以下の式:
【化4】
(式中、
アスタリスク(*)は、酸素原子への結合を表し、
R’
2及びR’’
2は、同一又は異なってよく、水素、及びC
1~C
11アルキルにより構成される群から選択される)を有する橋かけを形成するか、又は、
X
1及びX
2は、酸素原子と共に以下の式:
【化5】
(式中、
アスタリスク(*)は、酸素原子への結合を表し、
R’’’
2は、C
6~C
30アリール、C
7~C
30アラルキル、及びC
2~C
30アルキルにより構成される群から選択される)を有するボロン酸エステルを形成する)の少なくとも1種の第1のモノマーM1と、
一般式(II):
【化6】
(式中、
R
2は、-H、-CH
3、及び-CH
2-CH
3により構成される群から選択され、
R
3は、C
6~C
18アリール、基R’
3を有するC
6~C
18アリール、-C(O)-O-R’
3、-O-R’
3、-S-R’
3、及び-C(O)-N(H)-R’
3により構成される群から選択され、ここで、R’
3は、C
1~C
30アルキル基である)の少なくとも1種の第2のモノマーM2と、
の共重合により得られる、請求項1~
3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記ランダムコポリマーA1は、
一般式(I)の少なくとも1種の第1のモノマーM1と、
一般式(II):
【化7】
(式中、
R
2は、-H、-CH
3、及び-CH
2-CH
3により構成される群から選択され、
R
3は、-C(O)-O-R’
3、-O-R’
3、-S-R’
3、及び-C(O)-N(H)-R’
3により構成される群から選択され、ここで、R’
3は、C
1~C
30アルキル基である)の少なくとも1種の第2のモノマーM2と、
一般式(X):
【化8】
(式中、
Z
1、Z
2、及びZ
3は、同一又は異なってよく、水素原子、C
1~C
12アルキル、及び基-OZ’又は基-C(O)-O-Z’から選択される基を表し、ここで、Z’は、C
1~C
12アルキルである)の少なくとも1種の第3のモノマーM3と、
の共重合により得られる、請求項
4に記載の組成物。
【請求項6】
前記第3のモノマーM3は、スチレンである、請求項
5に記載の組成物。
【請求項7】
前記ランダムコポリマーA1は、少なくとも1種のモノマーM1と、異なる基R
3を有する少なくとも2種のモノマーM2及び少なくとも1種のモノマーM3との共重合により得られる、請求項
5又は6に記載の組成物。
【請求項8】
前記ランダムコポリマーA1の2種のモノマーM2は、一般式(II-B):
【化9】
(式中、
R
2は、-H、-CH
3、及び-CH
2-CH
3により構成される群から選択され、
R’’’
3は、C
9~C
30アルキル基である)を有する、請求項
7に記載の組成物。
【請求項9】
前記ランダムコポリマーA1の側鎖は、8個~20個の炭素原子の範囲の平均長さを有する、請求項1~
8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記ランダムコポリマーA1は、2%~50%の範囲の前記コポリマー中の式(X)のモノマーM3のモル百分率を有する、請求項
5~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記ランダムコポリマーA1は、1%~30%の範囲の前記コポリマー中の式(I)のモノマーM1のモル百分率を有する、請求項
4~10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
前記ランダムコポリマーA1は、40~2000の範囲の数平均重合度を有する、請求項1~
11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
前記ランダムコポリマーA1は、1.05~4.0の範囲の多分散性指数(Ip)を有する、請求項1~
12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
化合物A2は、式(III):
【化10】
(式中、
w1及びw2は、同一又は異なってよく、0から1の間で選択される整数であり、
R
4、R
5、R
6、及びR
7は、同一又は異なってよく、水素、及び1個~30個の炭素原子を有する炭化水素を基礎とする基により構成される群から選択され、ヒドロキシル、基-OJ又は基-C(O)-O-Jから選択される1個以上の基で任意に置換され、ここで、Jは1個~24個の炭素原子を有する炭化水素を基礎とする基であり、
Lは、C
6~C
18アリール、C
6~C
18アラルキル、及びC
2~C
24の炭化水素を基礎とする鎖により構成される群から選択される二価の結合基である)の化合物である、請求項1~
13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
化合物A2は、
式(IV):
【化11】
(式中、
tは、0又は1に等しい整数であり、
uは、0又は1に等しい整数であり、
M及びR
8は、C
6~C
18アリール、C
7~C
24アラルキル、及びC
2~C
24アルキルにより構成される群から選択される同一又は異なる二価の結合基であり、
Xは、-O-C(O)-、-C(O)-O-、-C(O)-N(H)-、-N(H)-C(O)-、-S-、-N(H)-、-N(R’
4)-、及び-O-により構成される群から選択される官能基であり、ここで、R’
4は、1個~15個の炭素原子を有する炭化水素を基礎とする鎖であり、
R
9は、-H、-CH
3、及び-CH
2-CH
3により構成される群から選択され、
R
10及びR
11は、同一又は異なってよく、水素、及び1個~30個の炭素原子を有する炭化水素を基礎とする基により構成される群から選択され、ヒドロキシル、基-OJ又は基-C(O)-O-Jから選択される1個以上の基で任意に置換され、ここで、Jは1個~24個の炭素原子を有する炭化水素を基礎とする基である)の少なくとも1種のモノマーM4と、
一般式(V):
【化12】
(式中、
R
12は、-H、-CH
3、及び-CH
2-CH
3により構成される群から選択され、
R
13は、C
6~C
18アリール、基R’
13で置換されたC
6~C
18アリール、-C(O)-O-R’
13、-O-R’
13、-S-R’
13、及び-C(O)-N(H)-R’
13により構成される群から選択され、ここで、R’
13は、C
1~C
30アルキル基である)の少なくとも1種の第2のモノマーM5と、
の共重合により得られるランダムコポリマーである、請求項1~
13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
以下の3つの条件:
式(IV)において、u=1であり、R
9はHであり、かつR
8は、C
6~C
18アリール又はC
7~C
24アラルキルを表し、かつ式(IV)のモノマーM4の二重結合は、該アリール基に直接的に連結されていること、又は、
式(V)において、R
12はHを表し、かつR
13はC
6~C
18アリールと、基R’
13で置換されたC
6~C
18アリールとにより構成される群から選択され、ここで、R’
13は、C
1~C
25アルキル基であり、かつ式(V)のモノマーM5の二重結合は、該アリール基に直接的に連結されていること、又は、
コポリマーA2は、式(X):
【化13】
(式中、
Z
1、Z
2、及びZ
3は、同一又は異なってよく、水素原子、C
1~C
12アルキル、及び基-OZ’又は基-C(O)-O-Z’から選択される基を表し、ここで、Z’は、C
1~C
12アルキルである)の少なくとも1種の第3のモノマーM3を含むこと、
の少なくとも1つが満たされている、請求項
15に記載の組成物。
【請求項17】
式(IV)のモノマーの基R
10、基M、基X、及び基(R
8)
u(ここで、uは0又は1に等しい)の配列により形成される鎖は、8個~38個の範囲の炭素原子の総数を有する、請求項
15又は16に記載の組成物。
【請求項18】
前記コポリマーA2の側鎖は、8個以上の炭素原子の平均長さを有する、請求項
15~17のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項19】
コポリマーA2は、0.25%~20%の範囲の前記コポリマー中の式(IV)のモノマーのモル百分率を有する、請求項
15~18のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項20】
コポリマーA2は、50~1500の範囲の数平均重合度を有する、請求項
15~19のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項21】
コポリマーA2は、1.04~3.54の範囲の多分散性指数(Ip)を有する、請求項
15~20のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項22】
前記ランダムコポリマーA2の式(IV)のモノマーの置換基R
10及び置換基R
11、並びに係数(t)の値は、それぞれ式(XI)の外部性化合物A5の置換基G
4及び置換基G
5、並びに係数(g)の値と同一である、請求項
15~21のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項23】
前記ランダムコポリマーA2の式(IV)のモノマーの置換基R
10若しくは置換基R
11、又は係数(t)の値の少なくとも1つは、それぞれ式(XI)の外部性化合物A5の置換基G
4及び置換基G
5、又は係数(g)の値と異なる、請求項
15~22のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項24】
コポリマーA1と化合物A2との間の質量比(比A1/A2)は、0.005~200の範囲である、請求項1~
23のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項25】
少なくとも1種の潤滑油と、
請求項1~
24のいずれか一項に定義される少なくとも1種の組成物と、の混合により得られる潤滑剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1種のコポリマーを含む少なくとも2種の熱会合性かつ交換可能な化合物と、これらの2種の熱会合性化合物の会合を制御するための少なくとも1種のボロン酸エステル化合物とを混合することにより得られる新規の添加剤組成物に関する。
【0002】
本発明はまた、少なくとも1種の潤滑剤基油と、少なくとも1種のコポリマーを含む少なくとも2種の熱会合性かつ交換可能な化合物と、これらの2種のコポリマーの会合を制御するために少なくとも1種のボロン酸エステル化合物とを混合することにより得られる潤滑剤組成物に関する。
【0003】
本発明はまた、少なくとも1種の潤滑剤基油と、少なくとも1種のコポリマーを含む少なくとも2種の熱会合性かつ交換可能な化合物とを混合することにより得られる潤滑剤組成物の粘度を変更する方法、そしてまた潤滑剤組成物の粘度を変更するためのボロン酸エステルの使用に関する。
【背景技術】
【0004】
高モル質量のポリマーは、多くの分野、例えば石油産業、製紙産業、及び水処理産業、鉱業、化粧品産業、及び織物産業における溶液の粘度の増大のために、そして一般的に増粘される溶液を使用するあらゆる産業技術において広く使用される。
【0005】
しかしながら、これらの高モル質量のポリマーは、より小さいサイズの同様のポリマーと比較して、機械的応力下でかなりの不可逆的な分解を受けるという欠点を有する。高モル質量のポリマーに対するこれらの剪断応力は、高分子鎖に開裂をもたらす。こうして分解されたポリマーは、増粘特性の減少又は喪失を経て、該ポリマーを含有する溶液の粘度が不可逆的に降下する。この剪断強度の損失は、高モル質量のポリマーを基礎とする溶液の特性の低下をもたらす。
【0006】
特許出願である特許文献1、特許文献2、及び特許文献3は、ジオール官能基で官能化された少なくとも1種のモノマーの共重合により得られる少なくとも1種のコポリマーA1と、少なくとも2個のボロン酸エステル官能基を有する少なくとも1種の化合物A2との混合により得られる組成物を開示している。これらの化合物は会合することで、任意にゲルを形成し、そして熱可逆的に化学結合を交換し得る。これらの添加剤は、それらを含む溶液の温度上昇時の粘度を増大させるという利点を有する。これらのポリマー組成物は、使用される化合物A1及び化合物A2の割合に応じて非常に様々なレオロジー特性を有する。また、該ポリマー組成物は、2種のコポリマーの会合をより良く制御することを可能にするジオール化合物を含み得る。
【0007】
特に、これらのポリマー組成物は、機械部品を潤滑させるための潤滑油に添加され得る。これらのコポリマーは、従来技術の潤滑剤組成物と比較して粘度がより良く制御される潤滑剤組成物の配合を可能にする。特に、該コポリマーが基油に導入されると、これらのコポリマーは、該混合物の温度上昇時の粘度降下を減らす傾向を有する。これらの潤滑剤組成物中にジオール化合物が存在することで、それらの粘度のより良好な変更が可能となる。
【0008】
潤滑剤組成物は、可動部の表面間、特に金属表面間に適用される組成物である。潤滑剤組成物は、接触して相互に運動する2つの部品間での摩擦及び摩耗を低減させることを可能にする。また、潤滑剤組成物は、この摩擦により発生する熱エネルギーの一部を散逸させる役割も果たす。潤滑剤組成物は、それらが適用される部品表面間に保護皮膜を形成する。
【0009】
機械部品を潤滑させるために使用される組成物は、一般的に基油及び添加剤から形成される。特に石油由来又は合成由来の基油は、温度が変化するときに粘度の変動を示す。
【0010】
具体的には、基油の温度が増大するときに、その粘度は減少し、基油の温度が低下するときに、その粘度は増大する。ここで、流体力学的な潤滑様式においては、保護皮膜の厚さは、その粘度に比例するため、したがって温度にも依存する。保護皮膜の厚さが、条件及び潤滑剤の使用期間にかかわらず本質的に一定に保たれる場合に、組成物は良好な潤滑剤特性を有する。
【0011】
内燃機関においては、潤滑剤組成物は、外部温度又は内部温度の変化に曝され得る。外部温度の変化は、周囲空気の温度の変動、例えば夏と冬との間での温度の変動によるものである。内部温度の変化は、エンジンの運転により生ずる。エンジンの温度は、その始動段階の間に、特に寒冷気候では、継続使用の間よりも低い。したがって、上記保護皮膜の厚さは、これらの異なる状況では変動し得る。
【0012】
したがって、良好な潤滑剤特性を有すると共にその粘度が温度の変動にわずかしか影響を受けない潤滑剤組成物を提供することが求められている。
【0013】
潤滑剤組成物の粘度を改善する添加剤を添加することは既知の慣行である。これらの添加剤の機能は、潤滑剤組成物のレオロジー挙動を変更することである。それらの添加剤により、潤滑剤組成物が使用される温度範囲にわたって、粘度のより高い安定性を促すことが可能となる。例えば、これらの添加剤は、温度上昇時の潤滑剤組成物の粘度の減少を抑えると同時に低温条件下での粘度の増大を抑える。
【0014】
粘度を増大させるための添加剤(又は粘度指数を増加させるための添加剤)は、低温条件下での粘度への影響を抑えると共に、高温条件下での皮膜の最小厚さを保証することにより良好な潤滑を保証する。現在使用される粘度を増大させる添加剤は、オレフィンコポリマー(OCP)及びポリアルキルメタクリレート(PMA)等のポリマーである。これらのポリマーは、高いモル質量を有する。一般的に、これらのポリマーの粘度制御に対する寄与は、それらの分子量が高くなるのに比例して大きくなる。
【0015】
しかしながら、高モル質量のポリマーは、同じ性質であるが、サイズがより小さいポリマーと比較して永久剪断強度が不十分であるという不利点を有する。
【0016】
ここで、潤滑剤組成物は、摩擦面同士の間隔が非常に小さく、部品にかかる圧力が高い内燃機関において特に、高い剪断応力に曝される。高モル質量のポリマーに対するこれらの剪断応力は、高分子鎖に開裂をもたらす。こうして分解されたポリマーは、増粘特性の減少を経て、粘度が不可逆的に降下する。したがって、永久剪断強度のこの喪失は、潤滑剤組成物の潤滑剤特性の低下をもたらす。
【0017】
特許出願である特許文献1、特許文献2、及び特許文献3に記載される組成物は、それらの熱可逆的な会合を形成する能力の結果として、そしてまたジオール化合物の添加によりそれらの粘度の変更が可能であることの結果として非常に有利な特性を有する。
【0018】
目下、本出願人は、本明細書の残りの部分でA5として示される或る特定の化合物、つまり単一のボロン酸エステル官能基を有するボロン酸エステルも、ジオール官能基で官能化された少なくとも1種のモノマーの共重合により得られるコポリマーA1と、少なくとも2個のボロン酸エステル官能基を有する少なくとも1種の化合物A2との会合を制御する特性を有することを見出した。化合物A5のボロン酸エステル官能基は、少なくとも2個のボロン酸エステル官能基を有する化合物A2のボロン酸エステル官能基と競合状態となる。こうして、温度、並びにA1、A2、及びA5の割合に応じて、ジオール官能基とボロン酸エステル官能基との間に可逆的なエステル交換反応が起こる。これらの反応は、異なる構造の生成物をもたらすが、その混合物中のエステル結合の数は一定である。これらの会合の形成に関する動力学及び温度ウィンドウを変更することが可能であり、したがって所望の使用に応じて潤滑剤組成物のレオロジー挙動を変更することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【文献】国際公開第2015/110642号
【文献】国際公開第2015/110643号
【文献】国際公開第2016/113229号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
本発明の組成物によって、エンジンの始動段階(低温段階)の間に良好な潤滑剤特性を有すると共に、エンジンをその使用温度で運転する場合(高温段階)に良好な潤滑剤特性を有する潤滑剤組成物を提供することが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明は、
少なくとも1種のポリジオールランダムコポリマーA1と、
少なくとも2個のボロン酸エステル官能基を有する少なくとも1種の化合物A2と、
式(XI):
【化1】
(式中、
Qは、1個~30個の炭素原子を有する炭化水素を基礎とする基から選択される基を表し、上記炭化水素を基礎とする基は、ヒドロキシル、基-OJ又は基-C(O)-O-Jから選択される1個以上の基で任意に置換されており、ここで、Jは1個~24個の炭素原子を有する炭化水素を基礎とする基であり、
G
4及びG
5は、同一又は異なってよく、水素原子、1個~24個の炭素原子を有する炭化水素を基礎とする鎖、ヒドロキシル、及び基-OJ又は基-C(O)-O-Jから選択される基を表し、ここで、Jは1個~24個の炭素原子を有する炭化水素を基礎とする基であり、
gは、0又は1を表す)に相当する化合物から選択される少なくとも1種の外部性化合物A5と、
を混合することにより得られる組成物に関する。
【0022】
有利には、外部性化合物A5は、式(XIA):
【化2】
(式中、
G
1、G
2、G
3、G
4及びG
5は、同一又は異なってよく、水素原子、1個~24個の炭素原子を有する炭化水素を基礎とする鎖、ヒドロキシル、及び基-OJ又は基-C(O)-O-Jから選択される基を表し、ここで、Jは1個~24個の炭素原子を有する炭化水素を基礎とする基であり、
gは、0又は1を表す)に相当する。
【0023】
好ましい実施の形態によれば、ランダムコポリマーA1のジオール官能基に対する外部性化合物A5のモル百分率は、0.025%~5000%、好ましくは0.1%~1000%、更により好ましくは0.5%~500%、更により好ましくは1%~150%の範囲である。
【0024】
好ましい実施の形態によれば、外部性化合物A5は、式(XI B):
【化3】
に相当する化合物から選択される。
【0025】
より好ましい実施の形態によれば、外部性化合物A5は、式(XI B)に相当し、その式中のgが0であり、G4がHであり、かつG5がC1~C24アルキルを表す化合物から選択される。
【0026】
好ましい実施の形態によれば、前記ランダムコポリマーA1は、
一般式(I):
【化4】
(式中、
R
1は、-H、-CH
3、及び-CH
2-CH
3により構成される群から選択され、
xは、1~18、好ましくは2~18の範囲の整数であり、
yは、0又は1に等しい整数であり、
X
1及びX
2は、同一若しくは異なってよく、水素、テトラヒドロピラニル、メチルオキシメチル、tert-ブチル、ベンジル、トリメチルシリル、及びt-ブチルジメチルシリルにより構成される群から選択されるか、又は、
X
1及びX
2は、酸素原子と共に以下の式:
【化5】
(式中、
アスタリスク(*)は、酸素原子への結合を表し、
R’
2及びR’’
2は、同一又は異なってよく、水素、及びC
1~C
11アルキル、好ましくはメチルにより構成される群から選択される)を有する橋かけを形成するか、又は、
X
1及びX
2は、酸素原子と共に以下の式:
【化6】
(式中、
アスタリスク(*)は、酸素原子への結合を表し、
R’’’
2は、C
6~C
30アリール、C
7~C
30アラルキル、及びC
2~C
30アルキル、好ましくはC
6~C
18アリールにより構成される群から選択される)を有するボロン酸エステルを形成する)の少なくとも1種の第1のモノマーM1と、
一般式(II):
【化7】
(式中、
R
2は、-H、-CH
3、及び-CH
2-CH
3により構成される群から選択され、
R
3は、C
6~C
18アリール、基R’
3で置換されたC
6~C
18アリール、-C(O)-O-R’
3、-O-R’
3、-S-R’
3、及び-C(O)-N(H)-R’
3により構成される群から選択され、ここで、R’
3は、C
1~C
30アルキル基である)の少なくとも1種の第2のモノマーM2と、
の共重合により直接的に又は間接的に得られる。
【0027】
より好ましい実施の形態によれば、ランダムコポリマーA1は、
一般式(I)の少なくとも1種の第1のモノマーM1と、
一般式(II):
【化8】
(式中、
R
2は、-H、-CH
3、及び-CH
2-CH
3により構成される群から選択され、
R
3は、-C(O)-O-R’
3、-O-R’
3、-S-R’
3、及び-C(O)-N(H)-R’
3により構成される群から選択され、ここで、R’
3は、C
1~C
30アルキル基である)の少なくとも1種の第2のモノマーM2と、
一般式(X):
【化9】
(式中、
Z
1、Z
2、及びZ
3は、同一又は異なってよく、水素原子、C
1~C
12アルキル、及び基-OZ’又は基-C(O)-O-Z’から選択される基を表し、ここで、Z’は、C
1~C
12アルキルである)の少なくとも1種の第3のモノマーM3と、
の共重合により直接的に又は間接的に得られる。
【0028】
より好ましい実施の形態によれば、第3のモノマーM3は、スチレンである。
【0029】
より好ましい実施の形態によれば、ランダムコポリマーA1は、少なくとも1種のモノマーM1と、異なる基R3を有する少なくとも2種のモノマーM2と、少なくとも1種のモノマーM3との共重合により直接的に又は間接的に得られる。
【0030】
第1の好ましい変形形態によれば、ランダムコポリマーA1の2種のモノマーM2は、一般式(II-B):
【化10】
(式中、
R
2は、-H、-CH
3、及び-CH
2-CH
3により構成される群から選択され、
R’’
3は、C
9~C
30アルキル基である)を有する。
【0031】
別の好ましい変形形態によれば、ランダムコポリマーA1のモノマーM2の1つは、一般式(II-A):
【化11】
(式中、
R
2は、-H、-CH
3、及び-CH
2-CH
3により構成される群から選択され、
R’’
3は、C
1~C
8アルキル基である)を有し、
ランダムコポリマーA1の他方のモノマーM2は、一般式(II-B):
【化12】
(式中、
R
2は、-H、-CH
3、及び-CH
2-CH
3により構成される群から選択され、
R’’’
3は、C
9~C
30アルキル基である)を有する。
【0032】
好ましい実施の形態によれば、ランダムコポリマーA1の側鎖は、8個~20個の炭素原子、好ましくは9個~18個の炭素原子の範囲の平均長さを有する。
【0033】
好ましい実施の形態によれば、ランダムコポリマーA1は、2%~50%、好ましくは3%~40%、より好ましくは5%~35%の範囲のコポリマー中の式(X)のモノマーM3のモル百分率を有する。
【0034】
好ましい実施の形態によれば、ランダムコポリマーA1は、1%~30%、好ましくは5%~25%の範囲の上記コポリマー中の式(I)のモノマーM1のモル百分率を有する。
【0035】
好ましい実施の形態によれば、ランダムコポリマーA1は、40~2000、好ましくは40~1000の範囲の数平均重合度を有する。
【0036】
好ましい実施の形態によれば、ランダムコポリマーA1は、1.05~4.0の範囲、好ましくは1.10~3.8の範囲の多分散性指数(Ip)を有する。
【0037】
好ましい実施の形態によれば、化合物A2は、式(III):
【化13】
(式中、
w1及びw2は、同一又は異なってよく、0から1の間で選択される整数であり、
R
4、R
5、R
6、及びR
7は、同一又は異なってよく、水素原子、1個~30個の炭素原子、好ましくは4個~18個の炭素原子、更により選好的には6個~14個の炭素原子を有する炭化水素を基礎とする基であって、ヒドロキシル、基-OJ又は基-C(O)-O-Jから選択される1個以上の基で任意に置換されている炭化水素を基礎とする基から選択される基を表し、ここで、Jは1個~24個の炭素原子を有する炭化水素を基礎とする基であり、
Lは、C
6~C
18アリール、C
7~C
24アラルキル、及びC
2~C
24の炭化水素を基礎とする鎖により構成される群から選択される二価の結合基である)の化合物である。
【0038】
好ましい実施の形態によれば、化合物A2は、
式(IV):
【化14】
(式中、
tは、0又は1に等しい整数であり、
uは、0又は1に等しい整数であり、
M及びR
8は、C
6~C
18アリール、C
7~C
24アラルキル、及びC
2~C
24アルキル、好ましくはC
6~C
18アリールにより構成される群から選択される同一又は異なる二価の結合基であり、
Xは、-O-C(O)-、-C(O)-O-、-C(O)-N(H)-、-N(H)-C(O)-、-S-、-N(H)-、-N(R’
4)-、及び-O-により構成される群から選択される官能基であり、ここで、R’
4は、1個~15個の炭素原子を有する炭化水素を基礎とする鎖であり、
R
9は、-H、-CH
3、及び-CH
2-CH
3により構成される群から選択され、
R
10及びR
11は、同一又は異なってよく、水素原子、1個~30個の炭素原子、好ましくは4個~18個の炭素原子、更により選好的には6個~14個の炭素原子を有する炭化水素を基礎とする基であって、ヒドロキシル、基-OJ又は基-C(O)-O-Jから選択される1個以上の基で任意に置換されている炭化水素を基礎とする基から選択される基を表し、ここで、Jは1個~24個の炭素原子を有する炭化水素を基礎とする基である)の少なくとも1種のモノマーM4と、
一般式(V):
【化15】
(式中、
R
12は、-H、-CH
3、及び-CH
2-CH
3により構成される群から選択され、
R
13は、C
6~C
18アリール、基R’
13で置換されたC
6~C
18アリール、-C(O)-O-R’
13、-O-R’
13、-S-R’
13、及び-C(O)-N(H)-R’
13により構成される群から選択され、ここで、R’
13は、C
1~C
30アルキル基である)の少なくとも1種の第2のモノマーM5と、
の共重合により得られるランダムコポリマーである。
【0039】
好ましい実施の形態によれば、以下の3つの条件:
式(IV)において、u=1であり、R
9はHであり、かつR
8は、C
6~C
18アリール又はC
7~C
24アラルキルを表し、かつ式(IV)のモノマーM4の二重結合は、該アリール基に直接的に連結されていること、又は、
式(V)において、R
12はHを表し、かつR
13はC
6~C
18アリールと、基R’
13で置換されたC
6~C
18アリールとにより構成される群から選択され、ここで、R’
13は、C
1~C
25アルキル基であり、かつ式(V)のモノマーM5の二重結合は、該アリール基に直接的に連結されていること、又は、
コポリマーA2は、式(X):
【化16】
(式中、
Z
1、Z
2、及びZ
3は、同一又は異なってよく、水素原子、C
1~C
12アルキル、及び基-OZ’又は基-C(O)-O-Z’から選択される基を表し、ここで、Z’は、C
1~C
12アルキルである)の少なくとも1種の第3のモノマーM3を含むこと、
の少なくとも1つが満たされている。
【0040】
有利には、A2が式(X)の第3のモノマーM3を含む場合に、このモノマーM3はスチレンである。
【0041】
有利には、ボロン酸エステルランダムコポリマーA2は、該コポリマー中に2mol%~50mol%、選好的には3mol%~40mol%、より好ましくは5mol%~35mol%の範囲の式(IV)、(V)、及び/又は(X)の1種以上のスチレンモノマー、有利にはスチレンのモル百分率を有する。
【0042】
好ましい実施の形態によれば、式(IV)のモノマーの基R10、基M、基X、及び基(R8)u(ここで、uは0又は1に等しい)の配列により形成される鎖は、8個~38個、好ましくは10個~26個の範囲の炭素原子の総数を有する。
【0043】
好ましい実施の形態によれば、コポリマーA2の側鎖は、8個以上の炭素原子、好ましくは11個~16個の炭素原子の平均長さを有する。
【0044】
好ましい実施の形態によれば、コポリマーA2は、0.25%~30%、好ましくは1%~25%の範囲の上記コポリマー中の式(IV)のモノマーのモル百分率を有する。
【0045】
好ましい実施の形態によれば、コポリマーA2は、50~1500、好ましくは50~800の範囲の数平均重合度を有する。
【0046】
好ましい実施の形態によれば、ランダムコポリマーA2は、1.04~3.54の範囲、好ましくは1.10~3.10の範囲の多分散性指数(Ip)を有する。
【0047】
好ましい実施の形態によれば、ランダムコポリマーA2の式(IV)のモノマーの置換基R10及び置換基R11、並びに係数(t)の値は、それぞれ式(XI)の外部性化合物A5の置換基G4及び置換基G5、並びに係数(g)の値と同一である。
【0048】
好ましい実施の形態によれば、ランダムコポリマーA2の式(IV)のモノマーの置換基R10若しくは置換基R11、又は係数(t)の値の少なくとも1つは、それぞれ式(XI)の外部性化合物A5の置換基G4及び置換基G5、又は係数(g)の値と異なる。
【0049】
好ましい実施の形態によれば、前記コポリマーA1の含量は、前記組成物の全重量に対して0.1重量%~50重量%の範囲である。
【0050】
好ましい実施の形態によれば、前記化合物A2の含量は、前記組成物の全重量に対して0.1重量%~50重量%の範囲である。
【0051】
好ましい実施の形態によれば、コポリマーA1と化合物A2との間の質量比(比A1/A2)は、0.005~200、好ましくは0.05~20、更により好ましくは0.1~10の範囲である。
【0052】
好ましい実施の形態によれば、組成物は、1,2-ジオール及び1,3-ジオールから選択される少なくとも1種の外部性化合物A4を更に含む。
【0053】
好ましい実施の形態によれば、上記組成物は、
少なくとも1種の潤滑油と、
上記で定義され、かつ下記で詳説される少なくとも1種の組成物と、
を混合することにより得られる。
【0054】
好ましい実施の形態によれば、上記潤滑油は、API分類のグループI、グループII、グループIII、グループIV、及びグループVの油、並びにそれらの混合物から選択される。
【0055】
好ましい実施の形態によれば、潤滑剤組成物は、酸化防止剤、清浄剤、耐摩耗性添加剤、極圧添加剤、粘度指数向上性ポリマー、流動点改良剤、消泡剤、腐食防止添加剤、増粘剤、分散剤、摩擦調整剤、及びそれらの混合物により構成される群から選択される機能的添加剤と更に混合することにより得られる。
【0056】
本発明はまた、潤滑剤組成物の粘度を変更する方法であって、少なくとも、
上記で定義され、かつ下記で詳説される組成物を準備し、
この組成物を潤滑油と混合することを含む、方法に関する。
【0057】
詳細な説明
本発明による添加剤組成物:
本発明の第1の主題は、「外部性」化合物の存在により会合度が制御される熱可逆的に会合性かつ交換可能な添加剤組成物であって、
少なくとも1種のポリジオールランダムコポリマーA1と、
上記ポリジオールランダムコポリマーA1とエステル交換反応を介して会合し得る、少なくとも2個のボロン酸エステル官能基を有する少なくとも1種の化合物A2、特にランダムコポリマーA2と、
式(XI):
【化17】
(式中、
Qは、1個~30個の炭素原子を有する炭化水素を基礎とする鎖から選択される基を表し、上記炭化水素を基礎とする鎖は、ヒドロキシル、基-OJ又は基-C(O)-O-Jから選択される1個以上の基で任意に置換されており、ここで、Jは1個~24個の炭素原子を有する炭化水素を基礎とする基であり、
G
4及びG
5は、同一又は異なってよく、水素原子、1個~24個の炭素原子を有する炭化水素を基礎とする鎖、ヒドロキシル、及び基-OJ又は基-C(O)-O-Jから選択される基を表し、ここで、Jは1個~24個の炭素原子を有する炭化水素を基礎とする基であり、
gは、0又は1を表す)に相当する化合物から選択される少なくとも1種の外部性化合物A5と、
を混合することにより得られる組成物である。
【0058】
この添加剤組成物は、それが添加される媒体のレオロジー挙動を変更することを可能とする。その媒体は、疎水性媒体、特に非極性媒体、例えば溶剤、鉱油、天然油、又は合成油であり得る。
【0059】
ポリジオールランダムコポリマーA1
ポリジオールランダムコポリマーA1は、ジオール官能基を有する少なくとも1種の第1のモノマーM1と、モノマーM1とは化学構造が異なる少なくとも1種の第2のモノマーM2と、任意にスチレン及びスチレン誘導体から選択される少なくとも1種の第3のモノマーM3との共重合により直接的に又は間接的に得られる。「直接的に又は間接的に得られる」という文言は、上記コポリマーを製造する方法が、共重合以外の1つ以上の工程、例えば脱保護工程を含み得ることを意味する。特に上記共重合には、任意にジオール官能基を脱保護する工程が追従し得る。
【0060】
詳細な説明全体を通して、以下の表現、つまり「ポリジオールランダムコポリマーA1は、共重合により直接的に又は間接的に得られる」、及び「ポリジオールランダムコポリマーA1は、共重合により得られる」は、優劣なく同等に使用される。
【0061】
「コポリマー」という用語は、少なくとも2個の単位が異なる化学構造を有する幾つかの繰返単位(又はモノマー単位)から形成される配列を有する線状又は分岐状のオリゴマー又は高分子を意味する。
【0062】
「モノマー単位」又は「モノマー」という用語は、それ自体又は同じ型のその他の分子との組み合わせによりオリゴマー又は高分子へと変換することが可能な分子を意味する。モノマーとは、その繰返しによりオリゴマー又は高分子がもたらされる最小構成単位を示す。
【0063】
「ランダムコポリマー」という用語は、モノマー単位の配列分布が既知の統計法則に従うオリゴマー又は高分子を意味する。例えば、コポリマーは、その分布がマルコフ分布であるモノマー単位により形成される場合に、ランダムであると称される。概略的なランダムポリマー(P1)は
図1に図示されている。ポリマー鎖中のモノマー単位の分布は、モノマーの重合可能な官能基の反応性とモノマーの相対濃度とに依存する。本発明のポリジオールランダムコポリマーは、ブロックコポリマー及びグラジエントコポリマーとは異なる。「ブロック」という用語は、幾つかの同一又は異なるモノマー単位を含み、その隣接部分と区別することが可能な少なくとも1つの組成的又は配置的な特徴を有するコポリマーの部分を示す。概略的なランダムポリマー(P3)は、
図1に図示されている。グラジエントコポリマーとは、異なる構造の少なくとも2種のモノマー単位のコポリマーであって、そのモノマー組成がポリマー鎖に沿って徐々に変化し、こうして一方のモノマー単位に富んだポリマー鎖の一方の端部から、もう一方のコモノマーに富んだもう一方の端部まで徐々に移り変わるコポリマーを示す。概略的なグラジエントポリマー(P2)は、
図1に図示されている。
【0064】
「共重合」という用語は、異なる化学構造の少なくとも2種のモノマー単位の混合物をオリゴマー又はコポリマーへと変換することが可能な方法を意味する。
【0065】
本特許出願の残りの部分では、「B」はホウ素原子を意味する。
【0066】
「Ci~Cjアルキル」という用語は、i個~j個の炭素原子を有する線状又は分岐状の飽和の炭化水素を基礎とする鎖を意味する。例えば「C1~C10アルキル」という用語は、1個~10個の炭素原子を有する線状又は分岐状の飽和の炭化水素を基礎とする鎖を意味する。
【0067】
「Cx~Cyアリール」という用語は、x個~y個の炭素原子を有する芳香族の炭化水素を基礎とする化合物から誘導される官能基を意味する。この官能基は、単環式又は多環式であり得る。実例としては、C6~C18アリールは、フェニル、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、及びテトラセンであり得る。
【0068】
「Cx~Cxアルケニル」という用語は、少なくとも1個の不飽和、好ましくは炭素-炭素二重結合を含むと共に、x個~y個の炭素原子を有する線状又は分岐状の炭化水素を基礎とする鎖を意味する。
【0069】
「Cx~Cyアラルキル」という用語は、少なくとも1個の線状又は分岐状のアルキル鎖で置換された芳香族の、好ましくは単環式の炭化水素を基礎とする化合物であって、芳香環及びその置換基中の炭素原子の総数がx個~y個の炭素原子の範囲である、化合物を意味する。実例としては、C7~C18アラルキルは、ベンゾイル、トリル、及びキシリルにより構成される群から選択され得る。
【0070】
「基R’3で置換されたCx~Cyアリール」という用語は、x個~y個の炭素原子を有する芳香族の、好ましくは単環式の炭化水素を基礎とする化合物であって、その芳香環の少なくとも1個の炭素原子が基R’3で置換されている、化合物を意味する。
【0071】
「Hal」又は「ハロゲン」という用語は、塩素、臭素、フッ素、及びヨウ素により構成される群から選択されるハロゲン原子を意味する。
【0072】
モノマーM1
本発明のポリジオールランダムコポリマー(A1)の第1のモノマーM1は、
一般式(I):
【化18】
(式中、
R
1は、-H、-CH
3、及び-CH
2-CH
3、好ましくは-H、及び-CH
3により構成される群から選択され、
xは、1~18の範囲、好ましくは2~18の範囲、より好ましくは3~8の範囲の整数であり、更により好ましくは、xは4に等しく、
yは、0又は1に等しい整数であり、好ましくは、yは0に等しく、
X
1及びX
2は、同一又は異なってよく、水素、テトラヒドロピラニル、メチルオキシメチル、tert-ブチル、ベンジル、トリメチルシリル、及びt-ブチルジメチルシリルにより構成される群から選択されるか、又は、
X
1及びX
2は、酸素原子と共に以下の式:
【化19】
(式中、
アスタリスク(*)は、酸素原子への結合を表し、
R’
2及びR’’
2は、同一又は異なってよく、水素、及びC
1~C
11アルキル基により構成される群から選択される)を有する橋かけを形成するか、又は、
X
1及びX
2は、酸素原子と共に以下の式:
【化20】
(式中、
アスタリスク(*)は、酸素原子への結合を表し、
R’’’
2は、C
6~C
30アリール、C
7~C
30アラルキル、及びC
2~C
30アルキル、好ましくはC
6~C
18アリール、より好ましくはフェニルにより構成される群から選択される)を有するボロン酸エステルを形成する)を有する。
【0073】
好ましくは、R’2及びR’’2がC1~C11アルキル基である場合に、上記炭化水素を基礎とする鎖は、線状鎖である。好ましくは、該C1~C11アルキル基は、メチル、エチル、n-プロピル、n-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル、n-ノニル、n-デシル、及びn-ウンデシルにより構成される群から選択される。より好ましくは、該C1~C11アルキル基は、メチルである。
【0074】
好ましくは、R’’’2がC2~C30アルキル基である場合に、上記炭化水素を基礎とする鎖は、線状鎖である。
【0075】
式(I)のモノマーの中でも、式(I-A):
【化21】
(式中、
R
1は、-H、-CH
3、及び-CH
2-CH
3、好ましくは-H、及び-CH
3により構成される群から選択され、
xは、1~18の範囲、好ましくは2~18の範囲、より好ましくは3~8の範囲の整数であり、更により好ましくは、xは4に等しく、
yは、0又は1に等しい整数であり、好ましくは、yは0に等しい)に相当するモノマーが好ましい。
【0076】
式(I)のモノマーの中でも、式(I-B):
【化22】
(式中、
R
1は、-H、-CH
3、及び-CH
2-CH
3、好ましくは-H、及び-CH
3により構成される群から選択され、
xは、1~18の範囲、好ましくは2~18の範囲、より好ましくは3~8の範囲の整数であり、更により好ましくは、xは4に等しく、
yは、0又は1に等しい整数であり、好ましくは、yは0に等しく、
Y
1及びY
2は、同一又は異なってよく、テトラヒドロピラニル、メチルオキシメチル、tert-ブチル、ベンジル、トリメチルシリル、及びt-ブチルジメチルシリルにより構成される群から選択されるか、又は、
Y
1及びY
2は、酸素原子と共に以下の式:
【化23】
(式中、
アスタリスク(*)は、酸素原子への結合を表し、
R’
2及びR’’
2は、同一又は異なってよく、水素、及びC
1~C
11アルキル基により構成される群から選択される)を有する橋かけを形成するか、又は、
Y
1及びY
2は、酸素原子と共に以下の式:
【化24】
(式中、
アスタリスク(*)は、酸素原子への結合を表し、
R’’’
2は、C
6~C
18アリール、C
7~C
18アラルキル、及びC
2~C
30アルキル、好ましくはC
6~C
18アリール、より好ましくはフェニルにより構成される群から選択される)を有するボロン酸エステルを形成する)に相当するモノマーが好ましい。
【0077】
好ましくは、R’2及びR’’2がC1~C11アルキル基である場合に、上記炭化水素を基礎とする鎖は、線状鎖である。好ましくは、該C1~C11アルキル基は、メチル、エチル、n-プロピル、n-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル、n-ノニル、n-デシル、及びn-ウンデシルにより構成される群から選択される。より好ましくは、該C1~C11アルキル基は、メチルである。
【0078】
好ましくは、R’’’2がC2~C30アルキル基である場合に、上記炭化水素を基礎とする鎖は、線状鎖である。
【0079】
ポリジオールランダムコポリマー(A1)の合成は、保護された形のモノマー(I-B)とその他のコモノマーとの共重合に続いて、該モノマー(I-B)のジオール官能基の脱保護を含み得る。
【0080】
モノマーM1の作製
一般式(I-A)のモノマーM1は、以下の反応スキーム1:
【化25】
(上記スキーム中、R
1、Y
1、Y
2、x、及びyは、上記の一般式(I-B)に定義される通りである)による一般式(I-B)のモノマーのアルコール官能基の脱保護により得られる。
【0081】
一般式(I-B)のモノマーのジオール官能基の脱保護のための反応は、当業者によく知られている。上記当業者は、保護基Y1及びY2の性質に応じて脱保護反応条件をどのように適合させるかを認識している。
【0082】
一般式(I-B)のモノマーM1は、以下の反応スキーム2:
【化26】
(上記スキーム中、Y
3は、ハロゲン原子、好ましくは塩素、-OH、及びO-C(O)-R’
1により構成される群から選択され、ここで、R’
1は、-H、-CH
3、及び-CH
2-CH
3、好ましくは-H、及び-CH
3により構成される群から選択され、
R
1、Y
1、Y
2、x、及びyは、一般式(I-B)において示されるのと同じ意味を有する)による一般式(I-c)の化合物と一般式(I-b)のアルコール化合物との反応により得ることができる。
【0083】
これらのカップリング反応は、当業者に知られている。
【0084】
一般式(I-c)の化合物は、供給業者のSigma-Aldrich(商標)社、及びAlfa Aesar(商標)社から市販されている。
【0085】
一般式(I-b)のアルコール化合物は、式(I-a)の対応するポリオールから、以下の反応スキーム3:
【化27】
(上記スキーム中、x、y、Y
1、及びY
2は、一般式(I-B)に定義される通りである)によるジオール官能基の保護により得られる。
【0086】
一般式(I-a)の化合物のジオール官能基の保護のための反応は、当業者によく知られている。上記当業者は、使用する保護基Y1及びY2の性質に応じて保護反応条件をどのように適合させるかを認識している。
【0087】
一般式(I-a)のポリオールは、供給業者のSigma-Aldrich(商標)社、及びAlfa Aesar(商標)社から市販されている。
【0088】
モノマーM1の合成の例は、特許出願である特許文献1、特許文献2、及び特許文献3の実験セクションで説明されている。
【0089】
モノマーM2
本発明のコポリマーの第2のモノマーは、一般式(II):
【化28】
(式中、
R
2は、-H、-CH
3、及び-CH
2-CH
3、好ましくは-H、及び-CH
3により構成される群から選択され、
R
3は、C
6~C
18アリール基、基R’
3で置換されたC
6~C
18アリール、-C(O)-O-R’
3、-O-R’
3、-S-R’
3、及び-C(O)-N(H)-R’
3により構成される群から選択され、ここで、R’
3は、C
1~C
30アルキル基である)を有する。
【0090】
好ましくは、R’3がC1~C30アルキル基である場合に、その炭化水素を基礎とする鎖は、線状である。
【0091】
式(II)のモノマーの中でも、式(II-A):
【化29】
(式中、
R
2は、-H、-CH
3、及び-CH
2-CH
3、好ましくは-H、及び-CH
3により構成される群から選択され、
R’’
3は、C
1~C
8アルキル基である)に相当するモノマーが好ましい。
【0092】
「C1~C8アルキル基」という用語は、1個~8個の炭素原子を有する線状又は分岐状の飽和の炭化水素を基礎とする鎖を意味する。好ましくは、その炭化水素を基礎とする鎖は、線状である。
【0093】
式(II)のモノマーの中で、式(II-B):
【化30】
(式中、
R
2は、-H、-CH
3、及び-CH
2-CH
3、好ましくは-H、及び-CH
3により構成される群から選択され、
R’’’
3は、C
9~C
30アルキル基である)に相当するモノマーも好ましい。
【0094】
「C9~C30アルキル基」という用語は、9個~30個の炭素原子を有する線状又は分岐状の飽和の炭化水素を基礎とする鎖を意味する。好ましくは、その炭化水素を基礎とする鎖は、線状である。
【0095】
モノマーM2の作製
式(II)、式(II-A)、及び式(II-B)のモノマーは、当業者によく知られている。それらのモノマーは、Sigma-Aldrich(商標)社、及びTCI(商標)社により販売されている。
【0096】
モノマーM3
任意の本発明のランダムコポリマーの第3のモノマーは、一般式(X):
【化31】
(式中、
Z
1、Z
2、及びZ
3は、同一又は異なってよく、水素原子、C
1~C
12アルキル、及び基-OZ’又は基-C(O)-O-Z’から選択される基を表し、ここで、Z’は、C
1~C
12アルキルである)を有する。
【0097】
「C1~C12アルキル基」という用語は、1個~12個の炭素原子を有する線状又は分岐状の飽和の炭化水素を基礎とする鎖を意味する。好ましくは、その炭化水素を基礎とする鎖は、線状である。好ましくは、その炭化水素を基礎とする鎖は、1個~6個の炭素原子を有する。
【0098】
有利には、Z1、Z2、及びZ3は、同一又は異なってよく、水素原子、C1~C6アルキル、及び基-OZ’又は基-C(O)-O-Z’から選択される基を表し、ここで、Z’は、C1~C6アルキルである。
【0099】
より好ましくは、Z1、Z2、及びZ3は、同一又は異なってよく、水素原子、C1~C4アルキル、及び基-OZ’又は基-C(O)-O-Z’から選択される基を表し、ここで、Z’は、C1~C4アルキルである。
【0100】
好ましいモノマーM3の中でも、スチレン、パラ-tert-ブチルスチレン、パラ-メトキシスチレン、パラ-アセトキシスチレン、及び2,4,6-トリメチルスチレンを挙げることができる。
【0101】
好ましい実施の形態によれば、M3はスチレンである。
【0102】
モノマーM3の作製
スチレン、パラ-tert-ブチルスチレン、パラ-メトキシスチレン、パラ-アセトキシスチレン、及び2,4,6-トリメチルスチレン等の式(X)の或る特定のモノマーは、当業者によく知られている。それらのモノマーは、特にSigma-Aldrich(商標)社により販売されている。その他のモノマーは、これらの市販のモノマーから、当業者によく知られる合成方法により製造され得る。
【0103】
好ましいポリジオールコポリマー
1つの実施の形態においては、好ましいランダムコポリマーは、
上記の一般式(I)、特に上記の一般式(I-A)の少なくとも1種の第1のモノマーM1と、
式中のR2が-CH3であり、かつR3が基-C(O)-O-R’3であり、ここで、-R’3はC1~C30アルキルである上記の式(II)の少なくとも1種の第2のモノマーM2と、
任意に上記の一般式(X)の少なくとも1種の第3のモノマーM3、特にスチレンと、
の共重合により得られる。
【0104】
もう1つの実施の形態においては、好ましいランダムコポリマーは、
上記の一般式(I)、特に上記の一般式(I-A)の少なくとも1種の第1のモノマーM1と、
上記の式(II-B)の少なくとも1種の第2のモノマーM2と、
上記式(II-B)の第1のモノマーとは異なる、上記の式(II-B)の少なくとも1種の第3のモノマーM2と、
上記の一般式(X)の少なくとも1種の第4のモノマーM3、特にスチレンと、
の共重合により得られる。
【0105】
この他の実施の形態によれば、好ましいランダムコポリマーは、
上記の一般式(I)、特に上記の一般式(I-A)の少なくとも1種の第1のモノマーM1と、
式中のR2が-CH3であり、かつR’’’3がC9~C30アルキル基、好ましくは線状C9~C30アルキル、なおもより良好には線状C9~C15アルキルである、式(II-B)の少なくとも1種の第2のモノマーM2と、
式中のR2が-CH3であり、かつR’’’3がC9~C30アルキル基、好ましくは線状C9~C30アルキル、なおもより良好には線状C16~C24アルキルである、上記式(II-B)の第2のモノマーとは異なる、式(II-B)の少なくとも1種の第3のモノマーM2と、
上記の一般式(X)の少なくとも1種の第4のモノマーM3、特にスチレンと、
の共重合により得られる。
【0106】
この実施の形態によれば、好ましいランダムコポリマーは、
上記の一般式(I)、特に上記の一般式(I-A)の少なくとも1種の第1のモノマーM1と、
n-デシルメタクリレート、及びn-ドデシルメタクリレートにより構成される群から選択される少なくとも1種の第2のモノマーM2と、
パルミチルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、アラキジルメタクリレート、及びベヘニルメタクリレートにより構成される群から選択される少なくとも1種の第3のモノマーM2と、
任意に、上記の一般式(X)の少なくとも1種の第4のモノマーM3、特にスチレンと、
の共重合により得られる。
【0107】
もう1つの実施の形態においては、好ましいランダムコポリマーは、
上記の一般式(I)、特に上記の一般式(I-A)の少なくとも1種の第1のモノマーM1と、
上記の式(II-A)の少なくとも1種の第2のモノマーM2と、
上記の式(II-B)の少なくとも1種の第3のモノマーM2と、
任意に上記の一般式(X)の少なくとも1種の第4のモノマーM3、特にスチレンと、
の共重合により得られる。
【0108】
この他の実施の形態によれば、好ましいランダムコポリマーは、
上記の一般式(I)、特に上記の一般式(I-A)の少なくとも1種の第1のモノマーM1と、
式中のR2が-CH3であり、かつR’’3がC1~C8アルキル基、好ましくは線状C1~C8アルキルである、式(II-A)の少なくとも1種の第2のモノマーM2と、
式中のR2が-CH3であり、かつR’’’3がC9~C30アルキル基、好ましくは線状C9~C30アルキルである、式(II-B)の少なくとも1種の第3のモノマーM2と、
任意に上記の一般式(X)の少なくとも1種の第4のモノマーM3、特にスチレンと、
の共重合により得られる。
【0109】
この実施の形態によれば、好ましいランダムコポリマーは、
上記の一般式(I)、特に上記の一般式(I-A)の少なくとも1種の第1のモノマーM1と、
n-オクチルメタクリレートである少なくとも1種の第2のモノマーM2と、
パルミチルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、アラキジルメタクリレート、及びベヘニルメタクリレートにより構成される群から選択される少なくとも1種の第3のモノマーM2と、
任意に、上記の一般式(X)の少なくとも1種の第4のモノマーM3、特にスチレンと、
の共重合により得られる。
【0110】
ポリジオールコポリマーを得る方法
当業者は、その一般的な知識に基づいてポリジオールランダムコポリマーA1を合成することが可能である。
【0111】
上記共重合は、塊状で又は有機溶剤中の溶液においてフリーラジカル生成化合物を用いて開始させることができる。例えば、本発明のコポリマーは、既知のラジカル共重合、特に精密ラジカル重合(controlled radical copolymerization)の方法、例えば可逆的付加開裂連鎖移動(RAFT)型の精密ラジカル重合として知られる方法、及び原子移動ラジカル重合(ATRP)として知られる方法により得られる。従来のラジカル重合及びテロマー化を、本発明のポリマーの製造のために使用することもできる(Moad, G.; Solomon, D.H., The Chemistry of Radical Polymerization. 2nd ed.; Elsevier Ltd: 2006; page 639、Matyaszewski, K.; Davis, T.P. Handbook of Radical Polymerization; Wiley-Interscience: Hoboken, 2002; page 936)。
【0112】
好ましい実施の形態によれば、上記共重合は、従来のラジカル重合により、RAFT連鎖移動剤を用いずに行われる。
【0113】
ポリジオールランダムコポリマーA1は、
i)上記の一般式(I)の少なくとも1種の第1のモノマーM1と、
ii)上記の式(II)の少なくとも1種の第2のモノマーM2と、
iii)任意に上記の一般式(X)の少なくとも1種の第3のモノマーM3と、
iv)少なくとも1種のフリーラジカル源と、
を接触させる少なくとも1つの重合工程(a)を含む製造方法により製造される。
【0114】
1つの実施の形態においては、上記方法は、v)少なくとも1種の連鎖移動剤も含み得る。
【0115】
「フリーラジカル源」という用語は、その外殻に1個以上の不対電子を有する化学種を生成するための化学的化合物を意味する。当業者は、重合法、特に精密ラジカル重合法に適合された、それ自体既知のあらゆるフリーラジカル源を使用することができる。中でも、好ましいフリーラジカル源は、実例としては、ベンゾイルペルオキシド、tert-ブチルペルオキシド、ジアゾ化合物、例えばアゾビスイソブチロニトリル、過酸化化合物、例えば過硫酸塩又は過酸化水素、レドックス系、例えばFe2+の酸化、過硫酸塩/メタ重亜硫酸ナトリウムの混合物、又はアスコルビン酸/過酸化水素、或いは光化学的に若しくは電離放射線、例えば紫外線により、又はベータ線若しくはガンマ線により開裂され得る化合物である。
【0116】
「連鎖移動剤」という用語は、生長種、すなわち炭素を基礎とする基を末端に有するポリマー鎖とドーマント種、すなわち移動剤を末端に有するポリマー鎖との間の可逆的移動反応による高分子鎖の均一な生長を保証することを目的とする化合物を意味する。この可逆的移動過程により、こうして製造されるコポリマーの分子質量を制御することが可能となる。好ましくは本発明の方法において、連鎖移動剤は、チオカルボニルチオ基-S-C(=S)-を有する。連鎖移動剤の実例としては、ジチオエステル、トリチオカーボネート、キサンテート、及びジチオカルバメートを挙げることができる。好ましい移動剤は、クミルジチオベンゾエート、又は2-シアノ-2-プロピルベンゾジチオエートである。
【0117】
また「連鎖移動剤」という用語は、モノマー分子の添加により化成される高分子鎖の生長を抑えて新たな鎖を開始させることにより、最終分子質量を限定することはもちろん、最終分子質量を制御することさえも可能にすることを目的とする化合物を意味する。そのような種類の移動剤は、テロマー化において使用される。好ましい移動剤は、システアミンである。
【0118】
1つの実施の形態においては、ポリジオールランダムコポリマーを製造する方法は、
X1及びX2が水素を表すモノマーM1及びM2が選択される上記定義の少なくとも1つの重合工程(a)を含む。
【0119】
1つの実施の形態においては、重合工程(a)は、少なくとも1種のモノマーM1と、異なる基R3を有する少なくとも2種のモノマーM2と、任意に少なくとも1種のモノマーM3、好ましくはスチレンとを接触させることを含む。
【0120】
1つの実施の形態(ラジカル重合がRAFT連鎖移動剤を用いて行われた場合)によれば、ジオール官能基を有するポリマーの直接的な合成後に、上記方法は、アミノ分解によりRAFT鎖端を除去することに続いてマイケル付加を行う工程を含む。
【0121】
一般式(I)、一般式(I-A)、一般式(I-B)、一般式(II-A)、一般式(II-B)、及び一般式(X)について記載された好ましい事項及び定義は、上記の方法にも当てはまる。
【0122】
ポリジオールコポリマーA1の特性
ポリジオールランダムコポリマーA1は、線状コポリマーである。その一方で、或る特定のモノマーは、櫛形コポリマーに利用することができる。
【0123】
「櫛形コポリマー」という用語は、主鎖(骨格とも呼ばれる)と側鎖とを有するコポリマーを意味する。側鎖は、主鎖のどちらかの側に垂れ下がっている。それぞれの側鎖の長さは、主鎖の長さより短い。
図2は、櫛形ポリマーを概略的に表している。
【0124】
コポリマーA1は、重合可能な官能基の骨格、特にメタクリレート官能基及び任意にスチレン官能基の骨格と、ジオール官能基で任意に置換された炭化水素を基礎とする側鎖の混合物とを有する。
【0125】
式(I)、式(II)、及び任意に式(X)のモノマーは、同一又は本質的に同一な反応性の重合可能な官能基を有するので、スチレンモノマーと比較して、かつアルキル鎖がジオール官能基で置換されていないモノマーと比較して、ジオール官能基を有するモノマーがコポリマー骨格に沿ってランダムに分布しているコポリマーが得られる。
【0126】
ポリジオールランダムコポリマーA1は、外部刺激、例えば温度、圧力、及び剪断速度に感受性があるという利点を有する。この感受性は、特性の変化により反映される。刺激に呼応して、コポリマー鎖の空間において立体配座が変化し、ジオール官能基は、多かれ少なかれ架橋を生成し得る会合反応にも、交換反応にも利用されやすくなる。これらの会合及び交換の過程は、可逆的である。ランダムコポリマーA1は、熱感受性コポリマーであり、すなわち温度変化に感受性がある。
【0127】
有利には、ポリジオールランダムコポリマーA1の側鎖は、8個~20個の炭素原子、好ましくは9個~18個の炭素原子の範囲の平均長さを有する。「側鎖の平均長さ」という用語は、上記コポリマーの組成に含まれる式(I)のモノマーM1及び式(II)のモノマーM2の側鎖の平均長さを意味する。任意の1個以上のスチレンモノマーから誘導された側鎖は、側鎖の平均長さの計算において考慮されない。当業者は、この平均長さを、上記ポリジオールランダムコポリマーを構成するモノマーの種類及び比率を適切に選択することによりどのように得るかを認識している。この平均鎖長の選択により、該コポリマーが溶解される温度にかかわらず疎水性媒体中に可溶性のポリマーを得ることが可能となる。ポリジオールランダムコポリマーA1は、こうして疎水性媒体中に混和性である。「疎水性媒体」という用語は、水に対して親和性を有しない媒体、又は水に対して非常に小さな親和性を有する媒体を意味し、すなわち該媒体は、水又は水性媒体と非混和性である。
【0128】
有利には、ポリジオールランダムコポリマーA1は、1%~30%、好ましくは5%~25%の範囲の上記コポリマー中の式(I)のモノマーM1のモル百分率を有する。
【0129】
有利な実施の形態によれば、ポリジオールランダムコポリマーA1は、3%~40%、より好ましくは5%~35%の範囲の上記コポリマー中の式(X)のモノマーM3、有利にはスチレンのモル百分率を有する。
【0130】
好ましい実施の形態においては、ポリジオールランダムコポリマーA1は、1%~30%、好ましくは5%~25%の範囲の上記コポリマー中の式(I)のモノマーM1のモル百分率、0.1%~95%、好ましくは5%~80%の範囲の上記コポリマー中の式(II-B)の1種以上のモノマーM2のモル百分率、及び3%~40%、より好ましくは5%~35%の範囲の上記コポリマー中の式(X)のモノマーM3、有利にはスチレンのモル百分率を有する。
【0131】
もう1つの好ましい実施の形態においては、ポリジオールランダムコポリマーA1は、1%~30%、好ましくは5%~25%の範囲の上記コポリマー中の式(I)のモノマーM1のモル百分率、8%~92%の範囲の上記コポリマー中の式(II-A)のモノマーM2のモル百分率、0.1%~62%の範囲の上記コポリマー中の式(II-B)のモノマーM2のモル百分率、及び任意に3%~40%、より好ましくは5%~35%の範囲の上記コポリマー中の式(X)のモノマーM3、有利にはスチレンのモル百分率を有する。上記コポリマー中のモノマーのモル百分率は、該コポリマーの合成のために使用されるモノマーの量の調節により直接的に得られる。
【0132】
有利には、ポリジオールランダムコポリマーA1は、40~2000、好ましくは40~1000の範囲の数平均重合度を有する。既知のように、該重合度は、精密ラジカル重合技術、テロマー化技術を使用して、又は従来のラジカル重合により本発明のコポリマーを製造するときにフリーラジカル源の量を調節することにより制御される。
【0133】
有利には、ポリジオールランダムコポリマーA1は、1.05~4.0の範囲、好ましくは1.10~3.8の範囲の多分散性指数(Ip)を有する。多分散性指数は、ポリ(メチルメタクリレート)較正を使用するサイズ排除クロマトグラフィー測定により得られる。
【0134】
有利には、ポリジオールランダムコポリマーA1は、5000g/mol~400000g/mol、好ましくは10000g/molから200000g/molの範囲の数平均モル質量を有し、その際、数平均モル質量は、ポリ(メチルメタクリレート)較正を使用するサイズ排除クロマトグラフィー測定により得られる。
【0135】
ポリ(メチルメタクリレート)較正を使用するサイズ排除クロマトグラフィー測定法は、文献(Fontanille, M.; Gnanou, Y., Chimie et physico-chimie des polymeres [Chemistry and physical chemistry of polymers] 2nd ed.; Dunod: 2010; page 546)に記載されている。
【0136】
化合物A2
ボロン酸ジエステル化合物A2
1つの実施の形態においては、2個のボロン酸エステル官能基を有する化合物A2は、一般式(III):
【化32】
(式中、
w1及びw2は、同一又は異なってよく、0又は1に等しい整数であり、
R
4、R
5、R
6、及びR
7は、同一又は異なってよく、水素、及び1個~30個の炭素原子、好ましくは4個から18個の間の炭素原子、更により選好的には6個から14個の間の炭素原子を有する炭化水素を基礎とする基により構成される群から選択され、上記炭化水素を基礎とする基は、ヒドロキシル、及び基-OJ又は基-C(O)-O-Jから選択される1個以上の基で任意に置換されており、ここで、Jは1個~24個の炭素原子を有する炭化水素を基礎とする基であり、
Lは、C
6~C
18アリール、C
7~C
24アラルキル、及びC
2~C
24の炭化水素を基礎とする鎖、好ましくはC
6~C
18アリールにより構成される群から選択される二価の結合基である)を有する。
【0137】
「1個~30個の炭素原子を有する炭化水素を基礎とする基」という用語は、1個~30個の炭素原子を有する線状、分岐状、若しくは環状のアルキル基、2個~30個の炭素原子を有する線状、分岐状、若しくは環状のアルケニル基、6個~30個の炭素原子を有するアリール基、又は7個~30個の炭素原子を有するアラルキル基を意味する。
【0138】
「1個~24個の炭素原子を有する炭化水素を基礎とする基」という用語は、1個~24個の炭素原子を有する線状若しくは分岐状のアルキル基、又は2個~24個の炭素原子を有する線状若しくは分岐状のアルケニル基、6個~24個の炭素原子を有するアリール基、又は7個~24個の炭素原子を有するアラルキル基を意味する。好ましくは、Jは、4個~18個の炭素原子、好ましくは6個から12個の間の炭素原子を有する。
【0139】
「C2~C24の炭化水素を基礎とする鎖」という用語は、2個~24個の炭素原子を有する線状又は分岐状のアルキル基又はアルケニル基を意味する。好ましくは、その炭化水素を基礎とする鎖は、線状のアルキル基である。好ましくは、その炭化水素を基礎とする鎖は、6個~16個の炭素原子を含む。
【0140】
本発明の1つの実施の形態においては、化合物A2は、上記一般式(III)で示され、その式中、
w1及びw2は、同一又は異なってよく、0又は1に等しい整数であり、
R4及びR6は、同一であり、水素原子であり、
R5及びR7は、同一であり、1個~24個の炭素原子、好ましくは4個~18個の炭素原子、好ましくは6個~16個の炭素原子を有する炭化水素を基礎とする基、好ましくは線状のアルキルであり、
Lは、二価の結合基であり、C6~C18アリール、好ましくはフェニルである、化合物である。
【0141】
上記の式(III)のボロン酸ジエステル化合物A2は、以下の反応スキーム4:
【化33】
(上記スキーム中、w1、w2、L、R
4、R
5、R
6、及びR
7は、上記定義の通りである)による一般式(III-a)のボロン酸と一般式(III-b)及び一般式(III-c)の化合物のジオール官能基との間の縮合反応により得られる。
【0142】
具体的には、化合物(III-a)のボロン酸官能基と式(III-b)及び式(III-c)の化合物のジオール官能基との縮合により、2個のボロン酸エステル官能基を有する化合物(式(III)の化合物)が得られる。この工程は、当業者によく知られる手段に従って実施される。
【0143】
本発明の文脈においては、一般式(III-a)の化合物は、水の存在下でアセトン等の極性溶剤中に溶解される。水の存在により、式(III-a)のボロン酸分子と式(III-a)のボロン酸から得られるボロキシン分子との間の化学的平衡をシフトさせることが可能となる。具体的には、ボロン酸は室温で自然にボロキシン分子を形成し得ることはよく知られている。しかしながら、ボロキシン分子の存在は、本発明の文脈においては望ましくない。
【0144】
上記縮合反応は、硫酸マグネシウム等の脱水剤の存在下に行われる。この脱水剤は、最初に導入された水分子も、式(III-a)の化合物と式(III-b)の化合物との間の縮合、及び式(III-a)の化合物と式(III-c)の化合物との間の縮合により放出される水分子も捕捉する。
【0145】
1つの実施の形態においては、化合物(III-b)及び化合物(III-c)は、同一である。
【0146】
当業者は、式(III)の生成物を得るために式(III-b)及び/又は式(III-c)及び式(III-a)の試薬の量をどのように適合させるかを認識している。
【0147】
ポリ(ボロン酸エステル)ランダムコポリマー化合物A2
もう1つの実施の形態においては、少なくとも2個のボロン酸エステル官能基を有する化合物A2は、下記の式(IV)の少なくとも1種のモノマーM4と下記の式(V)の少なくとも1種のモノマーM5との共重合により得られるポリ(ボロン酸エステル)ランダムコポリマーである。
【0148】
本特許出願の残りの部分では、「ボロン酸エステルランダムコポリマー」又は「ポリ(ボロン酸エステル)ランダムコポリマー」という表現は同等であり、同じコポリマーを示す。
【0149】
式(IV)のモノマーM4
ボロン酸エステルランダムコポリマー化合物A2のモノマーM4は、一般式(IV):
【化34】
(式中、
tは、0又は1に等しい整数であり、
uは、0又は1に等しい整数であり、
M及びR
8は、同一又は異なる二価の結合基であり、C
6~C
18アリール、C
7~C
24アラルキル、及びC
2~C
24アルキル、好ましくはC
6~C
18アリールにより構成される群から選択され、
Xは、-O-C(O)-、-C(O)-O-、-C(O)-N(H)-、-N(H)-C(O)-、-S-、-N(H)-、-N(R’
4)-、及び-O-により構成される群から選択される官能基であり、ここで、R’
4は、1個~15個の炭素原子を有する炭化水素を基礎とする鎖であり、
R
9は、-H、-CH
3、及び-CH
2-CH
3、好ましくは-H、及び-CH
3により構成される群から選択され、
R
10及びR
11は、同一又は異なってよく、水素、及び1個~30個の炭素原子を有する炭化水素を基礎とする基により構成される群から選択され、上記炭化水素を基礎とする基は、ヒドロキシル、及び基-OJ又は基-C(O)-O-Jから選択される1個以上の基で任意に置換されており、ここで、Jは1個~24個の炭素原子を有する炭化水素を基礎とする基である)を有する。
【0150】
「C1~C24アルキル」という用語は、1個~24個の炭素原子を有する線状又は分岐状の飽和の炭化水素を基礎とする鎖を意味する。好ましくは、その炭化水素を基礎とする鎖は、線状である。好ましくは、その炭化水素を基礎とする鎖は、6個~16個の炭素原子を有する。
【0151】
「1個~15個の炭素原子を有する炭化水素を基礎とする鎖」という用語は、1個~15個の炭素原子を有する線状又は分岐状のアルキル基又はアルケニル基を意味する。好ましくは、その炭化水素を基礎とする鎖は、線状のアルキル基である。好ましくは、その炭化水素を基礎とする鎖は、1個~8個の炭素原子を有する。
【0152】
「1個~30個の炭素原子を有する炭化水素を基礎とする基」という用語は、1個~30個の炭素原子を有する線状、分岐状、若しくは環状のアルキル基、2個~30個の炭素原子を有する線状、分岐状、若しくは環状のアルケニル基、6個~30個の炭素原子を有するアリール基、又は7個~30個の炭素原子を有するアラルキル基を意味する。
【0153】
「1個~24個の炭素原子を有する炭化水素を基礎とする基」という用語は、1個~24個の炭素原子を有する線状若しくは分岐状のアルキル基、又は2個~24個の炭素原子を有する線状若しくは分岐状のアルケニル基、6個~24個の炭素原子を有するアリール基、又は7個~24個の炭素原子を有するアラルキル基を意味する。好ましくは、Jは、4個~18個の炭素原子、好ましくは6個から12個の間の炭素原子を有する。
【0154】
1つの実施の形態においては、上記モノマーM4は、一般式(IV)を有し、その式中、
tは、0又は1に等しい整数であり、
uは、0又は1に等しい整数であり、
M及びR8は、二価の結合基であり、それらは異なっており、Mは、C6~C18アリール、好ましくはフェニルであり、R8は、C7~C24アラルキル、好ましくはベンジルであり、
Xは、-O-C(O)-、-C(O)-O-、-C(O)-N(H)-、及び-O-、好ましくは-C(O)-O-、又は-O-C(O)-により構成される基から選択される官能基であり、
R9は、-H及び-CH3、好ましくは-Hにより構成される群から選択され、
R10及びR11は、異なっており、基R10又はR11の一方はHであり、もう一方の基R10又はR11は、1個~24個の炭素原子、好ましくは4個から18個の間の炭素原子、好ましくは6個から12個の間の炭素原子を有する炭化水素を基礎とする鎖、好ましくは線状のアルキル基である。
【0155】
1つの実施の形態においては、モノマーM4は、スチレンモノマーである。これは、式(IV)において、u=1であり、R9がHであり、かつR8が、C6~C18アリール又はC7~C24アラルキルを表し、かつ式(IV)のモノマーM4の二重結合が、該アリール基に直接的に連結されている場合に当てはまる。
【0156】
式(IV)のモノマーM4の合成
以下に表される全てのスキームにおいて、特段の記載が無い限り、可変部R10、R11、M、u、t、X、R8、R’4、及びR9は、上記式(IV)中と同じ定義を有する。
【0157】
式(IV)のモノマーM4は、特に以下の反応スキーム5:
【化35】
による一般式(IV-f)のボロン酸と一般式(IV-g)のジオール化合物との縮合の少なくとも1つの工程を含む製造方法により得られる。
【0158】
具体的には、式(IV-f)の化合物のボロン酸官能基と式(IV-g)の化合物のジオール官能基との縮合により、式(IV)のボロン酸エステル化合物が得られる。この工程は、当業者によく知られる方法に従って実施される。
【0159】
本発明の文脈においては、一般式(IV-f)の化合物は、水の存在下でアセトン等の極性溶剤中に溶解される。上記縮合反応は、硫酸マグネシウム等の脱水剤の存在下に行われる。
【0160】
式(IV-g)の化合物は、以下の供給業者、Sigma-Aldrich(商標)社、Alfa Aesar(商標)社、及びTCI(商標)社から市販されている。
【0161】
式(IV-f)の化合物は、式(IV-e)の化合物から直接的に、以下の反応スキーム6:
【化36】
(上記スキーム中、
zは、0又は1に等しい整数であり、
R
12は、-H、-CH
3、及び-CH
2-CH
3により構成される群から選択され、
u、X、M、R
8、及びR
9は、上記定義の通りである)による加水分解により得られる。
【0162】
式(IV-e)の化合物は、以下の反応スキーム7:
【化37】
(上記スキーム中、
z、u、R
12、M、R’
4、R
9、及びR
8は、上記定義の通りであり、かつ上記スキームにおいて、
Xが-O-C(O)-を表す場合に、Y
4は、アルコール官能基-OH又はハロゲン原子、好ましくは塩素若しくは臭素を表し、かつY
5は、カルボン酸官能基-C(O)-OHであり、
Xが-C(O)-O-を表す場合に、Y
4は、カルボン酸官能基-C(O)-OHを表し、かつY
5は、アルコール官能基-OH又はハロゲン原子、好ましくは塩素若しくは臭素を表し、
Xが-C(O)-N(H)-を表す場合に、Y
4は、カルボン酸官能基-C(O)-OH又は官能基-C(O)-Halを表し、かつY
5は、アミン官能基NH
2であり、
Xが-N(H)-C(O)-を表す場合に、Y
4は、アミン官能基NH
2を表し、かつY
5は、カルボン酸官能基-C(O)-OH又は官能基-C(O)-Halであり、
Xが-S-を表す場合に、Y
4は、ハロゲン原子であり、かつY
5は、チオール官能基-SHであり、又はY
4は、チオール官能基-SHであり、かつY
5は、ハロゲン原子であり、
Xが-N(H)-を表す場合に、Y
4は、ハロゲン原子であり、かつY
5は、アミン官能基-NH
2であり、又はY
4は、アミン官能基-NH
2であり、かつY
5は、ハロゲン原子であり、
Xが-N(R’
4)-を表す場合に、Y
4は、ハロゲン原子であり、かつY
5は、アミン官能基-N(H)(R’
4)であり、又はY
4は、アミン官能基-N(H)(R’
4)であり、かつY
5は、ハロゲン原子であり、
Xが-O-を表す場合に、Y
4は、ハロゲン原子であり、かつY
5は、アルコール官能基-OHであり、又はY
4は、アルコール官能基-OHであり、かつY
5は、ハロゲン原子である)による式(IV-c)の化合物と式(IV-d)の化合物との反応により得られる。
【0163】
これらのエステル化反応、エーテル化反応、チオエーテル化反応、アルキル化反応、又はアミン官能基とカルボン酸官能基との間の縮合反応は、当業者によく知られている。このように、当業者は、式(IV-e)の化合物を得るために、基Y1及び基Y2の化学的性質に応じて、反応条件をどのように選択するかを認識している。
【0164】
式(IV-d)の化合物は、供給業者のSigma-Aldrich(商標)社、TCI(商標)、及びAcros Organics(商標)社から市販されている。
【0165】
式(IV-c)の化合物は、以下の反応スキーム8:
【化38】
(上記スキーム中、
M、Y
4、z、及びR
12は、上記定義の通りである)による式(IV-a)のボロン酸と式(IV-b)の少なくとも1種のジオール化合物との間の縮合反応により得られる。
【0166】
式(IV-b)の化合物の中でも、式中のR12がメチルであり、かつz=0である化合物が好ましい。
【0167】
式(IV-a)及び式(IV-b)の化合物は、以下の供給業者、Sigma-Aldrich(商標)社、Alfa Aesar(商標)社、及びTCI(商標)社から市販されている。
【0168】
式(V)のモノマーM5:
ボロン酸エステルランダムコポリマー化合物A2のモノマーM5は、一般式(V):
【化39】
(式中、
R
12は、-H、-CH
3、及び-CH
2-CH
3、好ましくは-H、及び-CH
3により構成される群から選択され、
R
13は、C
6~C
18アリール、基R’
13で置換されたC
6~C
18アリール、-C(O)-O-R’
13、-O-R’
13、-S-R’
13、及び-C(O)-N(H)-R’
13により構成される群から選択され、ここで、R’
13は、C
1~C
25アルキル基である)を有する。
【0169】
「C1~C25アルキル基」という用語は、1個~25個の炭素原子を有する線状又は分岐状の飽和の炭化水素を基礎とする鎖を意味する。好ましくは、その炭化水素を基礎とする鎖は、線状である。
【0170】
「基R13で置換されたC6~C18アリール」という用語は、6個~18個の炭素原子を有する芳香族の炭化水素を基礎とする化合物であって、その芳香環の少なくとも1個の炭素原子が上記定義のC1~C25アルキル基で置換されている、化合物を意味する。
【0171】
式(V)のモノマーの中でも、式(V-A):
【化40】
(式中、
R
2は、-H、-CH
3、及び-CH
2-CH
3、好ましくは-H、及び-CH
3により構成される群から選択され、
R’
13は、C
1~C
25アルキル基、好ましくは線状のC
1~C
25アルキル、更により好ましくは線状のC
5~C
15アルキルである)に相当するモノマーが好ましい。
【0172】
1つの実施の形態によれば、モノマーM5は、スチレンモノマーである。これは、式(V)において、R12がHを表し、かつR13がC6~C18アリールと基R’13で置換されたC6~C18アリールとにより構成される群から選択され、ここで、R’13が、C1~C25アルキル基であり、かつ式(V)のモノマーM5の二重結合が、該アリール基に直接的に連結されている場合に当てはまる。
【0173】
有利には、この実施の形態によれば、モノマーM5はスチレンである。
【0174】
モノマーM5の作製:
式(V)及び式(V-A)のモノマーは、当業者によく知られている。それらのモノマーは、Sigma-Aldrich(商標)社、及びTCI(商標)社により販売されている。
【0175】
スチレンモノマー:
有利には、コポリマーA2は、スチレンの性質の少なくとも1種のモノマー、すなわちスチレン又はスチレン誘導体のいずれか、例えば芳香環上で別の基で置換されたスチレンを含む。
【0176】
モノマーM4は、式(IV)において、u=1であり、R9がHであり、かつR8が、C6~C18アリール又はC7~C24アラルキルを表し、かつ式(IV)のモノマーM4の二重結合が、該アリール基に直接的に連結されている場合に、スチレンモノマーであり得る。
【0177】
モノマーM5はまた、式(V)において、R12がHを表し、かつR13がC6~C18アリールと基R’13で置換されたC6~C18アリールとにより構成される群から選択され、ここで、R’13が、C1~C25アルキル基であり、かつ式(V)のモノマーM5の二重結合が、該アリール基に直接的に連結されている場合に、スチレンモノマーであり得る。
【0178】
M4もM5もスチレンの性質ではない場合に、有利には、コポリマーA2は、式(X):
【化41】
(式中、
Z
1、Z
2、及びZ
3は、同一又は異なってよく、水素原子、C
1~C
12アルキル、及び基-OZ’又は基-C(O)-O-Z’から選択される基を表し、ここで、Z’は、C
1~C
12アルキルである)の少なくとも1種の第3のモノマーM3を含む。
【0179】
M3は、コポリマーA1の製造に関して上記で詳細に記載されている。好ましいモノマーM3及びその好ましい量は、A2においてはA1と同じである。
【0180】
有利には、A2が式(X)の第3のモノマーM3を含む場合に、このモノマーM3はスチレンである。
【0181】
ポリ(ボロン酸エステル)ランダムコポリマー化合物A2の合成
当業者は、その一般的な知識に基づいてボロン酸エステルランダムコポリマーを合成することが可能である。上記共重合は、塊状で又は有機溶剤中の溶液においてフリーラジカル生成化合物を用いて開始させることができる。例えば、ボロン酸エステルランダムコポリマーは、既知のラジカル共重合、特に精密ラジカル重合の方法、例えば可逆的付加開裂連鎖移動(RAFT)型の精密ラジカル重合として知られる方法、及び原子移動ラジカル重合(ATRP)として知られる方法により得られる。従来のラジカル重合及びテロマー化を、本発明のポリマーの製造のために使用することもできる(Moad, G.; Solomon, D.H., The Chemistry of Radical Polymerization. 2nd ed.; Elsevier Ltd: 2006; page 639、Matyaszewski, K.; Davis, T.P. Handbook of Radical Polymerization; Wiley-Interscience: Hoboken, 2002; page 936)。
【0182】
ボロン酸エステルランダムコポリマーは、
i)上記定義の一般式(IV)の少なくとも1種の第1のモノマーM4と、
ii)上記定義の一般式(V)の少なくとも1種の第2のモノマーM5と、
iii)少なくとも1種のフリーラジカル源と、
を接触させる少なくとも1つの重合工程(a)を含む方法により製造される。
【0183】
1つの実施の形態においては、上記方法は、iv)少なくとも1種の連鎖移動剤も含み得る。
【0184】
一般式(IV)及び一般式(V)について記載された好ましい事項及び定義は、上記方法にも当てはまる。
【0185】
上記ラジカル源及び上記移動剤は、ポリジオールランダムコポリマーの合成について記載されたものである。上記ラジカル源及び上記移動剤について記載された好ましい事項は、この方法にも当てはまる。
【0186】
ポリ(ボロン酸エステル)ランダムコポリマー化合物A2の特性
有利には、その鎖は、基R10、基M、基(R8)uの配列により形成され、ここでuは0又は1に等しい整数であり、かつ一般式(IV)のモノマーM4のXは、8個~38個、好ましくは10個~26個の炭素原子の範囲の総数を有する。
【0187】
有利には、ボロン酸エステルランダムコポリマーの側鎖は、8個より多い炭素原子の平均長さ、好ましくは11個~16個の範囲の平均長さを有する。この鎖長は、疎水性媒体中で該ボロン酸エステルランダムコポリマーを溶解させることを可能にする。「側鎖の平均長さ」という用語は、上記コポリマーを構成するそれぞれのモノマーの側鎖の平均長さを意味する。任意の1個以上のスチレンモノマーから誘導された側鎖は、側鎖の平均長さの計算において考慮されない。当業者は、上記ボロン酸エステルランダムコポリマーを構成するモノマーの種類及び比率を適切に選択することによってこの平均長さをどのように得るかを認識している。
【0188】
有利には、ボロン酸エステルランダムコポリマーA2は、0.25%~30%、好ましくは1%~25%、更により良好には5%~20%の範囲の上記コポリマー中の式(IV)のモノマーのモル百分率を有する。
【0189】
有利には、ボロン酸エステルランダムコポリマーA2は、0.25%~30%、好ましくは1%~25%の範囲の上記コポリマー中の式(IV)のモノマーのモル百分率、及び70%~99.75%、好ましくは75%~99%の範囲の上記コポリマー中の式(V)のモノマーのモル百分率を有する。
【0190】
有利には、ボロン酸エステルランダムコポリマーA2は、2mol%~50mol%、選好的には3mol%~40mol%、より好ましくは5mol%~35mol%の範囲の上記コポリマー中の式(IV)、式(V)、及び/又は式(X)の1種以上のスチレンモノマーのモル百分率を有する。
【0191】
「1種以上のスチレンモノマーのモル百分率」という用語は、ボロン酸エステルランダムコポリマーA2中のスチレンモノマーのそれぞれの含量の合計を意味し、該スチレンモノマーは、
式(IV)で示されるモノマーであって、式(IV)において、u=1であり、R9がHであり、かつR8が、C6~C18アリール又はC7~C24アラルキルを表し、かつ式(IV)のモノマーM4の二重結合が、該アリールに直接的に連結されている、モノマー、
式(V)で示されるモノマーであって、式(V)において、R12がHを表し、かつR13がC6~C18アリールと基R’13で置換されたC6~C18アリールとにより構成される群から選択され、ここで、R’13が、C1~C25アルキル基であり、かつ式(V)のモノマーM5の二重結合が、該アリール基に直接的に連結されている、モノマー、及び/又は、
上記説明の式(X)のモノマー、
であり得る。
【0192】
有利には、ボロン酸エステルランダムコポリマーは、50~1500、好ましくは50~800の範囲の数平均重合度を有する。
【0193】
有利には、ボロン酸エステルランダムコポリマーは、1.04~3.54の範囲、好ましくは1.10~3.10の範囲の多分散性指数(Ip)を有する。これらの値は、溶離液としてテトラヒドロフランを使用し、ポリ(メチルメタクリレート)較正を使用するサイズ排除クロマトグラフィーにより得られる。
【0194】
有利には、ボロン酸エステルランダムコポリマーは、10000g/molから200000g/mol、好ましくは25000g/molから100000g/molの範囲の数平均モル質量を有する。これらの値は、溶離液としてテトラヒドロフランを使用し、ポリ(メチルメタクリレート)較正を使用するサイズ排除クロマトグラフィーにより得られる。
【0195】
化合物A2、特にボロン酸エステルランダムコポリマーは、疎水性媒体、特に非極性媒体中で、1個以上のジオール官能基を有する化合物とエステル交換反応を介して反応し得るという特性を有する。このエステル交換反応は、以下のスキーム9:
【化42】
により表すことができる。
【0196】
このように、エステル交換反応の間に、出発ボロン酸エステルの化学構造とは異なる化学構造のボロン酸エステルが、
【化43】
により表される炭化水素を基礎とする基の交換により形成される。
【0197】
外部性化合物A5
本発明によれば、添加剤組成物は、
少なくとも1種のポリジオールランダムコポリマーA1と、
上記ポリジオールランダムコポリマーA1と少なくとも1つのエステル交換反応を介して会合し得る、少なくとも2個のボロン酸エステル官能基を有する少なくとも1種のランダムコポリマーA2と、
式(XI):
【化44】
(式中、
Qは、1個~30個の炭素原子を有する炭化水素を基礎とする基から選択される基を表し、上記炭化水素を基礎とする鎖は、ヒドロキシル、基-OJ又は基-C(O)-O-Jから選択される1個以上の基で任意に置換されており、ここで、Jは1個~24個の炭素原子を有する炭化水素を基礎とする基であり、
G
4及びG
5は、同一又は異なってよく、水素原子、1個~24個の炭素原子を有する炭化水素を基礎とする鎖、ヒドロキシル、及び基-OJ又は基-C(O)-O-Jから選択される基を表し、ここで、Jは1個~24個の炭素原子を有する炭化水素を基礎とする基であり、
gは、0又は1を表す)に相当する化合物から選択される少なくとも1種の外部性化合物A5と、
を混合することにより得られる。
【0198】
「1個~30個の炭素原子を有する炭化水素を基礎とする基」という用語は、1個~30個の炭素原子を有する線状、分岐状、若しくは環状のアルキル基、2個~30個の炭素原子を有する線状、分岐状、若しくは環状のアルケニル基、6個~30個の炭素原子を有するアリール基、又は7個~30個の炭素原子を有するアラルキル基を意味する。
【0199】
「1個~24個の炭素原子を有する炭化水素を基礎とする基」という用語は、1個~24個の炭素原子を有する線状若しくは分岐状のアルキル基、2個~24個の炭素原子を有する線状若しくは分岐状のアルケニル基、6個~24個の炭素原子を有するアリール基、又は7個~24個の炭素原子を有するアラルキル基を意味する。好ましくは、Jは、4個~18個の炭素原子、好ましくは6個から12個の間の炭素原子を有する。
【0200】
有利には、外部性化合物A5は、以下の式(XIA):
【化45】
(式中
G
1、G
2、G
3、G
4、及びG
5は、同一又は異なってよく、水素原子、C
1~C
24アルキル、ヒドロキシル、及び基-OJ又は基-C(O)-O-Jから選択される基を表し、ここで、Jは、C
1~C
24アルキルであり、
gは、0又は1を表す)に相当する。
【0201】
有利には、この本発明の実施の形態によれば、ランダムコポリマーA1のジオール官能基に対する上記添加剤組成物中の外部性化合物A5のモル百分率は、0.025%~5000%、好ましくは0.1%~1000%、更により好ましくは0.5%~500%、更により好ましくは1%~150%の範囲である。
【0202】
本発明の目的のために、「外部性化合物」という用語は、少なくとも1種のポリジオールランダムコポリマーA1と、少なくとも1種の化合物A2、特にポリ(ボロン酸エステル)ランダムコポリマーとの混合により得られる添加剤組成物に添加される化合物を意味する。
【0203】
1つの実施の形態においては、外部性化合物A5は、式(XI B):
【化46】
(式中、
G
4及びG
5は、同一又は異なってよく、水素原子、C
1~C
24アルキル、ヒドロキシル、及び基-OJ又は基-C(O)-O-Jから選択される基を表し、ここで、Jは、C
1~C
24アルキルであり、
gは、0又は1を表す)に相当する化合物から選択される。
【0204】
1つの実施の形態においては、外部性化合物A5は、一般式(XI B)を有し、その式中、
gは、0又は1に等しい整数であり、
G4及びG5は、異なっており、基G4又は基G5の一方はHであり、もう一方の基G4又はG5は、1個~24個の炭素原子、好ましくは4個から18個の間の炭素原子、好ましくは6個から12個の間の炭素原子を有する炭化水素を基礎とする鎖、好ましくは線状のアルキル基である。
【0205】
1つの実施の形態においては、外部性化合物A5を介してエステル交換反応によりin situで放出される式(XII)のジオール断片A6は、化合物A2を介してエステル交換反応によりin situで放出されるジオール化合物A3の化学構造とは異なる化学構造を有する。この実施の形態においては、式(XI)の外部性化合物A5の置換基G
4、G
5、又は係数(g)の値の少なくとも1つは、それぞれ式(III)のボロン酸ジエステル化合物A2の置換基R
4及びR
5、若しくは係数(w1)の値、又は置換基R
5及びR
7、若しくは係数(w2)の値とは異なり、又はそれぞれポリ(ボロン酸エステル)ランダムコポリマーA2のモノマー(IV)の置換基R
10、R
11、若しくは係数(t)の値とは異なる。
【化47】
【0206】
別の実施の形態においては、外部性化合物A5を介してエステル交換反応によりin situで放出される式(XII)のジオール断片A6は、化合物A2を介してエステル交換反応によりin situで放出されるジオール化合物A3の化学構造と同一の化学構造を有する。この実施の形態においては、式(XI)の外部性化合物A5の置換基G4、G5、及び係数(g)の値は、それぞれ式(III)のボロン酸ジエステル化合物A2の置換基R4及びR5、並びに係数(w1)の値、若しくは置換基R5及びR7、及び係数(w2)の値と同一であり、又はそれぞれポリ(ボロン酸エステル)ランダムコポリマーA2のモノマー(IV)の置換基R10、R11、及び係数(t)の値と同一である。
【0207】
その使用温度に応じて、少なくとも1種のポリジオールランダムコポリマーA1と、エステル交換反応を介して上記ポリジオールランダムコポリマーA1と会合し得る少なくとも2個のボロン酸エステル官能基を有する少なくとも1種の化合物A2、特にランダムコポリマーA2とを混合し、上記定義の少なくとも1種の外部性化合物A5を添加することにより得られる添加剤組成物は、in situで放出されるジオール化合物A3も含み得る。さらに、その使用温度に応じて、この同じ組成物は、in situで放出されるジオール化合物A6を含み得る。
【0208】
本発明の目的のために、「in situで放出されるジオール」という用語は、ジオール官能基を有する化合物であって、エステル交換反応の間にボロン酸エステル化合物A2、特にポリ(ボロン酸エステル)ランダムコポリマー、及び/又は外部性化合物A5の炭化水素を基礎とする基の交換の間に添加剤組成物中で生成される、化合物を意味する。ポリジオールランダムポリマーA1は、本発明の意味の範囲内のin situで放出されるジオールではない。
【0209】
式(VI)の化合物は、以下の供給業者、Sigma-Aldrich(商標)社、Alfa Aesar(商標)社、及びTCI(商標)社から市販されている。
【0210】
本発明の新規の添加剤組成物の特質
上記定義の少なくとも1種のポリジオールランダムコポリマーA1と、上記定義の少なくとも1種の化合物A2、特に上記定義の少なくとも1種のポリ(ボロン酸エステル)ランダムコポリマーと、上記定義の少なくとも1種の外部性化合物A5とを混合することにより得られる本発明の添加剤組成物は、温度に応じて、かつ使用される化合物A1、A2、及びA5の割合に従って大幅に変動するレオロジー特性を有する。
【0211】
上記定義のポリジオールランダムコポリマーA1及び化合物A2は、特に疎水性媒体、特に非極性疎水性媒体中で熱可逆的に会合性であり、かつ化学結合を交換可能であるという利点を有する。
【0212】
或る特定の条件下では、上記定義のポリジオールランダムコポリマーA1及び化合物A2は、架橋され得る。
【0213】
ポリジオールランダムコポリマーA1及び化合物A2はまた、交換可能であるという利点を有する。
【0214】
「会合性」という用語は、ボロン酸エステル型の共有化学結合が、ポリジオールランダムコポリマーA1と少なくとも2個のボロン酸エステル官能基を有する化合物A2、特にポリ(ボロン酸エステル)ランダムコポリマーとの間でもたらされることを意味する。ポリジオールA1及び化合物A2の官能性に応じて、かつ混合物の組成に応じて、ポリジオールA1と化合物A2との間の共有結合の形成により、任意に3次元ポリマーネットワークの形成をもたらすことが可能となる。
【0215】
「化学結合」という用語は、ボロン酸エステル型の共有化学結合を意味する。
【0216】
「交換可能」という文言は、化合物同士が、それらの間で化学的官能基の総数又は性質を変えることなく化学結合を交換可能であることを意味する。その化学的交換反応(エステル交換)は、以下の反応スキーム10:
【化48】
(上記スキーム中、
Rは、化合物A2の化学基であり、
斜線の入った丸は、化合物A2の化学構造の残部を表し、
交差罫線の入った長方形は、ポリジオールランダムコポリマーA1の化学構造の残部を表す)に図解されている。
【0217】
化合物A2のボロン酸エステル結合、化合物A1のジオールと外部性化合物A5との間のエステル交換反応により形成されるボロン酸エステル結合、そしてまたポリジオールランダムコポリマーA1及び化合物A2の会合により形成されるボロン酸エステル結合と、in situで放出される化合物A3が有するジオール官能基、そして外部性化合物A5が放出するジオール官能基A6とが交換されることで、ボロン酸エステル官能基及びジオール官能基の総数に影響を及ぼさずに新規のボロン酸エステル及び新規のジオール官能基が形成され得る。この他の化学結合交換法は、メタセシス反応により、ジオールの存在下でボロン酸エステル官能基の順次の交換を介して行われる。もう1つの化学結合交換法は、
図3に図解されており、そこでは、ポリマーA2-1と会合されたポリジオールランダムコポリマーA1-1が、2個のボロン酸エステル結合をボロン酸エステルランダムコポリマーA2-2と交換したことを確認することができる。ポリマーA2-2と会合されたポリジオールランダムコポリマーA1-2は、2個のボロン酸エステル結合をボロン酸エステルランダムコポリマーA2-1と交換したが、組成物中のボロン酸エステル結合の総数は不変のままであり、それは4に等しい。次いで、コポリマーA1-1は、ポリマーA2-2と会合される。次いで、コポリマーA1-2は、ポリマーA2-1と会合される。コポリマーA2-1とポリマーA2-2とは交換されている。
【0218】
「架橋された」という文言は、コポリマーの高分子鎖間での橋かけの確立によりコポリマーがネットワークの形で得られることを指す。互いに連結されたこれらの鎖は、殆どの部分が3次元空間中に分布している。架橋されたコポリマーは、3次元ネットワークを形成する。実際には、コポリマーネットワークの形成は、可溶性試験により確認される。該コポリマーネットワークを同じ化学的性質の架橋されていないコポリマーを溶解することが知られている溶剤中に入れることにより、コポリマーネットワークが形成されていることが確認され得る。該コポリマーが溶解ではなく膨潤する場合に、当業者は、ネットワークが形成されたことを認識する。
図4は、この可溶性試験を図解する。
【0219】
「架橋可能」という文言は、コポリマーが架橋することが可能であることを指す。
【0220】
「可逆的に架橋される」という文言は、架橋されるコポリマーの橋かけが、可逆的な化学反応を介して形成されることを指す。可逆的な化学反応は、どちらの方向にも動き得るため、ポリマーネットワークの構造変化がもたらされる。該コポリマーは、初期の架橋されていない状態から架橋された状態(3次元コポリマーネットワーク)になることもでき、架橋された状態から架橋されていない初期状態になることもできる。本発明の文脈においては、コポリマー鎖間に形成される橋かけは、変動性である。これらの橋かけは、可逆的な化学反応によって形成され、又は交換され得る。本発明の文脈においては、その可逆的な架橋化学反応は、ランダムコポリマー(コポリマーA1)のジオール官能基と架橋剤(化合物A2)のボロン酸エステル官能基との間のエステル交換反応である。形成される橋かけは、ボロン酸エステル型の結合である。これらのボロン酸エステル結合は共有結合であり、エステル交換反応の可逆性のため変動性である。
【0221】
「熱可逆的に架橋される」という文言は、温度によりどちらかの方向への動きが制御される可逆的な反応によりコポリマーが架橋されることを指す。本発明の組成物の熱可逆的な架橋の機構は、
図5に概略的に表されている。低い温度では、ポリジオールコポリマーA1(
図5において官能基Aを有するコポリマーにより表される)は、ボロン酸エステル化合物A2(
図5において官能基Bを有する化合物により表される)と架橋されないか、又は該化合物とわずかしか架橋されない。温度が増大すると、コポリマーA1のジオール官能基は、エステル交換反応を介して化合物A2のボロン酸エステル官能基と反応する。その際、ジオールランダムコポリマーA1と少なくとも2個のボロン酸エステル官能基を有する化合物A2とは結合し合い、交換され得る。ポリジオールA1及び化合物A2の官能性に応じて、かつ混合物の組成に応じて、媒体中で、特に該媒体が非極性である場合にゲルが形成し得る。温度が再び減少すると、ポリジオールランダムコポリマーA1と化合物A2との間のボロン酸エステル結合は破断するに至り、場合によっては、該組成物はそのゲル化した性質を失う。
【0222】
ポリジオールランダムコポリマーA1と化合物A2との間に設けられ得る複数のボロン酸エステル結合(又は1つのボロン酸エステル結合)の量は、当業者によれば、ポリジオールランダムコポリマーA1、化合物A2の適切な選択、及び混合物の組成の適切な選択によって調節される。
【0223】
さらに、当業者は、ランダムコポリマーA1の構造に応じて化合物A2の構造をどのように選択するかを認識している。好ましくは、少なくとも1種のモノマーM1を含むランダムコポリマーA1において、y=1である場合に、一般式(III)の化合物A2、又は式(IV)の少なくとも1種のモノマーM4を含むコポリマーA2は、好ましくはそれぞれw1=1、w2=1、及びt=1で選択されることとなる。
【0224】
ポリジオールランダムコポリマーA1及び化合物A2、特にポリ(ボロン酸エステル)ランダムコポリマーの会合度を制御することにより、この組成物の粘度及びレオロジー挙動が変更される。存在する場合に、外部性化合物A5は、この組成物の粘度を温度に応じて所望の使用に従って変更することを可能にする。
【0225】
その系が会合性機能を有するためには、化合物A1は、上記組成物中に遊離ジオール形で存在せねばならない。したがって、A1がジオール上に保護基を有している場合には、これらの保護基を除去せねばならない。
【0226】
好ましい実施の形態によれば、化合物A1は、上記組成物中に遊離ジオールの形で導入され、そして化合物A2は、上記組成物中にボロン酸の形で導入される。
【0227】
本発明の好ましい実施の形態においては、外部性化合物A5のジオールラジカルは、ポリジオールランダムコポリマーA1と化合物A2、特にポリ(ボロン酸エステル)ランダムコポリマーとの間のエステル交換反応によりin situで放出されるジオール化合物A3と同様の化学的性質を有している。この実施の形態によれば、遊離ジオールの総量は、in situで放出されるジオール化合物の量に本質的に等しく、その際、化合物A5は、遊離ジオールの少数部分をなすと思われる。「遊離ジオール」という用語は、エステル交換反応によりボロン酸エステル型の化学結合を形成し得るジオール官能基を意味する。本特許出願の目的のために、「遊離ジオールの総量」という用語は、エステル交換によりボロン酸エステル型の化学結合を形成し得るジオール官能基の総数を意味する。
【0228】
A1とA2との間のエステル交換反応の関連においてin situで放出されるジオールの量は、コポリマーA1とA2とを連結するボロン酸エステル官能基の数、及びコポリマーA1とA5のボロン酸エステル部分とを連結するボロン酸エステル官能基の数の合計に等しい。
【0229】
当業者は、組成物のレオロジー挙動の変更のために、化合物A2のボロン酸エステル官能基のモル百分率に応じて、特にポリ(ボロン酸エステル)ランダムコポリマー及びポリジオールコポリマーA1のジオール官能基の数に応じて添加剤組成物へと添加される外部性化合物A5の化学構造及び量をどのように選択するかを認識している。
【0230】
有利には、上記組成物中のランダムコポリマーA1の含量は、該組成物の全重量に対して0.1重量%~50.0重量%、好ましくは最終組成物の全重量に対して0.25重量%~40重量%、より好ましくは最終組成物の全重量に対して1重量%~30重量%の範囲である。
【0231】
有利には、上記組成物中の化合物A2の含量は、該組成物の全重量に対して0.1重量%~50.0重量%、好ましくは最終組成物の全重量に対して0.25重量%~40重量%、より好ましくは最終組成物の全重量に対して0.5重量%~30重量%の範囲である。
【0232】
1つの実施の形態においては、上記組成物中のランダムコポリマーA1の含量は、該組成物の全重量に対して0.5重量%~50.0重量%の範囲であり、上記組成物中の化合物A2、特にボロン酸エステルランダムコポリマーの含量は、該組成物の全重量に対して0.5重量%~50.0重量%の範囲である。
【0233】
選好的には、上記組成物中のポリジオールランダム化合物A1と化合物A2との間の質量比(比A1/A2)は、0.005~200、好ましくは0.05~20、更により好ましくは0.1~10の範囲である。
【0234】
1つの実施の形態においては、添加剤組成物中の外部性化合物A5のモル百分率は、ポリジオールランダムコポリマーA1のジオール官能基に対して、0.025%~5000%、好ましくは0.1%~1000%、より好ましくは0.5%~500%、更により好ましくは1%~150%の範囲である。
【0235】
1つの好ましい実施の形態においては、本発明の組成物は、保存用組成物の形である。「保存用組成物」という用語は、当業者が、或る特定量の保存溶液を取り、所望の濃度を得るために必要な量の希釈剤(溶剤等)の添加によって補うことによって娘溶液を作製することができる組成物を意味する。娘組成物は、したがって保存用組成物の希釈により得られる。
【0236】
疎水性媒体は、溶剤、鉱油、天然油、又は合成油であり得る。
【0237】
1つの実施の形態においては、本発明の組成物はまた、熱可塑性樹脂、エラストマー、熱可塑性エラストマー、熱硬化性ポリマー、顔料、染料、充填剤、可塑剤、繊維、酸化防止剤、潤滑添加剤、相溶化剤、消泡剤、分散添加剤、接着促進剤、及び安定化剤により構成される群から選択される少なくとも1種の添加剤を含み得る。
【0238】
その他の添加剤(外部性化合物A4)
1つの実施の形態によれば、上記添加剤組成物は、化合物A1、化合物A2、及び化合物A5の他に、1,2-ジオール及び1,3-ジオールから選択される少なくとも1種の外部性化合物A4も含む。そのような化合物、そしてまた該化合物を使用する方法は、特許出願である特許文献3に詳細に記載されている。
【0239】
外部性化合物A4は、一般式(VI):
【化49】
(式中、
w3は、0又は1に等しい整数であり、
R
14及びR
15は、同一又は異なってよく、水素、及び1個~24個の炭素原子、好ましくは4個から18個の間の炭素原子、好ましくは6個から12個の間の炭素原子を有する炭化水素を基礎とする鎖により構成される群から選択される)を有し得る。
【0240】
本発明の組成物においては、外部性化合物A4は、特許文献3に記載されるのと同じ条件下で使用され得る。
【0241】
式(VI)の化合物は、以下の供給業者、Sigma-Aldrich(商標)社、Alfa Aesar(商標)社、及びTCI(商標)社から市販されている。
【0242】
本発明の新規の添加剤組成物を製造する方法
本発明の新規の添加剤組成物は、当業者によく知られる手段により製造される。例えば、特に当業者には、
上記定義のポリジオールランダムコポリマーA1を含む溶液の所望の量を取り、
上記定義の化合物A2を含む溶液の所望の量、特に上記定義のポリ(ボロン酸エステル)ランダムコポリマーを含む溶液の所望の量を取り、そして、
上記定義の外部性化合物A5を含む溶液の所望の量を取り、
それらの取られた溶液を、同時又は逐次のいずれかで混合することで、本発明の組成物を得る、
ということで十分である。
【0243】
上記化合物の添加の順序は、添加剤組成物を製造する方法の実施に影響を及ぼさない。
【0244】
当業者はまた、ポリジオールランダムコポリマーA1及び化合物A2、特にボロン酸エステルランダムコポリマーが会合される組成物、又はポリジオールランダムコポリマーA1及び化合物A2、特にボロン酸エステルランダムコポリマーが架橋される組成物のいずれかを得て、所与の使用温度についてのその会合度又は架橋度を変更するために本発明の組成物の様々なパラメーターをどのように調節するかを認識している。例えば、当業者は、特に、
ポリジオールランダムコポリマーA1中のジオール官能基を有するモノマーM1のモル百分率、
ポリジオールランダムコポリマーA1中のスチレンモノマーM3の含量、
ボロン酸エステルランダムコポリマーA2中のボロン酸エステル官能基を有するモノマーM4のモル百分率、
ポリジオールランダムコポリマーA1の側鎖の平均長さ、
ボロン酸エステルランダムコポリマーA2の側鎖の平均長さ、
ボロン酸エステルランダムコポリマーA2のモノマーM4の長さ、
ボロン酸エステルランダムコポリマーA2中の式(IV)のスチレンモノマーM4又は式(V)のM5又は式(X)のM3の含量、
ボロン酸ジエステル化合物A2の長さ、
ポリジオールランダムコポリマーA1及びボロン酸エステルランダムコポリマーA2の数平均重合度、
ポリジオールランダムコポリマーA1の質量百分率、
ボロン酸ジエステル化合物A2の質量百分率、
ボロン酸エステルランダムコポリマーA2の質量百分率、
並びに、適宜、
ポリジオールランダムコポリマーA1のジオール官能基に対する外部性化合物A5のモル量、
外部性化合物A5の化学的性質、
外部性化合物A5のモル百分率、
等をどのように調節するかを認識している。
【0245】
本発明の新規の組成物の使用
本発明の組成物は、その粘度が温度に応じて変動するあらゆる媒体中で使用され得る。本発明の組成物は、使用温度に応じて流体を増粘し、粘度を変更することを可能にする。本発明による添加剤組成物は、原油回収の支援、製紙産業、塗料、食品添加物、及び化粧品製剤、又は医薬品製剤のような多岐にわたる分野で使用され得る。
【0246】
本発明による潤滑剤組成物
本発明のもう1つの主題は、
少なくとも1種の潤滑油と、
上記定義の少なくとも1種のポリジオールランダムコポリマーA1と、
上記ポリジオールランダムコポリマーA1と少なくとも1つのエステル交換反応を介して会合し得る少なくとも2個のボロン酸エステル官能基を有する上記定義の少なくとも1種のランダムコポリマーA2と、
上記定義の式(XI)のボロン酸エステルから選択される少なくとも1種の外部性化合物A5と、
を混合することにより得られる潤滑剤組成物に関する。
【0247】
一般式(I)、一般式(I-A)、一般式(I-B)、一般式(II-A)、一般式(II-B)、及び一般式(X)について記載された好ましい事項及び定義は、本発明の潤滑剤組成物において使用されるポリジオールランダムコポリマーA1にも当てはまる。
【0248】
一般式(IV)及び一般式(V)について記載された好ましい事項及び定義は、本発明の潤滑剤組成物において使用されるボロン酸エステルランダムコポリマーA2にも当てはまる。
【0249】
一般式(XI)及び一般式(XIA)について記載された好ましい事項及び定義は、本発明の潤滑剤組成物において使用される外部性化合物A5にも当てはまる。
【0250】
本発明による潤滑剤組成物は、基油及び従来技術のポリマー型のレオロジー添加剤の挙動と比べて温度の変更に対して反対の挙動を有し、このレオロジー挙動が使用温度に応じて変更され得るという利点を有する。温度上昇時に流動化される基油とは対照的に、本発明の組成物は、温度上昇時に増粘するという利点を有する。可逆的な共有結合の形成により、高い温度でポリマーのモル質量を(可逆的に)増大させ、こうして基油の粘度降下を抑えることが可能となる。ジオール化合物の追加の添加により、これらの可逆的な結合の形成の度合いを制御することが可能となる。有利には、潤滑剤組成物の粘度はこのように制御され、温度の変動にほとんど依存しない。さらに、所与の使用温度に関して、潤滑剤組成物に添加されるボロン酸エステル化合物A5の量の変更によって、潤滑剤組成物の粘度及びそのレオロジー挙動を変更することが可能となる。
【0251】
潤滑油
「油」という用語は、室温(25℃)及び大気圧(760mmHg、すなわち105Pa)で液体である脂肪性物質を意味する。
【0252】
「潤滑油」という用語は、2つの可動部間の摩擦を減じて、これらの部品の機能化を促進する油を意味する。これらの潤滑油は、天然由来、鉱物由来、又は合成由来であり得る。
【0253】
天然由来の潤滑油は、植物由来又は動物由来の油、好ましくは植物由来の油、例えばナタネ油、ヒマワリ油、パーム油、ココヤシ核油等であり得る。
【0254】
鉱物由来の潤滑油は、石油由来であり、原油の常圧蒸留及び真空蒸留から得られる石油留分から抽出される。該蒸留に続いて、精製操作、例えば溶剤抽出、脱歴、溶剤による脱パラフィン、水素化精製、水素化分解、水素異性化、水素化仕上げ等が行われ得る。実例としては、パラフィン系鉱物基油、例えばブライトストック溶剤(BSS)油、ナフテン系鉱物基油、芳香族鉱油、粘度指数が約100である水素化精製された鉱物油、粘度指数が120から130の間である水素化分解された鉱物油、又は粘度指数が140から150の間である水素異性化された鉱物油を挙げることができる。
【0255】
合成由来の潤滑油(又は合成基油)は、その名称が示しているように、化学合成、例えば或る物質のそれ自体への付加若しくは重合、又は或る物質の別の物質への付加、例えばエステル化、石油化学、炭素化学、及び鉱物化学に由来する成分、すなわちオレフィン、芳香族化合物、アルコール、酸、ハロゲンを基礎とする化合物、リンを基礎とする化合物、ケイ素を基礎とする化合物等のアルキル化、フッ素化等に由来する。実例としては、
合成炭化水素、例えばポリ-α-オレフィン(PAO)、内部ポリオレフィン(IPO)、ポリブテン、及びポリイソブテン(PIB)、ジアルキルベンゼン、及びアルキル化ポリフェニルを基礎とする合成油、
エステル、例えば2酸エステル又はネオポリオールエステルを基礎とする合成油、
ポリグリコール、例えばモノアルキレングリコール、ポリアルキレングリコール、及びポリアルキレングリコールモノエーテルを基礎とする合成油、
リン酸エステルを基礎とする合成油、
ケイ素誘導体、例えばシリコーン油又はポリシロキサンを基礎とする合成油、
を挙げることができる。
【0256】
本発明の組成物において使用され得る潤滑油は、以下にまとめられるようなAPI規定(アメリカ石油協会(API)の基油互換性規定)(又はATIEL分類(Association Technique de l'Industrie Europeenne des Lubrifiants)に準ずるそれらの等価物)に特定されるグループI~グループVのあらゆる油から選択され得る:
【表1】
【0257】
本発明の組成物は、1種以上の潤滑油を含み得る。潤滑油又は潤滑油混合物は、潤滑剤組成物中の主成分である。その際、潤滑油又は潤滑油混合物は、潤滑剤基油と称される。「主成分」という用語は、潤滑油又は潤滑油混合物が、組成物の全重量に対して少なくとも51重量%に相当することを意味する。
【0258】
好ましくは、潤滑油又は潤滑油混合物は、組成物の全重量に対して少なくとも70重量%に相当する。
【0259】
本発明の1つの実施の形態においては、上記潤滑油は、API分類のグループI、グループII、グループIII、グループIV、及びグループVの油、並びにそれらの混合物により構成される群から選択される。好ましくは、上記潤滑油は、API分類のグループIII、グループIV、及びグループVの油、並びにそれらの混合物により構成される群から選択される。好ましくは、上記潤滑油は、API分類のグループIIIからの油である。
【0260】
上記潤滑油は、2cSt~150cStの範囲、好ましくは2cSt~15cStの範囲の規格ASTM D445により測定された100℃での動粘度を有する。
【0261】
機能的添加剤
1つの実施の形態によれば、本発明の組成物はまた、清浄剤、耐摩耗性添加剤、極圧添加剤、酸化防止剤、粘度指数向上性ポリマー、流動点改良剤、消泡剤、増粘剤、腐食防止添加剤、分散剤、摩擦調整剤、及びそれらの混合物により構成される群から選択される1種以上の機能的添加剤を含み得る。
【0262】
本発明の組成物に添加される1種以上の機能的添加剤は、潤滑剤組成物の最終用途に応じて選択される。これらの添加剤は、2つの異なる様式で導入され得る:
それぞれの添加剤を、上記組成物へと個別にかつ逐次に添加する、又は、
添加剤の全てを、上記組成物へと同時に添加する;該添加剤は、この場合に一般的に添加剤パックとして知られるパックの形で入手可能である。機能的添加剤又は機能的添加剤の混合物は、存在する場合には、上記組成物の全重量に対して0.1重量%~10重量%に相当する。
【0263】
清浄剤:
これらの添加剤は、酸化及び燃焼の副生成物を溶解することにより金属部品の表面上の堆積物の形成を減少させる。本発明による潤滑剤組成物において使用され得る清浄剤は、当業者によく知られている。潤滑剤組成物の配合において通常使用される清浄剤は、一般的に親油性の炭化水素を基礎とする長鎖と親水性の頭部とを含むアニオン性化合物である。付随するカチオンは、一般的にアルカリ金属又はアルカリ土類金属の金属カチオンである。清浄剤は、選好的にはカルボン酸のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩、スルホン酸塩、サリチル酸塩、及びナフテン酸塩、そしてまた石炭酸塩から選択される。アルカリ金属及びアルカリ土類金属は、選好的にはカルシウム、マグネシウム、ナトリウム、又はバリウムである。これらの金属塩は、上記金属をほぼ化学量論量で又は過剰に(化学量論量よりも多い量で)含有し得る。後者の場合に、これらの清浄剤は、過塩基性清浄剤として知られる。清浄剤に過塩基性の性質を与える過剰の金属は、油不溶性の金属塩、例えば炭酸塩、水酸化物、シュウ酸塩、酢酸塩、又はグルタミン酸塩、選好的には炭酸塩の形で存在する。
【0264】
耐摩耗性添加剤及び極圧添加剤:
これらの添加剤は摩擦表面をこれらの表面上に吸着される保護皮膜の形成により保護する。広範な多岐にわたる耐摩耗性添加剤及び極圧添加剤が存在する。挙げることができる実例には、リン硫黄添加剤、例えば金属アルキルチオリン酸塩、特にアルキルチオリン酸亜鉛、より具体的にはジアルキルジチオリン酸亜鉛又はZnDTP、リン酸アミン、多硫化物、特に硫黄を基礎とするオレフィン、及び金属ジチオカルバミン酸塩が含まれる。
【0265】
酸化防止剤:
これらの添加剤は、上記組成物の分解を遅延させる。上記組成物の分解は、堆積物の形成、スラッジの存在、又は該組成物の粘度の増大により反映され得る。酸化防止剤は、ラジカル阻害剤又は過酸化物破壊物質として作用する。酸化防止剤の中で、通常使用されるのは、フェノール型又はアミン型の酸化防止剤である。
【0266】
腐食防止剤:
これらの添加剤は、金属の表面への酸素の到達を防ぐ皮膜で表面を覆う。該添加剤は、時々、金属の腐食を防ぐために酸又は或る特定の化学物質を中和し得る。実例として、挙げることができる例には、ジメルカプトチアジアゾール(DMTD)、ベンゾトリアゾール、及び亜リン酸塩(遊離硫黄の吸収)が含まれる。
【0267】
粘度指数向上性ポリマー:
これらの添加剤は、上記組成物のために良好な耐寒性、及び高い温度での最低粘度を保証する。実例として、挙げることができる例には、アルキルのポリマーエステル、オレフィンコポリマー(OCP)、及び/又はポリメタクリレート(PMA)が含まれる。
【0268】
流動点改良剤:
これらの添加剤は、パラフィン結晶の形成を遅らせることにより組成物の低温挙動を改善する。該添加剤は、例えばポリアルキルメタクリレート、ポリアクリレート、ポリアクリルアミド、ポリアルキルフェノール、ポリアルキルナフタレン、及びポリアルキルスチレンである。
【0269】
消泡剤:
これらの添加剤は、清浄剤の効果と対立する効果を有する。挙げることができる実例には、ポリメチルシロキサン及びポリアクリレートが含まれる。
【0270】
増粘剤:
増粘剤は、とりわけ工業用潤滑のために使用される添加剤であり、エンジン用潤滑剤組成物よりも高い粘度の潤滑剤を配合することを可能にする。挙げることができる実例には、10000g/molから100000g/molの重量平均モル質量を有するポリイソブテンが含まれる。
【0271】
分散剤:
これらの添加剤は、懸濁の保持、及び上記組成物の使用の間に形成される酸化副生成物により構成される不溶性の固体不純物の除去を保証する。実例として、挙げることができる例には、スクシンイミド、PIB(ポリイソブテン)スクシンイミド、及びマンニッヒ塩基が含まれる。
【0272】
摩擦調整剤:
これらの添加剤は、上記組成物の摩擦係数を改善する。挙げることができる実例には、ジチオカルバミン酸モリブデン、少なくとも16個の炭素原子の少なくとも1個の炭化水素を基礎とする鎖を有する手段、及びポリオールの脂肪酸エステル、例えばグリセロールの脂肪酸エステル、特にグリセリルモノオレエートが含まれる。
【0273】
本発明の潤滑剤組成物を製造する方法
本発明の潤滑剤組成物は、当業者によく知られる手段により製造される。例えば、特に当業者には、
特に式(I)の少なくとも1種のモノマーと式(II-A)の少なくとも1種のモノマー及び式(II-B)の少なくとも1種のモノマーとの共重合により得られる上記定義のジオールランダムコポリマーA1を含む溶液の所望量を取り、
上記定義のポリ(ボロン酸エステル)ランダムコポリマーA2を含む溶液の所望の量を取り、
上記定義の外部性化合物A5を含む溶液の所望の量を取り、
同時又は逐次のどちらかで混合して、その溶液を潤滑剤基油中に取ることで、本発明の潤滑剤組成物を得る、
ということで十分である。
【0274】
上記化合物の添加の順序は、潤滑剤組成物を製造する方法の実施に影響を及ぼさない。
【0275】
本発明による潤滑剤組成物の特性
本発明の潤滑剤組成物は、会合を介して潤滑油の粘度を増大させる特性を有する会合性ポリマーの混合により得られる。本発明による潤滑剤組成物は、これらの会合又は架橋が熱可逆的であり、任意に会合度又は架橋度が、追加のボロン酸エステル化合物A5の添加により制御され得るという利点を有する。
【0276】
当業者は、温度上昇時に粘度が増大する潤滑剤組成物を得て、その粘度及びレオロジー挙動を変更するために、該組成物の様々な成分の様々なパラメーターをどのように調節するかを認識している。
【0277】
ポリジオールランダムコポリマーA1と化合物A2、特にボロン酸エステルランダムコポリマーA2との間にもたらされ得る複数のボロン酸エステル結合(又は1つのボロン酸エステル結合)の量は、当業者によれば、ポリジオールランダムコポリマーA1、化合物A2、特にボロン酸エステルランダムコポリマーA2、外部性化合物A5の適切な選択、及び特に外部性化合物A5のモル百分率の適切な選択によって調節される。
【0278】
さらに、当業者は、ランダムコポリマーA1の構造に応じて化合物A2、特にボロン酸エステルランダムコポリマーの構造をどのように選択するかを認識している。好ましくは、少なくとも1種のモノマーM1を含むランダムコポリマーA1において、y=1である場合に、一般式(III)の化合物A2、又は式(IV)の少なくとも1種のモノマーM4を含むコポリマーA2は、好ましくはそれぞれw1=1、w2=1、及びt=1で選択されることとなる。
【0279】
さらに、当業者は、特に、
ポリジオールランダムコポリマーA1中のジオール官能基を有するモノマーM1のモル百分率、
ポリジオールランダムコポリマーA1中の式(X)のモノマーM3のモル百分率、特にスチレンのモル百分率、
ボロン酸エステルランダムコポリマーA2中のボロン酸エステル官能基を有するモノマーM4のモル百分率、
ポリジオールランダムコポリマーA1の側鎖の平均長さ、
ボロン酸エステルランダムコポリマーA2の側鎖の平均長さ、
ボロン酸エステルランダムコポリマーA2のモノマーM4の長さ、
ポリジオールランダムコポリマーA1及びボロン酸エステルランダムコポリマーA2の平均重合度、
ポリジオールランダムコポリマーA1の質量百分率、
ボロン酸エステルランダムコポリマーA2の質量百分率、
ポリジオールランダムコポリマーA1のジオール官能基に対する外部性化合物A5のモル百分率、
等をどのように調節するかを認識している。
【0280】
有利には、潤滑剤組成物中のランダムコポリマーA1の含量は、該潤滑剤組成物の全重量に対して0.25重量%~20重量%、好ましくは該潤滑剤組成物の全重量に対して1重量%~10重量%の範囲である。
【0281】
有利には、化合物A2の含量、特にボロン酸エステルランダムコポリマーの含量は、上記潤滑剤組成物の全重量に対して0.25重量%~20重量%、好ましくは上記潤滑剤組成物の全重量に対して0.5重量%~10重量%の範囲である。
【0282】
選好的には、ポリジオールランダム化合物A1と化合物A2、特にボロン酸エステルランダムコポリマーとの間の質量比(比A1/A2)は、0.001~100、好ましくは0.05~20、更により好ましくは0.1~10、より好ましくは0.2~5の範囲である。
【0283】
1つの実施の形態においては、ランダムコポリマーA1及び化合物A2、特にボロン酸エステルランダムコポリマーの質量の合計は、上記潤滑剤組成物の全質量に対して0.5%~20%、好ましくは、上記潤滑剤組成物の全質量に対して4%~15%の範囲であり、かつ潤滑油の質量は、上記潤滑剤組成物の全質量に対して60%~99%の範囲である。
【0284】
エンジン用途のためには、有利には、ランダムコポリマーA1及び化合物A2の質量の合計は、上記潤滑剤組成物の全質量に対して0.1%~15%に相当する。
【0285】
トランスミッション用途のためには、有利には、ランダムコポリマーA1及び化合物A2の質量の合計は、上記潤滑剤組成物の全質量に対して0.5%~50%に相当する。
【0286】
1つの実施の形態においては、潤滑剤組成物中の外部性化合物A5のモル百分率は、ランダムコポリマーA1のジオール官能基に対して、0.05%~5000%、好ましくは0.1%~1000%、より好ましくは0.5%~500%、更により好ましくは1%~150%の範囲である。
【0287】
1つの実施の形態においては、本発明の潤滑剤組成物は、
該潤滑剤組成物の全重量に対して0.5重量%~20重量%の上記定義の少なくとも1種のポリジオールランダムコポリマーA1と、
該潤滑剤組成物の全重量に対して0.5重量%~20重量%の上記定義の少なくとも1種の化合物A2、特にボロン酸エステルランダムコポリマーと、
該潤滑剤組成物の全重量に対して0.001重量%~0.5重量%の上記定義の少なくとも1種の外部性化合物A5と、
該潤滑剤組成物の全重量に対して60重量%~99重量%の上記定義の少なくとも1種の潤滑油と、
を混合することにより得られる。
【0288】
もう1つの実施の形態においては、本発明の潤滑剤組成物は、
該潤滑剤組成物の全重量に対して0.5重量%~20重量%の上記定義の少なくとも1種のポリジオールランダムコポリマーA1と、
該潤滑剤組成物の全重量に対して0.5重量%~20重量%の上記定義の少なくとも1種の化合物A2、特にボロン酸エステルランダムコポリマーと、
任意に、該潤滑剤組成物の全重量に対して0.001重量%~0.5重量%の上記定義の少なくとも1種の外部性化合物A5と、
該潤滑剤組成物の全重量に対して0.5重量%~15重量%の上記定義の少なくとも1種の機能的添加剤と、
該潤滑剤組成物の全重量に対して60重量%~99重量%の上記定義の少なくとも1種の潤滑油と、
を混合することにより得られる。
【0289】
潤滑剤組成物の粘度を変更する方法
本発明のもう1つの主題は、潤滑剤組成物の粘度を変更する方法であって、少なくとも、
少なくとも1種の潤滑油、少なくとも1種のポリジオールランダムコポリマーA1、及び上記ポリジオールランダムコポリマーA1と少なくとも1つのエステル交換反応を介して会合し得る少なくとも2個のボロン酸エステル官能基を有する少なくとも1種のランダムコポリマーA2とを混合することにより得られる潤滑剤組成物を準備することと、
上記潤滑剤組成物に、式(XI)のボロン酸ジエステルから選択される少なくとも1種の外部性化合物A5を添加することと、
を含む、方法である。
【0290】
本発明の目的のために、「潤滑剤組成物の粘度を変更する」という文言は、潤滑剤組成物の使用に応じて、所与の温度で粘度を適合させることを意味する。これは、上記定義の外部性化合物A5を添加することにより得られる。この化合物により、2種のコポリマー、すなわちポリジオールA1及びポリ(ボロン酸エステル)コポリマーA2の会合度及び架橋度を制御することが可能となる。
【0291】
本発明によるその他の主題:
本発明のもう1つの主題は、上記定義の潤滑剤組成物の、機械部品の潤滑のための使用である。
【0292】
詳細な説明の残りの部分においては、百分率は、潤滑剤組成物の全重量に対して重量基準で表現される。
【0293】
本発明の組成物は、エンジン内に通常見られる部品、例えばピストン系、リング、及びジャケットの表面を潤滑させるために使用され得る。
【0294】
したがって、本発明のもう1つの主題は、
85重量%~99.98重量%、有利には92重量%~99重量%の潤滑油と、
0.1重量%~15重量%、有利には1重量%~8重量%の上記定義の少なくとも1種のランダムコポリマーA1と上記定義の少なくとも1種のボロン酸エステルランダムコポリマーA2との混合物と、
0.001重量%~0.1重量%の上記定義の少なくとも1種の外部性化合物A5と、
を混合することにより得られる組成物を含み、特に本質的に該組成物からなる、少なくとも1つのエンジンを潤滑させるための組成物であって、3.8cSt~26.1cStの範囲の規格ASTM D445により測定された100℃での動粘度を有し、上記重量パーセントは、上記組成物の全重量を基準に表現される、組成物である。
【0295】
上記定義の少なくとも1つのエンジンを潤滑させるための組成物において、上記定義のランダムコポリマーA1及びボロン酸エステルランダムコポリマーA2は、外部性化合物A5の存在下で熱可逆的に会合し、交換し得るが、それらのコポリマーは、3次元ネットワークを形成しない。それらのコポリマーは、架橋されていない。
【0296】
1つの実施の形態においては、少なくとも1つのエンジンを潤滑させるための組成物はまた、清浄剤、耐摩耗性添加剤、極圧添加剤、追加の酸化防止剤、腐食防止添加剤、粘度指数向上性ポリマー、流動点改良剤、消泡剤、増粘剤、分散剤、摩擦調整剤、及びそれらの混合物により構成される群から選択される少なくとも1種の機能的添加剤を含む。
【0297】
本発明の1つの実施の形態においては、少なくとも1つのエンジンを潤滑させるための組成物は、
80重量%~99重量%の潤滑油と、
0.1重量%~15重量%の上記定義の少なくとも1種のランダムコポリマーA1と上記定義の少なくとも1種のボロン酸エステルランダムコポリマーA2との混合物と、
0.001重量%~0.1重量%の上記定義の少なくとも1種の外部性化合物A5と、
0.5重量%~15重量%の清浄剤、耐摩耗性添加剤、極圧添加剤、追加の酸化防止剤、腐食防止添加剤、粘度指数向上性ポリマー、流動点改良剤、消泡剤、増粘剤、分散剤、摩擦調整剤、及びそれらの混合物により構成される群から選択される少なくとも1種の機能的添加剤と、
を混合することにより得られる組成物を含み、特に本質的に該組成物からなり、
上記組成物は、3.8cSt~26.1cStの範囲の規格ASTM D445により測定された100℃での動粘度を有し、上記重量パーセントは、上記組成物の全重量を基準に表現される。
【0298】
潤滑油、ランダムコポリマーA1、ボロン酸エステルランダムコポリマーA2、及び外部性化合物A5に関連する定義及び好ましい事項は、少なくとも1つのエンジンを潤滑させるための組成物にも当てはまる。
【0299】
本発明のもう1つの主題は、少なくとも1つのトランスミッション、例えばマニュアルギアボックス又はオートマチックギアボックスを潤滑させるための組成物である。
【0300】
したがって、本発明のもう1つの主題は、
50重量%~99.4重量%の潤滑油と、
0.5重量%~15重量%の上記定義の少なくとも1種のランダムコポリマーA1と上記定義の少なくとも1種のボロン酸エステルランダムコポリマーA2との混合物と、
0.001重量%~0.5重量%の上記定義の少なくとも1種の外部性化合物A5と、
を混合することにより得られる組成物を含み、特に本質的に該組成物からなる、少なくとも1つのトランスミッションを潤滑させるための組成物であって、4.1cSt~41cStの範囲の規格ASTM D445により測定された100℃での動粘度を有し、上記重量パーセントは、上記組成物の全重量を基準に表現される、組成物である。
【0301】
上記定義の少なくとも1つのトランスミッションを潤滑させるための組成物において、上記定義のランダムコポリマーA1及びボロン酸エステルランダムコポリマーA2は、外部性化合物A5の存在下で熱可逆的に会合し、交換し得るが、それらのコポリマーは、3次元ネットワークを形成しない。それらのコポリマーは、架橋されていない。
【0302】
1つの実施の形態においては、少なくとも1つのトランスミッションを潤滑させるための組成物はまた、清浄剤、耐摩耗性添加剤、極圧添加剤、追加の酸化防止剤、腐食防止添加剤、粘度指数向上性ポリマー、流動点改良剤、消泡剤、増粘剤、分散剤、摩擦調整剤、及びそれらの混合物により構成される群から選択される少なくとも1種の機能的添加剤を含む。
【0303】
本発明の1つの実施の形態においては、少なくとも1つのトランスミッションを潤滑させるための組成物は、
45重量%~99.39重量%の潤滑油と、
0.5重量%~50重量%の上記定義の少なくとも1種のランダムコポリマーA1と上記定義の少なくとも1種のボロン酸エステルランダムコポリマーA2との混合物と、
0.001重量%~0.5重量%の上記定義の少なくとも1種の外部性化合物A5と、
0.1重量%~15重量%の清浄剤、耐摩耗性添加剤、極圧添加剤、追加の酸化防止剤、腐食防止添加剤、粘度指数向上性ポリマー、流動点改良剤、消泡剤、増粘剤、分散剤、摩擦調整剤、及びそれらの混合物により構成される群から選択される少なくとも1種の機能的添加剤と、
を混合することにより得られる組成物を含み、特に本質的に該組成物からなり、
上記組成物は、4.1cSt~41cStの範囲の規格ASTM D445により測定された100℃での動粘度を有し、上記重量パーセントは、上記組成物の全重量を基準に表現される。
【0304】
潤滑油、ランダムコポリマーA1、ボロン酸エステルランダムコポリマーA2、及び外部性化合物A5に関連する定義及び好ましい事項は、少なくとも1つのトランスミッションを潤滑させるための組成物にも当てはまる。
【0305】
本発明の組成物は、軽車両又は大型運搬車量の、しかしまた船舶のエンジン又はトランスミッションのために使用され得る。
【0306】
本発明のもう1つの主題は、少なくとも1つの機械部品、特に少なくとも1つのエンジン又は少なくとも1つのトランスミッションを潤滑させる方法であって、上記機械部品を、上記定義の少なくとも1種の潤滑剤組成物と接触させる工程を含む、方法である。
【0307】
上記潤滑油、ランダムコポリマーA1、特に式(I)の少なくとも1種のモノマーと式(II-A)の少なくとも1種のモノマー、式(II-B)の少なくとも1種のモノマー、及び任意に式(X)の1種のモノマーM3との共重合により得られるコポリマー、ボロン酸エステルランダムコポリマーA2、並びに適宜、外部性化合物A5に関連する定義及び好ましい事項は、少なくとも1つの機械部品を潤滑させる方法にも当てはまる。
【図面の簡単な説明】
【0308】
【
図1】ランダムコポリマー(P1)、グラジエントコポリマー(P2)、及びブロックコポリマー(P3)を概略的に表す図であり、それぞれの丸はモノマー単位を表す。モノマー間の化学構造の違いは、異なる色で表されている(明るい灰色/黒色)。
【
図3】2種のポリジオールランダムコポリマー(A1-1及びA1-2)と2種のボロン酸エステルランダムポリマー(A2-1及びA2-2)との間のボロン酸エステル結合のジオールの存在下での交換反応を概略的に表す図である。
【
図4】テトラヒドロフラン(THF)中での本発明による組成物の架橋を概略的に示し、表す図である。
【
図5】温度に対する本発明の組成物の挙動を概略的に表す図である。ジオール官能基(官能基A)を有するランダムコポリマー(2)は、ボロン酸エステル官能基(官能基B)を有するランダムコポリマー(1)とエステル交換反応を介して熱可逆的に会合し得る。エステル交換反応の間に交換するボロン酸エステル官能基(官能基B)の有機基は、黒色の三日月形により表されるジオールである。ジオール化合物を放出してボロン酸エステル型の化学結合(3)が形成される。
【
図6】組成物B及び組成物Cの温度(℃、x軸上)に対する相対粘度の変化(単位なし、y軸上)を表す図である。
【
図7】組成物A、組成物E、組成物F、及び組成物Gの温度(℃、x軸上)に対する相対粘度の変化(単位なし、y軸上)を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0309】
実験部:
以下の実施例は本発明を説明するが、本発明を限定するものではない。
【0310】
1.ジオール官能基を有するランダムコポリマーA1の合成
1.1:ジオール官能基を有するモノマーによる出発
1つの実施の形態においては、本発明のランダムコポリマーA1は、以下の反応スキーム11:
【化50】
により得られる。
【0311】
RAFT鎖端を除去した後に得られるコポリマーは、とりわけコモノマーとしてスチレンを有し、チオカルボニルチオ残基は、例えばそれをチオエーテルへと転化させることにより除去される。
【0312】
1.1.1.ジオール官能基を有するモノマーM1の合成
ジオール官能基を有するメタクリレートモノマーの合成は、3つの工程(反応スキーム11の工程1、工程2、及び工程3)において以下のプロトコルに従って行われる。
【0313】
第1工程:
42.1g(314mmol)の1,2,6-ヘキサントリオール(1,2,6-HexTri)を、1L容の丸底フラスコ中に入れる。5.88gのモレキュラーシーブ(4Å)を添加し、引き続き570mLのアセトンを添加する。次いで、5.01g(26.3mmol)のパラ-トルエンスルホン酸(pTSA)をゆっくりと添加する。反応媒体を、室温で24時間にわたり撹拌する。次いで、4.48g(53.3mmol)のNaHCO3を添加する。反応媒体を、室温で3時間にわたり撹拌してから濾過する。次いで、濾液を真空下で回転蒸発器を使用して、白色の結晶の懸濁液が得られるまで濃縮する。次いで、500mLの水をこの懸濁液に添加する。こうして得られた溶液を、4×300mLのジクロロメタンで抽出する。有機相を合し、MgSO4を通じて乾燥させる。次いで、溶剤を25℃で真空下に回転蒸発器を使用して十分に蒸発除去する。
【0314】
第2工程:
次に、5.01g(28.8mmol)のこうして得られた生成物を、1L容の丸底フラスコ中に入れる。次いで、4.13g(31.9mmol)のDIPEA及び37.9mg(0.31mmol)のDMAPを該フラスコに入れ、引き続き5.34g(34.6mmol)のメタクリル酸無水物を該フラスコに入れる。次いで、該フラスコを室温で24時間にわたり撹拌する。次いで、0.95gのメタノール(29.7mmol)を、その溶液に添加し、該フラスコを更に1時間にわたり撹拌する。次いで、その生成物を40mLのヘキサン中に溶解させる。次いで、有機相を、25mLの水、3×25mLの0.5Mの塩酸水溶液、3×25mLの0.5MのNaOH水溶液で順次洗浄し、再び25mLの水で洗浄する。MgSO4を通じて有機相を乾燥させ、濾過し、次いで真空下で回転蒸発器を使用して濃縮することで、淡黄色の液体が得られる。その特質は、以下の通りである:
【0315】
第3工程:
次に、17.23g(71.2mmol)のこうして得られた生成物を、1L容の丸底フラスコ中に入れる。次いで、90mLの水及び90mLのアセトニトリルを該フラスコ中に入れ、それに続いて59.1mL(159mmol)の酢酸を入れる。次いで、そのフラスコを、強制的にアセトンを除去するために軽く窒素流を気泡導通させつつ30℃で24時間にわたり撹拌する。こうして得られた溶液を、6×30mLの酢酸エチルで抽出する。有機相を、5×30mLの0.5MのNaOH水溶液、次いで3×30mLの水で順次洗浄する。次いで、MgSO4を通じて有機相を乾燥させ、濾過し、次いで真空下で回転蒸発器を使用して濃縮することで、淡黄色の液体が得られる。その特徴は、以下の通りである:
1H NMR(400MHz、CDCl3)δ:6.02(一重線、1H)、5.49(一重線、1H)、4.08(三重線、J=6.4Hz、1H)、3.65~3.58(多重線、1H)、3.57~3.50(多重線、3H)、3.35(二重線の二重線、J=7.6Hz及びJ=11.2Hz、1H)、1.86(二重線の二重線、J=1.2Hz及びJ=1.6Hz、3H)、1.69~1.31(多重線、6H)。
【0316】
1.1.2.ジオール官能基を有するメタクリレートコポリマーの合成
ジオール官能基を有するメタクリレートコポリマーの合成は、2つの工程(反応スキーム11の工程4及び工程5)において行われる:
2種のアルキルメタクリレートモノマーと、ジオール官能基を有するメタクリレートモノマー及びスチレンモノマーとの共重合、
RAFT鎖端の除去(アミノ分解に続いて、該チオールのアルキルアクリレートとのマイケル付加)。
【0317】
より具体的には、コポリマーA-1aの合成は、以下のプロトコルに従って行われる。
【0318】
第1工程:
12.56g(37.1mmol)のステアリルメタクリレート(StMA)、12.59g(49.5mmol)のラウリルメタクリレート(LMA)、2.57g(24.7mmol)のスチレン(Sty)、2.54g(12.4mmol)のセクション1.1.1に記載されるプロトコルに従って得られたジオール官能基を有するメタクリレート、82.5mg(0.30mmol)のクミルジチオベンゾエート、15mg(0.09mmol)のアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、及び30mLのアニソールを、250mL容のシュレンク管中に入れる。反応媒体を撹拌し、窒素を気泡導通させることにより30分間にわたり脱ガスし、次いで65℃で24時間の期間にわたり保持する。
【0319】
第2工程:
24時間の重合の後に、上記シュレンク管を氷浴中に入れて、重合を停止させ、30mLのジメチルホルムアミド(DMF)及び0.4mLのn-ブチルアミン(4mmol)を、その溶液に媒体の脱ガスをせずに添加する。15時間後に、ポリマーが完全に変色したら、3mL(21mmol)のブチルアクリレートを添加する。16時間後に、メタノール中での3回の連続した沈殿、濾過、及び真空下での50℃での一晩の乾燥によってポリマーを単離する。こうして、53000g/molの数平均モル質量(Mn)、1.19の多分散性指数(Ip)、及び253の数平均重合度(DPn)を有するコポリマーが得られる。これらの値は、それぞれ、溶離液としてテトラヒドロフランを使用し、ポリ(メチルメタクリレート)較正を使用するサイズ排除クロマトグラフィー、及び共重合の間のモノマー変換の観測により得られる。
【0320】
約10mol%のジオールモノマー単位M1を有するポリ(アルキルメタクリレート-co-アルキルジオールメタクリレート-co-スチレン)コポリマーが得られる。
【0321】
2.ポリ(アルキルメタクリレート-co-ボロン酸エステルモノマー)コポリマーの合成
この合成は、特許出願の特許文献3(実験セクション2)に記載されるプロトコルに従って行われる。
【0322】
3.化合物A5の合成
化合物A5の合成は、以下のプロトコルに従って1工程で行われる:
5000gのフェニルボロン酸(PBA)(41.0mmol)を500mL容の丸底フラスコ中に導入した後に、200mLのTHFを導入する。次いで、反応媒体を撹拌する。0.5mL(28mmol)の水を、フェニルボロン酸が完全に溶解するまで滴加する。その後に、反応媒体は透明かつ均質となる。次いで、8.286gの1,2-ドデカンジオール(1,2-DDD)(41.0mmol)をゆっくり添加した後に、過剰の無水硫酸マグネシウムを添加することで、最初に導入された水も、PBAと1,2-DDDとの間の縮合により放出された水も捕捉される。反応媒体を、25℃で2時間にわたり撹拌し、その後に濾過する。次いで、その濾液から溶剤を回転蒸発器上で除去する。得られる化合物は、約93mol%のボロン酸エステル及び7mol%の残留1,2-ドデカンジオールを含有する混合物である。
1H NMR(400MHz,CDCl3)δ:7.90(多重線,2H)、7.60~7.40(多重線,3H)、4.60(多重線,1H)、4.46(三重線,J=9.2Hz,1H)、3.99(二重線の二重線,J=7.2Hz及びJ=8.8Hz,1H)、1.85~1.20(多重線,18H)、0.96(三重線,J=6.8Hz,3.2H)。
【0323】
4.レオロジー研究
4.1 組成物A~Gの配合のための成分
潤滑剤基油
試験組成物において使用される潤滑剤基油は、SK社によりYubase 4の名称で販売されるAPI分類のグループIIIからの油である。その油は、以下の特質を有する:
規格ASTM D445に従って測定された40℃でのその動粘度は、19.57cStである;
規格ASTM D445に従って100℃で測定されたその動粘度は、4.23cStである;
規格ASTM D2270に従って測定されたその粘度指数は、122である;
規格DIN 51581に従って測定された重量百分率としてのそのNoack揮発性は、14.5である;
規格ASTM D92に従って測定された摂氏度でのその引火点は、230℃である;
規格ASTM D97に従って測定された摂氏度でのその流動点は、-15℃である。
【0324】
ポリジオールランダムコポリマーA-1
このコポリマーは、10mol%のジオール官能基を有するモノマー、及び25mol%のスチレンモノマーを含む。平均側鎖長は、13.5個の炭素原子である。その数平均モル質量は、50500g/molである。その多分散性指数は、1.26である。その数平均重合度(DPn)は、240である。数平均モル質量、及び多分散性指数は、ポリ(メチルメタクリレート)較正を使用するサイズ排除クロマトグラフィー測定により測定される。このコポリマーは、上記セクション1に記載されるプロトコルを実施することにより得られる。
【0325】
ボロン酸エステルランダムコポリマーA-2:
このコポリマーは、5mol%のボロン酸エステル官能基を有するモノマーを含む。平均側鎖長は、12個の炭素原子である。その数平均モル質量は、39000g/molである。その多分散性指数は、1.41である。その数平均重合度(DPn)は、192である。その数平均モル質量及び多分散性指数は、ポリ(メチルメタクリレート)較正を使用するサイズ排除クロマトグラフィー測定により測定される。このコポリマーは、上記セクション2に記載されるプロトコルを実施することにより得られる。
【0326】
化合物A5
この化合物は、フェニルボロン酸及び1,2-ドデカンジオールのエステル化により形成される93mol%のボロン酸エステルと、7mol%の過剰な1,2-ドデカンジオールとからなる。この化合物は、上記セクション3に記載されるプロトコルを実施することにより得られる。
【0327】
4.2 粘度研究のための組成物の配合
組成物A(比較用)は、以下のように得られる:
その組成物は、API分類のグループIIIからの潤滑剤基油中の4.2質量%のポリメタクリレートポリマーを含む溶液を含有する。該ポリマーは、106000g/molに等しい数平均モル質量(Mn)、3.06に等しい多分散性指数(Ip)、及び466の数平均重合度を有し、平均側鎖長は、14個の炭素原子である。
【0328】
このポリメタクリレートを、粘度指数向上性添加剤として使用する。グループIIIの基油中のこのポリメタクリレートの質量濃度が42%である4.95gの配合物、及び44.6gのグループIIIの基油をフラスコに入れる。こうして得られた溶液を、該ポリメタクリレートが完全に溶解するまで90℃で撹拌する。
【0329】
4.2質量%の上記ポリメタクリレートを含む溶液が得られる。この組成物を、粘度研究のための参照として使用する。該組成物は、市販の潤滑剤組成物のレオロジー挙動に相当する。
【0330】
組成物B(比較用)は、以下のように得られる:
6.52gのポリジオールコポリマーA-1及び58.68gのグループIIIの基油を、フラスコ中に入れる。こうして得られた溶液を、該ポリジオールA-1が完全に溶解するまで室温で撹拌する。10質量%のポリジオールコポリマーA-1を含む溶液が得られる。
【0331】
グループIIIの基油中の10質量%のポリジオールA-1の4.2gの上記溶液を、2.8gのこの同じ基油と混合する。こうして得られた溶液を、室温で5分間にわたり撹拌する。6質量%のポリジオールコポリマーA-1を含む溶液が得られる。
【0332】
組成物C(比較用)は、以下のように得られる:
7.33gのポリ(ボロン酸エステル)コポリマーA-2及び65.97gのグループIIIの基油を、フラスコ中に入れる。こうして得られた溶液を、該ポリ(ボロン酸エステル)コポリマーA-2が完全に溶解するまで室温で撹拌する。10質量%のポリ(ボロン酸エステル)コポリマーA-2を含む溶液が得られる。
【0333】
グループIIIの基油中の10質量%のポリ(ボロン酸エステル)コポリマーA-2の4.2gの上記溶液を、2.8gのこの同じ基油と混合する。こうして得られた溶液を、室温で5分間にわたり撹拌する。6質量%のポリ(ボロン酸エステル)コポリマーA-2を含む溶液が得られる。
【0334】
組成物Dは、以下のように得られる:
1.65gの化合物A-5及び14.85gのグループIIIの基油を、フラスコ中に入れる。こうして得られた溶液を、該化合物A-5が完全に溶解するまで室温で撹拌する。10質量%の化合物A-5を含む溶液が得られる。
【0335】
組成物E(比較用)は、以下のように得られる:
上記のように製造された10質量%のポリジオールA-1を含有する2.80gの溶液、及び1.40gのグループIIIの基油を、フラスコ中に入れる。上記のように製造された10質量%のポリ(ボロン酸エステル)コポリマーA-2を含有する2.80gの溶液を、この溶液に添加する。こうして得られた溶液を、室温で5分間にわたり撹拌する。4質量%のポリジオールコポリマーA-1、及び4質量%のポリ(ボロン酸エステル)コポリマーA2を含む溶液が得られる。
【0336】
組成物F(本発明による)は、以下のように得られる:
上記のように製造された10質量%のポリジオールA-1を含有する2.80gの溶液、及び1.26gのグループIIIの基油を、フラスコ中に入れる。上記のように製造された10質量%のポリ(ボロン酸エステル)コポリマーA-2を含有する2.80gの溶液及び上記のように製造された0.14gの組成物Dを、この溶液に添加する。こうして得られた溶液を、室温で5分間にわたり撹拌する。4質量%のポリジオールコポリマーA-1、4質量%のポリ(ボロン酸エステル)コポリマーA-2、及び48.6μmolの化合物A-5を含む溶液が得られる。したがって、その溶液は、ポリジオールA-1のジオール官能基に対して43mol%の化合物A-5と、ポリ(ボロン酸エステル)コポリマーA-2のBE官能基に対して93mol%の化合物A-5とを含む。
【0337】
組成物G(本発明による)は、以下のように得られる:
上記のように製造された10質量%のポリジオールA-1を含有する2.80gの溶液、及び1.12gのグループIIIの基油を、フラスコ中に入れる。上記のように製造された10質量%のポリ(ボロン酸エステル)コポリマーA-2を含有する2.80gの溶液及び上記のように製造された0.28gの組成物Dを、この溶液に添加する。こうして得られた溶液を、室温で5分間にわたり撹拌する。4質量%のポリジオールコポリマーA-1、4質量%のポリ(ボロン酸エステル)コポリマーA-2、及び97.2μmolの化合物A-5を含む溶液が得られる。したがって、その溶液は、ポリジオールA-1のジオール官能基に対して86mol%の化合物A-5と、ポリ(ボロン酸エステル)コポリマーA-2のBE官能基に対して186mol%の化合物A-5とを含む。
【0338】
4.4 粘度を測定するための装置及びプロトコル
レオロジー研究を、Anton Paar社製のCouette MCR 501応力制御型レオメーターを使用して実施した。
【0339】
研究温度範囲にわたってグループIIIの基油中でゲルを形成しないポリマー配合物(組成物A~G)の場合においては、レオロジー測定を、円筒形状の照会DG 26.7を使用して実施した。粘度を、10℃~110℃に及ぶ温度範囲にわたる剪断速度に対して測定した。それぞれの温度について、系の粘度を、1s-1~100s-1の剪断速度に対して測定した。T=10℃、50℃、70℃、及び110℃での剪断速度に対する粘度の測定を実施した(10℃から110℃に向けて)。次いで、平均粘度を、それぞれの温度について同じプラトー上に位置する測定点を使用して計算した。
【0340】
以下の式:
(η相対=η溶液/η基油)
に従って計算された相対粘度を、温度に対する系の粘度変化を表すために使用した。それというのも、この大きさは、研究されるポリマー系のグループIIIの基油の固有粘度損失の補償を直接反映するからである。
【0341】
4.5 得られたレオロジーの結果
組成物A~組成物Fの粘度を、10℃~110℃に及ぶ温度範囲について研究した。これらの組成物の相対粘度は、
図6及び
図7に図示されている。組成物BにおけるポリジオールランダムコポリマーA-1単独では、グループIIIの基油の固有粘度損失の有効な補償を可能にしない(
図6)。このことは、ポリ(ボロン酸エステル)コポリマーA-2について、このポリマーが組成物Cで単独に使用される場合も同様である(
図6)。
【0342】
ポリジオールランダムコポリマーA-1及びポリ(ボロン酸エステル)コポリマーA-2が、同じ潤滑剤組成物に一緒に存在する場合(組成物E)に、ポリメタクリレートポリマーをグループIIIの基油に添加することにより得られる固有粘度損失の補償(組成物A)よりも大きいグループIIIの基油の固有粘度損失の補償が観察される(
図7)。
【0343】
該組成物(組成物F)がポリジオールコポリマーA-1のジオール官能基に対して43mol%の遊離の化合物A-5も含む場合に、ポリジオールランダムコポリマーA-1及びポリ(ボロン酸エステル)コポリマーA-2を含む組成物Eに対して、低温での相対粘度のわずかな減少、そしてまた高温粘度の損失の補償におけるわずかな低下しか観察されない(
図7)。組成物Fは、組成物Aよりも油の高温粘度の損失についてより良好な補償を得ることを可能にする一方で、同時に10℃~70℃ではこの同じ組成物Aよりも低い粘度が得られる。
【0344】
該組成物(組成物G)がポリジオールコポリマーA-1のジオール官能基に対して86mol%の遊離の化合物A-5も含む場合に、ポリジオールランダムコポリマーA-1及びポリ(ボロン酸エステル)コポリマーA-2を含む組成物Eに対して、低温での相対粘度のより大きな減少、そしてまた高温粘度の損失の補償における低下が観察される(
図7)。組成物F及び組成物Gは、高い温度でのグループIIIの基油の粘度損失を補償する特性を依然として維持している。したがって、化合物A-5は、温度に応じて、少なくとも1種のポリジオールランダムコポリマーA-1と、少なくとも1種のポリ(ボロン酸エステル)ランダムコポリマーA-2とを混合することにより得られる潤滑剤組成物の粘度を、これらの2種のコポリマーの鎖の会合度を制御することにより変更することを可能にする。