(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-13
(45)【発行日】2022-01-25
(54)【発明の名称】薬剤送達デバイスからのデータ収集
(51)【国際特許分類】
A61M 5/00 20060101AFI20220118BHJP
A61M 5/315 20060101ALI20220118BHJP
A61M 5/20 20060101ALI20220118BHJP
【FI】
A61M5/00 500
A61M5/315 550X
A61M5/315 550R
A61M5/20
(21)【出願番号】P 2019551738
(86)(22)【出願日】2017-12-12
(86)【国際出願番号】 EP2017082311
(87)【国際公開番号】W WO2018108855
(87)【国際公開日】2018-06-21
【審査請求日】2020-11-30
(32)【優先日】2016-12-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】397056695
【氏名又は名称】サノフィ-アベンティス・ドイチュラント・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル・シャーバッハ
(72)【発明者】
【氏名】ベアーテ・フランケ
【審査官】上田 真誠
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0209114(US,A1)
【文献】国際公開第2016/131973(WO,A1)
【文献】特開2007-207085(JP,A)
【文献】特表2014-528812(JP,A)
【文献】米国特許第05651775(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0074587(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0357304(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/00
A61M 5/142
A61M 5/315
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤送達デバイスからデータを収集する方法であって:
薬剤送達デバイスの少なくとも一部分の第1および第2の記録をカメラを用いて取得することであって、
該部分は、薬剤が薬剤送達デバイスから排出されるときに薬剤送達デバイスの第2の構成要素に対して動く第1の構成要素を含み;ここで、
第1および第2の記録のそれぞれは、少なくとも1つの画像または一連の画像を含む、取得することと、
該第1および第2の記録から、該第1および第2の記録内における第2の構成要素に対する第1の構成要素の位置を決定することと;
第1の記録内における第2の構成要素に対する第1の構成要素の第1の記録内での位置を、第1の記録とは異なる時間に捕捉された第2の記録内における第2の構成要素に対する第1の構成要素の第2の記録内での位置と比較することによって、薬剤送達デバイスによって排出された薬剤の量を決定することと
を含
み、
該方法はさらに、
第1の記録の取得前に、該カメラを用いて予備記録を取得することと;
該予備記録に基づいて、カメラの視野の特定領域内に第1の構成要素が位置するように所定の向きに薬剤送達デバイスが位置決めされているかどうかを決定することと;
該特定領域内に第1の構成要素が位置するように所定の向きに薬剤送達デバイスが位置決めされていないと決定された場合、カメラに対して薬剤送達デバイスを再位置決めするように1つまたはそれ以上の調整の実行を決定することと;
決定された調整に基づいてカメラに対して薬剤送達デバイスを再位置決めする指示を表示することと
を含む、前記方法。
【請求項2】
該部分は、薬剤および薬剤送達デバイスの1つまたはそれ以上に関する情報を示す特性を含み、
該予備記録に基づいて
該情報を決定すること
を
さらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
第1の記録の捕捉は、
該特定領域内に第1の構成要素が位置するように所定の向きに薬剤送達デバイスが位置決めされたことの決定に応答して自動的にトリガされる、請求項
1に記載の方法。
【請求項4】
薬剤送達デバイスが所定の向きに位置決めされているかどうかを決定することは:
予備記録内の画素の輝度プロファイルを分析すること;
予備記録内の薬剤送達デバイスの特徴部の位置を分析すること;および、
予備記録内の薬剤送達デバイスの特徴部の形状を分析すること
のうちの1つまたはそれ以上を含む、請求項
1または3に記載の方法。
【請求項5】
使用者から彼らの医学的状態および/または活動に関する入力情報を受けることと;
決定された投薬量および
該入力情報に基づいて後続の薬剤送達で投与予定の薬剤投薬量を計算することと
を含む、請求項1~
4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
コンピュータプログラムであって、処理装置によって実行されたとき、
該処理装置に請求項1~
5のいずれか1項に記載の方法を実行させるコンピュータ可読命令を含む、前記コンピュータプログラム。
【請求項7】
スマートフォンアプリであって、請求項
6に記載のコンピュータプログラムを含む、前記スマートフォンアプリ。
【請求項8】
データ収集装置であって:
薬剤送達デバイスの少なくとも一部分の第1および第2の記録をカメラを用いて取得するように構成されたカメラであって、
該部分は、第1の構成要素と第2の構成要素とを含み、該第1の構成要素は、薬剤が薬剤送達デバイスから排出されるときに第2の構成要素に対して動くように構成さ
れ、ここで第1および第2の記録のそれぞれは、少なくとも1つの画像または一連の画像を含む、カメラと;
出力装置と;
処理装置とを含み、該処理装置は:
該第1および第2の記録から、該第1および第2の記録内における第2の構成要素に対する第1の構成要素の位置を決定し、
第1の記録内における第2の構成要素に対する第1の構成要素の第1の記録内での位置を、第1の記録とは異なる時間に捕捉された第2の記録内における第2の構成要素に対する第1の構成要素の第2の記録内での位置と比較することによって、薬剤送達デバイスによって排出された薬剤の量を決定するように
構成され
、
該処理装置は、さらに、
第1の記録の取得前に、該カメラを用いて予備記録を取得し;
該予備記録に基づいて、カメラの視野の特定領域内に第1の構成要素が位置するように所定の向きに薬剤送達デバイスが位置決めされているかどうかを決定し、
該特定領域内に第1の構成要素が位置するように所定の向きに薬剤送達デバイスが位置決めされていないと決定された場合、カメラに対して薬剤送達デバイスを再位置決めするように1つまたはそれ以上の調整の実行を決定し;
決定された調整に基づいて、カメラに対して薬剤送達デバイスを再位置決めする指示を、該出力装置を用いて、提示するように構成される、前記データ収集装置。
【請求項9】
処理装置は、
該特定領域内に
第1の構成要素が位置するように所定の向きに薬剤送達デバイスが位置決めされたことの決定に応答して、第1の記録を捕捉するようにカメラをトリガするように構成される、請求項
8に記載の装置。
【請求項10】
処理装置は、
予備記録内の画素の輝度プロファイルを分析し;
予備記録内の薬剤送達デバイスの特徴部の位置を分析し;
予備記録内の薬剤送達デバイ
スの特徴部の形状を分析する
ように構成されることによって、薬剤送達デバイスが所定の向きに位置決めされているかどうかを決定するように構成される、請求項
8または
9に記載の装置。
【請求項11】
使用者から彼らの医学的状態および/または活動に関する入力情報を受けるように構成された入力装置;
を含み
処理装置は、決定された投薬量および
該入力情報に基づいて後続の薬剤送達で投与予定の薬剤投薬量を計算するように構成される、請求項
8~10のいずれか1項に記載の装置。
【請求項12】
該部分は、薬剤および薬剤送達デバイスのうちの1つまたはそれ以上に関する情報を
示す特性を含み、
処理装置は、該予備記録に基づいて
該情報を決定するように構成される、請求項
8~
11のいずれか1項に記載の装置。
【請求項13】
スマートフォンの形態の、請求項
8~
12のいずれか1項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば使用者への薬剤送達量を決定するために、薬剤送達デバイスからその状態の変化を検出することによるデータの収集に関する。
【背景技術】
【0002】
薬剤の注射による定期的な治療を必要とする、様々な疾病が存在する。そうした注射は、医療従事者または患者自身によって適用される注射デバイスを使用することによって実行することができる。一例として、1型および2型の糖尿病は、たとえば、1日に1回または数回のインスリン用量の注射により、患者自身によって治療することができる。たとえば、注射デバイスとして、充填済みの使い捨てのインスリンペンを使用することができる。あるいは、再利用可能なペンを使用することもできる。再利用可能なペンでは、空の薬剤カートリッジを新しい薬剤カートリッジに交換することが可能である。どちらのペンにも、毎使用前に交換される1組の1回使い切りの針が付いている。次いで、注射予定のインスリン用量を、たとえば、インスリンペンでは、投薬量ノブを回し、インスリンペンの用量窓またはディスプレイから実際の用量を観察することによって、手動で選択することができる。次いで、適切な皮膚部分に針を挿入し、インスリンペンの注射ボタンを押下することによって、用量が注射される。
【0003】
患者により投与される薬剤の監視を可能にするために、注射デバイスの状態および/または使用に関係する情報、たとえば注射されるインスリンのタイプ、用量、注射のタイミングのうちの1つまたはそれ以上を、高い信頼性で正確に測定することが望ましい。特に、定期的な薬剤の用量を必要とする慢性疾患を患う患者にとって、投与される投薬量を頻繁に調整することが必要である。用量に対するそのような調整は、最近投与された投薬量に関する情報に基づいて、患者の食糧摂取、身体活動、および血糖値などの特定のバイオマーカなど、彼らの状態に関連する他の情報に照らして決定することができる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
第1の態様によれば、薬剤送達デバイスからデータを収集する方法は、薬剤送達デバイスの少なくとも一部分の第1の記録をカメラを用いて取得することを含む。前記部分は、薬剤が薬剤送達デバイスから排出されるときに薬剤デバイスの第2の構成要素に対して動くように構成された第1の構成要素を含む。方法は、さらに、前記第1の記録から、前記第2の構成要素に対する第1の構成要素の少なくとも一部分を決定することを含む。記録は、たとえば写真である少なくとも1つの画像、または、たとえばビデオ記録もしくはビデオストリームである一連の画像を含むことができる。
【0005】
たとえば、第1の構成要素は、薬剤送達デバイスの薬剤容器内のピストン、または薬剤が排出されるときに回転する投薬量ノブとすることができる。
【0006】
方法は、前記第1の記録に基づいて、前記部分に設けられた特性で提供される薬剤および薬剤送達デバイスのうちの1つまたはそれ以上に関する情報を決定することを含むことができる。
【0007】
場合により、方法は、前記第1の記録内における前記第1の構成要素の位置の決定に少なくとも一部基づいて、排出された薬剤の量を決定することを含むことができる。排出された薬剤の量の決定は、前記第1の記録内における第1の構成要素の位置と、第1の記録の前または後に捕捉された前記部分の第2の記録内における前記第1の構成要素の位置を比較することを含むことができる。たとえば、薬剤の排出前と後の構成要素の記録を比較してもよい。あるいは、薬剤投薬量は、第1の構成要素の位置、および、第1の構成要素の位置または予め決められた排出薬剤量に関して記憶(store)されている情報に基づいて決定してもよい。
【0008】
第1および第2の記録が利用される場合、第1および第2の記録の取得は、2枚の写真の捕捉によって、および/または、ビデオを捕捉しそれぞれ第1および第2の画像としてビデオストリームから2枚の画像を選択することによって実行される。分析は、第1の構成要素の位置を決定することができる。ビデオ記録が使用される場合、複数の第2の記録が取得され、分析され、それによって、繰り返しの位置決定が可能になる。そのような複数の記録は、第1の構成要素の位置を決定するときの統計的評価を可能にすることができる。したがって、記録の数を増加させることによって、ビデオ記録の解像度がスチール記録の解像度よりも低い場合でも、より高い信頼性で位置を決定することが可能になる。
【0009】
場合により、方法は、ビデオからの補正画像を決定するように、たとえばランダムサンプルコンセンサスアルゴリズムである、統計アルゴリズムを含むことができる。補正画像は、スキュー、糸巻形歪み、たる形歪みなどについて補正される。
【0010】
統計的評価を受けるビデオストリームは、少なくとも50画像を含む。計算効率のため、画像の数は、約200を超えてはならない。1秒当たり30フレーム(fps)でのビデオの記録は、2~7秒間続く。最良の結果は、約70~約130の範囲内の画像数を含むビデオストリームにより得られた。他のフレーム率、すなわち1秒当たりの画像数(またはfps)を使用することもできる。一実施形態によれば、最良の結果は、約100画像をもたらす60fpsでとられた長さ約1.5秒のビデオストリームにより達成された。
【0011】
方法は、特定の薬剤デバイスおよび/またはそれが含む薬剤を識別するように、第1および第2の記録のうちの少なくとも1つに写っている薬剤送達デバイス上に設けられた特性の分析を含むことができる。特性を用いて取得される情報は、基準または先に記憶されている情報と比較される。たとえば、正しい薬剤が投与されていることの確認、薬剤送達デバイスを識別し誤ったデバイスまたは他の使用者用のデバイスを用いて使用者が注射を投与することを防ぐための確認、および薬剤の有効期限がまだ切れていないことの確認、のうちの1つまたはそれ以上を含む確認を行うことができる。
【0012】
場合により、カメラに対する薬剤送達デバイスの位置決めを案内するように指示してもよい。たとえば、方法は、第1の記録の取得前に、前記カメラを用いて予備記録を捕捉することと、前記予備記録に基づいて、カメラの視野の特定領域内に第1の構成要素が位置するように所定の向きに薬剤送達デバイスが位置決めされているかどうかを決定することと、前記特定領域内に構成要素が位置するように所定の向きに薬剤送達デバイスが位置決めされていないと決定された場合、カメラに対して医療用送達デバイスを再位置決めするように1つまたはそれ以上の調整の実行を決定することと、決定された調整に基づいてカメラに対して薬剤送達デバイスを再位置決めする指示を表示することと、を含むことができる。一例では、予備記録は、ビデオ記録で捕捉され、それが使用者への案内のためにカメラに対する薬剤送達デバイスの位置および向きの調整のための指示付きで「ライブビュー」として表示される。
【0013】
さらに、第1の記録の捕捉は、前記特定領域内に構成要素が位置するように所定の向きに薬剤送達デバイスが位置決めされたことの決定に応答して自動的にトリガされる。薬剤送達デバイスが所定の向きに位置決めされているかどうかの決定は、予備記録内の画素の輝度プロファイル、予備記録内の薬剤送達デバイスの特徴部の位置、および、カメラによって捕捉された記録内の薬剤送達デバイスの特徴部の形状のうちの1つまたはそれ以上の分析を含むことができる。
【0014】
方法は、使用者から彼らの医学的状態および/または活動に関する入力情報を受けることを含むことができる。そのような情報は、状況に応じて患者または医療専門家が薬剤投薬量情報によって示される治療歴を再検討できるように、薬剤投薬量情報と一緒に記憶される。
【0015】
上記の態様は、処理装置によって実行されたとき、前記処理装置に上述の方法のうちの1つを実行させるコンピュータ可読命令を含むコンピュータプログラムを提供する。たとえば、コンピュータプログラムは、スマートフォンによって実行される「アプリ」で提供される。それによって、専用デバイスの製造および使用の必要のないデータ収集の実施が可能になる。さらに、患者は大抵スマートフォンに慣れており、したがってそれを簡単に取り扱い操作することができるので、患者による彼らの治療を記録するための手順の順守が改善される。
【0016】
他の態様によれば、データ収集装置は、薬剤送達デバイスの少なくとも一部分の第1の記録をカメラを用いて取得するように構成され、前記部分は、薬剤が薬剤送達デバイスから排出されるときに第2の構成要素に対して動く第1の構成要素を含む、カメラと、前記第1の記録から第2の構成要素に対する第1の構成要素の少なくとも位置を決定するように構成された、処理装置とを含む。
【0017】
場合により、処理装置は、前記第1の記録内の前記第1の構成要素の位置に少なくとも一部基づいて排出された薬剤の量を決定するように構成される。処理装置は、前記第1の記録内における構成要素の位置を、第1の記録とは異なる時間に捕捉された前記部分の第2の記録内における前記第1の構成要素の位置と比較するように構成される。
【0018】
装置は、ディスプレイのような出力装置を含むことができ、第1の記録の捕捉前に、前記カメラを用いて予備記録を捕捉し、前記処理装置を用いて、前記予備記録に基づいて、カメラの視野の特定領域内に第1の構成要素が位置するように所定の向きに薬剤送達デバイスが位置決めされているかどうかを決定し、前記特定領域内に構成要素が位置するように所定の向きに薬剤送達デバイスが位置決めされていないと決定された場合、カメラに対して医療用送達デバイスを再位置決めするように1つまたはそれ以上の調整の実行を決定し、決定された調整に基づいて、カメラに対して薬剤送達デバイスを再位置決めする指示を出力装置を用いて提示するように構成される。処理装置はまた、前記特定領域内に第1の構成要素が位置するように所定の向きに薬剤送達デバイスが位置決めされたことの決定に応答して第1の記録を捕捉するようにカメラをトリガするように構成される。
【0019】
場合により、処理装置は:予備記録内の画素の輝度プロファイルを分析し;予備記録内の薬剤送達デバイスの特徴部の位置を分析し;予備記録内の薬剤送達デバイス(1)の特徴部の形状を分析するように構成されることによって、薬剤送達デバイスが所定の向きに位置決めされているかどうかを決定するように構成される。
【0020】
装置は、使用者から彼らの医学的状態および/または活動に関する入力情報を受けるように構成された入力装置を含むことができ、処理装置は、決定された投薬量および前記入力情報に基づいて後続の薬剤送達で投与予定の薬剤投薬量を計算するように構成される。
【0021】
装置は、場合により、スマートフォン、タブレットコンピュータまたはウェアラブルコンピュータなど、ポータブルコンピューティングデバイスの形態とすることができる。装置がスマートフォンの場合、記録を取得し処理するように処理装置を制御するコンピュータ可読命令は、「アプリ」のようなソフトウェアアプリケーションの形態で提供される。
【0022】
次に、添付の図面を参照して本発明の例示的な実施形態について述べる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】第1の実施形態による例示的な薬剤送達デバイスおよびデータ収集装置の分解図である。
【
図2】
図2aは、初めて使用する前の、
図1に示される薬剤送達デバイス内の薬剤チャンバの拡大図である。
図2bは、ある量の薬剤が排出された後の、
図2aに示される薬剤チャンバの拡大図である。
【
図3】
図1に示されるデータ収集装置のブロック線図である。
【
図4】他の実施形態によるデータ収集装置の図である。
【
図5】本発明の一実施形態によるデータ収集方法の流れ図である。
【
図6】
図5の方法における案内手順の流れ図である。
【
図7】
図6の案件手順における「ライブビュー」ディスプレイの一例の図である。
【
図8】薬剤送達デバイスがデータ収集デバイスに対して傾いているかどうかを決定することに使用される記録のセグメントの例を示す、
図2の薬剤チャンバの記録の図である。
【
図9】
図9aは、
図1の薬剤送達デバイスがカメラに対して適切に位置決めされているときの薬剤チャンバ内のピストンのベースが写っている記録の一部の図である。
図9bは、
図1の薬剤送達デバイスがカメラの方に向けて傾けられているときのピストンのベースが写っている記録の一部の図である。
図9cは、
図1の薬剤送達デバイスがカメラから離れる方に傾けられているときのピストンのベースが写っている記録の一部の図である。
【
図10】チャンバの一部を通過する光線の視差およびずれ(displacement)を示す線図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下では、本発明の例示的な実施形態をインスリン注射デバイスを参照して説明する。しかし、本発明は、そのような用途に限定されず、本明細書において上述したように、他の薬剤を放出する注射デバイス、また他のタイプの医療用デバイスとともに等しく良好に展開される。
【0025】
図1は、薬剤送達デバイス1、およびデータ収集装置2を示している。データ収集装置2は、薬剤送達デバイス1を用いて投与される薬剤投薬量を含む、薬剤送達デバイス1からの情報を収集し、場合によりデータをサーバ3および/または遠隔記憶装置4に送信することに使用される。たとえば、データ収集装置2は、データをクラウド記憶設備に送信することができる。
【0026】
この特定の例では、薬剤送達デバイス1は、充填済みの使い捨て注射ペンである。そのような注射ペンの例としては、Sanofi Solostar(R)、Lantus(R)およびTujeo(R)ペンが挙げられる。
【0027】
薬剤送達デバイス1は、薬剤容器15が内部に設けられるチャンバ14を有するハウジング10を含む。チャンバ14の少なくとも一部は、容器15の少なくとも一部分が薬剤送達デバイス1の使用者に見えるように、透明または半透明になっている。チャンバ14は、たとえば、ポリカーボネート材料とすることができ、その一方で、薬剤容器15は、ガラス製とすることができる。
【0028】
薬剤送達デバイス1から排出予定の薬剤用量は、投薬量ノブ12を使用者が回すことによってプログラムすることができる。そして、プログラムされた用量は、投薬量窓13を介して、たとえば単位の倍数で表示される。この特定の例では、単位は、いわゆる国際単位(IU)であり、1IUは、約45.5マイクログラムの純結晶インスリン(1/22mg)と生物学的に等価である。プログラムされた用量を別のかたちで同様に表示することもできることに留意すべきである。
【0029】
注射ボタン11を押すと、投薬量窓13に表示されている薬剤用量に相当する薬剤量が、容器15内のピストン17の動きにより薬剤送達デバイス1から針16を通って放出される。薬剤送達デバイス1を最初に使う前、ピストン17は、
図2aに示されるような第1の位置にある。薬剤が容器15から排出されるにつれて、ピストン17は、容器15の、針16の近位にある端部の方に向けて動く。
図2bは、薬剤送達デバイス1を最初に使用した後のピストン17を示しており、容器15内でのその位置の変化を示している。
【0030】
図1に示される薬剤送達デバイス1は、容器15が空になるまで、または、薬剤送達デバイス1の最初の使用からたとえば28日後である薬剤の有効期限に達するまで、数回の注射処置に使用することができる。
【0031】
薬剤送達デバイス1上には、1つまたはそれ以上の視覚的特性18a、18b、18cが設けられる。視覚的特性18a、18b、18cは、薬剤送達デバイス1に特有の特性および特性の組み合わせを含むことができ、薬剤送達デバイス1の識別の役に立つことができる。あるいは、それに加えて、視覚的特性は、容器15内の薬剤を識別する情報、ならびに/もしくは薬剤濃度、薬剤の有効期限および薬剤送達デバイス1のモデルなど他の情報を提供する特性または特性の組み合わせを含むこともできる。視覚的特性18a、18b、18cは、マーク、文字、パターン、ハウジング10の一部もしくは全体の上に使用される色、チャンバ14、容器15もしくはハウジングの他の部材上のマーキングの形および/もしくは色の形態、またはそのような形態の2つ以上の組み合わせとすることができる。たとえば、視覚的特性は、薬剤容器15上のバーコード、QRコードもしくは同様のもの、および/または目盛の形状を含むことができる。
【0032】
図3は、
図1に示されるデータ収集デバイス2のブロック線図である。
図3に示される具体的な例では、データ収集デバイスは、内蔵カメラ21と処理装置22とを備える携帯電話20または「スマートフォン」である。処理装置22は、1つまたはそれ以上のプロセッサまたはマイクロプロセッサ、デジタル信号プロセッサ(DSP)、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)などを含む。カメラ21は、スチール記録および/またはビデオを捕捉するように構成される。
【0033】
携帯電話20は、メモリユニット23、24をさらに含む。メモリユニット23、24は、読み出し専用メモリ23、および処理装置22によって実行されるソフトウェアを記憶することができるランダムアクセスメモリ24を含む。
【0034】
携帯電話20は、携帯電話ネットワーク、パーソナルエリアネットワーク、ローカルワイヤレスネットワークおよびインターネットのうちの1つまたはそれ以上との双方向通信を可能にするために、アンテナ25および送受信機26のような通信機器25、26をさらに含む。
【0035】
携帯電話20は、キーパッド27およびマイクロホン28などの入力装置27、28と、ディスプレイ29およびスピーカ30などの出力装置29、30とをさらに含む。いくつかの実施形態では、入力装置27、28は、ディスプレイ29の一部または全部を利用するタッチスクリーン部材の形態のキーパッド27を含み、または提供することができる。携帯電話20は、さらに、カメラ21、処理装置22、メモリユニット23、24、通信機器25、26、入力装置27、28、および出力装置29、30の間の通信を可能にする通信バス31を含む。
【0036】
この特定の例では、携帯電話20のメモリユニット23、24に記憶されているソフトウェアは、「アプリ」を含む。「アプリ」は、処理装置22によって実行されたとき、携帯電話20に薬剤送達デバイス1の記録をとらせ、その記録を処理させて薬剤投薬量のデータおよび場合により他の薬剤情報を得られるようにする。
【0037】
図3に示される例示的なデータ収集装置20は、カメラ21によってスチールおよび/またはビデオ記録を捕捉し、その記録を処理装置22を用いて処理し、入力装置27、28を介して使用者入力を受け、出力装置29、30を用いて使用者に出力をもたらすように構成されさらには通信機器25、26を用いてデータを他の場所に送信することができる単一デバイスである。しかし、本発明の他の実施形態によれば、データ収集装置は、2つ以上の別個のデバイスの形態に構成してもよい。たとえば、
図4に示されるように、他の実施形態によるデータ収集装置40では、独立型のカメラデバイス41が、記録を捕捉し、それらを分析のために別個のデータ処理デバイス42に送信するように提供される。あるいは、またはそれに加えて、キーボード43のような入力装置、およびディスプレイ44のような出力装置は、データ処理デバイス42と通信する別個のインターフェースデバイス45によって提供してもよい。
【0038】
図示されないさらに他の例示的な実施形態では、データ収集装置は、ウェアラブルコンピュータを含むことができる。ウェアラブルコンピュータは、カメラデバイス、ならびに場合によりデータ処理デバイスおよびインターフェースデバイスのうちの1つまたはそれ以上を含む。たとえば、使用者の手に着けられるコンピューティングデバイス内にカメラが設けられる場合、薬剤送達デバイス1に対してカメラの位置を簡単に調整できるので、薬剤送達デバイス1の記録を捕捉できるような使用者によるカメラに対する薬剤送達デバイス1の位置決めがより簡単になり得る。
【0039】
次に、
図5を参照して、データ収集装置2を用いた薬剤投薬量情報の例示的な収集方法について説明する。この特定の例では、データ収集装置2は、アプリを実行する
図3に示されるような携帯電話20であり、カメラ21は、記録の捕捉のときに自動で露出および焦点パラメータを設定することができる。
【0040】
工程s5.0から始めて、カメラ21は、1つまたはそれ以上の視覚的特性18a、18b、18cのうちのいくつかまたはすべてを含む、薬剤送達デバイス1の少なくとも一部の、1つまたはそれ以上の記録を取得する(工程s5.1)ようにアプリによって制御される。上述したように、記録は、スチール記録として捕捉される、またはビデオの一部であってよい。
【0041】
次いで、処理装置22は、パターンマッチング、特徴部認識または他の適当な分析技術を用いて、メモリユニット23、24に記憶されている基準視覚的特性のなかの視覚的特性18a、18b、18cのうちのいくつかまたはすべてについて一致を求める検索によって(工程s5.2)、薬剤送達デバイス1の識別を試みる。たとえば、基準視覚的特性18a、18b、18cは、医療用送達デバイス1の特定のモデル上に設けられた特性を含み、または薬剤のタイプに対応してもよい。あるいは、またはそれに加えて、基準特性は、注射の投与のために使用者によって以前使用された薬剤送達デバイスの視覚的特性を含んでもよい。
【0042】
一致が見つかった(工程s5.3)場合、薬剤送達デバイス1内の薬剤に関する情報がメモリユニット23、24から読み出される(工程s5.4)。
【0043】
一致が見つからなかった(工程s5.3)場合、処理装置22は、薬剤情報を取得し、それをメモリユニット23、24に記憶する(工程s5.5)。たとえば、視覚的特性18a、18b、18cが薬剤情報を示す場合、処理装置22は、薬剤情報を取得するために視覚的特性18a、18b、18cの記録を分析することができる。あるいは、またはそれに加えて、処理装置22は、薬剤および/または医療用送達デバイス1の詳細をたとえば入力装置27、28から入力するよう、使用者に対して出力装置29、30を介して要求を出力してもよい。
【0044】
薬剤情報は、さらに、容器15内の薬剤量および/または薬剤送達デバイス1の記録の視差補正で使用するためのパラメータを示すことに使用される、容器15上に設けられたスケール(scale)に関する情報を含むことができる。
【0045】
場合により、処理装置22は、警告状態が存在するか(工程s5.6)どうかを決定することもできる。たとえば、特性18a、18b、18cに対応する薬剤送達デバイス1が、ある薬剤送達デバイス1または使用者が以前に使用した薬剤送達デバイス1のタイプと一致しない場合、警告状態が存在することになり得る。そのような警告状態は、使用者が他の患者の薬剤送達デバイスを用いて注射を投与しようとしている、または、誤った薬剤もしくは誤った濃度の薬剤を含む薬剤送達デバイス1を用いて注射を投与しようとしていることを示すことができる。
【0046】
工程s5.6で検出することができる警告状態の他の例は、薬剤の有効期限が過ぎているかどうかに関する。そのような判定は、工程s5.4でメモリユニット23、24から読み出される薬剤情報、または、使用者からもしくは工程s5.5で視覚的特性18a、18b、18cの記録の分析から取得される薬剤情報に基づいてなされる。
【0047】
警告状態が存在する(工程s5.6)と判定された場合、警告メッセージが、たとえばディスプレイ29を用いて使用者に提示され(工程s5.7)、プロセスが終了する(工程s5.8)。
【0048】
警告状態が検出されなかった(工程s5.6)場合、または工程s5.6が省かれる場合、使用者は、カメラ21がチャンバ14の記録を捕捉することができるように薬剤送達デバイス1を位置決めするように案内される(工程s5.9)。次に、
図6および
図7を参照して、例示的な案内手順を説明する。
【0049】
工程s6.0から始めて、薬剤送達デバイス1のさらなる記録が、たとえばビデオとして捕捉され、使用者がピストン17をカメラ21の視野の特定領域内に位置決めするための案内として「ライブビュー」のようにディスプレイ29上に提示される(工程s6.1)。
【0050】
図7には、ライブビューディスプレイの一例が示されている。この具体的な例では、ウィンドウ70a、70bは、捕捉されたビデオ記録の上に重ね合わせられ、記録内の関心領域(ROI)をそれぞれ示す。使用者は、ピストン17の記録がウィンドウ70a内に位置し、薬剤容器15上に設けられたスケールの少なくとも一部分がより大きなウィンドウ70b内に位置するように、薬剤送達デバイス1を位置決めすることができる。ピストン17およびスケールが記録の縁に近くならないように使用者に薬剤送達デバイス1を位置決めさせることによって、カメラ21のレンズからの歪曲および/またはけられの影響を低減させる、または回避することさえできる。
【0051】
処理装置22は、捕捉された記録から、ピストン17およびスケールがそれらのそれぞれのROI内に現れるためにカメラ21に対する医療用送達デバイス1の位置の調整が必要か(工程s6.2)どうかを決定することができる。コンピューティング資源要件を減少させるように、処理装置22は、調整を決定したときの記録の縁を無視することができる。たとえば、アプリは、ROIからの、および場合によりROIに隣接した周囲からの記録データを処理し分析するように構成される。
【0052】
必要な並進運動調整は、特徴部認識を用いて、ピストン17、および場合によりハウジング10の縁または薬剤容器15上の目盛を識別し、次いで記録内における認識された特徴部の場所に基づいて、ROI内にピストン17を位置決めするのに必要な並進運動調整を決定するように、工程s6.3で決定される。
【0053】
次に、工程s6.3での必要な傾き調整を決定するための適当な技法のいくつかの例を説明する。
【0054】
図8は、薬剤容器15上の目盛80a~80nの記録を示している。
図8の破線81は、たとえば画素10個分の厚さの、チャンバ14の長手方向軸に沿って延びる記録画素のサンプルを示している。この場合、線81に沿った記録画素の輝度の変化が決定される。目盛80a~80nが等間隔の場合、目盛の有る無しに応じて輝度が線に沿って規則的に変化することが予測され、例外があるとすればピストン17の位置の上に重なる目盛であろう。この特定の例では、輝度の平滑化された導関数は、記録内の目盛が等間隔であるかどうか、したがって薬剤送達デバイス1がカメラ21の方に向けてまたはそこから離れるように傾けられているかどうかを決定することに使用される。
【0055】
他の例示的な技法では、処理装置22は、目盛80a~80nのうちのいくつかまたはすべての短辺を検出するように輪郭追跡を行い、追跡目盛のそれぞれの中心の位置を確認し、これらの目盛がそれらの予想間隔を有しているかどうかを決定することができる。目盛が等間隔の場合、連続するマークと容器15に沿ったそれらの位置との関係は、必要な精度範囲内で線形であると予想される。
【0056】
線形関係からの逸脱は、傾いていることを示し、さらに、記録を歪める恐れのある記録における視差およびチャンバ14と容器15の壁を通る光の屈折の影響を補正するために使用される、目盛80a~80nによって示されるスケールの湾曲を決定することにも使用される。
【0057】
傾斜を検出する第3の技法は、捕捉された記録内にピストン17のベース82が見えたときのその形状に基づくものである。記録内のベース82の縁の湾曲を検出することによって、処理装置22は、傾き調整が必要かどうかを決定することができる。
図9aおよび
図9bは、それぞれベース82がカメラ21から離れるように傾いているとき、およびカメラ21の方に向けて傾いているときの湾曲した縁を有するような、ピストン17の記録を示している。
図9cは、ベース82が傾いていないときの直線の縁を有するような、ピストン17の記録を示している。しかし、ベース82の形状の決定は、ベース82が傾いていないときでもピストン17の縁を曲がって見せることがある、視差およびピストンベース82におけるバーリング(burling)の考慮を含むことができる。
【0058】
次いで、アプリは、薬剤送達デバイス1の位置についての使用者の調整を案内するように、ライブビューディスプレイ上に動きインジケータ71a、71b、72a、72bを提示するように(工程s6.4)処理装置22を制御することができる。動きインジケータは、薬剤送達デバイス1をカメラ21に対してどのように並進運動させるべきかを示す並進運動インジケータ71a、71b、および/または、薬剤送達デバイス1をカメラ21に対してどのように傾けるべきかを示す傾きインジケータ72a、72bを含むことができる。データ収集装置2が内蔵ジャイロスコープまたは加速度計を有する場合、これらのセンサからの出力も必要な動きは何かを決定するのに利用することができる。たとえば、使用者が、薬剤送達デバイス1ではなくむしろカメラ21の向きおよび位置を調整するように案内してもよい。
【0059】
ライブビューディスプレイは、さらに、投薬量窓13への良好な合焦を得ることができる距離にカメラ21を位置決めするように使用者を案内するように構成される。特定の実施形態では、カメラ21と薬剤送達デバイス1との距離が約30cmであるときに、そのような合焦が実現される。他の実施形態では、たとえば、カメラ21が「マクロ」モードで操作される場合、カメラ21と薬剤送達デバイス1が、たとえば約7cmであるより短い距離だけ離れているときに良好な合焦が実現される。
【0060】
工程s6.1~工程s6.4は、カメラ21に対する薬剤送達デバイス1の位置の調整がそれ以上必要ない(工程s6.2)と決定されるまで繰り返され、そして案内手順が終了する(工程s6.6)。
【0061】
図5に戻ると、ピストン17の開始位置を記録するために、最初の記録が取得されタイムスタンプとともに記憶される(工程s5.10)。上述したように、カメラ21は、ビデオを捕捉するように構成され、その場合、最初の記録の取得は、ビデオにおける一連の記録からある記録を選択することを含むことができる。
【0062】
最初の記録の取得は、
図6の案内手順の工程s6.2で薬剤送達デバイス1が適当に位置決めされたことの処理装置22による決定に応じて、自動的にトリガされる。たとえば、記録の捕捉は、良好な合焦が実現されたことが決定され、薬剤送達デバイス1の位置および向きが公差限度内であると決定されたときにトリガされる。他の例示的な実施形態では、アプリは、処理装置22に、記録に含まれるたとえば目盛80a~80nおよび/または視覚的特性18cについて特徴部検出アルゴリズムを実施させ、検出した特徴部のディスクリプタをメモリユニット23、24に記憶されている同じモデルの薬剤送達デバイスの基準記録と比較して、いつ薬剤送達デバイス1が正しく位置決めされているかを決定し、最初の記録の捕捉がトリガされる。
【0063】
カメラ21がビデオを捕捉する一実施形態では、最初の記録は、ビデオ記録のシーケンスを捕捉し、そのシーケンスから一記録を選択することによって取得される。選択は、直前に記載した通りのやり方で、薬剤送達デバイス1が適当に位置決めされ適当な向きにされ場合により良好な合焦が実現されたと処理装置22が決定すると、自動的にトリガされる。
【0064】
上述したように、カメラ21は、自動的に露出および焦点パラメータを設定することができる。カメラ21は、たとえば、記録の最も明るい部分の輝度と最も暗い部分の輝度とのコントラストを少なくとも20%までにするように、適当なコントラストレベルを達成するために露出パラメータを設定するように構成される。
【0065】
場合により、スチール記録が使用される場合、カメラ21は、露出時間が異なる薬剤デバイス1の複数の記録を撮るように制御され、処理装置22は、それらの複数の記録を組み合わせてハイダイナミックレンジ(「HDR」)の記録をもたらすように構成される。
【0066】
処理装置22は、評価のために最初の記録の前処理を実施し、必要に応じて、光コンディション、歪曲およびジッタのうちの1つまたはそれ以上を補正することにより記録データ品質を向上させることができる。たとえば、アプリの露出制御アルゴリズムは、明るすぎる、暗すぎるまたは十分なコントラストのないピクチャを拒絶し、調整された露出パラメータの新しい最初の記録が自動的に捕捉されるようにする。しかし、前処理は、任意選択(optional)機能であることに留意されよう。アプリは、記録の前処理なくしてデータ収集を実施するように設計してもよい。
【0067】
薬剤容器15およびピストン17の適当な記録が取得されたら(工程s5.10)、アプリは、使用者に、たとえばディスプレイ29にメッセージを表示して、注射の投与を促し(工程s5.11)、および/または送達が完了したときに入力装置27、28を介した使用者の確認を要求するようにスピーカ30を通して可聴信号を出力することができる。
【0068】
次いで、アプリは、薬剤送達の完了を確認したことの使用者からのインジケーションを待つ(工程s5.12)。
【0069】
使用者からの応答を受けたら(工程s5.12)、使用者は、カメラに対して薬剤送達デバイス1を正しく位置決めするように案内される(工程s5.13)。この特定の例では、
図6に示される案内手順が使用される。
【0070】
次いで薬剤容器15およびピストン17の最後の記録が取得され、薬剤が送達された後のピストン17の位置を記録するために、タイムスタンプと一緒に記憶される(工程s5.14)。
【0071】
最初の記録に関連して上述したように、最後の記録も、最後の記録におけるピストン17の位置が決定される前に前処理してもよいが、そのような前処理は任意選択である。
【0072】
最後の記録は、カメラ21によって捕捉されるスチール記録であってよい。カメラ21がビデオを記録するように構成される場合、1つまたはそれ以上の最後の記録は、工程s5.14でそれらをビデオから選択することによって実施されることによって取得される。そのような複数の最後の記録が選択される場合、それらは、ピストン17の位置を決定するように統計的に処理され分析される。
【0073】
容器15から排出された薬剤投薬量を決定するために(工程s5.15)、工程s5.8で取得された最初の記録内に写っているピストン17の位置が、最後の記録内のピストン17の位置と比較される、または、工程s5.14で取得された複数の最後の記録から、それらの記録内に写っている目盛80a~80nに関連して、決定される。場合により、必要に応じて、最初の記録および最後の記録の解像度を、平均化および/または補間を用いて上げてもよい。
【0074】
やはり上述したように、ピストン17の記録の解像度は、視差および光屈折により低下することになる。
図10は、捕捉記録内に示される、容器15、空隙101およびチャンバ14の一部分を通る光線100、ならびに見かけのずれΔを示している。
【0075】
見かけのずれΔは、式(1)により計算することができる。
【数1】
式中、d
1は、チャンバ14の壁の厚さ、d
2は、容器15の壁の厚さ、n
1は、チャンバ14の壁の屈折率、n
2は、容器15の壁の屈折率、αは、カメラ21の方向に対して光線100がチャンバ14の壁から出る角度である。
【0076】
したがって、視差および屈折を考えるためにピストン17のベース82の決定位置に適用される補正は、最初および最後の記録におけるROIの中心からベース82までの距離に従って変化することになる。
【0077】
チャンバ14の壁がポリカーボネートであり容器15の壁がガラスである例示的な薬剤送達デバイス1の場合、チャンバ14および容器15の壁の厚さd1、d2は、0.75mmであり、屈折率n1、n2は1.5である。薬剤送達デバイス1から7cmの距離で撮られた記録では、4cmのスケールで、角度16°でチャンバ14の壁から出る光線は0.15mmだけ変位して見え、したがって適切な補正が必要となる。
【0078】
薬剤の投与時間、および場合により注射の継続期間はまた、最初および最後の記録のタイムスタンプに基づいて決定される(工程s5.16)。
【0079】
次いで、決定された薬剤投薬量が、投与の日時、および場合により投与の継続期間と一緒にメモリユニット23、24に記憶される(工程s5.17)。場合により、記憶される情報は、使用者の健康状態または活動に関連する他の情報とリンクさせてもよい。たとえば、使用者は、アプリを用いて携帯電話20に、彼らの食糧摂取、身体活動、他の薬剤の使用、検査結果または症状の重症度に関連するデータを入れることができる。たとえば、使用者が糖尿病の場合、血糖値に関する検査結果を入れてもよい。このように、アプリは、患者の治療の監視および適合を促進するように、データベース化することができ、そこで薬剤投薬量情報が患者の状態に関する関連のコンテキストとともに提供される。
【0080】
場合により、アプリは、処理装置22に、最初の記録、最後の記録および/または薬剤投薬量情報に基づいたさらなる分析を実施させるように(工程s5.18)構成される。たとえば、最初の記録に満杯の薬剤容器15に対応する位置にあるピストン17が写っている場合、処理装置22は、薬剤送達デバイス1が初めて使用される新しい未使用デバイスであることを決定することができる。アプリは、最初および最後の記録が撮られた日付に基づいて、薬剤送達デバイス1の有効期限を監視することができ、したがって有効期限が迫っているとき、出力装置29、30を介して使用者に警告を提示することができる。
【0081】
やはりまた場合により、最後の記録が、薬剤容器15がほぼ空であることを示している場合、警告が出力装置29、30を介して使用者に提示される。
【0082】
工程s5.18で実施される他の任意選択のさらなる分析において、注射の投与継続期間が計算される場合、注射のタイプが決定される。たとえば、注射デバイス1を初めて使用する前に、使用者は、たとえば小投薬量を選択し針16を上向きにした状態で薬剤送達デバイス1を保持しながら注射ボタン11を押すことによって、容器15および針16から空気を除去する、いわゆる「プライムショット」を実行する必要がある場合がある。最初と最後の記録との間の継続期間が短いことと、決定された薬剤投薬量が少量であることを組み合わせることで、注射の投与ではなくプライムショットが実施されたことが示され、それが薬剤投薬量についての記憶情報において示される。さらに、いくつかの実施形態では、アプリは、
図5にある手順の早期の工程に戻すことによって、プライムショットが行われたことの決定に応答することができる。というのも、そのようなプライムショットは、注射よりも前に行われると予想されるからである。たとえば、アプリは、新しい最初の記録を撮るように使用者を案内するように、工程s5.9に戻ることができる。あるいは、その次の注射開始のときの容器15内の薬剤量は工程s5.14で取得される最後の記録の分析から分かるので、アプリは、その次の注射の投与に使用者を促すように工程s5.11に戻ってもよい。
【0083】
場合により、工程s5.18で、アプリは、メモリユニット23、24に記憶されている投薬量履歴に基づいて、次の薬剤投与のための薬剤投薬量を計算することもできる。
【0084】
次いで、処理装置22は、記憶されている情報、ならびに場合により使用者により提供されるコンテキスト情報および/または最初および最後の記録を、通信機器25、26を用いて、携帯電話ネットワーク、パーソナルエリアネットワークまたはインターネットなどのネットワークを介して他のデバイスに送信することができる(工程s5.19)。たとえば、そのようなデータは、たとえば遠隔地の医療専門家による分析のため、またはクラウド記憶のために、リモートサーバに送信される。
【0085】
そして、方法は終了する(工程s5.8)。
【0086】
図5の方法を、データ収集装置2が携帯電話20のような単一デバイスである一実施形態を参照して説明してきたが、他の実施形態では、データ収集装置2は、
図4に示される別個のカメラデバイス、データ処理デバイスおよびインターフェースデバイスなど、複数のデバイスを含んでもよい。
【0087】
さらに、
図5の方法では、記録は携帯電話20によって分析されデータ処理されたが、他の実施形態では、その代わりに、記録およびタイムスタンプが処理のために遠隔デバイスに送信される。遠隔で実行されたデータ処理に基づいて、使用者に対する有効期限および/または計算投薬量に関連するメッセージが、使用者への提示のためにデータ収集装置2へと送信される。
【0088】
上述の実施形態では、ピストン17のベース82の位置は、目盛80a~80nに対して決定された。他の実施形態では、ベース82の位置は、視覚的特性18a、18b、18cのような、薬剤送達デバイス1の他の固定されたマーキングまたは特徴部に対して決定される。さらに、他の実施形態では、薬剤送達デバイス1の他の可動構成要素の位置がピストンのベース82の代わりに監視される。たとえば、薬剤送達デバイス1は、注射ボタン11が押されると投薬量ノブ12が回転するように構成される。そのような例では、薬剤投薬量は、投薬量ノブ12の最初および最後の記録から決定される。
【0089】
さらに、
図5の方法は、容器15の最初の記録および最後の記録の取得および分析を含んでいたが、他の実施形態では、データ収集装置2は、最後の記録だけを取得し、最初の記録の取得および分析の代わりに、薬剤送達デバイス1を用いて投与された前の注射からの記憶されている情報を読み出すように構成される。
【0090】
上述した実施形態によって示されるように、注射に関連する情報を取得するためのアプリまたは同様のソフトウェア製品の提供、他の医療処置または他の機器の操作は、携帯電話20または一般的に入手可能な他のコンピューティングデバイスなどのデバイスを使用して、そのような情報のより正確かつ/または信頼性の高い記録を可能にすることができる。上述の実施形態は、特化されたデバイスの製造および配布を必要としないので、処置または操作の記録および/または監視を提供するコストおよび複雑性を低減することができる可能性がある。さらに、すでに、使用者はそのようなデバイスを熟知しており、したがって、それらの取り扱いおよび操作を簡単に行える。
【0091】
上述した実施形態は、インスリン注射ペンからのデータの収集に関して述べてきたが、本発明の実施形態は、他の薬剤の注射または注入などの他の医学的プロセスの監視など他の目的のために使用することもできることに留意されよう。
【0092】
本明細書で使用する用語「薬物」または「薬剤」は、1つまたはそれ以上の薬学的に活性な化合物を説明するために本明細書において使用される。以下に説明されるように、薬物または薬剤は、1つまたはそれ以上の疾患を処置するための、様々なタイプの製剤の少なくとも1つの低分子もしくは高分子、またはその組み合わせを含むことができる。例示的な薬学的に活性な化合物は、低分子;ポリペプチド、ペプチド、およびタンパク質(たとえばホルモン、成長因子、抗体、抗体フラグメント、および酵素);炭水化物および多糖類;ならびに核酸、二本鎖または一本鎖DNA(裸およびcDNAを含む)、RNA、アンチセンスDNAおよびRNAなどのアンチセンス核酸、低分子干渉RNA(siRNA)、リボザイム、遺伝子、およびオリゴヌクレオチドを含むことができる。核酸は、ベクター、プラスミド、またはリポソームなどの分子送達システムに組み込むことができる。これらの薬物の1つまたはそれ以上の混合物もまた、企図される。
【0093】
用語「薬物送達デバイス」は、薬物をヒトまたは動物の体内に投薬するように構成されたあらゆるタイプのデバイスまたはシステムを包含するものである。限定されることなく、薬物送達デバイスは、注射デバイス(たとえばシリンジ、ペン型注射器、自動注射器、大容量デバイス、ポンプ、かん流システム、または眼内、皮下、筋肉内、もしくは血管内送達にあわせて構成された他のデバイス)、皮膚パッチ(たとえば、浸透圧性、化学的、マイクロニードル)、吸入器(たとえば鼻用または肺用)、埋め込み(たとえば、コーティングされたステント、カプセル)、または胃腸管用の供給システムとすることができる。ここに説明される薬物は、針、たとえば小ゲージ針を含む注射デバイスで特に有用であることができる。
【0094】
薬物または薬剤は、薬物送達デバイスで使用するように適用された主要パッケージまたは「薬物容器」内に含むことができる。薬物容器は、たとえば、カートリッジ、シリンジ、リザーバ、または1つまたはそれ以上の薬学的に活性な化合物の保存(たとえば短期または長期保存)に適したチャンバを提供するように構成された他の容器とすることができる。たとえば、一部の場合、チャンバは、少なくとも1日(たとえば1日から少なくとも30日まで)の間薬物を保存するように設計することができる。一部の場合、チャンバは、約1カ月から約2年の間薬物を保存するように設計することができる。保存は、室温(たとえば約20℃)または冷蔵温度(たとえば約-4℃から約4℃まで)で行うことができる。一部の場合、薬物容器は、薬物製剤の2つまたはそれ以上の成分(たとえば薬物および希釈剤、または2つの異なるタイプの薬物)を別々に、各チャンバに1つずつ保存するように構成された二重チャンバカートリッジとすることができ、またはこれを含むことができる。そのような場合、二重チャンバカートリッジの2つのチャンバは、ヒトまたは動物の体内に投薬する前、および/または投薬中に薬物または薬剤の2つまたはそれ以上の成分間で混合することを可能にするように構成することができる。たとえば、2つのチャンバは、これらが(たとえば2つのチャンバ間の導管によって)互いに流体連通し、所望の場合、投薬の前にユーザによって2つの成分を混合することを可能にするように構成することができる。代替的に、またはこれに加えて、2つのチャンバは、成分がヒトまたは動物の体内に投薬されているときに混合することを可能にするように構成することができる。
【0095】
本明細書において説明される薬物送達デバイスおよび薬物は、数多くの異なるタイプの障害の処置および/または予防に使用することができる。例示的な障害は、たとえば、糖尿病、または糖尿病性網膜症などの糖尿病に伴う合併症、深部静脈血栓塞栓症または肺血栓塞栓症などの血栓塞栓症を含む。さらなる例示的な障害は、急性冠症候群(ACS)、狭心症、心筋梗塞、がん、黄斑変性症、炎症、枯草熱、アテローム性動脈硬化症および/または関節リウマチである。
【0096】
用語「薬物」または「薬剤」は、本明細書において同意語として使用され、1つまたはそれ以上の医薬品有効成分または薬学的に許容されるその塩もしくは溶媒和物と、場合により、薬学的に許容される担体とを含む医薬製剤を示す。医薬品有効成分(「API」)とは、最も広範な言い方で、ヒトまたは動物に生物学的影響を及ぼす化学構造のことである。薬理学では、薬物または薬剤が、疾患の処置、治療、予防、または診断に使用され、またはそれとは別に、身体的または精神的健康を向上させるために使用される。薬物または薬剤は、限られた継続期間、または慢性疾患では定期的に、使用される。
【0097】
以下に説明されるように、薬物または薬剤は、1つまたはそれ以上の疾患を処置するための、様々なタイプの製剤の少なくとも1つのAPI、またはその組み合わせを含むことができる。APIの例としては、分子量が500Da以下である低分子;ポリペプチド、ペプチド、およびタンパク質(たとえばホルモン、成長因子、抗体、抗体フラグメント、および酵素);炭水化物および多糖類;ならびに核酸、二本鎖または一本鎖DNA(裸およびcDNAを含む)、RNA、アンチセンスDNAおよびRNAなどのアンチセンス核酸、低分子干渉RNA(siRNA)、リボザイム、遺伝子、およびオリゴヌクレオチドが含まれ得る。核酸は、ベクター、プラスミド、またはリポソームなどの分子送達システムに組み込まれる。1つまたはそれ以上の薬物の混合物もまた企図される。
【0098】
薬物または薬剤は、薬物送達デバイスで使用するように適用された主要パッケージまたは「薬物容器」内に含まれる。薬物容器は、たとえば、カートリッジ、シリンジ、リザーバ、または1つもしくはそれ以上の薬物の保存(たとえば短期または長期保存)に適したチャンバを提供するように構成された他の固体もしくは可撓性の容器とすることができる。たとえば、場合によって、チャンバは、少なくとも1日(たとえば1日から少なくとも30日まで)の間薬物を収納するように設計される。場合によって、チャンバは、約1カ月から約2年の間薬物を保存するように設計される。保存は、室温(たとえば約20℃)または冷蔵温度(たとえば約-4℃から約4℃まで)で行うことができる。場合によって、薬物容器は、投与予定の医薬製剤の2つまたはそれ以上の成分(たとえばAPIおよび希釈剤、または2つの異なるタイプの薬物)を別々に、各チャンバに1つずつ保存するように構成された二重チャンバカートリッジとすることができ、またはこれを含むことができる。そのような場合、二重チャンバカートリッジの2つのチャンバは、ヒトまたは動物の体内に投薬する前、および/または投薬中に2つまたはそれ以上の成分間で混合することを可能にするように構成される。たとえば、2つのチャンバは、これらが(たとえば2つのチャンバ間の導管によって)互いに流体連通し、所望の場合、投薬の前にユーザによって2つの成分を混合することを可能にするように構成される。代替的に、またはこれに加えて、2つのチャンバは、成分がヒトまたは動物の体内に投薬されているときに混合することを可能にするように構成される。
【0099】
本明細書において説明される薬物送達デバイス内に含まれる薬物または薬剤は、数多くの異なるタイプの医学的障害の処置および/または予防に使用される。障害の例としては、たとえば、糖尿病、または糖尿病性網膜症などの糖尿病に伴う合併症、深部静脈血栓塞栓症または肺血栓塞栓症などの血栓塞栓症が含まれる。障害の別の例としては、急性冠症候群(ACS)、狭心症、心筋梗塞、がん、黄斑変性症、炎症、枯草熱、アテローム性動脈硬化症および/または関節リウマチがある。APIおよび薬物の例としては、たとえば、それだけには限らないが、ハンドブックのRote Liste 2014、主グループ12(抗糖尿病薬物)または主グループ86(腫瘍薬物)、およびMerck Index、第15版などに記載されているものがある。
【0100】
1型もしくは2型の糖尿病、または1型もしくは2型の糖尿病に伴う合併症の処置および/または予防のためのAPIの例としては、インスリン、たとえばヒトインスリン、またはヒトインスリン類似体もしくは誘導体、グルカゴン様ペプチド(GLP-1)、GLP-1類似体もしくはGLP-1受容体アゴニスト、またはその類似体もしくは誘導体、ジペプチジルペプチダーゼ-4(DPP4)阻害剤、または薬学的に許容されるその塩もしくは溶媒和物、またはそれらの任意の混合物が含まれる。本明細書において使用される用語「類似体」および「誘導体」は、天然のペプチドの構造、たとえばヒトのインスリンの構造から、天然のペプチド中に見出される少なくとも1つのアミノ酸残基を欠失させるおよび/もしくは交換することによって、ならびに/または少なくとも1つのアミノ酸残基を付加することによって式上で得られる分子構造を有するポリペプチドを指す。付加および/または交換されるアミノ酸残基は、コード可能なアミノ酸残基、または他の天然の残基もしくは完全に合成によるアミノ酸残基とすることができる。インスリン類似体は「インスリン受容体リガンド」とも呼ばれる。特に、用語「誘導体」は、1つまたはそれ以上の有機置換基(たとえば、脂肪酸)が1つまたはそれ以上のアミノ酸に結合している、天然のペプチドの構造、たとえばヒトのインスリンの構造から式上で得られる分子構造を有するポリペプチドを指す。場合により、天然のペプチド中に見出される1つまたはそれ以上のアミノ酸が、欠失され、かつ/もしくはコード不可能なアミノ酸を含む他のアミノ酸によって置換されていてもよく、または、コード不可能なアミノ酸を含むアミノ酸が、天然のペプチドに付加されていてもよい。
【0101】
インスリン類似体の例としては、Gly(A21),Arg(B31),Arg(B32)ヒトインスリン(インスリングラルギン);Lys(B3),Glu(B29)ヒトインスリン(インスリングルリジン);Lys(B28),Pro(B29)ヒトインスリン(インスリンリスプロ);Asp(B28)ヒトインスリン(インスリンアスパルト);B28位におけるプロリンがAsp、Lys、Leu、Val、またはAlaで置き換えられており、B29位において、LysがProで置換されているヒトインスリン;Ala(B26)ヒトインスリン;Des(B28-B30)ヒトインスリン;Des(B27)ヒトインスリンおよびDes(B30)ヒトインスリンがある。
【0102】
インスリン誘導体の例としては、たとえば、B29-N-ミリストイル-des(B30)ヒトインスリン;Lys(B29)(N-テトラデカノイル)-des(B30)ヒトインスリン(インスリンデテミル、Levemir(登録商標))、B29-N-パルミトイル-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-ミリストイルヒトインスリン;B29-N-パルミトイルヒトインスリン;B28-N-ミリストイルLysB28ProB29ヒトインスリン;B28-N-パルミトイル-LysB28ProB29ヒトインスリン;B30-N-ミリストイル-ThrB29LysB30ヒトインスリン;B30-N-パルミトイル-ThrB29LysB30ヒトインスリン;B29-N-(N-パルミトイル-γ-グルタミル)-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-ω-カルボキシヘプタデカノイル-γ-L-グルタミル-des(B30)ヒトインスリン(インスリンデグルデク、Tresiba(登録商標))、B29-N-(N-リトコリル-γ-グルタミル)-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-(ω-カルボキシヘプタデカノイル)-des(B30)ヒトインスリン、およびB29-N-(ω-カルボキシヘプタデカノイル)ヒトインスリンがある。
【0103】
GLP-1、GLP-1類似体およびGLP-1受容体アゴニストの例としては、たとえば、リキシセナチド(Lyxumia(登録商標)、エキセナチド(エキセンディン-4、Dyetta(登録商標)、Bydureon(登録商標)、アメリカドクトカゲの唾液腺によって産生される39アミノ酸ペプチド)、リラグルチド(Victoza(登録商標))、セマグルチド、タスポグルチド、アルビグルチド(Syncria(登録商標))、デュラグルチド(Trulicity(登録商標))、rエキセンディン-4、CJC-1134-PC、PB-1023、TTP-054、ラングレナチド/HM-11260C、CM-3、GLP-1エリゲン(Eligen)、ORMD-0901、NN-9924、NN-9926、NN-9927、ノデキセン(Nodexen)、ビアドール(Viador)-GLP-1、CVX-096、ZYOG-1、ZYD-1、GSK-2374697、DA-3091、MAR-701、MAR709、ZP-2929、ZP-3022、TT-401、BHM-034、MOD-6030、CAM-2036、DA-15864、ARI-2651、ARI-2255、エキセナチド-XTENおよびグルカゴン-Xtenがある。
【0104】
オリゴヌクレオチドの例としては、たとえば:家族性高コレステロール血症の処置のためのコレステロール低下アンチセンス治療薬である、ミポメルセンナトリウム(Kynamro(登録商標))がある。
【0105】
DPP4阻害剤の例としては、ビルダグリプチン、シタグリプチン、デナグリプチン、サキサグリプチン、ベルベリンがある。
【0106】
ホルモンの例としては、ゴナドトロピン(フォリトロピン、ルトロピン、コリオンゴナドトロピン、メノトロピン)、ソマトロピン(ソマトロピン)、デスモプレシン、テルリプレシン、ゴナドレリン、トリプトレリン、ロイプロレリン、ブセレリン、ナファレリン、およびゴセレリンなどの、脳下垂体ホルモンまたは視床下部ホルモンまたは調節性活性ペプチドおよびそれらのアンタゴニストが含まれる。
【0107】
多糖類の例としては、グルコサミノグリカン、ヒアルロン酸、ヘパリン、低分子量ヘパリン、もしくは超低分子量ヘパリン、またはそれらの誘導体、または上述の多糖類の硫酸化形態、たとえば、ポリ硫酸化形態、および/または、薬学的に許容されるそれらの塩が含まれる。ポリ硫酸化低分子量ヘパリンの薬学的に許容される塩の例としては、エノキサパリンナトリウムがある。ヒアルロン酸誘導体の例としては、ハイランG-F20(Synvisc(登録商標))、ヒアルロン酸ナトリウムがある。
【0108】
本明細書において使用する用語「抗体」は、免疫グロブリン分子またはその抗原結合部分を指す。免疫グロブリン分子の抗原結合部分の例には、抗原を結合する能力を保持するF(ab)およびF(ab’)2フラグメントが含まれる。抗体は、ポリクローナル、モノクローナル、組換え型、キメラ型、非免疫型またはヒト化、完全ヒト型、非ヒト型(たとえばネズミ)、または一本鎖抗体とすることができる。いくつかの実施形態では、抗体はエフェクター機能を有し、補体を固定することができる。いくつかの実施形態では、抗体は、Fc受容体と結合する能力が低く、または結合することはできない。たとえば、抗体は、アイソタイプもしくはサブタイプ、抗体フラグメントまたは変異体とすることができ、これはFc受容体との結合を支持せず、たとえば、突然変異した、または欠失したFc受容体結合領域を有する。用語の抗体はまた、四価二重特異性タンデム免疫グロブリン(TBTI)および/または交差結合領域の配向性を有する二重可変領域抗体様結合タンパク質(CODV)に基づく抗体結合分子を含む。
【0109】
用語「フラグメント」または「抗体フラグメント」は、全長抗体ポリペプチドを含まないが、抗原と結合することができる全長抗体ポリペプチドの少なくとも一部分を依然として含む、抗体ポリペプチド分子(たとえば、抗体重鎖および/または軽鎖ポリペプチド)由来のポリペプチドを指す。抗体フラグメントは、全長抗体ポリペプチドの切断された部分を含むことができるが、この用語はそのような切断されたフラグメントに限定されない。本発明に有用である抗体フラグメントは、たとえば、Fabフラグメント、F(ab’)2フラグメント、scFv(一本鎖Fv)フラグメント、直鎖抗体、単一特異性抗体フラグメント、または二重特異性、三重特異性、四重特異性および多重特異性抗体(たとえば、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ)などの多重特異性抗体フラグメント、一価抗体フラグメント、または二価、三価、四価および多価抗体などの多価抗体フラグメント、ミニボディ、キレート組換え抗体、トリボディまたはバイボディ、イントラボディ、ナノボディ、小モジュラー免疫薬(SMIP)、結合ドメイン免疫グロブリン融合タンパク質、ラクダ化抗体、およびVHH含有抗体を含む。抗原結合抗体フラグメントのさらなる例が当技術分野で知られている。
【0110】
用語「相補性決定領域」または「CDR」は、特異的抗原認識を仲介する役割を主に担う重鎖および軽鎖両方のポリペプチドの可変領域内の短いポリペプチド配列を指す。用語「フレームワーク領域」は、CDR配列ではなく、CDR配列の正しい位置決めを維持して抗原結合を可能にする役割を主に担う重鎖および軽鎖両方のポリペプチドの可変領域内のアミノ酸配列を指す。フレームワーク領域自体は、通常、当技術分野で知られているように、抗原結合に直接的に関与しないが、特定の抗体のフレームワーク領域内の特定の残基が、抗原結合に直接的に関与することができ、またはCDR内の1つまたはそれ以上のアミノ酸が抗原と相互作用する能力に影響を与えることができる。
【0111】
抗体の例としては、アンチPCSK-9mAb(たとえばアリロクマブ)、アンチIL-6mAb(たとえばサリルマブ)、およびアンチIL-4mAb(たとえばデュピルマブ)がある。
【0112】
本明細書において説明される任意のAPIの薬学的に許容される塩もまた、薬物送達デバイスにおける薬物または薬剤の使用に企図される。薬学的に許容される塩は、たとえば酸付加塩および塩基性塩である。
【0113】
本明細書に記載のAPIs、配合、装置、方法、システムおよび実施形態の様々な構成要素の修正(追加および/または削除)は、本発明の全範囲および趣旨から逸脱することなく行うことができ、本発明は、そのような修正、および本発明のあらゆる均等物もすべて包含することが当業者には理解されよう。