(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-13
(45)【発行日】2022-01-25
(54)【発明の名称】プロンプトガンマ陽電子放出核種からの高エネルギーカスケードガンマを伴う同時発生を使用したポジトロンエミッショントモグラフィ(PET)のタイミング較正
(51)【国際特許分類】
G01T 1/161 20060101AFI20220118BHJP
G01T 1/172 20060101ALI20220118BHJP
【FI】
G01T1/161 A
G01T1/172
(21)【出願番号】P 2019559818
(86)(22)【出願日】2018-05-04
(86)【国際出願番号】 EP2018061566
(87)【国際公開番号】W WO2018202878
(87)【国際公開日】2018-11-08
【審査請求日】2021-04-21
(32)【優先日】2017-05-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】KONINKLIJKE PHILIPS N.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100122769
【氏名又は名称】笛田 秀仙
(74)【代理人】
【識別番号】100163809
【氏名又は名称】五十嵐 貴裕
(72)【発明者】
【氏名】ラマノフ レオニド
(72)【発明者】
【氏名】アンドレイフ アンドリー
(72)【発明者】
【氏名】ブルグリン トーマス クリストファー
【審査官】松岡 智也
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-189583(JP,A)
【文献】国際公開第2013/018825(WO,A1)
【文献】Andriy Andreyev et al.,"Feasibility Study of Dual Isotope PET",IEEE Nuclear Science Symposium & Medical Imaging Conference,2010年,pp.2108-2111
【文献】織田圭一 他3名,”Na-22点状線源を使用したPET性能評価”,NMCC共同利用研究成果報文集18,2011年,231-236頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01T 1/161-1/166
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポジトロンエミッショントモグラフィ(PET)撮像装置のタイミング較正を実施するタイミング較正装置であって、前記タイミング較正装置は、
2つの反対方向の511keVガンマ線及び511keVとは異なるカスケードガンマ線エネルギーを持つ少なくとも1つのカスケードガンマ線の放出を含む崩壊経路を有する陽電子放出放射性同位体を含む放射性源と、
前記PET撮像装置によって前記放射性源から取得されたタイムスタンプ付き放射線検出イベントデータセットを入力するように接続される電子プロセッサと、
タイミング較正方法を実行するための、前記電子プロセッサにより読み取り可能且つ実行可能な命令を記憶した非一時記憶媒体であって、前記タイミング較正方法が、
エネルギーウィンドウフィルタリング及び時間ウィンドウフィルタリングを使用して前記タイムスタンプ付き放射線検出イベントデータセットを処理して、2つの同時発生511keVイベントから各々構成されるイベントペア、並びに少なくとも1つの同時発生511keVイベント及びカスケードガンマ線エネルギーにおける同時発生カスケードイベントから各々構成されるカスケードイベントペア又はトリプレット、を有する同時発生データセットを生成するステップと、
前記同時発生データセットを使用して、前記PET画像装置の前記PET検出器のオフセット時間を含む前記PET画像装置のタイミング較正を生成するステップと、を有する、非一時記憶媒体と、
を有
し、
前記放射性源は、放射性同位体22Naを含む、
タイミング較正装置。
【請求項2】
前記放射性源の最大寸法が20ミリメートル以下であり、
前記タイミング較正を生成する前記ステップは、前記放射性源から放出される前記同時発生データセットをモデル化することを含み、当該放射性源は、前記タイムスタンプ付き放射線検出イベントデータセットの取得の間、静止している、請求項1に記載のタイミング較正装置。
【請求項3】
前記放射性源は球状であり、最大直径が1ミリメートル以下である、請求項1又は2に記載のタイミング較正装置。
【請求項4】
前記タイミング較正を生成する前記ステップは、単一の静止した放射性点源により放出される同時発生データセットをモデル化することを含む、請求項1乃至3のいずれか1項に記載のタイミング較正装置。
【請求項5】
前記タイミング較正を生成する前記ステップは、前記PET撮像装置のあらゆるPET検出器ペアの2つのPET検出器から等距離に位置する単一の固定の放射性点源によって放出される同時発生データセットをモデル化することを含み、前記放射性点源は、前記放射性点源を通る応答線を定めることができる、請求項1乃至3のいずれか1項に記載のタイミング較正装置。
【請求項6】
前記PET撮像装置の前記タイミング較正を生成する前記ステップは、前記PET検出器のオフセット時間{tn}n=1,…,Nの値に関する式の組を同時に解くことを含み、ここでNは、PET検出器の数であり、tnは、n番目のPET検出器のオフセット時間であり、
前記式の組は、各イベントペアに関する式Δt=ti-tjと、各カスケードイベントペアに関する式Δt=ti-tkと、各カスケードイベントトリプレットに関する式Δtij=ti-tj、Δtik=ti-tk及びΔtjk=tj-tkを有し、
各イベントペアに関する式Δt=ti-tjにおいて、i及びjは、2つの同時発生511keVイベントを取得するPET検出器をインデックス付けし、Δtは、2つの同時発生511keVイベントのタイムスタンプの間の符号付き時間差であり、
各カスケードイベントペアに関する式Δt=ti-tkにおいて、iは、同時発生511keVイベントを取得するPET検出器をインデックス付けし、kは、同時発生カスケードイベントを取得するPET検出器をインデックス付けし、Δtは、同時発生511keVとカスケードイベントのタイムスタンプの間の符号付き時間差であり、
各カスケードイベントトリプレットに関する式Δtij=ti-tj、Δtik=ti-tk及びΔtjk=tj-tkにおいて、i及びjは、2つの同時発生511keVイベントを取得するPET検出器をインデックス付けし、kは、同時発生カスケードイベントを取得するPET検出器をインデックス付けし、Δtijは、同時発生511keVイベントのタイムスタンプの間の符号付き時間差であり、Δtikは、iとインデックス付けされたPET検出器によって取得される同時発生511keVイベントのタイムスタンプと、同時発生カスケードイベントのタイムスタンプとの間の符号付き時間差であり、Δjkは、jとインデックス付けされたPET検出器によって取得される同時発生511keVイベントのタイムスタンプと、同時発生カスケードイベントのタイムスタンプとの間の符号付き時間差である、
請求項5に記載のタイミング較正装置。
【請求項7】
前記タイムスタンプ付き放射線検出イベントデータセットの処理は、2つの同時発生511keVイベントを各々が含むイベントペアと、1つの511keV同時発生イベント及びカスケードガンマ線エネルギーを持つ同時発生カスケードイベントを各々が含むカスケードイベントペアと、を有する同時発生データセットを生成することを含み、前記同時発生データセットは、カスケードイベントトリプレットを含まない、請求項1乃至6のいずれか1項に記載のタイミング較正装置。
【請求項8】
前記タイムスタンプ付き放射線検出イベントデータセットの処理は、2つの同時発生511keVイベントを各々が含むイベントペア、並びに2つの同時発生511keVイベント及びカスケードガンマ線エネルギーを持つ同時発生カスケードイベントを各々が含むカスケードトリプレット、のみを有する同時発生データセットを生成することを含み、前記同時発生データセットはカスケードイベントペアを含まない、請求項1乃至6のいずれか1項に記載のタイミング較正装置。
【請求項9】
電子プロセッサによって読み取り可能且つ実行可能な命令であって、陽電子放出放射性同位元素を含む固定の放射性点源についてポジトロンエミッショントモグラフィ撮像装置によって取得されるタイムスタンプ付き放射線検出イベントデータセットに対し処理を行うタイミング較正方法を実行するための命令を記憶した非一時記憶媒体であって、
タイムスタンプ付き放射線検出イベントデータセットのエネルギーフィルタリングを実施して、陽電子放出放射性同位元素の511keVイベント及びカスケードガンマ線エネルギーを持つカスケードイベントを有するエネルギーフィルタリングされた放射線検出イベントデータセットを生成するステップと、
前記エネルギーフィルタリングされた放射線検出イベントデータセットの時間ウィンドウフィルタリングを実施して、2つの同時発生511keVイベントから各々構成されるイベントペア、並びに少なくとも1つの同時発生511keVイベント及び同時発生カスケードイベントから各々構成されるカスケードイベントペア又はトリプレットを有する同時発生データセットを生成するステップと、
前記同時発生データセットを使用して前記PET撮像装置のPET検出器の時間オフセットを含む前記PET撮像装置のタイミング較正を生成するステップと、
を有する非一時記憶媒体。
【請求項10】
前記タイムスタンプ付き放射線検出イベントデータセットは、前記PET画像装置によって、前記PET画像装置のあらゆるPET検出器ペアの2つのPET検出器から等距離に位置する前記固定の放射性源について取得され、前記放射性源は、前記放射性源を通る応答線を規定することができる、請求項9に記載の非一時記憶媒体。
【請求項11】
前記PET撮像装置の前記タイミング較正を生成する前記ステップは、前記PET検出器のオフセット時間{tn}n=1,…,Nの値に関する式の組を同時に解くことを含み、ここでNは、PET検出器の数であり、tnは、n番目のPET検出器のオフセット時間であり、
前記式の組は、各イベントペアに関する式Δt=ti-tjと、各カスケードイベントペアに関する式Δt=ti-tkと、各カスケードイベントトリプレットに関する式Δtij=ti-tj、Δtik=ti-tk及びΔtjk=tj-tkを有し、
各イベントペアに関する式Δt=ti-tjにおいて、i及びjは、2つの同時発生511keVイベントを取得するPET検出器をインデックス付けし、Δtは、2つの同時発生511keVイベントのタイムスタンプの間の符号付き時間差であり、
各カスケードイベントペアに関する式Δt=ti-tkにおいて、iは、同時発生511keVイベントを取得するPET検出器をインデックス付けし、kは、同時発生カスケードイベントを取得するPET検出器をインデックス付けし、Δtは、同時発生511keVイベントとカスケードイベントのタイムスタンプの間の符号付き時間差であり、
各カスケードイベントトリプレットに関する式Δtij=ti-tj、Δtik=ti-tk及びΔtjk=tj-tkにおいて、i及びjは、2つの同時発生511keVイベントを取得するPET検出器をインデックス付けし、kは、同時発生カスケードイベントを取得するPET検出器をインデックス付けし、Δtijは、同時発生511keVイベントのタイムスタンプの間の符号付き時間差であり、Δtikは、iとインデックス付けされたPET検出器によって取得される同時発生511keVイベントのタイムスタンプと、同時発生カスケードイベントのタイムスタンプとの間の符号付き時間差であり、Δtjkは、jとインデックス付けされたPET検出器によって取得される同時発生511keVイベントのタイムスタンプと、同時発生カスケードイベントのタイムスタンプとの間の符号付き時間差である、請求項10に記載の非一時記憶媒体。
【請求項12】
前記同時発生コデータセットは、カスケードイベントトリプレットを含まず、前記PET撮像装置の前記タイミング較正を生成する前記ステップは、前記PET検出器のオフセット時間{tn}n=1,…,Nの値に関する式の組を同時に解くことを含み、ここでNは、PET検出器の数であり、tnは、n番目のPET検出器のオフセット時間であり、
前記式の組は、各イベントペアに関する式Δt=ti-tj、及び各カスケードイベントペアに関する式Δt=ti-tkを有し、
各イベントペアに関する式Δt=ti-tjにおいて、i及びjは、2つの同時発生511keVイベントを取得するPET検出器をインデックス付けし、Δtは、2つの同時発生511keVイベントのタイムスタンプの間の符号付き時間差であり、
各カスケードイベントペアに関する式Δt=ti-tkにおいて、iは、同時発生511keVイベントを取得するPET検出器をインデックス付けし、kは、同時発生カスケードイベントを取得するPET検出器をインデックス付けし、Δtは、同時発生511keVイベントと同時発生カスケードイベントのタイムスタンプの間の符号付き時間差である、請求項10に記載の非一時記憶媒体。
【請求項13】
前記同時発生データセットは、カスケードイベントペアを含まず、前記PET撮像装置の前記タイミング較正を生成する前記ステップは、前記PET検出器のオフセット時間{tn}n=1,…,Nの値に関する式の組を同時に解くことを含み、ここでNは、PET検出器の数であり、tnは、n番目のPET検出器のオフセット時間であり、
前記式の組は、各イベントペアに関する式Δt=ti-tj、並びに各カスケードイベントトリプレットに関する式Δtij=ti-tj、Δtik=ti-tk及びΔtjk=tj-tkを有し、 各イベントペアに関する式Δt=ti-tjにおいて、i及びjは、2つの同時発生511keVイベントを取得するPET検出器をインデックス付けし、Δtは、2つの同時発生511keVイベントのタイムスタンプの間の符号付き時間差であり、
各カスケードイベントトリプレットに関する式Δtij=ti-tj、Δtik=ti-tk及びΔtjk=tj-tkにおいて、i及びjは、2つの同時発生511keVイベントを取得するPET検出器をインデックス付けし、kは、同時発生カスケードイベントを取得するPET検出器をインデックス付けし、Δtijは、同時発生511keVイベントのタイムスタンプの間の符号付き時間差であり、Δtikは、iとインデックス付けされたPET検出器によって取得される同時発生511keVイベントのタイムスタンプと、同時発生カスケードイベントのタイムスタンプとの間の符号付き時間差であり、Δtjkは、jとインデックス付けされたPET検出器によって取得される同時発生511keVイベントのタイムスタンプと、同時発生カスケードイベントのタイムスタンプとの間の符号付き時間差である、請求項10に記載の非一時記憶媒体。
【請求項14】
ポジトロンエミッショントモグラフィ(PET)撮像装置のためのタイミング較正方法であって、
PET撮像装置を使用して、2つの反対方向の511keVガンマ線及び少なくとも1つのカスケードガンマ線の放出を含む崩壊経路を有する陽電子放出放射性同位元素を含む放射性源に関してタイムスタンプ付き放射線検出イベントデータセットを取得するステップと、
電子プロセッサを使用して、(i)2つの同時発生511keVイベントから各々構成されるイベントペア、並びに(ii)少なくとも1つの同時発生511keVイベント及びカスケードガンマ線エネルギーにおける同時発生カスケードイベントから各々構成されるカスケードイベントペア又はトリプレット、を有する同時発生データセットを生成するために、前記タイムスタンプ付き放射線検出イベントデータセットを、エネルギーウィンドウフィルタリング及び時間ウィンドウフィルタリングするステップと、
電子プロセッサを使用して、前記PET撮像装置のPET検出器の時間をオフセットするために、前記イベントペアのタイムスタンプと前記カスケードイベントペア又はトリプレットのタイムスタンプとの符号付き時間差に関連する式の組を同時に解くことにより、前記PET撮像装置のタイミング較正を生成するステップと、を有し、
前記放射性源は、放射性同位体22Naを有する、
タイミング較正方法。
【請求項15】
前記放射性源は、前記タイムスタンプ付き放射線検出イベントデータセットの取得期間中、単一のロケーションに静止状態に保たれる、請求項14に記載のタイミング較正方法。
【請求項16】
前記単一のロケーションは、前記放射性源を通る応答線を規定することができる前記PET撮像装置のあらゆるPET検出器ペアの2つのPET検出器から等距離にある、請求項15に記載のタイミング較正方法。
【請求項17】
前記放射性源は、5ミリメートル以下の最大寸法を有する、請求項14乃至16のいずれか1項に記載のタイミング較正方法。
【請求項18】
前記PET撮像装置を使用して、撮像対象のタイムスタンプ付き撮像データセットを取得するステップと、
前記電子プロセッサを使用して、前記タイムスタンプ付き撮像データセットをエネルギーウィンドウフィルタリング及び時間ウィンドウフィルタリングして、2つの同時511keVイベントを各々が含むイベントペアを有する同時発生撮像データセットを生成するステップと、
前記PET撮像装置の前記タイミング較正を使用して前記同時発生撮像データセットのタイムスタンプを補正して、タイミング補正された同時発生撮像データセットを生成するステップと、
飛行時間(TOF)PET画像再構成プロセスを使用して前記タイミング補正された同時発生撮像データセットを再構成して、再構成されたTOF PET画像を生成するステップと、を有する、請求項14乃至17のいずれか1項に記載のタイミング較正方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、医療画像技術、ポジトロンエミッショントモグラフィ(PET)画像技術、PET撮像装置較正技術、及び関連技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ポジトロンエミッショントモグラフィ(PET)イメージングでは、陽子放出放射性医薬品が、例えば血管内注入によって患者に投与される。放出された各陽電子は電子により消滅し、それにより2つの反対方向の511keVガンマ線を生成する。検査領域の周囲に配置された1又は複数のPET検出器のリングが、患者から放出された放射線を検出する。検出された各イベントにはタイムスタンプが付される。エネルギーウィンドウを適用して511keVイベントを選択し、同時発生検出時間ウィンドウを適用して、時間ウィンドウ内で発生するそのような511keVイベントの同時発生ペアを検出する。このような同時発生ペアはそれぞれ、PET検出器での2つの検出イベントを接続する応答線(ラインオブレスポンス、LOR)を規定する。従って、ソース陽電子は、LORに沿ったある点で放出されたものであると位置特定される。
【0003】
飛行時間(TOF)PETでは、同時発生ペアの2つの511keVイベントのタイムスタンプを使用して、LORに沿った陽電子放出を位置特定する。例えば、2つの511keVイベントが正確に同時発生する場合、このTOFの位置特定は、2つの検出イベントから等距離のLORの中点に陽電子放出を配置する。一方、2つのイベントに時間差Δtがある場合、2つの放出されたガンマ線はそれぞれ光速で進むという知識を利用して、この時間差の大きさ及び符号(つまり、最初に検出されたもの)により、陽電子放出は、LORに沿って、最初の検出イベントに近く、第2の検出イベントから離れた定量的距離のところに位置特定されることができる。TOF PETは、LORに沿ったこの付加のイベント位置特定を利用することによって感度を向上させ、再構成画像を最終的に向上させることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
TOFの位置特定は、高速放射線検出器を必要とする。例えば、人間を収容し撮像するようにサイズ設計されたPET撮像装置は、直径が約70cmのPET検出器リングを有することができる。近くの検出器から20cm、遠くの検出器から50cm離れた位置で放出される陽電子について検討する。第1の検出器までのガンマ線の輸送時間は、t1=20cm/3.00×1010cm/sであり、これは667psである。第2の検出器までのガンマ線の輸送時間は、t2=50cm/3.00×1010cm/sであり、これは1667psである。従って、飛行時間の差はΔt=t2-t1=1であり、これは1000psである。ボアの中心に近いイベントの場合、この時間差は小さくなり、例えば、第1のイベントは、より近い検出器から30cmのところであり、第2のイベントは、他の検出器から40cmのところであり、Δt=333psである。従って、検出器の速さは、所望の飛行時間分解能に依存して、数十ピコ秒から数百ピコ秒の時間差を測定するのに十分でなければならない。
【0005】
実際には、PET検出器リングの個々の異なる検出器はさまざまな時間遅延を有し、その結果、本当は同時である2つのイベントのタイムスタンプが、体系的に異なる非ゼロの同時発生時間オフセットを有することになる。良好な時間分解能を確保するために、PET検出器によって出力されるタイムスタンプが、個々の異なるPET検出器間のこのような相対的なタイムラグについて較正されることが有利である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、新しくかつ改良されたシステム及び方法を開示する。
【0007】
開示される一態様において、ポジトロンエミッショントモグラフィ(PET)撮像装置のタイミング較正を実行するためのタイミング較正装置が開示される。タイミング較正装置は、2つの反対方向の511keVのガンマ線及び511keVではないカスケードガンマ線エネルギーを持つ少なくも1つのカスケードガンマ線の放出を含む崩壊経路を有する陽電子放出放射性同位体を含む放射性源と、PET撮像装置によって放射性源から取得されるタイムスタンプ付き放射線検出イベントデータセットを入力するように動作可能に接続される電子プロセッサと、タイミング較正方法を実施するための、電子プロセッサにより読み取り可能且つ実行可能な命令を記憶した非一時記憶媒体と、を有する。この方法は、エネルギーウィンドウフィルタリング及び時間ウィンドウフィルタリングを使用してタイムスタンプ付き放射線検出イベントデータセットを処理して、各々が2つの同時発生511keVガンマ線からなる同時発生ガンマ線(又は計数)、又は1つの511keVガンマ線及びカスケードガンマ線エネルギーを持つ1つの同時発生カスケードイベント、を含む同時発生データセットを生成するステップと、同時発生データセットを使用してPET撮像装置のPET検出器の時間オフセットを有するPET撮像装置のためのタイミング較正を生成するステップと、を有する。
【0008】
別の開示される態様において、非一時記憶媒体は、陽電子放出放射性同位元素を含む固定の放射性点源についてPET撮像装置によって取得されるタイムスタンプ付き放射線検出イベントデータセットに対し処理を行うタイミング較正方法を実施するための、電子プロセッサによって読み取り可能且つ実行可能な命令を記憶する。タイミング較正方法は、タイムスタンプ付き放射線検出イベントデータセットのエネルギーフィルタリングを実施して、陽電子放出放射性同位元素の511keVイベント及びカスケードガンマ線エネルギーを持つカスケードイベントを含むエネルギーフィルタリングされた放射線検出イベントデータセットを生成するステップと、エネルギーフィルタリングされた放射線検出イベントデータセット時間ウィンドウフィルタリングを実施して、2つの同時発生511keVイベントを各々が含むイベントペア、及び少なくとも1つの同時発生511keVイベント及び同時発生カスケードイベントを各々が含むカスケードイベントペア又はトリプレット(3つ組)を含む、同時発生データセットを生成するステップと、同時発生データセットを使用してPET撮像装置のPET検出器の時間オフセットをもつPET撮像装置のためのタイミング較正を生成するステップと、を有する。
【0009】
別の開示される態様において、ポジトロンエミッショントモグラフィ(PET)撮像装置のためのタイミング較正方法が開示される。PET撮像装置を使用して、タイムスタンプ付き放射線検出イベントデータセットが、放射性源について取得され、かかる放射性源は、2つの反対方向の511keVガンマ線及び511keVとは異なるカスケードガンマ線エネルギーを持つ少なくとも1つのカスケードガンマ線の放出を含む崩壊経路を有する陽電子放出放射性同位体を含む。電子プロセッサを使用して、このデータセットは、エネルギーウィンドウフィルタリングされ及び時間ウィンドウフィルタリングされ、(i)2つの同時発生511keVイベントを各々が有するイベントペア、並びに(ii)少なくとも1つの同時発生511keVイベント及びカスケードガンマ線エネルギーを持つ同時発生カスケードイベントを各々が有するカスケードイベントペア又はトリプレット、を含む同時発生データセットを生成する。電子プロセッサを使用して、PET撮像装置のPET検出器の時間をオフセットするために、イベントペアのタイムスタンプとカスケードイベントペア又はトリプレットのタイムスタンプとの間の符号付き時間差に関連する式の組を同時に解くことにより、PET撮像装置のタイミング較正が生成される。タイミング較正は、PET撮像装置のPET検出器について求められたオフセット時間を含む。
【0010】
1つの利点は、点源によく似た単一のコンパクトな放射性源を使用して実施されうる通常の又は飛行時間(TOF)PETイメージングにおいて使用されるポジトロン放出断層撮影(PET)検出器のタイミング較正を提供することにある。
【0011】
別の利点は、単一のコンパクトな放射性源を使用してこのようなタイミング較正を提供することであり、かかる放射性源は、較正データ収集プロセスを通して静止状態である。
【0012】
別の利点は、TOF PETイメージングにおいて使用されるPET検出器のタイミング較正を、複数の又は分散した又は移動可能な放射能源を必要とせずに提供することにある。
【0013】
別の利点は、検出器感度の較正のような他のタイプの較正にも使用されることができる従来の放射性源を使用する前述の利点の1つ又は複数にある。
【0014】
所与の実施形態は、前述の利点の1、2、それ以上、又はすべてを提供することができ又は前述の利点を提供せず、及び/又は本開示を読み理解することにより当業者に明らかになる他の利点を提供することができる。
【0015】
本発明は、さまざまな構成要素及び構成要素の取り合わせ、並びにさまざまなステップ及びステップの取り合わせの形をとることができる。図面は、好適な実施形態を例示する目的のためだけにあり、本発明を制限するものとして解釈されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】飛行時間(TOF)撮像機能を備え、本願明細書に開示される検出器タイミング較正を含むポジトロンエミッショントモグラフィ(PET)撮像装置を概略的に示す図。
【
図2】陽電子を放出する崩壊イベントによって生成され、PETリングの2つの検出器を使用して取得される同時発生511keV-511keVガンマ線ペアで構成される較正データを概略的に示す図。
【
図3】
図2の較正データが、関係するPET検出器の誤ったタイミング較正をもたらし得ることを概略的に示す図。
【
図4】崩壊イベントによって生成され、1つの検出器がタイミングオフセットを有する2つの検出器を使用して取得される、同時発生511keV-1275keVガンマ線ペアで構成される較正データを概略的に示す図。
【
図5】
図4と同様に同時発生511keV-1275keVガンマ線ペアで構成されるが、1275keVのカスケードガンマ線が、異なる方向に放出され、異なる検出器によって検出されたものである較正データを概略的に示す図。
【
図6】陽電子を放出する崩壊イベントによって生成され、1つの検出器がタイミングオフセットを有する3つの検出器を使用して取得された同時発生511keV-511keV-1275keVガンマ線トリプレットで構成される別の較正データを概略的に示す図であって、同時発生511keV‐511keV-1275keVガンマ線トリプレットは、Na-22の単一の放射性崩壊又は3つの別々の崩壊から生じうる511keV‐511keVペア及び2つの511keV-1275keVペアの3つの同時発生ペアとして見ることもできる図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1を参照して、例示のポジトロンエミッショントモグラフィ(PET)撮像装置2は、環状ガントリ又はハウジング6に配置されたPET検出器リング4を有する。
図1は、端部から見た、すなわちPET検出器リング4の軸に沿って見たPET撮像装置2を概略的に示している。PET撮像装置2は、スタンドアロンでありえ、又は図示されるPETモダリティと、透過X線源及び対向するX線検出器を支持する回転ガントリを有するCT撮像モダリティ(図示せず)との両方を有する複合PET/透過コンピュータトモグラフィ(CT)撮像装置のようなハイブリッド撮像システムの一部でありうる。PET撮像装置2は、タイムスタンプ付き検出イベントログ8(例:磁気ディスク、電子データストレージなどを含む非一時記憶媒体)に記憶されるタイムスタンプ付き放射性粒子(ガンマ線など)検出イベントを取得するために、電子撮像システムコントローラ(図示せず。例えば、コンピュータ、専用PETコントローラハードウェア、それらのさまざまな組み合わせなどとしてさまざまに具体化されることができる、マイクロプロセッサ又はマイクロコントローラ、及びメモリ、クロック回路、接続電気配線などの関連する電子素子である)により制御される。1つの非限定的で説明的な例として、例示のPET撮像装置2は、オランダ国アイントホーフェンのKoninklijke Philips NVから入手可能なVereos Digital PET/CTスキャナのPETモダリティでありうる。
【0018】
本願明細書で使用される場合、「PET検出器」という語は、ガンマ線又は他の放射線又は粒子を検出するPET検出器リング4の素子をさす。PET検出器リング4の個々の検出器への分割は、環状に、すなわちPET検出器リング4の円周に沿って行われ、また任意には、軸方向に行われることができ、すなわち、PET検出器リング4は、PET検出器の複数のリングを有することができる。各PET検出器は、例えばPET検出器ピクセル、PET検出器素子など、当技術分野でさまざまに呼ばれることができ、例えば、検出イベントを位置特定するために使用されるアンガーロジックを備えた光電子増倍管(PMT)と結合されたシンチレータを使用して、又は1対1のシンチレータSiPM対応のシンチレータ/シリコン光電子増倍管(SiPM)素子等として、さまざまに構成されることができる。PET検出器のグループは、PET検出器モジュールとして製造されることができ、所与のPET検出器モジュールの検出器は、いくつかの共通の制御及び/又は駆動回路を共有し、ある実施形態では共有タイムスタンピング回路を有することができる。同様に、PET検出器モジュールの複数グループは、PET検出器タイルを形成することができ、PET検出器タイルもまた、いくつかの共通回路を共有することができる。結果として、特定の種類のPET検出器リングの場合、PET検出器のグループ(例えば、単一のPET検出器モジュール又はタイル)は、他のPET検出器モジュール又はモジュール式及び/又はタイル式のPET検出器リングのタイルに対して同様の又は同一の時間オフセットを有しうる。
【0019】
電子プロセッサ10は、タイムスタンプ付き検出イベントログ8に記憶されたタイムスタンプ付き検出イベントのさまざまな処理を実行するようにプログラムされる。電子プロセッサ10は、例えばデスクトップコンピュータ、病院データネットワーク等(例えば、有線及び/又は無線イーサネット、オプションでインターネットを介したデータリンクを含む)を介してPET撮像装置2と動作可能に接続されたサーバコンピュータなどのさまざまな形態をとりうる。実行される命令は、例えばハードディスク又は他の磁気記憶媒体、及び/又はフラッシュメモリ又は他の電子記憶媒体などの非一時記憶媒体(図示せず)に適切に記憶される。いくつかの実施形態において、ここで説明するさまざまなイベントデータ処理を実行する電子プロセッサ10は更に、タイムスタンプ付き検出イベントログ8に記憶されたイベントデータを取得するためにPET撮像装置2を制御する制御機能を実行する。代替として、これらは別々のプロセッサであってもよい。
【0020】
図1を引き続き参照して、電子プロセッサ10は、以下のようにPET画像再構成11を実行する。イベントデータログ8に記憶されたタイムスタンプ付きイベントデータは、再構成される入力撮像データとして機能する。さまざまなPET検出器のさまざまな時間遅延を補償するために、タイミング較正12が、PET検出器リング6の検出器によって生成されるタイムスタンプに適用される。概して、タイミング較正12は、各検出器ごとに、当該PET検出器により検出される検出イベントのタイムスタンプに適用される時間オフセットを記憶する。これらのオフセットは、さまざまなPET検出器のそれぞれ異なる時間遅延を補償するために予め決定される(すなわち、較正される)。
【0021】
処理14において、選択されたエネルギー分解能において511keVのエネルギーを有するイベントを選択するために、エネルギーウィンドウが適用される。このエネルギーは、電子-陽電子消滅イベントによって放出される2つの反対方向のガンマ線のエネルギーに対応する。同時検出ウィンドウ16が、511keVイベントに適用されて、選択された時間ウィンドウ内で同時発生した同時発生511keVイベントを検出する。この時間ウィンドウは、個々のガンマ線が大きなTOF差をもつ真の同時発生をフィルタ除去することを避けるために、予想される最大の飛行時間差Δtよりも大きくする必要がある。例えば、ガントリ6の直径が70cmである場合、最大の信頼できるΔtは、およそ70cm/3.00×1010cm/sであり又は約2330psであり、従って、処理14において適用される時間ウィンドウは、これよりも大きくなければならない。
【0022】
結果として得られる511keVのガンマ線イベントペアは、処理18において再構成されたTOF-PET画像を生成するために再構成される。再構成は、任意の適切な画像再構成アルゴリズムを用いることができ、例えば、TOF-PET再構成の場合はTOFカーネルを適切に使用して、最尤期待値最大化(MLEM)、順序付きサブセット期待値最大化(OSEM)などを使用することができる。概念的に、各511keVガンマ線ペアは、2つのイベントを接続するLORに沿った陽電子放出を規定し、TOFによる位置特定は更に、LORに沿って陽電子の位置を特定する。得られた画像は、ディスプレイ19に表示され、ハードコピーとして印刷され、及び/又は他の方法で利用されることができる。
【0023】
TOF PET再構成11は、PET検出器リング4の検出器の間のそれぞれ異なるタイムラグに起因するタイムスタンプ誤差を補正するために、タイミング較正12を使用する。PET検出器の感度較正のために、放射性点源が知られている。
図1は、PET撮像装置2の検査領域22に配置されたそのような放射性点源20を示している。そのような放射性点源は、陽電子放出放射性同位体を含む。例えば、アメリカ電機工業会(NEMA)の標準の点源は、直径10mm/辺のアクリルキューブに埋め込まれた直径0.25mmの22Na点源で構成される。22Naが、放射性成分として使用される場合、この陽電子放出体の半減期が長いことにより、頻繁な補充が必要ない。空間内の点を効果的に近似するのに十分にコンパクトな放射性源は、例えば、ある実施形態では5ミリメートル以下の最大寸法を有し、より好適には球状であり、例えば0.5ミリメートル以下の最大直径を有する。前述のNEMAの標準点源の場合、放射性物質の材料コストを削減し、タイミング較正を決定するための同時発生イベントの計算処理を簡素化する特定の利点があります。しかしながら、タイミング較正のためにより空間的に拡張される放射性源、例えば、いくつかの実施形態では20ミリメートル以下の最大寸法を有する放射性源を使用することが企図される。より大きなサイズの較正放射性源が企図されるが、放射性源が大きすぎる場合、タイミング較正の精度が低下する可能性がある。これらの非限定的な例示の寸法は放射性物質自体のものであり、ホスト構造(前述のNEMA標準点源の場合はアクリルキューブなど)は、放射性源の取り扱いや操作を容易にするためにより大きくすることができる。
【0024】
較正の目的のために、放射性点源は、点源20を通る応答線(LOR)を定めることができるPET撮像装置の各PET検出器ペアの2つのPET検出器から等距離にあるようにすることが有利である。円形PET検出器リング4を有する例示のPET撮像装置2の場合、これは、放射性点源20を、PET検出器リング4の円形断面の中心に置くことにより達成される。
【0025】
図2は、
図1のPET検出器リング4の4つの例示的なPET検出器D1、D2、D3、D4と共に放射性点源20を概略的に示している。(PET検出器リング4は一般に4より多くのPET検出器を有し、それらは通常511keVガンマ線を任意の角度で検出するためにリングの円周に沿って密に間隔をおいて配置されることが理解される)。
図2は、陽電子-電子消滅による同時発生511keVイベントペアを示しており、すなわち、一方のイベントはPET検出器D1によって検出され、他方のイベントはPET検出器D3によって検出される2つの反対方向の511keVガンマ線を示す。この説明的な例においては、更に、3つの検出器D2、D3、D4の実際のタイムラグは同じ(任意にゼロと示す)であるが、検出器D1の実際のタイムラグはこれらの他の3つの検出器よりも4時間ユニットだけ遅いと仮定される。この状況を補正するために、タイミング較正は、
図2に示すように、PET検出器D1には-4のオフセット時間を割り当て、他の3つのPET検出器D2、D3、D4にはゼロのオフセット時間を割り当てるべきである。より一般的には、n番目のPET検出器のPET検出器オフセットは、t
nと示される。従って、タイミング較正の目的は、PET検出器のオフセット時間{t
n}
n=1,…,Nの値を最適化することである(Nは、PET検出器リング4のPET検出器の数である)。放射性点源20が、放射性点源20を通るLORを規定することができるPET撮像装置のあらゆるPET検出器ペアの2つのPET検出器から等距離に配置される場合、(
図2に示されるような)同時発生511keVイベントペアの各々について、Δt=t
i-t
jを書くことができ。ここで、i及びjは、2つの同時発生511keVイベントを取得するPET検出器のインデックスであり、Δtは、2つの同時発生511keVイベントのタイムスタンプの間の符号付き時間差である。(「符号付き」とは、Δtが早い方のタイムスタンプから遅い方のタイムスタンプを引いたものとして計算される場合、時間差は負になり、逆の場合には時間差は正になることを意味する)。このような式をすべて同時に解くことにより、PET検出器のオフセット時間{t
n}
n=1,…,Nの値を最適化することが期待される。
【0026】
しかしながら、タイミング較正のために単一の移動しない放射性点源20を使用することは、大きな問題に遭遇する。放射性点源20の点の性質と、同時発生511keVガンマ線ペアによって規定される各応答線(LOR)は実際にラインであるという事実により、所与のPET検出器について、すべてのLORは、所与のPET検出器から放射性点源20を通って延びる線に沿って反対側のPET検出器と接続する。従って、PET検出器D1のすべてのLORは、反対側のPET検出器D3と接続し、同様に、PET検出器D3のすべてのLORは、反対側のPET検出器D1と接続する。従って、個々のPET検出器D1、D3のためのオフセット時間t1及びt3は、PET検出器D1,D3を含む同時発生511keV検出イベントペアのみから決定される。これらのペアはすべて、-4=t1-t3と書かれる式Δt=ti-tjをもつ。
【0027】
図2及び
図3を比較すると、式-4=t
1-t
3は、単一解をもたない。グラウンドトゥルースの(すなわち正しい)解は、
図2に示すようにt
1=-4及びt
3=0であるが、別の可能な(ただし誤った)解は、
図3に示すようにt
1=-2及びt
3=+2である。両方とも時間差Δt=-4を与える。
【0028】
要するに、中心に配置される静止した放射性点源20がタイミング較正に使用される場合、所与の検出器素子iに関して、ただ1つの反対側の検出器素子jがあり、検出素子iを含むすべてのLORが、検出器素子jを通る。従って、検出器i及びjのオフセット時間の差は決定されることができるが、2つのPET検出器i及びjの間の当該差を割り当てる方法はない。
【0029】
この問題を解決するために、放射性点源ではなく、空間的に分布した較正放射性源が使用されることができる。このようにして、検出器素子iに関連付けられたLORは、他の2以上の反対側のPET検出器を含み、その結果、PET検出器iを含む式の組を解くことができるようになる。しかしながら、較正用放射性源が大きすぎると、LORに沿った陽電子-電子消滅イベントの位置の不確実性が大きくなり、タイミング較正の精度が低下する。逆に、空間的に分布する放射性源が小さすぎる(なお点源よりも大きい)場合、PET検出器iを含むLORは、反対側のすべての隣接するPET検出器の小さなグループを含む。この小さいグループが完全に単一のPET検出器モジュール上にある場合、小さいグループのすべての検出器のオフセット時間は同様でありうる(これは、例えば、タイムラグが主に、PET検出器モジュールのすべての検出器によって共有される伝送ラインの遅延に起因する場合である)。この場合、状況は
図2と同様であるが、追加の同様の反対側の検出器からの冗長データがある。
【0030】
図2を参照して提示された問題を解決する別の選択肢は、複数の放射性点源を使用すること、又はデータ取得中に放射性点源を移動することである。ソース(又は移動ソース)はなお点源であるので、空間的な不確実性の問題は軽減される。ただし、複数の放射性点源を使用することは、コストを高くし、検査領域内の異なる場所に各線源を配置するためにハードウェアを取り付ける必要がある。取得中に単一の放射性点源を移動することは、機械的に複雑であり、実現するのが難しく、複雑な取り付けハードウェアを必要とする。更に、複数の点源又は単一の移動する点源のいずれかを使用することは、中心に位置する静止した単一の点源の幾何学的な単純さを排除し、かかる単一の点源は、放射性点源20を通るLORを規定することができるPET撮像装置のあらゆるPET検出器ペアの2つのPET検出器から等距離にある。これは、結果的な式の同時解において用いられる結果の行列マの評価を複雑にする。これを理解するために、式Δt=t
i-t
jは、点源から等距離にある2つのPET検出器i及びjに依存すると考える。代わりに、放射性点源がPET検出器リング4の中心にない場合、式がΔt=t
i-t
j+T
ijになる定数項があり、ここで、項T
ijは、点源から各検出器i及びjまでの実際の飛行時間差を考慮する。更に、T
ijは、一般に、各々の検出器ペアごとに異なり、検出器リングの特定の幾何及び放射性点源の配置に依存する。
【0031】
本願明細書において、PET検出器リング4のアイソセンタに配置される単一の固定の放射性点源の使用を可能にする代替の解決策が開示され、すなわち、かかる放射性点源は、放射性点源20を通るLORを規定することができるPET検出器リング4のあらゆるPET検出器ペアの2つのPET検出器から等距離の位置にある。開示するアプローチは、いくつかの陽電子放出放射性同位体が、2つの反対方向の511keVガンマ線(陽電子-電子消滅によって生成される)及び511keVとは異なるカスケードガンマ線エネルギーを持つカスケードガンマ線の放出によって崩壊するという観察を前提とする。より一般的には、カスケードガンマ線エネルギーは、E
cascと表現される。放出される2つの反対方向の511keVガンマ線は、PETイメージングにおいて通常使用されている。しかしながら、イメージング処理11の間、第3のガンマ線、すなわちカスケードガンマ線が、511keV付近の比較的狭い通過帯域内のガンマ線のみを保持するエネルギーフィルタリング処理14(
図1参照)により除去される。本願明細書に開示されるタイミング較正アプローチは、カスケードガンマ線がいかなる優先方向にも向けられないという更なる観察を前提とする。
【0032】
このような陽電子放出放射性同位体の例は22Naであり、これは、2つの反対方向の511keVガンマ線(陽電子-電子消滅によって生成される)及び約1275keVのエネルギー(すなわちEcasc=1275keV)を持つカスケードガンマ線の放出を含む崩壊経路を有し、かかるカスケードガンマ線は、2つの反対方向の511keVガンマ線の方向と比較して、特定の放出方向に制約されない。1275keVのカスケードガンマ線は、陽電子放出によって22Na同位体から生成されるネオン原子の脱励起により約90%の時間で放出される。陽電子放出とカスケードガンマ線放出との間の遅延は約3ピコ秒である。
【0033】
例示の実施形態において、放射性点源20は、22Naの放射性点源であると想定され、22Naの放射性点源は、NEMA標準の点源であり、直径0.25mmの22Na点源が10mm/辺のアクリルキューブに埋め込まれている。ただし、他の点源のサイズが用いられることもできる。更に、ここでは22Na点源が、例示の点源として使用されるが、開示するアプローチは、511keV以外のエネルギーで統計的に有用なカスケードガンマ線を放出する陽電子放射性同位体を用いることもできる。カスケードガンマ線のエネルギーは、それが有限の検出器エネルギー分解能及びコンプトン散乱にかかわらず識別可能であるように、511keVよりも数エネルギーシグマ大きいことが望ましい。考えられる他の放射性同位体はK-38、Cu-60などを含むが、これらの同位体の半減期はより短いので、日常的にタイミング較正ソースとして使用するにあまり便利でない。
【0034】
ここで
図4及び
図5を参照して、放射性点源により放出されるカスケードガンマ線を利用する開示されるタイミング較正アプローチが記述される。
図2に示す検出器の構成が再び考えられ、検出器D1は-4のオフセット時間を有し、検出器D3は、ここでもゼロのオフセット時間を有する。
図4に示すように、ここでは、2つの511keVガンマ線の1つが、検出器リングからの散乱、吸収、又は他の何らかの損失メカニズムにより失われると仮定される。一方、第3のガンマ線、つまりエネルギー1275keVのカスケードガンマ線が更に、Ne原子の基底状態への脱励起により、陽電子放出に続いて放出される。(ネオン原子は、陽電子の放出による
22Na原子の核変換によって生成される)。前述のように、同時発生検出ウィンドウ16の幅は、期待される最大の飛行時間差Δtよりも大きくする必要があり、直径約70cmの典型的な本体サイズの医療用イメージングPETガントリの場合は2330psのオーダーである。従って、Na-22における陽電子放出及び後続のカスケードガンマ線放出の間の平均3psの遅延、及び陽電子が消滅するのに必要な時間は、同時検出ウィンドウ16に対し、測定されたタイミング重心オフセットにあまり影響を及ぼさない。本願明細書で認識されるように、タイミング較正の目的のために、カスケードガンマ線は、2つの反対方向の511keVガンマ線と方向的に相関しないという実質的な利点を有する。従って、511keV-511keVのガンマ線ペアによって規定される検出器D1を含むあらゆるLORもまた、必然的に、(散乱がない場合)検出器D3を含むが、このような制約は、1275keVのカスケードガンマ線には適用されず、カスケードガンマ線は、PET検出器リング4の任意のPET検出器によって検出される。非限定的な例として、
図4は、PET検出器D5によって検出される1275keVのカスケードガンマ線を任意に示す。しかしながら、
図5に示すように、検出器D1に関連する次のイベントは、異なるPET検出器D6により検出される1275keVのカスケードガンマ線を有しうる。
【0035】
図6を参照して、カスケードガンマ線を放出する
22Na崩壊イベントによって放出される3つすべての同時発生ガンマ線を検出することも可能である。3つの同時発生ガンマ線は、2つの反対方向の511keVガンマ線、及びE
casc=1275keVのカスケードガンマ線である、
図6に示す同時発生トリプレットは、511-511keVの1つのダブル同時発生及び511-1275keVの2つのカスケードガンマ同時発生と解釈されることができる。
【0036】
図1に戻り、前述の観察を利用するとともに、特にタイミング較正を実行するために単一の固定の放射性点源20の使用を可能にするように追加のカスケードガンマ線を利用するタイミング較正方法30が示される。処理32において、(1)511keVのエネルギーを持つイベント、及び(2)511keVとは異なるカスケードガンマ線エネルギー(Na放射性同位体の例では1275keV)を持つイベント、の両方のイベントを選択するように、エネルギーウィンドウが適用される。処理32は、例えば511keVを中心とする中心とする第1の通過帯域及びカスケードガンマ線エネルギー(
22Na例では1275keV)を中心とする第2の通過帯域をもつ二重通過帯域を有する選択機能34を用いることができる。有利なことに、これは、典型的には、PET検出器リング4又は関連する電子機器に対する変更を必要としない。そうではなく、タイムスタンプ付きの検出イベントログ8に記憶されているイベントデータに対して処理が実行される。企図される変形された実施形態において、選択機能は、511keV及び1275keVの両方を包含するに十分広い単一の通過帯域を有することができる。いずれの場合も、カスケードガンマを目標とするエネルギー受容ウィンドウは、部分エネルギー(たとえば、800又は900keV)で検出される(ソース又は検出器内で)散乱されたカスケードガンマも検出することができるように十分広いことが好ましい。一実装形態において、511keVガンマの通常の上限エネルギー閾値が640keVに設定される場合、この閾値を超えるエネルギーが検出された他のガンマヒットは、1275keVカスケードガンマに起因しうる。
【0037】
処理36において、同時発生検出ウィンドウが適用される。処理36がカスケードガンマも含む同時発生も捕捉することを除いて、同時発生検出処理36は、イメージング処理11で用いられる同時発生検出動作16に類似する。より具体的には、同時発生511keV-511keVペア40は、処理16と同様に収集されるが、処理36は、同時発生511keV-1275keVカウント42も収集する(又は、一般化された例では、同時発生511keV-E
cascカウント42を収集する)。本願明細書では(
図4を簡単に参照して)このようなイベントをXカウントとも呼ぶ。
図4の例では、カスケードガンマ線と同時に発生する511keVガンマ線が1つだけ検出される。このような状況は、例えば、崩壊により2つの反対方向の511keVガンマ線と1275keVカスケードガンマ線を含むトリプレットが生成されるが、2つの反対方向の511keVガンマ線のうちの1つが散乱するか、相互作用なしに検出器を通過する場合、又は、失われた511keVガンマ線が、PET検出器リング4のいかなるPET検出器によっても検出されない方向に向けられる場合に生じる(
図6を参照)。
【0038】
図1を引き続き参照すると、ある実施形態において、同時発生検出処理36は更に、
図6に示す例のように、同時発生511keV-511keV-1275keVトリプレット44を捕らえる(又は、一般化される場合、同時発生511keV-511keV-E
cascトリプレット44)を収集する)。代替として、このようなトリプレットは、3つの同時発生ペアとして処理されることができ、この場合、1つの同時発生ペアは、511keV-511keVペア40であり、2つの同時発生ペアは、511keV-E
cascペア42である。同時発生511keV-511keVペアについて処理を行う既存のタイミング較正アプローチは、511keV-E
cascペアを付加的に処理するように容易に適応されることができ、ある実施形態では、撮像データを処理するために使用されるものと同じ同時発生検出ウィンドウ16が、同時発生検出ウィンドウ36として使用されることができる。この後者のアプローチでは、トリプレットとして記憶される同時発生トリプレット44の処理は、(
図1の点線を使用してこの追加データセット44を示すことによって示されるように)適切に省略される。
【0039】
更に
図6を参照して、検出器D1-D5、検出器D1-D3、及び検出器D3-D5の同時発生は、単一の放射性崩壊の一部として生じる必要はなく、3つの別々の崩壊の集合として生じるものであってもよい。
図6において、動かされない点源を使用する場合の検出器D3とD5間の真の同時発生は、511-E
casc同時発生を使用する場合にのみ可能であることに注意されたい。
【0040】
図1を引き続き参照して、検出された同時発生ペア40、42及び(任意の)検出された同時発生トリプレット44は、タイミング較正生成処理50に入力され、タイミング較正生成処理50が、これらの同時発生ペア40、42及び(任意の)同時発生トリプレット44に基づいて式の組を生成し解く。処理50は、PET検出器のオフセット時間{t
n}
n=1,…,Nの値に関する式の組を同時に解くことを含む(ここでNは、PET検出器の数であり、t
nは、n番目のPET検出器のオフセット時間である)。式の組は、以下を含む。
【0041】
最初に、各々の511keV-511keVイベントペア40は、処理50によって次式に定式化される。
Δt=ti-tj(1)
ここで、i及びjは、2つの同時発生511keVイベントを取得するPET検出器をインデックス付けし、Δtは、2つの同時発生511keVイベントのタイムスタンプの間の符号付き時間差である。
【0042】
同時発生検出器36によって検出される場合、各カスケードイベントペア42は、処理50によって次式に定式化される:
Δt=ti-tk(2)
ここで、iは、同時発生511keVイベントを取得するPET検出器をインデックス付けし、kは、同時発生カスケードイベントを取得するPET検出器をインデックス付けし、Δtは、同時発生511keVとカスケードイベントのタイムスタンプの間の符号付き時間差である。
【0043】
同時発生検出器36によって検出される場合、各カスケードイベントトリプレット44は、処理50によって以下の3つの式に定式化される:
Δtij=ti-tj
Δtik=ti-tk (3)
Δtjk=tj-tk
ここで、i及びjは、2つの同時発生511keVイベントを取得するPET検出器をインデックス付けし、kは、同時発生カスケードイベントを取得するPET検出器をインデックス付けし、Δtijは、同時発生511keVイベントのタイムスタンプの間の符号付き時間差であり、Δtikは、iとインデックス付けされたPET検出器によって取得された同時発生511keVイベントのタイムスタンプと、同時発生カスケードイベントのタイムスタンプとの間の符号付き時間差であり、Δjkは、jとインデックス付けされたPET検出器によって取得された同時発生511keVイベントのタイムスタンプと、同時発生カスケードイベントのタイムスタンプとの間の符号付き時間差である。
【0044】
処理50は、取得したペア及び(任意の)トリプレットを適切な式(1)、(2)、又は(3)に定式化することによって生成される式の組を同時に解き、この式の組が、同時に解かれることにより、PET検出器のオフセット時間{t
n}
n=1,…,Nが最適化される。任意のタイプの最小二乗最適化などが用いられることができる。{t
n}
n=1,…,Nを求めるための1つの可能な反復方程式は以下である:
ここで、kは、反復インデックスであり、iは、現在の検出器素子nに接続するすべてのカウントのセット{M
n}にわたって実行される検出されたカウントインデックスである。式の組を同時に解くことは、一般に最小二乗最適化などによって実施され、求められるオフセット時間は、正確な数値ではなく、損失関数、目的関数、又はその他の最適化フィットメトリックを最小化するように最適化される。
【0045】
タイミング較正プロセス30が、タイミング較正12の既存のインスタンスを更新するために実行される場合、オフセット時間{tn}n=1,…,Nの現在の値が、この最適化の初期値として任意の使用されることができる。タイミング較正プロセス30が初めて実行されるか、又は現在のオフセット時間値によって最適化がバイアスされないことを保証することが望ましい場合、オフセット時間{tn}n=1,…,Nは、すべてゼロの値、又はゼロを中心としたランダムな偏差、その他に初期化される。オフセット時間{tn}n=1,…,Nの結果的に最適化された値は、新しい又は更新されたタイミングキ較正12としてメモリにロードされ、その後、イメージングプロセス11による画像再構成のために取得されたLORの飛行時間(TOF)ローカライゼーションの計算に使用される。
【0046】
カスケードガンマ線を含むすべてのケースで、PET検出器i及びjは、常に対向しているが、カスケードガンマ線を検出するPET検出器kは、PET検出器リング4の他のPET検出器でありうる。このカスケードガンマ線の方向相関の欠如は、タイミングオフセットの決定の改善を可能にするが、放射性点源20を通るLORを規定することができるPET撮像装置のあらゆるPET検出器ペアの2つのPET検出器から等距離に位置する単一の固定の放射性点源20をなお使用する。PET検出器i及びPET検出器kの間(又はPET検出器j及びPET検出器kの間)に規定することができる応答線(LOR)はないが、放射性点源20は点源であり、その位置は知られているので、そのような同時発生からのタイミング情報は、タイミング較正に十分なはずである。
【0047】
放射性点源20の中心位置は、単純化された式(1)-(3)をもたらす簡素化されたジオメトリを提供するので有益であり、かかる式は、タイムスタンプ付きの放射線検出イベントデータセットの取得全体を通じて、放射性源が静止した状態で、放射性源20によって放出される同時発生データセット40、42、44をモデル化する。しかしながら、代わりに、放射性点源を検査領域22の他の場所に配置することも可能である。この場合、式(1)-(3)は、Δt=ti-tj+Tijの式によって置き換えられる必要があり、ここでTijは、異なる飛行距離による、点源から各検出器素子i及びjまでの実際の飛行時間差を考慮する。前述のように、これらのファクタTijは、概して、検出器ペアごとに異なり、検出器リングの特定のジオメトリ及び放射性点源の(中心ではない)配置に依存する。
【0048】
Philips Ingenuity TF PET/CTスキャナと同様のPETカメラジオメトリをシミュレートするために、GATE v5.0.1を使用してモンテカルロシミュレーションが実行された。シミュレートされた放射性点源は、視野の中心に配置された(すなわち、放射性点源20を通るLORを規定することができるPET撮像装置のあらゆるPET検出器ペアの2つのPET検出器から等距離にある)0.1MBq放射能をもつ
22Na点源であり、10秒間シミュレートされた。シミュレーションは、2つのエネルギーウィンドウでシングルスを取得した。一方のウィンドウは、511keV同時発生のための440-664keVであり、他方のウィンドウは、高エネルギーカスケードガンマ線のための664-2000keVであった。シングルスは、4.5nsのタイミング同時発生ウィンドウにわたって、ダブルの511-511keV又はX同時発生511-1275keVのいずれかの同時発生に合致された。収集時間10秒にわたる100kBqを中心とするNa-22点源のシミュレーションでは、次の統計が取得されたことが示された:ダブルの511-511keV同時発生:~58863カウント(cps=1秒あたりのカウント)及びX同時発生(511-1275keV)の同時発生:~11528カウント。通常の511keV-511keV同時発生と同様に511-1275keV同時発生を含む同様のカウント統計を得るために、取得時間又は較正ソースアクティビティが中程度(累積で約5倍)増やされる必要があると推定されることができる。同時発生40、42、44(
図1参照)のすべての可能なタイプを使用するアプローチが最も有利であることが推定される。標準の511-511keV PETの同時発生は、統計値が高いためタイミング較正に役立ち、カスケードガンマ線を含む同時発生は、
図2及び
図3を参照して記述される説タイミング較正の問題を解決する。別の要因は、前述のように、PET検出器のタイミングオフセットは、PET検出器モジュールやタイルなどの大きなグループにわたって相関されることができるので、オフセットを適切に推定するために必要な統計量が少なくてすむ。このようにしてカスケードガンマ線を含む同時発生を使用して、素子をグループ化し、ダブル同時発生情報に基づいてソリューションの高周波成分を決定し、X同時発生を使用してソリューションの低周波エラーを補正することにより、標準のダブル同時発生方法の数値解を安定させることができる。
【0049】
本開示は、好適な施形態を参照して記述された。上述の詳細な説明を読み理解することにより、変形例及び変更例が当業者に思いつくであろう。本発明は、そのようなすべての変形例及び変更例が添付の特許請求の範囲又はその均等物の範囲内に入る限り、それらの変形例及び変更例を含むものと解釈されることが意図される。