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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-13
(45)【発行日】2022-01-25
(54)【発明の名称】ターボ機械エンジン部品のろう付け修復
(51)【国際特許分類】
   B23K 31/00 20060101AFI20220118BHJP
   B23K 1/00 20060101ALI20220118BHJP
【FI】
B23K31/00 D
B23K1/00 330P
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2019565263
(86)(22)【出願日】2017-05-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-07-27
(86)【国際出願番号】 US2017034698
(87)【国際公開番号】W WO2018217213
(87)【国際公開日】2018-11-29
【審査請求日】2020-03-04
(73)【特許権者】
【識別番号】599078705
【氏名又は名称】シーメンス エナジー インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】カジム・オズバイサル
【審査官】黒石 孝志
(56)【参考文献】
【文献】特表2005-539139(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2013-0035726(KR,A)
【文献】特開2016-217246(JP,A)
【文献】特開平11-335802(JP,A)
【文献】特開2005-350744(JP,A)
【文献】特開平11-236655(JP,A)
【文献】特表2005-532478(JP,A)
【文献】特開2017-109239(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0136811(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 31/00
B23K 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
損傷した部品を第1の温度まで加熱し、第1の期間にわたり前記第1の温度で保持して、粒界の共晶を分解するステップと、
前記部品を冷却するステップと、
前記損傷した部品を前記第1の温度よりも高い第2の温度まで加熱し、第2の期間にわたり前記第2の温度を保持して、前記粒界の共晶をさらに分解するステップと、
前記部品を冷却するステップと、
前記部品を第3の温度まで加熱し、第3の期間にわたり前記第3の温度を保持して、前記粒界の共晶を分解するステップと、
前記部品が冷却した後に、ろう付け温度で前記損傷した部品をろう付け修復するステップとを含む方法。
【請求項2】
前記損傷した部品の加熱は、前記第1の温度および第2の温度の少なくとも一方への低速加熱を経るものであり、前記低速加熱は、2から5℃/分の加熱速度を経るものである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第3の期間の後に、およびろう付け修復の前に、前記部品を冷却するステップをさらに含む、請求項に記載の方法。
【請求項4】
前記部品のろう付け修復は、0.1から12時間の間である、請求項に記載の方法。
【請求項5】
前記第3の温度は、前記第1および第2の温度のうちの1つに等しいか、またはそれより高い、請求項に記載の方法。
【請求項6】
前記ろう付け温度は、高速加熱の速度を経て達成され、前記高速加熱の速度は、10から30℃/分である、請求項に記載の方法。
【請求項7】
前記ろう付け温度は、粒界の共晶溶融温度である、請求項に記載の方法。
【請求項8】
前記ろう付け温度は、前記第1の温度に等しいか、またはそれより高く、前記ろう付け温度は、10から30℃/分である高速加熱の速度を経て達成される、請求項に記載の方法。
【請求項9】
前記部品を前記第1の温度まで加熱する前に、前記損傷した部品から任意の被覆を除去することによる、前記損傷した部品を修復のために用意するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記被覆は、化学的または機械的プロセスを経て除去される、請求項に記載の方法。
【請求項11】
前記部品を前記第1の温度まで加熱する前に、前記損傷した部品の亀裂から酸化物を除くことによる、前記損傷した部品を修復のために用意するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記酸化物は、フッ化物イオン洗浄プロセスを経て除かれる、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記第1の温度は、前記損傷した部品の溶体化処理温度(STT)より高い、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記第1の温度は、前記STTよりも10℃高い、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記第1および第2の期間のうちの少なくとも1つは、1から2時間の間である、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記第2の温度まで加熱することは、前記部品が室温まで冷却する前に開始する、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記部品を設備へ戻す前に、非破壊検査を経て前記部品を検査するステップをさらに含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項18】
前記部品を設備へ戻す前に、前記部品の表面に少なくとも1つの被覆を適用するステップをさらに含む、請求項1または2に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に材料技術の分野に関し、より具体的には、産業用部品、例えばターボ機械エンジン、例えばガスタービンエンジンの部品のろう付け修復のシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンエンジンなどのターボ機械では、空気はコンプレッサセクションで圧縮され、次いで燃料と混合され、燃焼セクションで燃焼されて高温の燃焼ガスを生成する。高温の燃焼ガスは、エンジンのタービンセクション内で膨張し、そこでエネルギーが抽出されて出力電力を供給して電気を生成する。高温の燃焼ガスは、タービンセクションを通過するときに一連の段階を介して移動する。段階は、静翼、すなわちベーンの列と、それに続く回転翼、すなわちブレードの列とを含むことができ、ブレードは、出力電力を提供するために高温の燃焼ガスからエネルギーを抽出する。燃焼およびタービンセクション内の部品は高温の燃焼ガスに直接晒されるため、これらの部品は損傷し、修復が必要となり得る。
【0003】
これらの部品の構造的なろう付け修復は、ろう付け材料の高い粘度に起因して困難である。ろう付け温度を上げて粘度を下げると、部品の粒界溶融をもたらす。粒界溶融は望ましくなく、部品の有用性を低下させる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
一つの実施形態では、ターボ機械エンジンの1つまたは複数の部品をろう付け修復する方法が提供される。本方法は、例えば、低速加熱の速度で、損傷した部品を第1の温度まで加熱し、第1の期間にわたり第1の温度を保持するステップを含む。第1の期間は、所定のまたは指定された時間であり得る。第1の期間の満了時に、部品が第2の期間にわたり保持される第2の温度まで再び加熱される前に、例えば室温またはほぼ室温まで冷却してもよい。第2の温度は、第1の温度に等しいか、またはそれより高くてもよい。第2の期間は、第1の期間に等しいか、または異なっていてもよい。第2の期間の満了時に、部品は再び冷却される。その後、部品は、例えば非破壊検査によって検査され、残りの粒界の共晶の量に応じて、部品は、第1または第2の熱処理のいずれかに類似した第3の熱処理を受け、または例えば高速加熱の速度で、損傷した部品のろう付け作業が開始してもよい。
【0005】
別の実施形態では、ろう付け修復のために部品を用意するための、または部品をろう付け修復するためのシステムが提供される。システムは、加熱システムおよび任意選択の冷却システムに操作可能に接続されたコントローラを含み得る。加熱システムは、部品の溶融温度または例えば粒界の共晶溶融温度まで、またはそれを超える加熱温度を生成するように操作可能に構成されてもよい。冷却システムは、例えば、さらなる熱処理が必要かどうかを判断するための部品の検査のために、部品をほぼ室温まで冷却するように、または冷却を促進するように操作可能に構成されてもよい。操作の間に、損傷した部品は加熱システムにより運ばれてもよく、コントローラは加熱システムに第1の温度までの熱を発生させてもよく、これは一度達成されると第1の期間にわたり保持される。部品は、次いで、冷却システムを介して、および/または加熱システムによって生成された熱を減らすことにより自然に冷却され得る。部品を例えば室温まで冷却すると、または冷却段階の間に、部品は第2の熱処理を受け、部品は、例えば低速加熱の速度で、第2の温度まで加熱され、第2の温度まで達すると第2の温度は第2の期間にわたり保持される。部品は再び冷却され、ろう付け修復を開始するか、または部品をろう付けする前に、粒界の共晶をさらに分解するために、後続の熱処理を行うかを決定するために検査され得る。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】ろう付け修復前の、および粒界溶融をもたらすろう付け修復の従来の方法後のターボ機械エンジンで使用するための損傷した部品の概略図を示している。
図2】本明細書で提供される開示による、構造的なろう付け修復のためのシステムの実施形態のブロック図を示している。
図3】本明細書で提供される開示による、図2のシステムで利用され得るコントローラの例示的な実施形態を示している。
図4】本明細書で提供される開示による、改修操作(servicing operation)のステップが実施された後の図1の損傷した部品の概略図を示しており、粒界の共晶は部分的に分解および縮小されている。
図5】本明細書で提供される開示による、改修操作における別のステップを受け、粒界の共晶はさらに分解および縮小される、図1の損傷した部品の概略図を示している。
図6】本明細書で提供される開示による、改修操作におけるさらに別のステップを受け、粒界の共晶は改修操作を受けた後にさらに分解し、かなり小さくなっている、図1の損傷した部品の概略図を示している。
図7】本明細書で提供される開示による、部品のろう付け修復方法のブロック図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本明細書の主題の実施形態を例示することのみを目的としており、限定するものではない図面を参照すると、図1は、ターボ機械エンジン部品、例えばガスタービンエンジン部品の、ろう付け修復の従来方法の前後での、その冶金学的構造において、粒界の共晶の溶融をもたらす一般的な粒界の低融点共晶を有する概略図である。
【0008】
従来のろう付け修復の方法の下では、部品の粒界溶融温度よりも高い温度でろう付け作業が行われるときに、望ましくない粒界の共晶溶融がもたらされることが理解されるだろう。
【0009】
従って、従来の方法の下では、粒界の共晶の存在に起因して、ろう付け温度およびろう付け作業の間に適用されるろう付け温度までの加熱速度が制限される。
【0010】
本発明者は、上記の制限を認識しており、従来の方法における弱点を特定した。本発明者はここで、粒界の共晶部分を有する損傷した部品のろう付けまたは溶接修復、例えば構造的修復のための新しい技術を教示している。
【0011】
ここで図2を参照すると、例えば、高ガンマプライムニッケル系ガスタービン部品1用のろう付け修復システム10の例示的な実施形態のブロック図が示されている。図2に示すように、システム10は、共晶粒界の融解温度、例えば0から3000℃の間の温度まで、またはそれを超える熱を生成するように操作可能な加熱システム100を含み得る。一実施形態では、加熱システム100は、炉であり得る。炉100は、真空炉、例えば分圧を有する真空炉、または吸熱ガス熱処理炉であり得る。追加または代替として、加熱システム100は、適切な判断で選択され、および共晶粒界の融解温度まで、またはそれを超える熱を生成するように操作可能である誘導加熱システムまたは他の加熱システムであり得る。
【0012】
上述した溶融温度よりも低いまたは高い温度を生成できる炉もまた、適切な判断で選択されるとき、その中の物品および/または材料の溶融温度に応じて使用され得ることが理解されるだろう。
【0013】
システム10は、例えば有線または無線接続15を介して炉100に操作可能に接続され、特定の、または所定の期間に炉の加熱温度を制御するように構成された1つまたは複数のコントローラ200をさらに含み得る。図3の例示的な実施形態では、コントローラ200は、メモリ204により保持される制御アプリケーション300の1つまたは複数の命令またはコマンドを実行するためのメモリ204、またはプロセッサ202に操作可能に接続された他のデータ記憶システム206、例えばハードディスクドライブ、ソリッドステートドライブなどに操作可能に接続されたプロセッサ202を含み得る。コントローラは、ユーザー入力を受信し、ディスプレイ(図示せず)上に表示可能な出力を生成するための任意の一般的なインターフェースであり得るユーザーインターフェース(図示せず)をさらに含み得る。コントローラ200は、例えば、炉100および/または他の冷却装置に関連した動作情報または生産情報を受信および送信するために、コントローラ200とシステム10の他の装置との間の通信を容易にするためのネットワークアダプタ/トランシーバ208も含み得る。コントローラ200は、炉100により保持されてもよく、すなわち炉100に接続されてもよく、またはコントローラ200は、炉100から離れていてもよいことが理解されるだろう。制御アプリケーション300に対する一連の命令は、炉が指定された期間、特定の温度で動作するための命令を含み得る。追加または代替として、制御アプリケーション300は、部品1を例えば室温まで冷却するための1つまたは複数のデバイスを動作させるための命令、および例えば、部品1の周囲の温度を識別するための、炉100によって操作可能に保持される1つまたは複数のアセンブリからの温度または温度関連情報を処理するための命令を含み得る。
【0014】
システムはまた、例えば部品1を冷却するために、炉100および/またはコントローラ200に操作可能に接続された冷却システム、装置またはデバイス130を含み得る。冷却デバイス130は、炉100から分離したユニットであるか、またはその中の任意の部品を指定された温度または状態、たとえば室温まで冷却するように操作可能な炉のシステムであり得る。
【0015】
引き続き図4から図7を参照すると、部品、例えば粒界の共晶を有する損傷した部品のろう付け修復のための方法1000が提供される。例えばターボ機械エンジンから損傷した部品1を取り出した後、方法1000は、例えば、部品1から任意の被覆、例えば金属および/またはセラミック被覆を機械的または化学的に除去することによる、修復のための部品1を用意するステップ(1005)から始まり得る。
【0016】
この例示的なステップでは、ターボ機械エンジンの部品は通常、操作の間に部品および/または下にある基板を保護する1つまたは複数の被覆を有しているので、これらの被覆の除去は損傷した部品を修復するために必要となり得る。機械的な除去プロセスの種類の例には、グリットブラスティング、サンディングおよび/またはショットピーニングを経た除去を含み得る。化学的な除去プロセスは、例えば、化学的ストリッピングおよび/またはエッチングを経た除去を含み得る。
【0017】
任意の被覆の除去の後で、部品1を用意するための方法は、例えば部品1内の亀裂からの任意の酸化物を除去するために、例えばフッ化物イオン洗浄(FIC)または同様のプロセスを介した洗浄プロセスをさらに含み得る。目が詰まった亀裂、例えば極端に目が詰まった亀裂が存在する場合、洗浄プロセスを受ける前に、目が詰まった亀裂を開くために、超硬バーツールまたはドレメルカッティングホイールが使用され得ることが理解されるだろう。
【0018】
洗浄プロセスの完了時、または代替として、洗浄が必要でない場合、方法1000は、熱処理を受けるために、加熱システム100、例えば炉の中に部品を配置するステップを含み得る。部品が加熱システム100により保持されている状態で、部品1の第1の熱処理が適用/開始されてもよく、指定されたか、または所定の期間にわたって部品1を第1の温度まで加熱することを含む(1010)。第1の温度は、粒界の共晶溶融を防ぐために粒界溶融温度よりも低い温度であり得る。例えば、粒界溶融が例えば1265℃で起こる実施形態において、第1の温度は、溶融温度1265℃の約98から98.5%、例えば1245℃であり得る。第1の温度は、粒界の共晶溶融をもたらすことなく、共晶の少なくとも一部を減少または分解させるのに十分高くすべきである。第1の温度はまた、第1の温度よりも高く、望ましくない粒界の共晶溶融を引き起こすであろう温度よりも低い温度での後続の熱処理を可能にするのに十分低くてもよい。
【0019】
追加または代替として、第1の温度は、例えば、熱処理を受ける部品の新調(new make)(鋳放し)部品の溶体化処理温度より上の温度であり得る。例えば、部品がCM247を含む実施形態では、溶体化処理温度(STT)は、新調鋳放し部品に対して1232℃であり得る。1232℃のSTTでは、第1の温度は1242℃で実行され、これは新調品のSTTより上に約10℃の増大を意味している。10℃の増大は、存在する超合金材料の種類に依存してもよく、STTより上に10から30℃の間の温度上昇は、望ましくない粒界の共晶溶融が起こらない限り、損傷した部品の熱処理の間に可能であることが理解されるだろう。さらに、第1の(または後続の熱処理)温度は、いかなる粒界溶融をもたらすことなく、粒界の共晶の少なくとも一部を分解するのに十分高くあるべきである。
【0020】
引き続き図面および方法1000を参照すると、部品の第1の温度への加熱は、従来のろう付け作業の間に適用される高速加熱と比較して、漸進的に、すなわち低速であり得る。すなわち、低速加熱が粒界の共晶化合物の溶融を防ぎ、共晶の分解のための時間を可能にするのを助けるように、部品は熱処理の間に第1の温度までゆっくりと加熱され得る(低速加熱)。低速加熱の例には、2から5℃/分の速度(低加熱速度)で部品の第1の温度までの加熱を含み得る。
【0021】
追加または代替として、初期温度、たとえば室温から第1の温度までの低速加熱は、過剰な時間を要し得るので、加熱技術(速度)の組み合わせ、例えば低速および加速(例えば、高速)加熱が、熱処理の間に第1の温度、または任意の後続の温度に到達するために使用され得る。この実施形態、すなわち、低速加熱が加速加熱と組み合わされる実施形態では、部品は高速加熱を経て、例えば最大1100℃まで最初に加熱され、次いで、例えば追加の145℃のために、第1の温度まで低速で加熱され得る。例えば第1の温度までの高速加熱は、粒界の共晶溶融をもたらし得るので、高速加熱の後に低速加熱を採用して第1の温度に到達すべきである。本明細書に記載の任意の閾値を超える温度の急速な上昇は粒界の共晶溶融をもたらし得るので、熱処理の間の第1の温度までの急速加熱は避けるべきである。従って、熱処理段階の間の高速加熱は、低速加熱の前に好ましくは利用され、第1の温度よりも約100℃低い温度まで増大させるために使用されるべきである。例えば、第1の温度が1245℃である実施形態では、高速加熱は、第1の温度よりも100℃低い約1145℃まで継続すべきである。さらなる実施形態では、高速加熱は、高速加熱段階の間に粒界の共晶が生じない限り、超合金材料および/または他の考慮事項に応じて100℃の閾値を超えて利用され得ることも理解されるだろう。
【0022】
引き続き図面を参照すると、第1の温度に到達すると、第1の温度は、第1の熱処理の間に約1から2時間保たれる、例えば一定に維持されるべきである。第1の温度または任意の温度が特定の期間保持されている間、温度の差がわずかであり、第1の温度を決定するための任意の基準に一致する限り、温度のわずかな変化は粒界に悪影響を与えないであろう。
【0023】
第1の熱処理の間に第1の温度を保持するための指定された、または所定の期間は、共晶化合物の大きさ、基板材料または他の要因の1つまたは複数に応じて、例えば30分から4時間の間であり得る。すなわち、多少の時間が必要になり得る。第1の温度が約1245℃である実施形態では、期間は、好ましくは45分から3時間の間、またはより好ましくは1時間から2時間の間であり得る。
【0024】
第1の温度までの低速加熱、所定の期間その温度での保持は、粒界の共晶が溶融することなく分解することを可能にする。この粒界の共晶の低減の例は、図4の実施形態に示されており、これは、例えば約1245℃で約2時間の第1の熱処理の後の損傷した部品1を示しており、これは部分的に分解され、縮小された粒界の共晶をもたらした。
【0025】
部品1の熱処理の後、部品1は、例えば室温まで冷却することが可能である(1015)。部品は自然に、すなわち冷却システムまたは他のデバイスからの支援なしに冷却することができ、または部品の冷却は、冷却システム130もしくは炉により保持される部品を冷却するための当技術分野で既知の任意の手段を介してもよい。室温への自然冷却は、例えば、加熱システム100の、もしくは加熱システム100内の温度を室温まで下げることにより、または部品1の温度を室温まで下げることによるものであることが理解されるだろう。部品の、または炉内の現在の温度を決定するために、1つもしくは複数のセンサアセンブリ、レーザー読み取りシステム、または温度計が、現在の温度を決定するために、炉に操作可能に接続されるか、または炉内で操作可能に使用され得る。
【0026】
引き続き図面を参照すると、室温まで冷却すると、方法1000は、第2の期間にわたって部品1を第2の温度まで加熱することによる第2の熱処理(1020)をさらに含み得る。部品1が第1の熱処理の後に室温まで冷却されると、または冷却プロセスの間の正しい判断で選択されるときにいつでも、部品の第2の温度への加熱が開始され得ることが理解されるだろう。第2の温度への加熱は、低速加熱による、または第1の熱処理について説明した加熱技術の任意の組み合わせ、例えば、温度が粒界の共晶のさらなる分解のために第2の温度に達するように高速から低速の加熱によるものであり得ることがさらに理解されるだろう。
【0027】
図5に示すように、図4の粒界の共晶は、第2の熱処理後にさらに分解および縮小される。第2の温度を決定するための手段は、第1の温度を決定するための上記手段と同様であり得る。例えば、粒界の共晶溶融が例えば1265℃で起こる場合、第2の温度は、溶融温度1265℃の約99から99.5%、例えば1255℃であり得る。第2の温度は、いかなる溶融をもたらすことなく粒界の共晶の大きさを低減またはさらに分解するのに十分高くすべきであることが理解されるだろう。追加または代替として、第2の温度は、第1の温度よりも高い、例えば約0.8から0.85%高くてもよく、これは、望ましくない粒界溶融をもたらすであろう温度未満のままである。加熱速度、例えば、低加熱速度は、第1の熱処理の加熱速度、例えば、約2から5℃/分の温度上昇と同様であり得ることが理解されるだろう。
【0028】
第1の期間と同様に、第2の温度のための第2の期間は、例えば30分から4時間の間であり、残りの共晶化合物に依存し得る。第2の熱処理、すなわち第2の期間、例えば1から2時間の間、第2の温度を保持した後、部品1は、冷却システム130または他の公知の冷却手段を介して、例えば室温まで冷却してもよい(1015)。
【0029】
第2の熱処理の後に部品1を室温まで冷却すると、部品1は、ろう付け修復作業、すなわちろう付け修復の準備ができている。ろう付け修復は、前の温度、例えば粒界の共晶を分解させる第1もしくは第2の温度のいずれか、例えば1255℃、または粒界溶融温度であり得る、例えば1265℃、もしくは第3の期間にわたり第1および第2の熱処理の前の温度よりも高い第3の温度で実行され得る(1030)。この実施形態では、ろう付け修復の間の加熱速度は、熱処理の間の加熱速度とは異なり、ろう付け修復の加熱速度は、浸食を防ぐために、すなわち、ろう付け材料がベース金属部品を分解するのを避けるために可能な限り早い。この高加熱速度の例は、約10から30℃/分の増加である。
【0030】
所望の保持温度、すなわち、ろう付け修復のための所望の/達成される温度、例えば第3の温度が達成されると、ろう付け修復のための期間は、第1および第2の期間の両者より短くてもよく、または部品1を動作状態、すなわち、部品がターボ機械エンジンに戻るために構造的完全性を有する状態に持っていくために必要とされるろう付け修復の程度に応じて、前の期間のいずれかを超えて延長してもよい。例えば、第3の期間は、0.1から12時間の間、または好ましくは30分から12時間の間であり得る。第3の温度は、粒界の共晶溶融温度、例えば、1265℃であり得るので、ろう付け修復を完了するのにより少ない時間が必要とされ得る。ろう付け温度までの高速加熱は、部品1とろう付け材料との間に最小の化学的相互作用を確実にし、それ故侵食量を低下させることが理解されるだろう。さらに、母材の粒界の共晶がこの温度に対して分解されているので、ろう付け作業の高速加熱の速度は、母材の粒界溶融をもたらさないことが理解されるだろう。
【0031】
追加または代替として、ろう付け修復作業1030の前に、方法1000は、ろう付け修復に先立ち、粒界の共晶をさらに分解するために、特定の期間にわたりステップ1010または1020のいずれかを繰り返すことを経る第3の熱処理をさらに含む。第3の熱処理は、その温度が適用時に粒界溶融をもたらさないことを条件に、第1および第2の温度のいずれよりも高い温度で実行されてもよいことが理解されるだろう。第1および第2の熱処理と同様に、第3の温度に到達することは、第3の温度への低速加熱を経る、または第1および第2の熱処理のいずれかで説明したような高速および低速加熱の組み合わせを経るものであってよく、例えば、第3の温度よりも低い所望の温度までの高速加熱、次いで例えば約2から5℃/分での低速加熱、次いで室温まで冷却する前に第3の温度を約1から2時間の間保持することが理解されるだろう。第3の熱処理後の粒界の共晶に応じて、前の熱処理のいずれかと同様の後続の熱処理がろう付け作業に先立って必要とされ、これは前の熱処理の温度のいずれかまたはより高いろう付け温度で実行され得る。
【0032】
図6を見てわかるように、第1および第2の熱処理と同様に、第3の熱処理の後、粒界の共晶部分はさらに分解し、かなり小さくなる。
【0033】
引き続き図面を参照すると、追加または代替として、方法1000は、例えば非破壊検査または当技術分野で周知の他の検査手段を介して部品1を検査して、部品1の完全性が熱処理の間に、および部品1を動作に戻すことに先立って解決されているかどうかを判定することをさらに含み得る。検査は、部品1の冷却の間に、または部品1を第2、第3または後続の温度に加熱して粒界の共晶を分解する前の任意の時点で実行され得る。追加または代替として、修復した部品1を動作に戻す前に、方法1000は、部品1に1つまたは複数の被覆を適用することをさらに含み得る。被覆は、部品1に被覆を適用するための当技術分野で周知の手段、例えば、スプレー、蒸着などを経て適用され得る。
【0034】
特定の実施形態を詳細に説明したが、当業者は、本開示の全体的な教示に照らして、それらの詳細に対する様々な修正および代替を想起できることを理解するであろう。例えば、異なる実施形態に関連して説明された要素を組み合わせることができる。従って、開示された特定の構成は、例示のみを意図しており、添付の特許請求の範囲およびそれに関するあらゆる全ての同等物の全範囲が与えられる特許請求の範囲または開示の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。用語「含む(comprising)」は他の要素またはステップを除外せず、冠詞「a」または「an」の使用は複数を除外しないことに留意されたい。
【符号の説明】
【0035】
1 部品
10 システム
15 有線または無線接続
100 加熱システム
130 冷却システム
200 コントローラ
202 プロセッサ
204 メモリ
206 他のデータ記憶システム
208 トランシーバ
300 制御アプリケーション
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7