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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-13
(45)【発行日】2022-01-25
(54)【発明の名称】最適化されたレーザー切断
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20220118BHJP
   B23K 26/38 20140101ALI20220118BHJP
   B23K 26/0622 20140101ALI20220118BHJP
【FI】
H01L21/78 B
B23K26/38 Z
B23K26/0622
【請求項の数】 16
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020065979
(22)【出願日】2020-04-01
(65)【公開番号】P2020170842
(43)【公開日】2020-10-15
【審査請求日】2020-06-05
(31)【優先権主張番号】16/372,536
(32)【優先日】2019-04-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504133796
【氏名又は名称】エーエスエム・テクノロジー・シンガポール・ピーティーイー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】パウル・クリスティアーン・フェルブルグ
【審査官】鈴木 孝章
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-284671(JP,A)
【文献】特開2013-146747(JP,A)
【文献】特表2011-517622(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
B23K 26/38
B23K 26/0622
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェハにレーザーエネルギを照射することによって前記ウェハを切断する方法であって、
i)一連のレーザービームパルスのシーケンスを発するように適合されるレーザー発生源を提供するステップと、
ii)レーザービームパルスを前記レーザー発生源から発するステップと、
iii) 発せられた前記レーザービームパルスを案内して、切断されるウェハを照射するステップと、
iv)前記ウェハを切断線に沿って切断するために、照射している前記レーザービームパルスに対して前記ウェハを移動させるステップと、
を含み、
レーザービームパルスの前記シーケンスは第1のセットのレーザービームパルスと第2のセットのレーザービームパルスとを含み、前記第2のセットのレーザービームパルスは、前記第1のセットのレーザービームパルスに続くように前記シーケンス内において順序だてられており、
前記第1のセットは、
0.1~300ナノ秒の範囲内のパルス幅を有する少なくとも1つのレーザービームパルス、または
レーザービームパルスの少なくとも1つのバーストであって、前記バースト内の各々のパルスが100ピコ秒以下のパルス幅を有する、少なくとも1つのバースト、
を含み、
前記第2のセットは、100ピコ秒以下のパルス幅を有する少なくとも1つのレーザービームパルスを含み、
レーザービームパルスの前記第1のセットは、前記ウェハにおいて少なくとも1つの切断を形成するために使用され、レーザービームパルスの前記第2のセットは、形成された前記少なくとも1つの切断の後加工を実施するために使用される、方法。
【請求項2】
第1のセットのレーザービームパルスは、0.1~300ナノ秒の範囲内のパルス幅をそれぞれ有するレーザービームパルスを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1のセットは、レーザービームパルスの少なくとも1つのバーストを含み、前記バースト内の各々のパルスが100ピコ秒以下のパルス幅を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第1のセットは、0.1~100ナノ秒の範囲内のバースト間の間隔を有する、レーザービームパルスの複数のバーストを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
レーザービームパルスの前記シーケンスを周期的に繰り返すステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
各々のシーケンスは、前記第1のセットの単一のレーザービームパルスまたは単一のレーザービームパルスバーストと、前記第2のセットの単一のレーザービームパルスと、を含み、これにより前記ウェハは、前記第1のセットのレーザービームパルスまたはレーザービームバーストと、前記第2のセットのレーザービームパルスと、を交互に照射される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
各々のシーケンスは、前記第2のセットのレーザービームパルスが続いた前記第1のセットのレーザービームパルスを含み、これらの2つのパルスの間の隔たりは100psから1msの間である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
各々のシーケンスは、前記第2のセットのレーザービームパルスが続いた前記第1のセットのレーザービームパルスバーストを含み、前記バーストとそれに続いた前記パルスとの間の隔たりが少なくとも100psである、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
各々のシーケンスは、前記第2のセットのレーザービームパルスが続いた前記第1のセットの少なくとも2つの一連のレーザービームパルスまたはレーザービームパルスバーストを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項10】
各々のシーケンスは、前記第2のセットの少なくとも2つの一連のレーザービームパルスが続いた前記第1のセットのレーザービームパルスまたはレーザービームパルスバーストを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項11】
レーザービームパルスの前記第2のセットの各々のレーザービームパルスのエネルギは、レーザービームパルスの前記第1のセットの各々のレーザービームパルスのエネルギと異なる、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
レーザービームパルスの前記第2のセットの各々のレーザービームパルスのエネルギは、レーザービームパルスの前記第1のセットの各々のレーザービームパルスのエネルギより大きい、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
レーザービームパルスの前記第2のセットの各々のレーザービームパルスのエネルギは、レーザービームパルスの前記第1のセットの各々のレーザービームパルスのエネルギより小さい、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
発せられた前記レーザービームパルスの偏光を制御して、これにより前記第2のセットの前記レーザービームパルスが、前記第1のセットの前記レーザービームパルスと異なるレーザービーム偏光状態を有するようにするステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
請求項1に記載の方法を実施するためのレーザー切断装置。
【請求項16】
半導体材料ウェハを切断するためのレーザー切断装置であって、
一連のレーザービームパルスのシーケンスを発するように適合されるレーザー発生源であって、前記シーケンスは第1のセットのレーザービームパルスと第2のセットのレーザービームパルスとを含み、前記第2のセットのレーザービームパルスは、前記第1のセットのレーザービームパルスに続くように前記シーケンス内において順序だてられており、前記第1のセットは、0.1~300ナノ秒の範囲内のパルス幅を有する少なくとも1つのレーザービームパルス、またはレーザービームパルスの少なくとも1つのバーストであって、前記バースト内の各々のパルスが100ピコ秒以下のパルス幅を有する、少なくとも1つのバースト、を含み、前記第2のセットは、100ピコ秒以下のパルス幅を有する少なくとも1つのレーザービームパルスを含む、レーザー発生源と、
前記レーザー発生源からの前記レーザービームパルスを方向付けて、切断される半導体材料ウェハを照射するためのレーザービーム案内組立体と、
半導体材料ウェハと、照射する前記レーザービームパルスと、を相対的に移動させるための駆動組立体と、
を備え
レーザービームパルスの前記第1のセットは、前記半導体材料ウェハにおいて少なくとも1つの切断を形成するために使用され、レーザービームパルスの前記第2のセットは、形成された前記少なくとも1つの切断の後加工を実施するために使用されるレーザー切断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェハにレーザーエネルギを照射することによってウェハを切断する方法と、ウェハを切断するためのレーザー切断装置とに関する。
【背景技術】
【0002】
個片化およびスクライビングは半導体産業においてよく知られている加工であり、切断機械が例えばシリコンを含み得るが、そのように限定されない半導体ウェハ、または、金属および/もしくはセラミックのウェハなどの加工品または基板を加工するために使用される。本明細書を通じて、「ウェハ」という用語は、これらの製品すべてを網羅するために使用されている。個片化加工(例えば、ダイシング、分断、割断とも称される)では、ウェハは、ウェハを個々のダイへと個片化するためになど、完全に切断される。スクライビング加工(例えば、グルービング、スコーリング、ガウジング、または溝切りとも称される)では、チャンネルまたは溝がウェハに切り込まれる。例えば、切り込まれたチャンネルに沿って物理的な鋸を使用することによる完全な個片化といった、他の加工が続いて適用され得る。代替または追加で、穿孔加工を用いて孔がウェハに形成されてもよい。本明細書を通じて、「切断」という用語は、個片化、スクライビング、および穿孔を網羅するように使用されている。
【0003】
しかしながら、小型化における半導体技術のトレンド全体がウェハの厚さを低減しようとしており、ウェハの厚さが低減するにつれて、レーザー技術が、機械的な鋸の使用より、個片化にとって有利であることが示されている。このような材料加工のために高出力レーザーを利用することは、例えば穿孔および鋸引きなどの機械的な対照と比較して相当の利点を有しており、レーザー加工は、小さく繊細な加工品に対処するときにかなりの汎用性がある。
【0004】
半導体材料のレーザー除去が、レーザービームが集中させられる比較的小さい領域の素早い温度増加により行われるが、これは材料を局所的に溶解させ、爆発的に沸騰させ、蒸発させてアブレーションする。レーザーによる個片化は、加工処理能力と加工品(ダイ)の品質との間の繊細なバランスを含む、困難な要件を有する。加工の品質と処理能力とは、フルエンス、パルス幅、繰り返し率、偏光、偏光の分布、波面形状、波面形状の調相、および波長などのレーザーパラメータによって決定される。典型的には、ナノ秒レーザーパルス、つまり、品質と処理能力との許容可能なバランスを提供するナノ秒の度合いでパルス幅を有するレーザーパルスが使用される。
【0005】
半導体、金属、および/またはセラミックウェハのための既存のレーザー切断またはスクライビングシステムは、固定されたパルス持続時間、または、制限された範囲で変化させられ得るパルス持続時間を伴うパルスレーザーを採用している。レーザーパルス同士の間の間隔は等しくできる。代替で、パルス列(バースト)が用いられてもよい。バースト中のパルス同士の間の持続時間は、後続のバースト同士の間の時間と比較して短い。
【0006】
例えば特許文献1には、複数のビームのレーザー切断手法を使用することが提案されており、レーザースポットの線形配列で配置され得る集中させられたレーザービームの線形クラスタが、スクライブラインに沿って基板材料をアブレーションし、それによって基板にアブレーションの線に沿って放射状に切れ目を付けさせるために使用される。単一の(より強力な)ビームと対照的なこの手法での複数のビームの使用は、様々な利点を提供でき、具体的には、切断加工の間に作り出される欠陥密度の低減を提供できる。
【0007】
レーザー加工の品質の量的な評価のうちの1つは、ウェハが破断する引張応力を決定するダイまたはウェハの破壊強度である。単軸曲げ試験が、脆性材料についての破壊強度の決定のために一般的に用いられており、ウェハ強度測定のために採用されてきた。これらの試験は、破壊強度を測定するために一般的に使用される三点および四点の曲げ試験を含む。
【0008】
レーザーで分離されたウェハの破壊強度は、ウェハにおけるレーザー個片化加工の後に現れる微小亀裂およびチップアウトなどのレーザーによって引き起こされる欠陥の度合いに依存すると考えられている。これらの欠陥は、バルク半導体材料と局所的なレーザー加工される領域との間の境界面における大きな応力によって発生させられる。大きな応力は、加工の間に現れる音響衝撃波と、ダイの加工側壁の化学的変形と、による、バルクと加工される領域との間の大きな温度勾配によって生成される。このような欠陥を含む半導体材料の領域は、「熱影響域」と一般的に称されている。破壊強度はウェハの前側および後側について典型的には異なり、実際、相当に異なる後側および上側の強度をもたらし得る技術、加工、およびウェハ配置がある。
【0009】
超短パルス(「USP: ultrashort pulse」)レーザーにおける最近の利点は、ウェハ加工をより繊細に実施させることができることであり、これは、そのレーザーの時間的なパルス幅が、光励起電子から格子への熱伝達を担う固体における電子-フォノン緩和の典型的な時間より短く、パルス幅は、加工される具体的な材料に依存して1~10ps未満になるためである。USPレーザーは材料のダイ強度に向上をもたらすことができるが、このようなUSPレーザーを使用するウェハ加工システムの生産性は、例えば、このようなシステムで作り出される、熱拡散によって引き起こされる相互作用体積の減少を含め、数々の理由により低下させられる。さらに、切断またはスクライビングの深さの変化がより大きくなることがしばしば見受けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】国際公開第1997/029509号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、単一の最適化されたシステムにおいて、異なるレーザーパルス持続時間の利点を組み合わせることを目指している。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によれば、この目的は、照射シーケンスを通じての異なるパルス幅のレーザービームパルスの適用によって達成される。
【0013】
この方法では、加工されるウェハは、超短パルスと、ナノ秒のパルスまたはバーストエンベロープと、の両方で照射される。これらのパルスは、単一のレーザー発生源または複数のレーザー発生源によって発生させることができる。ナノ秒のバーストエンベロープは、ナノ秒の領域での間隔を伴う複数の超短パルスから成り、このようなバーストは、ナノ秒のパルスの挙動をある程度まで模倣できる。このようなバーストを使用する利点は、超短パルスと同じレーザー発生源によって簡単な方法で発生させることができることである。
【0014】
ある実施は、超短パルスとナノ秒のパルスまたはナノ秒のバーストエンベロープとの交互のパターンを作り出すようにできる。
【0015】
別の実施は、ナノ秒のパルスまたはナノ秒のバーストエンベロープでウェハを初めに照射し、超短パルスでの後加工ステップが続くようにできる。
【0016】
両方の実施は同じ加工原理を共有しており、超短パルスが、ナノ秒のパルスまたはナノ秒のバーストエンベロープによって作り出される損傷の一部または全部を除去することになる。損傷は、チッピング、空洞、微小亀裂、表面粗さ、および/または、うねりもしくは位相変換した材料として現れ得る。
【0017】
本発明の第1の態様によれば、ウェハにレーザーエネルギを照射することによってウェハを切断する方法であって、
i) 一連のレーザービームパルスのシーケンスを発するように適合されるレーザー発生源を提供するステップと、
ii) レーザービームパルスをレーザー発生源から発するステップと、
iii) 発せられたレーザービームパルスを案内して、切断されるウェハを照射するステップと、
iv) ウェハを切断線に沿って切断するために、照射しているレーザービームパルスに対してウェハを移動させるステップと、
を含み、
レーザービームパルスのシーケンスは第1のセットのレーザービームパルスと第2のセットのレーザービームパルスとを含み、
第1のセットは、
0.1~300ナノ秒の範囲内のパルス幅を有する少なくとも1つのレーザービームパルス、または
レーザービームパルスの少なくとも1つのバーストであって、バースト内の各々のパルスが100ピコ秒以下のパルス幅を有する、少なくとも1つのバースト、
を含み、
第2のセットは、100ピコ秒以下のパルス幅を有する少なくとも1つのレーザービームパルスを含む、方法が提供される。
【0018】
本発明の第2の態様によれば、請求項1に記載の方法を実施するためのレーザー切断装置が提供される。
【0019】
本発明の第3の態様によれば、ウェハを切断するためのレーザー切断装置であって、
一連のレーザービームパルスのシーケンスを発するように適合されるレーザー発生源であって、シーケンスは第1のセットのレーザービームパルスと第2のセットのレーザービームパルスとを含み、第1のセットは、0.1~300ナノ秒の範囲でのパルス幅を有する少なくとも1つのレーザービームパルス、またはレーザービームパルスの少なくとも1つのバーストであって、バースト内の各々のパルスが100ピコ秒以下のパルス幅を有する、少なくとも1つのバースト、を含み、第2のセットは、100ピコ秒以下のパルス幅を有する少なくとも1つのレーザービームパルスを含む、レーザー発生源と、
切断されるウェハを照射するために、レーザー発生源からのレーザービームパルスを方向付けるためのレーザービーム案内組立体と、
半導体材料と、照射するレーザービームパルスとを相対的に移動させるための駆動組立体と、
を備えるレーザー切断装置が提供される。
【0020】
本発明の他の特定の態様および特徴は、添付の請求項において述べられている。
【0021】
ここで、本発明は、添付の図面(一定の縮尺ではない)を参照して記載される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施形態による照射スキームの概略的なタイミングの線図である。
図2】本発明の第2の実施形態による照射スキームの概略的なタイミングの線図である。
図3】本発明の第3の実施形態による照射スキームの概略的なタイミングの線図である。
図4】本発明の第4の実施形態による照射スキームの概略的なタイミングの線図である。
図5】本発明の方法を可能にするためのレーザー切断装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明は、一連のレーザービームパルスのシーケンスがレーザー発生源によって発せられる照射スキームを利用する。これらの照射スキームのすべてが、パルスの少なくとも2つのセットまたは「後続」を含むシーケンスを含む。第1のセットでは、発せられたレーザービームパルスまたはパルスは、良好な材料除去率を達成するように意図されているが、第2のセットでは、その機械的強度を含め、照射されたウェハの品質を向上させるように意図された少なくとも1つの超短パルス(例えば、ピコ秒またはフェムト秒の範囲でのパルス幅)が発せられる。様々なこれらの照射スキームにおいて、シーケンスは周期的に繰り返すことができる。本発明の異なる実施形態では、第1のセットは以下のもの、すなわち、
a. 1ns~300nsの範囲にある持続時間(パルス幅)を伴う単一のナノ秒のパルス、
b. 1ns~300nsの範囲にある持続時間(パルス幅)を各々伴う複数のナノ秒のパルスであって、パルスの数は、ウェハ全体を切断/スクライビング/グルービングするのに十分であり得る、複数のナノ秒のパルス、
c. ピコ秒またはフェムト秒の範囲でのパルス幅を伴うパルス(「ピコ秒/フェムト秒のパルス」)などの超短パルスの単一のバーストであって、バースト内の各々のパルスが100ピコ秒以下のパルス幅を有する、単一のバースト、または
d. 超短パルスの複数のバーストであって、バースト内の各々のパルスが100ピコ秒以下のパルス幅を有する、複数のバースト、
を様々に含み得る。バーストの数は、ウェハ全体を切断/スクライビング/グルービングするのに十分であり得る。
【0024】
本発明の異なる実施形態では、第2のセットは以下のもの、すなわち
a. 100ピコ秒以下のパルス幅を有する単一の超短パルス、または
b. 100ピコ秒以下のパルス幅を有する複数の超短パルス、
を様々に含み得る。パルスの数は、ウェハ全体の後加工に十分であり得る。この複数は好ましくは、パルス間の間隔が好ましくは10ns~1msの範囲となるため、当業者によって理解されるようなバーストを形成しない。
【0025】
ナノ秒のパルスの代わりに超短パルスのバーストを使用する利点は、ナノ秒のパルスと比較して、標準的な超短パルスレーザーからバーストを作り出すことははるかにより簡単になることである。
【0026】
図1図4は、本発明の実施形態による照射スキームをそれぞれ概略的に示しており、これらの図は、スキームのうちの単一のパルスシーケンスを示している。
【0027】
ある程度まで、これらのスキームは、タイミングパラメータが広い範囲で変化させられる場合、置き換え可能である。すべてのスキームは繰り返しとされ、そのため、示されたシーケンスはスキーム全体を生成するために繰り返され得る。パルスシーケンスを完了するとき、シーケンスは、追加的な時間遅れの後、初めから再び開始され得る。スキームは、ウェハ表面における極高速光ダイオードが何を測定するかを示すように検討され得る。
【0028】
本発明の実施形態による照射スキームのタイミングの線図が、図1に概略的に示されている。この照射スキームは、ナノ秒の範囲でのパルス幅を伴うパルス1の第1のセットと、ピコ秒またはフェムト秒の範囲でのパルス幅を伴うパルス2の第2のセットとを有するレーザービームパルスのシーケンスを含む。このスキームでは、パルス持続時間は各々のパルスの後に切り替えられ、そのためシーケンスは、第1のセットおよび第2のセットからの交互のパルスを含む。
【0029】
図1に示されているように、
「E」は、パルスの間のレーザービームの強度に対応する個々のレーザーパルスのエネルギを表している。
「t」は時間を表している。
は、各々のパルス1の持続時間であり、1ns~300nsの範囲にある。
は、各々のナノ秒のパルス1と、直後に続くピコ秒/フェムト秒のパルス2との間のパルス間の間隔であり、100ps~1msの範囲にある。
は、各々のピコ秒/フェムト秒のパルス2の持続時間であり、10fs~100psの範囲にある。
【0030】
はナノ秒のパルス1のエネルギであり、Eはピコ秒/フェムト秒のパルス2のエネルギであり、それらは異なり得る。図1に示されたシーケンスでは、ピコ秒/フェムト秒のパルス2のエネルギはナノ秒のパルス1のエネルギより大きい。典型的なシーケンスの繰り返し率、つまり、図1に示されたシーケンスの繰り返しの周波数は1kHz~100MHzの範囲にあり、シーケンスは割り出しの間に中断(ゲート)される。
【0031】
本発明の第2の実施形態による照射スキームのタイミングの線図が、図2に概略的に示されている。ここでは、各々のシーケンス内において、ナノ秒の範囲のパルス幅を伴う、潜在的には非常に大きな数である複数のパルス3を含む第1のセットが、ピコ秒/フェムト秒の範囲のパルス幅を有する複数のパルス4を含む第2のセットへと切り替わる前に発せられ得る。
【0032】
図2に示されているように、
「E」は、パルスの間のレーザービームの強度に対応する個々のレーザーパルスのエネルギーを表している。
「t」は時間を表している。
は、各々のパルス3の持続時間であり、1ns~300nsの範囲にある。
は、一連のナノ秒のパルス3の間のパルス間の間隔であり、1μs~1msの範囲にある。
は、シーケンスにおける最後のナノ秒のパルス3と、直後に続くピコ秒/フェムト秒のパルス4との間のパルス間の間隔を表している。Tの値はパルス持続時間切替遅れによって支配される。
は、各々のピコ秒/フェムト秒のパルス4の持続時間であり、10fs~100psの範囲にある。
は、一連のピコ秒/フェムト秒のパルス4の間のパルス間の間隔であり、10ns~1msの範囲にある。
Nは、シーケンスにおけるナノ秒のパルス3の数であり、範囲1≦N<∞の範囲にある。
Mは、シーケンスにおけるピコ秒/フェムト秒のパルス4の数であり、範囲1≦M<∞の範囲にある。
【0033】
図2におけるシーケンスは、ウェハ全体についての加工時間と同じ長さであり得る(例えば、1分間から1時間以上まで)。例えば、示されている単一のシーケンスは、ナノ秒のパルスを用いてウェハを切断し、次に超短パルスで後加工をするために用いられ得る。そのため、このシーケンスは、ウェハにおける単一の溝または切断線を加工する間に繰り返される必要がない。
【0034】
はナノ秒のパルス3のエネルギであり、Eはピコ秒/フェムト秒のパルス4のエネルギであり、それらは異なり得る。図2に示されたシーケンスでは、ピコ秒/フェムト秒のパルス4のエネルギはナノ秒のパルス3のエネルギより小さい。
【0035】
このスキームの可及的な適用は、ダイシングストリートまたはウェハ全体をナノ秒のパルス3で切断し、続いてそれをピコ秒/フェムト秒のパルス4で後加工することである。
【0036】
本発明の第3の実施形態による照射スキームのタイミングの線図が、図3に概略的に示されている。この照射スキームは、数Nのピコ秒/フェムト秒のパルス6のバースト5を含む第1のセットを、シーケンスの終わりに比較的高いエネルギのピコ秒/フェムト秒のパルス7を含む第2のセットを伴って含むパルスシーケンスを用いる。
【0037】
図3に示されているように、
「E」は、パルスの間のレーザービームの強度に対応する個々のレーザーパルスのエネルギを表している。
「t」は時間を表している。
は、各々のパルス6の持続時間であり、10fs~100psの範囲にある。
は、バースト5内の一連のピコ秒/フェムト秒のパルス6の間のパルス間の間隔であり、100ps~100nsの範囲にある。
は、バースト5の最後のピコ秒/フェムト秒のパルス6と次のピコ秒/フェムト秒のパルス7の間のパルス間の間隔を表しており、100ps~100nsの範囲にある。
Nは、バースト5におけるピコ秒/フェムト秒のパルス6の数であり、範囲2≦N≦100の範囲にある。
は、バースト5における各々のピコ秒/フェムト秒のパルス6のエネルギであるEよりかなり大きいピコ秒/フェムト秒のパルス7のエネルギである。
【0038】
ピコ秒/フェムト秒のパルス6のバースト5は、単一のナノ秒のパルスと同様に作用し、そのため、図3のスキームは図1に示されたスキームと概念的に同様である。しかしながら、図3のスキームは、レーザー発生源が、ピコ秒/フェムト秒のパルスとナノ秒のパルスとの間の切り替えではなく、専らピコ秒/フェムト秒のパルスを発するだけとできるため、図1のスキームより実際に生成するのがより単純であり得る。
【0039】
典型的なシーケンスの繰り返し率、つまり図3に示されたシーケンスの繰り返しの周波数は、1kHz~100MHzの範囲にあり、シーケンスは割り出しの間に中断(ゲート)される。
【0040】
本発明の第4の実施形態による照射スキームのタイミングの線図が、図4に概略的に示されている。この照射スキームは、各々が数Nのピコ秒/フェムト秒のパルス8の複数のバースト5を含む第1のセットと、シーケンスの終わりに複数のピコ秒/フェムト秒のパルス9を含む第2のセットとを伴うパルスシーケンスを用いる。
【0041】
図4に示されているように、
「E」は、パルスの間のレーザービームの強度に対応する個々のレーザーパルスのエネルギを表している。
「t」は時間を表している。
は、各々のパルス8の持続時間であり、10fs~100psの範囲にある。
は、バースト5内の一連のピコ秒/フェムト秒のパルス8の間のパルス間の間隔であり、100ps~100nsの範囲にある。
は、一連のバースト5の間のバースト間の間隔であり、0.1~100ナノ秒の範囲にある。
は、最後のバースト5の最後のピコ秒/フェムト秒のパルス8と次のピコ秒/フェムト秒のパルス9の間のパルス間の間隔を表している。Tは、ウェハ全体を切断/スクライビング/グルービングすることを網羅し得るため、比較的広い範囲の値内にあり得るが、少なくとも100psであり得る。
は、各々のパルス9の持続時間であり、10fs~100psの範囲にある。
は、一連のピコ秒/フェムト秒のパルス9の間のパルス間の間隔であり、10ns~1msの範囲にある。
Nは、各々のバースト5におけるピコ秒/フェムト秒のパルス6の数であり、範囲2≦N≦100の範囲にある。
は、各々のピコ秒/フェムト秒のパルス8のエネルギであるEに、この実施形態では実質的に等しいピコ秒/フェムト秒のパルス9のエネルギである。他の関連する実施形態では、エネルギは異なってもよい。
【0042】
ピコ秒/フェムト秒のパルス8の各々のバースト5は、単一のナノ秒のパルスと同様に作用し、そのため、図4のスキームは図2に示されたスキームと概念的に同様である。しかしながら、図4のスキームは、レーザー発生源が、ピコ秒/フェムト秒のパルスとナノ秒のパルスとの間の切り替えではなく、専らピコ秒/フェムト秒のパルスを発するだけとできるため、図2のスキームより実際に生成するのがより単純であり得る。
【0043】
図4におけるシーケンスは、ウェハ全体についての加工時間と同じ長さであり得る(例えば、1分間から1時間以上まで)。例えば、示されている単一のシーケンスは、ナノ秒のバーストエンベロープを用いてウェハを切断し、次に超短パルスで後加工をするために用いられ得る。そのため、このシーケンスは、ウェハにおける単一の溝または切断線を加工する間に繰り返される必要がない。
【0044】
本発明の方法を実施するのに適するレーザー切断装置10が図5に概略的に示されている。
【0045】
ここでは半導体ウェハ11である半導体材料が、チャック13において支持されている。チャック13と、延いてはウェハ11と、は駆動部14によって使用中に駆動され、そのため、ウェハ11と照射するレーザー光(以下を参照)との間には相対的な移動がある。パルスレーザー発生源15は、前述したものなどのタイミングスケジュールに従って偏光されたレーザービーム16の出力パルスに適合されている。レーザー発生源15は、レーザービームパルス、つまり、パルス化されたレーザービーム16を出力するように動作する。典型的には、レーザー発生源15は、例えばその発振器と増幅器との間に、変調器(図示略)を備え、その変調器は、発せられたレーザーパルスの強度を調節し、延いては、図1図4を参照して先に記載されたEおよびEの値を制御することができる。他の実施形態では(図示略)、外部の変調器が、このような強度制御を可能にするために使用され得る。パルスレーザービーム16は、ウェハ11へ組立体によって案内される。より詳細には、鏡17は、ビームの制御のために、ビーム16を減衰器/シャッタ18へと案内する。ここではモータ駆動される半波長板19の形態での選択的に作動可能な光学的に偏光する構成要素が、パルスレーザービーム16との相互作用のために選択的に移動可能となるように提供される。好ましくは、半波長板19は、レーザービーム軸の周りでの回転のために備え付けられる。そのため、半波長板19を選択的に回転させることで、レーザービーム16の偏光状態が切り替わる手法で制御され得る。選択的な移動は、コンピュータ、処理装置などの制御手段(図示略)によるモータの制御された動作によって実施される。別の鏡20が、拡大したビームを生成するように、パルスレーザービーム16をビーム拡大器21へと案内する。回折光学素子(「DOE: Diffractive Optical Element」)22が、拡大したビームを、空間的に分離された出力のサブビームの所定のパターンへと回析または分割する。レンズ23および27は一緒にリレーテレスコープを形成する。さらなる鏡24、25はサブビームを空間フィルタ26へと案内し、空間フィルタ26は、所望の所定のビームパターンを形成するために使用される。空間フィルタ26は、レンズ23によって作り出される中間焦点に位置させられている。鏡28はサブビームを焦点レンズ29に案内する。これは、レーザーライトを、照明スポットの所定のパターンで、支持チャック13におけるウェハ11へと集中させる。照射するパルスレーザービーム16に対してウェハを移動させることによって、レーザービームパルスが照射し、それによってウェハ11を切断線(図示略)に沿って切断する。
【0046】
超短パルスのバーストが、シードレーザー(発振器)から複数のパルスで増幅器をシードすることによって作り出され得る。別の選択肢は、1つの追加のキャビティラウンドトリップ時間の後に別のパルスが作り出され得るように、再生増幅器からのパルスを一部のみダンプすることである。これらは、多くの商業的に利用可能なレーザーについて、標準的な選択肢である。同じレーザーからナノ秒のパルスを作り出すことは、例えば、複数のシードレーザーの間で切り替えることで、または、Qスイッチモードにおいて再生増幅器を動作させることで、達成され得る。別の実施形態(図示略)では、レーザー発生源は、ナノ秒のパルスと超短パルスとをそれぞれ提供するために2つの別々のレーザーを備えてもよい。
【0047】
切断される半導体材料と、切断動作の種類(グルービング、個片化など)とに依存して、シーケンスまたはスキームの中での一連のパルスまたはバーストの間でレーザービームパルス特性を変化させることは有利であり得る。例えば、レーザー発生源15の適切な制御によって、スキームにおける一連のバーストは、異なるパルス繰り返し周波数を有し得る。代替または追加で、一連のバーストまたはパルスにおいて送信されるエネルギは、例えば、第1のバースト内のパルスのパルスエネルギが第2または後続のバースト内のパルスのパルスエネルギと異なるように、レーザー発生源の内部または外部のいずれかの変調器を制御することによって、異ならせることができる。
【0048】
代替または追加で、発せられたレーザービームパルスの偏光は、スキームまたはシーケンス内の異なるレーザービームパルスが異なるレーザービーム偏光状態を有し得るように、例えば半波長板19の選択的な回転によって、制御され得る。例えば、バーストのレーザービームパルスは、例えば切断線と平行または垂直に、線形偏光を有することができ、一方、後続のレーザービームパルスは、バーストのレーザービームパルスの偏光に対して直交する偏光方向で線形に偏光され得る。例えば、レーザービーム16の経路における4分の1波長板(図示略)の選択的な適用によって、シーケンスまたはスキームの1つまたは複数のレーザービームパルスを環状または楕円状に偏光させることも可能である。
【0049】
先に述べたように、DOE22が、ビーム16を、出力レーザーサブビームの所定のパターンへと回析するために使用されてもよく、これは、空間フィルタ26と併せて、半導体材料において照射スポットの所望の所定のパターンを形成する。スキームまたはシーケンス内に、異なるパルスまたはバーストのための照射スポットの異なるパターンを作り出すことは有利であり得、別の言い方をすれば、一連のパルスまたはバーストのレーザービームパルスは、スキームにおける第1のバーストまたはパルスと関連する照射スポットのパターンがスキームにおける次のバーストまたはパルスと関連する照射スポットのパターンと異なるように、分割されてもよい。この効果は、例えば、第2のバーストもしくはパルスのために異なるDOEを選択することによって、またはバースト同士またはパルス同士の間の空間フィルタ26を調節することによって、といった、多くの方法で提供できる。この技術の改善において、一連のバーストまたはパルスの間に生成される照射スポットは、半導体材料における異なる切断線を照射するために、それぞれ空間的に分離されてもよい。この方法では、第1のバーストまたはパルスは、主要な切断線と平行であるがその切断線から離間されて延びる溝線を作り出すために使用でき、一方、後続のバーストまたはパルスは主要な切断線を生成するために使用できる。
【0050】
前述の実施形態は単なる例示であり、本発明の範囲内にある他の可能性および代替が当業者には明らかとなる。例えば、前述の特定の実施形態では、半導体材料と照射するレーザービームパルスとの間の相対移動は、レーザー光学装置を不動のままにしながら半導体材料を移動することでもたらされるが、代替の実施形態では、相対運動は、半導体材料を不動のままにし、レーザーおよび/もしくはレーザー光学装置を移動することで提供されてもよく、または代わりに、半導体材料とレーザーおよび/もしくはレーザー光学装置との両方が移動されてもよい。
【0051】
前述の特定の実施形態では、個々のレーザービームパルスはパルスレーザーの使用によって作り出される。しかしながら、例えば、レーザービーム経路に連続して配置される複数の妨害要素を伴う高速回転ホイールを用いるといった、外部のビーム刻み機構を用いて個々のパルスを作り出すことが理論的に可能である。
【0052】
第1のセットおよび第2のセットの相対的なエネルギは、具体的な用途について必要とされるときに変えられてもよい。
【0053】
他の実施形態(図示略)では、第1のセットおよび第2のセットに加えて、具体的な用途について適切であるとして、各々のシーケンス内にレーザービームパルスの第3のセットおよび追加のセットがあってもよい。
【符号の説明】
【0054】
1 ナノ秒のパルス
2 ピコ秒/フェムト秒のパルス
3 ナノ秒のパルス
4 ピコ秒/フェムト秒のパルス
5 パルスバースト
6 ピコ秒/フェムト秒のパルス
7 ピコ秒/フェムト秒のパルス
8 ピコ秒/フェムト秒のパルス
9 ピコ秒/フェムト秒のパルス
10 レーザー切断装置
11 ウェハ
13 チャック
14 駆動部
15 パルスレーザー発生源
16 レーザービーム
17、20、24、25、28 鏡
18 減衰器/シャッタ
19 モータ駆動される半波長板
21 ビーム拡大器
22 回折光学素子
23、27、29 レンズ
26 空間フィルタ
図1
図2
図3
図4
図5