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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-13
(45)【発行日】2022-01-25
(54)【発明の名称】LFA-1阻害剤およびその多形
(51)【国際特許分類】
   C07D 405/06 20060101AFI20220118BHJP
   A61K 31/4725 20060101ALI20220118BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20220118BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20220118BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220118BHJP
【FI】
C07D405/06
A61K31/4725
A61P29/00
A61P37/02
A61P43/00 111
【請求項の数】 1
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020096854
(22)【出願日】2020-06-03
(62)【分割の表示】P 2018135758の分割
【原出願日】2013-07-25
(65)【公開番号】P2020128433
(43)【公開日】2020-08-27
【審査請求日】2020-07-03
(31)【優先権主張番号】61/675,663
(32)【優先日】2012-07-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】61/680,099
(32)【優先日】2012-08-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】61/729,294
(32)【優先日】2012-11-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505221616
【氏名又は名称】ノヴァーティス・アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ジェームズ・ロバート・ツェラー
(72)【発明者】
【氏名】スリパティ・ヴェンカトラマン
(72)【発明者】
【氏名】エリザベス・シー・エー・ブロット
(72)【発明者】
【氏名】スバシュリー・アイヤー
(72)【発明者】
【氏名】マイケル・ホール
【審査官】安藤 倫世
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2011/0092707(US,A1)
【文献】特表2015-523398(JP,A)
【文献】国際公開第2009/139817(WO,A2)
【文献】米国特許第05510495(US,A)
【文献】国際公開第2007/057919(WO,A2)
【文献】浅原 照三,溶剤ハンドブック,株式会社 講談社,1985年,pp.47-51
【文献】ACS Medicinal Chemistry Letters,2012年,3(3),203-206
【文献】Journal of Organic Chemistry,2007年,72(19),7473-7476
【文献】Tetrahedron Letters,1998年,39(21),3391-3394
【文献】12996の化学商品,化学工業日報社,1996年,第341-342頁
【文献】標準化学用語辞典第2版,2005年,「相間移動触媒」の項
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
A61K
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
I:
【化1】
の化合物の一水和物の形態IIの多形体であって、
前記形態IIの多形が、下記図4
【化2】
に示される、10.8、16.4、および21.8度の反射角2θにピークを有する粉末X線回折パターンを有し、
DSC分析で、37.8℃で小さな吸熱を示し、かつ、155.5℃で溶融転移を示し、
アセトンおよびn-ヘプタン中での式Iの化合物の結晶化によって生じたものである
ことを特徴とする、式Iの化合物の一水和物の形態IIの多形体
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2012年7月25日に出願された米国仮特許出願第61/675,663号、2012年8月6日に出願された米国仮特許出願第61/680,099号、および2012年11月21日に出願された米国仮特許出願第61/729,294号の利益を主張し、これらの米国仮特許出願の内容全体を、参照により本明細書中に援用する。
【背景技術】
【0002】
式I:
【化1】
の化合物が、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1)と細胞間接着分子(ICAM)のファミリーとの相互作用の効果的な阻害剤であり、迅速な全身クリアランスを含む望ましい薬物動態特性を有することが見出されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許第8,080,562号明細書
【文献】米国特許出願公開第2009/0298869号明細書
【文献】米国特許出願公開第2011/0092707号明細書
【文献】米国特許第8,084,047号明細書
【文献】米国特許出願公開第2010/0092542号明細書
【文献】米国特許出願公開第2006/0281739号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、式Iの化合物をより高められた純度および/または出発物質のより低減された使用により提供するための改良された調製方法が有用である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第一の側面において、本発明は、式I:
【化2】
の化合物またはその塩の製造方法を提供する。本発明によれば、この方法は、a)前駆体エステルの加水分解を、二相の条件下で塩基を用いて実施する工程であって、前駆体エステル基が炭素含有基であるかまたはシリル含有基である工程、およびb)式Iの化合物またはその塩を単離する工程を含む。さまざまな実施態様では、この二相の条件は、含水アセトン、例えば30%含水アセトンを含む。さまざまな実施態様では、この二相の条件は、例えば、反応の初期に二相であった反応混合物が反応の進行につれて二相性が低下するかまたは単相になるように、経時的に変化する。
【0006】
さまざまな実施態様では、加水分解のための塩基は、水酸化ナトリウムであり、例えば、約1.0~約1.5当量の範囲の量、好ましくは約1.2当量の量である。
【0007】
さまざまな実施態様では、前駆体エステルはエステルR基を含み、このR基は、低級アルキル、低級アルケニル、低級アルキニル、シクロ(低級)アルキル、シクロ(低級)アルケニル、アリール、アラルキル、ヘテロシクリル、およびヘテロアリール基から選択される置換または非置換の基である。好ましくは、R基はベンジル基である。
【0008】
さまざまな実施態様では、本発明は、塩基触媒加水分解を実施するために相間移動触媒の使用を必要とする、式Iの化合物の製造方法を提供する。さまざまな実施態様では、この相間移動触媒は第四級アンモニウム塩、例えば、水酸化テトラブチルアンモニウムなどである。このような相間移動触媒は、約0.01当量~約0.5当量の範囲の量で存在していてよい。
【0009】
第二の側面においては、本発明は、上述した式Iの化合物の製造方法におけるものに相当する反応混合物である組成物を提供する。
【0010】
第三の側面においては、本発明は、式Iの化合物を再結晶によって精製する方法を提供する。さまざまな実施態様では、再結晶は、含水アセトンを用いて実施する。したがって、a)式Iの粗化合物またはその塩を得て、この粗化合物またはその塩を、含水アセトンを用いて再結晶させる工程、およびb)前記式Iの化合物またはその塩を、含水アセトンを除去することによって単離する工程を含む方法を提供する。好ましくは、含水アセトンは、約30%の含水アセトンである。さまざまな実施態様では、含水アセトンを約7容積倍の量で用いる。好ましくは、本方法は、約1時間~約48時間の範囲の期間で実施する。
【0011】
第四の側面においては、本発明は、上述したとおりの式Iの化合物の精製方法に相当する再結晶混合物である組成物を提供する。
【0012】
第五の側面においては、本発明は、本願明細書に記載した方法によって合成されたか、本願明細書に記載した方法によって再結晶されたか、あるいは両方により得られた式Iの化合物を提供する。好ましくは、本化合物は、メチルエチルケトンを本質的に含まない。さまざまな実施態様では、式Iの化合物は、塩基触媒加水分解のための反応混合物から単離された後であって、再結晶の前に、約96%を超える鏡像体過剰率を有する。さまざまな実施態様では、本発明の方法によって合成および/または再結晶された式Iの化合物は、約98%を超える鏡像体過剰率を有する。
【0013】
第六の側面においては、本発明は、式Iの化合物であって、本明細書において記述する形態IIの多形体であるものを提供する。さまざまな実施態様では、本化合物の多形形態IIは、固体組成物中に薬学的に許容される担体と共に存在する。さまざまな実施態様では、この組成物の少なくとも50質量%が形態IIの多形体である。あるいは、この組成物の5質量%未満が形態IIの多形体である。さまざまな実施態様では、この固体組成物は、非晶質、形態I、形態III、形態IV、形態V、および形態VIからなる群から選択される1種以上の固体形態をさらに含む。
【0014】
本明細書に述べられている刊行物および特許出願は全て、個々の刊行物または特許出願がそれぞれ特に、かつ個々に参照により援用されると示されているのと同程度に、参照により本明細書に援用される。
本発明の新規な特徴は、添付の請求項に詳細に記載する。本発明のこれらの特徴および利点は、本発明の原理を利用する例示的な実施形態を記載している下記の詳細な説明および添付の図面を参照することにより、より良好に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、式Iの様々な形態間の関係を示すフローチャートである。
図2図2は、式Iの形態I、III、およびIVの間の相互変換を示すフローチャートである。
図3図3は、含水アセトン系における式Iの三成分相図である。
図4図4は、結晶形態IIの粉末X線回折パターンのグラフ表示である。
図5図5は、結晶形態IIの光学顕微鏡写真のグラフ表示である。
図6図6は、結晶形態IIのHNMRスペクトルのグラフ表示である。
図7図7は、結晶形態IIのDSCサーモグラムのグラフ表示である。
図8図8は、結晶形態IIのTGAサーモグラムのグラフ表示である。
図9図9は、結晶形態IIの重量水分収着等温曲線のグラフ表示である。
図10図10は、式Iの形態の特性決定のまとめである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本明細書には、本発明の好ましい実施形態が示され、記載されているが、当業者には、このような実施形態が単なる例として提供されていることは明らかである。本発明から逸脱することなく、当業者には、数多くの変形、変化および置き換えが想起されるであろう。本明細書に記載されている本発明の実施形態に対する様々な代替が、本発明を実施する際に使用され得ることを理解すべきである。添付の請求項は、本発明の範囲を定義し、それによってこれらの請求項の範囲内の方法および構造ならびにその同等物が包含されることが意図されている。
【0017】
定義
別段に定義されていない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する分野の当業者に一般に理解されるものと同じ意味を有する。
【0018】
本明細書および請求項で使用されている通り、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈が明確に他であることを示していない限り、複数についての言及を包含する。
【0019】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される塩」という用語は、薬学的使用のため、好ましくは過度の刺激、アレルギー応答などを伴わずにヒトおよび下等動物の組織中で使用するのに適した塩を指す。アミン、カルボン酸および他のタイプの化合物の薬学的に許容される塩は、当技術分野において周知である。例えば、S.M.Bergeらは、参照により本明細書に組み込まれるJ Pharmaceutical Sciences、66巻:1~19頁(1977年)において薬学的に許容される塩について詳述している。塩は、本発明の化合物の最終単離および精製中にその場で、または以下に一般的に記載するように遊離塩基官能基もしくは遊離酸官能基を適切な試薬と反応させることにより別に、調製することができる。例えば、遊離塩基官能基を、適切な酸と反応させることができる。さらに、本発明の化合物が酸性部分を有する場合、それらの適切な薬学的に許容される塩には、アルカリ金属塩、例えばナトリウムもしくはカリウム塩;およびアルカリ土類金属塩、例えばカルシウムもしくはマグネシウム塩などの金属塩が包含され得る。薬学的に許容される無毒性酸付加塩の例は、例えば、塩酸、臭化水素酸、リン酸、硫酸および過塩素酸などの無機酸、または酢酸、シュウ酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸、コハク酸もしくはマロン酸などの有機酸を用いて、またはイオン交換などの当技術分野において使用される他の方法を用いて形成されるアミノ基の塩である。他の薬学的に許容される塩には、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、重硫酸塩、ホウ酸塩、酪酸塩、樟脳酸塩、樟脳スルホン酸塩、クエン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グルコヘプトン酸塩、グリセロリン酸塩、グルコン酸塩、ヘミ硫酸塩(hernisulfate)、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、ヨウ化水素酸塩、2-ヒドロキシ-エタンスルホン酸塩、ラクトビオン酸塩、乳酸塩、ラウリン酸塩、ラウリル硫酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3-フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、ウンデカン酸塩、吉草酸塩などが包含される。代表的なアルカリ金属塩もしくはアルカリ土類金属塩には、ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどが包含される。さらなる薬学的に許容される塩には、適切な場合は、薬物のカルボン酸との直接的な反応によって、あるいはハロゲン化物、水酸化物、カルボン酸塩、硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩、スルホン酸塩およびアリールスルホン酸塩などの対イオンを使用することによって形成される無毒性のアンモニウム、第4級アンモニウムおよびアミンカチオンが包含される。
【0020】
「薬学的に許容される担体」または「薬学的に許容される賦形剤」には、任意および全ての溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤などが包含される。薬学的活性物質のためのこのような媒質および薬剤の使用は当分野では周知である。いずれかの慣用の媒質または薬剤が本活性成分と不適合である場合を除いて、本発明の治療用組成物中でのその使用が企図される。補助的な活性成分を、組成物中に組み込むこともできる。
【0021】
「プロドラッグ」は、生理学的条件下で、または加溶媒分解によって、本明細書に記載されている生物学的に活性な化合物へ変換され得る化合物を示すことが意図されている。したがって、「プロドラッグ」という用語は、薬学的に許容される生物学的活性化合物の前駆体を指す。プロドラッグは、被験体に投与されたときには不活性であり得る、即ちエステルであり得るが、in vivoで活性化合物に、例えば、加水分解により遊離カルボン酸に変換される。プロドラッグ化合物は、哺乳動物の生体中で溶解性、組織相容性または遅延放出の利点を示すことが多い(例えば、Bundgard,H.、Design of Prodrugs(1985年)、7~9頁、21~24頁(Elsevier、Amsterdam)を参照されたい)。プロドラッグに関する論述は、いずれも参照によりその全体が本明細書に援用されるHiguchi,T.ら、「Pro-drugs as Novel Delivery Systems」、A.C.S. Symposium Series、14巻およびBioreversible Carriers in Drug Design、Edward B. Roche編、American Pharmaceutical Association and Pergamon Press、1987年に示されている。「プロドラッグ」という用語はまた、そのようなプロドラッグが哺乳動物被験体に投与された場合にin vivoで活性化合物を放出する任意の共有結合担体を包含することが意味される。本明細書で記載される場合、活性化合物のプロドラッグは、その活性化合物中に存在する官能基を、日常的な操作で改変することによって、あるいはin vivoで切断して親の活性化合物を与えるように改変することによって調製することができる。プロドラッグには、そのヒドロキシ、アミノまたはメルカプト基が、活性化合物のプロドラッグが哺乳動物被験体に投与された場合に切断されて遊離ヒドロキシ、遊離アミノまたは遊離メルカプト基をそれぞれ形成する任意の基に結合している化合物が包含される。プロドラッグの例には、これらに限定されないが、アルコールまたはアセトアミドの酢酸エステル、ギ酸エステルおよび安息香酸エステル誘導体、活性化合物中のアミン官能基のホルムアミドおよびベンズアミド誘導体などが包含される。
【0022】
「被験体」は、哺乳動物、例えば、ヒトなどの動物を指す。本明細書に記載されている方法は、ヒト治療および獣医学的用途の両方で有用であり得る。一部の実施形態では、患者は、哺乳動物であり、一部の実施形態では、患者はヒトである。さまざまな実施態様では、ヒトではない動物、例えば、イヌ、ネコ、ウサギ、マウス、ラット、ウシ、ウマ、ブタ、またはトリなどである。
【0023】
別段に記述しない限り、本明細書に示す構造は、1個または複数の同位体が富化された原子の存在においてのみ異なる化合物をも包含することが意図されている。例えば、水素がジュウテリウムまたはトリチウムに置き換えられている構造、または炭素が13C-または14C-富化炭素により置き換えられている構造を有する化合物は、本発明の範囲内である。
【0024】
本発明の化合物はまた、その化合物を構成する1個または複数の原子のところで不自然な割合の原子同位体を含有してもよい。例えば、化合物は、例えば、トリチウム(H)、ヨウ素-125(125I)または炭素-14(14C)などの放射性同位体で放射性標識されていてもよい。本発明の化合物の全ての同位体変形物は、放射性であってもなくても、本発明の範囲内に包含される。
【0025】
本明細書において、分子量などの物理的特性または化学式などの化学的特性に関して範囲を使用する場合、範囲の全ての組合せおよび下位組合せならびにその特定の実施耐用を包含することが意図されている。「約」という用語は、数または数値範囲に関する場合、言及されている数または数値範囲が実験変動性の範囲内(または統計的実験誤差の範囲内)の近似であることを意味しているので、数または数値範囲は、例えば、述べられた数または数値範囲の1%から15%の間で変動し得る。「含んでいる(comprising)」という用語〔および「含む(comprise)」 または 「含む(comprises)」または「有している(having)」または「包含している(including)」などの関連用語〕には、記載されている特徴「からなる(consist of)」、または「本質的にそれからなる(consist essentially of)」実施形態、例えば、任意の物質の組成、組成物、方法またはプロセスなどの実施形態が包含される。
【0026】
本明細書で使用される略語は、化学的および生物学的分野における慣用の意味を有する。
【0027】
式Iの化合物
式I:
【化3】
の化合物が、LFA-1のICAM-1との相互作用の有効な阻害剤であることが見出されている。この化合物は、LFA-1と直接競合する阻害剤のクラスの一員であり、LFA-1上のICAM-1の結合部位に直接結合することによって、ICAM結合を排除する。LFA-1の直接競合阻害剤は、アロステリックな阻害剤より効果的に結合部位を塞ぐため、アロステリックな阻害剤が提供するものより有効な炎症および/または免疫応答の調節の可能性を提供し得る。式Iの化合物の薬学的に許容される塩も包含される。式Iの化合物についてのさらなる情報は、それらの全体が参照により本明細書に援用される、米国特許第8,080,562号明細書、米国特許出願公開第2009/0298869号明細書、米国特許出願公開第2011/0092707号明細書、米国特許第8,084,047号明細書、米国特許出願公開第2010/0092542号明細書、および米国特許出願公開第2006/0281739号明細書に記載されている。
【0028】
臨床的に有用な治療法を開発するために、薬物の候補は、被験者に投与するために化学的に十分に純粋であり、かつ、薬学的に許容される投薬形態に製剤化するために許容可能な物理的形態を有していなければならない。より高い純度、物理的形態の再現性、および安定性を得るための1つの有利な手段は、1種以上の有用な結晶形態を特定することである。さまざまな結晶形態で存在することが許容されることは、多形として知られており、多くの有機分子において起こることが知られている。これらのさまざまな結晶形態は、「同質異像」または「多形体」として知られている。同質異像同士は同じ化学組成を有するにもかかわらず、これらは、圧縮率、幾何学的配置、および結晶の固体状態を記述する他の特性において異なる。このため、これらを変更することにより、例えば、溶解性、溶出速度、生物学的利用可能性、化学的および物理的安定性、流動性、崩壊性、圧縮性のみならず、その化合物に基づく薬剤製品の安全性および有効性に影響を及ぼす異なる固体状態の物理的特性を得ることができる。多形体を調製する過程で、肉眼的な物理的純度または光学純度の観点からのさらなる精製が伴われ得る。
【0029】
式Iの化合物の多くの異なる形態(結晶形態を含む)が見いだされており、結晶形態A~Eおよび非晶質形態が含まれる。有機化合物については結晶化が行われることが多いにもかかわらず、どのような条件が特定の結晶形態の形成をもたらす適切な条件となるかは、事前に予測可能ではない。さらに、どの特定の結晶形態が、一旦処方された所望の薬剤投与形態を製造するために必要とされる物理的特性(これらに限定されないが、上述した物理的特性など)の組合せをもたらすかは事前に予測可能ではない。式Iの化合物の結晶形態A~Eおよび非晶質形態についてのさらなる情報は、それらの全体が参照により本明細書に援用される、米国特許第8,080,562号明細書、米国特許出願公開第2009/0298869号明細書、米国特許出願公開第2011/0092707号明細書、米国特許第8,084,047号明細書、米国特許出願公開第2010/0092542号明細書、および米国特許出願公開第2006/0281739号明細書に記載されている。
【0030】
式Iの化合物の製造方法
1つの実施態様では、式Iの化合物を、以下のスキーム1~7の通りに合成する。この合成の最終生成物は、式Iの化合物を、非晶質固体として、あるいは形態A~Eなどの結晶形態として、あるいは直接的または間接的に薬学的に許容される塩として与える。この全合成ルートをさまざまに変形することにより、より優れた収率、材料原価、および/または高いキラル純度がもたらされ得る。
【0031】
アミノ基およびカルボキシル基のための保護基は、当分野で知られている。例えば、Greeneらの「Protective Groups in Organic Synthesis」、Wiley Interscience、1981およびその後の版を参照されたい。
【0032】
以下のスキームにおける様々な実施態様では、HATUをアミド結合形成反応における試薬として用いる。別法では、HATUを用いない。様々な実施態様において、少なくとも1つのアミド結合形成反応を、HATUの代わりに塩化チオニルを試薬として用いて実施する。様々な実施態様において、全てのアミド結合形成反応を、酸クロライドを形成させるための試薬として塩化チオニルを用いて実施する。
【0033】
スキーム1
【化4】
【0034】
第一の代替的な保護戦略により、スキーム1に示した保護された化学種(化合物5’)が得られる。この合成は、3,5-ジクロロベンズアルデヒド(化合物1’)を還元的にアミノ化することによって開始する。化合物2’を環化させることによって化合物3’が得られる。化合物3’の遊離のアミンを保護された化学種として保護することによって化合物4’が得られる。化合物4’に二酸化炭素を導入する処理によってカルボン酸官能基を導入して、化合物5’を得る。様々な実施態様では、化合物4’の保護基は、化合物18’から誘導されるベンゾフラニルカルボニル部分である。
【0035】
様々な実施態様では、数キログラムおよびそれ以上のスケールの反応にスケールアップする際に、化合物4’の強塩基(例えば、リチオ種を生成させるためのn-ブチルリチウム(nBuLi)、またはリチオ種を生成させるためのリチウムジイソプロピルアミド(LDA))での処理を、回分反応ではなくむしろ流動法で実施する。これは、リチオ種の低温での不安定性に起因する。流量および滞留時間を調整して、収率を最大にすることができる。
【0036】
スキーム1B
【化5】
【0037】
様々な実施態様では、6-ヒドロキシ-1,2,3,4-テトラヒドロ-イソキノリン(化合物3’’)を、化合物5’の出発物質として用いる。この出発物質を、例えば、N-クロロスクシンイミドで塩素化(2回)する。様々な実施態様では、塩素化は、スルホン酸の存在下で実施する。様々な実施態様では、スルホン酸は、p-トルエンスルホン酸およびメタンスルホン酸から選択される。このアミノ基の保護に続いて、ヒドロキシル基を、例えば、カルボニル化によりトリフラートエステルとして官能化して、アミノ基が保護されたメチルエステルを得る。このメチルエステルを加水分解すると、アミノ基が保護されたカルボン酸が得られる。
【0038】
スキーム2
【化6】
【0039】
様々な実施態様では、スキーム2に示すように、最終分子の部分のための出発物質としてブロモフェニルアラニンを用いる。この出発物質を、アミノ保護基で保護して、メチルスルホン官能基を化合物8’に導入することを可能にする。カルボン酸部分に直交する保護基を導入した後、アミノ基を脱保護することによって保護基の位置を変えて、化合物10’を得る。様々な実施態様では、試薬として、高価であるかまたは特殊な塩基を、炭酸塩塩基、例えば、炭酸カリウムまたは炭酸カルシウムなどに置き換える。
【0040】
スキーム2A
【化7】
【0041】
様々な実施態様では、上に示したとおり、3-メチルスルホニルベンズアルデヒドを、3-メチルスルホニルフェニルアラニン誘導体に変換し、官能基化して、化合物10を得る。
【0042】
スキーム3
【化8】
【0043】
化合物5’および化合物10’を、アミド結合形成によって結合させた後、残りのアミノ基をカルボン酸保護基の存在下で脱保護して、化合物12’またはその塩、例えばHCl塩などを得る。
【0044】
スキーム3A
【化9】
【0045】
スキーム3の別法として、化合物10’’を化合物5’とカップリングさせてブロモ化合物12’’’’を得、その後、メチルスルホン官能基を臭素に代えて後の工程で導入して、化合物19’を得る。あるいは、臭素の代わりに、化合物10’’は、任意のハライド(Cl、I、Br、F)または脱離基、例えばOTs、OTfなどであるXを有する。
【0046】
スキーム4
【化10】
【0047】
式Iの化合物のベンゾフラニルカルボニル部分は、さまざまな代替的なスキームを用いて調製することができる。1つの実施形態では、ベンゾフラニルカルボニル部分を、化合物13’’のヒドロキシル基を保護し、化合物13’’のカルボニルを還元してベンゾフラニル部分を得ることによって調製した後、カルボキシル化することによって化合物18’を得る。
【0048】
スキーム4A
【0049】
1つの実施態様では、実施例4Aに示すとおり、化合物18’を、6-ヒドロキシベンゾフランから、中間体としてのトリフラートエステルおよび6-カルボキシメチルエステルを経て調製する。
【0050】
スキーム5
【化11】
【0051】
ベンゾフランカルボン酸18’を、スキーム5に示すように、アミド結合形成によって化合物12’(またはその塩)とカップリングさせて、保護された化合物19’を得る。アミド結合形成反応は、当分野で知られている。
【0052】
スキーム5A
【化12】
【0053】
スキーム3~5の別法として、化合物18’および化合物5’’を、アミド結合形成によってカップリングさせた後、残りのカルボニル基を脱保護して化合物12’’を得ることができる。化合物12’’と化合物10’との間のアミド結合形成により、保護されたカルボキシル基を有する化合物19’が得られる。
【0054】
スキーム5B
【化13】
【0055】
スキーム1~5の別法として、化合物12’’および化合物10’’を、アミド結合形成によってカップリングさせた後、臭素の代わりにメチルスルホン官能基を導入することによって化合物19’’を化合物19’に変換することができる(スキーム2と同様)。あるいは、臭素の代わりに、化合物10’’は、任意のハライド(Cl、I、Br、F)または脱離基、例えばOTs、OTfなどであるXを有する。化合物12’’は、以下のスキームを用いて調製することもできる。
【化14】
【0056】
スキーム6
【化15】
【0057】
化合物19’’を脱保護して式Iの化合物またはその塩を得る最後の工程は、さまざまな方法で実施することができる。様々な態様では、得られる式Iの化合物は、高い光学純度および/または高い総純度および/または高い全収率を有する。
【0058】
1つのアプローチでは、エステル保護基を酸触媒加水分解によって除去する。例えば、メチルエステル保護基を、酸触媒加水分解によって除去する。あるいは、ベンジルエステル保護基を、酸、例えばジオキサン中のHClで除去する。酸触媒加水分解のための溶媒は、非プロトン性溶媒、プロトン性溶媒、極性溶媒、非極性溶媒、イオン性溶媒、または加圧ガス、例えば超臨界二酸化炭素などの工業的に入手可能な任意の溶媒であってよい。様々な態様では、溶媒は、非プロトン性溶媒、例えば、ジオキサン、テトラヒドロフラン、またはアセトンである。溶媒は、種々に、ヘキサン、ベンゼン、トルエン、1,4-ジオキサン、クロロホルム、ジエチルエーテル、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、アセトン、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、n-ブタノール、イソプロパノール、n-プロパノール、エタノール、メタノール、水、ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、およびこれらの混合物、例えば含水アセトンなどから選択され得る。酸は、加水分解反応に用いられる任意の酸であってよい。様々な実施態様では、酸は鉱酸である。様々な実施態様では、酸は、塩化水素、硫酸、リン酸、およびスルホン酸から選択される。様々な実施態様では、酸は、トリフルオロ酢酸である。1つの実施態様では、エステルを、求核置換によって、例えば、ジメチルスルキシド中のヨウ化ナトリウムを用いることなどによって除去する。
【0059】
1つのアプローチでは、ベンジルエステル保護基を、炭素上のパラジウムを用いて除去する。例えば、化合物19’のベンジルエステルを、メタノール:THFの5:1の混合液中、10%の炭素上のパラジウムを用い、ギ酸およびトリエチルアミンを用いて移動水素化することによって除去して、式Iの化合物を得る。
【0060】
様々な実施態様では、化合物19’は、式AAの化合物である。式AAの化合物を変換する一般的な方法は、このエステルを塩基で加水分解することによって式Iの化合物を得る方法である。
【化16】
式AAの化合物を、溶媒中で塩基と反応させて式AAの塩基触媒鹸化反応を行わせて、式Iの化合物を得ることができる。
【0061】
鹸化溶媒は、非プロトン性溶媒、プロトン性溶媒、極性溶媒、非極性溶媒、イオン性溶媒、または加圧ガス、例えば超臨界二酸化炭素などの工業的に入手可能な任意の溶媒であってよい。様々な態様では、溶媒は、非プロトン性溶媒、例えば、ジオキサン、テトラヒドロフラン、またはアセトンである。溶媒は、種々に、ヘキサン、ベンゼン、トルエン、1,4-ジオキサン、クロロホルム、ジエチルエーテル、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、アセトン、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、n-ブタノール、イソプロパノール、n-プロパノール、エタノール、メタノール、水、およびこれらの混合物から選択され得る。好ましい実施態様では、溶媒は含水アセトンである。塩基は、鹸化反応に用いられる任意の塩基であってよい。様々な実施態様では、塩基は、水酸化物、例えば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、または水酸化リチウムである。
【0062】
様々な実施態様では、R基は、任意の炭素含有基であってよい。このような化合物は、式Iの化合物の合成中間体として、あるいは式Iの化合物のプロドラッグとして有用である。R基が任意の炭素含有基である基の範囲内で、Rは、置換されていても置換されていなくてもよい、低級アルキル、低級アルケニル、低級アルキニル、シクロ(低級)アルキル、シクロ(低級)アルケニル、アリール、アラルキル、ヘテロシクリル、およびヘテロアリール基から選択され得る。様々な実施態様では、低級アルキルは、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、ペンチル、イソブチル、t-ブチル、またはヘキシルである。様々な実施態様では、式AAのR基はベンジル基である。式AAの様々な実施態様では、炭素含有基Rは、ベンジル基を含まない。
【0063】
様々な実施態様では、R基はシリル含有基であり、式AAは、シリルエステルである。
【0064】
1つの実施態様では、エステル保護基を、溶液中の反応などの均一反応物中の塩基触媒加水分解によって除去する。例えば、ベンジルエステル保護基を、含水ジオキサン中のNaOHで除去する。1つの実施態様では、ベンジルエステル保護基を、含水アセトン中のNaOHで除去する。均一液体反応の様々な実施態様では、NaOHは、約0.1N~約2Nの範囲、例えば、約0.5N、0.6N、0.7N、0.8N、0.9N、1.0N、1.1N、1.2N、1.3N、1.4N、またはは1.5Nであってよい(列挙した全ての濃度は「約」であると理解されたい)。
【0065】
1つの実施態様では、エステル保護基を、化合物19’または式AAから、相間移動触媒の存在下の不均一反応における塩基触媒加水分解によって除去する。例えば、化合物19’または式AAの化合物を、含水アセトン中で相間移動触媒と接触させる。様々な実施態様では、この反応は、固体-液体界面の存在下で起こる。様々な実施態様では、この反応は、溶媒および結晶物質のスラリー中で起こる。様々な実施態様では、反応物は二相である。様々な実施態様では、この反応は、二相の回分式反応として開始し、反応が進行するにしたがって次第に均一になり、出発物質が変換されて、溶液中に留まる生成物が得られる。様々な実施態様では、出発物質のラセミ化が、二相条件を用いることにより未反応の出発物質の塩基への暴露が低減されることによって最小化される。
【0066】
様々な実施態様では、反応の進行を、残留する固体物質の量を評価することによって監視する。様々な実施態様では、反応混合物が本質的に単一相となった時(すなわち、全ての固体が溶液中に溶解された時)に反応が本質的に完結したとみなされる。
【0067】
様々な実施態様では、塩基加水分解を、約0.9当量~約3当量の範囲の塩基の量、例えば、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、または3.0当量で実施する(全ての量は「約」である)。様々な実施態様では、塩基の量は、約1.0当量~約1.5当量の範囲の塩基の量、例えば、1.2当量などである。様々な実施態様では、塩基はNaOHである。様々な実施態様では、塩基加水分解を、化学量論量未満の量の水酸化テトラブチルアンモニウムの存在下でNaOHを塩基として用いて実施する。
【0068】
様々な実施態様では、反応は、バッチ反応であり、完結時間が0時間を超えて約24時間未満、約12時間未満、約8時間未満、約6時間未満、または約4時間未満である、
【0069】
様々な実施態様では、化合物19’または式AAの化合物の塩基触媒加水分解を、相間移動触媒の存在下で実施する。様々な実施態様では、相間移動触媒は、第四級アンモニウム塩、ホスホニウム塩、またはクラウンエーテルである。様々な実施態様では、相間移動触媒は、ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、ヘキサデシルトリブチルホスホニウムブロマイド、水酸化テトラブチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウムブロマイド、メチルオロクチルアンモニウムクロライド、およびテトラブチルアンモニウムクロライドから選択される。様々な実施態様では、相間移動触媒は、水酸化テトラブチルアンモニウムである。1つの実施態様では、相間移動触媒の量は、化学量論量未満である。例えば、相間移動触媒の量は、約0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、または0.9当量であり、全ての量は約である。
【0070】
さらなる実施態様では、エステル保護基を、わずかに酸性およびわずかに塩基性の条件を含む文献により知られている他の手順によって除去することができる。エステル保護基は、ブタ肝臓エステラーゼ、コレステロールエステラーゼ、アミノエステラーゼなどのエステル加水分解酵素で処理することによって除去することもできる。式AAからのエステル保護基の除去はさらに、強酸性樹脂、弱酸性樹脂、強塩基性樹脂、または弱塩基性樹脂の適用によって達成することができる。小スケールおよび大スケールでの再結晶のための手順は、当業者に知られている。
【0071】
式Iの化合物が粗化合物として形成されると、様々な単離方法および/または精製方法が利用可能である。式Iの化合物は、最終の脱保護工程から蒸留または溶剤蒸発によって粗生成物として単離され得る。溶媒の除去は、乾燥するまで除去することによっても、一部の溶媒を除去して固体/液体混合物を得て、これをろ過および/または洗浄することによってもよい。粗化合物は、溶媒、例えば、水性であっても非水性であってもよい、メチルエチルケトン(MEK)、アセトニトリル、塩化メチレン、またはアセトン中にスラリー化することによって精製することができる。式Iの化合物は、再結晶および/または追加の溶媒を用いる洗浄によって単離/精製することができる。
【0072】
式Iの化合物の調製および精製のための有用な溶媒の部分的なリストには、例えば、水、脂肪族溶媒(例えば、ペンタン、石油エーテル、およびヘキサンなど)、芳香族溶媒(例えば、トルエン、キシレンなど)、脂肪族ケトンおよびエステル(例えば、メチルエチルケトン、アセトン、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、および酢酸ブチルなど)、アルコール(例えば、エチルアルコール、プロピルアルコール、およびメチルアルコールなど)、アセトニトリル、エーテル(例えば、エチルエーテル、tert-ブチルメチルエーテル(TBME)、およびテトラヒドロフラン)、アルケン、およびアルキン、アルケニルエステルおよびアルコール、アルキニルエステルおよびアルコール、ならびに芳香族エステルおよびアルコールが含まれる。1つの実施態様では、再結晶を、薬学的に許容される溶媒中で実施する。1つの実施態様では、有用な溶媒は含水アセトンである。
【0073】
様々な実施態様では、再結晶を、約0.5容積倍から約15容積倍、例えば、約5容積倍から約15容積倍、または例えば、約1、2、3、4、5、6、7、8、または9容積倍の再結晶溶媒を用いて実施する。様々な実施態様では、再結晶を、少なくとも10容積倍の再結晶溶媒を用いて実施する。様々な実施態様では、再結晶により、1回以上の結晶の収穫、例えば1回、2回、3回、またはそれ以上の回の結晶の収穫が得られる。様々な実施態様では、再結晶の収率は、最初のろ過および/またはろ過の組合せで、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、または少なくとも90%である。
【0074】
様々な実施態様では、最終的な脱保護および/または再結晶を、含水アセトン中で実施する。水およびアセトンは相溶性であるため、100%/0%の水/アセトン~0%/100%の水/アセトンの範囲が可能である。様々な実施態様では、水/アセトンの比は、約10/90、20/80、30/70、40/60、50/50、60/40、70/30、80/20、または90/10であり、全ての量は「約」である。好ましくは、最終的な脱保護および/または再結晶のための溶媒は、約30%の含水アセトンである。様々な実施態様では、含水アセトンを用いる再結晶により、最初のろ過および/またはろ過の組合せで、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、または少なくとも90%の収率が得られる。様々な実施態様では、含水アセトンを、上述したとおり、約0.5容積倍から約15容積倍、例えば、約7容積倍用いる。
【0075】
様々な実施態様では、pH調節剤を、式Iの化合物の単離および/または精製の間に用いる。理論に限定されることを望まないが、式Iの化合物の溶解性が、式Iの化合物の塩が酸性条件に曝されて式Iの化合物のカルボキシル基がプロトン化されることによって改変されて、式Iの化合物が有機溶媒中により溶解可能になると考えられる。様々な実施態様では、pH調節剤を式Iの粗化合物の組成物に添加してpHを約7未満にする。様々な実施態様では、pHを、約5未満、約4未満、または約3未満に低下させる。様々な実施態様では、pHは、約1~約5の範囲内である。様々な実施態様では、pHは約2である。pH調節剤は酸、例えば有機酸または鉱酸である。様々な実施態様では、pH調節剤は塩酸である。様々な実施態様では、pH調節剤は希HCl溶液、例えば、4N HCl、1N HCl、0.1N HCl、または0.01N HCl溶液などである。様々な実施態様では、局所的なpHが約1未満となることを避けて、ラセミ化および/または加水分解を低減させる。
【0076】
様々な実施態様では、再結晶を、室温を超える温度で実施する。様々な実施態様では、再結晶を、50℃~90℃の間の温度で実施する。様々な実施態様では、式Iの化合物を、室温を超える温度で再結晶溶媒に溶解させ、濾過して粒状物を除去し、室温または室温未満に冷却して再結晶を起こさせ、濾過して結晶と母液とを分離する。
【0077】
様々な実施態様では、再結晶を、完結するまでの時間が0時間から約3日間、約2日間未満、約36時間未満、約24時間未満、約12時間未満、約8時間未満、約6時間未満、または約4時間未満である回分式プロセスで実施する。
【0078】
様々な実施態様では、再結晶を、約10kgを超えるスケール、100kgを超えるスケール、100kgを超えるスケール、1メートルトンを超えるスケール、または10メートルトンを超えるスケールの回分式プロセスで実施し、全ての量は約である。様々な実施態様では、最終的な脱保護および/または再結晶を、最初のろ過および/またはろ過の組合せで、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、または少なくとも90%の収率で実施する。
【0079】
さらなる実施態様において、式Iの化合物を、これらに限定されないが、溶液衝突による析出(crashing out of a solution)、凍結乾燥、または透析などを含む文献で知られている他の手順によって精製することができる。
【0080】
本発明の製造方法のいくつかの実施態様では、キラルクロマトグラフィーによって260nmで測定した式Iの化合物のS鏡像体のキラル純度が、約75%、約75.5%、約76%、約76.5%、約77%、約77.5%、約78%、約78.5%、約79%、約79.5%、約80%、約80.5%、約81%、約81.5%、約82%、約82.5%、約83%、約83.5%、約84%、約84.5%、約85%、約85.5%、約86%、約86.5%、約87%、約87.5%、約88%、約88.5%、約89%、約89.5%、約90%、約90.5%、約91.0%、約91.5%、約92.0%、約92.5%、約93.0%、約93.5%、約94.0%、約94.5%、約95.0%、約95.5%、約96.0%、約96.5%、約97.0%、約97.5%、約98.0%、約98.5%、約99.0%、約99.5%、または約99.9%より高い。様々な実施態様では、キラルクロマトグラフィーによって測定した式Iの化合物のキラル純度は、約99%より高い。いくつかの実施態様では、キラルクロマトグラフィーによって260nmで測定した式Iの化合物のキラル純度は、約100%である。
【0081】
本発明の製造方法のいくつかの実施態様では、化学合成の結果として得られたかまたは生じた式Iの化合物中に組み入れられた任意の不純物は、キラルクロマトグラフィーによって220nmで測定して、約2.0%、約1.9%、約1.8%、約1.7%、約1.6%、約1.5%、約1.4%、約1.3%、約1.2%、約1.1%、約1.0%、約0.9%、約0.8%、約0.7%、約0.6%、約0.5%、約0.4%、約0.3%、約0.2%、約0.1%、約0.09%、約0.08%、約0.07%、約0.06%、約0.05%、約0.04%、約0.03%、約0.02%、約0.01%、または約0.009%未満である。いくつかの実施態様では、不純物は、合成の副生成物である。いくつかの実施態様では、不純物は臭素含有化合物である。様々な実施態様では、不純物は、モノクロロ化合物である。
【0082】
本発明の製造方法のいくつかの実施態様では、化学合成の結果として得られたかまたは生じた式Iの化合物中に組み入れられた全不純物は、キラルクロマトグラフィーによって220nmで測定して、約3.0%、約2.8%、約2.6%、約2.4%、約2.2%、約2.1%、約2.0%、約1.9%、約1.8%、約1.7%、約1.6%、約1.5%、約1.4%、約1.3%、約1.2%、約1.1%、約1.0%、約0.9%、約0.8%、約0.7%、約0.6%、約0.5%、約0.4%、約0.3%、約0.2%、約0.1%、または約0.09未満である。いくつかの実施態様では、不純物は、化学合成の副生成物を含む。
【0083】
1つの実施態様では、再結晶の生成物は、0.5%、0.4%、0.3%、0.2%あるいは0.1%未満の薬学的に許容されない溶媒を含む。様々な実施態様では、再結晶の生成物は、薬学的に許容されない溶媒を本質的に含まない。1つの実施態様では、再結晶の生成物は、0.5%、0.4%、0.3%、0.2%あるいは0.1%未満のメチルエチルケトンを含む。
【0084】
様々な実施態様では、本発明によって合成された化合物は、様々な利点、例えば、精製の容易性、コストの低減、合成工程数の低減、高い全収率、不純物の低減、不純物のプロファイルの改変、および不斉中心のラセミ化の低減などを有し得る。1つの実施態様では、本発明によって合成された化合物は、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、および約99.9より高い鏡像体過剰率(ee)を有する。様々な実施態様では、本発明によって合成された化合物は、エステル基を除去してカルボン酸を得るために触媒としてパラジウムを用いて調製された式Iの化合物と比較して、不純物としての触媒の低減された濃度を有する。例えば、様々な実施態様において、本化合物は、パラジウムを有する汚染が100ppm未満であるか、パラジウムを有する異物混入が50ppm未満、10ppm未満、または1ppm未満である。様々な実施態様では、本化合物は、本質的に化学触媒を含まない。
【0085】
式Iの無水形態および5つの多形体である形態A、B、C、D、およびEは、以前に単離され特徴付けがされている。米国特許第8,080,562を参照されたい。本明細書では、式Iの新規な結晶形態を同定し、単離し、完全に特徴付けした。これらの6つの形態を、表1に示すとおり、ここで新たに形態I~VIと称し、以前の名称付けと、ここでの命名との間の関係をまとめた。
【0086】
表1
【表1】
【0087】
医薬組成物、製剤、ならびにキット
様々な実施態様では、式Iの化合物の非晶質形態、結晶形態A、B、C、D、もしくはEの形態、またはこれらの組合せを、医薬組成物中で投与する。本発明の医薬組成物は、被験者に適切に投与するための組成物を製剤化するために、薬学的に許容される担体および賦形剤を、式Iの化合物の非晶質、結晶形態A、B、C、D、もしくはEの形態、またはこれらの組合せと共に含む。
【0088】
本発明のいくつかの実施形態では、結晶形態は、医薬組成物中で結晶形態を維持している。他の実施態様では、非晶質および/または結晶形態は、可溶化されてもはや結晶ではない。しかし、後者の場合、非晶質および/または結晶形態の優れた純度または他の物理化学的特性が、例えば、式Iの化合物の形態に組成物を形成させるための取り扱い容易性、製剤化前の結晶形態の優れた貯蔵性、優れた治療指数、式Iの化合物の患者への認容性、または式Iの化合物の低減された副作用に寄与する。非晶質質、結晶形態A、B、C、D、もしくはEの形態を、粉砕して、製剤化に望ましい特性を得ることができる。
【0089】
本発明の医薬組成物は、ゲル、クリーム、ローション、溶液、懸濁液、乳剤、軟膏、粉末、結晶形態、スプレー、エアロロゾル、フォーム、軟膏、ペースト、塗剤、微粒子、ナノ粒子、または生体接着剤として製剤化されてもよく、リポソーム、ミセル、および/またはミクロスフェアを含有するように調製することができる。経口製剤は、錠剤、カプセル剤、トローチ、ピル、ウエハース、チューインガム、ロゼンジ、水溶液もしくは懸濁液、油状懸濁液、シロップ剤、エリキシル剤、または分散可能な粉末もしくは顆粒などとすることができ、当分野で知られている任意の方法によって調製することができる。経口製剤は、甘味料、風味剤、着色剤、および保存料を含有していてもよい。
【0090】
式Iの化合物の非晶質、結晶形態A、B、C、D、もしくはE、またはこれらの混合物は、無菌の溶液または懸濁液として、当分野で知られている適切なビヒクル中に製剤化することができる。適切な配合ならびに追加の担体および賦形剤は、その教示全体を参照により本明細書に組み入れる、Remingtonの「The Science and Practice of Pharmacy」(第20版、Lippincott Williams & Wilkins、Baltimore MD)に記載されている。
【0091】
本発明の製剤は、他の薬理学的活性成分を、それらが本発明の目的に相反しない限り、さらに含んでいてよい。複数の活性成分の組合せにおいて、それらの個々の含量は、それらの効能および安全性を考慮して適切に増減させる。
【0092】
本発明は、キットも提供する。このキットには、適切な包装内の本発明の化合物と、使用のための指示書、臨床研究の議論、副作用のリストなどを含み得る資料とを含む。キットは、非晶質、結晶形態A、B、C、D、もしくはE、またはこれらの混合物を含む式Iの化合物と併用される別の治療剤をさらに含んでいてよい。いくつかの実施耐用では、治療剤と、非晶質もしくはいずれかの結晶形態またはこれらの混合物の式Iの化合物とを、隔てられた容器内に別々の組成物としてキット内に備える。いくつかの実施態様では、治療剤と、非晶質もしくはいずれかの結晶形態またはこれらの混合物の式Iの化合物とを、単一の組成物としてキットの容器内に備える。好適な包装および使用のための追加の物品(液体調製剤のための計量カップ、空気への暴露を最小限にするためのアルミホイル包装、ディスペンサーなど)は、当分野で知られており、本キットに含めることができる。
【0093】
医薬組成物、製剤、およびキットに関するさらなる情報は、その内容全体を参照により本明細書に組み込む、米国特許第8,080,562号明細書、米国出願公開第2009/0298869号明細書、米国出願公開第2011/0092707号明細書、米国特許第8,084,047号明細書、米国出願公開第2010/0092542号明細書、米国出願公開第2006/0281739号明細書に記載されている。
【0094】
使用
単一の作用メカニズムによって使用を限定することを意図しないが、本明細書に記載した方法は、式Iの化合物の非晶質、結晶形態A、B、C、D、もしくはE、またはこれらの混合物を含む式Iの化合物を投与することによって、LFA-1とICAM-1との間の相互作用を阻害することによる、炎症に関連する疾患の開始および進行の阻害を包含する。いくつかの実施態様では、この方法は、抗炎症効果をin-vitroおよびin-vivoでもたらし、炎症が介在する疾患の治療および/または疾患メカニズムの研究に有用である。
【化17】
【0095】
より詳細には、式Iの化合物の非晶質、結晶形態A、B、C、D、もしくはE、またはこれらの混合物は、白血球によって介在される炎症を制御することができる。式Iの化合物の非晶質、結晶形態A、B、C、D、もしくはE、またはこれらの混合物は、LFA-1に対する抗体が効果的であることが分かっている任意の病気における治療剤として用いることができる。本発明の1つの実施態様では、被験者に、式Iの化合物の非晶質、結晶形態A、B、C、D、もしくはE、またはこれらの混合物を投与して、眼の炎症に関連する炎症を調節することができる。本方法の別の実施態様では、ドライアイ症候群に伴う炎症を有する被験者に、式Iの化合物の非晶質、結晶形態A、B、C、D、もしくはE、またはこれらの混合物を投与する。
【0096】
式Iの化合物の非晶質、結晶形態A、B、C、D、もしくはE、またはこれらの混合物の投与は、任意の適切な手段によるものであってよい。いくつかの実施態様では、式Iの化合物の非晶質、結晶形態A、B、C、D、もしくはE、またはこれらの混合物を含む医薬組成物を、経口、経皮、注入、徐放性眼内注入、またはエアロゾル投与によって投与する。
【0097】
式Iの化合物の使用に関するさらなる情報は、その内容全体を参照により本明細書に組み込む、米国特許第8,080,562号明細書、米国出願公開第2009/0298869号明細書、米国出願公開第2011/0092707号明細書、米国特許第8,084,047号明細書、米国出願公開第2010/0092542号明細書、米国出願公開第2006/0281739号明細書に記載されている。式Iの化合物の投与に関するさらなる情報は、その内容全体を参照により本明細書に組み込む、米国特許第8,080,562号明細書、米国出願公開第2009/0298869号明細書、米国出願公開第2011/0092707号明細書、米国特許第8,084,047号明細書、米国出願公開第2010/0092542号明細書、米国出願公開第2006/0281739号明細書に記載されている。
【実施例
【0098】
実施例1
【化18】
【0099】
3,5-ジクロロベンズアルデヒド(化合物1)を、1-クロロ-2-アミノエタンおよびシアノホウ水素化ナトリウムを用いて還元的にアミノ化することにより、化合物2が35%の収率で得られた。化合物2を、塩化アルミニウム触媒および塩化アンモニウムを用いて185°C で環化させることにより、化合物3が91%の収率で得られた。化合物3の遊離のアミンをトリチル基で保護された化学種として保護することにより、化合物4が89%の収率で得られた。化合物4を、n-ブチルリチウム(nBuLi)およびテトラメチレンジアミン(TMEDA)を用いて処理した後、二酸化炭素を導入することによって、カルボン酸官能基を導入して、トリチル基で保護された化合物5を75%の収率で得た。
【0100】
実施例1A
【化19】
【0101】
ガラス反応器に、3,5-ジクロロベンズアルデヒドを入れた。無水エタノールを、このバッチにゆっくりと添加し(この添加により穏やかに発熱する)、激しい撹拌を開始した。2,2-ジエトキシエチルアミン(1.03当量)を、バッチ温度を20~78℃に保持しながら、このバッチにゆっくりと添加した。次いで、このバッチを76~78℃で2時間加熱した。GC-MS分析により、反応の完結が示された(出発物質が1%未満)。このバッチを、処理のために周囲温度に冷却した。バッチを減圧下で濃縮して残渣を得、ヘプタンで共沸により溶媒を除去した(2回)。残渣を冷却し、0~5℃に12時間保持して懸濁液を形成させた。固体を濾過により集め、ケーキを冷(0~5℃)ヘプタンで洗浄し、窒素下で乾燥させて(45~50 ℃)、化合物2’を白色固体として得た(94%の収率)。
【0102】
ガラス反応器に、濃硫酸(95~98%、25.9当量)を入れた。このバッチを120~125℃に加熱し、化合物2’のCH2Cl2中の溶液を、バッチ温度を120~125℃に保ちながら1時間かけてゆっくりと添加した。次いで、このバッチを、120~125℃で6時間撹拌した。このバッチを50℃未満に冷却した。このガラス反応器に、DI水を入れ、バッチ温度を0~5℃に調節した。この反応混合物を、バッチ温度を0~50℃に保ちながらゆっくりと別の容器に移した。移す際にDI水を用いた。このバッチに、Dicalite 4200を加え、Dicalite 4200のパッドを通して濾過した。濾液に、50%の水酸化ナトリウム水溶液を、バッチ温度を0~50℃に保ちながら3時間かけてゆっくりと添加して、pHを12に調節した。得られた懸濁液を、45~50℃で2時間撹拌し、固体を濾過により集めた。濾過ケーキをDI水中で、30~35℃にて1時間スラリー化した。このバッチを濾過した。ケーキをヘプタンで洗浄し、真空オーブン内で45~50℃にて22時間乾燥させて、粗化合物2’’を黄褐色固体として得た(75%の収率)。これをさらに再結晶により精製した。
【0103】
反応器に、二酸化白金(0.012当量)、化合物2’’、およびMeOH (10容量倍)を入れ、この懸濁液を、アルゴン下、室温で10分間撹拌した。この反応混合物をアルゴンで3回不活性化させた後、125 psiの水素下、室温で25時間撹拌した。HPLC分析により、残存する出発物質が1%未満であることにより反応の完結が示された。静置した後、上清を減圧によってデカンテーションして固体(触媒)から除去した。この固体に、メタノールを添加し、このスラリーを窒素下で混合した。固体を、数時間静置して容器の底に沈殿させた。上清を減圧によってデカンテーションして固体(触媒)から除去した。合わせた上清を、窒素下でセライトを通して濾過し、濾過パッドをMeOHで2回洗浄した。合わせた濾液および洗液を、濃縮して乾燥させた。残渣をMTBE中にスラリー化させた。この混合物を、温度を40℃未満に維持しながら3M HClで処理すると、濃厚な沈殿が生じた。この混合物を、35~40℃にて60~90分間撹拌した。このバッチを0~5℃に冷却し、60~90分間撹拌した後、濾過した。濾過ケーキを冷DI水で洗浄した(2回)後、MTBEで2回洗浄して置換した。濾過ケーキを減圧下で乾燥させて、化合物3の塩酸塩を得た(86%の収率)。水素下触媒は、再生することができ、再利用することができる。
【0104】
化合物3およびトリチルクロライドを反応フラスコに入れた。この反応器にDCM (10 vol)を添加し、激しい撹拌を開始させて、スラリーを形成させた。反応混合物を10~15℃に冷却した。N,N-ジイソプロピルエチルアミン(2.5当量)を、この反応混合物にゆっくりと添加し、添加の間、温度を15~25℃の温度に保った。添加が完了した後、バッチを15~25℃にて少なくとも60分間撹拌した。反応を調べるために、試料をアセトニトリルで希釈してHPLCに注入してHPLC測定した。30分後の最初の試験で、反応が完結して出発物質が1%未満であることがHPLC分析により示された。反応混合物をDI水(5容量倍)で希釈した。この反応混合物を5分間撹拌した後、分液漏斗に移し、相を分離させた。DCM層をDI水(5容量倍)と共に5分間撹拌することにより洗浄し、相を分離させた。DCM層を塩水(5容量倍)と共に5分間撹拌することにより洗浄し、相を分離させた。DCM層を硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、濾過ケーキをDCMで2回洗浄した。合わせた濾液および洗液を濃縮し、残渣の溶媒をEtOAcで共沸させて除去した(2回)。残渣をEtOAcに懸濁させ、40℃の水浴中で1時間撹拌した。得られたスラリーを0~5℃で1時間冷却した後濾過した。濾過ケーキをEtOAcで2回洗浄した後、減圧下で乾燥させて、化合物4を得た。
【0105】
実施例1B
【化20】
【0106】
アセトニトリル中の1,2,3,4-テトラヒドロ-6-ヒドロキシ-イソキノリンに、p-トルエンスルホン酸およびN-クロロスクシンイミドを添加した。この懸濁液を周囲温度に冷却し、生成物を濾過によって単離して、約61%の収率および95%を超える純度を得た。単離したこのTsOH塩を純度が99.7%を超えるまで再結晶した。メタノールに懸濁させた1当量のこのTsOH塩に、2Mの炭酸ナトリウム(0.55当量)および1.2当量のBoc無水物を添加した。この懸濁液を室温で一晩撹拌した。反応を、HPLCによって監視した。反応が完結した後すぐに、混合物を10℃未満に冷却し、水を添加して、Bocで保護されたジクロロ化合物を濾過によって単離した。生成物を洗浄し、40℃で乾燥させて、95%の収率および97%を超える純度を得た。このBocで保護されたジクロロ化合物を、ジクロロメタン(10容量倍)に懸濁させ、ピリジン(5容量倍)を添加した。この混合物を2℃未満に冷却し、トリフルオロ酢酸無水物(triflic anhydride)(1.25当量)を添加した。混合物を0~2℃で10分間撹拌した後、10容積倍の6%水酸化ナトリウム水溶液に注いだ。有機相をジクロロメタンで洗浄した後、有機相を合わせ、硫酸マグネシウムで乾燥させた。精製後、生成物(化合物4’)が90%の収率および98%を超える純度で得られた。化合物4’を、ジメチルホルムアミドおよびメタノールに室温で溶解させた。ジイソプロピルアミン(4当量)を添加した。CO雰囲気下、1,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン(0.1当量)および酢酸パラジウム(0.1当量)を添加した。この反応物を加熱還流させ、HPLCによって監視した。ほぼ完結した直後に、混合物を周囲温度に冷却した。水、酢酸エチル、および塩水で処理して、化合物4’’を得た。これをさらに精製することなく使用した。化合物4’’を、メタノールおよび2.4 M水酸化ナトリウム(それぞれ10容積倍) に溶解させ、還流させた。この混合物を周囲温度に冷却し、トルエンを加えた。水性の後処理の後、3M塩化水素を用いてpHを2.3に調整し、粗生成物を濾過により53%の収率および80%を超える純度で単離した。
【0107】
実施例2
【化21】
【0108】
ブロモフェニルアラニンのアミノ基のt-ブチルカルバメート(Boc)保護を、ジオキサンおよび水中、重炭酸ナトリウム(3当量)およびt-ブチルジカーボネート(Boc2O, 1.1当量)を用いて行って、化合物7を98%の収率で得た。メチルスルホン官能基を、ブロモ化合物7を、ジメチルスルホキシド(DMSO)中、ヨウ化銅(0.4当量)、炭酸セシウム(0.5当量)、L-プロリン(0.8当量)、およびメタンスルフィン酸のナトリウム塩(3.9当量)で、95~100℃にて合計9時間処理し、この期間内にヨウ化銅(0.2当量)およびL-プロリン(0.4当量)をさらに2回添加することによって、メチルスルホン酸官能基を導入した。化合物8が96%の収率で単離された。化合物8のカルボン酸を、ベンジルアルコール(1.1当量)、ジメチルアミノピリジン(DMAP, 0.1当量)、およびN-(3-ジメチルアミノプロピル)-N-エチルカルボジイミド(EDC, 1.0当量)を用いて変換して、ベンジルエステルである化合物9を99%の収率で得た。化合物9のアミノ基は、ジオキサン中の4NのHClを、塩化メチレン中0℃の化合物9に添加することによって脱保護した。遊離のアミノ種のHCl塩である化合物10を94%の収率で得た。
【0109】
実施例2A
実施例2を、炭酸セシウムの代わりに炭酸カリウムを用いて繰り返した。
【0110】
実施例2B
Bocで保護されたブロモフェニルアラニン(化合物7)(100g)を、撹拌およびアルゴンを用いて脱気しながらDMSO(400 mL)に溶解させた。メタンスルフィン酸ナトリウム(98g)、ヨウ化銅(28.7g)、炭酸カリウム(40 g)、およびL-プロリン(26.75g)を28~30℃で添加した。反応物を約87℃にて17~19時間加熱した。反応物を冷却し、砕いた氷を用いて反応を停止させ、30~40分間撹拌し、クエン酸(350 g) を用いてpHを約12から約3~4に調整した。反応を停止させた反応混合物を、ろ過し、ジクロロメタンで3回抽出し、塩化アンモニウム溶液で洗浄し、重硫酸ナトリウム溶液で洗浄し、塩水で洗浄した。ジクロロメタン中の粗生成物を減圧下で、水分含量が約0.5%未満になるまで濃縮し、さらに精製することなく次の工程に用いた。ジクロロメタン中の粗化合物8に、窒素下で撹拌しながらベンジルアルコールおよびDMPAを加えた。反応物を0~5℃に冷却した。これに撹拌しながら30分間かけてEDC-HCL (1.03当量)を添加した。TLCおよびHPLCによって反応の完結が示された後、重炭酸ナトリウム溶液を用いて反応を停止させ、有機相を分離し、水性相をジクロロメタンで抽出した。有機相をクエン酸溶液で洗浄し、合わせた有機相を塩水溶液で洗浄した。ジクロロメタンを45~50℃で除去し、その濃縮物を、さらに精製することなく次の工程に用いた。化合物9のアミノ基を、ジオキサン中の4NのHClを、塩化メチレン中10~15℃の化合物9に添加することによって脱保護した。遊離のアミノ種のHCl塩である化合物10を、ジエチルエーテルからろ過によって単離した。化合物10の単離は、ジメチルホルムアミド/ジクロロメタン溶媒系を用いて再結晶することによって実施した。
【0111】
実施例3
【化22】
【0112】
化合物5を、ジメチルホルムアミド(DMF)中、トリエチルアミン (TEA, 5当量)および2-(7-アザ-1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HATU, 1.25当量)で10分間処理した後、この溶液に化合物10を添加した。室温で18時間撹拌した後、生成物である化合物11を、70%の収率で単離した。トリチル保護基の除去は、化合物11を、室温にて2時間ジオキサン中のHCl (4 N, 過剰)で処理することによって行った。これに、ジエチルエーテルを添加し、固体生成物である化合物12を濾過により95%の収率で単離した。化合物12は、非晶質および結晶形態の両方で存在し、いずれの形態で単離することもできる。
【0113】
実施例3A
化合物5を酢酸イソプロピルに溶解させ、20~25℃に冷却した。塩化チオニルを10~15℃に冷却しながら添加し、N-メチルモルホリンをゆっくりと添加した。反応は、HPLCで監視した。化合物10、水、および酢酸イソプロピルを15~20℃にて溶液が得られるまで撹拌した。これに、N-メチルモルホリンを添加した後、化合物5の反応混合物(化合物5の酸クロライド)を添加した。反応を、HPLCで監視した。完結した後、静置により二相に分離させ、水性相を除去した。上部の有機層を、水で抽出し、残りの有機層を真空下で蒸留した。ジオキサンおよびIpAcを添加してさらに蒸留した。乾燥させた後、ジオキサン中4Nの無水HClを添加した。この混合物を20~25℃にて12時間撹拌し、完全に脱保護されたことをHPLCでチェックした。完全に脱保護された後、濃厚なスラリーを濾過し、IPAcで洗浄し、真空下、45~55℃で乾燥させた。化合物12の収率は88%であった。
【0114】
実施例4
式Iの化合物のベンゾフラニルカルボニル部分を、さまざまなスキームで調製した(スキームE4、E4A、およびE4B)。
【0115】
【化23】
【0116】
ベンゾフラニルカルボニル部分を、化合物13のヒドロキシル基を、アセトン中、tert-ブチル錫ジメチルシリルクロライド(1.0当量)およびトリエチルアミン(TEA、1.1当量)と反応させることによって調製して、化合物14を79%の収率で得た。次いで、化合物14のメタノール溶液を、室温にて一晩、水素化ホウ素ナトリウム(1.0当量)で処理した。反応を、アセトンの添加によって停止させ、さらに2.5時間室温で撹拌し、温度を28℃未満に保ちながらHCl水溶液(4N)を添加し、テトラヒドロフラン(THF)を添加し、この溶液を、アルゴン下、光を遮断して一晩撹拌した。生成物である化合物15を、塩化メチレンで抽出し、加熱により濃縮することによって定量的に単離し、さらに精製することなく使用した。トリフラートエステル(化合物16)を、化合物15から、塩化メチレン中、N-フェニル-ビス(トリフェニルメタンスルホンイミド) (1.0当量)と72時間反応させることによって69%の収率で得た。DMF、メタノール、およびトリエチルアミンの混合液中の化合物16を、オートクレーブ内の、酢酸パラジウム、1,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン(dppp)、DMF、およびメタノールの調製溶液に添加した。このオートクレーブに、一酸化炭素を8バールの圧力にチャージし、反応混合物を70℃にて6時間加熱した。後処理の後、化合物17を91%の収率で単離した。メタノール中の水酸化リチウム(4当量)および水を用いてこのエステルを加水分解して、化合物18’を97%の収率で得た。
【0117】
実施例4A
エステルの加水分解のための試薬として無水トリフルオロ酢酸(triflic anhydride)および水酸化ナトリウムを用いて実施例4を繰り返した。
【0118】
化合物15 (6-ヒドロキシベンゾフラン)をジクロロメタンおよびジイソプロピルエチルアミン中で撹拌した。温度を20℃未満に保ちながら無水トリフルオロ酢酸(1.2当量)を添加した。反応をHPLCで監視した。反応をメタノールで停止させ、溶媒を減圧により除去し、粗生成物である化合物16をさらに精製することなく用いた。残渣である化合物16を、4容積倍のジメチルホルムアミドおよび2容積倍のメタノールに溶解させた。この溶液に、 0.02当量の酢酸パラジウム、0.02当量のdppp、およびCOを加圧下で添加した。反応を、HPLCで監視した。後処理の後、化合物17を油状残渣として、さらに精製することなく単離した。残渣である化合物17を、メタノール(5容積倍)に溶解させ、1容積倍の水酸化ナトリウム(27.65%)を添加した。この混合物を、HPLCで完全な変換が確認されるまで40℃に加熱した。この混合物を周囲温度に冷却し、3容積倍の水を添加した。3M塩化水素を用いてpHを約2に調節した。この懸濁液を濾過し、水で洗浄し、乾燥させて、化合物18’を約75%の全収率および99.5%を超える純度で得た
【0119】
実施例4B
【化24】
【0120】
ジエチル2-(1,3-ジオキサン-2-イル)エチルホスホネート(化合物1’’)を、2-(2-ブロモエチル)-1,3-ジオキサンから、トリエチルホスフェートの添加によって調製した。210℃での蒸留によってエチルブロマイドを除去した後、粗反応混合物を冷却し、次いで減圧蒸留することによって、化合物1’’を、無色オイルとして94%の収率で集めた。
【0121】
次の工程で、ヘキサン中のn-ブチルリチウム(2.15当量)を-70℃に冷却し、温度を-60℃未満に保ちながらジイソプロピルアミン(2.25当量)を添加した。テトラヒドロフラン(THF)に溶解させた化合物1’’ (1当量)を、-70℃にて30分間かけて添加した。10分後、THFに溶解させた炭酸ジエチル(1.05当量)を、反応温度を-60℃未満に保ちながら30分かけて添加した。-60℃にて1時間撹拌した後、反応を15℃に戻し、THFに溶解させたフラン-2-カルバルデヒド(1.3当量)を添加した。室温にて20時間撹拌した後、反応物を乾燥するまでロータリーエバポレーターにかけて、エチル2-((1,3-ジオキサ2-イル)メチル-3-(フラン-2-イル)アクリレートを得た。これを直接次の反応に用いた。
【0122】
粗化合物(1当量)をエタノールに溶解させ、温度を50℃未満に保ちながら、水およびリン酸(85%, 15当量)の混合物に30分かけて添加した。室温にて20時間撹拌した後、さらに200 mlのリン酸(85%)を添加し、この混合物をさらに2時間50℃に加熱した。ロータリーエバポレーターでエタノールを除去した後、残った物質をトルエンで抽出し、水で洗浄し、硫酸ナトリウムで無水にし、活性炭で処理し、濾過し、乾燥させてオイルを得た。このオイルを蒸留して、エチルベンゾフラン-6-カルボキシレート(化合物6’’)を得た(bp 111-114.5°C)。これは、静置により結晶化した。化合物6’’は、化合物1’’に基づいて57%の収率で得られた。
【0123】
化合物6’’ (875 mmol)を、メタノールおよびテトラヒドロフラン(THF)に溶解させた。水酸化ナトリウム (4 M, 3当量)を添加し、反応液を一晩撹拌した。ロータリーエバポレーターによって濃縮した後,その水溶液をメチルtert-ブチルエーテル(MTBE)で抽出し、塩酸(HCl)の添加によりpH 2に酸性化し、冷却して、ベンゾフラン-6-カルボン酸(化合物18’)の微細な結晶を得た。化合物18’を単離し、水で洗浄し、乾燥させて、97%の収率の最終生成物を得た。
【0124】
実施例5
【化25】
【0125】
ベンゾフラカルボン酸18’を、オキザリルクロライド(1.2当量)および触媒量のDMFで処理し、透明な溶液が得られるまで5.5時間撹拌した。溶媒を減圧下で除去し、化合物18’の酸クロライドをアルゴン雰囲気下で次の日に使用するまで貯蔵した。塩化メチレン中のこの酸クロライドを、0~5℃に冷却した、式12の化合物およびジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)の塩化メチレン溶液にゆっくりと添加した。反応液が5℃を超えないように保ち、 添加が完了した後、5℃にてさらに0.5時間撹拌した。水性の後処理および塩化メチレンでの抽出の後、生成物である化合物19を定量的な収率で得た。
【0126】
化合物19のベンジルエステルを、10%の炭素上パラジウム、ギ酸およびトリエチルアミンを用いるメタノール:THF の5:1の混合液中の移動水素化によって除去して、式Iの化合物を95%の収率で得た。
【0127】
メチルエチルケトン(MEK)中でスラリー化する最終工程により、式Iの化合物の形態Aが生成した。この生成物を水で洗浄して残ったMEKを除去した。あるいは、水素化分解工程の生成物を、アセトニトリル中でスラリー化して、式Iの化合物の形態Aを得た。
【0128】
式Iの化合物を、水素化分解後の粗反応生成物として直接得て、塩化メチレン中の溶液から改めて濃縮することにより、式Iの化合物の非晶質形態が97%の純度で得られた。
【0129】
実施例6
代替的な保護戦略をスキームE6で実施した。
【化26】
【0130】
Boc-保護法を、中間体21および中間体22の環窒素のために用いた。化合物5をジオキサン中のHClで処理して、化合物23を97%を超える収率で得た。Boc-保護基を、ジ-tert-ブチルジカーボネート(1.1当量)を用いて導入して、化合物21を95%の収率で得た。化合物10を、DMF中のHATUおよびトリエチルアミンを用いて化合物21とカップリングさせて、化合物22を得た。生成物である化合物22は、定量的な収率および90%を超える純度で得られた。HClを用いる脱保護により、式12の化合物が97.4%の収率で得られた。
【0131】
化合物19の移動水素化により、式Iの化合物が、98.5%の(S)鏡像体の光学純度で得られた。これに対し、相当するメチルエステルの加水分解によって得られた式Iの化合物の(S)鏡像体の光学純度は79~94.5%であった。
【0132】
実施例6A
アミド結合カップリングのための酸クロライドを形成させるために、HATUの代わりに塩化チオニルを使用して、実施例6を繰り返した。
【0133】
実施例7
化合物19を式Iに変換する別法を、ベンジルエステル(化合物19)の塩基加水分解によって実施した。
【化27】
【0134】
化合物19〔(S)-ベンジル 2-(2-(ベンゾフラン-6カルボニル)-5,7-ジクロロ-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-6-カルボキシアミド)-3-(3-メチルスルホニル)フェニル)プロパノエート) (70.9 mmol)を、ジオキサンに溶解させ、水を添加した。この溶液を8℃に冷却した。45分間かけて、NaOH (0.5 M)を68.0 mmolまで添加した。2時間撹拌した後、ジオキサンをロータリーエバポレーターを使用して除去した。この水溶液をトルエンで2回抽出し、未反応の出発物質を除去した。水性相に酢酸エチルを添加し、激しい撹拌下でこの水性相をHCl(4 M水溶液)を用いてpH 2に酸性化した。撹拌した後、相を分離させ、水性相を酢酸エチルで抽出した。合わせた酢酸エチルフラクションを塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで無水にし、乾燥するまで蒸発させて、フォームを得た。このフォームは、HPLCで95%の純度であり、94.8%eeを有していた。このフォームをメチルエチルケトン(MEK)に溶解させ、種結晶(99%純度、99% ee)を添加すると、濃厚に結晶化した。24時間撹拌した後、懸濁液を濾過し、水で洗浄し、真空下で乾燥させた。式Iの収率は77%であり、純度は98.9%であり、光学純度は97.9% eeであった。追加の式Iの採取物(> 98%純度)が、母液を濃縮することによって得られた。
【0135】
実施例8
代替的なカップリング、脱保護、および精製プロセスを実施した。
【0136】
化合物18’を酢酸イソプロピルに溶解させ、温度を20~25℃に調節した。塩化チオニルを添加し、温度を10~15℃に調節した。N-メチルモルホリンを添加した。反応をHPLCにより監視した。化合物12を、水、メチルエチルケトン、およびN-メチルモルホリンに溶解させ、この混合物を15~20℃に冷却した。化合物18’の酸クロライド溶液をゆっくりと添加し、30分間撹拌した。反応をHPLCで監視した。化合物19の種晶を添加し、この混合物を1時間撹拌した後、溶媒の一部を真空下で蒸留した。この混合物を20~25℃に冷却し、2時間撹拌し、濾過した。濾過ケーキを酢酸イソプロピルで洗浄し、次いで、濾過ケーキを水中にスラリー化させ、濾過し、水で洗浄し、真空下40℃で乾燥させて、90%の収量を得た。
【0137】
化合物19を、アセトン、水、および水酸化テトラブチルアンモニウム(TBAH)と混合し、18~22℃で溶液になるまで撹拌した。2N水酸化ナトリウムをゆっくりと1時間かけて添加し、HPLCにより反応の完結が示されるまで25℃で撹拌した。この混合物を、真空下、30~35℃で蒸留してアセトンを除去した。得られた溶液を10℃に冷却し、15℃未満の温度に維持しながら4N HCl水溶液を添加して、pHを約2にした。 形成された懸濁液を、約1時間撹拌し、濾過し、濾過ケーキを水で洗浄した。この湿ったケーキを、アセトンおよび水(約2/1)中に懸濁させ、40~45℃に加温して溶液にした。この溶液を、10ミクロンのろ紙によって濾過した。この混合物を18~22℃に冷却した。種晶を添加し、混合物を12時間撹拌した。生成物を濾過により集め、30%含水アセトンで洗浄し、真空下、45~55℃にて乾燥させて、88%の生成物を得た。
【0138】
実施例9
式Iの粗化合物を、10容量倍のメチルエチルケトン中、撹拌しながら3日間再結晶させて、精製された式Iの化合物を60~65%の収率で得た。
【0139】
実施例10
式Iの粗化合物を、30%の含水アセトン、次いで1容量倍の水の中で24~36時間、再結晶させて、精製された式Iの化合物を73~77%の収率で得た。
【0140】
実施例10A
式Iの粗化合物を、30%の含水アセトン、次いで1容量倍の水の中で24~36時間、再結晶させ、濾過を複数回繰り返すことによって、精製された式Iの化合物を80~90%の収率で得た。得られた式Iの化合物には、メチルエチルケトンの残存が全く検出されなかった。
【0141】
実施例11
結晶形態II
【0142】
小スケールの合成
約50 mgの結晶形態Iを、50℃にてアセトン(2.5 mL)に溶解させた。この溶液を、予め加熱した容器に、濾過して入れた。非溶媒であるn-ヘプタンを添加し、この混合物を約5℃の冷蔵庫内に置いた。得られた固体を濾過し、真空下で乾燥させた。
【0143】
スケールアップ合成
約320 mgの形態Iをアセトン(15 mL)に溶解させた。この溶液を、予め加熱したガラス瓶に、濾過して入れた。次いで、n-ヘプタン(10 mL)を添加し、この混合物を、冷蔵庫内に30分間置いた。冷却された溶液に、形態IIの種晶を入れ、5℃にて12時間平衡状態に置いた。得られた固体を濾過し、真空下で乾燥させた。
【0144】
図6に示した形態IIのH-核磁気共鳴スペクトルは、化合物の構造および0.2 wt%のアセトンの存在を支持している。結晶形態IIは、図5に示した針状のモルフォロジーで、図4に示した粉末X線回折パターンを有している。形態IIのDSC分析は、アセトンおよび/または水の損失に起因するとみられる37.8℃で小さな吸熱を示し、図7に示したとおりの155.5℃での溶融転移を示す。形態IIのDSCサーモグラムで特定された熱変化は、高温顕微鏡観察による多形の分析からの観察結果と一致している。
【0145】
結晶形態IIの熱重量分析グラフを図8に示す。融解の際の水の遊離に起因する1.5質量%の質量損失、次いで、260℃での分解の開始が観察された。水分吸着重量分析により、形態IIが穏やかな吸湿性を有し、60%の相対湿度で3.0質量%の水を吸着し、90%の相対湿度で3.4質量%の水を吸着することが明らかとなった。形態IIの40%の相対湿度での水分含量は2.8質量%であり、この値は、この化合物の一水和物の理論水分含量(2.9質量%)に近い。カールフィッシャー滴定による形態IIの水分含量は、3.2質量%であり、化合物の一水和物の値に再び一致している。
【0146】
本明細書には本発明の選択された態様を明らかにし、記述したが、このような態様が実施例としてのみ提供されていることは当業者に明らかである。当業者であれば今や、本発明から逸脱することのない多くの変形、変更、および置換を想起することができる。本明細書に記載した本発明の態様に代わるさまざまな態様が、本発明の実施のために採用可能であることが理解されるべきである。添付の特許請求の範囲により本発明の範囲が規定され、この特許請求の範囲がこれらの請求項の範囲内の方法、構造、およびそれらの等価物を包含することが意図されている。
図1
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