(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-13
(45)【発行日】2022-01-25
(54)【発明の名称】SMS型不織ラミネート布
(51)【国際特許分類】
D04H 3/147 20120101AFI20220118BHJP
B32B 5/26 20060101ALI20220118BHJP
A61F 13/537 20060101ALI20220118BHJP
【FI】
D04H3/147
B32B5/26
A61F13/537 330
(21)【出願番号】P 2020126985
(22)【出願日】2020-07-28
(62)【分割の表示】P 2018560606の分割
【原出願日】2017-05-18
【審査請求日】2020-07-28
(32)【優先日】2016-05-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2016-05-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】102017003230.0
(32)【優先日】2017-04-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】516034957
【氏名又は名称】ファイバーテクス・パーソナル・ケア・アクティーゼルスカブ
(73)【特許権者】
【識別番号】505313830
【氏名又は名称】ライフェンホイザー・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング・ウント・コンパニー・コマンデイトゲゼルシャフト・マシイネンファブリーク
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハンセン モートン ライズ
(72)【発明者】
【氏名】ゾマー セバスチャン
(72)【発明者】
【氏名】ホワ ウォン クウァン
(72)【発明者】
【氏名】ウェイ タン ワン
【審査官】斎藤 克也
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-308868(JP,A)
【文献】特開2004-003096(JP,A)
【文献】国際公開第99/28544(WO,A1)
【文献】国際公開第02/061192(WO,A1)
【文献】特開2007-321293(JP,A)
【文献】国際公開第2007/088828(WO,A1)
【文献】特表2014-507252(JP,A)
【文献】国際公開第96/21562(WO,A1)
【文献】特表2002-529617(JP,A)
【文献】特公昭53-042827(JP,B2)
【文献】特開2002-069822(JP,A)
【文献】国際公開第2012/008169(WO,A1)
【文献】特開2007-099307(JP,A)
【文献】国際公開第02/18693(WO,A2)
【文献】米国特許出願公開第2004/0077247(US,A1)
【文献】国際公開第97/23267(WO,A1)
【文献】国際公開第99/49120(WO,A1)
【文献】米国特許第5810954(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0222755(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2002/0090499(US,A1)
【文献】特開2008-133572(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/53
A61L 13/537
B32B 1/00 - 43/00
D04H 1/00 - 18/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のスパンボンド不織
構造体と第2のスパンボンド不織
構造体との間に挟まれたメルトブローン不織
構造体を備えた
SMS型不織ラミネート布であって、
上記第1のスパンボンド不織構造体及び上記第2のスパンボンド不織構造体の各々は、1つ又は複数のスパンボンド不織層を含み、
上記メルトブローン不織構造体は、1つ又は複数のメルトブローン不織層を含み、
上記SMS型不織ラミネート布の上記スパンボンド不織層の少なくとも一
つが、捲縮された多成分繊維を
含み且つ密度が0.02~0.08g/cm
3である高ロフトスパンボンド不織層であり、
上記捲縮された多成分繊維は、サイドバイサイド型、偏心シースコア型、三葉型、セグメントパイ型、又は、島海型の配置を有する異なるポリマー成分の明確に区別された2つの領域を含む断面を有し、
上記捲縮された多成分繊維を含む上記高ロフトスパンボンド不織層は、上記メルトブローン不織構造体に隣接しており、
上記メルトブローン不織構造体の坪量は、上記SMS型不織ラミネート布全体の秤量の15%以下であり、
上記
SMS型不織ラミネート布が、
エンボス加工により接着されて
おり、
標準試験WSP80.6に基づいて得られた上記SMS型不織ラミネート布の水頭値(mm)を、上記メルトブローン不織構造体の坪量(g/m
2
)で割った値である、上記SMS型不織ラミネート布のメルトブローン能率は、100mm/(g/m
2
)を超えているSMS型不織ラミネート布。
【請求項2】
請求項1の
SMS型不織ラミネート布において、
上記SMS型不織ラミネート布の上記スパンボンド不織層の他の少なくとも1つは、捲縮されていない単一成分繊維から形成された普通のスパンボンド不織層であるSMS型不織ラミネート布。
【請求項3】
請求項1又は2の
SMS型不織ラミネート布において、
上記
SMS型不織ラミネート布の接着領域の割合が10~15%である
SMS型不織ラミネート布。
【請求項4】
請求項1
又は2の
SMS型不織ラミネート布において、
上記
SMS型不織ラミネート布の接着領域が、離散したドットによって構成され、且つ該ドットの面積が1~5mm
2、及
び、該ドットの直径が0.5~1.5mmである
SMS型不織ラミネート布。
【請求項5】
請求項4の
SMS型不織ラミネート布において、
上記
SMS型不織ラミネート布が、1cm
2当たり20~30個の上記ドットを含む
SMS型不織ラミネート布。
【請求項6】
請求項1
又は2の
SMS型不織ラミネート布において、
上記メルトブローン不織
構造体の坪量が4.0g/m
2未満である
SMS型不織ラミネート布。
【請求項7】
請求項1
又は2の
SMS型不織ラミネート布において、
上記メルトブローン不織
構造体の坪量が、
上記SMS型不織ラミネート布全体の坪量の5~15%である
SMS型不織ラミネート布。
【請求項8】
請求項1
又は2の
SMS型不織ラミネート布において、
上記メルトブローン不織構造体における上記メルトブローン不織層
の各々のメルトブローン繊維の平均直径が3.0μm未満である
SMS型不織ラミネート布。
【請求項9】
請求項1
又は2の
SMS型不織ラミネート布の製造方法であって、
(a)移動ベルト上にスパンボンド繊維を堆積させて
、1つ又は複数のスパンボンド不織層を含む上記第1のスパンボンド不織
構造体を形成し、
(b)上記第1のスパンボンド不織
構造体の表面上にメルトブローン繊維を堆積させて
、1つ又は複数のメルトブローン不織層を含む上記メルトブローン不織
構造体を形成し、
(c)上記メルトブローン不織
構造体の表面上にスパンボンド繊維を堆積させて
、1つ又は複数のスパンボンド不織層を含む上記第2のスパンボンド不織
構造体を形成し、
上記メルトブローン不織構造体に隣接する少なくとも1つの上記スパンボンド不織
層が、密度が0.02~0.08g/cm
3である高ロフトスパンボンド不織層であり
、
上記高ロフトスパンボンド不織層を形成する上記スパンボンド繊維の少なくとも一部が、捲縮された多成
分繊維であ
り、
上記捲縮された多成分繊維は、サイドバイサイド型、偏心シースコア型、三葉型、セグメントパイ型、又は、島海型の配置を有する異なるポリマー成分の明確に区別された2つの領域を含む断面を有するSMS型不織ラミネート布の製造方法。
【請求項10】
請求項1
又は2の
SMS型不織ラミネート布を備えた衛生製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1及び第2のスパンボンド不織層の間に挟まれたメルトブローン不織層を備えた不織ラミネート布に関する。本発明は、更に、そのような布の製造方法及びそのような布の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
スパンボンド(S)層の間に挟まれたメルトブローン(M)層を備えた不織布は、先行技術として公知であり、一般にSMS型の不織布と呼ばれる。これらの不織布は、尿や月経などの体液に対する高いバリア性を必要とする乳幼児用おむつ、女性用ナプキン、及び成人用失禁製品(成人用おむつ)等の衛生製品によく利用されている。SMS型の不織布では、S層が機械的特性及び表面の接触を担い、M層が主にバリア性を担う。
【0003】
スパンボンド不織布を製造するもっと最近の技術は、スパンボンド不織布を得るために捲縮された繊維が紡がれて移動ベルト上に置かれるいわゆる高ロフト技術である。得られるスパンボンド不織布は、繊維が捲縮されていることによって、線状繊維から製造される通常のスパンボンド不織布よりも高いロフト(嵩高さ)を有する。この高ロフトは、衛生産業にとっても望まれる高柔軟性をもたらす。米国特許第6454989号明細書に記載された高ロフトスパンボンド不織布では、メルトフローレートが異なる二成分の多成分繊維を使用して繊維の捲縮がなされている。欧州特許出願公開第2343406号明細書に記載された別の高ロフトスパンボンド不織布では、メルトフローレート及び融点は同程度であるが、Z平均分子量の重量平均分子量に対する比に差がある二成分の多成分繊維を使用して繊維の捲縮がなされている。欧州特許出願公開第1369518号に記載された更に別の高ロフトスパンボンド不織布では、一方の成分がホモポリマーであり、他方の成分がコポリマーである多成分繊維を使用して繊維の捲縮がなされている。
【発明の概要】
【0004】
本発明の目的は、優れた柔軟性及びバリア性の両方を備えた不織ラミネート布を提供することである。
【0005】
このような背景に対し、本発明は、第1のスパンボンド不織層と第2のスパンボンド不織層との間に挟まれたメルトブローン不織層を備え、上記スパンボンド不織層の少なくとも一方が、捲縮された多成分繊維を含む、又は、捲縮された多成分繊維のみを含む高ロフトスパンボンド不織層である不織ラミネート布に関する。
【0006】
メルトブローン不織層は布のコア部を構成し、上側及び下側のスパンボンド不織層はコア部の両面を覆う。このような布は、通常、SMS型の不織布と呼ばれ、SMS型、SMMS型、SSMS型、SSMMS型、及びSMMMS型等も包括する。MM二重層又はSS二重層は、異なる場所において異なる装置を使用して、メルトブローン繊維又はスパンボンド繊維を2段階で堆積して得られるが、本発明では、これらもそれぞれ1層のメルトブローン不織層又はスパンボンド不織層と理解される。MM二重層又はSS二重層内の2つのM領域又はS領域は、同一又は異なる構成、重量、及び特性を有してもよい。三重のMMM又はSSS層などについても同様の考え方を適用する。一実施形態では、第1及び第2のスパンボンド不織層は同一である。
【0007】
本発明では、捲縮された繊維を含むスパンボンド不織層は、そのスパンボンド不織層の間に挟まれた普通のメルトブローン繊維と組み合わされる。このような不織ラミネート布(積層体)は、高ロフトスパンボンド不織層の無い普通のSMS型の不織布の製品と比較して、柔軟性の点でもバリア性の点でも優れた性能を有し得ることが実験によってわかっている。
【0008】
一実施形態では、両方のスパンボンド不織層が、捲縮された多成分繊維を含む、又は、捲縮された多成分繊維のみを含む高ロフトスパンボンド不織層である。
【0009】
本発明は、それ自体が既知であるSMS型の不織布における、それ自体が既知である高ロフトスパンボンド不織布の単純な使用を超えている。実施例から明らかなように、高ロフトスパンボンド不織層がサンドイッチ構造で使用された場合、メルトブローン不織層の坪量当たりの液体バリア性として表される、メルトブローン不織層の液体バリア能率が高くなることが見出された。このことは、S層の性質がM層の液体バリア能率に影響することは予想外であるから、驚くべきことである。影響があるにしても、上記の逆のことが予想され得る。なぜなら、比較的平坦でない高ロフトのS層に積層された場合のM層の性質は、より平坦な普通のロフトのS層を基礎として積層された場合と比較して悪化すると考えることができるからである。原理によって制限されることは意図しないが、従来のSMS型の構造におけるメルトブローン不織層がより低いバリア性であるのは、不織ラミネート布全体の柔軟性が低いことに起因しているのかもしれない。柔軟性のない又は柔軟性の比較的低い不織ラミネート布が、液体バリア試験において変形したとき、又は、実際の使用の場合において更に顕著に変形したとき、その微細構造のいくつかが破壊し、その破壊個所で布の多孔性が局所的に増し、液体が、その前まで存在していなかった液体の経路ができるのかもしれない。捲縮されたスパンボンド繊維の構造のため、本発明の不織ラミネート布は、全体的に比較的高い柔軟性を有することができ、上記の原理によれば、それによって微細構造の破壊が少なくなり、従ってバリア性が向上する。
【0010】
Mの含有量が少ないことが、例えば不織ラミネート布の機械的挙動の観点から、有利であることを考えると、メルトブローン不織層の液体バリア能率が高い性質、すなわちM層の坪量(g/m2)が小さくても液体バリア性を維持できるという性質は、非常に魅力的である。
【0011】
上記の効果は、以下に記載される好ましい実施形態において特に強調されることがわかった。
【0012】
製造において、不織ラミネート布の層間の接着は、構造化カレンダーロールによる機械的接着によってなされる。カレンダーロールの表面構造は、不織ラミネート布に特定の接着パターンを与える。いわゆる接着領域では、不織ラミネート布は熱圧縮され、繊維は互いにしっかりと結合する。接着領域は離散しており、不織ラミネート布の残りの接着されていない領域と区別できる。接着パターンは、接着領域の形状、接着領域が離散していれば、表面における接着ドットの数、及び「接着面積」、すなわち布表面全体における接着領域の割合によって記述される。本発明の有利な効果を得るために、以下の実施形態に記載する設計が用いられる。
【0013】
一実施形態では、不織ラミネート布の接着面積は10~15%、好ましくは12~14%である。
【0014】
一実施形態では、接着領域は、離散して構成され、好ましくは円形のドット(丸い点)によって構成され、更に好ましくは該ドットの面積は1~5mm2又は1.5~3mm2であり、及び/又は、該ドットの直径は0.5~1.5mm又は0.7~1.0mmである。
【0015】
一実施形態では、不織ラミネート布は、1cm2当たりのドットの数が20~30個、好ましくは22~26個である。
【0016】
接着面積の小さいこれらの比較的隙間の開いた(オープン)接着パターンは、製品を柔軟にする。
【0017】
上述したように、本発明は、同じ液体バリア性を維持しながら、メルトブローン不織層の(絶対的及び相対的な)坪量を小さくすることを可能にする。不織ラミネート布の全体的な坪量を一定として、メルトブローン不織層の坪量がより小さいと機械的特性がより良好となるので、メルトブローン不織層の坪量はより小さいことが望ましい。以下の実施形態で示す不織ラミネート布は、このことを利用する。
【0018】
一実施形態では、メルトブローン不織層の坪量は4.0g/m2未満、好ましくは3.0g/m2未満、より好ましくは2.0g/m2未満である。それは0.5~4.0g/m2又は1.0~2.0g/m2であってもよい。布全体の坪量は、10~20g/m2であってもよく、好ましくは13~17である。
【0019】
一実施形態では、メルトブローン不織層の坪量は、布全体の坪量の5~15%、好ましくは8~12%を構成する。メルトブローン不織層の含有量は、布全体の坪量に対して正確に又はおよそ10%と少ないと、非常に良好な結果を与えることが分かった。
【0020】
本発明の文脈において更に分かることは、メルトブローン不織層の坪量をより小さくする場合において、所定の装置設定及び出力により、直径のより小さなメルトブローン繊維を製造することが可能であるということである。メルトブローン繊維の直径をより小さくすれば、他の布特性を損なうことなくバリア性に対する更なる有益な効果を得ることができる。
【0021】
一実施形態では、メルトブローン不織層のメルトブローン繊維の平均直径は3.0μm未満、好ましくは2.0μm未満、より好ましくは1.7μm未満である。例えば、メルトブローン不織層のメルトブローン繊維の平均直径は、0.8~3.0μmであってもよく、好ましくは1.0~2.0μmである。繊度は、0.5デニール未満であってもよく、好ましくは0.3デニール未満、より好ましくは0.2デニール未満である。
【0022】
高ロフトスパンボンド不織層の捲縮されたスパンボンド繊維の平均直径、及び普通のスパンボンド不織層の普通のスパンボンド繊維があれば、それらの平均直径は、15~20μmであってもよい。高ロフトスパンボンド不織層の捲縮されたスパンボンド繊維の繊度、及び普通のスパンボンド不織層の普通のスパンボンド繊維があれば、それらの繊度は、1.4~2.0デニールであってもよい。
【0023】
一実施形態では、高ロフトスパンボンド不織層の捲縮されたスパンボンド繊維の平均捲縮直径は、50~500μm、好ましくは60~150μm、より好ましくは80~125μmである。
【0024】
一実施形態では、高ロフトスパンボンド不織層の密度は、0.02~0.08g/cm3、好ましくは0.04~0.06g/cm3である。
【0025】
一実施形態では、捲縮された繊維は、多成分繊維であり、好ましくは二成分繊維、より好ましくはサイドバイサイド型又は偏心シースコア型の二成分繊維である。捲縮されたスパンボンド繊維を得るために、いわゆる多成分又はより具体的には二成分技術が使用される。二成分繊維では、繊維の断面に異なる2つの領域が存在する。これらは、サイドバイサイド型の構成又は偏心シースコア型の構成にすることができる。捲縮を生じさせるのに適した他の可能な繊維構成には、三葉型、セグメントパイ型、又は、島海型が含まれる。全ての繊維構成は、中実の構成であってもよく、又は、中空の構成であってもよい。一実施形態では、捲縮繊維は螺旋状に捲縮される。
【0026】
一実施形態では、繊維は、ポリオレフィン、好ましくはポリプロピレン、ポリエチレン又はポリプロピレン-ポリエチレンコポリマー、より好ましくはポリプロピレンを含むか又はそれのみで構成されている。
【0027】
二成分のスパンボンド繊維に捲縮を発生させるためには、特性の異なる2種のポリマーが必要である。その特性の違いは、例えば、2種のポリマーの多分散度(Mw/Mn)の差、2種のポリマーの融点の差、2種のポリマーの結晶化速度の差、2種のポリマーの弾性の差、又は2種のポリマーのメルトフローレート(MFR)の差によりもたらされ得る。一実施形態では、二成分繊維の2種のポリマーは多分散度が少なくとも1.2倍異なる。
【0028】
一実施形態では、二成分繊維中の異なる2種のポリマーの重量比は90/10未満、好ましくは80/20未満、より好ましくは70/30未満、更により好ましくは60/40~80/20未満である。これらの比は、繊維の代表的な長さに亘って平均化された断面の重量比として理解されるべきである。ポリプロピレンとポリプロピレン-ポリエチレンコポリマーとの組み合わせについては、30/70~90/10の比が好ましく、40/60~70/30の比がより好ましい。
【0029】
一実施形態では、不織ラミネート布は、全体的な坪量が少なくとも15g/m2であり且つメルトブローン不織層の坪量が2g/m2未満であるとき、標準試験WSP80.6に従って測定した場合、水頭値は、160mmより大きく、好ましくは180mmより大きく、より好ましくは190mmより大きい値を示す。
【0030】
一実施形態では、不織ラミネート布は、メルトブローン不織層の坪量が2g/m2未満であるとき、布全体の水頭値(mm)をメルトブローン不織層の坪量(g/m2)で割ったものとして定義されるメルトブローン能率は、100より大きな値を示し、好ましくは120より大きな値を示す。
【0031】
一実施形態では、不織ラミネート布は、全体的な坪量が少なくとも15g/m2であり且つメルトブローン不織層の坪量が2g/m2未満であるとき、標準試験WSP110.4に従って測定したときのマシン方向の引張強度が、15N/50mmより大きな値を示し、好ましくは17N/50mmより大きな値を示す。
【0032】
一実施形態では、不織ラミネート布は、全体的な坪量が少なくとも15g/m2であり且つメルトブローン不織層の坪量が2g/m2未満であるとき、標準試験WSP110.4に従って測定したときのクロスマシン方向の引張強度が、6N/50mmより大きな値を示し、好ましくは7N/50mmより大きな値を示す。
【0033】
一実施形態では、不織ラミネート布は、全体的な坪量が少なくとも15g/m2であり且つメルトブローン不織層の坪量が2g/m2未満であるとき、標準試験WSP110.4に従って測定したときのマシン方向の引張伸びが90%より大きな値を示す。
【0034】
一実施形態では、不織ラミネート布は、全体的な坪量が少なくとも15g/m2であり且つメルトブローン不織層の坪量が2g/m2未満であるとき、標準試験WSP110.4に従って測定したときのクロスマシン方向の引張伸びが120%より大きな値を示す。
【0035】
本発明は、更に、(a)移動ベルト上にスパンボンド繊維を堆積させて第1のスパンボンド不織層を形成し、(b)第1のスパンボンド不織層の表面上にメルトブローン繊維を堆積させてメルトブローン不織層を形成し、(c)メルトブローン不織層の表面上にスパンボンド繊維を堆積させて第2のスパンボンド不織層を形成する。そして、スパンボンド不織層の少なくとも1つ、好ましくは両方を、高ロフトスパンボンド不織層とし、移動ベルト上及び/又はメルトブローン不織層上に堆積されたスパンボンド繊維の少なくとも一部、好ましくは全てを、捲縮された多成分のスパンボンド繊維とする不織ラミネート布の製造方法に関する。
【0036】
高ロフトスパンボンド不織層を紡糸するために、溶融温度が250~265℃であることが好ましい。ダイス孔当たりの溶融物のスループット(通過量)は、0.4~0.8g/孔/分に設定することができる。クエンチ(急冷)空気温度は、18~22℃に設定することができる。クエンチキャビン(空冷室)の圧力は、3500~4000Paに設定することができる。繊維が散布器に入る直前のスピンチャンバの下部におけるガイドプレートの距離であるSASギャップは、19~21mmである。以上のような設定で、上述のポリマーを併せて用いることで、非常に良好な品質の螺旋状の捲縮された繊維が得られ、柔軟性及びバリア性の効果の向上が認められた。
【0037】
捲縮されたスパンボンド繊維を急冷して寝かせた後、繊維を圧縮ローラによってそっと固めることが重要である。本発明の範囲では、圧縮ローラの温度を50~90℃に設定し、圧縮ローラの線接触応力を5N/mm未満に設定することが有利であることがわかった。
【0038】
更に、本発明は、本発明の不織ラミネート布を含む衛生製品に関する。衛生製品としては、例えば、大人用失禁製品、乳児用おむつ、及び生理用ナプキンが挙げられる。衛生製品は、粒状吸収材料を更に含んでもよい。本発明の不織ラミネート布は、衛生製品のコアカバーの一部として機能させ、水不透過性フィルムに隣接して配置することができる。適切な粒状吸収材料は、超吸収性粒状物/ポリマー(SAP)を含む。コア材料は、粒状吸収材料を高含有率(例えば、50、60、又は70重量%より多く)で含んでもよく、又は、粒状吸収材料のみを含んでもよい。高含有率の粒状吸収材料及びそれより低含有率の例えばパルプ/セルロース繊維といった副成分を用いることで、より薄く且つより使用感の優れ、製品棚のスペース及び輸送コストが抑えられる製品をもたらす。しかしながら、粒状吸収材料がバックシートに晒される程度に大きいと、使用者には不快な感覚として知覚され得る。本発明の不織ラミネート布の高ロフトスパンドボンド層は、コアカバーとして使用されると、接触及び感触の改善に寄与し得る。コア部の粒状材料の含有率が高いことは、また、粒状吸収材料によってバックシートフィルムに穴が開く危険性を大きくする。本発明の高ロフトスパンボンド不織層を、吸収性のコア部とバックシートフィルムとの間に配置することで、そのように穴が開くことに耐性のある改良された特性をもたらし得る。
【0039】
衛生製品における他の適切な用途は、本発明の製品をバリアレッグカフとして使用することである。柔軟で可撓性があるが、高い水頭値を示す本発明の材料は、例えば、乳児用おむつ又は失禁用製品のような衛生製品におけるいわゆるバリアレッグカフとしての使用にとても適している。
【0040】
本発明の更なる詳細及び利点は、以下に説明する実施例及び図面を参照して説明される。以下に図面の説明を記載する。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態のSMS型の不織ラミネート布を製造するための装置の概略図である。
【
図2】
図2は、このような不織ラミネート布の高ロフトスパンボンド不織層に含まれるような捲縮された多成分繊維の一部を示す概略図である。
【
図3】
図3は、二成分繊維の異なる可能な構成の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
図1は、本発明のSMS型の不織ラミネート布を製造するための装置を示す。具体的には、この装置は、S
HMMS
H型の不織ラミネート布を製造するように構成されている。この装置は、主な構成として、移動ベルト1と、第1の高ロフトスパンボンド不織層を形成するための第1の紡績機2と、第1のメルトブローン不織層を形成するための第1のメルトブローン形成装置3と、第2のメルトブローン不織層を形成するための第2のメルトブローン形成装置4と、第2の高ロフトスパンボンド不織層を形成するための第2の紡績機5とを備えている。両紡績機2,5は、それぞれ2つずつあるポリマーリザーバ2a,2b及び5a,5bにより、二成分繊維を製造するように構成されている。各紡績機2,5の下流には、予圧ローラ6,7がそれぞれ設けられている。装置2~5及び予圧ローラ6,7の下流には、不織ラミネート布の層を互いに強固に接着するためのカレンダーロール8が設けられている。参照番号9は、両紡績機2,5のSASギャップを示す。
【0043】
図2は、本発明の不織ラミネート布の高ロフトスパンボンド不織層に存在する捲縮されたエンドレス繊維の一部を示す概略図である。捲縮された繊維の一部は、特定の捲縮半径を有する円を形成し、これによって特定の捲縮面積が決まる。捲縮面積は、例えば、約80~125μmの捲縮半径に対応して20000~50000μm
2とすることができる。
【0044】
図3は、二成分繊維の可能な異なる構成の概略図を示す。繊維は、第1及び第2のポリマー成分を含み、これらは繊維の断面内の別々の明確に区別される領域に配置され、繊維の長さ方向に沿って連続的に延びている。
図3(a)は、サイドバイサイド型の配置を示している。
図3(b)は、偏心シース/コア型の配置を示しており、一方の成分が他方の成分を完全に取り囲むが、繊維の捲縮を可能にするために繊維内に非対称に配置されている。繊維は、
図3(c)及び
図3(d)に示すように、中空であってもよく、又は
図3(e)に示すように多葉型であってもよい。
【実施例】
【0045】
本発明の不織ラミネート布の有利な特性を実証するために、
図1に示すような装置で多数のS
HMMS
H型の不織ラミネート布を製造した。S
Hは、螺旋状に捲縮されたサイドバイサイド型の二成分繊維の高ロフトスパンボンド不織層を表す。すべての不織ラミネート布は、スパンボンド-メルトブローン装置(Reicofil)を使用して製造した。スパンボンド紡糸口金は1メートル当たり約5000個の孔を有していた。メルトブローン紡糸口金は、1インチあたり35~42個の孔を有する一列のダイス(Reicofil(登録商標)Single Row Technology)であった。以下の表1は、異なる不織ラミネート布の構成の概要を示す。
【0046】
【0047】
例A~Dは、比較例である。
【0048】
例Aは、メルトブローン不織層が無く、捲縮されていない繊維をベースとする普通の15g/m2のSS型の不織布である。カレンダーの設定は、接着領域が楕円状で接着面積が18.8%となるようにした。S層の坪量は7.5g/m2である。S層には、MFRが25のPPポリマーのSabic 511Aを用いた。
【0049】
例Bは、カレンダーの設定を、接着面積が13.6%で且つ1cm2当たり24個のドットを有するようなオープンドット接着を得るようにしたことを除いて、例Aと同様である。各接着点は円形であり、その直径は0.85mmであった。
【0050】
例Cは、メルトブローン不織層が無く、螺旋に捲縮された繊維を含む高ロフトスパンボンド不織層をベースとする17g/m2のSHSH型のスパンボンド不織布である。各S層の坪量は8.5g/m2である。SH層の螺旋状に捲縮された繊維は、50/50の関係で且つサイドバイサイド型の配置で二種の異なるポリマーを含む。一方には、Sabic 511Aを使用した。他方には、MFRが25のPP/PEランダムコポリマーのMolplen RP248Rを使用した。接着は比較例Bと同様である。
【0051】
例Dは、捲縮されていない繊維をベースとする15g/m2のSMMS型の不織布である。2つのメルトブローン不織層は、それぞれ1.0g/m2である。各S層の坪量は6.5g/m2である。接着は例B及びCと同様である。M層には、MFRが800のPPポリマーのBorealis HL708FBを使用した。M層を製造する際の設定は以下の通りである:ダイス温度:280℃;空気温度275℃;気流:3200m3/h;ダイスと紡績ベルト(spinbelt)との間の距離:98mm。
【0052】
例1~6は発明例である。
【0053】
例1は、螺旋状に捲縮された繊維を有し且つメルトブローン繊維の2層を挟んだ高ロフトスパンボンド不織層をベースとする15g/m2のSHMMSH型のスパンボンドの不織ラミネート布である。SH層の螺旋状に捲縮された繊維は例Cと同様であった。M層には、例Dと同様に、Borealis HL708FBを使用した。各SH層の坪量は6.6g/m2である。各M層の坪量は0.9g/m2である。M層を作製する際の設定は、例Dと同様であった。接着は例B、C、及びDと同様であった。
【0054】
例2は、SH層及びM層の重量が異なることを除いて、例1と同様である。各SH層の坪量は6.7g/m2であり、各M層の坪量は0.8g/m2である。
【0055】
例3は、SH層及びM層の重量が異なることを除いて、例1及び例2と同様である。各SH層の坪量は6.8g/m2であり、各M層の坪量は0.7g/m2である。
【0056】
例4~6は、全体の坪量が異なること、すなわち、各層の坪量が異なることを除いて、例1~3と同様である。例4~6のすべてにおいて、全体の坪量は17g/m2である。例4では、各SH層の坪量は7.6g/m2であり、各M層の坪量は0.9g/m2である。例5では、各SH層の坪量は7.7g/m2であり、各M層の坪量は0.8g/m2である。例6では、各SH層の坪量は7.8g/m2であり、各M層の坪量は0.7g/m2である。
【0057】
例D及び例1~3のそれぞれのスパンボンド繊維及びメルトブローン繊維の両方について繊維サイズを決定するために、各例のサンプルを、装置としてPhenom ProXを用いるとともに、評価用ソフトウェアとしてFibermetric v2.1を用いて走査型電子顕微鏡(SEM)によって分析した。S層の繊維には400倍の倍率を適用し、M層の繊維には3000倍の倍率を適用した。各例におけるスパンボンド繊維及びメルトブローン繊維のそれぞれにつき、100個のデータポイントで測定した。結果を以下の表2に示す。
【0058】
【0059】
例D及び例1~6において、全ての処理の設定は同じである。メルトブローン繊維のレベルのみが異なる。例Dでは、そのレベルは各M層につき1g/m2である。例1~3では、レベルは各M層につき、それぞれ0.9g/m2、0.8g/m2、及び0.7g/m2である。例4~6においても、レベルは各M層につき、それぞれ0.9g/m2、0.8g/m2、及び0.7g/m2である。
【0060】
この結果から、他のパラメータを一定としたとき、特に一定の気流の下において、メルトブローン不織層の坪量のレベル低下は、繊維直径が小さくなることにつながることがわかる。それぞれ1.0g/m2のレベルを有する例Dの平均直径は1.71μmであり、例1~3の組(1.689μm、1.55μm、1.35μm)においてそれぞれ0.9g/m2、0.8g/m2、及び0.7g/m2とレベルが減少するに従ってわずかに小さくなる。
【0061】
例A~D及び例1~6のそれぞれについて、物理的性質の異なる試験を行った。
【0062】
標準試験WSP80.6に従って、水頭特性の試験を実施した。この試験では、試験ヘッドリザーバをカバーするように不織布を取り付ける。次いで、不織布の外面に漏れが現れるまで、一定速度で上昇する標準化された水圧に布に晒す。静水圧試験の試験結果は、最初の液滴が試験片上の3つの別々の領域に現れる点で測定される。使用した水圧の上昇速度(水柱の高さ)は60±3cmH2O/minであった。使用した試験ヘッドは100cm2の試験ヘッドであった。試験結果の読み取りは、試験片の表面に3つの液滴が現れたときに行った。ミリメートル単位で得られた圧力(水柱の高さ)を測定した。
【0063】
マシン方向の引張強度(TSMD)、マシン方向の引張伸び(TEMD)、クロスマシン方向の引張強度(TSCD)、及びクロスマシン方向の引張伸び(TECD)は、標準試験WSP110.4に従って測定した。
【0064】
布厚さは、標準試験WSP120.6に従って測定した。
【0065】
結果を以下の表3に示す。
【0066】
【0067】
例Aの伝統的なスパンボンド繊維のみのSS型の不織布は、捲縮されていない繊維をベースとし、18.8%の接着面積で接着されたものであるが、例B~Cのスパンボンド繊維のみのSS型の不織布よりも、TSMD及びTSCDについて高い値を示した。一方、例Aの引張伸びは、例B~Cの引張伸びよりも低い。例Aのこれらの2つの結果は、捲縮されていない繊維と大きな接着面積との組み合わせの適用に起因すると考えられる。
【0068】
例Aの水頭は90.4mmと測定され、これは比較的低い値である。このことは、柔軟性がほとんど無く、堅くてもろい材料によるものと考えられ、引張伸びが低いことともつじつまが合っている。そして、このことは、もちろんM層が無いことによる。例Bは、111mmのより高い水頭値を示す。これは、引張伸びにも見られるように、材料がより柔軟であるためであると考えられる。例Cは、更に高い水頭値の117mmを示す。これは、螺旋状に捲縮された個々の繊維がより柔軟であるためであると考えられる。このことは、水頭上でのオープンドット接着の有利な効果を強調している。
【0069】
例Dは、メルトブローン不織層を含むので、それ以外の点では同様である例Bよりもはるかに高い水頭値(167mm)を示している。引張強さ及び引張伸びの特性は、スパンボンド材料がメルトブローン材料に置き換えられていることにより低くなっている。
【0070】
例1~3のすべては、例Dと比較して、メルトブローン含有量が実際にはより低い(従って引張強さがより高い)が、かなり高い水頭値を示している。例Dと比較した場合における例1~3の水頭値が著しく高いという効果は、螺旋状に捲縮された個々の繊維の高い柔軟性がオープンドット接着と組み合わせられたことに起因していると考えられる。更に、例1~3を互いに比較すると、メルトブローン含有量が少なくなるにつれて水頭値がわずかに高くなることがわかる。この効果は、表2に示されているように、他のパラメータを一定としたとき、特に一定の気流の下において、メルトブローン不織層の坪量のレベルが低くなると、メルトブローン繊維の平均直径がより小さくなることに起因すると考えられる。
【0071】
同様の傾向は、例1~3の不織ラミネート布と比較してスパンボンド不織層の坪量(すなわち含有量)が高いこと以外が同様である例4~6の不織ラミネート布についてもみられる。
【0072】
得られた上記の結果の最も重要な点についての概要を、以下の表4に示す。表4には、不織ラミネート布の水頭値(mm)を不織ラミネート布の全体のメルトブローン不織層の坪量(g/m2)で割った、個々の不織ラミネート布の「メルトブローン能率」値も追加で計算している。
【0073】
【0074】
表4によれば、例1~6の本発明の不織ラミネート布におけるメルトブローン不織層のメルトブローン能率の値は、100mm/(g/m2)を超えており、そしてこれを大きく上回っているものもある。これに対して、比較例Dは、100mm/(g/m2)を大きく下回っている。メルトブローン含有量が低いことが、不織ラミネート布の機械的挙動、柔軟性、及びコストの観点から有利であり得ることを考慮すると、本発明の不織ラミネート布が示す高いメルトブローン能率は非常に望ましい。
【0075】
実施例の結果からわかることを要約すると、本発明の不織ラミネート布を用いることにより、外側の高ロフトスパンボンド不織層による非常に望ましい柔軟性が得られる。そして同時に、水頭値として測定されるバリア性は、メルトブローン含有量が同じか又はより高い従来のSMS型の構造と比較して、より高いことが分かった。