(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-13
(45)【発行日】2022-01-25
(54)【発明の名称】半径流入式タービン及びターボチャージャー
(51)【国際特許分類】
F02B 37/24 20060101AFI20220118BHJP
F02B 39/00 20060101ALI20220118BHJP
F01D 17/16 20060101ALI20220118BHJP
【FI】
F02B37/24
F02B39/00 D
F01D17/16 A
(21)【出願番号】P 2020503173
(86)(22)【出願日】2018-02-28
(86)【国際出願番号】 JP2018007575
(87)【国際公開番号】W WO2019167181
(87)【国際公開日】2019-09-06
【審査請求日】2020-08-18
(73)【特許権者】
【識別番号】316015888
【氏名又は名称】三菱重工エンジン&ターボチャージャ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】誠真IP特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】吉田 豊隆
(72)【発明者】
【氏名】グプタ ビピン
(72)【発明者】
【氏名】段本 洋輔
(72)【発明者】
【氏名】秋山 洋二
【審査官】小関 峰夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-129970(JP,A)
【文献】特開2010-180811(JP,A)
【文献】特開2011-106276(JP,A)
【文献】特開2013-253521(JP,A)
【文献】特開2015-229989(JP,A)
【文献】実開平01-066402(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2011/0243721(US,A1)
【文献】国際公開第2012/043125(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 37/00
F02B 39/00
F01D 17/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スクロール流路と、
前記スクロール流路の径方向内側に設けられるタービンホイールと、
前記スクロール流路と前記タービンホイールとの間の径方向位置にて、前記スクロール流路から前記タービンホイールに向かう流路上に設けられる複数の可変ノズルベーンと、
複数の前記可変ノズルベーンの各々を回動可能に支持するノズルマウントと、
前記ノズルマウントに対向して配置され、前記ノズルマウントとともに前記流路を形成するノズルプレートと、
前記複数の可変ノズルベーンの径方向外側において、前記可変ノズルベーンのベーン高さよりも小さい高さ範囲にて前記ノズルプレートに設けられたスワール生成部材と、
を備え、
前記スワール生成部材における前記ノズルマウント側の端部の位置が、軸方向において、前記可変ノズルベーンにおける前記ノズルマウント側の端部の位置よりも前記ノズルマウントから離れて
おり、
前記スワール生成部材は、前記複数の可変ノズルベーンのうち、該スワール生成部材によって生成される渦が作用する一つの可変ノズルベーンに対して、低開度状態における前記一つの可変ノズルベーンのコードを通る直線に沿った方向に関して前記流路の上流側に設けられる
ことを特徴とする半径流入式タービン。
【請求項2】
前記スワール生成部材は、前記流路に向かって突出する凸状に形成される
請求項1に記載の半径流入式タービン。
【請求項3】
前記スワール生成部材は、前記タービンホイールの回転軸方向に沿って前記可変ノズルベーンの1/4以下の高さを有する
請求項2に記載の半径流入式タービン。
【請求項4】
前記スワール生成部材は、前記流路から後退する凹状に形成される
請求項1に記載の半径流入式タービン。
【請求項5】
前記スワール生成部材は、前記可変ノズルベーンの枚数をnとして、
前記低開度状態における前記可変ノズルベーンのコードの前記流路の上流側への延長線と、前記スワール生成部材の半径方向位置との交点を基準に±(360°/n)/2の範囲に配置される
請求項1~4の何れか一項に記載の半径流入式タービン。
【請求項6】
前記ノズルプレートに加締められ、前記流路に向けて突設されたサポートピンをさらに備え、
前記スワール生成部材は、前記タービンホイールの前記径方向において前記サポートピンより外側に配置される
請求項1~5の何れか一項に記載の半径流入式タービン。
【請求項7】
前記スワール生成部材が翼型に形成された
請求項1~6の何れか一項に記載の半径流入式タービン。
【請求項8】
前記可変ノズルベーンは、ハブ側に配置された前記ノズルマウントに支持されている
請求項1~7の何れか一項に記載の半径流入式タービン。
【請求項9】
前記可変ノズルベーンは、シュラウド側に配置された前記ノズルマウントに支持されている
請求項1~7の何れか一項に記載の半径流入式タービン。
【請求項10】
前記スワール生成部材は、前記複数の可変ノズルベーンの前記低開度状態において、前記一つの可変ノズルベーンに対して周方向にて隣り合う他の可変ノズルベーンが占める周方向範囲内に位置する
請求項1~9の何れか一項に記載の半径流入式タービン。
【請求項11】
請求項1~
10の何れか一項に記載の半径流入式タービンと、
前記半径流入式タービンにより駆動されるコンプレッサと、
を備えたターボチャージャー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半径流入式タービン及びターボチャージャーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車用のターボチャージャー等では、各種エンジンから排出される排出エネルギーの動力回収が行われており、エンジンから排出された中低温、高温、低圧又は高圧の作動流体から回収したエネルギーが回転動力に変換されて過給に用いられる。このような排出エネルギーの動力回収に用いられるタービンは種々開示されており、例えば、特許文献1には、可変容量型過給機におけるタービンハウジング内のタービンスクロール流路とタービンインペラとの間に配設される可変ノズルユニットが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のような可変ノズルベーンを備えた半径流入式タービンにおいては、スクロール流路からタービンホイールに向かう流路を形成するノズルマウント及びノズルプレートと、これらの間に配置される可変ノズルベーンの低開度状態における軸方向端面との隙間を通る所謂クリアランスフローにより、タービン効率が低下する場合があることが知られている。この点、上記特許文献1では、このようなクリアランスフローによるタービン効率の低下への対策について何ら開示されていない。
【0005】
上述した問題に鑑み、本発明の少なくとも一実施形態は、高開度状態において流路に与える影響を抑制しつつ低開度状態におけるタービン効率の低下を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明の少なくとも一実施形態に係る半径流入式タービンは、
スクロール流路と、
前記スクロール流路の径方向内側に設けられるタービンホイールと、
前記スクロール流路と前記タービンホイールとの間の径方向位置にて、前記スクロール流路から前記タービンホイールに向かう流路上に設けられる複数の可変ノズルベーンと、
複数の前記可変ノズルベーンの各々を回動可能に支持するノズルマウントと、
前記ノズルマウントに対向して配置され、前記ノズルマウントとともに前記流路を形成するノズルプレートと、
前記複数の可変ノズルベーンの径方向外側において、前記可変ノズルベーンのベーン高さよりも小さい高さ範囲にて前記ノズルプレートに設けられたスワール生成部材と、
を備え、
前記スワール生成部材における前記ノズルマウント側の端部の位置が、軸方向において、前記可変ノズルベーンにおける前記ノズルマウント側の端部の位置よりも前記ノズルマウントから離れている。
【0007】
本発明者らの鋭意研究により、可変ノズルベーンを備えた半径流入式タービンにおいて、特に、可変ノズルベーンが回動軸を介して片持ちで支持される場合、回動軸が存在しない可変ノズルベーンとノズルプレートとの隙間には、回動軸が存在する可変ノズルベーンとノズルマウントとの隙間よりも多くのクリアランスフローが流入することが判明した。
この点に関し、上記(1)の構成によれば、可変ノズルベーンの径方向外側すなわち上流側においてノズルプレートに設けられたスワール生成部材により、該スワール生成部材の径方向内側すなわち下流側の流路ではノズルプレート側に渦が形成され、この渦によって可変ノズルベーンの圧力面と負圧面との圧力差を低減することができる。これにより、可変ノズルベーンとノズルプレートとの隙間を通るクリアランスフローを効果的に低減することができるから、低開度状態におけるタービン効率の低下を効果的に抑制することができる。さらに、スワール生成部材におけるノズルマウント側の端部の位置が、軸方向において、可変ノズルベーンにおけるノズルマウント側の端部の位置よりもノズルマウントから離れていることにより、スクロール流路からタービンホイールに向かう流路に占めるスワール生成部材の断面積を可能な限り小さく構成することができるから、高開度状態において流路に与える影響を低く抑えつつ、低開度状態におけるタービン効率の低下を抑制できるという本開示に特有の効果を享受することができる。
【0008】
(2)いくつかの実施形態では、上記(1)に記載の構成において、
前記スワール生成部材は、前記流路に向かって突出する凸状に形成される。
【0009】
上記(2)の構成によれば、ノズルプレートから流路に向かって突出する凸状のスワール生成部材により、該スワール生成部材の下流側の流路におけるノズルプレート側に効果的に渦を形成し得る半径流入式タービンを簡易な構成で得ることができる。
【0010】
(3)いくつかの実施形態では、上記(2)に記載の構成において、
前記スワール生成部材は、前記タービンホイールの回転軸方向に沿って前記可変ノズルベーンの1/4以下の高さを有する。
【0011】
上記(3)の構成によれば、スワール生成部材の下流側の流路におけるノズルプレート側に簡易な構成で効果的に渦を形成することができるほか、ノズルマウントとノズルプレートとで形成される流路に占めるスワール生成部材の断面積を極力小さく構成することができるから、低開度状態以外の開度(高開度状態を含む)における流路への影響を極力抑制しつつ、低開度状態におけるタービン効率の低下を効果的に抑制することができる。
【0012】
(4)いくつかの実施形態では、上記(1)に記載の構成において、
前記スワール生成部材は、前記流路から後退する凹状に形成される。
【0013】
上記(4)の構成によれば、上記(1)に記載の構成と同様の効果が得られるほか、ノズルマウントとノズルプレートとで形成される流路に占めるスワール生成部材の断面積を最小に構成することができるから、低開度状態以外の開度(高開度状態を含む)における流路への影響を大幅に抑制しつつ、低開度状態におけるタービン効率の低下を効果的に抑制することができる。
【0014】
(5)いくつかの実施形態では、上記(1)~(4)の何れか一つに記載の構成において、
前記スワール生成部材は、前記可変ノズルベーンの枚数をnとして、低開度状態における前記可変ノズルベーンのコードの前記流路の上流側への延長線と、前記スワール生成部材の半径方向位置との交点を基準に±(360°/n)/2の範囲に配置される。
【0015】
上記(5)の構成によれば、生成された渦が低開度状態における複数の可変ノズルベーンの各々に対して適切に作用し得る位置にスワール生成部材を配置することができる。よって、各可変ノズルベーンとノズルプレートとの隙間を通るクリアランスフローをより一層効果的に低減することができる。
【0016】
(6)いくつかの実施形態では、上記(1)乃至(5)の何れか一つに記載の構成において、
前記ノズルプレートに加締められ、前記流路に向けて突設されたサポートピンをさらに備え、
前記スワール生成部材は、前記タービンホイールの前記径方向において前記サポートピンより外側に配置される。
【0017】
一般に、半径流入式タービンにおいて流路側に突出するサポートピンは、ノズルプレートにおける流路側の端面を、例えばフライス加工等により平滑に加工した後、該ノズルプレートに加締められて取り付けられる。その際、タービンホイールの径方向においてサポートピンの取り付け位置を含む領域に加工が施される場合がある。この点、上記(6)の構成によれば、サポートピンの配置に際してノズルプレートにおける流路側の端面の加工を阻害することなく、上記(1)~(5)の何れか一つで述べた効果を享受することができる。
【0018】
(7)幾つかの実施形態では、上記(1)~(6)の何れか一つに記載の構成において、
前記スワール生成部材が翼型に形成される。
【0019】
上記(7)の構成によれば、翼型に形成されたスワール生成部材により、流路を通過する作動流体の流れに対する影響を抑制しつつ、下流側の流路のノズルプレート側に、可変ノズルベーンとノズルプレートとの隙間を通るクリアランスフローを抑制するのに必要な渦を容易に生成することができる。
【0020】
(8)いくつかの実施形態では、上記(1)~(7)の何れか一つに記載の構成において、
前記可変ノズルベーンは、ハブ側に配置された前記ノズルマウントに支持されている。
【0021】
上記(8)の構成によれば、ノズルマウントがハブ側に配置された半径流入式タービンにおいて、上記(1)~(7)の何れか一つで述べた効果を享受することができる。
【0022】
(9)いくつかの実施形態では、上記(1)~(7)の何れか一つに記載の構成において、
前記可変ノズルベーンは、シュラウド側に配置された前記ノズルマウントに支持されている。
【0023】
上記(9)の構成によれば、ノズルマウントがシュラウド側に配置された半径流入式タービンにおいて、上記(1)~(7)の何れか一つで述べた効果を享受することができる。
【0024】
(10)本発明の少なくとも一実施形態に係るターボチャージャーは、
上記(1)乃至(9)の何れか一つに記載の半径流入式タービンと、
前記半径流入式タービンにより駆動されるコンプレッサと、
を備える。
【0025】
上記(10)の構成によれば、上記(1)で述べたように、可変ノズルベーンとノズルプレートとの隙間を通るクリアランスフローを効果的に低減することで低開度状態におけるタービン効率の低下を効果的に抑制することができ、且つ、高開度状態において流路に与える影響を必要最小限に抑えつつ、低開度状態におけるタービン効率の低下を抑制できる半径流入式タービンを備えたターボチャージャーを得ることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明の少なくとも一実施形態によれば、高開度状態において流路に与える影響を抑制しつつ低開度状態におけるタービン効率の低下を効果的に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】一実施形態に係るターボチャージャーの構成を示す概略図である。
【
図2】一実施形態に係る半径流入式タービンを示す概略図である。
【
図3】一実施形態におけるスワール生成部材の構成例を示す図であり、(a)は流路に向けて凸状、(b)は流路に向けて凹状に形成された様子を示す。
【
図4】一実施形態におけるノズルベーン(低開度状態)を示す概略図である。
【
図5】一実施形態におけるノズルベーン(高開度状態)を示す概略図である。
【
図6】一実施形態におけるノズルベーンの軸方向端面を流れるクリアランスフローを示す図である。
【
図7】一実施形態に係る半径流入式タービンと比較例とのタービン流量と出力との関係を示す概略図である。
【
図8】他の実施形態に係るノズルベーン及びスワール生成部材の配置を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0029】
図1は、一実施形態に係るターボチャージャー(過給機)の構成を示す概略図である。
図2は、一実施形態に係る半径流入式タービンを示す概略図である。
図3は、一実施形態におけるスワール生成部材の構成例を示す図であり、(a)は流路に向けて凸状、(b)は流路に向けて凹状に形成された様子を示す。
図1及び
図2に示すように、幾つかの実施形態に係るターボチャージャー1は、半径流入式タービン2と、該半径流入式タービン2によって駆動されるコンプレッサ3と、を備えている。
【0030】
半径流入式タービン2は、ピストン101及びシリンダ(図示省略)を備えたエンジン100の排気側に配置されており、エンジン100からの排気エネルギーを利用して回転駆動される。コンプレッサ3は、エンジン100の給気側に配置されており、タービン軸5(回転軸)を介して半径流入式タービン2と同軸回転可能に連結されている。そして、エンジン100の排気を作動流体として半径流入式タービン2が回転されると、その回転力を用いてコンプレッサ3が回転し、エンジン100内に給気(過給)を行うようになっている。
【0031】
図2に示すように、一実施形態に係る半径流入式タービン2(タービン)は、上記タービン軸5を中心軸として回転可能なタービンホイール22と、該タービンホイール22を格納するハウジング21(タービンハウジング)とを備えている。
タービンホイール22は、回転軸の周方向に沿って放射状に形成された複数の動翼22Aを有している。
ハウジング21は、スクロール部21A、および、該スクロール部21Aからタービンホイール22の径方向の内側に向かう作動流体の流れをタービンホイール22の軸方向Xに沿った向きに変向するためのベンド部21Bを有する。
【0032】
そして、本発明の少なくとも一実施形態に係る半径流入式タービンは、スクロール流路26と、スクロール流路26の径方向内側に設けられるタービンホイール22と、スクロール流路26とタービンホイール22との間の径方向位置にて、スクロール流路26からタービンホイール22に向かう流路26A上に設けられる複数の可変ノズルベーン23と、複数の可変ノズルベーン23の各々を回動可能に支持するノズルマウント24と、ノズルマウント24に対向して配置され、ノズルマウント24とともに流路26Aを形成するノズルプレート25と、複数の可変ノズルベーン23の径方向外側において、可変ノズルベーン23のベーン高さH(
図3(a)参照)よりも小さい高さ範囲にてノズルプレート25に設けられたスワール生成部材30と、を備えている。
【0033】
複数の可変ノズルベーン23は、流路26Aにおいてタービンホイール22の周方向に沿って間隔を隔てて配置されており、各々が、軸方向Xに沿う回動軸23Aを介してノズルマウント24に回動自在に支持されており、低開度状態(例えば、
図4参照)と高開度状態(例えば、
図5参照)との間で開度を調節できるようになっている。
スワール生成部材30は、可変ノズルベーン23よりも径方向の外側に配置されている。このスワール生成部材30におけるノズルマウント24側端部30Aの位置は、軸方向Xにおいて、可変ノズルベーン23におけるノズルマウント24側の端部23Dの位置よりもノズルマウント24から離れて配置されるように構成されている。
【0034】
ここで、可変ノズルベーン23を備えた半径流入式タービン2においては、スクロール流路26からタービンホイール22に向かう流路26Aを形成するノズルマウント24及びノズルプレート25と、これらの間に配置される可変ノズルベーン23の低開度状態における軸方向端面23Cとの隙間を通る所謂クリアランスフローF2により、タービン効率が低下することが知られている。特に、可変ノズルベーン23が回動軸23Aを介して片持ちで支持される場合、回動軸23Aが存在しない可変ノズルベーン23とノズルプレート25との隙間には、回動軸23Aが存在する可変ノズルベーン23とノズルマウント24との隙間よりも多くのクリアランスフローF2が流入する。
【0035】
この点、上記の構成によれば、タービンホイール22の径方向において可変ノズルベーン23の外側すなわち流路26Aの上流側においてノズルプレート25に設けられたスワール生成部材30により、上記径方向における該スワール生成部材30の内側すなわち下流側の流路26Aでは、例えば、
図6(a)に示すようにノズルプレート25側に渦Sが形成され、この渦Sによって可変ノズルベーン23の圧力面(正圧面)23Aと負圧面23Bとの圧力差を低減することができる。これにより、可変ノズルベーン23とノズルプレート25との隙間を通るクリアランスフローF2を効果的に低減することができるから、スワール生成部材30を設けない比較例(例えば、
図6(b)参照)に比べて低開度状態におけるタービン効率の低下を効果的に抑制することができる。さらに、スワール生成部材30におけるノズルマウント24側の端部30Aの位置が、軸方向Xにおいて、可変ノズルベーン23におけるノズルマウント24側の端部23Dの位置よりもノズルマウント24から離れていることにより、スクロール流路26からタービンホイール22に向かう流路26Aに占めるスワール生成部材30の断面積を可能な限り小さく構成することができるから、高開度状態において流路26Aに与える影響を低く抑えつつ、低開度状態におけるタービン効率の低下を抑制できる(例えば、
図7参照)という本開示に特有の効果を享受することができる。
【0036】
いくつかの実施形態では、上記の構成において、スワール生成部材30は、流路26Aに向かって突出する凸状に形成されていてもよい(例えば、
図2及び
図3(a)参照)。すなわち、スワール生成部材30は、ノズルプレート25から流路26Aに突出し、該流路26Aにおいて所定の断面を占めるように構成され得る。凸状の場合の形状は特に限定されず、流路26Aにおけるノズルプレート25側に適切な渦を形成し得るものであればよい。このように構成すれば、ノズルプレート25から流路26Aに向かって突出する凸状のスワール生成部材30により、該スワール生成部材30の下流側の流路におけるノズルプレート25側に効果的に渦Sを形成し得る半径流入式タービン2を簡易な構成で得ることができる。
【0037】
いくつかの実施形態では、上記構成において、スワール生成部材30は、タービンホイール22の回転軸X方向に沿って可変ノズルベーン23のベーン高さHの1/4以下の高さhを有していてもよい(
図3(a)参照)。さらに、スワール生成部材30は、タービンホイール22の回転軸X方向に沿って可変ノズルベーン23の1/5程度の高さに形成されていてもよい。
【0038】
上記構成によれば、スワール生成部材30の下流側の流路26Aにおけるノズルプレート25側に簡易な構成で効果的に渦Sを形成することができるほか、ノズルマウント24とノズルプレート25とで形成される流路26Aに占めるスワール生成部材30の断面積を極力小さく構成することができるから、低開度状態以外の開度(高開度状態を含む)における流路26Aへの影響を極力抑制しつつ、低開度状態におけるタービン効率の低下を効果的に抑制することができる。
【0039】
いくつかの実施形態では、上記構成において、スワール生成部材30は、流路26Aから後退する凹状に形成されていてもよい(例えば、
図3(b)参照)。凹状の場合の形状は特に限定されず、流路26Aにおけるノズルプレート25側に適切な渦を形成し得るものであればよい。このように構成すれば、上記何れかの実施形態に記載の構成と同様の効果が得られるほか、ノズルマウント24とノズルプレート25とで形成される流路26Aに占めるスワール生成部材30の断面積を最小に構成することができるから、低開度状態以外の開度(高開度状態を含む)における流路26Aへの影響を最大限に抑制しつつ、低開度状態におけるタービン効率の低下を効果的に抑制することができる。
【0040】
図4に非限定的に例示するように、いくつかの実施形態では、上記何れか一つの実施形態に記載の構成において、スワール生成部材30は、可変ノズルベーン23の枚数をnとして、低開度状態における可変ノズルベーン23のコードの流路26Aの上流側への延長線Cと、スワール生成部材30の半径方向位置との交点Pを基準に±(360°/n)/2の範囲に配置されてもよい。すなわち、スワール生成部材30は、可変ノズルベーン23の数に応じて配置されていてもよく、
図4に示す角度θ(θ=360°/n)の範囲内に少なくとも一つ配置されていてもよい。
【0041】
上記構成によれば、生成された渦Sが低開度状態における複数の可変ノズルベーン23の各々に対して適切に作用し得る位置にスワール生成部材30を配置することができる。よって、各可変ノズルベーン23とノズルプレート25との隙間を通るクリアランスフローF2をより一層効果的に低減することができる。
【0042】
いくつかの実施形態では、上記何れか一つの実施形態に記載の構成において、ノズルプレート25に加締められ、流路26Aに向けて突設されたサポートピン40をさらに備え、スワール生成部材30は、タービンホイール22の径方向においてサポートピン40より外側に配置されてもよい(例えば、
図4参照)。
【0043】
一般に、半径流入式タービン2において流路26A側に突出するサポートピン40は、ノズルプレート25における流路26A側の端面25Aを、例えばフライス加工等により平滑に加工した後、該ノズルプレート25に加締められて取り付けられる。その際、タービンホイール22の径方向においてサポートピン40の取り付け位置を含む領域に加工が施される場合がある。この点、上記構成によれば、サポートピン40の配置に際してノズルプレート25における流路26A側の端面25Aの加工に影響を与えることなく、上記何れか一つの実施形態で述べた効果を享受することができる。
【0044】
幾つかの実施形態では、上記何れか一つの実施形態に記載の構成において、スワール生成部材30が翼型に形成されてもよい(例えば、
図6(a)参照)。このように構成すれば、翼型に形成されたスワール生成部材30により、流路26Aを通過する作動流体F1の流れに対する影響を抑制しつつ、下流側の流路26Aのノズルプレート25側に、可変ノズルベーン23とノズルプレート25との隙間を通るクリアランスフローF2を抑制するのに必要な渦を容易に生成することができる。
【0045】
いくつかの実施形態では、上記何れか一つの実施形態に記載の構成において、上記可変ノズルベーン23は、ハブ側に配置されたノズルマウント24に支持されていてもよい(例えば、
図2、
図3(a)及び
図3(b)参照)。
このように構成すれば、ノズルマウント24がハブ側に配置された半径流入式タービン2において、上記何れか一つの実施形態で述べた効果を享受することができる。
【0046】
いくつかの実施形態では、上記何れか一つの実施形態に記載の構成において、可変ノズルベーン23は、シュラウド側に配置されたノズルマウント24に支持されていてもよく、ハブ側にスワール生成部材30が設けられていてもよい(例えば、
図8参照)。このように構成すれば、ノズルマウント24がシュラウド側に配置された半径流入式タービン2において、上記何れか一つの実施形態で述べた効果を享受することができる。
【0047】
そして、本開示のいくつかの実施形態で述べたように、可変ノズルベーン23とノズルプレート25との隙間を通るクリアランスフローF2を効果的に低減することで低開度状態におけるタービン効率の低下を効果的に抑制することができ、且つ、高開度状態において流路26Aに与える影響を必要最小限に抑えつつ、低開度状態におけるタービン効率の低下を抑制できる半径流入式タービン2を備えたターボチャージャー1を得ることができる。
【0048】
以上述べた本開示の幾つかの実施形態によれば、高開度状態において流路に与える影響を抑制しつつ低開度状態におけるタービン効率の低下を効果的に抑制することができる。
【0049】
本発明は上述した幾つかの実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
【符号の説明】
【0050】
1 ターボチャージャー(過給機)
2 半径流入式タービン
3 コンプレッサ
5 タービン軸
21 ハウジング
21A スクロール部
21B ベンド部
22 タービンホイール
22A 動翼(インペラ)
23 可変ノズルベーン
23A 回動軸
23B 負圧面
23C 軸方向端面
24 ノズルマウント
25 ノズルプレート
26 スクロール流路
26A 流路
30 スワール生成部材
30A ノズルマウント側端部
40 サポートピン
100 エンジン(内燃機関)
101 ピストン
C 延長線
P 交点
F1 作動流体(排ガス)
F2 クリアランスフロー
H ベーン高さ
S 渦(スワール)
X 軸方向