(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-13
(45)【発行日】2022-01-25
(54)【発明の名称】注射器の早期作動防止機構
(51)【国際特許分類】
A61M 5/20 20060101AFI20220118BHJP
A61M 5/24 20060101ALI20220118BHJP
A61M 5/142 20060101ALI20220118BHJP
【FI】
A61M5/20 570
A61M5/24 500
A61M5/142 522
(21)【出願番号】P 2020505272
(86)(22)【出願日】2018-08-03
(86)【国際出願番号】 US2018045114
(87)【国際公開番号】W WO2019032390
(87)【国際公開日】2019-02-14
【審査請求日】2020-02-05
(32)【優先日】2017-08-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518123372
【氏名又は名称】ウェスト ファーマ サービシーズ イスラエル リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100087653
【氏名又は名称】鈴江 正二
(72)【発明者】
【氏名】イーガル・ギル
(72)【発明者】
【氏名】バー‐エル・ヨッシ
【審査官】伊藤 孝佑
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/032411(WO,A2)
【文献】特開2008-043761(JP,A)
【文献】特表2016-523123(JP,A)
【文献】国際公開第2014/144096(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/142
A61M 5/20
A61M 5/24
A61M 5/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
注射器であって、
ハウジングと、
前記ハウジングに移動可能に取り付けられており、作動前の位置から作動後の位置へと移動可能な作動ボタン構造体と、
投与対象の物質を収めたカートリッジを内部に受け入れるように構成されており、開位置と閉位置との間で移動可能に、前記ハウジングに取り付けられているカートリッジドアと、
前記ハウジングに取り付けられている片持ち梁であって、
通常の撓んでいない状態での位置である停止位置では、
前記ハウジング内の空間のうち前記作動ボタン構造体の移動領域に一部を置いて、前記作動ボタン構造体が前記作動前の位置から前記作動後の位置へ移動するのを妨げる片持ち梁と
を備え、
前記作動ボタン構造体は、前記作動後の位置にあるときには前記注射器を作動させ、
前記作動ボタン構造体が前記作動前の位置から前記作動後の位置へ移動可能であるのは、
前記片持ち梁が前記停止位置から
撓んで、前記作動ボタン構造体の移動領域から前記一部を外している場合であり、
前記カートリッジドアは、前記閉位置にあって、かつ前記カートリッジを中に受け入れているときには、
前記カートリッジを前記片持ち梁に接触させて、前記片持ち梁を前記停止位置から
撓ませるように構成されている
ことを特徴とする注射器。
【請求項2】
前記片持ち梁は、前記ハウジングに位置する第1端から、自由端である第2端まで伸びている、請求項1に記載の注射器。
【請求項3】
前記作動ボタン構造体は、
その表面から
外方へ伸びている柱を含み、前記作動ボタン構造体が前記作動前の位置から前記作動後の位置へ移動する際、前記柱は
、前記ハウジング内の空間の一領域である柱用通路を通り、
前記片持ち梁は、前記停止位置では
前記一部が前記柱用通路に位置することにより、前記柱の移動を物理的に妨げて、前記作動ボタン構造体が前記作動前の位置から前記作動後の位置へ移動するのを妨げる、
請求項1または請求項2に記載の注射器。
【請求項4】
前記片持ち梁の自由端は、前記片持ち梁が前記停止位置にあるとき、前記柱用通路に位置している、請求項3に記載の注射器。
【請求項5】
前記カートリッジドアはその側壁に窓を含み、前記窓は前記片持ち梁に面しており、
前記片持ち梁は、そこから前記窓へ向かって突出したタブを含み、前記タブは、前記カートリッジドアが前記閉位置にあるとき、前記窓を通して前記カートリッジドアの中へ突出する
請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の注射器。
【請求項6】
前記カートリッジドアが前記閉位置にあるとき、前記タブは前記窓と並び、前記窓を通して突出して、前記カートリッジドアの中に受け入れられている前記カートリッジと
接触することにより、
前記片持ち梁を前記停止位置から
撓ませる、請求項5に記載の注射器。
【請求項7】
少なくとも先端が前記ハウジングの中に収まる後退位置と、少なくとも前記先端が前記ハウジングから突き出す注射位置との間で移動可能な注射針
を更に備え、
前記作動ボタン構造体は前記注射針と操作可能に接続されており、前記注射器の作動には、前記注射針を前記注射位置へ移動させることが含まれる
請求項1から請求項6までのいずれか一項に記載の注射器。
【請求項8】
前記カートリッジドアは前記ハウジングに回転可能に取り付けられている、請求項1から請求項7までのいずれか一項に記載の注射器。
【請求項9】
注射器であって、
ハウジングと、
少なくとも先端が前記ハウジングの中に収まる後退位置と、少なくとも前記先端が前記ハウジングから突き出す注射位置との間で移動可能な注射針と、
前記ハウジングには移動可能に取り付けられ、前記注射針には操作可能に接続されており、作動前の位置から作動後の位置へと移動可能な作動ボタン構造体と、
投与対象の物質を収めたカートリッジを内部に受け入れるように構成されており、開位置と閉位置との間で回転可能に、前記ハウジングに取り付けられているカートリッジドアと、
前記ハウジングの中に取り付けられている片持ち梁であって、
通常の撓んでいない状態での位置である停止位置では、前記作動ボタン構造体の少なくとも一部の下にあって、
前記ハウジング内の空間のうち前記作動ボタン構造体の移動領域に一部を置き、前記作動ボタン構造体が前記作動前の位置から前記作動後の位置へ移動するのを物理的に妨げる片持ち梁と
を備え、
前記作動ボタン構造体は、前記作動後の位置にあるとき、前記注射針を前記注射位置へ移動させ、
前記作動ボタン構造体が前記作動前の位置から前記作動後の位置へ移動可能であるのは、
前記片持ち梁が前記停止位置から
撓んで、前記作動ボタン構造体の移動領域から前記一部を外している場合であり、
前記カートリッジドアは、前記閉位置にあって、かつ前記カートリッジを中に受け入れているとき、
前記カートリッジを前記片持ち梁に接触させて、前記片持ち梁を前記停止位置から
撓ませるように構成されている
ことを特徴とする注射器。
【請求項10】
前記作動ボタン構造体は、
その表面から
外方へ伸びている柱を含み
、前記作動ボタン構造体が前記作動前の位置から前記作動後の位置へと移動する際、前記柱は
、前記ハウジング内の空間の一領域である柱用通路を通り
、
前記片持ち梁は、前記停止位置にあるときには
前記一部が前記柱用通路に位置することにより、前記柱の通行を妨げて、前記作動ボタン構造体が前記作動前の位置から前記作動後の位置へ移動するのを妨げる
請求項9に記載の注射器。
【請求項11】
前記片持ち梁は自由端を含み、前記片持ち梁が前記停止位置にあるとき、前記自由端は前記柱用通路に位置している、請求項10に記載の注射器。
【請求項12】
前記カートリッジドアはその側壁に窓を含み、前記窓は前記片持ち梁に面しており、
前記片持ち梁は、そこから前記窓に向かって突出しているタブを含み、前記カートリッジドアが前記閉位置にあるとき、前記タブは前記窓を通して前記カートリッジドアの中へ突出する
請求項10または請求項11に記載の注射器。
【請求項13】
前記カートリッジドアが前記閉位置にあるとき、前記タブは前記窓と並んで前記窓を突き抜け、前記カートリッジドアの中に受け入れられている前記カートリッジと
接触することにより、
前記片持ち梁を前記停止位置から
撓ませる、請求項12に記載の注射器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は注射器全般に関し、特に、注射器の早すぎる作動を阻む機構に関する。
【背景技術】
【0002】
薬用等の注射器は典型的には、使用者の皮膚に刺さって、カートリッジの中の薬剤等の物質を使用者に注入する。時期が早すぎる等、注射器の作動が不正であると、使用者に物質が受け入れられないおそれ、少なくとも、正しい量が受け入れられないおそれがある。注射器の不正な作動に対する従来の扱いは、すでに作動した後で装置を無効化することである。しかし、このようなやり方は、カートリッジと注射器とを交換しなければならないので、費用がかかる。さらに、これらの交換、すなわち再購入は通常、物質の投与を遅らせる。しかし、その物質は時間の経過に敏感かも知れない。
【0003】
それ故、早期作動防止機構を使用して早すぎる作動を防ぐ注射器を製造することには、すでに作動した後に注射器を無効化することよりも利点があるだろう。
【発明の概要】
【0004】
簡単に述べれば、本発明の1つの観点による注射器は、ハウジングと、そのハウジングに移動可能に取り付けられた作動ボタン構造体とを含む。作動ボタン構造体は作動前の位置から作動後の位置へ移動可能である。カートリッジドアはその中に、投与対象の物質を収めたカートリッジを受け入れるように構成されており、開位置と閉位置との間で移動可能にハウジングに取り付けられている。ハウジングの中には、方向を変えることのできる妨害部材が取り付けられている。この妨害部材は、停止位置では、作動ボタン構造体が作動前の位置から作動後の位置へ移動するのを妨げる。作動ボタン構造体は、作動後の位置にあるとき、注射器を作動させる。作動ボタン構造体が作動前の位置から作動後の位置へ移動可能であるのは、妨害部材の方向が停止位置から外れているときのみである。カートリッジドアは、閉位置にあって、かつカートリッジを中に受け入れているとき、妨害部材の方向を停止位置から外す。
【0005】
本発明の別の観点による注射器はハウジングと注射針とを含む。注射針は、少なくとも先端がハウジングの中に収まる後退位置と、少なくとも先端がハウジングから突き出す注射位置との間で移動可能である。作動ボタン構造体は、ハウジングには移動可能に取り付けられており、注射針には操作可能に接続されている。作動ボタン構造体は作動前の位置から作動後の位置へ移動可能である。カートリッジドアはその中に、投与対象の物質を収めたカートリッジを受け入れるように構成されている。カートリッジドアは、開位置と閉位置との間で回転可能に、ハウジングに取り付けられている。ハウジングの中には、方向を変えることのできる片持ち梁が取り付けられている。この片持ち梁は、停止位置では作動ボタン構造体の少なくとも一部の下にあって、作動ボタン構造体が作動前の位置から作動後の位置へ移動するのを物理的に妨げる。作動ボタン構造体は、作動後の位置にあるとき、注射針を注射位置へ移動させる。作動ボタン構造体が作動前の位置から作動後の位置へ移動可能であるのは、片持ち梁の方向が停止位置から外れているときのみである。カートリッジドアは、閉位置にあって、かつカートリッジを中に受け入れているときに、妨害要素の方向を停止位置から外す。
【図面の簡単な説明】
【0006】
本発明の観点について以下に述べる詳細な説明は、添付の図面と共に読まれた場合によく理解されるであろう。しかし、示されている正確な配置および手段に発明が限定されないことは理解されるべきである。
【0007】
【
図1】本発明の実施形態による、装着型注射器の上面と前面とを表す斜視図である。
【
図2】
図1の線分2-2に沿った、
図1の注射器の断面図である。作動ボタン構造体は作動前の位置にあり、注射針は後退位置にある。
【
図3】
図1の線分2-2に沿った、
図1の注射器の断面図である。作動ボタン構造体は作動後の位置にあり、注射針は注射位置にある。
【
図4】
図2の線分4-4に沿った、
図1の注射器の部分拡大断面図である。注射器のカートリッジドアは開位置にあり、その中にカートリッジが挿入されている。
【
図5】
図2の線分4-4に沿った、
図1の注射器の部分拡大断面図である。注射器のカートリッジドアは閉位置にあり、その中にはカートリッジが挿入されていない。
【
図6】
図2の線分4-4に沿った、
図1の注射器の部分拡大断面図である。注射器のカートリッジドアは閉位置にあり、その中にカートリッジが挿入されている。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下の記述では、単に便宜上、ある種の用語が使われるが、限定的なものではない。「下側」、「底」、「上側」、「上」という語は、参照される図面において方向を示す。「内側へ」、「外側へ」、「上方へ」、「下方へ」という語はそれぞれ、本発明による注射器およびその特定の部品群の幾何学的中心へ向かう方向と、その中心から離れる方向とを意味する。以下、特に示されない限り、「ある」、「一つの」、「その」という語は、一つの要素には限られず、「少なくとも一つの」を意味するものと読まれるべきである。これらの列挙された語、それらの派生語、および類義語が用語には含まれる。
【0009】
以下、発明の要素の寸法または特性に関して使われる、「約」、「近似的に」、「一般に」、「実質的に」等の語は、記述されている寸法/特性が厳密な境界値ではなく、そこからの小さな変動(機能的には同様な程度のもの)を排除するものではない。このことも理解されるべきである。少なくとも、記述に数値パラメータが含まれる場合、それらの数値には、技術分野において許容されている数学的、かつ工業的な原理を用いた、最下位の数字が変わらない程度の変動(たとえば、丸め誤差、測定誤差、その他の系統誤差、製造上の許容範囲)が含まれている。
【0010】
図面では、それらの全体を通して、同様な数字は同様な要素を表す。図面を詳細に参照すると、
図1-
図6には、本発明の実施形態による注射器(一般には10で指定されている。)が示されている。描かれている実施形態では、注射器10は装着型注射器(パッチ注射器)の形をしている。非限定的な例では、装着型の薬用注射器であるが、発明はそれには限定されない。当業者には理解されるべきであるように、注射器10は一般にハウジウング12を含む。ハウジング12には、使用者(たとえば患者)の皮膚面(図示せず。)に接触する第1面14がある。この第1面14には開口14aがある。描かれている実施形態では、第1面14はハウジング12の底面を定めている。しかし、発明はそれには限定されない。ハウジング12はまた、第1面14に対向する第2面16も含む。描かれている実施形態では、第2面16は、ハウジング12の外面のうち、上面を定めている。しかし、本発明はそれには限定されない。
【0011】
図2-
図3に示されているように、針のハブ18がハウジング12の中に移動可能に取り付けられている。ハブ18は、たとえば高分子材料、金属材料、またはそれらの組み合わせから構成されている。注射針20はハブ18により、当業者には周知の方法で支持されている。描かれている実施形態では、ハブ18と注射針20とは針の軸A(
図2、
図3参照。)に沿って軸方向に移動可能である。針の軸Aは、第1面14に対して実質的に垂直に後退位置と注射位置との間で伸びている。後退位置では、少なくとも注射針20の先端20aがハウジング12の中に収まっている(
図2参照)。注射位置では、少なくとも注射針20の先端20aがハウジング12から開口14aを通して突き出している(
図3参照)。しかし、当業者には理解されるべきであるように、針の軸Aは第1面14に対して90度以外の角度であってもよい。これも理解されるべきであるが、注射針20はハブ18とは別の機構によってハウジング12の中に移動可能に取り付けられていてもよい。
【0012】
押し下げることの可能な作動ボタン構造体22は、たとえば、高分子材料、金属材料、またはそれらの組み合わせで構成されており、ハウジング12には移動可能に取り付けられており、注射針20には操作可能に接続されている。作動ボタン構造体22は、当業者には周知の方法で、ボタン軸Bに沿って作動前の位置(
図1、
図2参照。)から作動後の位置(
図3参照。)へ移動可能、すなわち押し下げ可能である。この移動によって注射器10が作動する。描かれている実施形態では、ボタン軸Bは針の軸Aと平行であるが、本発明はそれには限定されない。注射器10の作動には、たとえば、注射針20が後退位置から注射位置へ移動することも含まれる。
【0013】
図2-
図3に示されているように、付勢部材24が作動ボタン構造体22と注射針20とに操作可能に接続されている。ただし、本発明はそれには限定されない。別の例として付勢部材24は第2面16と注射針20とに接続されていてもよい。作動ボタン構造体22が作動前の位置(
図2参照。)にあるとき、付勢部材24はエネルギーを蓄えた状態で安定化している。作動ボタン構造体22が作動後の位置(
図3参照。)へ移動するとき、付勢部材24はエネルギーを解放して、注射針20を針の軸Aに沿って後退位置から注射位置へ移動させる。当業者には理解されるべきであるように、付勢部材24がエネルギーを蓄えている状態は、付勢部材24が少なくともある種の位置エネルギーを蓄えている状態である。付勢部材24がエネルギーを解放した状態は、付勢部材24が、以前に蓄えていた位置エネルギーのうち少なくともいくらかを解放した状態である。
【0014】
描かれている実施形態では、付勢部材24は、ハブ18と作動ボタン構造体22との間に取り付けられたコイルばねである。そのばね24は、一端が作動ボタン構造体22に接触しており、他端がハブ18に接触している。エネルギーを蓄えている状態では、コイルばね24が少なくとも部分的に圧縮されている。エネルギーを解放している状態では、コイルばね24は(少なくとも部分的に圧縮されている、エネルギーを蓄えている状態と比べて)伸びており、ハブ18と注射針20とを注射位置へ移動させる。しかし、当業者には理解されるべきであるように、付勢部材24はその他に、エネルギーを蓄えたり解放したりできる別の部材であってもよい。非限定的な例として、他のばね(たとえば、ねじりばね、板ばね)、弾性帯等がある。それらとは別に、付勢部材24がアクチュエータであってもよい。このアクチュエータは、作動ボタン構造体22が作動後の位置へ押し込まれたとき、注射針20に力を加えて移動させる。
【0015】
注射器10はカートリッジドア26を更に含む。カートリッジドア26には、開放端26aと内溝26bとが形成されている。開放端26aは、それを通してカートリッジ28(
図4、
図6参照。)を、たとえば摺動可能に受け入れるためのものである。内溝26bは、その中にカートリッジ28を受け入れるためのものである。内溝26bは、その中にカートリッジ28を安定化させる程度の寸法と形とをしていてもよい。その他に、内溝26bは、その中にカートリッジ28を受け入れて安定化させるためのカートリッジクレードル、カートリッジトラック、独自の安定化部材、またはそれらの組み合わせ等(図示せず。)を含んでいてもよい。理解されるべきであるように、カートリッジ28には、注射器10から注射針20を通して投与されるべき薬品等の物質(図示せず。)が収められている。
【0016】
カートリッジドア26は、開位置(
図4参照。)と閉位置(
図1、
図5、
図6参照。)との間で移動可能にハウジング12に取り付けられている。閉位置では内溝26bに、ハウジング12の外からは手が届かない。たとえば、描かれている実施形態では、カートリッジドア26の開放端26aがハウジング12の一部によって十分に覆われている(
図1参照。)ので、内溝26bには手が届かない。開位置ではカートリッジドア26の開放端26aの少なくとも一部が覆われていないので、内溝26bの少なくとも一部には開放端26aから手が届く。カートリッジドア26が全開した位置では、
図4に示されているように、カートリッジドア26の開放端26aが十分に開放されており、それを通して内溝26bの中へカートリッジ28を挿入することができる。
【0017】
描かれている実施形態では、カートリッジドア26はハウジング12に、たとえばピン接続30によって回転可能に取り付けられている。ただし、本発明はこれには限定されない。
図4に示されているように、カートリッジドア26は、開位置ではハウジング12から離れる方向に回転しているので、内溝26bにはカートリッジドア26の開放端26aから手が届く。ハウジング12に移動可能に取り付けられているカートリッジドア26の他の非限定的な例としては、米国特許出願第15/575,229号(表題“Cartridge Insertion For Drug Delivery Device”)に記述されたものが挙げられる。その内容の全体がここでは参照されるべきである。
【0018】
方向を変えることのできる妨害部材32がハウジング12の中に取り付けられている。描かれている実施形態では、妨害部材32がカートリッジドア26と作動ボタン構造体22との間に位置している。
図4に最もよく示されているように、妨害部材32は片持ち梁の形をしている。一つの実施形態では、この片持ち梁32はハウジング12から直に伸びている。ただし、発明はこれには限定されない。一つの実施形態では、この片持ち梁32はハウジング12と、たとえば一緒の型で作られることにより、一体に形成されている。ただし、発明はこれには限定されない。すなわち、片持ち梁32は、ハウジング12と別々に形成された上でそれに直接的に、または間接的に接続され、または取り付けられてもよい。
【0019】
描かれている実施形態では、ハウジング12はカートリッジドア26と作動ボタン構造体22との間に細長い壁12aを含む。この壁12aは第1面14から実質的に垂直に突出している。しかし、当業者には理解されるべきであるように、この壁12aは第1面14に対して90度以外の角度であってもよいし、先細りであっても湾曲していてもよい。片持ち梁32は、壁12aのうち、方向が変えられる部分を定めており、壁12aに接続された第1端32aから、自由端である第2端32bまで伸びている。すなわち、第1端32aは壁12aにくっついており、片持ち梁32がそのまわりで方向を変えることのできる支点を定めている。たとえば、限定ではないが、第1端32aは、そのまわりで片持ち梁32が方向を変えることのできる、事実上のヒンジを定めていてもよい。方向を変えることのできる片持ち梁32は、たとえば高分子材料、金属材料、またはそれらの組み合わせから構成されていてもよい。当業者には理解されるべきであるように、片持ち梁32は、その材料の性質、寸法上の性質、またはそれらの組み合わせによって、方向を変えることができる。片持ち梁32は通常は停止位置にあって、壁12aと実質上同じ方向である。
【0020】
停止位置では、片持ち梁32は、作動ボタン構造体22が作動前の位置から作動後の位置へ、ボタン軸Bに沿って移動するのを妨げる。たとえば、作動ボタン構造体22は、そこから伸びている柱22aを含む。描かれている実施形態では、この柱22aは作動ボタン構造体22のカバー22bから下方へ(すなわち、ボタン軸Bと平行に)伸びている。しかし、本発明はこれには限定されない。柱22aは、ボタン軸Bに対して平行な柱用通路Cを定める。作動ボタン構造体22が作動前の位置から作動後の位置へ移動する間、柱用通路Cに沿って柱22aは移動する。
図4、
図5に示されているように、片持ち梁32が停止位置にあるとき、その一部が柱用通路Cと交差する。一つの実施形態では、たとえば片持ち梁32bの自由端、すなわち第2端32bが柱用通路Cに位置してもよい。ただし、本発明はこれには限定されない。したがって、停止位置では片持ち梁32が柱22aに接触して、柱22aが柱用通路Cに沿って移動するのを物理的に妨げる。それ故、片持ち梁32は、作動ボタン構造体22が作動前の位置から作動後の位置へ移動するのを妨げる。
【0021】
図4-
図6に示されているように、カートリッジドア26は更に、側壁に窓26cを含む。理解されるべきであるように、この窓26cはその他に、中を通ることの可能な穴であって、以下に詳細に説明される機能と同じ機能を果たすものであってもよい。この窓26cは、片持ち梁32に面したカートリッジドア26の側壁の一部に位置している。窓26cを通してカートリッジドア26の内溝26bまで到達することができる。片持ち梁32は、そこから窓26cに向かって突出したタブ32cを含む。カートリッジドア26が閉位置にあるとき、片持ち梁32のタブ32cはカートリッジドア26の窓26cと並んで、それを通して突出し、カートリッジドア26の内溝26bの中に位置する。描かれている実施形態では、タブ32cは片持ち梁32から横方向に突出しており、第1面14とほぼ平行である。しかし、本発明はこれには限定されない。
【0022】
(
図5に示されているように)内部にカートリッジ28が挿入されていない状態でカートリッジドア26が閉位置へ移動すると、タブ32cが窓26cを通してカートリッジドア26の内溝26bの中に突き出すが、片持ち梁32の位置を停止位置からは変えない。一方、(
図6に示されているように)内部にカートリッジ28が挿入された後でカートリッジドア26が閉位置へ移動すると、タブ32cが窓26cを通して突き出してカートリッジ28に嵌まる。カートリッジ28との接触によってタブ32cは、カートリッジ28に占拠された内溝26bの中に更に突き出すことなく止まるので、タブ32cの方向が変わり、片持ち梁32の方向が停止位置から外れる(
図6参照)。
【0023】
片持ち梁32の方向が停止位置から外れることで、片持ち梁32が柱用通路Cから横方向へ外れる(たとえば
図6では、第2端32bが柱用通路Cから外れる)。これにより、作動ボタン構造体22が、妨げられることなく、作動前の位置から作動後の位置へ移動する。それ故、作動ボタン構造体22が作動前の位置から作動後の位置への移動を妨げられるのは、カートリッジドア26が開位置にある場合か、カートリッジドア26がカートリッジ28を中に入れていない状態で閉位置へ移動した場合である。こうして、作動ボタン構造体22が早すぎる作動を不可能にするので、注射器10の早すぎる作動が不可能になる。カートリッジ28がカートリッジドア26の内溝26bの中に挿入されていて、かつカートリッジドア26が閉位置へ移動しているときにのみ、片持ち梁32の方向は停止位置から外れる。それ故、注射器10の作動準備が整っているとき、すなわちカートリッジ28が装填されていて、かつカートリッジドア26が閉じているときにのみ、作動ボタン構造体22が作動後の位置へ移動可能である。これがこの機構の利点である。更なる利点としては、早すぎる作動を機械的に阻むこの機構がセンサーの使用を避けることで、動作に失敗する可能性がある、より複雑な追加要素が組み込まれることを避けている点が挙げられる。その他の利点としては、カートリッジドア26が閉じるとタブ32cがカートリッジ28に嵌まることにより、内溝26bの中にカートリッジ28を安定化させるための追加の機構として機能する点も挙げられる。
【0024】
本発明の広い概念から外れることなく上記の実施形態に変更を加えることが可能であることは、当業者には評価されるであろう。一つの例として、注射器は、作動ボタン構造体22とハブ18とを繋ぐリンクを含んでいてもよい。このリンクは、カートリッジ28がカートリッジドア26の中に入れられて、カートリッジドア26が閉位置へ移動するまでは離れている。リンクが離れている間は作動ボタン構造体22が移動しても、装置が作動することが妨げられる。それに代えて、またはそれに加えて、カートリッジ28がカートリッジドア26の中に入れられ、かつカートリッジドア26が閉位置へ移動するまで、作動ボタン構造体が押し下げられて作動しない状態に固定されていてもよい。カートリッジ28が入れられた場合、作動ボタン構造体22がハブ18に繋がれ、および/または跳ね上がり、使用者が押し下げることができるようになる。別の例として、妨害部材32が、上記の妨害部材32の機能を実現可能なセンサーおよび/または電子スイッチであってもよい。このように本発明は、開示された特定の実施形態には限定されない。添付の請求の範囲が与えられている本発明の精神と範囲との中で行われる変更にも、本発明は及ぶものである。