(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-13
(45)【発行日】2022-01-25
(54)【発明の名称】下流イベントおよび測定値に基づいた送電網アセットの順位付け
(51)【国際特許分類】
H02J 13/00 20060101AFI20220118BHJP
【FI】
H02J13/00 301A
H02J13/00 311R
(21)【出願番号】P 2020506876
(86)(22)【出願日】2018-08-09
(86)【国際出願番号】 US2018045892
(87)【国際公開番号】W WO2019032761
(87)【国際公開日】2019-02-14
【審査請求日】2021-06-28
(32)【優先日】2017-08-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】513113895
【氏名又は名称】ランディス・ギア イノベーションズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】LANDIS+GYR INNOVATIONS, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100189544
【氏名又は名称】柏原 啓伸
(72)【発明者】
【氏名】ソーリャ・クロア
(72)【発明者】
【氏名】チェタナ・クロア
(72)【発明者】
【氏名】スラバン・ブッガヴィーティ
【審査官】右田 勝則
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-029550(JP,A)
【文献】特開2016-054584(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104156881(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第104166940(CN,A)
【文献】特開2014-059639(JP,A)
【文献】特開2018-185794(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
送電網イベントに基づいて送電網アセットの順位付けを行う方法であって、前記方法が、
送電網内の1つまたはそれ以上のセンサからの通信を受信するステップであって、前記通信が、送電網イベントが発生したことを示す、ステップと、
前記送電網の影響を受けるエリア内の各送電網アセットに発生する前記
送電網イベントが示す、前記送電網アセットが問題を引き起こしている確率を計算するステップと、
前記送電網の影響を受けるエリア内の各前記送電網アセットに関して、前記送電網アセットが問題を引き起こす際の伝播確率を計算するステップと、
前記確率および前記伝播確率に基づいて、前記送電網の影響を受けるエリア内の各前記送電網アセットに関して、前記送電網アセットに不具合が発生している確率を計算するステップと、
前記送電網の影響を受けるエリア内の各前記送電網アセットに関して前記送電網アセットに不具合が発生している確率を、ある閾値と比較するステップと、
前記比較に基づいて、不具合が発生している確率が最も高い送電網アセットを判定するステップと、
前記判定に基づいて、
不具合が発生している確率が最も高い送電網アセット以外の、1つまたはそれ以上の送電網アセットを制御することにより、前記問題を緩和するステップとを含む、
方法。
【請求項2】
送電網アセットが
送電網イベントを引き起こしている確率を計算する前記ステップが、
前記1つまたはそれ以上のセンサとの通信からイベント情報を取得するステップであって、前記イベント情報が、特定の継続時間に前記送電網アセットの下流で実際に発生した
送電網イベントの数を含む、ステップと、
センサ情報およびアセット情報を取得するステップであって、前記センサ情報および前記アセット情報が、前記送電網アセットの下流にある、特定のタイプの
送電網イベントまたは測定値を生成できるセンサの数を含む、ステップとを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記送電網アセットが
送電網イベントを引き起こす際の伝播確率を計算する前記ステップが、
前記1つまたはそれ以上のセンサとの通信からイベント情報を取得するステップであって、前記イベント情報が、特定の継続時間に少なくとも1つの
送電網イベントが発生した特定のアセットの下流にある、ゲートアセットの数を含む、ステップと、
センサ情報およびアセット情報を取得するステップであって、前記センサ情報および前記アセット情報が、前記特定のアセットの下流にあるゲートアセットの数を含む、ステップとを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記送電網アセットに不具合が発生している確率を計算する前記ステップが、送電網アセットが
送電網イベントを引き起こしている前記確率と、前記送電網アセットが
送電網イベントを引き起こす際の前記伝播確率とに、事業者の特定の設置要件に基づいて選択した重みに従って、重み付けするステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
送電網アセットが問題を引き起こしている確率を計算する前記ステップと、前記送電網アセットが問題を引き起こす際の伝播確率を計算する前記ステップとを、前記送電網の中央拠点で実行している、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
送電網アセットが問題を引き起こしている確率を計算する前記ステップと、前記送電網アセットが問題を引き起こす際の伝播確率を計算する前記ステップとを、前記送電網の変電所で実行している、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記変電所で計算された前記確率を、前記送電網の中央拠点へと伝達している、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
送電網アセットが問題を引き起こしている確率を計算する前記ステップと、前記送電網アセットが問題を引き起こす際の伝播確率を計算する前記ステップとを、前記送電網の変電所で1つまたはそれ以上の近傍の変電所に関して実行している、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記変電所で計算された前記確率を、前記送電網の中央拠点へと伝達している、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
記憶装置と、
通信インターフェースと、
前記記憶装置および前記通信インターフェースと通信するように構成された制御ユニットとを備える送電網管理システムであって、
前記制御ユニットが、送電網内の1つまたはそれ以上のセンサから前記通信インターフェースを介して、送電網イベントによって示されるある問題が発生したことを示す通信を受信し、
前記送電網の影響を受けるエリア内の各送電網アセットに関して、前記送電網アセットが問題を引き起こしている確率を計算し、
前記送電網の影響を受けるエリア内の各前記送電網アセットに関して、前記送電網アセットが問題を引き起こす際の伝播確率を計算し、
前記確率および前記伝播確率に基づいて、前記送電網の影響を受けるエリア内の各前記送電網アセットに関して、前記送電網アセットに不具合が発生している確率を計算し、
前記送電網の影響を受けるエリア内の各前記送電網アセットに関して前記送電網アセットに不具合が発生している確率を、ある閾値と比較し、
前記比較に基づいて、不具合が発生している確率が最も高い送電網アセットを判定し、かつ前記判定に基づいて、
不具合が発生している確率が最も高い送電網アセット以外の、1つまたはそれ以上の送電網アセットを制御することにより、前記
送電網イベントを緩和するように構成されている、
送電網管理システム。
【請求項11】
送電網アセットが前記
送電網イベントを引き起こしている確率を計算するために、前記制御ユニットが、
前記1つまたはそれ以上のセンサから前記通信インターフェースを介して受信した前記通信から、イベント情報を取得し、前記イベント情報が、特定の継続時間に前記送電網アセットの下流で実際に発生した
送電網イベントの数を含む、ように構成され、
また、前記制御ユニットが、前記記憶装置と通信して、センサ情報およびアセット情報を取得し、
前記センサ情報および前記アセット情報が、前記送電網アセットの下流にある、特定のタイプの
送電網イベントまたは測定値を生成できるセンサの数を含む、ように構成されている、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
送電網アセットが前記
送電網イベントを引き起こす際の伝播確率を計算するために、前記制御ユニットが、
前記通信インターフェースを介して受信した前記センサとの通信から、イベント情報を取得し、前記イベント情報が、所定の時間に少なくとも1つの
送電網イベントが発生した前記所定のアセットの下流にある、ゲートアセットの数を含むように構成され、
また、前記制御ユニットが、前記記憶装置と通信して、センサ情報およびアセット情報を取得し、前記センサ情報および前記アセット情報が、前記所定のアセットの下流にあるゲートアセットの数を含む、ように構成されている、請求項10に記載のシステム。
【請求項13】
前記送電網アセットに不具合が発生している確率を計算するために、前記制御ユニットが、送電網アセットが問題を引き起こしている前記確率と、前記送電網アセットが問題を引き起こす際の前記伝播確率とに、事業者の特定の設置要件に基づいて選択した重みに従って、重み付けするように構成されている、請求項10に記載のシステム。
【請求項14】
前記送電網管理システムを前記送電網の中央拠点に配置しており、また、
前記送電網管理システムが、送電網アセットが問題を引き起こしている前記確率と、前記送電網アセットが問題を引き起こす際の前記伝播確率とを、前記送電網の前記中央拠点において計算するように構成されている、請求項10に記載のシステム。
【請求項15】
前記送電網管理システムを前記送電網の変電所に配置しており、また、
前記送電網管理システムが、送電網アセットが問題を引き起こしている前記確率と、前記送電網アセットが問題を引き起こす際の前記伝播確率とを、前記送電網の前記変電所において計算するように構成されている、請求項10に記載のシステム。
【請求項16】
前記変電所で前記送電網管理システムによって計算された前記確率を、前記送電網の中央拠点へと伝達している、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
前記送電網管理システムを前記送電網の変電所に配置しており、また、
前記送電網管理システムが、送電網アセットが問題を引き起こしている前記確率と、前記送電網アセットが問題を引き起こす際の前記伝播確率とを、前記送電網の前記変電所で1つまたはそれ以上の近傍の変電所に関して実行するように構成されている、請求項10に記載のシステム。
【請求項18】
前記変電所で前記送電網管理システムによって計算された前記確率を、前記送電網の中央拠点へと伝達している、請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
送電網イベントに基づいて送電網アセットの順位付けを行う方法であって、前記方法が、
前記送電網内の1つまたはそれ以上のセンサからの通信を受信するステップであって、前記通信が、送電網イベントが発生したことを示す、ステップと、
前記送電網の影響を受けるエリア内の各送電網アセットに発生する
送電網イベントが示す、前記送電網アセットが問題を引き起こしている確率を計算するステップと、
前記送電網の影響を受けるエリア内の各前記送電網アセットに関して、前記送電網アセットが問題を引き起こす際の伝播確率を計算するステップと、
前記確率および前記伝播確率に基づいて、前記送電網の影響を受けるエリア内の各前記送電網アセットに関して、前記送電網アセットに不具合が発生している確率を計算するステップと、
前記送電網の影響を受けるエリア内の各前記送電網アセットに関して前記送電網アセットに不具合が発生している確率を、ある閾値と比較するステップと、
前記比較に基づいて、不具合が発生している確率が最も高い送電網アセットを判定するステップと、
前記判定に基づいて、
不具合が発生している確率が最も高い送電網アセット以外の、1つまたはそれ以上の送電網アセットを制御することにより、前記問題を緩和するステップとを含む、
方法。
【請求項20】
送電網アセットが問題を引き起こしている確率を計算する前記ステップと、前記送電網アセットが問題を引き起こす際の伝播確率を計算する前記ステップとを、前記送電網の変電所で1つまたはそれ以上の近傍の変電所に関して実行しており、また、
前記変電所で計算された前記確率を、前記送電網の中央拠点へと伝達している、請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下流イベントおよび測定値に基づいた送電網アセットの順位付けに関する。
【0002】
本出願は、2017年8月10日に出願された米国仮特許出願番号第62/543,631号の利益を主張するものである。これらの内容は、その全体が参照によって本明細書に援用されるものとする。
【背景技術】
【0003】
本明細書中において別段の指示がない限り、本セクションに記載する題材は、本出願の特許請求の範囲の先行技術ではなく、また、本セクションに含められることによって先行技術であると認められることはない。
【0004】
多数のアセットおよびセンサを含む放射状送電網では、ある送電網状態となる推定原因、またはある送電網状態への明らかな寄与因子を特定することが重要である。放射状送電網の一例としては、ヒューズ、レギュレータバンク、配電変圧器、およびその他のタイプのアセット、ならびにメータやラインセンサなどのセンサを含む配電フィーダが挙げられる。このようなセンサは、停電イベントや電圧測定値などを含むさまざまなイベントや測定値を生成するが、これらに限定されない。センサによってレポートされるイベントまたは測定値の異常は、そのセンサの上流にあるアセットに問題があることから生じる可能性がある。たとえば、センサによってレポートされる停電イベントまたは電圧異常は、センサの上流でのヒューズのトリップまたはレギュレータバンクの不具合が招いた結果であり得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
下流イベントおよび測定値に基づいて、送電網アセットの順位付けを行うシステムおよび方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
さまざまな態様によれば、下流イベントに基づいて送電網アセットの順位付けを行う方法を提供する。いくつかの態様では、本方法は、送電網内の1つまたはそれ以上のセンサからの通信を受信するステップであって、この通信は、送電網イベントが発生したことを示す、ステップと、送電網の影響を受けるエリア内の各送電網アセットに発生するイベントが示す、送電網アセットが問題を引き起こしている確率を計算するステップと、送電網の影響を受けるエリア内の各送電網アセットに関して、送電網アセットが問題を引き起こす際の伝播確率を計算するステップと、当該確率および伝播確率に基づいて、送電網の影響を受けるエリア内の各送電網アセットに関して、送電網アセットに不具合が発生している確率を計算するステップと、この送電網アセットに不具合が発生している確率をある閾値と比較するステップと、この比較に基づいて、不具合が発生している確率が最も高い送電網アセットを判定するステップと、その他の送電網アセットのうちの1つを制御することにより、問題を緩和するステップとを含んでいてもよい。
【0007】
送電網アセットがイベントを引き起こしている確率を計算するステップは、1つまたはそれ以上のセンサとの通信からイベント情報を取得するステップであって、このイベント情報は、特定の継続時間に送電網アセットの下流で実際に発生したイベントの数を含む、ステップと、センサ情報およびアセット情報を取得するステップであって、これらのセンサ情報およびアセット情報は、送電網アセットの下流にある、特定のタイプのイベントまたは測定値を生成できるセンサの数を含む、ステップとを含んでいてもよい。
【0008】
送電網アセットがイベントを引き起こす際の伝播確率を計算するステップは、1つまたはそれ以上のセンサとの通信からイベント情報を取得するステップであって、このイベント情報は、特定の継続時間に少なくとも1つのイベントが発生した特定のアセットの下流にある、ゲートアセットの数を含む、ステップと、センサ情報およびアセット情報を取得するステップであって、これらのセンサ情報およびアセット情報は、特定のアセットの下流にあるゲートアセットの数を含む、ステップとを含んでいてもよい。
【0009】
送電網アセットに不具合が発生している確率を計算するステップは、送電網アセットがイベントを引き起こしている確率と、送電網アセットがイベントを引き起こす際の伝播確率とに、事業者の特定の設置要件に基づいて選択した重みに従って、重み付けするステップを含んでいてもよい。送電網アセットが問題を引き起こしている確率を計算するステップと、送電網アセットが問題を引き起こす際の伝播確率を計算するステップとを、送電網の中央拠点で実行してもよい。
【0010】
送電網アセットが問題を引き起こしている確率を計算するステップと、送電網アセットが問題を引き起こす際の伝播確率を計算するステップとを、送電網の変電所で実行してもよい。送電網アセットが問題を引き起こしている確率を計算するステップと、送電網アセットが問題を引き起こす際の伝播確率を計算するステップとを、送電網の変電所で1つまたはそれ以上の近傍の変電所に関して実行してもよい。変電所で計算された確率を、送電網の中央拠点へと伝達してもよい。
【0011】
さまざまな態様によれば、送電網管理システムを提供する。いくつかの態様では、本システムは、記憶装置と、通信インターフェースと、記憶装置および通信インターフェースと通信するように構成された、制御ユニットとを備えていてもよい。
【0012】
この制御ユニットは、送電網内の1つまたはそれ以上のセンサから通信インターフェースを介して、送電網イベントによって示されるある問題が発生したことを示す通信を受信し、送電網の影響を受けるエリア内の各送電網アセットに関して、送電網アセットが問題を引き起こしている確率を計算し、送電網の影響を受けるエリア内の各送電網アセットに関して、送電網アセットが問題を引き起こす際の伝播確率を計算し、当該確率および伝播確率に基づいて、送電網の影響を受けるエリア内の各送電網アセットに関して、送電網アセットに不具合が発生している確率を計算し、送電網の影響を受けるエリア内の各送電網アセットに関してこの送電網アセットに不具合が発生している確率を、ある閾値と比較し、この比較に基づいて、不具合が発生している確率が最も高い送電網アセットを判定し、かつこの判定に基づいて、その他の送電網アセットのうちの1つを制御することにより、イベントを緩和するように、構成されていてもよい。
【0013】
この制御ユニットは、1つまたはそれ以上のセンサから通信インターフェースを介して受信した通信から、イベント情報を取得するようにさらに構成されていてもよく、このイベント情報は、特定の継続時間に送電網アセットの下流で実際に発生したイベントの数を含んでもよく、またこの制御ユニットは、記憶装置と通信して、センサ情報およびアセット情報を取得してもよく、これらのセンサ情報およびアセット情報は、送電網アセットの下流にある、特定のタイプのイベントまたは測定値を生成できるセンサの数を含んでいてもよい。
【0014】
この制御ユニットは、1つまたはそれ以上のセンサから通信インターフェースを介して受信した通信から、イベント情報を取得するようにさらに構成されていてもよく、このイベント情報は、所定の時間に少なくとも1つのイベントが発生した所定のアセットの下流にある、ゲートアセットの数を含み、またこの制御ユニットは、記憶装置と通信して、センサ情報およびアセット情報を取得してもよく、これらのセンサ情報およびアセット情報は、所定のアセットの下流にあるゲートアセットの数を含む。
この制御ユニットは、送電網アセットが問題を引き起こしている確率と、送電網アセットが問題を引き起こす際の伝播確率とに、事業者の特定の設置要件に基づいて選択した重みに従って、重み付けするように構成されていてもよい。
【0015】
本送電網管理システムを送電網の中央拠点に配置していてもよく、また、本送電網管理システムは、送電網アセットが問題を引き起こしている確率と、送電網アセットが問題を引き起こす際の伝播確率とを、送電網の中央拠点において計算するように構成されていてもよい。
【0016】
本送電網管理システムを送電網の変電所に配置していてもよく、また、本送電網管理システムは、送電網アセットが問題を引き起こしている確率と、送電網アセットが問題を引き起こす際の伝播確率とを、送電網の変電所において計算するように構成されていてもよい。本送電網管理システムを送電網の変電所に配置していてもよく、また、本送電網管理システムは、送電網アセットが問題を引き起こしている確率と、送電網アセットが問題を引き起こす際の伝播確率とを、送電網の変電所で1つまたはそれ以上の近傍の変電所に関して計算するように構成されていてもよい。変電所で本送電網管理システムによって計算された確率を、送電網の中央拠点へと伝達してもよい。
【0017】
さまざまな態様によれば、下流イベントに基づいて送電網アセットの順位付けを行う方法を提供する。いくつかの態様では、本方法は、送電網内の1つまたはそれ以上のセンサからの通信を受信するステップであって、この通信は、送電網イベントが発生したことを示す、ステップと、送電網の影響を受けるエリア内の各送電網アセットに発生するイベントが示す、送電網アセットが問題を引き起こしている確率を計算するステップと、送電網の影響を受けるエリア内の各送電網アセットに関して、送電網アセットが問題を引き起こす際の伝播確率を計算するステップと、当該確率および伝播確率に基づいて、送電網の影響を受けるエリア内の各送電網アセットに関して、送電網アセットに不具合が発生している確率を計算するステップと、送電網の影響を受けるエリア内の各送電網アセットに関してこの送電網アセットに不具合が発生している確率を、ある閾値と比較するステップと、この比較に基づいて、不具合が発生している確率が最も高い送電網アセットを判定するステップと、この判定に基づいて、その他の送電網アセットのうちの1つを制御することにより、問題を緩和するステップとを含んでいてもよい。
【0018】
送電網アセットが問題を引き起こしている確率を計算するステップと、送電網アセットが問題を引き起こす際の伝播確率を計算するステップとを、送電網の変電所で1つまたはそれ以上の近傍の変電所に関して実行してもよく、また、変電所で計算された確率を、送電網の中央拠点へと伝達してもよい。
【0019】
さまざまな実施形態により、従来技術よりも多くの利点が得られる。たとえば、さまざまな実施形態は、問題を認識するために分析プラットフォームにレポートする必要のあるイベント数を最小限に抑えながら、問題を引き起こしているか、または明らかに問題に寄与している可能性のある送電網内の潜在的なアセットの数を絞り込む方法およびシステムを提供する。いくつかの実施形態では、使用するレポートイベント数を少なく抑えて問題を特定するために、あるアセットが問題の原因である確率と、そのアセットが当該問題の原因である際の伝播確率との両方を考慮して、確率を計算している。これらのおよび他の実施形態について、その利点ならびに特徴の多くと共に、以下の本文および添付の図面に関連して詳述するものとする。
【図面の簡単な説明】
【0020】
さまざまな実施形態の態様および特徴は、添付の図面を参照しながら例を説明することにより、より明らかになるであろう。
【
図1】本開示のさまざまな態様による、電力送電システムを示すブロック図である。
【
図2】本開示のさまざまな態様による、電力送電管理システムの概略ブロック図である。
【
図3】本開示のさまざまな態様による、下流イベントに基づいて送電網アセットの順位付けを行う方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
特定の実施形態を記載しているが、これらの実施形態は例示として提示しているにすぎず、保護の範囲を限定することを意図するものではない。本明細書に記載の装置、方法、およびシステムを、他のさまざまな形態で具現化することができる。さらに、本明細書に記載の例示的な方法およびシステムの形態におけるさまざまな省略、置換、ならびに変更を、保護の範囲から逸脱することなく実施することができる。
【0022】
下流イベントおよび測定値に基づいて、送電網アセットの順位付けを行うシステムおよび方法を提供する。イベントまたは異常測定値は、送電網における問題の発生を示している可能性がある。たとえば、問題がヒューズの溶断である可能性があるが、電気メータはヒューズの溶断による停電を検出し、その停電をイベントとしてレポートし得る。別の例として、レギュレータのスタック電圧により、そのレギュレータの下流で異常な電圧測定値が発生する問題がある。そのスタック電圧を有するレギュレータの下流にある電気メータは、異常な電圧測定値を検出する可能性がある。さらに、電気メータおよび/またはセンサによってイベントが生成され得る。履歴データの分析に基づいて、本送電網管理システムによって他のイベントを計算または生成してもよい。たとえば、送電網の構成に基づいて、本送電網管理システムによって過電圧イベントまたは低電圧イベントを計算または生成してもよい。
【0023】
リアルタイムシナリオでは、本方法によりシステムの不具合が早期に検出される場合がある。非リアルタイムシナリオでは、レポートされたイベントの数がはるかに少ない場合でも、本方法により、不具合が発生しているアセットをより正確に特定することができる。このように正確に特定することにより、アセットに問題が発生している可能性を早期に診断することができ、それが重大な問題に発展する前に解決される一助となり得る。
【0024】
本開示のさまざまな態様によれば、ゲートアセットの下流から単一のイベントが取得される場合、そのゲートアセットの上流にあるアセットの確率を考慮することになる。ゲートアセットは、配電変圧器またはさまざまなタイプの保護装置のいずれかであってもよく、これにはたとえば、リレー、ヒューズなどが含まれるが、これらに限定されない。これらのゲートアセットを使用して、放射状送電網内の領域を区分けすることができる。この領域は、ゲートアセットと、このゲートアセットの下流にある他のアセットとを含んでいてもよい。ゲートアセットを使用して、イベントの伝播を測定してもよい。
【0025】
たとえば、ヒューズの下流にある大部分の配電変圧器のそれぞれから少なくとも1メートル離隔した場所で停電イベントを受信した場合、ヒューズが溶断していると明確に判定することができ、停電イベントおよびその原因に関して早期の決定を下すことが可能になる。別の例として、配電変圧器の下流にあるすべての電気メータが異常に高い電圧を測定した場合、当該変圧器が故障したと明確に判定することができる。同様に、電圧レギュレータの下流で低電圧が多く検出された場合、当該レギュレータが適切に動作していないか、または不適切な制御設定により低電圧が発生していると明確に判定することができる。さらに別の例として、複数の電気メータが、植生豊かなエリアの架空送電線セクションの下流で、瞬間電断または一時的停電を測定している場合、その架空送電線セクションのいずれかに樹木接触が発生していると判定することができる。
【0026】
図1は、本開示のさまざまな態様による、電力送電システム100を示すブロック図である。
図1を参照すると、発電設備110は電力を生成することができる。ここで生成される電力は、たとえば三相交流(AC)電力であってもよい。三相電源システムでは、共通の基準に対して同じ周波数と電圧振幅とを有する交流電流を、3本の導体がそれぞれ搬送しているが、それぞれの導体間に1サイクルの3分の1の位相差が生じている。この電力を、送電線115を介して、電力変電所120へと高電圧(たとえば、約140~750kV)で送電していてもよい。
【0027】
電力変電所120では、降圧変圧器130が、高電圧電力を顧客の使用により適した電圧レベルに降圧してもよい。このように降圧された三相電力を、フィーダ140a、140b、140cを介して配電変圧器150へと送電してもよく、この配電変圧器150で、当該電圧をさらに下げてもよい(たとえば、住宅用顧客の場合、120~240V)。配電変圧器150はそれぞれ、住宅用顧客および/または企業用顧客に対し、単相かつ/または三相電力を供給してもよい。配電変圧器150から、電気メータ160を介して電力を顧客に供給している。この電気メータ160は電力会社によって供給されてもよく、またこの電気メータ160を、負荷機器(すなわち、顧客宅内)と配電変圧器150との間に接続していてもよい。三相電力に加えて、単相電力を、配電変圧器150からさまざまな顧客に対して、電力会社によって生成される三相電力の異なる位相から供給していてもよく、その結果、当該位相に不均一な負荷が加わることになる。
【0028】
送電網全体にわたり、たとえば給電回路や配電変圧器などに限定されない、さまざまなアセットにおいて、ヒューズ170およびセンサ180を分散配置していてもよい。電気メータ160は、一種のセンサとしても機能してよい。センサ180は、たとえばメータやラインセンサなどであってもよいが、これらに限定されない。当業者であれば、本開示の範囲から逸脱することなく、他のタイプのセンサが使用できることを理解するであろう。ヒューズ170は、回路故障(例えば、短絡)が発生した場合に回路を切断してもよい。センサ180は、送電網の動作を監視するために、たとえば周波数、電圧、電流量、および位相角などのさまざまな送電網パラメータを検知することができる。当業者であれば、センサおよびヒューズの図示位置が単なる例示にすぎず、センサおよび/またはヒューズを他の位置に配置してもよく、また、本開示の範囲を逸脱することなく、使用するセンサ/またはヒューズを追加もしくは低減してもよいことを理解するであろう。
【0029】
送電網内の各アセットの確率を、アセットの下流にあるセンサと関連するイベントまたは範囲外の測定値の数と、アセットの下流にあるゲート装置と関連するイベントまたは範囲外の測定値の数とに基づいて決定してもよい。送電網内の所定のアセット(ヒューズ、送電線セクション、配電変圧器など)に対して、2つの確率的パラメータである、PsおよびPssを定義してもよい。
【0030】
[数1]は、当該アセットがあるイベントの原因である確率Psを定義している。
[数1]
Ps=Es/Ns(1)
ここで、
Esは、所定の時間にアセットの下流で実際に発生したイベントの数であり、また
Nsは、アセットの下流にある、特定のタイプのイベントまたは測定値を生成できるセンサの数である。
【0031】
[数2]は、当該アセットがそのイベントの原因である際の「伝播」確率Pssを定義している。
[数2]
Pss=Ess/Nss(2)
ここで、
Essは、特定の継続時間に少なくとも1つのイベントが発生した特定のアセットの下流にある、ゲートアセットの数であり、また
Nssは、特定のアセットの下流にあるゲートアセットの数である。
たとえばゲートアセットは、配電変圧器またはヒューズ、あるいはあらゆるタイプの保護装置であってもよい。この数値を使用して、当該イベントの「伝播」を測定している。
【0032】
あるイベントの伝播は、少なくとも1つのイベントが検出された特定のアセットの下流にある、サブグループの数の測定値である。各サブグループは、ゲートアセット(たとえば、配電変圧器)と、そのゲートアセットの下流にあるすべてのアセットとを含んでいてもよい。このサブグループの数の測定値は、そのイベントの地理的伝播を示す間接的指標である可能性がある。たとえば、多数のサブグループのうちで少数のサブグループがイベントを検出した場合、そのイベントはサブグループ内の問題に起因している可能性がある。しかし、多数のサブグループがイベントを検出した場合、その問題は、多数のサブグループの上流にあるアセットまたは状態によって引き起こされている可能性がある。したがって、イベントの伝播を測定することにより、問題を判定する必要のあるイベントの数を最小限に抑えることができる。本開示のさまざまな態様によれば、イベントレポートをリアルタイムストリーミングすることにより、問題の早期検出が可能になり得る。
【0033】
これらの確率的パラメータを使用して、あるアセットに不具合(たとえば、停電、パフォーマンスの低下を示すなど)が発生している確率を[数3]によって求めることができる。
[数3]
P=WsPs+WssPss(3)
ここで、WsおよびWssは重みであり、Ws+Wss=1である。WsおよびWssの値を、電気事業者の設置要件ごとに手動で選択してもよい。重みWsおよびWssの初期値を、それぞれ0.5および0.5とするか、または別の値にすることにより、実際に発生したイベントとそのイベントの伝播に対して等しい重みを付与してもよい。これらの重みは、リアルタイムイベントをレポートする通信システムに応じて異なっていてもよい。通信システムが分散方式でイベントをレポートする場合、Wssに対してより高い値を選択してもよい。この場合、イベント伝播の値の重みを大きくすると、問題を早期に検出できる可能性がある。
【0034】
当業者であれば、これらの値を選択するにあたり、本開示の範囲から逸脱することなく、他の方法も使用できることを理解するであろう。これらWsおよびWssの値を経時的に調整してもよく、またこれらの値は送電網ごとに異なっていてもよい。
【0035】
放射状送電網の影響を受ける部分のすべてのアセットに関して、アセットに不具合が発生している確率Pを計算してもよい。一例では、送電網の影響を受ける部分が停電と関連している可能性がある。放射状送電網の影響を受ける部分の各アセットに関して、アセットに不具合が発生している確率Pを、所定の閾値、たとえば65%の信頼度または別の信頼度と比較してもよい。この閾値をさまざまな方法で選択することができ、また経時的に調整もできる。
【0036】
送電網ごとに異なるしきい値を使用してもよい。不具合が発生している確率が閾値を超えているアセットに不具合が発生していると見なしてもよい。放射状送電網のルートノードに最も近接し、不具合が発生している確率が閾値を超えているアセットを、当該問題の原因であると判定してもよい。当業者であれば、問題において可能性の高い原因を特定する他の方法も可能であり、またルートノードまでの距離以外の因子を考慮してもよいことを理解するであろう。たとえば、低確率のアセットの子アセット(すなわち、すぐ下流にある)である高確率のアセットを、当該問題の原因である可能性が高いと見なしてもよい。
【0037】
本開示のさまざまな態様によれば、ゲートアセットの下流にあるセンサがイベントをレポートした場合、このセンサを、当該ゲートアセットの上流にあるアセットの確率において考慮してもよい。一例では、当該アセットはヒューズであってもよく、当該ゲートアセットは配電変圧器であってもよく、また当該センサは電気メータであってもよい。複数の配電変圧器をヒューズの下流に配置してもよく、また複数のメータを各配電変圧器の下流に配置してもよい。複数の配電変圧器のうちの大多数の変圧器の下流にある少なくとも1つのメータから、停電イベントが通知された場合、放射状送電網の影響を受ける部分の各アセットに関して、アセットに不具合が発生している確率Pを計算した結果に少なくとも一部基づいて、これら複数の配電変圧器の上流にあるヒューズを、停電を起こしているアセットとして本システムが特定するようになる。
したがって、本システムは、停電イベントおよびその原因に対して行うべき処置に関して、早期に決断を下すことができる。
【0038】
本開示のさまざまな態様によれば、いくつかの問題を、たとえば以下に限定されないが、多くの異なる状況で特定することができる。
メータの最後のゆらぎ信号または停電イベントを使用して、停電を起こしている装置を早期に特定すること。
メータの電源投入信号を使用して、復元シナリオの場合の繰返し停電を早期に特定すること。
電圧外れ値を使用して、不具合が発生している電圧制御装置および配電変圧器を早期に特定すること。
メータおよびセンサからの一時的停電を示す信号を使用して、不具合が発生しているアセットまたは停電のリスクを早期に特定すること。
【0039】
確率Psおよび伝播確率Pssの両方を使用すると、使用するレポートイベント数を少なく抑えながら、不具合を特定することが可能になる。確率Psのみを使用して不具合を特定するには、決断を下す前に、相当数のイベントに関するレポートを受信する必要がある。複数のイベントレポートを受信するのに時間を要するため、問題の検出が遅れる可能性がある。問題の影響が広範囲に及んでいる場合(すなわち、多数のイベントが検出/レポートされた場合)、それらすべてのイベントの上流にあるアセットが当該問題の原因である確率が高くなり得る。したがって、伝播確率Pssを含めることにより、問題を早期に特定できる可能性がある。
【0040】
図2は、本開示のさまざまな態様による、電力送電管理システム200の概略ブロック図である。
図2を参照すると、電力送電管理システム200は、送電網管理システム210と、変電所220と、送電網230とを備えることができる。送電網管理システム210は、制御ユニット212と、メモリ214と、記憶装置216と、通信インターフェース218とを備えていてもよい。制御ユニット212は、たとえばプロセッサ、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、コンピュータ、マイクロコントローラ、プログラマブルコントローラ、または他のプログラマブル装置であってもよいが、これらに限定されない。当業者であれば、本開示の範囲から逸脱することなく他の変形例を実施できることを理解するであろう。
【0041】
メモリ214は、たとえば1つまたはそれ以上のソリッドステートメモリ装置または他のメモリ装置であってもよいが、これらに限定されない。メモリ214は、送電網管理システム210を操作かつ制御するための、データおよび命令を格納していてもよい。記憶装置216は、たとえば1つまたはそれ以上のハードディスクドライブ、ソリッドステートメモリ装置、または他のコンピュータ可読記憶媒体であってもよいが、これらに限定されない。当業者であれば、本開示の範囲から逸脱することなく、他の記憶構成を使用できることを理解するであろう。記憶装置216にデータベース217を格納していてもよい。
【0042】
送電網管理システム210は通信インターフェース218を介して、1つまたはそれ以上の変電所220および記憶装置216と通信してもよい。さまざまな装置と通信するために、さまざまな有線通信インターフェースまたは無線通信インターフェースおよび関連通信プロトコルを、通信インターフェース218によって実装してもよい。たとえば、送電網管理システム210の制御ユニット212と記憶装置216との間に、有線通信インターフェースを実装していてもよく、また、送電網管理システム210と1つまたはそれ以上の変電所220との間で通信を行うために、無線通信インターフェースを実装していてもよい。送電網管理システム210を、中央拠点、変電所、またはその間のいずれかに配置していてもよい。当業者であれば、本開示の範囲から逸脱することなく、他の通信構成を使用できることを理解するであろう。
【0043】
変電所220は、データ取得ユニット222を含んでいてもよい。データ取得ユニット222は、送電網230内のセンサ(たとえば、センサ180)から通信を受信してもよい。たとえば、取得ユニット222は、周波数、電圧、電流量、および位相角などのさまざまな送電網パラメータに関連する通信を、センサ180から受信してもよい。変電所220のデータ取得ユニット222は、センサからのこのような通信を、送電網管理システム210へと転送してもよい。いくつかの実施形態では、送電網管理システム210は、変電所を介してではなく、通信ネットワークを介して送信され得る通信を、センサから受信してもよい。
【0044】
変電所220のデータ取得ユニット222から受信した通信に基づいて、制御ユニット212は、[数1]および[数2]をそれぞれ使用して、送電網の影響を受けるエリア内の各アセットに関する確率Psおよび伝播確率Pssを計算してもよい。Esの値(すなわち、所定の時間に当該アセットの下流で実際に発生したイベントの数)およびEssの値(すなわち、所定の時間に少なくとも1つのイベントが発生した所定のアセットの下流にある、ゲートアセットの数)を、変電所220のデータ取得ユニット222から受信する通信より取得してもよい。Nsの値(すなわち、当該アセットの下流にある、特定のタイプのイベントまたは測定値を生成できるセンサの数)およびNssの値(すなわち、所定のアセットの下流にあるゲートアセットの数)を、記憶装置216内のデータベース217に格納していてもよく、またこれらの値を制御ユニット212によって取得してもよい。
【0045】
送電網の影響を受けるエリア内の各アセットに関する確率Psおよび伝播確率Pssを計算した後、制御ユニット212は[数3]を使用して、あるアセットに不具合が発生している確率Pを計算してもよい。WsおよびWssの値を、電気事業者の特定の設置要件に基づいて手動で選択してもよい。
制御ユニット212は、送電網の不具合の影響を受けるエリア内の各アセットに関して、アセットに不具合が発生している確率Pを、1つまたはそれ以上の閾値と比較してもよい。この比較の結果に基づいて、制御ユニット212は、問題を引き起こしている可能性が最も高いアセットがいずれであるかを判定してもよい。制御ユニット212は送電網管理システム210に、たとえば1つまたはそれ以上の他のアセットを制御することにより、当該イベントを緩和するなど、1つまたはそれ以上の処置を行わせてもよい(たとえば、電力を再送電して、アセットの不具合を回避する)。
【0046】
いくつかの実施形態では、送電網管理システム210を、変電所に配置していてもよい。変電所に配置された送電網管理システム210は、センサから通信を受信し、変電所に接続された各アセットに関する確率Psおよび伝播確率Pssを計算してもよい。変電所に配置された送電網管理システム210は、変電所に接続されたアセットに関する計算結果を、電気事業者設備の中央拠点にレポートしてもよい。
【0047】
いくつかの実施形態では、変電所に配置された送電網管理システム210は、自身に接続された各アセットに関する確率Psおよび伝播確率Pssを計算してもよく、また1つまたはそれ以上の近傍の変電所に接続された、各アセットに関する確率Psおよび伝播確率Pssを計算してもよい。変電所に配置された送電網管理システム210は、それ自体および1つまたはそれ以上の近傍の変電所に接続されたアセットに関する計算結果を、電気事業者設備の中央拠点にレポートしてもよい。当業者であれば、本送電網管理システムを実装するにあたり、本開示の範囲から逸脱することなく、他の構成を使用できることを理解するであろう。
【0048】
図3は本開示のさまざまな態様による、下流イベントに基づいて送電網アセットの順位付けを行う方法のフローチャートである。
図3を参照すると、ブロック310で、センサとの通信を受信することができる。たとえば、1つまたはそれ以上の変電所220におけるデータ取得ユニット222は、周波数、電圧、電流量、および位相角などのさまざまな送電網パラメータに関連する通信を、センサ180から受信してもよい。
変電所220のデータ取得ユニット222は、センサからのこのような通信を、送電網管理システム210へと転送してもよい。
【0049】
ブロック320で、センサとの通信からイベント情報を取得してもよい。このイベント情報は、所定の時間に当該アセットの下流で実際に発生したイベントの数、および所定の時間に少なくとも1つのイベントが発生した所定のアセットの下流にある、ゲートアセットの数を含んでいてもよい。送電網管理システム210の制御ユニット212は、1つまたはそれ以上の変電所220から受信したセンサとの通信より、イベント情報を引き出してもよい。ブロック330で、センサ情報およびアセット情報を取得してもよい。制御ユニット212は、記憶装置216内のデータベース217から、センサ情報およびアセット情報にアクセスしてもよい。これらのセンサ情報およびアセット情報は、たとえば当該アセットの下流にある、特定のタイプのイベントまたは測定値を生成できるセンサの数、および所定のアセットの下流にあるゲートアセットの数などを含んでいてもよい。
【0050】
ブロック340で、あるアセットが当該イベントの原因である確率を計算してもよい。受信したセンサとの通信から取得した、所定の時間に当該アセットの下流で実際に発生したイベントの数(Es)と、データベースから取得した、当該アセットの下流にある、特定のタイプのイベントまたは測定値を生成できるセンサの数(Ns)とに基づいて、制御ユニット212は、たとえば[数1]を使用して、送電網の影響を受けるエリア内の各アセットがあるイベントの原因である確率Psを計算してもよい。
【0051】
ブロック350で、当該アセットがそのイベントを引き起こす際の伝播確率を計算してもよい。受信したセンサとの通信から取得した、所定の時間に少なくとも1つのイベントが発生した所定のアセットの下流にある、ゲートアセットの数(Ess)と、データベースから取得した、所定のアセットの下流にあるゲートアセットの数(Nss)とに基づいて、制御ユニット212は、たとえば[数2]を使用して、送電網の影響を受けるエリア内の各アセットがあるイベントの原因である際の伝播確率Pssを計算してもよい。
【0052】
ブロック360で、あるアセットに不具合が発生している確率を計算してもよい。送電網の影響を受けるエリア内の各アセットに関する確率Psおよび伝播確率Pssの計算に基づいて、制御ユニット212は、たとえば[数3]を使用して、送電網の不具合の影響を受けるエリア内の各アセットの確率Pを計算してもよい。重みWsおよびWssの値を、電気事業者の特定の設置要件に基づいて手動で選択してもよい。
【0053】
ブロック370で、当該確率値をある閾値と比較してもよい。制御ユニット212は、送電網の不具合の影響を受けるエリア内の各アセットの確率Pを、特定の閾値と比較してもよい。あるアセットの確率Pが特定の閾値を超えた場合、制御ユニット212は、このアセットに当該イベントに関連する不具合が発生している可能性があると判定してもよい。
【0054】
ブロック380で、アセットを制御することにより、当該イベントを緩和してもよい。比較の結果に基づいて、制御ユニット212は、不具合が発生している可能性が最も高いアセットがいずれであるかを判定してもよい。
制御ユニット212は送電網管理システム210に、たとえば1つまたはそれ以上の他のアセットを制御することにより、当該イベントを緩和するなど、1つまたはそれ以上の処置を行わせてもよい(たとえば、電力を再送電して、アセットの不具合を回避する)。
【0055】
方法300を、たとえばプロセッサ、コンピュータ、または他のプログラマブル装置に本方法の動作を実行させる、コンピュータ実行可能な命令を含むプログラムを内部に格納した、メモリ214または当業者に既知の他の非一時的コンピュータ可読媒体などの非一時的コンピュータ可読媒体上で具現化してもよいが、これらに限定されない。
【0056】
本開示のさまざまな態様によれば、たとえば放射状送電網などの送電網で発生する、複数のタイプの問題を特定することができる。特定の例について記載したが、本開示による実施形態は、それらの実施態様例によって限定されるものではない。本方法は、上記で特定した問題や、前述の例で使用したアセットのタイプに限定されない。本方法では、さまざまなタイプのイベントを使用してもよく、検知または測定した電圧測定値などの情報を使用してもよく、またステータス情報、もしくは問題について示す他のタイプの情報を使用してもよい。ここで使用するイベントまたは測定値のタイプを、送電網における1つまたはそれ以上のアセットのタイプに基づいて選択してもよい。
【0057】
送電網はさまざまなタイプのアセットを組み合わせたものを含んでいる場合があるため、複数のイベントおよび/または複数のタイプの情報をセンサから収集してもよい。センサをアセットから離隔していてもよいし(たとえば、当該アセットの上流または下流に配置する)、センサを当該アセットと関連付けられてもよい(たとえば、当該アセットと同一の場所に配置する)。
【0058】
イベントまたは測定値を通信する際、有線通信または無線通信を使用してもよい。この通信が、センサからの定期的な通信の一部として包含されてもよいし、これを別個の通信としてもよい。センサからイベントまたは情報を通信する際、当該アセットとセンサとを接続している同じ送電網を使用してもよいし、別の送電網を使用してもよい。
【0059】
本主題をその特定の態様に関して詳述してきたが、当業者であれば、前述の態様について理解することにより、そのような態様の変更物、変形物、および等価物を容易に生成できることを理解するであろう。したがって、限定ではなく例示を目的として本開示を提示しており、当業者には容易に明らかとなるように、本主題へのそのような修正、変形、および/または追加を含むことを除外するものではないことを理解すべきである。
【0060】
本明細書に記載の例および実施形態は、例示のみを目的とする。それを考慮したさまざまな修正例または変更例が、当業者には明らかとなるであろう。これらは、本出願の精神および範囲内、ならびに添付の特許請求の範囲内に含まれるものとする。