(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-13
(45)【発行日】2022-01-25
(54)【発明の名称】洗濯用シート
(51)【国際特許分類】
C11D 17/06 20060101AFI20220118BHJP
C11D 3/37 20060101ALI20220118BHJP
C11D 1/14 20060101ALI20220118BHJP
D06F 35/00 20060101ALI20220118BHJP
【FI】
C11D17/06
C11D3/37
C11D1/14
D06F35/00 Z
(21)【出願番号】P 2020513840
(86)(22)【出願日】2018-09-07
(86)【国際出願番号】 KR2018010514
(87)【国際公開番号】W WO2019050341
(87)【国際公開日】2019-03-14
【審査請求日】2020-03-06
(31)【優先権主張番号】10-2017-0114878
(32)【優先日】2017-09-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】514112488
【氏名又は名称】エルジー ハウスホールド アンド ヘルスケア リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ミン-ソク・チョ
(72)【発明者】
【氏名】キョン-オン・チャ
(72)【発明者】
【氏名】サン-ウン・カク
【審査官】井上 恵理
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/111498(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2012-0021449(KR,A)
【文献】特表2009-534493(JP,A)
【文献】特表2018-537570(JP,A)
【文献】特表2005-538202(JP,A)
【文献】特表2011-510065(JP,A)
【文献】特表2012-511045(JP,A)
【文献】特表2014-510190(JP,A)
【文献】特表2013-536270(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C11D 1/00-19/00
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
C08J 9/00- 9/42
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶性高分子マトリクスの内部に少なくとも一つの洗濯成分が分布している洗濯用シートであって、
前記水溶性高分子が、ポリビニルアルコールであり、
前記洗濯用シートは、
0.4~0.9(g/cm
3
)の気泡度を有し、
前記ポリビニルアルコールは、ガラス転移温度Tgが62~75℃であることを特徴とする洗濯用シート。
【請求項2】
前記気泡度が、0.6~0.8(g/cm
3)であることを特徴とする請求項1に記載の洗濯用シート。
【請求項3】
ドレープ剛軟度が、
3.5~7.5cmであることを特徴とする請求項1に記載の洗濯用シート。
【請求項4】
前記ガラス転移温度が、62~73℃であることを特徴とする請求項
1に記載の洗濯用シート。
【請求項5】
前記洗濯用シートが、界面活性剤、ビルダー及び香からなる群より選択されたいずれか一つ以上の成分をさらに含むことを特徴とする請求項
1に記載の洗濯用シート。
【請求項6】
前記ポリビニルアルコールの総含量が、乾燥後のシートの総重量に対して30~50重量%である請求項
5に記載の洗濯用シート。
【請求項7】
前記界面活性剤の総含量が、乾燥後のシートの総重量に対して30~60重量%であることを特徴とする請求項
5に記載の洗濯用シート。
【請求項8】
前記界面活性剤が、炭素数8~18のアルキル硫酸塩であるアルカリ金属塩であることを特徴とする請求項
7に記載の洗濯用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗濯用シートに関し、より詳しくは、剤形化が容易な洗濯用シートに関する。
【0002】
本出願は、2017年9月8日出願の韓国特許出願第10-2017-0114878号に基づく優先権を主張し、該当出願の明細書及び図面に開示された内容は、すべて本出願に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
現在、高分子フィルムは、精密化学、電子材料などの産業分野だけでなく、医薬品、化粧品などのパーソナルケア製品及び生活用品などの家庭用品にも広く用いられている。医薬または化粧品に高分子フィルムを用いる場合の例としては、基材上に水不溶性高分子フィルムとともに薬剤を積層した湿布剤シートまたは粘着性肌貼りシートなどがあり、このとき、高分子フィルムはマトリクスを形成して徐放型特性を呈する。また、生活用品における高分子フィルムは、通常、特定物質及び有効成分を分画包装して、使用上の便宜を図る包装材として広く用いられている。例えば、粉末状または液状の洗剤のような洗剤組成物を分画包装する材質として高分子フィルムが用いられている。業界では、粉末洗剤の飛散防止と適正使用量を誘導して水質を保護するために、標準使用量袋として水によく溶けるポリビニルアルコールフィルム、ゼラチンフィルム、でん粉フィルム、セルロースフィルムなどを用いている。
【0004】
また、水溶性高分子フィルムを用いて分画包装する技術もあるが、分画包装した製品の保管または運搬時、密封が破れて内容物が漏れることがあり、フィルムの表面から有効成分が染み出るなど、製品の保管安定性が非常に低下していた。また、包装材として使用した水溶性フィルムの場合、大気中の水分に対する安定性及び内容物に対した耐久性を有するように設計されるが、それによって、低温における溶解がかなり長い時間を要し、完全溶解されず、フィルムの残物が残る不具合があった。
【0005】
水溶性高分子フィルム形成組成物に洗濯用洗剤成分及び洗濯用柔軟成分が分布して固形化した洗濯用シートを提供している場合もあるが、洗濯用洗剤成分と洗濯用柔軟成分とが複合体(complex)を形成することによって、各々の性能を効果的に発現できないという問題があった。
【0006】
一方、水溶性フィルムが形成する高分子マトリクス内に分散している洗剤成分が水に溶けながら洗濯効果を奏する水溶性洗濯シートがあるが、使用上の便利にもかかわらず、依然としてさまざまな問題が存在した。例えば、シートを製造する過程で、水溶性洗濯シートが硬すぎれば、壊れやすくなり、柔らかすぎれば、所望するサイズへの裁断及び移送が困難となる。また、シートを流通して使用する過程においても、シートが壊れやすい場合、商品性に問題を起こすこともあった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、洗濯用シートの製造時におけるさまざまな問題を認識し、これを解決することを目的とする。
【0008】
本発明は、水溶性洗濯シートが硬すぎれば、壊れやすくなり、柔らかすぎれば、希望するサイズへの裁断が困難となり、移送時に不良がよく発生していた問題を解決することを目的とする。
【0009】
本発明は、壊れにくく、裁断が容易な洗濯用シートを提供することを目的とする。
【0010】
本発明は、望ましい洗濯用シートのさまざまなパラメータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、一実施例で洗濯用シートを提供し、望ましくは、水溶性高分子を含む洗濯用シートを提供することを目的とする。
【0012】
本発明の洗濯用シートは、水溶性高分子から形成された洗濯用シートである。
【0013】
前記洗濯用シートは、水のない環境ではシート形状を有しており、水に触れると、前記シートが溶けながらシートの高分子マトリクスの内部及び/または外部に存在していた洗濯用成分が放出されながら洗濯が行われるようにする。
【0014】
望ましくは、前記洗濯用シートは、ポリビニルアルコールまたはポリビニルアルコール系重合体(以下、ポリビニルアルコール)を水溶性高分子に用いることができる。
【0015】
本発明の一実施例は、水溶性高分子マトリクスの内部に少なくとも一つの洗濯成分が分布している洗濯用シートであって、前記洗濯用シートは、
(i)気泡度が0.5~0.9(g/cm3);または、
(ii)ドレープ剛軟度(drape stiffness)が3.5~7.5cmであり得る。
【0016】
特に、本発明の発明者は、洗濯用シートが前記特性を有するとき、壊れにくく、洗濯用シートの裁断が容易となることを確認した。
【0017】
望ましくは、前記気泡度(g/cm2)は、0.5~0.9、より望ましくは0.6~0.8を有し得る。前記範囲から外れる場合、シートの製造は容易となるが、水によく溶けず、所望の量だけを破れて使いにくくなるか、溶解は容易であるが、製造時においてよく切れるという問題が発生し得る。
【0018】
望ましくは、前記ドレープ剛軟度は、3.5~7.5cm、より望ましくは4.5~6.5cmを有し得る。前記範囲から外れる場合、シートの製造は容易となるが、水によく溶けず、所望の量だけを破れて使いにくくなるか、溶解は容易であるが、製造時によく切れてしまう問題が発生し得る。
【0019】
本発明において、前記気泡度は、次のような方法で算定した。
【0020】
気泡度は、洗濯用シート内に含有されている気泡の単位体積当たりの含量で示した。本明細書では、g/cm3単位で示した。
【0021】
気泡度は、シートの単位体積当たり含量である真密度を測定し、以下の式で計算した。
<式> 気泡度=1-真密度
【0022】
前記ドレープ剛軟度は、カンチレバーで測定し、ISO 9073-7、ASTM D-5732を用いて2.5cm×15cmの試験片を41.5゜の傾斜面に当たるまで押し出し、その長さを測定した。
【0023】
ドレープ剛軟度は、下記の式で導出した。
C=D/2. G=C3×W
C:ドレープ剛軟度
D:スタンド傾斜面に垂れた試験片の長さ(cm)
G:フレックス剛軟度(Flex Stiffness)
W:サンプルの重さ(Weight of sample(g/cm2))
【0024】
本発明の発明者は、洗濯用シートが前記のようなドレープ剛軟度及び気泡度を有するとき、シートの溶解度にも影響を及ぼすということが分かった。しかのみならず、シートの気泡度及びドレープ剛軟度が、シートを使用者が所望のサイズに容易に破って使用できる程度に影響を及ぼすということを初めで見出した。
【0025】
本発明において、前記剛軟度は、水溶性高分子の分子量または鹸化度、洗濯用シートの気泡度、Tg、添加剤またはこれらの組合せによって調節可能である。
【0026】
本発明の発明者は、他の実施例で水溶性高分子の自体特性が、洗濯用シートの物性にも影響を及ぼすことを確認した。
【0027】
前記水溶性高分子としては、ポリビニルアルコールまたはポリビニルアルコール系重合体を用いることが望ましく、 ポリビニルアルコールまたはポリビニルアルコール系重合体は、ガラス転移温度によって洗濯用シートの溶解度にも影響を及ぼし、シートが容易に破れるようにし、製作を容易にする。
【0028】
本発明の洗濯用シートに含まれる水溶性高分子としては、ポリビニルアルコールのガラス転移温度Tgが56~75℃、望ましくは、62~73℃であることが望ましい。
【0029】
ガラス転移温度Tgは、高分子物質が温度によって分子が活性を有し、動き出す時点の温度を意味する。
【0030】
本発明の発明者は、前記ガラス転移温度が56~75℃の範囲を有するポリビニルアルコールは、シートの溶解度を向上させ、シートが容易に破れ、壊れにくいことを確認した。
【0031】
本発明による洗濯用シートは、ポリビニルアルコールを適正量の水に溶解させてポリビニルアルコール重合体溶液を製造した後、界面活性剤などの他の成分をよく混合し、これを一定の厚さのシートに製造した後、乾燥することで製造することができる。また、ポリビニルアルコールを水に溶解させる前に、界面活性剤などの他の成分を先に溶解させることができるなど、本発明の洗濯用シートは、前記製造方法に限定して製造されることではない。
【0032】
本発明の洗濯用シートは、水溶性高分子が溶解された水溶性高分子溶液を乾燥して製造でき、前記水溶性高分子は、乾燥過程で高分子同士がマトリクス構造を形成するようになる。前記水溶性高分子溶液は、洗濯成分を含み得、洗濯成分が溶解された前記水溶性高分子溶液が乾燥されながら高分子マトリクス構造の内部に洗濯成分が含有され得る。乾燥過程で前記洗濯成分の一部は、マトリクス構造の外部にも存在し得る。
【0033】
前記洗濯成分の例には、「洗濯用洗剤成分」が挙げられる。
【0034】
前記洗濯用洗剤成分は、通常使用されている陰イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤または両性界面活性剤であり得、これらの二つ以上が混合された形態であり得る。
【0035】
前記陰イオン界面活性剤としては、せっけんのようなカルボン酸塩化合物、高級アルコール、高級アルキルエステル、オレフィンを硫酸化した硫酸エステル塩化合物、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ラウリル硫酸塩を含む硫酸塩化合物、高級アルコールをリン酸化したリン酸塩化合物が代表的に挙げられる。
【0036】
例えば、これらに限定されないが、ラウリルベンゼンスルホン酸、α-オレフィンスルホン酸塩、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸エトキシル化ナトリウム(sodium lauryl ethoxylated sulfate)、sec-アルカンスルホン酸塩(secondary alkanesulfonate)及びメチルエステルスルホン酸塩(methyl ester sulfonate)などが挙げられ、これらを単独または2以上の混合物で使用することができる。望ましくは、前記陰イオン界面活性剤のうち、ラウリル硫酸ナトリウムを使用することができる。
【0037】
また、前記非イオン性界面活性剤としては、これらに限定されないが、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、コカミドモノメチルアミン、コカミドジメチルアミン、コカミドモノエチルアミン、脂肪酸アルカノールアミン、アミンオキサイド、アルキルポリグルコシド、メチルポリエチレンアルキルエーテルまたは糖エーテルなどが挙げられ、これらを単独または2以上の混合物で使用することができる。特に、下記化学式1で表されるポリオキシアルキレンアルキルエーテル、または、下記化学式2で表されるポリオキシアルキレンアルキルフェニルエテルを使用することが望ましい。
【0038】
[化学式1]
Cm-H2m+1-O-(CH2CH2O)n-H
[化学式2]
CmH2m+1C6H5-O-(CH2CH2O)n-H
【0039】
上記化学式1及び化学式2において、mは5~21の整数であり、nは1~20の整数である。
【0040】
また、前記両性界面活性剤は、これらに限定されないが、アミンオキサイド、コカミドプロピルベタイン(cocamidopropyl betaine)などがあり、これらを単独または2以上の混合物で使用することができる。
【0041】
また、前記洗濯成分の例としては、「洗濯用柔軟成分」が挙げられる。
【0042】
本発明の前記「洗濯用柔軟成分」は、通常使用されている繊維柔軟剤を含む。
【0043】
より詳しくは、本発明による洗濯製品は、繊維柔軟剤として第四級アンモニウム塩系の陽イオン界面活性剤を使用することができる。例えば、下記化学式3で表されるジアルキルジメチル塩化アンモニウム、下記化学式4で表されるジアルキルイミダゾリニウム塩(dialkyl imidazolinium salt)、下記化学式5で表されるジアルキルアミド第四級アンモニウム塩(dialkylamido quaternary ammonium salt)及びエステルクワット型(ester quat type)などがあり、これらから1つ以上を選択して使用することができる。
【0044】
【0045】
前記化学式3~5において、各々のRは、相互独立的に炭素数1~30の線状または分枝状、飽和または不飽和アルキル炭化水素からなる群より選択される。
【0046】
また、前記繊維柔軟剤の成分として、天然または合成の陽イオン性ポリマーを使用することができる。例えば、これらに限定されないが、グアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロライド、ヒドロキシプロピルグアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロライドなどの陽イオングアー、セルロース(ポリクオタニウム-10)、ポリクオタニウムシリーズ、ジメチルジアリルアンモニウムクロライドポリマー、アクリルアミド-ジメチルジアリルアンモニウムコポリマー、ポリビニルピロリドン(PVP)-ジメチルアミノエチルメタクリレートコポリマー、アクリル酸-ジメチルジアリルアンモニウムクロライドコポリマー、アクリルアミド-ジメチルアミノエチルメタクリレートメチルクロライドコポリマー、トリメチルアミノエチルメタクリレートポリマーなどを単独または2以上の混合物で使用することができる。
【0047】
本発明による洗濯用シートは、シートのフィルム剤形性、保管安定性、製造容易性などを阻害しない範囲内で洗浄性能またはフィルム形成能を向上させるために、蛍光増白剤;酵素(例えば、セルラーゼ、プロテアーゼなど);アルカリビルダー(例えば、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アルカリケイ酸ナトリウム、中性ケイ酸ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、ゼオライト(アルミノケイ酸ナトリウム)、セスキ炭酸ナトリウム、MEA、TEA);崩壊剤/崩壊補助剤(例えば、でん粉、セルロース誘導体、塩化ナトリウム、クエン酸、グリセリン、プロピレングリコール);繊維柔軟剤(例えば、4級アムモニウム塩系の陽イオン界面活性剤、シリコーン類繊維柔軟成分);漂白剤(例えば、過ホウ酸塩、過炭酸塩、過リン酸塩、ジアシル、テトラアシルペルオキサイド);分散剤/乳化剤(例えば、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー);殺菌/消毒剤(例えば、次亜塩素酸ナトリウム、過酸化水素、過酸化尿素);香料;防腐剤;色素;抗菌剤などの添加剤をさらに含み得る。
【0048】
前記添加剤は、乾燥後のシートの総重量に対し、0.1~30重量%で含まれ得る。
【0049】
本発明による洗濯用シートの厚さは、1μm~1cmであることが望ましく、5μm~0.5cmであることがより望ましく、50μm~1mmであることが最も望ましい。乾燥した洗濯用シートの厚さが1μm未満であれば、有効成分の担持が不十分となり、フィルムの強度が弱くなり、所望の性能を得ることが困難となり、乾燥した洗濯用シートの厚さが1cmを超過すれば、溶解が遅くなってしまい、洗浄性能が低下する恐れがある。
【0050】
本発明のシート型洗濯洗剤は、洗濯機の中に洗濯物と共に入れて使用すれば、完全溶解されて除去過程が不要である。
【0051】
本発明の洗濯用シートは、本発明による一層のシートに加え、他のシートが積層されて二層以上が一体化した状態で用いることができる。
【0052】
本発明のポリビニルアルコールの総含量は、乾燥後のシート総重量に対し、20~60重量%で含まれ得、望ましくは30~50重量%で含まれ得る。前記含量範囲で、本発明の洗濯用シートが達成しようとする物性を有し易くなる。
【0053】
本発明のPVAの分子量は、10,000~100,000である重合体が望ましく、より望ましくは20,000~50,000である重合体が使われ得る。
【0054】
本発明の洗濯用シートに含まれる界面活性剤の総含量は、乾燥後のシートの総重量に対し、20~70重量%で含まれ得、望ましくは30~60重量%で含まれ得る。前記範囲であるとき、界面活性剤による影響なくシートの製造が易くなる。
【0055】
本発明による洗濯用シートは、洗浄効果のための界面活性剤成分として、アルカリ金属塩である炭素数8~18のアルキル硫酸塩を含み、望ましくはラウリル硫酸ナトリウムを含み得る。前記洗濯用シートは、望ましくは界面活性剤の総重量を基準にして、前記メイン界面活性剤を30~80重量%、より望ましくは40~75重量%、より望ましくは50~70重量%含み得る。
【0056】
また、本発明は、ポリビニルアルコールまたはポリビニルアルコール系共重合体と洗濯有効成分として界面活性剤を用いて製造される洗濯用シートにおいて、メイン界面活性剤として、アルカリ金属塩である炭素数8~18のアルキル硫酸塩を用い、補助界面活性剤として、非イオン界面活性剤であるポリオキシエチレンアルキルエーテル、または陰イオン界面活性剤として構造内にエチレンオキサイド基のある界面活性剤または芳香族界面活性剤、またはエチレンオキサイド基がなくかつ非芳香族の界面活性剤を用いることを特徴とする洗濯用シートを提供することができる。
【発明の効果】
【0057】
本発明は、溶解度が優秀な洗濯用シートを提供する。
【0058】
本発明は、製造過程であまり壊れない洗濯用シートを提供する。
【0059】
本発明の洗濯用シートは、容易に破るか切ることができ、使用量を便利に調節することができる。
【発明を実施するための形態】
【0060】
以下、本発明を具体的な実施例を挙げて説明する。しかし、本発明による実施例は多くの他の形態に変形され得、本発明の範囲が後述する実施例に限定されると解釈されてはならない。本発明の実施例は当業界で平均的な知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。
【実施例】
【0061】
1.水溶性洗濯シートの気泡度、物性及び裁断の便利性
(1)シートの製造
【表1】
【0062】
前記表1に示したような気泡度を有するシートを各々製造した。PVA(鹸化度 86.5%、平均重合度 500)200gを、蒸留水800gに投入した後、80℃で4時間溶解し、20重量%のPVA水溶液を製造した。製造したPVA水溶液に、界面活性剤(ラウリル硫酸ナトリウム,SLS)、ビルダー(炭酸ナトリウム)、香などを(PVA 40重量%、界面活性剤 48重量%、ビルダー 10重量%、香 2重量%の割合)で投入し、メカニカル撹拌機(mechanical stirrer)を用いて混合して溶解した。この際、メカニカルスターラーのrpm及び撹拌時間を調節し、前記表のような気泡度を各々有するPVA水溶液を製造し、離型フィルムの上に載せた後、エルコメーター(Elcometer)社のフィルムアプリケータ(film applicator)を用いて一定の厚さで製造した後、105℃のドライングオーブンで10分間乾燥してPVAフィルムシートを製造した。気泡度は、気泡調節装置を用いて空気注入量及び撹拌機の回転数によって調節した。
【0063】
(2)製造物性結果
イ.溶解度測定
溶解度は、シートを5cm×5cmで切断して500mlのビーカーに15℃の浄水を300ml投入した後、300rpmの速度で撹拌した。フィルムが完全に崩壊されて溶解されるのにかかった時間を測定し、優秀(3分以内)、普通(3分~5分)、不足(5分~10分)及び不良(10分超過)の4段階で評価した。
【0064】
ロ.気泡度(g/cm3)の算定基準
前記気泡度は、シート内に含有されている気泡の単位体積当たりの含量で示した。
気泡度は、シートの単位体積当たり含量である真密度を測定し、下記の式で計算した。
<式>気泡度=1-真密度
【0065】
ハ.物性評価
物性結果:〇(製造優秀)、△(製造良好)、×(製造不良:よく切れるか、壊れてしまう)
【0066】
ニ.裁断の便利性
裁断の便利性は、製造されたシートを10人の使用者に配った後、所望のサイズに手を用いて容易に破れる程度を3点尺度で評価した。
官能評価結果:1(不良:よく切られない)、2(不足:所望のサイズに切りにくい)、3(良好:所望のサイズに切り易い)
【0067】
ホ.結果
前記方法で製造した結果、区分01、02の気泡度を有するシートの場合、溶解度が5分以上と悪くて商品としての価値が落ちており、区分03~08の気泡度を有するシートの場合、溶解性に優れているが、区分8のように気泡度が0.9を超えると、製品がよく切られてしまうという問題が発生した。
【0068】
気泡度を0.5~0.9の範囲で製造する場合、製造も容易であり、かつ溶解度にも優れたシートを得ることができた。
【0069】
2.ドレープ剛軟度の測定
(1)シートの製造
下記の表2及び表3の洗濯用シートは、前記と同様の方法で製造した。
【0070】
【0071】
【0072】
(2)製造物性の結果
イ.ドレープ剛軟度(drape stiffness)の測定方法
ドレープ剛軟度は、下記の式で導出した。
【0073】
C=D/2.G=C3×W
C:ドレープ剛軟度
D:スタンド傾斜面に垂れた試験片の長さ(cm)
G:フレックス剛軟度(Flex Stiffness)
W:サンプルの重さ(Weight of sample(g/cm2))
カンチレバー法(ISO 9073-7,ASTM D-5732)で測定し、2.5cm×15cmの洗濯用シートを41.5゜の傾斜面に当たるまで押し出し、その長さを測定した。
【0074】
ロ.物性評価
物性結果:〇(製造優秀)、△(製造良好)、×(製造不良:よく切れるか壊れてしまう)
【0075】
ハ.裁断の便利性
裁断の便利性は、製造されたシートを10人の使用者に配った後、所望のサイズに手を用いて容易に破れる程度を3点尺度で評価した。
官能評価結果:1(不良:よく切られない)、2(不足:所望のサイズに切りにくい)、3(良好:所望のサイズに切り易い)
【0076】
ニ.結果
区分11~17までは、製造時においてシートがよく壊れなかった。特に、13~16までは、シートの製造も容易であり、かつ製造されたシートが壊れなかった。一方、区分24及び25を見れば、本発明の気泡度とドレープ剛軟度とを共に満たす場合、裁断の便利性及び優れた物性を有することを確認した。
【0077】
3.水溶性高分子のガラス転移温度及び物性
(1)シートの製造
【表4】
【0078】
前記表に示したようなTgを有するPVAを各々用いてシートを製造した。各PVA(前記29~40)200gを蒸留水800gに投入した後、80℃で4時間溶解して20重量%のPVA水溶液を製造した。製造した PVA 水溶液に界面活性剤(SLS)、ビルダー(炭酸ナトリウム)、香などを、PVA 40重量%、界面活性剤 48重量%、ビルダー 10重量%、香 2重量%の割合で投入し、メカニカル撹拌機を用いて混合して溶解した。製造したPVA水溶液を離型フィルムの上に載せた後、エルコメーター社のフィルムアプリケータを用いて一定の厚さで製造した後、105℃のドライングオーブンで10分間乾燥してPVAフィルムシート(厚さ0.01cm)を製造した。
【0079】
(2)製造物性結果
イ.Tg測定
Mettler-Toledo社のheat Flux DSCで昇温速度10℃/minで測定した。
【0080】
ロ.物性評価
物性結果:〇(製造優秀)、△(製造良好)、×(製造不良:よく切れるか、壊れてしまう)
【0081】
ハ.結果
このように製造した結果、区分29、30、38、39及び40のTgを有するPVAを用いた場合には、よく切れるか壊れてしまい、剤形化しにくく、商品としての価値が落ちており、区分31~37のTgを有するPVAを用いた場合には、比較的剤形化が容易で、かつ製品状態も良好であった。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明は、水に完全に溶解されることで洗濯後に除去作業が不要となる洗濯用シートを提供する。本発明の洗浄性能に優れ、使用が簡便であり、使用者が必要な分だけ便利に切って使用することができる。