(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-13
(45)【発行日】2022-01-25
(54)【発明の名称】音響デバイスの並列能動騒音低減(ANR)及びヒアスルー信号伝達経路
(51)【国際特許分類】
G10K 11/178 20060101AFI20220118BHJP
H04R 1/10 20060101ALI20220118BHJP
H04R 3/00 20060101ALI20220118BHJP
【FI】
G10K11/178 140
H04R1/10 104Z
H04R3/00 310
H04R3/00 320
(21)【出願番号】P 2020515864
(86)(22)【出願日】2017-11-27
(86)【国際出願番号】 US2017063265
(87)【国際公開番号】W WO2019059955
(87)【国際公開日】2019-03-28
【審査請求日】2020-03-17
(32)【優先日】2017-09-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591009509
【氏名又は名称】ボーズ・コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】BOSE CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ライアン・ターミューレン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・アレン・ルール
(72)【発明者】
【氏名】デール・マケルホーン
【審査官】冨澤 直樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-173369(JP,A)
【文献】特開2010-183451(JP,A)
【文献】国際公開第2016/002358(WO,A1)
【文献】特表2012-525779(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10K 11/178
H04R 1/10
H04R 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
方法であって、
能動騒音低減(ANR)デバイスに関連付けられている1つ以上のセンサによって捕捉された入力信号を受信することと、
ANR信号伝達経路内に配設された第1のフィルタを使用して前記入力信号を処理して、前記ANRデバイスの音響トランスデューサの第1の信号を生成することと、
前記ANR信号伝達経路と並列に配設されたパススルー信号伝達経路内で前記入力信号を処理して、前記音響トランスデューサの第2の信号を生成することであって、前記パススルー信号伝達経路は、前記パススルー信号伝達経路に関連付けられている可変利得に従って、前記入力信号の少なくとも一部分が前記音響トランスデューサに通過することを可能にするように構成されている、生成することと、
前記第1の信号を前記第2の信号と結合することに基づいて、前記音響トランスデューサの出力信号を生成することと、を含
み、
前記第1のフィルタが、複数の選択可能なデジタルフィルタを含むフィルタバンクを含み、前記フィルタバンク内の各デジタルフィルタが、前記パススルー信号伝達経路に関連付けられている前記可変利得の値に対応する、方法。
【請求項2】
前記1つ以上のセンサが、前記ANRデバイスのフィードフォワードマイクロフォンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記パススルー信号伝達経路が、第2のフィルタを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第1のフィルタ及び前記第2のフィルタの各々の係数が、実質的に固定されている、請求項
3に記載の方法。
【請求項5】
前記第1のフィルタの係数のセットが、前記第2のフィルタの係数のセットとは実質的に独立して決定される、請求項
3に記載の方法。
【請求項6】
前記ANR信号伝達経路に関連付けられている第1の待ち時間が、前記パススルー信号伝達経路に関連付けられている第2の待ち時間とは実質的に異なる、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記パススルー信号経路に関連付けられている前記可変利得を示すユーザ入力を受信することと、
前記ユーザ入力に従って、前記パススルー信号経路内に配設された可変利得増幅器(VGA)を調整することと、を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記パススルー信号経路に関連付けられている前記可変利得を示すユーザ入力を受信することと、
前記ユーザ入力に従って、前記パススルー信号伝達経路内に配設された前記第1のフィルタ及び第2のフィルタのうちの少なくとも1つの係数を選択することと、を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記第1のフィルタ及び前記第2のフィルタのうちの前記少なくとも1つの前記係数が、前記対応するフィルタの目標スペクトル特性に従って決定される、請求項
8に記載の方法。
【請求項10】
前記目標スペクトル特性が、スペクトル平坦度である、請求項
9に記載の方法。
【請求項11】
前記ANR信号伝達経路及びパススルー信号伝達経路が、前記ANRデバイスのフィードフォワード信号伝達経路内に配設されている、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
能動騒音低減(ANR)デバイスであって、
前記ANRデバイスの外部環境を示す入力信号を生成するように構成された1つ以上のセンサと、
出力音声を生成するように構成された音響トランスデューサと、
前記ANRデバイスのANR信号伝達経路内に配設された第1のフィルタであって、前記第1のフィルタが、前記入力信号を処理して、前記ANRデバイスの音響トランスデューサの第1の信号を生成するように構成されている、第1のフィルタと、
前記ANR信号伝達経路と並列に配設されたパススルー信号伝達経路であって、前記パススルー信号伝達経路が、前記音響トランスデューサの第2の信号を生成するように構成されており、前記パススルー信号伝達経路は、前記パススルー信号伝達経路に関連付けられている可変利得に従って、前記入力信号の少なくとも一部分が前記音響トランスデューサに通過することを可能にするように構成されている、パススルー信号伝達経路と、を備え、
前記音響トランスデューサが、前記第1の信号と前記第2の信号との結合である出力信号によって駆動さ
れ、
前記第1のフィルタが、複数の選択可能なデジタルフィルタを含むフィルタバンクを含み、前記フィルタバンク内の各デジタルフィルタが、前記パススルー信号伝達経路に関連付けられている前記可変利得の値に対応する、能動騒音低減(ANR)デバイス。
【請求項13】
前記1つ以上のセンサが、前記ANRデバイスのフィードフォワードマイクロフォンを含む、請求項1
2に記載のANRデバイス。
【請求項14】
前記パススルー信号伝達経路が、第2のフィルタを含む、請求項1
2に記載のANRデバイス。
【請求項15】
前記第1のフィルタ及び前記第2のフィルタの各々の係数が、実質的に固定されている、請求項1
4に記載のANRデバイス。
【請求項16】
前記第1のフィルタの係数のセットが、前記第2のフィルタの係数のセットとは実質的に独立して決定される、請求項1
4に記載のANRデバイス。
【請求項17】
前記ANR信号伝達経路に関連付けられている第1の待ち時間が、前記パススルー信号伝達経路に関連付けられている第2の待ち時間とは実質的に異なる、請求項1
2に記載のANRデバイス。
【請求項18】
前記パススルー信号伝達経路内に配設された可変利得増幅器(VGA)を更に備え、前記VGAが、入力デバイスを使用して受信されたユーザ入力に従って、前記パススルー信号伝達経路に関連付けられている前記可変利得を制御するように構成されている、請求項1
2に記載のANRデバイス。
【請求項19】
前記ユーザ入力に従って、前記パススルー信号伝達経路内に配設された前記第1のフィルタ及び第2のフィルタのうちの少なくとも1つの係数を選択するように構成された1つ以上の処理デバイスを更に備える、請求項
18に記載のANRデバイス。
【請求項20】
前記第1のフィルタ及び前記第2のフィルタのうちの前記少なくとも1つの前記係数が、前記対応するフィルタの目標スペクトル特性に従って決定される、請求項
19に記載のANRデバイス。
【請求項21】
前記目標スペクトル特性が、スペクトル平坦度である、請求項2
0に記載のANRデバイス。
【請求項22】
前記ANR信号伝達経路及びパススルー信号伝達経路が、前記ANRデバイスのフィードフォワード信号伝達経路内に配設されている、請求項1
2に記載のANRデバイス。
【請求項23】
1つ以上の機械可読記憶デバイスであって、前記1つ以上の機械可読記憶デバイスにおいて符号化されたコンピュータ可読命令を有し、前記コンピュータ可読命令は、1つ以上の処理デバイスに、
能動騒音低減(ANR)デバイスに関連付けられている1つ以上のセンサによって捕捉された入力信号を受信することと、
ANR信号伝達経路内に配設された第1のフィルタを使用して前記入力信号を処理して、前記ANRデバイスの音響トランスデューサの第1の信号を生成することと、
前記ANR信号伝達経路と並列のパススルー信号伝達経路内で前記入力信号を処理して、前記音響トランスデューサの第2の信号を生成することであって、前記パススルー信号伝達経路は、前記パススルー信号伝達経路に関連付けられている可変利得に従って、前記入力信号の少なくとも一部分が前記音響トランスデューサに通過することを可能にするように構成されている、生成することと、
前記第1の信号を前記第2の信号と結合することに基づいて、前記音響トランスデューサの出力信号を生成することと、を含
み、
前記第1のフィルタが、複数の選択可能なデジタルフィルタを含むフィルタバンクを含み、前記フィルタバンク内の各デジタルフィルタが、前記パススルー信号伝達経路に関連付けられている前記可変利得の値に対応する、動作を実施させる、1つ以上の機械可読記憶デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、隔離効果を低減するためのヒアスルー機能も可能にする、能動騒音低減(active noise reduction、ANR)デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
ヘッドフォンなどの音響デバイスは、周囲騒音の少なくとも部分がユーザの耳に到達するのを阻止する能動騒音低減(ANR)機能を含み得る。したがって、ANRデバイスは、ユーザを少なくとも部分的に環境から隔離する音響隔離効果を生成する。このような隔離の効果を軽減するために、いくつかの音響デバイスは、一定の時間期間にわたって騒音低減を停止し、周囲音がユーザの耳に通過することを可能にする、ヒアスルーモードを含むことができる。このような音響デバイスの例は、米国特許第8,155,334号及び米国特許第8,798,283号に見出すことができ、その内容全体は、参照により本明細書に組み込まれる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
概して、一態様では、本文書は、能動騒音低減(ANR)デバイスに関連付けられている1つ以上のセンサによって捕捉された入力信号を受信することと、ANR信号伝達経路内に配設された第1のフィルタを使用して入力信号を処理して、ANRデバイスの音響トランスデューサの第1の信号を生成することと、ANR信号伝達経路と並列に配設されたパススルー信号伝達経路内で入力信号を処理して、音響トランスデューサの第2の信号を生成することと、を含む方法を特徴としている。パススルー信号伝達経路は、パススルー信号伝達経路に関連付けられている可変利得に従って、入力信号の少なくとも一部分が音響トランスデューサに通過することを可能にするように構成されている。方法はまた、第1の信号を第2の信号と結合することに基づいて、音響トランスデューサの出力信号を生成することも含む。
【0004】
別の態様では、この文書は、ANRデバイスの外部環境を示す入力信号を生成するように構成された1つ以上のセンサと、出力音声を生成するように構成された音響トランスデューサと、を含む、能動騒音低減(ANR)デバイスを特徴とする。デバイスはまた、ANRデバイスのANR信号伝達経路内に配設された第1のフィルタも含み、第1のフィルタは、入力信号を処理して、ANRデバイスの音響トランスデューサの第1の信号を生成するように構成されている。デバイスは、ANR信号伝達経路と並列に配設されたパススルー信号伝達経路を更に含み、パススルー信号伝達経路は、音響トランスデューサの第2の信号を生成するように構成されている。パススルー信号伝達経路は、パススルー信号伝達経路に関連付けられている可変利得に従って、入力信号の少なくとも一部分が音響トランスデューサに通過することを可能にするように構成されており、音響トランスデューサは、第1の信号と第2の信号との結合である出力信号によって駆動される。
【0005】
別の態様では、本文書は、又はより多くの機械可読記憶デバイスを特徴とし、このデバイスは、このデバイスにおいて符号化された、1つ以上の処理デバイスに様々な動作を実施させるためのコンピュータ可読命令を有する。動作は、能動騒音低減(ANR)デバイスに関連付けられている1つ以上のセンサによって捕捉された入力信号を受信することと、ANR信号伝達経路内に配設された第1のフィルタを使用して入力信号を処理して、ANRデバイスの音響トランスデューサの第1の信号を生成することと、ANR信号伝達経路と並列に配設されたパススルー信号伝達経路内で入力信号を処理して、音響トランスデューサの第2の信号を生成することと、を含む。パススルー信号伝達経路は、パススルー信号伝達経路に関連付けられている可変利得に従って、入力信号の少なくとも一部分が音響トランスデューサに通過することを可能にするように構成されている。動作はまた、第1の信号を第2の信号と結合することに基づいて、音響トランスデューサの出力信号を生成することを含む。
【0006】
上記の態様の実装は、以下のうちの1つ以上を含むことができる。1つ以上のセンサは、ANRデバイスのフィードフォワードマイクロフォンを含むことができる。ANRフィルタは、複数の選択可能なデジタルフィルタを含むフィルタバンクを含むことができ、フィルタバンク内の各デジタルフィルタは、パススルー信号伝達経路に関連付けられている可変利得の値に対応する。パススルー信号伝達経路は、第2のフィルタを含むことができる。第1のフィルタ及び第2のフィルタの各々の係数は、実質的に固定され得る。第1のフィルタの係数のセットは、第2のフィルタの係数のセットとは実質的に独立して決定され得る。ANR信号伝達経路に関連付けられている第1の待ち時間は、パススルー信号伝達経路に関連付けられている第2の待ち時間とは実質的に異なり得る。パススルー信号経路に関連付けられている可変利得を示すユーザ入力が受信され得、パススルー信号経路内に配設された可変利得増幅器(variable gain amplifier、VGA)がユーザ入力に従って調整され得る。パススルー信号伝達経路内に配設された第1のフィルタ及び第2のフィルタのうちの少なくとも1つの係数もまた、ユーザ入力に従って選択されてもよい。第1のフィルタ及び第2のフィルタのうちの少なくとも1つの係数は、対応するフィルタの目標スペクトル特性に従って決定されてもよい。目標スペクトル特性は、スペクトル平坦度であり得る。ANR信号伝達経路及びパススルー信号伝達経路は、ANRデバイスのフィードフォワード信号伝達経路内に配設され得る。
【0007】
本明細書に記載される様々な実装は、以下の利点のうちの1つ以上を提供し得る。ANR信号伝達経路と並列な可変利得のヒアスルー又はパススルー信号伝達経路を提供することは、騒音低減機能を実現することを可能にする一方で、同時に、いくつかの場合では、ユーザの好みに応じて一定程度まで周囲音を通過させることを可能にする。これにより、ユーザが聞きたい周囲騒音の量に、個別の工程として、又は実質的に連続して、「ボリューム制御」を実施することが可能になる。いくつかの場合では、これは、様々な異なる種類の環境において、このようなデバイスをより使用しやすくすることによって、対応する音響デバイス(例えば、ヘッドフォン)に関連付けられているユーザエクスペリエンスを改善することができる。いくつかの場合では、音響デバイスの性能は、ユーザがパススルー信号伝達経路を介して受信したい騒音の量に対して不変であるフィルタを使用することによって、更に改善することができる。例えば、別個のフィルタの選択/計算は、パススルー信号経路の異なる利得設定のために回避することができ、これにより、メモリ及び/又は計算能力要件を低減することができる。この利点は、いくつかの場合では、例えば、限定された実数状態及びコンピューティングリソースを有する小型のフォームファクタデバイスにおいて顕著であり得る。いくつかの場合では、並列信号伝達経路の各々におけるフィルタの次数は、パススルー信号経路の異なる利得設定のために計算/選択されるフィルタの次数と比較して、より小さくすることができる。
【0008】
本概要の項に記載される特徴を含む、本開示に記載される特徴の2つ以上は、特に本明細書に記載されない実装を形成するために組み合わされ得る。1つ以上の実装の詳細は、添付図面及び以下の説明において述べられる。他の特徴、目的、及び利点は、本説明及び図面から、並びに特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】インイヤー能動騒音低減(ANR)ヘッドフォンの一例を示す。
【
図2A】ANRデバイスの内の1つの例示的な構成のブロック図である。
【
図2B】ANRデバイスの別の例示的な構成のブロック図である。
【
図3A】パススルー信号伝達経路に並列に配設されたANR信号伝達経路を有する、フィードフォワード補償器のブロック図である。
【
図3B】フィードフォワード経路内のパススルー信号伝達経路に並列に配設されたANR信号伝達経路を有するANRデバイスの1つの例示的な構成のブロック図である。
【
図4】ANR信号伝達経路、及び並列に配設されたパススルー信号伝達経路を含む、ANRデバイス内に出力信号を生成するための1つの例示的なプロセスのフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本文書は、音響デバイスにおける能動騒音低減(ANR)の使用を可能にする一方で、同時に、ユーザが聞きたい周囲騒音の量をユーザが制御することを可能にする技術について説明する。ANRヘッドフォンなどの能動騒音低減(ANR)デバイスは、周囲騒音及び音の影響を低減することによって潜在的に没入型のリスニングエクスペリエンスを提供するために使用される。しかしながら、周囲騒音の影響を遮断することによって、ANRデバイスは、環境から音響隔離を生成する可能性があり、これはいくつかの条件では望ましくない場合がある。例えば、空港で待機しているユーザは、ANRヘッドフォンを使用している間にフライトアナウンスを認識したい場合がある。別の実施例では、ANRヘッドフォンを使用して飛行中の機内の騒音を相殺する一方で、ユーザは、ヘッドフォンを外す必要なく、客室乗務員と通信できるようにしたい場合がある。
【0011】
いくつかのヘッドフォンは、一般に「トークスルー」又は「モニタ」と呼ばれる機能を提供し、この機能では、外部マイクロフォンは、ユーザが聞きたい外部音を検出するために使用される。例えば、外部マイクロフォンは、音声帯域又は対象となるいくつかの他の周波数帯域の音を検出すると、対応する周波数帯域の信号がヘッドフォンを通って送られることを可能にすることができる。いくつかの他のヘッドフォンはマルチモード動作を可能にし、「ヒアスルー」モードでは、ANR機能は、少なくとも周波数の範囲にわたってスイッチがオフにされるか又は少なくとも低減されて、ユーザに比較的広帯域の周囲音が到達することを可能にし得る。しかしながら、いくつかの場合では、ユーザは、ANR機能を維持したまま、依然として周囲音を認識できるようにしたいことがある。加えて、ユーザは、ANRデバイスを通過する騒音及び周囲音の量を制御したい場合がある。
【0012】
本明細書に記載される技術は、パススルー信号伝達経路と並列なANR信号伝達経路の実装を可能にし、パススルー信号経路の利得は、ユーザによって制御可能である。これにより、ANRデバイスの実装が可能になり、通過する周囲騒音の量を、デバイスによって提供されるANRをオフにするか又は低減する必要なく、ユーザ入力に基づいて(例えば、別個の工程で、又は実質的に連続して)、調整することができる。いくつかの場合では、これは、例えば、ANRとパススルーモードとの間の切り替えに関連付けられている任意の可聴アーチファクトを回避すること、及び/又はユーザが聞きたい周囲騒音の量をユーザに制御させることによって、全体的なユーザエクスペリエンスを改善することができる。これにより、ANRデバイスは、様々な異なる用途及び環境、特にANR及びパススルー機能の間の実質的に連続したバランスが望ましい用途及び環境において、より使用しやすいANRデバイスを作製することができるようになる。
【0013】
能動騒音低減(ANR)デバイスは、様々な信号伝達トポロジ及びフィルタ構成を実装するために使用することができる構成可能なデジタル信号プロセッサ(digital signal processor、DSP)を含むことができる。そのようなDSPの例は、米国特許第8,073,150号及び同第8,073,151号に記載されており、それらは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。米国特許第9,082,388号もまた、参照によりその全体が本明細書に組み込まれており、
図1に示されるように、インイヤー能動騒音低減(ANR)ヘッドフォンの音響的実装について記載している。このヘッドフォン100は、フィードフォワードマイクロフォン102と、フィードバックマイクロフォン104と、出力トランスデューサ106(電気音響トランスデューサ又は音響トランスデューサとも呼ばれることもある)と、両方のマイクロフォン及び出力トランスデューサに結合されて、両方のマイクロフォンで検出された信号に基づいて出力トランスデューサに騒音防止信号を提供する騒音低減回路(図示せず)と、を含む。回路への追加の入力(
図1には示されていない)は、騒音低減信号とは独立して出力トランスデューサ106を介して再生するための、音楽又は通信信号などの追加の音声信号を提供する。
【0014】
ヘッドフォンという用語は、本明細書でヘッドセットという用語と互換的に使用され、インイヤー、アラウンドイヤー、又はオーバーイヤーヘッドセット、イヤフォン、及び補聴器などの様々な種類の個人用音響デバイスを含む。ヘッドセット又はヘッドフォンは、イヤーバッド又はイヤカップを各耳に含めることができる。イヤーバッド又はイヤカップは、例えば、コード、オーバーヘッドブリッジ若しくはヘッドバンド、又は後方ヘッド保持構造体によって、物理的に互いに繋がれてもよい。いくつかの実装では、ヘッドフォンのイヤーバッド又はイヤカップは、無線リンクを介して互いに接続されてもよい。
【0015】
音声等化、フィードバック騒音相殺、フィードフォワード騒音相殺などの機能を可能にするために、様々な信号伝達トポロジをANRデバイスに実装することができる。例えば、
図2AのANRデバイス200の例示的なブロック図に示されるように、信号伝達トポロジは、出力トランスデューサ106を駆動して、(例えば、フィードフォワード補償器112を使用して)騒音防止信号を生成して、フィードフォワードマイクロフォン102によって拾われる騒音信号の効果を低減する、フィードフォワード信号伝達経路110を含むことができる。別の実施例では、信号伝達トポロジは、フィードバック信号伝達経路114を含むことができ、フィードバック信号伝達経路114は、出力トランスデューサ106を駆動して、(例えば、フィードバック補償器116を使用して)騒音防止信号を生成して、フィードバックマイクロフォン104によって拾われる騒音信号の効果を低減することができる。信号伝達トポロジはまた、出力トランスデューサ106を介して再生するための、音楽又は通信信号などの入力音声信号108を処理するための回路(例えば、イコライザ120)を含む音声経路118も含むことができる。
【0016】
信号伝達トポロジの他の構成も可能である。
図2Bは、ANRデバイスの別の例示的な構成250のブロック図である。簡潔にするために、例示的な構成250は、
図2Aに示される音声経路118と類似する音声経路を示さない。構成250はまた、音響トランスデューサ106とフィードバックマイクロフォン104(システムマイクロフォン又はセンサsとも呼ばれることもある)との間の音響経路を表す伝達関数G
sdを示す。伝達関数G
edは、ドライバd(又は音響トランスデューサ106)と、ユーザの耳に近接して配設されたマイクロフォンeとの間の音響経路を表す。マイクロフォンeは、ユーザの耳における騒音を測定する。マイクロフォンは、システム設計プロセス中にユーザの耳道に挿入されてもよいが、ANRデバイス自体の一部でなくてもよい。騒音nは、構成250への入力を表す。騒音源125とフィードフォワードマイクロフォン102との間の伝達関数は、フィードフォワードマイクロフォン102によって捕捉された騒音がn×G
onとして表されるように、G
onによって表される。(i)騒音源125とフィードバックマイクロフォン104との間、及び(ii)騒音源と耳eとの間の、音響経路の伝達関数は、それぞれ、G
sn及びG
enとして表される。
【0017】
したがって、様々なセンサ又はマイクロフォンと、2つの音声源(騒音源125及び音響トランスデューサ106)との間の関係は、以下の式を使用して表現することができる:
【0018】
【0019】
したがって、騒音nに対するフィードバックマイクロフォン104で測定された騒音の比率は、以下の式によって与えられる:
【0020】
【0021】
同様に、外乱騒音nに対して耳(e)で測定された騒音は、以下の式によって与えられる:
【0022】
【0023】
参照として、騒音に対する開閉応答は、以下のように定義することができる:
【0024】
【0025】
ANRデバイス(例えば、ANRヘッドフォン)の総合性能は、(i)デバイスが能動的であり、ユーザによって装着されているときの騒音に対する耳における騒音と、(ii)基準開閉応答との比率である、目標挿入利得(IG)の観点から表すことができる。これは、以下の式で与えられる:
【0026】
【0027】
式中、受動挿入利得(PIG)は、ユーザによって着用されたときのANRデバイスの純粋な受動応答として定義される。PIGは、以下の式で与えられる:
【0028】
【0029】
いくつかの実装では、騒音が全方向性基準マイクロフォンを用いてポイントで測定される場合、式(8)及び(9)の表現は、ANRデバイスを能動又は受動モードのいずれかでそれぞれ用いるユーザが、ANRデバイスを装着する前後に耳のマイクロフォンで測定されるエネルギー比(例えば、位相を考慮しない)として評価することができる。
【0030】
いくつかの実装では、様々な騒音外乱項は、利用可能なマイクロフォン間の正規化されたクロススペクトルとして、以下のように表現することができる:
【0031】
【0032】
これらの表現を使用して、式(8)は、以下のように書き換えることができる:
【0033】
【0034】
式(11)は、システムの測定された音響に対するANRデバイスの総挿入利得(目標挿入利得と呼ばれることがある)、並びに関連するフィードバック補償器112及びフィードフォワード補償器116、Kfb及びKffにそれぞれ関する。したがって、いくつかの実装では、所与の固定フィードバック補償器116について、式(11)を使用して、目標挿入利得の指定された値及び他のパラメータについて、対応するフィードフォワード補償器112を計算することができる。例えば、目標挿入利得を0に設定して、所与のデバイスに対して完全なANR(最大騒音相殺)を提供するように構成された、フィードフォワード補償器112を取得することができる。このようなフィルタ又はフィードフォワード補償器は、KANRとして示されてもよい。逆に、目標挿入利得を1に設定して、ユニティ利得で、フィードフォワードマイクロフォン102によって捕捉された信号を通過する、フィードフォワード補償器112を取得することができる。このようなフィルタ又はフィードフォワード補償器は、本明細書では「認識モード」又は「パススルー」フィルタと呼ばれ、KAwareとして示される。
【0035】
いくつかの実装では、0~1の中間目標挿入利得を可能にし、ユーザが、デバイスを通過した周囲騒音の量を制御することを可能にするために、2つのフィルタK
ANR及びK
Awareを、
図3Aに示されるように、フィードフォワード信号伝達経路内に並列に配設することができる。
図3Aの例示的な構成は、ANRフィルタ305及びパススルーフィルタ310が並列に配設されたフィードフォワード補償器300を示し、パススルーフィルタの利得は係数Cによって調整可能である。調整可能な利得Cは、フィードフォワード補償器300のパススルー信号伝達経路内に配設された可変利得増幅器(VGA)を使用して実装されてもよい。フィードフォワード補償器300の伝達関数全体は、以下のように表されてもよい:
【0036】
【0037】
ANRフィルタ及びパススルーフィルタの並列構造は、様々な方法で実装されてもよい。いくつかの実装では、ANRフィルタ及びパススルーフィルタの各々は、実質的に固定することができ、調整可能な係数は、ユーザが聞きたい周囲騒音及び音の量を示すユーザ入力に基づくことができる。これは、特に、信号伝達経路(ANR信号伝達経路又はパススルー信号伝達経路)のうちの1つの寄与が最終出力を支配することが予想される用途のための、効率的で複雑さの低い実装を表し得る。これは、例えば、Cの値が0又は1のいずれかに近いと予想されるときに起こり得る。このような場合、個々の経路の振幅応答は、対応する設計値から著しく逸脱しない場合がある。例えば、ANR信号伝達経路及びパススルー信号伝達経路の各々の振幅応答は、目標スペクトル特性(例えば、スペクトル平坦度)のセットに従って設計されてもよく、経路のうちの1つが出力を支配するとき、経路は、対応する目標平坦度から著しく逸脱しない場合がある。
【0038】
いくつかの実装では、ANR経路及びパススルー経路の個々の利得が互いに接近するときに、個々の経路の位相応答は、建設的又は破壊的に干渉することがあり、それによって、対応する振幅応答が設計値から著しく逸脱する可能性がある。例えば、2つの経路の位相応答の干渉は、いくつかの場合では、対応する振幅応答の目標の平坦度を低下させる場合がある。これにより、ANRデバイスの性能が低下する可能性がある。
【0039】
いくつかの実装では、2つの経路の位相応答間の干渉の影響は、並列に配設された2つの信号伝達経路のうちの少なくとも1つにフィルタバンクを使用することによって軽減され得る。例えば、ANRフィルタ305は、複数の選択可能なデジタルフィルタを含むフィルタバンクを含むことができ、フィルタバンク内の各デジタルフィルタは、Cの特定の値に対応する。いくつかの実装では、パススルーフィルタ310は、同様のフィルタバンクを含んでもよい。このような場合、Cの値の変化は、ANRフィルタ305及びパススルーフィルタ310のうちの1つ以上の変化を促すことができる。フィルタは、例えば、結果として生じる位相応答間の任意の干渉が、目標許容限界を超える振幅応答のスペクトル特性(例えば、平坦度)を劣化させないように選択する(又はCの値に基づいてリアルタイムで計算する)ことができる。
【0040】
いくつかの実装では、KANR及びKAwareを2つの異なる挿入利得の値に対して別個に取得し、2つのフィルタを一緒に加算する代わりに、挿入利得は、任意の特定の挿入利得とは独立した2つの別個のフィルタを取得するための自由パラメータとして保持することができる。例えば、式(11)を使用してKffを解くと、以下のようになる:
【0041】
【0042】
これは、以下のように表され得る:
【0043】
【0044】
式(14)では、K
ncは、式(13)の右側の最初の項に等しく、騒音相殺フィルタを表す。K
awは、式(13)の右側の2番目の項に等しく、パススルーフィルタを表す。
図3Bは、フィードフォワード補償器325内の式(14)に従って、パススルー信号伝達経路に並列に配設されたANR信号伝達経路を含むANRデバイスの1つの例示的な構成350のブロック図である。具体的には、ANR信号伝達経路は、ANRフィルタ315を含み、パススルー信号伝達経路は、パススルーフィルタ320を含み、フィルタ315及び320は、式(13)及び(14)に従って取得される。伝達関数N
eo及びN
soは、上記の式(10)で定義される。
【0045】
いくつかの実装では、
図3Bに示されるフィードフォワード補償器325は、1つ以上の利点を提供することができる。例えば、フィルタ315及び320を固定係数フィルタとして実装することができるため、任意のフィルタバンクの必要性は不要になり得る。これにより、フィードフォワード補償器325は、より低い処理能力及び/又は記憶要件を使用して実装されることが可能になり得る。これは、処理能力及び/又は搭載される記憶空間が限られている、より小さいフォームファクタのANRデバイスにおいて特に有利であり得る。更に、2つの並列経路の位相応答は挿入利得に依存しないため、振幅応答は、挿入利得IGに対して実質的に不変のままであり得る。例えば、挿入利得は、挿入利得が一定の範囲にわたって変化したときに、2つの並列経路に関連付けられている振幅応答の平坦度又は他のスペクトル特性に著しく影響を与えない可能性がある。いくつかの実装では、フィードフォワード補償器は、例えば、周囲音を増幅するために使用できる1よりも大きい値を含む、挿入利得IGの任意の値を支持するように構成することができる。これは、例えば、補聴器などのデバイスにおいて、及び/又は他のデバイスでは聞こえないかもしれない周囲音を聴くために有用であり得る。例えば、遠隔の源から発せられる音声をより良好に聴くために、ユーザは、IG値が1よりも大きいように、利得を一時的に上げることができる。
【0046】
図4は、ANR信号伝達経路、及び並列に配設されたパススルー信号伝達経路を含む、ANRデバイス内に出力信号を生成するための1つの例示的なプロセス400のフロー図である。プロセス400の少なくとも一部分は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、米国特許第8,073,150号及び同第8,073,151号に記載されているDSPなどの1つ以上の処理デバイスを使用して実装することができる。プロセス400の動作は、ANRデバイスに関連付けられている1つ以上のセンサを使用して捕捉された入力信号を受信する(402)ことを含む。いくつかの実装では、1つ以上のセンサは、ANRヘッドフォンなどのANRデバイスのフィードフォワードマイクロフォンを含む。いくつかの実装では、ANRデバイスは、
図1を参照して記載されたものなどのインイヤーヘッドフォンであり得る。いくつかの実装では、ANRデバイスは、例えば、アラウンドイヤーヘッドフォン、オーバーイヤーヘッドフォン、オープンヘッドフォン、補聴器、又は他の個人用音響デバイスを含むことができる。いくつかの実装では、フィードフォワードマイクロフォンは、マイクロフォンのアレイの一部であり得る。
【0047】
プロセス400の動作はまた、ANR信号伝達経路内に配設された第1のフィルタを使用して入力信号を処理して、ANRデバイスの音響トランスデューサの第1の信号を生成する(404)ことも含む。ANR信号伝達経路は、ANRデバイスのフィードフォワード信号伝達経路内に配設することができ、このフィードフォワード信号伝達経路は、ANRデバイスのフィードフォワードマイクロフォンと音響トランスデューサとの間に配設される。いくつかの実装では、第1のフィルタは、
図3A及び3Bをそれぞれ参照して上述されたANRフィルタ305及び315と実質的に同様であり得る。いくつかの実装では、第1の信号は、フィードフォワードマイクロフォンによって検出された騒音に応答して生成された騒音防止信号を含むことができ、騒音防止信号は、騒音の影響を相殺又は少なくとも低減するように構成されている。いくつかの実装では、第1のフィルタは、固定係数フィルタであり得る。いくつかの実装では、第1のフィルタは、複数の選択可能なデジタルフィルタを含むフィルタバンクとして提供されてもよく、フィルタバンク内の各デジタルフィルタは、ANR信号伝達経路に並列に配設されたパススルー信号伝達経路に関連付けられている可変利得の値に対応する。
【0048】
プロセス400の動作は、パススルー信号伝達経路内の入力信号を処理して、音響トランスデューサの第2の信号を生成することを更に含み、パススルー信号伝達経路は、入力信号の少なくとも一部分が、可変利得に従って音響トランスデューサに通過することを可能にするように構成されている(406)。パススルー信号伝達経路は、第2のデジタルフィルタを含むことができる。第2のデジタルフィルタは、
図3A及び3Bをそれぞれ参照して上述されたパススルーフィルタ310及び320と実質的に同様であり得る。いくつかの実装では、第2のフィルタは、固定係数フィルタとして実装されてもよい。いくつかの実装では、第2のフィルタの係数は、第1のフィルタの係数のセットとは実質的に独立して決定されてもよい。例えば、第1及び第2のフィルタの両方は、式(11)を使用して独立して決定されてもよいが、異なる値の挿入利得を有する。いくつかの実装では、第2のフィルタは、選択可能なフィルタのバンクとして提供されてもよい。
【0049】
いくつかの実装では、通過信号経路はVGAを含むことができ、VGAは、パススルー信号経路に関連付けられている調整可能な利得を示す1つ以上のユーザ入力に従って調整され得る。いくつかの実装では、第1のフィルタ及び第2のフィルタのうちの少なくとも1つの係数は、パススルー信号経路に関連付けられている利得を示す1つ以上のユーザ入力に従って決定される。
【0050】
いくつかの実装では、第1のフィルタ及び第2のフィルタのうちの少なくとも1つの係数は、対応するフィルタの目標スペクトル特性に従って決定される。いくつかの実装では、目標スペクトル特性は、スペクトル平坦度であり得る。例えば、
図3Bを参照して上述されたフィルタ315及び320は、対応するフィルタの目標スペクトル平坦度に従って設計されてもよい。いくつかの実装では、第1のフィルタ及び第2のフィルタは、異なる速度で実行される2つの異なる処理デバイスを使用して実装されてもよい。このような場合、2つのフィルタに関連付けられている待ち時間は、互いに実質的に異なることができる。例えば、第1のフィルタに関連付けられた待ち時間は15~20μsであり得、一方、第2のフィルタに関連付けられている待ち時間は5msである。(例えば、
図3Aの構成のように)2つのフィルタが独立して決定される場合、フィルタ間の大きな待ち時間の差により、フィードフォワード補償器の全体的な振幅応答が目標平坦度から著しく逸脱する可能性がある。待ち時間の差が大きいいくつかの実装では、
図3Bの利得-診断用のフィードフォワード補償器を使用することは、フィードフォワード補償器の目標スペクトル平坦度を維持するのに有利であり得る。
【0051】
プロセス400の動作はまた、第1の信号を第2の信号と結合することに基づいて、音響トランスデューサの出力信号を生成する(408)ことを含む。いくつかの実装では、出力信号は、音響トランスデューサに提供される前に、1つ以上の追加の信号(例えば、ANRデバイスのフィードバック補償器によって生成される信号、ANRデバイスの音声経路内で生成される信号など)と結合されてもよい。したがって、音響トランスデューサの音声出力は、ユーザの好みに従って調整された周囲を表す音声と結合された騒音低減音声を表し得る。
【0052】
本明細書に記載される機能又はその部分、及びその様々な修正(以下「機能」)は、少なくとも部分的にコンピュータプログラム製品(例えば、1つ以上のデータ処理装置、例えば、プログラム可能プロセッサ、コンピュータ、複数のコンピュータ、及び/若しくはプログラム可能論理構成要素、による実行のための、又はその動作を制御するための、1つ以上の非一時的機械可読媒体又は記憶デバイスなどの情報担体において有形に具現化されたコンピュータプログラム)を介して実装され得る。
【0053】
コンピュータプログラムは、コンパイラ型言語又はインタープリタ型言語を含む任意の形態のプログラム言語で書くことができ、それは、スタンドアローンプログラムとして、又はコンピューティング環境での使用に好適なモジュール、構成要素、サブルーチン、若しくは他のユニットとして含む任意の形態で配備され得る。コンピュータプログラムは、1つのコンピュータ上で、若しくは1つのサイトにおける複数のコンピュータ上で実行されるように配備されるか、又は複数のサイトにわたって配信されて、ネットワークによって相互接続され得る。
【0054】
機能の全部又は一部を実装することと関連した動作は、較正プロセスの機能を実施するために1つ以上のコンピュータプログラムを実行する1つ以上のプログラム可能なプロセッサによって実施され得る。機能の全部又は一部は、特殊目的論理回路、例えば、FPGA及び/又はASIC(特定用途向け集積回路)として実装され得る。いくつかの実装形態では、機能の少なくとも一部はまた、Analog Devices Inc.によって開発されたSuper Harvard Architecture Single-Chip Computer(super harvard architecture single-chip computer、SHARC)などの浮動小数点又は固定小数点デジタル信号プロセッサ(DSP)上で実行されてもよい。
【0055】
コンピュータプログラムの実行に好適なプロセッサとしてはまた、例として、一般的及び特殊目的マイクロプロセッサの両方、並びに任意の種類のデジタルコンピュータの1つ以上のプロセッサが挙げられる。一般的に、プロセッサは、読み出し専用メモリ、ランダムアクセスメモリ、又はそれらの両方から命令及びデータを受信することになる。コンピュータの構成要素は、命令を実行するためのプロセッサ、並びに命令及びデータを記憶するための1つ以上のメモリデバイスを含む。
【0056】
本明細書に具体的には記載されていない他の実施形態及び用途もまた、以下の特許請求の範囲内にある。本明細書に記載される異なる実装の要素は、特に上に記載されない他の実施形態を形成するために組み合わされ得る。要素は、それらの動作に悪影響を及ぼすことなく、本明細書に記載される構造から除かれ得る。更にまた、様々な別個の要素は、本明細書に記載される機能を実施するために、1つ以上の個々の要素と組み合わされ得る。
【符号の説明】
【0057】
102 フィードフォワードマイクロフォン
104 フィードバックマイクロフォン
106 出力トランスデューサ
108 入力音声信号