(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-13
(45)【発行日】2022-01-25
(54)【発明の名称】半導体レーザならびにオプトエレクトロニクス半導体部品のための製造方法
(51)【国際特許分類】
H01S 5/0225 20210101AFI20220118BHJP
G02B 7/00 20210101ALI20220118BHJP
【FI】
H01S5/0225
G02B7/00 F
(21)【出願番号】P 2020519069
(86)(22)【出願日】2018-10-08
(86)【国際出願番号】 EP2018077313
(87)【国際公開番号】W WO2019072759
(87)【国際公開日】2019-04-18
【審査請求日】2020-05-28
(31)【優先権主張番号】102017123798.4
(32)【優先日】2017-10-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】514272140
【氏名又は名称】オスラム オーエルイーディー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】OSRAM OLED GmbH
【住所又は居所原語表記】Leibnizstrasse 4, 93055 Regensburg, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】特許業務法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ゾルグ ヨルグ エリッヒ
(72)【発明者】
【氏名】ケーニヒ ハーラルト
(72)【発明者】
【氏名】レル アルフレート
(72)【発明者】
【氏名】ペスコラー フロリアン
(72)【発明者】
【氏名】アウエン カルステン
(72)【発明者】
【氏名】シュルツ ローラント
(72)【発明者】
【氏名】ブルーナー ヘルベルト
(72)【発明者】
【氏名】ジンゲル フランク
(72)【発明者】
【氏名】ヒュッティンガー ローラント
【審査官】淺見 一喜
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-232790(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0244148(US,A1)
【文献】特開2016-225448(JP,A)
【文献】特開平08-191172(JP,A)
【文献】特開2009-260118(JP,A)
【文献】特開2009-099664(JP,A)
【文献】特開昭55-003668(JP,A)
【文献】特開平05-134150(JP,A)
【文献】特開2004-103792(JP,A)
【文献】特開2007-157961(JP,A)
【文献】特開2011-003889(JP,A)
【文献】特開2011-119699(JP,A)
【文献】国際公開第2014/192939(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2003/0007257(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第102009040834(DE,A1)
【文献】特開2008-146750(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 5/00-5/50
G02B 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャリア(2)と、
前記キャリア(2)に実装され、レーザ放射(L)を発生するための活性領域(33)を有し、放射出口領域(31)を有するファセット(30)を有する端面発光型
のレーザダイオード(3)と、
保護カバー(4)と、
前記保護カバー(4)が、前記ファセット(30)におよび前記キャリア(2)の側面(20)に固定される接着剤(5)と、
を含む半導体レーザ(1)であって、
前記保護カバー(4)の光入射面(41)と前記ファセット(30)との間の平均距離は、多くとも15μmであり、
前記光入射面(41)は、平らであり、
前記ファセット(30)上の前記活性領域(33)の領域にキャビティ(6)が形成され、前記キャビティ(6)は、前記ファセット(30)の平面図で見ると、前記接着剤(5)によって周りをすべて囲まれ、且つ、前記保護カバー(4)によって限定されており、それによって、前記レーザ放射(L)が前記レーザダイオード(3)を離れる前記放射出口領域(31)は、接着剤(5)を含まず、
前記半導体レーザ(1)は、
前記保護カバー(4)および前記接着剤(5)によって気密に密封されて通常雰囲気中で追加の気密封止なしで動作するように構成される、
半導体レーザ(1)。
【請求項2】
前記保護カバー(4)は
、ビーム偏向用のプリズムである、
請求項
1に記載の半導体レーザ(1)。
【請求項3】
前記保護カバー(4)は、前記レーザ放射(L)のコリメーションのためのレンズであり、前記ファセット(30)からの最小距離
が、0.1μmであ
る、
請求項1に記載の半導体レーザ(1)。
【請求項4】
前記キャビティ(6)は、排気されるかまたは少なくとも1種類の保護ガスで満たされ、
前記キャビティ(6)の平均直径は、前記ファセット(30)の平面図で見ると、3μm以上から100μm以下の間であり、前記キャビティ(6)の厚さは、0.5μm以上から20μm以下の間であり、
前記ファセット(30)の平面図で見ると、前記キャビティ(6)の周りの前記接着剤(5)の幅は、前記キャビティ(6)の前記平均直径の少なくとも150%であり、少なくとも30μmでもある、
請求項
1に記載の半導体レーザ(1)。
【請求項5】
前記キャビティ(6)は、前記キャビティ(6)が、前記ファセット(30)に垂直な断面で見ると前記放射出口領域(31)において両凸の形を有するように前記接着剤(5)の方へ湾曲した側壁(65)を有し、
前記レーザ放射(L)は、前記接着剤(5)から前記光入射面(41)の方へ距離をおいて通る、
請求項
1から4のいずれか一項に記載の半導体レーザ(1)。
【請求項6】
前記保護カバー(4)は、以下の材料:サファイヤ、SiCの少なくとも1種類を有するか、またはこれらの材料の少なくとも1種類からなり、
前記レーザ放射(L)の最大強度の波長は、365nm以上から530nm以下の間である、
請求項1から
5のいずれか一項に記載の半導体レーザ(1)。
【請求項7】
前記接着剤(5)は、無機物であり、少なくとも一種類の金属および/または少なくとも一種類のガラスを含むか、あるいは少なくとも一種類の金属および/または少なくとも一種類のガラスからなる、請求項1から
6のいずれか一項に記載の半導体レーザ(1)。
【請求項8】
前記接着剤(5)は、低有機シリコーン、シラザンおよび/またはシロキサンを含むか、または低有機シリコーン、シラザンおよび/またはシロキサンからなる、請求項1から
6のいずれか一項に記載の半導体レーザ(1)。
【請求項9】
平面形状の前記光入射面(41)は、前記光入射面(41)において反射したレーザ放射(L)が、前記放射出口領域(31)から遠ざけられるように、および/または前記レーザダイオード(3)の共振器が前記反射したレーザ放射(L)によって撹乱されないままであるように、前記ファセット(30)に対して斜めに配向し、
前記光入射面(41)と前記ファセット(30)との間の角度(α)は、5°以上から25°以下の間である、
請求項1から
8のいずれか一項に記載の半導体レーザ(1)。
【請求項10】
少なくとも前記光入射面(41)は、前記光入射面(41)が、前記レーザ放射(L)のために多くとも0.5%の反射率を有するように、および/または前記レーザダイオード(3)の共振器が反射した前記レーザ放射(L)によって撹乱されないままであるように、前記レーザ放射(L)のための反射防止コーティング(44)を設けられる、
請求項1から
8のいずれか一項に記載の半導体レーザ(1)。
【請求項11】
前記ファセット(30)とは反対側の前記保護カバー(4)の少なくとも1つの光出射面(42)は、光触媒コーティング(45)を設けられ、
前記光触媒コーティング(45)は、前記レーザ放射(L)を利用して前記光出射面(42)上の堆積物を除去および/または分解するように構成される、
請求項1から
10のいずれか一項に記載の半導体レーザ(1)。
【請求項12】
前記ファセットとは反対側の前記保護カバー(4)の少なくとも1つの光出射面(42)は、接着防止コーティング(46)を設けられ、
前記接着防止コーティング(46)は、前記保護カバー(4)の外側における堆積物を防ぐように構成される、
請求項1から
10のいずれか一項に記載の半導体レーザ(1)。
【請求項13】
前記活性領域(33)は、前記レーザダイオード(3)の前記キャリア(2)に面する側に配置され、
前記ファセット(30)は、前記レーザ放射(L)の通る方向に沿って、前記キャリア(2)を超えて突き出る、
請求項1から
12のいずれか一項に記載の半導体レーザ(1)。
【請求項14】
前記半導体レーザ(1)が動作時に白色の混合光を放出するように前記レーザ放射(L)を部分的に変換するためのルミネセンス要素(7)をさらに含み、
前記ルミネセンス要素(7)は、前記光出射面(42)に直接配置される、
請求項
11または
12に記載の半導体レーザ(1)。
【請求項15】
オプトエレクトロニクス半導体部品(1)を製造するための方法であって、
放射(L)を発生するための活性領域(33)を有し、放射出口領域(31)を有するオプトエレクトロニクス半導体チップ(3)を提供することと、
続いて、前記放射出口領域(31)において直接、保護カバー(4)を製造することと、
を含み、
前記保護カバー(4)は、ガラス製であり、ホットスタンプ法を用いて製造され、
前記
オプトエレクトロニクス半導体部品(1)は、
前記保護カバー(4)によって気密に密封されて通常雰囲気中で追加の気密封止なしで動作するように構成される、
方法。
【請求項16】
前記オプトエレクトロニクス半導体チップ(3)は、前記放射出口領域(31)を含むファセット(30)を有するレーザダイオードであり、
前記保護カバー(4)は、収束レンズであり、前記ファセット(30)に平行に通るキャリア(2)の側面(20)に多くとも15°の公差で直接触れる、
請求項
15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
半導体レーザが提供される。さらに、オプトエレクトロニクス半導体部品のための製造方法が提供される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
実現される目的は、効率的に封止することができ、効率的に製造することができるオプトエレクトロニクス半導体部品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0003】
この目的は、とりわけ、独立クレームの特徴を有する半導体レーザおよび製造方法によって実現される。好ましい発展形態は、従属クレームの主題である。
【0004】
少なくとも1つの実施形態によれば、半導体レーザは、キャリアを含む。キャリアは、いわゆるサブマウントであってよい。キャリアは、半導体レーザを制御することができるドライバーを含むことが可能である。あるいは、キャリアは、電子的にパッシブな構成要素を表し、実装面としてだけ使用されることが可能である。
【0005】
少なくとも1つの実施形態によれば、半導体レーザは、1つ以上のレーザダイオードを含む。この少なくとも1つのレーザダイオードは、好ましくは、端面発光型レーザダイオードである。これは、特に、動作時に発生したレーザ放射は、レーザダイオードの活性領域に平行な方向に放出されることを意味する。
【0006】
少なくとも1つの実施形態によれば、レーザダイオードは、ファセットを含む。ファセットは、好ましくは、活性領域に対して垂直またはほぼ垂直に配向している。ファセット上に放射出口領域が配置される。動作時に発生するレーザ放射は、放射出口領域においてレーザダイオードから出現する。放射出口領域は、特に、ファセットの部分領域に、従ってファセットに限定される。
【0007】
少なくとも1つの実施形態によれば、半導体レーザは、1つ以上の保護カバー、特に、ちょうど1つの保護カバーを含む。保護カバーは、好ましくは、光線整形または光線偏向のための光学機器であるが、ディスク、例えば面平行プレートなどの光学不活性体でもあってよい。
【0008】
特に、保護カバーは、好ましくは、発生する放射のコリメーションまたは集束のために設計されるレンズである。レンズは、球面、非球面、または自由形状の形であってよい。さらに、円筒形レンズまたは半円筒形レンズが可能である。保護カバーは、収束レンズであり得る。保護カバーは、例えば、平凸レンズまたは両凸レンズとして設計されてよい。フレネルレンズとしての実施形態も可能である。さらに、保護カバーは、例えば、ビーム偏向用のプリズムであってよい。
【0009】
少なくとも1つの実施形態によれば、保護カバーは、ガラスまたはサファイヤまたはSiCなどの無機材料でできている。あるいは、あまり好ましくはないが、保護カバーは、プラスチック、例えばシリコーンもしくはエポキシまたはそれらのハイブリッド材料などの有機材料、あるいは、ポリカーボネートなどのポリマーでできている。保護カバーが有機材料でできている場合、この有機材料は、好ましくは、保護カバーの芯を形成し、芯は、例えば、酸素および/または水蒸気に対する拡散障壁としての無機保護層によって、特に、表面全体にわたって周りをすべて覆われてよい。
【0010】
少なくとも1つの実施形態によれば、半導体レーザは、接着剤を含む。保護カバーは、接着剤を用いてファセットに、および任意選択としてキャリアの側面に取り付けられる。キャリアの側面は、ファセットに平行またはほぼ平行に配向してよい。キャリアの側面は、好ましくは、レーザ放射の光線方向に沿ってファセットより後退している。従って、保護カバーは、好ましくは、接着剤でファセットおよびキャリアに取り付けられる。接着剤は、好ましくは、ガラスまたは少なくとも1種類の金属などの無機材料である。
【0011】
あるいは、接着剤は、シリコーン、ポリシロキサン、ポリシラザンまたはシリコーンハイブリッド材料、好ましくは低有機プラスチックなどのプラスチックである。ポリシロキサンとは、材料が-[O-SiR2]n-、ポリシラザンの場合は-[NH-SiR2]n-で構築されることを意味する。ここで、各々の場合に異なる部分Rが存在することが可能である。低有機とは、例えば、シリコーン、シロキサンまたはシラザンに対する有機成分の割合が、30質量%または20質量%を超えず、および/または、特に、シロキサンまたはシラザンの場合、炭素含有部分Rの数とnとの商が多くとも0.75または0.25であることを意味する。有機物の質量割合は、特に、材料を灰化することによって決定される。
【0012】
あまり好ましくはないが、接着剤は、エポキシおよび/または炭素含有構造単位のポリマーなどの有機材料であり得る。
【0013】
少なくとも1つの実施形態によれば、保護カバーの光入射面とファセットとの間の平均距離は、多くとも5μmまたは15μmまたは30μmまたは60μmまたは0.1mmである、あるいは、または加えて、この平均距離は、少なくとも0.1μmまたは0.5μmである。平均距離は、好ましくは、0.5μmから5μmの間の範囲にある。言い換えると、保護カバーは、ファセットの近くであり得る。
【0014】
少なくとも1つの実施形態によれば、半導体レーザは、通常雰囲気中で追加の気密封止なく動作するように構成される。すなわち、ファセットの、特に放射出口領域の封止および保護は、保護カバーと一緒になった接着剤によって行われる。保護カバーと一緒になった接着剤に起因して、半導体レーザは、好ましくは、通常の環境空気中で動作させてよく、環境空気は、21%前後の範囲の酸素含有量および水蒸気を含有してよい。
【0015】
少なくとも1つの実施形態において、半導体レーザは、キャリアと、キャリアに実装されレーザ放射を発生するための活性領域および放射出口領域を有するファセットを含む端面発光型レーザダイオードと、を含む。半導体レーザは、さらに、保護カバー、好ましくは、レーザ放射を平行にするためのレンズを含む。保護カバーは、接着剤を用いてファセットおよびキャリアの側面に固定される。保護カバーの光入射面とファセットとの間の平均距離は、多くとも60μmである。半導体レーザは、通常雰囲気中で追加の気密封止なく動作するように構成される。
【0016】
特に、高い出力、例えば0.2Wまたは1Wを超える光出力を有し、近紫外域または青色スペクトル域の短波長で放出する半導体レーザは、環境の影響に対して保護され、封止されなければならない。長期間の安定な動作を確実にすることを可能にするために、対応するレーザダイオードは、清浄で気密に密封された雰囲気中で動作させるか、またはあらゆる雰囲気から遠ざけなければならない。
【0017】
本明細書に記載される半導体レーザにおいて、ファセットの近くにあるクラッドを用いて放射出口領域の気密区画形成が行われる。接着剤と一緒になった保護カバーによって形成されたファセットの近くでの封止によって、その他の方法では必要となる気密に密封されたハウジングをなくすことができる。その結果、半導体レーザは、コスト効率を改善して製造することができ、スペース要件を軽減して設置することができる。
【0018】
保護カバーは、特に、接着剤と一緒になると、環境の影響に対してファセットを保護し、レーザ放射の光線発散を減らす。同様に、例えばレンズの形の保護カバーを用いると、生じ得る分解生成物が堆積することができる表面の拡大がもたらされる。さらに、雰囲気に曝露されている半導体レーザの表面の拡大は、光出力密度の低下という結果を生み、光ピンセットの効果の低下を伴う。特に、保護カバーは、レーザファセットおよび放射出口領域に粒子および/または無機分子が直接集積することを防ぐ。
【0019】
ファセット上の堆積物は、特に、短波長放射によって分解することができ、焼き付かせることができる。ファセットの領域におけるそのような変化は、レーザのデカップリング効率を低下させ、例えば、堆積物中の光吸収によるファセットコーティングへの損傷が起こり、そのことが今度は、過熱、ひいてはレーザファセット領域全体の破壊につながりかねない。これは、光学損傷、略してCOD(catastrophic optical damage)とも呼ばれる。ファセット領域に実装された保護カバーは、粒子および/または分子がファセットに堆積することを防ぐ一方で、同時に半導体レーザの構成を単純にし、スペース要件を軽減する。
【0020】
さらに、放出されるレーザ放射の発散は、ファセットに近いレンズによって低下する。同様に、雰囲気中を通るレーザ光線の領域における電界強度は、低下する。発散光線中の電界強度は、さもなければファセットの近傍において潜在的な汚染物を吸引し、光ピンセットに対応するファセットへの堆積を引き起こす。このようにして、光線発散の低下は、堆積物の減少に直接つながる。
【0021】
さらに、保護カバーによって、すなわち、好ましくはレンズによって、雰囲気との界面が拡大する。境界表面の拡大の結果として、単位面積あたりの潜在的堆積物の量は、減少する。さらに、この界面におけるエネルギー密度は、ファセットに関して直接低下する。
【0022】
少なくとも1つの実施形態によれば、レーザダイオードは、接着剤および保護カバーによって気密封止される。すなわち、保護カバーとともに接着剤から形成された封止部の内部と外部との間に、酸素または水蒸気などの物質の有意な交換がない。例えば、気密に密封されるとは、特に室温において、漏洩速度が多くとも5×10-9Pa・m/sであることを意味する。
【0023】
少なくとも1つの実施形態によれば、保護カバーとファセットとの間の最小距離は、0.1μmまたは0.2μmである。あるいは、または加えて、この最小距離は、多くとも10μmまたは5μmまたは3μmである。すなわち、最小距離は、レーザ放射の波長のオーダーであり得る。その結果、保護カバーとファセットとの間の領域が、望ましくない追加の共振器としての役割を果たす可能性がある。他方、この小さな最小距離は、放射出口領域の方へ、特に接着剤を通って、小さな拡散断面積しか発生しないという結果を生む。
【0024】
少なくとも1つの実施形態によれば、活性領域の領域中のファセット上にキャビティが形成される。ファセットの平面図で見ると、キャビティは、接着剤によって周りをすべて囲まれている。従って、レーザ放射がレーザダイオードを離れる放射出口領域は、接着剤なしでよい。このことは、レーザ放射と接着剤との間で放射出口領域において直ちに潜在的に有害な相互作用があるという結果を生まない。
【0025】
少なくとも1つの実施形態によれば、キャビティは、排気されるか、または1種類以上の保護ガスで満たされる。該当する保護ガスは、例えば、アルゴンもしくはヘリウムなどの希ガスまたは窒素などの不活性ガスである。キャビティが保護ガスで満たされる場合、キャビティ中のガス圧力は、例えば、半導体レーザの意図される動作温度において大気圧に近く、特に0.8バール以上から1.1バール以下の間であってよい。
【0026】
少なくとも1つの実施形態によれば、キャビティの平均直径は、ファセットの平面図で見ると、少なくとも3μmまたは5μmまたは10μmおよび/または多くとも0.1mmまたは50μmまたは20μmまたは10μmである。言い換えると、キャビティは、平面図で見ると、比較的小さくてよい。
【0027】
キャビティは、放射出口領域に対して回転対称的に形成されるか、または放射出口領域の周りに非対称に延在してよい。接着剤と放射出口領域との間の距離は、好ましくは、少なくとも2μmまたは5μmまたは10μmである。
【0028】
少なくとも1つの実施形態によれば、キャビティの厚さは、0.5μm以上から20μm以下の間である。ファセットに垂直なキャビティの厚さは、一方では放射出口領域および/またはキャリアの側面と他方では保護カバーの光入射面との間の平均距離に対応してよい。
【0029】
少なくとも1つの実施形態によれば、ファセットの平面図で見ると、キャビティの周りの接着剤の幅は、キャビティの平均直径の少なくとも100%または150%または250%である。あるいは、または加えて、接着剤の幅は、少なくとも20μmまたは30μmまたは50μmおよび/または多くとも0.1mmまたは50μmまたは20μmである。
【0030】
少なくとも1つの実施形態によれば、キャビティの側壁は、接着剤の方へ湾曲している。例えば、ファセットに垂直な断面で見ると、キャビティの形は、放射出口領域において両凸である。すなわち、この断面図で見てファセットに平行な方向の最大限度から始まり、キャビティは、ファセットに向かう方向および保護カバーの光入射面に向かう方向で狭くなる。
【0031】
少なくとも1つの実施形態によれば、レーザ放射は、接着剤からある距離をおいて光入射面へと通る。すなわち、放射出口領域から光入射面への直進的な意図される経路に沿って、レーザ放射は、接着剤に到達しない。これは、場合によって光入射面において反射したレーザ放射が接着剤に導かれることを除外しない。
【0032】
少なくとも1つの実施形態によれば、接着剤は、光入射面および任意選択としてキャリアの側面を部分的にまたは完全に覆い、放射出口領域全体の上も直接かつ直ちに覆う。言い換えると、ファセットと光入射面との間の接着剤によってのみ連続的でかつ間隙のない接続を形成することができる。
【0033】
少なくとも1つの実施形態によれば、光入射面は、全体が接着剤によって覆われる。同様に、ファセットは、全体が接着剤によって覆われ得る。キャリアの側面は、好ましくは、部分的にしか接着剤によって覆われないが、あるいは接着剤によって完全に覆われてもよい。
【0034】
少なくとも1つの実施形態によれば、保護カバーと接着剤との間の屈折率の差は、多くとも0.2または0.1または0.05または0.02である。これは、詳しくは、レーザ放射の最大強度の波長において300Kの温度であてはまる。対応して低い屈折率差によって保護カバーと接着剤との間の界面における反射を低下させることができる。
【0035】
少なくとも1つの実施形態によれば、保護カバーは、以下の材料、ガラス、サファイヤ、炭化ケイ素のうちの少なくとも1種類でできているか、またはこれらの材料の1種類以上からなる。保護カバーは、好ましくは、サファイヤでできている。
【0036】
少なくとも1つの実施形態によれば、レーザダイオードによって発生するレーザ放射の最大強度の波長は、少なくとも365nmまたは400nmである。あるいは、または加えて、最大強度の波長は、多くとも530nmまたは460nmまたは440nmである。すなわち、レーザ放射は、比較的短波長である。
【0037】
少なくとも1つの実施形態によれば、接着剤は、1種類以上の金属、特にハンダからなり、ハンダが施用される保護カバーおよび/またはファセットおよび側面の上の金属層とも組合される。あるいは、少なくとも1種類のガラスが接着剤として用いられる。
【0038】
接着剤は、均一な構成であってもよく、不均一であってもよい。例えば、ガラスの場合、例えばスペーサとして、および/または熱膨脹率を設定するために、さらに別の粒子がガラスマトリックス中に導入されることが可能である。
【0039】
少なくとも1つの実施形態によれば、保護カバーの光入射面に粗面化部が設けられる。光入射面は、従って、光入射面で反射した放射を、反射したレーザ放射が放射出口領域に届かないかまたは減衰されてからしか届かないほど広範囲に拡散させるように設計される。ファセットと保護カバーとの間の領域からレーザダイオードの共振器へのフィードバックは、従って、低下させることができる。
【0040】
少なくとも1つの実施形態によれば、光入射面は平らである。この場合、光入射面は、ファセットに対して斜めになる。例えば、光入射面とファセットとの間の角度は、少なくとも5°または10°、および/または多くとも35°または25°または15°である。その結果、光入射面で反射したレーザ放射は、ファセット上の放射出口領域から遠ざけられる。その角度は、好ましくは、接着剤上の拡散攻撃の面積を低く保つために、ブリュースター角未満である。
【0041】
少なくとも1つの実施形態によれば、保護カバーは、光入射面が湾曲した形で、特に連続的に湾曲した形で延在するように、レンズの形であり両凸である。光入射面の最大湾曲部は、好ましくは、場合によって光入射面において反射したあらゆるレーザ放射を放射出口領域から遠ざけるように、レーザ放射の光軸の外側に配置される。
【0042】
少なくとも1つの実施形態によれば、保護カバーの光入射面および/または光出射面に、部分的にまたは全体的にレーザ放射のための反射防止コーティングが設けられる。詳しくは、レーザ放射に対する光入射面の反射率は、多くとも0.5%または0.1%または0.01%である。そのような反射防止コーティングによってファセットと保護カバーとの間の領域からレーザダイオードの共振器へのフィードバックも低下させるかまたは妨ぐことができる。
【0043】
少なくとも1つの実施形態によれば、ファセットとは反対側の保護カバーの光出射面に触媒コーティング、好ましくは光触媒コーティングが設けられる。このコーティングは、レーザ放射を用いて光出射面上の堆積物を除去および/または分解するように設計されている。コーティングは、特に、二酸化チタンまたは酸化ジルコニウムなどの金属酸化物によって形成される。あるいは、コーティングは、白金またはパラジウムまたはロジウムなどの少なくとも1種類の金属でできている。触媒コーティング用の金属コーティングの場合、コーティングの厚さは、好ましくは、多くとも10nmまたは5nmまたは3nmであり、それによって、レーザ放射は、顕著な損失なく触媒コーティングを通過することができる。
【0044】
少なくとも1つの実施形態によれば、保護カバーの光出射面に接着防止コーティングが設けられる。接着防止コーティングは、保護カバーの外側における堆積物を防ぐように設計されている。接着防止コーティングは、例えば、プラスチックコーティングであり、特に、フッ素-炭素化合物またはフッ素-ケイ素化合物を有する。接着防止コーティングは、例えば、フッ素化もしくは過フッ素化ポリマーおよび/またはフッ素化もしくは過フッ素化シロキサンもしくはシラザンである。好ましくは、光出射面全体がしかるべくコーティングされる。
【0045】
少なくとも1つの実施形態によれば、活性領域は、レーザダイオードのキャリアに面する側に配置される。例えば、活性領域とキャリアとの間の距離は、多くとも5μmまたは10μmまたは3μmである。これに対して、レーザダイオードの厚さは、例えば、少なくとも20μmまたは50μmまたは100μm、および/または多くとも0.5mmまたは0.2mmである。
【0046】
少なくとも1つの実施形態によれば、ファセットは、レーザ放射の通る方向に沿ってキャリアを超えて突き出る。キャリアの上のレーザダイオードの突出は、例えば、少なくとも50μmまたは0.1mm、あるいは、または加えて、多くとも0.3mmまたは0.15mmまたは50μmである。
【0047】
少なくとも1つの実施形態によれば、半導体レーザは、1つ以上のルミネセンス要素を含む。この少なくとも1つのルミネセンス要素は、レーザ放射の部分的または全体的な変換のために設計され、1種類以上の蛍光体を含む。
【0048】
特に、以下の蛍光体の1種類以上が用いられる。(Ca,Sr)AlSiN3:Eu2+、Sr(Ca,Sr)Si2Al2N6:Eu2+、(Sr,Ca)AlSiN3
*Si2N2O:Eu2+、(Ca,Ba,Sr)2Si5N8:Eu2+、(Sr,Ca)[LiAl3N4]:Eu2+などのEu2+ドープ窒化物;一般系列(Gd,Lu,Tb,Y)3(Al,Ga,D)5(O,X)12:RE、式中、X=ハロゲン化物、Nまたは2価元素、D=3価または4価元素、RE=希土類金属、からのガーネット、例えばLu3(Al1-xGax)5Ol2:Ce3+、Y3(Al1-xGax)5O12:Ce3+;(Ca,Sr,Ba)S:Eu2+などのEu2+ドープ硫化物;(Ba,Sr,Ca)Si2O2N2:Eu2+などのEu2+ドープSiONs;例えば、系列LixMyLnzSi12-(m+n)Al(m+n)OnN16-nからのSiAlONs;系列Si6-xAlzOyN8-y:REz、式中、RE =希土類金属、からのβ-SiAlONs;AE2-×-aRExEuaSiO4-xNxまたはAE2-x-aRExEuaSi1-yO4-x-2yNX、式中、RE=希土類金属およびAE=アルカリ土類金属など、または(Ba,Sr,Ca,Mg)2SiO4:Eu2+などのニトリドオルトシリケート;Ca8Mg(SiO4)4Cl2:Eu2+などのクロロシリケート;(Sr,Ba,Ca,Mg)10(PO4)6Cl2:Eu2+などのクロロホスフェート;BaMgAl10O17:Eu2+などのBaO-MgO-Al2O3系からのBAM蛍光体;M5(PO4)3(Cl,F):(Eu2+,Sb2+,Mn2+)などのハロホスフェート;(Sr,Ba,Ca)5(PO4)3Cl:Eu2+などのSCAP蛍光体。さらに、いわゆる量子ドットも変換体材料として導入することができる。II族-VI族化合物および/またはIII族-V族化合物および/またはIV族-VI族化合物および/または金属ナノ結晶を含有するナノ結晶材料の形の量子ドットが好ましい。
【0049】
少なくとも1つの実施形態によれば、ルミネセンス要素は、保護カバーの光出射面の上に直接配置される。光出射面は、ルミネセンス要素によって全体的に、または部分的にだけ覆われ得る。この点で、直接とは、ルミネセンス要素が光出射面に触れるか、または光出射面とルミネセンス要素との間にルミネセンス要素を取り付けるための接続手段だけが配置されていることを意味する。ルミネセンス要素と光出射面との間の距離は、好ましくは、多くとも10μmまたは5μmまたは2μmである。
【0050】
さらに、半導体レーザなどのオプトエレクトロニクス半導体部品のための製造方法が提供される。従って、本半導体レーザに関連して上記に記載したレーザダイオード、キャリア、保護カバー、ルミネセンス要素、粗面化部、反射防止コーティング、触媒コーティングおよび/または接着防止コーティングに関する特徴は、製造方法に関しても開示され、その逆も成立する。
【0051】
少なくとも1つの実施形態において、本オプトエレクトロニクス半導体部品のための製造方法は、
-放射を発生するための活性領域と放射出口領域とを有するオプトエレクトロニクス半導体チップを提供するステップと、
-続いて、放射出口領域において保護カバーを直接製造するステップであって、保護カバーは、好ましくは、ガラスでできており、ホットスタンプ法を用いて製造され、半導体部品は、通常雰囲気中で追加の気密封止なく動作するように設計されるステップと、
を含む。
【0052】
特に、半導体チップは、発光ダイオードチップ、略してLEDチップに代わるものとしての、上記で説明したレーザダイオードである。半導体チップは、好ましくは、キャリアに実装される。保護カバーは、放射、特にレーザ放射を平行にするためのレンズであってよい。
【0053】
本方法の少なくとも1つの実施形態によると、防護カバーは、好ましくは多くとも15°または5°の公差でファセットに平行に延びるキャリアの側面と直接接触する。ファセットは、保護カバーによって全体的に覆われてもよく、キャリアの側面は、部分的にまたは全体的に保護カバーによって覆われる。
【0054】
本明細書に記載される半導体レーザおよび本明細書に記載される製造方法は、例示的な実施形態に基づき、図面を参照して、さらに詳細に記載される。個々の図において同一の参照符号は、同一の要素を示す。しかし、図面において真の比例関係は示されず、個々の要素は、理解を深めるために誇張された様式で例示されている。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【
図1A】本明細書に記載される半導体レーザの例示的な実施形態の概略断面図を示す。
【
図1B】本明細書に記載される半導体レーザの実施形態のファセットの概略平面図を示す。
【
図2】本明細書に記載される半導体レーザの例示的な実施形態の概略断面図を示す。
【
図3】本明細書に記載される半導体レーザの例示的な実施形態の概略断面図を示す。
【
図4】本明細書に記載される半導体レーザの例示的な実施形態の概略断面図を示す。
【
図5】本明細書に記載される半導体レーザの例示的な実施形態の概略断面図を示す。
【
図6】本明細書に記載される半導体レーザの例示的な実施形態の概略断面図を示す。
【
図7】本明細書に記載される半導体レーザの例示的な実施形態の概略断面図を示す。
【
図8】本明細書に記載される半導体レーザの例示的な実施形態の概略断面図を示す。
【
図9】本明細書に記載される半導体レーザの例示的な実施形態の概略断面図を示す。
【
図10】本明細書に記載される半導体レーザの例示的な実施形態の概略断面図を示す。
【
図11】本明細書に記載される半導体レーザおよびオプトエレクトロニクス半導体部品を製造するための方法ステップの概略断面図を示す。
【
図12】本明細書に記載される半導体レーザおよびオプトエレクトロニクス半導体部品を製造するための方法ステップの概略断面図を示す。
【
図13】本明細書に記載される半導体レーザの例示的な実施形態の概略断面図を示す。
【
図14】本明細書に記載される半導体レーザの例示的な実施形態の概略断面図を示す。
【
図15】本明細書に記載される半導体レーザの例示的な実施形態の概略断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0056】
図1Aは、半導体レーザ1の例示的な実施形態の断面図を示し、
図1Bは、平面図を示す。半導体レーザ1は、好ましくは、ヒートシンク11に実装され、ヒートシンク11と一緒に装置10を形成する。装置10は、通常環境空気12中に配置される。従って、装置10は、環境空気12に対して、それ以上封止されることも気密に密封されることもない。
【0057】
半導体レーザ1は、キャリア2、特にいわゆるサブマウントを含む。キャリア2には、レーザ放射Lを発生するためのレーザダイオード3が配置される。レーザ放射は、例えば、青色光である。この目的で、レーザダイオード3は、活性領域33を有する。レーザ放射Lは、活性領域33の放射出口領域31において放出される。レーザダイオード3の好ましくは平面のファセット30は、活性領域33に対してほぼ垂直に配向している。
【0058】
ファセット30およびキャリア2の側面20には、接着剤5があり、これを用いて保護カバーが固定されている。保護カバーは、レンズ4として、好ましくは球面レンズとして設計され、ファセット30に面する光入射面41とファセット30から遠い光出射面42とを有する。
【0059】
例えば、楕円形の放射出口領域31は、平面図において閉じた経路の中で周りをすべて接着剤5によって囲まれている。
図1B参照。この場合、
図1Bにおいて、例示を単純化するために、レンズ4は図示せず、保護カバー4は、すべての他の例示的な実施形態においても可能であると同じく、接着剤5の外側輪郭と一致して閉じることができる。
【0060】
従って、ファセット30において、保護カバー4により閉じ込められているキャビティ6が接着剤5によって画定される。キャビティ6は、排気されるかまたは保護ガスで満たされる。放射出口領域31に面するキャビティ6の側壁65は、断面図で見ると、キャビティ6が両凸に見えるように湾曲している。
図1A参照。
【0061】
上から見ると、放射出口領域31は、キャビティ6の中で中央に配置されてよい。
図1B参照。接着剤5は、放射出口領域31の周りの異なる方向において異なる幅を有してよい。接着剤5は、好ましくは、薄く、それによって、ファセット30と光入射面41との間の平均距離は、好ましくは多くとも5μmである。任意選択として、光入射面41においてレーザ放射Lのための反射防止コーティング44が配置される。好ましくは、すべての他の例示的な実施形態にも同じことがあてはまる。
【0062】
接着剤5および保護カバー4と一緒にキャビティ6を用いると、レーザダイオード3は、ファセットに近接した形態で封止される。この封止部は、レーザダイオード3の放射出口領域31を環境影響および汚染から保護する。従って、封止部は、局所的にレーザファセット30自体の領域および周囲の実装面に限定される。
【0063】
ファセット30の領域において、封止部は、キャビティ6を形成する。こうして形成されたキャビティ6は、環境影響に対して気密封止される。任意選択の保護ガスまたはガス混合物は、例えば、H2、He、N2、He/O2である。保護カバー4のアセンブリ時に、放射出口領域31は、接着剤5の間隙分だけ後退する。従って、保護カバー4および接着剤5から形成された封止部要素と放射出口領域31との間には、アセンブリ時にも半導体レーザ1の動作時にも物理的接触がない。
【0064】
ファセットに近い封止部ならびにキャビティ6と保護カバー4との間の屈折率の飛躍に起因して、放出されたレーザ放射Lのレーザダイオード3の共振器への潜在的に後方への反射が起り、共振器の撹乱につながり得る。この相互作用を抑えるために、特に、そのような相互作用の代替的または追加的な防止可能策のための反射防止コーティング44が設けられる。以下の
図2および
図3も参照。
【0065】
キャビティ6を製造するために、例えば、ガラスでできている環構造体がレーザダイオード3およびキャリア2、または代りに、保護カバー4、特に、光入射面41に施用される。保護カバー4に接合するために、キャリア2およびレーザダイオード3は、好ましくは、必要な加工温度にされる。接合は、温度および、好ましくは、圧力の作用下で行われる。
【0066】
さらに、接着剤5を形成するガラススポンジを保護カバー4に施用することが可能である。この目的で、印刷法または分注法などのプロセスによってガラス粉体/バインダ混合物が保護カバー4に施用される。ネック形成とも呼ばれる下流の温度処理によって、バインダが除去され、ガラス粉体が焼結される。こうして調製した保護カバー4は、次に、温度および、任意選択として、圧力を用いてキャリア2およびレーザダイオード3の構造体に施用される。
【0067】
あるいは、化学プロセスによって接着剤5のためのガラススポンジを製造してよい。この目的で、例えば、特に適応させたガラスの環構造体が保護カバー4に施用される。ガラスは、微視的規模での標的型の温度貯蔵によって、好ましくは2つ以上の相に偏析する。相の1つを湿式化学的に残るマトリックスから溶出させることができる。上記のように、こうして形成されたスポンジ状構造体をキャリア2および/またはレーザダイオード3に、あるいは保護カバー4にも実装することができる。接合は、しかるべく行われる。
【0068】
さらに、特に、保護カバー4ならびにキャリア2とレーザダイオード3との複合体に構造化メタライゼーションを施用することが可能である。接合のために金属接合要素が取り付けられる。接合要素は、例えば、ハンダ、金属スポンジまたは前もって製造された金属リングである。接合は、温度、および任意選択として、圧力の作用下で行われる。
【0069】
放射出口領域31の領域中にマイクロキャビティ6を形成することによって、放射出口領域31と保護カバー4との間に機械的接触がない。チップに近いこの封止を用いると、いわゆるTOハウジングと比較して顕著な小型化を実現することができる。
【0070】
図2の例示的な実施形態において、保護カバー4は、レーザダイオード3に対して傾いた様相で施用される。光入射面41とファセット30との間の角度は、例えば、10°である。
【0071】
光入射面41がこの場合は平面であり、光出射面42が半球である保護カバー4の直径は、例えば、0.2mm以上から0.8mm以下の間、特に0.4mm前後である。すべての他の例示的な実施形態に同じことがあてはまる。
【0072】
それ以外の点において、
図2の例示的な実施形態は、好ましくは、
図1のものに対応する。
【0073】
反射したレーザ放射Lの影響を防ぐために、
図3の例示的な実施形態の保護カバー4の光入射面41には粗面化部43がある。粗面化部43は、規則的な設計であっても不規則的な設計であってもよい。粗面化部43は、光入射面41全体にわたって延在してもよく、キャビティ6に割り当てられている保護カバー4の中心領域に限定されてもよい。粗面化部43の平均構造サイズは、好ましくは、少なくとも0.2μmおよび/または多くとも3μmである。
【0074】
レーザダイオード3の共振器に対する後方反射したレーザ放射Lによる影響を防ぐための可能な策も
図4から
図8と関連して説明される。
【0075】
図4左側において、ファセット30に平行に後方反射したレーザ放射Rは、レーザダイオード3の共振器に届くことができることが示される。これは、レーザダイオード3に対する保護カバー4の傾いた配置によって防止される。
図4右側参照。ファセット30と光入射面41との間の角度は、好ましくは5°以上から15°以下の間である。
【0076】
図5は、
図5の左側で起こる後方反射Rが、
図5の右側では反射防止コーティング44によって防止されることを例示する。反射防止コーティング44は、例えば、
図5に概略的にしか示さない、屈折率の高い層と屈折率の低い層との交互配列によって形成される。反射防止コーティング44は、光入射面41と光出射面42との両方に取り付けることができ、従って保護カバー4の実際の躯体を完全に囲むことができる。
図1の実施形態においても同じことが可能である。
【0077】
図4および
図5において同じく、接着剤5は、
図1から
図3の場合と異なり、放射出口領域31を完全に覆う。従って、キャビティが形成されない。接着剤5は、従って、好ましくは、レーザ放射Lに対して、特にガラスから、またはガラス混合物から透過性であるように形成される。接着剤5は、従って、すべての他の例示的な実施形態において可能であると同様に、無機成分である。
【0078】
図6は、粗面化部43が
図3と同様に光入射面41に存在することを示す。粗面化部43は、
図3および
図6の図示から逸脱して、光入射面41を部分的にのみ覆うこともできる。
図3を参照し、
図1も参照する説明は、キャビティの省略を除いて、
図6に対応してあてはまる。
【0079】
すべての他の例示的な実施形態におけると同じように、保護カバー4が、断面図に見られるように、光入射面41と光出射面42との間の側面がまっすぐであることが可能である。側面は、例えば、円筒形の側面を表す。
【0080】
図7において、光入射面41が、撹乱する後方反射を防ぐように特に設計されることが示される。この目的で、保護カバー4の形は、断面図で見ると、ほぼ両凸である。光入射面41の最大のふくらみの領域は、活性領域33に対して、従って放射出口領域31に対してずらされ、それによって、光入射面41は、放射出口領域31においてファセット30と平行に配向しない。
【0081】
図8の例示的な実施形態において、接着剤5は、屈折率適合層47として設計される。従って、接着剤5と保護カバー4との間に一点鎖線によって象徴される屈折率の飛躍がないか、またはあまりない。それ以外の点は、ここまでの例示的な実施形態に関する記載が対応してあてはまる。
【0082】
ここまでの図において、各々の場合に、レーザダイオード3の共振器への後方反射を防ぐための手段は、1つしか描かれていない。これらの手段を組合せても行い得る。例えば、粗面化部43または湾曲型光入射面41を光入射面41の傾斜配置と組合せてよい。各々の場合に反射防止コーティング44も存在し得る。例示的な実施形態、特に
図5から
図7のものにおいて、屈折率適合層47も用いてよい。
【0083】
特に、
図8の設計において、接着剤5および保護カバー4が同じまたは非常に類似した材料であることも可能である。しかし、接着剤5の加工温度は、好ましくは、保護カバー4のものより低い。
【0084】
ファセットに近い封止の場合に保護カバー4とレーザダイオード3の共振器との間の光相互作用を低下させるかまたはなくすことによって、設計における追加の自由度が実現される。特に、小型化設計が維持される。
【0085】
図9の例示的な実施形態において、すべての他の例示的な実施形態においても当てはめてもよいように、レーザダイオード3は、ボンディングワイヤ13を介してヒートシンク11に接続されることが示される。すべての他の例示的な実施形態においても可能であるように、接着剤5は、ヒートシンク11まで届くことができ、この場合、キャリア2から距離をおいて延在してもよく、あるいは、キャリア2がレーザダイオード3に集積化される。
【0086】
レーザ放射Lが放出される、環境空気12にアクセス可能な境界面は、ファセットに近い所で用いられる保護カバー4によって顕著に増加する。その結果、光ピンセットなどの効果は、低下し、界面、すなわち、光出射面42におけるレーザ放射Lの強度は、低下する。
【0087】
それ以外の点は、
図1から
図8に関する記載が対応して
図9にあてはまる。
【0088】
図10において、光出射面42は、好ましくは、光触媒コーティング45および/または接着防止コーティング46によって完全に覆われることが示される。光触媒コーティング45は、例えば、薄い白金層または二酸化チタン層である。そのようなコーティング45を用いると、保護カバー4の光出射面42上の汚染物質の堆積と潜在的な堆積物の分解との熱力学的平衡を、半導体レーザ1の動作期間にわたって堆積物の蓄積が確実に減るように移行させることができる。
【0089】
接着防止コーティング46を施用することによって、光出射面42において不純物の蓄積は起こらないか、またはあまり起こらず、不純物の焼き付きも起こらないということが可能である。接着防止コーティング46は、好ましくは、レーザ放射Lに対して透明である。接着防止コーティング46は、例えば、ポリテトラフルオロエチレンなどのフルオロポリマーによって形成される。接着防止コーティング46のための他の可能な材料は、ペリレンHTなどのペリレン誘導体またはチオール-R-D-Hなどの硫黄化合物またはカーボンナノチューブの層状構造体である。
【0090】
例えば、
図9または10の半導体部品は、好ましくは、接着法によって保護カバー4を適当な接着剤5で結合し、任意選択として、後続の加熱プロセスおよび/またはベーキングプロセスを用いて製造される。純度が非常に高く炭化水素含有率が低いシリコーン系接着剤が保護カバー4を接着させるために適している。そのような接着剤5の中に存在するあらゆる揮発性添加物は、任意選択として、特に180℃から300℃の範囲の温度貯蔵によって放出される。残存炭化水素は、今度は、任意選択として、レーザ放射Lの出力および環境温度に関して定められる条件に基づくベーキングプロセスによって追い出される。
【0091】
あるいは、ガラスを接着剤5として用いて保護カバー4を接着することが可能である。この場合、好ましくは、中融点ガラスが用いられる。ガラスは、接合される2つの表面の一方に、または両方の表面に施用される。ガラスは、好ましくは、300℃から450℃の温度範囲において液体分散によって施用される。そのような分注法の後、保護カバー4は、例えば、ピックアンドプレイスとも呼ばれるグリッピングプロセスを用いて、レーザダイオード3のファセット30に実装される。
【0092】
図11は、オプトエレクトロニクス半導体部品1、
図11によって製造される半導体レーザ1のための製造方法を示す。この場合、
図1から
図10に関連して用いた接着剤5をまったくなしですませ、それでも放射出口領域31の気密封止を確保することが可能である。
【0093】
この目的で、
図11Aを参照し、原料48、好ましくは、ファセット30および/またはキャリア2の側面20にガラスが、特に液体状態で分注法を用いて、施用される。あるいは、スリップとも呼ばれるガラス粉体が施用され、ガラス粉体は、好ましくは、バインダ溶液で施用される。施用は、分注法、噴霧法、印刷法または噴射法によって行ってよく、好ましくは、続いて脱バインダおよび締固めのために温度貯蔵工程を行う。
【0094】
あるいは、ガラスビーズが入れられ、続いて、レーザ融解プロセスとも呼ばれる、レーザ溶接プロセスと同様な取り付けのための標的型局所温度処理が行われる。レーザ融解の場合、ガラスの滴の形は、ビームプロファイル中のエネルギー密度分布の標的型調整、例えば、正規プロファイルまたはいわゆるトップハットプロファイルによる局所融解の影響を受ける可能性がある。
【0095】
適当なガラス組成物の例は、特に、光学ガラス、特にガラス転移点が低く400℃を超えないガラス、またはガラス転移点が非常に低く300℃未満のガラスの群からである。そのようなガラスは、好ましくは、酸化テルルTe2O5、三酸化ホウ素B2O3、シリカSiO2、または酸化ビスマスBi2O3のようなガラス形成体に基づく。適当なガラス組成物は、好ましくは、ネットワーク中断材、例えばZnOおよび/またはCaOの割合が高い。そのようなガラス組成物を安定させるため、または結晶化する傾向を低く保つために、酸化アルミニウムAl2O3を任意選択として加えてよい。
【0096】
そのようなガラスは、特に
図1から
図3の接着剤5、ならびに、例えば、
図4から
図8の接着剤5のためにも用いることができる。
【0097】
あるいは、または加えて、接着剤5を施用したレーザダイオード3および/またはキャリア2の加熱は、特に、ガラスの温度がエンボス法による整形のために十分低い粘度になるまで行われる。好ましくは、
図11Bを参照し、加熱することができるホットスタンプ用ツール49を用いるエンボス法プロセスは、好ましくは、10
4dPa・sから10
8dPa・sの範囲、好ましくは10
4dPa・sから10
5dPa・sの範囲の接着剤5の粘度で行われる。
【0098】
スタンプ用ツール49は、例えば、白金、金、白金-金合金またはグラファイトでできている。さらに、硬質金属のツール49が適している。これらのものの例は、特にコバルトのマトリックス中の炭化タングステンまたは炭化チタンである。
【0099】
ホットスタンプ用ツール49は、接着剤5の接着を防ぐコーティングを有し得る。そのようなコーティングは、例えば、TiN、AlNおよび/またはTiAlNである。好ましくは、低い表面粗さ、例えば、粗さRaが多くとも100nmであるエンボス用ツール49が用いられる。この目的で、特に、表面被覆されるか、または表面締固めされたグラファイトが適している。
【0100】
施用された保護カバー4は、標的型光線整形のために用いることができる。あるいは、保護カバー4は、屈折光学部品として、回折光学部品として、または両方の組合せとして設計することもできる。光出力を増すための構造として保護カバー4の光学的に有効な構造を設計することができる。
図12も参照。
【0101】
図11Cに仕上げられた半導体部品1が例示される。この場合、ファセット30全体およびキャリア2の側面20全体が保護カバー4によって覆われることが可能である。
【0102】
図12の方法において、オプトエレクトロニクス半導体チップ3は、LEDチップであり、好ましくは、集積化されたキャリア2、または代りに図示していない別々のキャリアを有する。任意選択として、半導体チップ3は、接続手段14、例えば接着点またはハンダ点を介して、キャリア11に取り付けられる。
図12Aを参照すると、原料48が保護カバー4に施用される。
【0103】
続いて、
図12Bを参照し、エンボス用ツール49を用いてエンボス法が行われ、それによって、
図12Cに例示されるように、例えば、光出力を向上させる保護カバー4が得られる。このように光出射面42において粗面化部43を含む保護カバー4が形成される。この目的で、保護カバー4の屈折率は、例えば、屈折率差が多くとも0.3である、半導体チップ3と同様であってよく、その結果、高屈折率原料48を保護カバー4のために用いることができる。
【0104】
図13の例示的な実施形態において、保護カバー4は、レンズとしてではなく面平行な円板として設計される。ファセット30は、部分的にしか接着剤5によって覆われず、側面20と同一平面で終端する。すべての他の例示的な実施形態において同じことが可能である。
【0105】
図14によると、例えば、面平行セラミックプレートの形のルミネセンス要素7が保護カバー4に取り付けられる。接続手段14、例えば、特に、厚さが0.2μmから3μmの間である薄いシリコーン接着剤の層だけが、例えば、面平行保護カバー4とルミネセンス要素7との間に配置される。
【0106】
波長変換のための少なくとも1種類の蛍光体は、動作時に発生するレーザ放射Lがルミネセンス要素7に衝突するルミネセンス要素7の領域に限定することができる。任意選択として、レーザダイオード3に面するルミネセンス要素7の入射面72に、レーザ放射Lについては透明であるが、ルミネセンス要素7の中で発生する放射を反射する二色性コーティング73が配置される。
【0107】
さらに、キャリア2が側面30より上に突き出ることが可能である。従って、保護カバー4は、キャリアとは反対側を向いてよく、キャリア2に対して斜めになってよい。すべての他の例示的な実施形態において同じことをあてはめてよい。
【0108】
同様に、
図15の例示的な実施形態において、ルミネセンス要素7が存在する。この場合、ルミネセンス要素7は、直接、特に、光出射面42の表面全体の上に、好ましくは、一定の変化しない厚さで施用される。
【0109】
そのようなルミネセンス要素7も、
図14および
図15において説明したように、すべての他の例示的な実施形態において、好ましくは二色性コーティング73と一緒に存在してよい。
【0110】
図13から
図15の構成において、レーザダイオード3の共振器への後方反射を防ぐための手段も、
図1から
図8における構成と同じように、個々に、または互いに組合されて取られてよい。
【0111】
特に断らない限り、図に示す構成要素は、それぞれの場合に指定された順番で直接、互いの後に続く。図において接触していない層は、好ましくは、互いに離間している。線が互いに平行に描かれている場合、対応する表面は、好ましくは、同様に互いに平行に配向している。同様に、特に断らない限り、図示された構成要素の互いに対する相対的な位置は、図において正しく再現される。
【0112】
本明細書に記載される発明は、例示的な実施形態を参照する明細書によって限定されない。本発明は、詳しくは、請求項にある特徴のあらゆる組合せを含む、各々の新規な特徴ならびに特徴のあらゆる組合せを、たとえこの特徴または組合せそれ自体は、請求項または実施形態に明示的に挙げられていないとしても、含む。
【0113】
本特許出願は、独国特許出願第10 2017 123 798.4号の優先権を主張し、ここでその開示内容は参照により援用される。
【符号の説明】
【0114】
1 半導体レーザおよびオプトエレクトロニクス半導体部品
2 キャリア
20 キャリア側面
3 レーザダイオードおよびオプトエレクトロニクス半導体チップ
30 ファセット
31 放射出口領域
33 活性領域
4 保護カバー/レンズ
41 光入射面
42 光出射面
43 粗面化部
44 反射防止コーティング
45 光触媒コーティング
46 接着防止コーティング
47 屈折率適合層
48 レンズ原料
49 ホットスタンプ用ツール
5 接着剤
6 キャビティ
65 キャビティの側壁
7 ルミネセンス要素
72 入射面
73 二色性コーティング
10 装置
11 ヒートシンク
12 環境空気
13 ボンディングワイヤ
14 接続手段
L レーザ放射
R ファセットと光入射面との間のレンズ角度で反射されるレーザ放射