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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-13
(45)【発行日】2022-01-25
(54)【発明の名称】毛切断機器
(51)【国際特許分類】
   B26B 19/14 20060101AFI20220118BHJP
【FI】
B26B19/14 A
B26B19/14 M
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021505343
(86)(22)【出願日】2019-08-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-09-13
(86)【国際出願番号】 EP2019071127
(87)【国際公開番号】W WO2020030642
(87)【国際公開日】2020-02-13
【審査請求日】2021-01-29
(31)【優先権主張番号】18187636.8
(32)【優先日】2018-08-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】18196049.3
(32)【優先日】2018-09-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】KONINKLIJKE PHILIPS N.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100122769
【弁理士】
【氏名又は名称】笛田 秀仙
(74)【代理人】
【識別番号】100163809
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 貴裕
(72)【発明者】
【氏名】ホロウィッツ ドミトリ
(72)【発明者】
【氏名】ペトレリ マルクス コルネルス
(72)【発明者】
【氏名】ボスマ イヴァール
【審査官】奥隅 隆
(56)【参考文献】
【文献】特表2006-514870(JP,A)
【文献】特表2009-543650(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B26B 19/00-19/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
毛切断機器であって、
駆動システムを収容する支持構造と、
前記支持構造により支持され、複数の毛入口開口を持つ外部切断部材と、前記外部切断部材に対して回転可能な内部切断部材と、を有する、少なくとも1つの切断ユニットと、
回転軸のまわりに回転可能であり、前記駆動システムにより駆動されるよう構成された第1のスピンドル部と、前記内部切断部材に結合されるよう構成された第2のスピンドル部と、を持ち、前記第1のスピンドル部と前記第2のスピンドル部とは、前記回転軸に平行な軸方向に互いに対し変位可能である、少なくとも1つの駆動スピンドルと、
を有し、
前記内部切断部材は、複数の切断要素と、第1の結合要素と、前記切断要素及び前記第1の結合要素を担持する担体と、を有し、
前記第2のスピンドル部は、動作の間、前記駆動スピンドルからの前記回転軸のまわりの駆動トルクを前記内部切断部材に伝達するための、前記第1の結合要素に結合された第2の結合要素を有し、
前記第1及び第2のスピンドル部の一方は、当接要素を有し、前記第1及び第2のスピンドル部の他方は、動作の間、前記第1のスピンドル部からの駆動トルクを前記第2のスピンドル部に伝達するための、前記当接要素と協働するよう構成された当接面を有する、毛切断機器において、
前記当接面は、前記回転軸に平行に延在する線に対して角度αをなすよう配置され、ここで0°<α<90°であり、これにより前記当接要素及び前記当接面を介した前記第1のスピンドル部から前記第2のスピンドル部への駆動トルクの伝達が、前記回転軸に平行な成分を持ち、前記内部切断部材に向かう、前記第2のスピンドル部に対して前記第1のスピンドル部によりかけられる力に帰着し、前記第1及び第2の結合要素は、前記第2のスピンドル部から前記内部切断部材に前記成分を伝達するよう構成されたことを特徴とする、毛切断機器。
【請求項2】
前記当接面は、前記回転軸に対して螺旋状に延在することを特徴とする、請求項1に記載の毛切断機器。
【請求項3】
前記当接要素は突起を有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の毛切断機器。
【請求項4】
前記駆動スピンドルは、前記内部切断部材に向かう方向に前記第1のスピンドル部に対して前記第2のスピンドル部を付勢するよう構成された機械ばねを有することを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の毛切断機器。
【請求項5】
前記第1のスピンドル部は、空洞を有し、前記第2のスピンドル部は、前記空洞に部分的に受容され、前記空洞により変位可能に案内され、前記軸方向において前記第1のスピンドル部に対して変位可能であることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の毛切断機器。
【請求項6】
前記第1のスピンドル部は、空洞を有し、前記第2のスピンドル部は、前記空洞に部分的に受容され、前記空洞により変位可能に案内され、前記軸方向において前記第1のスピンドル部に対して変位可能であり、
前記機械ばねは、前記内部切断部材に向けられた前記第2のスピンドル部に対する付勢力をかけるため前記空洞に配置されたことを特徴とする、請求項に記載の毛切断機器。
【請求項7】
前記角度は少なくとも3度であり、好適には少なくとも5°であり、好適には少なくとも20°であることを特徴とする、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の毛切断機器。
【請求項8】
前記角度は大きくても87°であり、好適には大きくても85°であり、好適には大きくても70°であることを特徴とする、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の毛切断機器。
【請求項9】
前記切断ユニットは、懸架構造により前記支持構造に対して移動可能に懸架され、それにより、前記支持構造により実現される前記支持構造に対する前記切断ユニットの動きの結果として、前記第1の結合要素が、前記軸方向に変位させられ、それにより、前記第1のスピンドル部と前記第2のスピンドル部とが、前記軸方向において互いに対して変位させられ、前記当接面の角度は、前記軸方向に変化することを特徴とする、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の毛切断機器。
【請求項10】
前記切断ユニットは、前記外部切断部材を支持するための支持部材を有し、前記懸架構造は、前記支持部材を前記支持構造に枢動可能に接続する枢動構造を有することを特徴とする、請求項9に記載の毛切断機器。
【請求項11】
少なくとも2つの切断ユニット及び少なくとも2つの駆動スピンドルを有し、前記少なくとも2つの駆動スピンドルのそれぞれは、前記少なくとも2つの切断ユニットのそれぞれ1つに結合可能となるよう構成されたことを特徴とする、請求項1乃至10のいずれか一項に記載の毛切断機器。
【請求項12】
前記第2の結合要素は、前記第1の結合要素に解放可能に結合可能であることを特徴とする、請求項1乃至11のいずれか一項に記載の毛切断機器。
【請求項13】
アクチュエータを収容するための主筐体を有し、請求項1乃至12のいずれか一項に記載の毛切断機器を更に有し、前記支持構造は、前記主筐体に解放可能に結合され、前記アクチュエータは、前記毛切断機器が前記主筐体に結合されたときに、前記毛切断機器の動作の間、前記駆動システムを駆動するよう構成された、毛切断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シェーバ又はヘアトリマとして使用することができる毛切断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
回転電気シェーバは、一般に、駆動装置から切断システムへ回転動力を伝達するために結合スピンドルを使用する。幾つかの二次的な機能があるのとは別に、その一つは切削要素に軸力を加えることである。該力は、切断要素がシェービングキャップに保持される閉じ力である。閉じ力が小さすぎると、切断要素とシェービングキャップとの間に切断ギャップが発生し、その結果、切断及び毛の引き抜きが不良になる。一方、閉じ力を増加させると摩擦も増加し、これにより騒音、摩耗、エネルギー損失が増加し、その結果、バッテリ寿命が短くなる。結合スピンドルは、通常、機能的に許容される作動ウィンドウ内にとどまるほぼ一定の軸力(切断予張力)を発揮するように設計される。
【0003】
米国特許US5,283,953号明細書によれば、ヘッドフレームに支持された外側剪断フォイルと、中心軸を有し、外側剪断フォイルと剪断係合する毛中で複数の内側刃を担持する内側切断ユニットホルダとを含む回転駆動シェーバが知られている。内側切断ユニットホルダは、電気モータの回転駆動軸に操作自在に連結され、これにより中心軸を中心として回転するように駆動される。外側剪断フォイルは、ヘッドフレームに対して中心軸の方向に移動可能に保持され、一方、内側切断ユニットホルダは、回転駆動軸に対して中心軸に沿って移動可能であり、これにより浮上支持されるようになっている。外側剪断フォイルは、外側剪断フォイルと内側切断ユニットホルダとが、回転駆動軸と同様にヘッドフレームに対して中心軸に沿って一緒に移動可能であるように、中心軸に沿って延在するピンによって内側切断ユニットホルダに接続される。従って、内側刃と外側剪断フォイルとの間の接触圧力、従って閉じ力は、外側剪断フォイルのヘッドフレームに対する相対的な動きにかかわらず、実質的に一定のレベルに保つことができる。
【0004】
米国特許US7,698,819B1より、切断ユニットにおいて、切断作業中に切断ユニットから伝達されるトルクに応じて閉じ力を適応させるための機構が一体化された回転シェービング装置が知られている。これを達成するために、前記切断ユニット内には、前記駆動方向に対向する方向に見て前記結合部材に向かって斜めに方向付けられる担持部の傾斜面と協働するカムが配置され、前記カムが前記傾斜面に沿って案内されるようになっている。これを達成するために、駆動面及びそれと協働する被駆動面は、互いに対応する螺旋形状を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
斯かる構成は、基本的に、シェービング性能を改善するのに役立つ可能性があるが、閉じ力は、切断ユニットに働くトルクに応じて変化させられ得るので、この設計には、幾つかの欠点がある。
【0006】
協働する螺旋面を有する自己適応機構は、切断ユニット内に含まれるので、毛粒子、皮膚断片、及び皮膚油脂からの汚染に不可避的に曝される。また、このことは非常に小さい空間に限定される。汚染は蓄積し、セグメントの動きを妨害し、設計において意図されていなかった場所又は方向において機械的接触及び力の伝達を引き起こすことがある。そのため、機構が動かなくなったり、意図したように機能しなくなったりすることがある。汚染の増加に伴い、摩擦が蓄積し、自己適応特性を損なう可能性がある。作動するためには、摩擦による自己ロックを回避すべきであるが、これは常に保証されるわけではない。既知のシェーバでは、切断ユニットの刃は、自己適応機構に堅固に取り付けられている。これにより、螺旋傾斜面上の接触力の角度が、現実的には大きく変動する、切断力の角度に依存するようになる。変化する接触力の結果として、摩擦力は変化する。過剰な切断力は、制御されない自己ロックに寄与し得る。
【0007】
既知の切断ユニットでは、切断ユニットがキャップに加える軸方向の力は、中心軸からある程度離れた螺旋傾斜面表面から直接伝達される。理論的には、接触力は3つの傾斜面の間に等しく分布されるべきであり、結果として生じる力は中央にあるべきである。しかしながら、実際には、幾何学的形状は決して完全ではないので、全ての表面が同時に接触し、力を伝達するわけではない。その結果、得られる軸力の位置は偏心し、かつ可変となる。このことは、髭切断プロセスにおける切断ユニットの機械的な作業の制御、及び切削システムの寿命に悪影響を与える可能性がある。また、個々の傾斜面表面での接触力にもばらつきがあり、これによって摩擦力の大きさが変わり、潜在的な自己ロックに寄与する。
【0008】
既知の切断ユニットでは、傾斜面の幾何学的形状及びその対向幾何学的形状に更なる凹凸があると、半径方向に寄生力成分が生じる。傾斜面表面が切断ユニットの一部であるため、これらの半径方向の力は、切断ユニットがキャップに接触している領域に伝達される。また、このことは、切断ユニットの機械的作業、髭切断プロセス、及び切断システムの寿命に対する制御に悪影響を及ぼす可能性がある。更に、既知の切断ユニットでは、螺旋状の傾斜部及び界面の幾何学的形状を含むセグメントは、設計によって軸方向に整列され、この位置に固定される。これにより、メカニズムは、摩擦によって引き起こされる自己停止状態から回復しにくくなる。
【0009】
この観点から、本発明の目的は、切断ユニットに加えられるトルクに応答して可変の軸方向力を伝達するシェーバ又はトリマとして構成され得る、改善された毛切断機器を提供することである。本発明は、上述の欠点の幾つかを少なくとも克服する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の態様においては、本目的は、毛切断機器であって、
駆動システムを収容する支持構造と、
前記支持構造により支持され、複数の毛入口開口を持つ外部切断部材と、前記外部切断部材に対して回転可能な内部切断部材と、を有する、少なくとも1つの切断ユニットと、
回転軸のまわりに回転可能であり、前記駆動システムにより駆動されるよう構成された第1のスピンドル部と、前記内部切断部材に結合されるよう構成された第2のスピンドル部と、を持ち、前記第1のスピンドル部と前記第2のスピンドル部とは、前記回転軸に平行な軸方向に互いに対し変位可能である、少なくとも1つの駆動スピンドルと、
を有し、
前記内部切断部材は、複数の切断要素と、第1の結合要素と、前記切断要素及び前記第1の結合要素を担持する担体と、を有し、
前記第2のスピンドル部は、動作の間、前記駆動スピンドルからの前記回転軸のまわりの駆動トルクを前記内部切断部材に伝達するための、前記第1の結合要素に結合された第2の結合要素を有し、
前記第1及び第2のスピンドル部の一方は、当接要素を有し、前記第1及び第2のスピンドル部の他方は、動作の間、前記第1のスピンドル部からの駆動トルクを前記第2のスピンドル部に伝達するための、前記当接要素と協働するよう構成された当接面を有する、毛切断機器において、
前記当接面は、前記回転軸に平行に延在する線に対して角度αをなすよう配置され、ここで0°<α<90°であり、これにより前記当接要素及び前記当接面を介した前記第1のスピンドル部から前記第2のスピンドル部への駆動トルクの伝達が、前記回転軸に平行な成分を持ち、前記内部切断部材に向かう、前記第2のスピンドル部に対して前記第1のスピンドル部によりかけられる力に帰着し、前記第1及び第2の結合要素は、前記第2のスピンドル部から前記内部切断部材に前記成分を伝達するよう構成された、毛切断機器によって達成される。
【0011】
本発明によれば、駆動スピンドル(上述の結合スピンドルに対応)は、駆動スピンドルに加えられたトルクに応答して可変軸力を伝達する機構を備える。従って、閉じ力は、瞬間のユーザの状況が必要とするように、切断性能又は摩耗及びエネルギー損失に対して最適化するように、自動的かつ瞬間的に適応される。
【0012】
該機構は、部品を追加することなく、既存の駆動スピンドルの幾何学的形状における簡単な修正によって実現することができる。
【0013】
自己適応機構は、髭の毛が切断されて集められる毛室から分離された領域に収容されるので、毛粒子、皮膚断片、皮膚油脂などからの汚染に関して問題はない。自己適応機構は、例えば、別個のコンパートメント内、又は切断ユニットの外側に配置することができる。それにより、この機構は汚染の影響を受けないままである。
【0014】
毛粒子、皮膚断片、及び皮膚油脂による更なる汚染は、自己適応機構の摩擦特性に影響を及ぼさない。従って、自己ロックの可能性は殆どない。
【0015】
典型的なシェーバでは、切断ユニットは、典型的には、プラスチック成形挿入部を備えた金属部品から構成される。製造時には、切断ユニットの金属刃が研磨され、研磨粒子が放出される。これらの粒子は、切断ユニットプラスチック挿入部上に付着し、切断ユニット内に位置する従来技術の機構における摩擦特性に影響を及ぼし得る。本発明によれば、スピンドル部は別々に製造されるので、該機構は研磨工程に影響されないであろう。
【0016】
本発明によれば、切断ユニットと自己適応機構とが機械的に分離され、それによって、切断ユニット刃とユーザの顔との間の変化する接触力が摩擦力の変動をもたらし、過剰な切断力が制御不能な自己ロックをもたらすことが回避される。
【0017】
また、本発明によれば、自己適応機構からの軸力は、常に切断ユニットのほぼ中央まで発揮される。当接素子と対応する傾斜した当接表面との間の不規則な接触は、切断ユニットへの軸力の位置に影響しない。
【0018】
自己適応機構に起因するあらゆる半径方向の力は、切断ユニットに伝達されない。
【0019】
本発明によれば、駆動スピンドルに加えて、セグメントの軸は、堅固に整列されず、回転している間、連続運動で動く。その結果、当接要素と関連する当接表面との間の連続的な複雑な運動が生じ、接触角は複数の方向に連続的に変化するであろう。これにより、自己拘束の発生が持続しにくくなる。また、関連する当接面上の当接素子の連続的な複雑な運動は、摩擦特性に影響を及ぼし、自己ロックに寄与し得る汚れを擦り落とすことになる。
【0020】
更に、本発明によれば、駆動スピンドルはテレスコピック型の(telescopic)性質のものである。この特性は、キャップ-切断ユニット系が輪郭追従部分にあり、駆動機構が静止部分にあるシェーバ設計に関して重要である。これらの設計では、切断ユニットは、輪郭追従運動に伴って収縮及び伸長するテレスコピック型スピンドルによって駆動される。本発明によるシェーバでは、使用中に輪郭追従運動が発生し、当接要素は、駆動スピンドルの関連する傾斜した当接表面に沿って上下に移動する。これにより、自己適応機構の働きに影響を与える可能性のある汚れは、継続的に擦り落とされる。
【0021】
本発明の更なる実施例によれば、第1及び第2の結合要素によって形成される結合部は、トルクを伝達し、及び駆動スピンドルの軸方向に力を伝達するが、他のいかなる機械的負荷も伝達しないように構成されても良い。
【0022】
このことは典型的には、米国特許出願公開US2003/0019107A1(参照により完全に本明細書に組み込まれたものとする)から公知の結合によって得られ得る。従って、当接面の接触力は切断力の角度に依存せず、これにより摩擦力の変動はない。過剰な切削抵抗による自己ロックは避けられる。切断ユニットに作用する力(スピンドルの軸方向以外)は、自己適応機構に伝達されない。
【0023】
本発明の更に別の実施例によれば、第2の連結要素は、第1の連結要素に解放可能に連結可能である。その結果、第2のスピンドル部は、内部切断部材に解放可能に連結可能である。このことは、例えば、毛切断機器を清掃するときに、毛切断機器の分解を容易にする。
【0024】
別の例示的な実施例によれば、当接面は、回転軸に対して螺旋状に延在する。
【0025】
当接表面の螺旋配向は、他の構成が可能であるが、回転軸線に平行な力成分を得て、内部切断部材に向かうようにするための最も明白な設計である。
【0026】
本発明の別の例示的な実施例によれば、当接要素は突起を有する。
【0027】
別の例示的な実施例によれば、駆動スピンドルは、第2のスピンドル部を第1のスピンドル部に対して内部切断部材に向かう方向に付勢するように配置された機械ばねを備える。
【0028】
該ばねは、当接要素と当接表面との間の相互作用から生じる閉じ力に対するオフセットとして作用する付加的な軸力を提供する。これらの力はあわせて、切断要素に閉じ力を提供する。ばねにより、スピンドルの伸長と最小限の閉じ力が確保される。
【0029】
別の例示的な実施例によれば、第1のスピンドル部は空洞を有し、第2のスピンドル部は、前記空洞内に部分的に受け入れられ、前記空洞によって変位可能に案内されて、第1のスピンドル部に対して軸方向に変位可能である。
【0030】
このことは、単純な設計につながる。
【0031】
別の例示的な実施例によれば、機械ばねは、内部切断部材に向かけられた第2のスピンドル部に対する付勢力を及ぼすために、空洞内に配置される。
これにより、シンプルで信頼性の高い設計と容易な組み立てが可能になる。
【0032】
当接面が配置される角度αは、トルクと軸力との比を設定するための設計パラメータとして使用されても良い。軸力のオフセットは、封入されたばねの特性によって調整されても良い。
【0033】
角度αは0°より大きく90°より小さい。好適には、角度はα≧3°、好適にはα≧5°、好適にはα≧20°である。
【0034】
一方、角度αは、好適にはα≦87°、好適にはα≦85°、好適にはα≦70°である。
【0035】
一実施例では、角度αは20°と70°との間である。
【0036】
第1のスピンドル部又は被駆動部分と第2のスピンドル部又は駆動部分との間の摩擦力は、このような摩擦力が互いに対して可動な2つの部分からなる任意の種類の駆動スピンドルに固有であるため、これまで無視されてきた。角度αは、動摩擦力に打ち勝つような最小値を持つ、第1のスピンドル部が第2のスピンドル部に対して切断ユニットの圧力を受けて連続的に動くようにする。摩擦は、第1及び第2のスピンドル部間の角度により動的である。臨界最小角αは、sin (α) =摩擦係数から求めることができる。動摩擦力に打ち勝つ最小角度αは3°乃至8°程度と推定される。
【0037】
別の例示的な実施例によれば、角度は、駆動スピンドルの軸方向延長線に沿って変化する。輪郭追従機構と組み合わせることにより、トルクと閉じ力との関係をシェービングヘッドの位置によって変化させることができる。この目的のため、切断ユニットは、懸架構造によって支持構造に対して移動可能に懸架され、その結果、懸架構造によって許容される支持構造に対する切断ユニットの運動の結果、第1の結合要素が軸方向に変位され、それによって第1及び第2のスピンドル部が軸方向に互いに相対的に変位し、当接面の角度αが軸方向に変化する。
【0038】
別の例示的な実施例によれば、切断ユニットは、外部切断部材を支持するための支持部材を有し、懸架構造は、支持部材を支持構造に枢動可能に接続する枢動構造を有する。
【0039】
本発明の別の例示的な実施例によれば、毛切断機器は、少なくとも2つの切断ユニットと、本明細書以前の毛切断機器の実施例のいずれかに関して説明した少なくとも2つの駆動スピンドルとを含み、少なくとも2つの駆動スピンドルの各々は、少なくとも2つの切断ユニットのそれぞれ1つに連結可能であるように配置される。
【0040】
本発明の別の実施例によれば、毛切断機器は、ヘアトリマとして使用することができる。本発明に係る駆動スピンドルにより駆動される切断ユニットは、空転(毛を切らない)時に閉止力を減少させて使用することができる。これにより、過熱を防止することができる。
【0041】
更に別の実施例によれば、機械ばねを省略することができる。その場合、駆動スピンドルは、切断システムの軸に永続的に取り付けられる。このとき閉じ力は、トルク誘導機構だけによって発揮される。作動時の最小トルクと切断システムの閉鎖を確保するために、ある程度の最小摩擦を設ける必要がある。
【0042】
本発明の別の態様によれば、アクチュエータを収容する主筐体を有し、本明細書で前述したような毛切断機器を更に有し、支持構造が主筐体に解放可能に結合され、アクチュエータが、毛切断機器が主筐体に結合されたときに毛切断装置の動作中に駆動システムを駆動するように構成された毛切断装置が開示される。
【0043】
本発明の好適な実施例は、従属請求項に定義される。特許請求の範囲は、所与の順序で使用されるだけでなく、本明細書に開示される本発明の範囲から逸脱することなく、異なる組み合わせで、又は独立して使用されても良いことを理解されたい。
【0044】
本発明のこれら及び他の態様は、以下に記載される実施例から明らかになり、それを参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図1】シェーバとして構成された本発明による毛切断機器の斜視図を示す。
図2図1による毛切断機器において用いられる駆動スピンドルの拡大斜視図を示す。
図3】長手方向の断面で示された図2の駆動スピンドルを示す。
図4】それぞれの力が説明された図2による駆動スピンドルの他の部分的な断面図を示す。
図5】角度α及び半径rを説明するため部分的に断面とされた図2の駆動スピンドルを示す。
図6図2による駆動スピンドルの第2の第2のスピンドル部の斜視図を示す。
図7図6による第2のスピンドル部を通る断面を示す。
図8】変化する傾斜又は角度を持つ駆動スピンドルの代替実施例を示す。
図9】国際特許出願PCT/EP2018/051763から公知の輪郭追従機構を基本位置に含むシェービングユニットを示す。
図10】下向きに傾斜した位置における図9のシェービングユニットを示す。
図11図9のシェービングユニットの断面を示す。
図12図11の対応する駆動スピンドルを置き換えるための本発明による関連する駆動スピンドルの1つを示す。
【発明を実施するための形態】
【0046】
図1は、シェーバとして構成された毛切断装置10の斜視上面図を示す。毛切断装置10は、細長い主筐体12と、主筐体12の上端に配置されたシェービングユニット20として構成された毛切断機器と、を有する。シェービングユニット20は、幾分三角形状に配置された3つの切断ユニット17を備えた切断ヘッド14を有する。
【0047】
主筐体12内には、駆動装置16が収容されている(ここでは詳細には図示されていない)。駆動装置16は、以下の図面を参照して以下に説明する少なくとも1つの駆動スピンドルによって、シェービングユニット20を動作させ、作動させるように構成されている。主筐体12には、オペレータ制御装置、オンオフスイッチ21、外部設定パッド23、バッテリ、電気ケーブル用のソケットなど、毛切断装置10の更なる構成要素が設けられても良い。
【0048】
シェービングユニット20は、主筐体12、駆動装置16、電子制御装置等を含む毛切断装置10から全体が取り外すことができる。毛切断機器又はシェービングユニット20は、必要に応じて交換することができる交換部品である。
【0049】
当該構成は、当技術分野で基本的に知られており、本発明の一部を形成しないので、ここではこれ以上詳細に説明しない。
【0050】
図2によれば、機器10は、駆動スピンドル24を有する。駆動スピンドル24は、駆動装置16の回転運動を切断ユニット17に伝達する。駆動スピンドル24は、第1の部分(駆動部)26内にその下端と共に受け入れられる円筒形状の第2の部分(被駆動部)30を備える。駆動スピンドル24の第1の部分は、駆動装置16の対応する歯(図示せず)によって駆動される外側歯28を備える。第2の部分30の上端には、全体が32で示される結合が設けられており、この結合から、切断ユニット17に配置された対応する空洞(第1の結合要素)と協働する、幾分丸い側面を有する三角形状の第2の結合要素34のみが示されている。
【0051】
斯かる結合は、参照により本明細書に完全に組み込まれている米国特許出願公開US2003/0019107A1に詳細に記載されている。この種の継手は、トルクを伝達し、駆動スピンドル24の軸方向のみに力を伝達するが、他の機械的負荷を伝達しないように構成されている。
【0052】
駆動スピンドル24は、駆動装置16によってその回転軸35のまわりに回転させられる。第1の部分26及び第2の部分30は、互いに軸方向に変位可能に配置されている。本発明によれば、駆動スピンドル24は、以下で説明するように、切断ユニット17に自己適応型の閉じ力を与えるように構成される。
【0053】
シェービングユニット20が髭の毛に遭遇すると、トルクが増大し、閉じ力も瞬時に増大する。より重い髭では、トルクはより増加し、それに応じて閉じ力が増加する。このことは、より重い髭での切断性能を改善し、一方、より軽い髭での不必要な皮膚刺激を回避する。シェーバが空回りしているときは、トルクが減少し、それに応じて閉じ力が減少する。これにより、摩擦、摩耗、エネルギー損失、騒音が低減され、電池寿命が延ばされる。
【0054】
斯かるシステムにおいて伝達されるそれぞれの力は、図4及び図5に係る図面に関して後述する。
【0055】
図3から、第1の部分26は、側壁43がそこから延在する底部40を含む、幾らかカップ状の性質のものであることが分かる。その下端部44における第2の部分30は、半径方向に延在する突起として構成される複数の当接要素36を含む。これらの当接要素又は突起36は、第1の部分26に設けられた螺旋当接面38と協働し、ここで突起36が案内される。
【0056】
第1の部分26及び第2の部分30は、螺旋ばねとして構成された機械的な圧縮ばね46によって、互いにプレストレスを与えられ、螺旋ばねは、そこから延在するマンドレル48によって保持され、第2の部分30の円筒状の空洞50内に延在する底部42に配置される。
【0057】
図4では、毛切断中に作用する力が説明されている。
【0058】
毛切断の間、切断ユニット17は、結合要素34を介して駆動スピンドル24に伝達されるトルクTを及ぼす。更に、切断ユニット17と皮膚との間の圧力から生じる軸方向の力Fが、駆動スピンドル24に作用する。それぞれのトルクTは、歯止め28によって伝達される駆動装置16に作用するトルクTに等しい。当接面38又は突起は、長手方向軸線によって画定される駆動スピンドル24の回転軸線35に対して角度αをなして配置されている。
【0059】
角度αは、図4及び図5に示されている。角度αが規定される平面は、第1のスピンドル部30の円筒上で「はがす」又は解くことによって形成される。角度αは、図4に示す当接面38と、回転軸線35に平行に延在する直線との間の角度である。
【0060】
当接素子36又は突起とそれぞれの当接面38との間の接触面において、トルクTが第1の部分26から第2の部分30に伝達される。
【0061】
トルクTが駆動スピンドル24に働くと、第1の部分26の下方セグメントの接触面38は、回転力F=T/rを第2の部分30の接触要素36又は突起に働かせる。傾き(角度α)の結果、軸方向成分Fが生成される。軸方向成分Fは、図4に示す角度α、駆動力F、及びその結果生じる力Fを用いて計算することができる。
【0062】
以下の関係式が得られる:
=T/r
=F/cosα
=F・sinα
=F・tanα
【0063】
斯くして、軸方向成分Fは、加えられたトルクT及び得られる回転力Fに比例することが分かる。
【0064】
当接要素36及び対応する当接面38の構成は、自己ロックがないように選択される。ばね46は、追加の軸方向の力Fを及ぼし、Fに対するオフセットとして作用し、これらの力が一緒になって、切断要素又は切断ヘッド14に閉じ力Fを提供する:
=F+F
【0065】
ばね46は、駆動スピンドル24の延長と最小の閉じ力を保証する。
【0066】
その結果、上に示したように、切断システムが髭毛に遭遇すると、トルクTが増大し、閉じ力Fも瞬時に増大する。より重い髭では、トルクはより増大し、それに応じて閉じ力が増大する。このことは、より重い髭での切断性能を改善し、一方、より軽い髭での不必要な皮膚刺激が回避される。シェーバが空回りしている場合、トルクが減少し、それに応じて閉じ力Fが減少する。これにより、摩擦、摩耗、エネルギー損失及びノイズが低減され、バッテリ寿命が延長される。
【0067】
角度αを設定することにより、比率及びトルクT、軸力Fの調整ができる。軸力Fに対するオフセットFは、ばね46の特性によって調整することができる。
【0068】
第2の部分30と第1の部分26との間の摩擦力は、これまで無視されてきたが、このような摩擦力は、互いに対して移動可能な2つの部分からなる任意の種類の駆動スピンドルに固有であるからである。角度αは、動摩擦力が克服されるように最小値を有するべきであり、それにより、切断ユニット17によって加えられた圧力の下で第1の部分26に対して第2の部分30が連続的に移動することになる。摩擦は、第1の部分26と第2の部分30との間の角度により動的である。臨界最小角αは、sin (α)=摩擦係数から求めることができる。動摩擦力に打ち勝つ最小角度αは3°乃至8°程度と推定される。
【0069】
代替実施例では、ばね46を省略することができる。その場合、駆動スピンドル24は、切断ユニット17の軸に永続的に取り付けられる。このとき閉じ力は、トルク誘導機構だけによって発揮される。作動時の最小トルク、及び切断システムの閉鎖を確保するために、ある程度の最小摩擦を設ける必要がある。
【0070】
別の代替実施例では、接触面38の傾斜は、駆動スピンドルの延長範囲に沿って変化する。このような状況を図8に示す。駆動スピンドル24aの当接面38の傾き又は角度αは一定ではなく、軸方向に変化する。
【0071】
図9乃至図11において、国際特許出願PCT/EP2018/051763(まだ公表されていない)から知られるような、輪郭追従機構を含むシェービングユニット20bが示されている。
【0072】
シェービングユニット20b及び駆動スピンドル24bとは別に、対応する部分には同じ参照番号が使用される。
【0073】
シェービングユニット20bは、2つの切断ユニット17を備えている。各切断ユニット17は、複数の毛入口開口部54を有する外部切断部材18と、外部切断部材18に対して回転可能に配置された内部切断部材19とを備える。
【0074】
内部切断部材19は、複数の切断要素52と、切断要素52を担持する担持部58と、駆動スピンドル24bによって内部切断部材19を駆動するための第2連結要素34と係合する第1連結要素56と、を有する。
【0075】
各切断ユニット17は、懸架構造62によって支持構造60に対して移動可能に懸架されている。懸架構造62は、各切断ユニット17が支持部材68を接続するピボット構造66を有し、その支持部材の上に切断ユニット17が支持され、支持構造60に回動可能に接続される。
【0076】
本発明によれば、駆動スピンドル24bは、図8又は図12に示されるように変化する傾斜を有する駆動スピンドル24aに置き換えられる。
【0077】
2つの切断ユニット17が支持されている支持構造60は、各切断ユニット17を駆動する各駆動スピンドル24a上に駆動運動が伝達される中央結合70に連結されている外部駆動又はアクチュエータを介して、一般に駆動される。
【0078】
図9では、シェービングユニット24bが第1の位置で示されているが、図10のシェービングユニット24bは第2の位置で示されており、ここで、切断ユニットは下方に枢動している(ユーザの皮膚に接触する可能性があるため)。このように、シェービングヘッド20bは、使用者の皮膚に沿って追従する輪郭を可能にする。
【0079】
シェービングユニット20bは、内部切断部材19の切断要素52のための担持部58を駆動する第1結合素子56と、駆動スピンドル24a上に設けられた第2結合素子34と、からなる結合を介して駆動スピンドル24aによって駆動される。
【0080】
シェービングユニット20bが支持構造60に対して枢動運動を行うとき、各駆動スピンドル24aにおいて、第1及び第2のスピンドル部品26、30が互いに軸方向に変位し、当接面38の角度α(図8参照)が軸方向に変化するように、第1の結合素子56が軸方向に変位する。
【0081】
図10による下方に傾いた位置では、駆動スピンドル24aは短くなる。即ち、駆動スピンドル24aの第2の部分30は、図9に示すシェービングユニット20bの持ち上げられた位置よりも下方になる。
【0082】
駆動スピンドル24aの上部における当接面38の傾斜又は角度αは、下部におけるよりも大きいので、トルクと閉じ力との間の関係は、駆動スピンドル24aに対するシェービングユニット20bの位置によって変化する。
【0083】
本発明は図面及び以上の記述において説明され記載されたが、斯かる説明及び記載は説明するもの又は例示的なものとみなされるべきであり、本発明は開示された実施例に限定されるものではない。図面、説明及び添付される請求項を読むことにより、請求される本発明を実施化する当業者によって、開示された実施例に対する他の変形が理解され実行され得る。
【0084】
請求項において、「有する(comprising)」なる語は他の要素又はステップを除外するものではなく、「1つの(a又はan)」なる不定冠詞は複数を除外するものではない。単一の要素又はその他のユニットが、請求項に列記された幾つかのアイテムの機能を実行しても良い。特定の手段が相互に異なる従属請求項に列挙されているという単なる事実は、これら手段の組み合わせが有利に利用されることができないことを示すものではない。
【0085】
請求項におけるいずれの参照記号も、請求の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12