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特許7008880誘導超音波データ収集のためのシステム及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-13
(45)【発行日】2022-01-25
(54)【発明の名称】誘導超音波データ収集のためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 8/06 20060101AFI20220118BHJP
【FI】
A61B8/06
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021530239
(86)(22)【出願日】2019-12-03
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-12-16
(86)【国際出願番号】 EP2019083400
(87)【国際公開番号】W WO2020115005
(87)【国際公開日】2020-06-11
【審査請求日】2021-05-27
(31)【優先権主張番号】62/774,921
(32)【優先日】2018-12-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】18212911.4
(32)【優先日】2018-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】KONINKLIJKE PHILIPS N.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100122769
【弁理士】
【氏名又は名称】笛田 秀仙
(74)【代理人】
【識別番号】100163809
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 貴裕
(72)【発明者】
【氏名】セスラーマン シュリラム
(72)【発明者】
【氏名】シュレポフ セルゲイ ワイ
(72)【発明者】
【氏名】マンザリ サビナ
(72)【発明者】
【氏名】デ ウィルド ニコ マリス アドリアーン
(72)【発明者】
【氏名】パラニサミー クリシュナモールシー
(72)【発明者】
【氏名】マシュー デニー
(72)【発明者】
【氏名】ベゼマー リック
【審査官】伊知地 和之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/161277(WO,A1)
【文献】特開2014-217745(JP,A)
【文献】特開2015-154883(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0078106(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/00 - 8/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波データの収集を誘導する方法であって、前記方法は、
複数のデータ収集平面から超音波データを取得するステップであって、前記超音波データはドップラー超音波データを有する、ステップと、
前記複数のデータ収集平面上で空間的レジストレーションを実行するステップと、
各データ収集平面内の多数の血管を識別するステップであって、前記ドップラー超音波データに基づいて前記データ収集平面内の血流の方向を決定するステップを含む、ステップと、
前記複数のデータ収集平面の前記空間的レジストレーション及び各データ収集平面内の血管の前記数に基づいて血管分岐の位置を決定するステップと、
前記血管分岐の前記位置に基づいて誘導命令を生成するステップであって、前記誘導命令は、さらなる超音波データを取得するための位置を示すように適合される、ステップと
を有する、方法。
【請求項2】
前記方法は、前記超音波データに基づいて血管の中心軸を識別するステップを更に有し、
前記誘導命令は、前記血管の前記中心軸にさらに基づいており、
更なる超音波データを取得するための前記位置は、傾斜データ収集平面を有し、前記傾斜データ収集平面は、前記血管の前記中心軸に対して傾斜している、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記傾斜データ収集平面は、前記血管の前記中心軸に対して10乃至50度の範囲の角度を規定する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記方法は、前記超音波データに基づいて血管断面を識別するステップをさらに有する、請求項1乃至3の何れか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記複数のデータ収集平面上での前記空間的レジストレーションの前記実行は、前記識別される血管断面に基づく、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
各データ収集平面内の多数の血管の前記識別は、前記識別される血管断面に基づく、請求項4乃至5の何れか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記ドップラー超音波データは、拍動データを有する、請求項1乃至6の何れか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記誘導命令は、
可聴命令、
視覚的命令、
電子制御信号、及び
触覚命令
の一つ又はそれより多くを有する、請求項1乃至7の何れか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記超音波データは、超音波画像データを有する、請求項1乃至8の何れか一項に記載の方法。
【請求項10】
コンピュータプログラムであって、前記コンピュータプログラムがコンピュータ上で実行されるとき、請求項1乃至9の何れか一項に記載の方法を実施するように適合されるコンピュータプログラムコード手段を有する、コンピュータプログラム。
【請求項11】
超音波データの前記収集を誘導するように適合される医療システムであって、前記システムは、
プロセッサであって、前記プロセッサは、
複数のデータ収集平面から、ドップラー超音波データを有する超音波データを取得し、
前記複数のデータ収集平面上で空間的レジストレーションを実行し、
各データ収集平面内の多数の血管を識別し、前記識別することは、前記ドップラー超音波データに基づいて前記データ収集平面内の血流の方向を決定することを含み、
前記複数のデータ収集平面の前記空間的レジストレーションと各データ収集平面内の血管の前記数とに基づいて血管分岐の位置を決定し、
前記血管分岐の前記位置に基づいて誘導命令を生成し、前記誘導命令は、さらなる超音波データを取得するための位置を示す
ように適合される、プロセッサ
を有する、システム。
【請求項12】
前記システムは、前記プロセッサと通信する超音波トランスデューサをさらに有し、前記超音波トランスデューサは、複数のデータ収集平面から超音波データを収集するように適合される、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記超音波トランスデューサは、
線形トランスデューサアレイ、
T字形トランスデューサアレイ、及び
2Dトランスデューサアレイ
の一つ又はそれより多くを有する、請求項12に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は超音波の分野に関し、特に、超音波データの収集を誘導する分野に関する。
【背景技術】
【0002】
血管の完全な超音波検査は、構造撮像(Bモード)とドップラー撮像(カラーフロー及び/又はスペクトルドップラーデータ)との組み合わせを有する。専門の超音波検査技師は関心血管をどこで探すべきかを知り、検査を完了するために、調整されるワークフローステップのセットを実行する。一例として、頸動脈評価の場合、最も一般的なアプローチは動脈の位置を特定し、頸動脈分岐を識別し、血管壁における任意の視覚的構造異常を記録するために、被検体の頸部に沿った最初のBモード掃引を有する。さらに、血流異常、動脈拍動脈血及び血流指向性は、カラードップラー血流測定を用いて可視化される。臨床的には、これらのプロシージャが超音波モニタ上に提供される(超音波画像の形態の)視覚的フィードバックを伴う典型的なワークフローの一部である。
【0003】
しかしながら、伝統的な超音波検査で通常使用される超音波画像フィードバックを使用することが実用的でないヘルスケアの設定及び用途が存在する。さらに、オペレータは超音波センサを正確に配置するために、又は得られたデータの品質を保証する調整を行うために、超音波画像を実行するのに十分な技能を有していない場合がある。
【0004】
これは、特に、超音波導出パラメータが患者モニタに関する追加情報を提供する可能性がある、継続的な患者監視を有する医学的介入の文脈におけるケースである。例えば、従来の超音波検査のワークフロー及び分析は非超音波要員が関与し、通常の超音波スキャナが長期にわたるオペレータのいない監視には実用的でない周術期ケアでは不可能である。
【0005】
超音波診断撮像では、血管上で実行される典型的なドップラー測定が熟練した超音波検査技師によって実行され、超音波検査技師は測定平面を血管の中央に、主軸に沿って位置決めする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、熟練していないオペレータがこのような平面を血管内に配置することは煩わしい。さらに、手術室又は集中治療環境では、モニタ上の画像フィードバックが利用できないことがある。従って、センサの配置は、血管の実際の超音波画像が存在しない場合に行う必要がある。
【0007】
したがって、かなりの追加のハードウエアを必要とせずに、従来のモニタベースのフィードバックがない状態で超音波センサの配置を誘導する手段が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、請求項によって規定される。
【0009】
本発明の一態様による例によれば、超音波データの収集を誘導する方法であって、前記方法は、複数のデータ収集平面から超音波データを収集するステップであって、前記超音波データはドップラー超音波データを有する、ステップと、 前記複数のデータ収集平面上で空間的レジストレーションを実行するステップと、 各データ収集平面内の多数の血管を識別するステップであって、前記識別するステップは、前記ドップラー超音波データに基づいて前記データ収集平面内の血流の方向を決定するステップを有する、ステップと、 前記複数のデータ収集平面の前記空間的レジストレーション及び各データ収集平面内の血管の前記数に基づいて血管分岐の位置を決定するステップと、前記血管分岐の前記位置に基づいて誘導命令を生成するステップであって、前記誘導命令は、さらなる超音波データを収集するための位置を示すように適合される、ステップとを有する、方法が提供される。
【0010】
この方法は、血流測定のための最適な位置に超音波トランスデューサを配置するようにユーザを誘導するステップを提供する。
【0011】
頸動脈の例では、血流が内頸動脈と外頸動脈との合流点より下の位置(すなわち、分岐点より下の位置)で最もよく測定される。
【0012】
血管数が1本(総頸動脈)から2本(内頸動脈と外頸動脈)に変化する場所を特定することにより、頸動脈の分岐部が位置する可能性がある。それから、これを使用して、超音波トランスデューサの配置を最適な位置に誘導することができる。評価する超音波データにドップラー超音波データを含めることにより、血管の識別中のデータ収集面内の動きを補正することができる。ドップラー超音波データは、血流の決定される方向に基づいて、視野内の特定の血管を識別するのを助けることができる。このようにして、血流の方向を使用して、視野内の特定の血管を識別することができる。さらに、少量の血管からの無視できる血流は、決定の正確さを改善するために割り引かれ得る。
【0013】
この方法は、トランスデューサと通信することができる任意の適切な医療装置上で使用することができる。
【0014】
一実施形態では、前記方法は、前記超音波データに基づいて血管の中心軸を識別するステップであって、前記誘導命令は、前記血管の前記中心軸にさらに基づいており、更なる超音波データを得るための前記位置は、傾斜データ収集平面を有し、前記傾斜データ収集平面は、前記血管の前記中心軸に対して傾斜している、ステップを更に有する。
【0015】
このようにして、さらなる超音波データは、傾斜したデータ収集平面によって得られる。
【0016】
血管の中心軸に対して傾斜した平面を有することは、その平面における血流のより正確で信頼性の高い測定をもたらす。
【0017】
さらなる実施形態では、傾斜データ収集平面が血管の中心軸と共に10乃至50度の範囲の角度を規定する。
【0018】
このようにして、誘導後に収集されるさらなる超音波データの精度を向上させることができる。
【0019】
一実施形態では、本方法が超音波データに基づいて血管断面を識別するステップをさらに有する。
【0020】
さらなる実施形態では、複数のデータ収集平面上での空間的レジストレーションの実行が識別される血管断面に基づく。
【0021】
一実施形態では、各データ収集平面内の多数の血管の識別が識別される血管断面に基づく。
【0022】
一構成では、ドップラー超音波データが拍動性データを有する。
【0023】
このようにして、観察される血流速度の分散に従って、データ収集平面内の血管を識別することが可能である。
【0024】
一実施形態では、誘導命令は、誘導命令は、可聴命令、視覚的命令、 電子制御信号、及び触覚命令の一つ又はそれより多くを有する。
【0025】
これは、ユーザ又は自動化システムに命令を送達することができる様々な方法を提供する。
【0026】
一実施形態では、超音波データは超音波画像データを有する。
【0027】
このようにして、ユーザは、超音波データを超音波画像として見ることができる。
【0028】
本発明の一態様による例によれば、コンピュータプログラムがコンピュータ上で実行されるときに、上述の手法を実施するように適合されるコンピュータプログラムコード手段を有するコンピュータプログラムが提供される。
【0029】
本発明の一態様による例によれば、超音波データの前記収集を誘導するように適合される医療システムであって、前記システムは、プロセッサであって、前記プロセッサは、複数のデータ収集平面から、ドップラー超音波データを有する超音波データを取得し、前記複数のデータ収集平面上で空間的レジストレーションを実行し、各データ収集平面内の多数の血管を識別し、前記識別することは、前記ドップラー超音波データに基づいて前記データ収集平面内の血流の方向を決定することを含み、前記複数のデータ収集平面の前記空間的レジストレーションと各データ収集平面内の血管の前記数とに基づいて血管分岐の位置を決定し、前記血管分岐の前記位置に基づいて誘導命令を生成し、前記誘導命令は、さらなる超音波データを取得するための位置を示すように適合される、プロセッサを有する、システムが提供される。
【0030】
一実施形態ではシステムがプロセッサと通信する超音波トランスデューサをさらに備え、超音波トランスデューサは複数のデータ収集平面から超音波データを収集するように適合される。
【0031】
さらなる実施形態では、超音波トランスデューサは、線形トランスデューサアレイ、T字形トランスデューサアレイ、及び2Dトランスデューサアレイの一つ又はそれより多くを有する。
【0032】
線形トランスデューサアレイは、システムの簡単な実施を提供する。T字形アレイは収集中に超音波トランスデューサの手動操作を必要とせずに、2つの直交平面における超音波データを得るために提供する。2Dアレイは関心領域の完全な超音波スキャンが自動的に実行されることを提供し、誘導は単に、後続のデータ収集において起動するトランスデューサを選択することができる。
【0033】
本発明のこれら及び他の態様は以下に記載される実施形態から明らかになり、それを参照して説明される。
【0034】
本発明をより良く理解し、本発明をどのように実施することができるかをより明確に示すために、単なる例として、添付の図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】一般的な動作を説明するための超音波診断撮像システムを示す。
図2】本発明の方法を示す。
図3】データ収集平面の一例を示す。
図4】データ収集平面のさらなる例を示す。
図5】データ収集平面の概略図を示す。
図6】傾斜したデータ収集平面からデータを収集するセンサの概略図を示す。
図7】単一の線形トランスデューサアレイを有するセンサによって実行されるワークフローの例を示す。
図8】T字形アレイ及びセンサ上に配置される視覚的インジケータを使用する誘導されるセンサ配置の例のグラフィック表現を示す。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明は、図面を参照して説明される。
【0037】
詳細な説明及び特定の例は装置、システム、及び方法の例示的な実施形態を示しているが、例示のみを目的としたものであり、本発明の範囲を限定することを意図したものではないことを理解される。本発明の装置、システム、及び方法のこれら及び他の特徴、態様、及び利点は、以下の説明、添付の特許請求の範囲、及び添付の図面からより良く理解されるのであろう。図面は単に概略的なものであり、一定の縮尺で描かれていないことを理解される。また、同じ参照番号は同じ又は類似の部分を示すために、図面全体にわたって使用されることを理解される。
【0038】
本発明は、超音波データの収集を誘導する方法を提供する。この方法は複数のデータ収集平面から超音波データを収集し、データ収集平面の空間的レジストレーションを実行することから始まる。それから、多数の血管が、各データ収集平面において識別される。それから、血管分岐の位置が、データ収集平面の空間的レジストレーションと、各データ収集平面内の血管の数とに基づいて識別される。誘導命令は血管分岐の位置に基づいて生成され、誘導命令はさらなる超音波データを収集するための位置を示すように適合される。
【0039】
例示的な超音波システムの一般的な動作はまず、図1を参照して説明され、本発明はトランスデューサアレイによって測定される信号の処理に関するので、システムの信号処理機能に重点を置いて説明される。
【0040】
このシステムは超音波を送信し、エコー情報を受信するためのトランスデューサアレイ6を有するアレイトランスデューサプローブ4を備える。トランスデューサアレイ6は、CMUTトランスデューサ、PZT又はPVDFなどの材料で形成される圧電トランスデューサ、又は任意の他の適切なトランスデューサ技術を備えることができる。この例では、トランスデューサアレイ6が2D平面又は関心領域の3次元体積のいずれかをスキャンすることができるトランスデューサ8の2次元アレイである。別の例では、トランスデューサアレイが1Dアレイであってもよい。
【0041】
トランスデューサアレイ6は、トランスデューサ素子による信号の受信を制御するマイクロビームフォーマ12に結合されている。マイクロビームフォーマは米国特許第5,997,479号(Savordら)、第6,013,032号(Savord)、及び第6,623,432号(Powersら)に記載されているように、トランスデューサの、一般に「グループ」又は「パッチ」と呼ばれるサブアレイによって受信される信号の少なくとも部分的なビームフォーミングが可能である。
【0042】
マイクロビームフォーマは、完全に任意選択であることに注意する必要がある。さらに、システムは送信/受信(T/R)スイッチ16を含み、マイクロビームフォーマ12は送信モードと受信モードとの間でアレイに結合することができ、かつそれを切り替えることができ、マイクロビームフォーマが使用されず、トランスデューサアレイが主システムビームフォーマによって直接操作される場合には、主ビームフォーマ20を高エネルギー送信信号から保護する。トランスデューサアレイ6からの超音波ビームの送信はT/Rスイッチ16及び主送信ビームフォーマ(図示せず)によってマイクロビームフォーマに結合されるトランスデューサコントローラ18によって命令され、主送信ビームフォーマはユーザインターフェース又は制御パネル38のユーザ操作から入力を受け取ることができる。コントローラ18は、透過モード中にアレイ6のトランスデューサ素子(直接又はマイクロビームフォーマを介して)を駆動するように配置される送信回路を有することができる。
【0043】
典型的なラインバイライン撮像シーケンスでは、プローブ内のビーム形成システムが以下のように動作してもよい。送信中、ビームフォーマ(実装に応じて、マイクロビームフォーマ又は主システムビームフォーマであってもよい)は、トランスデューサアレイ、又はトランスデューサアレイのサブアパーチャを起動する。サブアパーチャはトランスデューサの一次元線でもよいし、より大きなアレイ内のトランスデューサの二次元パッチでもよい。送信モードではアレイによって生成される超音波ビームの焦点合わせ及びステアリング、又はアレイのサブアパーチャは以下に説明するように制御される。
【0044】
被検体から後方散乱エコー信号を受信すると、受信信号は受信信号をレジストレーションするために(以下に説明するように)受信ビームフォーミングを受け、サブアパーチャが使用されている場合にはサブアパーチャが例えば1つのトランスデューサ素子だけシフトされる。その後、シフトされるサブアパーチャが起動され、このプロセスは、トランスデューサアレイのトランスデューサ素子の全てが起動されるまで繰り返される。
【0045】
各ライン(又はサブアパーチャ)について、最終的な超音波画像の関連するラインを形成するために使用される全受信信号は、受信期間中に所与のサブアパーチャのトランスデューサ素子によって測定される電圧信号の合計である。以下のビーム成形プロセスに続いて得られるライン信号は、通常、無線周波数データと呼ばれる。それから、種々のサブアパーチャによって生成される各ライン信号(RFデータセット)は最終的な超音波画像のラインを生成するために、付加的な処理を受ける。時間に伴うライン信号の振幅の変化は深度に伴う超音波画像の輝度の変化に寄与し、高振幅ピークは、最終画像における明るい画素(又は画素の集合)に対応する。ライン信号の開始付近に現れるピークは浅い構造からのエコーを表し、一方、ライン信号において次第に遅く現れるピークは、被検体内の深さが増大する構造からのエコーを表す。
【0046】
トランスデューサ制御装置18によって制御される関数の1つは、ビームがステアリングされ、焦点が合わされる方向である。ビームはトランスデューサアレイから真っ直ぐ(直交して)前方に、又はより広い視野のために異なる角度でステアリングされてもよい。送信ビームのステアリング及び焦点は、トランスデューサ素子作動時間の関数として制御することができる。
【0047】
一般的な超音波データ収集では平面波撮像と「ビームステアリング」撮像の2つの方法が区別されるが、これら2つの方法は送信モード(「ビームステアリング」撮像)及び/又は受信モード(平面波撮像及び「ビームステアリング」撮像)におけるビーム形成の存在によって区別される。
【0048】
最初にフォーカシング機能を見ると、全てのトランスデューサ素子を同時に作動させることによって、トランスデューサアレイは、被検体を通過することにつれて発散する平面波を生成する。この場合、超音波のビームは未集束のままである。トランスデューサの起動に位置依存時間遅延を導入することによって、焦点ゾーンと呼ばれる所望の点でビームの波面を収束させることが可能である。焦点ゾーンは、横方向ビーム幅が送信ビーム幅の半分未満である点として定義される。このようにして、最終的な超音波画像の横方向の解像度が改善される。
【0049】
例えば、時間遅延によって、トランスデューサ素子がトランスデューサアレイの中央素子(複数可)において最外側素子及び仕上げで始まって、直列に活性化される場合、焦点ゾーンが中央素子(複数可)と一直線上で、プローブから離れた所与の距離で形成されるのであろう。プローブからの焦点ゾーンの距離は、後続トランスデューサ素子活性化の各ラウンド間の時間遅延に応じて変化する。ビームが焦点ゾーンを通過した後、発散し始め、遠視野撮像領域を形成する。トランスデューサアレイに近接して位置する焦点ゾーンについては、超音波ビームが最終的な画像においてビーム幅のアーチファクトをもたらす遠視野において迅速に発散することに留意される。典型的には、トランスデューサアレイと焦点ゾーンとの間に位置する近接場が超音波ビームにおける大きな重複のために、ほとんど詳細を示さない。したがって、焦点ゾーンの位置を変化させることは、最終画像の品質に著しい変化をもたらす可能性がある。
【0050】
送信モードでは、超音波画像が複数の焦点ゾーン(それぞれが異なる送信焦点を有し得る)に分割されない限り、1つの焦点のみが定義され得ることは留意される。
【0051】
さらに、被検体内部からのエコー信号を受信すると、受信フォーカスを行うために上述した処理の逆を行うことができる。換言すれば、入力信号は、トランスデューサ素子によって受信され、信号処理のためにシステムに渡される前に電子的な時間遅延を受けることができる。この最も単純な例は、遅延和ビームフォーミングと呼ばれる。時間の関数としてトランスデューサアレイの受信フォーカシングを動的に調整することが可能である。
【0052】
ここで、ビームステアリングの機能を見ると、トランスデューサ素子に時間遅延を正しく適用することによって、トランスデューサアレイを離れるときに、超音波ビームに所望の角度を付与することが可能である。例えば、トランスデューサアレイの第1の側面上のトランスデューサを起動させ、続いて、残りのトランスデューサを、アレイの反対側で終了するシーケンスで起動させることによって、ビームの波面は、第2の側面に向かって角度が付けられることになる。トランスデューサアレイの法線に対するステアリング角度の大きさは、後続トランスデューサ素子の起動間の時間遅延の大きさに依存する。
【0053】
さらに、ステアリングビームをフォーカスすることが可能であり、ここで、各トランスデューサ素子に適用される総時間遅延は、焦点時間遅延とステアリング時間遅延の両方の和である。
【0054】
この場合、トランスデューサアレイは、フェーズドアレイと呼ばれる。それらの活性化のためにDCバイアス電圧を必要とするCMUTトランスデューサの場合、トランスデューサコントローラ18は、トランスデューサアレイのためのDCバイアス制御部45を制御するために結合することができる。DCバイアス制御部45は、CMUTトランスデューサ素子に印加されるDCバイアス電圧(s)を設定する。
【0055】
トランスデューサアレイの各トランスデューサ素子に対して、典型的にはチャネルデータと呼ばれるアナログ超音波信号が、受信チャネルを介してシステムに入る。受信チャネルでは、部分的にビーム形成される信号がマイクロビームフォーマ12によってチャネルデータから生成され、それから、主受信ビームフォーマ20に渡され、そこで、トランスデューサの個々のパッチからの部分的にビーム形成される信号が無線周波数データと呼ばれる完全にビーム形成される信号に結合される。各ステージで実行されるビームフォーミングは、上述のように実行されてもよく、又は追加の機能を含んでもよい。例えば、主ビームフォーマ20は128のチャネルを有してもよく、その各チャネルは十数個又は数百個のトランスデューサ素子のパッチから部分的にビーム形成される信号を受信する。このようにして、トランスデューサアレイの数千のトランスデューサによって受信される信号は、単一のビーム形成信号に効率的に寄与することができる。
【0056】
ビーム形成される受信信号は、信号プロセッサ22に結合される。信号プロセッサ22は受信エコー信号を、帯域通過フィルタリング、デシメーション、I及びQ成分分離、及び高調波信号分離のような様々な方法で処理することができ、これらの信号は組織及びマイクロバブルから返される非線形(基本周波数の高次高調波)エコー信号の識別を可能にするように、線形及び非線形信号を分離するように作用する。また、信号プロセッサは、スペックル低減、信号複合化、及びノイズ除去などの追加の信号強調を行ってもよい。信号プロセッサ内のバンドパスフィルタは追跡フィルタとすることができ、その通過帯域はエコー信号が増加する深度から受信されるにつれて、より高い周波数帯域からより低い周波数帯域へとスライドし、それによって、典型的に解剖学的情報を欠くより大きな深度からより高い周波数におけるノイズを排除する。
【0057】
送信及び受信のためのビームフォーマは、異なるハードウェアで実施され、異なる機能を有することができる。もちろん、受信機ビームフォーマは、送信ビームフォーマの特性を考慮に入れて設計される。図1では、単純化のために、受信機ビームフォーマ12、20のみが示されている。完全なシステムでは、送信マイクロビームフォーマを備えた送信チェーン、及び主送信ビームフォーマも存在するのであろう。
【0058】
マイクロビームフォーマ12の機能は、アナログ信号経路の数を減少させるために信号の初期の組み合わせを提供することである。これは、典型的にはアナログ領域で実行される。
【0059】
最終的なビーム成形は、メインビームフォーマ20で行われ、典型的にはデジタル化後である。
【0060】
送信及び受信チャネルは、固定周波数帯域を有する同じトランスデューサアレイ6を使用する。しかしながら、送信パルスが占める帯域幅は、使用される送信ビームフォーミングに応じて変化し得る。受信チャネルはトランスデューサ帯域幅全体(これは古典的なアプローチ)を捕捉することができ、又は帯域処理を使用することによって、所望の情報(例えば、主高調波の高調波)を有する帯域幅のみを抽出することができる。
【0061】
それから、RF信号はBモード(すなわち、輝度モード、又は2D撮像モード)プロセッサ26及びドップラープロセッサ28に結合され得る。Bモードプロセッサ26は、器官組織及び血管のような身体内の構造の撮像のために、受信超音波信号に対して振幅検出を実行する。ラインバイライン画像の場合、各ライン(ビーム)は関連するRF信号によって表され、その振幅はBモード画像内の画素に割り当てられるべき輝度値を生成するために使用される。画像内の画素の正確な位置は、RF信号に沿った関連振幅測定の位置と、RF信号のライン(ビーム)数によって決まる。このような構造のBモード画像は米国特許6,283,919(Roundhillら)及び米国特許6,458,083(Jagoら)に記載されているように、高調波又は基本波画像モード、あるいは両方組み合わせで形成することができる。ドップラープロセッサ28は画像フィールド内の血球の流れのような動く物質の検出のために、組織の動き及び血流から生じる時間的に異なる信号を処理する。ドップラープロセッサ28は、典型的には体内の選択される種類の材料から返されるエコーを通過させるか又は拒絶するように設定されるパラメータを有するウォールフィルタを有する。
【0062】
Bモード及びドップラープロセッサによって生成される構造及び動き信号は、スキャンコンバータ32及びマルチプレーナーリフォーマッタ44に結合される。スキャンコンバータ32は、エコー信号を所望の画像フォーマットで受信される空間関係に配置する。換言すれば、スキャンコンバータは、円筒座標系からのRFデータを、超音波画像を画像ディスプレイ40に表示するのに適した直交座標系に変換するように作用する。Bモード画像の場合、所与の座標における画素の輝度は、その位置から受信されるRF信号の振幅に比例する。例えば、スキャンコンバータは、エコー信号を二次元(2D)セクタ形状フォーマット又はピラミッド状三次元(3D)画像に配置することができる。スキャンコンバータは画像フィールド内の点における動きに対応する色を有するBモード構造画像をオーバレイすることができ、そこでは、所与の色を生成するためにドップラー推定速度が得られる。組み合わされるBモード構造画像及びカラードップラー画像は、構造画像フィールド内の組織及び血流の動きを描写する。マルチプレーナリフォ-マッタは米国特許6,443,896(Detmer)に記載されているように、身体の体積領域内の共通平面内の点から受け取られるエコーをその平面の超音波画像に変換する。ボリュームレンダラ42は米国特許6,530,885(Entrekinら)に記載されているように、3Dデータセットのエコー信号を所与の基準点から見た投影3D画像に変換する。ボリュームレンダラ42は、セグメンテーション機能を実行することができ、それによって、収集される超音波データに対して解剖学的構造セグメンテーションを実行することを可能にする。
【0063】
2D又は3D画像は、スキャンコンバータ32、マルチプレーナリフォーマッタ44、及びボリュームレンダラ42から画像処理装置30に結合され、画像ディスプレイ40上に表示するために、更に強調、バッファリング、及び一時記憶される。撮像プロセッサは例えば、強い減衰器又は屈折によって引き起こされる音響シャドーイング、例えば、弱い減衰器によって引き起こされる後方強調、例えば、高反射性組織界面が近接して位置する場合の残響アーチファクト等のような、特定の撮像アーチファクトを最終的な超音波画像から除去するように適合されてもよい。
【0064】
さらに、画像プロセッサは最終的な超音波画像のコントラストを改善するために、特定のスペックル低減機能を処理するように適合されてもよい。撮像に使用されることに加えて、ドップラープロセッサ28によって生成される血流値及びBモードプロセッサ26によって生成される組織構造情報は、定量化プロセッサ34に結合される。定量化プロセッサは、器官のサイズ及び妊娠期間などの構造的測定に加えて、血流の体積速度などの異なる流動状態の測定値を生成する。定量化プロセッサは、測定値が行われるべき画像の解剖学的構造内の点のような、ユーザ制御パネル38からの入力を受け取ることができる。
【0065】
定量化プロセッサからの出力データはディスプレイ40上の画像を用いて測定グラフィックス及び値を再生するため、及びディスプレイ装置40からのオーディオ出力のために、グラフィックスプロセッサ36に結合される。グラフィックスプロセッサ36は、超音波画像と共に表示するためのグラフィックオーバーレイを生成することもできる。これらのグラフィックオーバーレイは、患者名、画像の日時、撮像パラメータ等の標準的な識別情報を有することができる。これらの目的のために、グラフィックプロセッサは、患者名のような入力をユーザインターフェース38から受け取る。また、ユーザインタフェースはトランスデューサアレイ6からの超音波信号の生成、したがって、トランスデューサアレイ及び超音波システムによって生成される画像の生成を制御するために、送信コントローラ18に結合される。コントローラ18の送信制御機能は、実行される機能の1つに過ぎない。コントローラ18は、動作モード(ユーザによって与えられる)と、受信機アナログ-デジタル変換器における対応する必要な送信機構成及び帯域通過構成とを考慮する。コントローラ18は、固定状態を有するステートマシンとすることができる。
【0066】
ユーザインターフェースはMPR画像の画像フィールドにおいて定量化される測定を実行するために使用され得る複数のマルチプレーナリフォーマット(MPR)画像のプレーンの選択及び制御のために、マルチプレーナリフォーマッタ44にも結合される。
【0067】
図2は、超音波データの収集を誘導するための方法100を示す。
【0068】
この方法はステップ110で始まり、超音波データが複数のデータ収集平面120から得られる。
【0069】
ステップ125では、複数のデータ収集平面に対して空間的レジストレーションが実行される。換言すれば、他のデータ収集平面に対する各データ収集平面の位置が決定される。空間的レジストレーションは、データ収集平面内で識別される血管断面に基づいて実行することができる。代わりに、マーカーを被検体上に配置し、それから、これを使用してデータ収集平面の位置を識別することができる。解剖学的構造に関する平面レジストレーションのために使用され得るさらなる代替物は、位置センサ、加速度計、ジャイロスコープ、EM追跡センサ、光学追跡センサなどを含み得る。
【0070】
ステップ130では、多数の血管140が各データ収集平面内で識別される。図2に示す例では、2つのデータ収集平面120が1つの血管140を含み、1つのデータ収集平面が2つの血管を有する。
【0071】
各データ収集平面内の血管は、多くの方法で識別することができる。例えば、血管の数の識別は、超音波データに基づいて血管断面を識別することを有することができる。
【0072】
超音波データは、様々なデータを有することができる。例えば、超音波データは超音波画像データを有することができ、超音波画像データは、それから、データ収集平面を2D超音波画像として表すために使用することができる。さらに、画像セグメンテーションを用いて、血管断面を認識し、識別することができる。
【0073】
超音波画像データは構造的Bモードデータを有することができ、構造的Bモードデータは画像としてユーザに表示することはできないが、超音波システムの内部のプロセスで使用することができる。
【0074】
さらに、超音波データは、ドップラー超音波データを有することができる。この場合、各データ収集平面内の血管の数の識別は、ドップラー超音波データに基づいてデータ収集平面内の血流の方向を決定することを有することができる。
【0075】
データ収集平面内、より具体的にはデータ収集平面の所与の領域内の血流の方向を使用して、血管を識別することができる。例えば、データ収集平面が被検体の頸部に位置する場合、2つの血管(頸動脈及び頸静脈)は、それらの対向する流れ方向によって識別されてもよい。
【0076】
さらに、又は代替的に、超音波データは、所与の血管内の血流速度の分散を表す拍動性データを有することができる。拍動性データの例では、キャプチャされる拍動性データを、頸動脈又は頸静脈の典型的な拍動性プロファイルなどの既知の拍動性プロファイルにマッチングすることによって、血管を識別することができる。
【0077】
超音波画像データ(Bモードデータ)とドップラー(カラー)データとの組み合わせは、デュプレックスデータベースの血管識別と呼ばれてもよい。
【0078】
血管識別の種々の方法は、以下にさらに議論される。
【0079】
ステップ150において、血管分岐の位置が、超音波データと各データ収集平面内の血管の数とに基づいて決定される。
【0080】
例えば、分岐の位置は、データ収集平面内に存在する血管の数の変化に基づいて識別されてもよい。図2に示すように、データ収集平面内の血管の数は2つの血管から1つの血管に変化し、これは、血管分岐がデータ収集領域内に存在し得ることを意味する。血管分岐の存在は、ドップラーカラー超音波データ、拍動性データ、又はさらなる超音波画像データを使用することによって確認することができる。
【0081】
ステップ160では血管分岐の位置に基づいて誘導命令が生成され、誘導命令はさらなる超音波データを収集するための位置を示すように適合される。誘導命令の例は、以下でさらに説明される。
【0082】
この方法は図1を参照して上述したシステムのような超音波システム内で実行されてもよいが、この方法は超音波データを受信することができる任意のデバイス上で使用されてもよい。例えば、超音波プローブは超音波データを収集するために使用されてもよく、超音波データはそれから、上述の方法を実行するために別個の患者モニタに提供されてもよい。データは、任意の適切な通信手段によって提供されてもよい。
【0083】
図3及び図4は、超音波データがBモードデータの形態の超音波画像データ及びドップラーカラーデータの両方を有するデータ収集平面の例を示す。この例では、線形超音波トランスデューサアレイ200がユーザの頸動脈210に関するデータを収集するために使用される。現在のデータ収集平面220及び前記平面内の血管断面230が示されている。
【0084】
図3において、トランスデューサアレイ200は、頚動脈の上部に近接して配置され、複数の血管を見つけるために動かされる(誘導される動きであってもよい)。この場合、血管発見アルゴリズムはBモード画像データとカラードップラーデータストリームとの組み合わせ240に基づいており、形状認識は、Bモードデータとカラーデータとの両方に適用されてもよい。このようにして、Bモードデータ又はカラーデータのいずれかにおいて、大まかに円形又は楕円形の形状に基づいて、内頚動脈ICA、外頚動脈ECA及び頚静脈JVを識別することが可能である。
【0085】
Bモードデータとカラーデータとを用いて、動脈と静脈とを識別することができる。さらに、超音波センサに対する流れの方向に関する情報を使用して動脈と静脈とを区別するハードウェア実装を実施することが可能である。この場合、トランスデューサアレイの配置は、センサ上に示され得る、撮像される血管に対する特定の向きで実現されるべきである。色の流れ情報を分析することによって、血管の数、ならびに動脈及び静脈などの血管の種類を分離することができる。
【0086】
一例として、血管は、以下のステップに従って識別することができる。最初に、カラードップラーフロー画像はHSV(色相、彩度、値)空間に変換され、画像は閾値彩度をHSV空間に適用することによって2値画像に変換される。次に、2値画像は、画像内の穴を埋めることによって前処理され、画像内の最大面積を有する領域が連結成分分析によって選択される。
【0087】
血管の中心は選択される領域の重心から識別され、選択される領域のRGBパターンは血管内の層流及び乱流を区別するために分析される。実際、医療用途に応じて、この情報は、現在の位置を維持するため、又は分岐部から離れるように移動するための誘導として使用されてもよい。それから、ドップラー色信号から拍動性測定値を計算して、信号が動脈などの所与の血管からのものであることを確認する。
【0088】
図4では、トランスデューサアレイが分岐領域の反対側に移動される。理想的には、血管を表す1つの楕円がこの時点でカラードップラーデータストリーム内にある。図4に示されるように、頸静脈が視野内にある場合、それは、上記のように識別され、測定のために拒絶され得る。
【0089】
図5は、誘導命令に続くさらなる超音波データを収集するためのデータ収集平面の概略図を示す。
【0090】
この例では、図2に示す方法が超音波データに基づいて血管の中心軸300を識別することをさらに有する。上述のように、超音波データは、超音波画像データ、カラードップラーデータ、又は拍動データの一つ又はそれより多くを有することができる。
【0091】
したがって、さらなる超音波データ収集のための位置を突き止めるための誘導命令は、血管の中心軸に基づいてもよい。図5に示される例では、さらなる超音波データを得る位置が角度αだけ血管の中心軸に対して傾斜した傾斜したデータ収集平面310を有する。角度αは、血管の中心軸に対して10乃至50°の範囲、例えば15乃至45°であってもよい。
【0092】
このようにして、超音波データを収集するために使用される超音波センサは、実際に達成することが困難であり得る、所与の特定の角度で血管とレジストレーションされる必要がない。むしろ、センサは、血管の中心軸に対して10乃至50度の範囲内の角度に配置され、最適なデータ収集結果を達成してもよい。このようにして、センサの位置決めは、患者の動きに対して非常にロバストになり、従来の超音波データ収集方法と同じ感度の影響を受けにくくなる。更に、特定の配向にセンサを配置する要件を排除することにより、データ収集のためにプローブを適切に配置するために必要な時間及び技能が減少する。
【0093】
プローブの配向角度は、血管の楕円形状に基づく超音波システムによって決定されてもよい。例えば、薄い楕円は小角αを示すことがあり一方、円形に近い形状は、より大きな角度αを示すことがある。
【0094】
図6は、傾斜データ収集平面310からデータを収集するセンサ200の概略図を示す。この場合、脈動性データ360のグラフと共に、カラードップラー及びBモードの合成データ350が収集される。
【0095】
拍動性データのグラフは、時間(x軸)に対する血管内の血流速度(y軸)のプロットを示す。グラフから分かるように、プロットは約7つの心周期をカバーし、各ピークは、ハートの収縮を表す。脈動データは、血管の識別に使用することができる。
【0096】
要約すると、上記に提示されるアルゴリズムは、血管内の血流速度及び血流を表す完全なビート間波形のリアルタイム監視に適している。リアルタイムセグメント化と共に、本方法は、血管を通る流れを監視することを提供する。
【0097】
上述したように、超音波データは、センサによって収集される。説明したように、超音波データを収集するために使用することができるセンサには、いくつかの実装形態がある。例えば、センサは、線形トランスデューサアレイ、一方のアレイの撮像面が他方に対して直交するように配置される2つの線形トランスデューサアレイ、又は2Dアレイを有することができる。
【0098】
ユーザに提供される誘導は、間接的な方法で提供されてもよい。言い換えれば、装置は超音波データを分析し、センサとは別の誘導手段によって誘導信号を生成することができる。例えば、視覚的誘導信号が生成される場合、ユーザがセンサを動かすべき方向を示す矢印が画面上に表示されてもよい。
【0099】
代替的に、ユーザに誘導を提供するための手段は、センサ自身に含まれてもよい。例えば、センサはユーザを誘導するために、可聴命令、視覚的命令、電子制御信号、及び触覚命令の一つ又はそれより多くを生成するように適合されてもよい。
【0100】
図7は超音波パッチの形態であってもよい、単一の線形トランスデューサアレイを備えるセンサによって実行される、上記の方法の例示的なワークフロー500を示す。
【0101】
最初に、超音波パッチを用いて複数のデータ収集平面から超音波データが収集される。図7に示される例では第1のデータ収集平面510が3つの円によって示される3つの血管を含み、第2のデータ収集平面520は2つの円によって示される2つの血管を有する。
【0102】
それから、血管識別530が、データ収集平面上で実行される。
血管の識別は、上述のように実行されてもよい。図7に示す例では、関心血管が黒丸で示される頸動脈であり、この場合は頸静脈である残りの血管は無視される。カラードップラーデータ及び/又は拍動データを介して、第1のデータ収集平面内の2つの動脈及び第2のデータ収集平面内の1つの動脈が共通の血管の一部を形成することが決定されてもよい。言い換えれば、血管分岐が第1及び第2のデータ収集平面の間に存在することが決定され得る。
【0103】
それから、センサを血管に沿って移動させることによって掃引540を実行することができ、それによって、血管及び分岐部をより詳細にマッピングすることができる。
【0104】
それから、超音波パッチは、インジケータによって提供される誘導を用いてユーザによって適用される。上述のように、インジケータは遠隔監視上に表示されるだけでなく、又はその代わりに、パッチ上に提供されてもよい。誘導はデュプレックス超音波データ、すなわち、Bモードデータとカラードップラーデータとの組み合わせに基づいている。二重データを使用して、ワークフローステップは、平面550に示されるように、関心のある1つの血管断面のみがデータ収集平面内に存在するように、パッチが分岐部の十分下に配置されることを確実にする。例えば、パッチは、分岐部の2cm下に配置されてもよい。これは、流れパラメータを推定するとき、分岐点近傍の乱流の影響が最小化されることを保証する。
【0105】
次に、平面560に示すように、関心血管をデータ収集平面の中心に置く。最後に、パッチは、断面ではなく、血管の長さに沿ったビューが利用可能であるように回転される。長さビューは完全ビュー570又は部分ビュー580とすることができ、それから、配置誘導又は画像補正によって補正することができる。代替的に、部分ビュー580は意図される目的のために十分であり得、このビューは線形アレイの最終位置として作用し得ることを意味する。
【0106】
視覚フィードバックの場合、センサは、センサがどのように動かされるべきかに関する視覚信号をユーザに提供することができる一つ又はそれより多くのLEDを備えることができる。可聴命令の場合、ユーザに可聴命令を供給するために、一つ又はそれより多くのスピーカを設けることができる。触覚フィードバックが使用される場合、パッチは、ユーザによって解釈され得る触覚命令を提供するために(非)作動する一つ又はそれより多くの振動モジュールを備えることができる。電子命令信号の例ではフィードバックがモニタなどの遠隔デジタル手段に提供されてもよく、遠隔デジタル手段はそれから、ユーザに適切な形式で命令を提示する。
【0107】
図8は、センサ上に配置されるT字形アレイ及び視覚的インジケータを使用する、誘導されるセンサ配置の例のグラフィック表現600を示す。
【0108】
センサ610は、関心血管620に近接して配置されて示されている。センサは、この場合、血管の断面図を生成する第1のトランスデューサアレイ630と、第1のトランスデューサアレイに直交して配置される第2のトランスデューサアレイ640とを有する。また、センサパッチは、さらなるトランスデューサアレイを含んでもよい。
【0109】
さらに、センサは、並進視覚的インジケータ650及び回転視覚的インジケータ660を有する。動作において、パッチを指示方向に移動させるための誘導信号をユーザに提供するために、並進視覚的インジケータを点灯させることができる。同様に、回転視覚的インジケータを点灯させて、ユーザに、パッチを指示方向に回転させるための誘導信号を提供することができる。
【0110】
図8に示す例では、センサが第1のトランスデューサアレイが対象の血管の不完全な図670を有するデータ収集平面を捕捉するように配置される。センサは、適切なユーザ入力、例えばセンサパッチ上に配置されるボタンによって初期化されてもよい。
【0111】
関心血管の完全な断面図を確保するために、第1のトランスデューサアレイのみが最初に活性化されてもよい。代わりに、第1及び第2のトランスデューサアレイの両方を同時に作動させてもよい。
【0112】
この場合、超音波センサパッチは、接続される超音波システムのプロセッサ(図1の例示的な例では画像処理装置30がこの機能を実行することができる)にストリーミングすることができるデュプレックス(Bモード及びカラードップラー)データを捕捉する。
【0113】
セグメンテーションアルゴリズム(図1の例示的な例では、セグメンテーション機能が上述のように、別個のユニット、ボリュームレンダラ42、又は超音波画像データを受信する同じプロセッサ30のいずれかによって実行することができる)を使用して、カラーフローデータ上のデータ収集平面内の血管を検出する(例えば、血管の円形外観を探索することによって)。血管が2つのセグメント化される領域として現れる場合、パッチは分岐の上方にある。図8に示す例の目標は、パッチを、単一の血管である総頸動脈上の分岐部の下に配置することである。インジケータは、総頸動脈が検出される場合、このステップの成功した完了を伝える。上述したように、セグメンテーションは、色及び/又はBモードデータ上で行うことができる。
【0114】
この場合、血管の初期ビューは不完全である。従って、並進視覚的インジケータがセンサパッチ上で起動され、それによって、パッチを移動させるために使用されるものを、血管680の完全な視界に導くことができる。
【0115】
セグメント化される領域690が静脈又はノイズアーチファクトではなく、実際に動脈などの所望の血管であることを保証するために、センサは、拍動性データを捕捉することもできる。脈動流を使用して、信号が所望の血管からのものであることを確認することができる。
【0116】
所望の血管の完全な断面が捕捉されると、制御スイッチは、第2のトランスデューサアレイ640を作動させて、血管の長さに沿って二重超音波データのストリーミングを開始することができる。
【0117】
アルゴリズムは、データ収集平面全体にわたる流れの円筒形の外観を探す。分割される血管がデータ収集平面の横方向にまたがらない場合、血管700の長さに沿ったセンサパッチの角度ミスアライメントがあってもよい。適切な回転視覚的インジケータを使用して、超音波データ内の血管の円筒形外観を最大化して、パッチを回転させるようにユーザを誘導することができる。データは、ユーザに見える必要はなく、アルゴリズムによってシステム内で実行されてもよいことに留意される。所望のビュー710が達成されると、インジケータは、正しい角度アライメントの達成を合図してもよい。所望のビュー710は、所与のアプリケーションに従って変更することができる。例えば、完全な円筒ではなく、長い楕円をもたらす血管のビューで十分であり得る。したがって、所望のビューは、血管のビューの範囲を有することができる。
【0118】
第1のトランスデューサアレイの断面図に戻るように切り替えると、アルゴリズムは、血管が依然としてビューの中心にあるかどうかをチェックすることができる。正の確認は、第2のトランスデューサアレイの素子が血管の中心軸と整列していることを示す。そうでない場合、アルゴリズムはそれを達成するようにセンサパッチを動かすために、適切なインジケータをユーザに命令することができる。次に、ユーザはボタンを作動させてパッチ配置の完了を知らせることができ、上述の様々なデータ収集方法を進めることができる。
【0119】
超音波センサーパッチは、被検体に一時的に固定することができる装着可能なパッチであってもよく、それによって、パッチが作動している間、それらが自由に動くことを可能にする。
【0120】
別の例では、パッチが3D超音波画像を実行することができるトランスデューサ素子の2Dアレイを有することができる。この場合、x平面を使用して、上述の第1のトランスデューサアレイと同様の方法で、血管のアライメントを助けることができる。完全な2Dアレイを使用するのではなく、x平面が提案され、これは、パッチを整列させるために必要とされるチャネルの数を減少させ、電力消費及びデータレートを減少させ、及び/又はより高いフレームレートを可能にするからである。この場合、パッチはパッチの反復移動又は調整を必要とせずに、単に関心領域上に配置されてもよい。アレイの全ての要素は、血管軸と最もよく整列する要素のサブセットを見つけるために活性化され得る。このような例では、パッチ配置に必要な訓練又は専門知識はない(又は最小限)。
【0121】
さらなる例では図8に記載されるセンサパッチの線形トランスデューサアレイが1.5Dトランスデューサ素子で置換されてもよく、それはデータ収集平面の視野を増大させ、血管を探索するため及び/又はセンサパッチを血管に整合させるために必要な反復を最小化し得る。
【0122】
開示される実施形態に対する変形は図面、開示、及び添付の特許請求の範囲の検討から、特許請求される発明を実施する際に当業者によって理解され、実施されることができる。特許請求の範囲において、単語「有する」は他の要素又はステップを排除するものではなく、不定冠詞「a」又は「an」は複数を排除するものではない。単一のプロセッサ又は他のユニットは、特許請求の範囲に列挙されるいくつかのアイテムの機能を満たすことができる。特定の手段が相互に異なる従属請求項に記載されているという単なる事実は、これらの手段の組み合わせが有利に使用されることができないことを示すものではない。コンピュータプログラムは他のハードウェアと一緒に、又はその一部として供給される光記憶媒体又はソリッドステート媒体などの適切な媒体上に記憶/配布することができるが、インターネット又は他の有線もしくは無線電気通信システムなどを介して、他の形態で配布することもできる。特許請求の範囲におけるいかなる参照符号も、範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
図1
図2
図3
図4
図5
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図7
図8