(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-14
(45)【発行日】2022-01-25
(54)【発明の名称】リサイクルオレフィン基材製造方法
(51)【国際特許分類】
B32B 27/32 20060101AFI20220118BHJP
C09D 11/00 20140101ALI20220118BHJP
【FI】
B32B27/32
C09D11/00
(21)【出願番号】P 2020216243
(22)【出願日】2020-12-25
【審査請求日】2021-07-08
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】711004436
【氏名又は名称】東洋インキ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】敷地 渉
(72)【発明者】
【氏名】前田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】高畑 智明
(72)【発明者】
【氏名】早坂 結科
【審査官】厚田 一拓
(56)【参考文献】
【文献】特許第6631964(JP,B1)
【文献】特開2002-060518(JP,A)
【文献】特開2001-261746(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 17/00 - 17/04
C08J 11/00 - 11/28
C09D 1/00 - 201/10
C11D 1/00 - 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水接触角が40°以下である面を有するオレフィン基材(A)の前記面上に、インキ層(B)を具備した積層体を、アルカリ性水溶液に接触させてインキ層(B)を除去する工程、および、オレフィン基材(A)を回収する工程を含むリサイクルオレフィン基材製造方法であって、
前記インキ層(B)が、酸価30以上350以下(mgKOH/g)の樹脂(樹脂b1)を含
み、
オレフィン基材(A)が、防曇オレフィン基材である、
リサイクルオレフィン基材製造方法。
【請求項2】
インキ層(B)が、更に、酸価30(mgKOH/g)未満のウレタン樹脂(樹脂b2)と、酸価30(mgKOH/g)未満であり、セルロース系樹脂、ビニル系樹脂およびポリアミド樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種の樹脂(樹脂b3)と、を含む、請求項1記載のリサイクルオレフィン基材製造方法。
【請求項3】
インキ層(B)の比重が水よりも大きく、オレフィン基材(A)の比重が水よりも小さい、
請求項1または2に記載のリサイクルオレフィン基材製造方法。
【請求項4】
樹脂b1が、ロジン系樹脂、アクリル樹脂、スチレン系樹脂およびウレタン樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種である請求項1~3いずれかに記載のリサイクルオレフィン基材製造方法。
【請求項5】
オレフィン基材(A)の水接触角が、30°以下である、請求項1~4いずれかに記載のリサイクルオレフィン基材製造方法。
【請求項6】
インキ層(B)を形成するためのインキ組成物が、更にキレート架橋剤を含む請求項1~
5いずれかに記載のリサイクルオレフィン製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オレフィン基材を含む積層体から、オレフィン基材のみを分離するリサイクルオレフィン基材製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プラスチックフィルムを原料とするパッケージ、プラスチックボトルその他のプラスチック製品は海洋にゴミとして廃棄・投棄され、環境汚染問題となっている。これらのプラスチック製品は海水中で分解されてサブミクロンサイズの破片(マイクロプラスチック)となり、海水中に浮遊する。当該プラスチックを魚類などの海洋生物が摂取すれば、生物体内中で濃縮される。そうすれば当該海洋生物を食料として摂取する海鳥や人間の健康にも影響することが懸念される。このような問題を改善するためにマイクロプラスチックを減らす様々な取り組みが始まっている。
【0003】
上記プラスチック製品としてはプラスチック基材を使用した食品包装パッケージ等が主として挙げられる。当該パッケージでは、フィルム基材としてポリエステル(PET)基材、ナイロン(NY)基材、ポリプロピレン(PP)基材など、種々のプラスチック基材が使用されている。これらプラスチック基材は、グラビアインキ、フレキソインキ、その他の印刷インキにより印刷層が施され積層体としたのちに、当該積層体をカットして熱融着されてパッケージとなる。
【0004】
上記マイクロプラスチックを削減する試みとしては上記パッケージにおいて(1)プラスチック基材を紙に代替する、(2)プラスチック基材を同種のみの使用に限定して(モノマテリアル化という)リサイクルを簡易化する、(3)不純物を除去してプラスチックをリサイクルする、などが挙げられる。
【0005】
特に上記(3)のプラスチックのリサイクル方法として、ケミカルリサイクルやマテリアルリサイクル等が挙げられ、それぞれ多様な手法が提案されている。中でも、エネルギーコスト面で優れるのはマテリアルリサイクルである。
【0006】
廃プラスチックを化学的に分解し、化学原料として再利用するケミカルリサイクルに対し、マテリアルリサイクルでは、廃プラスチックを洗浄したのちプラスチック材料として再利用するため、洗浄工程でプラスチックの樹脂劣化が起こらないことが好ましい。洗浄工程では、加熱工程やアルカリ等の薬品洗浄工程が含まれることが多い。そのため一般的にマテリアルリサイクルにおいては、PETなど分解しやすいエステル系プラスチック材料と比較し、オレフィン系材料が適しているとされる。
【0007】
マテリアルリサイクルにおける洗浄工程として、パッケージの印刷層をアルカリ水溶液で除去する試みが行われてきた。特許文献1~5には、プラスチック基材上に下塗り層や、アルカリ水により脱離可能な印刷層を設け、アルカリ水により印刷柄を除去する技術が開示されている。しかしこれらの文献中では、マテリアルリサイクルはポリエステル基材の回収を目的とするものであり、オレフィン基材へのインキ層密着性などの皮膜物性とオレフィン基材リサイクルとの両立が望まれている。
【0008】
特許文献6では、酸価を有するウレタン樹脂を使用して、オレフィンフィルムへの密着性を含むラミネート物性とアルカリ水によるリサイクル適性を両立する技術が開示されているが、オレフィン基材上のインキ層がある積層体からのオレフィン基材リサイクルについての発明形態の詳細は示されていない。
【0009】
オレフィン基材とインキとの組み合わせで十分な表刷り物性を発現する積層体でありながらも、さらにアルカリ水によりインキ層を除去し純度の高い再生オレフィンを回収する技術を提供することによって、再生プラスチックの産業上の利用性へ大きく貢献できるが、これらを成しえる技術はいまだ報告されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2000-086951号公報
【文献】特開2000-086951号公報
【文献】特開2001-031899号公報
【文献】特開平11-209677号公報
【文献】特開2001-131484号公報
【文献】特許第6631964号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の課題は、オレフィン包装材として必要な基材接着性、耐ブロッキング性、耐摩擦性、耐熱性その他の物性に優れた、オレフィン基材上にインキ層を有する積層体を提供でき、更に当該積層体からアルカリ水溶液によるインキ層の脱離性が良好で、オレフィン基材を容易に回収でき、得られたリサイクルオレフィン基材が使用前素材(バージン素材)に近い高品質(外観、透明性、MFR等)となる、リサイクルオレフィン基材製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、前記した課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、以下に記載のリサイクルオレフィン基材製造方法が課題解決に有効であることを見出した。
【0013】
即ち、本発明は、水接触角が40°以下である面を有するオレフィン基材(A)の前記面上に、インキ層(B)を具備した積層体を、アルカリ性水溶液に接触させてインキ層(B)を除去する工程、および、オレフィン基材(A)を回収する工程を含むリサイクルオレフィン基材製造方法であって、
前記インキ層(B)が、酸価30以上350以下(mgKOH/g)の樹脂(樹脂b1)を含む、リサイクルオレフィン基材製造方法に関する。
【0014】
また、本発明は、インキ層(B)が、更に、酸価30(mgKOH/g)未満のウレタン樹脂(樹脂b2)と、酸価30(mgKOH/g)未満であり、セルロース系樹脂、ビニル系樹脂およびポリアミド樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種の樹脂(樹脂b3)と、を含む、上記リサイクルオレフィン基材製造方法に関する。
【0015】
また、本発明は、インキ層(B)の比重が水よりも大きく、オレフィン基材(A)の比重が水よりも小さい、上記リサイクルオレフィン基材製造方法に関する。
【0016】
また、本発明は、樹脂b1が、ロジン系樹脂、アクリル樹脂、スチレン系樹脂およびウレタン樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種である上記リサイクルオレフィン基材製造方法に関する。
【0017】
また、本発明は、オレフィン基材(A)の水接触角が、30°以下である、上記リサイクルオレフィン基材製造方法に関する。
【0018】
また、本発明は、オレフィン基材(A)が、防曇オレフィン基材である、上記リサイクルオレフィン基材製造方法に関する。
【0019】
また、本発明は、インキ層(B)を形成するためのインキ組成物が、更にキレート架橋剤を含む上記リサイクルオレフィン製造方法に関する。
【発明の効果】
【0020】
本発明により、オレフィン包装材として必要な基材接着性、耐ブロッキング性、耐摩擦性、耐熱性その他の物性に優れた、オレフィン基材上にインキ層を有する積層体を提供でき、更に当該積層体からアルカリ水溶液によるインキ層の脱離性が良好で、オレフィン基材を容易に回収でき、得られたリサイクルオレフィン基材が使用前素材(バージン素材)に近い高品質(外観、透明性、MFR等)となる、リサイクルオレフィン基材製造方法を提供することが可能となった。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する実施形態又は要件の説明は、本発明の実施形態の一例であり、本発明はその要旨を超えない限りこれらの内容に限定されない。
【0022】
以下の説明において、オレフィン基材(A)を単に「基材(A)」と表記する場合があるが同義である。
【0023】
本発明は、水接触角が40°以下である面を有するオレフィン基材(A)の前記面上に、インキ層(B)を具備した積層体を、アルカリ性水溶液に接触させてインキ層(B)を除去する工程、および、オレフィン基材(A)を回収する工程を含むリサイクルオレフィン基材製造方法であって、
前記インキ層(B)が、酸価30以上350以下(mgKOH/g)の樹脂(樹脂b1)を含む、リサイクルオレフィン基材製造方法に関する。オレフィン基材(A)の有する面が水接触角40°以下であり、更にインキ層(B)が(樹脂b1)を含めば水接触角40°の面との脱離性が良好となる。
【0024】
(アルカリ性水溶液によるインキ層(B)除去工程)
上記積層体は、例えば、アルカリ性水溶液の入った処理槽中でアルカリ性水溶液と接触させてインキ層(B)を除去する。
【0025】
(アルカリ性水溶液)
アルカリ性水溶液はアルカリ性化合物を含有する水溶液であり、アルカリ性化合物を当該水溶液全体のうち0.5~10質量%含有することが好ましく、1~5質量%であることがさらに好ましい。積層体と接触させる時の温度は30~120℃であることが好ましく、40℃~110℃であることがより好ましく、50℃~100℃であることがなお好ましい。塩基性化合物は当該水溶液全体のうち0.5~5質量%で含有することが好ましく、1~5質量%で含有することがなお好ましい。また、塩基性水溶液の上記温度は40~110℃であることが好ましく、50~100℃であることがなお好ましい。上記アルカリ性化合物としては、特に制限は無いが、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)、水酸化カルシウム(Ca(OH)2)、アンモニア、水酸化バリウム(Ba(OH)2)、炭酸ナトリウム(Na2CO3)等が好適に挙げられる。好ましくはNaOHおよび/またはKOHである。
【0026】
(インキ層(B)除去工程)
上記アルカリ性水溶液と積層体の接触によりインキ層(B)を積層体から除去できるメカニズムとして推測されるのは、インキ層(B)が、上記樹脂b1を有することでインキ層(B)の表面および/または積層体の断面よりアルカリ水溶液が浸透することで、インキ層(B)が膨潤する。更に、基材(A)のインキ層(B)と接する面が、水接触角が40°以下であればアルカリ性水溶液の浸透が更に向上してインキ層(B)が基材(A)から容易に剥離する。基材(A)上にインキ層(B)を設けたのち製袋工程などを経て包装容器の形になっている積層体は、リサイクル工程あるいはそれ以前に裁断または粉砕されて、積層体断面が露出している状態でアルカリ水溶液と接触することが好ましい。
なお、本発明において、「インキ層の除去」とは、基材(A)からインキ層(B)がリサイクル基材として使用できる範囲で除去される意味であり、リサイクル基材として使用できる範囲でリサイクル基材にインキ層(B)の残留があってもよい。
【0027】
積層体とアルカリ性水溶液とは撹拌されながら接触させることが好ましい。撹拌手段としては特に制限されず、エッジドタービン翼(ディスパーとも言う)、ラジアルフロータービン翼、アクシャルフロータービン翼、パドル翼、プロペラ翼、アンカー翼、およびハイシアーミキサー等従来公知の攪拌設備が挙げられる。攪拌回転数は例えば2Lフラスコスケールであれば攪拌翼の形状とサイズにもよるが、100~350rpmであることが好ましい。攪拌の時間は15分以上、24時間以下であることが好ましい。
【0028】
(オレフィン基材(A)回収工程)
本発明のリサイクル基材製造方法は、積層体からインキ層(B)を除去した後に、基材(A)を回収する工程を含む。基材(A)を回収する工程とは、アルカリ性水溶液による積層体の処理後、アルカリ性水溶液、剥離したインキ層(B)の欠片および基材(A)等が混在した処理槽の中から、基材(A)を分離・回収する工程のことであり、基材(A)を高純度で得られることが好ましい。基材(A)の回収方法としては特に制限されず、例えば、基材(A)とインキ層(B)の欠片のサイズ差による分離回収が好ましく、比重差による分離回収もまた好ましい。あるいはそれらの組み合わせ等によって適宜分離回収することができるが、中でも比重差による分離回収工程を含むことが好ましく、より好ましくは比重差による分離回収工程とサイズ差による分離回収工程の併用することである。
なお、比重差による分離回収工程では、処理槽の中でアルカリ性水溶液に浮く基材(A)のみを回収することが好ましい。またアルカリ性水溶液中の不純物(コンタミ)成分やインキ層(B)の欠片が沈降すれば好適であり基材(A)との分離が容易で、より精度よく基材(A)のみを回収できる。そのため回収のちリサイクルしたオレフィン基材(A’)(オレフィン基材(A’)または基材(A’)とも表記)の物性や透明性が良くなる。比重差による分離の方法は、従来公知の方法でよく、流動層を用いたものや、遠心分離機を用いたものなどであってよい。
【0029】
積層体からインキ層(B)が剥離し、基材(A)を回収した後、基材(A)を水洗・乾燥する工程を経て、リサイクル基材(オレフィン基材(A’))を得ることができる。この際、基材(A’)には剥離したインキ層(B)の破片を含むあらゆるコンタミ成分ができるだけ付着していないことが好ましい。得られたオレフィン基材(A’)は、押出機等によりペレット状に加工し、再生樹脂として再利用することができる。再生樹脂の用途は制限されず、無色透明のフィルム状に加工されてもよいし、着色剤を添加した成型物として加工されてもよい。
【0030】
<オレフィン基材(A)>
本発明で使用する基材(A)は、基材の原料としてポリオレフィン樹脂を主として含むプラスチック基材であり、かつ少なくとも一方の面の水接触角が40°以下である。包装材に用いるために、フィルムまたはシート状の形態が好ましい。ポリオレフィン樹脂はアルカリ性水溶液に対する耐性が強く、PET等アルカリ処理により分子量低下を起こすエステル系基材と比較して、アルカリ処理後でも樹脂物性を高く維持することができ、更に、回収の容易さの観点から、当該ポリオレフィン基材として例えば、二軸延伸ポリプロピレン(OPP)、無延伸ポリプロピレン(CPP)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)等のポリエチレン、酸変性ポリエチレン、酸変性ポリプロピレン、共重合ポリプロピレン、およびこれらを積層したフィルム等が好適に挙げられる。基材の厚みは特に限定されず、包装容器への加工性を考慮すると、好ましくは5μm以上150μm以下であり、より好ましくは10μm以上70μm以下である。また、中でもヒートシール性を有するフィルムは好適に用いられ、CPPやヒートシーラブルOPPなどがそれに該当する。
【0031】
基材(A)は、ガスバリア基材、例えば、アルミニウム、シリカ、アルミナ等の無機蒸着層を有するプラスチック基材;ポリビニルアルコール等の有機層を有するプラスチック基材;等であってもよい。なお、アルミニウムやアルミナは、塩基性水溶液への溶解性を有するため、後述のアルカリ水溶液による洗浄工程において溶解し、インキ層を除去することで、プラスチック基材のみをリサイクルすることが可能である。
【0032】
オレフィン基材(A)の素材は、オレフィンを含んでいれば特に際限はなく、単純にオレフィン基材同士が積層されていてもよいし、接着剤等を介してオレフィン基材とは異なる基材が積層されていてもよい。「オレフィン基材とは異なる基材」は、異なる性質を有するフィルムが挙げられ、種類を問わない。また、積層された基材(A)である場合は接着剤層を含む形態であってもよい。プラスチックを積層させる方法は特に限定されず、共押出製法、熱融着、接着剤層を介した圧着など、従来公知の方法が挙げられる。
【0033】
(水接触角が40°以下)
水接触角が40°以下である面を有するオレフィン基材(A)を用いた積層体を用いることにより、課題に記載したリサイクル前の積層体としての実用適性と、リサイクル基材製造の効率との両立が可能となる。
水接触角が40°以下とするためには、オレフィン基材(A)が帯電防止剤、防曇剤、紫外線防止剤などの添加剤を含む(塗工あるいは混練)形態や、易接着性コート層(例えばポリビニルアルコールおよびその誘導体を含む層)を有する形態、基材の表面をコロナ処理あるいは低温プラズマ処理した形態などが好ましい。
これらの形態は、下記のようにアルカリ性水溶液の浸透を促してインキ層(B)の脱離を促進させるとともに、基材上の印刷インキその他コーティング剤の濡れ性を向上させる目的や、フィルムに特定の機能性を持たせる目的でも施され、例えば、湿気による包材の曇りを防止することで内容物の視認性に優れた包材を提供するのにも好適に用いられる。
【0034】
(防曇オレフィン基材)
オレフィン基材(A)は防曇剤を含むことが好ましく、防曇オレフィン基材であることがなお好ましい。上記防曇剤は界面活性剤であることが好ましく、当該界面活性剤としては脂肪酸化合物が好ましく、例えば、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステルなどの多価アルコール脂肪酸エステルやエチレンオキサイド付加物などのイオン系界面活性剤を1種あるいは複数用いられる。これら防曇剤は塗工あるいは混練されて含まれる。防曇オレフィン基材としては、例えば、フタムラ化学社製、AFシリーズ(AF-CV2C(厚み30μmのPPフィルム))等が挙げられる。
【0035】
基材(A)は、上記の添加剤を塗工あるいは混錬したり、表面をコロナ処理あるいは低温プラズマ処理することによって、表面極性を向上させることで水接触角が40°以下とすることができる。表面極性が高い、すなわち親水性の高いフィルムを使用することによって、アルカリ性水溶液によるインキ層(B)除去工程において、包材断面などからインキ層(B)と基材層(A)との間にアルカリ水が浸透しやすく、インキ層の除去性に有利となり、より品位の高いリサイクルが可能となる。本発明の基材(A)は水接触角が40°以下の面を有することを特徴とするが、より好ましくは30°以下、さらに好ましくは27°以下である。なお、水接触角は動的接触角計によって測定した、4μLの水の液滴を滴下してから200msec後の動的接触角の測定値をいい、例えば協和界面科学株式会社製の自動接触角計等を使用して測定することができる。
【0036】
<インキ層(B)>
本発明におけるインキ層(B)は、基材(A)上にインキ組成物を塗布・乾燥させることで形成され、基材(A)と接触する形で配置される。インキ層(B)は、酸価30以上350以下(mgKOH/g)の樹脂(樹脂b1)を含むことを特徴とし、基材(A)とインキ層(B)との積層体をアルカリ性水溶液に接触させることで、インキ層(B)が基材(A)から脱離し、積層体からインキ層(B)を除去することができる。アルカリ性水溶液中でインキ層(B)が膨潤し、基材(A)からの剥離を促進する効果がある。
【0037】
(樹脂b1)
前記(樹脂b1)は、特に限定されず、酸価30以上350以下(mgKOH/g)の範囲内であれば従来公知の樹脂から選択することができ、単独または二種以上を併用してもよい。(樹脂b1)の酸価は35以上210以下(mgKOH/g)がより好ましい。インキ組成物に含まれる樹脂や溶剤との相溶性、印刷塗膜としての物性発現の観点から、前記(樹脂b1)は、ロジン系樹脂、アクリル樹脂、スチレン系樹脂およびウレタン系樹脂から選ばれる少なくとも一種であることが好ましく、ロジン系樹脂であることがよりこのましい。
樹脂b1は、前記酸価を含有させるために、酸無水物、二塩基酸あるいは二塩基酸エステル等を共重合または酸変性させたものであることが好ましい。また、ウレタン樹脂である場合には、ポリエステルポリオールからなる構成単位を含むことがより好ましい。前記樹脂b1はインキ組成物中に0.1~20質量%含まれることが好ましく、0.5~10質量%含まれることがさらに好ましい。前記(樹脂b1)の分子量に特に制限はなく、1000~100000であることが好ましい。
【0038】
また、インキ組成物が、樹脂b1と、後述の樹脂b2とを含む場合は、樹脂b1と、樹脂b2との質量比率(樹脂b1:樹脂b2)は、95:5~20:80であることが好ましく、90:10~25:75であることがなお好ましく、85:15~30:70であることが更に好ましい。脱離性とインキ層の物性のバランスのためである。
【0039】
(ロジン系樹脂)
ロジン系樹脂はロジン由来の構造を20質量%以上有していればよく、軟化点(環球法)が30℃~180℃であることが好ましく、50~170℃であることがなお好ましい。当該ロジン系樹脂としては、重合ロジン樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂などを好適に挙げることができる。ロジン系樹脂の酸価は50以上350以下(mgKOH/g)が好ましい。当該ロジン系樹脂は例えば、荒川化学社製のアラダイムR-95、マルキードNo.32などを好適に挙げることができる。
【0040】
(アクリル樹脂)
アクリル樹脂はアクリルモノマー由来の構造を20質量%以上有していればよく、当アクリル樹脂はガラス転移温度が30~180℃であることが好ましく、50~170℃であることがなお好ましい。当該アクリル樹脂を構成するアクリルモノマーとしては、(メタ)アクリル酸アルキル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルなど公知のアクリルモノマーを好適に挙げることができる。アクリル樹脂の酸価は50以上250以下(mgKOH/g)が好ましい。ただし、下記スチレン-アクリル樹脂あるいは塩化ビニル-アクリル共重合樹脂である場合を含まない。
【0041】
(スチレン系樹脂)
スチレン系樹脂は、スチレン由来の構造を20質量%以上有していればよく、ガラス転移温度が30~180℃であることが好ましく、50~170℃であることがなお好ましい。スチレン系樹脂は、スチレン-マレイン酸樹脂、スチレン-アクリル樹脂であることが好ましく、スチレン-マレイン酸樹脂であることがなお好ましく、当該スチレン-マレイン酸樹脂を構成するモノマーとしては、スチレンモノマーおよびマレイン酸を好適に挙げることができる。スチレン-マレイン酸樹脂の酸価は100以上250以下(mgKOH/g)が好ましい。当該スチレン-マレイン酸樹脂は例えば、荒川化学社製のアラスター700、星光PMC社製のハイロスX X-228などを好適に挙げることができる。
【0042】
(樹脂b2)
前記インキ層(B)は、さらに、酸価30mgKOH/g未満のウレタン樹脂(樹脂b2)を含むことが好ましい。上記(樹脂b2)は、従来公知の方法により合成することができ、ポリオールと、ポリイソシアネートとの反応で得られるウレタン結合を有するポリウレタン樹脂であることが好ましい。また、必要に応じて残存するイソシアネートとポリアミンにより生成されるウレア結合を介して鎖延長されていてもよい。樹脂b2の重量平均分子量は、好ましくは10,000~100,000であることが好ましい。より好ましくは15,000~70,000であり、さらに好ましくは15,000~50,000である。
【0043】
(ポリオール)
ポリオールは、一分子中に水酸基を平均で1.7~2.3個程度有することが好ましく、平均2個有することがより好ましい。高分子ポリオールとしては、酸化エチレン、酸化プロピレン、テトラヒドロフランなどの重合体または共重合体などのポリエーテルポリオール類、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ペンタジオール、メチルペンタジオール、ヘキサジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、メチルノナンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコールなどのグリコールと、アジピン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、マレイン酸、フマル酸、こはく酸、しゅう酸、マロン酸、グルタル酸、ピメリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ダイマー酸などの二塩基酸もしくはこれらの無水物との脱水縮合物であるポリエステルポリオール類、ポリカーボネートポリオール類、ポリブタジエングリコール類、ビスフェノールAの酸化エチレンまたは酸化プロピレンを付加して得られるポリオール類、ダイマージオール類、ひまし油ポリオール類、水添ひまし油ポリオール類などの各種公知のポリオールが挙げることができる。高分子ポリオールは、単独で用いても、2種以上併用しても良い。中でもポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオールより選ばれる少なくとも一種の高分子ポリオールを使用することが好ましい。中でも、フィルムへの密着性の観点からポリエステルポリオールが好ましい。また、2種以上の高分子ポリオールを併用する場合においては、基材への密着性と耐ブロッキング性の観点から、ポリエステルポリオールを高分子ポリオールの全質量に対して40質量%以上含むことがより好ましい。上記以外のポリオールとしては、芳香族ジオールや脂肪族ジオール等が挙げられ、これらを併用しても良い。
【0044】
(ポリイソシアネート)
ポリイソシアネートとしてはジイソシアネートを使用することが好ましい。例えば、1,5ーナフチレンジイソシアネート、4,4’ージフェニルメタンジイソシアネート、4,4’ージフェニルジメチルメタンジイソシアネート、4,4’ージベンジルイソシアネート、ジアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、テトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、1,3ーフェニレンジイソシアネート、1,4ーフェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート、ブタンー1,4ージイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソプロピレンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、2,2,4ートリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート、シクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンー4、4’ージイソシアネート、1,3ービス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、mーテトラメチルキシリレンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート、ダイマー酸のカルボキシル基をイソシアネート基に転化したダイマージイソシアネート等が挙げられる。中でもイソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートが好ましい。
【0045】
本発明に使用するポリウレタン樹脂を得るためには、ポリイソシアネート由来のNCOとポリオール由来のOHの反応モル比(NCOモル当量/OHモル当量)が0.5以上2以下、好ましくは1.05以上3以下となるように反応させ、次いで、必要に応じて上述したポリアミンで鎖延長を行うこともでき、過剰反応を防止するため、更に反応停止剤も使用することもできる。
【0046】
鎖延長に用いるポリアミンとしては、エチレンジアミン、1,4-ブタンジアミン、イソホロンジアミン、アミノエチルエタノールアミン等の脂肪族ジアミン類であることが好ましい。また鎖延長剤として、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等のグリコール類も使用することができる。また反応停止剤としては、メタノール、エタノール等のモノアルコール類、n-プロピルアミン、n-ブチルアミン、ジ-n-ブチルアミン等のアルキルアミン類、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン等のアルカノールアミン類が挙げられる。
【0047】
ポリウレタン樹脂は、ウレア結合を有していても良いし、有していなくても良い。
ウレア結合を有する場合の製造方法は、特に限定されるものではないが、ポリオール並びにポリイソシアネートを反応させて得られる末端にイソシアネート基を有するプレポリマーの、イソシアネート基の数を1とした場合の鎖延長剤および反応停止剤中のアミノ基の合計数量が0.5~1.3の範囲内であることが好ましい。
【0048】
(樹脂b3)
インキ層(B)は、さらに、酸価30mgKOH/g未満のセルロース系樹脂、ビニル系樹脂およびポリアミド系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種の樹脂(樹脂b3)を含有することが好ましい。上記樹脂を含有することでインキ層(B)の塗膜強度が向上し、耐熱性、耐摩擦性、耐ブロッキング性などが向上する。(樹脂b3)の含有量は、インキ組成物に対して0.1~30質量%であることが好ましく、0.2~10質量%であることがより好ましい。
【0049】
(ポリアミド樹脂)
ポリアミド樹脂は、重量平均分子量が5000以上50000以下であることが好ましい。重量平均分子量が上記範囲内のポリアミド系樹脂であるとインキ層(B)の皮膜強度や、インキ組成物の保存安定性が向上する。またポリアミド樹脂はダイマー酸を含む重合脂肪酸に由来する構成単位を50質量%以上、好ましくは70質量%以上有していることが好ましい。
【0050】
(セルロース系樹脂)
バインダー樹脂は、セルロース系樹脂を含むことが好ましく、セルロース系樹脂としては、例えばセルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートその他のセルロースエステル樹脂、ニトロセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、およびカルボキシアルキルセルロース等が挙げられる。セルロースエステル樹脂はアルキル基を有することが好ましく、当該アルキル基は、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられ、更にアルキル基が置換基を有していてもよい。
セルロース系樹脂としては、上記のうちセルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、およびニトロセルロースが好ましい。特に好ましくはニトロセルロースである。分子量としては重量平均分子量で5,000~200,000のものが好ましく、10,000~50,000が更に好ましい。また、ガラス転移温度が120℃~180℃であるものが好ましい。ウレタン樹脂またはポリアミド樹脂との併用で耐ブロッキング性、耐擦傷性その他のコート剤被膜物性が向上するためである。
【0051】
(ニトロセルロース)
上記ニトロセルロースは、例えば、天然セルロースと硝酸とを反応させて、天然セルロース中の無水グルコピラノース基の6員環中の3個の水酸基を、硝酸基に置換した硝酸エステルとして得られるものが好ましく、分子量としては重量平均分子量で5,000~200,000のものが好ましく、10,000~100,000が更に好ましい。また、ガラス転移温度が120℃~180℃であるものが好ましい。被膜の強度が向上し、耐擦傷性が向上するためである。また、基材密着性、ラミネート強度の観点から窒素分は10.5~12.5質量%であることが好ましい。
【0052】
(ビニル系樹脂)
ビニル系樹脂としては例えば塩化ビニル共重合樹脂などが好ましい。塩化ビニル共重合樹脂としては、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂、塩化ビニル-アクリル共重合樹脂などが好適に挙げられる。ただし、上記スチレン系樹脂である場合を除く。
【0053】
(塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂)
塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂としては、塩化ビニルと酢酸ビニルが共重合したものであり、分子量としては重量平均分子量で5,000~100,000のものが好ましく、20,000~70,000が更に好ましい。塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂の固形分100質量%中の酢酸ビニルモノマー由来の構造は、1~30質量%が好ましく、塩化ビニルモノマー由来の構造は、70~95質量%であることが好ましい。この場合有機溶剤への溶解性が向上、更に基材への密着性、皮膜物性、ラミネート強度等が良好となる。
また、有機溶剤への溶解性が向上するため、ケン化反応あるいは共重合でビニルアルコール由来の水酸基を含むものが更に好ましく、水酸基価として20~200mgKOH/gであることが好ましい。また、ガラス転移温度は50℃~90℃であることが好ましい。
【0054】
(塩化ビニル-アクリル共重合樹脂)
塩化ビニル-アクリル共重合樹脂は塩化ビニルモノマーとアクリルモノマーの共重合樹脂を主成分とするものであり、アクリルモノマーとしては、基材に対する接着性と有機溶剤に対する溶解性が向上するため(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルを含むことが好ましい。アクリルモノマーはポリ塩化ビニルの主鎖にブロックないしランダムに組み込まれていても良いし、ポリ塩化ビニルの側鎖にグラフトされていても良い。塩化ビニル-アクリル共重合樹脂は、重量平均分子量が10,000から100,000であることが好ましく、30,000から70,000であることが更に好ましい。
【0055】
<キレート架橋剤>
インキ層(B)を構成するインキ組成物は、キレート架橋剤を含むことが好ましい。架橋してインキ層(B)の基材密着性および塗膜物性が向上するためである。キレート架橋剤は、チタンキレートであることが好ましく、1分子中に、Ti-O-C型結合をもつものが好ましい。具体的には、チタンアルコキシド、チタンアシレートなどの有機チタン化合物などが好適に挙げられる。チタンキレートの代表例としては、テトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、ブチルチタネートダイマー、テトラ(2-エチルヘキシル)チタネート、テトラメチルチタネート、テトラステアリルチタネートなどのチタンアルコキシド、トリエタノールアミンチタネート、チタニウムアセチルアセテート、チタニウムエチルアセトアセテート、チタニウムラクテート、オクチレングリコールチタネート、チタンテトラアセチルアセトナートなどのチタンキレートを挙げることができる。これらのうちチタンキレートであるの有機チタン化合物は、一般に架橋反応完結に加温が必要な反面、常温での加水分解が起り難く、安定性に優れておりインキへの使用に適しており、好適に使用することが出来る。
【0056】
チタンキレートは、1分子中に、アルコキシ基を有することによって樹脂の分子間あるいは分子内架橋結合に寄与する。例えば、チタンキレートは、塩化ビニル共重合樹脂あるいはセルロース系樹脂の有する水酸基に対してモル当量比で0.1~1.0であることが好ましい。0.1モル当量以上の場合、耐ブロッキング性が向上する。また、1.0モル当量以下の場合、インキ組成物の保存安定性が向上する。なおインキ組成物総量中に0.2~3質量%で含有することが好ましい。
【0057】
本発明のインキ層(B)は、耐熱性や耐摩擦性の向上を目的として、さらにワックス成分を含有させることができる。ワックスとしては、ポリオレフィンワックス、パラフィンワックス、シリコーンワックス、アマイドワックスなどの既知の各種ワックスが利用できる。
【0058】
さらに、添加剤として顔料分散剤、レベリング剤、界面活性剤、可塑剤、接着補助剤等の各種インキ用添加剤の添加は任意である。なお接着補助剤としては塩素化ポリオレフィン樹脂が好ましく、中でも塩素化ポリプロピレン樹脂の使用が好ましい。
【0059】
<顔料>
本発明のインキ層(B)は、有色であっても無色であってもよく、一般に印刷インキや塗料で使用できる各種の無機顔料や有機顔料を含むことができる。無機顔料としては、例えば、酸化チタン、ベンガラ、紺青、群青、カーボンブラック、黒鉛などの有色顔料、および、炭酸カルシウム、カオリン、クレー、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、タルク等の体質顔料を挙げることができる。また有機顔料としては、溶性アゾ顔料、不溶性アゾ顔料、アゾキレーキ顔料、縮合アゾ顔料、銅フタロシアニン顔料、縮合多環顔料などが好適である。なおこれらに限らず、前記顔料はカラーインデックスのジェネリックネームで記載のものが適宜使用可能である。中でも、アルカリ水溶液に溶けださない、すなわちアルカリ耐性を有する顔料が好ましい。アルカリ水溶液で積層体を処理する際に、溶けだした顔料成分によりアルカリ水溶液が着色するのを防ぐことで、アルカリ水溶液の再利用が容易となり、リサイクルの生産性を向上できるからである。顔料のアルカリ耐性は、概ね顔料骨格・構造で推定でき、アルカリ水溶液に溶解する染料由来のものや、アルカリ水溶液で分解するものは、アルカリ耐性を有しないといえる。例えば、アルカリ耐性のある顔料としては、無機顔料、P.B.15(ピグメントブルー15)、P.Y.83(ピグメントイエロー83)等が挙げられる。
これらの顔料の含有量としては、インキ組成物総量中に0.5~50質量%が好ましい。
【0060】
<有機溶剤>
本発明のインキ層(B)を形成するインキ組成物に利用する溶剤としては、主に、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、ブタノールなどのアルコール系有機溶剤、アセトン,メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系有機溶剤、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチルなどのエステル系有機溶剤、n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタンなどの脂肪族炭化水素系有機溶剤、および、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタンなどの脂環族炭化水素系有機溶剤が挙げることができ、バインダー樹脂の溶解性や乾燥性などを考慮して、混合して利用することが好ましい。
【0061】
<インキ組成物の製造>
本発明のインキ層(B)を形成するインキ組成物を製造する方法は制限されないが、例えば、顔料、樹脂成分および有機溶剤、および必要に応じて顔料分散剤、界面活性剤などを攪拌混合した後、各種練肉機、例えば、ビーズミル、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、パールミル等を利用して分散し、さらに、他の樹脂や添加等を混合する方法などがある。
【0062】
本発明におけるインキ層(B)は、基材(A)の水接触角40°以下である面に接して設けられた層であり、装飾、美感の付与、内容物、賞味期限、製造者又は販売者の表示等を目的とした、任意の印刷模様を形成する層、および/または印刷模様を形成する層を保護したり光沢などの意匠性を付与することを目的としたクリア層であり、ベタ印刷層も含む。本発明におけるインキ層(B)の上に、さらに従来公知のインキやコーティング剤を重ねて塗布した単独あるいは複数の印刷層を有していてもよい。インキ層(B)の厚さは、好ましくは0.1μm以上100μm以下、より好ましくは0.1μm以上10μm以下、さらに好ましくは1μm以上5μm以下である。
【0063】
インキ層(B)を形成するためのインキ組成物の塗工方法は特に限定されない。グラビアコート法、フレキソコート法、ロールコート法、バーコート法、ダイコート法、カーテンコート法、スピンコート法、インクジェット法等の方法により塗布することができる。これを放置するか、必要により送風、加熱、減圧乾燥、紫外線照射等を行うことによりインキ層(B)を形成することができる。
【実施例】
【0064】
以下、実施例をあげて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、本発明における部および%は、特に注釈の無い場合、質量部および質量%を表わす。
【0065】
(分子量)
重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)および分子量分布(Mw/Mn)は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により測定を行い、ポリスチレンを標準物質に用いた換算分子量として求めた。測定条件を以下に示す。
GPC装置:昭和電工社製 Shodex GPC-104
カラム:下記カラムを直列に連結して使用した。
昭和電工社製 Shodex LF-404 2本
昭和電工社製 Shodex LF-G
検出器:RI(示差屈折計)
測定条件:カラム温度40℃
溶離液:テトラヒドロフラン
流速:0.3mL/分
【0066】
(酸価)
JISK0070(1992)に記載の方法に従って酸価を測定した。
【0067】
(基材Aの水接触角)
接触角計(協和界面科学株式会社製、商品名:自動接触角計CA-VP型)を用いて水の液滴4μLを、基材(A)上に滴下した。水の液滴が基材(A)に接触した瞬間から200msec後の液滴写真を撮影し、θ/2法による解析を行って接触角を求め、基材Aの水接触角とした。
【0068】
<ポリウレタン樹脂の製造>
[合成例1](ポリウレタン樹脂P1)
還流冷却管、滴下漏斗、ガス導入管、撹拌装置、及び温度計を備えた反応器中で窒素ガスを導入しながら、3-メチル-1,5-ペンタンジオールとアジピン酸の重縮合物からなる、数平均分子量2,000のポリエステルポリオール103.2部、ネオペンチルグリコール40.5部、イソホロンジイソシアネート121.4部、酢酸エチル200部を仕込み、90℃で5時間反応させて、末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー溶液を得た。次いで、イソホロンジアミン33.6部、ジブチルアミン1.3部、イソプロピルアルコール350部を混合したものに、前記末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー溶液を室温で60分間かけて滴下した後、70℃で3時間反応させて、ポリウレタン樹脂溶液を得た。得られたポリウレタン樹脂溶液に、EAを加えて固形分を調整し、固形分濃度30%、質量平均分子量40,000のポリウレタン樹脂P1の溶液を得た。
【0069】
[合成例2](ポリウレタン樹脂P2)
表1に記載の原料および仕込み量を用いた以外は合成例1と同様の手法により、ポリウレタン樹脂P2溶液を得た。
【0070】
[合成例3](ポリウレタン樹脂P3)
還流冷却管、滴下漏斗、ガス導入管、撹拌装置、及び温度計を備えた反応器中で窒素ガスを導入しながら、プロピレングリコールとアジピン酸の重縮合物からなる、数平均分子量2,000のポリエステルポリオール130部、ポリエチレングリコールからなる、数平均分子量2,000のポリエーテルポリオール26.6部、2,2-ジメチロールプロパン酸28.7部、イソホロンジイソシアネート101.3部、酢酸エチル200部を仕込み、90℃で5時間反応させて、末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー溶液を得た。次いで、2-(2-アミノエチルアミノ)エタノール13.4部、イソプロピルアルコール350部を混合したものを室温で60分間かけて滴下した後、70℃で3時間反応させて、ポリウレタン樹脂溶液を得た。得られたポリウレタン樹脂溶液に、EAを加えて固形分を調整し、固形分濃度30%、質量平均分子量30,000のポリウレタン樹脂P3の溶液を得た。
【0071】
以下に、表1中の略称を示す。
・ PMPA:3-メチル-1,5-ペンタンジオールとアジピン酸の重縮合物からなる、数平均分子量2,000のポリエステルポリオール
・ PPA:プロピレングリコールとアジピン酸の重縮合物からなる、数平均分子量2,000のポリエステルポリオール
・ PPG:ポリプロピレングリコールからなる、数平均分子量2,000のポリエーテルポリオール
・ DMPA:2,2-ジメチロールプロパン酸
・ NPG:ネオペンチルグリコール
・ IPDI:イソホロンジイソシアネート
・ EA:酢酸エチル
・ IPDA:イソホロンジアミン
・ AEA:2-(2-アミノエチルアミノ)エタノール
・ DBA:ジブチルアミン
・ IPA:イソプロピルアルコール
【0072】
<インキ組成物>
[インキ製造例1](インキ組成物S1)
ポリウレタン樹脂P1溶液30部、ロジン樹脂溶液2を10部、ビニル系樹脂溶液を5部、ポリアミド樹脂溶液1を2.5部、酸化チタンを20部混合攪拌し、ビーズミルとしてサンドミルを用いて20分間分散処理を行った。その後、EA(酢酸エチル)/IPA(イソプロピルアルコール)/MCH(メチルシクロヘキサン)=25/40/35(質量比)の混合溶剤を27.5部、キレート架橋剤2部、ワックス3部を混合攪拌し、インキ組成物S1を得た。
【0073】
[インキ製造例2~15](インキ組成物S2~S15)
表2に示した原料および配合比率を使用した以外は、インキ製造例1と同様の手法により、インキ組成物S1~S15を得た。
【0074】
以下に、表2中の略称を示す。
ロジン樹脂溶液1:酸価25mgKOH/gのロジン変性マレイン酸樹脂 固形分30%溶液
ロジン樹脂溶液2:酸価195mgKOH/のロジン変性マレイン酸樹脂 固形分30%溶液
アクリル樹脂溶液:、酸価176mgKOH/g、重量平均分子量40000、のアクリル樹脂 固形分30%溶液
スチレン-マレイン酸樹脂溶液:酸価205mgKOH/gのスチレン-マレイン酸樹脂 固形分 30%溶液
セルロース系樹脂溶液:窒素含有量11.5質量% 質量平均分子量30000のニトロセルロース 固形分30%溶液
ビニル系樹脂溶液:塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂溶液 固形分30質量%
ポリアミド樹脂溶液1:重量平均分子量15000 のポリアミド樹脂 固形分30%溶液
ポリアミド樹脂溶液2:重量平均分子量5000のポリアミド樹脂 固形分30%溶液
キレート:キレート架橋剤:テトライソプロピルチタネート
ワックス:ラウリン酸アミド
【0075】
<積層体の製造>
[実施例1](積層体L1)
インキ組成物S1を、EA/IPA/MCH=65/15/20(重量比)の混合溶剤を用いて、ザーンカップ#3(離合社製)25℃で15秒になるよう希釈した。
基材A1(水接触角26°の防曇ポリプロピレン(OPP)基材 膜厚30μm)に対し、希釈したインキ組成物S1を、版深30μmのグラビア版を備えたグラビア印刷機を用いて印刷し、50℃で乾燥することで、積層体L1を得た。
【0076】
[実施例2~14、比較例1~5](積層体L2~L14、LL1~LL5)
表3および表4に記載の基材(A)とインキ組成物を用いた以外は積層体L1と同様の手法により、積層体L2~L14、LL1~LL5を得た。
【0077】
[実施例15](積層体L15)
インキ組成物S1およびS15を、EA/IPA/MCH=65/15/20(重量比)の混合溶剤を用いて、ザーンカップ#3(離合社製)25℃で15秒になるよう希釈した。
基材A1(水接触角26°のヒートシーラブルOPP基材 膜厚20μm)に対し、希釈したインキ組成物S1を、版深30μmのグラビア版を備えたグラビア印刷機を用いて印刷し、50℃で乾燥した。その後、インキ組成物S1を印刷した上から、同様のグラビア印刷機を用いて希釈したインキ組成物S15を印刷し、50℃で乾燥した。基材A1/インキ組成物S1からなる印刷層/インキ組成物S15からなる印刷層 の順で有する積層体L15を得た。
【0078】
以下に、表3および表4中の略称を示す。
・A2:水接触角35°のヒートシーラブルPP基材 膜厚20μm
・A3:水接触角31°のシュリンクPET基材 膜厚12μm
・A4:水接触角42°のOPP基材 膜厚30μm
【0079】
<積層体の評価>
上記実施例および比較例で得られた積層体について以下の評価を行った。結果を表5に示す。
【0080】
<インキ層の基材への接着性(テープ接着性)評価>
得られた積層体について、ニチバン社製セロハンテープ(12mm幅)を印刷層上に貼り、テープをゆっくり引き剥がし、途中から急激に引き剥がした時の、インキ被膜の剥離程度を評価した。
5(優):急激に剥がしてもインキ被膜が全く剥離しない。
4(良):急激に剥がした部分のうち25%未満の面積のインキ被膜が剥離する。
3(可):急激に剥がした部分のうち25%以上75%未満の面積のインキ被膜が剥離する。
2(不可):急激に剥がした部分のうち75%以上の面積のインキ被膜が剥離する、またはゆっくり剥がした部分のうちインキ被膜の一部が剥離する
1(劣):ゆっくり剥がした部分のインキ被膜が全面剥離する
3、4および5は実用上問題がない範囲である。
【0081】
<積層体の耐ブロッキング性評価>
得られた4cm角に切り、印刷面と非印刷面を合わせて、20kg/cm2の荷重をかけ、60℃の雰囲気で24時間放置後、印刷面を引き剥がし、インキの剥離の程度から耐ブロッキング性を評価した。
5(優):インキ被膜がフィルムから剥離した面積が10%未満のもの
4(良):インキ被膜がフィルムから剥離した面積が10以上25%未満であるもの
3(可):インキ被膜がフィルムから剥離した面積が25以上50%未満であるもの
2(不可):インキ被膜がフィルムから剥離した面積が50%75%未満であるもの
1(劣):インキ被膜がフィルムから剥離した面積が75%以上であるもの
3、4および5は実用上問題がない範囲である。
【0082】
<積層体の耐摩擦性評価>
積層体を2cm×20cmの大きさに切り、テスター産業(株)製学振型摩擦堅牢度試験器(対カナキン3号、荷重500g)で100回擦り、インキ被膜の剥離度合いを目視で判定した。尚、判定基準はつぎの通りとした。
5(優):印刷面に変化がないもの
4(良):インキ被膜の取られる面積が15%未満であるもの
3(可):インキ被膜の取られる面積が15%以上30%未満であるもの
2(不可):インキ被膜の取られる面積が30%以上50%未満であるもの
1(不良):インキ被膜の取られる面積が50%以上であるもの
3、4および5は実用上問題がない範囲である。
【0083】
<積層体の耐熱性評価>
印刷物と同じ大きさに切ったアルミ箔と印刷面とを重ね合わせ、ヒートシール試験機を用いて2kg/cm2の圧力で1秒間アルミ箔を押圧し、インキがアルミ箔に転移する最低温度からインキ組成物の耐熱性を評価した。
5(優):最低温度が170℃以上のもの
4(良):最低温度が160℃以上、170℃未満のもの
3(可):最低温度が150℃以上、160℃未満のもの
2(不可):最低温度が140℃以上、150℃未満のもの
1(劣):最低温度が140℃未満のもの
3、4および5は実用上問題がない範囲である。
【0084】
<積層体の脱離性評価>
得られた積層体30gを1cm×1cmに刻み、フラスコ内で2%の水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液3000mlに浸し、液温65℃、回転速度200rpmにて撹拌洗浄・乾燥した後、PET基材からの印刷層の剥離性を評価した。
5(優):撹拌15分以内に印刷層が100%フィルムから剥離
4(良):撹拌15分を超え30分以内に印刷層が100%フィルムから剥離
3(可):撹拌30分を超え12時間以内に印刷層が100%フィルムから剥離
2(不可):撹拌12時間で印刷層の20%以上80%未満がフィルムから剥離。
1(劣):撹拌12時間で印刷層20%未満がPETフィルムから剥離。
3、4および5は実用上問題がない範囲である。
【0085】
<基材回収容易性の評価>
脱離性評価と同様にして、フラスコ内で液温65℃2%水酸化ナトリウム水溶液による積層体の攪拌洗浄を3時間行った後、攪拌を停止し、基材(A)のみを回収する際の容易性を評価した。
A:剥離したインキ層皮膜が沈降、基材が浮上し、当該基材のみを容易に回収できた。
B:剥離したインキ層および基材が両方とも沈降し、回収が比較的困難であった。
C:インキ層が基材から剥離せず両方とも浮上し、回収が困難であった。
【0086】
<再生樹脂外観の評価>
脱離性評価と同様にして、フラスコ内で液温65℃2%水酸化ナトリウム水溶液による積層体の攪拌洗浄を3時間行った後、上記基材を回収し、水洗・乾燥し、単軸押し出し機にて200℃で押出し、ペレタイズ工程を経て再生樹脂のヘペレットを得た。再生樹脂ペレットをTダイフィルム成形機にて200℃で押し出し、厚み100μmのフィルムを作製した。作製したフィルムについて、ヘイズガードプラス(ガードナー社製)を用いて、全光線透過率を測定した。なお、回収した基材は、残存のインキ層(B)、またはインキ層(B)の破片が付着した場合も含む。
5(優):全光透過率が80%以上
4(良):全光透過率が60%以上80%未満
3(可):全光透過率が40%以上60%未満
2(不可):全光透過率が20%以上40%未満
1(劣):全光透過率が20%未満
3、4および5は実用上問題がない範囲である。
【0087】
<再生樹脂のMFR変化率評価>
脱離性評価と同様にして、フラスコ内で液温65℃2%水酸化ナトリウム水溶液による積層体の攪拌洗浄を3時間行った後、上記基材を回収し、水洗・乾燥し、単軸押し出し機にて200℃で押出し、ペレタイズ工程を経て再生樹脂のヘペレットを得た。得られた再生樹脂ペレットおよびインキ組成物を印刷する前のバージンフィルムのメルトマスフローレイト(以下MFR:JIS K-7210に準拠)を測定し、
MFR変化率=再生樹脂ペレットのMFR/バージンフィルムのMFR×100(%)
を計算した。なお、回収した基材は、残存のインキ層(B)、またはインキ層(B)の破片が付着した場合も含む。
5(優):MFR変化率が90%以上120%未満
4(良):MFR変化率が120%以上140%未満、または80%以上90%未満
3(可):MFR変化率が140%以上160%未満、または70%以上80%未満
2(不可):MFR変化率が140%以上200%未満、または70%未満
1(劣):MFR変化率が140%以上200%以上
3、4および5は実用上問題がない範囲である。
【0088】
上記の評価結果より、本発明のリサイクル基材製造方法により、良好な表刷り物性を有するオレフィン基材とインキとの積層体から、アルカリ水溶液による洗浄でインキ等を容易に脱離することで基材のみを回収し、良質なリサイクル基材が得られることが示された。
【0089】
【0090】
【0091】
【0092】
【0093】
【要約】
【課題】本発明の課題は、オレフィン包装材として必要な基材接着性、耐ブロッキング性、耐摩擦性、耐熱性その他の物性に優れた、オレフィン基材上にインキ層を有する積層体を提供でき、更に当該積層体からアルカリ水溶液によるインキ層の脱離性が良好で、オレフィン基材を容易に回収でき、得られたリサイクルオレフィン基材が使用前素材に近い高品質となる、リサイクルオレフィン基材製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】水接触角が40°以下である面を有するオレフィン基材(A)の前記面上に、インキ層(B)を具備した積層体を、アルカリ性水溶液に接触させてインキ層(B)を除去する工程、および、オレフィン基材(A)を回収する工程を含むリサイクルオレフィン基材製造方法であって、
前記インキ層(B)が、酸価30以上350以下(mgKOH/g)の樹脂(樹脂b1)を含む、リサイクルオレフィン基材製造方法。
【選択図】なし