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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-14
(45)【発行日】2022-01-25
(54)【発明の名称】クローポンプ
(51)【国際特許分類】
   F04C 18/18 20060101AFI20220118BHJP
   F04C 29/04 20060101ALI20220118BHJP
   F04C 25/02 20060101ALI20220118BHJP
【FI】
F04C18/18 Z
F04C29/04 D
F04C25/02 A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021117524
(22)【出願日】2021-07-16
【審査請求日】2021-09-24
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000103921
【氏名又は名称】オリオン機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128794
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 庸悟
(72)【発明者】
【氏名】原山 真吾
(72)【発明者】
【氏名】福島 一樹
(72)【発明者】
【氏名】吉田 洋介
【審査官】大屋 静男
(56)【参考文献】
【文献】特許第6749714(JP,B1)
【文献】特表平06-505072(JP,A)
【文献】特開昭63-302193(JP,A)
【文献】特表平09-502001(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04C 18/18
F04C 29/04
F04C 25/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二つの円の一部を重ね合わせた断面形状のポンプ室を形成するように、シリンダ部、該シリンダ部の一方の端面に設けられた一方の端壁部、及び該シリンダ部の他方の端面に設けられた他方の端壁部を備えるポンプ室ボディ部と、
前記ポンプ室内で平行に配されて一対の歯車によって反対方向に同一速度で回転される二つの回転軸と、
該二つの回転軸に対応して設けられて前記ポンプ室内に配され、相互に非接触状態で回転されて吸入した気体を圧縮して排出できるように鉤形の爪部が形成された二つのロータとを備え、
前記ポンプ室ボディ部の前記一方の端壁部が前記一対の歯車を内包するギヤボックスの側に位置し、前記ポンプ室ボディ部の少なくとも前記他方の端壁部に気体を排出する排気口が設けられているクローポンプにおいて、
前記ポンプ室ボディ部の前記他方の端壁部の側に、前記排気口から排出される排気を冷却するように、冷却液を通すための排気部冷却液流路が設けられ
前記排気部冷却液流路が、前記ポンプ室ボディ部の前記他方の端壁部に、該他方の端壁部の外面の側を覆うように配される部位であって前記他方の端壁部の外面との間で前記排気部冷却液流路を形成するように設けられた冷却液流路形成面を備える第1の流路形成部が配されることによって、設けられ、
前記排気が前記第1の流路形成部によって冷却されるように、前記第1の流路形成部の前記冷却液流路形成面とは反対の面である第1の流路形成部の外面の側に前記排気が通る排気流路が設けられていることを特徴とするクローポンプ。
【請求項2】
前記排気部冷却液流路へ冷却液を導入する冷却液導入口が前記排気口の近傍に設けられ、前記排気部冷却液流路が形成される部位には、前記排気口の近傍に冷却液が先行して巡るように、導入された冷却液の流れを規制する冷却液流規制部が設けられていることを特徴とする請求項1記載のクローポンプ。
【請求項3】
前記排気流路が、前記第1の流路形成部に、該第1の流路形成部の外面の側を覆うように配される部位であって前記第1の流路形成部の外面との間で前記排気流路を形成するように設けられた排気流路形成面を備える第2の流路形成部が配されることによって、設けられていることを特徴とする請求項1又は2記載のクローポンプ。
【請求項4】
前記排気部冷却液流路に連続する延長部冷却液流路が、前記第2の流路形成部に、該第2の流路形成部の外面の側を覆うように配される部位であって前記第2の流路形成部の外面との間で前記延長部冷却液流路を形成するように設けられた延長流路形成面を備える第3の流路形成部が配されることによって、設けられていることを特徴とする請求項3記載のクローポンプ。
【請求項5】
前記一方の端壁部と前記他方の端壁部との少なくともどちらかの部位であって、前記ポンプ室内における気体が圧縮される部位に面する位置に開口されて設けられた排気側開口部が、前記二つのロータの前記爪部同士によって気体の圧縮比が最大化する前段で前記ポンプ室の外部に連通される前段通気口と、前記二つのロータの前記爪部同士によって前記前段よりも気体の圧縮比が最大化する段階を含んで前記ポンプ室の外部へ排気するように連通される後段排気口とによって設けられ、前記後段排気口が、前記他方の端壁部に設けられた前記排気口であり、該排気口が前記ポンプ室の外部に連通されて気体の圧縮比が最大化する段階で、前記前段通気口が前記ロータによって閉じられるように設けられることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載のクローポンプ。
【請求項6】
前記ポンプ室ボディ部と、前記ギヤボックスを形成して前記二つの回転軸を軸受けする軸受部が設けられた軸受ボディ部との間に、熱伝導を抑制できる冷却用の隙間が形成されるように、ポンプ本体が、前記ポンプ室ボディ部と前記軸受ボディ部とに区画されて設けられていることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載のクローポンプ。
【請求項7】
前記二つ回転軸を水平に配することで設置される横置き型に設けられ、前記排気口が前記他方の端壁部の下部に設けられ、
前記冷却用の隙間に、下側から上側へ抜けるように空気を流す送風手段を備えることを特徴とする請求項6記載のクローポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二つの円の一部を重ね合わせた断面形状のポンプ室内で、吸入した気体を圧縮して排気できるように鉤形の爪部が形成された二つのロータが非接触状態で回転されるクローポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のクローポンプとしては、ポンプ室を形成するシリンダと、該シリンダの一方の端面を塞ぐ一方のサイドプレート及び該シリンダの他方の端面を塞ぐ他方のサイドプレートと、シリンダ内で平行に位置するように配されて反対方向に同一速度で回転される二つの回転軸と、該二つの回転軸のそれぞれに一体的に固定されて前記シリンダ内に配され、相互に非接触状態で噛合って吸入した気体を圧縮できるように鉤形の爪部が形成された二つのロータと、該二つのロータを前記二つの回転軸を介して回転駆動させる回転駆動装置と、前記シリンダ内の気体が圧縮されないポンプ室の部分に連通する吸気口と、前記シリンダの両端面を通して圧縮気体を両側から排出させるように、前記一方のサイドプレート及び前記他方のサイドプレートの両方に前記シリンダ内の気体が圧縮されるポンプ室の部分に開口する排気口とを具備する(特許文献1参照)ものが、本出願人によって提案されている。
【0003】
この従来のクローポンプによれば、排気口を両方のサイドプレートに開口することで、排気口を片方のサイドプレートのみに開口する場合と比較し、その排気口の開口面積を倍増させて排気の通気抵抗を低減できるため、排気効率を高めることができる。これによって、ポンプ性能を向上させることができ、設計の自由度をより向上できるという効果を奏する。この効果は、真空度が低い領域で使用される場合に、より有効に顕れる。
【0004】
また、図10に示すように、本出願人によって、二つの円の一部を重ね合わせた断面形状のポンプ室10を形成するように、シリンダ部10a、該シリンダ部10aの一方の端面に設けられた一方の端壁部10b、及び該シリンダ部10aの他方の端面に設けられた他方の端壁部10cを備え、前記ポンプ室10内で平行に配されて反対方向に同一速度で回転される二つの回転軸20A、20Bと、該二つの回転軸20A、20Bのそれぞれに設けられて前記ポンプ室10内に配され、相互に非接触状態で回転されて吸入した気体を圧縮して排気できるように鉤形の爪部が形成された二つのロータ30A、30Bと、前記一方の端壁部10bと前記他方の端壁部10cとの少なくともどちらかの部位であって、前記ポンプ室10内における気体が圧縮される部位に面する位置に、開口されて設けられた排気側開口部50とを備えるクローポンプであって、前記排気側開口部50が、前記二つのロータ30A、30Bの前記爪部同士によって気体の圧縮比が最大化する前段で前記ポンプ室10の外部に連通される前段通気口51と、前記二つのロータ30A、30Bの前記爪部同士によって前記前段よりも気体の圧縮比が最大化する段階を含んで前記ポンプ室10の外部へ排気するように連通される後段排気口(排気口55)とによって設けられ、前記後段排気口(排気口55)が前記ポンプ室10の外部に連通されて気体の圧縮比が最大化する段階で、前記前段通気口51が前記ロータ30Aによって閉じられるように設けられ、前記ポンプ室10を形成するようにシリンダ部10a及び該シリンダ部の両端面のそれぞれに設けられた端壁部10b、10cによって設けられたポンプ室ボディ部と、前記二つのロータ30A、30Bが前記二つの回転軸20A、20Bの一方の端にそれぞれ配されて片持ち状態に支持されるように該二つの回転軸20A、20Bを軸受けする軸受部40が設けられた軸受ボディ部との間に、冷却用の隙間が形成されるように、ポンプ本体が分割された構造に設けられていることを特徴とするクローポンプ(特許文献2参照)が、提案されている。
【0005】
この本出願人によって提案されたクローポンプによれば、排気側開口部50が、別々に開口されて設けられた前段通気口51と後段排気口(排気口55)とによって構成されている。このため、例えば真空ポンプとして高い真空度で使用される場合、前段通気口51において過熱されていない外気がポンプ室10内に吸入され、後段排気口(排気口55)において排気が逆流することを抑制してポンプ室10が過熱されることを防止できることで、ポンプ性能を向上できる。
【0006】
また、従来の二軸回転ポンプでは、ルーツポンプの発明として、第1,2ブースターポンプの両方に直接連結された排気マニホールド内には水冷却通路が形成されており、水は、水供給タンクからポンプによって水冷却通路へ送られ、水冷却通路を通った水は、熱交換器で冷却されて水供給タンクへ還流する(特許文献3参照)ものが、提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2011-38476号公報(第1頁、請求項1)
【文献】特許第6749714号公報(請求項1、第3図など)
【文献】特開2010-138725号公報([0039]、図5
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
クローポンプに関して解決しようとする問題点は、例えば真空ポンプとして到達真空度が絶対真空により近い値となる真空度が高い範囲で使用される場合、ポンプ室が過熱されてしまい、ポンプ性能を向上させることが難しいことにある。すなわち、クローポンプでは、真空度が高い範囲で使用される場合、ポンプ室内の圧力が外部の圧力(例えば大気圧)よりも低下するため、排気口において排出された排気が逆流してしまうことがある。そして、その逆流された排気は、ポンプ室内で圧縮されることで加熱されて排出されたもので、元々高温であって、逆流することで流入したポンプ室内で再度圧縮されて再度加熱される。その結果、ポンプ室がさらに加熱されることになる。ポンプ室が過熱されると、均一に加熱されることはないため均一に熱膨張することはなく、回転するロータ同士やそのロータとポンプ室を形成するシリンダなどの構成部材とが干渉することになり、故障の原因となる。これを防止するためには、構成部材の相互のクリアランスを大きくする必要性が生じ、ポンプ性能を高めることができない。
【0009】
これに対して、クローポンプにおいては特許文献2にポンプ室内に排気が逆流することを抑制することによってポンプ室内が過熱されることを防止する構成が提案され、また、ルーツポンプとして特許文献3に排気マニホールドを水冷することが提案さているが、冷却液を利用してポンプ室が過熱されることをより積極的且つ効果的に防止する構成が提案されていない。
【0010】
そこで本発明の目的は、真空ポンプとして真空度が高い範囲で使用される場合でも、ポンプ室が過熱されることを、冷却液を用いてより効果的に防止でき、ポンプ性能を向上させることができるクローポンプを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記目的を達成するために次の構成を備える。
本発明に係るクローポンプの一形態によれば、二つの円の一部を重ね合わせた断面形状のポンプ室を形成するように、シリンダ部、該シリンダ部の一方の端面に設けられた一方の端壁部、及び該シリンダ部の他方の端面に設けられた他方の端壁部を備えるポンプ室ボディ部と、前記ポンプ室内で平行に配されて一対の歯車によって反対方向に同一速度で回転される二つの回転軸と、該二つの回転軸に対応して設けられて前記ポンプ室内に配され、相互に非接触状態で回転されて吸入した気体を圧縮して排出できるように鉤形の爪部が形成された二つのロータとを備え、前記ポンプ室ボディ部の前記一方の端壁部が前記一対の歯車を内包するギヤボックスの側に位置し、前記ポンプ室ボディ部の少なくとも前記他方の端壁部に気体を排出する排気口が設けられているクローポンプにおいて、前記ポンプ室ボディ部の前記他方の端壁部の側に、前記排気口から排出される排気を冷却するように、冷却液を通すための排気部冷却液流路が設けられている。
【0012】
また、本発明に係るクローポンプの一形態によれば、前記排気部冷却液流路へ冷却液を導入する冷却液導入口が前記排気口の近傍に設けられ、前記排気部冷却液流路が形成される部位には、前記排気口の近傍に冷却液が先行して巡るように、導入された冷却液の流れを規制する冷却液流規制部が設けられていることを特徴とすることができる。
【0013】
また、本発明に係るクローポンプの一形態によれば、前記排気部冷却液流路が、前記ポンプ室ボディ部の前記他方の端壁部に、該他方の端壁部の外面の側を覆うように配される部位であって前記他方の端壁部の外面との間で前記排気部冷却液流路を形成するように設けられた冷却液流路形成面を備える第1の流路形成部が配されることによって、設けられていることを特徴とすることができる。
【0014】
また、本発明に係るクローポンプの一形態によれば、前記排気が前記第1の流路形成部によって冷却されるように、前記第1の流路形成部の前記冷却液流路形成面とは反対の面である第1の流路形成部の外面の側に前記排気が通る排気流路が設けられていることを特徴とすることができる。
【0015】
また、本発明に係るクローポンプの一形態によれば、前記排気流路が、前記第1の流路形成部に、該第1の流路形成部の外面の側を覆うように配される部位であって前記第1の流路形成部の外面との間で前記排気流路を形成するように設けられた排気流路形成面を備える第2の流路形成部が配されることによって、設けられていることを特徴とすることができる。
【0016】
また、本発明に係るクローポンプの一形態によれば、前記排気部冷却液流路に連続する延長部冷却液流路が、前記第2の流路形成部に、該第2の流路形成部の外面の側を覆うように配される部位であって前記第2の流路形成部の外面との間で前記延長部冷却液流路を形成するように設けられた延長流路形成面を備える第3の流路形成部が配されることによって、設けられていることを特徴とすることができる。
【0017】
また、本発明に係るクローポンプの一形態によれば、前記一方の端壁部と前記他方の端壁部との少なくともどちらかの部位であって、前記ポンプ室内における気体が圧縮される部位に面する位置に開口されて設けられた排気側開口部が、前記二つのロータの前記爪部同士によって気体の圧縮比が最大化する前段で前記ポンプ室の外部に連通される前段通気口と、前記二つのロータの前記爪部同士によって前記前段よりも気体の圧縮比が最大化する段階を含んで前記ポンプ室の外部へ排気するように連通される後段排気口とによって設けられ、前記後段排気口が、前記他方の端壁部に設けられた前記排気口であり、該排気口が前記ポンプ室の外部に連通されて気体の圧縮比が最大化する段階で、前記前段通気口が前記ロータによって閉じられるように設けられることを特徴とすることができる。
【0018】
また、本発明に係るクローポンプの一形態によれば、前記ポンプ室ボディ部と、前記ギヤボックスを形成して前記二つの回転軸を軸受けする軸受部が設けられた軸受ボディ部との間に、熱伝導を抑制できる冷却用の隙間が形成されるように、ポンプ本体が、前記ポンプ室ボディ部と前記軸受ボディ部とに区画されて設けられていることを特徴とすることができる。
【0019】
また、本発明に係るクローポンプの一形態によれば、前記二つ回転軸を水平に配することで設置される横置き型に設けられ、前記排気口が前記他方の端壁部の下部に設けられ、
前記冷却用の隙間に、下側から上側へ抜けるように空気を流す送風手段を備えることを特徴とすることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係るクローポンプによれば、真空ポンプとして真空度が高い範囲で使用される場合でも、ポンプ室が過熱されることを、冷却液を用いてより効果的に防止でき、ポンプ性能を格段に向上させることができるという特別有利な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明に係るクローポンプの形態例の内部構造を示すように階段状に破断した状態を表した断面斜視図である。
図2図1の形態例の正面側斜視図である。
図3図1の形態例の背面側斜視図である。
図4図1の形態例の正面図である。
図5図1の形態例の背面図である。
図6図1の形態例の平面図である。
図7図1の形態例の軸受部冷却液流路を示す断面斜視図である。
図8図1の形態例における第1の流路形成部の内面である冷却液流路形成面を示す分解図である。
図9図1の形態例における第1の流路形成部の外面である排気流路形成面を示す分解図である。
図10】従来のクローポンプを示す分解図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係るクローポンプの形態例を添付図面(図1~9)に基づいて詳細に説明する。なお、この本発明に係るクローポンプの形態例は、真空ポンプであって、水冷式の二軸回転ポンプとなっているが、本発明はこれに限定されず、排出される気体を製品気体とするブロアなどとしても利用できるものであり、水以外を冷却液として利用することもできる。
【0023】
図1などに示すように、本発明に係るクローポンプでは、110はポンプ室ボディ部であり、二つの円の一部を重ね合わせた断面形状のポンプ室10(図10参照)を形成するように、シリンダ部10a、そのシリンダ部10aの一方の端面に設けられた一方の端壁部10b、及びそのシリンダ部10aの他方の端面に設けられた他方の端壁部10cを備えている。
【0024】
また、二つの回転軸20A、20Bが、ポンプ室10内で平行に配されて一対の歯車21A、21Bによって反対方向に同一速度で回転されるように設けられている。本形態例では、この二つの回転軸20A、20Bには、それぞれに、歯車21A(駆動側歯車)、21B(従動側歯車)が一体的に固定されて設けられている。その一対の歯車21A、21Bは、軸受ボディ部120によって構成されているギヤボックス45内で噛合されている。
【0025】
また、二つのロータ30A、30Bが、二つの回転軸20A、20Bに対応して設けられてポンプ室10内に配され、相互に非接触状態で回転されて吸入した気体を圧縮して排気できるように鉤形の爪部が形成され設けられている。そして、ポンプ室ボディ部110の一方の端壁部10bが一対の歯車21A、21Bを内包するギヤボックス45の側に位置し、ポンプ室ボディ部110の少なくとも他方の端壁部10cに気体を排出する排気口55が設けられている。これによって、二軸回転ポンプの一種であるクローポンプが、構成されている。
【0026】
本形態例では、二つのロータ30A、30Bが二つの回転軸20A、20Bのそれぞれの一端(一方の先端)に対応して配されて片持ち状態に支持されるように二つの回転軸20A、20Bが軸受部40によって軸受けされ、ポンプ室ボディ部110の一方の端壁部10bが軸受部40の側に位置し、ポンプ室ボディ部110の他方の端壁部10cに気体を排出する排気口55が設けられている。なお、15は吸気口であり、ポンプ室10内における気体が圧縮されない部位に面する位置に、開口されて設けられている。本形態例の吸気口15は、ポンプ室ボディ部110の上部の角部であって、シリンダ部10aの上壁部と一方の端壁部10bの上部とに亘って切り欠かれた形態に設けられている。また、14は吸気接続口であり、下端が吸気口15に接続され、上端が空圧機器(図示せず)に管路を介して接続されるように設けられている。
【0027】
そして、本発明に係るクローポンプでは、ポンプ室ボディ部110の他方の端壁部10cの側に、排気口55から排出される排気を冷却するように、冷却液を通すための排気部冷却液流路72が設けられている。なお、本形態例(真空ポンプとして利用される場合の例)において、排気口55から排気が排出される状態とは、ポンプ室10が外気である大気(空気)に連通して開放されている状態であり、その排気が大気(空気)中に放出されることになる。また、冷却液の液体とは、冷却水が代表的であるが、不凍液のような水との混合液(水溶液)や、油などを含み、水以外の他の液体を利用できるのは勿論である。
【0028】
この本発明に係るクローポンプによれば、真空ポンプとして到達真空度が絶対真空により近い値となる真空度が高い範囲で使用される場合でも、ポンプ室10が過熱されることを、より積極的且つ効果的に防止でき、ポンプ性能を格段に向上させることができる。
【0029】
すなわち、ポンプ室ボディ部110の他方の端壁部10cの側に排気部冷却液流路72を設けることで、冷却液によって排気口55から排出される直後の排気を効果的に冷却することができる。これによれば、真空度が一定以上の高い範囲で使用される真空ポンプであって、排気が逆流することで加熱される場合であっても、ポンプ室10の内部温度の上昇を抑制できる。このため、ポンプ室10の壁内面と二つのロータ30A、30Bとを非接触とするクリアランスを小さく設定することが可能になり、そのクリアランスによる気体の洩れを少なくすることができるため、ポンプ効率を向上できる。
【0030】
また、本発明に係るクローポンプよれば、前述のようにクリアランスを小さく設定できることで、より到達真空度を高めることができると共に、排気の逆流があっても過熱を防止できることで、排気口55の開口面積をより広く設定できることになり、より処理風量が大きい真空ポンプを構成することができる。
【0031】
そして、本形態例のクローポンプによれば、最も加熱される排気口55が設けられた他方の端壁部10cの側を、局所的に積極的に冷却している形態となっている。すなわち、温度勾配(温度差)が大きく生じるポンプ室ボディ部110に対してその温度差を低減するように、ポンプ室ボディ部110の壁部のうちの排気口55を中心とした他方の壁部10cの側を優先させて冷却することで排気を冷却する構成になっている。このように排気を冷却してポンプ室10の過熱を防止できることで、実施例において内部温度差が約140℃も低減されることが確認されていると共に、到達真空度を97kPaまで高めることが確認されており、ポンプ性能を格段に向上できる。なお、従来は、到達連続運転を行う限界として、ポンプ室10の壁内面及び二つのロータ30A、30Bの相互間の接触(内部干渉)が生じることを回避するため、到達真空度が90kPa程度までの運転しかできなかった。これに対して、本発明によれば、より到達真空度の高い締め切り運転を連続的に行うことができるようになっている。
【0032】
ところで、クローポンプでは、気体の圧縮率が高く、気体が加熱されて排気されるため、排気口55の部分が最も過熱され易く、その排気口55が形成された他方の端壁部10cの部分が他の部分よりも高温になる。そして、その他方の端壁部10cと比較すれば、ポンプ室ボディ部110の他の部分は低温となる。このため、もしも、シリンダ部10aなどを含めてポンプ室ボディ部110を全体的に同じように冷却すると、他方の端壁部10cの排気口55と他の部位との温度差が維持されてしまい、熱膨張によって動作部であるロータ30A、30Bに係る干渉が生じるという問題を解消できないことになる。
【0033】
また、本形態例によれば、排気部冷却液流路72へ冷却液を導入する冷却液導入口72bが排気口55の近傍に設けられ、排気部冷却液流路72が形成される部位には、排気口55の近傍に冷却液が先行して巡るように、導入された冷却液の流れを規制する冷却液流規制部61bが設けられている。なお、本形態例の冷却液流規制部61bは、図8に示すように、後述する第1の流路形成部61の冷却液流路形成面61aの複数箇所(本形態例では2箇所)にリブ状に突起した形態に設けられている。
【0034】
これによれば、ポンプ室ボディ部110の最も加熱される部分である排気口55を中心にした部位(排気口55の周囲)を冷却することで排気口直後の排気を効果的に冷却でき、その排気口55の周囲と排気の温度を下げることで、その排気口55の周囲が過度に加熱されて熱膨張によって偏って変形することをバランス良く抑制できる。このように、ポンプ室ボディ部110及び二つのロータ30A、30Bの熱膨張をバランス良く抑制できるため、それらの相互のクリアランスを小さくすることができ、ポンプ効率を向上できる。
【0035】
なお、クローポンプでは、駆動安定性の面から一般的に、排気口55がポンプ室10の下部に対応する部位(本形態例では他方の端壁部10cの下部)に設けられることになる。そして、本形態例では、前述のように冷却液導入口72bが配され、排気部冷却液流路72のうちの他方の端壁部10cの下部に位置する排気口55の近傍の部分をより温度の低い冷却液で先行して冷却し、そのように他方の端壁部10cを冷却した冷却液が排気部冷却液出口接続部72dを通るように上方へ排出される形態になっている。このとき、冷却液は、熱交換されて温度が上昇することで比重が小さくなって上方へ向かう流れのベクトルを生じる。この冷却液の流れによれば、下部の排気口55の部分を効果的に冷却できると共に、冷却液の温度上昇による流れの方向性と、冷却液を上方へ排出させるための流れの方向性を揃えることができる。このため、冷却液をスムースに通過させることができ、その冷却効率を効果的に高めることができる。
【0036】
また、本形態例によれば、排気部冷却液流路72が、ポンプ室ボディ部110の他方の端壁部10cに、その他方の端壁部10cの外面の側を覆うように配される部位であってその他方の端壁部10cの外面との間で前記排気部冷却液流路72を形成するように設けられた冷却液流路形成面61aを備える第1の流路形成部61が配されることによって、設けられている。これによれば、排気部冷却液流路72を、効果的且つ合理的に構成することができる。
【0037】
なお、本形態例の第1の流路形成部61は、図1、8、9に示すように、両面に流路が形成されるように凹凸が形成された盤状の部材によって設けられており、ボルトによって他方の端壁部10cの外面に固定され、シール部材65によって合せ部が水密シールされて排気部冷却液流路72が形成されるように設けられている。本形態例の合せ部は、排気口55の排気路を延長するようにその排気口55を囲う矩形のループ枠状に形成された内ループ合せ部61cと、他方の端壁部10cの周縁部にループ枠状に当接するように形成された外ループ合せ部61dとによって構成されている。そして、この内ループ合せ部61cと外ループ合せ部61dとの間に、排気部冷却液流路72が形成されて冷却液が満たされる形態となっている。これによれば、他方の端壁部10cの外側の壁面に対し、全面的に冷却液を接触させて効率的に冷却できる形態になっている。また、この構造は、層状の排気部冷却液流路72をポンプ室ボディ部110の外端面外側へ平面的に積み重ねる形態であり、コンパクトな構成になっている。
【0038】
また、本形態例の第1の流路形成部61では、他方の端壁部10cの外面と向き合う面(対面)である冷却液流路形成面61aに、排気部冷却液流路72の一部であって溝状の通路である排気口周囲流路部72cが形成されるように、冷却液流規制部61bを構成する通路形成壁が突起した形態に設けられている。すなわち、本形態例では、他方の端壁部10cの外面がフラットな面であり、図1及び8に示すように、第1の流路形成部61の冷却液流路形成面61aの側に、排気部冷却液流路72を適切に曲げて誘導するための通路形成壁(冷却液流規制部61b)が設けられている。なお、本発明はこれに限らず、他方の端壁部10cの外面の側に、通路形成壁を適宜に設けることも可能である。
【0039】
また、本形態例によれば、排気が第1の流路形成部61によって冷却されるように、第1の流路形成部61の冷却液流路形成面61aとは反対の面であって第1の流路形成部61の外面である排気流路形成面61eの側に排気が通る排気流路56が設けられている。すなわち、排気流路56は、排気口55に接続された流路となっており、排気口55から排出された排気を通す流路になっている。
【0040】
この排気流路56によれば、過熱された排気を効果的に冷却でき、その排気の温度を下げることでポンプ室10内の温度を下げ、そのポンプ室10を形成するポンプ室ボディ部110や二つのロータ30A、30Bという構成部材が過熱されて熱膨張することをバランス良く抑制できる。
また、この排気流路56は、排気の流れの方向を適宜に規制できるものであり、排気の冷却を促進するための形態になっていると共に、排気音を低減させるマフラーの構造を兼用するものになっている。なお、57はマフラー排気口であり、第1の流路形成部61の上壁部に開口されて設けられ、排気流路56の排気口になっており、このマフラー排気口57により外部に排気される。本形態例マフラー排気口57は、図9に示すように、内部の側で流路が絞られた形状に設けられており、消音効果を高めるように形成されている。
【0041】
また、本形態例によれば、排気流路56が、第1の流路形成部61に、その第1の流路形成部61の外面の側を覆うように配される部位であってその第1の流路形成部61の外面との間で前記排気流路56を形成するように設けられた排気流路形成面62aを備える第2の流路形成部62が配されることによって、設けられている。これによれば、排気流路56を、効果的且つ合理的に構成することができ、排気口直後の排気を排気流路形成面61e及び排気流路形成面62aの両面で効果的に冷却できる。また、この構造は、層状の排気流路56をポンプ室ボディ部110の外端面外側へ平面的に積み重ねる形態になっており、コンパクトな構成になっている。
【0042】
なお、本形態例の第2の流路形成部62は、図1などに示すように、内面(第1の流路形成部61の外面の側に当接する面)である排気流路形成面62aがフラットに形成された盤状の部材によって設けられおり、ボルトによって第1の流路形成部61の外面(排気流路形成面61e)の側に固定されている。また、この排気流路形成面62a(フラットな面)に対して、第1の流路形成部61の外面(排気流路形成面61e)の側には、排気流路56となる溝状の通路が形成されるように、排気通路形成壁61fが突起した形態に設けられている。そして、第1の流路形成部61の外面の側である外周部のループ枠状合せ部61gや排気通路形成壁61fと、第2の流路形成部62の内面とは、密着固定によって実質的に気密状態にされるか、シール部材を配置して気密状態にすることができる。なお、本発明はこれに限定されず、排気流路形成面62aの側に排気通路形成壁を設けることも可能である。そして、図9に示すように、排気流路56が複雑に曲げられた流路に形成されていることで、排気の冷却をより促進できると共に、マフラー室として適切に機能して排気音をより低減させることができる。
【0043】
さらに、本形態例によれば、排気部冷却液流路72に連続する延長部冷却液流路73が、第2の流路形成部62に、その第2の流路形成部62の外面(延長流路形成面62b)の側を覆うように配される部位であってその第2の流路形成部62の外面(延長流路形成面62b)との間で前記延長部冷却液流路73を形成するように設けられた延長流路形成面63aを備える第3の流路形成部63が配されることによって、設けられている。これによれば、延長部冷却液流路73を、効果的且つ合理的に構成することができる。また、この構造は、層状の延長部冷却液流路73をポンプ室ボディ部110の外端面外側へ平面的に積み重ねる形態になっており、コンパクトな構成になっている。さらに、この層状の延長部冷却液流路73とこれを構成する構造壁とによれば、騒音を低減できる。
【0044】
なお、本形態例の第3の流路形成部63は、図1などに示すように、フラットな平板状の部材(プレート部材)によって設けられており、ボルトによって第2の流路形成部62の外面側に固定され、第2の流路形成部62の外面にループ枠状に設けられた周縁合せ部62cにシール部材65によって水密シールされて延長部冷却液流路73が形成されるように設けられている。また、本形態例では、延長部冷却液流路73が扁平に形成された層状のスペースに冷却液を滞留させるような形態になっているが、これに限定されるものではなく、適宜な形態に流路を設定してもよいのは勿論である。さらに、延長部冷却液流路73を多層化して冷却性能を高めることも可能である。また、この延長部冷却液流路73においても、排気部冷却液流路72と同様に、冷却液が下部から上部へ流れが発生するように流れるように、第2の接続配管72eの上部に設けられて排気部冷却液流路72に接続された排気部冷却液出口接続部72dから、第2の接続配管72eの下部に設けられた延長部冷却液入口接続部73aへ当該第2の接続配管72eを介して連通され、延長部冷却液流路73を流れた冷却液が外部に排出されるように、延長部冷却液出口接続部73bが上部に設けられている。
【0045】
ところで、本形態例では、ポンプ室10が、シリンダ部10a及び一方の端壁部10bと第1の軸受部40aが設けられた一方の構造壁部121aが一体的に設けられたシリンダケース11と、他方の端壁部10cとして設けられたサイドプレート12とがシール状態に固定されることよって形成されている。このように本形態例では、ポンプ室10が、二つに分割した部材によって形成されているが、これに限定されず、例えばシリンダ部10aと一方の端壁部10bと他方の端壁部10cとの主に三つに分割した部材によって形成されても良いのは勿論である。
【0046】
次に、本発明に係る二軸回転ポンプであって、二つの回転軸20A、20Bを軸受けする軸受部40を冷却する構成の形態例を添付図面(図1~9)に基づいて詳細に説明する。なお、本形態例の二軸回転ポンプは、以上に説明したようにクローポンプであるが、本発明はこれに限定されるものではなく、ルーツポンプやスクリューポンプといった他の二軸回転ポンプについても適用できる。また、本発明に係る二軸回転ポンプでは、本形態例のような二つのロータ30A、30Bが片持ち状態に軸受・支持されている形態に限定されず、回転軸20A、20Bを両端で回転自在に軸受けする形態の二軸回転ポンプにも、適用できる構成になっている。
【0047】
本発明に係る二軸回転ポンプでは、図1に示すように、二つの回転軸20A、20Bを軸受けする軸受部40が設けられる構造壁部121を構成すると共に、二つの回転軸20A、20Bに対応して設けられて噛合する一対の歯車21A、21Bを内包するギヤボックス45としての構造壁部121を構成する軸受ボディ部120を備える。なお、本形態例の軸受ボディ部120では、二つのロータ30A(駆動側ロータ)、30B(従動側ロータ)が、二つの回転軸20A(駆動側回転軸)、20B(従動側回転軸)の一端にそれぞれ配されて片持ち状態に支持されるように、回転軸20A、20Bを軸受けする軸受部40が設けられている。この軸受ボディ部120とポンプ室ボディ部110とによって、二軸回転ポンプのポンプ本体100が構成されている。
【0048】
そして、ポンプ室ボディ部110と軸受ボディ部120との間に、熱伝導を抑制できる冷却用の隙間60が形成されるように、ポンプ本体100が、ポンプ室ボディ部110と軸受ボディ部120とに区画されて設けられ、軸受ボディ部120のポンプ室ボディ部110の側に位置する構造壁部121(本形態例では、一方の構造壁部121a)に、冷却液を通すための軸受部冷却液流路71が設けられている。
【0049】
これによれば、二つのロータ30A、30Bの駆動によって生じる圧縮気体(排気)の熱が軸受ボディ部120に伝わることを低減する伝熱防止効果と共に、軸受部冷却液流路71を通る冷却液の冷却効果によって、軸受部40などを構成する機能部品を長寿命化することができるという特別有利な効果を奏する。すなわち、本発明によれば、ポンプ室ボディ部110と軸受ボディ部120とに区画して冷却用の隙間60を設けることによって伝熱量が最小限となるように熱伝導を抑制できると共に、軸受部冷却液流路71を通る冷却液によって軸受ボディ部120をより積極的に冷却できるため、装置の信頼性を向上できる。この実施例においては、潤滑オイルの温度上昇を、約40℃も低減できることが確認されている。
なお、機能部品とは、ベアリング41やオイルシール42を含む構成部材のことであり、消耗部品として扱われるものである。これらの機能部品の長寿命化を図ることで、ランニングコストを低減できる。
【0050】
ところで、本形態例の軸受部40は、二つの歯車21A、21Bと二つのロータ30A、30Bの間で二つの回転軸20A、20Bを軸受けするように、軸受ボディ部120におけるポンプ室ボディ部110側の構造壁部(一方の構造壁部121a)に設けられた第1の軸受部40aと、該第1の軸受部40aと反対の構造壁部であって駆動モータ(図示せず)が連結される側に配された構造壁部(他方の構造壁部121b)で二つの回転軸20A、20Bを軸受けするように設けられた第2の軸受部40bとによって構成されている。なお、駆動モータの回転軸は、回転軸20A(駆動側回転軸)とカップリングを介して連結される。
【0051】
また、本形態例では、二つの回転軸20A、20Bを水平に配することで設置される横置き型に設けられ、軸受部冷却液流路71が、ギヤボックス45内に貯留される潤滑オイルを冷却するように、静止時の貯留状態の前記潤滑オイルの液面よりも下側を通るように、軸受ボディ部120の構造壁部121の下部に設けられている。なお、潤滑オイルの静止時の液面は、ギヤボックス45(オイル室)の内底面と水平に配される前記回転軸20A、20Bとの間に位置するように設定されている。これによれば、潤滑オイルを効果的に冷却でき、その潤滑オイルが、回転する二つの歯車21A、21Bによって掻き上げられることによって、歯車21A、21B及びベアリング41を潤滑すると共に、ギヤボックス45内を冷却できるようになっている。
【0052】
なお、本形態例では、軸受部冷却液流路71が、軸受ボディ部120における第1の軸受部40aの下部(第1の軸受部40aのベアリング41の下側)に、一本の直線的な貫通孔の形状に設けられており、局所的に配された形態となっている。これによれば、ポンプ室ボディ部110側からの熱伝導がされ易い軸受ボディ部120の部分を積極的に冷やすと共に、潤滑オイルを効果的に冷却できるという効果がある。
【0053】
さらに、本形態例では、前記ポンプ室の排気口が、前記ポンプ室ボディ部の下部に設けられている。これによれば、軸受部冷却液流路71が、前記のように軸受ボディ部120の構造壁部121の下部に設けられている際に、熱伝導が効果的に抑制され、軸受部40が過熱されることを抑制することができる。
【0054】
また、本形態例のように二つの回転軸20A、20Bを水平に配することで設置される横置き型に設けられた構成に加えて、冷却用の隙間60に、下側から上側へ抜けるように空気を流す送風手段を設けても良い。これによれば、ポンプ室ボディ部110と軸受ボディ部120とを効果的に空冷することができ、二軸回転ポンプの信頼性をより向上させることができる。すなわち、ポンプ室ボディ部110と軸受ボディ部120との間に、冷却風を適切に流すことができるため熱伝達をより効果的に抑制でき、放熱による冷却を促進できる。これによって、軸受ボディ部120の温度上昇を抑制することができ、機能部品の長寿命化を実現できる。
【0055】
そして、本発明の二軸回転ポンプによれば、軸受ボディ部120を冷却した冷却液がポンプ室ボディ部110を冷却するように、軸受部冷却液流路71がポンプ室ボディ部110に設けられた冷却液流路に接続されていることを特徴とすることができる。これによれば、潤滑オイルが沸騰してオーバーヒートすることがないように、軸受部冷却液流路71を流れる冷却液の温度の方が、ポンプ室ボディ部110に設けられた冷却液流路を流れる冷却液の温度よりも低くすることができ、冷却液を効果的に利用できる。
【0056】
また、本形態例では、冷却液が、軸受部冷却液流路71から排気部冷却液流路72の順で流れるように、軸受部冷却液流路71に排気部冷却液流路72が接続されている。これによれば、一つの冷却液供給源(図示せず)によって、軸受ボディ部120の軸受部40(第1の軸受部40a)を構成する構造壁部121(一方の構造壁部121a)と、ポンプ室ボディ部110の他方の端壁部10cの側とを直接的に順次効果的に冷却することができる。なお、本形態例の冷却液は、冷却液供給源(図示せず)から供給され、冷却液入口接続部71a(図3図5図7)、軸受部冷却液流路71(図1図7)、軸受部冷却液出口接続部71b(図2図4図6図7)の順に流れ、そして、第1の接続配管71c(図2図4図6図7)、排気部冷却液入口接続部72a(図2図4図6)、冷却液導入口72b(図8)の順に流れ、排気部冷却液流路72(図1図8)へ供給されるようになっている。これに限らず、軸受部冷却液流路71と排気部冷却液流路72とを接続しないで、冷却液を別々に供給して良いのは勿論であり、個別に冷却液の供給を調整することで最適化するようにしても良い。
【0057】
また、本形態例の軸受部冷却液流路71、排気部冷却液流路72及び延長部冷却液流路73によって構成される流路では、軸受部冷却液流路71よりも上側に排気部冷却液流路72が配され、排気部冷却液流路72及び延長部冷却液流路73においては冷却液が下から上へ流れるように構成されており、冷却液の温度上昇による流れの方向性と、冷却液の流れの方向性を揃えることで冷却液をスムースに流すことができ、効果的に軸受部40及び排気を冷却することができる。
【0058】
以上に説明した二軸回転ポンプの冷却構造によれば、クローポンプに合理的に対応して冷却性能を高めることができ、ポンプ性能を向上できる。また、本発明に係るクローポンプでは、ポンプ室10の下側が過熱し易く、その下側から冷却できる構造を前述のように適切に形成できる。このため、ポンプ室10を効率よく冷却することができ、ポンプ性能を高めることができると共に、前述のように機能部品の長寿命化を実現できるという特別有利な効果を奏することができる。
【0059】
また、本形態例においては、図1~7に示すように、ポンプ室ボディ部110と軸受ボディ部120との間の冷却用の隙間60は、一方の端壁部10bとその一方の端壁部10bに対面する第1の軸受部40aが設けられた一方の構造壁部121aとの間を、複数の柱状部115で一体化している形態になっており、その柱状部115が設けられていない部分で、前記冷却用の隙間60が形成されるように設けられている。このような形状は、例えば、鋳物成型によって製造する場合は、中子によって、冷却用の隙間60が形成されるようにすればよい。また、本発明はこれに限定されるものではなく、図10に示すように、一方の端壁部10bを含むポンプ室ボディ部110側の部材と、その一方の端壁部10bに対面する軸受部40の構造壁部121を構成する軸受ボディ部120側の部材とが、別部材で構成され、双方に形成された柱状連結部111、122によって連結することで、冷却用の隙間60を形成することができるのは勿論である。
【0060】
また、本発明に係るクローポンプにおいては、以上に説明した構成に加えて、一方の端壁部10bと他方の端壁部10cとの少なくともどちらかの部位であって、ポンプ室10内における気体が圧縮される部位に面する位置に開口されて設けられた排気側開口部50が、二つのロータ30A、30Bの爪部同士によって気体の圧縮比が最大化する前段でポンプ室10の外部に連通される前段通気口51と、二つのロータ30A、30Bの爪部同士によって前記前段よりも気体の圧縮比が最大化する段階を含んでポンプ室10の外部へ排気するように連通される後段排気口とによって設けられ、その後段排気口が、他方の端壁部10cに設けられた排気口55であり、その排気口55がポンプ室10の外部に連通されて気体の圧縮比が最大化する段階で、前段通気口51が前記ロータによって閉じられるように設けることもできる。
【0061】
これによれば、排気が逆流することを防止してポンプ室10の過熱を抑制でき、ポンプ性能を向上できる。この排気の逆流防止効果と、前述の冷却液による冷却効果などとの相乗効果によって、ポンプ室10の過熱をより効果的に防止し、ポンプ性能を向上できる。
【0062】
ところで、本形態例では、二つのロータ30A、30Bが片持ち状態に支持されているが、本発明はこれに限定されるものではなく、特許文献1に開示されているような二つのロータ30A、30Bを二つの回転軸20A、20Bを介して両側から支持する構成のクローポンプにおいても効果的に適用できるものである。また、特許文献1に開示されているようなポンプ室ボディ部の一方の端壁部と他方の端壁部の両方に排気口を備えるクローポンプにおいても、効果的に適用できるものであり、他方の端壁部の側に設けられる排気部冷却液流路とのバランスを取った上で、一方の端壁部の側にも排気部冷却液流路を設ければよい。
【0063】
また、本発明では、例えば、冷却液の温度を調整管理することで寒冷地での使用に対応して本発明の使用範囲を拡大することが可能であり、冷却液を循環させるように熱交換器を用いてその冷却液を冷却するように構成することも可能であるなど、液冷式に用いられる付属的な管理方法や構成を適宜選択的に採用できるのは勿論である。
【0064】
以上、本発明につき好適な形態例を挙げて種々説明してきたが、本発明はこの形態例に限定されるものではなく、発明の精神を逸脱しない範囲内で多くの改変を施し得るのは勿論のことである。
【符号の説明】
【0065】
10 ポンプ室
10a シリンダ部
10b 一方の端壁部
10c 他方の端壁部
11 シリンダケース
12 サイドプレート
14 吸気接続口
15 吸気口
20A 回転軸(駆動側回転軸)
20B 回転軸(従動側回転軸)
21A 歯車(駆動側歯車)
21B 歯車(従動側歯車)
30A ロータ(駆動側ロータ)
30B ロータ(従動側ロータ)
40 軸受部
40a 第1の軸受部
40b 第2の軸受部
41 ベアリング
42 オイルシール
45 ギヤボックス
50 排気側開口部
51 前段通気口
55 排気口
56 排気流路
57 マフラー排気口
60 冷却用の隙間
61 第1の流路形成部
61a 冷却液流路形成面
61b 冷却液流規制部
61c 内ループ合せ部
61d 外ループ合せ部
61e 排気流路形成面
61f 排気通路形成壁
61g ループ枠状合せ部
62 第2の流路形成部
62a 排気流路形成面
62b 延長流路形成面
62c 周縁合せ部
63 第3の流路形成部
63a 延長流路形成面
65 シール部材
71 軸受部冷却液流路
71a 冷却液入口接続部
71b 軸受部冷却液出口接続部
71c 第1の接続配管
72 排気部冷却液流路
72a 排気部冷却液入口接続部
72b 冷却液導入口
72c 排気口周囲流路部
72d 排気部冷却液出口接続部
72e 第2の接続配管
73 延長部冷却液流路
73a 延長部冷却液入口接続部
73b 延長部冷却液出口接続部
100 ポンプ本体
110 ポンプ室ボディ部
115 柱状部
120 軸受ボディ部
121 構造壁部
121a 一方の構造壁部
121b 他方の構造壁部
【要約】
【課題】真空ポンプとして真空度が高い範囲で使用される場合でも、ポンプ室が過熱されることを防止でき、ポンプ性能を格段に向上できるクローポンプを提供する。
【解決手段】ポンプ室10を形成するように、シリンダ部10a、一方の端壁部10b、及び他方の端壁部10cを備えるポンプ室ボディ部110と、二つの回転軸20A、20Bと、鉤形の爪部が形成された二つのロータ30A、30Bとを備え、ポンプ室ボディ部110の一方の端壁部10bが一対の歯車21A、21Bを内包するギヤボックスの側に位置し、ポンプ室ボディ部110の少なくとも他方の端壁部10cに気体を排出する排気口55が設けられているクローポンプにおいて、ポンプ室ボディ部110の他方の端壁部10cの側に、該他方の端壁部10cを冷却することで排気口55から排出される排気を冷却するように、排気部冷却液流路72が設けられている。
【選択図】図1
図1
図2
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図7
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図9
図10