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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-14
(45)【発行日】2022-01-25
(54)【発明の名称】端子温度表示機能付回路遮断器
(51)【国際特許分類】
   H01H 73/02 20060101AFI20220118BHJP
   H01H 73/20 20060101ALI20220118BHJP
   H02B 1/40 20060101ALI20220118BHJP
   H01R 13/713 20060101ALI20220118BHJP
【FI】
H01H73/02 B
H01H73/20 A
H02B1/40 D
H01R13/713
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2019195729
(22)【出願日】2019-10-28
(62)【分割の表示】P 2016073252の分割
【原出願日】2016-03-31
(65)【公開番号】P2020021743
(43)【公開日】2020-02-06
【審査請求日】2019-10-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000109598
【氏名又は名称】テンパール工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】馬場 隆
【審査官】関 信之
(56)【参考文献】
【文献】実開平04-078737(JP,U)
【文献】特開2012-216378(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 73/02
H01H 73/20
H02B 1/40
H01R 13/713
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路遮断器の外郭を構成する第一の筐体と、
回路遮断器の外方から電線を接続する端子の温度を表示する端子温度表示機能部の外郭を構成する第二の筐体とが隣接配置された回路遮断器であって、
前記端子は、前記回路遮断器の外方に延出形成されるとともに、前記端子の延出形成部分に一端が固着されて他端が熱の変化に応動して変位自在に配設された熱動素子を備えて形成され、
前記端子の延出形成部分と、
前記熱動素子と、
前記熱動素子の変位が伝達されるとともに応動に対応して往復変位する変位伝達部と、
前記変位伝達部の変位が伝達されて駆動される表示機構とを
収納する前記第二の筐体を前記端子に近接させて該第二の筐体の一面を前記第一の筐体と対向させて、かつ前記回路遮断器を配電盤に取り付ける取付底面と前記端子に接続される電線との間に配置するとともに、
前記第二の筐体には該第二の筐体用の蓋を止める為の筐体ねじが設けられ、
前記筐体ねじは前記第二の筐体の底面側から天面側に向かって挿入されており、ねじ頭が前記第二の筐体の底面側に位置するように構成したことを特徴とする端子温度表示機能付回路遮断器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路遮断器の端子部の温度を検出して、接続している電線や回路遮断器の焼損並びに該回路遮断器の周囲の造営材や周辺機器などへの延焼を防止することを目的とした端子温度表示機能付回路遮断器に関する。
【背景技術】
【0002】
回路遮断器は、電路における過電流や短絡電流若しくは漏電電流などの事故電流を検出して、所定の動作条件に合致したときに、負荷側への電源の供給を絶つように遮断動作する。
【0003】
想到
回路遮断器には、電線や負荷機器と電気的接続を行うために、各極の端子部に端子が設けられている。住宅用分電盤や制御盤などの配電盤に組み込まれている回路遮断器は、施工現場にて電線が引き込まれ、電線は圧着端子にてカシメ接続され、圧着端子は端子ねじによって回路遮断器の端子とねじ締めで接続される。このとき、圧着端子と回路遮断器の端子とのねじ締め接続が不十分な状態であると、回路遮断器使用中に端子において異常過熱が発生するおそれがある。
【0004】
また、長年に亘る使用中においても、周囲の振動や温度変化による膨張、収縮が繰り返し起こることによって、端子に取り付けている端子ねじのねじ緩みが生ずる可能性もあり、定期的な保守点検(端子ねじの増し締め)が行われなければ、ねじ緩みにより異常過熱が発生するおそれがある。
【0005】
端子の異常過熱は、端子ねじの緩みにより電線を取り付けた圧着端子と端子の接触抵抗が増加し、大きなジュール熱が出ることで発生する。
【0006】
その他、前記電線の圧着端子と回路遮断器の端子との接触面の酸化による接触抵抗の増加や異物の挟み込みに起因する接触抵抗の増加によっても異常過熱が発生する。
【0007】
このような異常過熱の状態が継続すると、回路遮断器を構成する部品や接続している電線が発火する場合があり、回路遮断器周辺の造営材や周辺機器への延焼が懸念される。
【0008】
しかしながら、通常の回路遮断器においては、これら端子の異常過熱を検出する機能を兼ね備えていない。一般的に端子の異常過熱の予防は、施工時の接続確認や定期的な保守点検(端子ねじの増し締め他)を行う方策がとられている。これらの予防策は異常過熱を予防する点では効果的であるものの、次回の保守点検までは異常過熱に気づくことができないため、経年的な使用に伴う焼損事故や延焼事故を完全に防ぐことはできない。
【0009】
そこで、端子の異常過熱を検出し、異常過熱が発生した場合には負荷側への電源供給を遮断することで、異常過熱に伴う焼損事故を防止する機能を備えた過熱防止装置付の回路遮断器が開示されている。(特許文献1、特許文献2、特許文献3)
【0010】
特許文献1においては、異常過熱の検出を行うものとして以下のものが開示されている。過熱検出用のバイメタル板25及び26を回路遮断器の電源側端子及び負荷側端子の夫々に固着し、この2枚のバイメタル板間にバイメタル板の変位に追随して変位する伝達板を懸架し、且つ常時は前記伝達板に係止されているが、過熱時、伝達板の変位により、前記伝達板との係止関係が解除されることにより移動して回路遮断器をトリップさせる作動棒を備えるものである。また、伝達板と作動棒との係止関係が解除されて、作動棒が動作したときには、回路遮断器の外部に作動棒が突出することにより動作表示を行い、且つ作動棒を押圧操作することにより回路遮断器のリセットを可能とする過熱防止装置を一般の回路遮断器に付加して備えたものである。
【0011】
特許文献2においては、前述の特許文献1における機械的な構造を鑑みてなされたもので、電気的に異常過熱を検出し、該異常過熱が検出されたことにより出力される電気信号により、遮断器の接触子を開放する引外し装置を駆動させるものが開示されている。
【0012】
具体的には、特許文献1に開示された機械的動作によるものでは、遮断器の内部機構を変えなければ適用できないことが多いことに鑑みてなされたもので、特に、遮断器単体の過熱防止に加えて給電系統内にある回路遮断器を集中管理したり、同一回路に併設された電磁開閉器等の他の機器の過熱保護に利用することができることを課題としてなされたものである。
【0013】
異常過熱検出のための構成として、電線接続用端子の温度に対応して電気的出力が変化する感温素子と、該感温素子の電気的出力を正常レベルと比較して異常過熱を検知する判定回路とを備えている。
【0014】
感温素子としては、サーミスタ、熱起電力を利用した熱電対、放射熱を検出する赤外線センサなどが挙げられており、感温素子の配置形態として、該感温素子をモールドケースの端子近傍に埋め込んで配置する形態、モールドケースとは独立して樹脂成形された絶縁支持体に保持させて一体化した温度センサユニットを構成し、該温度センサユニットを極間バリアの取付用溝を利用してモールドケースに取り付けた形態、温度センサユニットを板状に形成してモールドケースの裏面と盤面との間に挟んで装着できるようにした形態、感温素子を遮断器端子部の絶縁に用いられる端子カバーに取り付けた形態、熱伝導率の高いセラミック等の絶縁体に感温素子を埋め込み、温度センサユニットの絶縁支持体に設けた穴に挿入して、ばねにより長さ方向に移動可能なように弾性的に保持し、遮断器端子部に絶縁体の先端を接触させる形態などが開示されている。
【0015】
特許文献3においては、前述の特許文献1と特許文献2における複雑な構造を鑑みてなされたもので、過熱検出用のバイメタル板を、接続端子部を構成する導体の器体内部側に固着させて回路遮断器において本来設けられているアークスペースに配置させ、また、該過熱検出用のバイメタルと係合して連動する連動部材を器体内部に配置させることで、接続端子部が過熱したときはバイメタルが連動部材と連動して回路遮断器を遮断させ、かつ発生したアークガスをバイメタルが冷却することで、従来の回路遮断器よりも電流遮断性能を向上したものが開示されている。
【0016】
具体的には、特許文献1に開示された技術によるものでは、遮断器の内部機構を変えなければ適用できないことが多いこと、特許文献2に開示された技術によるものでは、電気的装置を配置するにあたり、温度センサおよび判定回路を備えたユニットを回路遮断器に取り付ける必要があり、部品が追加され、かつ複雑な構造となること、また特許文献1、特許文献2共に、異常過熱を検出する機能のみを追加する技術であることに鑑みてなされたもので、特に、回路遮断器の外形を変えることなく簡易な改造で過熱を検出する機能を追加でき、更に、従来の回路遮断器が持つ電流遮断性能を向上することを課題としてなされたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【文献】実公昭56-25156号公報
【文献】特開昭62-8419号公報
【文献】特開2012-216378公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
これら特許文献1、特許文献2および特許文献3に開示されたように、通常の回路遮断器に端子の異常過熱を検出する機能を追加することは可能である。しかし、特許文献1においては、異常過熱を検出する機能を追加するにあたり、回路遮断器の裏面側全体に、異常過熱を検出するための機械的機構を配置するためのスペースを別途設ける必要があり、回路遮断器の外形が大きく変わるなど、回路遮断器の大幅な改造が伴うため、工数の増加やコストの増加という課題を有する。
【0019】
また、特許文献2においては、電気的装置を配置するにあたり、感温素子などの温度センサ及び判定回路を備えたユニットを別途設けて、該ユニットを回路遮断器に取付ける必要があり、追加のための部品が多く、また、温度計測システムとしての導入が必要となるこ
とから機能追加のために複雑さを伴う。また、感温素子を主回路との電気的絶縁を図ったうえで取付けるために、温度の感知が間接的になり正確な温度上昇が捉えにくいという課題を有する。
【0020】
また、特許文献3においては、回路遮断器の大幅な改造が不要で、かつ正確な温度上昇が捉えられ、更に回路遮断器の電流遮断性能が向上する効果がある。しかし、バイメタルを回路遮断器の内部側に配置することで、遮断動作毎にバイメタルがアークガスに曝されてしまうため、バイメタルの過熱検出性能の劣化が早くなるおそれがあるという課題を有する。
【0021】
そこで、本発明は、上記課題に鑑みてなされたもので、回路遮断器の大幅な改造の必要なく、かつ遮断時におけるアークガスの影響を受けにくい、端子温度表示機能付回路遮断器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明に係る端子温度表示機能付回路遮断器は、上述の課題を解決すべく構成されたもので、回路遮断器の外郭を構成する第一の筐体と、回路遮断器の外方から電線を接続する端子の温度を表示する端子温度表示機能部の外郭を構成する第二の筐体とが隣接配置された回路遮断器を、前記端子は、回路遮断器の外方に延出形成されるとともに、該端子の延出形成部分に一端が固着されて他端が前記熱の変化に応動して変位自在に配設された熱動素子を備えて形成され、前記端子の延出形成部分と、前記熱動素子と、前記熱動素子の変位が伝達されるとともに応動に対応して往復変位する変位伝達部と、前記変位伝達部の変位が伝達されて駆動される表示機構とを収納する前記第二の筐体を前記端子に近接させて該第二の筐体の一面前記第一の筐体と対向させて、かつ前記回路遮断器を配電盤に取り付ける取付底面と前記端子に接続される電線との間に配置するとともに、
前記第二の筐体には前記第二の筐体用の蓋を止める為の筐体ねじが設けられ、
前記筐体ねじは前記第二の筐体の底面側から天面側に向かって挿入されており、ねじ頭が前記第二の筐体の底面側に位置するように構成したことを特徴として構成するとよい。
【0023】
かかる構成によれば、回路遮断器の端子に熱動素子を固着させ、端子の発熱に伴う熱動素子の変位に連動して表示部が移動することで、端子の発熱状態に応じた温度を表示する構成としたため、端子の温度を簡単な構成で検出でき、また、異常過熱を把握することができる端子温度表示機能付回路遮断器を提供できる。また、熱動素子は回路遮断器の外部に位置するように配置したため、回路遮断器遮断時に発生するアークガスによる熱動素子の劣化が抑制でき、長期に亘り端子の発熱状態を検知することが可能となる。
【0024】
また、前記変位伝達部は夫々の熱動素子に共通して設けられることにより、夫々の熱動素子における最大の変位が伝達されることを特徴として構成としてもよい。
【0025】
かかる構成によれば、回路遮断器の複数の端子の中から、最も発熱している端子の発熱状態に応じた温度を表示できるため、最大温度を把握したい場合、端子ごとに表示部を配置する必要がない。よって少ない部品点数で、複数の端子を一括監視できる。また、端子の異常過熱の検出に必要な情報を表示できる。
【0026】
また、前記表示機構は、前記変位伝達部における往復変位のうち一方向の変位が伝達駆動され、変位伝達部の最大の変位が保持される第一の表示機構と、前記往復変位の両方向の変位に追随して駆動される第二の表示機構の、少なくとも一方の表示機構を備えたことを特徴として構成してもよい。
【0027】
かかる構成によれば、現在の端子の発熱状態に応じた温度と端子の最大発熱状態に係る温度の内、一方もしくは両方の発熱状態の表示が確認できる。
【0028】
また、前記筐体は、表示機構を外部から視認する視認部を備え、筐体の一面が回路遮断器と対向して配置されることを特徴として構成してもよい。
【0029】
かかる構成によれば、回路遮断器の表示機構に示された表示を外部から視認できる。また、筐体が回路遮断器に近接して配置されるため、端子の熱を効率よく伝導でき表示温度の精度を向上させることができる。
【0030】
また、前記変位伝達部の最大の変位が保持された状態の第一の表示機構をリセットするリセット操作部を、前記筐体における回路遮断器と対向して配置される一面に設けたことを特徴として構成してもよい。
【0031】
かかる構成によれば、最大発熱表示部のリセットを容易には行えないため、第一の表示機構における表示温度の信頼性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0032】
以上の如く、本発明によれば、回路遮断器の大幅な改造の必要なく、かつ遮断時におけるアークガスの影響を受けにくい、端子温度表示機能付回路遮断器を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本発明の実施形態を示す端子温度表示機能付回路遮断器の概略図を示す。
図2図1から電線を除いた端子温度表示機能付回路遮断器の概略図を示す。
図3】上記の端子温度表示機能付回路遮断器を示す。
図4】上記の端子温度表示機能付回路遮断器の内部組立図を示す。
図5図3の断面図AA(常時発熱表示部の構造)を示す。
図6図3の断面図BB(最大発熱表示部の構造)を示す。
図7】従来例における端子の接続不良を検出する構造を示す。
【発明を実施するための形態】
【0034】
次に本発明の実施形態を、図面を用いて詳細に説明する。
【0035】
図1には、本実施形態に係る端子温度表示機能付回路遮断器の概略構成図を示している。図2には,図1から電線を除いた端子温度表示機能付回路遮断器の概略図を示している。図3には、端子温度表示機能付回路遮断器を示している。図4には、端子温度表示機能付回路遮断器の内部組立図を示している。図5には、図3に示した端子温度表示機能付回路遮断器の断面図AAを示している。図6には、図3に示した端子温度表示機能付回路遮断器の断面図BBを示している。図7には、従来例における端子の接続不良を検出する構造を示している。
【0036】
まず、図1に示す回路遮断器1の基本構造について説明を行う。図1において、回路遮断器1は、外郭がモールドケースからなる回路遮断器筐体2と、同じく外郭がモールドケースからなる端子温度表示機能部3により構成されている。回路遮断器筐体2は回路遮断器の内部部品を取付ける基台201と、基台201に被せられて内部部品を覆うカバー202とからなる。回路遮断器筐体2には、電源側の電路と負荷側の電路とを入切するために、端子12と一体化した固定接触子(図示しない)と、可動接触子(図示しない)とが配設される。また、固定接触子と可動接触子を開閉駆動させる開閉機構部(図示しない)と、電路に流れる異常電流を検出することにより開閉機構部に作用して開閉機構部の引外し動作を行わせ、固定接触子と可動接触子とを開駆動させる引外し装置部(図示しない)とが設けられている。
【0037】
回路遮断器1には、外部の導体と接続される端子12が各極の電源に対応して複数設けられており、夫々外部に露出している。また、端子12は、回路遮断器筐体2と端子温度表示機能部3を接続するように構成される。
【0038】
端子12には、外方から電線4が接続される。電線4の先端部には、圧着端子41がカシメにより取り付けられており、端子12には、圧着端子41が端子ねじ11によってねじ締め固定される。このとき端子温度表示機能部3は、回路遮断器筐体2の底面と端子12に接続される電線4との間に位置する。
【0039】
次に、端子12の異常過熱を検出する機能を有する端子温度表示機能部3の構成について図2図3図4および図5を用いて説明を行う。
【0040】
図2および図3に示すとおり、端子温度表示機能部3は、端子12に固着した熱動素子32と、熱動素子32の変位が伝達されるとともに応動に対応して往復変位する作動体33と、熱動素子32の変位に連動し、作動体33の変位が伝達されて駆動される表示部34と、これら熱動素子32、作動体33、表示部34を収納する筐体35とを備えて構成される。
【0041】
端子12に固着される熱動素子32は、端子12からの熱伝導を受けて定量的に変位するバイメタルを用いて構成している。図3では、熱動素子32は端子12に対してねじ締めで固着されているが、ねじ締めに限らず、溶接やリベットによる固着でもよい。
【0042】
図4および図5に示す通り、表示部34は、熱動素子32が端子12からの熱伝導によって変位したとき、熱動素子32の変位を受けてB方向へ回動する作動体33により、回路遮断器筐体2側、つまり図4および図5の左方向に移動する。熱動素子32の変位の大きさに応じて表示部34の移動量も変化するため、移動量を目視させることで、熱動素子32の変位の大きさ、すなわち端子12の発熱量を視認させることができる。
【0043】
端子12の熱量に応じて熱動素子32が定量的に変位し、その変位量に応じて作動体33を介して表示部34が移動するので、端子12の発熱量と熱動素子32の変位量と表示部34の移動量は相関のとれたものとなり、端子12の発熱状態を表示することができる。
【0044】
このような構成により、回路遮断器筐体2の大幅な改造の必要なく、端子12の発熱量を、端子12に固着された熱動素子32の変位に連動して移動する表示部34の移動量によって目視させることで、簡単な構成で端子12の発熱状態を表示することができる。また、熱動素子32は回路遮断器筐体2の外部に位置している為、回路遮断器遮断時に発生するアークガスによる熱動素子32の劣化がなくなり、長期間端子12の発熱状態を検知することが可能となる。
【0045】
なお、図3図4および図5では表示部34は作動体33を介して移動する構成となっているが、これに限らず、例えば表示部34が直接熱動素子32に当接して移動する構成としてもよい。また、表示部34の移動方向も回路遮断器筐体2側、つまり図4および図5の左方向に限らず、例えば回路遮断器筐体2から離れる方向、つまり図4および図5の右側に移動する構成としてもよい。
【0046】
次に、複数の端子12を一括監視でき、必要な情報を表示できる端子温度表示機能部3について図3図4および図5を用いて説明を行う。図3に示す作動体33は、各極の端子12にわたる形で筐体35に回動可能に固定されている。
【0047】
このような構成により、作動体33がわたっている極の端子12に取り付けられた複数の熱動素子32のうち、最も高い温度で変位している熱動素子32のみに作動体33が連動して、図4および図5に示すB方向へ回動することで、表示部34を移動させることができる。よって作動体33がわたっている複数の端子12の発熱状態を一括監視でき、最も
発熱している端子12の発熱状態のみを表示できる。これにより端子12ごとに表示部34を配置するよりも少ない部品点数で、端子12の異常発熱の検出に必要な情報である、最も発熱している端子12の発熱状態を表示することができる。
【0048】
次に、より詳細な端子12の発熱状態を表示できる端子温度表示機能部3について図3図4および図5を用いて説明を行う。図3において、表示部34は常時発熱表示部341と最大発熱表示部342によって構成することができる。常時発熱表示部341は端子12の現在の発熱状態を表示し、最大発熱表示部342は端子12の最大発熱状態の表示を維持する。
【0049】
図4において、常時発熱表示部341は、常時発熱表示ばね3411とともに筐体35に組み込まれ、常時発熱表示ばね3411は、一端が筐体35に固定され、常時発熱表示部341が作動体33をA方向に回動させるように付勢している。作動体33は、常時発熱表示部341によりA方向に回動し、筐体35の位置規制部351に当接することにより固定され、熱動素子32と一定のギャップを設けた状態となる。
【0050】
端子12が発熱すると、熱動素子32が変位し、作動体33をB方向に回動させ、常時発熱表示部341は常時発熱表示ばね3411に抗して、回路遮断器筐体2側、つまり図4の左方向に移動する。また、端子12の発熱が治まれば、熱動素子32の変位が少なくなり、作動体33が、常時発熱表示ばね3411により筐体35の位置規制部251に当接するまでA方向に回動することで、常時発熱表示部341は常時発熱表示ばね3411に従して、回路遮断器筐体2と反対側、つまり図4の右方向に移動する。
【0051】
図5において、端子12の最大発熱状態の表示を維持する最大発熱表示部342は、最大発熱表示板ばね3421とともに筐体35に組み込まれ、最大発熱表示部342に設けた一部のリブが最大発熱表示板ばね3421に一定の荷重で挟み込まれている。
【0052】
端子12が発熱すると、熱動素子32が変位し、作動体33をB方向に回動させ、最大発熱表示部342は最大発熱表示板ばね3421の一定の挟み込み荷重に抗して回路遮断器筐体2側、つまり図5の左方向に移動する。
【0053】
また、端子12の発熱が治まれば、熱動素子32の変位が小さくなり、作動体33は、常時発熱表示ばね3411により、筐体35の位置規制部351と当接するまでA方向に回動するが、最大発熱表示部342は、最大発熱表示板ばね3421に一定の荷重で挟み込まれ、移動した位置で保持されているため、初期の位置には移動しない。
【0054】
このような構成により、端子12の発熱状態について、現在の発熱状態と、過去と現在にわたって最も発熱したときの状態を表示することができ、より詳細に端子12の発熱状態を確認することができる。なお、本願発明については、表示部34について、常時発熱表示部341のみを備えてもよいし、最大発熱表示部342のみを備えてもよいし、或いはその両方を備えてもよいが、端子12の異常発熱の有無を検出するためには、少なくとも最大発熱表示部342を備えていることが好ましい。
【0055】
次に、表示部34の外部からの操作を防止できる端子温度表示機能部3について、図2および図3を用いて説明を行う。
【0056】
筐体35は、図3に示すように熱動素子32と表示部34を収納、配置した後に、図2に示すように筐体用の蓋を取り付けることで、熱動素子32と表示部34を外部から接触不能とできるように構成している。
【0057】
また、図2および図3に示すように、筐体35には、表示部34の外部からの操作を防ぐとともに表示部34の移動量に応じた端子12の発熱状態を視認させるための発熱表示板3521と、表示部34と発熱表示板3521を視認させるための窓枠3522が設けてあり、端子12の発熱状態を容易に視認できるように構成されている。例えば表示部34の、窓枠3522から視認できる面の一部を色違いとし、発熱表示板3521を透明、かつ端子12の温度を表す文字を表示部34の移動量に対応した位置に記載すれば、表示部34が移動したとき、移動量に応じて表示部34の色違いとした面が発熱表示板3521を通して現れることで、窓枠3522から端子12の温度を確認できる。
【0058】
このような構成により、熱動素子32と表示部34が外部から接触不能となるため、熱動素子32以外の、意図的な操作によって表示部34が移動することがなくなり、端子12の発熱状態を正確に表示することができる。また、筐体35に表示部34を視認させるための窓枠3522を設けたため、表示部34が筐体35に収納された状態でも、表示部34の表示を視認することができる。
【0059】
次に、回路遮断器1を配電盤に取り付けている間は最大発熱表示部342の表示をリセットできず、回路遮断器1を配電盤から取り外せば最大発熱表示部342の表示をリセットできる端子温度表示機能付回路遮断器について図1および図2を用いて説明を行う。
【0060】
図1および図2に示す通り、端子温度表示機構部3の筐体35には筐体用の蓋を止める為の筐体ねじ353が設けられている。筐体ねじ353は筐体35の底面側から天面側に向かって挿入されており、ねじ頭が筐体35の底面側に位置するように構成されている。この構成の回路遮断器1を配電盤に取り付けた場合、配電盤によって筐体ねじ353のねじ頭は塞がれる。
【0061】
このように、回路遮断器1を配電盤に取付けたときに外部からの接触による操作が不可能となる面に、筐体ねじ353のねじ頭を設けることで、回路遮断器1を配電盤に接続している状態では、筐体35の蓋を開けない構造となっている。
【0062】
ねじ緩み等で最大発熱表示部342が端子12の異常過熱を示す表示状態となったときは、電線4を取り外して回路遮断器1を配電盤から取り外し、筐体35の筐体ねじ353を緩め、筐体用の蓋を開くことで、最大発熱表示部342の位置を初期位置にリセットできる。その後に回路遮断器1を配電盤に取付け、端子ねじ11と電線4を再度ねじ締めすることで、端子温度表示機能部3の最大発熱表示部342を再度使用可能とできると共に、端子ねじ11のねじ緩みによる端子12の異常過熱を防止できる。
【0063】
このような構成により、回路遮断器1を使用している間は最大発熱表示部342の表示をリセットされることなく維持できるため、端子12の異常過熱を確実に表示できる。かつ回路遮断器1を取り外すことで、最大発熱表示部342の表示をリセットできると共に端子ねじ11と電線4のねじ締めが再度行われるため、最大発熱表示部342を再度使用することができると共に、ねじ緩みによる端子12の異常過熱を防止できる。
【0064】
尚、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0065】
例えば、表示部34は、水平方向に移動としたが、作動体33を軸として、熱動素子32の変位に連動して作動体33と共に回動することで表示部34の面を移動させる方式としてもよい。
【符号の説明】
【0066】
1 回路遮断器
11 端子ねじ
12 端子
2 回路遮断器筐体
3 端子温度表示機能部
32 熱動素子
33 作動体
34 表示部
341 常時発熱表示部
3411 常時発熱表示ばね
342 最大発熱表示部
3421 最大発熱表示板ばね
35 筐体
351 位置規制部
3521 発熱表示板
3522 窓枠
353 筐体ねじ
4 電線
41 圧着端子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7