(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-14
(45)【発行日】2022-01-25
(54)【発明の名称】化粧用の油中水滴型マイクロエマルション
(51)【国際特許分類】
A61K 8/31 20060101AFI20220118BHJP
A61K 8/34 20060101ALI20220118BHJP
A61K 8/36 20060101ALI20220118BHJP
A61K 8/37 20060101ALI20220118BHJP
A61K 8/39 20060101ALI20220118BHJP
A61K 8/86 20060101ALI20220118BHJP
A61K 8/92 20060101ALI20220118BHJP
A61K 8/97 20170101ALI20220118BHJP
A61K 8/06 20060101ALI20220118BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20220118BHJP
【FI】
A61K8/31
A61K8/34
A61K8/36
A61K8/37
A61K8/39
A61K8/86
A61K8/92
A61K8/97
A61K8/06
A61Q19/00
(21)【出願番号】P 2019520454
(86)(22)【出願日】2017-10-05
(86)【国際出願番号】 EP2017001173
(87)【国際公開番号】W WO2018068884
(87)【国際公開日】2018-04-19
【審査請求日】2020-09-18
(32)【優先日】2016-10-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】519131325
【氏名又は名称】イオニア アズール アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】イオニディズ,ゲオルギオス
【審査官】片山 真紀
(56)【参考文献】
【文献】特表2001-501636(JP,A)
【文献】特開昭62-120309(JP,A)
【文献】特開2008-260768(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0253187(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0038592(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00-8/99
A61Q 1/00-90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
i)25℃での拡散値が1700mm
2/10分以上の油相成
分20~40%
(w/w
)、
ii)25℃での拡散値が1000~1700mm
2/10分の油相成
分15~35%
(w/w
)、
iii)25℃での拡散値が500~999mm
2/10分の油相成
分1~15%
(w/w
)、
iv)25℃での拡散値が500mm
2/10分未満の油相成
分0~10%
(w/w
)、
v)グリセリン、プロピレングリコール、1,10-デカンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、2,3-ブタンジオール、ヘキサンジオール、エチルヘキサンジオール、イソペンチルジオール、メチルプロパンジオール、プロパンジオール、ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリコール、ヘキシレングリコール、ネオペンチルグリコール、ペンチレングリコール、1,2,6-ヘキサントリオール、マンニトール、エリスリトール、キシリトールまたはソルビトールの中から選択された補助界面活性剤0.2~15%
(w/w
)、
vi)エタノール、1-プロパノールまたは2-プロパノールの中から選択された共溶媒0~10%
(w/w
)、
vii)グリセロールの脂肪酸エステルやポリグリセロールの脂肪酸エステル5~30%
(w/w
)、
viii)水5~20%
(w/w
)
を含む化粧用の油中水(W/O)マイクロエマルションであって:
長さが15mmで内径が2mmの垂直に位置したノズルパイプのノズルパイプオリフィスから化粧用の油中水(W/O)マイクロエマルションが0.05ml/秒の一定の流量で排出され、ノズルパイプオリフィスにぶらさがった液滴の高さは大気状態で少なくとも180秒間10mmを越えず;
このために前記油相成分i~ivの拡散値がa)グレード589/5、セルロース保有範囲2~4μm、厚さ0.17mm、Herzberg濾過時間450s、重量85g/m
2、直径125mmの濾紙ディスク中間に前記成分20μlを排出することによって、b)このような排出後10分間これらの成分で濡らされた濾紙の面積を測定することによって、そしてc)mm
2/10分に濡らされた面積として拡散値を表すことによって決定されることを特徴とする化粧用の油中水マイクロエマルション。
【請求項2】
前記成分i~viiiは、マイクロエマルションの総重量に対して少なくとも総量95%まで追加されることを特徴とする、請求項1に記載の化粧用の油中水マイクロエマルション。
【請求項3】
25℃での拡散値が1700mm
2/10分以上の油相成分は、ウンデカン、ドデカン、トリデカン、テトラデカン、イソヘキサデカン、プロピルヘプチルカプリレートおよび水素化ポリイソブテンの中から選択されることを特徴とする、請求項1または2に記載の化粧用の油中水マイクロエマルション。
【請求項4】
25℃での拡散値が1000~1700mm
2/10分の油相成分は、ヘキシルラウレート、ジブチルアジペート、ココ-カプリレート、ジカプリリルカーボネート、ジカプリリルエーテル、カプリリルカプリレート/カプレート、イソプロピルミリステート、イソプロピルパルミテートおよびイソアミルラウレートの中から選択されることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の化粧用の油中水マイクロエマルション。
【請求項5】
25℃での拡散値が500~999mm
2/10分の油相成分は、エチルヘキシルパルミテート、エチルヘキシルステアレート、ココ-カプリレート/カプレート、ジエチルヘキシルシクロヘキサン、セテアリルイソノナノエート、デシルオレエート、オクチルドデカノール、ヘキシルデカノール、セテアリルエチルヘキサノエート、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド、ココグリセリドおよびプロピレングリコールジカプリレート/ジカプレートの中から選択されることを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の化粧用の油中水マイクロエマルション。
【請求項6】
25℃での拡散値が500mm
2/10分未満の油相成分は、アブラヤシ油(elaeis guineensis Oil)、チャボトケイソウ種子油(Passiflora Incarnata Seed Oil)、ヒマワリ種子油、C12-15アルキルベンゾエート、ポリオキシプロピレン15ステアリルエーテル、13-ドコセン酸、9-オクタデセニルエステル、ヘキシルデシルステアレートおよびトリイソステアリンの中から選択されることを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載の化粧用の油中水マイクロエマルション。
【請求項7】
25℃での拡散値が500mm
2/10分未満の油相成分は、植物性オイルや植物性ワックスであることを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載の化粧用の油中水マイクロエマルション。
【請求項8】
グリセロールの脂肪酸エステルやポリグリセロールの脂肪酸エステルは、モノグリセリルモノエステル、モノグリセリルジエステル、モノグリセリルトリエステル、ポリグリセリルモノエステル、ポリグリセリルジエステルおよびポリグリセリルマルチエステルの中から選択されることを特徴とする、請求項1~7のいずれか1項に記載の化粧用の油中水マイクロエマルション。
【請求項9】
前記油中水マイクロエマルションは、少なくとも2個の異なるグリセロールの脂肪酸エステルおよび/またはポリグリセロールの脂肪酸エステルを含むことを特徴とする、請求項1~8のいずれか1項に記載の化粧用の油中水マイクロエマルション。
【請求項10】
グリセロールの脂肪酸エステルやポリグリセロールの脂肪酸エステルは、5個の反復的なグリセロール部分を有するポリグリセリルモノエステル、ポリグリセリルジエステルおよびポリグリセリルマルチエステルの中から選択されることを特徴とする、請求項1~9のいずれか1項に記載の化粧用の油中水マイクロエマルション。
【請求項11】
前記油中水マイクロエマルションは、水を6~15%
(w/w
)含有することを特徴とする、請求項1~10のいずれか1項に記載の化粧用の油中水マイクロエマルション。
【請求項12】
マイクロエマルションの総重量に対して水と乳化剤の量の重量比は4:1~2:3
であることを特徴とする、請求項1~11のいずれか1項に記載の化粧用の油中水マイクロエマルション。
【請求項13】
前記油中水マイクロエマルションは、少なくとも一つの水溶性植物抽出物を含有することを特徴とする、請求項1~12のいずれか1項に記載の化粧用の油中水マイクロエマルション。
【請求項14】
前記油中水マイクロエマルションは、軟化剤、密閉剤、保湿剤、脂質層エンハンサー、化粧品補助成分および化粧品活性成分のうち少なくとも一つを含有することを特徴とする、請求項1~13のいずれか1項に記載の化粧用の油中水マイクロエマルション。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか1項に記載の化粧用の油中水マイクロエマルションを分配する方法であって:
化粧用の油中水マイクロエマルションを0.01~25ml/s/mm
2の体積流量でノズルを通して分配するステップを含むことを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、従来の化粧用の油中水滴型マイクロエマルションに比べて流動性の良い化粧用の油中水滴型マイクロエマルションに関する。
【背景技術】
【0002】
スキンケアは、肌を元気で快適な状態に保持するための複雑な措置である。スキンケア化粧品は、一般にオイルや油溶性成分と水や水溶性成分とを含有しており、主にエマルションとして存在する。エマルションとは混和されない二つ以上の液体の混合物であって、(分散相や不連続相とも言われる)一つの液体が他の液体(連続相)の中に小球体として分散されている。スキンケア化粧品において、一つの相は水や水溶性物質を含有した水からなる水相と称し、非水溶性オイル、軟化剤、ワックスなどからなる2番目の相を油相と称する。油滴が連続的な水相中に分散されてなったエマルションを水中油(O/W;oil-in-water)という。水滴が連続的な油相中に分散されたエマルションは油中水(W/O;water-in-oil)という。O/W/OやW/O/Wのような多相型エマルションもある。エマルションは、分散相液滴において光が散乱されるため、不透明でありながら白っぽく見える。連続相は、エマルションの官能性と物理化学特性に最も大きな影響を与える。
【0003】
連続相の中で分散相が分散されれば不安定なエマルションが生じ、これは分散された液滴が迅速に合わさって別の液体層を再形成するためである。乳化剤を添加すれば、エマルションが安定する。乳化剤がなければ、油相と水相の比較的大きな表面張力(単位面積当たりの界面エネルギー)のために液相の表面積が最小化され、液相が最小表面において接触するようになって、二つの状態である水相と油相を生成する。乳化剤は油相と水相の間の表面張力を下げて、安定した分散相液滴を生成する。乳化剤は極性部と非極性部とを有する両親媒性物質であり、極性部は水相と作用し、非極性部は油相と作用する。したがって、乳化剤は水相/油相の中間に位置する。乳化剤が充分であれば、分散相液滴を囲んでミセル(micell)を形成し、それらは連続相の中に安定的に分散される。乳化剤は、分散相液滴が接触するのを妨害して分離状態に置く。乳化剤により安定したエマルションは、顧客に許される3~5年間の長期間(無期限ではない)安定的であるが、水相と油相と乳化剤を混合した後にエマルションが自発的に形成されるわけではない。エマルションを形成するためには、激烈な均質化のようなエネルギーが必要である。
【0004】
特殊なエマルションであるマイクロエマルションは、水相、油相および乳化剤からなる分散物であって、等方性であり、熱力学的に安定したシステムにおいて、分散相液滴の直径は350nmを越えず、概して100nmより小さい。マイクロエマルションの非常に小さなサイズの分散相液滴は、特殊な物性を有する多量の乳化剤を用いて得られる。小さなサイズの分散相液滴のためにマイクロエマルションが透明に見え、これは分散相液滴の大きさが可視光の波長より相当に小さく光の散乱がほぼ(全く)起こらないためである。マイクロエマルションは機械的エネルギーの投入はほぼなしに形成されることができるが;マイクロエマルションを作るためには、全ての成分を容器に添加して軽くかき混ぜれば良い。小さな粒子サイズは分散相に入ったスキンケア成分の肌浸透を助長し、マイクロエマルションの透明な様子が美的な魅力を高めることもある。このことから、マイクロエマルションは化粧品業界で広く用いられる。マイクロエマルションはO/WやW/Oとして存在することもある。
【0005】
マイクロエマルションにおいて、混合物内の乳化剤の量と温度に応じて、ミセルが楕円、円筒、二重膜のようにさらに複雑な形状を有することができる。マイクロエマルションの複雑なミセルは、各種の液晶相(キュービック、6角形、層状など)として組織されることができる。液晶、層状脂質膜構造、小胞体、wormやスポンジのようなミセル、その他のマクロ的間隔にわたった他構造の存在のために、マイクロエマルションの相は長距離規則度を有する。このようなマイクロエマルションが構造化液体である。このようなマクロ構造は、凝集力や接着力のようなマイクロエマルションのマクロ的構造間の力がマイクロエマルションの流動性に大きな影響を与えるか、または相の物性から大きく外れた流動性を付与することができる。例えば、ミセル間の反発力と引力のためにマイクロエマルションがゲル化され、マイクロエマルションがゲル化剤を含有せず相が自由流動液である場合にもそうである。
【0006】
化粧品は、瓶、チューブ、フラスコなどのような様々な包装容器で包装される。壁面を押して化粧品を絞り出せるフラスコのように内部化粧品に直接接することなく化粧品を取り出せることが衛生的に好ましい。蓋にポンプが取り付けられた容器もあるが、この場合にはポンプを用いて化粧品を取り出すことができる。汚染を防止するためには、(ノズルとも言われる)開口の直径がフラスコの直径より遥かに小さくなければならず、通常、ノズルの直径は0.1~10mm程度であり、これは0.0079~79mm2の円板表面積に該当する。ノズルが円形でなくてもよいが、ノズルの直径が10mmを越えてはいけない。
【0007】
マイクロエマルションに剪断力を加えれば、エネルギーが貯蔵され、様々な弾性効果(粘弾性のような挙動)を示す。粘弾性液が底の小さなオリフィスを通して容器から出る時に弾性効果が生じる。下部液体はオリフィスから出るが、上部液体は容器内で跳ね上がる。弾性効果の他例としては開放(チューブレス)サイフォン効果があり、この場合、液体表面から容器壁上に上昇する液体流れが生じれば、容器内で下降する液体からの弾性力により容器内の液体が容器上に引きずられて上がる。(「ダイ」と呼ばれる)排出ノズルから流れ出る時、ノズルを出た粘弾性液の流れは、ノズルの直径より遥かに大きい直径(例えば、300%)に膨張して、いわゆる、「ダイスウェル(die swell)」現象が発生する。ダイスウェルは、ノズルを通過しつつ液体に貯蔵された弾性エネルギーが放出されて発生する。
【0008】
液晶構造内部に強い力を有する構造化液体でありながら粘弾性挙動を示すマイクロエマルションは、非常に複雑でありながらも予測し難しい流動を示す。マイクロエマルションは、誤った噴出、既に排出された製品表面からの跳ね返りのように、所望の排出形態から外れてノズルを通して容器から出る時に非常に誤った流動を示しうる。小さな液滴に微粒化されていない低弾性マイクロエマルションの排出のような不適切な液滴微粒化は観察されない。特に、マイクロエマルションの内部凝集力のために化粧品を指で取る時にねばねばしたストランド(strand)が生じ、排出後にポンプにこのようなストランドが生じたりもする。液体が工業的規模で流れるかまたはポンピングされる時にもこのような効果が顧客規模で生じることがある。
【0009】
特許文献1、特許文献2、特許文献3は、各種形態の化粧用マイクロエマルションシステムは紹介しているが、所望の流動性を示すマイクロエマルションを生産する方法は紹介していない。
【0010】
特許文献4、特許文献5、特許文献6、特許文献7、特許文献8、特許文献9に紹介されたマイクロエマルションは、その拡散性のために所望の組織(触感によるマイクロエマルションの構造的特性)や肌に塗った後の感じは良好だが、流動性を予測することができず、同じ組織や同じ感じのマイクロエマルションが異なる流動性を示し、その逆に同一または類似した流動性を示す二つのマイクロエマルションの組織や使用後感が非常に異なったりもする。
【0011】
特許文献10に紹介された化粧品は、(ここに紹介されたスペクトル方法により決定された)5分後に6以上のスライド性を示し、これは、(a)粘性10mPasおよび/または拡散性(spreadability)3>700(特に3>1000)mm2/mの脂質、および(b)肌に対して所望の拡散性を得るように3(特に0)wt%シクロメチコン、シクロペンタシロキサンおよび/またはシクロヘキサシロキサンを含有するエマルションを基礎にする。しかし、拡散性が同一のマイクロエマルションであっても異なる流動性を有しうるため、肌に対する拡散性で流動性を予測することはできない。
【0012】
特許文献11に紹介された油中水エマルションの少なくとも80wt%の水相成分は、(A)25℃で粘度が15mPas未満であり、拡散値(spreading value)が70mm2/m以下の脂質を含有した脂質相;(B)式(I)の界面活性剤およびオプションとして(C)0.01~10wt%や0.1~5wt%のカチオン、非イオンおよび/またはアニオンポリマーを含有する。A、A’=式(II)の不飽和10-30Cアルキル、アシルまたはヒドロキシアシルまたはエステル-結合ヒドロキシアシル基;R’=1-20Cアルキル;R’’=1-20Cアルキレン;a=1-100(特に5-40);b=0-200;X=a結合または-CH(OR3)-;R1とR2=HまたはMe;R3=Hまたは1-20C オプションとして低粘度化粧品を得るための不飽和アルキルまたはアシル。しかし、構造化された液体の予測できない流動性と粘弾性の挙動のために、粘性だけではマイクロエマルションの流動性を説明するのに不充分であり、これは、粘性マイクロエマルションが良好な流動性を有し、低粘性や非粘性マイクロエマルションが弾性流動性を示すためである。
【0013】
特許文献12に紹介された流動型(20℃での粘度が4000mPas未満)油中水エマルションは少なくとも二つのW/O乳化剤と一つ以上のオイルとを含有し、オイルの拡散値は600mm2/10分以上である。この特許は、拡散値600mm2/10分以上のオイルを用いてエマルションの粘度を調節する方法も紹介しているが、粘性の低いマイクロエマルションが良好な流動性を有し、粘性が低いかまたはほぼない高い流動性が誤った挙動を示しうるために流動的挙動を予測するのは難しい。
【0014】
特許文献13のマイクロエマルションの組成は、(a)少なくとも20%トリオレインを溶解し、拡散率SR(選択されたオイルの分当たりの拡散時間とオレイルオレエートの拡散時間の比)が0.3~2.5のオイルのマイクロエマルション5~30wt%;(b)アニオン、非イオン性両性イオン、カチオンおよびこれらの混合物からなる群より選択された界面活性剤のマイクロエマルション5~40wt%;(c)C2-C10直鎖/分枝鎖アルコールを含有した水溶性補助界面活性剤のマイクロエマルション1~15%;(d)水溶性ポリアルコールや保湿剤0~30%;および(e)クレンジング効果に優れ、あまりオイリーでないバランスウォーターを含有する。特許文献13の[0137]段落には表面張力測定法が、[0142]段落にはマイクロエマルションの粘度測定法が紹介されている。前述したように、粘度だけではマイクロエマルションの流動挙動を予測するのが難しい。
【0015】
特許文献14の油中水化粧品は、ポリオール、粘度が1~15mPasであり拡散値が800~1200mm2/10分程度の軽量オイル、粘度が20~100mPasであり拡散値が300~600mm2/10分の中量オイル、および融点が25~45℃のワックスを含有するが、所望の流動性を有するマイクロエマルションを生産する方法に関する言及はない。
【0016】
特許文献15、特許文献16、特許文献17、特許文献18は、粘度が低いか、高いか、または一定範囲内にあるマイクロエマルションを生産する方法は紹介しているが、流動的挙動と粘弾性挙動の予測が難しい。
【0017】
特許文献19は、マイクロエマルションに用いられるPVPを紹介しているが、PVPのMwが高いほど粘度に影響を与えるため、Mwが500,000を越えないようにしている。また、マイクロエマルションにおけるPVPの含量が40wt%を越えれば、システムの粘度が過剰増加して物性を悪化させると述べている。この場合にもマイクロエマルションの流動的挙動を予測するのは難しい。
【0018】
特許文献20、特許文献21、特許文献22、特許文献23、特許文献24、特許文献25、特許文献26は、マイクロエマルションを濃密化するかまたはゲル化する様々な方法を提示している。濃密化は一般に粘度と安定度を高めるために行われる。前述したように、粘度だけではマイクロエマルションの流動的挙動を予測するのが難しい。
【0019】
特許文献27に紹介された吐出性溶液は、天然油や食用油などのオイル;食用界面活性剤;食用水溶液およびオイルに溶解される薬剤を含有し、このような成分がマイクロエマルションを形成する。ここで、[吐出性]とは、インクジェット材料ディスペンサにより選択的に沈着できる物性を有する全ての材料であると理解すれば良い。しかし、ここでは吐出性を制御する手段としてマイクロエマルションの粘度だけを紹介しており、前述したように顧客規模でマイクロエマルションの流動的挙動を予測するのは難しい。
【0020】
特許文献28、特許文献29、特許文献30、特許文献31、特許文献32は、マイクロエマルションの流動性を粘度測定に限定して説明しており、所望の流動的挙動を予測するには不充分である。
【0021】
特許文献33に紹介された水中油ナノエマルションは、一つ以上の非イオン性両親媒性脂質、一つ以上の揮発性の線状アルカン、および揮発性の線状アルカン以外の一つ以上のオイルを含有する。表2によれば、揮発性の線状アルカンにより、マイクロエマルションシステムがシクロペンタジメチルシロキサンより濃厚になる。この特許も所望の流動的挙動を有するマイクロエマルションに関する言及はない。
【0022】
誤った流動性を示すW/Oマイクロエマルションは、取り扱うのが容易ではなく、ノズルやチューブを通して容器から排出できる包装をすることができず、肌に塗るロールオン(roll-on)方式や使い捨てアンプル形態で提供できるのみである。現在、所望の流動的挙動を示すW/Oマイクロエマルションを生産する満足のいく方法はない。したがって、前述した短所を有しないW/Oマイクロエマルションが必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0023】
【文献】米国特許第4,797,272号明細書
【文献】米国特許第8,852,648号明細書
【文献】国際公開第2005/020938号
【文献】国際公開第2002/043674号
【文献】国際公開第2004/091565号
【文献】米国特許出願公開第20110033512号明細書
【文献】米国特許第5686087号明細書
【文献】特開2004-075639号公報
【文献】特開平09-151112号公報
【文献】独国特許発明第10361568号明細書
【文献】欧州特許出願公開第1147760号明細書
【文献】国際公開第2013/120829号
【文献】国際公開第02/102327号
【文献】欧州特許出願公開第1889596号明細書
【文献】米国特許第4371447号明細書
【文献】米国特許第4472291号明細書
【文献】国際公開第95/06102号
【文献】欧州特許出願公開第1813251号明細書
【文献】米国特許出願公開第2006/0193810号明細書
【文献】米国特許第6291418号明細書
【文献】国際公開第2009/080657号
【文献】米国特許第6362155号明細書
【文献】米国特許第7176174号明細書
【文献】米国特許出願公開第2010009873号明細書
【文献】米国特許出願公開第2011177019号明細書
【文献】米国特許第8404218号明細書
【文献】米国特許出願公開第20050232974号明細書
【文献】国際公開第2005/102256号
【文献】米国特許第7781489号明細書
【文献】米国特許出願公開第2015/0011654号明細書
【文献】欧州特許出願公開第1639989号明細書
【文献】国際公開第2005/105027号
【文献】欧州特許出願公開第2343036号明細書
【非特許文献】
【0024】
【文献】U.Zeidler著 「Journal Fats、Soaps、Paints」87、403(1985)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
簡単で且つユーザフレンドリーな取り扱いが可能なW/Oマイクロエマルションを作ってこそ該問題が解決される。
【課題を解決するための手段】
【0026】
問題の解決策は請求項1の特徴部にある。本発明は、i)25℃での拡散値が1700mm2/10分以上の油相成分の20~40% w/w、ii)25℃での拡散値が1000~1700mm2/10分の油相成分の15~35% w/w、iii)25℃での拡散値が500~999mm2/10分の油相成分の1~15% w/w、iv)25℃での拡散値が500mm2/10分未満の油相成分の0~10% w/w、v)グリセリン、プロピレングリコール、1,10-デカンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、2,3-ブタンジオール、ヘキサンジオール、エチルヘキサンジオール、イソペンチルジオール、メチルプロパンジオール、プロパンジオール、ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリコール、ヘキシレングリコール、ネオペンチルグリコール、ペンチレングリコール、1,2,6-ヘキサントリオール、マンニトール、エリスリトール、キシリトールまたはソルビトールの中から選択された補助界面活性剤0.2~15% w/w、vi)エタノール、1-プロパノールまたは2-プロパノールの中から選択された共溶媒0~10% w/w、vii)グリセロールの脂肪酸エステルやポリグリセロールの脂肪酸エステル5~30% w/w、およびviii)水5~20% w/wを含む化粧用の油中水(W/O)マイクロエマルションに関するものである。長さLが15mmで内径Dが2mmの垂直に位置したノズルパイプのノズルパイプオリフィスから該マイクロエマルションが0.05ml/秒の一定の流量で排出され、ノズルパイプオリフィスにぶらさがった液滴の高さHは大気状態で少なくとも180秒間10mmを越えないという点で立派な流動的挙動を示す。
【0027】
本発明のW/Oマイクロエマルションは、取り扱いやすいように断面積が0.0079~79mm2の様々な形状のノズルを通して容器から排出されることができ、これは、例えば、力を入れるとノズルを通して容器からマイクロエマルションが排出され、ノズルが向かう方向に噴霧することによって、液滴をさらに小さくすることができ、ねばねばしたストランド(strand)の様子を示す強い内部凝集力も見られない。
【0028】
本発明のW/Oマイクロエマルションは、取り扱いやすいようにノズルを通して容器から0.02~10mlずつ排出することができる。0.02~10mlは、化粧品を容器から一度に取り出す一般的な量である。例えば、0.02~10mlは、ポンプピストンやプランジャの1ストロークの排出量であるか、またはプラスチック瓶を一度押した時に出てくる量である。顧客は、一般に一度または何度も絞り出す。
【0029】
ノズルを通して容器から化粧品を0.02~10ml排出するのにかかる時間は数秒を越えず、概して1~2秒である。これを知ると、予想される排出量が少量ずつであるかまたは大量ずつであるかに応じてノズルの断面積を適切に定めることができる。一定時間内に様々な断面積のノズルを通して排出される液体流量を体積流量で説明することができ、その単位は体積/(秒*面積)や体積/秒/面積である。本発明のマイクロエマルションは、取り扱いやすいように0.01~25ml/s/mm2の体積流量で容器から排出されることができる。
【0030】
0.01~25ml/s/mm2の体積流量(顧客規模)でノズルを通して出た液体は、特別な流動挙動、特に非常に小さな規模(ナノリットル)や大きな規模の挙動に比べて特別な排出挙動を示す。
【0031】
長さが15mmで内径が2mmの垂直に位置したノズルパイプのオリフィスから0.05ml/秒の一定の流量で大気条件で180秒間、本発明のW/Oマイクロエマルションを排出し、その液滴がノズルパイプオリフィスにぶらさがっている高さが180秒の全体テスト期間の間、10mmに達した後にオリフィスから分離されるようにマイクロエマルションを選択して、マイクロエマルションの排出性をテストしたところ、マイクロエマルションの排出性が良く、断面積が0.079~79mm2で1回排出量が0.02~10mlのノズルから0.01~25ml/s/mm2の体積流量で容器から容易に排出され、このようなマイクロエマルションは取り扱いやすかった。
【0032】
マイクロエマルションの排出性テスト機器は、0.05ml/sの一定の流量でマイクロエマルションをポンピングするポンプ、長さ15mmで内径2mmの垂直位置ノズルパイプ、ポンプ出口とノズルパイプに連結される排出管、および180秒の全体テスト期間の間ぶらさがった液滴の高さを測定する手段を含む。テスト機器の一例が
図1に示されている。トランスファーピペットのようにノズルパイプが取り付けられた手動ポンプや計量用シリンジポンプを用いてW/Oマイクロエマルションを分配することもできる。テスト機器を用いて、マイクロエマルションを長さ15mmで内径2mmの垂直ノズルパイプのノズルパイプオリフィスから0.05ml/sの一定の流量で排出し、オリフィスにぶらさがっている液滴の高さが180秒のテスト期間の間、10mmを越えなければ、該マイクロエマルションは良好な排出性を有し、断面積が0.079~79mm
2で1回排出量が0.02~10mlのノズルから0.01~25ml/s/mm
2の体積流量で容器から容易に排出され、このようなマイクロエマルションは取り扱いやすかった。
【0033】
本発明のマイクロエマルションの長所は、排出が可能であり且つ改善された流動性を有するようにその構造を調節できるということにある。このために、ドージングポンプ(dosing pump)、ドージングピペット、噴霧ヘッドなどからの排出のように様々な分野で用いることができる。また、本発明のマイクロエマルションは、ガラス、プラスチック、金属のような様々な材料からなる排出手段を用いて排出されることができる。最後に、改善された流動的挙動を有する本発明のマイクロエマルションは、改善された微粒性のためにねばねばしたストランド(strand)や長尺のチューブが生じないので瓶やルツボから取り出す時に取り扱いやすい。
【0034】
本発明は、排出性の良いW/Oマイクロエマルションを生産する方法も提供する。
【0035】
本発明のマイクロエマルションは、排出する間良好な液滴微粒化を示すため、液滴を分離しやすく、取り扱いも容易である。
【0036】
また、本発明のマイクロエマルションは、ねばねばしたストランド(strand)も生成しないため、取り扱いやすい。
【0037】
本発明のマイクロエマルションの他の長所は、例えば、化粧品ポンプを用いてノズルや小さな開口を通して強制的に排出できる容器に包装できるということにある。
【0038】
また、請求項1に記載の化粧用W/Oマイクロエマルションは、成分i~viiiがマイクロエマルションの総重量に比べて少なくとも95% w/wまで追加されることを特徴とする。この場合、W/Oマイクロエマルションの排出性が良い。
【0039】
長さ15mmで内径2mmの垂直に位置したノズルパイプのオリフィスから0.05ml/sの一定の流量で排出できるW/Oマイクロエマルションは、オリフィスにぶらさがっている液滴の高さが180秒のテスト期間の間、10mmを越えないのが、油相成分の拡散値と量の調節によってなされることが明らかになった。
【0040】
拡散圧力は固体表面において液相が拡散する傾向の測定値であって、液体表面と固体表面の間の接着作用と液体内部の凝集作用との差として表される。正の(拡散係数として知られた)拡散圧力値は液体が固体において拡散することを意味する。化粧品分野において、拡散係数は、肌での拡散値であって、拡散中の液体が10分間覆われる面積mm2で表される。このような拡散値は、非特許文献1に初めて紹介された。ここで紹介された拡散値は、肌表面において軟化剤が拡散する物理化学的因子と肌での軟化剤の主観的な感じを連携するのに用いられた。U.Zeidlerによれば、低拡散値(300mm2/10分未満)、中間拡散値(300~1000)、高拡散値(1000mm2/10分未満)に物質を分類することができる。本発明においては、U.Ziedlerが用いた方法とは異なる方法により、肌ではなく濾紙に対し25℃で拡散をテストした。テストに用いた濾紙は、グレード589/5、レッドリボン、材料:セルロース、物性:medium-slow、保有範囲2~4μm、厚さ0.17mm、Herzberg 濾過時間:450s、DIN 53 137濾過時間:35-90s、重量85g/m2、直径125mm、商標名Sigma-Aldrich社のWhatman(登録商標)であった。25±1℃において、オイル20μlを濾紙の中間に排出すると同時にタイマを作動した。10分後、このオイルで濡らされた濾紙の面積を測定し、拡散値をmm2/10分で表す。評価のために、カメラで濾紙の写真を撮った。
【0041】
濾紙と他の因子の変動性のために実験室に応じて拡散値が異なりうる。比較のために、以下の四つの物質の拡散値を前述した濾紙を用いて25℃で決めなければならない:オレイルエルケート(拡散値350mm2/10分)、セテアリルイソノナノエート(拡散値700mm2/10分)、イソプロピルミリステート(拡散値120mm2/10分)、プロピルヘプチルカプリレート(拡散値1900mm2/10分)、そして、ここで説明した拡散値カテゴリー内の物質に対する補正因子を計算するのに用いられた結果である。
【0042】
本発明においては、(以上で説明した濾紙を用いて求めた)以下の拡散値の等級を用いる:
-低拡散値:25℃で500mm2/10分未満
-中間拡散値:25℃で500~900mm2/10分
-高拡散値:25℃で1000~1700mm2/10分
-超高拡散値:25℃で1700mm2/10分以上
【0043】
本発明によれば、拡散値を表面張力、粘度、相対分子量、揮発性などのような成分の各種物理化学的性質の要約値として用いることができ、所望の排出性を有するW/Oマイクロエマルションのためのガイド値として用いることもできる。したがって、所望の排出性を有するW/Oマイクロエマルションを得る作業が非常に簡単である。
【0044】
本発明のW/Oマイクロエマルションは、油相、水相、乳化剤、補助界面活性剤、一つ以上の極性共溶媒、一つ以上の化粧用活性成分、一つ以上のスキンケア成分や、少なくとも一つの水溶性植物抽出物、一つ以上の化粧用補助成分を含有する。
【0045】
International Union of Pure and Applied Chemistryによれば、化学的物質は、化学的成分と特性が一定した物質であって、化学的結合を害せずに物理的分離法では成分別に分離することができない。化学物質は、化学的要素、化学的化合物、イオンまたは合金であってもよい。物質の混合物の一部である物質が成分である。化粧品成分は化粧品混合物の一部である物質である。スキンケア成分は、肌に塗るのに安全であると認められ、スキンケア領域で所望の品質を有する全ての物質を指す。
【0046】
油相は、非常に超高拡散値を有する油相成分、高拡散値を有する油相成分、中間拡散値を有する油相成分を必須的に含み、低拡散値を有する油相成分は選択的に含む。
【0047】
超高拡散値を有する油相成分は、チェーン長さ11(ウンデカン)、12(ドデカン)、13(トリデカン)または14(テトラデカン)炭素原子を有する直鎖炭化水素(アルカン)は勿論、イソヘキサデカン、プロピルヘプチルカプリレート、水素化ポリイソブテンなどの分枝炭化水素を含むが、これらに限定されるものではない。ウンデカン(CAS 1120-21-4)とトリデカン(CAS 629-50-5)としてはBASF社の商標CETIOL(登録商標) ULTIMATE、ドデカン(CAS 112-40-3)としてはDaito Kasei Kogyo社の商標MAKIGREEN D10、トリデカンとしてはSasol Performance Chemicals社の商標PARAFOL 14-97、イソヘキサデカンとしてはCroda社の商標ArlamolTM HD、プロピルヘプチルカプリレート(CAS 868839-23-0)としてはBASF社の商標Cetiol(登録商標) Sensoft、水素化ポリイソブテン(CAS 90622-59-6)としてはBASF社の商標Luvitol(登録商標) Liteを用いることができる。
【0048】
超高拡散値を有する油相成分の量は、W/Oマイクロエマルションの総重量の20~40% w/w程度であるが、22~35% w/wが好ましく、24~30% w/w程度であればより好ましい。一方、請求項1と2に記載のマイクロエマルションは、拡散値が1700以上の油相成分をウンデカン、ドデカン、トリデカン、テトラデカン、イソヘキサデカン、プロピルヘプチルカプリレートおよび水素化ポリイソブテンの中から選択する。
【0049】
高拡散値を有する油相成分は、ヘキシルラウレート、ジブチルアジペート、ココ-カプリレート(coco-caprylate)、ジカプリリルカーボネート、ジカプリリルエーテル、カプリリルカプリレート/カプレート、イソプロピルミリステート、イソプロピルパルミテートおよびイソアミルラウレートの中から選択されるが、これらに限定されるものではない。ヘキシルラウレート(CAS 34316-64-8)としてはBASF社の商標Cetiol(登録商標)A、ジブチルアジペート(CAS 105-99-7)としてはBASF社の商標Cetiol(登録商標)B、ココ-カプリレート(CAS 107525-85-9)としてはSABO S.p.A社の商標SABODERM CV、ジカプリリルカーボネート(CAS 1680-31-5)としてはLonza社の商標Lonzest(登録商標)DC NT Emollient Ester、ジカプリリルエーテル(CAS 629-82-3)としてはSABO S.p.A社の商標SABODERM DOE、カプリリルカプリレート/カプレート(CAS 2306-88-9、2306-92-5)としてはBASF社の商標Cetiol(登録商標) RLF、イソプロピルミリステート(CAS 110-27-0)としてはBerg+Schmidt GmbH&Co.KG社の商標BergaCare EM-14、イソプロピルパルミテート(CAS 6309-51-9)としてはDr.Straetmans社の商標dermofeel(登録商標)sensolve、イソアミルラウレート(CAS 142-91-6)としてはBerg+Schmidt GmbH&Co.KG社の商標BergaCare EM-16を用いることができる。
【0050】
高拡散値を有する油相成分の量は、W/Oマイクロエマルションの総重量の15~35% w/w程度であるが、17~30% w/wが好ましく、19~25% w/w程度であればより好ましい。
【0051】
一方、請求項1~3に紹介されたマイクロエマルションは、25℃での拡散値が1000~1700mm2/10分の油相成分がヘキシルラウレート、ジブチルアジペート、ココ-カプリレート、ジカプリリルカーボネート、ジカプリリルエーテル、カプリリルカプリレート/カプレート、イソプロピルミリステート、イソプロピルパルミテートおよびイソアミルラウレートの中から選択される。このような成分は、マイクロエマルションが肌において迅速に拡散するのに役立つ。
【0052】
中間拡散値を有する油相成分としては、エチルヘキシルパルミテート、エチルヘキシルステアレート、ココ-カプリレート/カプレート、ジエチルヘキシルシクロヘキサン、セテアリルイソノナノエート、デシルオレエート、オクチルドデカノール、ヘキシルデカノール、セテアリルエチルヘキサノエート、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド、ココグリセリドおよびプロピレングリコールジカプリレート/ジカプレートなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。エチルヘキシルパルミテート(CAS 29806-73-3)としてはEvonik Industries AG Personal Care社の商標TEGOSOFT(登録商標)OP、エチルヘキシルステアレート(CAS 91031-48-0や22047-49-0や29806-73-3)としてはBASF社の商標Cetiol(登録商標)868、ココ-カプリレート/カプレート(CAS 95912-86-0)としてはSEPPIC社のDUB 810 C、ジエチルヘキシルシクロヘキサン(CAS 84753-08-2)としてはBASF社の商標Cetiol(登録商標)S、セテアリルイソノナノエート(CAS 84878-33-1、84878-34-2、111937-03-2)としてはBASF社の商標Cetiol(登録商標)SN、デシルオレエート(CAS 3687-46-5)としてはBASF社の商標Cetiol(登録商標)V、オクチルドデカノール(CAS 5333-42-6)としてはEvonik Industries AG Personal Care社の商標TEGOSOFT(登録商標)G20、ヘキシルデカノール(CAS 2425-77-6)としてはSasol Performance Chemicals社の商標ISOFOL 16、セテアリルエチルヘキサノエート(CAS 59130-69-7)としてはLubrizol社の商標SchercemolTM 1688 Ester、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド(CAS 73398-61-5)としてはSABO S.p.A社の商標SABODERM TCC、ココグリセリド(CAS 68606-18-8)としてはBASF社の商標Myritol(登録商標)331、プロピレングリコールジカプリレート/ジカプレート(CAS 68583-51-7、58748-27-9、68988-72-7)としてはCroda社の商標CrodamolTMPCを用いる。
【0053】
中間拡散値を有する油相成分の量は、W/Oマイクロエマルションの総重量の1~15% w/w程度であるが、2~10% w/wが好ましく、3~6% w/w程度であればより好ましい。
【0054】
一方、25℃での拡散値が500~999mm2/10分の油相成分は、エチルヘキシルパルミテート、エチルヘキシルステアレート、ココ-カプリレート/カプレート、ジエチルヘキシルシクロヘキサン、セテアリルイソノナノエート、デシルオレエート、オクチルドデカノール、ヘキシルデカノール、セテアリルエチルヘキサノエート、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド、ココグリセリドおよびプロピレングリコールジカプリレート/ジカプレートであってもよい。
【0055】
低拡散値を有する油相成分はアブラヤシ油(elaeis guineensis Oil)、チャボトケイソウ種子油(Passiflora Incarnata Seed Oil)、ヒマワリ種子油、C12-15アルキルベンゾエート、ポリオキシプロピレン15ステアリルエーテル、13-ドコセン酸、9-オクタデセニルエステル、ヘキシルデシルステアレートおよびトリイソステアリンの中から選択できるが、これらに限定されるものではない。アブラヤシ油(CAS 8002-75-3)としてはGustav Heess GmbH社の商標Palm Oil、チャボトケイソウ種子油(CAS 97676-26-1、72968-47-9)としてはBASF社の商標Cegesoft(登録商標)PFO、ヒマワリ種子油(CAS 68956-68-3)としてはCREMER OLEO社の商標Cremerlin(登録商標)PURA、C12-15アルキルベンゾエート(CAS 68411-27-8)としては安息香酸エステルとC12-15アルコールとしてInnospec Performance Chemicals社の商標Finsolv(登録商標)TNやFinsolv(登録商標)TN-O、ポリオキシプロピレン15ステアリルエーテル(CAS 25231-21-4)やPPG-15ステアリルエーテルとしてはKolb社の商標Sympatens-ASP/100やSympatens-ASP/150、13-ドコセン酸、9-オクタデセニルエステル(CAS 17673-56-2)としてはエルカ酸とオレイルアルコールエステルとしてEvonik Industries AG Personal Care社の商標TEGOSOFT(登録商標)OER、ヘキシルデシルステアレート(CAS 101227-09-2)としてはBASF社の商標Eutanol(登録商標)G 16Sを用いることができる。
【0056】
本発明において、低拡散値を有する油相成分は選択的であるため無くてもよい。一方、低拡散値を有する油相成分の量は、W/Oマイクロエマルションの総重量の0.1~10% w/w程度であるが、0.2~8% w/wが好ましく、0.5~5% w/w程度であればより好ましい。
【0057】
一方、低拡散値を有する油相成分は、アブラヤシ油(elaeis guineensis Oil)、チャボトケイソウ種子油(Passiflora Incarnata Seed Oil)、ヒマワリ種子油、C12-15アルキルベンゾエート、ポリオキシプロピレン 15 ステアリルエーテル、13-ドコセン酸、9-オクタデセニルエステル、ヘキシルデシルステアレートおよびトリイソステアリンの中から選択される。
【0058】
本発明によれば、中間拡散値と低拡散値を有する油相成分の量は、マイクロエマルションの総重量の15% w/wを越えず、1~15% w/wが好ましく、2~13% w/wがより好ましく、3~10% w/wが最も好ましい。
【0059】
一般に、植物性オイルは低拡散値を有する。植物性オイルの例としては、アフリカバオバブ種子油、アプリコット核油、スイートアーモンドオイル、アルガン油、アストロカリウムブルガレ核油、アボカドオイル、ババスオイル、ブラジルナッツノキ種子油、カラパグアイアネンシス種子油、スイカ種子油、綿実油、アラビカコーヒーノキ種子油、ボラージオイル、落花生油、月見草オイル、ザクロ種子油、ヒマシ種子油、ローズヒップ種子油、ヘンプオイル、ヘーゼルナッツオイル、ホホバオイル、ココナッツオイル、亜麻仁油、マカダミアナッツオイル、トウモロコシ胚芽油、オオミテングヤシ種子油、アーモンドオイル、MCT-オイル、オリーブオイル、パリナリ・クラテリフォリア種子油、パーム核油、パーム油、パラフィン油、桃仁油、シベリアマツ種子油、ピスタチオ油、カボチャ種子油、ロサ・ルビギノーサ種子油、ヒマワリ油、米油、カカオシードバター、モンゴンゴ核油、ゴマ油、ツルマメ油、マルーラ種子油、菜種油、米胚芽油、ヒマシ油、サフラワー油、ゴマ油、大豆油、ヒマワリ油、グレープシードオイル、クルミ油、小麦胚芽油、ハマナツメモドキ種子油などが挙げられる。
【0060】
ワックスは様々な等級の疎水性有機物の総称であって、その分子は長い炭素鎖を有し、低温でソフトな固体であるが、25~40℃以上の温度で液体に溶ける物質である。ワックスは、植物と動物から生成され、鉱物や合成物であってもよい。植物性ワックスの例としてはフサアカシア花ロウ、ホホバ種子ロウ、ヒマワリ種子ロウ、キャンデリラロウ、コメヌカロウが挙げられ、動物性ワックスとしては蜜蝋やラノリンが挙げられる。ワックスの化学的組成は、生物と種は勿論、地域に応じて異なりうる。鉱物性ワックスの一例であるモンタン蝋は、石炭と石油からできたワックスから得られる化石化されたワックスである。このようなワックスを化学的に合成ワックスに改質または合成することができる。本発明のW/Oマイクロエマルションは、このようなワックスを含めて油相に溶解されることができる。本発明においては、ワックスは低拡散値を有するものと見なされる。
【0061】
また、25℃での拡散値が500mm2/10分未満の油相成分が植物性オイルや植物性ワックスであってもよい。植物性オイルやワックスの使用はスキンケア性質を大幅に向上させる。
【0062】
20℃での油相成分の粘度は、超高拡散値の場合は1~5mPasであり、高拡散値の場合は4~10mPasであり、中間拡散値の場合は10~65mPasであり、低拡散値の場合は30~100mPasである。
【0063】
本発明のマイクロエマルションは乳化剤を含有する。
【0064】
乳化剤が親水性や親油性である程度はHLB(hydrophilic-lipophilic balance)値に応じて区分され、グリフィン方法によれば、HLB=20*[親水性部分の分子量]/[全体分子量]で計算され、その結果は0~20である。HLB値は一般に特定の適用例に最適の乳化剤を選択するのに用いられ、3~8のHLB値はW/O乳化剤に適し、8~15のHLB値はO/W乳化剤に適する。HLB値が8~15のW/O乳化剤を選択する方が良い。
【0065】
PIT(Phase Inversion Temperature)方法により乳化剤を選択するのが有利である。このために、油相と水相の部分を同一に乳化剤の5%で添加する。マイクロエマルションのPIT温度において、乳化剤の親水性と親油性の傾向が均衡をなす。40~90℃領域でPITを出す乳化剤は一般にO/W乳化に適する。5~35℃領域でPITを出す乳化剤は一般的W/O乳化に適する。PIT値が5~35℃のW/O乳化剤を選択する方が良い。
【0066】
W/Oマイクロエマルションシステムにおいて多くの物質が乳化剤の役割をすることができ、例えば、酸化エチレンのブロック共重合体、酸化プロピレンのブロック共重合体、シリコーン界面活性剤(シリコーンバックボーンを含有した表面活性剤)、ジェミニ型界面活性剤、ポリソルベート、ソルビタンの脂肪酸エステル、ソルビタンのオキシエチレン化脂肪エステル、エトキシル化脂肪エーテル、エトキシル化脂肪エステル、糖の脂肪酸エステル、糖の脂肪アルキルエーテル、グリセロールの脂肪酸エステル、ポリグリセロールの脂肪酸エステルなどが挙げられる。乳化剤は、アニオン、カチオンまたは非イオン性である。
【0067】
本発明の好ましい乳化剤は、以下の構造式のグリセリル脂肪酸エステルに属する。
【0068】
【0069】
ここで、Rは脂肪酸や水素の残基であり、nは1~20の間の数である。このようなエステルは、非イオン性であり、肌を刺激する可能性が低い。一般に、Rは全ての脂肪酸の残基であって、脂肪酸の例としては酢酸(C2)、アジピン酸(C6)、アラキジン酸(C22)、アラキドン酸(C20)、ミツロウ脂肪酸、ベヘン酸(C22)、カプリン酸(C10)、カプリル酸(C8)、クエン酸(C3)、デカン酸(C10)、エイコサン二酸(C20)、エルカ酸(C22)、エチルヘキサン酸(C8)、ヘプタン酸(C7)、ヒドロキシステアリン酸(C18)、イソパルミチン酸(C16)、イソステアリン酸(C18)、イソトリデカン酸、乳酸(C8)、ラノリン酸、ラウリン酸(C12)、リノール酸(C18)、リノレン酸(C18)、ミリスチン酸(C14)、オレイン酸(C18)、パルミチン酸(C16)、パルミトレイン酸(C16)、ペンタデカン酸(C15)、リシノール酸(C18)、ステアリン酸(C18)、ウンデシレン酸(C11)などが挙げられる。脂肪酸は、本明細書に提示された植物性オイルやワックスのような各種のオイルとワックスから得ることができる。
【0070】
R1とR3が水素、n=1、R2が炭素原子6~22個を有する脂肪酸残基であればモノグリセリルモノエステルであり、その例としてはグリセリンとアジピン酸のエステルであるグリセリルアジペート(26699-71-8)、グリセリンとアラキジン酸のエステルであるグリセリルアラキデート(30208-87-8、50906-68-8)、グリセリンとアラキドン酸のエステルであるグリセリルアラキドネート(CAS 129691-05-0、35474-99-8)、グリセリンとベヘン酸のエステルでありGattefosse社の商標Compritol(登録商標)888 CG ATOであるグリセリルベヘネート(CAS 6916-74-1、77538-19-3、30233-64-8)、グリセリンとココナッツ脂肪酸のエステルでありIOI Oleo GmbH社の商標IMWITOR(登録商標)928のようなグリセリルココエート(CAS 61789-05-7)、グリセリンとカプリン酸のエステルでありDr.Straetmans社の商標dermosoft(登録商標)GMCのようなグリセリルカプレート(CAS 11139-88-1,26402-22-2)、グリセリンとカプリル酸のモノエステルでありDr.Straetmans社の商標dermosoft(登録商標)GMCYのようなグリセリルカプリレート(CAS 26402-26-6)、グリセリンとエルカ酸のエステルであるグリセリルエルケート(CAS 28063-41-5)、グリセリンとヘプタン酸のエステルであるグリセリルヘプタノエート(CAS 26402-24-4)、グリセリンとヒドロキシステアリン酸のエステルでありVertellus Performance Material社の商標Naturechem(登録商標)GMHSのようなグリセリルヒドロキシステアレート(CAS 1323-42-8)、グリセリンとイソステアリン酸のエステルでありCroda社の商標CithrolTM GMIS 40のようなグリセリルイソステアレート(CAS 61332-02-3、66085-00-5)、グリセリンとラウリン酸のエステルでありBASF社の商標Monomuls(登録商標)90-L 12のようなグリセリルラウレート(142-18-7、27215-38-9、37318-95-9)、グリセリンとリノール酸のエステルであるグリセリルリノレート(linoleate)(2277-28-3、26545-74-4、37348-65-5)、グリセリンとリノレン酸のエステルであるグリセリルリノレネート(linolenate)(18465-99-1,56554-41-7)、CLR Chemisches Laboratorium Dr.Kurt Richter GmbH社の商標Vitamin F Glyceryl Ester CLR混合物から得ることができるグリセリルリノレート(linoleate)とグリセリルリノレネート(linolenate)、グリセリンとミリスチン酸のエステルであるグリセリルミリステート(CAS 27214-38-6、589-68-4)、グリセリンとオレイン酸のエステルでありEvonik Industries AG Personal Care社の商標TEGIN(登録商標)O Vのようなグリセリルオレエート(CAS 111-03-5、161403-66-3、25496-72-4、37220-82-9、68424-61-3)、グリセリンとパルミチン酸のエステルであるグリセリルパルミテート(CAS 26657-96-5、542-44-9)、グリセリンとステアリン酸のエステルでありBASF社の商標Cutina(登録商標)GMS Vのようなグリセリルステアレート(CAS 11099-07-3、123-94-4、31566-31-1、85666-92-8)、グリセリンとウンデシレン酸のエステルであるグリセリルウンデシレネート(CAS 123759-97-7、62285-15-8)が挙げられる。
【0071】
R2の他にR1やR3が脂肪酸の残基でありn=1であればモノグリセリルジエステルであり、その例としてはグリセリルセスキオレエート、グリセリルパルミテートラクテート、グリセリルステアレート/アセテート、グリセリルステアレートシトレート、グリセリルステアレートラクテート、グリセリルステアレートサクシネートが挙げられる。
【0072】
R1~3の全てが脂肪酸の残基でありn=1であればモノグリセリルトリエステルであり、その例としてはグリセリルラウレートジアセテート、グリセリルステアレートジアセテート、グリセリルトリベヘネート/イソステアレート/エイコサンジオエート(eicosandioate)、グリセリルトリステアレートが挙げられる。グリセリルトリベヘネート/イソステアレート/エイコサンジオエート(eicosandioate)(CAS 922708-02-9)の例としてはIkeda社の商標NOMCORT(登録商標)SGが挙げられる。
【0073】
R1とR3が水素でありnが2~20でありR3が脂肪酸残基として炭素原子を6~22個を有すれば、ポリグリセリルモノエステルである。ポリグリセリルエステルを命名する時にはポリグリセリル部分の繰り返し単位の数[-n]を[ポリグリセリル]の後ろに付け、その例としてはポリグリセリル-3、ポリグリセリル-4、ポリグリセリル-6などが挙げられる。ポリグリセリルエステルにおいて、nは繰り返し単位の平均数を示す。好ましい脂肪酸を有するポリグリセリルモノエステルの例は下記のとおりである:ポリグリセリル-2カプレート(CAS 156153-06-9、Dr.Straetmans社のdermosoft(登録商標)DGMC)、ポリグリセリル-3カプレート(CAS 133654-02-1,51033-30-8、74504-65-7、Evonik Industries AG Personal Care社のTEGOSOFT(登録商標)PC31)、ポリグリセリル-4カプレート(CAS 160391-93-5、74504-65-7、Evonik Industries AG Personal Care社のTEGOSOFT(登録商標)PC41)。n=2,3、4、5または10のポリカプリル酸ポリグリセリルモノエステルの例としてはポリグリセリル-3カプリレート(CAS 108777-93-1、Evonik Industries AG Personal Care社のTEGO(登録商標)Cosmo P 813)、ポリグリセリル-10カプリレート(CAS 51033-41-1)が挙げられる。n=2,3、4、5、6または10のイソステアリン酸ポリグリセリルモノエステルの例としてはポリグリセリル-2イソステアレート(CAS 73296-86-3、81752-33-2)、ポリグリセリル-3イソステアレート(CAS 127512-63-4)、ポリグリセリル-4イソステアレート(CAS 63705-03-3、91824-88-3、Evonik Industries AG Personal Care社のISOLAN(登録商標)GI 34)、ポリグリセリル-6イソステアレート(CAS 126928-07-2)、ポリグリセリル-10イソステアレート(CAS 133738-23-5)が挙げられる。n=2,3、4、5、6または10のラウリン酸ポリグリセリルモノエステルの例としてはポリグリセリル-2ラウレート(CAS 96499-68-2)、ポリグリセリル-3ラウレート(CAS 51033-31-9)、ポリグリセリル-4ラウレート(CAS 74504-64-6、75798-42-4、Evonik Industries AG Personal Care社のTEGO(登録商標)Care PL 4)、ポリグリセリル-5ラウレート(CAS 128738-83-0、Dr.Straetmans社のdermofeel(登録商標)G 5 L)、ポリグリセリル-6ラウレート(CAS 51033-38-6、KCI社のPGLLA 106KC)、ポリグリセリル-10ラウレート(CAS 34406-66-1、Dr.Straetmans社のdermofeel(登録商標)G 10 L)が挙げられる。n=2,3、4、5、6、8または10のオレイン酸ポリグリセリルモノエステルの例としてはポリグリセリル-2オレエート(49553-76-6)、ポリグリセリル-3オレエート(33940-98-6、Evonik Industries AG Personal Care社のISOLAN(登録商標)GO 33)、ポリグリセリル-4オレエート(71012-10-7)、ポリグリセリル-5オレエート(86529-98-8、Dr.Straetmans社のdermofeel(登録商標)G 5 O)、ポリグリセリル-6オレエート(79665-92-2)、ポリグリセリル-8オレエート(75719-56-1)、ポリグリセリル-10オレエート(79665-93-3、Lonza社のPolyaldo(登録商標)10-1-O KFG)が挙げられる。ポリグリセリルオレエートエステルをCASナンバー9007-48-1と称したりもする。n=2,3、4、5、6、8または10のステアリン酸ポリグリセリルモノエステルの例としてはポリグリセリル-2ステアレート(CAS 12694-22-3、Clariant International社のHostacerin(登録商標)DGMS)、ポリグリセリル-3ステアレート(26855-43-6、27321-72-8、Dr.Straetmans社のdermofeel(登録商標)PS)、ポリグリセリル-4ステアレート(CAS 26855-44-7、68004-11-5)、ポリグリセリル-6ステアレート(CAS 95461-65-7)、ポリグリセリル-8ステアレート(CAS 75719-57-2)、ポリグリセリル-10ステアレート(CAS 79777-30-3)が挙げられる。
【0074】
ポリグリセリルジエステルの場合、R3は水素であり、nは2~20であり、R1とR2は脂肪酸の残基であって炭素原子は6~22個を有することが好ましい。その例としては、ポリグリセリル-3ジカプレート、ポリグリセリル-6ジカプレート、ポリグリセリル-5ジカプレート(108777-93-1)、ポリグリセリル-3ジココエート、ポリグリセリル-10ジココエート、ポリグリセリル-10ジデカノエート(182015-59-4)、ポリグリセリル-2ジイソステアレート(63705-03-3、67938-21-0、ALZO International社のDermol DGDIS)、ポリグリセリル-3ジイソステアレート(63705-03-3、66082-42-6、BASF社のLameform(登録商標)TGI)、ポリグリセリル-6ジイソステアレート、ポリグリセリル-10ジイソステアレート(102033-55-6、63705-03-3)、ポリグリセリル-15ジイソステアレート、ポリグリセリル-4ジラウレート、ポリグリセリル-5ジラウレート、ポリグリセリル-10ジラウレート、ポリグリセリル-10ジミリステート、ポリグリセリル-2ジオレエート(60219-68-3、67965-56-4)、ポリグリセリル-3ジオレエート(79665-94-49、Gattefosse社のPlurol(登録商標)Oleique CC 497 CG)、ポリグリセリル-5ジオレエート(Dr.Straetmans社のdermofeel(登録商標)G5DO)、ポリグリセリル-6ジオレエート(76009-37-5)、ポリグリセリル-10ジオレエート(33940-99-7、Ikeda社のSALACOS(登録商標)PG-218)、ポリグリセリル-6ジパルミテート、ポリグリセリル-10ジパルミテート(Lonza社のPolyaldo(登録商標)10-2-P)、ポリグリセリル-2ジステアレート(9009-32-9)、ポリグリセリル-4ジステアレート、ポリグリセリル-6ジステアレート(34424-97-0、Gattefosse社のPlurol(登録商標)Stearique WL 1009)、ポリグリセリル-10ジステアレート(12764-60-2)が挙げられる。
【0075】
ポリグリセリルマルチエステルの場合、nが2~20であり、R1~3の全てが脂肪酸の残基であって炭素原子6~12個を有するものであるが、R1~3の全てが脂肪酸であるかまたは一部が水素であってもよい。後者の場合、分子当たりの脂肪酸残基の総数は、R(R1+R2+R3)の総数より小さい。ポリグリセリルマルチエステルの例としてはポリグリセリル-10デカエチルヘキサノエート、ポリグリセリル-10デカヒドロキシステアレート、ポリグリセリル-10デカイソステアレート、ポリグリセリル-10デカリノレート(decalinoleate)(CAS 68900-96-9)、ポリグリセリル-10デカマカダミエート(decamacadamiate)、ポリグリセリル-10デカオレエート(CAS 11094-60-3、Lonza社のPolyldoTM DGDO KFG)、ポリグリセリル-10デカステアレート(CAS 39529-26-5)、ポリグリセリル-10ドデカベヘネート、ポリグリセリル-10ドデカカプレート、ポリグリセリル-10ドデカカプリレート、ポリグリセリル-6ヘプタカプリレート、ポリグリセリル-20ヘプタカプリレート、ポリグリセリル-10ヘプタヒドロキシステアレート(CAS 103175-09-3)、ポリグリセリル-10ヘプタステアレート(CAS 99126-54-2)、ポリグリセリル-20ヘキサカプリレート、ポリグリセリル-10ヘキサエルケート(hexaerucate)、ポリグリセリル-10ヘキサイソステアレート、ポリグリセリル-6ヘキサオレエート(CAS 95482-05-6)、ポリグリセリル-10ヘキサオレエート(CAS 65573-03-79、Phoenix Chemical社のPELEMOL(登録商標)P-1263)、ポリグリセリル-5ヘキサステアレート、ポリグリセリル-6ヘキサステアレート、ポリグリセリル-10ノナエルケート(CAS 155808-79-0)、ポリグリセリル-10ノナイソステアレート、ポリグリセリル-6オクタカプリレート(Nisshin Oillio Group社のSALACOS HG-8)、ポリグリセリル-20オクタイソノナノエート、ポリグリセリル-6オクタステアレート、ポリグリセリル-6ペンタカプリレート、ポリグリセリル-10ペンタカプリレート、ポリグリセリル-10ペンタヒドロキシステアレート、ポリグリセリル-10ペンタイソステアレート、ポリグリセリル-10ペンタラウレート、ポリグリセリル-10ペンタリノレート(pentalinoleate)、ポリグリセリル-5ペンタミリステート、ポリグリセリル-4ペンタオレエート(CAS 103230-29-1)、ポリグリセリル-6ペンタオレエート(CAS 104934-17-0)、ポリグリセリル-10ペンタオレエート(CAS 86637-84-5)、ポリグリセリル-3ペンタオリベート(pentaolivate)、ポリグリセリル-4ペンタパルミテート、ポリグリセリル-3ペンタリシノレート(pentaricinoleate)、ポリグリセリル-6ペンタリシノレート、ポリグリセリル-10ペンタリシノレート、ポリグリセリル-4ペンタステアレート(CAS 99570-00-0)、ポリグリセリル-6ペンタステアレート(CAS 99734-30-2)、ポリグリセリル-10ペンタステアレート(CAS 95461-64-6)、ポリグリセリル-6セスキカプリレート(CAS 108777-93-1、946492-22-4、946492-23-5)、ポリグリセリル-2セスキイソステアレート(Clariant International社のHostacerin(登録商標)DGI)、ポリグリセリル-6セスキイソステアレート、ポリグリセリル-2セスキオレエート(Dr.Straetmans社のdermofeel(登録商標)GO soft)、ポリグリセリル-2セスキステアレート(CAS 9009-32-9)、ポリグリセリル-6セスキステアレート(CAS 112939-69-2)、ポリグリセリル-10セスキステアレート、ポリグリセリル-6テトラベヘネート、ポリグリセリル-6テトラカプリレート、ポリグリセリル-10テトラデカンジオエート(tetradecanedioate)、ポリグリセリル-2テトライソステアレート(CAS 121440-30-0)、ポリグリセリル-10テトララウレート、ポリグリセリル-2テトラオレエート、ポリグリセリル-10テトラオレエート(CAS 34424-98-1)、ポリグリセリル-2テトラステアレート(CAS 72347-89-8)、ポリグリセリル-5トリベヘネート、ポリグリセリル-6トリカプリレート、ポリグリセリル-10トリココエート、ポリグリセリル-10トリデカノエート(CAS 217782-56-4)、ポリグリセリル-10トリエルケート、ポリグリセリル-2トリイソステアレート(CAS 120486-24-0)、ポリグリセリル-3トリイソステアレート(CAS 66082-43-7)、ポリグリセリル-5トリイソステアレート、ポリグリセリル-10トリイソステアレート、ポリグリセリル-10トリラウレート(KCI社のPGLLA 310KC)、ポリグリセリル-5トリミリステート、ポリグリセリル-5トリオレエート、ポリグリセリル-10トリオレエート(CAS 102051-00-3)、ポリグリセリル-3トリオリベート、ポリグリセリル-4トリステアレート(CAS 99734-29-9)、ポリグリセリル-5トリステアレート(CAS 9009-32-9)が挙げられる。
【0076】
2つ以上のグリセリルやポリグリセリルエステルの混合物を用いることができる。ある場合には、グリセリルやポリグリセリルエステルを混合物としてのみ得ることができるが、これはグリセリルやポリグリセリルエステル化そのものに用いられる特定の脂肪酸を混合物としてのみ得ることができるためである。グリセリルココエートの場合、ココナッツオイルの脂肪酸がカプリル酸、デカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、オレイン酸およびその他の脂肪酸の混合物であることができるためである。他の場合には、混合物が意図的である。
【0077】
本発明によれば、乳化剤の量は、W/Oマイクロエマルションの総重量の5~30% w/w程度であるが、7~25% w/wまたは9~22% w/wであってもよい。
【0078】
グリセロールの脂肪酸エステルやポリグリセロールの脂肪酸エステルがモノグリセリルモノエステル、モノグリセリルジエステル、モノグリセリルトリエステル、ポリグリセリルモノエステル、ポリグリセリルジエステルおよびポリグリセリルマルチエステルの中から選択されることもできる。
【0079】
また、本発明のW/Oマイクロエマルションが少なくとも2個の異なるグリセロールの脂肪酸エステルおよび/またはポリグリセロールの脂肪酸エステルを含むこともできる。2個の異なるグリセロールの脂肪酸エステルおよび/またはポリグリセロールの脂肪酸エステルは、例えば、与えられたW/Oマイクロエマルションシステムに最適のHLP方法やPIT方法を用いて乳化剤システムの開発を可能にする。
【0080】
また、グリセロールの脂肪酸エステルやポリグリセロールの脂肪酸エステルが5個の反復的なグリセロール部分を有するポリグリセリルモノエステル、ポリグリセリルジエステルおよびポリグリセリルマルチエステルの中から選択されることができる。5個の反復的なグリセロール部分を有するグリセロールの脂肪酸エステルやポリグリセロールの脂肪酸エステルは、優れた皮膚忍容性を有し、前述した長所を実現することができる。
【0081】
本発明のW/Oマイクロエマルションは水相を含む。水相はその全体が水からなってもよい。原則的には、水道水、軟水、イオン水、逆浸透圧により精製された水、蒸留水、二重蒸留水、薬局方に定義された水のような様々な水を用いることができる。この水は、ユーザやマイクロエマルションに悪影響を及ぼしうる、微生物を含む汚染があってはならない。この水相は、水溶性を有するかまたは水に混ぜられる物質と水の均一な混合物であってもよい。
【0082】
W/Oマイクロエマルションの水の量は良好な排出性に非常に重要であり、本発明に係る水の量はW/Oマイクロエマルションの総重量の5~20% w/w、6~15% w/wまたは7~13% w/wであってもよい。
【0083】
一方、W/Oマイクロエマルションが6~15% w/wまたは7~13% w/wの量で水を含有してもよい。
【0084】
本発明に係るW/Oマイクロエマルションの主要因子は、マイクロエマルションにおける乳化剤の量に対する水の量の比である。水相に対する乳化剤の比と同じでない水に対する乳化剤の比が特に重要であり、これは水相が水の他にも水溶性成分を有することができるためである。本発明によれば、マイクロエマルションの総重量に対して水と乳化剤の量の重量比は4:1~2:3、好ましくは2:1~1:1.9、より好ましくは1:1~1:1.8、最も好ましくは1:1.2~1:1.6であってもよい。
【0085】
本発明のW/Oマイクロエマルションは、補助界面活性剤として少なくとも一つのポリオールを含有することができる。ポリオールは、多数の水酸基(-OH官能基)を有するアルコールである。2個の水酸基を有するポリオールをジオール、3個の水酸基を有するポリオールをトリオールという。好適なポリオール補助界面活性剤は、2~6炭素原子の線状/分枝炭素バックボーンを有するポリオール、一次水酸基、二次水酸基、または一次水酸基と二次水酸基の混合を有するポリオールの中から選択されることができる。
【0086】
好適なジオール補助界面活性剤の例としては、1,10-デカンジオール、1,2-ブタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,4-ブタンジオール(CAS 110-63-4)、1,5-ペンタンジオール(CAS 111-29-5)、2,3-ブタンジオール(CAS 513-85-9)、ヘキサンジオール(CAS 629-11-8)、エチルヘキサンジオール(94-96-2)、イソペンチルジオール、メチルプロパンジオール、プロパンジオールなどが挙げられる。1,2-ヘキサンジオール(CAS 6920-22-5)としてはMinasolve社のHexiol、イソペンチルジオール(CAS 50468-22-9、2568-33-4)としてはKuraray Europe社のISOPENTYLDIOL、メチルプロパンジオール(CAS 2163-42-0)としてはSEPPIC社のDUB DIOL、プロパンジオール(504-63-2、26264-14-2)としてはActivON社のActivonol-3が挙げられる。
【0087】
2個の水酸基が異なる炭素原子に付着されたジオールをグリコールという。グリコールというジオール補助界面活性剤の例としては、ブチレングリコール(ブチレングリコールは立体異性体、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオールまたは2,3-ブタンジオールの全てに適用される用語である)、ジプロピレングリコール(110-98-5、25265-71-8)、グリコール(107-21-1)、ヘキシレングリコール、ネオペンチルグリコール(126-30-7)、ペンチレングリコール、プロピレングリコールなどが挙げられる。
【0088】
ブチレングリコールとしてはBio-Botanica社のCentella Herb(Gotu Kola)Floraceutical(登録商標)、ヘキシレングリコール(CAS 107-41-5)としてはSolvay Novecare社のHexylene Glycol、ペンチレングリコール(5343-92-0)としてはActivON社のActivonol-5が挙げられる。トリオール補助界面活性剤の例としては、グリセロール(グリセリン)や1,2,6-ヘキサントリオール(CAS 106-69-4)が挙げられる。
【0089】
3個以上の水酸基を有するポリオールとしては、エリスリトール(CAS 7541-59-5、149-32-6)、トレイトール(CAS 2418-52-2、7493-90-5)、キシリトール(CAS 87-99-0)、マンニトール(CAS 69-65-8)、ソルビトール(CAS 50-70-4)などが挙げられる。エリスリトールとしては、Jungbunzlauer International社のERYLITE(登録商標)が挙げられる。
【0090】
W/Oマイクロエマルションが補助界面活性剤やプロピレングリコールを含有することができる。グリセリンとプロピレングリコールの混合物を用いることもできる。グリセリン(56-81-5)としてはDr.Straetmans社のdermorganics(登録商標) Glycerin、プロピレングリコールやプロパンジオール(CAS 57-55-6)としてはDupont Tate & Lyle BioProducts社のZemea(登録商標) USP-FCC Propanediolが挙げられる。補助界面活性剤は、活性化合物や保存剤のようにW/Oマイクロエマルションに化粧品成分の添加を補助するのに適切である。本発明のW/Oマイクロエマルションは、0.2~15% w/w、0.5~12% w/wまたは1~10% w/wの補助界面活性剤を含有することができる。
【0091】
W/Oマイクロエマルションは共溶媒として短鎖アルコールを選択的に含むことができる。共溶媒も活性化合物や保存剤のようにW/Oマイクロエマルションに化粧品成分の添加を補助するのに適切である。短鎖アルコール共溶媒は、エタノール、プロパノール(n-プロパノール)、2-プロパノール(イソプロパノール)、ヘキサノールなどのようなC2~C6分枝鎖/直鎖アルコールの中から選択されることができる。共溶媒としては、エタノール、2-プロパノールおよびn-プロパノールが好ましい。2以上の共溶媒の混合物やエタノールと2-プロパノールの混合物も用いることができる。一方、W/Oマイクロエマルションは、0.1~10% w/w、0.5~7% w/wまたは0.8~5% w/wの共溶媒を含有することができる。
【0092】
本発明のW/Oマイクロエマルションは、油相成分の量と拡散値が所定の範囲内にあり、水の量が上限を越えない限り、様々なHLB(hydrophilic-lipophilic balance)値を有する追加成分を添加する時に高度の製剤安定性を示す。このようなマイクロエマルションは、次のスキンケア成分を選択的に含有する:軟化剤、密閉剤、保湿剤、脂質層エンハンサーおよびその他のスキンケア成分。軟化剤は、肌に塗った後の肌を柔らかくする化粧品物質である。軟化剤は、以下の化学構造の一部を有する線状の飽和炭化水素バックボーンからなる:分枝鎖、飽和炭化水素リング、C=C、C-O、C=OおよびO-H結合。密閉剤は、肌の表面での水分損失を減らすために肌にフィルムを作るスキンケア物質である。密閉剤は、中長期的に肌の水分を保持し、長期的に肯定的な感じを保持するのに役に立つ。密閉剤の例としてはプロピレングリコール、ジメチコンのようなシリコン化合物、動植物のスクアラン、ラノリン、ミネラルオイル、アラントイン、ココアバター、ワックスなどが挙げられる。湿潤剤は水分子と水素結合を形成できる親水性基を有し、その例としては-NH3(アミン基)、-COOH基(カルボキシル基)、-OH(ヒドロキシル基)が挙げられる。湿潤剤として知られたものの例としては、グリセリン、ソルビトール、ブチレン、糖、糖誘導体、タンパク質、ペプチド、オリゴペプチド、アミノ酸、アミノ酸誘導体などが挙げられる。
【0093】
本発明に係るW/Oマイクロエマルションは、保存剤、抗菌剤、殺菌剤、発泡防止剤、染料、着色剤、泡安定剤、無機塩、シリコーン誘導体、緩衝剤、pH調節剤、ガス推進剤などの補助物質を選択的に含有することができ、このような物質は排出性に悪影響を与えなければよい。
【0094】
また、本発明に係るW/Oマイクロエマルションは、軟化剤、密閉剤、保湿剤、脂質層エンハンサー、化粧品補助成分および化粧品活性成分のうち少なくとも一つを含有することができる。
【0095】
本発明に係るマイクロエマルションは、アンチエイジング、アンチセルライト、にきび防止剤、抗酒さ剤(anti-rosacea)、皮膚炎剤などの活性成分を選択的に含有することができる。W/Oマイクロエマルションは、植物抽出物を含有してもよく、植物物質の水溶性抽出物や水分解抽出物を含有してもよい。
【0096】
本発明のW/Oマイクロエマルションは、少なくとも一つの水溶性植物抽出物を含有することができる。
【0097】
水溶性植物抽出物の量は1~20%、3~18%または5~15%である。
【0098】
本発明のマイクロエマルションの製剤の成分の選択は、W/Oマイクロエマルションの美的で感覚的な因子を最適化して行われることが好ましい。肌にねばねばしたり油っぽい感じを与えない成分を選択し、ねばねばしたり油っぽい感じの成分の量は肌に塗った後にこのような感じが無くなるものに限定される。
【0099】
本発明に係る製剤は、50℃で8ヶ月以上、室温で12ヶ月以上安定する。
【0100】
このマイクロエマルションは透明なものが良く、透明度はBeckman Coulter社のDU 530 Life Science UV/Vis Spectrophotometerのような分光計を用いて測定することができる。測定のために2mlのマイクロエマルションを光路1cmのキュベットに入れ、600nmにおいて透過率を測定する。十分に透明なW/Oマイクロエマルションの透過率は85%以上であるが、90%を越えることが好ましく、95%を越えると理想的である。
【0101】
本発明のマイクロエマルションは、平均350nm未満の液滴を有する。マイクロエマルション内の水相液滴の平均大きさを光散乱法により測定することができる。光散乱の測定のために、ALV-mbH社のALV-NIBS High Performance Particle Sizerのような光散乱分光計を用いることができる。液滴の平均大きさは350nm未満であるが、250nmまたは150nmであってもよい。
【0102】
本発明のW/Oマイクロエマルションを製造するためには、先ず、全ての油相成分を混ぜる。別の容器において補助界面活性剤と共溶媒に水を混合する。乳化剤が顕著に親水性であれば水相に入れ、乳化剤が顕著に親油性であれば油相に入れる。しかし、本発明のマイクロエマルションに特に好適な乳化剤は、水相と油相の両方によく溶解されず、水相/油相の接触点に蓄積される。この場合、各相の内部で乳化剤のサスペンションが生じなければならない。乳化剤の分散を助けるために、各相を80℃まで加熱することができる。乳化剤が十分に分散されると、油相と水相を結合し完全に混合してW/Oマイクロエマルションを作る。その次に、このマイクロエマルションを40℃下に冷却した後に他の成分と混ぜる。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【
図1】マイクロエマルションの排出性テスト機器の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0104】
図1によれば、このテスト機器のポンプ1は、ポンプハウジング2、ポンピング機構3、ポンプ入口4およびポンプ出口5を有する。ポンピング機構3は、分当たりに30μl~20mlの流量でポンピングし、入口4と出口5に連結されて、電気エネルギーなどを用いて入口4から出口5側に液体を一方向ポンピング(強制移送)する。ポンプハウジング2内にはポンピング機構3の速度を調節し一定に維持するようにプログラムされるコントローラ6があり、出口を通過する流量を調節し維持することができる。特に、コントローラ6は、定められた値の±2%に流量を維持することができる。引き込み管7は、一端部はポンプ入口4に連結され、他端部は液体容器11内に位置する自由端部である。引き込み管7は、液体容器11からテストしようとするマイクロエマルジョン液体12を吸入し、ポンプ入口4を通してポンピング機構3にこの液体を送る役割をする。排出管8は、一端部はポンプ出口5に連結され、他端部はノズルパイプ9に連結される。排出管8は、ポンピング機構3から出口5を通してノズルパイプ9に液体を送る役割をする。引き込み管7、排出管8、ポンプ入口4と出口5の内径は1.5~9.0mmである。ノズルパイプ9は、一端部は排出管8に連結され、他端部は自由端部としてノズルパイプオリフィス10を形成する。ノズルパイプ9は、ポリエチレンから形成され、15mm程度の長さLを有し、円形の内部チャネルを有する。ノズルパイプ9の壁厚さは0.5~3mmであり、円形内部チャネルの直径である内径Dはノズルパイプの長さLにかけて一定に2mmであり、オリフィス10はノズルパイプと同じ内径Dを有する。テスト中に、ノズルパイプオリフィス10から分離された液滴14がノズルパイプの長さに沿ってオリフィス10の中心を通過する仮想線に沿って落ちるようにノズルパイプ9は垂直に位置する。引き込み管7、排出管8およびノズルパイプ9は、そこを通過する液体内の泡をコントロールするように透明な材質からなることが好ましい。ポンプ1として好適なものとしては、EW-73150-50カタログナンバーでCole-Palmer社が販売する1/4”ステンレスヘッド、0.02~40ml/分、1500psiのEldex(登録商標) Optos Piston Metering Pumpがある。Cole-Palmer社は、引き込み管7と排出管8に好適な管も販売している。DENE3550204カタログナンバーでVWR international社が販売する内径D2.00mm、外径4.00mm、壁厚さ1.00mmのDEUTSCH & NEUMANN社が製造したポリウレタンチューブ15mmピースを切断してノズルパイプ9を作ることができる。
【0105】
温度22±2℃、大気圧980~1040hPaの室内条件でテストをする。テスト機器の全ての部分とテスト対象のマイクロエマルジョンはテスト前に大気温度に合わさなければならず、作動中にマイクロエマルジョンの温度が20~24℃の範囲に維持されるように注意しなければならない。テストのために、テスト対象のマイクロエマルションをこの温度で液体容器11に満たし、引き込み管7の自由端部はテスト期間中にマイクロエマルションに浸されているようにする。次に、マイクロエマルションを液体容器に注ぐ間液体に閉じ込められた全ての気泡が表面に浮び上がってこなくなるまで、テスト対象のマイクロエマルション12を液体容器内に置いておく。次に、引き込み管7、ポンピング機構3、排出管8およびノズルパイプ9がマイクロエマルションで完全に満たされて気泡がなくなるまでポンプが作動する。ポンピング速度はコントローラ6により0.05ml/秒~3.00ml/分に設定される。ポンピングされて出てくるマイクロエマルションは、自らの結合力およびノズルパイプ材料との付着力のために、初めはノズルパイプオリフィス10から落ちずにぶらさがった液滴13の形態を保持する。しかし、続けてマイクロエマルションがノズルパイプオリフィス10から出るにつれて、ぶらさがった液滴が重力の影響で大きくなり、結合力と付着力を克服して分離された液滴14となる。したがって、ぶらさがった液滴の高さは、マイクロエマルション内部の結合力とマイクロエマルションと周辺物質間の付着力の強度の尺度となる。また、ぶらさがった液滴の挙動が液体の粘弾性の尺度となる。
【0106】
このようなテスト機器を用いて、ポンピング速度が0.05ml/秒や3.00ml/分で一定である時(時間0)から30~60秒の後にテストを始めて180秒間持続する。30~60秒間のテスト機器の事前作動は流動平衡に必要であり、流動平衡後に流動が一定になる。タイマでテスト期間をモニターする方が良い。全体テスト期間の間、オペレータはノズルにぶらさがった液滴が分離された液滴14として落ちる前のぶらさがった液滴13の高さHをモニターする。このような作業は、液滴の形成を妨害しない程度にルーラ(ruler)15をノズルパイプオリフィス9の近くに当てて行う。ぶらさがった液滴の形成過程をビデオカメラで録画し、その記録を分析して評価する方が良い。この場合、ぶらさがった液滴、ルーラおよびタイマの出力をビデオ記録と同じフレーム内で見ることができるので好ましい。
【0107】
本発明に係るW/Oマイクロエマルションの実施例について説明する。
【0108】
【0109】
【0110】
【0111】