(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-14
(45)【発行日】2022-01-25
(54)【発明の名称】高固形分の炭化ケイ素スラリーに基づく分離膜の製造方法
(51)【国際特許分類】
B01D 71/02 20060101AFI20220118BHJP
C04B 41/87 20060101ALI20220118BHJP
C04B 35/569 20060101ALI20220118BHJP
【FI】
B01D71/02
C04B41/87 M
C04B35/569
(21)【出願番号】P 2020126515
(22)【出願日】2020-07-27
【審査請求日】2020-07-27
(31)【優先権主張番号】202010383135.6
(32)【優先日】2020-05-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】520017742
【氏名又は名称】武漢工程大学
【氏名又は名称原語表記】Wuhan Institute of Technology
【住所又は居所原語表記】No. 693, Xiongchu street, Hongshan District, Wuhan City, Hubei Province, China
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】徐 慢
(72)【発明者】
【氏名】沈 凡
(72)【発明者】
【氏名】韋 国蘇
(72)【発明者】
【氏名】季 家友
(72)【発明者】
【氏名】戴 武斌
(72)【発明者】
【氏名】陳 常連
(72)【発明者】
【氏名】朱 麗
(72)【発明者】
【氏名】王 樹林
(72)【発明者】
【氏名】石 和彬
(72)【発明者】
【氏名】薛 俊
(72)【発明者】
【氏名】曹 宏
【審査官】片山 真紀
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第105175005(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第104174298(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第103192513(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第105601830(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/22、61/00-71/82
C02F 1/44
C04B 35/56-41/91
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化ケイ素スラリーを炭化ケイ素基体上に均一に吹付け塗装し、真空乾燥した後、紫外線照射処理と高温焼成を行って分離膜を取得するステップを含み、
前記
炭化ケイ素スラリーは、混合炭化ケイ素、バインダー、分散剤、シリカ、及びポリカルボン酸塩エマルジョンを主原料として複合してなる
炭化ケイ素スラリーに基づく分離膜の製造方法
であって、
前記炭化ケイ素スラリーは、固形分が58~70voL%であり、粘度が800~1000mPa・sであり、
前記混合炭化ケイ素は、90~95:5~10の質量比に従って2種粒径の粗粒炭化ケイ素及び細粒炭化ケイ素の粉末で構成され、前記粗粒炭化ケイ素の粒度はD
50
=4~6μmであり、前記細粒炭化ケイ素の粒度はD
50
=1.5~3.5μmであり、
前記シリカの粒度はD
50
=2.2~4.5μmであり、
前記バインダーは、1:1~2の質量比に従ってポリカルボシランとポリジメチルシランを混合したものであり、
前記分散剤は、1:1~2の質量比に従ってメチルセルロースと水酸化テトラメチルアンモニウムを混合したものであり、
前記ポリカルボン酸塩エマルジョンは、粘度が2000~2500mPa.sであり、固形分が50%よりも大きく、重合性モノマーと水を主原料として、開始剤、緩衝剤、アニオン界面活性剤、及び非イオン界面活性剤の作用下で重合したものであり、
前記重合性モノマーは、酢酸ビニル、アクリル酸イソオクチル、及びアクリル酸ブチル3種を調製したものであり、各モノマーの質量比は、順に2:2:1、2:2:2、又は3:3:2であり、
前記ポリカルボン酸塩エマルジョン中の各原料の量として、重合性モノマー55~62重量部と、水38~45重量部とを含み、アニオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、開始剤、及び緩衝剤の量は、重合性モノマーの質量に対して、それぞれ0.5~1.5%、0.5~1.5%、1~2%、1~2%である、
ことを特徴とする炭化ケイ素スラリーに基づく分離膜の製造方法。
【請求項2】
前記ポリカルボン酸塩エマルジョンの製造方法として、
アニオン界面活性剤と非イオン界面活性剤を水に均一に溶解した後、重合性モノマーを添加し、160~230r/minの撹拌条件下で、均一に混合してプレエマルジョンを取得するステップと、
取得したプレエマルジョンの質量の20~25%を取り、開始剤をそれに加え、70~75℃まで加熱して保温反応させるステップと、
次に残りのプレエマルジョンを加え、保温反応を続けるステップと、
その後に、室温まで自然に冷却し、緩衝剤を加えて、得られた溶液系のpH値を8~9に調整するステップと、を含むことにより、
前記ポリカルボン酸塩エマルジョンを取得することを特徴とする請求項
1に記載の
炭化ケイ素スラリーに基づく分離膜の製造方法。
【請求項3】
前記高温焼成の処理ステップは、まず温度1400~1450℃まで加熱し、30~90min保温した後、温度2150~2230℃まで加熱し、30~120min保温した後、300℃~400℃まで冷却し、20~60min保温し、最後に、炉と共に室温まで自然に冷却することを含むことを特徴とする請求項1に記載の
炭化ケイ素スラリーに基づく分離膜の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミック膜の技術分野に属し、具体的に、高固形分の炭化ケイ素スラリーに基づく分離膜の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
経済の急速な発展に伴い、大規模な工業生産中に、大量の複雑で有害な高温の排出ガスが生成及び放出され、大量の熱エネルギーと有用な資源の浪費をもたらし、生態環境の発展に繋がらない一連の問題も引き起こしている。この問題に対応して、中国は「グリーン生産」という工業発展コンセプトを提案し、工業汚染排出量の監視を強化し、有害な汚染物質の排出を削減するために対応する技術を採用した。例えば、排出ガスの処理には、従来の湿式分離・除塵技術を採用するが、除塵効果が低く、排出量を基準値以下にすることが困難であり、同時に、水資源の浪費や形成二次汚染を引き起こし、人々の健康に大きな害をもたらす。吸入可能な粒子排出と水資源の不足等の益々深刻な問題により、膜分離技術の開発とプロモーションは、社会が新しく効率的な分離技術を緊急に必要とする時に非常に高く評価されている。現在、膜分離技術は、既に国家の先導性産業の発展を促進し、人々の生活の質を向上させる一般的な技術となっている。
【0003】
膜分離技術は、高効率、低エネルギー消費、及び環境にやさしい等の一連の利点があり、食品加工や、廃水処理、バイオエネルギー工学等の分野で広く使用されている。その中でも、無機セラミック膜は、高強度、高安定性等の特徴があり、現在、膜材料開発のホットスポットになっている。炭化ケイ素セラミック膜は、新しいタイプの無機膜材料として、高温耐性や、耐腐食性、耐熱衝撃性、強い親水性、長寿命等の優れた利点を有しているため、様々な過酷な環境条件で使用できる。現在、前駆体法や反応焼結法等、炭化ケイ素セラミック膜の製造方法は数多くあるが、前駆体法で製造された炭化ケイ素膜は、孔径が小さく、透過フラックスが低く、除塵・濾過の効果が悪く、反応焼結法は焼結助剤を添加することで低温での作製が可能であるが、ほとんどの場合二酸化ケイ素を生成し、高温条件下で二酸化ケイ素が腐食しやすく、炭化ケイ素膜の耐久性に大きな影響を与える。また、これらの2種の方法によって製造された炭化ケイ素セラミック膜には、加工しにくく、プロセスが複雑で、製造サイクル及び歩留まりが低い等の問題があり、膜技術の発展を制限している。
【0004】
焼結プロセスに加えて、成形プロセスも炭化ケイ素セラミック膜の性能に影響を与える。成形方式は問わず、グリーン体という段階を減る必要があり、現在の成形プロセスにはグラウト成形、キャスティング成形、加圧成形等があり、工業生産で広く使用されている。この段階の成形技術はほとんどコストが高く、収縮率が大きいため、高温条件下でクラックが発生しやすい。そのため、プロセスが複雑であるセラミック部品を製造する場合、成形が難しく、歩留まりが低くなる。成形過程における重要な問題の1つはスラリーの製造である。成形プロセスの開発に伴い、低粘度で高固形分のセラミックスラリーの製造は既に炭化ケイ素セラミック膜の成形プロセスに必要な条件になっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の主な目的は、従来の炭化ケイ素セラミック膜の機械的強度が不十分であり、製造プロセスが複雑である等の問題に鑑みて、高固形分の炭化ケイ素スラリーに基づく分離膜の製造方法であって、まず、固形分58~70voL%、粘度800~1000mPa・sの炭化ケイ素スラリーを製造し、次に吹付け塗装の方法により当該スラリーを担体上に均一に吹付け塗装し、所定の焼結工程を経て分離膜を製造する方法を提供することである。本発明の上記製造プロセスによれば、分離膜の成形後の焼結工程でのクラック等の問題を効果的に回避でき、炭化ケイ素の分離膜の強度、歩留まり、及び耐久性等を大幅に向上させる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の技術手段は以下の通りである。
【0007】
高固形分の炭化ケイ素スラリーに基づく分離膜の製造方法は、まず、高固形分の炭化ケイ素スラリーを炭化ケイ素基体上に均一に吹付け塗装し、次に温度50~70℃で真空乾燥した後、紫外線照射処理し、最後に高温焼成して分離膜を製造するステップを含み、前記高固形分の炭化ケイ素スラリーは、混合炭化ケイ素、バインダー、分散剤、シリカ、及びポリカルボン酸塩エマルジョンを主原料として複合してなる。
【0008】
上記の解決策において、前記バインダーは、1:1~2の質量比に従ってポリカルボシランとポリジメチルシランを混合してなる。
【0009】
上記の解決策において、前記分散剤は、1:1~2の質量比に従ってメチルセルロースと水酸化テトラメチルアンモニウムを混合してなる。
【0010】
上記の解決策において、前記混合炭化ケイ素は、90~95:5~10の質量比に従う2種粒径の粗粒炭化ケイ素粉末と細粒炭化ケイ素粉末で構成され、前記粗粒炭化ケイ素の粒度はD50=4~6μmであり、前記細粒炭化ケイ素の粒度はD50=1.5~3.5μmであり、2種粒径の炭化ケイ素粉末の純度はいずれも98wt%以上である。
【0011】
上記の解決策において、前記シリカの粒度はD50=2.2~4.5μmであり、純度は98wt%以上である。
【0012】
上記の解決策において、前記ポリカルボン酸塩エマルジョンは、粘度が2000~2500mPa.sであり、固形分が50%よりも大きく、複合ポリマーモノマーと水を主原料として、開始剤、緩衝剤、アニオン界面活性剤、及び非イオン界面活性剤の作用下で重合してなる。
【0013】
上記の解決策において、前記複合ポリマーモノマーは、酢酸ビニル、アクリル酸イソオクチル、アクリル酸ブチル、及びメタクリル酸のうちの少なくとも2種を調製してなり、複合ポリマーモノマーにおける各モノマーの質量比は、順に0~5:0~5:0~5:0~5である。
【0014】
上記の解決策において、前記ポリカルボン酸塩エマルジョン中の各原料の量として、複合ポリマーモノマー55~62重量部と、水38~45重量部とを含み、アニオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、開始剤、及び緩衝剤の量は、複合ポリマーモノマーの質量に対して、それぞれ0.5~1.5%、0.5~1.5%、1~2%、1~2%である。
【0015】
上記の解決策において、前記アニオン界面活性剤は、テトラプロピレンベンゼンスルホン酸ナトリウム及びラウリル硫酸ナトリウムのうちの少なくとも1つであってもよく、前記非イオン界面活性剤は、OP-10及びポリアクリルアミドのうちの少なくとも1つであってもよい。
【0016】
上記の解決策において、前記開始剤は、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、及び過硫酸ナトリウムのうちの少なくとも1つであってもよく、緩衝剤は、重炭酸ナトリウム及び水酸化カルシウムの溶液のうちの少なくとも1つである。
【0017】
上記の解決策において、前記ポリカルボン酸塩エマルジョンの製造方法として、アニオン界面活性剤と非イオン界面活性剤を水に均一に溶解した後、重合性モノマーを添加し、160~230r/minの撹拌条件下で、均一に混合してプレエマルジョンを取得するステップと、取得したプレエマルジョンの質量の20~25%を取り、開始剤をそれに加え、70~75℃まで加熱して保温反応させるステップと、次に残りのプレエマルジョンを加え、保温反応を続けるステップと、その後に、室温まで自然に冷却し、緩衝剤を加えて、得られた溶液系のpH値を8~9に調整し、最後に、溶液を温度50~60℃に加熱して20~30min脱水処理するステップと、を含むことにより、前記ポリカルボン酸塩エマルジョンを取得する。
【0018】
上記の解決策において、前記高固形分の炭化ケイ素スラリー中の各成分及びその質量百分率は、混合炭化ケイ素55~65%、シリカ4~10%、バインダー1~3%、分散剤1~3%、ポリマーエマルジョン28~37%である。
【0019】
上記の解決策において、前記高固形分の炭化ケイ素スラリーの製造方法として、
1)粗粒炭化ケイ素粉末と細粒炭化ケイ素粉末を比率に従って混合し、均一に撹拌して、混合炭化ケイ素を用意するステップと、
2)混合炭化ケイ素にシリカ、バインダー、及び分散剤を添加して撹拌を続け、次に、得られた混合物にポリカルボン酸塩エマルジョンを加え、均一に撹拌して均一に分散した溶液を取得した後、真空吸引処理を実行して、溶液内の気泡を除去し、最後に、粘度と固形分の要件を満たす高固形分の炭化ケイ素スラリーを取得するステップとを含む。
【0020】
上記の解決策において、前記高温焼成の処理ステップは、まず温度1400~1450℃まで加熱し、30~90min保温した後、温度2150~2230℃まで加熱し、30~120min保温した後、300℃~400℃まで冷却し、20~60min保温し、最後に、炉と共に室温まで自然に冷却することを含む。
【発明の効果】
【0021】
従来技術と比較して、本発明の有益な効果は以下の通りである。
1)本発明で得られる高固形分の炭化ケイ素スラリーは、固形分が58~70voL%にも達することができ、流動性や分散性能が良好で、様々な条件下での酸・アルカリに対する耐食性や、高温耐性、安定性が高く、酸化、還元、高塩素等の雰囲気で使用でき、その寿命を効果的に延ばし、様々な成形方式の使用を満足させ、得られた高固形分の炭化ケイ素スラリーの粘度が1000mPa.s未満であり、吹付け塗装による成膜に役立ち、その操作が便利で、制御が柔軟で、仕様、形状、及び厚さの異なる炭化ケイ素膜製品をニーズに応じて設計でき、係る製造方法は簡単で、操作しやすく、使用する機器が簡単で、経済的で環境に優しく、商業的価値が高く、工業的に生産される。
【0022】
2)本発明は、混合炭化スラリーを製造する溶媒として自作の熱可塑性ポリカルボン酸塩エマルジョンと、優れた低温柔靭性と高い衝撃強度を有し、環境にやさしいため、従来の水溶媒と比較して、本発明によるポリマーエマルジョン溶媒系は、良好な分散性と気泡均一性を備えた高固形分の炭化ケイ素懸濁スラリーの形成を効果的に促進し、紫外線の作用下で迅速に硬化するため、吹付け塗装成形がより容易になり、吹付け塗装の成形サイクルが大幅に短縮され、温度が500℃未満の場合、エマルジョンは発揮による膜の収縮やクラックがなく、膜の初期強度が高く、保管や輸送に便利で、温度が750℃に達すると、膜内部のエマルジョンが炭化し始め、高固形分の炭化ケイ素粒子が密に重なり、重なり面積が大きく、均一に分布した孔構造が形成され、強度が増やし、有効濾過面積もさらに広がり、分離膜の生産率が向上する。
【0023】
3)本発明は、粗粒と細粒の2種粒径を持つ混合炭化ケイ素原料系を採用することで、高温焼結中に、粒径の小さい炭化ケイ素粒子が昇華後に凝固し、残りの大粒子結晶の一部を成長させ、最終的に得られる分離膜に形成したSi-Cがシートネットワーク状構造に結合され、同時に、適切に導入された二酸化ケイ素は高温でポリマーエマルジョンの炭化生成物と反応して炭化ケイ素を生成し、得られた分離膜に形成したSi-Cの結合系をさらに強化し、15Mpa以内のリコイル圧力に耐え、落下しないよう保証し、様々な過酷な濾過環境に適し、使用寿命を大幅に延ばしている。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の目的、技術手段及び利点をさらに明らかにするために、以下に実施例を参照しながら、本発明をさらに詳細に説明する。ここで説明する具体的な実施例は本発明の解釈のために用いられ、本発明を限定するためのものではないことが理解されるべきである。
【0025】
以下の実施例では、採用される粗粒炭化ケイ素の粒度はD50=5.3μmであり、細粒炭化ケイ素の粒度はD50=2.2μmであり、採用されるシリカの粒度D50=3.0μmであり、純度は98wt%以上である。
【実施例1】
【0026】
高固形分の炭化ケイ素スラリーに基づく分離膜の製造方法として、具体的なステップは次の通りである。
【0027】
1)カルボキシレートエマルジョンの調製:ポリマーモノマーの質量に対して0.8%のテトラプロピレンベンゼンスルホン酸ナトリウム及びポリマーモノマーの質量に対して0.8%のOP-10を42重量部の水に均一に溶解し、次に58重量部の重合性モノマー(酢酸ビニル、アクリル酸イソオクチル、及びアクリル酸ブチルの質量比は2:2:1)を加え、160r/minの撹拌条件下で十分に混合してプレエマルジョンを取得し、
取得したプレエマルジョンの質量の25%を取り、ポリマーモノマーの質量に対して1%の過硫酸カリウムを加え、70℃まで加熱して保温反応させ、次に残りのプレエマルジョンを加え、70℃での保温反応を続け、その後に、室温まで自然に冷却し、ポリマーモノマーの質量に対して1%の重炭酸ナトリウムを加えて、得られた溶液系のpH値を8~9に調整し、最後に、溶液を55℃の温度に加熱して30min脱水処理を行えばよい。
【0028】
2)90:10の質量比に従って粗粒炭化ケイ素粉末及び細粒炭化ケイ素粉末を混合し、均一に撹拌して、混合炭化ケイ素を用意し、その後に、各原料を比率で秤量し、各原料の質量百分率は、混合炭化ケイ素63%、シリカ5%、バインダー1%(その中のポリカルボシラン及びポリジメチルシランの質量比は1:1)、分散剤1%(その中のメチルセルロース及び水酸化テトラメチルアンモニウムの質量比は1:1)、カルボキシレートエマルジョン30%である。
【0029】
3)秤量した混合炭化ケイ素にシリカ、バインダー、及び分散剤を加え均一に撹拌し、得られた混合物に秤量したカルボキシレートエマルジョンを加え、8min撹拌して均一に分散した溶液を得た後、真空吸引処理を実行して、溶液内の気泡を除去し、前記高固形分の炭化ケイ素スラリーを取得する。
【0030】
4)得られた高固形分の炭化ケイ素スラリーを炭化ケイ素基体上に均一に吹付け塗装した後、温度50℃で真空乾燥し、紫外線照射下で急速硬化させ、その後に、高温炉に移し、2℃/minで1400℃まで昇温させ、60min保温してから、500ml/minの速度でアルゴンガスを通過させて炉を20min洗浄し、次に2℃/minで温度2180℃まで昇温させ、90min保温した後、2℃/minの冷却速度で400℃まで冷却し、30min保温し、最後に炉と共に室温まで自然に冷却すると、前記炭化ケイ素の分離膜が得られる。
【0031】
本実施例で得られた炭化ケイ素スラリーの固形分は62.5voL%、粘度は825mPa.sであり、当該スラリーにより製造されたシート状の分離膜の厚さは0.8mmであり、走査型電子顕微鏡テストから、分離膜の微細孔の分布が均一で、孔径に大きな差がなく、膜の表現濾過孔径が1.6μmで、膜の有効濾過面積が0.16m2で、濾過圧力が小さく、破裂強度が18MPaに達することが示され、耐久性の良い炭化ケイ素膜を製造する目的を達成した。
【実施例2】
【0032】
また、高固形分の炭化ケイ素スラリーに基づく分離膜の製造方法として、具体的なステップは次の通りである。
【0033】
1)カルボキシレートエマルジョンの調製:ポリマーモノマーの質量に対して1.5%のテトラプロピレンベンゼンスルホン酸ナトリウム及びポリマーモノマーの質量に対して1.5%のポリアクリルアミドを40重量部の水に均一に溶解し、次に60重量部の重合性モノマー(酢酸ビニル、アクリル酸イソオクチル、及びアクリル酸ブチルの質量比は2:2:2)を加え、200r/minの撹拌条件下で十分に混合してプレエマルジョンを取得し、取得したプレエマルジョンの質量の25%を取り、ポリマーモノマーの質量に対して1.5%の過硫酸カリウムを加え、75℃まで加熱して保温反応させ、次に残りのプレエマルジョンを加え、75℃での保温反応を続け、その後に、室温まで自然に冷却し、ポリマーモノマーの質量に対して1.5%の重炭酸ナトリウムを加えて、得られた溶液系のpH値を8~9に調整し、最後に、溶液を55℃の温度に加熱して30min脱水処理を行えばよい。
【0034】
2)93:7の質量比に従って粗粒炭化ケイ素粉末及び細粒炭化ケイ素粉末を混合し、均一に撹拌して、混合炭化ケイ素を用意し、その後に、各原料を比率で秤量し、各原料の質量百分率は、混合炭化ケイ素62%、シリカ6%、バインダー1%(その中のポリカルボシラン及びポリジメチルシランの質量比は1:1.5)、分散剤1%(その中のメチルセルロース及び水酸化テトラメチルアンモニウムの質量比は1:1.5)、カルボキシレートエマルジョン30%である。
【0035】
3)秤量した混合炭化ケイ素にシリカ、バインダー、及び分散剤を加え均一に撹拌し、得られた混合物に秤量したカルボキシレートエマルジョンを加え、6min撹拌して均一に分散した溶液を得た後、真空吸引処理を実行して、溶液内の気泡を除去し、前記高固形分の炭化ケイ素スラリーを取得する。
【0036】
4)得られた高固形分の炭化ケイ素スラリーを炭化ケイ素基体上に均一に吹付け塗装した後、温度50℃で真空乾燥し、紫外線照射下で急速硬化させ、その後に、高温炉に移し、2℃/minで1420℃まで昇温させ、55min保温してから、500ml/minの速度でアルゴンガスを通過させて炉を20min洗浄し、次に2℃/minで温度2150℃まで昇温させ、100min保温した後、2℃/minの冷却速度で400℃まで冷却し、25min保温し、最後に炉と共に室温まで自然に冷却すると、前記炭化ケイ素の分離膜が得られる。
【0037】
本実施例で得られた炭化ケイ素スラリーの固形分は64.8voL%、粘度は856mPa.sであり、当該スラリーにより製造されたシート状の分離膜の厚さは0.95mmであり、走査型電子顕微鏡テストから、分離膜の微細孔の分布が均一で、孔径に大きな差がなく、膜の表現濾過孔径が1.5μmで、膜の有効濾過面積が0.17m2で、濾過圧力が小さく、破裂強度が19.2Mpaに達することが示され、耐久性の良い炭化ケイ素膜を製造する目的を達成した。
【実施例3】
【0038】
また、高固形分の炭化ケイ素スラリーに基づく分離膜の製造方法として、具体的なステップは次の通りである。
【0039】
1)カルボキシレートエマルジョンの調製:ポリマーモノマーの質量に対して1.5%のテトラプロピレンベンゼンスルホン酸ナトリウム及びラウリル硫酸ナトリウム複合物(両方は1:1.5の質量比で複合)とポリマーモノマーの質量に対して1.5%のP-10及びポリアクリルアミド複合物(両方は1:1.5の質量比で複合)を45重量部の水に均一に溶解し、次に55重量部の重合性モノマー(酢酸ビニル、アクリル酸イソオクチル、及びアクリル酸ブチルの質量比は3:3:2)を加え、200r/minの撹拌条件下で十分に混合してプレエマルジョンを取得し、取得したプレエマルジョンの質量の20%を取り、ポリマーモノマーの質量に対して2%の開始剤(過硫酸カリウム及び過硫酸アンモニウムの質量比は1:1)を加え、75℃まで加熱して保温反応させ、次に残りのプレエマルジョンを加え、75℃での保温反応を続け、その後に、室温まで自然に冷却し、ポリマーモノマーの質量に対して2%の重炭酸ナトリウムを加えて、得られた溶液系のpH値を8~9に調整し、最後に、溶液を55℃の温度に加熱して30min脱水処理を行えばよい。
【0040】
2)91:9の質量比に従って粗粒炭化ケイ素粉末及び細粒炭化ケイ素粉末を混合し、均一に撹拌して、混合炭化ケイ素を用意し、その後に、各原料を比率で秤量し、各原料の質量百分率は、混合炭化ケイ素58%、シリカ4%、バインダー2%(その中のポリカルボシラン及びポリジメチルシランの質量比は1:1.5)、分散剤2%(その中のメチルセルロース及び水酸化テトラメチルアンモニウムの質量比は1:1.5)、カルボキシレートエマルジョン34%である。
【0041】
3)秤量した混合炭化ケイ素にシリカ、バインダー、及び分散剤を加え均一に撹拌し、得られた混合物に秤量したカルボキシレートエマルジョンを加え、10min撹拌して均一に分散した溶液を得た後、真空吸引処理を実行して、溶液内の気泡を除去し、前記高固形分の炭化ケイ素スラリーを取得する。
【0042】
4)得られた高固形分の炭化ケイ素スラリーを炭化ケイ素基体上に均一に吹付け塗装した後、温度60℃で真空乾燥し、紫外線照射下で急速硬化させ、その後に、高温炉に移し、2℃/minで1450℃まで昇温させ、70min保温してから、500ml/minの速度でアルゴンガスを通過させて炉を20min洗浄し、次に2℃/minで温度2200℃まで昇温させ、110min保温した後、2℃/minの冷却速度で300℃まで冷却し、40min保温し、最後に炉と共に室温まで自然に冷却すると、前記炭化ケイ素の分離膜が得られる。
【0043】
本実施例で得られた炭化ケイ素スラリーの固形分は67.3voL%、粘度は902mPa.sであり、当該スラリーにより製造されたシート状の分離膜の厚さは1.1mmであり、走査型電子顕微鏡テストから、分離膜の微細孔の分布が均一で、孔径に大きな差がなく、膜の表現濾過孔径が2.8μmで、膜の有効濾過面積が0.18m2で、濾過圧力が小さく、破裂強度が18.5Mpaに達することが示され、耐久性の良い炭化ケイ素膜を製造する目的を達成した。
【比較例1】
【0044】
高固形分の炭化ケイ素スラリーに基づく分離膜の製造方法として、溶媒として脱イオン水を使用する以外、その具体的なステップは実施例2とほぼ同様である。具体的には、次のステップを含む。
【0045】
1)93:7の質量比に従って粗粒炭化ケイ素粉末及び細粒炭化ケイ素粉末を混合し、均一に撹拌して用意する。
【0046】
2)質量比が62%の混合炭化ケイ素を秤量し、質量比が6%のシリカ、質量比が1%のバインダー(その中のポリカルボシラン及びポリジメチルシランの質量比は1:1.5)、質量比が1%の分散剤(その中のメチルセルロース及び水酸化テトラメチルアンモニウムの質量比は1:1.5)を加え、撹拌し続ける。
【0047】
3)ステップ2)で得られた混合物を質量比が30%の脱イオン水に加え、6min撹拌して均一に分散した溶液を取得した後、真空吸引処理を実行して、溶液内の気泡を除去し、炭化ケイ素スラリー(固形分は38.1voL%のみ)を取得する。
【0048】
4)取得した炭化ケイ素スラリーを炭化ケイ素基体上に均一に吹付け塗装した後、温度50℃で真空乾燥し、紫外線照射下で急速硬化させ、その後に、高温炉に移し、2℃/minで1420℃まで昇温させ、55min保温してから、500ml/minの速度でアルゴンガスを通過させて炉を20min洗浄し、次に2℃/minで温度2150℃まで昇温させ、100min保温した後、2℃/minの冷却速度で400℃まで冷却し、25min保温し、最後に炉と共に室温まで自然に冷却すると、前記炭化ケイ素の分離膜が得られる。
【0049】
テストによると、本比較例で得られたシート状の分離膜の厚さが2.2mmであり、当該分離膜の微細孔の分布が不均一であり、膜の表現濾過孔径が4.1μmで、膜の有効濾過面積が0.06m2で、濾過圧力が大きく、破裂強度がただ9.3Mpaであった。当該スラリーにより製造された分離膜は成形が困難であり、本発明で採用する吹付け塗装法による成膜には適さない。
【比較例2】
【0050】
また、多孔質炭化ケイ素セラミック担体の製造方法として、その具体的なステップは、採用する粗粒炭化ケイ素の粒度がD50=9.2μmであり、細粒炭化ケイ素の粒度がD50=6.4μmであることを除いて、実施例1とほぼ同じである。
【0051】
この比較例で得られた炭化ケイ素スラリーは、固形分が35.2%と低く、採用する炭化ケイ素の粒径が大きすぎるため、重力沈降の作用下で、スラリーの分散性や、懸濁性、流動性が不十分であり、結果として粘度が大きすぎて撹拌が困難になり、焼結が不十分という等の問題がよく発生して、カーボンとシリカが完全に反応せず、膜の強度に影響を与える。テストによると、本比較例で得られたシート状の分離膜の厚さが2.2mmであり、当該分離膜の微細孔の分布が不均一であり、膜の表現濾過孔径が4.1μmで、膜の有効濾過面積が0.06m2で、濾過圧力が大きく、破裂強度がただ9.3Mpaであった。当該スラリーにより製造された分離膜は成形が困難であり、本発明で採用する吹付け塗装法による成膜には適さない。
【比較例3】
【0052】
また、高固形分の炭化ケイ素スラリーに基づく分離膜の製造方法として、自作のエマルジョンの製造方法が以下のステップを含むことを除いて、その具体的なステップは実施例1とほぼ同様である。
【0053】
まず、ポリマーモノマーの質量に対して2%のテトラプロピレンベンゼンスルホン酸ナトリウム及びポリマーモノマーの質量に対して2%のOP-10を70重量部の水に均一に溶解し、次に30重量部の重合性モノマー(酢酸ビニルとアクリル酸イソオクチルとアクリル酸ブチルは質量比2:2:1で重合される)を加え、160r/minの撹拌条件下で十分に混合してプレエマルジョンを取得するステップと、取得したプレエマルジョンの質量の25%を取り、ポリマーモノマーの質量に対して1%の過硫酸カリウムを加え、70℃まで加熱して保温反応させるステップと、次に残りの質量比75%のプレエマルジョンを加え、70℃での保温反応を続けるステップと、その後に、室温まで自然に冷却し、ポリマーモノマーの質量に対して1%の重炭酸ナトリウムを加えて、得られた溶液系のpH値を8~9に調整し、最後に、溶液を55℃の温度に加熱して30min脱水処理を行うステップと、を含めばよい。
【0054】
本比較例では、エマルジョンを製造する時、重合性モノマーの量が多すぎて、モノマーの滞留が発生し、系内の反応が制御しにくく、共重合反応が不十分であり、得られた炭化ケイ素スラリーに凝集が発生して高懸濁液を形成しなかったため、固形分がただ40.3voL%であり、粘度がただ500mPa.sであり、当該スラリーにより製造されたシート状の分離膜の厚度さは1.2mmであり、当該分離膜の微細孔の分布が不均一で、膜の表現濾過孔径が3.9μmで、膜の有効濾過面積が0.05m2で、濾過圧力が大きく、破裂強度がただ10.2Mpaであった。
【0055】
上記の実施例は明確に説明ために例示したものに過ぎず、実施形態を制限するためのものではない。本分野に属する当業者であれば、上記の説明に基づいて他の異なる形態の変更又は修正を行うことができ、ここに全ての実施形態を列挙する必要はない。従って、明示的な変更又は修正は、依然として本発明の保護範囲内である。