(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-14
(45)【発行日】2022-02-14
(54)【発明の名称】気泡を利用した浮力発電装置及び気泡を利用した浮力発電方法
(51)【国際特許分類】
F03B 17/02 20060101AFI20220118BHJP
F17C 7/00 20060101ALI20220118BHJP
【FI】
F03B17/02
F17C7/00 A
(21)【出願番号】P 2021142760
(22)【出願日】2021-09-01
【審査請求日】2021-09-01
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521209742
【氏名又は名称】株式会社島村技建コンサルタント
(74)【代理人】
【識別番号】100160543
【氏名又は名称】河野上 正晴
(74)【代理人】
【識別番号】100170874
【氏名又は名称】塩川 和哉
(72)【発明者】
【氏名】島村 義隆
【審査官】所村 陽一
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-074915(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03B 17/02
F17C 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水を貯水可能に構成された貯水槽、
燃料ガス導入部、前記貯水可能な水の水面よりも上方に位置する燃料ガス回収部、及び前記燃料ガス回収部に連結された燃料ガス排出部、並びに
複数の気泡受け部、前記
複数の気泡受け部に接続されたベルト、前記ベルトに接続された回転体、及び前記回転体に連結された発電機
を含み、
前記燃料ガス導入部は、液化ガスを気化した圧力が加えられた燃料ガスを前記貯水槽に導入可能に構成され、
前記燃料ガス回収部は、前記貯水槽に導入される燃料ガスを、前記貯水槽に貯水可能な水の水面よりも上部で回収可能に構成され、
前記燃料ガス排出部は、前記燃料ガス回収部で回収される燃料ガスを外部に排出可能に構成され、
前記複数の気泡受け部のうち少なくとも一部が、前記気泡受け部の上部領域に貫通孔を有し、
前記燃料ガス導入部から前記貯水槽に導入される前記燃料ガスの気泡を前記
複数の気泡受け部で受け、前記気泡の浮力によって前記
複数の気泡受け部に接続されたベルトを動かし、前記ベルトに接続された回転体を回転させて、前記回転体に連結された前記発電機で発電する
浮力発電装置。
【請求項2】
液化ガスを気化した圧力が加えられた燃料ガスを、水を貯水する貯水槽の水中に導入して、前記水中に気泡を形成すること、
前記気泡を、前記貯水槽の内部に配置された
複数の気泡受け部で受けること、
前記気泡による浮力によって前記
複数の気泡受け部に接続されたベルトを動かして、前記ベルトに接続された回転体を回転させて、前記回転体に連結された発電機で発電すること、
前記気泡として前記水中に導入した前記燃料ガスを、前記水の水面よりも上部で回収すること、及び
前記回収した燃料ガスを外部に排出すること
を含
み、
前記複数の気泡受け部のうち少なくとも一部が、前記気泡受け部の上部領域に貫通孔を有する
浮力発電方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気泡を利用した浮力発電装置及び気泡を利用した浮力発電方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、火力発電には大量の化石燃料が必要であり、地球温暖化の原因である二酸化炭素を多量に排出する等の問題が認識されている。原子力発電には様々なリスクがあり、施設建設から廃炉、再処理コストまで含めると多大なコストがかかることからその効率性にも疑義が生じている。
【0003】
このようなエネルギー問題及び環境問題が注目されてきており、2015年には、国連サミットにおける「持続可能な開発のための2030アジェンダ」(持続可能な開発目標(SDGs))が採択され、従来の環境影響が大きいエネルギー源を代替する再生可能エネルギーの活用が求められている。
【0004】
しかしながら、従来のエネルギーに代えて再生可能エネルギーを主に活用していくには多くのハードルがある。太陽光発電は天候に大きく影響され、夜間は発電できない等の問題がある。風力発電は無風時には発電できないことや、風速によって発電量に影響が出る等の問題がある。従来の水力発電は、ダム建設による自然環境破壊、降雨量、貯水量により発電量が左右される等の問題がある。
【0005】
これに対して、天候に左右されにくく且つ環境への影響が小さい再生可能エネルギー源の一つとして、気泡の浮力を使って水中で回転体を回すことにより発電する浮力発電が検討されている。
【0006】
浮力発電として、水の抵抗を小さくしたバケットに気泡を入れ、気泡の浮力で回転体を回す浮力発電装置(特許文献1)や、水槽底の水車で水と空気を置換することにより気泡の取込を行う浮力発電装置(特許文献2)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2019-138293号公報
【文献】特開2007-138883号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1の装置では、気泡の発生には、装置の最下部に外部より接続された空気ポンプを用いるため、気泡を発生させるために電力等の他のエネルギーを必要とし、気泡を発生させるための投入エネルギーよりも浮力発電装置による出力エネルギーが小さくなるエネルギー効率の問題がある。特許文献2の装置では、水車を利用するため、従来の水力発電と同様にダム建設による自然環境破壊、降雨量、貯水量等の気候により発電量が左右される等の問題がある。
【0009】
したがって、従来よりも、自然環境への影響が小さく、気候の影響が小さく、エネルギー効率に優れた浮力発電装置が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の要旨は以下のとおりである。
(1)水を貯水可能に構成された貯水槽、
燃料ガス導入部、前記貯水可能な水の水面よりも上方に位置する燃料ガス回収部、及び前記燃料ガス回収部に連結された燃料ガス排出部、並びに
気泡受け部、前記気泡受け部に接続されたベルト、前記ベルトに接続された回転体、及び前記回転体に連結された発電機
を含み、
前記燃料ガス導入部は、液化ガスを気化した圧力が加えられた燃料ガスを前記貯水槽に導入可能に構成され、
前記燃料ガス回収部は、前記貯水槽に導入される燃料ガスを、前記貯水槽に貯水可能な水の水面よりも上部で回収可能に構成され、
前記燃料ガス排出部は、前記燃料ガス回収部で回収される燃料ガスを外部に排出可能に構成され、
前記燃料ガス導入部から前記貯水槽に導入される前記燃料ガスの気泡を前記気泡受け部で受け、前記気泡の浮力によって前記気泡受け部に接続されたベルトを動かし、前記ベルトに接続された回転体を回転させて、前記回転体に連結された前記発電機で発電する
浮力発電装置。
(2)液化ガスを気化した圧力が加えられた燃料ガスを、水を貯水する貯水槽の水中に導入して、前記水中に気泡を形成すること、
前記気泡を、前記貯水槽の内部に配置された気泡受け部で受けること、
前記気泡による浮力によって前記気泡受け部に接続されたベルトを動かして、前記ベルトに接続された回転体を回転させて、前記回転体に連結された発電機で発電すること、
前記気泡として前記水中に導入した前記燃料ガスを、前記水の水面よりも上部で回収すること、及び
前記回収した燃料ガスを外部に排出すること
を含む、浮力発電方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、従来よりも、自然環境への影響が小さく、気候の影響が小さく、エネルギー効率に優れた浮力発電装置設置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図2】
図2は、本装置の他の例の断面模式図である。
【
図3】
図3は、本装置の他の例の断面模式図である。
【
図4】
図4は、本装置における気泡受け部の一例の断面模式図である。
【
図5】
図5は、本開示の浮力発電装置を含むLNG発電システムの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本開示は、水を貯水可能に構成された貯水槽、燃料ガス導入部、前記貯水可能な水の水面よりも上方に位置する燃料ガス回収部、及び前記燃料ガス回収部に連結された燃料ガス排出部、並びに気泡受け部、前記気泡受け部に接続されたベルト、前記ベルトに接続された回転体、及び前記回転体に連結された発電機を含み、前記燃料ガス導入部は、液化ガスを気化した圧力が加えられた燃料ガスを前記貯水槽に導入可能に構成され、前記燃料ガス回収部は、前記貯水槽に導入される燃料ガスを、前記貯水槽に貯水可能な水の水面よりも上部で回収可能に構成され、前記燃料ガス排出部は、前記燃料ガス回収部で回収される燃料ガスを外部に排出可能に構成され、前記燃料ガス導入部から前記貯水槽に導入される前記燃料ガスの気泡を前記気泡受け部で受け、前記気泡の浮力によって前記気泡受け部に接続されたベルトを動かし、前記ベルトに接続された回転体を回転させて、前記回転体に連結された前記発電機で発電する浮力発電装置を対象とする。
【0014】
本装置で用いられる燃料ガスは、液化ガスを気化して燃料ガスとして使用するLNG発電所等の従来システムにおける圧力が加えられた燃料ガスである。従来、燃料ガスを生産地から消費地まで運搬または燃料ガスの取扱いを簡単にするために、産出した気体の燃料ガスを生産地で冷却して液化することが行われている。燃料ガスを液化するときに、コストをかけて多くのエネルギーを使っている。
【0015】
本装置によれば、液化した燃料ガスを気体に戻すときに発生する圧力の一部を利用して発電することができる。本装置によれば、燃料ガスを生産地で液化するときに使用したエネルギーの一部を活用することができるので、従来よりも、自然環境への影響が小さく、気候の影響が小さく、エネルギー効率に優れた発電が可能になる。図面を参照しながら、本装置を用いた発電方法について説明する。
【0016】
図1は、本装置の一例の断面模式図である。
図1に示す浮力発電装置100は、箱形状の貯水槽10を備える。浮力発電装置100は、水14を貯水可能に構成された貯水槽10を備え、さらに、燃料ガス導入部11、貯水可能な水14の水面よりも上方に位置する燃料ガス回収部16、及び燃料ガス回収部16に連結された燃料ガス排出部12を備える。
図1に示す浮力発電装置100においては、燃料ガス導入部11、燃料ガス回収部16、及び燃料ガス排出部12は貯水槽10に備えられる。
【0017】
浮力発電装置100はまた、気泡受け部20、気泡受け部20に接続されたベルト30、ベルトの動きに連動して回転する回転体40、及び回転体40に連結された発電機(図示せず)を含む。気泡受け部20は一つまたは複数であり、好ましくは複数である。
図1に示す浮力発電装置100において、気泡受け部20、気泡受け部20に接続されたベルト30、及びベルトに接続された回転体40は、貯水槽10内に備えられ、回転体40に連結された発電機は、貯水槽10の内部または外部のいずれに配置してもよい。
【0018】
圧力が加えられた気体の燃料ガスを、燃料ガス導入部11から水14中に導入して気泡15を形成する。水14中で、形成された気泡15を気泡受け部20で受けて、気泡15による浮力を利用して気泡受け部20に接続されたベルト30を動かす。ベルト30が動くことで、ベルト30の動きに連動して回転する回転体40が回転し、回転体40に連結された発電機で発電する。回転体40は、少なくとも、水面近くと下方の燃料ガス導入部11の近くとの上下に2つ設置され得る。ベルト30は、上下に配置された少なくとも2つの回転体40を一周するように配置され得る。
【0019】
燃料ガス回収部16で、貯水槽10の水面から出てくる燃料ガスが回収され、燃料ガス回収部16に連結された燃料ガス排出部12から燃料ガスが排出される。排出された燃料ガスは、従来システムの発電等に利用される。燃料ガス回収部16で回収される燃料ガスは、水面から次々に出てくる燃料ガスの圧力で燃料ガス排出部12から押し出されるように排出可能である。
【0020】
図1に示す貯水槽10の形状及び材質は、燃料ガス導入部、燃料ガス回収部及び燃料ガス排出部を備え、水を内部に貯留可能且つ気体の燃料ガスを燃料ガス排出部以外からは外部に漏らさない耐圧密閉構造を有するものであれば特に限定されない。貯水槽10の材質は、例えば、従来のLNGのタンクまたは従来のLNGの導管若しくは配管(以下、まとめて配管ともいう)に用いられている鋼製であることができる。貯水槽10の形状は、例えば、円柱形状、直方体形状、またはそれらの組合せであることができる。
【0021】
燃料ガス導入部11は、燃料ガス導入部11に接続された外部の配管から貯水槽10の内部の水圧よりも高い圧力が加えられたときに、貯水槽10の内部に外部の配管から燃料ガスを導入可能であり、且つ貯水槽10の内部の水が燃料ガス導入部11に接続された外部の配管側に漏れないバルブ(開閉弁)の構成を備える。本装置は、好ましくは、前記バルブの開閉が可能な制御装置を備える。バルブの開閉は手動または電動で行うことができる。バルブを電動で開閉する場合は、動作させるための電力を外部から得てもよいが、好ましくは本装置の発電機で発電した電力を利用してもよい。
【0022】
燃料ガス導入部11は、貯水槽10の底部に配置及び/または貯水槽10の側部に配置することができる。貯水槽10の側部に配置された燃料ガス導入部11は、好ましくは、水平方向に移動可能である。貯水槽10の側部の比較的上方に配置された燃料ガス導入部11を水平方向に移動させて、貯水槽10の比較的上方に位置する気泡受け部20に気泡を導入することができる。浮力は気泡の体積(泡の半径の3乗)に比例し、抗力は気泡の断面積(泡の半径の2乗)と上昇速度の2乗に比例する。したがって気泡の半径が大きいほど、浮力が大きくなる。水面に近いほど水圧が小さく気泡が大きくなり気泡による浮力は大きくなるので、本装置の起動時に、貯水槽10の側部に配置された燃料ガス導入部11から気泡を導入することで、より大きな浮力でベルトを動かして発電を開始することができる。燃料ガス導入部11の移動は手動または電動で行うことができる。燃料ガス導入部11を電動で移動させる場合は、動作させるための電力を外部から得てもよいが、本装置の発電機で発電した電力を利用してもよい。
【0023】
貯水槽10は、燃料ガス導入部11を1つまたは複数備えることができる。複数の燃料ガス導入部11は、貯水槽10の底部に水平方向に配置及び/または貯水槽10の側部に鉛直方向に配置することができる。
【0024】
燃料ガス導入部11から導入する燃料ガスの圧力は、燃料ガス導入部11における水圧よりも大きい。燃料ガス導入部11から導入する燃料ガスの圧力は、燃料ガス回収部16に回収される燃料ガスの圧力に、燃料ガス導入部11が位置する水面からの深さに応じた圧力より大きい圧力を有する。
【0025】
例えば、従来のLNGシステムにおいて、天然ガス(NG)が発電所や工場等の天然ガスの使用部に送られる天然ガス系統として、約1.7MPa(17気圧)の導管がある。この従来のLNGシステムに本装置を組み合わせて、燃料ガス導入部11が底部に配置された貯水槽10に貯水される水深を20mとしたとき、燃料ガス導入部11から導入する燃料ガスの圧力は、17気圧に水深20mに応じた2気圧を加えた19気圧よりも大きい圧力とする。19気圧よりも大きな圧力を有する燃料ガスを、貯水槽10の底部に位置する燃料ガス導入部11から導入する場合、20mの水深の水14の水面から燃料ガス回収部16で回収する燃料ガスは、17気圧超の圧力を有する。この17気圧超の燃料ガスをそのまま、または17気圧に減圧して、従来システムの天然ガス系統の導管で発電所や工場の使用部に送ることができる。減圧は、減圧弁で減圧するか、燃料ガス排出部から排出される燃料ガスを送る配管から他の配管に燃料ガスの一部を分岐するか、または燃料ガスを外部に排出することにより行うことができる。分岐または排出したガスは、従来のLNGシステムにおけるより低圧の他の系統の使用部で使用、LNGタンクに戻してタンク内の負圧防止に使用、LNGと熱交換させて再液化して再利用等してもよい。
【0026】
燃料ガス導入部11から導入する燃料ガスの圧力は、燃料ガス導入部11における水圧よりも、好ましくは1気圧以上、より好ましくは2気圧以上、さらに好ましくは3気圧以上高い。燃料ガス導入部11から導入する燃料ガスの圧力が上記好ましい圧力であることにより、燃料ガス導入部11から水14中に燃料ガスの気泡をより多量に導入しやすくなる。燃料ガス導入部11から導入する燃料ガスの圧力の上限は特に限定されないが、燃料ガス導入部11から導入する燃料ガスの圧力が高いほど、燃料ガス排出部から排出される燃料ガスの減圧量を増やす必要があり、燃料ガスを送る配管や本装置の貯水槽等がより高圧に耐える構造を備える必要となるので、好ましくは、燃料ガス導入部11における水圧に対してプラス5気圧以内またはプラス4気圧以内である。
【0027】
従来システムにおいて、液体の燃料ガスを気化させるには気化装置(気化器)が用いられている。燃料ガス導入部11から導入する燃料ガスの圧力は、従来システムにおける液化ガスを気化させる気化器から排出される燃料ガスの圧力を利用することができる。例えば、従来のLNGシステムにおいて、マイナス162℃のLNGは、LNGタンク内のLNGポンプで気化器に送られ、海水を利用した気化器を通ると、体積が600倍の常温の天然ガス(NG)になる。気化にともなう体積膨張による高圧の天然ガス(NG)は、減圧弁を介して減圧した状態で、配管を通ってボイラー等の燃料ガスの使用部に送られる。減圧弁は、気化器により気化させた高圧の天然ガスを、使用部の使用圧力に応じて減圧することができる。減圧弁の出口圧力は、使用部における天然ガスの消費量に応じて変化し、減圧弁の制御装置は、この圧力を制御する。減圧弁の制御装置は、使用部における天然ガスの消費量が増大して減圧弁の出口圧力が低下すると、減圧弁の出口圧力を上昇させるように減圧弁を開動作させる。逆に、減圧弁の出口圧力が上昇すると、減圧弁制御装置は、減圧弁を閉動作することにより、減圧弁の出口圧力の値を一定に保持する。
【0028】
本装置は、従来システムにおける気化器とボイラー等の燃料ガスの使用部との間に組みこんで使用することができる。燃料ガス導入部11から導入する燃料ガスの圧力は、減圧弁により調整することができる。
【0029】
従来用いられているLNG気化器は、LNGに蒸発の潜熱及びマイナス162℃から常温までの顕熱を与えて再ガス化するもので、種々のタイプがある。気化器としては、例えば、常用のオープンラックタイプベーパライザー、非常用のサブマージドタイプベーパライザー、中間熱媒体式気化器等がある。例えば、オープンラックタイプベーパライザーは、多数の垂直フィン付きチューブがラック状に組み立てられたパネル内部を、LNGポンプによって送られたLNGが通過する際、チューブの外表を流下する海水によって温められて蒸発加熱されて上部ヘッダよりガスとなって排出される。気化器出口の燃料ガスの圧力は気化器入り口液体側の流量制御によって行われる。したがって、気化器出口の燃料ガスの圧力を、燃料ガス導入部11で必要とされる所望の圧力になるように、気化器入り口液体側の流量制御を行ってもよい。
【0030】
貯水槽に貯水される水の水深は、気泡受け部の配置数及び導入する燃料ガスの圧力に応じて調整することができるが、好ましくは10m以上、より好ましくは20m以上、さらに好ましくは30m以上、さらにより好ましくは50m以上、さらにより好ましくは100m以上である。水深が深いほど、より多数の気泡受け部を配置することができ、気泡による浮力をより活用することができる。ただし、水深が深いほど貯水槽の下部における水圧が高くなるので、それより大きい圧力の燃料ガスを導入する必要がある。また、水深が深いほど気泡の体積が小さくなり発生する浮力も小さくなるので、初動時は小さい浮力でもベルトが動くように発電機がトルクを小さくするまたはゼロにすることができるトルク調整機能を有することが好ましい。
【0031】
図1における貯水槽10の高さは、内部に貯留する水の水深に応じて決めればよいが、燃料ガス導入部、燃料ガス回収部、及び燃料ガス排出部を備え、内部に、気泡受け部、気泡受け部に接続されたベルト、ベルトに接続された回転体、並びに所望により回転体に連結された発電機を備えることができる高さであることができる。貯水槽の高さは、例えば12~150mである。
【0032】
気泡受け部20は、燃料ガスの気泡を受けてベルトを動かすことができる構造を有すればよいが、好ましくは、水及び燃料ガスに対して耐腐食性で軽量の材料で構成されることが好ましい。気泡受け部20は、好ましくはステンレス製、アルミニウム製、チタン製、またはそれらの組み合わせである。
【0033】
気泡受け部20は、例えば、立方体、直方体、直径が半球体等であることができる。気泡受け部20の寸法は特に限定されるものではないが、例えば、縦、横及び長さが1mの立方体や、半径が1mの半球体でもよい。
【0034】
気泡受け部20は、好ましくは、最下部の気泡受け部20が受けた気泡15による浮力で、気泡受け部20に接続されたベルト30を動かし、ベルト30に接続された回転体40を回転させることができる気泡の受入可能容積を備え、より好ましくは、最下部の気泡受け部20が受けた気泡15による浮力で、気泡受け部20に接続されたベルト30を動かし、ベルト30に接続された回転体40を回転させ、回転体40に連結された発電機で発電することができる気泡の受入可能容積を備える。気泡受け部20の気泡の受入可能容積は、好ましくは0.1~10m3である。水の密度を約1000kg/m3とすると、上記好ましい受入可能容積を有する1つの気泡受け部に気泡が充填された場合、980~98000N(100~10000kg)の浮力が得られる。
【0035】
ベルト30に接続する複数の気泡受け部20同士の間隔は、ベルト30とともに気泡受け部20が回転可能であり、燃料ガス導入部11から導入される気泡15を順次受け入れることができる間隔であればよい。ベルト30に接続する複数の気泡受け部20同士の間隔は、好ましくは、ベルト30とともに定常速度で回転している各気泡受け部20が、各気泡受け部20の気泡15の受入可能容積の好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上の気泡を受け入れることができる間隔である。
【0036】
複数の気泡受け部20のうち少なくとも一部の気泡受け部20は、
図4に示すように、一部に貫通孔21を有してもよい。気泡受け部20が貫通孔21を備えることにより、気泡受け部20は、燃料ガス導入部11から導入する気泡15による浮力を受けつつ、気泡15の一部を上方に位置する他の気泡受け部に導入することができる。貯水槽の底では水圧が大きく気泡が小さくなるので気泡15の浮力は比較的小さいが、水圧が低い貯水槽の上方では気泡15の体積膨張とともに浮力も大きくなるため、より上方の気泡受け部20に気泡15を導入することにより、より大きな浮力で本装置を動作させることができる。貫通孔21の位置は、気泡受け部20の気泡を受ける箇所であれば特に限定されないが、気泡が集まりやすい気泡受け部20の上部領域が好ましい。貫通孔21の大きさは、燃料ガス導入部11から導入する気泡15の直径と同じか、気泡15より小さいか、または気泡15より大きくてもよい。貫通孔21の大きさは、次々に水14中に導入され気泡受け部20が受ける気泡15の合計体積に応じて、気泡受け部20が浮力を受けつつ、より上方の気泡受け部20に気泡を移動可能な大きさであることができる。
【0037】
貫通孔21は好ましくは開閉可能であり、より好ましくは開度を調節可能である。開度とは、貫通孔21が開く度合いである。貯水槽の底部に近い領域では貫通孔21が開き、貯水槽の上部に近い領域では貫通孔21が閉じてもよい。貯水槽の中部に近い領域では貫通孔21が半分開いてもよい。本装置は、好ましくは、貫通孔21の開閉を行う制御部を備える。貫通孔21の開閉は手動または電動で行うことができる。貫通孔21を電動で開閉する場合は、動作させるための電力を外部から得てもよいが、好ましくは本装置の発電機で発電した電力を利用してもよい。
【0038】
複数の気泡受け部20の形状及び寸法は互いに異なっていてもよい。複数の気泡受け部20のうち一部の気泡受け部20の水平方向の寸法が他の気泡受け部20の水平方向の寸法よりも大きい場合、下方に位置する水平方向の寸法が小さい気泡受け部20からあふれた気泡を、上方に位置する水平方向の寸法が大きい気泡受け部20で受けることができる。
【0039】
ベルト30は少なくとも一部が水中に配置され、気泡受け部20に接続され、回転体40を動かすことができる構成を有すればよく、金属製のチェーンベルト、ゴム製のベルト等であることができる。
【0040】
回転体40は、ベルトの力を発電機に伝える構造であればよく、従来の発電機に用いられる回転体であることができる。
【0041】
発電機は、従来用いられている発電機であることができる。発電機は好ましくはトルク調整機能を有する。本装置を始動する際、燃料ガス導入部から貯水槽に導入する気泡は貯水槽の下部にあり、気泡の浮力が比較的小さいため、発電機のトルクは小さくてもよい。気泡による浮力で気泡受け部に接続されたベルトを動かしながら気泡受け部を上昇させるにつれて浮力が増加するため、発電機のトルクを大きくしてもよい。発電機は、好ましくは、蓄電装置と接続される。これにより、発電機で発電した電気を蓄電装置に蓄電し、必要なときに蓄電した電気を外部に送電等することができる。
【0042】
浮力発電装置100の燃料ガス導入部11は、従来システムにおける液化ガスの貯蔵容器に接続された気化部70と接続され得る。気化部70においては、液化ガスを気化して燃料ガスを生成し、気化した燃料ガスを燃料ガス導入部11に搬送可能に構成される。
【0043】
浮力発電装置100の燃料ガス排出部12は、従来システムにおける燃料ガスの使用部80に接続され得る。使用部80は、例えば、従来システムにおけるLNG発電においては、汽力発電、ガスタービン発電、またはコンバインド・サイクル発電におけるボイラー、タービン、またはそれらの組み合わせであることができる。
【0044】
貯水槽10は、
図2に示すようなU字形状でもよい。
図2は、本装置の別の例の断面模式図である。
図2に示す浮力発電装置100は、気泡受け部20、気泡受け部20に接続されたベルト30、ベルトに接続された回転体40、及び回転体40に連結された発電機(図示せず)を含む。
図2に示す浮力発電装置100においては、気泡受け部20に接続されたベルト30の一部とベルトに接続された回転体40の一方が貯水槽10内に配置され、回転体40の他方は貯水槽10の外部であって壁部60の内部に備えられ、回転体40に連結された発電機は、壁部60の内部または外部のいずれに配置してもよい。
【0045】
貯水槽10が
図2に示すようなU字形状の場合、燃料ガス導入部11は貯水槽10に備えられ、貯水槽10の少なくとも上部を取り囲む壁部60で構成された燃料ガス回収部16に燃料ガスを回収して、壁部60が備える燃料ガス排出部12から燃料ガスを排出することができる。壁部60の形状及び材質は、貯水槽10、燃料ガス回収部及び燃料ガス排出部を備え、気体の燃料ガスを燃料ガス排出部以外からは外部に漏らさない耐圧密閉構造を有するものであれば特に限定されない。壁部60の材質は、例えば、従来のLNGのタンクまたは配管に用いられている鋼製であることができる。
【0046】
壁部60は、好ましくは、壁部60の内部に、水14の水面から放出される燃料ガスを壁部60との間で回収して燃料ガス排出部12から排出可能な位置に、少なくとも1段の仕切り部61を備える。
図2に例示する壁部60は、2段の仕切り部61を備える。壁部60と最上段の仕切り部61とで燃料ガス回収部16を構成することができるので、燃料ガス排出部12から燃料ガスをより効率良く排出することができる。仕切り部61は、装置点検用の足場としても使用可能である。
【0047】
図2における貯水槽10は、燃料ガス導入部11を備え、水14を内部に貯留可能な構成を有するものであれば特に限定されず、例えば、従来のLNGのタンクまたは配管に用いられている鋼製であることができる。
【0048】
図2における貯水槽10の高さは、内部に貯留する水14の水深に応じて決めればよいが、燃料ガス導入部11を備え、気泡受け部20及び気泡受け部に接続されたベルト30の少なくとも一部並びに回転体40の一方を収容可能な高さを有し、浮力発電装置100が、壁部60との間に、燃料ガス回収部16、ベルトに接続された回転体40の他方、及び所望により回転体に連結された発電機を備えることができる高さであることができる。貯水槽10のU字部分のそれぞれの幅は、気泡受け部20を貯水槽の水中を移動させるときに水から受ける抵抗が小さくなるように、気泡受け部20と貯水槽との間で水がスムーズに移動可能なスペースを有する幅であることができる。貯水槽の幅は、気泡受け部20の幅方向の寸法の好ましくは1.2倍以上、より好ましくは1.3倍以上、さらに好ましくは1.4倍以上、さらにより好ましくは1.5倍以上である。下記の
図3に示す貯水槽の幅についても同様である。貯水槽の高さは、例えば12~150mである。
図2に示す浮力発電装置のその他の構成は
図1と共通である。
【0049】
貯水槽10は、
図3に示すようなO字形状でもよい。
図3は、本装置の別の例の断面模式図である。
図3に示す浮力発電装置100は、水を貯水可能に構成されたパイプ形状の貯水槽10を備える。パイプ形状は、平面、曲面、またはそれらの組み合わせで構成される。浮力発電装置100は、さらに、燃料ガス導入部11、燃料ガス回収部16、及び燃料ガス排出部12を備える。
図3に示す浮力発電装置100においては、燃料ガス導入部11、燃料ガス回収部16、及び燃料ガス排出部12は貯水槽10に備えられる。
【0050】
浮力発電装置100はまた、気泡受け部20、気泡受け部20に接続されたベルト30、ベルトに接続された回転体40、及び回転体40に連結された発電機(図示せず)を含む。気泡受け部20は一つまたは複数であり、好ましくは複数である。
図3に示す浮力発電装置100においては、気泡受け部20、気泡受け部20に接続されたベルト30、及びベルトに接続された回転体40は、貯水槽10に備えられ、回転体40に連結された発電機は、貯水槽10の内部または外部のいずれに配置してもよい。
【0051】
図3に例示の浮力発電装置100における、圧力が加えられた気体の燃料ガスの導入、気泡15の形成、ベルト30の動作、回転体40の回転、発電機による発電、及び燃料ガスの回収及び排出、並びにその他の構成は、
図1に例示の浮力発電装置と同様である。
【0052】
本開示はまた、液化ガスを気化した圧力が加えられた燃料ガスを、水を貯水する貯水槽の水中に導入して、前記水中に気泡を形成すること、前記気泡を、前記貯水槽の内部に配置された気泡受け部で受けること、前記気泡による浮力によって前記気泡受け部に接続されたベルトを動かして、前記ベルトに接続された回転体を回転させて、前記回転体に連結された発電機で発電すること、前記気泡として前記水中に導入した前記燃料ガスを、前記水の水面よりも上部で回収すること、及び前記回収した燃料ガスを外部に排出することを含む、浮力発電方法を対象とする。
【0053】
本開示の浮力発電装置及び浮力発電方法に用いられる燃料ガスは、好ましくは、天然ガス、プロパンガス、水素ガス、またはアンモニアガスである。これら燃料ガスを液化したものは、液化天然ガス、液化プロパンガス、液化水素ガス、または液化アンモニアガスである。
【0054】
液化天然ガス(以下、LNGともいう)は、気体の燃料ガスである天然ガスを、輸送するためにマイナス162℃に冷却、凝縮し、体積を600分の1にしたものであり、燃焼時のCO2排出量や窒素酸化物が他の化石燃料より少なく、比較的クリーンな化石燃料である。
【0055】
天然ガスは、都市ガスの主原料として用いられ、マイナス162℃まで冷却して液化したLNGとして貯蔵・輸送される。従来のLNG発電においては、LNGが専用タンカー等のLNG船を用いて海外から運搬され、LNG基地の専用のLNGタンクに貯蔵される。LNGタンクから送出されたLNGは、気化器を通過することで気化され、常温の天然ガスとして電力燃料等に使用される。
【0056】
従来のLNG発電においては、LNGを気化した天然ガス(NG)を燃やした熱で高温・高圧の蒸気を形成し、この蒸気を使って蒸気タービンの羽根車を回し、タービンにつないだ発電機を動かして発電することができる。
【0057】
図5に、本開示の浮力発電装置を組み込んだLNG発電システムの一例を示す。
図5に示すLNG発電システムにおいては、LNGは、LNG船81から、アームローディング及び配管を通してLNGタンク82に貯蔵される。マイナス162℃のLNGは、LNGタンク82からLNGポンプで気化部70に送られ、気化部70を通ると常温の天然ガス(NG)になり、配管を通って本浮力発電装置100に送られる。気化部70においては、気化器の伝熱管の外面に海水を流して、気化器の内部のLNGを気化させる。
【0058】
本浮力発電装置100で浮力発電に使用された天然ガス(NG)は、発電所や工場等の天然ガスの使用部80に送られる。発電所や工場のボイラー中で天然ガス(NG)を燃やした熱で高温、高圧の蒸気を発生させて、この蒸気を使って蒸気タービンの羽根車を回し、タービンにつないだ発電機を動かして発電する。
【0059】
本装置の配置場所は、LNGを気化する装置を備える場所であれば、特に限定されないが、LNGを運搬するタンカーが寄港する港若しくは海岸、LNGを利用した発電装置若しくはLNG発電所に隣接した場所、またはLNGを貯蔵したガスボンベを配置した建物内であることができる。本装置を、空きビル、閉鎖された学校等に配置することにより、建物の再利用も可能である。例えば、
図1~3に例示する本装置を、空きビルの躯体に固定して配置することができる。
【0060】
LNGボンベが配置されLNGを用いた冷暖房設備を備えるビル等の建物に、本装置を設置することによって、天然ガスを使用して冷暖房を行うとともに、LNGの気化ガスを用いて浮力発電を同時に行うことが可能になる。
【0061】
上記のように、本装置によれば、天然ガス(NG)を冷却、凝縮してLNGにするときのエネルギーの一部を再利用することが可能である。本装置によれば、LNG以外にも、液化プロパンガス(LPG)、液化水素ガス、液化アンモニアガス等の液化燃料ガスを使用する従来システムにける液化時のエネルギーの一部を再利用することが可能である。
【0062】
LPGは、一般的に、ボンベ等の貯蔵容器に充填して、都市ビルや家庭等の消費場所に配送される。これらの消費場所においては、LPGを気化して事務所や家庭で燃料ガスとして用いられる。本装置を、LPGの貯蔵容器と都市ビルや家庭等の消費場所との間に設置することにより、LPGの気化ガスを浮力発電に使用することができる。
【0063】
液化水素ガスは、一般的に、タンクローリー等の移動貯蔵容器に充填して、水素ステーション等の消費場所に配送される。本装置を、液化水素ガスの貯蔵容器と水素ステーション等の消費場所との間に設置することにより、液化水素ガスの気化ガスを浮力発電に使用することができる。
【0064】
アンモニアは加圧・冷却により容易に液化し、液化したものは通常、パイプラインで送るか、タンカー若しくはタンクローリーで運ばれ、またはボンベに詰めて搬送される。本装置を、液化アンモニアの貯蔵容器とアンモニアガスの消費場所との間に設置することにより、液化アンモニアの気化ガスを浮力発電に使用することができる。
【符号の説明】
【0065】
100 浮力発電装置
10 貯水槽
11 燃料ガス導入部
12 燃料ガス排出部
14 水
15 気泡
16 燃料ガス回収部
20 気泡受け部
21 気泡受け部の貫通孔
30 ベルト
40 回転体
60 壁部
61 仕切り部
70 気化部
80 使用部
81 LNG船
82 LNGタンク
【要約】
【課題】自然環境への影響が小さく、気候の影響が小さく、エネルギー効率に優れた浮力発電装置を提供する。
【解決手段】水を貯水可能に構成された貯水槽、燃料ガス導入部、前記貯水可能な水の水面よりも上方に位置する燃料ガス回収部、及び前記燃料ガス回収部に連結された燃料ガス排出部、並びに気泡受け部、前記気泡受け部に接続されたベルト、前記ベルトに接続された回転体、及び前記回転体に連結された発電機を含み、前記燃料ガス導入部は、液化ガスを気化した圧力が加えられた燃料ガスを前記貯水槽に導入可能に構成され、前記燃料ガス導入部から前記貯水槽に導入される前記燃料ガスの気泡を前記気泡受け部で受け、前記気泡の浮力によって前記気泡受け部に接続されたベルトを動かし、前記ベルトに接続された回転体を回転させて、前記回転体に連結された前記発電機で発電する浮力発電装置。
【選択図】
図1