(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-14
(45)【発行日】2022-01-25
(54)【発明の名称】チューブ容器
(51)【国際特許分類】
B65D 35/02 20060101AFI20220118BHJP
【FI】
B65D35/02 Z
(21)【出願番号】P 2017128786
(22)【出願日】2017-06-30
【審査請求日】2020-01-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100076598
【氏名又は名称】渡辺 一豊
(74)【代理人】
【識別番号】100165607
【氏名又は名称】渡辺 一成
(74)【代理人】
【識別番号】100196690
【氏名又は名称】森合 透
(72)【発明者】
【氏名】中村 弘幸
【審査官】吉澤 秀明
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3113185(JP,U)
【文献】特表2006-519147(JP,A)
【文献】実開昭52-017267(JP,U)
【文献】実開昭62-108225(JP,U)
【文献】特開2002-128145(JP,A)
【文献】特開2006-224983(JP,A)
【文献】特開2008-056266(JP,A)
【文献】特開2007-176594(JP,A)
【文献】特開2005-271928(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 35/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容物が収納される胴部(5)上端に設けられた肩部(4)に口筒部(3)が立設されたチューブ本体(1)と、前記口筒部(3)に装着されると共に前記チューブ本体(1)の倒立を維持するキャップ(11)とを有して成るチューブ容器であって、
前記肩部(4)と前記胴部(5)との境界部分に第1屈曲部(7)が形成され、前記口筒部(3)と前記肩部(4)との境界部分に第2屈曲部(8)が形成され、前記肩部(4)は前記該第1屈曲部(7)及び前記第2屈曲部(8)を起点として反転変形可能とされおり、
前記肩部(4)が前記胴部(5)内に陥没
状に変形することで凹部(9)が形成されると共に、前記キャップ(11)の開口端(13a)が前記凹部(9)内に入り込んでいることを特徴とするチューブ容器。
【請求項2】
肩部(4)の断面形状が湾曲状又は台形状である請求項1記載のチューブ容器。
【請求項3】
第1屈曲部(7)及び第2屈曲部(8)が肉薄部で形成されている請求項
1又は2記載のチューブ容器。
【請求項4】
キャップ(11)の開口端(13a)が、凹部(9)の表面に当接している請求項1乃至3の
いずれか一項に記載のチューブ容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はチューブ容器に関わり、特にはバスルームや洗面所等に倒立状態で保管されるチューブ容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、洗顔フォーム、シャンプー、ヘアトリートメント剤等を内容物として充填し、容器側の胴部をスクイズすることによって注出口から内容物を注出するチューブ容器が知られている(例えば、特許文献1)。
【0003】
このようなチューブ容器は、バスルームや洗面所等で使用されそのまま保管されることが多く、頂壁を平坦面に形成したキャップをバスルームや洗面所内の設置面に接触させることによって、チューブ容器本体の口筒部が下側に向く倒立姿勢の状態で保管されることが通常である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述のようにチューブ容器本体の口部が下側に向く状態でバスルームや洗面所内の設置面に保管される場合には、キャップとチューブ容器本体との間に形成される隙間が上側を向く状態となるので、この隙間を通じてキャップの内側に水などが浸入し、内容物の品質を劣化させたり、あるいはキャップ内に溜まった水がカビや雑菌を繁殖させたりする虞がある。
【0006】
さらに上記従来のチューブ容器では、特にチューブ容器を使い切る直前の段階において、チューブ容器内に残留している内容物を搾り出し難いという問題がある。
【0007】
本発明は、上記した従来技術における問題点を解消すべく、キャップを下に向けた倒立状態で保管されるチューブ容器おいて、特に簡単な構成でチューブ容器本体の外表面を伝わってキャップ側に流れ落ちる水滴がキャップ内に浸入することを防止し、またチューブ容器内に残留している内容物を搾り出しやすくすることを可能としたチューブ容器を創出することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための手段のうち、本発明の主たる手段は、
内容物が収納される胴部上端に設けられた肩部に口筒部が立設されたチューブ本体と、口筒部に装着されると共にチューブ本体の倒立を維持するキャップとを有して成るチューブ容器であって、
肩部と胴部との境界部分に第1屈曲部が形成され、口筒部と肩部との境界部分に第2屈曲部が形成され、肩部は第1屈曲部及び第2屈曲部を起点として反転変形可能とされおり、
肩部が胴部内に陥没状に変形することで凹部が形成されると共に、キャップの開口端が凹部内に入り込んでいることを特徴とする、と云うものである。
【0009】
本発明の主たる手段では、チューブ容器を倒立状態にすると、キャップの開口端はチューブ本体側の凹部内に入り込むが、凹部は傘として機能するため、チューブ容器の胴部表面を伝わって流れ落ちる水滴がキャップ内に入り込むことを防止し得る。
またチューブ本体の上端に凹部を容易に形成する機能を発揮し得る。
【0010】
また本発明の他の手段は、上記手段に、肩部の断面形状が湾曲状又は台形状である、との手段を加えたものである。
【0011】
上記手段では、肩部を一度反転させて凹部状に陥没させると元の肩部に戻りにくくすることを達成し得る。
【0014】
また本発明の他の手段は、上記手段に、第1屈曲部及び第2屈曲部が肉薄部で形成されている、との手段を加えたものである。
【0015】
上記手段では、肩部を凹部にする第1屈曲部及び第2屈曲部を簡単且つ低コストで形成し得る。
【0016】
また本発明の他の手段は、上記いずれかの手段に、キャップの開口端が、凹部の表面に当接している、との手段を加えたものである。
【0017】
上記手段では、開口端がキャップ内に浸入しようとする水滴を堰き止める機能を発揮し得る。
【発明の効果】
【0018】
本発明では、チューブ本体の外表面を伝わってキャップ側に流れ落ちる水滴がキャップ内に浸入することを防止することにより、内容物の品質劣化及びカビや雑菌の繁殖を抑制することができる。
またチューブ容器を使い切る直前においては、チューブ容器内に残留している内容物を容易に搾り出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施例として、チューブ容器の正立状態を示す半断面図である。
【
図2】チューブ本体に凹部を形成する過程を示し、Aは凹部を形成する直前の状態、Bは凹部を形成した直後の状態、Cは更にキャップを装着した状態を示している。
【
図3】チューブ容器を倒立させた状態を拡大して示す部分半断面図である。
【
図4】比較例として従来例のチューブ容器を拡大して示す部分断面図ある。
【
図5】本発明のチューブ容器を拡大して示す部分断面図である。
【
図6】本発明の第2実施例を示すチューブ容器であり、Aはチューブ本体の正立状態を示す半断面図、Bは凹部を形成した直後のチュープ容器の正立状態を示す半断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
図1は本発明の実施例として、チューブ容器の正立状態を示す半断面図、
図2はチューブ容器本体に凹部を形成する過程を示し、Aは凹部を形成する直前の状態、Bは凹部を形成した直後の状態、Cは更にキャップを装着した状態を示している。また
図3はチューブ容器を倒立させた状態を拡大して示す部分半断面図である。
本発明のチューブ容器は、例えば洗顔フォーム、ヘアトリートメント剤、歯磨き剤、化粧料等の内容物を収容する容器であり、例えばバスルームや洗面所の棚や台座等の設置面上にキャップを下に向けた倒立姿勢の状態で置かれるものである。
図1に示すように、チューブ容器は、内容物が収容されるチューブ本体1と、封止用のキャップ11を有して構成されている。チューブ本体1は、例えばポリエチレンなど合成樹脂製の積層シートを丸めて両端部を重ね合わせ、その重ね合わせ部を溶着して円筒状に形成された胴部5の上端にヘッド部2が設けられている。ヘッド部2は、凹状に形成された肩部4と、この肩部4の中央に立設された口筒部3とを有して構成され、ヘッド部2の基端である肩部4の基端が胴部5の上端に溶着等により接続されたものである。また胴部5の下端は扁平状にシールされた底シール部6によって封止されている。なお、口筒部3の外周面には雄ネジ部3aが形成されている。
【0021】
図2Aに示すように、ヘッド部2の基端(肩部4の基端)が胴部5の上端に接続された直後は、肩部4は胴部5の上方に向かって断面湾曲状(ドーム状)に突出している。肩部4と胴部5の境界部分に肉薄部から成る第1屈曲部7が環状に形成され、同じく肩部4と口筒部3の境界部分にも肉薄部から成る第2屈曲部8が環状に形成されている。そして、
図2Bに示すように、ヘッド部2を下方のチューブ本体1側に向かって押し込むと、肩部4が第1屈曲部7及び第2屈曲部8を起点に陥没状に反転変形する。反転変形後のチューブ本体1の上部には、肩部4が陥没設して成る断面円弧状の凹部9が形成されている。肩部4を一度反転させて凹部9を形成した後は、使用者がチューブ本体1の胴部5をスクイズして内容物を吐出したとしても、簡単に凹部9が再反転して元の肩部4の形状(上方に湾曲状に突出する形状)に戻らないようになっている。また口筒部3の先端部分は、境界部分である第1屈曲部7よりも上方に突出している。
【0022】
図1に示すように、キャップ11は頂壁12下面側に外筒部13及び内筒部14が垂下設された有頂二重円筒状から成る合成樹脂製の部材であり、内筒部14の内周面には口筒部3に形成された雄ネジ部3aに螺合する雌ネジ部14aが形成されている。キャップ11の頂壁12は平面視円形状であるが、その断面は水平又は下方に向かって僅かに凹状に湾曲する形状を有して形成されている。
外筒部13の半径rは、チューブ本体1の容器軸Oから第1屈曲部7までの半径Rよりも小さい寸法で形成されている。また外筒部13の高さ寸法Hは、本実施例ではキャップ11をチューブ本体1側の口筒部3に装着した状態において、外筒部13の開口端13aが陥没設された断面円弧状の凹部9の表面のいずれかの位置に対して近接する寸法で形成されているが、いずれかの位置にて当接する寸法で形成されていても良い。
尚、この実施例では、チューブ本体1の口筒部3に上方に向かって縮径状に形成されて成るノズル10が取り付けられており、ノズル10の先端の吐出口から内容物を吐出させることが可能となっている。
【0023】
図1及び
図2Cに示すように、キャップ11をチューブ本体1側の口筒部3に装着し、キャップ11側の雄ネジ部3aをチューブ本体1側の雌ネジ部14aに螺合させることにより口筒部3を封止することができる。この際、キャップ11側の外筒部13の開口端13aが、チューブ本体1側に陥没設された凹部9の表面に近接することになる。
【0024】
このチューブ容器は、キャップ11をチューブ本体1側の口筒部3に装着した後、キャップ11を下方に向けた倒立姿勢の状態でバスルームや洗面所の棚や台座等の設置面20の上に置かれる。上記のように、キャップ11の頂壁12は、その断面が水平又は下方に向かって僅かに凹状に湾曲する形状であることから、チューブ容器はキャップ11を下方に向けた状態で設置面20の上に載せることにより、チューブ容器の倒立姿勢を安定的に維持する高い自立性を有している。
【0025】
チューブ容器から内容物を吐出させて洗顔等を行った使用後の状態においては、水滴Wが胴部5表面に付着することになる。
図3に示すように、これらの水滴Wは胴部5表面を伝わり、チューブ容器下方の第1屈曲部7から直接設置面20に落下する。あるいは第1屈曲部7からキャップ11の外筒部13を伝わって下方に流れ落ちることになる。よって、水滴Wが凹部9を介してキャップ11内に浸入することを防止できる。
【0026】
特に倒立姿勢の状態において、キャップ11の開口端13aが、第1屈曲部7よりも上方に位置すると共に凹部9内に入り込んで凹部9の表面に当接する構成では、水滴Wのキャップ11内への浸入を効果的に堰き止めることが可能となる。よって、このような構成のチューブ容器では、キャップ11内に浸入した水による内容物の品質劣化を防止し、あるいはキャップ11内に溜まった水を原因とするカビや雑菌の繁殖を抑制することができる。
【0027】
図4は比較例として従来例のチューブ容器を拡大して示す部分断面図、
図5は本発明のチューブ容器を拡大して示す部分断面図である。
ところで、
図4に示すように従来例のチューブ容器は、口筒部3側に突出形状された肩部4がほとんど反転変形しない形状であるため、胴部5を搾っても内容物を吐出させ難いものであった。
これに対し、
図5に示すように、本発明のチューブ容器では肩部4が反転変形可能であることから、肩部4を陥没設させて凹部9とした状態では、肩部4の内面が胴部5の内面に接近するので内容物をより簡単に搾り出すことが可能である。よって、特にチューブ容器を使い切る直前においては、チューブ容器内に残留している内容物をこれまで以上に効率良く搾り出すことができる。
【0028】
図6は本発明の第2実施例を示すチューブ容器であり、Aはチューブ本体の正立状態を示す半断面図、Bは凹部を形成した直後のチュープ容器の正立状態を示す半断面図である。
第2実施例に示すチューブ容器が、上記第1実施例において説明したチューブ容器と異なる点は肩部4及び凹部9の形状にあり、その他の構成及び効果を上記第1実施例同様である。
図6Aに示すように第2実施例に示すチューブ容器では、肩部4が中間屈曲部4aで屈曲する断面略台形状で形成される構成である。そして、
図6Bに示すように、この第2実施例においも肩部4を第1屈曲部7及び第2屈曲部8を起点に陥没状に反転変形させることで凹部9が形成されるが、このとき肩部4は中間屈曲部4aにおいても反転することになる。この第2実施例においても、上記第1実施例同様又はそれ以上に、簡単に凹部9が再反転して元の肩部4の形状(上方に湾曲状に突出する形状)に戻ることを抑制することが可能である。
【0029】
以上、実施例に沿って本発明の構成とその作用効果について説明したが、本発明の実施の形態は上記実施例に限定されるものではない。
例えば、上記実施例では、チューブ本体1の口筒部3の先端にノズル10を有する構成を示して説明したが、本発明はこれに限られるものではなく、口筒部3にノズル10を設けず、内容物が口筒部3を介して直接吐出される構成であっても良い。
【0030】
また上記実施例では、ヘッド部2をチューブ本体1側に押し込んで肩部4を反転変形させて凹部9を形成した後にキャップ11を装着する構成を示して説明したが、本発明はこれに限られるものではなく、先に凸状に突出した状態のヘッド部2の口筒部3にキャップ11を装着し、その後にキャップ11を押下して肩部4を反転変形させることによっても同様に凹部9を形成することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明は、バスルームや洗面所等に倒立状態で配置されるチューブ容器の分野における用途展開をさらに広い領域で図ることができる。
【符号の説明】
【0032】
1 : チューブ本体
2 : ヘッド部
3 : 口筒部
3a : 雄ネジ部
4 : 肩部
4a : 中間屈曲部
5 : 胴部
6 : 底シール部
7 : 第1屈曲部(境界部分)
8 : 第2屈曲部(境界部分)
9 : 凹部
10 : ノズル
11 : キャップ
12 : 頂壁
13 : 外筒部
13a: 開口端
14 : 内筒部
14a: 雌ネジ部
20 : 設置面