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特許7009053有機セレン化合物の組成物およびその使用方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-14
(45)【発行日】2022-01-25
(54)【発明の名称】有機セレン化合物の組成物およびその使用方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/7076 20060101AFI20220118BHJP
   A61K 31/223 20060101ALI20220118BHJP
   A61K 38/28 20060101ALI20220118BHJP
   A61P 3/08 20060101ALI20220118BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20220118BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220118BHJP
【FI】
A61K31/7076
A61K31/223
A61K38/28
A61P3/08
A61P3/10
A61P43/00 121
【請求項の数】 11
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2016178302
(22)【出願日】2016-09-13
(65)【公開番号】P2017078056
(43)【公開日】2017-04-27
【審査請求日】2019-09-12
(31)【優先権主張番号】14/855,128
(32)【優先日】2015-09-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502065930
【氏名又は名称】オールテック,インク.
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】特許業務法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】パワー,ローナン
(72)【発明者】
【氏名】ラン,ジージェン
【審査官】榎本 佳予子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/144776(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0026090(US,A1)
【文献】特開2006-151965(JP,A)
【文献】特開2007-106732(JP,A)
【文献】特表2009-534467(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-33/44
A61K 38/00-38/58
A61K 45/00-45/08
A61P 1/00-43/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)5’-メチルセレノアデノシン及び以下の式(I)の化合物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物と、
(ii)Se-アデノシル-L-ホモシステイン及び以下の式(II)の化合物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物と、
(iii)γ-グルタミル-メチルセレノ-システイン及び以下の式(III)の化合物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物と、
を含少なくとも3種類の異なる化合物と、担体と、を含む、被検体においてインスリンを補充するための組成物:
【化1】

式中、
は、H、アシル、アルキル、アルケニル、アルキニル、アラルキル、カルボキシル、シクロアルキル、C(O)R’、若しくはC(O)OR’であり、ここでR’は、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、アラルキル若しくはヘテロシクリルであるか;又は、R及びRが一体化し、酸素及び窒素から選択される少なくとも1個のヘテロ原子を含む、4~8個の環原子を含むヘテロ環を形成し;

は、H、アシル、アルキル、アルケニル、アルキニル、アラルキル、カルボキシル、シクロアルキル、C(O)R’、若しくはC(O)OR’であり、ここでR’は、アルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキル若しくはヘテロシクリルから選択されるか;又は、R及びRが一体化し、酸素及び窒素から選択される少なくとも1個のヘテロ原子を含む、4~8個の環原子を含むヘテロ環を形成し;

は、H、アシル、アルキル、アルケニル、アルキニル、アラルキル、シクロアルキル、カルボキシル若しくはC-アミドであるか;又は、R及びRとこれらが接続する原子とが一体化し、酸素及び窒素から選択される少なくとも1個のヘテロ原子を含む、4~8個の環原子を含むヘテロ環を形成し;

は、H、アシル、アルキル、アルケニル、アルキニル、アラルキル、シクロアルキル、カルボキシル若しくはC-アミドであるか;又は、R及びRとこれらが接続する原子とが一体化し、酸素及び窒素から選択される少なくとも1個のヘテロ原子を含む、4~8個の環原子を含むヘテロ環を形成し;

は、オキソ、ヒドロキシル、アルキル、アルケニル、アルキニル、OR’であるか、又は存在せず;R’は、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、及びアラルキルから選択され;

は、オキソ、ヒドロキシル、アルキル、アルケニル、アルキニル、OR’であるか、又は存在せず;R’は、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、及びアラルキルから選択され;

は、カルボキシル基及びアミノ基の両方を有する置換アルキルではないC-C16アルキル、アルケニル、アルキニル、ケトン、アミノアルコール、アルギニン・ヒスチジン・リジン・アスパラギン酸・グルタミン酸・セリン・トレオニン・アスパラギン・グルタミン・システイン・セレノシステイン・グリシン・プロリン・アラニン・バリン・イソロイシン・ロイシン・メチオニン・フェニルアラニン・チロシン及びトリプトファンからなる群から選択されるアミノ酸、OR’、Se-R’、又はS-R’であり、OR’のR’は、H、アルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキル及びヘテロシクリルからなる群から選択され、Se-R’のR’は、H、C-C16アルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキル、及びヘテロシクリルからなる群から選択され、並びにS-R’のR’は、H、C-C16アルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキル、及びヘテロシクリルからなる群から選択され;

は、水素、アジド、アルキル、アルケニル、又はアルキニルである。

は、H、アシル、アルキル、アルケニル、アルキニル、アラルキル、カルボキシル、シクロアルキル、C(O)R’、若しくはC(O)OR’であり、ここでR’は、アルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキル若しくはヘテロシクリルであるか;又は、R及びR10が一体化し、酸素及び窒素から選択される少なくとも1個のヘテロ原子を含む、4~8個の環原子を含むヘテロ環を形成し;

10は、H、アシル、アルキル、アルケニル、アルキニル、アラルキル、カルボキシル、シクロアルキル、C(O)R’、若しくはC(O)OR’であり、ここでR’は、アルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキル若しくはヘテロシクリルから選択されるか;又は、R及びR10が一体化し、酸素及び窒素から選択される少なくとも1個のヘテロ原子を含む、4~8個の環原子を含むヘテロ環を形成し;

11は、OR、アルコキシ、アラルコキシ又はアミノであり、ここでRは、アルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロシクリル、医薬的に許容され得る塩、及び分子内塩から選択される。
【化2】

式中、
は、H、アシル、アルキル、アルケニル、アルキニル、アラルキル、カルボキシル、シクロアルキル、C(O)R’、若しくはC(O)OR’であり、ここでR’は、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、アラルキル若しくはヘテロシクリルであるか;又は、R及びRが一体化し、酸素及び窒素から選択される少なくとも1個のヘテロ原子を含む、4~8個の環原子を含むヘテロ環を形成し;

は、H、アシル、アルキル、アルケニル、アルキニル、アラルキル、カルボキシル、シクロアルキル、C(O)R’、若しくはC(O)OR’であり、ここでR’は、アルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキル若しくはヘテロシクリルから選択されるか;又は、R及びRが一体化し、酸素及び窒素から選択される少なくとも1個のヘテロ原子を含む、4~8個の環原子を含むヘテロ環を形成し;

は、OH、OR、アルコキシ、アラルコキシ又はアミノであり、ここでRは、アルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロシクリル、医薬的に許容され得る塩、及び分子内塩から選択され;

は、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロシクリル、医薬的に許容され得る塩、及び分子内塩であり;

は、オキソ、ヒドロキシル、アルキル、アルケニル、アルキニル、OR’であるか、又は存在せず;R’は、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、及びアラルキルから選択され;

は、オキソ、ヒドロキシル、アルキル、アルケニル、アルキニル、OR’であるか、又は存在せず;R’は、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、及びアラルキルから選択され;

は、カルボキシル基及びアミノ基の両方を有する置換アルキルではないC-C16アルキル、アルケニル、アルキニル、ケトン、アミノアルコール、アルギニン・ヒスチジン・リジン・アスパラギン酸・グルタミン酸・セリン・トレオニン・アスパラギン・グルタミン・システイン・セレノシステイン・グリシン・プロリン・アラニン・バリン・イソロイシン・ロイシン・メチオニン・フェニルアラニン・チロシン及びトリプトファンからなる群から選択されるアミノ酸、OR’、Se-R’、又はS-R’であり、OR’のR’は、H、アルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキル及びヘテロシクリルからなる群から選択され、Se-R’のR’は、H、C-C16アルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキル、及びヘテロシクリルからなる群から選択され、S-R’のR’は、H、C-C16アルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキル、及びヘテロシクリルからなる群から選択される。
【請求項2】
(i)5’-メチルセレノアデノシン及び請求項1に記載の式(I)の化合物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物と、
(ii)Se-アデノシル-L-ホモシステイン及び請求項1に記載の式(II)の化合物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物と、
(iii)γ-グルタミル-メチルセレノ-システイン及び請求項1に記載の式(III)の化合物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物と、
を含少なくとも3種類の異なる化合物と、担体と、を含む、被検体においてインスリン活性を向上させるための組成物。
【請求項3】
(i)5’-メチルセレノアデノシン及び請求項1に記載の式(I)の化合物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物と、
(ii)Se-アデノシル-L-ホモシステイン及び請求項1に記載の式(II)の化合物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物と、
(iii)γ-グルタミル-メチルセレノ-システイン及び請求項1に記載の式(III)の化合物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物と、
を含少なくとも3種類の異なる化合物と、担体と、を含む、被検体において糖産生を阻害するための組成物。
【請求項4】
(i)5’-メチルセレノアデノシン及び請求項1に記載の式()の化合物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物と、
(ii)Se-アデノシル-L-ホモシステイン及び請求項1に記載の式(II)の化合物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物と、
(iii)γ-グルタミル-メチルセレノ-システイン及び請求項1に記載の式(III)の化合物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物と、
を含少なくとも3種類の異なる化合物と、担体と、を含む、被検体において糖代謝を調整するための又は糖尿病治療のための組成物。
【請求項5】
5’-メチルセレノアデノシン、Se-アデノシル-L-ホモシステイン及びγ-グルタミル-メチルセレノ-システインを含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
少なくとも0.1%(w/v)の式(I)の化合物含む、請求項4に記載の糖代謝の調整又は糖尿病治療のための組成物。
【請求項7】
少なくとも0.1%(w/v)の5’-メチルセレノアデノシンを含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
少なくとも0.1%(w/v)の式(II)の化合物含む、請求項4に記載の糖代謝の調整又は糖尿病治療のための組成物。
【請求項9】
インスリン又はその類似体若しくは誘導体(前記「類似体」および前記「誘導体」という用語は、相互に置き換え可能であり、所与の分子の少なくとも1つの位置の天然または非天然の改質を指す。)を更に含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
少なくとも0.1%(w/v)の式(III)の化合物含む、請求項4に記載の糖代謝の調整又は糖尿病治療のための組成物。
【請求項11】
5’-メチルチオアデノシン、S-アデノシル-L-ホモシステインまたはγ-グルタミル-メチル-システインの1つ以上を含まない、請求項1~4のいずれか1項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本特許出願は、2014年3月14日に出願された国際特許出願第PCT/US2014/029542号の一部継続出願であり、この出願は、本明細書に参考として組み込まれる。
【0002】
本出願は、有機セレンの組成物および化合物の組成物、および種々の生体経路において、インスリンを補充し、インスリン活性を向上させ、糖産生を阻害するか、または糖代謝を調整するためのこれらの使用方法に関する。
【背景技術】
【0003】
セレン(Se)は、複製、甲状腺ホルモン代謝、DNA合成および酸化損傷および感染からの保護のような多くの生体過程に重要な役割を果たす必須微量元素である。セレンは、グルタチオンペルオキシダーゼ(GPx)、チオレドキシンレダクターゼおよびあるメチオニンスルホキシドレダクターゼのような種々のセレン依存性酵素の触媒部位に組み込まれる。これらのセレノ酵素は、代謝活性、免疫機能、抗酸化防御、細胞内酸化還元制御およびミトコンドリア機能の制御に寄与する。
【0004】
それに加え、この文献の結果は、異なる化学形態のセレンが、異なる生体活性を有することを示す。例えば、セレノゾリジンは、セレノメチオニンよりも、肺腫瘍の数を減らすのに効果的であった(Poerschkeら、J Biochem Molecular Toxicology 2012 26:344)。Bargerらは、マウスに異なるセレン源(例えば、セレノメチオニン、亜セレン酸ナトリウムおよびセレン化酵母)を与えると、遺伝子発現およびミトコンドリアの構造および機能の特定の機能的経路に異なる影響を及ぼすことを示した(Bargerら、Genes and Nutrition 2012 7:155)。セレン化酵母は、多くのセレンおよび硫黄化合物を含有するが、セレン化酵母中の全てのセレン化合物が生体過程に影響を与えるわけではない。これに加え、セレン化酵母中のセレンと硫黄化合物の混合物は、互いに阻害性であることが示されているか、または生体過程に悪影響を与えるか、または細胞に対して毒性であることが示されている。
【0005】
非インスリン依存性(II型)糖尿病(DM)は、膵臓のβ細胞機能に起因するインスリン分泌の不足と合わせ、骨格筋、肝臓および脂肪におけるインスリン抵抗性を特徴とする疾患である。インスリン抵抗性は、II型糖尿病の中心的な特徴である。肝臓において、Forkhead Box Class O(FOXO)遺伝子転写因子ファミリーのメンバーは、これらのリン酸化していない状態では活性化し、細胞核の中に留まる。核において、FOXO転写因子は、遺伝子のプロモーター領域、例えば、グルコース-6-ホスファターゼ(G6PC)に結合する。PGC-1αのような他の転写因子と共に、G6PCの転写が増え、これによって、糖産生速度が大きくなる。グルコース-6-ホスファターゼは、糖新生およびグリコーゲン分解の最後の工程も触媒し、肝臓から糖を放出する。従って、G6PCは、特に、糖尿病被検体において、糖ホメオスタシスの制御に重要である。
【0006】
別個の化学形態のセレンの生体活性およびアベイラビリティが明らかに異なるため、生体プロセスに良い影響を与えるセレンを含有する化合物を特定する必要がある。特に、種々の生体経路において、インスリンの補充、インスリン活性の向上、糖産生の阻害、または糖代謝の調整におけるセレンの影響を特性決定する必要がある。さらに、I型糖尿病またはII型糖尿病を患う個体について、インスリン補充療法としてのセレン化合物の効果およびその効能を決定する必要がある。
【発明の概要】
【0007】
本開示は、被検体においてインスリンを補充する方法を提供する。インスリンを補充する方法は、5’-メチルセレノアデノシン、Se-アデノシル-L-ホモシステイン、γ-グルタミル-メチルセレノ-システイン、式(I)の化合物、式(II)の化合物、式(III)の化合物、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも3種類の異なる化合物を含む組成物を被検体に投与することを含む。この方法の組成物は、担体も含んでいてもよい。
【0008】
本開示は、被検体においてインスリン活性を向上させる方法も提供する。インスリン活性を向上させる方法は、5’-メチルセレノアデノシン、Se-アデノシル-L-ホモシステイン、γ-グルタミル-メチルセレノ-システイン、式(I)の化合物、式(II)の化合物、式(III)の化合物、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも3種類の異なる化合物を含む組成物を被検体に投与することを含む。この方法の組成物は、担体も含んでいてもよい。インスリン活性を向上させる方法は、インスリンまたはその類似体または誘導体をさらに投与することを含んでいてもよい。
【0009】
本開示は、さらに、被検体において糖産生を阻害する方法を提供する。糖産生を阻害する方法は、5’-メチルセレノアデノシン、Se-アデノシル-L-ホモシステイン、γ-グルタミル-メチルセレノ-システイン、式(I)の化合物、式(II)の化合物、式(III)の化合物、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも3種類の異なる化合物を含む組成物を被検体に投与することを含む。この方法の組成物は、担体も含んでいてもよい。
【0010】
本開示は、さらに、被検体において糖代謝を調整する方法を提供する。糖代謝を調整する方法は、5’-メチルセレノアデノシン、Se-アデノシル-L-ホモシステイン、γ-グルタミル-メチルセレノ-システイン、式(I)の化合物、式(II)の化合物、式(III)の化合物、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも3種類の異なる化合物を含む組成物を被検体に投与することを含む。この方法の組成物は、担体も含んでいてもよい。
【0011】
被検体においてインスリンを補充する方法、インスリン活性を向上させる方法、糖産生を阻害する方法、または糖代謝を調整する方法のいずれか1つにおいて、組成物は、5’-メチルセレノアデノシン、Se-アデノシル-L-ホモシステインおよびγ-グルタミル-メチルセレノ-システインを含んでいてもよい。被検体においてインスリンを補充する方法、インスリン活性を向上させる方法、糖産生を阻害する方法、または糖代謝を調整する方法のいずれか1つにおいて、組成物は、少なくとも0.1%(w/v)の5’-メチルセレノアデノシンを含んでいてもよい。被検体においてインスリンを補充する方法、インスリン活性を向上させる方法、糖産生を阻害する方法、または糖代謝を調整する方法のいずれか1つにおいて、組成物は、乾燥した形態またはカプセル形態であってもよい。
【0012】
被検体においてインスリンを補充する方法、インスリン活性を向上させる方法、糖産生を阻害する方法、または糖代謝を調整する方法のいずれか1つにおいて、組成物は、さらに、インスリンまたはその類似体または誘導体を含んでいてもよい。被検体においてインスリンを補充する方法、インスリン活性を向上させる方法、糖産生を阻害する方法、または糖代謝を調整する方法のいずれか1つにおいて、組成物は、さらに、インスリン感受性改善薬、インスリン分泌促進薬またはインクレチン模倣薬を含んでいてもよい。被検体においてインスリンを補充する方法、インスリン活性を向上させる方法、糖産生を阻害する方法、または糖代謝を調整する方法のいずれか1つにおいて、組成物は、5’-メチルチオアデノシン、S-アデノシル-L-ホモシステインまたはγ-グルタミル-メチル-システインの1つ以上を含んでいなくてもよい。
【0013】
被検体においてインスリンを補充する方法、インスリン活性を向上させる方法、糖産生を阻害する方法、または糖代謝を調整する方法のいずれか1つにおいて、組成物は、経口投与されてもよい。被検体においてインスリンを補充する方法、インスリン活性を向上させる方法、糖産生を阻害する方法、または糖代謝を調整する方法のいずれか1つにおいて、5’-メチルセレノアデノシンまたは式(I)の化合物は、セレノグリコシドである。被検体においてインスリンを補充する方法、インスリン活性を向上させる方法、糖産生を阻害する方法、または糖代謝を調整する方法のいずれか1つにおいて、組成物は、被検体の肝細胞に投与されてもよい。
【0014】
本開示は、5’-メチルセレノアデノシン、Se-アデノシル-L-ホモシステイン、γ-グルタミル-メチルセレノ-システイン、式(I)の化合物、式(II)の化合物、式(III)の化合物、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも2種類の異なる化合物を含む組成物を提供する。組成物は、担体も含んでいてもよい。
【0015】
本開示は、さらに、5’-メチルセレノアデノシン、Se-アデノシル-L-ホモシステイン、γ-グルタミル-メチルセレノ-システインからなる群から選択される少なくとも3種類の異なる化合物を含む組成物を提供する。組成物は、担体も含んでいてもよい。
【0016】
本開示は、少なくとも0.1%(w/v)の式(I)の化合物
【化1】

またはその医薬的に許容され得る塩、水和物またはプロドラッグを含む組成物を提供する。
【0017】
は、H、アシル、アルキル、アルケニル、アルキニル、アラルキル、カルボキシル、シクロアルキル、C(O)R’、C(O)OR’であり、R’は、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、アラルキルまたはヘテロシクリルであるか;または、RとRを合わせ、酸素または窒素から選択される少なくとも1個のヘテロ原子を含む、4~8個の環原子を含むヘテロ環式環を形成する。
【0018】
は、H、アシル、アルキル、アルケニル、アルキニル、アラルキル、カルボキシル、シクロアルキル、C(O)R’、C(O)OR’であり、R’は、アルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキルまたはヘテロシクリルから選択されるか;または、RとRを合わせ、酸素または窒素から選択される少なくとも1個のヘテロ原子を含む、4~8個の環原子を含むヘテロ環式環を形成する。
【0019】
は、H、アシル、アルキル、アルケニル、アルキニル、アラルキル、シクロアルキル、カルボキシルまたはC-アミドであるか;またはR、Rと、これらが接続する原子を合わせ、酸素または窒素から選択される少なくとも1個のヘテロ原子を含む、4~8個の環原子を含むヘテロ環式環を形成する。
【0020】
は、H、アシル、アルキル、アルケニル、アルキニル、アラルキル、シクロアルキル、カルボキシルまたはC-アミドであるか;またはR、Rと、これらが接続する原子を合わせ、酸素または窒素から選択される少なくとも1個のヘテロ原子を含む、4~8個の環原子を含むヘテロ環式環を形成する。
【0021】
は、オキソ、ヒドロキシル、アルキル、アルケニル、アルキニル、OR’であるか、または存在せず;R’は、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリールまたはアラルキルから選択される。
【0022】
は、オキソ、ヒドロキシル、アルキル、アルケニル、アルキニル、OR’であるか、または存在せず;R’は、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリールまたはアラルキルから選択される。
【0023】
は、C-C16アルキルがカルボキシル基およびアミノ基の両方を有する置換アルキルではないC-C16アルキル、アルケニル、アルキニル、ケトン、アミノアルコール、アルギニン、ヒスチジン、リジン、アスパラギン酸、グルタミン酸、セリン、トレオニン、アスパラギン、グルタミン、システイン、セレノシステイン、グリシン、プロリン、アラニン、バリン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、チロシンおよびトリプトファンからなる群から選択されるアミノ酸、OR’、Se-R’、S-R’であり、OR’のR’は、H、アルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキルおよびヘテロシクリルからなる群から選択され、Se-R’のR’は、H、C-C16アルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキルおよびヘテロシクリルからなる群から選択され、S-R’のR’は、H、C-C16アルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキルおよびヘテロシクリルからなる群から選択される。
【0024】
は、水素、アジド、アルキル、アルケニル、アルキニルである。式(I)の組成物は、担体も含んでいてもよい。それに加え、組成物の5’-メチルセレノアデノシンまたは式(I)の化合物は、セレノグリコシドであってもよい。式(I)の組成物は、被検体の肝細胞にも投与されてもよい。
【0025】
本開示は、少なくとも0.1%(w/v)の式(II)の化合物
【化2】

またはその医薬的に許容され得る塩、水和物またはプロドラッグを含む組成物も提供する。
【0026】
は、H、アシル、アルキル、アルケニル、アルキニル、アラルキル、カルボキシル、シクロアルキル、C(O)R’、C(O)OR’であり、R’は、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、アラルキルまたはヘテロシクリルであるか;または、RとRを合わせ、酸素または窒素から選択される少なくとも1個のヘテロ原子を含む、4~8個の環原子を含むヘテロ環式環を形成する。
【0027】
は、H、アシル、アルキル、アルケニル、アルキニル、アラルキル、カルボキシル、シクロアルキル、C(O)R’、C(O)OR’であり、R’は、アルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキルまたはヘテロシクリルから選択されるか;または、RとRを合わせ、酸素または窒素から選択される少なくとも1個のヘテロ原子を含む、4~8個の環原子を含むヘテロ環式環を形成する。
【0028】
は、H、アシル、アルキル、アルケニル、アルキニル、アラルキル、シクロアルキル、カルボキシルまたはC-アミドであるか;またはR、Rと、これらが接続する原子を合わせ、酸素または窒素から選択される少なくとも1個のヘテロ原子を含む、4~8個の環原子を含むヘテロ環式環を形成する。
【0029】
は、H、アシル、アルキル、アルケニル、アルキニル、アラルキル、シクロアルキル、カルボキシルまたはC-アミドであるか;またはR、Rと、これらが接続する原子を合わせ、酸素または窒素から選択される少なくとも1個のヘテロ原子を含む、4~8個の環原子を含むヘテロ環式環を形成する。
【0030】
は、オキソ、ヒドロキシル、アルキル、アルケニル、アルキニル、OR’であるか、または存在せず;R’は、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリールまたはアラルキルから選択される。
【0031】
は、オキソ、ヒドロキシル、アルキル、アルケニル、アルキニル、OR’であるか、または存在せず;R’は、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリールまたはアラルキルから選択される。
【0032】
は、水素、アジド、アルキル、アルケニル、アルキニルである。
【0033】
は、H、アシル、アルキル、アルケニル、アルキニル、アラルキル、カルボキシル、シクロアルキル、C(O)R’、C(O)OR’であり、R’は、アルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキルまたはヘテロシクリルであるか;または、RとR10を合わせ、酸素または窒素から選択される少なくとも1個のヘテロ原子を含む、4~8個の環原子を含むヘテロ環式環を形成する。
【0034】
10は、H、アシル、アルキル、アルケニル、アルキニル、アラルキル、カルボキシル、シクロアルキル、C(O)R’、C(O)OR’であり、R’は、アルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキルまたはヘテロシクリルから選択されるか;または、RとR10を合わせ、酸素または窒素から選択される少なくとも1個のヘテロ原子を含む、4~8個の環原子を含むヘテロ環式環を形成する。
【0035】
11は、OR、アルコキシ、アラルコキシまたはアミノであり、Rは、アルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロシクリルまたは医薬的に許容され得る塩または分子内塩から選択される。
【0036】
式(II)の組成物は、担体を含んでいてもよい。式(II)の組成物は、被検体の肝細胞にも投与されてもよい。
【0037】
最後に、本開示は、少なくとも0.1%(w/v)の式(III)の化合物
【化3】

またはその医薬的に許容され得る塩、水和物またはプロドラッグを含む組成物を提供する。
【0038】
は、H、アシル、アルキル、アルケニル、アルキニル、アラルキル、カルボキシル、シクロアルキル、C(O)R’、C(O)OR’であり、R’は、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、アラルキルまたはヘテロシクリルであるか;または、RとRを合わせ、酸素または窒素から選択される少なくとも1個のヘテロ原子を含む、4~8個の環原子を含むヘテロ環式環を形成する。
【0039】
は、H、アシル、アルキル、アルケニル、アルキニル、アラルキル、カルボキシル、シクロアルキル、C(O)R’、C(O)OR’であり、R’は、アルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキルまたはヘテロシクリルから選択されるか;または、RとRを合わせ、酸素または窒素から選択される少なくとも1個のヘテロ原子を含む、4~8個の環原子を含むヘテロ環式環を形成する。
【0040】
は、OH、OR、アルコキシ、アラルコキシまたはアミノであり、Rは、アルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロシクリル、または医薬的に許容され得る塩または分子内塩から選択される。
【0041】
は、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロシクリル、または医薬的に許容され得る塩または分子内塩である。
【0042】
は、オキソ、ヒドロキシル、アルキル、アルケニル、アルキニル、OR’であるか、または存在せず;R’は、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリールまたはアラルキルから選択される。
【0043】
は、オキソ、ヒドロキシル、アルキル、アルケニル、アルキニル、OR’であるか、または存在せず;R’は、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリールまたはアラルキルから選択される。
【0044】
は、C-C16アルキルがカルボキシル基およびアミノ基の両方を有する置換アルキルではないC-C16アルキル、アルケニル、アルキニル、ケトン、アミノアルコール、アルギニン、ヒスチジン、リジン、アスパラギン酸、グルタミン酸、セリン、トレオニン、アスパラギン、グルタミン、システイン、セレノシステイン、グリシン、プロリン、アラニン、バリン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、チロシンおよびトリプトファンからなる群から選択されるアミノ酸、OR’、Se-R’、S-R’であり、OR’のR’は、H、アルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキルおよびヘテロシクリルからなる群から選択され、Se-R’のR’は、H、C-C16アルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキルおよびヘテロシクリルからなる群から選択され、S-R’のR’は、H、C-C16アルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキルおよびヘテロシクリルからなる群から選択される。
【0045】
式(III)の組成物は、担体を含んでいてもよい。式(III)の組成物は、被検体の肝細胞にも投与されてもよい。
【0046】
本明細書に記載される組成物は、組成物の2種類の化合物それぞれを少なくとも約0.033%(w/v)を含んでいてもよく、または組成物の3種類の化合物それぞれを少なくとも約0.033%(w/v)を含んでいてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0047】
図面の簡単な説明は、以下のとおりである。セレン化合物の混合物が示されている場合、ppb単位での量は、混合物中のそれぞれのセレン化合物中のセレンのppb量を示す。硫黄化合物の混合物が示されている場合、ppb単位での量は、混合物中のそれぞれの硫黄化合物中の硫黄のppb量を示す。例えば、150ppbの化合物CDEは、全セレン濃度が450ppbであることと組み合わせて、化合物C中に150ppbのセレン、化合物D中に150ppbのセレン、化合物E中に150ppbのセレンを含む。例えば、150ppbの化合物HIJは、全硫黄濃度が450ppbであることと組み合わせて、化合物H中に150ppbの硫黄、化合物I中に150ppbの硫黄、化合物J中に150ppbの硫黄を含む。
【0048】
図1図1は、OD490によって示されるようなAML-12肝細胞における細胞生存性に対する、150ppbの化合物C、化合物D、化合物E、化合物H、化合物Iおよび化合物Jの個々の化合物および種々の組み合わせそれぞれの効果を示すグラフである。
図2図2は、AML-12肝細胞におけるG6pc遺伝子のmRNA発現レベルに対する化合物C、化合物D、化合物E、化合物H、化合物Iおよび化合物Jの種々の組み合わせの効果を示す。
図2A図2Aは、コントロールおよび150ppbの化合物CDEおよび化合物HIJで48時間処理されたAML-12細胞における相対的なG6pc mRNAレベルを示す棒グラフである。
図2B図2Bは、個々の化合物C、化合物D、化合物E、化合物H、化合物Iおよび化合物Jで48時間処理されたAML-12細胞における相対的なG6pc mRNAレベルを示す棒グラフである。
図3図3は、AML-12細胞における相対的なG6pc mRNA発現レベルに対するインスリン、化合物CDE、インスリンと化合物CDEの組み合わせの効果を示す棒グラフである。コントロール群(インスリンおよび化合物CDEを含まない処理群)と比較したとき、*P<0.05、**P<0.01。
図4図4は、8-CPT/Dexで一緒に処理されたAML-12細胞における相対的なG6pc mRNA発現レベルに対するインスリン、化合物CDE、インスリンと化合物CDEの組み合わせの効果を示す棒グラフである。挿入された図は、水のみ(コントロール)、8-CPT/Dexとインスリンの組み合わせ、8-CPT/Dex、インスリンおよび化合物CDEの組み合わせで処理されたAML-12細胞における相対的なG6pc mRNA発現レベルを示す高解像度の棒グラフである。
図5図5は、AML-12肝細胞におけるInsr遺伝子およびIgf1r遺伝子の相対的なmRNA発現レベルに対する化合物CDEおよび化合物HIJの効果を示す。
図5A図5Aは、150ppbの化合物CDEおよび150ppbの化合物HIJで24時間処理されたAML-12細胞における相対的なInsr mRNA発現を示す棒グラフである。コントロール(水ビヒクルで処理された)群と比較したとき、**P<0.01。
図5B図5Bは、150ppbの化合物CDEおよび150ppbの化合物HIJで24時間処理されたAML-12細胞における相対的なIgf1r mRNA発現を示す棒グラフである。コントロール(水ビヒクルで処理された)群と比較したとき、**P<0.01。
図5C図5Cは、コントロール、10nMまたは100nMのインスリン、150ppbまたは300ppbの化合物CDEで処理されたAML-12細胞、または8-CPT/Dex、インスリンおよび化合物CDEで一緒に処理されたAML-12細胞における相対的なInsr mRNA発現を示す棒グラフである。コントロール(8-CPT/Dex/インスリン/化合物CDEで処理されていない)群と比較したとき、*P<0.05、**P<0.01。
図5D図5Dは、コントロール、10nMまたは100nMのインスリン、150ppbまたは300ppbの化合物CDEで処理されたAML-12細胞、または8-CPT/Dex、インスリンおよび化合物CDEで一緒に処理されたAML-12細胞における相対的なIgf1r mRNA発現を示す棒グラフである。コントロール(8-CPT/Dex/インスリン/化合物CDEで処理されていない)群と比較したとき、*P<0.05、**P<0.01。
図6図6は、血清を含む培地で培養されたAML-12細胞において、トレオニン32でのリン酸化されたFoxo3(pFoxo3T32)およびトレオニン28でのリン酸化されたFOXO4(pFoxo4T28)のタンパク質レベルに対する化合物CDEおよび化合物HIJの効果を示す。
図6A図6Aは、水コントロールまたは150ppbの化合物CDEおよび150ppbの化合物HIJでのAML-12細胞の6時間処理に応答し、pFoxo3T32およびpFoxo4T28を含む種々のシグナル伝達分子のタンパク質発現を示すウエスタンブロットである。
図6B図6Bは、図6AのゲルにおけるpFoxo3T32タンパク質レベルの定量分析を示す棒グラフである。図6Cは、図6AのゲルにおけるpFoxo4T28タンパク質レベルの定量分析を示す棒グラフである。
図7図7は、血清を含まない培地で培養されたAML-12細胞におけるpFoxo3T32およびpFoxo4T28のタンパク質レベルに対する化合物CDE、化合物CEおよび化合物DEの効果を示す。
図7A図7Aは、水コントロールまたは150ppbの化合物CDE、150ppbの化合物CEおよび150ppbの化合物DEでの6時間のAML-12細胞の処理に応答したpFoxo3T32およびpFoxo4T28を含む種々のシグナル伝達分子のタンパク質発現を示すウエスタンブロットである。
図7B図7Bは、図7AのゲルにおけるpFoxo3T32タンパク質レベルの定量分析を示す棒グラフである。
図7C図7Cは、図7AのゲルにおけるpFoxo4T28タンパク質レベルの定量分析を示す棒グラフである。
図8図8は、ヒトIMR-32神経細胞におけるpFoxo4T28、pFoxo4S193および他のシグナル伝達分子のタンパク質レベルに対するコントロールまたは150ppbの化合物CDEおよび150ppbの化合物HIJの効果を示すウエスタンブロットである。
図9図9は、マウス初代培養肝細胞における糖産生、G6pc mRNA発現および細胞外のラクテートデヒドロゲナーゼ(LDH)活性に対する化合物CDEの効果を示す。
図9A図9Aは、コントロール、8-CPT/Dex、10nMまたは100nMのインスリン、150ppbまたは300ppbの化合物CDE、およびインスリンと化合物CDEの組み合わせで処理されたマウス肝細胞の培地中の相対的なグルコースレベルを示す棒グラフである。*ビヒクル処理群(グラフの1つめの棒グラフ)に対してP<0.05。
図9B図9Bは、コントロール、10nMまたは100nMのインスリン、150ppbまたは300ppbの化合物CDE、およびインスリンと化合物CDEの組み合わせで処理されたマウス肝細胞における相対的なG6pc mRNAレベルを示す棒グラフである。*ビヒクル処理群(グラフの1つめの棒グラフ)に対してP<0.05。
図9C図9Cは、コントロール、10nMまたは100nMのインスリン、150ppbまたは300ppbの化合物CDE、およびインスリンと化合物CDEの組み合わせで処理されたマウス肝細胞の培地中の相対的なLDHレベルを示す棒グラフである。
図10図10は、8-CPT/Dexで刺激されたマウス初代培養肝細胞における糖産生、G6pc mRNA発現および細胞外のLDH活性に対する化合物CDEの効果を示す。
図10A図10Aは、コントロール、8-CPT/Dex、8-CPT/Dexとインスリンまたは化合物CDEとの組み合わせ、および8-CPT/Dex、インスリンおよび化合物CDEの組み合わせで処理されたマウス肝細胞の培地中の相対的なグルコースレベルを示す棒グラフである。
図10B図10Bは、コントロール、8-CPT/Dex、8-CPT/Dexとインスリンまたは化合物CDEとの組み合わせ、および8-CPT/Dex、インスリンおよび化合物CDEの組み合わせで処理されたマウス肝細胞における相対的なG6pc mRNAレベルを示す棒グラフである。
図10C図10Cは、コントロール、8-CPT/Dex、8-CPT/Dexとインスリンまたは化合物CDEとの組み合わせ、および8-CPT/Dex、インスリンおよび化合物CDEの組み合わせで処理されたマウス肝細胞の培地中の相対的なLDHレベルを示す棒グラフである。*ビヒクル処理群(グラフの1つめの棒グラフ)に対してP<0.05。
図11A図11は、血清を含まない培地で培養したマウス初代培養肝細胞における糖産生および細胞外のLDH活性に対する化合物CDEの効果を示す。図11Aは、8-CPT/Dex存在下または非存在下、基本的なコントロール(水ビヒクル)、10nMまたは100nMのインスリン(Ins)、150ppbまたは300ppbの化合物CDE、インスリンと化合物CDEの組み合わせで6時間処理されたマウス肝細胞の培地中の相対的なグルコースレベルを示す棒グラフである。#基本的なコントロール処理群(グラフの1つめの棒グラフ)に対してP<0.05。*8-CPT/Dex処理群(グラフの1つめの棒グラフ)に対してP<0.05。
図11B図11Bは、8-CPT/Dex存在下または非存在下、基本的なコントロール(水ビヒクル)、10nMまたは100nMのインスリン(Ins)、150ppbまたは300ppbの化合物CDE、インスリンと化合物CDEの組み合わせで6時間処理されたマウス肝細胞の培地中の相対的なLDHレベルを示す棒グラフである。
図12図12は、マウス初代培養肝細胞におけるリン酸化されたPdk1(pPdk1)、セリン473でのAkt(pAktS473)、トレオニン24でのFoxo1(pFoxo1T24)、トレオニン32でのFoxo3(pFoxo3T32)、トレオニン28でのFoxo4(pFoxo4T28)およびセリン9でのGsk3b(pGsk3bS9)のタンパク質発現レベルに対する化合物CDEの効果を示す。
図12A図12Aは、マウス初代培養肝細胞におけるpPdk1、pAktS473、pFoxo1T24、pFoxo3T32、pFoxo4T28およびpGsk3bS9のタンパク質レベルに対するコントロール、インスリン、または150ppbまたは300ppbの化合物CDEの効果を示すウエスタンブロットである。
図12B図12Bは、コントロール、100nMのインスリン、または150ppbまたは300ppbの化合物CDEで処理されたマウス肝細胞における相対的なpPdk1タンパク質レベルを示す棒グラフである。
図12C図12Cは、コントロール、100nMのインスリン、または150ppbまたは300ppbの化合物CDEで処理されたマウス肝細胞における相対的なpAktS473タンパク質レベルを示す棒グラフである。
図12D図12Dは、コントロール、100nMのインスリン、または150ppbまたは300ppbの化合物CDEで処理されたマウス肝細胞における相対的なpFoxo1T24タンパク質レベルを示す棒グラフである。
図12E図12Eは、コントロール、100nMのインスリン、または150ppbまたは300ppbの化合物CDEで処理されたマウス肝細胞における相対的なpFoxo3T32タンパク質レベルを示す棒グラフである。
図12F図12Fは、コントロール、100nMのインスリン、または150ppbまたは300ppbの化合物CDEで処理されたマウス肝細胞における相対的なpGsk3bS9タンパク質レベルを示す棒グラフである。
図13図13は、血清を含まない条件で培養したマウス初代培養肝細胞におけるリン酸化されたPdk1、Akt、Foxo1およびFoxo3のタンパク質発現レベルに対する化合物CDE処理の時間の効果を示す。
図13A図13Aは、マウス初代培養肝細胞におけるpPdk1、pAktT308、pFoxo1T24、pFoxo3T32、AktおよびActbのタンパク質レベルに対する0分、5分、30分、1時間、2時間および3時間の化合物CDEの処理の効果を示すウエスタンブロットである。
図13B図13Bは、0分、5分、30分、1時間、2時間および3時間の化合物CDEを用いたマウス肝細胞の処理後の相対的なpPdk1タンパク質レベルを示す棒グラフである。*化合物CDE処理を行わなかったもの(0分群)と比較して、Pが少なくとも<0.05。
図13C図13Cは、0分、5分、30分、1時間、2時間および3時間の化合物CDEを用いたマウス肝細胞の処理後の相対的なpAktT308タンパク質レベルを示す棒グラフである。#P<0.15、*化合物CDE処理を行わなかったもの(0分群)と比較して、Pが少なくとも<0.05。
図13D図13Dは、0分、5分、30分、1時間、2時間および3時間の化合物CDEを用いたマウス肝細胞の処理後の相対的なpFoxo1T24およびpFoxo3T32を合わせたタンパク質レベルを示す棒グラフである。#P<0.15、*化合物CDE処理を行わなかったもの(0分群)と比較して、Pが少なくとも<0.05。
図14図14は、Leprdb/dbマウスにおける血中グルコースレベルに対する化合物CDEの効果を示す。
図14A図14Aは、27日齢~3.5ヶ月齢のマウスから1日おきに生理的食塩水または化合物CDEを腹腔内注射した後のLeprdb/dbマウスにおける血中グルコースレベルを示す棒グラフである。
図14B図14Bは、38日齢~66日齢のマウスから毎日、生理的食塩水または化合物CDEを腹腔内注射した後のLeprdb/dbマウスにおける血中グルコースレベルを示す棒グラフである。
図15図15は、27日齢~3.5ヶ月齢のマウスから1日おきに生理的食塩水または化合物CDEを腹腔内注射した後のLeprdb/dbマウスにおける糖耐能に対する化合物CDEの効果を示す。
図15A図15Aは、グルコース注射からゼロ時間点(グルコースを注射して直後に決定)および種々の時間点(0.25時間、0.5時間、1時間および2時間)に、生理的食塩水および化合物CDEで処理されたLeprdb/dbマウスにおける血中グルコースレベルに対する化合物CDEの効果を示すグラフである。*同じ時間点で、食塩水で処理された群と比較して、Pが少なくとも<0.05を指す。
図15B図15Bは、図15Aのグラフの曲線の下の面積(AUC)の定量分析を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0049】
(定義)
本明細書で使用される場合、「投与」および「投与する」という用語は、薬物、プロドラッグまたは他の薬剤または治療的な処置(例えば、本出願の組成物)を被検体にin vivo、in vitroで、またはex vivoの細胞、組織および臓器に与える作業を指す。本開示の化合物および組成物は、当該技術分野で知られている任意の投与経路によって被検体に与えられてもよい。ヒトの身体への例示的な投与経路は、目(眼)、口(口腔)、皮膚(局所または経皮)、鼻(鼻腔)、肺(吸入薬)、口粘膜(頬)、脳、耳、結腸、膣、または注射などによるものであってもよい。注射経路は、静脈内、皮下、腫瘍内、腹腔内などに投与されてもよい。
【0050】
「アルキル」という用語は、1~24個の炭素原子を含み、好ましくは、少なくとも3個の炭素原子を含む分枝鎖または非分枝鎖の飽和炭化水素基を指す。ある実施形態において、「アルキル」基は、1~16個の炭素原子を含み(すなわち、C1-16アルキル)、具体的には、他の実施形態において、アルキルは、3~16個の原子を含む(すなわち、C3-16アルキル)。アルキル基は、場合により、アシル基、アミノ基、アミド基、アジド基、カルボキシル基、アルキル基、アリール基、ハロ基、グアニジニル基、オキソ基、スルファニル基、スルフェニル基、スルホニル基、ヘテロシクリル基またはヒドロキシル基で置換されていてもよい。アルキル基のさらなる例としては、限定されないが、メチル、エチル、プロピル、iso-プロピル、ブチル、iso-ブチル、第二級ブチル、第三級ブチル、ペンチル、iso-ペンチル、neo-ペンチル、ヘキシル、iso-ヘキシル、3-メチルペンチル、2,3-ジメチルブチル、neo-ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシルおよびヘキサデシルが挙げられる。
【0051】
-C16アルキルの一実施形態において、アルキルは、置換アルキルではない。他の実施形態において、置換アルキルは、カルボニル基とアミノ基を両方含むものではない。さらなる実施形態において、C-C16アルキルは、カルボキシル基およびアミノ基の両方を有する置換アルキルではない。
【0052】
「アルカリ金属」という用語は、金属塩を指し、限定されないが、適切なアルカリ金属(Ia族)塩、アルカリ土類金属(IIa族)塩および他の生理学的に許容され得る金属が挙げられる。金属塩は、アルミニウム、カルシウム、リチウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウムおよび亜鉛、またはこれらの組み合わせから作成することができる。
【0053】
「アルケニル」という用語は、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を含む直鎖または分枝鎖の炭素鎖を指す。ある実施形態において、「アルケニル」は、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個または10個の炭素原子を含む炭化水素を指す(すなわち、C1-10アルケニル)。アルケニル基の例としては、限定されないが、エテン、プロペン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテン、ノネンおよびデセンが挙げられる。アルケニル基は、場合により、アミノ基、アルキル基、ハロ基またはヒドロキシル基で置換されていてもよい。
【0054】
「アミド」という用語は、C-アミド基(例えば、-CONR’R”部分)またはNアミド基(例えば、N-R’COR”部分)のいずれかを指し、R’およびR”は、独立して、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、炭素環、ヘテロ環、アリールまたはアラルキルであってもよい。「スルホアミド」基は、-NR’-SO-R”部分を含み、R’およびR”は、水素、アルキル、アリールまたはアラルキルであってもよい。
【0055】
「アルキニル」という用語は、少なくとも1つの炭素-炭素三重結合を含む直鎖または分枝鎖の炭素鎖を指す。例示的な実施形態において、「アルキニル」は、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個または10個の炭素原子を含む炭化水素を指す(すなわち、C2-10アルキニル)。アルキニル基の例としては、限定されないが、エチン、プロピン、ブチン、ペンチン、ヘキシン、ヘプチン、オクチン、ノニンおよびデシンが挙げられる。アルキニル基は、場合により、アミノ基、アルキル基、ハロ基またはヒドロキシル基で置換されていてもよい。
【0056】
「アリール」という用語は、1個、2個または3個の環を含む炭素環芳香族系を指す。環は、鎖状の様式で互いに接続していてもよく、または融合していてもよい。「アリール」という用語は、フェニル、ナフチル、テトラヒドロナフチル、テトラリン、インダン、インデンおよびビフェニルのような芳香族基を包含する。アリール基は、場合により、アミノ基、アルキル基、ハロ基、ヒドロキシル基、炭素環基、ヘテロ環基または別のアリール基で置換されていてもよい。
【0057】
「組み合わせ」は、本明細書で使用される場合、複数の要素を指す。組み合わせは、複数の原子、複数の化合物、複数の組成物、複数の要素、複数の構成要素、複数の元素、複数の部分、複数の分子または複数の混合物を含んでいてもよく、これらから本質的になっていてもよく、またはこれらからなっていてもよい。組み合わせは、限定されないが、1つの混合物を含む。
【0058】
「融合した」という用語は、第1の環と共通する(すなわち、共有する)2個の隣接原子を有することによって第2の環が存在する(すなわち、接続するか、または形成される)ことを意味する。「融合する」という用語は、「縮合する」、「接続する」および「結合する」という用語と同義であり、相互に置き換え可能に用いられてもよい。。
【0059】
「シクロアルキル」という用語は、単環の飽和または部分的に飽和の炭素環を指し、環原子の数は、いくつかの数の環原子を含む。ある実施形態において、「シクロアルキル」は、3~12個の環原子を含む炭素環を指す(すなわち、C3-12シクロアルキル)。本明細書で使用される場合、シクロアルキルは、単環の環構造、架橋した環構造、スピロ環構造、融合した環構造、二環の環構造および三環の環構造を包含する。シクロアルキル基の例としては、限定されないが、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロペンテニル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、シクロヘプチル、シクロヘプテニル、ノルボルニル、デカリン、アダマンチルおよびシクロオクチルが挙げられる。シクロアルキル基は、場合により、アミノ基、アルキル基、ハロ基またはヒドロキシル基で置換されていてもよい。
【0060】
「アラルキル」という用語は、アリール置換されたアルキル部分を指す。アラルキル基は、「低級アラルキル」基であってもよく、アリール基は、1~6個の炭素原子を含むアルキル基に接続する。アラルキル基の例としては、ベンジル、ジフェニルメチル、トリフェニルメチル、フェニルエチルおよびジフェニルエチルが挙げられる。「ベンジル」および「フェニルメチル」という用語は、相互に置き換え可能である。ある実施形態において、アルキルは、C-C16アルキルである。他の実施形態において、アルキルは、カルボキシル基およびアミノ基の両方を有する置換アルキルではない。
【0061】
「アリールオキシ」という用語は、酸素原子に接続したアリール基を指す。アリールオキシ基は、場合により、ハロ基、ヒドロキシル基またはアルキル基で置換されていてもよい。このような基の例としては、限定されないが、フェノキシ、4-クロロ-3-エチルフェノキシ、4-クロロ-3-メチルフェノキシ、3-クロロ-4-エチルフェノキシ、3,4-ジクロロフェノキシ、4-メチルフェノキシ、3-トリフルオロメトキシフェノキシ、3-トリフルオロメチルフェノキシ、4-フルオロフェノキシ、3,4-ジメチルフェノキシ、5-ブロモ-2-フルオロフェノキシ、4-ブロモ-3-フルオロフェノキシ、4-フルオロ-3-メチルフェノキシ、5,6,7,8-テトラヒドロナフチルオキシ、3-イソプロピルフェノキシ、3-シクロプロピルフェノキシ、3-エチルフェノキシ、4-tert-ブチルフェノキシ、3-ペンタフルオロエチルフェノキシおよび3-(1,1,2,2-テトラフルオロエトキシ)フェノキシが挙げられる。
【0062】
「アルコキシ」という用語は、アルキル基またはシクロアルキル基で置換されたオキシ含有基を指す。アルコキシ基の例としては、限定されないが、メトキシ、エトキシ、tert-ブトキシおよびシクロヘキシルオキシが挙げられる。「低級アルコキシ」基は、1~6個の炭素原子を含み、限定されないが、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、イソプロポキシ基およびtert-ブトキシ基が挙げられる。
【0063】
「アラルコキシ」という用語は、他の基に対して酸素原子を介して接続した、オキシを含有するアラルキル基を指す。「低級アラルコキシ」基は、低級アルコキシ基に接続したフェニル基である。低級アラルコキシ基の例としては、限定されないが、ベンジルオキシ、1-フェニルエトキシ、3-トリフルオロメトキシベンジルオキシ、3-トリフルオロメチルベンジルオキシ、3,5-ジフルオロベニルオキシ(3,5-difluorobenyloxy)、3-ブロモベンジルオキシ、4-プロピルベンジルオキシ、2-フルオロ-3-トリフルオロメチルベンジルオキシおよび2-フェニルエトキシが挙げられる。
【0064】
「アシル」という用語は、-C(=O)R部分を指し、Rは、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、炭素環、ヘテロ環、アリールまたはアラルキルである。好ましくは、Rは、水素、アルキル、アリールまたはアラルキルである。
【0065】
「カルボキシル」という用語は、-R’C(=O)OR”部分を指し、R’およびR”は、独立して、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、炭素環、ヘテロ環、ヘテロシクロアルキル(heterocyloalkyl)、アリール、エーテルまたはアラルキルである。R’は、さらに、共有結合であってもよい。「カルボキシル」は、カルボン酸およびカルボン酸エステルの両方を含む。
【0066】
「カルボン酸」という用語は、R”が水素であるカルボキシル基または塩を指す。カルボン酸としては、限定されないが、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、2-メチルプロピオン酸、オキシラン-カルボン酸およびシクロプロパンカルボン酸が挙げられる。
【0067】
「カルボン酸エステル」または「エステル」という用語は、R”がアルキル、アルケニル、アルキニル、炭素環、ヘテロ環、アリールまたはアラルキルであるカルボキシル基を指す。カルボン酸の例としては、限定されないが、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、シクロプロパンカルボン酸、シクロブタンカルボン酸、シクロペンタンカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、シクロヘプタンカルボン酸、シクロオクタンカルボン酸またはシクロノナンカルボン酸が挙げられる。
【0068】
「カルボニル」という用語は、C=O部分を指し、「オキソ」基としても知られる。
【0069】
「ヘテロ環」または「ヘテロシクリル」または「ヘテロ環式環」という用語は、3~12個の炭素原子を含む芳香族または非芳香族の環状炭化水素を指す。例示的な実施形態において、「ヘテロシクリル」は、3個、4個、5個または6個の環原子を含む環状炭化水素を指す(すなわち、C3-6ヘテロシクリル)。ヘテロ環は、場合により、置換されていてもよく、飽和または不飽和であってもよい。典型的には、環原子の少なくとも1個は、酸素(O)、窒素(N)、硫黄(S)、リン(P)またはセレン(Se)である。例えば、ある実施形態において、ヘテロシクリルからの環N原子は、-C(O)部分に結合してアミド、カルバメートまたはウレアを形成する原子である。ヘテロ環基の例としては、限定されないが、アジリジン、オキシラン、チイラン、アゼチジン、オキセタン、チエタン、ピロリジン、イミダゾール、テトラヒドロフラン、ピラン、チオピラン、チオモルホリン、チオモルホリン S-オキシド、オキサゾリン、テトラヒドロチオフェン、ピペリジン、テトラヒドロピラン、チアン、イミダゾリジン、オキソジオキソレニル、オキサゾリジン、チアゾリジン、ジオキソラン、ジチオラン、ピペラジン、オキサジン、ジチアン、ジオキサン、ピリジニル、フラニル、ベンゾフラニル、イソベンゾフラニル、ピローリル、チエニル、1,2,3-トリアゾリル、1,2,4-トリアゾリル、インドリル、イミダゾリル、チアゾリル、チアジアゾリル、ピリミジニル、オキサゾリル、トリアジニルおよびテトラスチラ(tetrastyla)が挙げられる。例示的なヘテロ環としては、ベンズイミダゾール、ジヒドロチオフェン、ジオキシン、ジオキサン、ジオキソラン、ジチアン、ジチアジン、ジチアゾール、ジチオラン、フラン、インドール、3-H インダゾール、3-H-インドール、インドリジン、イソインドール、イソチアゾール、イソオキサゾール、モルホリン、オキサゾール、オキサジアゾール、オキサチアゾール、オキサチアゾリジン、オキサジン、オキサジアジン、ピペラジン、ピペリジン、プリン、ピラン、ピラジン、ピラゾール、ピリジン、ピリミジン、ピリミジン、ピリダジン、ピロール、ピロリジン、テトラヒドロフラン、テトラジン、チアジアジン、チアジアゾール、チアトリアゾール、チアジン、チアゾール、チオフェン、トリアジンおよびトリアゾールが挙げられる。ヘテロ環は、場合により、アミノ基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ハロ基、ヒドロキシル基、炭素環基、チオ基、他のヘテロ環基またはアリール基で置換されていてもよい。
【0070】
「ヘテロアリール」という用語は、環状炭化水素を指し、複数の環原子の少なくとも1つがO、N、S、PまたはSeである。ヘテロアリールの環は、環原子が共有する非局在化したπ電子(芳香族性)によって特徴付けられる。本明細書に定義されるヘテロアリール部分は、炭素(C)、N、S、PまたはSeの結合手を有していてもよい。例えば、ある実施形態において、ヘテロアリールからの環N原子は、-C(O)部分に結合してアミド、カルバメートまたはウレアを形成する原子である。例示的な実施形態において、「ヘテロアリール」は、5個または6個の環原子を含む環状炭化水素を指す(すなわち、C5-6ヘテロアリール)。ヘテロアリール基の例としては、限定されないが、ピロール、フラン、チエン、オキサゾール、チアゾール、イソオキサゾール、イソチアゾール、イミダゾール、ピラゾール、オキサジアゾール、チアジアゾール、トリアゾール、テトラゾール、ピリジン、ピリミジン、ピラジン、ピリダジンおよびトリアジンが挙げられる。
【0071】
「ヒドロキシ」または「ヒドロキシル」という用語は、置換基-OHを指す。
【0072】
「オキソ」という用語は、置換基=Oを指す。
【0073】
「ニトロ」という用語は、NOを指す。
【0074】
「アジド」という用語は、Nを指す。
【0075】
「硫黄類似体」という用語は、1個以上のセレン原子が、それぞれ1個以上の硫黄原子と置き換わった、ある化合物の類似体を指す。
【0076】
「スルファニル」という用語は、-SR’部分を指し、R’は、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、炭素環、ヘテロ環、アリールまたはアラルキルである。
【0077】
「スルフェニル」という用語は、-SOR’部分を指し、R’は、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、炭素環、ヘテロ環、アリールまたはアラルキルである。
【0078】
「スルホニル」という用語は、-SOR’部分を指し、R’は、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、炭素環、ヘテロ環、アリールまたはアラルキルを指す。
【0079】
「ケトン」という用語は、カルボニル炭素が2個の他の炭素原子に結合した少なくとも1個のカルボニル基を含む部分を指す。例示的な実施形態において、「ケトン」は、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個または10個の炭素原子を含むカルボニル含有部分を指す(すなわち、C3-10ケトン)。ケトン基の例としては、限定されないが、アセトン、ブタノン、ペンタノン、ヘキサノン、ヘプタノン、オクタノン、ノナノン、デカノン、シクロブタノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノン、シクロオクタノン、シクロノナノンおよびシクロデカノンが挙げられる。
【0080】
「アミノ」という用語は、式-NR’R”の一級、二級または三級の基を指し、R’およびR”は、独立して、水素、アシル、アルキル、アルケニル、アルキニル、アラルキル、アリール、カルボキシル、シクロアルキル、ヘテロ環または他のアミノ基(ヒドラジンの場合)である。R’およびR”と、これらが接続する窒素原子とが、4~8原子を含む環を形成する。従って、「アミノ」という用語は、非置換、一置換(例えば、モノアルキルアミノまたはモノアリールアミノ)および二置換(例えば、ジアルキルアミノまたはアラルキルアミノ)アミノ基を含む。アミノ基としては、-NH部分、メチルアミノ、エチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、メチル-エチルアミノ、ピロリジン-1-イルまたはピペリジノ、モルホリノなどが挙げられる。環を形成する他の例示的な「アミノ」基としては、ピローリル、イミダゾリル、ピラゾリル、イソチアゾリル、イソオキサゾリル、ピリジル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、インドリジニル、イミダゾリル、イソインドリル、インドリル、インダゾリル、プリニル、キノリジニルが挙げられる。環を含有するアミノ基は、場合により、別のアミノ基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ハロ基またはヒドロキシル基で置換されていてもよい。
【0081】
「アミン」という用語は、式-NR’R”の一級、二級または三級のアミノ基を指し、この定義で使用されるR’およびR”は、独立して、水素、アシル、アルキル、アルケニル、アルキニル、アラルキル、アリール、カルボキシル、シクロアルキル、ヘテロ環または他のアミノ(ヒドラジドの場合)であるか、またはR’およびR”と、これらが接続する窒素原子とが、4~8原子を含む環を形成する。従って、「アミノ」という用語は、本明細書で使用される場合、非置換、一置換(例えば、モノアルキルアミノまたはモノアリールアミノ)および二置換(例えば、ジアルキルアミノまたはアラルキルアミノ)アミノ基を含む。アミノ基としては、-NH、メチルアミノ、エチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、メチル-エチルアミノ、ピロリジン-1-イルまたはピペリジノ、モルホリノなどが挙げられる。環を形成する他の例示的な「アミノ」基としては、限定されないが、ピローリル、イミダゾリル、ピラゾリル、イソチアゾリル、イソオキサゾリル、ピリジル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、インドリジニル、イミダゾリル、イソインドリル、インドリル、インダゾリル、プリニル、キノリジニルが挙げられる。環を含有するアミノ基は、場合により、別のアミノ基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ハロ基またはヒドロキシル基で置換されていてもよい。
【0082】
「アルコール」という用語は、「ヒドロキシ」、「ヒドロキシル」、または-OH部分を含む任意の置換基を指す。
【0083】
「アミノアルコール」という用語は、アルコール基およびアミン基の両方を含む官能基を指す。「アミノアルコール」は、カルボン酸基の代わりにアルコールに結合した炭素を含む、上に定義されるようなアミノ酸も指す。例示的な実施形態において、「アミノアルコール」は、アルコールが結合する炭素に隣接する炭素に結合したアミンを含む。例示的な実施形態において、「アミノアルコール」は、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個または12個の炭素原子を含む、アミンおよびアルコールを含有する部分を指す(すなわち、C1-12アミノアルコール)。アミノアルコールの例としては、限定されないが、エタノールアミン、ヘプタミノール、イソエタリン、ノルエピネフリン、プロパノールアミン、スフィンゴシン、メタノールアミン、2-アミノ-4-メルカプトブタン-1-オール、2-アミノ-4-(メチルチオ)ブタン-1-オール、システイノール、フェニルグリシノール、プロリノール、2-アミノ-3-フェニル-1-プロパノール、2-アミノ-1-プロパノール、シクロヘキシルグリシノール、4-ヒドロキシ-プロリノール、ロイシノール、tert-ロイシノール、フェニルアラニノール、a-フェニルグリシノール、2-ピロリジンメタノール、チロシノール、バリノール、セリノール、2-ジメチルアミノエタノール、ヒスチジノール、イソロイシノール、ロイシノール、メチオニノール、1-メチル-2-ピロリジンメタノール、スレオニノール、トリプトファノール、アラニノール、アルギニノール、グリシノール、グルタミノール、4-アミノ-5-ヒドロキシペンタンアミド、4-アミノ-5-ヒドロキシペンタン酸、3-アミノ-4-ヒドロキシブタン酸、リシノール、3-アミノ-4-ヒドロキシブタンアミドおよび4-ヒドロキシ-プロリノールが挙げられる。
【0084】
「アミノ酸」という用語は、カルボキシレート基に直接隣接する炭素原子に結合したカルボン酸およびアミンを含む基を指し、天然アミノ酸および合成アミノ酸の両方を含む。アミノ酸の例としては、限定されないが、アルギニン、ヒスチジン、リジン、アスパラギン酸、グルタミン酸、セリン、トレオニン、アスパラギン、グルタミン、システイン、セレノシステイン、グリシン、プロリン、アラニン、バリン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファンが挙げられる。ある実施形態において、カルボキシルは、H、塩、エステル、アルキルまたはアラルキルで置換される。アミノ基も、H、アシル、アルキル、アルケニル、アルキニル、カルボキシル、シクロアルキル、アラルキルまたはヘテロシクリルで置換されていてもよい。
【0085】
「エーテル」という用語は、-R-O-R”部分を指し、R’およびR”は、独立して、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、炭素環、ヘテロ環、アリールまたはアラルキルである。R’は、さらに、炭素に接続した共有結合であってもよい。
【0086】
「ハロゲン」という用語は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子を指す。
【0087】
「ハロゲン化物」という用語は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子に結合した原子を含む官能基を指す。本明細書に開示される例示的な実施形態は、「ハロゲン化アルキル」基、「ハロゲン化アルケニル」基、「ハロゲン化アルキニル」基、「ハロゲン化シクロアルキル」基、「ハロゲン化ヘテロシクリル」基または「ハロゲン化ヘテロアリール」基を含んでいてもよい。例示的な実施形態において、「ハロゲン化アルキル」は、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個または10個の炭素原子を含む炭素-ハロゲン結合を含む部分を指す(すなわち、ハロゲン化C1-10アルキル)。ハロゲン化アルキル基の例としては、限定されないが、フルオロメチル基、フルオロエチル基、クロロメチル基、クロロエチル基、ブロモメチル基、ブロモエチル基、ヨードメチル基およびヨードエチル基が挙げられる。特に示されていない限り、本明細書で言及される任意の炭素含有基は、1つ以上の炭素-ハロゲン結合を含んでいてもよい。非限定例として、Cアルキル基は、限定されないが、メチル、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、クロロメチル、ジクロロメチル、トリクロロメチル、ブロモメチル、ジブロモメチル、トリブロモメチル、ヨードメチル、ジヨードメチル、トリヨードメチル、クロロフルオロメチル、ジクロロフルオロメチルおよびジフルオロクロロメチルであってもよい。
【0088】
本明細書に記載される化合物において、ヘテロ原子は、複数の異なる価数を有することができる。非限定例として、S、SeおよびNは、中性であってもよく、または陽性電荷を保持していてもよい。これに加え、Oは、中性であってもよく、または陽性または陰性の電荷を保持していてもよい。
【0089】
本開示の化合物および組成物の例示的な実施形態は、式(I)、(II)および(III)を含み、示されている化合物のジアステレオマーおよびエナンチオマーを包含していてもよい。エナンチオマーは、互いに鏡像であり、重ね合わせることができない分子部分の対の1つであると定義される。ジアステレオマーまたはジアステレオ異性体は、エナンチオマー以外の立体異性体であると定義される。ジアステレオマーまたはジアステレオ異性体は、鏡像と関連しない立体異性体である。ジアステレオ異性体は、物理特性の違いによって特徴付けられる。
【0090】
本開示の一実施形態は、式(I)の化合物
【化4】

またはその医薬的に許容され得る塩、水和物またはプロドラッグを含んでいてもよい。Rは、H、アシル、アルキル、アルケニル、アルキニル、アラルキル、カルボキシル、シクロアルキル、C(O)R’、C(O)OR’であり、R’は、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、アラルキルまたはヘテロシクリルであるか;または、RとRを合わせ、酸素または窒素から選択される少なくとも1個のヘテロ原子を含む、4~8個の環原子を含むヘテロ環式環を形成する。
【0091】
は、H、アシル、アルキル、アルケニル、アルキニル、アラルキル、カルボキシル、シクロアルキル、C(O)R’、C(O)OR’であり、R’は、アルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキルまたはヘテロシクリルから選択されるか;または、RとRを合わせ、酸素または窒素から選択される少なくとも1個のヘテロ原子を含む、4~8個の環原子を含むヘテロ環式環を形成する。
【0092】
は、H、アシル、アルキル、アルケニル、アルキニル、アラルキル、シクロアルキル、カルボキシルまたはC-アミドであるか;またはR、Rと、これらが接続する原子を合わせ、酸素または窒素から選択される少なくとも1個のヘテロ原子を含む、4~8個の環原子を含むヘテロ環式環を形成する。
【0093】
は、H、アシル、アルキル、アルケニル、アルキニル、アラルキル、シクロアルキル、カルボキシルまたはC-アミドであるか;またはR、Rと、これらが接続する原子を合わせ、酸素または窒素から選択される少なくとも1個のヘテロ原子を含む、4~8個の環原子を含むヘテロ環式環を形成する。
【0094】
は、オキソ、ヒドロキシル、アルキル、アルケニル、アルキニル、OR’であるか、または存在せず;R’は、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリールまたはアラルキルから選択される。
【0095】
は、オキソ、ヒドロキシル、アルキル、アルケニル、アルキニル、OR’であるか、または存在せず;R’は、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリールまたはアラルキルから選択される。
【0096】
は、C-C16アルキルがカルボキシル基およびアミノ基の両方を有する置換アルキルではないC-C16アルキル、アルケニル、アルキニル、ケトン、アミノアルコール、アルギニン、ヒスチジン、リジン、アスパラギン酸、グルタミン酸、セリン、トレオニン、アスパラギン、グルタミン、システイン、セレノシステイン、グリシン、プロリン、アラニン、バリン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、チロシンおよびトリプトファンからなる群から選択されるアミノ酸、OR’、Se-R’、S-R’であり、OR’のR’は、H、アルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキルおよびヘテロシクリルからなる群から選択され、Se-R’のR’は、H、C-C16アルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキルおよびヘテロシクリルからなる群から選択され、S-R’のR’は、H、C-C16アルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキルおよびヘテロシクリルからなる群から選択され;

は、水素、アジド、アルキル、アルケニル、アルキニルである。
【0097】
「化合物C」という用語は、5’-メチルセレノアデノシンを指し、(2R,4S,5S)-2-(6-アミノ-9H-プリン-9-イル)-5-((メチルセラニル)メチル)テトラヒドロフラン-3,4-ジオール(CAS登録番号5135-40-0)としても知られ、その任意の医薬的に許容され得る塩を含む。
【化5】
【0098】
本開示の別の実施形態は、式(II)の化合物
【化6】

またはその医薬的に許容され得る塩、水和物またはプロドラッグを含んでいてもよく、式中、
は、H、アシル、アルキル、アルケニル、アルキニル、アラルキル、カルボキシル、シクロアルキル、C(O)R’、C(O)OR’であり、R’は、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、アラルキルまたはヘテロシクリルであるか;または、RとRを合わせ、酸素または窒素から選択される少なくとも1個のヘテロ原子を含む、4~8個の環原子を含むヘテロ環式環を形成し;
は、H、アシル、アルキル、アルケニル、アルキニル、アラルキル、カルボキシル、シクロアルキル、C(O)R’、C(O)OR’であり、R’は、アルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキルまたはヘテロシクリルから選択されるか;または、RとRを合わせ、酸素または窒素から選択される少なくとも1個のヘテロ原子を含む、4~8個の環原子を含むヘテロ環式環を形成し;
は、H、アシル、アルキル、アルケニル、アルキニル、アラルキル、シクロアルキル、カルボキシルまたはC-アミドであるか;またはR、Rと、これらが接続する原子を合わせ、酸素または窒素から選択される少なくとも1個のヘテロ原子を含む、4~8個の環原子を含むヘテロ環式環を形成し;
は、H、アシル、アルキル、アルケニル、アルキニル、アラルキル、シクロアルキル、カルボキシルまたはC-アミドであるか;またはR、Rと、これらが接続する原子を合わせ、酸素または窒素から選択される少なくとも1個のヘテロ原子を含む、4~8個の環原子を含むヘテロ環式環を形成し;
は、オキソ、ヒドロキシル、アルキル、アルケニル、アルキニル、OR’であるか、または存在せず;R’は、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリールまたはアラルキルから選択され;
は、オキソ、ヒドロキシル、アルキル、アルケニル、アルキニル、OR’であるか、または存在せず;R’は、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリールまたはアラルキルから選択され;
は、水素、アジド、アルキル、アルケニル、アルキニルであり;
は、H、アシル、アルキル、アルケニル、アルキニル、アラルキル、カルボキシル、シクロアルキル、C(O)R’、C(O)OR’であり、R’は、アルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキルまたはヘテロシクリルであるか;または、RとR10を合わせ、酸素または窒素から選択される少なくとも1個のヘテロ原子を含む、4~8個の環原子を含むヘテロ環式環を形成し;
10は、H、アシル、アルキル、アルケニル、アルキニル、アラルキル、カルボキシル、シクロアルキル、C(O)R’、C(O)OR’であり、R’は、アルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキルまたはヘテロシクリルから選択されるか;または、RとR10を合わせ、酸素または窒素から選択される少なくとも1個のヘテロ原子を含む、4~8個の環原子を含むヘテロ環式環を形成し;
11は、OR、アルコキシ、アラルコキシまたはアミノであり、Rは、アルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロシクリルまたは医薬的に許容され得る塩または分子内塩から選択される。
【0099】
「化合物D」という用語は、5’-セレノアデノシルホモシステイン;(2R)-2-アミノ-4-((((2S,3S,5R)-5-(6-アミノ-9H-プリン-9-イル)-3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフラン-2-イル)メチル)セラニル)ブタン酸(CAS登録番号4053-91-2)を指し、その任意の医薬的に許容され得る塩を含む。
【化7】
【0100】
本開示のさらなる実施形態は、式(III)の化合物
【化8】

またはその医薬的に許容され得る塩、水和物またはプロドラッグを含んでいてもよく、式中、
は、H、アシル、アルキル、アルケニル、アルキニル、アラルキル、カルボキシル、シクロアルキル、C(O)R’、C(O)OR’であり、R’は、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、アラルキルまたはヘテロシクリルであるか;または、RとRを合わせ、酸素または窒素から選択される少なくとも1個のヘテロ原子を含む、4~8個の環原子を含むヘテロ環式環を形成し;
は、H、アシル、アルキル、アルケニル、アルキニル、アラルキル、カルボキシル、シクロアルキル、C(O)R’、C(O)OR’であり、R’は、アルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキルまたはヘテロシクリルから選択されるか;または、RとRを合わせ、酸素または窒素から選択される少なくとも1個のヘテロ原子を含む、4~8個の環原子を含むヘテロ環式環を形成し;
は、OH、OR、アルコキシ、アラルコキシまたはアミノであり、Rは、アルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロシクリル、または医薬的に許容され得る塩または分子内塩から選択され;
は、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロシクリル、または医薬的に許容され得る塩または分子内塩であり;
は、オキソ、ヒドロキシル、アルキル、アルケニル、アルキニル、OR’であるか、または存在せず;R’は、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリールまたはアラルキルから選択され;
は、オキソ、ヒドロキシル、アルキル、アルケニル、アルキニル、OR’であるか、または存在せず;R’は、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリールまたはアラルキルから選択され;
は、C-C16アルキルがカルボキシル基およびアミノ基の両方を有する置換アルキルではないC-C16アルキル、アルケニル、アルキニル、ケトン、アミノアルコール、アルギニン、ヒスチジン、リジン、アスパラギン酸、グルタミン酸、セリン、トレオニン、アスパラギン、グルタミン、システイン、セレノシステイン、グリシン、プロリン、アラニン、バリン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、チロシンおよびトリプトファンからなる群から選択されるアミノ酸、OR’、Se-R’、S-R’であり、OR’のR’は、H、アルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキルおよびヘテロシクリルからなる群から選択され、Se-R’のR’は、H、C-C16アルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキルおよびヘテロシクリルからなる群から選択され、S-R’のR’は、H、C-C16アルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキルおよびヘテロシクリルからなる群から選択される。
【0101】
「化合物E」という用語は、γ-L-グルタミル-Se-メチル-L-セレノシステインを指し、N5-(1-カルボキシ-2-(メチルセラニル)エチル)-L-グルタミンまたはその任意の医薬的に許容され得る塩としても知られる。
【化9】
【0102】
「化合物CDE(Compound CDE、Compounds CDE)」、「化合物CDEの組み合わせ」または「組み合わせた化合物CDE」という用語は、化合物C、化合物Dおよび化合物Eまたはこれらの医薬的に許容され得る塩の組み合わせまたは混合物を指す。
【0103】
「化合物H」という用語は、5’-メチルチオアデノシン;5’-S-メチル-5’-チオアデノシン(CAS登録番号2457-80-9)またはその医薬的に許容され得る塩を指す。
【化10】
【0104】
「化合物I」という用語は、S-アデノシル-L-ホモシステインを指し、(S)-5’-(S)-(3-アミノ-3-カルボキシプロピル)-5’-チオアデノシン(CAS登録番号979-92-0)またはその任意の医薬的に許容され得る塩としても知られる。
【化11】
【0105】
「化合物J」という用語は、γ-L-グルタミル-メチル-L-システインを指し、γ-グルタミル-メチル-システインまたはその医薬的に許容され得る塩としても知られる。
【化12】
【0106】
「化合物HIJ」という用語は、化合物H、化合物Iおよび化合物Jまたはこれらの医薬的に許容され得る塩の混合物を指す。
【0107】
「類似体」および「誘導体」という用語は、相互に置き換え可能であり、所与の分子の少なくとも1つの位置の天然または非天然の改質を指す。例えば、所与の化合物または分子の誘導体は、官能基または原子の付加、官能基または原子の除去、または異なる官能基または原子への官能基または原子の変更のいずれかによって改質されてもよい(限定されないが、同位体を含む)。
【0108】
「~を含む」という用語は、包括的である組成物、化合物、製剤または方法を指し、さらなる要素または方法工程を除外しない。「~を含む」という用語は、包括的であり、さらなる要素または方法工程を除外しない、本開示の組成物、化合物、製剤または方法の実施形態も指す。「~からなる」という用語は、任意のさらなる要素または方法工程の存在を除外する、本開示の化合物、組成物、製剤または方法も指す。
【0109】
「~から本質的になる」という用語は、組成物、化合物、製剤または方法の特徴に実質的に影響を与えないさらなる要素または方法工程を含む組成物、化合物、製剤または方法を指す。「~から本質的になる」という用語は、組成物、化合物、製剤または方法の特徴に実質的に影響を与えないさらなる要素または方法工程を含む、本開示の組成物、化合物、製剤または方法も指す。
【0110】
「化合物」という用語は、身体の機能の疾患、疾病、病気または障害を治療、診断または予防するために使用可能な任意の1つ以上の化学部分、部分、医薬、薬物などを指す。化合物は、本出願のスクリーニング方法を用いてスクリーニングすることによって治療薬であると決定することができる。
【0111】
「組成物」という用語は、in vitro、in vivoまたはex vivoでの診断的な使用または処理的な使用に特に適した組成物にする別の薬剤、例えば、限定されないが、担体薬剤を含むか、または含まない、1つ以上の化合物の組み合わせを指す(例えば、担体、不活性物質または活性物質を含む1つ以上のセレン含有化合物)。
【0112】
「要素」という用語は、化合物または組成物の構成部分を指す。例えば、組成物の要素は、化合物、担体、組成物中に存在する任意の他の薬剤を含んでいてもよい。
【0113】
「有効な量」という用語は、有益な結果または望ましい結果をもたらすのに十分な組成物または化合物の量を指す。有効な量は、1つ以上の用途または用量で投与されてもよく、特定の製剤または投与経路に限定することを意図していない。
【0114】
「水和物」という用語は、分子形態の水(すなわち、H-OH結合が分かれていない)と会合する化合物を指し、例えば、式R×HOによって表されてもよく、Rは、本明細書に開示される化合物である。所与の化合物は、例えば、一水和物(R×HO)、二水和物(R×HO)、三水和物(R×HO)などを含め、一より大きな水和物を形成していてもよい。
【0115】
「阻害性」または「拮抗性」という用語は、別の化合物の作用または機能を低減させるか、制限するか、阻害するか、またはブロックする化合物の特性を指す。
【0116】
「単離される」という用語は、混合物中の少なくとも1つの他の材料から、またはその材料と天然で関係がある材料からの材料の分離を指す。例えば、合成によって合成された化合物は、出発物質または中間体から分離される。
【0117】
「既知の治療化合物」は、(例えば、動物実験またはヒトへの投与を伴う前実験によって)治療に有効であることが示された治療化合物を指す。言い換えると、既知の治療化合物は、疾患(例えば、神経変性疾患)の治療に効果的であることが知られているか、または示されている化合物に限定されない。
【0118】
「ミトコンドリア電位」という用語は、膜を通過する陽電荷の正味の移動によって維持される、内部ミトコンドリア膜を通過する電圧差を指す。
【0119】
「糖代謝を調整する」という用語は、糖またはその要素を形成し、変換するか、または分解する生化学的経路の細胞または生きている有機体における既知の状態または所定の状態からの状態(例えば、活性または量)の変化を指す。
【0120】
「任意要素の」または「場合により」は、その後に記載される事象または状況が起こってもよく、または起こらなくてもよい状況を指し、この記載は、この事象または状況が起こる場合と、起こらない場合を含む。「場合により」は、記載される状態が存在する実施形態と、記載される状態が存在しない実施形態を含む。例えば、「場合により置換されたフェニル」は、フェニルが置換されていてもよく、または置換されていなくてもよく、この記載が、置換されていないフェニルと置換が存在するフェニルの両方を含むことを意味する。
【0121】
「有機セレン」または「有機セレン化合物」という用語は、セレンが硫黄と置き換わった任意の有機化合物を指す。従って、有機セレンは、酵母によって生合成される任意のこのような化合物を指していてもよく、または、化学合成された遊離有機セレン化合物(例えば、遊離セレノメチオニン)を指していてもよい。
【0122】
「患者」または「被検体」という用語は、相互に置き換え可能に用いられ、動物界の任意のメンバーを指す。被検体は、哺乳動物であってもよく、例えば、ヒト、家庭用哺乳動物(例えば、イヌまたはネコ)または家畜哺乳動物(例えば、ウシ(cow/cattle)またはブタ(pig/swine))である。
【0123】
「ppb」という用語は、本明細書で使用される場合、セレン含有化合物のセレンを基準とするか、または硫黄含有化合物の硫黄を基準としたパーツパービリオンを指す。セレン含有化合物の例は、化合物C、化合物Dおよび化合物Eである。硫黄含有化合物の例は、化合物H、化合物Iおよび化合物Jである。セレンを基準としたppbを、セレンを含有する化合物のppbに変換するために、示されたppbと以下のファクターを掛け算する。化合物Cについて4.35、化合物Dについて5.46、化合物Eについて3.94。硫黄を基準としたppbを、硫黄を含有する化合物のppnに変換するために、示されたppbと以下のファクターを掛け算する。化合物Hについて9.28、化合物Iについて12.00、化合物Jについて8.25。
【0124】
「医薬的に許容され得る」という句は、過度な毒性、刺激、アレルギー反応、または他の問題または合併症を引き起こさず、合理的な便益/リスク比に見合った、ヒトおよび動物の組織と接触させて使用するのに適した、堅実な医学的判断の範囲内にある化合物、材料、組成物および/または投薬形態を指す。
【0125】
「担体」という用語は、医薬的に許容され得る担体を指す。「医薬的に許容され得る担体」という句は、セレン含有化合物、類似体または誘導体を、身体のある臓器または部分から身体の別の臓器または部分へと運ぶか、または輸送するのに関与する、医薬的に許容され得る材料、組成物またはコントロール、例えば、液体または固体のフィラー、希釈剤、賦形剤、溶媒またはカプセル化材料を指す。担体は、製剤の他の成分と適合性であり、患者または被検体に害を与えないという観点で許容され得るものでなければならない。
【0126】
医薬的に許容され得る担体として働き得る材料のいくつかの例としては、以下のものが挙げられる。(1)糖類、例えば、ラクトース、グルコースおよびショ糖;(2)デンプン類、例えば、トウモロコシデンプンおよびジャガイモデンプン;(3)セルロースおよびその誘導体、例えば、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、エチルセルロースおよび酢酸セルロース;(4)粉末トラガカント;(5)麦芽;(6)ゼラチン;(7)タルク;(8)賦形剤、例えば、ココアバターおよび坐剤用ワックス;(9)油類、例えば、ピーナッツ油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油および大豆油;(10)グリコール類、例えば、プロピレングリコール;(11)ポリオール類、例えば、グリセリン、ソルビトール、マンニトールおよびポリエチレングリコール;(12)エステル類、例えば、オレイン酸エチルおよびラウリン酸エチル;(13)寒天;(14)緩衝剤類、例えば、水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウム;(15)アルギン酸;(16)パイロジェンフリー水;(17)等張性食塩水;(18)Ringer溶液;(19)エチルアルコール;(20)リン酸緩衝溶液;および(21)医薬製剤で使用される他の非毒性の適合性の物質。
【0127】
「プロドラッグ」という用語は、薬理学的に活性な薬剤を指す。さらに典型的には、「プロドラッグ」は、代謝変換によって薬理学的に活性な薬剤に変換される不活性な化合物を指す。本明細書に記載される化合物または組成物のプロドラッグは、上のいずれかの式の化合物中に存在する官能基を、修飾がin vivoで開裂して親化合物を放出し得るような様式で修飾することによって調製される。in vivoで、プロドラッグは、生理学的条件で容易に化学変化を受け(例えば、加水分解または酵素触媒作用)、薬理学的に活性な薬剤を遊離する。プロドラッグは、ヒドロキシ基、アミノ基またはカルボキシ基が、in vivoで開裂してそれぞれ遊離ヒドロキシル基、アミノ基またはカルボキシ基を再生し得る任意の基に結合した、本明細書に記載されるいずれかの式の化合物を含む。プロドラッグの例としては、限定されないが、上のいずれかの式の化合物のエステル類(例えば、アセテート、ホルメートおよびベンゾエート誘導体)、または生理学的pHになるか、または酵素作用によって活性な親薬物に変換される任意の他の誘導体を含む。適切なプロドラッグ誘導体を選択し、調製するための従来の手順は、当該技術分野で記載されている(例えば、Bundgaard.Design of Prodrugs.Elsevier、1985を参照)。
【0128】
「精製され」または「実質的に精製され」という用語は、組成物から、組成物の10%以下(例えば、10%以下、9%以下、8%以下、7%以下、6%以下、5%以下、4%以下、3%以下、2%以下、または1%以下)が、不活性な要素、化合物または医薬的に許容され得る担体を含む程度まで、不活性または阻害性の要素(例えば、汚染物質)を除去することを指す。
【0129】
「塩」という用語は、遊離塩基の医薬的に許容され得る酸付加塩または付加塩を含んでいてもよい。医薬的に許容され得る酸付加塩を生成するために使用可能な酸の例としては、限定されないが、非毒性の無機酸(例えば、硝酸、リン酸、硫酸または臭化水素酸、ヨウ化水素酸、フッ化水素酸、リン)から誘導される塩、および非毒性の有機酸(例えば、脂肪族モノカルボン酸およびジカルボン酸、フェニル置換されたアルカン酸、ヒドロキシルアルカン酸、アルカン二酸、芳香族酸、脂肪族および芳香族のスルホン酸、および酢酸、マレイン酸、コハク酸またはクエン酸)から誘導される塩が挙げられる。このような塩の非限定例としては、ナパジシル酸塩、ベシル酸塩、硫酸塩、ピロ硫酸塩、重硫酸塩、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、硝酸塩、リン酸塩、リン酸一水素塩、リン酸二水素塩、メタリン酸塩、ピロリン酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、プロピオン酸塩、カプリル酸塩、イソ酪酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、スベリン酸塩、セバシン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、マンデル酸塩、安息香酸塩、クロロ安息香酸塩、メチル安息香酸塩、ジニトロ安息香酸塩、フタル酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸塩、フェニル酢酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩などが挙げられる。また、アミノ酸塩(例えば、限定されないが、アルギン酸塩、グルコン酸塩、ガラクツロン酸塩)および他の塩(例えば、限定されないが、Bergeら(「Pharmaceutical Salts」、J.Pharma.Sci 1977;66:19)に開示されるもの)も想定される。
【0130】
「医薬的に許容され得る塩」という句には、限定されないが、当業者によく知られている塩が含まれる。例えば、本発明のモノ塩(mono-salts)(例えば、アルカリ金属およびアンモニウム塩)およびポリ塩(poly salt)(例えば、ジ塩またはトリ塩(di-saltまたはtri-salt))が含まれる。本開示の化合物の医薬的に許容され得る塩は、例えば、交換可能な基、例えば、-OH、-NH-または-P(=O)(OH)-部分の水素が、医薬的に許容され得るカチオン(例えば、ナトリウムイオン、カリウムイオンまたはアンモニウムイオン)と置き換わったときに調製され、例えば、適切な塩基との反応によって、本明細書に開示される対応する化合物から簡便に調製することができる。
【0131】
化合物が、安定な非毒性の酸塩または塩基性塩を生成するために十分に塩基性または酸性である場合には、塩としての化合物の投与が適切な場合がある。医薬的に許容され得る塩の例は、生理学的に許容され得るアニオンを生成する酸を用いて作られる有機酸付加塩、例えば、トシル酸塩、メタンスルホン酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、マロン酸塩、酒石酸塩、コハク酸塩、安息香酸塩、アスコルビン酸塩、α-ケトグルタル酸塩およびα-グリセロリン酸塩である。塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、炭酸水素塩および炭酸塩を含む適切な無機塩も生成してもよい。医薬的に許容され得る塩は、例えば、十分に塩基性の化合物(例えば、アミン)と、生理学的に許容され得るアニオンを与える適切な酸とを反応させることによって、当該技術分野でよく知られた標準的な手順を用いて得られてもよい。カルボン酸のアルカリ金属(例えば、ナトリウム、カリウムまたはリチウム)またはアルカリ土類金属(例えば、カルシウム)の塩を作成することもできる。
【0132】
「セレンを豊富に含む酵母」および「セレン化酵母」という用語は、セレン源(例えば、無機セレン塩)を含有する培地中で培養された任意の酵母(例えば、Saccharomyces cerevisiae)を指す。最終生成物中の残留無機セレン塩の量は、一般的にきわめて低い(例えば、2%未満)。
【0133】
ある部分と組み合わせた「置換され」という用語は、その部分の任意の許容され得る位置の部分でその部分に接続するさらなる置換基を指す。特に示されていない限り、部分は、炭素、窒素、酸素、硫黄または任意の他の許容され得る原子を介して結合していてもよい。置換基の例としては、限定されないが、アミン、アルコール、チオール、エーテル、アルケン、アルキン、エポキシド、アジリジン、オキシラン、アゼチジン、ジヒドロフラン、ピロリジン、ピラン、ピペリジン、アルデヒド、ケトン、エステル、カルボン酸、カルボキシレート、イミン、イミド、アジド、アゾ基、エンアミン、ハロゲン化アルキル、ハロゲン化アルケニル、ハロゲン化アルキニル、ハロゲン化アリール、ホスフィン、ホスフィンオキシド、ホスフィナイト、ホスホナイト、ホスファイト、ホスホネート、ホスフェート、サルフェート、スルホキシド、スルホニル基、スルホキシル基、スルホネート、ニトレート、ニトライト、ニトリル、ニトロ基、ニトロソ基、シアネート、チオシアネート、イソチオシアネート、カーボネート、ハロゲン化アシル、ペルオキシド、ヒドロペルオキシド、ヘミアセタール、ヘミケタール、アセタール、ケタール、オルトエステル、オルト炭酸エステル、ジスルフィド、スルホン酸、スルホン酸、チオン、チアール、ホスホジエステル、ボロン酸、ボロン酸エステルおよびボロン酸およびボロン酸エステルが挙げられる。
【0134】
「治療すること」、「治療する」または「治療」という用語は、その目的が、望ましくない生理学的状態の発症を遅らせること(例えば、減らすか、または延期させること)、障害または疾患の症状を減らすこと、または部分的または全体的な回復、またはパラメータ、値または機能の低下または異常に達した結果または異常になるであろう結果の阻害のような、有益な結果または望ましい結果を得ることである、治療的な処置を指す。有益な結果または望ましい結果としては、限定されないが、その状態、症状または疾患の実際の臨床的な症状の迅速な現象、または向上または改善につながるかどうかにかかわらず、症状の緩和;状態、障害または疾患の発症の程度または進行力または発症率の減少;その状態、症状または疾患の状況の安定化(すなわち、悪化しない);その状態、症状または疾患の発生を遅らせるか、または進行を遅らせること;その状態、症状または疾患の状況の軽減;および回復(部分的または全体的)が挙げられる。
【0135】
「遺伝子発現を特異的に検出することができる試薬」という用語は、本明細書に記載される種々の遺伝子の発現を検出することができるか、または検出するのに十分な試薬を指す。適切な試薬の例としては、限定されないが、mRNAまたはcDNAを特異的にハイブリダイズすることができる核酸プライマーまたは核酸プローブ、および抗体(例えば、モノクローナル抗体およびポリクローナル抗体)が挙げられる。
【0136】
「毒性」という用語は、毒性物質を投与する前の細胞または組織と比較して、同じ被検体、細胞または組織に対する任意の悪い影響または有害な影響を指す。
【0137】
(化合物および組成物)
本開示は、有機セレン化合物、組成物、およびこの化合物および組成物を使用する方法に関する。本明細書に開示される化合物および組成物は、種々の生体経路において、インスリンを補充してもよく、インスリン活性を向上させてもよく、糖産生を阻害してもよく、または糖代謝を調整してもよい。本開示の組成物、化合物および方法は、肝細胞において糖代謝に悪影響を与えないようであり、そのため、これを使用し、非インスリン依存性(II型)糖尿病を治療または予防してもよい。
【0138】
本開示の一実施形態は、式(I)の化合物:
【化13】

またはその医薬的に許容され得る塩、水和物またはプロドラッグを含むか、これらから本質的になるか、またはこれらからなる組成物に関する。
【0139】
は、H、アシル、アルキル、アルケニル、アルキニル、アラルキル、カルボキシル、シクロアルキル、C(O)R’、C(O)OR’であり、R’は、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、アラルキルまたはヘテロシクリルであるか;または、RとRを合わせ、酸素または窒素から選択される少なくとも1個のヘテロ原子を含む、4~8個の環原子を含むヘテロ環式環を形成する。
【0140】
は、H、アシル、アルキル、アルケニル、アルキニル、アラルキル、カルボキシル、シクロアルキル、C(O)R’、C(O)OR’であり、R’は、アルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキルまたはヘテロシクリルから選択されるか;または、RとRを合わせ、酸素または窒素から選択される少なくとも1個のヘテロ原子を含む、4~8個の環原子を含むヘテロ環式環を形成する。
【0141】
は、H、アシル、アルキル、アルケニル、アルキニル、アラルキル、シクロアルキル、カルボキシルまたはC-アミドであるか;またはR、Rと、これらが接続する原子を合わせ、酸素または窒素から選択される少なくとも1個のヘテロ原子を含む、4~8個の環原子を含むヘテロ環式環を形成する。
【0142】
は、H、アシル、アルキル、アルケニル、アルキニル、アラルキル、シクロアルキル、カルボキシルまたはC-アミドであるか;またはR、Rと、これらが接続する原子を合わせ、酸素または窒素から選択される少なくとも1個のヘテロ原子を含む、4~8個の環原子を含むヘテロ環式環を形成する。
【0143】
は、オキソ、ヒドロキシル、アルキル、アルケニル、アルキニル、OR’であるか、または存在せず;R’は、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリールまたはアラルキルから選択される。
【0144】
は、オキソ、ヒドロキシル、アルキル、アルケニル、アルキニル、OR’であるか、または存在せず;R’は、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリールまたはアラルキルから選択される。
【0145】
は、C-C16アルキルがカルボキシル基およびアミノ基の両方を有する置換アルキルではないC-C16アルキル、アルケニル、アルキニル、ケトン、アミノアルコール、アルギニン、ヒスチジン、リジン、アスパラギン酸、グルタミン酸、セリン、トレオニン、アスパラギン、グルタミン、システイン、セレノシステイン、グリシン、プロリン、アラニン、バリン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、チロシンおよびトリプトファンからなる群から選択されるアミノ酸、OR’、Se-R’、S-R’であり、OR’のR’は、H、アルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキルおよびヘテロシクリルからなる群から選択され、Se-R’のR’は、H、C-C16アルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキルおよびヘテロシクリルからなる群から選択され、S-R’のR’は、H、C-C16アルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキルおよびヘテロシクリルからなる群から選択される。
【0146】
は、水素、アジド、アルキル、アルケニル、アルキニルである。
【0147】
本明細書に記載される組成物のさらなる実施形態は、5’-メチルセレノアデノシン(「化合物C」)、およびその任意の類似体、誘導体、および/または医薬的に許容され得る塩を含んでいてもよく、またはこれらから本質的になっていてもよく、またはこれらからなっていてもよい。化合物Cは、(2R,4S,5S)-2-(6-アミノ-9H-プリン-9-イル)-5-((メチルセラニル)メチル)テトラヒドロフラン-3,4-ジオール(CAS登録番号5135-40-0)であり、その任意の類似体、誘導体、および/または医薬的に許容され得る塩を含む。
【化14】
【0148】
本開示の組成物は、式(I)の化合物、化合物C、およびこれらの組み合わせを含んでいてもよく、またはこれらから本質的になっていてもよく、またはこれらからなっていてもよい。例えば、本出願の一態様は、5’-メチルセレノアデノシン、式(I)の化合物、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される化合物を含む組成物を提供する。さらなる実施形態において、これらの化合物の1つ以上を合成してもよく、単離してもよく、および/または精製してもよい。
【0149】
ある実施形態において、組成物は、少なくとも5’-メチルセレノアデノシンと、1つの他の化合物とを含むか、これらから本質的になるか、またはこれらからなる。他の実施形態において、他の化合物は、セレン含有化合物である。さらなる実施形態において、組成物は、5’-メチルセレノアデノシンと他の化合物(例えば、セレン含有化合物)を少なくとも1:1~100:1、1:1~50:1、1:1~10:1、1:1~6:1、または1:1~3:1の比率で含む。
【0150】
ある実施形態において、式(I)の化合物、またはその医薬的に許容され得る塩、水和物またはプロドラッグを含むか、これらから本質的になるか、またはこれらからなる組成物が提供され、ここで、R、R、RおよびRは、それぞれHであり;Rは、H、アシル、アルキル、アルケニル、アルキニル、アラルキル、カルボキシル、シクロアルキル、C(O)R’またはC(O)OR’であり、R’は、アルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキルまたはヘテロシクリルから選択され;RおよびRは、それぞれ存在せず;Rは、C-C16アルキルがカルボキシル基およびアミノ基の両方を有する置換アルキルではないC-C16アルキル、アルケニル、アルキニル、ケトン、アミノアルコール、アルギニン、ヒスチジン、リジン、アスパラギン酸、グルタミン酸、セリン、トレオニン、アスパラギン、グルタミン、システイン、セレノシステイン、グリシン、プロリン、アラニン、バリン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、チロシンおよびトリプトファンからなる群から選択されるアミノ酸、OR’、Se-R’、S-R’であり、OR’のR’は、H、アルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキルおよびヘテロシクリルからなる群から選択され、Se-R’のR’は、H、C-C16アルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキルおよびヘテロシクリルからなる群から選択され、S-R’のR’は、H、C-C16アルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキルおよびヘテロシクリルからなる群から選択される。
【0151】
具体的な実施形態において、少なくとも約0.033%(w/v)~少なくとも約0.1%(w/v)の式(I)の化合物または5’-メチルセレノアデノシン(「化合物C」)、またはその医薬的に許容され得る塩、水和物またはプロドラッグを含むか、これらから本質的になるか、またはこれらからなる組成物が提供される。別の実施形態において、組成物は、5’-セレノアデノシルホモシステインおよび/またはγ-L-グルタミル-Se-メチル-L-セレノシステインを含まない。なおさらなる実施形態において、組成物は、5’-メチルチオアデノシン、S-アデノシル-L-ホモシステインおよびγ-グルタミル-メチル-システインの1つ以上を含まない。ある実施形態において、組成物は、式(I)の化合物または5’-メチルセレノアデノシン(「化合物C」)、またはその医薬的に許容され得る塩、水和物またはプロドラッグを含み、但し、5’-メチルチオアデノシン、γ-グルタミル-メチル-システイン、またはアデノシルホモシステイン、ホモシステイン、またはメチオニンの1つ以上を含まない。
【0152】
ある実施形態において、式(I)の化合物、またはその医薬的に許容され得る塩、水和物またはプロドラッグを含む組成物が提供され、ここで、R、R、RおよびRはそれぞれHであり;Rは、H、アシル、アルキル、アルケニル、アルキニル、アラルキル、カルボキシル、シクロアルキル、C(O)R’またはC(O)OR’であり、R’は、アルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキルまたはヘテロシクリルから選択され;RおよびRは、それぞれ存在せず;Rは、iso-プロピル、ブチル、iso-ブチル、第二級ブチル、第三級ブチル、ペンチル、iso-ペンチル、neo-ペンチル、ヘキシル、iso-ヘキシル、3-メチルペンチル、2,3-ジメチルブチル、neo-ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシルおよびヘキサデシルからなる群から選択されるアルキル、またはアミノ酸である。
【0153】
ある実施形態において、式(I)の化合物、または5’-メチルセレノアデノシン(「化合物C」)またはその医薬的に許容され得る塩、水和物またはプロドラッグを含むか、これらから本質的になるか、またはこれらからなる組成物が提供され、ここで、R、R、RおよびRは、それぞれHであり;Rは、H、アシル、アルキル、アルケニル、アルキニル、アラルキル、カルボキシル、シクロアルキル、C(O)R’、C(O)OR’であり、R’は、アルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキルまたはヘテロシクリルから選択され;RおよびRは、それぞれ存在せず;Rは、アルキルまたはアミノ酸であり;但し、5’-セレノアデノシルメチオニン、デヒドロキシ 5’-メチルセレノアデノシン、エチルセレノアデノシン、セレノ(ヒドロキシル)-セレノフェン-(3’-デオキシ-アデノシン)、アリルセレノアデノシルホモシステイン、セレノ-アデノシルホモシステイン、セレノ-ヒドロキシアデノシルホモシステイン、セレノアデノシン、セレノ-アデノシル-Se(メチル)-セレノキシド、アデノシル-ヒドロキシセレノキシド、エチルセレノアデノシン、セレノ-(ヒドロキシ)-セレノフェン-(3’-デオキシ-アデノシン)、アデノシル-ヒドロキシセレノキシドおよびセレノ-アデノシル-Se(メチル)-セレノキシドは、それぞれ組成物から除外されていてもよい。
【0154】
本開示のある実施形態において、式(I)の化合物、またはその医薬的に許容され得る塩、水和物またはプロドラッグを含むか、これらから本質的になるか、またはこれらからなる組成物が提供され、ここで、Rは、iso-プロピル、ブチル、iso-ブチル、第二級ブチル、第三級ブチル、ペンチル、iso-ペンチル、neo-ペンチル、ヘキシル、iso-ヘキシル、3-メチルペンチル、2,3-ジメチルブチル、neo-ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシルおよびヘキサデシルからなる群から選択されるアルキル、アルケニル、アルキニル、ケトン、アミノアルコール、アルギニン、ヒスチジン、リジン、アスパラギン酸、グルタミン酸、セリン、トレオニン、アスパラギン、グルタミン、システイン、セレノシステイン、グリシン、プロリン、アラニン、バリン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、チロシンおよびトリプトファンからなる群から選択されるアミノ酸、OR’、Se-R’であり、R’は、iso-プロピル、ブチル、iso-ブチル、第二級ブチル、第三級ブチル、ペンチル、iso-ペンチル、neo-ペンチル、ヘキシル、iso-ヘキシル、3-メチルペンチル、2,3-ジメチルブチル、neo-ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシルおよびヘキサデシルからなる群から選択されるアルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキルまたはヘテロシクリルから選択され;Rは、水素、アジド、アルキル、アルケニル、アルキニルである。
【0155】
ある実施形態において、本開示の組成物は、式(I)の化合物、5’-メチルセレノアデノシン(「化合物C」)、またはその医薬的に許容され得る塩、水和物またはプロドラッグを含むか、これらから本質的になるか、またはこれらからなり、但し、5’-セレノアデノシルメチオニン、デヒドロキシ 5’-メチルセレノアデノシン、エチルセレノアデノシン、セレノ(ヒドロキシル)-セレノフェン-(3’-デオキシ-アデノシン)、アリルセレノアデノシルホモシステイン、セレノ-アデノシルホモシステイン、セレノ-ヒドロキシアデノシルホモシステイン、セレノアデノシン、セレノ-アデノシル-Se(メチル)-セレノキシド、アデノシル-ヒドロキシセレノキシド、エチルセレノアデノシン、セレノ-(ヒドロキシ)-セレノフェン-(3’-デソキシ-アデノシン)、アデノシル-ヒドロキシセレノキシドおよびセレノ-アデノシル-Se(メチル)-セレノキシドは、それぞれ、組成物から除外されていてもよい。
【0156】
他の実施形態において、式(I)の1つ以上の化合物または5’-メチルセレノアデノシン(「化合物C」)の1つ以上の化合物を含むか、これらから本質的になるか、またはこれらからなる組成物が提供され、セレン毒性を最低限にし、不活性化合物または阻害性化合物を除去し、および/または組成物の治療指数を最大限にするために、以下のそれぞれの化合物が、組成物から除外され、除外される化合物は、γ-グルタモイルセレノシステイン-γ-グルタモイルシステイン、γ-グルタモイルシステイン-2,3-DHP-セレノシステイン、ジ-γ-グルタモイルセレノシステイン、セレノグルタチオン-γ-グルタモイルシステイン、γ-グルタモイルセレノシステイン-γ-グルタモイルシステイン、γ-グルタモイルシステイン-2,3-DHP-セレノシステイン、ジ-γ-グルタモイルセレノシステイン、セレノグルタチオン-γ-グルタモイルシステイン、デヒドロキシ 5’-メチルセレノアデノシン、エチルセレノアデノシン、セレノ(ヒドロキシル)-セレノフェン-(3’-デオキシ-アデノシン)、アリルセレノアデノシルホモシステイン、セレノ-アデノシルホモシステイン、セレノ-ヒドロキシアデノシルホモシステイン、セレノアデノシン、セレノ-アデノシル-Se(メチル)-セレノキシド、アデノシル-ヒドロキシセレノキシド、エチルセレノアデノシン、セレノ-(ヒドロキシ)-セレノフェン-(3’-デスオキシ-アデノシン)、アデノシル-ヒドロキシセレノキシドおよびセレノ-アデノシル-Se(メチル)-セレノキシドである。
【0157】
本開示の組成物の別の実施形態は、式(II)の化合物
【化15】

またはその医薬的に許容され得る塩、水和物またはプロドラッグを含むか、これらから本質的になるか、またはこれらからなり、式中、
は、H、アシル、アルキル、アルケニル、アルキニル、アラルキル、カルボキシル、シクロアルキル、C(O)R’、C(O)OR’であり、R’は、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、アラルキルまたはヘテロシクリルであるか;または、RとRを合わせ、酸素または窒素から選択される少なくとも1個のヘテロ原子を含む、4~8個の環原子を含むヘテロ環式環を形成し;
は、H、アシル、アルキル、アルケニル、アルキニル、アラルキル、カルボキシル、シクロアルキル、C(O)R’、C(O)OR’であり、R’は、アルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキルまたはヘテロシクリルから選択されるか;または、RとRを合わせ、酸素または窒素から選択される少なくとも1個のヘテロ原子を含む、4~8個の環原子を含むヘテロ環式環を形成し;
は、H、アシル、アルキル、アルケニル、アルキニル、アラルキル、シクロアルキル、カルボキシルまたはC-アミドであるか;またはR、Rと、これらが接続する原子を合わせ、酸素または窒素から選択される少なくとも1個のヘテロ原子を含む、4~8個の環原子を含むヘテロ環式環を形成し;
は、H、アシル、アルキル、アルケニル、アルキニル、アラルキル、シクロアルキル、カルボキシルまたはC-アミドであるか;またはR、Rと、これらが接続する原子を合わせ、酸素または窒素から選択される少なくとも1個のヘテロ原子を含む、4~8個の環原子を含むヘテロ環式環を形成し;
は、オキソ、ヒドロキシル、アルキル、アルケニル、アルキニル、OR’であるか、または存在せず;R’は、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリールまたはアラルキルから選択され;
は、オキソ、ヒドロキシル、アルキル、アルケニル、アルキニル、OR’であるか、または存在せず;R’は、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリールまたはアラルキルから選択され;
は、水素、アジド、アルキル、アルケニル、アルキニルであり;
は、H、アシル、アルキル、アルケニル、アルキニル、アラルキル、カルボキシル、シクロアルキル、C(O)R’、C(O)OR’であり、R’は、アルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキルまたはヘテロシクリルであるか;または、RとR10を合わせ、酸素または窒素から選択される少なくとも1個のヘテロ原子を含む、4~8個の環原子を含むヘテロ環式環を形成し;
10は、H、アシル、アルキル、アルケニル、アルキニル、アラルキル、カルボキシル、シクロアルキル、C(O)R’、C(O)OR’であり、R’は、アルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキルまたはヘテロシクリルから選択されるか;または、RとR10を合わせ、酸素または窒素から選択される少なくとも1個のヘテロ原子を含む、4~8個の環原子を含むヘテロ環式環を形成し;
11は、OR、アルコキシ、アラルコキシまたはアミノであり、Rは、アルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロシクリルまたは医薬的に許容され得る塩または分子内塩から選択される。
【0158】
本明細書に記載される組成物のさらなる実施形態は、5’-セレノアデノシルホモシステイン(「化合物D」)を含むか、これから本質的になるか、またはこれからなり、その任意の類似体、誘導体、および/または医薬的に許容され得る塩を含む。化合物Dは、(2R)-2-アミノ-4-((((2S,3S,5R)-5-(6-アミノ-9H-プリン-9-イル)-3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフラン-2-イル)メチル)セラニル)ブタン酸(CAS登録番号4053-91-2)であり、その任意の類似体、誘導体、および/または医薬的に許容され得る塩を含む。
【化16】
【0159】
本開示の組成物は、式(II)の化合物、化合物D、およびこれらの組み合わせを含んでいてもよく、またはこれらから本質的になっていてもよく、またはこれらからなっていてもよい。例えば、本出願の一態様は、5’-セレノアデノシルホモシステイン、式(II)の化合物、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される化合物を含む組成物を提供する。さらなる実施形態において、これらの化合物の1つ以上を合成してもよく、単離してもよく、および/または精製してもよい。
【0160】
式(II)のある実施形態において、組成物は、5’-セレノアデノシルホモシステイン(化合物「D」)と、1つの他の化合物とを含むか、これらから本質的になるか、またはこれらからなる。ある実施形態において、組成物は、5’-メチルセレノアデノシンと他のセレン含有化合物を少なくとも1:1~100:1、1:1~50:1、1:1~10:1、1:1~6:1、または1:1~3:1の比率で含む。いくつかの実施形態において、他の化合物は、5’-メチルセレノアデノシンである。いくつかの実施形態において、他の化合物は、γ-L-グルタミル-Se-メチル-L-セレノシステインである。
【0161】
ある実施形態において、式(II)の化合物、またはその医薬的に許容され得る塩、水和物またはプロドラッグを含むか、これらから本質的になるか、またはこれらからなる組成物が提供され、R、R、R、RおよびRは、それぞれHであり;Rは、H、アシル、アルキル、カルボキシル、C(O)R’またはC(O)OR’であり、R’は、アルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキルまたはヘテロシクリルから選択され;RおよびRは、存在せず;R10は、H、アシル、アルキル、アルケニル、アルキニル、アラルキル、カルボキシル、シクロアルキル、C(O)R’、C(O)OR’であり、R’は、アルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキルまたはヘテロシクリルから選択され;R11は、OR、アルコキシ、アラルコキシまたはアミノであり、Rは、アルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロシクリル、または医薬的に許容され得る塩または分子内塩から選択される。
【0162】
ある実施形態において、式(II)の化合物、またはその医薬的に許容され得る塩、水和物またはプロドラッグを含むか、これらから本質的になるか、またはこれらからなる組成物が提供され、R、R、R、R、R、R、R、R、R、R10は、上に定義されるとおりであり、R11はORであり、Rは、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、sec-ブチルまたはtert-ブチルから選択される。
【0163】
具体的な態様において、式(II)の化合物、またはその医薬的に許容され得る塩、水和物またはプロドラッグ、5’-セレノアデノシルホモシステイン(化合物「D」)、またはその医薬的に許容され得る塩、水和物またはプロドラッグを含むか、これらから本質的になるか、またはこれらからなる組成物が提供される。
【0164】
ある実施形態において、組成物は、式(II)の化合物、セレノアデノシルホモシステイン、またはその医薬的に許容され得る塩、水和物またはプロドラッグを含むか、これらから本質的になるか、またはこれらからなり、但し、アデノシルホモシステイン、5’-セレノアデノシルメチオニン、アリルセレノアデノシルホモシステインおよびセレノ-ヒドロキシアデノシルホモシステインの1つ以上は、それぞれ、組成物から除外されてもよい。いくつかの実施形態において、組成物は、5’-メチルチオアデノシン、γ-グルタミル-メチル-システイン、またはアデノシルホモシステイン、ホモシステインまたはメチオニンの1つ以上の化合物を含まない。
【0165】
本開示の組成物のさらなる実施形態は、式(III)の化合物
【化17】

またはその医薬的に許容され得る塩、水和物またはプロドラッグを含むか、これらから本質的になるか、またはこれらからなり、式中、
は、H、アシル、アルキル、アルケニル、アルキニル、アラルキル、カルボキシル、シクロアルキル、C(O)R’、C(O)OR’であり、R’は、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、アラルキルまたはヘテロシクリルであるか;または、RとRを合わせ、酸素または窒素から選択される少なくとも1個のヘテロ原子を含む、4~8個の環原子を含むヘテロ環式環を形成し;
は、H、アシル、アルキル、アルケニル、アルキニル、アラルキル、カルボキシル、シクロアルキル、C(O)R’、C(O)OR’であり、R’は、アルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキルまたはヘテロシクリルから選択されるか;または、RとRを合わせ、酸素または窒素から選択される少なくとも1個のヘテロ原子を含む、4~8個の環原子を含むヘテロ環式環を形成し;
は、OH、OR、アルコキシ、アラルコキシまたはアミノであり、Rは、アルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロシクリル、または医薬的に許容され得る塩または分子内塩から選択され;
は、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロシクリル、または医薬的に許容され得る塩または分子内塩であり;
は、オキソ、ヒドロキシル、アルキル、アルケニル、アルキニル、OR’であるか、または存在せず;R’は、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリールまたはアラルキルから選択され;
は、オキソ、ヒドロキシル、アルキル、アルケニル、アルキニル、OR’であるか、または存在せず;R’は、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリールまたはアラルキルから選択され;
は、C-C16アルキルがカルボキシル基およびアミノ基の両方を有する置換アルキルではないC-C16アルキル、アルケニル、アルキニル、ケトン、アミノアルコール、アルギニン、ヒスチジン、リジン、アスパラギン酸、グルタミン酸、セリン、トレオニン、アスパラギン、グルタミン、システイン、セレノシステイン、グリシン、プロリン、アラニン、バリン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、チロシンおよびトリプトファンからなる群から選択されるアミノ酸、OR’、Se-R’、S-R’であり、OR’のR’は、H、アルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキルおよびヘテロシクリルからなる群から選択され、Se-R’のR’は、H、C-C16アルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキルおよびヘテロシクリルからなる群から選択され、S-R’のR’は、H、C-C16アルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキルおよびヘテロシクリルからなる群から選択される。
【0166】
本明細書に記載される組成物のさらなる実施形態は、ガンマ(γ)-L-グルタミル-Se-メチル-L-セレノシステイン(「化合物E」)を含んでいてもよく、これらから本質的になっていてもよく、またはこれらからなっていてもよく、その任意の類似体、誘導体、および/または医薬的に許容され得る塩を含む。化合物Eは、N5-(1-カルボキシ-2-(メチルセラニル)エチル)-L-グルタミンであり、その任意の類似体、誘導体、および/または医薬的に許容され得る塩を含む。
【化18】
【0167】
本開示の組成物は、式(III)の化合物、化合物E、およびこれらの組み合わせを含んでいてもよく、これらから本質的になっていてもよく、またはこれらからなっていてもよい。例えば、本出願の一態様は、ガンマ(γ)-L-グルタミル-Se-メチル-L-セレノシステイン、式(III)の化合物、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される化合物を含む組成物を提供する。さらなる実施形態において、これらの化合物の1つ以上を合成してもよく、単離してもよく、および/または精製してもよい。
【0168】
本出願の一態様は、γ-L-グルタミル-Se-メチル-L-セレノシステイン、式(III)の化合物およびこれらの組み合わせからなる群から選択される化合物を含む組成物を提供する。さらなる実施形態において、これらの化合物の1つ以上を単離してもよく、および/または精製してもよい。いくつかの実施形態において、組成物は、上述の化合物の1つを少なくとも0.033%(w/v)含む。
【0169】
いくつかの実施形態において、組成物は、少なくともγ-L-グルタミル-Se-メチル-L-セレノシステインと、1つの他の化合物とを含む。ある実施形態において、組成物は、γ-L-グルタミル-Se-メチル-L-セレノシステインと他のセレン含有化合物を少なくとも1:1~100:1、1:1~50:1、1:1~10:1、1:1~6:1、または1:1~3:1の比率で含む。いくつかの実施形態において、他の化合物は、5’-メチルセレノアデノシンである。いくつかの実施形態において、他の化合物は、ガンマ(γ)-L-グルタミル-メチル-L-システインである。
【0170】
具体的な実施形態において、式(III)の化合物、またはその医薬的に許容され得る塩、水和物またはプロドラッグ、γ-L-グルタミル-Se-メチル-L-セレノシステイン(「化合物E」)、またはその医薬的に許容され得る塩、水和物またはプロドラッグを、1つの他のセレン含有化合物に対して組成物中に少なくとも1:1の比率で含む組成物が提供される。
【0171】
ある実施形態において、組成物は、式(III)の化合物、γ-L-グルタミル-Se-メチル-L-セレノシステイン、またはその医薬的に許容され得る塩、水和物またはプロドラッグを含み、但し、γ-グルタモイルセレノシステイン-γ-グルタモイルシステイン、γ-グルタモイルシステイン-2,3-DHP-セレノシステイン、ジ-γ-グルタモイルセレノシステイン、セレノグルタチオン-γ-グルタモイルシステイン,γ-グルタモイルセレノシステイン-γ-グルタモイルシステイン、γ-グルタモイルシステイン-2,3-DHP-セレノシステイン、ジ-γ-グルタモイルセレノシステインおよびセレノグルタチオン-γ-グルタモイルシステインの1つ以上は、それぞれ、組成物から除外されていてもよい。
【0172】
ある実施形態において、組成物は、式(III)の化合物、γ-L-グルタミル-Se-メチル-L-セレノシステイン、またはその医薬的に許容され得る塩、水和物またはプロドラッグを含み、但し、5’-メチルチオアデノシン、γ-グルタミル-メチル-システインまたはアデノシルホモシステイン、ホモシステインまたはメチオニンの1つ以上が除外される。
【0173】
本出願の別の態様は、本明細書に記載される生物学的に活性なセレン化合物(例えば、式(I)、(II)および(III))の類似体または誘導体を提供する。セレン含有化合物の類似体および/または誘導体は、合成によって調製することができる。例えば、式(I)、(II)および(III)の一実施形態は、これらの任意の類似体、誘導体または医薬的に許容され得る塩を含む。本組成物の別の実施形態は、式(I)、(II)および(III)の化合物、およびこれらの組み合わせを含む。
【0174】
本開示の組成物のさらなる実施形態は、本明細書に記載される化合物の混合物を含んでいてもよく、これらから本質的になっていてもよく、またはこれらからなっていてもよい。例えば、本組成物の一実施形態は、「化合物CDE」である。化合物CDEは、化合物C、化合物Dおよび化合物E、およびこれらの任意の類似体、誘導体、および/または医薬的に許容され得る塩の混合物を含む。化合物CEは、化合物Cおよび化合物E、およびこれらの任意の類似体、誘導体、および/または医薬的に許容され得る塩の混合物を含む。化合物DEは、化合物Dおよび化合物E、およびこれらの任意の類似体、誘導体、および/または医薬的に許容され得る塩の混合物を含む。
【0175】
ある実施形態において、本出願の組成物は、化合物C、化合物D、化合物E、化合物CDE、式(I)、式(II)、式(III)のいずれかの化合物、またはこれらの混合物を少なくとも約0.033%(w/v)~少なくとも約0.1%(w/v)を含むか、これらから本質的になるか、またはこれらからなる。例えば、組成物は、化合物C、化合物D、化合物E、式(I)、式(II)、式(III)の化合物、化合物CDE、またはこれらの混合物を少なくとも0.033%(w/v)、少なくとも0.05%(w/v)、少なくとも0.1%(w/v)、少なくとも約0.033%(w/v)、少なくとも約0.05%(w/v)、少なくとも約0.1%(w/v)、少なくとも約0.033%(w/v)~少なくとも約0.1%(w/v)、または少なくとも約0.05%(w/v)~少なくとも約0.1%(w/v)含んでいてもよい。
【0176】
例えば、ある実施形態において、組成物は、少なくとも約0.033%(w/v)~少なくとも約0.035%(w/v)、少なくとも約0.033%~少なくとも約0.040%(w/v)、少なくとも約0.033%~少なくとも約0.045%(w/v)、少なくとも約0.033%~少なくとも約0.050%(w/v)、少なくとも約0.033%~少なくとも約0.055%(w/v)、少なくとも約0.033%~少なくとも約0.060%(w/v)、少なくとも約0.033%~少なくとも約0.065%(w/v)、少なくとも約0.033%~少なくとも約0.070%(w/v)、少なくとも約0.033%~少なくとも約0.075%(w/v)、少なくとも約0.033%~少なくとも約0.080%(w/v)、少なくとも約0.033%~少なくとも約0.085%(w/v)、少なくとも約0.033%~少なくとも約0.090%(w/v)、少なくとも約0.033%~少なくとも約0.095%(w/v)、または少なくとも約0.033%~少なくとも約0.1%(w/v)の式(I)、式(II)、式(III)、化合物C、化合物D、化合物E、化合物CDEのいずれかの化合物、またはこれらの混合物を含み、この間に含まれる全てのパーセント範囲の値を含む。
【0177】
例えば、ある実施形態において、組成物は、少なくとも約0.05%~少なくとも約0.060%(w/v)、少なくとも約0.05%~少なくとも約0.065%(w/v)、少なくとも約0.05%~少なくとも約0.070%(w/v)、少なくとも約0.05%~少なくとも約0.075%(w/v)、少なくとも約0.05%~少なくとも約0.080%(w/v)、少なくとも約0.05%~少なくとも約0.085%(w/v)、少なくとも約0.05%~少なくとも約0.090%(w/v)、少なくとも約0.05%~少なくとも約0.095%(w/v)、または少なくとも約0.05%~少なくとも約0.1%(w/v)の式(I)、式(II)、式(III)、化合物C、化合物D、化合物E、化合物CDEのいずれかの化合物、またはこれらの混合物を含み、この間に含まれる全てのパーセント範囲の値を含む。
【0178】
他の実施形態において、組成物は、約0.033%(w/v)~約99.9%(w/v)、約0.033%~約90%(w/v)、約0.033%~約80%(w/v)、約0.033%~約70%(w/v)、約0.033%~約60%(w/v)、約0.033%~約50%(w/v)、約0.033%~約40%(w/v)、約0.033%~約30%(w/v)、約0.033%~約20%(w/v)、約0.033%~約10%(w/v)、約0.033%~約5%(w/v)、または約0.033%~約1%(w/v)の式(I)、式(II)、式(III)、化合物C、化合物D、化合物E、化合物CDEのいずれかの化合物、またはこれらの混合物を含み、この間に含まれる全てのパーセント範囲の値を含む。
【0179】
他の実施形態において、組成物は、約0.05%(w/v)~約99.9%(w/v)、約0.05%~約90%(w/v)、約0.05%~約80%(w/v)、約0.05%~約70%(w/v)、約0.05%~約60%(w/v)、約0.05%~約50%(w/v)、約0.05%~約40%(w/v)、約0.05%~約30%(w/v)、約0.05%~約20%(w/v)、約0.05%~約10%(w/v)、約0.05%~約5%(w/v)、または約0.05%~約1%(w/v)の式(I)、式(II)、式(III)、化合物C、化合物D、化合物E、化合物CDEのいずれかの化合物、またはこれらの混合物を含み、この間に含まれる全てのパーセント範囲の値を含む。
【0180】
さらなる実施形態において、組成物は、約0.1%(w/v)~約99.9%(w/v)、約0.1%~約90%(w/v)、約0.1%~約80%(w/v)、約0.1%~約70%(w/v)、約0.1%~約60%(w/v)、約0.1%~約50%(w/v)、約0.1%~約40%(w/v)、約0.1%~約30%(w/v)、約0.1%~約20%(w/v)、約0.1%~約10%(w/v)、約0.1%~約5%(w/v)、または約0.1%~約1%(w/v)の式(I)、式(II)、式(III)、化合物C、化合物D、化合物E、化合物CDEのいずれかの化合物、またはこれらの混合物を含み、この間に含まれる全てのパーセント範囲の値を含む。
【0181】
他の実施形態において、組成物は、少なくとも約0.033%(w/v)~少なくとも約0.1%(w/v)、または少なくとも約0.05%(w/v)~少なくとも約0.1%(w/v)の式(I)、式(II)、式(III)の化合物、化合物C、化合物D、化合物E、化合物CDE、またはこれらの混合物を含む。
【0182】
いくつかの実施形態において、組成物は、少なくとも5’-メチルセレノアデノシンと、1つの他の化合物とを含む。ある実施形態において、組成物は、5’-メチルセレノアデノシンと1つの他のセレン含有化合物を少なくとも1:1~100:1、1:1~50:1、1:1~10:1、1:1~6:1、または1:1~3:1の比率で含む。いくつかの実施形態において、他の化合物は、5’-セレノアデノシルホモシステインである。他の実施形態において、他の化合物は、L-グルタミル-Se-メチル-L-セレノシステインである。
【0183】
他の実施形態において、組成物は、5’-メチルチオアデノシン(「化合物H」)、S-アデノシル-L-ホモシステイン(「化合物I」)、γ-グルタミル-メチル-システイン(「化合物J」)、γ-L-グルタミル-Se-メチル-L-セレノシステイン、Se-アデノシルホモシステインまたはグルタミルセレノシステインの1つ以上を含まなくてもよい。これらの化合物の1つ以上が組成物に不必要な場合があるか、または組成物中の他の化合物に対して阻害性の場合があるからである。
【0184】
本出願の一態様は、5’-メチルセレノアデノシン、Se-アデノシル-L-ホモシステイン、γ-グルタミル-メチルセレノ-システイン、式(I)の化合物、式(II)の化合物、式(III)の化合物およびこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも2種類の化合物を含む組成物を提供する。さらなる実施形態において、これらの化合物の1つ以上を合成してもよく、単離してもよく、および/または精製してもよい。
【0185】
本出願の一態様は、5’-メチルセレノアデノシン(「化合物C」)、Se-アデノシル-L-ホモシステイン(「化合物D」)、L-グルタミル-Se-メチル-L-セレノシステイン(「化合物E」)およびこれらの類似体に関する。ある実施形態は、式(I)、式(II)および/または式(III)の化合物およびこれらの混合物と、担体とを含む組成物を含む。
【0186】
他の実施形態において、組成物は、5’-メチルセレノアデノシン、Se-アデノシル-L-ホモシステイン、γ-グルタミル-メチルセレノ-システイン、式(I)の化合物、式(II)の化合物、式(III)の化合物およびこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも3種類の異なる化合物を含む。なおさらなる実施形態において、組成物は、これらの化合物のうち、少なくとも1種類を少なくとも約0.033%(w/v)含む。他の実施形態において、組成物は、これらの化合物のうち、2種類をそれぞれ少なくとも約0.05%(w/v)含む。なお別の実施形態において、組成物は、これらの化合物のうち、3種類をそれぞれ少なくとも約0.033%(w/v)含む。
【0187】
さらなる実施形態において、式(I)、式(II)および式(III)の化合物の1つ以上を合成してもよく、単離してもよく、および/または精製してもよい。いくつかの実施形態において、式(I)、式(II)および式(III)の化合物を含む組成物は、さらに、界面活性剤および安定化するアミノ酸を含む、水、生理的食塩水、生理的緩衝液のような担体を含む。
【0188】
ある実施形態において、式(I)、式(II)、式(III)、化合物C、化合物D、化合物E、化合物CDE、またはこれらの混合物の1つ以上に係る1つ以上の化合物を含む組成物が提供され、セレン毒性を最低限にし、不活性化合物または阻害性化合物を除去し、および/または組成物の治療指数を最大限にするために、以下のそれぞれの化合物の1つ以上が、組成物から除外され、除外される化合物は、γ-グルタモイルセレノシステイン-γ-グルタモイルシステイン、γ-グルタモイルシステイン-2,3-DHP-セレノシステイン、ジ-γ-グルタモイルセレノシステイン、セレノグルタチオン-γ-グルタモイルシステイン、γ-グルタモイルセレノシステイン-γ-グルタモイルシステイン、γ-グルタモイルシステイン-2,3-DHP-セレノシステイン、ジ-γ-グルタモイルセレノシステイン、セレノグルタチオン-γ-グルタモイルシステイン、デヒドロキシ 5’-メチルセレノアデノシン、エチルセレノアデノシン、セレノ(ヒドロキシル)-セレノフェン-(3’-デオキシ-アデノシン)、アリルセレノアデノシルホモシステイン、セレノ-アデノシルホモシステイン、セレノ-ヒドロキシアデノシルホモシステイン、セレノアデノシン、セレノ-アデノシル-Se(メチル)-セレノキシド、アデノシル-ヒドロキシセレノキシド、エチルセレノアデノシン、セレノ-(ヒドロキシ)-セレノフェン-(3’-デソキシ-アデノシン)、アデノシル-ヒドロキシセレノキシドおよびセレノ-アデノシル-Se(メチル)-セレノキシドである。
【0189】
ある実施形態において、組成物は、5’-メチルセレノアデノシン、Se-アデノシル-L-ホモシステイン、γ-グルタミル-メチルセレノ-システイン、式(I)の化合物、式(II)の化合物および式(III)の化合物、およびこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも2種類の異なる化合物と、担体とを含む。他の実施形態において、組成物は、5’-メチルセレノアデノシン、Se-アデノシル-L-ホモシステイン、γ-グルタミル-メチルセレノ-システインからなる群から選択される少なくとも2種類の異なる化合物と、担体とを含む。いくつかの実施形態において、組成物は、5’-メチルセレノアデノシンおよびγ-グルタミル-メチルセレノ-システインを含む。いくつかの実施形態において、この2種類の化合物は、それぞれ、組成物中に少なくとも約0.033%(w/v)存在する。
【0190】
他の実施形態において、組成物は、5’-メチルセレノアデノシン、Se-アデノシル-L-ホモシステイン、γ-グルタミル-メチルセレノ-システイン、式(I)の化合物、式(II)の化合物および式(III)の化合物、およびこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも3種類の異なる化合物と、担体とを含む。他の実施形態において、組成物は、5’-メチルセレノアデノシン、Se-アデノシル-L-ホモシステイン、γ-グルタミル-メチルセレノ-システインからなる群から選択される少なくとも3種類の異なる化合物と、担体とを含む。いくつかの実施形態において、この3種類の化合物は、それぞれ、組成物中に少なくとも約0.033%(w/v)存在する。
【0191】
ある実施形態において、本明細書に記載される本出願のいずれかの化合物は、半減期を延ばすために、プロドラッグで改質されていてもよい。プロドラッグは、化合物が酸化するのを防ぎ、その化合物がある組織を標的とし、その化合物が血液脳関門を通過することができるために有用であろう。
【0192】
ある実施形態において、プロドラッグは、セレノグリコシドを含む。グリコシドは、単糖、二糖およびオリゴ糖を含む。糖類は、リボース、グルコース、ガラクトースまたはマンノースを含んでいてもよい。例えば、セレン部分に接合したガラクトースは、この化合物に肝臓を標的とする能力を与える。
【0193】
他の実施形態において、プロドラッグは、セレナゾリジンを含む。これらの化合物は、化合物の徐放性を与える。
【0194】
さらに他の実施形態において、プロドラッグは、ビタミンCまたはビタミンEのようなビタミンに対する有機セレン化合物の接合を含む。これらのプロドラッグ接合体は、改良された保護効果を有する。
【0195】
さらに他の実施形態において、プロドラッグは、チトクロムP450活性化されたプロドラッグであってもよい(例えば、環状ホスフェートまたはホスホネート)。他の実施形態のチトクロムP450活性化されたプロドラッグは、バイオアベイラビリティを改良する。特に、ヌクレオシドは、これらの分子を用いて改質され、この化合物は肝臓を標的とする。例示的なプロドラッグとしては、HepDirectプロドラッグが挙げられる。他の実施形態のチトクロムP450活性化されたプロドラッグは、バイオアベイラビリティを改良し、Huttunenら、Current Medicinal Chemistry 2008 15:2346に記載される。
【0196】
いくつかの実施形態において、式(I)、式(II)、式(III)、化合物C、化合物D、化合物E、または化合物CDEのいずれかの化合物は、セレンの酸化を低減するように改質することができる。いくつかの実施形態において、化合物は、セレン原子間の接続を介してダイマーを形成することができる。
【0197】
いくつかの実施形態において、式(I)、式(II)、式(III)、化合物C、化合物D、化合物E、または化合物CDEのいずれかの化合物は、組織を標的とする薬剤または化合物の半減期を長くするための他の薬剤への接続によって改質することができる。組織を標的とする薬剤は、限定されないが、組織特異的な抗原に結合する特異的な抗体、トランスフェリン受容体または本明細書に記載されるようなプロドラッグを含む当該技術分野で知られている任意の薬剤を含んでいてもよい。
【0198】
ある実施形態において、本発明の組成物は、血液脳関門を通過するように配合される。本発明の組成物を、脳への送達に適したインプラント材料(例えば、生分解性ポリマーインプラントまたは担体)と合わせてもよい。このようなポリマー担体としては、限定されないが、ポリエチレングリコール、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリオルトエステル、ポリビニルピロリドンおよびポリビニルアルコール、およびエチレン-コ-酢酸ビニルが挙げられる。
【0199】
他の実施形態において、組成物を脳に運び、他の組織を標的とするために、化合物を、ナノ粒子担体に接続するか、またはこれらと合わせてもよい。他のナノ粒子としては、リン脂質、キトサン、乳酸およびデキストランが挙げられる。
【0200】
微小球およびリポソームは、本開示で使用可能なさらなる担体である。例えば、微小球およびリポソームは、限定されないが、ポリ乳酸グリコール酸共重合体(PLGA)担体を含んでいてもよい。他の実施形態において、脳または他の組織への組成物の担体の送達は、抗体、トランスフェリン受容体またはプロドラッグを標的化剤として含むリポソームまたは微小球を用いることによって標的化することができる。組織の標的化は、インスリン受容体およびトランスフェリン受容体のような受容体が介在する伝達を含んでいてもよい。本明細書に記載されるような組成物も含むリポソームまたは微小球に、これらの受容体を組み込むことができる。
【0201】
脂質プロドラッグも、本発明の化合物と共に使用するのに適している。非限定例として、特定の脂質プロドラッグが、Hostetlerら(1997 Biochem.Pharm.53:1815-1822)およびHostetlerら、1996 Antiviral Research 31:59-67)に記載され、両者ともその全体が参考として本明細書に組み込まれる。適切なプロドラッグ技術のさらなる例は、WO 90/00555号;WO 96/39831号;WO 03/095665 A2号;米国特許第5,411,947号;第5,463,092号;第6,312,662号;第6,716,825号;および米国出願公開第2003/0229225号および2003/0225277号に記載され、それぞれ、その全体が参考として本明細書に組み込まれる。このようなプロドラッグは、それぞれがその全体が参考として本明細書に組み込まれるErionら(2004 J.Am.Chem.Soc.126:5154-5163;Erionら、Am.Soc.Pharm.& Exper.Ther.DOI:10.1124/jept.104.75903(2004);WO 01/18013 A1号;米国特許第6,752,981号)に記載されるように、薬物化合物が患者の特定の組織(例えば、肝臓)を標的とする能力も保有していてもよい。非限定例として、本発明の化合物と共に使用するのに適した他のプロドラッグは、WO 03/090690号;米国特許第6,903,081号;米国特許出願第2005/0171060A1号;米国特許出願第2002/0004594A1号;およびHarrisら(2002 Antiviral Chem & Chemo.12:293-300;Knaggsら、2000 Bioorganic & Med.Chem.Letters 10:2075-2078)に記載され、それぞれ、その全体が参考として本明細書に組み込まれる。
【0202】
このようなプロドラッグは、それぞれがその全体が参考として本明細書に組み込まれるErionら(2004 J.Am.Chem.Soc.126:5154-5163;Erionら、Am.Soc.Pharm.& Exper.Ther.DOI:10.1124/jept.104.75903(2004);WO 01/18013 A1号;米国特許第6,752,981号)に記載されるように、薬物化合物が患者の特定の組織(例えば、肝臓)を標的とする能力も保有していてもよい。非限定例として、本発明の化合物と共に使用するのに適した他のプロドラッグは、WO 03/090690号;米国特許第6,903,081号;米国特許出願第2005/0171060A1号;米国特許出願第2002/0004594A1号;およびHarrisら(2002 Antiviral Chem & Chemo.12:293-300;Knaggsら、2000 Bioorganic & Med.Chem.Letters 10:2075-2078)に記載され、それぞれ、その全体が参考として本明細書に組み込まれる。
【0203】
ある実施形態において、それぞれが式(I)の1つ以上の化合物を含む組成物が提供される。ある態様において、組成物は、5’-メチルセレノアデノシンまたはその医薬的に許容され得る塩、水和物またはプロドラッグ;および5’-セレノアデノシルホモシステインまたはその医薬的に許容され得る塩、水和物またはプロドラッグを含む。
【0204】
ある実施形態において、式(I)および式(III)それぞれの1つ以上の化合物を含む組成物が提供される。ある態様において、組成物は、5’-メチルセレノアデノシンまたはその医薬的に許容され得る塩、水和物またはプロドラッグ;5’-セレノアデノシルホモシステインまたはその医薬的に許容され得る塩、水和物またはプロドラッグ;およびγ-グルタミル-メチルセレノ-システインまたはその医薬的に許容され得る塩、水和物またはプロドラッグを含む。
【0205】
ある実施形態において、組成物は、5’-メチルセレノアデノシンまたはその医薬的に許容され得る塩、水和物またはプロドラッグ;およびγ-グルタミル-メチルセレノ-システインまたはその医薬的に許容され得る塩、水和物またはプロドラッグを含む。
【0206】
ある実施形態において、式(I)および式(II)それぞれの1つ以上の化合物を含む組成物が提供される。ある態様において、式(II)および(III)それぞれの1つ以上の化合物を含む組成物が提供される。
【0207】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載される化合物のいずれかは、糖代謝を調整するか、または糖尿病を治療するために、異なる治療薬をさらに含んでいてもよい。
【0208】
ある実施形態において、異なる治療薬は、インスリンまたはその類似体である。インスリン類似体は、迅速に作用するインスリン類似体と、長く作用するインスリン類似体を含む。インスリン類似体は、1つ以上のアミノ酸が変更されていてもよい。迅速に作用するインスリン類似体としては、アスパルト、グルリジンおよびリスプロが挙げられる。長く作用するインスリンとしては、NPHインスリン、インスリンデテミル、デグルデクインスリンまたはインスリングラルジンが挙げられる。
【0209】
一実施形態において、組成物は、糖代謝を調整するか、または糖尿病を治療するために、異なる治療薬をさらに含む。ある実施形態において、異なる治療薬は、インスリンまたはその類似体である。ある実施形態において、異なる治療薬は、インスリン感受性改善薬、インスリン分泌促進薬またはインクレチン模倣薬である。メトホルミン、スルホニルウレア、メグリチニド、D-フェニルアラニン誘導体、チアゾリジンジオン、DPP-4阻害剤、αグルコシダーゼ阻害剤、胆汁酸封鎖剤およびこれらの組み合わせを含め、本組成物に有効な他の例示的な治療薬を使用し、糖尿病を治療してもよい。
【0210】
本発明の別の態様によれば、医薬組成物は、治療に有効な量の本発明の1つ以上の化合物またはその医薬的に許容され得る塩、エステルまたはプロドラッグを、医薬的に許容され得る希釈剤または担体と共に含む。本発明の例示的な希釈剤および担体は、本出願の定義の章に詳細に記載される。例えば、ある実施形態において、担体は、界面活性剤または安定化するアミノ酸(例えば、ヒスチジンまたはグリシン)を含有する、水、生理的食塩水、緩衝化水溶液を含んでいてもよい。本出願の一実施形態において、医薬的に許容され得る担体は、医薬的に不活性である。
【0211】
本出願のある実施形態において、セレンを含む組成物および/または製剤のみが被検体に投与されてもよく、または他の形態のセレン、薬物、低分子と組み合わせて、または賦形剤または他の医薬的に許容され得る担体と混合した医薬組成物で投与されてもよい。他の実施形態において、本出願の組成物は、経口投与に適した用量で、当該技術分野でよく知られている医薬的に許容され得る担体を用い、配合することができる。このような担体によって、医薬組成物を錠剤、丸薬、カプセル、液体、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁物などとして配合することができ、または治療される患者によって口または鼻から摂取するために配合することができる。それに加え、限定されないが、5’-メチルセレノアデノシン、式(I)の化合物、およびこれらの組み合わせを含む1種類以上の化合物を含む組成物が、医薬的に許容され得る担体(例えば、生理的食塩水)に含まれる状態で被検体(例えば、患者)に静脈内投与されてもよい。
【0212】
組成物は、特に、経口、直腸、経皮、皮下、静脈内、筋肉内または鼻腔内の投与を含め、任意の投与経路のために配合されてもよい。組成物は、例えば、錠剤、カプセル、カプレット、溶液、懸濁物、分散物、シロップ、スプレー剤、ゲル、坐剤、パッチ剤およびエマルションのような任意の従来の形態で配合されてもよい。
【0213】
医学分野でよく知られているように、ある任意の被検体のための用量は、患者の大きさ、身体の表面積、年齢、投与される特定の化合物、性別、投与時間および投与経路、全体的な健康、同時に投与される他の薬物との相互作用を含め、多くの因子に依存して変わってもよい。治療によって変えられることが求められる標的に依存して、医薬組成物は、全身的または局所的に配合され、投与されてもよい。
【0214】
治療化合物の配合および投与のための当該技術分野で知られている技術は、本発明の化合物および組成物を投与するのに十分なものであり、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」(Mack Publishing Co、Easton Pa.)の最新版の中に見出されるだろう。本開示の組成物は、任意の投与経路のために、特に、経口、直腸、経皮、皮下、静脈内、筋肉内または鼻腔内の投与のために配合されてもよい。適切な投与経路は、例えば、経口投与または経粘膜投与;および筋肉内投与、皮下投与、骨髄内投与、髄腔内投与、心室内投与、静脈内投与、腹腔内投与または鼻腔内投与を含む非経口送達を含んでいてもよい。
【0215】
注射のために、本出願の組成物(例えば、セレン含有組成物)は、水溶液に配合されてもよく、例えば、生理学的に適合性のバッファー、例えば、Hanks溶液、Ringer溶液または生理緩衝化食塩水に配合されてもよい。組織、臓器または細胞に投与するために、浸透する特定の障壁に適した浸透剤が製剤に使用される。このような浸透剤は、当該技術分野で一般的に知られている。
【0216】
本出願で使用するのに適した医薬組成物は、意図した目的を達成するのに有効な量で活性成分(例えば、5’-メチルセレノアデノシン、Se-アデノシル-L-ホモシステイン、γ-グルタミル-メチルセレノ-システイン、式(I)の化合物、式(II)の化合物、式(III)の化合物、およびこれらの混合物)が含まれる組成物を含む。例えば、好ましい実施形態において、有効な量の医薬組成物は、5’-メチルセレノアデノシン、Se-アデノシル-L-ホモシステイン、γ-グルタミル-メチルセレノ-システイン、式(I)の化合物、式(II)の化合物、式(III)の化合物、およびこれらの混合物からなる群から選択される所定量の化合物を含む。有効な量の決定は、特に、本明細書に与えられる開示内容の観点で、当業者の能力の範囲内に十分に入る。
【0217】
ある種のセレン含有化合物は、合成によって調製され、精製され、生体活性アッセイでスクリーニングされている。セレン化酵母から得られたとき、セレン化酵母またはその水抽出物中に見出される全ての要素および化合物が生体活性を有するわけではなく、実際に、細胞にとって毒性のものもある。
【0218】
本開示の組成物は、特に、経口、直腸、経皮、皮下、静脈内、筋肉内または鼻腔内の投与を含め、任意の投与経路のために配合されてもよい。適切な投与経路は、例えば、経口投与または経粘膜投与;および筋肉内投与、皮下投与、骨髄内投与、髄腔内投与、心室内投与、静脈内投与、腹腔内投与または鼻腔内投与を含む非経口送達を含んでいてもよい。
【0219】
注射のために、本出願の組成物(例えば、セレン含有組成物)は、水溶液に配合されてもよく、例えば、生理学的に適合性のバッファー、例えば、Hanks溶液、Ringer溶液または生理緩衝化食塩水に配合されてもよい。組織または細胞に投与するために、浸透する特定の障壁に適した浸透剤が製剤に使用される。このような浸透剤は、当該技術分野で一般的に知られている。
【0220】
ある実施形態において、化合物を含有する組成物または合成によって配合された化合物を含む組成物は、それぞれのセレン含有要素を等量含んでいてもよく、例えば、γ-グルタミル-メチルセレノ-システインと5’-メチルセレノアデノシンとSe-アデノシル-L-ホモシステインを少なくとも1:1:1の比率で含んでいてもよい。他の実施形態において、組成物は、少なくとも2種類の成分を1:1~100:1、1:1~50:1、1:1~10:1、1:1~6:1、または1:1~3:1の比率で含んでいてもよい。
【0221】
5’-メチルセレノアデノシン、Se-アデノシル-L-ホモシステイン、γ-グルタミル-メチルセレノ-システイン、式(I)の化合物、式(II)の化合物、式(III)の化合物およびこれらの組み合わせを含む1種類以上の化合物を含む組成物が、医薬的に許容され得る担体(例えば、生理的食塩水)に含まれる状態で被検体(例えば、患者)に静脈内投与されてもよい。化合物を細胞内送達するための標準的な方法を使用してもよい(例えば、リポソームを介した送達)。このような方法は、当業者によく知られている。
【0222】
セレンを含む組成物は、静脈内投与および非経口投与(例えば、静脈内、皮下、筋肉内および腹腔内)に有用である。注射のために、本出願のセレンを含む組成物(例えば、医薬組成物)は、水溶液に配合されてもよく、好ましくは、生理学的に適合性のバッファー、例えば、Hanks溶液、Ringer溶液または生理緩衝化食塩水に配合されてもよい。組織または細胞に投与するために、浸透する特定の障壁に適した浸透剤が製剤に使用される。このような浸透剤は、当該技術分野で一般的に知られている。
【0223】
ある実施形態において、医薬製剤は、崩壊剤、アルファ化デンプンおよびコーティングを含んでいてもよい。いくつかの実施形態において、崩壊剤としては、架橋したポリビニルピロリドン、ガム、アルファ化デンプンを含むデンプン、セルロース製品が挙げられる。いくつかの実施形態において、コーティングは、ポリビニルアルコール、セルロース誘導体およびメタクリル酸誘導体を含む。
【0224】
本出願のある実施形態において、セレンを含む組成物および/または製剤のみが被検体に投与されてもよく、または他の形態のセレン、薬物、低分子と組み合わせて、または賦形剤または他の医薬的に許容され得る担体と混合した医薬組成物で投与されてもよい。いくつかの実施形態において、毒性を最低限にするために、組成物は、1種類以上のアミノ酸またはセレノアミノ酸、例えば、メチオニン、システインまたはセレノシステインを含んでいてもよい。本出願の一実施形態において、医薬的に許容され得る担体は、医薬的に不活性である。本出願の別の実施形態において、セレンを含む組成物が、単独で、糖代謝に関連する疾患または状態のリスクがあるか、またはこれらを患っている個々の被検体に投与されてもよい。
【0225】
組成物は、例えば、錠剤、カプセル、カプレット、溶液、懸濁物、分散物、シロップ、スプレー剤、ゲル、坐剤、パッチ剤およびエマルションのような任意の従来の形態で配合されてもよい。本出願の組成物、特に、5’-メチルセレノアデノシン、式(I)の化合物、およびこれらの組み合わせを含む組成物を、日々の消費を補助するために栄養ドリンクまたは食物(例えば、ENSURE、POWERBARなど)、マルチビタミン、栄養製品、食品などに加えてもよい。
【0226】
(本化合物および組成物を使用する方法)
本開示の化合物および組成物は、生体プロセスおよび転写活性化/不活性化に関する遺伝子の遺伝子発現に関し、組織特異性を示す。例えば、本出願は、被検体の種々の生体経路において、インスリンを補充し、インスリン活性を向上させ、糖感受性を高めるか、糖産生を阻害するか、または糖代謝を調整するために本明細書に記載される化合物および組成物を用いる方法に関する。従って、セレンを含有する組成物および化合物のみが被検体に投与されてもよく、または本明細書に記載される遺伝子異常に関連する疾患または状態を患うリスクがあるか、またはこれらを患っている個々の被検体に組み合わせて投与されてもよい。例えば、本出願の方法は、非インスリン依存性(II型)糖尿病(DM)に関連する状態を有する被検体を診断または治療(例えば、予防的または治療的に)する際の用途が見出されるだろう。
【0227】
本開示の一実施形態において、被検体においてインスリンを補充する方法は、5’-メチルセレノアデノシン、Se-アデノシル-L-ホモシステイン、γ-グルタミル-メチルセレノ-システイン、式(I)の化合物、式(II)の化合物、式(III)の化合物、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも3種類の異なる化合物を含む組成物を被検体に投与することを含む。別の実施形態において、有効な量の組成物は、組成物で処理されなかった被検体の肝細胞と比較して、被検体の肝細胞において、インスリンを補充する。ある実施形態において、組成物は、5’-メチルセレノアデノシン、Se-アデノシル-L-ホモシステイン、γ-グルタミル-メチルセレノ-システイン、式(I)の化合物、式(II)の化合物、式(III)の化合物、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも3種類の異なる化合物を含む。いくつかの実施形態において、組成物は、これらの化合物のうち、2種類をそれぞれ少なくとも0.05%(w/v)含む。他の実施形態において、組成物は、これらの化合物のうち、3種類をそれぞれ少なくとも0.033%(w/v)含む。
【0228】
別の実施形態において、被検体においてインスリン活性を向上させる方法は、5’-メチルセレノアデノシン、Se-アデノシル-L-ホモシステイン、γ-グルタミル-メチルセレノ-システイン、式(I)の化合物、式(II)の化合物、式(III)の化合物、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも3種類の異なる化合物を含む組成物を被検体に投与することを含む。別の実施形態において、有効な量の組成物は、組成物で処理されなかった被検体の肝細胞と比較して、被検体の肝細胞において、インスリン活性を向上させる。ある実施形態において、組成物は、5’-メチルセレノアデノシン、Se-アデノシル-L-ホモシステイン、γ-グルタミル-メチルセレノ-システイン、式(I)の化合物、式(II)の化合物、式(III)の化合物、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも3種類の異なる化合物を含む。いくつかの実施形態において、組成物は、これらの化合物のうち、2種類をそれぞれ少なくとも0.05%(w/v)含む。他の実施形態において、組成物は、これらの化合物のうち、3種類をそれぞれ少なくとも0.033%(w/v)含む。被検体においてインスリン活性を向上させる方法のさらなる実施形態は、インスリンまたはその類似体または誘導体を投与することをさらに含む。
【0229】
なお別の実施形態において、被検体において糖産生を阻害する方法は、5’-メチルセレノアデノシン、Se-アデノシル-L-ホモシステイン、γ-グルタミル-メチルセレノ-システイン、式(I)の化合物、式(II)の化合物、式(III)の化合物、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも3種類の異なる化合物を含む組成物を被検体に投与することを含む。別の実施形態において、有効な量の組成物は、組成物で処理されなかった被検体の肝細胞と比較して、被検体の肝細胞において、糖産生を阻害する。ある実施形態において、組成物は、5’-メチルセレノアデノシン、Se-アデノシル-L-ホモシステイン、γ-グルタミル-メチルセレノ-システイン、式(I)の化合物、式(II)の化合物、式(III)の化合物、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも3種類の異なる化合物を含む。いくつかの実施形態において、組成物は、これらの化合物のうち、2種類をそれぞれ少なくとも0.05%(w/v)含む。他の実施形態において、組成物は、これらの化合物のうち、3種類をそれぞれ少なくとも0.033%(w/v)含む。
【0230】
別の実施形態において、被検体においてFOXO3および/またはFOXO4のリン酸化を増加させる方法は、5’-メチルセレノアデノシン、Se-アデノシル-L-ホモシステイン、γ-グルタミル-メチルセレノ-システイン、式(I)の化合物、式(II)の化合物、式(III)の化合物、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも2種類の異なる化合物を含む組成物を被検体に投与することを含む。別の実施形態において、有効な量の組成物は、組成物で処理されなかった被検体の肝細胞と比較して、被検体の肝細胞において、FOXO3およびFOXO4のリン酸化を増加させる。ある実施形態において、組成物は、5’-メチルセレノアデノシン、Se-アデノシル-L-ホモシステイン、γ-グルタミル-メチルセレノ-システイン、式(I)の化合物、式(II)の化合物、式(III)の化合物、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも3種類の異なる化合物を含む。いくつかの実施形態において、組成物は、これらの化合物のうち、2種類をそれぞれ少なくとも0.05%(w/v)含む。他の実施形態において、組成物は、これらの化合物のうち、3種類をそれぞれ少なくとも0.033%(w/v)含む。
【0231】
いくつかの実施形態において、被検体において糖代謝を調整する方法は、5’-メチルセレノアデノシン、Se-アデノシル-L-ホモシステイン、γ-グルタミル-メチルセレノ-システイン、式(I)の化合物、式(II)の化合物、式(III)の化合物からなる群から選択される少なくとも2種類の異なる化合物を含む有効な量の組成物を被検体に投与することを含む。別の実施形態において、有効な量の組成物は、組成物で処理されなかった被検体の肝細胞と比較して、被検体の肝細胞において、糖代謝を調整する。ある実施形態において、組成物は、5’-メチルセレノアデノシン、Se-アデノシル-L-ホモシステイン、γ-グルタミル-メチルセレノ-システイン、式(I)の化合物、式(II)の化合物、式(III)の化合物、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも3種類の異なる化合物を含む。いくつかの実施形態において、組成物は、これらの化合物のうち、2種類をそれぞれ少なくとも0.05%(w/v)含む。他の実施形態において、組成物は、これらの化合物のうち、3種類をそれぞれ少なくとも0.033%(w/v)含む。
【0232】
いくつかの実施形態において、被検体において糖感受性を高める方法は、5’-メチルセレノアデノシン、Se-アデノシル-L-ホモシステイン、γ-グルタミル-メチルセレノ-システイン、式(I)の化合物、式(II)の化合物、式(III)の化合物、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも2種類の異なる化合物を含む組成物を被検体に投与することを含む。別の実施形態において、有効な量の組成物は、組成物で処理されなかった被検体の肝細胞と比較して、被検体の肝細胞において、糖感受性を高めた。ある実施形態において、組成物は、5’-メチルセレノアデノシン、Se-アデノシル-L-ホモシステイン、γ-グルタミル-メチルセレノ-システイン、式(I)の化合物、式(II)の化合物、式(III)の化合物、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも3種類の異なる化合物を含む。いくつかの実施形態において、組成物は、これらの化合物のうち、2種類をそれぞれ少なくとも0.05%(w/v)含む。他の実施形態において、組成物は、これらの化合物のうち、3種類をそれぞれ少なくとも0.033%(w/v)含む。
【0233】
いくつかの実施形態において、被検体において糖尿病を治療する方法は、5’-メチルセレノアデノシン、Se-アデノシル-L-ホモシステイン、γ-グルタミル-メチルセレノ-システイン、式(I)の化合物、式(II)の化合物、式(III)の化合物、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも2種類の異なる化合物を含む組成物を被検体に投与することを含む。別の実施形態において、有効な量の組成物は、組成物で処理されなかった被検体の肝細胞と比較して、被検体の肝細胞において、糖尿病を治療する。ある実施形態において、組成物は、5’-メチルセレノアデノシン、Se-アデノシル-L-ホモシステイン、γ-グルタミル-メチルセレノ-システイン、式(I)の化合物、式(II)の化合物、式(III)の化合物、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも3種類の異なる化合物を含む。いくつかの実施形態において、組成物は、これらの化合物のうち、2種類をそれぞれ少なくとも約0.05%(w/v)含む。他の実施形態において、組成物は、これらの化合物のうち、3種類をそれぞれ少なくとも約0.033%(w/v)含む。
【0234】
ある実施形態において、5’-メチルセレノアデノシン、Se-アデノシル-L-ホモシステイン、γ-グルタミル-メチルセレノ-システイン、式(I)の化合物、式(II)の化合物、式(III)の化合物、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも2種類の異なる化合物を含む組成物を被検体に投与することを含む、被検体において、G6PCの発現を阻害するための方法または使用が提供される。別の実施形態において、有効な量の組成物は、組成物で処理されなかった被検体の肝細胞と比較して、被検体の肝細胞において、G6PC遺伝子発現を阻害する。ある実施形態において、組成物は、5’-メチルセレノアデノシン、Se-アデノシル-L-ホモシステイン、γ-グルタミル-メチルセレノ-システイン、式(I)の化合物、式(II)の化合物、式(III)の化合物、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも3種類の異なる化合物を含む。いくつかの実施形態において、組成物は、これらの化合物のうち、2種類をそれぞれ少なくとも約0.05%(w/v)含む。他の実施形態において、組成物は、これらの化合物のうち、3種類をそれぞれ少なくとも約0.033%(w/v)含む。
【0235】
ある方法の実施形態において、G6PCの減少は、上述の化合物で処理されていない同じ種類の細胞と比較して、約50%の増加または減少から、500%の増加または減少までの範囲である。このG6PC応答の大きさは、細胞の種類、特定の化合物および細胞と接触する時間に依存して変わる。
【0236】
他の実施形態において、5’-メチルセレノアデノシン、Se-アデノシル-L-ホモシステイン、γ-グルタミル-メチルセレノ-システイン、式(I)の化合物、式(II)の化合物、式(III)の化合物、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも2種類の異なる化合物を含む組成物を被検体に投与することを含む、被検体において、インスリン受容体(INSR)の発現を増加させるための方法または使用が提供される。別の実施形態において、有効な量の組成物は、組成物で処理されなかった被検体の肝細胞と比較して、被検体の肝細胞において、インスリン受容体の発現を増加させる。ある実施形態において、組成物は、5’-メチルセレノアデノシン、Se-アデノシル-L-ホモシステイン、γ-グルタミル-メチルセレノ-システイン、式(I)の化合物、式(II)の化合物、式(III)の化合物、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも3種類の異なる化合物を含む。いくつかの実施形態において、組成物は、これらの化合物のうち、2種類をそれぞれ少なくとも約0.05%(w/v)含む。他の実施形態において、組成物は、これらの化合物のうち、3種類をそれぞれ少なくとも約0.033%(w/v)含む。
【0237】
いくつかの実施形態において、5’-メチルセレノアデノシン、Se-アデノシル-L-ホモシステイン、γ-グルタミル-メチルセレノ-システイン、式(I)の化合物、式(II)の化合物、式(III)の化合物、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも2種類の異なる化合物を含む組成物を被検体に投与することを含む、被検体において、インスリン様成長因子受容体(IGF1R)の発現を増加させるための方法または使用が提供される。別の実施形態において、有効な量の組成物は、組成物で処理されなかった被検体の肝細胞と比較して、被検体の肝細胞において、インスリン様成長因子受容体の発現を増加させる。ある実施形態において、組成物は、5’-メチルセレノアデノシン、Se-アデノシル-L-ホモシステイン、γ-グルタミル-メチルセレノ-システイン、式(I)の化合物、式(II)の化合物、式(III)の化合物、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも3種類の異なる化合物を含む。いくつかの実施形態において、組成物は、これらの化合物のうち、2種類をそれぞれ少なくとも0.05%(w/v)含む。他の実施形態において、組成物は、これらの化合物のうち、3種類をそれぞれ少なくとも0.033%(w/v)含む。
【0238】
本明細書に記載されるいずれかの方法において、組成物は、5’-メチルセレノアデノシン、Se-アデノシル-L-ホモシステイン、γ-グルタミル-メチルセレノ-システインまたはこれらの混合物を含んでいてもよい。本明細書に記載されるいずれかの方法において、組成物は、少なくとも約0.1%(w/v)の5’-メチルセレノアデノシンを含んでいてもよい。
【0239】
本明細書に記載されるいずれかの方法において、組成物は、乾燥した形態またはカプセル形態であってもよい。本明細書に記載されるいずれかの方法において、組成物は、インスリンまたはその類似体または誘導体をさらに含んでいてもよい。本明細書に記載されるいずれかの方法において、組成物は、インスリン感受性改善薬、インスリン分泌促進薬またはインクレチン模倣薬をさらに含んでいてもよい。
【0240】
本明細書に記載されるいずれかの方法において、5’-メチルチオアデノシン、S-アデノシル-L-ホモシステインまたはγ-グルタミル-メチル-システインの1つ以上を含まなくてもよい。本明細書に記載されるいずれかの方法において、組成物は、経口投与されてもよい。
【0241】
本明細書に記載されるいずれかの方法において、組成物は、被検体の1つ以上の肝細胞に投与されてもよい。ある実施形態において、本明細書に記載されるいずれかの方法は、インスリンまたはその類似体を投与することをさらに含むか、または、糖代謝を調整するか、または糖尿病を治療するために異なる治療薬を投与することをさらに含む。
【0242】
本出願の方法のいくつかの実施形態において、被検体においてインスリンを補充するか、またはインスリン活性を向上させるための、5’-メチルセレノアデノシン、Se-アデノシル-L-ホモシステイン、γ-グルタミル-メチルセレノ-システイン、式(I)の化合物、式(II)の化合物、式(III)の化合物からなる群から選択される少なくとも3種類の異なる化合物を含む組成物のための使用が提供される。いくつかの実施形態において、この使用は、インスリンまたはその類似体をさらに含む。いくつかの実施形態において、この使用は、糖代謝を調整するか、または糖尿病を治療するための異なる治療薬をさらに含む。本出願の他の実施形態において、肝臓においてG6PCを阻害するための、5’-メチルセレノアデノシン、Se-アデノシル-L-ホモシステイン、γ-グルタミル-メチルセレノ-システイン、式(I)の化合物、式(II)の化合物、式(III)の化合物、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも3種類の異なる化合物を含む組成物のための使用が提供される。
【0243】
セレン含有化合物は、神経細胞とは異なる状態で、肝細胞における遺伝子発現に影響を及ぼす。本明細書に記載されるような肝細胞に対する化合物および組成物の影響とは対照的に、同じ組成物または同様の組成物が、反対の様式で神経細胞に影響を及ぼすことがある。例えば、本明細書に記載される組成物は、本開示の方法で特定されるようにFOXO3および/またはFOXO4の発現を増加させるのとは異なり、神経細胞においてFOXO3および/またはFOXO4のリン酸化を減少させる。
【0244】
本開示の方法のさらなる実施形態において、本明細書に記載される化合物および組成物の有効な量は、肝細胞に対して毒性であることなく、肝細胞においてG6PCの発現を阻害し、肝細胞において糖産生を減少させるか、または肝細胞においてFOXOリン酸化を増加させるのに有効な量である。選択される化合物の有効な量は、マウスの骨格筋細胞、ヒト神経細胞またはマウス肝細胞を含む例示的ないずれかの細胞について、毒性を示さない。それに加え、本明細書に記載される化合物を含む組成物は、肝細胞における糖代謝に悪影響を与えない。
【0245】
被検体の細胞において遺伝子発現を決定する方法は、当業者に知られており、プライマーおよび/またはプローブを用いたハイブリダイゼーションを含んでいてもよく、例えば、アレイまたはPCR法によるものであってもよい。遺伝子発現を決定するためのアレイおよび/またはプライマーは、市販されている。プライマーおよびアレイまたはマイクロアレイは、本明細書に記載される遺伝子(例えば、G6PC、FOXO3、FOXO4、INSRおよびIGF1R)のための公的に利用可能な配列を用い、容易に設計されるだろう。例えば、G6PCのための例示的な配列は、NM_000151.3、GI:393537030、遺伝子番号:2538の中に見出され、FOXO3のための例示的な配列は、NM_001455.3、GI:146260266、遺伝子番号:2309の中に見出され、FOXO4のための例示的な配列は、NM_001170931.1、GI:283436082、遺伝子番号:4303の中に見出され、INSRのための例示的な配列は、NM_000208.2、GI:119395735、遺伝子番号:3643の中に見出され、IGF1Rのための例示的な配列は、XM_011521513.1、GI:767983996、遺伝子番号:3480の中に見出される。肝細胞における遺伝子発現の調整は、本明細書に記載される組成物によって処理された被検体から採取したサンプルについての多くのアッセイを用い、本明細書に記載されるように決定することができる。
【0246】
医学分野および研究分野でよく知られているように、任意の被検体のための用量は、限定されないが、患者の大きさ、身体の表面積、年齢、投与される特定の化合物、性別、投与時間および投与経路、全体的な健康、同時に投与される他の薬物との相互作用を含め、多くの因子に依存して変わってもよい。いくつかの実施形態において、本組成物の用量は、その効能またはセレン中毒症の明らかな徴候が被検体で観察されるかどうかに依存して調節されてもよい。セレン中毒症は、限定されないが、ニンニク臭い息、抜け毛または剥がれやすい爪を含む症状によって示されるだろう。
【0247】
ある実施形態において、血液中で原子状セレンの定常状態を達成するために、少なくとも1日に1回、所定時間に、上述の用量の本組成物が投与される。さらに他の実施形態において、被検体が疾患または障害の症状を経験している間、上述の用量の本組成物が投与される。
【実施例
【0248】
以下の実施例は、本開示の組成物、化合物および方法の具体例または実施形態を与える。本開示の化合物、組成物および方法の具体的な実施形態は、一例として本明細書で与えられる。本開示の概念および技術は、種々の改変および代替的な形態に変えることができ、その具体的な実施形態は、図中に一例として示されており、ここに詳細に記載される。しかし、本開示の概念を、開示される特定の形態に限定することを意図しているものではなく、これとは対照的に、本発明は、本開示および添付の特許請求の範囲と一致するすべての改変例、均等物および変形例を包含することを意図していることを理解すべきである。
【0249】
本明細書に記載される技術は、広い用途を有すると理解されるべきである。技術の原理およびいくつかの実際の用途を説明するために、上述の実施形態が選択され、記載される。特定の実施形態が、本明細書で記載され、および/または例示されてきたが、その考慮可能な変形例および改変例が可能であることを想定している。
【0250】
(実施例1:5’-メチルセレノアデノシン(「C」)の合成および特性決定)
化合物Cを製造するための合成スキームおよび方法論は、以下であった。
【化19】

マグネチックスターラーを取り付け、20mLの無水エチルアルコールが入った200mL丸底フラスコに水素化ホウ素ナトリウム(227mg、6.0mM、Ar°下)を入れ、氷冷却浴に置いた。冷却し、攪拌しつつ、Ar流下、このフラスコにジメチルジセレニド(190uL、376mg、2.0mM)を加えた。黄色がかった溶液が生成した後、固体の5’-クロロ-5’-デオキシアデノシン(1143g、4.0mM)を加えた。100mLのエチルアルコールを加え、沈殿を溶解させた。その後に混合物の攪拌を室温で4日間続けた。約75%の転化を監視するために質量分析法を使用し、この転化は、5日後に達成された。溶媒を蒸発させ、生成物3.22g(出発物質(SM)を約20%含む)を集め、逆相(C-8)分取クロマトグラフィーによって精製した。1.1gの純粋な生成物を集め、その分子量を質量分析法によって確認した。
【0251】
(実施例2:Se-アデノシル-L-ホモシステイン(「化合物D」)の合成および特性決定)
化合物Dを製造するための合成スキームおよび方法論を、工程1~6で以下に示す。
【化20】
【0252】
(5’-クロロ-5’-デオキシアデノシン(639-62))
オーブンで乾燥した2Lの4ッ口フラスコに滴下漏斗、スターラー、気体入口/出口および温度計を取り付け、これに89グラム(0.366mole、1eq.)のアデノシン、59.3mL(58、1.833mole、2eq.)の無水ピリジンおよび1Lの無水アセトニトリルを入れた。反応物のセットを氷/塩浴に入れ、攪拌を開始した。溶液の温度を3℃未満まで下げたら、塩化チオニルをゆっくりと添加した。反応混合物の温度は、塩化チオニル添加中および4時間より長い間、5℃未満に維持した(このとき、溶液は黄色であり、底部に白色から黄色の沈殿がある)。次いで、反応物を周囲温度で一晩放置した。
【0253】
次の日の朝、多量の沈殿を、焼結ガラスフィルタを用いて濾別し、このフィルタを体積300MLの乾燥アセトニトリルで洗浄した。その間に沈殿の色は白色に変化した。次いで、濡れた沈殿を、800MLのメタノールと160MLの水の混合物が入った上述の2Lの反応フラスコに戻した。機械攪拌し、水浴で冷却しつつ、この反応フラスコに80MLの濃水酸化アンモニウム溶液を滴下した。混合物を周囲温度で45分間攪拌し、生成した白色沈殿を、減圧濾過によって溶液から分離した。
【0254】
減圧ロータリーエバポレーターを用い、濾液を乾燥するまで濃縮し、その間に沈殿を約560MLの熱水から結晶化させた。沈殿を氷水浴中で冷却し、1回目の集めた結晶を濾別し、凍結乾燥させた。次いで、1回目の濾液のロータリーエバポレーションから得られた固体の結晶化において、この濾液を溶媒として使用し、2回目の生成物を得た。この2回目の生成物も2日間かけて凍結乾燥させた。減圧デシケーター中、五酸化リンの上で、両方の結晶を最終的に2日間乾燥させた。84グラムの白色結晶(収率80.5%)を得た。MS(286-M+H)、mp.187℃。
【0255】
(セレノアデノシルホモシステイン(655-40))
2Lの3ッ口フラスコに温度計、大きな冷却フィンガー(出口にバブルメーターを備える)、アンモニア気体入口(フラスコの底部に達する)および磁気攪拌棒を取り付け、これにL-セレノメチオニン(9.806グラム、50mM、1eq.)を投入し、CO-アセトン冷却浴を備える2.5Lデュワー容器に入れた。Ar°をこのフラスコに流した後に、アセトン浴および冷却フィンガーに固体COを加えた。フラスコ内の温度が-35℃未満まで下がったときに、無水アンモニア(気体)の流れを開始し、液体アンモニアの液面が体積800MLに達したときに、気体の流れを止めた。
【0256】
溶液の青色から紫色の着色が約30秒間続くようになるまで、十分に攪拌した溶液に金属ナトリウムの小片を加えた。45分以内に合計2.645グラム(115mM、2.3eq.)のナトリウムを加えた。攪拌および冷却を30分より長く維持した。このときに、すべての要素は溶液の状態になっていた。無水5’-クロロ-5’-デオキシアデノシン(14.856グラム、52mM、1.04eq.)を一度に加え、攪拌し、非常にゆっくりとAr°を流しつつ、反応混合物を一晩放置した。
【0257】
次の日の朝、フラスコ中に存在する白色固体に350MLの無水メタノールを加えた。このフラスコを油浴に入れ、還流凝縮器を設置し、Ar°気体の流れを維持し、その後、油浴を24時間かけて50℃まで加熱した。この溶液1MLを、数滴の0.1N HClを用いてpH3.5まで酸性化し、質量分析法を用い、基質の存在についてサンプルを分析した。
【0258】
基質が5%未満の場合には、1N HClを用い、混合物をpH3.5まで酸性化し、塩から濾過し、減圧ロータリーエバポレーターを用いて乾燥するまで濃縮してもよく、未精製生成物を水-エタノール混合物から結晶化によって精製することができる。1回目の集めたセレノアデノシルホモシステイン結晶から、15.98グラムの生成物が収率74%で得られた。なお、生成物の約95%はきれいであり、さらに精製することなく、生物学的試験に使用することができる。
【0259】
(実施例3:γ-グルタミル-メチルセレノ-システイン(「化合物E」)の合成および特性決定)
化合物Eを製造するための合成スキームおよび方法論を、工程1~4で以下に示す。
【化21】
【0260】
(N-Boc-(O-tBu)-L-Glu-OSu(655-90)の合成)
N-Boc-(O-tBu)-L-Glu-OH(303mg、1.0Mmol)、N-ヒドロキシスクシンイミド(121mg、1.05Mmol)およびジシクロヘキシルカルボジイミド(227mg、1.1Mmol)を15mLの無水エチルエーテルに懸濁/溶解し、この反応混合物にシリンジから10uLのジメチルエチルベンジルアミンを加えた。周囲温度(22℃)での攪拌を48時間維持した。この混合物を濾過し、沈殿を10mLのエチルエーテルで10回洗浄した。濾液を濃縮し、高減圧下で乾燥させ、白色結晶生成物を得た(570mg、収率約90%)。MS(M+Na)=423.17。
【0261】
(N-Boc-(O-tBu)-L-Glu-MeSe-Cys-OH(655-90)の合成)
6mLの1,4-ジオキサンと2mLの水の混合物に、N-Boc-(O-tBu)-L-Glu-OSe(570mg、0.9Mmol)、メチルセレノシステイン(175mg、0.8Mmol)、トリエチルアミン(152mg、209μL、1.5Mmol)を加えた。反応混合物の磁気攪拌を100時間維持した。その後、1.21NのHCl(1.65mL)を加え、反応後の混合物を20mLのエチルエーテルで3回抽出した。抽出物を、減圧ロータリーエバポレーターを用いて乾燥するまで濃縮し、649mgのワックス状生成物を得て、これを分取HPLCにかけた。283mgの生成物を集めた(収率75.6%)。質量スペクトルから生成物の分子量を確認し、その中に1個のSe原子が存在することを確認した。C1832SeのMs計算値=468.42。これらの結果から、469.24 m/e(M+H)および491.24 m/e(M+Na)であることがわかった。
【0262】
(γ-グルタミル-メチルセレノ-システイン(655-92)の合成)
283mg(0.6Mmol)のN-Boc-(O-tBu)-L-Glu-MeSe-Cys-OH、2mLのチオアニソールおよび5mLのトリフルオロ酢酸の混合物を、油浴中、磁気攪拌しつつ63℃で6時間加熱した。混合物を周囲温度(22℃)で一晩放置した。この後、激しく攪拌したエチルエーテル20MLに、この反応混合物を滴下した。生成した沈殿を20MLのエチルエーテルで2回洗浄した。この生成物から138.3mgのクリーム状の沈殿を得て、次いで、これを分取HPLCによって精製した。
【0263】
(実施例4)
個々の合成有機セレン化合物、個々の有機セレン化合物およびその硫黄類似体の組み合わせを、本明細書に記載される実施例において、細胞の生存または生存性および遺伝子発現に対する影響について、細胞培養物中で(in vitroで)試験した。特に、試験した細胞は、マウスAML-12肝細胞であった。
【0264】
(材料および方法)
(細胞株および化合物)
マウス肝細胞株AML-12およびヒト神経芽細胞IMR-32細胞は、American Type Culture Collection(ATCC、マナサス、バージニア)から購入した。AML-12細胞を、10%胎児ウシ血清(FBS)、40ng/mlのデキサメタゾン(Dex、Sigma)および1×ITS(0.01mg/mlのウシインスリン、0.0055mg/mlのヒトトランスフェリン、5ng/mlのセレン化ナトリウムを含有する)溶液(Sigma)を追加したDulbecco改質イーグル培地およびHamのF12(DMEM/F12)の培地の中で増幅した。IMR-32細胞を、10%FBSを追加したイーグル最少必須培地(EMEM)で培養した。
【0265】
化合物C(5’-メチルセレノアデノシン)、化合物D(Se-アデノシル-L-ホモシステイン)および化合物E(γ-グルタミル-メチルセレノ-システイン)およびこれらの硫黄類似体、化合物H(5’-メチルチオアデノシン)、化合物I(S-アデノシル-L-ホモシステイン)および化合物J(γ-グルタミル-メチル-システイン)は、合成されたか、または(入手可能な場合)商業的な供給源から得た。試験した全ての化合物の純度は、質量分析法によって決定される場合、99%以上であると確認された。上述のように合成した3バッチの化合物を以下の実験に使用した。
【0266】
本明細書の実施例で示されるppb値は、等量のセレンまたは硫黄が実験で試験されるのを確保するために、セレン含有化合物中のセレンのppbまたは硫黄含有化合物中の硫黄のppbを指す。
【0267】
セレンを基準としたppbを、化合物のppbに変換するために、セレンの原子量を化合物の原子量で割り、これに100を掛け算することによって、化合物中のSe%を計算する。硫黄を基準としたppbを、化合物のppbに変換するために、硫黄の原子量を化合物の原子量で割り、これに100を掛け算することによって、化合物中のS%を計算する。
【0268】
例えば、セレンの原子量78.96を化合物Cの分子量344で割り、この結果に100を掛け算し、化合物Cのセレン%が23%との結果が得られる。同様に、化合物Dについて、セレンの原子量78.96を化合物Dの分子量432で割り、この結果に100を掛け算し、化合物Dのセレン%が18%との結果が得られる。化合物Eについて、セレンの原子量78.96を化合物Eの分子量311で割り、この結果に100を掛け算し、化合物Eのセレン%が25%との結果が得られる。
【0269】
これらのSe%値を使用し、セレンのppbを化合物のppbに変換するためのファクターを誘導する。これらのファクターは、化合物Cについて4.35、化合物Dについて5.46、化合物Eについて3.94である。セレンを基準としたppbを、化合物のppbに変換するために、示されたセレンのppbと、以下の表に示されるそれぞれの化合物についてのファクターを掛け算する。例えば、以下の実験において、150ppbの化合物Cは、150ppbのセレンを指し、653ppbの化合物Cと等価である。
【0270】
硫黄化合物について、硫黄の原子量32を化合物Hの分子量297で割り、この結果に100を掛け算し、化合物Hの硫黄%が11%との結果が得られる。同様に、化合物Iについて、硫黄の原子量32を化合物Iの分子量384で割り、この結果に100を掛け算し、化合物Iの硫黄%が8%との結果が得られる。化合物Jについて、硫黄の原子量32を化合物Jの分子量264で割り、この結果に100を掛け算し、化合物Jの硫黄%が12%との結果が得られる。
【0271】
これらのS%値を使用し、硫黄のppbを化合物のppbに変換するためのファクターを誘導する。これらのファクターは、化合物Hについて9.28、化合物Iについて12.00、化合物Jについて8.25である。硫黄を基準としたppbを、化合物のppbに変換するために、示された硫黄のppbと、以下の表に示されるそれぞれの化合物についてのファクターを掛け算する。例えば、以下の実験で記載されるような150ppbの化合物Hは、150ppbの硫黄を指し、1392ppbの化合物Hと等価である。
【表1】
【0272】
(細胞生存性アッセイ)
培養したAML-12細胞中の細胞生存性を、製造業者のプロトコルおよび指示に従って、PromegaのCellTiter96(登録商標)AQueous One Solution Cell Proliferation Assayキットを用いて決定した。簡単に言うと、AML-12(1×10細胞/ウェル)を96ウェルの透明プレート(VWR)に接種し、10%のFBS、1×ITSおよび40ng/mgのDexを含むDMEM/F12培地で一晩培養した。次いで、10%のFBSおよび40ng/mgのDexを含み、ITSを含まないDMEM/F12培地中、細胞をコントロール(水)または化合物で48時間処理した。
【0273】
培養した細胞をAQueous One溶液(100ul/ウェルあたり)と共に37℃で1時間インキュベートし、それぞれのサンプルにおいて、OD490の吸光度をBio-Tekマイクロプレートリーダーによって決定した。培養した細胞の細胞生存性を、培養した細胞のOD490nmから、プレーン培地(細胞を摂取していない)のOD490nmを引き算することによって決定した。上述の分析のために、各処理あたり8個のサンプルを試験した。データを、8個のサンプルの平均±SEMとしてあらわす。
【0274】
(RNAおよびタンパク質分析のための細胞処理)
インスリン受容体(Insr)のRNA分析のために、インスリン様成長因子受容体(Igf1r)、グルコース-6-ホスファターゼ(G6pc)、AML-12細胞を、ITS、DexおよびFBSを含有するDMEM/F12培地中で増幅させ、DEXを含むか、またはDEXを含まず、10% FBS ITSを含まないDMEM/F12培地中、24ウェル(6.7×10細胞/ウェル)プレート中で一晩培養した。これらの細胞をコントロール(水)または種々の化合物(DEXを含むか、またはDEXを含まず、10% FBS ITSを含まないDMEM/F12培地で希釈)で6時間、24時間または48時間処理した。
【0275】
ある実験において、24時間の化合物処理の後、AML-12細胞をPBSで2回洗浄し、次いで、血清を含まず、20mMのラクトースおよび2mMのピルベート、15mMのHEPES(グルコース産生培地)を追加したグルコース/フェノールレッドを含まないDMEM培地中、インスリン(10nMまたは100nM)、0.1mMの8-CPT(Sigma)、または0.5μMのDex存在下、または非存在下、セレン化合物(それぞれの化合物を150ppbまたは300ppb)と共にさらに6時間インキュベートした。処理後、細胞培地を集め、Abcamグルコースアッセイキットを製造業者のプロトコルに従って用い、グルコースアッセイを行った。細胞を溶解させ、G6pc、InsrおよびIgf1rのRNA単離およびPCR分析のために集めた。
【0276】
タンパク質発現の試験のために、AML-12細胞を、ITS、DexおよびFBSを含有するDMEM/F12培地中で増幅させ、DEXを含むか、またはDEXを含まず、10% FBS ITSを含まないDMEM/F12培地中、6ウェル(3.33×10細胞/ウェル)プレート中で一晩培養した。血清を含有する培地(DEXを追加し、10% FBS ITSを含まないDMEM/F12培地)または血清を含まない培地(ITS/Dexを含まないDMEM/F12培地)中、これらの細胞をコントロール(水)または種々の化合物で6時間および24時間処理した。それに加え、ヒト神経芽細胞IMR-32細胞を10% FBS EMEM培地中で培養し、次いで、同じ血清を含有する培地中、コントロール(水)、セレン化合物およびその硫黄類似体で6時間および24時間処理した。
【0277】
(RNAの単離およびリアルタイムPCR分析)
これらの細胞からの全RNAを、製造業者のプロトコルに従って、Trizol(Invitrogen)を用いて単離し、次いで、DNase Iと共にインキュベートし、任意の潜在的な混入したゲノムDNAを除去した。Applied-BioscienceのRTキットおよびあらかじめ設計されたTaqmanプローブ(Invitrogen)を用い、すでに記載されたように(Lanら、EMBO J 2003)、RNAサンプルにリアルタイムPCR分析を行った。それぞれの処理群において、3~6個のサンプルを分析した。それぞれのサンプルにおいて、Actin B(Actb)のレベルによってデータを正規化し、3~6個のサンプルの平均±SEMとしてあらわす。
【0278】
(タンパク質の調製およびウエスタンブロット分析)
AML12肝細胞またはIMR-32神経細胞を6ウェルプレートに接種し、次いで、本明細書に記載されるように、ビヒクルおよび種々の化合物で6時間および24時間処理した。処理の後、細胞を氷冷したPBSで洗浄し、完全なプロテイナーゼおよびホスファターゼ阻害剤(Themo-Fisher Scientific、ウォルサム、MA)を含む氷冷したRIPAバッファーに、氷の上で30分間溶解した。セルスクレーパーおよび移動ピペットを用いて細胞溶解物を集め、次いで、12000xg、4℃で30分間遠心分離処理し、DNAペレットを除去し、タンパク質抽出物を得た。これらの細胞溶解物の上澄み中のタンパク質レベルを、製造業者のプロトコルに従って、Pierce Micro-BCAタンパク質アッセイキット(Themo Scientific-Piece Biotechnology、ロックフォード、IL)を用いて決定した。
【0279】
ウエスタンブロット分析のために、コントロールおよび化合物で処理した細胞からの全タンパク質5μgにSDS-PAGEゲル分離を行い、次いで、すでに記載されたように(Reddy、Liuら、2008 Science)、PVDF膜に移した。5%(w/v)のウシ血清アルブミン(Sigma、セントルイス、MO)を含むリン酸緩衝食塩水(PBS)で膜をブロックし、特定の一次抗体と共にインキュベートした。その後、HRPに接合した抗-マウスまたは抗-ウサギ二次抗体(1:5000希釈、Cell Signaling Inc.)と共にインキュベートした。
【0280】
Actb(Li-COR、リンカーン、ネブラスカ)、Elf2bεおよびpElf2bε(Abcam、ケンブリッジ、MA)以外の全ての一次抗体は、Cell Signaling Inc.から購入した。膜ブロットの上の陽性シグナルを、Amershamの改良型の化学発光Western Blotting Prime Detection試薬(GE healthcare Lifescience、ピッツバーグ、PA)を用いて検出した。膜ブロットの上のこれらの発光シグナルの画像を、LI-COR Odyssey Fc Imageシステム(リンカーン、ネブラスカ)を用いて捕捉した。同じ膜ブロットに筋を入れ、GE WB ECL-プライム-検出プロトコル(GE healthcare Lifescience、ピッツバーグ、PA)に記載されるように、別の抗体で再びブロット処理した。ウエスタンブロットのタンパク質のバンド密度を、Li-COR Image studioソフトウエアまたはNIH ImageJソフトウエアを用いて決定し、次いで、それぞれのサンプルにおいて、Actbレベルによって正規化した。それぞれの群あたり、データを3個のサンプルの平均±SEMとしてあらわす。
【0281】
(統計分析)
適用可能な場合、スチューデントのt検定を用い、0.05未満のp値で、生理食塩水で処理した群と、化合物CDEで処理した群との統計差を決定した。
【0282】
(結果および考察)
(AML-12細胞の生存性に対する化合物CDEの効果)
AML-12細胞の生存に対し、セレン化合物の毒性の影響があるか否かを試験するために、肝細胞について細胞生存性アッセイを行った。AML-12細胞を水コントロールまたは150ppbの個々の化合物C、化合物D、化合物E、化合物H、化合物Iおよび化合物J;化合物IとJの組み合わせ(「化合物IJ」);化合物Dと化合物Eの組み合わせ(「化合物DE」);および化合物C、化合物Dと化合物Eの組み合わせ(「化合物CDE」)で48時間処理した。
【0283】
単一の化合物および化合物の組み合わせを含めた化合物処理は、コントロール群と比較したときに、AML-12細胞における細胞生存性(OD490nmによって示される)を有意に低下させなかった(図1)。これらの結果は、セレン化合物CDEが、AML-12細胞の生存または生存性になんら悪い影響を与えないことを示した。
【0284】
(FBSおよびDexを含有し、ITSを含まない培地中で培養したAML-12細胞における、化合物CDEによるG6pc mRNA発現の阻害)
肝臓は、血流の正常な糖濃度を維持するために糖を産生する主要な臓器である。グルコース-6-ホスファターゼ触媒サブユニット(G6pc)は、肝臓における糖新生にとって必須の酵素である。肝臓における化合物CDEの潜在的な機能を探求するために、QRT-PCR分析によって、本明細書に記載される種々の条件下で培養したAML-12細胞において、G6pc発現を調べた。
【0285】
AML-12細胞を、血清、インスリン-トランスフェリン-亜セレン酸ナトリウム補助剤(ITS)およびデキサメタゾン(Dex)を含有する培地中で培養するか、または増幅させることを推奨する。ITS中のインスリンおよび亜セレン酸ナトリウムが、AML-12細胞において試験したセレン化合物の作用を妨害し得る可能性を除外するために、ITSを含まないが、FBSおよびDexを含有する培地中で培養したAML-12細胞におけるG6pc発現を観察した。簡単に言うと、AML-12細胞を完全増幅培地(10% FBS、ITSおよびDexを含有するDMEM/F12)中で培養/増幅し、培養プレートに接種し、ITSを含まず、FBSおよびDexを含有する培地中で一晩培養した。これらの細胞をコントロール(水)、それぞれ用量150ppbで、化合物C、化合物D、化合物Eといった個々のセレン化合物、化合物H、化合物I、化合物Jといった個々の硫黄化合物で処理した。化合物CDEの組み合わせ、化合物HIJの組み合わせも、この細胞について48時間試験した。これらの処理の後、細胞を集め、QRT-PCR分析を行った。
【0286】
図2Aに示されるように、化合物HIJの硫黄類似体の組み合わせではなく、化合物CDEの組み合わせでAML-12肝細胞を処理すると、この実験条件下、肝細胞におけるG6pc発現が非常に顕著に(約50%)減少した。それに加え、個々の化合物すべてで処理した後のAML-12細胞においてG6pc発現をさらに調べた(図2Bを参照)。G6pc発現の顕著な変化(例えば、増加または減少)は観察されなかった。データを、4個のサンプルの平均±SEMとしてあらわす。
【0287】
化合物CDEの組み合わせに応答してG6pc発現が減少するという効果が、異なるバッチの細胞を用い、3回の繰り返し実験で観察された(データは示さない)。この効果は、細胞の生存に対するセレン化合物の潜在的な毒性の影響に起因するものではなかった。化合物CDEは、この同じ実験条件下でAML-12細胞の生存性に影響を与えなかったからである(図1を参照)。これらの結果は、組み合わせた状態の化合物CDEが、個々の化合物またはその硫黄類似体とは異なり、培地中にFBSおよびDexが存在する状態でAML-12細胞におけるG6pc発現を阻害することができることを示す。
【0288】
(ITSおよびDexを含まず、FBSを含む培地中で24時間、その後、血清を含まない培地中で6時間、化合物CDEの組み合わせが、AML-12細胞におけるG6pc発現を阻害する)
Dexが肝臓におけるG6pc発現を制御する能力を有することが報告されている。ITS/Dexを含まない培養条件で、AML-12細胞における化合物CDEの効果を観察した。血清を含まない条件で24時間および48時間培養した肝臓AML-12細胞は、一部異常な細胞形態を示した。しかし、血清を含まない培地で6時間培養した後のAML-12細胞の全体的な形態変化は観察されなかった(データは示さない)。従って、AML-12細胞を、血清を含有するがITSおよびDexを含まない培地中、化合物CDEで24時間前処理し、その後、血清/ITS/Dexを含まない培地中、これらの化合物で6時間再処理し、G6pc発現に対する化合物CDEの効果をさらに観察した。
【0289】
簡単に言うと、AML-12細胞を150ppbまたは300ppbの化合物CDEの組み合わせ(10% FBSを含むが、ITS/Dexを含まない培地で希釈)で24時間処理した。次いで、細胞をPBSで2回洗浄して残留FBSを除去し、10nMまたは100nMのインスリン(FBS/ITS/Dexを含まない培地で希釈)存在下または非存在下、同じ用量のこれらのセレン化合物と共に6時間インキュベートした。化合物CDEの効果の効能と、化合物CDEとインスリンの潜在的な相加作用または相乗作用を比較するために、インスリンのみの処理も含まれていた。
【0290】
図3に示されるように、両用量のインスリン(10nMおよび100nM)の処理は、G6pc発現を顕著に阻害し、これは予想されることである。化合物CDEのみの処理は、150ppbの用量で、G6pc発現は減少傾向にあった(図3)。さらに大幅に、300ppbの用量の化合物CDEで処理すると、これらのAML-12肝細胞におけるG6pc発現は、安定して顕著に低下し、その効能は、少なくとも100nMのインスリンに匹敵するものであった(図3)。それに加え、インスリン処理と、150ppbまたは300ppbの化合物CDEの試験した組み合わせも、コントロールと比較して、G6pc mRNA発現を顕著に低下させた(図3)。この結果は、化合物CDEが、AML-12細胞におけるG6pc発現を阻害するインスリンの模倣物となり得、有効な用量である300ppbの化合物CDEが、100nMのインスリンに匹敵することを明らかに示す。
【0291】
(模擬糖尿病条件(cAMPおよびDex両方によって模擬実験した)で培養したAML-12細胞において、化合物CDEによるG6pc発現の制御におけるG6pc発現の阻害およびインスリン作用の向上)
G6pc発現に対する化合物CDEの効果をさらに観察するために、細胞透過性の8-(4-クロロフェニルチオ)cAMP(8-CPT)およびデキサメタゾン(Dex)で一緒に処理したAML-12細胞におけるG6pc mRNA発現を調べた。環状AMP(8-CPT)およびDexは、肝臓におけるG6pc発現および糖産生のよく知られた刺激物質であり、in vivoでの糖尿病状態を模倣している。簡単に言うと、10% FBSを含むが、ITS/Dexを含まない培地中、AML-12肝細胞を、水(コントロール)または150ppbまたは300ppbの化合物CDEの組み合わせで24時間かけて前処理した。この初期の処理の後、血清を含まない培地中、10nMまたは100nMのインスリン、0.1mMの8-CPTおよび0.5μMのDex存在下または非存在下、これらのセレン化合物で6時間かけて再処理した。これらの処理の後、細胞を集め、QRT-PCR分析を行った。それぞれの群あたり、データを4個のサンプルの平均±SEMとして図4にあらわす。図4の異なる文字(a対b、a’対b’対c’、a”対b”対c”)は、これら2群間の有意差を意味する。
【0292】
図4に示されるように、8-CPT/Dexで処理されたAML-12肝細胞は、G6pc mRNA発現において大きな増加を示した。両用量のインスリンを用いた処理によって、AML-12細胞において、8-CPT/Dexによって誘発されたG6pc発現が有意に減少した(図4の棒グラフの8-CPT/Dex群と比較した場合)。さらに重要なことに、用量150ppbの化合物CDEも、8-CPT/Dexによって誘発されたG6pc発現を有意に弱めた。8-CPT/Dexと高用量(300ppb)の化合物CDEの組み合わせで処理した後、この処理群のG6pc発現が大きく変動したことに起因して、(8-CPT/Dex群と比較した場合に)P値は0.05より大きかったが、G6pc発現の平均レベルは、AML-12細胞においてさらに減少した。これにかかわらず、これらの試験は、インスリンと同様に、化合物CDEのみでも、用量試験用量で8-CPT/Dexによって誘発されたG6pc発現を阻害することができることを示している(8-CPT/Dex群と比較した場合、約40~48%の減少)。
【0293】
それに加え、8-CPT/Dexと共に、150ppbの用量の化合物CDEと10nMインスリンとを組み合わせて処理すると、10nMインスリン群および8-CPT/Dex群と比較した場合に、AML-12細胞においてG6pc発現をさらに阻害した(図4の棒グラフにおいて、a’対b’で示される)。また、G6pc mRNAレベルの平均レベルは、10nMのインスリン、8-CPT/Decおよび高用量の化合物CDEで処理した後のAML-12細胞において、低かった(10nMのインスリン/8-CPT/Dex/300ppbの化合物CDE群 対 10nMのインスリン/8-CPT/Dex/150ppbの化合物CDE群)。しかし、これら2群に統計的な有意差はなかった。
【0294】
さらに劇的には、挿入された棒グラフに示されるように、8-CPT/Dexと共に、300ppbの用量の化合物CDEと100nMインスリンとを組み合わせて処理すると、100nMインスリン群および8-CPT/Dex群と比較した場合に、AML-12細胞においてG6pc発現をさらに顕著に阻害した(図4の棒グラフにおいて、a”対b”対c”で示される)。さらに、G6pc mRNAレベルは、100nMのインスリン、8-CPT/Decおよび300ppbの化合物CDEで処理した後のAML-12細胞において、100nMのインスリン/8-CPT/Dex/150ppbの化合物CDE群よりも有意に低かった(図4の挿入されたグラフを参照)。
【0295】
これらを合わせると、これらの結果は、8-CPT/Dex処理に起因するG6pc発現上昇の阻害において、インスリンと化合物CDEの組み合わせが、インスリンのみまたは化合物CDEのみの場合よりもかなり効果的であることを示す。
【0296】
上述の処理の後のAML-12細胞の培地についても、グルコース分析を行った。残念なことに、AML-12細胞によって作られるグルコースの濃度は、8-CPT/Dex刺激の後であっても、低すぎて高感度蛍光グルコースアッセイ(Abcam)で検出することができなかった(データは示さない)。
【0297】
まとめると、上述の培養条件で培養したAML-12細胞に関するこれらの結果は、化合物CDEが、正常モデルと、病的な状態または糖尿病状態のin vitroモデル(例えば、8-CPT/Dexでの細胞処理)の両方で、G6pc発現を阻害するインスリンを模倣する能力を有することを示した。それに加え、化合物CDEは、模擬糖尿病状態で培養したAML-12細胞においてG6pc発現を阻害するインスリンの作用を向上させることができる。これらの結果は、化合物CDEが、I型および/またはII型の糖尿病における過剰な糖産生を阻害する能力を有するという分子的な証拠を与える。
【0298】
(化合物CDEで処理した後のAML-12細胞におけるInsrおよびIgf1rの発現の上方制御)
インスリン受容体(Insr)およびインスリン様成長因子1受容体(Igf1r)は、G6pc発現およびその後の肝臓での糖産生を制御するインスリンとIGF1の作用にとって必須である。化合物CDEの組み合わせが、受容体に依存する様式で肝細胞においてインスリンまたはIGF1の感受性を調整することができるか否かを調べるために、インスリンおよびIGF1受容体の発現をQRT-PCR分析によって決定した。
【0299】
まず、FBS/Dexを含有するが、ITSを含まない培地中、AML-12細胞を水コントロール(コントロール、n=4)、セレン化合物CDEおよびこれらの硫黄類似体である化合物HIJ(n=4)で24時間処理し、次いで、InsrおよびIgf1rのQRT-PCR分析を行った。図5Aに示されるように、Insr mRNAレベルは、化合物CDEで処理した後に、2.78倍に安定に増加した。同様に、Igf1r発現も、化合物CDEによって約2.2倍増加し、有意に刺激された(図5Bを参照)。しかし、硫黄類似体である化合物HIJは、AML-12細胞において、InsrおよびIgf1rの発現に影響を与えなかった(図5Aおよび5Bを参照)。
【0300】
化合物CDEがInsrおよびIgf1rの発現を向上させる能力を有することをさらに検証するために、FBSを含有するが、ITS/Dexを含まない培地中、AML-12細胞を2種類の用量の化合物CDEで24時間処理した。次いで、FBS/ITS/Dexを含まない培地中、8-CPT/Dex存在下または非存在下、この細胞を同じ用量の化合物CDEで6時間かけて再処理した。それに加え、InsrおよびIgf1rの発現の制御において、インスリンと化合物CDEに差があるかどうかをみるために、これらの細胞をインスリンで6時間処理した。
【0301】
図5Cおよび5Dに示されるように、150ppbおよび300ppbの用量の化合物CDEで処理すると、コントロール(すなわち、0ppbの化合物CDE/インスリンなし、8-CPT/Dexなしの群)と比較して、8-CPT/Dexで処理を行っていないAML-12細胞におけるInsrおよびIgf1rの発現が有意に向上した。しかし、インスリンのみでは、AML-12細胞におけるInsrおよびIgf1rの発現は増加しなかった(図5Bおよび5Cを参照)。同様に、インスリンを用いずに、300ppbの用量の化合物CDEで処理しても、8-CPT/Dexで処理されたAML-12細胞おけるInsrおよびIgf1rの発現が有意に向上した(図5Cおよび5Dの黒色の棒グラフを参照)。
【0302】
これらの結果は、化合物CDEが、試験した条件でAML-12細胞におけるInsrおよびIgf1rの発現を刺激する能力を有することを示す。それに加え、これらのデータは、AML-12細胞における遺伝子発現の制御において、インスリンと化合物CDEの作用に差があることを示す。また、この結果は、化合物CDEが、インスリン感受性を改良することによってI型およびII型の糖尿病の治療に有用であり得ることを示唆している。
【0303】
合わせると、上述の遺伝子発現試験(図2~4)は、化合物CDEが、個々の化合物またはこれらの硫黄類似体とは異なり、G6pc発現を顕著に弱めるインスリンを模倣する能力を有し、それによって肝臓の糖生成を減らす新規な様式を示している。これらのデータは、化合物CDEが、8-CPT/Dexのような糖産生刺激剤の存在下でさえ、マウス肝細胞におけるG6pc発現の阻害において、インスリンと同様の様式で作用する能力を有するという分子的な証拠も与える(図3~4)。
【0304】
それに加え、組み合わせた状態の化合物CDEは、8-CPT/Dexで刺激されたAML-12細胞においてG6pc発現をさらに阻害するインスリンの作用も向上させる(図4)。組み合わせた状態の化合物CDEは、InsrおよびIgf1rの発現を刺激する能力を有し(図5)、これも、インスリン/Igf1の感受性の向上および糖の輸送の向上と共に、肝臓における糖産生のためのG6pc発現の減少にも寄与する。さらに、組み合わせた状態の化合物CDEは、肝細胞の生存性に対し、毒性の影響を有していなかった(図1)。要するに、これらの結果は、組み合わせた状態の化合物CDEが、マウス肝臓AML-12細胞において、細胞の生存または生存性に対し、なんら毒性の影響を有することなく、G6pc発現を阻害するインスリンを模倣し、Insrおよび/またはIgf1rの発現の刺激によるものと同様に、このプロセスでのインスリンの作用も向上させることを示す。
【0305】
(実施例5:化合物CDEは、AML-12細胞において、FOXO3およびFOXO4のリン酸化を標的とする)
Forkhead転写因子ファミリーサブクラスO(FOXO)は、肝臓における代謝、糖新生およびインスリン感受性にとって重要な役割を果たす。FOXO遺伝子の細胞内活性は、後翻訳修飾によって厳しく制御される。特に、FOXOのリン酸化によって核から除外され、それによって、標的遺伝子への接近がブロックされる。インスリン抵抗性の個人または糖尿病の個人において、FOXOが核から除外されるシグナルが存在しないため、核の中に留まり続け、G6pcの転写を刺激する。G6pcの発現が増加すると糖新生が誘発され、高血糖症が引き起こされる。インスリン様成長因子(IGF)は、肝臓での糖産生のためのFOXOが介在するG6pc発現を制御するインスリンの作用を調整することもできる。
【0306】
すでに記載されたように、AML-12肝細胞は、組み合わせた状態での化合物CDEが、G6pc発現を阻害するインスリンの作用を模倣する能力を有し、このプロセスでのインスリンの作用を向上させる能力を有することを示した。FOXOは、肝臓における糖新生およびインスリン感受性の主要なシグナル伝達分子であるため、化合物CDEが、インスリンと同様に、AML-12細胞においてFOXOおよび他の関連するシグナル伝達分子を標的とするかという問題を調べた。
【0307】
(化合物CDEは、血清を含む培地で培養されたAML-12細胞において、FOXO3およびFOXO4のリン酸化を標的とする)
化合物CDEの組み合わせが、肝臓においてFOXOリン酸化を制御することができるかどうかを決定するために、血清およびDexを含有し、ITSを含有しない培地中、AML-12細胞を、コントロール、150ppbのセレン化合物CDEおよびこれらの硫黄類似体である150ppbの化合物HIJで6時間処理した。処理された細胞にウエスタンブロット分析を行った。ウエスタンブロットにおけるタンパク質発現の定量データを、3個のサンプルの平均±SEMとしてあらわす。棒グラフ中の異なる文字は、これら2群間の有意差を意味する(P<0.05)。
【0308】
図6Aは、水、血清およびDexを含有する(が、ITSを含まない)培地で希釈した150ppbの化合物HIJおよび150ppbの化合物CDEで6時間処理した後のAML-12細胞におけるリン酸化されたFoxo3T32(トレオニン32;pFoxo3T32)、リン酸化されたFoxo T28(トレオニン28;pFoxo4T28)、リン酸化されたPDK1(pPDK1)、リン酸化されたAKT T308(トレオニン308;pAKTT308)、リン酸化されたAKT S473(セリン473;pAKTS473)、AKT、リン酸化されたGsk3a S21(セリン21;pGsk3bS21)、リン酸化されたGsk3b S9(セリン9;pGsk3bS9)、Gsk3a、Gsk3b、リン酸化された4EBP1 T37/46(トレオニン37およびトレオニン46;p4EBP1T37T46)、リン酸化されたElf2bεS539(セリン530;pElf2bεS530)およびElf2bεを含む種々のシグナル伝達分子のタンパク質発現を示す。Foxo3のリン酸化された形態(例えば、トレオニン32でのpFoxo3であるpFoxo3T32)およびFoxo4のリン酸化された形態(例えば、トレオニン28でのpFoxo4であるpFoxo4T28)のタンパク質は、化合物HIJではなく、化合物CDEで6時間処理した後のAML-12細胞において、目に見えて上昇していることがわかるということを発見した(図6A)。定量分析は、化合物CDEで処理されたAML-12細胞において、pFoxo3T32が約2.5倍増加し、pFoxo4T28が約3.2倍増加したことを示した(図6Bおよび6C)。本願発明者らは、いくつかのリン酸化されたFoxo1(pFoxo1)抗体も試験したが、ウエスタンブロット上にこれらの抗体による特異的なpFoxo1タンパク質バンドを検出することはできなかった(データは示さない)。この結果は、AML-12細胞におけるpFoxo1の発現が、おそらく非常に低いことを示唆している。
【0309】
上述の同じ処理の後のAML-12細胞において、Foxo1、Foxo3およびFoxo4のタンパク質レベルのQRT-PCR分析を行った。Foxo1、3または4のmRNA発現に有意な変化はなんら観察されず(データは示さない)、リン酸化されたFoxo3およびFoxo4の増加が観察されたこと(図6を参照)は、化合物CDEによるAML-12細胞におけるFoxo3/4タンパク質発現の潜在的な増加に起因するものではない。実際に、Foxo3およびFoxo4タンパク質レベルの合計は、血清を含まない条件で培養されたAML-12細胞において、化合物CDEによって影響を受けなかった(図7Aを参照)。
【0310】
それに加え、AML-12細胞において、それぞれ150ppbの用量の化合物C、化合物Dおよび化合物Eを試験し、同じ培養条件(血清を含む培地中)で、6時間および24時間にわたって、Foxo3/4リン酸化に対する影響を決定した。個々の化合物C、化合物Dまたは化合物Eの処理による処理後、pFoxo3T32およびpFoxo4T28のタンパク質レベルの変化は観察されず(データは示さない)、このことは、AML-12細胞においてFoxo3およびFoxo4のリン酸化を引き起こす、組み合わせた状態での化合物C、化合物Dおよび化合物Eに相乗効果が存在することを示している。
【0311】
合わせると、これらの結果は、化合物CDEが、個々の化合物またはこれらの硫黄類似体とは異なり、血清を含む培地で培養したとき、AML-12細胞においてFoxo3およびFoxo4のリン酸化を向上させる能力を有することを示す。FOXOのリン酸化によって、これらの転写因子が核から除外されるため、これらの結果は、化合物CDEが、AML-12肝細胞においてFoxo3およびFoxo4の不活性化剤として機能することを示唆している。
【0312】
ホスファチジルイノシトール 3-キナーゼ(PI3K)/ホスホイノシチド依存性プロテインキナーゼ1(PDK1)/タンパク質キナーゼB(AKT)は、肝臓におけるインスリンが介在する糖産生の制御のためのFOXOの上流の主要なシグナル伝達経路であるため、これらの化合物で処理されたAML-12細胞において、リン酸化されたPDK1(pPDK1)およびAKT(pAKT)のレベルに変化があるかどうかを評価した。驚くべきことに、試験した6時間の処理で、化合物CDEは、PDK1およびAKTのリン酸化または全AKTレベルに影響を与えなかった(図6A)。このことは、初期の時間点(試験した6時間の試験時間が試験される前)で、AML-12細胞中で起こるPDK1およびAKTの活性化に対する化合物CDEの潜在的で一時的な影響に起因するものであろう。
【0313】
それに加え、2種類の他の下流のシグナル伝達分子である、リン酸化されたGSk3aおよびGSK3bのレベルは、AKTによって直接的に制御されるが、これらのタンパク質レベルの変化は観察されなかった(図6A)。インスリンによって誘発されるタンパク質合成または翻訳の鍵となるリン酸化された4EBP1(AKT/mTORシグナル伝達の下流の分子標的)およびpelf2BεS539(Gsk3の下流の分子標的)も、影響を受けなかった(図6Aを参照)。これらの結果は、化合物CDEが、すでに記載したようなAML-12細胞の増殖または生存に対し、毒性の影響を有していなかったというさらなる直接的な分子的証拠を与える(図1)。
【0314】
合わせると、これらの結果は、化合物CDEが、培地に血清が存在する状態で、AML-12細胞において上に記載したFoxo3およびFoxo4を除き、Gsk3a、Gsk3b、p4EBP1およびpElf2bεS539のようなAKTのいくつかの直接的または間接的な下流のシグナル伝達分子に影響を与えなかったことを示唆している。言い換えると、化合物CDEは、AML-12肝細胞におけるFOXOのリン酸化を向上させることによって、FOXOを選択的に不活性化することができる。
【0315】
(化合物CDEは、血清を含まない条件で培養したAML-12細胞におけるFoxo3/4のリン酸化を標的とする)
すでに述べたように、AML-12細胞を、明らかな形態上の欠陥を生じることなく、血清を含まない培地で短期間(すなわち、6時間)培養することができる(データは示さない)。従って、血清を含まない条件で培養したAML-12細胞中のリン酸化されたFoxo3およびFoxo4タンパク質のタンパク質レベルを調べた。
【0316】
簡単に言うと、血清を含まず、ITSを含まず、Dexを含まない培地中、AML-12細胞を、コントロール(水)、化合物CDE(それぞれの化合物のセレンが150ppb)、化合物CE(それぞれの化合物のセレンが150ppb)または化合物DE(それぞれの化合物のセレンが150ppb)で6時間処理し、ウエスタンブロット分析および定量分析を行った。定量的なデータをActbタンパク質レベルによって正規化し、3個のサンプルの平均±SEMとしてあらわす。図7Bおよび7Cの棒グラフ中の異なる文字は、これら2群間の有意差を意味する(P<0.05)。
【0317】
図7Aに示されるように、Foxo3(トレオニン32でのpFoxo3)およびFoxo4(トレオニン28でのpFoxo4)のリン酸化されたタンパク質レベルは、血清を含まない培地中で6時間、化合物DEではなく、化合物CDEおよび化合物CEで処理した後のAML-12細胞において上昇していることがわかった。セレン化合物で処理した後のFoxo3およびFoxo4タンパク質レベルの合計に明らかな変化はなかった(図7A)。これらのタンパク質サンプルについて、いくつかの特異的なpFoxo1抗体を用い、pFoxo1の特異的なバンドは検出されなかった(データは示さない)。
【0318】
定量分析は、化合物CDEで処理されたAML-12細胞および化合物CEで処理されたAML-12細胞において、pFoxo3T32レベルが約1.8倍増加し(図7B)、pFoxo4T28レベルが約6倍増加したことを示した(図7C)。pPdk1、pAkt、pGsk3a、pGsk3bおよびp4ebp1のような他のすべての試験した分子は、化合物CDEによって明らかな変化はなかった(図7Aを参照)。化合物CDEによって血清を含まない条件で培養されたAML-12細胞から得られた上述の結果は、血清を含む培地で培養されたAML-12細胞からの知見(図6)と一致している。この実験では、インスリンまたはFBSは、細胞の培地に添加されなかったため、AML-12細胞における化合物CDEによるFoxo3およびFoxo4のリン酸化の向上は、FBS、成長因子またはインスリンから完全に独立している。言い換えると、化合物CDEは、インスリンまたは成長因子を迂回して、肝細胞においてFoxo3およびFoxo4を不活性化する能力を有する。
【0319】
要するに、これらの結果は、化合物CDEが、血清を含む培地(図6)および血清を含まない培地(図7)において培養されたAML-12細胞において、Foxo3およびFoxo4のリン酸化を特異的に標的とすることができることを示す。従って、これらの試験から、化合物CDEが、新規なFOXO不活性化剤であり、化合物CDEによるこれらのFOXO分子の不活性化が、マウス肝細胞において、インスリン、FBSおよび他の成長因子とは無関係であることを結論付けることができる。
【0320】
AML-12肝細胞においてFOXO4リン酸化の増加が観察されたことが、哺乳動物細胞における化合物CDEの組み合わせの一般的な効果であるかどうかを試験するため、本願発明者らは、肝臓ではないIMR-32神経細胞株におけるpFOXO4レベルを調べ、AML-12肝細胞と同時に、同じ実験条件で試験を行った。図8に示されるように、化合物CDEによって処理されたIMR-32神経細胞において、FOXO4リン酸化の増加は観察されなかった。リン酸化されたFOXO1およびFOXO3のタンパク質レベルも調べ、特異的な抗体によって、リン酸化されたFOXO3はほとんど検出されず、リン酸化されたFOXO1は検出されなかったことがわかった(データは示さない)。これにかかわらず、化合物CDEによるIMR-32細胞におけるFOXO4のリン酸化の増加がみられない(図8)ことは、組み合わせた状態の化合物CDEが、神経細胞に対してなんら毒性の影響を有していないことを示す。従って、本願発明者らは、化合物CDEによるFOXOリン酸化の向上が、肝細胞に特異的であると結論付けることができる。
【0321】
合わせると、これらの結果は、化合物CDEが、個々の化合物またはこれらの硫黄類似体とは異なり、肝細胞に特異的な新規なFOXO不活性化剤として機能し、化合物CDEによるこれらのFOXO分子の不活性化が、マウス肝細胞において、インスリンおよび任意の他の成長因子から独立していることを示唆している。
【0322】
本明細書にすでに記載したデータは、化合物CDEが、G6pc発現を阻害するインスリンの作用を模倣する能力を有し、AML-12細胞におけるG6pc発現をさらに阻害するためにインスリンの作用を向上させる能力を有することを示した(図3~4)。後者(図4)は、すでに考察したように、InsrおよびIgf1rの発現の向上にも寄与するだろう(図5)。これらすべての事象は、インスリン/成長因子/FBSから独立した化合物CDEによるFoxo3およびFoxo4の不活性化に起因すると思われる(図6~7)。G6pcは、ヒトの肝臓においてよく知られたFOXO標的遺伝子であり、一方、InsrおよびIgf1rは、これらの遺伝子プロモーターの多くのFoxo結合モチーフの存在に起因して、2つの潜在的なFoxo3/4標的遺伝子だからである(データは示さない)。化合物CDEによるInsrおよびIgf1rの発現の向上(図5)は、インスリンの作用をさらに向上させ、またはインスリン感受性を改良し、G6pc発現を阻害するためのFoxo3/4のリン酸化をさらに刺激するだろう。
【0323】
それにもかかわらず、これらの結果は、化合物CDEの組み合わせが、AML-12肝細胞において強力なインスリンまたは他の成長因子から独立したFOXO不活性化剤として特異的に作用し、G6pc発現を減少させ、肝臓の糖生成を減らすと思われる能力を有することを示唆している。それに加え、肝臓の糖生成を減らすようにG6pc発現を制御するという観点で、化合物CDEの投与は、肝細胞がインスリン抵抗性になるという生理学的結果を減らすと思われる。FOXOが介在するG6pc発現の制御によって糖ホメオスタシスを制御することを可能にしつつ、化合物CDEによってインスリンを迂回してFoxoリン酸化を向上させると、一般的な糖尿病の治療のための多くの治療可能性が広がる。結果として、糖尿病治療は、外からの一方的なインスリン投与またはインスリン受容体の正しい機能発揮への依存度が低くなる。
【0324】
(実施例6)
(組み合わせた状態での化合物CDEは、マウス初代培養肝細胞において、細胞に対して毒性ではなく、G6pc発現および糖産生の阻害におけるインスリンの作用を改良し、インスリンを迂回して、Pdk1/Akt/Foxo1/3/4シグナル伝達を制御する)
3種類の有機セレン化合物の組み合わせ(化合物CDE)を、糖産生、G6pc発現およびFoxo1/3/4リン酸化に対する効果について、マウス初代培養肝細胞の細胞培養物において試験した。
【0325】
(材料および方法)
(マウス初代培養肝細胞の単離および化合物)
マウス初代培養肝細胞は、Triangle Research Labs,LLC(リサーチトライアングルパーク、ノースカロライナ)から購入した。これらのマウス初代培養肝細胞を、健康な正常C57BL6成マウスから単離し、Triangle Research Labs(TRL)で、コラーゲンでコーティングされた12ウェルプレートまたは24ウェルプレートで24時間培養し、次いで、実験のために本願発明者の実験室に運んだ。
【0326】
化合物C(5’-メチルセレノアデノシン)、D(Se-アデノシル-L-ホモシステイン)およびE(γ-グルタミル-メチルセレノ-システイン)を、Alltech,Inc.のChemistry Laboratoryで合成した。試験したすべての化合物の純度は、質量分析法によって決定すると、99%以上であると確認された。
【0327】
(細胞の培養および処理)
12ウェルまたは24ウェルのコラーゲンでコーティングされた培養プレートで成長したマウス初代培養肝細胞を、マウスから新しい肝細胞を単離してから3日目にTriangle Research Lab(TRL)から受領し、5%COインキュベーター中、37℃で、肝細胞維持培地(TRL)で培養し、TRLが推奨する手順(リサーチトライアングルパーク、NC)に従って、肝細胞を8時間または一晩かけて順化させた。
【0328】
一晩かけて順化させた肝細胞をPBSで2回洗浄し(TRL肝細胞維持培地中の残留するFBSおよび他の添加物を除去し)、10%の胎児ウシ血清(FBS)を追加したDMEM/F12培地中、コントロール(水)またはセレン化合物CDE(それぞれのセレン化合物を150ppbまたは300ppb)で24時間かけて前処理した。次いで、これらの細胞をPBSで2回洗浄し、血清を含まず、グルコースを含まず、20mMのラクトース(Sigma)および2mMのピルベート(Sigma)および15mMのHEPES(Sigma)を追加したDMEM培地(Invitrogen)中、インスリン(10nMまたは100nM、Sigma)、0.1mMの8-CPT(Sigma)または0.5μMのDex(Sigma)の存在下または非存在下、同じ用量の化合物CDE(150ppbまたは300ppb)と共にさらに6時間インキュベートした。処理後、細胞培地を集め、グルコースアッセイおよびラクテートデヒドロゲナーゼ(LDH)の毒性試験を行い、RNAおよびタンパク質の分析のために細胞を集めた。
【0329】
血清をまったく含まない培養条件で、マウス初代培養肝細胞での化合物CDEの試験のために、肝細胞維持培地(TRL)で肝細胞を8時間かけて順化させ、PBSで2回洗浄し(培養皿の中の残留FBSおよび他の添加物を除去し)、次いで、血清を含まないDMEM/F12培地で一晩かけて飢餓状態にした。これらの血清がなく飢餓状態になった肝細胞の一部を、血清を含まず、グルコース/フェノールレッドを含まず、20mMのラクトースおよび2mMのピルベートおよび15mMのHEPESを追加したDMEM培地中、インスリン(10nMまたは100nM)、0.1mMの8-CPT(Sigma)または0.5μMのDex(Sigma)存在下または非存在下、コントロール(水)、セレン化合物(それぞれの化合物を150ppbまたは300ppb)で6時間処理した。6時間の処理の後、グルコース分析およびLDH活性をモニタリングする毒性試験のために培地を集め、培養した細胞をタンパク質分析のために単離した。それに加え、無添加のDMEM/F12培地中、血清がなく飢餓状態になった肝細胞の一部を化合物CDE(それぞれの化合物を300ppb)で0分、5分、30分、60分、120分、180分処理し、種々のシグナル伝達分子の時間経過に伴うタンパク質分析のために細胞を集めた。
【0330】
(RNAの単離およびリアルタイムPCR分析)
これらの細胞からの全RNAを、製造業者のプロトコルに従って、Trizol(Invitrogen)を用いて単離し、次いで、DNase Iと共にインキュベートし、任意の潜在的な混入したゲノムDNAを除去した。Applied-BioscienceのRTキットおよびあらかじめ設計されたTaqmanプローブ(Invitrogen)を用い、すでに記載されたように(Lanら、EMBO J 2003)、RNAサンプルにリアルタイムPCR分析を行った。それぞれの処理群において、3~4個のサンプルを分析した。それぞれのサンプルにおいて、Actb mRNAのレベルによってデータを正規化し、3~4個のサンプルの平均±SEMとしてあらわす。
【0331】
(タンパク質の調製およびウエスタンブロット分析)
上述の処理の後、マウス初代培養肝細胞を氷冷したPBSで洗浄し、完全なプロテイナーゼおよびホスファターゼ阻害剤(Themo-Fisher Scientific、ウォルサム、MA)を含む氷冷したRIPAバッファーに、氷の上で30分間溶解した。セルスクレーパーおよび移動ピペットを用いて細胞溶解物を集め、次いで、12000xg、4℃で30分間遠心分離処理し、DNAペレットを除去し、タンパク質抽出物を得た。これらの細胞溶解物の上澄み中のタンパク質レベルを、製造業者のプロトコルに従って、Pierce Micro-BCAタンパク質アッセイキット(Themo Scientific-Piece Biotechnology、ロックフォード、IL)を用いて決定した。
【0332】
ウエスタンブロット分析のために、コントロールおよび化合物で処理した細胞からの全タンパク質5μgにSDS-PAGEゲル分離を行い、次いで、すでに記載されたように(Reddy、Liuら、2008 Science)、PVDF膜に移した。5%(w/v)のウシ血清アルブミン(Sigma、セントルイス、MO)を含むリン酸緩衝食塩水(PBS)で膜をブロックし、特定の一次抗体と共にインキュベートし、その後、HRPに接合した抗-マウスまたは抗-ウサギ二次抗体(1:5000希釈、Cell Signaling Inc.)と共にインキュベートした。Actb(Li-COR、リンカーン、ネブラスカ)以外の全ての一次抗体は、Cell Signaling Inc.から購入した。膜ブロットの上の陽性シグナルを、Amershamの改良型の化学発光Western Blotting Prime Detection試薬(GE Healthcare Lifescience、ピッツバーグ、PA)を用いて検出した。膜ブロットの上のこれらの発光シグナルの画像を、LI-COR Odyssey Fc Imageシステム(リンカーン、ネブラスカ)を用いて捕捉した。同じ膜ブロットに筋を入れ、GE WB ECL-プライム-検出プロトコル(GE Healthcare Lifescience、ピッツバーグ、PA)に記載されるように、別の抗体で再びブロット処理した。ウエスタンブロットのタンパク質のバンド密度(protein band density)を、NIH ImageJソフトウエアを用いて決定し、次いで、それぞれのサンプルにおいて、Actbレベルによって正規化した。それぞれの群あたり、データを3個のサンプルの平均±SEMとしてあらわす。
【0333】
(糖産生の分析)
上述の処理から得た細胞培地を集め、300×gで5分間遠心分離処理し、剥がれる可能性がある肝細胞を除去し、製造業者のプロトコルに従って、比色グルコースアッセイキット(Abcam)を用いたグルコース分析を行った。サンプルおよび種々の濃度のグルコース標準のOD570nmでの吸光度をBio-Tekマイクロプレートリーダーによって決定し、グルコース標準曲線から、それぞれのサンプルの培地のグルコース濃度を得て、次いで、Pierce Micro-BCAタンパク質アッセイキット(Thermo Scientific-Piece Biotechnology、ロックフォード、IL)を用い、製造業者のプロトコルに従って決定した、付着した細胞中のタンパク質レベルによって正規化した。それぞれの処理群のグルコースレベルを、コントロール群(化合物CDE、インスリン、8-CPTおよびDexの処理を行わない)の平均値で割り、相対的なグルコースレベルを得た。データを3~4個のサンプルの平均±SEMとしてあらわす。
【0334】
(培地中のLDHレベルを調べることによる毒性試験)
上述のグルコースアッセイと同様に、上述の処理から得た細胞培地を集め、300×gで5分間遠心分離処理し、剥がれる可能性がある肝細胞を除去し、製造業者のプロトコルに従って、比色グルコースアッセイキット(Abcam)を用いたLDH分析を行った。簡単に言うと、LDH標準およびLDH基質と共にインキュベートした後の培地サンプルのOD450nmでの吸光度を、2分ごとに40分までBio-Tekマイクロプレートリーダーによって決定した。線形範囲の吸光度の中にあるOD450の読みを引き算し、その後、LDH標準曲線を用い、製造業者のプロトコルに従って、それぞれのサンプルの培地のLDH濃度を得た。次いで、それぞれのサンプルの培地で得られたLDHレベルを、付着した細胞中のタンパク質レベルによって正規化した。それぞれの処理群のLDHレベルを、コントロール群(化合物CDE、インスリン、8-CPTおよびDexの処理を行わない)の平均値によってさらに正規化し、それぞれの群の相対的なLDHレベルを得た。データを3~4個のサンプルの平均±SEMとしてあらわす。
【0335】
(統計分析)
適用可能な場合、スチューデントのt検定を用い、2群間の統計差を決定した。0.05未満のP値を有意であるとした。
【0336】
(結果および考察)
(マウス初代培養肝細胞において、組み合わせた状態での化合物CDEは、糖産生およびG6pc発現を阻害する)
AML-12細胞において本明細書にすでに記載した試験は、化合物CDEが、G6pc発現を阻害するインスリンを模倣する能力を有する(図3~4)が、AML-12細胞の生存性に対し、なんら毒性の影響を有さないことを示す(図1)。しかし、AML-12細胞によって作られる培地中のグルコースレベルは、低すぎて高感度蛍光グルコースアッセイ(Abcam、データは示さない)で検出することができなかったため、化合物CDEが、AML-12細胞において糖産生を制御する能力を有するかどうかを確立することはできなかった。従って、マウス初代培養肝細胞を使用し、化合物CDEが、糖産生を阻害するインスリンを模倣する能力を有するかどうかを調べ、さらに、G6pc発現に対する化合物CDEの阻害効果はあるが、AML-12細胞で観察された細胞生存性に対し毒性の影響はないことを確認した。
【0337】
AML-12細胞についての試験と同様に、血清を含有するDMEM/F12培地中、マウス初代培養肝細胞を、コントロール(水)または150ppbおよび300ppbの用量のセレン化合物CDEで24時間前処理した。この処理の後、インスリン(10nMおよび100nM)存在下または非存在下でのこれらのセレン化合物を用いた再処理、またはインスリンのみでの再処理を6時間行った。それに加え、コントロールで6時間かけて前処理された肝細胞の一部に細胞透過性のcAMP、8-CPTおよびDexも加え、マウス初代培養肝細胞が、肝細胞における糖産生のよく知られている刺激に応答して機能を発揮するかどうかを検証した。上述の処理の後、グルコースアッセイおよび毒性分析(LDHレベルを測定することによる)のために細胞培地を集めた。付着した細胞についてタンパク質分析を行い、サンプル中の全細胞を反映する各ウェル中のタンパク質レベルを決定した。次いで、培地から得られたグルコースレベルを、各サンプル中のタンパク質レベルによって正規化した。データを4個のサンプルの平均±SEMとしてあらわす。図9において、*ビヒクル処理群(グラフの1つめの棒グラフ)に対してP<0.05。図9Cにおいて、コントロール処理群(グラフの1つめの棒グラフ)に対し、すべての処理群で有意な増加はない。
【0338】
図9Aに示されるように、8-CPT/Dexの処理によって、初代培養肝細胞において糖産生が有意に増加し、このことは、これらの初代培養肝細胞は、処理され、運ばれ、マウス肝臓からの最初の単離から5日間培養された後であっても生物学的に機能性であった。この知見をさらに裏付けるために、10nMおよび100nMの用量のインスリンのみを用いて処理すると、糖産生が有意に減少した(水で処理したコントロール群と比較して、約25~30%の減少。図9Aを参照)。
【0339】
さらに重要なことに、両用量(150ppbおよび300ppb)の化合物CDEを用いて処理すると、水で処理したコントロール群と比較して、糖産生が約20~80%、有意に減少した(図9Aを参照)。化合物CDEとインスリンを合わせて処理しても、コントロール群と比較して、試験した処理において、糖産生を約32~38%、有意に阻害した(図9Aを参照)。
【0340】
両試験用量の化合物CDEによる糖産生の減少の程度は、インスリン(10nMまたは100nM)に匹敵することを強調すべきであり、このことは、化合物CDEが、この試験用量で、糖産生を阻害する100nMの濃度のインスリンと同様に有効であることを示唆している。本願発明者らのデータは、インスリン、化合物CDEまたは両者によって得ることができる最大限の糖産生の減少は、これらの肝細胞で約20~38%であることを示す。それにもかかわらず、本願発明者らのデータは、化合物CDEが、マウス初代培養肝細胞において糖産生を阻害するインスリンを模倣する能力を有することを示す。
【0341】
G6pcは、肝臓における糖産生に必須である。従って、本願発明者らは、同じバッチの肝細胞において、同じ処理後にG6pc発現を調べた。簡単に言うと、2個1セットの初代培養肝細胞を、血清を含有するDMEM/F12培地中、コントロール(水)または用量が150ppbまたは300ppbのセレン化合物CDEで前処理し、その後、インスリン(10nMおよび100nM)存在下または非存在下、これらのセレン化合物で6時間かけて再処理した。これらの処理の後、肝細胞を集め、RNA単離を行った後、G6pcおよびActbのQRT-PCR分析を行った。
【0342】
図9Bに示されるように、インスリンのみ、または両用量の化合物CDE存在下で、G6pc発現を有意に阻害した。おそらくサンプル数が限定されているため、統計的に有意ではなかったが、150ppbの化合物CDEも、G6pc発現を減少させた(約31%の減少、図9B)。しかし、300ppbの化合物CDEのみで処理した後の肝細胞において、G6pc mRNAレベルの有意な減少(42%の減少)が観察された(図9B)。これらの結果は、初代培養肝細胞においてG6pc発現を阻害する100nMの用量のインスリンよりわずかに有効性が低いが、化合物CDEもインスリンを模倣する能力を有することを示す。これらの知見は、AML-12細胞におけるG6pc発現の阻害(図3)および上述のマウス初代培養肝細胞における化合物CDEによって弱められた糖産生(図9A)と一致している。
【0343】
ラクテートデヒドロゲナーゼ(LDH)は、肝細胞において化合物の毒性を試験するための薬物開発に広く用いられる。化合物処理による培地中のLDHレベルの増加(培養した細胞中のタンパク質レベルによって正規化された後)は、この化合物が、細胞基質のLDHを培地に放出する細胞の破壊または細胞膜の漏れに起因して、肝細胞にとって毒性であることを示唆している。化合物CDEがマウス初代培養肝細胞にとって毒性であるか否か、化合物CDEによる糖産生およびG6pc発現の観察された減少(図9Aおよび9B)が、毒性に起因するかどうかを観察するために、上述のグルコースアッセイに記載されるような化合物CDEで処理した後のマウス初代培養肝細胞の培地中のLDHレベルを調べた。
【0344】
簡単に言うと、マウス初代培養肝細胞を、血清を含有するDMEM/F12培地中、コントロール(水)または用量が150ppbおよび300ppbのセレン化合物CDEで前処理し、その後、インスリン(10nMおよび100nM)存在下または非存在下、これらのセレン化合物で6時間かけて再処理した。次いで、細胞培地をLDHの毒性分析のために集め、付着した細胞についてタンパク質分析を行い、それぞれのタンパク質レベルを決定した。培地から得られたLDHレベルを、各サンプル中のタンパク質レベルによって正規化した。
【0345】
図9Cに示されるように、化合物CDE、インスリンまたは両者で処理しても、培地中のLDHレベルは有意に増加しなかった。その代わりに、LDHレベルは、インスリン存在下または非存在下のいずれかで、300ppbの用量の化合物CDEで処理した後の肝細胞において、わずかに減少しているようであり、このことは、高用量の化合物CDEは、細胞の破壊に対する保護効果に影響を与える場合すらあることを示している。
【0346】
このように、これらの結果は、化合物CDEが、マウス初代培養肝細胞にとって毒性ではないことを示しており、このことは、AML-12細胞の生存性に対し、化合物CDEの毒性の効果がないことと一致している(図1)。それに加え、これらの結果は、上述の観察された糖産生およびG6pc発現の減少(図9Aおよび9B)が、化合物CDEで処理した後のマウス初代培養肝細胞中の健康ではない肝細胞によって引き起こされる可能性も除外する。
【0347】
合わせて、上述の試験は、化合物CDEが、G6pc発現を阻害し、さらに重要なことに、マウス初代培養肝細胞において、細胞にとって毒性ではなく、糖産生を阻害するインスリンを模倣する能力を有することを示す。これらの結果は、G6pc発現の阻害がインスリン非依存性であること、安定なマウス肝臓AML-12細胞で観察される細胞の生存に対して毒性がないこと(図1および図3)と一致している。
【0348】
(模擬糖尿病条件(8-CPTおよびDex両方によって模擬実験した)でのマウス初代培養肝細胞において、化合物CDEによるこれらのプロセスにおける糖産生およびG6pc発現の阻害およびインスリン作用の向上)
本明細書に記載する試験は、組み合わせた状態の化合物CDEが、8-CPT/Dexの刺激がある状態でAML-12細胞においてG6pc発現を阻害するインスリンを模倣する能力を有し、インスリンの作用を向上させることを示す(図4)。化合物CDEの効果をさらに観察するために、cAMPおよびDex(肝臓における糖産生およびG6pc発現のよく知られた2種類の刺激物質)で一緒に処理されたマウス初代培養肝細胞において、糖産生およびG6pc mRNA発現を調べた。
【0349】
簡単に言うと、マウス初代培養肝細胞を、10% FBS DMEM/F12培地中、水(コントロール)または150ppbまたは300ppbの化合物CDEの組み合わせで24時間かけて前処理し、その後、血清を含まない培地中、10nMまたは100nMのインスリン、0.1mMの8-CPTおよび0.5μMのDex存在下または非存在下、これらのセレン化合物で6時間かけて再処理した。これらの処理の後、すでに記載したようにグルコースアッセイおよびLDHアッセイのために培地を集めた。また、上に記載したのと同じ処理の後、2個1セットの初代培養肝細胞(同じバッチの肝細胞由来)に、G6pc発現のQRT-PCR分析を行った。データを3~4個のサンプルの平均±SEMとしてあらわす。図10A~10Bにおいて、異なる文字(a対b、a’対b’対c’、a”対b”対c”)は、これら2群間の有意差を意味する。図10Cにおいて、*ビヒクル処理群(グラフの1つめの棒グラフ)に対してP<0.05。
【0350】
図10Aに示されるように、8-CPT/Dexで処理すると、コントロールのみの処理群と比較して、糖産生が有意に増加した。このデータは、培養したマウス初代培養肝細胞が正常に機能していることを示していた。8-CPT/Dex群と比較して、両用量のインスリンを用いた処理で8-CPT/Dexによって誘発された肝細胞における糖産生が有意に減少した(図10Aを参照)。重要なことに、肝細胞において、用量150ppbの化合物CDEで処理すると、8-CPT/Dexによって刺激を受けた糖産生を阻害する傾向があった。さらに劇的に、肝細胞において、用量300ppbの化合物CDEは、8-CPT/Dexによって刺激を受けた糖産生を有意に阻害し、減少した糖産生の程度は、100nMのインスリンの効果とほぼ同じであった。これらの結果は、糖尿病状態と同じ条件であっても、300ppbの化合物CDEが、初代培養肝細胞において糖産生を阻害する100nMの濃度のインスリンと同様に有効であることを示唆している。これらの結果は、8-CPT/Dexで処理しなかったマウス初代培養肝細胞で観察される知見(図9A)と一致しており、このことは、組み合わせた状態の化合物CDEが、インスリンとは独立した様式でインスリンを模倣し、糖産生を阻害することをさらに示唆している。
【0351】
それに加え、試験した両用量の化合物CDEと、10nMまたは100nMのインスリンを組み合わせると、マウス初代培養肝細胞において、8-CPT/Dex群と比較して、8-CPT/Dexによって誘発された糖産生を有意に阻害するだけではなく、用量試験用量で化合物CDEのみ、またはインスリンのみよりも、このプロセスで高い有効性を示した(図10A)。例えば、150ppbの化合物CDEと10nMのインスリンの組み合わせで処理した後の肝細胞における8-CPT/Dexによって誘発される糖産生の減少の程度は、150ppbの化合物CDEのみ、または10nMのインスリンのみの場合よりも顕著であった。さらに明らかなことに、8-CPT/Dexによって誘発される糖産生の阻害において、300ppbの化合物CDEのみ、または100nMのインスリンのみも非常に有効であるが、300ppbの化合物CDEと100nMのインスリンで処理した後の肝細胞において、糖産生がさらに減少した(コントロールで処理された細胞群のレベルより低いレベルまで減少)(図10A)。10nMのインスリンと150ppbまたは300ppbの化合物CDEの組み合わせ、100nMのインスリンと150ppbの化合物CDEの組み合わせは、8-CPT/Dexによって誘発される糖産生をほぼ完全に阻害した(8-CPT/Dex処理を行わないコントロール細胞のレベルに近いレベルまで減少)。これらの結果は、化合物CDEが、マウス初代培養肝細胞においてインスリンを補充するか、またはインスリンの作用を向上させ、8-CPT/Dexによって誘発される糖産生を阻害することができることを示す。
【0352】
すでに記載されたように、組み合わせた状態の化合物CDEが、AML-12細胞において、このプロセスにおいて8-CPT/Dexによって誘発されたG6pc発現を阻害するインスリンを模倣し、インスリンの作用を向上させる能力を有することがわかった(図4を参照)。G6pc発現の阻害によって、マウス初代培養肝細胞において糖産生を阻害することができる。従って、マウス肝細胞を、10% FBS DMEM/F12培地中、水(コントロール)または150ppbまたは300ppbの化合物CDEの組み合わせで24時間かけて前処理し、その後、血清を含まない培地中、10nMまたは100nMのインスリン、0.1mMの8-CPTおよび0.5μMのDex存在下または非存在下、これらのセレン化合物で6時間かけて再処理した。これらの処理の後、細胞を集め、G6pc発現のQRT-PCR分析を行った。
【0353】
図10Bに示されるように、8-CPT/Dexによって、G6pc mRNAの発現が大きく増加した(約130倍の増加)。これらのデータは、肝細胞が正しく機能していることをさらに確認している。両用量のインスリンを用いた処理によって、マウス初代培養肝細胞において、8-CPT/Dex群と比較して、8-CPT/Dexによって誘発された糖産生が有意に減少した(図10Bの棒グラフの8-CPT/Dex群と比較した場合)。上述のグルコース試験と同様に、肝細胞において、用量150ppbの化合物CDEで処理すると、有意ではないが、8-CPT/Dexによって刺激を受けたG6pcを阻害する傾向を示した(図10Bを参照)。しかし、用量300ppbの化合物CDEは、8-CPT/Dexによって誘発されたG6pc mRNA発現を有意に阻害したが、用量試験用量のインスリンほど強力ではなかった(図10Bを参照)。これらの結果は、AML-12細胞で得られた結果と同様に、化合物CDEが、インスリン非依存性に、8-CPT/Dexによって誘発されたG6pc発現を阻害する能力を有することを明らかに示している(図4)。
【0354】
300ppbの化合物CDEと、10nMまたは100nMのインスリンを組み合わせて処理すると、肝細胞において、10nMまたは100nMのインスリンまたは300ppbの化合物CDEの治療と比較して、8-CPT/Dexによって刺激を受けたG6pc発現をさらに有意に阻害した。これらの結果を、棒グラフのa’対b’またはa”対b”によって図10Bに示す。これらの結果は、インスリンと300ppbの化合物CDEの組み合わせが、8-CPT/DexによるG6pcの発現の上昇を阻害することにおいて、もっと効果的であったことを示す。
【0355】
上の試験は、化合物CDEが、特に300ppbの用量で、インスリンより有効性は低いものの、マウス初代培養肝細胞において、8-CPT/Dexによって誘発されたG6pc発現を阻害するインスリンを模倣する能力を有し、このプロセスでインスリンの作用を向上させる能力を有することを示す。これらの結果は、AML-12細胞で観察された知見と部分的に一致している(図4)。G6pcは糖産生に必要であるため、化合物CDEによる、8-CPT/Dexによって刺激を受けた糖産生について観察された上述の阻害(図10A)は、少なくとも部分的に、マウス初代培養肝細胞におけるG6pc発現の下方制御に起因する(図10B)。
【0356】
化合物CDEが、8-CPT/Dex存在下で培養された初代培養肝細胞にとって毒性であるか否か、化合物CDEによる糖産生およびG6pc発現について観察された上述の減少(図10A~10B)が、肝細胞中の化合物CDEの潜在的な毒性(培地中のLDHレベルの上昇によって示されるような)に起因するかどうかをさらに観察するために、上述のように処理された肝細胞の培地中のLDHレベルを調べた。
【0357】
図10Cに示されるように、インスリン非存在下または存在下での8-CPT/Dexの処理は、ビヒクルコントロールと比較して、LDHレベルをわずかに高めた。しかし、インスリン非存在下または存在下、試験した両用量の化合物CDEと共に8-CPT/Dexで処理した後の肝細胞において、LDHレベルの有意な増加はなかった(図10Cを参照)。また、8-CPT/Dexおよびインスリンで処理した後の肝細胞におけるLDHレベルのわずかな増加は、試験した両用量の化合物CDEで一緒に処理することによって観察されなかった(図10Cを参照)。
【0358】
これらの結果は、化合物CDEが、8-CPT/Dex存在下で培養した初代培養肝細胞にとって毒性ではないことをさらに示す。また、これらの結果は、8-CPT/Dexによって刺激を受けた糖産生およびG6pc発現について観察された上述の減少(図10Aおよび10Bを参照)が、化合物CDEの処理後の初代培養肝細胞中の健康ではない肝細胞によって引き起こされる可能性を除外する。
【0359】
まとめると、上述の試験は、糖尿病状態(8-CPT/Dexによって刺激された)と同様の条件であっても、化合物CDEが、初代培養肝細胞において毒性ではなく、糖産生およびG6pc発現を阻害するインスリンを模倣する能力を有し、これらのプロセスでのインスリンの作用を向上させる能力を有することを示す。
【0360】
化合物CDEによる糖産生の阻害(上述)は、血清を含む培地中、本開示の化合物で前処理されたマウス初代培養肝細胞において特性決定された。化合物CDEが、インスリン非依存性におよび他の成長因子から独立した様式で糖産生を阻害するインスリンを模倣する能力を有することをさらに確認するために、血清をまったく含まない培養条件を適用し、FBS中の潜在的な痕跡量のインスリンまたは他の成長因子を除去した。血清を含まない条件で培養したマウス初代培養肝細胞において糖産生およびその潜在的な毒性の影響(すなわち、培地中のLDHレベル)に対する化合物CDEの影響を調べた。
【0361】
簡単に言うと、マウス初代培養肝細胞を一晩かけ、血清がない飢餓状態にした。次いで、血清をまったく含まない培地中、インスリン、8-CPTおよびDex存在下または非存在下、細胞をコントロール(水)または150ppbまたは300ppbの化合物で短時間(すなわち、6時間)処理した。次いで、培地を集め、グルコースとLDHの分析を行い、糖産生およびLDHレベルの正規化のために、培養した細胞のタンパク質分析を行った。データを3個のサンプルの平均±SEMとしてあらわす。図11Aにおいて、基本的なコントロール群(グラフの1つめの棒グラフ)に対してP<0.05。*8-CPT/Dex処理群(グラフの1つめの棒グラフ)に対してP<0.05。
【0362】
8-CPT/Dexの処理を行っていないマウス肝細胞における糖産生に対する化合物CDEの効果を観察した(図11を参照)。図11Aに示されるように、両用量のインスリンのみの処理をすると、マウス初代培養肝細胞において糖産生を約40~47%、有意に阻害した。これらの結果は、このバッチのマウス初代培養肝細胞が生物学的に機能することを示す。
【0363】
さらに重要なことに、150ppbの化合物CDEで処理すると、マウス初代培養肝細胞において、100nMのインスリンと同様に効果的に糖産生を有意に減少させ、一方、300ppbの化合物CDEは、糖産生の阻害において、100nMのインスリンよりももっと有効であった(図11Aを参照)。これらの初代培養肝細胞において、インスリンと化合物CDEの間に相加作用または相乗作用はなかったが、化合物CDEとインスリンで一緒に処理しても、糖産生を有意に阻害した。これらの結果は、FBSを含有する培地中、化合物CDEで前処理された肝細胞から得られた結果と一致していた(図9を参照)。合わせると、これらの結果は、化合物CDEが、100nMの濃度のインスリンと同様に効果的であるか、またはもっと効果的なものとして、インスリン非依存性および他の因子とは独立した様式で、インスリンを模倣し、糖産生を阻害する能力を有することを明らかに示す。化合物CDEが、インスリンと同様に、比較的短期間(すなわち6時間)の処理の後のマウス初代培養肝細胞において糖産生を阻害するのに効果的であることも結論付けることができる。
【0364】
8-CPT/Dexによって刺激を受けた糖産生が、血清を含まない培養条件でマウス肝細胞において阻害されるかどうかをみるためにも、化合物CDEを試験した。図11Aに示されるように、8-CPT/Dexで処理すると、基本的なコントロール群(ビヒクルで処理)と比較して、糖産生が有意に増加し、このことは、このバッチの初代培養肝細胞が生物学的に機能したことをさらに示している。100nMのインスリンで処理した後の肝細胞において、糖産生の減少傾向のみが存在したが、10nMのインスリンで処理すると、糖産生を有意に阻害した。後者の結果は、試験したサンプルの数が少なく(n=3)、あるサンプルの糖産生が、同じ群の他の2つのサンプルと比較してかなり大きかったことに起因するだろう(データは示さない)。
【0365】
さらに重要なことに、150ppbの化合物CDEで処理すると、8-CPT/Dexによって刺激を受けた糖産生を阻害する傾向を示し、一方、300ppbの濃度の化合物CDEは、10nMのインスリンと同様に効果的であり、インスリン非依存性および他の成長因子から独立した様式で、8-CPT/Dexによって刺激を受けた糖産生を有意に阻害した(図11A)。300ppbの濃度の化合物CDEは、この処理のグルコースレベルは、8-CPT/Dexの刺激がない基本的なコントロール群に匹敵するものであったため、8-CPT/Dexの刺激の影響をほぼ完全に打ち消すことを注記しておくべきである。
【0366】
同様に、化合物CDEとインスリンで一緒に処理しても、8-CPT/Dexによって刺激を受けた糖産生を有意に阻害した(図11Aを参照)。それに加え、150ppbの化合物CDEのみ、または100nMのインスリンのみよりも、150ppbの化合物CDEと100nMのインスリンの組み合わせによって、8-CPT/Dexによって刺激を受けた糖産生をさらに顕著に減少させた。これらの結果は、このプロセスにおいて、化合物CDEとインスリンの間にさらなる作用が存在することを示した(図11A)。
【0367】
上述の血清を含まない培地のマウス初代培養肝細胞において、化合物CDEが、8-CPT/Dexによって刺激を受けた糖産生を阻害する効果は、血清を含む培地中、化合物CDEで前処理された肝細胞で観察された知見(図10A)と一致している。肝細胞は、血清がなく飢餓状態にあり、血清をまったく含まない培地中、化合物CDEで処理されたため、これらのデータは、化合物CDEが、少なくとも10nMのインスリンと同様に効果的に、インスリン非依存性および成長因子から独立した様式で、8-CPT/Dexによって刺激を受けた糖産生を阻害するインスリンを模倣する能力を有することを明らかに示す。インスリンの作用と同様に、これらの血清を含まないマウス初代培養肝細胞において、本明細書に記載される化合物が、迅速に作用し、比較的非常に短い期間の処理時間の後に、8-CPT/Dexによって刺激を受けた糖産生を阻害することも結論付けることができる。これらの血清を含まないマウス初代培養肝細胞において、化合物CDEとインスリンの間に、少なくとも150ppbの化合物CDEと100nMのインスリンとの間に、8-CPT/Dexによって刺激を受けた糖産生の阻害について、相加作用または相乗作用も存在する(図11Aを参照)。
【0368】
最後に、血清を含まない条件で培養したマウス初代培養肝細胞に対する毒性を決定するために、化合物CDEを試験した。上述の処理の後のマウス初代培養肝細胞の培地中のLDHレベルを調べ、次いで、そのタンパク質レベルによって正規化した。図11Bによって示されるように、水ビヒクルで処理された群を含む基本的なコントロール群(すなわち、図11Bの1つめの棒グラフ)と比較したとき、上述のすべての処理の後の肝細胞中のLDHレベルの有意な増加はなかった。これらの結果は、化合物CDEにさらされたときに、肝細胞において細胞の損傷または細胞膜の漏れがなかったことを示した。その代わりに、高用量の300ppbの化合物CDEで処理した後の肝細胞において、LDHレベルの有意な減少が観察された(図11Bを参照)。従って、この結果は、化合物CDEが、初代培養肝細胞に対して毒性ではなく、その代わりに、もっと高用量で、これらの細胞における細胞膜の漏れに対し、ある程度の保護効果を有し得ることを示唆している。また、これらの結果は、基本的な糖産生および8-CPT/Dexによって刺激を受けた糖産生について観察した上述の阻害(図11Aを参照)が、化合物CDEで処理した後のマウス初代培養肝細胞中の健康ではない肝細胞によって引き起こされる可能性も除外する。
【0369】
結論として、血清を含まない培養物のマウス初代培養肝細胞に関する上述の試験は、化合物CDEが、FBSとは独立して、さらに特定的には、インスリンおよび成長因子から独立した様式で、基本的な糖産生および8-CPT/Dexによって刺激を受けた糖産生の両方を阻害するインスリンを模倣する能力を有する。また、これらの結果は、化合物CDEが、肝細胞に対して毒性をもたないことをさらに示唆している。
【0370】
(化合物CDE:マウス初代培養肝細胞におけるFoxo1/3/4リン酸化を向上させるためのPI3K/Pdk1/Aktシグナル伝達のインスリン非依存性の活性化)
AML-12細胞に関する本願発明者らの以前の試験は、化合物CDEが、Foxo3およびFoxo4のリン酸化を向上させるインスリンを模倣する能力を有することを示唆しており、これにより糖産生のためのG6pc発現を阻害する(図6~7)。インスリンが肝細胞で迅速に作用し、PI3K/PDK1/AKTシグナル伝達を活性化し、Foxo1、Foxo3およびFoxo4の転写因子を不活性化し、糖産生を非常に迅速に低下させることが十分に記載されている。
【0371】
化合物CDEが、インスリンを模倣するが、インスリン非依存性に作用し、Pdk1/Aktシグナル伝達を活性化し、その後に、糖産生の阻害のためのFOXOリン酸化を向上させるかどうかをさらに観察するために、糖新生の鍵となるこれらのシグナル伝達分子のリン酸化状態を、2つの異なる培養/処理条件で、マウス初代培養肝細胞において観察した。
【0372】
(化合物CDEは、血清を含む培地中、化合物CDEで24時間、その後、血清を含まない培地中で6時間かけて前処理されたマウス初代培養肝細胞において、Foxo1/3/4リン酸化を標的とする)
化合物CDEの組み合わせが、インスリンを模倣し、PI3k/Pdk1/Akt/Foxo1/3/4シグナル伝達を制御するかどうかを決定するために、血清を含むDMEM/F12培地中、マウス初代培養肝細胞をコントロール(水)または用量が150ppbまたは300ppbのセレン化合物CDEで24時間かけて前処理した。この処理の後、血清を含まない培地中、これらのセレン化合物で6時間かけて再処理した。コントロールで前処理された肝細胞も、100nMのインスリンと共に6時間インキュベートした。これらの処理の後、図9に詳細に記載したように、グルコースおよびLDHの分析のために培地を集めた。細胞を集め、タンパク質分析を行い、種々のPI3k/Pdk1/Akt/Foxo1/3/4シグナル伝達分子のウエスタンブロット分析のために全タンパク質レベルを決定した。これらのシグナル伝達分子のタンパク質発現レベルを、Actbタンパク質レベルによって正規化し、図12B~Fに、3個のサンプルの平均±SEMとしてあらわす。図12~Fの棒グラフの異なる文字は、これら2群間の有意差を意味する(P<0.05)。
【0373】
図12Aに示されるように、インスリンで処理すると、セリン9でのGsk3b(pGsk3bS9)を除き、リン酸化形態のPdk1、セリン473でのAkt、トレオニン24でのFoxo1(pFoxo1T24)、トレオニン32でのFoxo3(pFoxo3T32)、トレオニン28でのFoxo4(pFoxo4T28)が有意に増加し、一方、インスリン処理の後のこれらの細胞において、トレオニン28でのリン酸化されたFoxo4(pFoxo4T28)のレベルは、ほとんど検出することができなかった。これらの結果は、インスリンが実際にPI3k/Pdk1/Aktシグナル伝達を制御し、上述の実験条件でこれらの肝細胞においてFoxo1およびFoxo3を不活性化することを示唆している。さらに重要なことに、pGsk3bS9を除き、pPdk1、pAktS473、pFoxo1T24およびpFoxo3T32のタンパク質レベルは、両用量の化合物CDEの処理の後に、これらの肝細胞において目に見えて上昇した(図12A)。それに加え、pFoxo4T28レベルも、300ppbの化合物CDEの処理の後に、肝細胞において安定に増加した(図12A)。
【0374】
定量分析は、化合物CDEで処理されたマウス初代培養肝細胞において、pPdk1が約1.5倍の増加、pAktS473が2.2~3倍の増加、pFoxo1T24が3~4倍の増加、pFoxo3T32が約3倍の増加を示したが、pGsk3bS9は増加しなかった(図12B~F)。マウス初代培養肝細胞において、pPdk1およびpAktの上昇は、化合物CDEの6時間の処理でAML-12細胞において観察されなかったが、化合物CDEによるpFoxo3T32およびpFoxo4T28の発現の向上は、AML-12細胞における本願発明者らの先の観察と一致していた(図6~7)。
【0375】
インスリンおよび両方の用量試験用量の化合物CDEによって引き起こされる、これらの肝細胞におけるpPdk1およびpAktS473のタンパク質レベルの上昇は、化合物CDEが、インスリンと同様に、Pdk1/Aktシグナル伝達を活性化する能力を有することを示す。化合物CDEによるpAkt/Foxo1/3のリン酸化の上昇度は、100nMのインスリンほど強くないが、試験した両用量の化合物CDEは、100nMのインスリンと同様に効果的であり、同じ実験条件下、マウス初代培養肝細胞において糖産生を阻害した(図9A)。従って、化合物CDEによるpFoxo1T24およびpFoxo3T32の約3~4倍の上昇(図12D~E)は、Foxo1およびFoxo3を不活性化するのに十分であり、これらのマウス初代培養肝細胞においてG6pc発現および糖産生を阻害する。本願発明者らの結果は、化合物CDEが、インスリンを模倣し、PI3K/Pdk1/Aktシグナル伝達を活性化し、上述の培養条件および処理条件で、マウス初代培養肝細胞においてFoxo1/3/4リン酸化を向上させることを明らかに示す。
【0376】
(血清を含まない条件で、初代培養肝細胞において、化合物CDEが迅速に作用し、順次、Pdk1/Aktシグナル伝達を活性化し、Foxo1/3リン酸化を向上させる)
化合物CDEが、インスリンを模倣し、PI3Kシグナル伝達を活性化し、Foxo1/3リン酸化を向上させることができるかどうかをさらに観察するために、血清を含まない条件下、マウス初代培養肝細胞において、これらのシグナル伝達分子の時間経過に伴う発現試験を行った。簡単に言うと、マウス初代培養肝細胞を、一晩かけて血清のない飢餓状態にし、次いで、血清を含まないDMEM/F12培地中、用量が300ppbのセレン化合物CDEと共に0分、5分、30分、1時間、2時間および3時間インキュベートした。処理後、肝細胞を集め、ウエスタンブロット分析を行った。
【0377】
図13A~Bに示されるように、リン酸化されたPdk1のレベルは、化合物CDEを用いた処理の5分後に、これらの血清を含まない培養物の肝細胞において、増加する傾向があった。化合物CDEで30分処理した後、これらの肝細胞において、pPdk1レベルが安定的に有意に増加した(図13A~B)。これらの結果は、化合物CDEが、これらの肝細胞において、PI3k/Pdk1シグナル伝達を迅速に活性化することができることを示唆している。Pdk1の活性化に続き、化合物CDEで30分処理したときに肝細胞においてpAktT308レベルが増加する傾向があり、さらに重要なことに、化合物CDEで1時間処理した後に、pAktT308が安定的に有意に増加した(図13A、C)。これらの結果は、化合物CDEがその後にAktを活性化させることができることを示唆している。
【0378】
活性化されたPI3k/Pdk1/Aktシグナル伝達の下流の標的であるpFoxo1T24およびpFoxo3T32のレベルは、インキュベートの30分前に化合物CDEによって、肝細胞において影響を受けなかった(図13A、D)。化合物CDEで1時間処理すると、肝細胞において、Foxo1およびFoxo3のリン酸化が増加する傾向があった(図13D)。処理2時間および3時間の時点で、化合物CDEは、血清を含まない条件で培養したこれらのマウス初代培養肝細胞において、Foxo1およびFoxo3のリン酸化を有意に向上させた(図13A、D)。従って、これらの肝細胞において、化合物CDEによってPdk1およびAktが順次活性化し、その後、Foxo1およびFoxo3のリン酸化が向上し、これらの事象は、インスリンの作用と非常によく似た様式で、化合物CDEで処理してから2時間未満で起こる。無添加のDMEM/F12培地にインスリンまたは成長因子は存在せず、これらの実験では培地にFBSを加えないことを考慮すると、これらの肝細胞における化合物CDEによるPdk1、Akt、Foxo1およびFoxo3のリン酸化の向上は、FBS、成長因子またはインスリンから独立している。言い換えると、化合物CDEは、マウス初代培養肝細胞において、インスリンまたは成長因子の作用を迂回し、PI3k/Pdk1/Aktシグナル伝達を迅速に活性化し、その後、Foxo1およびFoxo3を不活性化する(Foxo1/3リン酸化の向上)ことができる。
【0379】
(概要)
本願発明者らの試験は、化合物CDEが、マウス初代培養肝細胞において、インスリンを模倣し、肝細胞に対して毒性ではなく、インスリン非依存性に糖産生を阻害する能力を有することを示す。これらの知見は、異なる条件で培養されたマウス初代培養肝細胞での試験から明らかに確立された。第1に、糖産生は、血清を含有する培地中、化合物CDEで24時間かけて前処理し、その後、血清を含まない培地中、これらの化合物で6時間かけて再処理することによって顕著に減少することがわかり、その有効性は、100nMの用量のインスリンに匹敵するものであった(図9A)。次に、糖産生は、血清を含有する培地中、化合物CDEで24時間かけて前処理し、その後、8-CPT/Dex(糖尿病状態を模倣するためのグルコース産生の刺激物質)存在下、血清を含有しない培地中、これらの化合物で6時間かけて再処理することによって、マウス初代培養肝細胞において顕著に阻害されることもわかり、このプロセスにおける300ppbの化合物CDEの有効性は、100nMの濃度のインスリンに匹敵するものであった(図10A)。最後に、本願発明者らは、血清を含まない培養技術を応用し、化合物CDEが、インスリンを模倣し、FBSとは独立して、またはさらに特定的には、インスリンおよび成長因子から独立した様式で、短い処理期間(6時間の処理)の後、基本的な糖産生および8-CPT/Dexによって刺激を受けた糖産生を阻害することができることを示した(図11A)。また、糖産生の阻害における化合物CDEの有効性は、少なくとも10nMの用量のインスリンに匹敵するものであった(図11A)。それに加え、化合物CDE処理の後、培地中のLDHの有意な増加はなかったため、化合物CDEを用いた処理は、上述の3つの異なる条件で培養したマウス初代培養肝細胞の健康に対する毒性の影響(例えば、細胞膜の漏れを誘引する)に対する毒性の影響を有していなかった(図9C、10C、11B)。
【0380】
これらの試験で観察される糖産生の減少は、化合物CDEによるマウス初代培養肝細胞におけるG6pc発現の阻害に少なくとも部分的に寄与する。300ppbの化合物CDEによって、肝細胞におけるG6pc mRNAレベルが有意に減少し(42%の減少)、一方、150ppbの化合物CDEで処理した後、G6pc発現が減少する傾向(統計的に有意ではないが、約31%の減少)も、肝細胞で観察された(図9B)。8-CPT/Dexによって刺激を受けたマウス初代培養肝細胞でも同様の結果が得られた(図10B)。従って、これらの結果は、化合物CDEが、インスリンを模倣し、インスリン非依存性に、8-CPT/Dex存在下でさえ、マウス初代培養肝細胞においてG6pc発現を阻害することができることを明らかに示す。これらの結果は、AML-12細胞で観察された知見と一致している(図3~4)。
【0381】
試験した高用量の化合物CDEによるG6pc発現の減少の程度が、マウス初代培養肝細胞において、上述の2つの培養条件(すなわち、8-CPT/Dexで処理するか、または処理せずに)で、インスリン(10nM)より小さく、一方、化合物CDEは、少なくとも10nMの用量のインスリンと同様に効果的であり、基本的な糖産生および肝細胞において8-CPT/Dexによって刺激を受けた糖産生を阻害したことを注記しておくべきである(図9A、10A、11B)。従って、G6pc以外に、培養したマウス肝細胞においてグルコースレベルを下げるために、化合物CDEが他の分子を制御してもよいことも考え得る。それにもかかわらず、本願発明者らの結果は、化合物CDEによるマウス初代培養肝細胞における糖産生の阻害が、少なくとも部分的に、G6pc発現の阻害に起因するものであることを示唆している。
【0382】
それに加え、この結果は、化合物CDEが、模擬糖尿病状態(8-CPT/Dexを用いる)で、インスリンの作用を改良または補強し、マウス初代培養肝細胞における糖産生およびG6pc発現を阻害することができることも示す(図10A~B、11A)。これらは、以下の観察結果によって裏付けられた。
(1)肝細胞における8-CPT/Dexによって誘発された糖産生は、150ppbの化合物CDEと10nMのインスリンの組み合わせによって、150ppbの化合物CDEのみ、または10nMのインスリンのみの場合よりも顕著に減少(図10A)。
(2)肝細胞における8-CPT/Dexによって誘発された糖産生は、300ppbの化合物CDEと100nMのインスリンの組み合わせによって、300ppbの化合物CDEのみ、または100nMのインスリンのみの場合よりもさらに減少(図10A)。
(3)血清を含まない培地中、肝細胞における8-CPT/Dexによって誘発された糖産生は、150ppbの化合物CDEと100nMのインスリンの組み合わせによって、150ppbの化合物CDEのみ、または100nMのインスリンのみの場合よりも顕著に減少(図11A)。
(4)8-CPT/Dexによって誘発されたG6pc発現は、300ppbの化合物CDEとインスリン(10nMおよび100nM)の組み合わせによって、300ppbの化合物CDEのみ、または10nMまたは100nMのインスリンのみの場合よりも顕著に減少(図10B)。
【0383】
AML-12細胞においても、化合物CDEのみ、またはインスリンのみの場合よりも、化合物CDEとインスリンの組み合わせによって、8-CPT/Dexによって誘発されたG6pc発現の顕著な阻害が、観察された(図4)。合わせて、本願発明者らの結果は、化合物CDEが、マウス初代培養肝細胞において、8-CPT/Dexによって誘発された糖産生およびG6pc発現を阻害するインスリンの作用を改良することができることを示す。
【0384】
さらに、シグナル伝達分子の分析は、化合物CDEが、インスリンを模倣し、マウス初代培養肝細胞において、PI3K/Pdk1/Aktシグナル伝達を迅速に活性化し、Foxo1、3および4のリン酸化を向上させる能力を有することを示す。血清を含む培地中、化合物CDEで24時間前処理し、その後、血清を含まない培地中、これらの化合物で6時間再処理された(図12)、または血清をまったく含まない条件で5~180分の短期間、これらの化合物で処理された(図13)マウス肝細胞におけるこれらの分子のリン酸化されたタンパク質のウエスタンブロット分析は、この結論を裏付ける。
【0385】
AML-12細胞において、本願発明者らは、Pdk1およびAktのリン酸化の増加は、試験した期間(化合物CDE処理から6時間後)にAML-12細胞で観察されなかったが、化合物CDEが、Foxo3/4を標的化し、そのリン酸化を向上させる能力を有することもわかった(図6~7)。前者の結果は、初期の時間点(6時間より前)で起こり得る化合物CDEによるPdk1/Aktの潜在的で一時的な影響に起因するものであろう。
【0386】
それにもかかわらず、マウス初代培養肝細胞における試験は、化合物CDEが、インスリンまたは任意の成長因子を迂回し、PI3k/Pdk1/Aktシグナル伝達を迅速に活性化し、その後、Foxo1/3/4リン酸化を向上させることを明らかに示す。FOXOタンパク質(特に、Foxo1)は、肝臓において、G6pc発現および糖産生の制御に重要であるため、化合物CDEによってマウス初代培養肝細胞において上で観察された糖産生およびG6pc発現の阻害は、おそらく、インスリンから独立したPdk1/Aktシグナル伝達の活性化から生じるFoxo1/3/4の不活性化、その後、Foxo1/3/4のリン酸化の向上によって引き起こされるようである。また、上のプロセスにおけるインスリン作用の向上も、化合物CDEおよびインスリンによるFoxo1/3/4リン酸化の向上のさらなる効果に起因するようである。
【0387】
簡単に言えば、本願発明者らは、マウス初代培養肝細胞において、糖産生のための糖尿病刺激物質存在下であっても、肝細胞に対して毒性がなく、インスリンの作用を迂回し、糖産生およびG6pc発現を阻害することができるセレン化合物の組み合わせを明らかにした。また、この化合物の組み合わせ(化合物CDE)は、マウス初代培養肝細胞において、インスリンの作用を改良し、糖尿病刺激物質によって誘発される糖産生およびG6pc発現をさらに阻害することができる。さらに、この化合物の組み合わせは、インスリンを模倣するが、インスリンを迂回し、肝細胞において、PI3k/Pdk1/Aktシグナル伝達を迅速に活性化し、その後、Foxo1/3/4リン酸化を向上させることもできる。従って、この化合物の組み合わせを、強力なインスリン補充医薬としてだけではなく、I型およびII型の糖尿病の治療のためのインスリンを強化する医薬として使用してもよい。組み合わせた状態での化合物CDEは、インスリンを迂回し、インスリンとは独立したFoxo1/3/4の不活性化、Foxoが介在するG6pc発現の阻害および/または肝臓におけるこれらのプロセスにおけるインスリン作用の向上によって肝臓のグルコース生成を減らすことによって、肥満の治療に有用であり、または、肝細胞がインスリン抵抗性になるのを防ぐために投与されてもよい。
【0388】
(実施例7:インスリン抵抗性であり、糖尿病のレプチン受容体(Lepr)の自然発生的なヌル変異マウスにおいて、化合物CDEを用いた混合処理に応答した、血流のグルコースレベルの減少および糖耐能の向上)
(材料および方法)
(化合物)
化合物C(5’-メチルセレノアデノシン)、化合物D(Se-アデノシル-L-ホモシステイン)および化合物E(γ-グルタミル-メチルセレノ-システイン)を、Alltech,Inc.のChemistry Laboratoryで合成した。試験したすべての化合物の純度は、質量分析法によって決定すると、99%以上であると確認された。
【0389】
(動物および処理)
ヘテロ接合の糖尿病の自然発生変異(レプチン受容体変異)を有するLeprdb/+成マウス(C57BL/6J株)をThe Jackson Laboratory(バーハーバー、メイン)から購入し、次いで、これを交雑受精させ、ホモ接合のLeprdb/dbマウス(マウス遺伝子型判定によって決定)を作成した。The Jackson Laboratoryからのプロトコルに従って、離乳期(出産から21日目)にマウスの尾の遺伝子型判定を行った。これらのLeprdb/dbマウスに、出産から27日目に、生理的食塩水(0.09%NaCl)または化合物CDEを腹腔内注射した。化合物CDEは、化合物C、化合物Dおよび化合物Eを組み合わせた状態で含み(体重1kgあたり、それぞれの化合物の5μgのセレンは、注射あたり、それぞれのセレン化合物5ppbと等価である)、3.5月齢までは1日おきに投与し、次いで、グルコース分析および糖耐能アッセイを行った。上のように処理したマウスの体重を、毎週、秤を用いて記録し、目に見える異常な動物全体の形状および歩行挙動を毎日モニタリングした。
【0390】
さらに5週齢の雄Leprdb/dbマウスをJackson Laboratoryから購入し、生理的食塩水(0.09%NaCl)または化合物CDEを毎日腹腔内注射した。化合物CDEは、化合物C、化合物Dおよび化合物Eを組み合わせた状態で含み(体重1kgあたり、それぞれの化合物の5μgのセレンを滅菌生理的食塩水で希釈した)、出産から38日目から開始し、28日間行った。この実験は、急性糖尿病治療としてのこれらの化合物の潜在的な使用を試験するために設計された(35日齢を超えるLeprdb/dbマウスは、高血糖症を患っているか、まもなく患う)。長期間にわたって注射してきた若いマウスの試験は、糖尿病前状態の被検体またはリスクがある被検体のための予防的な調製物としてより多くの化合物を評価することを意図していた。上のように処理されたマウスの体重も、毎週、秤によって記録し、目に見える異常な動物全体の形状および歩行挙動を毎日モニタリングした。
【0391】
(血中グルコースアッセイ)
生理的食塩水または化合物CDEの最後の注射の後、マウスを一晩絶食させた。次いで、マウスの尾の先端を切断することによってこれらのマウスからの血液の小さな液滴を集め、グルコース測定の最大能が600mg/dLのグルコメーターを用い、血中グルコースレベルを決定した。
【0392】
(糖耐能試験および曲線の下の面積(AUC)の定量化)
糖耐能試験を、すでに記載されているように行った(Liら、Int J Biol Sci 2008;4:29-36)。簡単に言うと、生理的食塩水または化合物CDEで処理した後、一晩絶食させたLeprdb/dbマウスに、2グラム/体重の20%D-グルコースを腹腔内注射した。グルコース測定の最大能が600mg/dLのグルコメーターを用い、0時点(グルコースを注射する直前)注射してから0.25時間、0.5時間、1時間、2時間の血中グルコースレベルを決定した。このため、600mg/dLを超える血中グルコースレベルは、本願発明者らのデータ分析では600mg/dLと計測した。上のグルコース試験アッセイにおいて、それぞれのマウスの曲線より下の面積(AUC)の定量化を、Microsoft Excelを用いて計算した。
【0393】
(統計解析)
適用可能な場合、スチューデントのt検定を行い、0.5未満のP値を用い、生理的食塩水で処理された群と化合物CDEで処理された群の間の統計的有意差を決定した。図面に示された数のマウスの平均±SEMとしてデータをあらわす。
【0394】
(結果および考察)
Leprdb/dbマウスは、レプチン受容体遺伝子(Lepr)のすべての既知のアイソフォームが欠損している。このホモ型マウスモデルは、糖耐能不全、インスリン感受性の低下、高血糖症および高インスリン血症を伴う、急速に進行するII型糖尿病マウスモデルである。これらのマウスは、3~4週齢で全体的に肥満状態を示し、10~14日目に血漿インスリンの上昇が始まり、4~8に高血糖症(すなわち、血中の糖濃度が高い)になる(Coleman DL.1978 Diabetologia 14:141-8)。
【0395】
本明細書に記載されるAML-12細胞およびマウス初代培養肝細胞についての試験は、化合物CDEが、インスリンを模倣するが、インスリンを迂回し、肝細胞においてFoxo1、Foxo3およびFoxo4を不活性化する能力を有することを示す。それに加え、化合物CDEは、Foxoが介在するG6pc発現を阻害し、これらの肝細胞にとって毒性ではなく、糖産生を下げることができる(図1~4、6~7および9~13)。また、これらのin vitro試験は、化合物CDEが、模擬糖尿病条件で、肝細胞においてインスリン作用を向上させ、糖産生およびG6pc発現を下げる能力を有することを示す(図4、10~11)。従って、Leprdb/dbマウスモデルは、血流のグルコースを潜在的に下げ、インスリン感受性および糖尿病に対する糖耐能の向上において、この新規化合物の組み合わせの使用を観察するのに理想的なモデルである。
【0396】
(高血糖症の発生前と発生後に化合物CDEを投与した後のLeprdb/dbマウスにおける血中グルコースレベルの減少)
化合物CDEの2つの投与計画を適用し、Leprdb/dbマウスで表出しているような高血糖症の予防および治療における化合物CDEの潜在的な役割を観察した。本明細書に記載される化合物を観察し、Leprdb/dbマウスで4~8週齢に発生する高血糖症の進行を予防する際に影響を与えるかどうかを決定した。高血糖症を発症する直前に化合物CDEを腹腔内注射することによって、マウスに治療薬を投与した。
【0397】
簡単に言うと、27日齢の若年のLeprdb/dbマウスに、マウスが3.5月齢に達するまで、化合物CDE(体重1kgあたり、それぞれの化合物のセレン5μg、それぞれのマウスへの注射あたり、それぞれの化合物5ppbと等価)または生理的食塩水を1日おきに腹腔内注射した。治療終了時に、マウスを一晩絶食させ、グルコース分析を行った。これらの試験したマウスの体重を、1日おきに秤を用いて記録し、治療期間中の体重増加に対し、これらの化合物がなんらかの影響を有するかどうかを試験した。データを、図14の棒グラフの下に示される数のマウスの平均±SEMとしてあらわす。
【0398】
化合物CDEを用いた処理は、これらの変異マウスの体重増加に影響を与えないことがわかった(データは示さない)。このことは、化合物CDEが、Leprdb/dbマウスで表出する餌接種のための異常な食欲増加に対し、ほとんど、またはまったく、阻害効果を有さないようであることを示している。また、試験期間中、生理的食塩水で処理されたLeprdb/dbマウス(コントロール)と、化合物CDEで処理されたLeprdb/dbマウスの間で、動物の全体形状および歩行挙動に目に見える差はなかった(データは示さない)。これらの結果は、化合物CDEが、用量試験用量で、動物の挙動または活動性に影響を与えなかったことを示す。
【0399】
しかし、化合物CDEで処理すると、コントロールと比較して、Leprdb/dbマウスの血中のグルコースレベルが約40%の減少であり、有意に減少した(図14Aを参照)が、化合物CDEで処理されたLeprdb/dbマウスにおける血中グルコースレベルは、同じ年齢の正常な野生型マウスよりもまだ高かった(約100mg/mL、データは示さない)。用量試験用量の化合物CDEが、Leprdb/dbマウスにおいて高血糖症の発症を完全に防ぐことはなかったが、これらの結果は、化合物CDEが、この重篤なII型糖尿病マウスモデルにおいて血中のグルコースレベルを有意に減少させる能力を有することを明らかに示し、このことは、化合物CDEが高血糖症を予防する可能性を示している。
【0400】
これらの糖尿病Leprdb/dbマウスにおけるグルコース生成を減らす際の化合物CDEの役割をさらに観察するために、Leprdb/dbマウスにおける高血糖症の発症後または発症中に化合物CDEを腹腔内注射する別の投与計画を適用し、これらのマウスにおける血中グルコースレベルを調べた。簡単に言うと、38日齢のLeprdb/dbマウスに、生理的食塩水または化合物CDE(体重1kgあたり、それぞれの化合物のセレン5μg)を毎日28日間、腹腔内注射した。マウスの体重および異常な形態または歩行挙動を毎日記録するか、またはモニタリングした。
【0401】
上述の処理の後、動物を一晩絶食させ、次いで、血中グルコース分析を行った。上の動物試験と同様に、化合物CDEの処理は、処理期間中、Leprdb/dbマウスにおける体重増加、動物全体の形態および歩行挙動に影響を与えなかった(データは示さない)。しかし、化合物CDEで処理すると、生理的食塩水で処理されたマウスと比較して、これらのLeprdb/dbマウスにおける血中グルコースレベルが有意に減少した(約25%の減少)(図14Bを参照)。これらの試験は、化合物CDEが、これらの重篤なII型糖尿病マウスにおけるグルコース生成を減らす能力を有することをさらに示し、このことは、これらの化合物の高血糖症の治療への可能性を示している。
【0402】
まとめると、これらの結果は、化合物CDEが、Leprdb/dbマウスにおける高血糖症の発症前と発症後または発症中に、これらの化合物を腹腔内注射することによって、この変異動物におけるグルコース生成を減らす能力を有することを示す。
【0403】
それに加え、上述の注射計画で、これらの化合物の処理の後、Leprdb/dbマウスにおける目に見える形態変化または歩行挙動の変化はなかった。実際に、正常な野生型C57BL/6マウスにおける動物の健康に対する化合物CDEの実際の効果を調べ、高用量(体重1kgあたり、それぞれの化合物のセレン500μg、データは示さない)の化合物CDEの腹腔内注射を行ってから1週間の間に異常な全体形態および歩行挙動の異常は観察されなかった。従って、化合物CDEは、これらのマウスにおいて、毒性の影響がほとんどないか、またはまったくないようである。
【0404】
合わせると、これらの結果は、化合物CDEが、急速に進行するII型糖尿病マウスモデルにおいて、血中グルコースレベルを有意に下げる能力を有することを示す。これらの結果は、糖尿病被検体における高血糖症の予防および治療への化合物CDEの可能性を示す。
【0405】
(高血糖症の発症前に化合物CDEを投与した後の糖尿病Leprdb/dbマウスの糖耐能の向上)
糖耐能試験は、血中の糖が高く、迅速に上昇した後(通常は食事の後)に身体がグルコースを取り扱う様式の異常さを特定する。インスリンは、肝臓における糖産生の阻害だけではなく、筋肉、肝臓および脂肪細胞でのグルコースの取り込み、保存および代謝に重要な役割を果たし、血中のグルコースレベルを下げる。
【0406】
糖尿病患者は、インスリンを産生することができないか、または糖ホメオスタシスを維持するのに効率的なインスリンの応答がないことに起因して、糖耐能が非常に低い。本明細書に記載されるin vitro試験は、化合物CDEが、インスリンを模倣するだけではなく、インスリンを迂回し、インスリン作用を向上させ、糖産生および/または肝細胞における糖産生にとって鍵となる遺伝子であるG6pcの発現を阻害する能力を有することを示す(図2~4、9~11)。Leprdb/dbマウスは、糖ホメオスタシスの維持における化合物CDEの役割を観察するために、糖耐能不全およびインスリン抵抗性がこれらの変異マウスで表出していることを考慮すると、理想的なマウスII型糖尿病モデルである。従って、27日齢~3.5月齢のマウスに化合物CDEを腹腔内注射した後のLeprdb/dbマウスの糖耐能の向上に対する化合物CDEの影響が観察された。
【0407】
上述の試験と同様に、27日齢のLeprdb/dbマウスに、生理的食塩水または組み合わせた状態の化合物CDE(体重1kgあたり、それぞれの化合物の5μgのセレンは、それぞれのマウスにおいて、注射あたり、それぞれの化合物5ppbと等価である)を1日おきに、マウスが3.5月齢に達するまで腹腔内注射した。治療終了時に、マウスを一晩絶食させ、グルコース(2g/体重kg)を注射し、グルコース注射から0.25時間(15分)、0.5時間(30分)、1時間(60分)、2時間(120分)後に血中グルコースレベルを測定した。グルコース注射直前(ゼロ時間点と呼ばれる)の血中グルコースレベルも記録した。平均±SEM。図15の*は、生理的食塩水で処理された群と同じ時間点で比較して、Pが少なくとも<0.05を指すことを示す。
【0408】
図15Aに示されるように、生理的食塩水で処理されたLeprdb/dbマウスにおいて、グルコース注射から0.25時間後から開始し、以下の全ての試験時間点で、血中グルコースレベルの有意な増加が観察された。上述のように、これらの分析のために使用されるグルコメーターのグルコース測定限界は、600mg/dLであった。従って、この限界を超えるグルコースレベルは、600mg/dLと記録されなければならない。このことを述べる理由は、この測定を指摘するためであり、特に、生理的食塩水で処理された動物について、真の血中グルコース濃度が低く概算されることがよくあるだろう。
【0409】
化合物CDEで処理されたLeprdb/dbマウスにおいて、血中グルコースレベルは、グルコース注射前に、生理的食塩水で処理されたマウスより有意に低かった。生理的食塩水で処理されたマウスと同様に、6匹の試験された化合物CDEで処理されたマウスのうち5匹は、グルコース注射から0.5時間後および1時間後で血中グルコースレベルが600mg/dLに近いか、600mg/dLより高かった(図15Aを参照)。しかし、化合物CDEで処理した後の6匹の試験したすべてのLeprdb/dbマウスの血中グルコースレベルは、グルコース注射から2時間後に、生理的食塩水で処理されたものより有意に低かった(図15A)。
【0410】
図15Aに示される上述のグラフの曲線の下の面積(AUC)の定量分析は、生理的食塩水で処理されたマウスと比較して、化合物CDEで処理されたLeprdb/dbマウスにおいて、グルコース注射後の試験した期間中、血中グルコースも有意に減少したことを示す(図15Bを参照)。しかし、ここで再び、グルコメーターの測定限界に起因して、この減少は、図15Bに示されるよりももっと劇的であったと思われる。それにもかかわらず、この減少は、有意な差であると強調しなければならない。
【0411】
グルコース注射から2時間後の化合物CDEで処理されたLeprdb/dbマウスのグルコースレベルは、グルコース注射前のグルコースレベルよりまだ高いことを注記しておく(図15Aを参照)。これらの結果は、化合物CDEによるLeprdb/dbマウスの血中の投与されたグルコースの完全な排泄は、この実験で使用される2時間のモニタリング時間より長くかかるようであることを示唆している。
【0412】
簡単に言うと、上述の試験は、用量試験用量の化合物CDEが、Leprdb/dbマウスにおいて糖耐能を有意に向上させる能力を有することを示す。これらの化合物の作用は、肝臓および他の臓器(例えば、筋肉および脂肪組織)におけるグルコースの排泄におけるインスリン感受性の向上が介在していると思われる。
【0413】
(概要)
これらの結果は、最初に、化合物CDEが、急速に進行するII型糖尿病マウスモデルにおいて、空腹時のグルコースレベルを下げる(図14)だけではなく、糖耐能も向上させる能力を有する(図15)ことを示す。広範囲に及ぶ細胞培養研究に基づき、これらの動物における化合物CDEの作用機序は、おそらく、(1)マウス初代培養肝細胞およびAML-12肝細胞で示されているように、インスリンを迂回し、Foxo1、Foxo3、Foxo4を不活性化し、肝細胞においてG6pc発現および糖産生を減少させる(図2~4、6~7、9~13);(2)これも培養した肝細胞での試験によって示されるように、肝臓において、Foxo1、Foxo3、Foxo4が介在するG6pc発現および糖産生の阻害によってインスリン感受性を向上させる(図4、10~11);および/または(3)図15で示唆されるように、肝臓、筋肉および脂肪細胞において、インスリン作用を向上させ、またはインスリンを迂回し、グルコースの取り込みおよび/または代謝を向上させる。それに加え、インスリン感受性の向上は、マウス肝臓AML-12細胞での試験によって示されるように、化合物CDEによるInsrおよびIgf1r発現の向上に起因するだろう(図5)。
【0414】
それにもかかわらず、本願発明者らの試験は、化合物CDEが、インスリン抵抗性の糖尿病マウスモデルにおいて、グルコース生成を阻害し、糖耐能を向上させる能力を有することを示す。これらの結果は、糖尿病患者において高血糖症およびインスリン不応症の治療のために化合物CDEを開発することができることを示唆する。その他に、リスクのある患者で高血糖症を発症する前に投与される場合、血中のグルコース生成を下げる能力によって、化合物CDEを前糖尿病状態の被検体における高血糖症の発症を予防するのに使用することもできる。それに加え、化合物CDEは、血中のグルコースレベルを下げる能力に起因して、肥満の治療にも有用であろう。
【0415】
本明細書で述べられる全ての刊行物および特許は、本明細書に参考として組み込まれる。本出願の記載されている方法および組成物の種々の改変および変形は、本出願の範囲および精神から逸脱することなく、当業者には明らかであろう。本出願を具体的な好ましい実施形態と組み合わせて記載したが、請求されている本出願が、このような具体的な実施形態に過度に限定されるべきではないことを理解すべきである。実際に、関連分野の当業者に明らかである本出願を行うための上述の態様の種々の改変は、以下の特許請求の範囲内であることが意図される。
図1
図2A-2B】
図3
図4
図5A-5B】
図5C-5D】
図6A-6B】
図6C
図7A
図7B
図7C
図8
図9A-9B】
図9C
図10A-10B】
図10C
図11A
図11B
図12A-12B】
図12C-12D】
図12E-12F】
図13A-13B】
図13C-13D】
図14A-14B】
図15A-15B】