(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-14
(45)【発行日】2022-01-25
(54)【発明の名称】ベビーカー
(51)【国際特許分類】
B62B 9/10 20060101AFI20220118BHJP
【FI】
B62B9/10 A
(21)【出願番号】P 2017109548
(22)【出願日】2017-06-01
【審査請求日】2020-05-01
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成29年5月24日ピジョン株式会社のウェブサイトにて公開
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成29年5月24日ピジョン株式会社のNews Releaseを配信
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成29年5月24日ピジョン株式会社のNews Releaseを投函
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成29年5月24日株式会社ニューズ・ツー・ユーのウェブサイトにて公開
(73)【特許権者】
【識別番号】000112288
【氏名又は名称】ピジョン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】池田 真実
(72)【発明者】
【氏名】荒井 雄一
【審査官】志水 裕司
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-210533(JP,A)
【文献】特開2015-013567(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0108810(US,A1)
【文献】特開平08-107816(JP,A)
【文献】実開昭63-075467(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62B 7/00 - 9/28
B60N 2/26 - 2/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
座板部材と、
前記座板部材の後方に配置される背当て部と、
前記座板部材および前記背当て部に配置されるクッション部とを備え、
前記背当て部は、背当てフレームと、前記背当てフレームに対して張架されるベースシートとを備え、
前記クッション部は、
前記ベースシートに対して、前記ベースシートの上下方向に延びる左右の縦側部、および、前記ベースシートの上部に配置される頭部ベースシートと、
前記ベースシートに対して前記頭部ベースシートを着脱可能に取り付ける取付部と、
前記座板部材上に配置される前記頭部ベースシートとは別体の座部ベースシートと
、を備え
、
前記取付部は、線ファスナであり、
前記線ファスナは、
前記ベースシートが備える一方の第1務歯と、
前記頭部ベースシートが備え、前記第1務歯と噛合する第2務歯と、
前記第1務歯および前記第2務歯に沿って移動し前記第1務歯および前記第2務歯を開閉するスライダとを備え、
前記ベースシートは、前記ベースシートの外周部から内側に向かって延在する可撓性部を備え、前記第1務歯は、前記可撓性部の先端部に設けられ、
前記スライダは、前記第1務歯および前記第2務歯を開閉する胴体部と、前記胴体部を操作する引手とを備え、
前記胴体部は、前記引手が乗車部とは反対の外側を向くように設けられている
ベビーカー。
【請求項2】
前記取付部は、第1取付部であって、
前記ベースシートの下部に対して前記座部ベースシートを着脱可能に取り付ける第2取付部をさらに備える
請求項1に記載のベビーカー。
【請求項3】
前記頭部ベースシートは、前記スライダの閉端部および開端部のうちの少なくとも一方の端部に対応する位置に、前記端部を覆うカバー部を備えている
請求項
1に記載のベビーカー。
【請求項4】
前記取付部は、前記線ファスナが閉状態にある場合において、前記スライダが開方向に移動することを阻止する開止め部材を備えている
請求項
1または
3に記載のベビーカー。
【請求項5】
前記ベビーカーは、さらに、
前記背当て部に回動可能に備えられるヘッドレストと、
前記ヘッドレストの両端部において、先端部が揺動可能に支持されるとともに、基端部が前記ベビーカーのフレームに軸部で回動可能に支持される一対のサイドプレートとを備え、
前記頭部ベースシートは、前記ヘッドレストおよび前記一対のサイドプレートを被覆する袋状部を備えている
請求項1ないし
4のうち、何れか1項に記載のベビーカー。
【請求項6】
前記ベビーカーは、さらに、
前記背当て部に対して回動可能に支持されるヘッドレストと、
前記ヘッドレストの両端部において、先端部が揺動可能に支持されるとともに、基端部が前記ベビーカーのフレームに軸部で回動可能に支持される一対のサイドプレートとを備え、
前記座部ベースシートは、前記座部ベースシートを前記軸部に係合するように取り付ける第3取付部を備えている
請求項2に記載のベビーカー。
【請求項7】
さらに、前記ベースシート及び前記座部ベースシート上に着脱可能に取り付けられる表面シートを備える
請求項
1に記載のベビーカー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、座部から背当て部に亘ってクッション部を備えたベビーカーに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1のように、ベビーカーには、座部から背当て部に亘る乗車部分にクッションが配設されている。クッションは、座部クッション部と、背当て部クッション部と、背当て部の周囲に配置され頭部を保護する頭部クッション部とを備え、これらのクッション部は一体に設けられている。そして、洗浄可能なように、クッションは、座席部分の下地部材などに対して着脱可能に取り付けられている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、頭部クッション部は、乳幼児の頭部付近では口鼻などからの唾液、鼻水などで汚れやすい。また、座部クッション部は、乳幼児の排泄物や食べかす、土埃などによって汚れやすい。このようにクッションは、場所によって、汚れ方や汚れの程度が異なる。
【0005】
座部から背当て部に亘るクッションが一体である場合には、クッション自体が大きく、また、複数箇所で下地部材などに取り付けられているため、取り外しが大変な作業となる。それにもかかわらず、洗浄を行う場合は、クッションを下地部材などから取り外す必要が生じる。また、頭部クッション部などは、クッション材の量なども多く、乾きにくく、他の部分よりも乾燥時間が長くなる。このため、クッション部の中で汚れた部分だけを取り外すことができるようにして、洗浄を容易にできるようなベビーカーが望まれる。
【0006】
本発明は、以上のような課題に鑑みてなされたものであり、クッション部を部分的に取り外し可能としたベビーカーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上のような課題を解決するベビーカーは、座板部材と、前記座板部材の後方に配置される背当て部と、前記座板部材および前記背当て部に配置されるクッション部とを備える。前記背当て部は、背当てフレームと、前記背当てフレームに対して張架されるベースシートとを備える。前記クッション部は、前記ベースシートに対して、前記ベースシートの上下方向に延びる左右の縦側部、および、前記ベースシートの上部に配置される頭部ベースシートと、前記ベースシートに対して前記頭部ベースシートを着脱可能に取り付ける取付部とを備える。前記クッション部は、さらに、前記座板部材上に配置される前記頭部ベースシートとは別体の座部ベースシートとを備える。
【0008】
上記構成によれば、頭部ベースシートがベースシートに対して着脱可能であることから、頭部ベースシートが口鼻などからの唾液、鼻水などで汚れたときにも、頭部ベースシートをベースシートから取り外し洗浄することができる。
【0009】
上記ベビーカーにおいて、前記取付部は、第1取付部であって、前記ベースシートの下部に対して前記座部ベースシートを着脱可能に取り付ける第2取付部をさらに備える構成としてもよい。
【0010】
上記構成によれば、座部ベースシートがベースシートに対して着脱可能であることから、座部ベースシートが乳幼児の排泄物や食べかす、土埃などによって汚れたときにも、座部ベースシートをベースシートから取り外し洗浄することができる。
【0011】
上記ベビーカーにおいて、前記取付部は、線ファスナであり、前記線ファスナは、前記ベースシートが備える一方の第1務歯と、前記頭部ベースシートが備え、前記第1務歯と噛合する第2務歯と、前記第1務歯および前記第2務歯に沿って移動し前記第1務歯および前記第2務歯を開閉するスライダとを備えている構成としてもよい。さらに、前記ベースシートは、前記ベースシートの外周部から内側に向かって延在する可撓性部を備え、前記第1務歯は、前記可撓性部の先端部に設けられている構成としてもよい。前記スライダは、前記第1務歯および前記第2務歯を開閉する胴体部と、前記胴体部を操作する引手とを備える。前記胴体部は、前記引手が乗車部とは反対の外側を向くような構成としてもよい。
【0012】
上記構成によれば、ベースシートと頭部ベースシートとは、第1取付部としての線ファスナ47により着脱可能である。したがって、ベースシートと頭部ベースシートとの着脱を簡単な構成によって実現することができる。また、着脱作業を簡単なものとすることができる。ベースシートにおいて、第1務歯が可撓性部の先端部に設けられているので、ベースシートから遊離し、線ファスナの操作を容易に行うことができる。また、引手や突出形状が乗車している乳幼児に接することを防ぐことができる。
【0013】
上記ベビーカーにおいて、前記頭部ベースシートは、前記スライダの閉端部および開端部のうちの少なくとも一方の端部に対応する位置に、前記端部を覆うカバー部を備えている構成としてもよい。
上記構成によれば、線ファスナの閉端部および開端部がカバー部で被覆されることにより、直接、閉端部および開端部が乗車している乳幼児に触れることを防ぐことができる。
【0014】
上記ベビーカーにおいて、前記取付部は、前記線ファスナが閉状態にある場合において、前記スライダが開方向に移動することを阻止する開止め部材を備えている構成としてもよい。
上記構成によれば、開止め部材によって、スライダが開方向への移動してしまうことを防ぐことができる。
【0015】
上記ベビーカーにおいて、前記ベビーカーは、さらに、前記背当て部に対して回動可能に支持されるヘッドレストと、前記ヘッドレストの両端部において、先端部が揺動可能に支持されるとともに、基端部が前記ベビーカーのフレームに軸部で回動可能に支持される一対のサイドプレートとを備える構成としてもよい。この場合、前記頭部ベースシートは、前記ヘッドレストおよび前記一対のサイドプレートを被覆する袋状部を備えている構成としてもよい。
【0016】
上記構成によれば、頭部ベースシートは、袋状部によってヘッドレストおよびサイドプレートを被覆する。したがって、頭部ベースシートは、乗車している乳幼児の頭部や上半身に対する衝撃を緩和するとともに、ヘッドレストおよびサイドプレートが直接乳幼児に触れることを防ぐことができる。
【0017】
上記ベビーカーにおいて、前記ベビーカーは、さらに、前記背当て部に対して回動可能に支持されるヘッドレストと、前記ヘッドレストの両端部において、先端部が揺動可能に支持されるとともに、基端部が前記ベビーカーのフレームに軸部で回動可能に支持される一対のサイドプレートとを備える構成としてもよい。この場合、前記座部ベースシートは、前記座部ベースシートを前記軸部に係合するように取り付ける第3取付部を備えている構成としてもよい。
【0018】
上記構成によれば、座部ベースシート51は、第2取付部だけでなく第3取付部によっても座板部材上に保持することができる。
【0019】
以上のような課題を解決するベビーカーは、座板部材と、前記座板部材の前後方向における後方に配置される背当て部と、前記座板部材および前記背当て部に配置されるクッション部とを備える。前記背当て部は、背当てフレームと、前記背当てフレームに対して張架されるベースシートとを備える。前記クッション部は、前記ベースシートに対して、前記ベースシートの上下方向に延びる左右の縦側部、および、前記ベースシートの上部に配置される頭部ベースシートと、前記座板部材上に配置される前記頭部ベースシートとは別体の座部ベースシートと、前記ベースシートの下部に対して前記座部ベースシートを着脱可能に取り付ける取付部とを備える。
【0020】
上記構成によれば、座部ベースシートがベースシートに対して着脱可能であることから、座部ベースシートが乳幼児の排泄物や食べかす、土埃などによって汚れたときにも、座部ベースシートをベースシートから取り外し洗浄することができる。
上記ベビーカーにおいて、さらに、前記ベースシート及び前記座部ベースシート上に着脱可能に取り付けられる表面シートを備えるようにしてもよい。上記構成によれば、ベースシートおよび座部ベースシートが汚損することを防止するとともに、座り心地を向上させる。表面シートは、汚れたとき、ベースシートおよび座部ベースシートから取り外して洗浄することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、クッション部を部分的に取り外し可能としたベビーカーを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】クッション部および幌をフレームに取り付けたベビーカーの展開状態を示す斜視図。
【
図2】クッション部および幌を取り外したベビーカーの展開状態を示す斜視図。
【
図3】(a)は、ベースシートと座板部材、ヘッドレストおよびサイドプレートとの関係を示す正面図、(b)は、ベースシートの外周部の断面図、(c)は、頭部ベースシートの正面図、(d)が、座部ベースシートの正面図。
【
図6】(a)および(b)は、ベースシート、頭部ベースシートおよび座部ベースシートと表面シートとの関係を示す要部正面図。
【
図7】ハンドルの背面押し位置と対面押し位置とを示す側面図。
【
図8】ヘッドレストから頭部ベースシートを取り外す状態を示す要部背面図。
【
図9】サイドプレートから頭部ベースシートを取り外す状態を示す要部斜視図。
【
図10】(a)は、頭部ベースシートを取り外す状態を示す正面図、(b)は、線ファスナを開く操作を開始する状態を示す(a)の拡大図。
【
図11】線ファスナを開方向に移動する操作方向とベースシートから頭部ベースシートが取り外された状態を示す要部斜視図。
【
図12】(a)は、ベースシートから頭部ベースシートが取り外されている状態を示す要部斜視図、(b)は、線ファスナを閉方向に移動する際のスライダの初期位置を示す(a)の拡大図。
【
図13】(a)は、頭部ベースシートを背当て部に配置した状態を示す正面図、(b)は、線ファスナの蝶棒をスライダおよび箱に組み合わせる状態を示す(a)の拡大図。
【
図14】スライダの閉方向への移動を示す要部斜視図。
【
図15】(a)は、頭部ベースシートが線ファスナによってベースシートに取り付けられた状態を示す正面図、(b)は、線ファスナを閉じた状態を示す(a)の拡大図。
【
図16】頭部ベースシートをサイドプレートに取り付ける状態を示す要部斜視図。
【
図17】頭部ベースシートとサイドプレートと座部ベースシートの側面シート部との位置関係を示す要部正面図。
【
図18】頭部ベースシートをヘッドレストに取り付ける状態を示す要部背面図。
【
図19】(a)は、座部ベースシートとサイドプレートの軸部との関係を示す要部斜視図、(b)は、軸部の周囲に位置する取付片が止め具により連結された状態を示す拡大図、(c)は、止め具が外された状態を示す拡大図。
【
図20】座部ベースシートを座板部材から取り外す状態を示す要部斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、
図1~
図20を参照して、本発明を適用したベビーカーを説明する。
図1は、乳幼児などを乗せて使用するための一人乗りの折り畳み式のベビーカー1であり、乳幼児などを寝かせた姿勢や座らせた姿勢で使用する。また、
図1は、ベースシートなどのクッション部および幌をフレームに取り付けた状態を示している。
図2は、クッションおよび幌をフレームから取り外した状態を示している。
図1および
図2に示すベビーカー1の状態は、ハンドルがベビーカー後方に位置し、後方からベビーカー1を操作する背面押しの状態を示している。以下の説明では、背面押しの状態を基準にして、進行方向を「前方」と定義し、進行方向に対して反対方向を後方(背面)と定義し、さらに進行方向に対して左右方向を左右(幅)方向と定義し、進行方向に対して上下方向を上下と定義する。
【0024】
図1および
図2に示すように、このベビーカー1は、一対の前脚フレーム11と、一対の後脚フレーム12と、乳幼児などを寝かせた姿勢や座らせた姿勢で乗車させる座部としての座板部材13とを備えている。各前脚フレーム11は、直線的な形状を有しており、その下端部には、キャスター付きの前輪11aが配置されている。各後脚フレーム12は、L字形状を有しており、その下端部には、キャスター付きの後輪12aが配置されている。一対の前脚フレーム11は、左右方向に横断する前ステー14によって連結されており、一対の後脚フレーム12も、左右方向に横断する後ステー15によって連結されている。前ステー14には、着座している乳幼児等が足を掛けるステップ16が配置されている。
【0025】
一対の前脚フレーム11において、上端部は、アームレスト17が回動可能に支持されている。一対の後脚フレーム12もまた、上端部は、アームレスト17が回動可能に支持されている。座板部材13は、一対の前脚フレーム11と一対の後脚フレーム12との間であって、前輪11aおよび後輪12aとアームレスト17との間の中間位置に配置されている。具体的に、前脚フレーム11と後脚フレーム12の間には、前後方向に、側部フレーム18が配置されている。座板部材13は、左右の両側縁部が側部フレーム18に対して弾性変位可能に支持されている。
【0026】
各側部フレーム18は、L字状形状を有しており、前方端部は、前脚フレーム11の長手方向の中程に回動可能に支持されている。側部フレーム18と後脚フレーム12との間には、連結フレーム19および連結部材21が介在される。連結フレーム19は、直線状のパイプである。側部フレーム18の後方端部は、前方端部より上方に位置し、連結フレーム19の下端部が回動可能に支持されている。連結部材21は、L字形状の部材であって、一端部が後脚フレーム12の長手方向の中程の折曲部に回動可能に支持されている。連結部材21の他端部は、連結フレーム19の下端部に回動可能に支持されている。
【0027】
アームレスト17の先端部には、フロントガード22が着脱可能に取り付けられる。
各連結部材21の更に外側には、ベビーカー1を押して操作するハンドル23が配置されている。ハンドル23は、全体がU字形状を有しており、連結部材21の外側に位置する。ハンドル23の中で横に延びる横フレーム23bは、中央部に、操作者によって操作される開閉ロックレバー24が配置されている。
【0028】
ベビーカー1の幅方向において、外側から内側に向かって、ハンドル23の縦に延びる縦フレーム23a、連結部材21、連結フレーム19、側部フレーム18が配置されている。ハンドル23の縦フレーム23a、連結部材21の他端部、連結フレーム19の下端部、および、側部フレーム18の後方端部は、同じ回動軸25によって回動可能に支持されている。ハンドル23は、ベビーカー1の後方である背面押し位置とベビーカー1の前方である対面押し位置の2つの位置の間を、回動軸25を中心に回動する(矢印D1方向)。また、回動軸25を中心にして、相対的に、ハンドル23の縦に延びる縦フレーム23a、連結部材21、連結フレーム19、側部フレーム18が回動することで、ベビーカー1は、展開状態と折畳状態に遷移することができる。
【0029】
座板部材13の後端部には、背当てフレーム27が回動可能に取り付けられる。背当てフレーム27は、U字形状を有しており、各端部が座板部材13の後端部に回動可能に支持される。背当てフレーム27の横フレーム部27aには、矩形形状を有し、乳幼児などの頭部を保護するヘッドレスト28がベビーカー1の前後方向に回動可能に取り付けられている。また、連結フレーム19の内側面には、アームレスト17の回動支点の下側に、座板部材13に着座した乳幼児などの側部を保護する一対のサイドプレート29が軸部29aによって回動可能に連結されている。一対のサイドプレート29のヘッドレスト28側の先端部は、ヘッドレスト28の幅方向の両端部に揺動可能に支持される。
【0030】
背当てフレーム27を寝かす方向に回動したとき、ヘッドレスト28は、背当てフレーム27に対して立ち上がるように回動し、リクライニングを寝かせた状態となる乳幼児などの頭部を保護可能な状態となる。一方、背当てフレーム27が起き上がる方向に回動されリクライニングが起き上がった状態のとき、ヘッドレスト28は、背当てフレーム27とほぼ面一の状態となり、背当てフレーム27の上部を開放する。
【0031】
ハンドル23の縦フレーム23aには、ハンドル23を背面押し位置および対面押し位置にロックする切替操作部材32を備えている。ベビーカー1において、背当てフレーム27には、背当て部が構成されており、座板部材13には、座部が構成されており、座部と背当て部とに亘る位置は、乳幼児が乗車する乗車部となる。このため、座部と背当て部とに亘る位置には、乗車している乳幼児に対する振動を緩和するクッション部が設けられている。
【0032】
図3(a)、(c)および(d)は、クッション部の構成を示す図である。
図3(a)に示すように、背当てフレーム27には、ベースシート41が張架されている。そして、背当てフレーム27にベースシート41が張架されることで背当て部が構成されている。ベースシート41は、座板部材13の上側であって背当てフレーム27に囲まれた領域に位置する主シート部41aと、主シート部41aの縁に設けられる縁部材41bとを備えている。主シート部41aは、伸縮性を有するシートが用いられており、一例として伸縮性及び通気性に優れたメッシュシートが用いられている。主シート部41aは、肩ベルト43を引き出すための第1肩ベルト調整スリット44を備えている。第1肩ベルト調整スリット44は、複数段、ここでは3段備えている。第1肩ベルト調整スリット44は、乳幼児の成長に合わせて肩ベルト43の引き出し位置を、複数段の中から1つを選択することで調整できる。
【0033】
図3(b)に示すように、縁部材41bは、主シート部41aを背当てフレーム27に取り付けるための帯状部材であって、2つ折りにされ、2つの片の間に、背当てフレーム27を配置すると共に、主シート部41aの縁部が挿入され、2つの片の間に主シート部41aの縁部が縫い付け部41cにおいて縫い付けられている。縁部材41bのうちで乳幼児が乗車する側の面に位置する部分は、主シート部41aに対して遊離した可撓性部42である。可撓性部42は、2つの片の間に主シート部41aの縁部を縫い付けた縫い目から先の部分であり、背当て部の上縁部および上下に延びる一対の側縁部で構成される外周部から内側に延在する。可撓性部42は、座板部材13側を開口端とした逆U字形状を有しており、先端部には、頭部ベースシート46が着脱可能に取り付けられる。
【0034】
図3(c)に示すように、頭部ベースシート46は、下側を開口端とした逆U字形状を有しており、そのU字形状の内側の先端部は、可撓性部42の先端部に着脱可能に取り付けられる。頭部ベースシート46は、ベースシート41の上下方向に延びる左右の縦側部、および、ベースシート41の上部に配置され、乗車している乳幼児の頭部から上半身を囲むようにしている。頭部ベースシート46は、天然繊維や合成繊維などの繊維が絡み合った不織布などのクッション材が充填されており、シート状のベースシート41に対して膨らみ、嵩のある部分となっている。頭部ベースシート46は、乳幼児の頭部から上半身を保護する。また、頭部ベースシート46は、ヘッドレスト28およびサイドプレート29を被覆し、乳幼児とヘッドレスト28およびサイドプレート29が直接触れないようにする。
【0035】
図3(d)に示すように、座板部材13上には、座部ベースシート51が配置される。座部ベースシート51は、座板部材13上に位置し、乳幼児の着座部分のクッションとなる。また、座部ベースシート51は、アームレスト17の内側に延在し、寝かせた姿勢や座らせた姿勢の乳幼児とアームレスト17や前脚フレーム11や後脚フレーム12などが直接触れないようにする。座部ベースシート51もまた、クッション材が充填されているが、頭部ベースシート46ほどにクッション材が充填されておらず薄いものとなっている。
【0036】
図4に示すように、頭部ベースシート46は、左右に上下に延びる一対の縦延在部46aと、一対の縦延在部46aの一端部を繋ぐ横延在部46bとを備え、全体が逆U字形状を有している。クッション材は、一対の縦延在部46aおよび横延在部46bに充填されている。頭部ベースシート46のU字形状の内側と可撓性部42の先端部とは、第1取付部としての線ファスナ47によって着脱可能に取り付けられる。
【0037】
図4に示すように、線ファスナ47は、第1務歯47aと、第2務歯47bと、スライダ47cとを備えている。第1務歯47aは、可撓性部42の先端部に設けられており、スライダ47cが取り付けられている。第1務歯47aと噛合する第2務歯47bは、頭部ベースシート46のU字形状の内側の端部に設けられている。スライダ47cは、胴体部47dを備えている。また、胴体部47dは、引手47eを備えている。胴体部47dは、引手47eが設けられる面が突出形状47fを有しており、反対面は、ほぼ平坦な面である。線ファスナ47は、スライダ47cのほぼ平坦な面が乳幼児が乗車する側を向くように設けられる。換言すると、スライダ47cの突出形状47fを有する面は、ベビーカー1の外側を向く。
【0038】
線ファスナ47は、図中右側端部が下止め部分となる開端部である。このため、頭部ベースシート46が備えた第2務歯47bの下止め部分は、蝶棒を備え、ベースシート41が備えた第1務歯47aの下止め部分は、蝶棒が組み合わされる箱を備えている。また、図中左側端部が上止め部分となる閉端部であり、第1務歯47aおよび第2務歯47bは、当該部分に上止めを備えている。
【0039】
頭部ベースシート46において、スライダ47cの移動方向における第2務歯47bの各端部には、開端部と閉端部とを覆うカバー部48を備え、開端部および閉端部が直接乳幼児に触れないようにしている。特に、スライダ47cは、ベースシート41に頭部ベースシート46が取り付けられた状態において、閉端部に位置し、閉端部のカバー部48は、スライダ47cを覆うことになる。カバー部48は、頭部ベースシート46に一体的に縫い合わされた袋状形状を有しており、開端部および閉端部のそれぞれを覆うに足る大きさを有している。
【0040】
また、一対の縦延在部46aおよび横延在部46bには、乳幼児と接する面とは反対側の外面、すなわちヘッドレスト28およびサイドプレート29側の面に、袋状部49を備えている。袋状部49は、開口端を下側に備えている。袋状部49は、縦延在部46aの部分ではサイドプレート29が挿入され、横延在部46bの部分ではヘッドレスト28が挿入される。頭部ベースシート46は、ベースシート41に対して線ファスナ47によって取り付けられるとともに、一対の縦延在部46aおよび横延在部46bによっても支持されることになる。頭部ベースシート46は、ヘッドレスト28およびサイドプレート29に取り付けられたとき、クッション部分が背当て部における乗車部側に位置する。
【0041】
図5に示すように、座部ベースシート51は、座板部材13上に配置される座面シート部51aと、座面シート部51aの左右に座面シート部51aに対して折曲可能な一対の側面シート部51bとを備えている。座面シート部51aと側面シート部51bとの間は、前後方向に延びる折曲部51cが構成されている。折曲部51cは、一例として、座面シート部51aと側面シート部51bとを区画する縫い目で構成されている。座面シート部51aおよび一対の側面シート部51bにも、内部に、繊維が絡み合った不織布などのクッション材が充填されている。しかし、座面シート部51aは、頭部ベースシート46ほどに膨らんでおらず、平板形状を有している。座面シート部51aは、季節によって、通気性を高める、保温性を高めるなどの機能性素材を用い、座り心地を向上させる構成とすることもできる。また、クッション材を増やすなどしてクッション性を高め座り心地を向上させる構成とすることもできる。
【0042】
また、側面シート部51bは、座面シート部51aよりは厚さを有し、弾力を有するように構成されている。座面シート部51aは、座板部材13に取り付けられている股ベルト52を引き出すための第1股ベルトスリット52aを備えている。座面シート部51aは、背当て部のベースシート41の下部に近い側の端部に接続端部53を備えている。接続端部53は、座板部材13と接する裏面に、第2取付部としての面ファスナ54aを備えている。ベースシート41の下端部の表面は、面ファスナ54aと対をなす面ファスナ54bを備えている。面ファスナ54a,54bとが接合されることによって、ベースシート41の下端部と座部ベースシート51とは一連となる。
【0043】
一対の側面シート部51bは、背当て部側の端部に、第3取付部としての取付部55を備えている。取付部55は、切り込み56を介して2つの取付片55a,55bを備えている。また、取付部55は、切り込み56に連続して軸部29aが位置する孔部56aを備えている。2つの取付片55a,55bは、止め具56bを備えている。止め具56bは、一例として、ホックボタンである。止め具56bは、一方の取付片55aに雄部材が設けられ、他方の取付片55bに雌部材が設けられる。取付片55a,55bは、連結フレーム19とサイドプレート29との間において軸部29aの回りに挿入され、止め具56bで連結される。これにより、一対の側面シート部51bは、軸部29a(
図2参照)に係合される。
【0044】
座部ベースシート51は、乳幼児が乗車したとき、前方にずれる方向に力が加わるが、座面シート部51aが面ファスナ54a,54bでベースシート41の下端部に取り付けられ、一対の側面シート部51bが取付部55で軸部29aに係合されることによって、前方への移動を抑制できる。
【0045】
図6(a)および
図6(b)に示すように、頭部ベースシート46は、背当てフレーム27によって構成される背当て部を構成するベースシート41の外周部に配置される。また、座部ベースシート51は、座板部材13によって構成される座部上に配置される。そして、ベースシート41に対して頭部ベースシート46および座部ベースシート51を取り付けた後、さらに、表面シート61が取り付けられる。表面シート61は、ベビーカー1の前後方向を長手方向とした矩形形状のシートであって、ベースシート41および座部ベースシート51上に配置され、ベースシート41および座部ベースシート51が汚損することを防止するとともに、座り心地を向上させる。表面シート61は、汚れたとき、ベースシート41および座部ベースシート51から取り外して洗浄することができる。
【0046】
表面シート61は、ベースシート41の第1肩ベルト調整スリット44に対応した位置に第2肩ベルト調整スリット62を備えている。また、座部ベースシート51の第1股ベルトスリット52aに対応した位置に第2股ベルトスリット63を備えている。表面シート61は、ベースシート41と座部ベースシート51との境界位置に折曲部64が構成されている。
【0047】
表面シート61は、上端部に一対の第1ベルト66を備えている。第1ベルト66は、ベースシート41の上端部に形成された挿通孔に挿通され、背当てフレーム27に固定される。また、表面シート61は、左右に延びる第2ベルト67を備えている。第2ベルト67は、先端部に止め具67aが設けられており、背当て部の背後に回されて、止め具67aで止められる。
【0048】
表面シート61は、リバーシブルシートであり、第1面と第2面を備え、第1面および第2面の何れの面を上側の面とすることができる。第1面と第2面は、一例として、異なる色とされており、また、異なるデザインが施されている。また、第1面と第2面は、一例として、異なる素材としてもよい。例えば、第1面をメッシュ素材や吸水速乾、接触冷感などの機能を有する夏季に適した機能性素材とし、第2面を起毛素材やニット素材や保温、発熱、遠赤外線放射、蓄熱などの機能を有する冬季に適した機能性素材としてもよい。表面シート61の内部にも、クッション材が充填されていてもよい。
【0049】
次に、ベビーカー1の作用として、頭部ベースシート46の取り外し方法および取付方法、ならびに、座部ベースシート51の取り外し方法および取付方法について説明する。
先ず、頭部ベースシート46の取り外し方法について説明する。
【0050】
図7に示すように、先ず、切替操作部材32を操作してハンドル23のロックを解除し、ハンドル23を背面押し位置から対面押し位置の方向に回動する(矢印D1方向)。なお、図中ハンドル23が右側に位置しているときが背面押し位置であり(点線位置)、ハンドル23が左側に位置しているときが対面押し位置である(実線位置)。また、背当て部を構成する背当てフレーム27は、最も起き上がる方向に回動され(矢印D2方向)、頭部ベースシート46を相対的に高い位置に位置させる(図中実線位置)。これにより、頭部ベースシート46からハンドル23が離れ、頭部ベースシート46の位置が高くなり、頭部ベースシート46の取り外し作業を行い易い状態となる。具体的には、背当てフレーム27は、最も起き上がる方向に回動されると、ヘッドレスト28は、背当てフレーム27とほぼ面一の状態となり、背当てフレーム27の上部を開放する。上部が開放されたことによって、線ファスナ47の開放操作や横延在部46bの袋状部49をヘッドレスト28から外す操作がし易い状態となる。
【0051】
次いで、
図8に示すように、背当て部の背面に配置されている面ファスナ71から横延在部46bの袋状部49(袋状部49にも面ファスナ71と対となる面ファスナが設けられていてもよい。)を外し、袋状部49をヘッドレスト28からめくり上げる(矢印D3方向)。なお、面ファスナ71は、ベースシート41の縁部材41bの裏面側に設けられている。
図9に示すように、次いで、縦延在部46aの袋状部49をサイドプレート29からめくり上げる(矢印D4方向)。袋状部49がヘッドレスト28からサイドプレート29にかけて全てめくられると、頭部ベースシート46は、背当て部の内側に倒され背当て部の上に置かれる。これにより、可撓性部42や線ファスナ47のスライダ47cなどが露出し、頭部ベースシート46の取り外し作業を行い易い状態とすることができる。
【0052】
図10(a)および
図10(b)に示すように、線ファスナ47は、閉端部にスライダ47cが位置(図中左側の線ファスナ47の端部)し、第1務歯47aと第2務歯47bとが噛合した閉状態にある。そこで、先ず、サイドプレート29から外された縦延在部46aは、背当て部の乗車部側に倒される(矢印D5方向)。次いで、線ファスナ47が露出するように、カバー部48を外し、スライダ47cや引手47eなどを露出させる(矢印D6方向)。引手47eは、さらに、操作性向上のため、布製のタグなどを備えていてもよい。
【0053】
可撓性部42と頭部ベースシート46には、互いに近接する位置に、開止め部材としての雄と雌の面ファスナ72a,72bが配置されている。面ファスナ72a,72bが接合された状態では、閉端部に位置するスライダ47cが押さえ付けられ、スライダ47cの開方向への移動が阻止されている。面ファスナ72a,72bを互いに離間する方向に引っ張り(矢印D7方向)剥がすことで、スライダ47cは開方向への移動が可能となる。そして、引手47eを持ってスライダ47cを開方向(矢印D8方向)に移動させる。
【0054】
図10および
図11に示すように、スライダ47cを閉端部から開端部(図中右下側の線ファスナ47の端部)に移動させ、第2務歯47b側の蝶棒を第1務歯47a側の箱から外す。これにより、ベースシート41に対して頭部ベースシート46を外すことができる(矢印D9方向)。そして、頭部ベースシート46だけを、洗濯機などで洗浄することができる。
【0055】
次に、頭部ベースシート46をベースシート41に取り付ける取付方法について説明する。
図12(a)および
図12(b)に示すように、スライダ47cを開端部に移動させる(矢印D8方向)。
図13(a)および
図13(b)に示すように、頭部ベースシート46における第2務歯47b側の蝶棒47gを、第1務歯47a側のスライダ47cおよび箱47hに組み合わせる(矢印D10方向)。そして、線ファスナ47の開端部は、頭部ベースシート46のカバー部48により被覆する(矢印D11方向)。
【0056】
図14に示すように、この後、スライダ47cは、閉端部の方向(矢印D12方向)に向けて最後まで移動される。これにより、頭部ベースシート46は、ベースシート41の可撓性部42に取り付けられる。
図15(a)および
図15(b)に示すように、スライダ47cが閉端部まで移動されると、可撓性部42と頭部ベースシート46における開止め部材としての面ファスナ72a,72bを互いに近接する方向に変位させて(矢印D13方向)面ファスナ72a,72bを接合する。これにより、スライダ47cは、面ファスナ72a,72bによって押さえ付けられ、開方向(矢印D8方向)への移動が阻止される。この後、線ファスナ47の閉端部およびスライダ47cは、頭部ベースシート46のカバー部48により被覆される(矢印D14方向)。
【0057】
図16に示すように、ベースシート41の可撓性部42に線ファスナ47で頭部ベースシート46が取り付けられると、頭部ベースシート46は、袋状部49がサイドプレート29に被せられる(矢印D15方向)。この際、
図17に示すように、座部ベースシート51の側面シート部51bに被らないようにする。背当て部の回動の妨げにならないようにするためである。次いで、
図18に示すように、頭部ベースシート46は、ヘッドレスト28に被せられる(矢印D16方向)。そして、背当て部の裏面の面ファスナ71に対して、頭部ベースシート46を固定する。これにより、頭部ベースシート46は、背当て部にのみに対して取り付けられることになり、頭部ベースシート46が取り付けられた状態でも、背当て部の背当てフレーム27は、座板部材13に対して円滑に回動する。
【0058】
次に、座部ベースシート51の取り外し方法について説明する。
座部ベースシート51の取り外しは、頭部ベースシート46が取り外された状態で行われる。そして、座部ベースシート51を取り外すときには、ハンドル23は、矢印D17方向に回動され、対面押し位置(実線位置)から背面押し位置(点線位置)に移動される(
図7参照)。また、背当てフレーム27は、最も寝かす矢印D18方向に回動される。これにより、座部ベースシート51上には、ハンドル23が存在しなくなり、また、座部と背当て部が大きく開くことによって、座部ベースシート51の取り外し作業を行い易い状態とされる。
【0059】
図19(a)に示すように、取付片55a,55bは、連結フレーム19とサイドプレート29との間であって軸部29aの回りで止め具56bにより連結されている。サイドプレート29の軸部29aの周囲は、頭部ベースシート46が外されていることで露出している。
図19(b)に示すように、取付片55a,55bは、止め具56bを外す作業を行い易い場所に移動させ、
図19(c)に示すように、取付片55a,55bの止め具56bが外される(矢印D19方向)。これにより、取付片55a,55bは、連結フレーム19とサイドプレート29との間から引き出される。
【0060】
図20に示すように、次いで、座面シート部51aは、その裏面の面ファスナ54aがベースシート41の下端部表面に配置された面ファスナ54bから剥がされる。さらに、第1股ベルトスリット52aから股ベルト52が外される。これにより、座部ベースシート51だけを、座板部材13から取り外すことができ(矢印D20方向)、洗濯機などで洗浄することができる。
【0061】
次に、座部ベースシート51の取付方法について説明する。座板部材13上に、座部ベースシート51を載置し、股ベルト52を第1股ベルトスリット52aから引き出す。また、座面シート部51aは、裏面の面ファスナ54aがベースシート41の面ファスナ54bに接合される。さらに、取付片55a,55bが連結フレーム19とサイドプレート29との間であって軸部29aの回りにおいて、止め具56bで連結される。
【0062】
以上のようなベビーカー1によれば、以下に列挙する効果が得られる。
(1)ベビーカー1は、頭部ベースシート46がベースシート41に対して着脱可能であることから、頭部ベースシート46が口鼻などからの唾液、鼻水などで汚れたときにも、頭部ベースシート46をベースシート41から取り外し洗浄することができる。
【0063】
(2)ベビーカー1は、座部ベースシート51がベースシート41に対して着脱可能であることから、座部ベースシート51が乳幼児の排泄物や食べかす、土埃などによって汚れたときにも、座部ベースシート51をベースシート41から取り外し洗浄することができる。
【0064】
(3)ベースシート41と頭部ベースシート46とは、第1取付部としての線ファスナ47により着脱可能である。したがって、ベースシート41と頭部ベースシート46との着脱を簡単な構成によって実現することができる。また、着脱作業を簡単なものとすることができる。ベースシート41において、第1務歯47aが可撓性部42の先端部に設けられているので、線ファスナ47の位置が主シート部41aや背当て部の縦側部から離れることで、線ファスナ47の操作を容易に行うことができる。
【0065】
(4)線ファスナ47において、スライダ47cの胴体部47dは、引手47eが設けられる表面の突出形状47fが座部とは反対の外側を向くように設けられている。したがって、引手47eや突出形状47fが乗車している乳幼児に接することを防ぐことができる。換言すると、乗車している乳幼児に触れる面は、胴体部47dのほぼ平坦な面とし、乳幼児に対して低刺激とすることができる。
【0066】
(5)頭部ベースシート46は、線ファスナ47の閉端部および開端部を被覆するカバー部48を備えることで、直接閉端部および開端部が乗車している乳幼児に触れることを防ぐことができる。
【0067】
(6)線ファスナ47が閉状態にある場合において、スライダ47cが開方向に移動することを阻止する開止め部材としての面ファスナ72a,72bを備えている。したがって、スライダ47cが開方向へ移動してしまうことを防ぐことができる。
【0068】
(7)頭部ベースシート46は、袋状部49によってヘッドレスト28およびサイドプレート29を被覆する。したがって、頭部ベースシート46は、乗車している乳幼児の頭部や上半身に対する衝撃を緩和するとともに、ヘッドレスト28およびサイドプレート29が直接乳幼児に触れることを防ぐことができる。また、頭部ベースシート46は、ベースシート41に対して線ファスナ47によって取り付けられるほか、ヘッドレスト28およびサイドプレート29でも支持することができる。
【0069】
(8)座部ベースシート51は、ベースシート41に対して、第2取付部としての面ファスナ54a,54bによって着脱可能に取り付けることができる。したがって、ベースシート41と座部ベースシート51との着脱を簡単な構成によって実現することができる。また、着脱作業を簡単なものとすることができる。
【0070】
(9)座部ベースシート51は、座部ベースシート51を第3取付部としての取付片55a,55bによって軸部29aに係合するように取り付けることができる。したがって、座部ベースシート51は、面ファスナ54a,54bだけでなく取付片55a,55bによって座板部材13上に保持することができる。
【0071】
なお、上記ベビーカー1は、以下のように変更してもよい。
・座部ベースシート51は、第3取付部としての取付片55a,55bおよび止め具56bを省略してもよい。また、止め具56bは、面ファスナでもよいし、ホックボタンやや面ファスナ以外の手段でもよい。例えば、一対の側面シート部51bから延出する紐部材を軸部29aに結び付けるようにしてもよい。
【0072】
・第2取付部は、面ファスナ54a,54b以外の構成であってもよい。一例として、ホックボタンであってもよい。
・頭部ベースシート46は、袋状部49を備えていなくてもよい。一例として、ヘッドレスト28からサイドプレート29に対して、頭部ベースシート46は、面ファスナやフックボタンによって取り付けられるようにしてもよい。
【0073】
・開止め部材としては、面ファスナ72a,72b以外の手段でもよい。一例として、スライダ47cがロックタイプである場合、開止め部材をロック部材とすることができる。ロックタイプの場合、引手に付設したロック部材としてのピンを務歯の隙間に嵌め込みスライダをロックする構成とすることができる。また、開止め部材を省略する構成としてもよい。
・カバー部48は、閉端部および開端部の何れか一方に配置する構成としてもよい。また、カバー部48を省略してもよい。一例として、閉端部や開端部が他の部分によって隠れる場合、すなわち乗車部の乳幼児に対して接触しにくい位置の場合、カバー部48は設けなくてもよい。
【0074】
・スライダ47cにおいて、胴体部47dは、引手47eが設けられる表面の突出形状47fが乗車部側を向いていてもよい。このような場合であっても、一例として、スライダ47cは、カバー部48で覆われることで、スライダ47cが乗車している乳幼児に触れることを防ぐことができる。
【0075】
・ベースシート41と頭部ベースシート46とは、線ファスナ47以外の手段で着脱可能な構成としてもよい。一例として、フックボタンや面ファスナで着脱可能としてもよい。
【0076】
・ベースシート41は、可撓性部42を備えていなくてもよい。一例として、ベースシート41の外周縁部に務歯が固定されるテープ部を設けるだけでもよい。
・座部ベースシート51を省略し、ベースシート41に対して頭部ベースシート46を着脱可能に設ける構成としてもよい。
【0077】
・また、頭部ベースシート46を省略し、ベースシート41に対して座部ベースシート51を着脱可能に設ける構成としてもよい。この場合、頭部ベースシートは、背当て部を構成するベースシート41や背当てフレーム27に対して取り外し不能な構成であってもよい。
・ベースシート41に対して頭部ベースシート46および座部ベースシート51が設けられている場合において、頭部ベースシート46および座部ベースシート51のうちの何れか一方がベースシート41に対して取り外し可能な構成としてもよい。
・表面シート61は、省略することもできる。
【0078】
・前記ベビーカー1のフレーム構造は、上述の例に限定されるものではない。すなわち、ベビーカーとしては、座板部材と背当て部を備えたベビーカーであれば、どのようなフレーム構造のベビーカーであってもよいし、折り畳み不能のフレーム構造を有したベビーカーであってもよい。また、ハンドルが背面押し位置および対面押し位置の切り替えが不能なフレーム構造を有したベビーカーであってもよい。
【符号の説明】
【0079】
1…ベビーカー、11…前脚フレーム、11a…前輪、12…後脚フレーム、12a…後輪、13…座板部材、14…前ステー、15…後ステー、16…ステップ、17…アームレスト、18…側部フレーム、19…連結フレーム、21…連結部材、22…フロントガード、23…ハンドル、23a…縦フレーム、23b…横フレーム、24…開閉ロックレバー、25…回動軸、27…背当てフレーム、27a…横フレーム部、28…ヘッドレスト、29…サイドプレート、29a…軸部、32…切替操作部材、41…ベースシート、41a…主シート部、41b…縁部材、41c…縫い付け部、42…可撓性部、43…肩ベルト、44…第1肩ベルト調整スリット、46…頭部ベースシート、46a…縦延在部、46b…横延在部、47…線ファスナ、47a…第1務歯、47b…第2務歯、47c…スライダ、47d…胴体部、47e…引手、47f…突出形状、47g…蝶棒、47h…箱、48…カバー部、49…袋状部、51…座部ベースシート、51a…座面シート部、51b…側面シート部、51c…折曲部、52…股ベルト、52a…第1股ベルトスリット、53…接続端部、54a…面ファスナ、54b…面ファスナ、55…取付部、55a…取付片、55b…取付片、56…切り込み、56a…孔部、56b…止め具、61…表面シート、62…第2肩ベルト調整スリット、63…第2股ベルトスリット、64…折曲部、66…第1ベルト、67…第2ベルト、67a…止め具、71…面ファスナ、72a…面ファスナ、72b…面ファスナ。