(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-14
(45)【発行日】2022-01-25
(54)【発明の名称】ごみ焼却装置
(51)【国際特許分類】
F23G 5/50 20060101AFI20220118BHJP
F23C 10/24 20060101ALI20220118BHJP
F23G 5/30 20060101ALI20220118BHJP
【FI】
F23G5/50 G
F23G5/50 E ZAB
F23C10/24
F23G5/30 C
(21)【出願番号】P 2017160794
(22)【出願日】2017-08-24
【審査請求日】2020-05-20
(73)【特許権者】
【識別番号】308024395
【氏名又は名称】荏原環境プラント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100146710
【氏名又は名称】鐘ヶ江 幸男
(74)【代理人】
【識別番号】100117411
【氏名又は名称】串田 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100186613
【氏名又は名称】渡邊 誠
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 浩
【審査官】長尾 裕貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-121024(JP,A)
【文献】特開平11-257630(JP,A)
【文献】特開平11-141842(JP,A)
【文献】特開2000-283443(JP,A)
【文献】特開2006-275443(JP,A)
【文献】特開2010-071542(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23G 5/50
F23C 10/24
F23G 5/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ごみを燃焼させることが可能な燃焼部と、
前記燃焼部に前記ごみを供給するためのごみ供給部と、
前記ごみ供給部から前記燃焼部に供給される複数の前記ごみを個別に認識可能である個別認識部とを有し、
前記個別認識部は、前記燃焼部に落下
している非滞留ごみ
と、前記燃焼部に落下し
ていない滞留ごみ
を個別に認識することを特徴とするごみ焼却装置。
【請求項2】
前記個別認識部は、距離測定部を有し、前記距離測定部は、前記ごみ供給部から前記燃焼部に供給される前記ごみと、前記距離測定部との間の距離を測定可能であり、
前記個別認識部は、処理部を有し、前記処理部は、前記ごみ供給部から前記燃焼部に供給される前記ごみのうち、前記距離が時間の経過に伴って変化する前記ごみを前記非滞留ごみと認識し、前記距離が時間の経過に伴って変化しない前記ごみを前記滞留ごみと認識することを特徴とする請求項1記載のごみ焼却装置。
【請求項3】
前記個別認識部によって認識された前記非滞留ごみの量を算出する落下量算出部を有することを特徴とする請求項1または2記載のごみ焼却装置。
【請求項4】
前記算出された前記非滞留ごみの量に基づいて、前記非滞留ごみの量が一定になるように、前記ごみ供給部から前記燃焼部に供給される前記ごみの量を制御する第1の供給制御部を有することを特徴とする請求項3記載のごみ焼却装置。
【請求項5】
前記ごみ供給部は、前記ごみ供給部から前記燃焼部に供給される前記ごみを前記燃焼部に送る給塵機と、前記給塵機に後続して配置されて、前記給塵機によって送られた前記ごみを掻き取って前記燃焼部に送る掻取機とを有し、
前記第1の供給制御部は、前記給塵機および/または前記掻取機を制御して、前記ごみ供給部から前記燃焼部に供給される前記ごみの量を制御することを特徴とする請求項4記載のごみ焼却装置。
【請求項6】
前記ごみ供給部から前記燃焼部に供給される前記ごみの滞留量を算出する滞留量算出部を有することを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載のごみ焼却装置。
【請求項7】
前記算出された前記滞留量に基づいて、前記滞留量が予め決められた所定量以上であるときに、前記ごみ供給部を制御して、前記滞留量を低減する第2の供給制御部を有することを特徴とする請求項6記載のごみ焼却装置。
【請求項8】
前記ごみ供給部は、前記ごみ供給部から前記燃焼部に供給される前記ごみを前記燃焼部に送る給塵機と、前記給塵機に後続して配置されて、前記給塵機によって送られた前記ごみを掻き取って前記燃焼部に送る掻取機とを有し、
前記第2の供給制御部は、前記給塵機および/または前記掻取機を制御して、前記ごみ供給部から前記燃焼部に供給される前記ごみの量を制御することを特徴とする請求項7記載のごみ焼却装置。
【請求項9】
前記算出された前記非滞留ごみの量に基づいて、前記非滞留ごみの燃焼に必要な二次空気の必要量を算定して、前記燃焼部に供給される前記二次空気の供給量を制御する空気制御部を有することを特徴とする、請求項3から8までのいずれか1項に記載のごみ焼却装置。
【請求項10】
前記ごみ焼却装置は、前記個別認識部によって認識された前記非滞留ごみの落下速度を算出する速度算出部と、算出された前記落下速度に基づいて、浮遊燃焼の発生の有無を判定する判定部と、浮遊燃焼が発生していると前記判定部が判定したときに、前記ごみ供給部にごみを供給するごみピット内にある当該ごみの攪拌を行う撹拌部とを有することを特徴とする請求項
1から9までのいずれか1項に記載のごみ焼却装置。
【請求項11】
前記ごみ焼却装置は、不燃物を識別する不燃物識別部と、識別された前記不燃物の量を算出する不燃物量算出部とを有することを特徴とする請求項1から10までのいずれか1項に記載のごみ焼却装置。
【請求項12】
前記ごみ焼却装置は流動床焼却炉であり、前記ごみ焼却装置は、前記算出された
前記不燃物
の量に基づいて、前記流動床焼却炉から排出すべき流動媒体の抜出量を算出する抜出量算出部を有することを特徴とする請求項11記載のごみ焼却装置。
【請求項13】
前記ごみ焼却装置は流動床焼却炉であることを特徴とする請求項1から11までのいずれか1項に記載のごみ焼却装置。
【請求項14】
前記ごみ焼却装置はストーカ炉であることを特徴とする請求項1から11までのいずれか1項に記載のごみ焼却装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ごみ焼却装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
都市ごみや産業廃棄物等の不均質で可燃性の廃棄物を焼却処理するごみ焼却装置においては、被焼却物であるごみを焼却すると共に、焼却時に排出される有害物質を最小限に抑制する必要がある。また、ボイラを設置している施設においては、効率の高い余熱利用を目指すことが求められる。この両者を満足させるには、余分な空気を焼却炉に投入することなく、低い酸素濃度で完全燃焼を実現する施設でなければならない。
【0003】
なぜならば、酸素濃度を高くするために、余分な低温の空気を焼却炉に投入すると、燃焼温度が低下して、不完全燃焼が生じて、有害物質が増加したり、効率が低下するからである。また、空気量を多くすると、送風機の電力コストが上昇し、かつ排ガス量が増える。空気量を多くすると、有用な金属が、より多く酸化されてしまうため、金属のリサイクルコストが上昇する可能性がある。逆に、空気量を減らしすぎて、酸素濃度が低すぎると、有害なCOの発生量が増えるという問題が生じる。
【0004】
都市ごみや産業廃棄物等の形状、大きさは千差万別で様々なものが絡まり合っている。従来から給塵システム(給塵機等のごみ供給部)はいろいろ知られているが、大別するとごみを破砕して給塵するものと、無破砕で給塵する二つのシステムがある。無破砕で給塵するシステムは、破砕で給塵するシステムと比べて、ごみの性状の影響を大きく受ける。すなわち、給塵されるごみの大きさがまちまちであり、給塵機(ごみ供給部)の排出特性はその性状の影響を大きく受ける。
【0005】
例えば、給塵機がスクリュー形式の場合、下式で搬送重量を求めることができる。
Q=60×Φ×π×D×D/4×S×N×γ
式中、D=ねじ羽根の外径、S=ねじのピッチ、Φ=断面効率、N=ねじ軸の回転数、γ=比重量である(コンベヤ計算法 真島卯太郎著 工学図書刊行)。
この式で断面効率と比重量は物質により変化する。従って、都市ごみ等をスクリューで搬送する場合、搬送量はごみの性状に大きく影響を受ける。
【0006】
また、無破砕の場合、スクリュー径より大きいごみが投入される場合があり、スクリューへの飲み込みが阻害され、一定量でスクリュー搬送することがそこなわれる。更に、スクリューの端部よりごみが落下する場合、ごみが絡まりあい、大きな塊となりなかなか落下しない場合がある。そして、落ち口のシュート部にオーバハングとなり一気に落下することになる。
【0007】
これらの問題は、形状が大きく変化する都市ごみ、産業廃棄物等に特有の問題であり、特に無破砕の場合、顕著である。ごみ焼却装置として一般的な流動床焼却炉は、燃焼のスタートアップが容易なこと、燃焼の結果得られる灰が乾いてきれいなことから、都市ごみ用の焼却炉に向いている。しかし、燃焼速度が速いため、投入されるごみ量の変動が燃焼の変動へ大きく影響を及ぼす。その対策として、流動媒体の流動化の緩慢化、炉内の明るさを利用した応答の速い給塵量制御、二次空気量制御が行われている。
【0008】
ごみ量の変動の影響を低減するためには、給塵量の変動を抑制するのが最も好ましく、そのために給塵機から落下するごみを測定する方法としては例えば、特開2000-356334号公報に記載の流動床式焼却装置がある。この流動床式焼却装置では、給塵機の
ごみの出口部からごみの落下する様子を観察できる位置にテレビカメラを取り付ける。テレビカメラで給塵機の出口からオーバーハングして落下するごみを撮影し、撮影されたごみの重心と面積を、画像処理(画像の二値化)により算出する。こうして、給塵機の出口より分離落下する時のごみの個々の量を、算出されたごみの重心と面積により算出する。重心の移動速度と面積の積をごみの量とする。算出したごみの量により、ごみの給塵量、一次空気量(流動空気量)、二次空気量を制御することができる。
【0009】
この方法は、給塵装置の出口からオーバーハングして落下するごみの面積を算出している。オーバーハングするごみは、給塵装置の出口に一時的に滞留することがある。滞留しているごみの表層を伝って落下するごみを、画像の二値化では認識することができず、供給量を正確に把握することができないという問題がある。例えば、白色の布団の上に、同一色である白色のごみがあり、白色の布団は滞留し、その上を白色のごみが落下している場合、落下しているごみを検知できない。色や輝度等の、テレビカメラで取得する画像情報では、画像情報が同一である(同一の色、又は同一の輝度等である)落下するごみと落下しないごみを識別できない。特開2000-356334号公報では、同一色のごみの場合、落下するごみと落下しないごみを区別できない。同一色のごみの場合、落下するごみと落下しないごみを個別に認識することについて、考慮が全くされていない。この結果、正確なごみの量を算出することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の一形態は、このような問題点を解消すべくなされたもので、その目的は、落下するごみと落下しないごみを個別に認識することにより、ごみの供給量を、より正確に算出できるごみ焼却装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、第1の形態では、ごみを燃焼させることが可能な燃焼部と、前記燃焼部に前記ごみを供給するためのごみ供給部と、前記ごみ供給部から前記燃焼部に供給される複数の前記ごみを個別に認識可能である個別認識部とを有し、前記個別に認識される複数のごみには、前記燃焼部に落下する非滞留ごみおよび前記燃焼部に落下しない滞留ごみが含まれることを特徴とするごみ焼却装置という構成を採っている。
【0013】
本実施形態では、燃焼部に落下する非滞留ごみと、燃焼部に落下しない滞留ごみを個別に認識する個別認識部を有するため、例えば、特開2000-356334号公報等の従来技術と組み合わせたときに、燃焼部に落下する非滞留ごみのみの量を算出することができる。この結果、ごみの供給量を、より正確に算出できる。例えば、テレビカメラが出力する画像情報の内から、非滞留ごみのみを個別に認識して選択し、選択した非滞留ごみについて、特開2000-356334号公報に示すごみの面積の算出方法を適用して、ごみの量を算出することができる。ここで、ごみの量とは、本実施形態の場合、ごみの面積または体積と、当該ゴミの落下速度との積である。なお、ゴミの落下速度が、ある範囲内であるため、一定であると考えられる場合は、ごみの量とは、ごみの面積または体積である。ごみの面積または体積とは、テレビカメラ等のゴミを測定する手段から見たごみの外表面の投影面積、またはごみの外表面の体積である。
【0014】
なお、個別認識部を、テレビカメラが出力する画像情報を利用しない以下に述べる方法と組み合わせることにより、特開2000-356334号公報とは異なる方法により非
滞留ごみの量を算出することもできる。
【0015】
第2の形態では、前記個別認識部は、距離測定部を有し、前記距離測定部は、前記ごみ供給部から前記燃焼部に供給される前記ごみと、前記距離測定部との間の距離を測定可能であり、前記個別認識部は、処理部を有し、前記処理部は、前記ごみ供給部から前記燃焼部に供給される前記ごみのうち、前記距離が時間の経過に伴って変化する前記ごみを前記非滞留ごみと認識し、前記距離が時間の経過に伴って変化しない前記ごみを前記滞留ごみと認識することを特徴とする第1の形態のごみ焼却装置という構成を採っている。
【0016】
第3の形態では、前記個別認識部によって認識された前記非滞留ごみの量を算出する落下量算出部を有することを特徴とする第1または2の形態のごみ焼却装置という構成を採っている。
【0017】
第4の形態では、前記算出された前記非滞留ごみの量に基づいて、前記非滞留ごみの量が一定になるように、前記ごみ供給部から前記燃焼部に供給される前記ごみの量を制御する第1の供給制御部を有することを特徴とする第3の形態のごみ焼却装置という構成を採っている。
【0018】
第5の形態では、前記ごみ供給部は、前記ごみ供給部から前記燃焼部に供給される前記ごみを前記燃焼部に送る給塵機と、前記給塵機に後続して配置されて、前記給塵機によって送られた前記ごみを掻き取って前記燃焼部に送る掻取機とを有し、前記第1の供給制御部は、前記給塵機および/または前記掻取機を制御して、前記ごみ供給部から前記燃焼部に供給される前記ごみの量を制御することを特徴とする第4の形態のごみ焼却装置という構成を採っている。
【0019】
第6の形態では、前記ごみ供給部から前記燃焼部に供給される前記ごみの滞留量を算出する滞留量算出部を有することを特徴とする、第1から第4までのいずれかの形態のごみ焼却装置という構成を採っている。
【0020】
本実施形態では、燃焼部に供給されるごみの滞留量を把握することができる。ごみの滞留量とは、落下速度が一定値以下である非滞留ごみの量と、滞留ごみの量との和である。ごみの滞留量を把握することにより、ごみ供給部の制御をごみの滞留量に応じて変更することができる。ごみの滞留量、すなわち、ごみ供給部の出口におけるごみの滞留量を低減できるため、燃焼をより安定化できる。なぜならば、滞留ごみの量を減らすことができるため、滞留ごみが突然、落下することによる燃焼の不安定化を低減できるからである。
【0021】
ごみの形状、材質、大きさは多種多様であり、さらに、様々なものが絡まりあい、ごみ供給部の出口(給塵装置出口)で、一時的なごみの滞留が生じる。その結果、流動床焼却炉等に供給されるごみの滞留量は変動し、燃焼の安定化を妨げている要因となっている。本実施形態により、燃焼が、より安定化する。
【0022】
第7の形態では、前記算出された前記滞留量に基づいて、前記滞留量が予め決められた所定量以上であるときに、前記ごみ供給部を制御して、前記滞留量を低減する第2の供給制御部を有することを特徴とする第6の形態記載のごみ焼却装置という構成を採っている。
【0023】
第8の形態では、前記ごみ供給部は、前記ごみ供給部から前記燃焼部に供給される前記ごみを前記燃焼部に送る給塵機と、前記給塵機に後続して配置されて、前記給塵機によって送られた前記ごみを掻き取って前記燃焼部に送る掻取機とを有し、前記第2の供給制御部は、前記給塵機および/または前記掻取機を制御して、前記ごみ供給部から前記燃焼部
に供給される前記ごみの量を制御することを特徴とする第7の形態のごみ焼却装置という構成を採っている。
【0024】
第9の形態では、前記算出された前記非滞留ごみの量に基づいて、前記非滞留ごみの燃焼に必要な二次空気の必要量を算定して、前記燃焼部に供給される前記二次空気の供給量を制御する空気制御部を有することを特徴とする、第3から第8までのいずれかの形態のごみ焼却装置という構成を採っている。
【0025】
第10の形態では、前記ごみ焼却装置は、前記滞留識別部によって識別された前記非滞留ごみの落下速度を算出する速度算出部と、算出された前記落下速度に基づいて、浮遊燃焼の発生の有無を判定する判定部と、浮遊燃焼が発生していると前記判定部が判定したときに、前記ごみ供給部にごみを供給するごみピット内にある当該ごみの攪拌を行う撹拌部とを有することを特徴とする第1から第9までのいずれかの形態のごみ焼却装置という構成を採っている。
【0026】
本実施形態では、非滞留ごみの落下速度を算出することができる。非滞留ごみの落下速度から、例えば、浮遊燃焼の発生の有無を判定することができる。浮遊燃焼が発生しているという判定結果の場合、又は、浮遊燃焼が発生する可能性が高いという判定結果の場合、判定結果からごみ供給部の攪拌を行う。攪拌により、軽いごみが重いごみと混合して、ごみが平均的に重くなる。非滞留ごみの落下速度が大きくなり、未燃分の発生を低減することができる。これは、以下の理由による。
【0027】
ごみの形状、材質、大きさは多種多様であり、また、様々なものが絡まりあい、燃焼の安定化を妨げる要因となっている。特に、浮遊しやすいごみを流動床焼却炉に供給すると、軽いごみは炉床で燃焼せず、炉床の上方(フリーボード)で燃焼しやすい。炉床は高温であり、フリーボードは相対的に低温であり、不完全燃焼が起こりやすい。そのため、未燃分の発生が多くなるという問題がある。
【0028】
第11の形態では、前記ごみ焼却装置は、不燃物を識別する不燃物識別部と、識別された前記不燃物の量を算出する不燃物量算出部とを有することを特徴とする第1から第10のいずれかの形態のごみ焼却装置という構成を採っている。
【0029】
本実施形態では、不燃物の量を算出することができる。不燃物が炉床に過度に溜まると、炉床にある流動媒体の流動不良が生じる。流動媒体は、ごみに熱を伝えるためのものであり、流動媒体の流動不良により、ごみに熱が伝わらず、不完全燃焼が起こりやすい。このため、運転中に不燃物を炉床から抜き出す必要がある。流動床焼却炉から不燃物を抜き出す際に、同時に抜き出される流動媒体は、再度、流動床焼却炉に戻される。戻されるときは、燃焼炉の外部に設けられた配管内を流動媒体は通過する。その際に、流動媒体から放熱が生じ、流動媒体が冷却される。流動媒体は、炉床を高温に維持するという蓄熱機能も有する。流動媒体が冷却されるため、流動床焼却炉の熱効率が下がり、排熱を利用した発電の効率が下がる要因となる。本実施形態によれば、抜き出す流動媒体量を少なくすることができるため、熱ロスを低減でき、発電効率を上げることができる。
【0030】
第12の形態では、前記ごみ焼却装置は流動床焼却炉であり、前記ごみ焼却装置は、前記算出された不燃物量に基づいて、前記流動床焼却炉から排出すべき流動媒体の抜出量を算出する抜出量算出部を有することを特徴とする第11の形態のごみ焼却装置という構成
を採っている。
【0031】
第13の形態では、前記ごみ焼却装置は流動床焼却炉であることを特徴とする第1から第11までのいずれかの形態のごみ焼却装置。
【0032】
第14の形態では、前記ごみ焼却装置はストーカ炉であることを特徴とする第から第11までのいずれかの形態のごみ焼却装置。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】本発明の一実施形態に係わる流動床式焼却炉の全体構成を示す図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係わる流動床式焼却炉のごみ供給部の構成を示す図である。
【
図3】給塵スクリューを上方から見た平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の各実施形態において、同一または相当する部材には同一符号を付して重複した説明を省略する。本発明の一実施形態として、本発明を、流動床式焼却炉を有するごみ焼却装置に適用した例を
図1に示す。なお、本発明は、流動床式焼却炉以外の、例えば、ストーカ炉を有するごみ焼却装置に適用することもできる。
【0035】
図1に示すごみ焼却装置100の流動床式焼却炉20は、流動層部21とフリーボード部22を有する。流動層部21においては、けい砂等(流動媒体)の下部から加圧された流動空気が供給されて、蓄熱しているけい砂等が流動して流動層が形成される。流動層部21の中でごみが燃焼する。ごみの燃焼反応は、流動層部21内では、完結しないため、流動層部21の上部に設けたフリーボード部22に二次空気を供給して、未燃分を完全燃焼する。流動層部21とフリーボード部22は、ごみを燃焼させることが可能な燃焼部を構成している。流動床式焼却炉20においては、流動空気量、二次空気量、給塵機からのごみの供給量を制御して燃焼を制御している。
【0036】
図1は、流動床式焼却炉を具備する焼却装置100の全体構成を示す図である。図示するように、ごみの移送機構として、給塵スクリュー11を具備する給塵機10が用いられている。給塵機10は、ホッパー12から流動床式焼却炉20に供給されるごみを流動床式焼却炉20に送る。ホッパー12に投入されたごみ13は、電動機14で駆動される給塵スクリュー11に移送される。ごみ13は、さらに、給塵機10の排出部に設置された解砕排出機15のかき取りスクリュー16で解砕される。その後、投入通路であるシュート部17を通って、流動床式焼却炉20に供給される。ホッパー12と給塵機10は、燃焼部にごみを供給するためのごみ供給部を構成する。解砕排出機15は、給塵機10に後続して配置されて、給塵機10によって送られたごみを掻き取って流動床式焼却炉20に送る掻取機である。
【0037】
流動床式焼却炉20は、流動層部21、フリーボード部22に加えて、流動媒体抜出装置23等を具備する。流動層部21には送風機31より調節弁32を介して流動空気が供給され、フリーボード部22には送風機33より調節弁34を介して二次空気が供給される。シュート部17を通って流動床式焼却炉20内に投入されたごみは燃焼し、その燃焼ガスはボイラ35を通って、熱回収が行われる。その後、燃焼ガスは、バグフィルタ36を通って煤塵が除去され、煙突37から大気に放出される。
【0038】
給塵機10の排出部及びごみの投入通路であるシュート部17が視野に含まれる位置(シュート部17を落下するごみが視野に入る位置)に設置されている距離測定部42を、流動床式焼却炉20は有する。距離測定部42は、給塵機10から流動床式焼却炉20に供給されるごみと、距離測定部42との間の距離を測定可能である。処理部70は、測定された距離を入力される。処理部70は、入力された距離に基づいて、給塵機10から流動床式焼却炉20に供給されるごみのうち、連続データと非連続データとの境界線をごみの境界線として認識する。非連続データとは、例えば、距離測定部42からごみを見たときの、ごみの形状に段差があるために、距離測定部42からごみを見たときの、ごみと距離測定部42との間の距離が不連続になるデータを指す。
【0039】
境界線として認識されたごみとの距離が時間の経過に伴って変化する場合、そのごみを非滞留ごみと認識し、距離が時間の経過に伴って変化しないごみを滞留ごみと認識することにより、非滞留ごみと滞留ごみを認識する。距離測定部42と処理部70は、給塵機10から流動床式焼却炉20に供給される複数のごみのうち、流動床式焼却炉20に落下する非滞留ごみと、流動床式焼却炉20に落下しない滞留ごみを個別に認識可能である個別認識部を構成する。個別に認識される複数のごみには、燃焼部に落下する非滞留ごみおよび燃焼部に落下しない滞留ごみが含まれる。距離測定部42と処理部70の詳細については、後述する。
【0040】
処理部70で認識された非滞留ごみに関する情報は処理装置43に送られる。処理装置43のごみ落下量算出部43aで、個別認識部によって識別された非滞留ごみの落下量を算出する。算出結果を制御部39に出力する。なお、ごみ発熱量算出部43bをごみ落下量算出部43aの後段に設けて、ごみ落下量算出部43aとごみ発熱量算出部43bでごみの落下量及びごみの発熱量を算出し、両方の算出結果を制御部39に出力することとしてもよい。
【0041】
制御部39は落下量算出部43aの出力に基づいて、回転数制御装置40を介して給塵スクリュー11を駆動する電動機14の回転数を制御する。また制御部39は落下量算出部43aの出力に基づいて、解砕排出機15のかき取りスクリュー16を駆動する電動機18の回転数を所定の回転数に制御する。制御部39は、電動機14の回転数制御と、電動機18の回転数制御により、非滞留ごみの量が一定になるように、ごみ13の投入量を制御する。
【0042】
距離測定部42と処理部70の詳細について説明する。距離測定部42は、給塵機10から流動床式焼却炉20に供給されるごみと、距離測定部42との間の距離を測定可能であれば、任意の方式の装置を用いることができる。例えば、TOF方式(Time Of Flight:光の飛行時間)と呼ばれる3次元距離情報を取得する方法がある。TOF方式によると、立体的に、リアルタイムに、例えば、50FPS(frames per second:フレーム毎秒)で3次元距離情報を取得する。対象物までの奥行きや高さ、形状、位置関係といった撮像空間内の諸情報を取得することができる。
【0043】
TOF方式では、LEDやレーザー等の高速光源と、距離画像データを取得するためのCMOSイメージセンサを用いる。高速光源からごみ等に投光した光がごみ等に当たって戻る時間を、例えば、約2万点の各画素ごとにリアルタイムで測定することにより、距離画像イメージを取得する。これにより、対象物体を立体的に計測すると同時に、得られた情報を出力する。投光する光はパルス状に高速で点滅する。CMOSイメージセンサを用いた距離画像カメラは、位相差法を用い、ごみ等からの反射光の位相遅れの程度を計測することで、距離計測を行う。
【0044】
位相差法は、距離0mで、反射光の位相遅れ(すなわち、投光した光との位相差)が0°
であり、位相差が大きくなると距離が遠くなることを利用する。1パルス遅れた光を360°の位相差があるとする。例えば、半パルス遅れて受光した反射光は、180°の位相差があるとする。位相差を計測する手法は、投光パルスの位相に対して、位相を少しずつずらして受光を行う。例えば、0°、90°、180°、270°の位相差で受光を行う。それぞれの位相において受光した電荷を、蓄積・平均化し、その変化を比較する。0°、90°、180°、270°の位相差の場合、得られた4個の値を加算して、4で割る。
【0045】
例えば、0°、180°の2個の位相差で受光を行う場合について説明する。位相差0°で検出する画素(画素A)と位相差180°で検出する画素(画素B)の出力を比較すると、ごみが高速光源から距離0mの位置にあるとすると、画素Aの出力に、100%の電圧が発生し、画素Bには、電圧は発生しない。この出力は、高速光源からの距離が遠ざかるに従って変化し、距離が遠ざかるに従って、位相差が大きい時に検出するように設定された画素の出力が大きくなる。
【0046】
位相差の異なる画素の出力が異なることにより、位相差を推測し、位相差から距離を算出する。例えば、遠距離にある物体に対応する位相差270°の出力は、物体が遠距離にあるほど、大きくなる。実際には、2つの位相差だけでは、360°全ての位相差(すなわち、遠距離)に対応できないため、各撮影フレームで、0°、90°、180°、270°の位相差に設定されたCMOSイメージセンサ上で近接する4画素を1組として、4画素の出力を比較し、距離の測定精度を確保する。
【0047】
測定対象とするごみと距離測定部42との間の3次元距離情報が距離測定部42により取得された後に、処理部70は、以下の方法により、3次元距離情報から流動床式焼却炉20に供給されるごみのうち、距離測定部42との距離が時間の経過に伴って変化するごみを非滞留ごみと認識する。具体的には、処理部70は、ある時刻の3次元距離情報から、1フレーム前の3次元距離情報を減算する(差分をとる)。減算して得られた3次元距離情報においては、移動するごみ、すなわち落下するごみに関する3次元距離情報のみが、一定以上の値を示す。移動しないごみ、すなわち落下しないごみに関する3次元距離情報は、時間的に変化しないもしくは、僅かな変更を有するため、減算の結果、ゼロもしくは、一定以下の値を示す。
【0048】
一定以上の値を示す点と、一定以下の値を示す点に基づいて、落下するごみ(非滞留ごみ)の境界、すなわち非滞留ごみの輪郭を処理部70は認識する。例えば、
図2に示すように、非滞留ごみ82と滞留ごみ80があるとすると、処理部70は、距離測定部42の方向から見た非滞留ごみ82の輪郭を認識できる。
【0049】
処理部70は、輪郭を認識した非滞留ごみ82の3次元距離情報を処理装置43に送る。処理装置43での落下量算出部43aによる非滞留ごみ82の処理フローの一例を以下に示す。輪郭が認識された非滞留ごみ82の各々について、輪郭の中の体積の算出を、
図4に示すように行う。
図4は、非滞留ごみ82の3次元距離情報から、非滞留ごみ82が直方体であると認識された場合である。z軸は、重力方向、x軸、y軸は水平方向である。
図4において、x、y、zは、それぞれx軸、y軸、z軸方向の非滞留ごみ82の長さである。x軸、y軸、z軸は、3次元直交座標系を構成している。
図4の場合、非滞留ごみ82の体積は、x×y×zとして算出される。
【0050】
落下量算出部43aは、非滞留ごみ82の形状として、円柱、角柱、円錐、角錐等に近似して体積を求めても良い。また、非滞留ごみ82の3次元距離情報から、体積を細かく3次元要素に分割して、3次元の体積積分を近似計算により実行してもよい。次に、ある時刻の3次元距離情報と、その3次元距離情報の1フレーム後に撮影された非滞留ごみ82に対し、その特徴が最も似通った物体を同じ非滞留ごみ82として扱う。例えば、最も体
積が近いものを同一の物とみなす等の処理を行う。これは、取得した3次元距離情報内に、複数の非滞留ごみ82がある場合に、個々の非滞留ごみ82を区別して、落下速度等を算出する必要があるからである。
【0051】
次に、個々の非滞留ごみ82の位置の差、すなわち移動距離に、算出済みの体積を乗じる。体積と移動距離の積が、非滞留ごみ82の量と考えられるからである。これらの体積と移動距離の積の総和、すなわち、非滞留ごみ82の量の総和を求める。落下量算出部43aから、数値化された落下ごみ量の信号を制御部39に出力する。
【0052】
落下速度は、個々の非滞留ごみ82の重心位置の鉛直下向き速度であるが、これは、単位時間当たりの移動距離として算出することができる。ごみの量とは、本実施形態では、一定の落下速度以上の速度を有する非滞留ごみ82に対して、距離測定部42で測定した輪郭で囲われた領域の体積と落下速度の積の総和である。なお、非滞留ごみ82の落下速度の変動する範囲が狭いと考えられる場合は、ごみの量を、一定の落下速度以上の速度を有する非滞留ごみ82に関する、距離測定部42で測定した輪郭で囲われた領域の体積の総和としてもよい。
【0053】
本実施形態では、制御部39は、算出された非滞留ごみ82の量に基づいて、非滞留ごみの量が一定になるように、給塵機10から流動床式焼却炉20に供給されるごみの量を制御する第1の供給制御部および第2の供給制御部である。制御部39は、給塵機10および/または掻取機を制御して、給塵機10から流動床式焼却炉20に供給されるごみの量を制御する。さらに、制御部39は、調節弁32及び調節弁34を制御して燃焼空気量を制御している。なお、第1の供給制御部および第2の供給制御部を別々に設けてもよい。
【0054】
解砕排出機15のかき取りスクリュー16を駆動する電動機18はインバータ盤45によりインバータ制御するようになっている。また、かき取りスクリュー16の回転軸移動用のシリンダ41及び油圧装置44を設け、油圧装置44によりかき取りスクリュー16の回転軸位置を調整できる。かき取りスクリュー16の回転軸位置は制御部39の指令に基づいて油圧装置44及びシリンダ41を介して調整され、その変位量は軸変位センサ46で検出され、制御部39にフィードバックされるようになっている。
【0055】
制御部39は、算出された非滞留ごみ82の量に基づいて、非滞留ごみ82の量を一定にするように掻取機の回転数を制御する。非滞留ごみ82の量と、設定すべき掻取機の回転数との関係については、事前に試験により求めておくことができる。また、この関係を、あらかじめ過去の流動床式焼却炉20の運転データから求めてもよい。
【0056】
給塵機10は、
図3に示すように、平行、かつ逆ねじの2本の給塵スクリュー11を備え、その軸間距離を調整できる。
図3は、給塵スクリュー11を上方から見た平面図である。一方のスクリュー11aは、給塵機10に対して、その位置が固定されている。スクリュー11aは、電動機14aにより回転される。他方のスクリュー11bは、ベース72上に設置されている。ベース72は、ガイドレール(図示しない)を介して、焼却装置100の土台の上に設置されている。シリンダ及び油圧装置(図示しない)により、ガイドレールに沿って、スクリュー11aに接近する方向74、及びスクリュー11aから離れる方向76に、ベース72を移動することができる。
【0057】
制御部39は、油圧装置によりスクリュー11bの位置を調整できる。スクリュー11bの回転軸位置は制御部39の指令に基づいて油圧装置及びシリンダを介して調整され、その変位量は軸変位センサ78で検出され、制御部39にフィードバックされる。
【0058】
制御部39は、算出された非滞留ごみ82の量に基づいて、ごみ13の供給量を一定に
するように給塵機10の回転数を制御する。ごみ13の供給量が設定値以下である場合、給塵機10の回転数を大きくし、設定以上である場合、給塵機10の回転数を小さくする。
【0059】
なお、制御部39は、算出された非滞留ごみ82の量に基づいて、必要な二次空気量を算定し、調節弁34を調整して、二次空気量を制御する。二次空気量と、設定すべき調節弁34の開度との関係については、事前に試験により求めておくことができる。また、この関係を、あらかじめ過去の流動床式焼却炉20の運転データから求めてもよい。
【0060】
次に、ごみの滞留量に基づいた給塵装置の制御について説明する。制御部39は、算出されたごみの滞留量に基づいて、ごみの滞留量が一定以上となった場合、給塵装置のスクリュー軸間距離を広げて、給塵装置内の充填率を上げ、滞留したごみを落とす。
【0061】
ごみの滞留量とは、本実施形態の場合、距離測定部42において測定された滞留ごみ80の量と、落下速度が一定以下である非滞留ごみ82の量との和である。ごみの滞留量は、例えば、以下のようにして処理装置43は、求めることができる。落下速度が一定以下である非滞留ごみ82の量は、既述の「落下速度が一定以上である非滞留ごみ82の量」を求める方法において、落下速度が一定以下であるものの量を求めることにより得られる。
【0062】
滞留ごみ80の量は、以下のようにして求めることができる。ごみ全体と距離測定部42との間の3次元距離情報(これは、設備と非滞留ごみ82と滞留ごみ80の全体に関する3次元距離情報である。「全体情報」と呼ぶ。)が距離測定部42により取得された後に、処理部70は、既述の方法により非滞留ごみ82の輪郭を認識できる。また、処理部70は、ごみの背景に関する3次元距離情報(すなわち、固定されている設備に関する3次元距離情報:「背景情報」と呼ぶ)を事前に取得して記憶しておく。「全体情報」から「背景情報」を減算し、さらに、非滞留ごみ82の輪郭で囲まれた領域を計算の対象外とする。残った領域におけるゼロでない3次元距離情報が、滞留ごみ80に関する3次元距離情報である。この情報から、非滞留ごみ82の場合と同様に体積を求める。体積が滞留ごみ80の量である。
【0063】
ごみの滞留量と、設定すべき給塵装置のスクリュー軸間距離との関係については、事前に試験により求めておくことができる。また、この関係を、あらかじめ過去の流動床式焼却炉20の運転データから求めてもよい。
【0064】
制御部39は、算出されたごみの滞留量に基づいて、ごみの滞留量が一定以上となった場合、掻取機の回転数を上げる、または掻取機を給塵装置に近づけ滞留したごみを掻き落とす制御を行う。ごみの滞留量と、設定すべき掻取機の回転数との関係は、事前に試験により求めておくことができる。また、この関係を、あらかじめ過去の流動床式焼却炉20の運転データから求めてもよい。
【0065】
次に、浮遊燃焼の発生の有無に関する制御について説明する。処理装置43は、距離測定部42と処理部70によって認識された非滞留ごみ82の落下速度を算出する速度算出部の機能を、既述のように有する。処理装置43は、落下速度から浮遊燃焼の発生の有無を判定する。算出された落下速度に基づいて、浮遊燃焼の発生の有無を処理装置43(判定部)は判定する。例えば、落下速度が自由落下よりも遅い非滞留ごみ82の量を算出する。この量が所定値以上であるときに、処理装置43は、浮遊燃焼が発生したと判定する。
【0066】
焼却装置100は、浮遊燃焼が発生していると処理装置43が判定したときに、給塵機
10にごみを供給するごみピット84内にあるごみの攪拌を行う撹拌器86(撹拌部)を有する。ごみ13は、制御部39に制御されてクレーン88により、ごみピット84から撹拌器86に搬送される。撹拌器86に置いて撹拌されたのちに、ごみ13は、ごみピット84に戻される。クレーン88は、ごみピット84からホッパー12に、撹拌後のごみ13を搬送することもできる。
【0067】
撹拌器86に置いて撹拌する理由は以下のとおりである。ごみの形状、材質、大きさは多種多様であり、様々なものが絡まりあい、燃焼の安定化を妨げる要因となっている。特に浮遊しやすいごみを流動床焼却炉20に供給すると、流動層部21で燃焼せず、フリーボード部22で燃焼しやすく、未燃分の発生が多くなる問題がある。そのため、ごみの落下速度から浮遊燃焼の発生有無を判定し、判定結果からごみピット84の攪拌を行う。撹拌により、未燃分の発生を低減することができる。
【0068】
次に、不燃物量に基づいた流動媒体の抜出量に関する制御について説明する。最初に不燃物量の識別と、不燃物量の算出について説明する。ごみ焼却装置100は、不燃物を識別するためにカラー撮影を行う撮像カメラ90と、撮影されたカラー画像から不燃物を識別する処理を行う処理部70とを有することができる。撮像カメラ90と処理部70は不燃物識別部を構成する。処理装置43(不燃物量算出部)は、識別された不燃物の量を算出する。処理装置43は、さらに、算出された不燃物量に基づいて、流動床焼却炉から排出すべき流動媒体の抜出量を算出する抜出量算出部でもある。
【0069】
不燃物の識別は以下のように行われる。以下では、不燃物が金属の場合について説明する。不燃物が金属以外の場合についても、不燃物の形状または色等の特性に基づいて、類似の方法により識別することができる。
【0070】
不燃物が金属の場合、輝度により識別する。撮像カメラ90は、赤 (Red)、緑 (Green)、青(Blue)の3色で表現される2次元の、すなわち平面のカラーの動画を撮影する。撮像カメラ90は、3次元の距離情報を取得できるものでなくてよい。処理部70は、撮影されたカラー画像から輝度を算出する。輝度は、以下の式により、RGBの各成分から算出される。
輝度 = 0.299×R +0.587×G + 0.114×B
ここで、輝度とは、色彩を色の三属性(色相、明度、彩度)によって表現するマンセル表色系における輝度である。輝度として、他の表色系における輝度を採用してもよい。また、輝度を上式とは異なる式により算出してもよい。
【0071】
処理部70は、算出された輝度が、ある値の範囲内となるごみを、金属光沢を有する金属ごみとして認識し、金属ごみと他の物体とを区別する(すなわち、一定以上類似するものを、それ以外の他の物体と区別する)。金属であるかどうかを決める輝度の値の範囲については、学習、すなわち、過去のデータで決定してもよい。輝度の差異が認識できる点(金属ごみと非金属ごみとの境界線上の点)同士を結んだ線が、金属の輪郭である。
【0072】
輪郭で囲われた領域の面積もしくは体積を処理装置43は求める。面積は、輪郭のみから求めることができる。距離測定部42の情報を用いると、体積も求めることができる。面積のみから、すなわち、面積の総和を不燃物の量として、識別された不燃物の量を算出してもよいし、体積から不燃物の量を算出してもよい。体積を用いる方が、より正確に不燃物の量を算出できる。また、不燃物の量を算出するときに、既述のように、不燃物の速度を考慮してもよい。すなわち、不燃物の面積または体積と、不燃物の速度の積を不燃物の量としてもよい。
【0073】
なお、特定の金属が特定の色を有する場合、色に関する情報から金属の識別ができる。
具体的には、撮像カメラ90は、赤 (Red)、緑 (Green)、青(Blue)の3色で表現されるカラーの動画を撮影する。処理部70は、各画素についてRGBの各成分が、ある値の範囲内となるものを金属光沢として認識し、金属と他の物体とを区別する。金属であるかどうかを決めるRGBの各成分の値の範囲については、学習、すなわち、過去のデータで決定される。RGBの各成分の差異が隣接する点との間で認識できる点(金属と非金属の境界線上にある点)同士を結んだ線が、金属の輪郭である。
【0074】
算出された不燃物量に基づいて、処理装置43(抜出量算出部)は、流動床焼却炉20から排出すべき流動媒体の抜出量を算出する。算出された不燃物量と流動媒体の抜出量との関係については、事前に試験により求めておくことができる。また、この関係を、あらかじめ過去の流動床式焼却炉20の運転データから求めてもよい。
【0075】
制御部39は、算出された抜出量に基づいて、流動媒体抜出装置23の制御を行う。流動媒体抜出装置23の制御とは、流動媒体抜出装置23の動作時間及び動作開始タイミングの制御である。流動媒体抜出装置23を動作させることにより、流動媒体の抜出が行われる。算出された抜出量と、設定すべき動作制御との関係については、事前に試験により求めておくことができる。また、この関係を、あらかじめ過去の流動床式焼却炉20の運転データから求めてもよい。
【0076】
流動媒体の抜出は、以下のようにして行われる。流動媒体の抜出は、流動床式焼却炉20の底部に設置されている流動媒体抜出装置23により行われる。流動媒体抜出装置23は、炉内に残ったガラス、金属片、陶器などの如き不燃物を連続あるいは断続的に炉外へ取り出すために、流動床式焼却炉20に設けられている。不燃物は流動媒体と共に一旦、炉外へ排出され、分級機で不燃物のみが篩分けされて、流動媒体は、流動媒体循環装置(図示せず)により再び炉内へ循環させる。これによって良好な流動化状態を継続することができる。
【0077】
流動媒体抜出装置23の動作についてさらに説明する。流動床式焼却炉20の底部に設けられた不燃物排出口(図示せず)から落下してきた不燃物と流動媒体との混合物を分級機へ移動させる。本実施形態の流動媒体抜出装置23はスクリュー押し込み機を有し、不燃物排出口から落下してきた混合物をスクリュー押し込み機によって分級機まで移動させる。分級機は、流動媒体抜出装置23から送られてきた混合物から流動媒体を分離する。本実施形態の分級機は、ふるいによって混合物から流動媒体を分離する。流動媒体循環装置は、分級機において分離された流動媒体を流動床式焼却炉20の上部まで搬送し、上部から流動床式焼却炉20内に挿入する。流動媒体を抜き出すときは、スクリュー押し込み機を動作させる。流動媒体を抜き出さないときは、スクリュー押し込み機を停止させる。
【0078】
以上、本発明の実施形態の例について説明してきたが、上記した発明の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明には、その均等物が含まれることはもちろんである。また、上述した課題の少なくとも一部を解決できる範囲
、または、効果の少なくとも一部を奏する範囲において、特許請求の範囲および明細書に記載された各構成要素の任意の組み合わせ、または、省略が可能である。
以上説明したように、本発明は以下の形態を有する。
形態1
ごみを燃焼させることが可能な燃焼部と、
前記燃焼部に前記ごみを供給するためのごみ供給部と、
前記ごみ供給部から前記燃焼部に供給される複数の前記ごみを個別に認識可能である個別認識部とを有し、
前記個別に認識される複数のごみには、前記燃焼部に落下する非滞留ごみおよび前記燃焼部に落下しない滞留ごみが含まれることを特徴とするごみ焼却装置。
形態2
前記個別認識部は、距離測定部を有し、前記距離測定部は、前記ごみ供給部から前記燃焼部に供給される前記ごみと、前記距離測定部との間の距離を測定可能であり、
前記個別認識部は、処理部を有し、前記処理部は、前記ごみ供給部から前記燃焼部に供給される前記ごみのうち、前記距離が時間の経過に伴って変化する前記ごみを前記非滞留ごみと認識し、前記距離が時間の経過に伴って変化しない前記ごみを前記滞留ごみと認識することを特徴とする形態1記載のごみ焼却装置。
形態3
前記個別認識部によって認識された前記非滞留ごみの量を算出する落下量算出部を有することを特徴とする形態1または2記載のごみ焼却装置。
形態4
前記算出された前記非滞留ごみの量に基づいて、前記非滞留ごみの量が一定になるように、前記ごみ供給部から前記燃焼部に供給される前記ごみの量を制御する第1の供給制御部を有することを特徴とする形態3記載のごみ焼却装置。
形態5
前記ごみ供給部は、前記ごみ供給部から前記燃焼部に供給される前記ごみを前記燃焼部に送る給塵機と、前記給塵機に後続して配置されて、前記給塵機によって送られた前記ごみを掻き取って前記燃焼部に送る掻取機とを有し、
前記第1の供給制御部は、前記給塵機および/または前記掻取機を制御して、前記ごみ供給部から前記燃焼部に供給される前記ごみの量を制御することを特徴とする形態4記載のごみ焼却装置。
形態6
前記ごみ供給部から前記燃焼部に供給される前記ごみの滞留量を算出する滞留量算出部を有することを特徴とする、形態1から4までのいずれか1項に記載のごみ焼却装置。
形態7
前記算出された前記滞留量に基づいて、前記滞留量が予め決められた所定量以上であるときに、前記ごみ供給部を制御して、前記滞留量を低減する第2の供給制御部を有することを特徴とする形態6記載のごみ焼却装置。
形態8
前記ごみ供給部は、前記ごみ供給部から前記燃焼部に供給される前記ごみを前記燃焼部に送る給塵機と、前記給塵機に後続して配置されて、前記給塵機によって送られた前記ごみを掻き取って前記燃焼部に送る掻取機とを有し、
前記第2の供給制御部は、前記給塵機および/または前記掻取機を制御して、前記ごみ供給部から前記燃焼部に供給される前記ごみの量を制御することを特徴とする形態7記載のごみ焼却装置。
形態9
前記算出された前記非滞留ごみの量に基づいて、前記非滞留ごみの燃焼に必要な二次空気の必要量を算定して、前記燃焼部に供給される前記二次空気の供給量を制御する空気制御部を有することを特徴とする、形態3から8までのいずれか1項に記載のごみ焼却装置。
形態10
前記ごみ焼却装置は、前記個別認識部によって認識された前記非滞留ごみの落下速度を算出する速度算出部と、算出された前記落下速度に基づいて、浮遊燃焼の発生の有無を判定する判定部と、浮遊燃焼が発生していると前記判定部が判定したときに、前記ごみ供給部にごみを供給するごみピット内にある当該ごみの攪拌を行う撹拌部とを有することを特徴とする形態1から9までのいずれか1項に記載のごみ焼却装置。
形態11
前記ごみ焼却装置は、不燃物を識別する不燃物識別部と、識別された前記不燃物の量を算出する不燃物量算出部とを有することを特徴とする形態1から10までのいずれか1項に記載のごみ焼却装置。
形態12
前記ごみ焼却装置は流動床焼却炉であり、前記ごみ焼却装置は、前記算出された不燃物量に基づいて、前記流動床焼却炉から排出すべき流動媒体の抜出量を算出する抜出量算出部を有することを特徴とする形態11記載のごみ焼却装置。
形態13
前記ごみ焼却装置は流動床焼却炉であることを特徴とする形態1から11までのいずれか1項に記載のごみ焼却装置。
形態14
前記ごみ焼却装置はストーカ炉であることを特徴とする形態1から11までのいずれか1項に記載のごみ焼却装置。