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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-14
(45)【発行日】2022-01-25
(54)【発明の名称】バネ組立体
(51)【国際特許分類】
   F16F 3/04 20060101AFI20220118BHJP
   F16F 1/12 20060101ALI20220118BHJP
   F16D 25/12 20060101ALI20220118BHJP
【FI】
F16F3/04
F16F1/12 K
F16D25/12 Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2017251982
(22)【出願日】2017-12-27
(65)【公開番号】P2019116948
(43)【公開日】2019-07-18
【審査請求日】2020-10-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000124096
【氏名又は名称】株式会社パイオラックス
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100086689
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 茂
(72)【発明者】
【氏名】植松 泰崇
【審査官】杉山 豊博
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第04967681(US,A)
【文献】特開昭49-068159(JP,A)
【文献】国際公開第2012/121072(WO,A1)
【文献】特開平05-126189(JP,A)
【文献】特開平10-288234(JP,A)
【文献】特開2002-155979(JP,A)
【文献】特開2019-078374(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 3/04
F16F 1/12
F16D 25/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに平行に配列された複数のコイルバネと、
前記複数のコイルバネの一端部を支持する第1支持部材と、
該第1支持部材に対して、前記複数のコイルバネの軸方向に所定間隔離れて配置された第2支持部材とを有し、
前記複数のコイルバネは、前記第1支持部材と前記第2支持部材との間に配置された、複数の第1コイルバネと、前記第2支持部材から前記第1支持部材に対して反対側に伸びるように配置され、前記複数の第1コイルバネとは別体又は一体の、複数の第2コイルバネとを有しており、
前記第2支持部材は、互いに重なり合う第1支持体と第2支持体との2部品からなり、前記第1支持体と前記第2支持体とは互いの接触面にて摺動可能とされており、
前記複数のコイルバネは、前記第1支持部材と前記第1支持体との間に配置された、複数の第1コイルバネと、前記第2支持体から前記第1支持部材に対して反対側に伸びるように配置され、前記複数の第1コイルバネとは別体の、複数の第2コイルバネとを有していることを特徴とするバネ組立体。
【請求項2】
互いに平行に配列された複数のコイルバネと、
前記複数のコイルバネの一端部を支持する第1支持部材と、
該第1支持部材に対して、前記複数のコイルバネの軸方向に所定間隔離れて配置された第2支持部材とを有し、
前記複数のコイルバネは、前記第1支持部材と前記第2支持部材との間に配置された、複数の第1コイルバネと、前記第2支持部材から前記第1支持部材に対して反対側に伸びるように配置され、前記複数の第1コイルバネとは別体又は一体の、複数の第2コイルバネとを有しており、
前記第2支持部材は、互いに重なり合う第1支持体と第2支持体との2部品からなり、前記第1支持体と前記第2支持体との間には、両部品の摺動を規制する摺動規制手段が設けられており、
前記複数のコイルバネは、前記第1支持部材と前記第1支持体との間に配置された、複数の第1コイルバネと、前記第2支持体から前記第1支持部材に対して反対側に伸びるように配置され、前記複数の第1コイルバネとは別体の、複数の第2コイルバネとを有していることを特徴とするバネ組立体。
【請求項3】
互いに平行に配列された複数のコイルバネと、
前記複数のコイルバネの一端部を支持する第1支持部材と、
該第1支持部材に対して、前記複数のコイルバネの軸方向に所定間隔離れて配置された第2支持部材とを有し、
前記複数のコイルバネは、前記第1支持部材と前記第2支持部材との間に配置された、複数の第1コイルバネと、前記第2支持部材から前記第1支持部材に対して反対側に伸びるように配置され、前記複数の第1コイルバネと一体の、複数の第2コイルバネとを有していると共に、密巻き部分が設けられており、前記第2支持部材は、前記密巻き部分で前記コイルバネを支持していることを特徴とするバネ組立体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のコイルバネを支持してなるバネ組立体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、環状の板材に複数のコイルバネを立設させて構成されたバネ組立体が、例えば、自動車のオートマチックトランスミッションに組み込まれるピストンを付勢するバネとして用いられている。
【0003】
例えば、下記特許文献1には、複数の切起し孔が形成された環状プレートと、各切起し孔の内周縁から起立している円筒状突起を拡開するカシメにより、少なくとも一端が環状プレートに固定された複数のコイルスプリングとを備えた、スプリング組立体が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平10-311357号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記スプリング組立体は、適用箇所や設置個所等においては、そのストロークを確保すべく、スプリング組立体全体のバネ長を長くしたいことがある。この場合には、コイルスプリングの有効巻き数を増やして、その軸方向長さを長くするのであるが、コイルスプリングを長くすると、座屈する恐れがあった。特に、スプリング組立体が、自動車のオートマチックトランスミッションに組み込まれて、ピストンリターン用バネとして用いられた場合は、スプリング組立体に押し込み力のほか、クラッチを介して回転トルクが作用することがあり、この際にコイルスプリングが長いと、座屈する恐れが顕著となる。
【0006】
したがって、本発明の目的は、バネ組立体全体のバネ長を必要とされる長さに維持しつつ、各コイルバネの座屈を抑制することができる、バネ組立体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明のバネ組立体は、互いに平行に配列された複数のコイルバネと、前記複数のコイルバネの一端部を支持する第1支持部材と、該第1支持部材に対して、前記複数のコイルバネの軸方向に所定間隔離れて配置された第2支持部材とを有し、前記複数のコイルバネは、前記第1支持部材と前記第2支持部材との間に配置された、複数の第1コイルバネと、前記第2支持部材から前記第1支持部材に対して反対側に伸びるように配置され、前記複数の第1コイルバネとは別体又は一体の、複数の第2コイルバネとを有していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明のバネ組立体によれば、複数のコイルバネは、第1支持部材と第2支持部材との間に配置された第1コイルバネと、第2支持部材から第1支持部材に対して反対側に伸びるように配置された第2コイルバネとを有しているので、全体のバネ長を必要とされる長さに維持しつつ、各支持部材により支持されるコイルバネの長さを短くすることができ、コイルバネの座屈を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明に係るバネ組立体の、第1実施形態を示す分解斜視図である。
図2】同バネ組立体の斜視図である。
図3】同バネ組立体の断面図である。
図4】本発明に係るバネ組立体の、第2実施形態を示す斜視図である。
図5】同バネ組立体の断面図である。
図6】本発明に係るバネ組立体の、第3実施形態を示す斜視図である。
図7】同バネ組立体において、図6のA-B矢示線における断面図である。
図8】本発明に係るバネ組立体の、第4実施形態を示す斜視図である。
図9】同バネ組立体の断面図である。
図10】本発明に係るバネ組立体の、第5実施形態を示す斜視図である。
図11】同バネ組立体の断面図である。
図12】本発明に係るバネ組立体の、第6実施形態を示す斜視図である。
図13】同バネ組立体の断面斜視図である。
図14】同バネ組立体の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図1~3を参照して、本発明に係るバネ組立体の、第1実施形態について説明する。
【0011】
図1に示すように、この実施形態におけるバネ組立体10は、互いに平行に配列された複数のコイルばねと、複数のコイルバネの一端部を支持する第1支持部材20と、この第1支持部材20に対して、複数のコイルバネの軸方向に所定間隔離れて配置された第2支持部材30と、この第2支持部材30に対して、複数のコイルバネの軸方向に所定間隔離れて配置された第3支持部材50とを備えている。
【0012】
図1~3に示すように、この実施形態における複数のコイルバネは、第1支持部材20と第2支持部材30との間に配置された、複数の第1コイルバネ71と、第2支持部材30から第1支持部材20に対して反対側に伸びるように配置された、複数の第1コイルバネ71とは別体の、複数の第2コイルバネ73とからなる。各コイルバネ71,73は、所定径の円径断面の線材を所定ピッチで巻回してなるものであり、また、この実施形態における各コイルバネ71,73の外径、軸方向長さ、線材の線径は同一となっているが、それらは同一でなくてもよい。なお、複数のコイルバネ71,73は支持部材20,30の支持面に対して直交するように支持され、その軸方向が互いに平行となるように配列される。
【0013】
図1に示すように、前記第1支持部材20は、第1コイルバネ71の一端部71aを支持するものであって、略円環状をなしている。この第1支持部材20は、その周方向に沿って均等な間隔をあけて、複数の貫通孔21(図3参照)が形成されている。また、第1支持部材20の内面(第2支持部材30との対向面)側であって、前記貫通孔21の周縁からは、環状突起状をなした支持突部23が突設されている。この支持突部23が、第1コイルバネ71の一端部71aの内周に挿入されて、同第1コイルバネ71の一端部71aが支持される。なお、この支持突部23の外周に、図3に示すような、後述する第2支持部材30の支持突部33,35に形成した環状突部33a,35aと同様の、環状突部を設けておき、この環状突部を、第1コイルバネ71の一端部71aに係止させて抜け止め固定してもよい。
【0014】
更に、第1支持部材20の内面側であって、その内周縁部からは、環状をなした内側リブ25が突設されており、外周縁部からも、環状をなした外側リブ27が突設されている。図2及び図3に示すように、これらのリブ25,27は、支持突部23により支持された第1コイルバネ71の一端部71aの外周にそれぞれ配置されて、第1コイルバネ71の姿勢を安定させる。
【0015】
前記第2支持部材30は、略円環状の板状体をなした1部品からなり、その周方向に沿って均等な間隔をあけて、複数の貫通孔31が形成されている。この第2支持部材30の、第1支持部材20との対向面であって、前記貫通孔31の周縁からは、環状突起状をなした第1支持突部33が突設されている。一方、第2支持部材30の、第1支持突部33の突出方向とは反対側の面(第3支持部材50との対向面)であって、前記貫通孔31の周縁からは、環状突起状をなした第2支持突部35が突設されている。この実施形態では、第2支持部材30の貫通孔31の表裏周縁から、第1支持突部33及び第2支持突部35がそれぞれ突設しているので、第1支持突部33及び第2支持突部35は同軸的に配置される。
【0016】
また、第1支持突部33の、貫通孔31に近い基端寄りの外周からは、環状突部33aが突設されており、更に、第2支持突部35の、貫通孔31に近い基端寄りの外周からも、環状突部35aが突設されている。なお、各環状突部33a,35aは、第2支持部材30が合成樹脂等で形成されている場合は、支持突部33,35の外周に一体成形され、また、第2支持部材30が金属板等で形成されている場合には、支持突部33,35を内側からバーリング等によってカシメることで形成される。
【0017】
そして、図3に示すように、第1支持突部33が、第1コイルバネ71の他端部71bの内周に挿入されると共に、同他端部71bに環状突部33aが係止することで、第1支持突部33により、第1コイルバネ71の他端部71bが支持された状態で、同第1コイルバネ71が第2支持部材30に抜け止め固定される。また、第2支持突部35が、第2コイルバネ73の一端部71aの内周に挿入されると共に、同一端部73bに環状突部35aが係止することで、第2支持突部35により、第2コイルバネ73の一端部71aが支持された状態で、同第2コイルバネ73が第2支持部材30に抜け止め固定される。
【0018】
なお、各環状突部33a,35aが、各支持突部33,35に一体形成されている場合には、各環状突部33a,35aを、第1コイルバネ71の他端部71bの内周や、第2コイルバネ73の一端部73aの内周に圧入するように挿入することで、各支持突部33,35に各コイルバネ71,73が抜け止め固定される。一方、各環状突部33a,35aが、各支持突部33,35にカシメにより形成される場合には、第1コイルバネ71の他端部71bの内周や、第2コイルバネ73の一端部73aの内周に、各支持突部33,35を挿入した後、各支持突部33,35の内周を外径方向に向けてカシメることで、各環状突部33a,35aが形成されて、各支持突部33,35に各コイルバネ71,73が抜け止め固定される。
【0019】
上記のように、第2支持部材30を介して、複数の第1コイルバネ71及び複数の第2コイルバネ73をそれぞれ支持した結果、この実施形態においては、図2及び図3に示すように、第1支持部材20及び第2支持部材30の間に、複数の第1コイルバネ71が配置されて支持されると共に、第2支持部材30から第1支持部材20に対して反対側に伸びるように、複数の第2コイルバネ73が配置されて支持されており、いわば第2支持部材30を介して、複数のコイルバネが上下2段に配置されて、各支持部材20,30によって支持された構造となっている。また、各第1コイルバネ71と、これに対応する各第2コイルバネ73とは、第2支持部材30を挟んで同軸的に、すなわち、それらの軸心が一致するように配置される。なお、複数の第1コイルバネ71と、複数の第2コイルバネ73とは、同軸的に配置されなくとも、第2支持部材30の周方向や径方向に位置ずれして配置されていてもよい。
【0020】
また、この実施形態においては、コイルバネは、第2支持部材30を介して上下2段に配置されて支持された構造となっているが、コイルバネが3段以上の複数段となるように構成してもよい。なお、この実施形態における複数のコイルバネは、複数の第1コイルバネ71と、それとは別体の第2コイルバネ73とからなるが、コイルバネとしては、複数の第1コイルバネと、該複数の第1コイルバネと一体の、複数の第2コイルバネとからなる構成としてもよい(これについては、図12~14に示す第6実施形態で説明する)。
【0021】
また、この実施形態では、第2コイルバネ73は、その他端部73bが第3支持部材50により支持されるようになっている。図1及び図3に示すように、この第3支持部材50は、前記第1支持部材20と同様の構造となっており、その周方向に沿って均等な間隔をあけて設けられた複数の貫通孔51と、その内面(第2支持部材30との対向面)側であって貫通孔51の周縁から突設した円筒状の支持突部53と、第3支持部材50の内面側であって、その内周縁部及び外周縁部から、環状に突設した内側リブ55及び外側リブ57とからなる。そして、前記支持突部53が、第2コイルバネ73の他端部73bの内周に挿入されることで、第2コイルバネ73の他端部73bが支持され、リブ55,57により第2コイルバネ73の姿勢が安定して保持される(図3参照)。なお、この第3支持部材50は、後述する第2~第6実施形態に適用してもよい。
【0022】
以上説明した、第1支持部材20、第2支持部材30、及び第3支持部材50は、例えば、合成樹脂や金属材料等から形成することができる。また、各支持部材20,30,50の形状や、各支持突部23,33,35,53の形状や位置、個数等は、特に限定されない(後述する他の実施形態においても同様である)。例えば、各支持部材20,30,50は角形環状等であってもよい。また、各支持突部23,33,35,53は、環状突起状でなくとも、環状突起よりも長く延びた円筒状としたり(この場合、コイルバネを安定して支持させやすい)、更に、各支持部材20,30,50が金属板からなる場合には、それらに対して切起こし状に形成してもよく、また、各支持部材20,30,50の周方向に不均等な配置でもよい。
【0023】
なお、このバネ組立体10は、例えば、自動車のオートマチックトランスミッションに組み込まれる油圧制御用のピストンを付勢するための、ピストンリターン用のバネとして用いたり、或いは、クラッチやブレーキのリターン用バネとして用いたりすることができる。ただし、本発明に係るバネ組立体の適用箇所や設置箇所は、特に限定されるものではない。
【0024】
次に、上記構成からなるバネ組立体10の作用効果について説明する。
【0025】
すなわち、この実施形態のバネ組立体10は、図2図3に示すように、複数のコイルバネは、第1支持部材20と第2支持部材30との間に配置された、複数の第1コイルバネ71と、第2支持部材30から第1支持部材20に対して反対側に伸びるように配置され、複数の第1コイルバネ71とは別体の、複数の第2コイルバネ73とを有している。そのため、図3に示すように、第2支持部材30を介して、第1コイルバネ71及び第2コイルバネ73を、その軸方向に複数段配置したような構造、この実施形態では、第2支持部材30を介して、複数の第1コイルバネ71が第1支持部材20側に、複数の第2コイルバネ73が第1支持部材20とは反対側に配置されて、複数のコイルバネ71,73が上下2段に分かれて支持された構造とすることができる。その結果、バネ組立体10のストローク確保のため、バネ組立体10全体のバネ長を必要とされる長さに維持しつつ、支持部材20,30に支持される各コイルバネ71,73の長さを短くすることができ、各コイルバネ71,73の座屈、特にコイルバネ71,73に回転トルクが作用した場合における座屈を、効果的に抑制することができる。
【0026】
なお、バネ組立体において、コイルバネの座屈を抑制するためには、コイルバネの外径を大きくしたり、コイルバネを構成する線材の線径を太くしたりして、コイルバネの剛性を高めたり、コイルバネのバネ定数を増加させたりすることも考えられる。しかし、これらの場合には、バネ組立体に押し込み力が作用した場合に、各コイルバネの荷重が高くなるため、応力が上がり、バネ組立体のストロークを確保しにくい傾向となる。
【0027】
また、この実施形態においては、図2及び図3に示すように、第2支持部材30は1部品からなり、この第2支持部材30を介して、第1支持部材20と第2支持部材30との間に配置された、複数の第1コイルバネ71と、第2支持部材30から第1支持部材20に対して反対側に伸びるように配置され、複数の第1コイルバネ71とは別体の、複数の第2コイルバネ73とを有しているので、バネ組立体10の構造を簡素化することができ、かつ、軸方向に小形化を図りつつ、各コイルバネ71,73の座屈を効果的に抑制することができる。
【0028】
図4及び図5には、本発明に係るバネ組立体の、第2実施形態が示されている。なお、前記実施形態と実質的に同一部分には同符号を付してその説明を省略する。
【0029】
この第2実施形態におけるバネ組立体10Aは、第2支持部材の構造が前記第1実施形態と異なっている。この第2実施形態の第2支持部材30Aは、互いに重なり合う2部品、すなわち、それぞれ略円環状の板状体をなした第1支持体37と第2支持体39とから構成されている。また、第1支持体37の、第2支持体39とは反対側の面(第1支持部材20との対向面)であって、貫通孔31の周縁からは、環状突起状をなした第1支持突部33が突設されている。一方、第2支持体39の、第1支持体7とは反対側の面であって、貫通孔31の周縁から、環状突起状をなした第2支持突部35が突設されている。
【0030】
また、図4図5に示すように、第1支持体37の、第2支持体39との接触面37a(第1支持突部33の突出面とは反対側の面)と、第2支持体39の、第1支持体37との接触面39a(第2支持突部35の突出面とは反対側の面)とを、互いに接触させて配置することによって、両部品が互いに重なり合うと共に、互いの接触面37a,39aにて相対的に摺動可能とされている。
【0031】
そして、第1支持体37の第1支持突部33及びその外周の環状突部33aによって、第1コイルバネ71の他端部71bが第1支持体37に抜け止め固定されると共に、第2支持体39の第2支持突部35及びその外周の環状突部35aによって、第2コイルバネ73の一端部71aが第2支持体39に抜け止め固定される。それによって、第1支持部材20と第2支持部材30を構成する第1支持体37との間に、複数の第1コイルバネ71が配置されて支持されると共に、第2支持部材30を構成する第2支持体39から第1支持部材20に対して反対側に伸びるように、複数の第2コイルバネ73が配置されて支持される(図5参照)。
【0032】
上記第2実施形態においては、第2支持部材30Aは互いに重なり合う第1支持体37と第2支持体39との2部品からなり、第1支持体37と第2支持体39とは互いの接触面37a,39aにて摺動可能とされているので、複数の第1コイルバネ71と、複数の第2コイルバネ73との間に、回転トルク等の外力が作用しても、第1支持体37と第2支持体9とが摺動して、上記外力を逃がすことができるため、コイルバネ71,73を座屈しにくくすることができる。また、第2支持部材30が2部品からなるので、各部品に、複数の第1コイルバネ71や複数の第2コイルバネ73を支持させやすくすることができ、バネ組立体10Aの製造性を向上させることができる。
【0033】
図6及び図7には、本発明に係るバネ組立体の、第3実施形態が示されている。なお、前記実施形態と実質的に同一部分には同符号を付してその説明を省略する。
【0034】
この第3実施形態におけるバネ組立体10Bは、第2支持部材の構造が前記第1実施形態及び第2実施形態と異なっている。この第2実施形態の第2支持部材30Bは、互いに重なり合う2部品、すなわち、それぞれ略円環状の板状体をなした第1支持体37Bと第2支持体39Bとから構成されており、両部品の間に、両部品の摺動を規制する摺動規制手段が設けられている。この実施形態では、各支持体37B,39Bは、前記第2実施形態の第1支持体37,第2支持体39に対して更に、規制壁部を設けた形状をなっている。
【0035】
具体的には図6に示すように、第1支持体37Bの外周縁部から、第1支持突部33とは反対向きとなるように、円弧状をなした第1規制壁部41が立設しており、この第1規制壁部41が、第1支持体37Bの周方向に均等な間隔をあけて複数設けられている。また、第2支持体39Bの外周縁部から、第2支持突部35とは反対向きとなるように、円弧状をなした第2規制壁部43が立設しており、この第2規制壁部43が、第2支持体39Bの周方向に均等な間隔をあけて複数設けられている(図6参照)。
【0036】
そして、図6図7に示すように、第1支持体37Bの接触面37aと、第2支持体39Bの接触面39aとを互いに接触させて重ね合わせた状態で、第1支持体37Bの第1規制壁部41が、第2支持体39Bの第2規制壁部43,43の間に挿入されるようになっている。その結果、第1支持体37Bと第2支持体39Bとが相対的に摺動しようとしても、第1規制壁部41の周方向一側面と、第2規制壁部43の周方向一側面とが当接して、その摺動が規制される。すなわち、この実施形態では、上記第1規制壁部41と第2規制壁部43とが、本発明における「摺動規制手段」をなしている。ただし、規制手段としては、上記壁部に限定されるものではなく、例えば、支持体37B,39Bの一方に係止孔を設け、他方に係止突部を設けて、係止孔に係止突部が係止することで、両部品を摺動規制してもよい。また、上記壁部は、各支持体37B,39Bの内周側に設けてもよく、その位置は限定されず、形状も特に限定されない。
【0037】
そして、この第3実施形態においては、第2支持部材30Bは互いに重なり合う第1支持体37Bと第2支持体39Bとの2部品からなり、両部品は摺動規制手段(ここでは第1規制壁部41及び第2規制壁部43)によって摺動を規制されているので、複数の第1コイルバネ71と、複数の第2コイルバネ73との間の、過度なずれを抑制しやすくすることができる。また、第2支持部材30Bが2部品からなるので、各部品に、複数の第1コイルバネ71や複数の第2コイルバネ73を支持させやすくすることができ、バネ組立体10Bの製造性を向上させることができる。
【0038】
図8及び図9には、本発明に係るバネ組立体の、第4実施形態が示されている。なお、前記実施形態と実質的に同一部分には同符号を付してその説明を省略する。
【0039】
この第4実施形態におけるバネ組立体10Cは、第2支持部材の構造が前記第1~3の実施形態と異なっている。図8及び図9に示すように、この第4実施形態の第2支持部材30Cは、略円環状の板状体をなした基部45と、該基部45の外周縁から、第1支持部材20側に向けて延出した周壁46と、該周壁46の、延出方向先端から外径方向に向けて広がった環状のフランジ部47とからなる、略ハット状をなした1部品からなる。基部45には、周方向に均等な間隔で複数の貫通孔31が形成され、同基部45の、第1支持部材20との対向面であって、前記貫通孔31の周縁から第1支持突部33が突設されている。また、フランジ部47にも、周方向に均等な間隔で複数の貫通孔31が形成され、同フランジ部47の、前記基部45の第1支持突部33の突出方向とは反対側の面であって、前記貫通孔31の周縁からは、環状突起状をなした第2支持突部35が突設されている。
【0040】
そして、図9に示すように、基部45側の、第1支持突部33及びその外周の環状突部33aによって、第1コイルバネ71の他端部71bが、第2支持部材30Cに抜け止め固定されると共に、フランジ部47側の、第2支持突部35及びその外周の環状突部35aによって、第2コイルバネ73の一端部73aが第2支持体39に抜け止め固定される。それによって、第1支持部材20及び第2支持部材30Cの間に、複数の第1コイルバネ71が配置されて支持されると共に、第2支持部材30Cから第1支持部材20に対して反対側に伸びるように、複数の第2コイルバネ73が配置されて支持され、その結果、複数の第1コイルバネ71に対して、複数の第2コイルバネ73が、外径方向に位置ずれして配置されるようになっている。よって、この第4実施形態においても、バネ組立体10C全体のバネ長を必要とされる長さに維持しつつ、支持部材20,30Cにより支持される各コイルバネ71,73の長さを短くして、その座屈を効果的に抑制することができる。
【0041】
図10及び図11には、本発明に係るバネ組立体の、第5実施形態が示されている。なお、前記実施形態と実質的に同一部分には同符号を付してその説明を省略する。
【0042】
この第5実施形態におけるバネ組立体10Dは、複数のコイルバネ及び第2支持部材の構造が前記第1~4の実施形態と異なっている。すなわち、図10に示すように、この実施形態における複数のコイルバネは、第1コイルバネ71と、それとは別体で、第1コイルバネ71よりも小径の第2コイルバネ73Dとからなる。一方、この第5実施形態の第2支持部材30Dは、略円環状の板状体をなした1部品であって、周方向に均等な間隔をあけて、一端が開口し他端に底部を設けた、有底筒状をなしたバネ受け部48が、第1支持部材20側に向けて垂設されている。
【0043】
そして、図11に示すように、第1支持部材20に支持された第1コイルバネ71の、他端部71bの内周に、バネ受け部48を挿入すると共に、バネ受け部48の内周に、一端側の開口から、第2コイルバネ73Dを挿入することで、その一端部が支持される。その結果、第1支持部材20及び第2支持部材30Dの間に、複数の第1コイルバネ71が配置されて支持されると共に、第2支持部材30Dから第1支持部材20に対して反対側に伸びるように、複数の第2コイルバネ73Dが配置されて支持される。
【0044】
したがって、上記第5実施形態においても、バネ組立体10D全体のバネ長を必要とされる長さに維持しつつ、支持部材20,30Dにより支持される各コイルバネ71,73Dの長さを短くして、その座屈を効果的に抑制することができる。なお、この第5実施形態では、第1コイルバネ71の他端部71b、及び、第2コイルバネ73Dの一端部は、第2支持部材30Dに対して抜け止め固定されていないが、バネ受け部48の外周や内周に、コイルバネに係止可能な係止爪等を設けて、各コイルバネ71,73Dに対して固定するようにしてもよい。
【0045】
図12~14には、本発明に係るバネ組立体の、第6実施形態が示されている。なお、前記実施形態と実質的に同一部分には同符号を付してその説明を省略する。
【0046】
この第6実施形態におけるバネ組立体10Eは、複数のコイルバネの形状、及び、これを支持する第2支持部材の構造が、前記第1~5の実施形態と異なっている。
【0047】
すなわち、図12及び図13に示すように、この実施形態における複数のコイルバネ75は、第1支持部材20と第2支持部材30Eとの間に配置された、複数の第1コイルバネと、第2支持部材30Eから第1支持部材20に対して反対側に伸びるように配置され、複数の第1コイルバネと一体の、複数の第2コイルバネとを有していると共に(すなわち、前記複数の第1コイルバネと、前記複数の第2コイルバネとは、対応するコイルバネどうしが連続して一体形成されている)、密巻き部分77が設けられている。より具体的に説明すると、この実施形態コイルバネ75は、その軸方向途中(ここでは軸方向中間部)に、他の部分(疎巻き部分79)に対して、線材が密に巻回された、密巻き部分77が所定間隙81をあけて複数設けられている。また、これらの密巻き部分77,77の外径は、疎巻き部分79の外径と同一に形成されている。なお、密巻き部分77の外径を、疎巻き部分79の外径に対して小径に形成して、コイルバネ75全体を見たときに、密巻き部分77がくびれたような形状としてもよい。
【0048】
一方、第2支持部材30Eは、略円環状の板状体をなした1部品であり、略U字状をなした切欠き32が、周方向に均等な間隔をあけて複数設けられている。略U字状の切欠き32は、第2支持部材30Eの外周縁側に開口が位置しており、第2支持部材30Eの外周側から、コイルバネ75を挿入可能となっている。また、切欠き32の、第2支持部材30Eの周方向に沿った開口幅は、コイルバネ75の外径よりも小さく形成されており、密巻き部分77,77間の間隙81に挿入可能となっている。
【0049】
したがって、コイルバネ75の密巻き部分77,77の間隙81に、第2支持部材30Eの切欠き32を挿入することで、図13に示すように、切欠き32の表裏の周縁部が、密巻き部分77,77の軸方向内面側に係止するので、密巻き部分77を介して、第2支持部材30Eにコイルバネ75が支持されるようになっている。なお、第2支持部材30Eは、複数のコイルバネ75の内周側に配置されており、また、コイルバネ75の一端部75aの内周には、第1支持部材20の支持突部23が挿入されて支持されている。その結果、複数のコイルバネ75は、第1支持部材20と第2支持部材30Eとの間に第1コイルバネが配置されて支持されると共に、第2支持部材30Eから第1支持部材20に対して反対側に伸びるように、第1コイルバネと一体の第2コイルバネが配置されて支持されるようになっている。
【0050】
上記の第6実施形態においては、コイルバネ75は、第1コイルバネと第2コイルバネとが連続して一体形成されているので、その部品点数を少なくすることができると共に、第2支持部材30Eは、密巻き部分77でコイルバネ75を支持するので、バネ組立体10E全体のバネ長を必要とされる長さに維持しつつ、支持部材20,30Eにより支持されるコイルバネ75の長さを短くして、その座屈を効果的に抑制することができる。
【0051】
なお、第1コイルバネと第2コイルバネとが一体形成されたコイルバネを、第2支持部材で支持する構造としては、上記態様に限定されるものではない。例えば、コイルバネの密巻き部分に間隙を設けずに、コイルバネに1つの密巻き部分のみを形成し、一方、第2支持部材の切欠きの開口幅を、コイルバネの密巻き部分の外径よりもやや小さく形成しておく。そして、第2支持部材の切欠き内に、コイルバネの密巻き部分を圧入することで、第2支持部材は、コイルバネの密巻き部分で、コイルバネを支持することができる。
【0052】
また、コイルバネの密巻き部分の外径を、疎巻き部分の外径よりも小さく形成して、コイルバネ全体をみたときに、密巻き部分がくびれたような形状とし、一方、第2支持部材に設けた、切欠き32の開口幅を、コイルバネの疎巻き部分の外径よりも小さく、かつ、密巻き部分の外径に適合するか又はそれ以上の外径に形成しておく。そして、第2支持部材の切欠き内に、コイルバネの密巻き部分を挿入した状態では、コイルバネの軸方向移動時に、くびれた密巻き部分の、軸方向両側の拡径した疎巻き部分が、切欠きの表側周縁部に係止可能となるので、第2支持部材は、コイルバネの密巻き部分で、コイルバネを支持することができる。
【0053】
更に、密巻き部分を設けたコイルバネを型枠内にセットし、その状態で、密巻き部分を囲い込むようにして、コイルバネに対して第2支持部材をインサート成形することによって、密巻き部分を介して、コイルバネを第2支持部材に支持させるようにしてもよい。
【0054】
また、上記第6実施形態においては、第2支持部材30Eの外周縁側に、U字開口が位置するように、略U字状の切欠き32を設けたが、切欠きは、第2支持部材の内周縁側に、U字開口が位置するように形成してもよい。この場合は、第2支持部材の内周側から、切欠きにコイルバネが挿入されることとなり、複数のコイルバネの外周側に第2支持部材が配置されるようになっている。更に、切欠きは、略U字状でなくとも、例えば、略コ字状や、略V字状等としてもよく、コイルバネを支持可能であればよい。
【0055】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で、各種の変形実施形態が可能であり、そのような実施形態も本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0056】
10,10A,10B,10C,10D,10E バネ組立体
20 第1支持部材
30,30A,30B,30C,30D,30E 第2支持部材
37,37B 第1支持体
37a 接触面
39,39B 第2支持体
39a 接触面
71 第1コイルバネ
71a 一端部
73,73D 第2コイルバネ
73a 一端部
75 コイルバネ
75a 一端部
77 密巻き部分
79 疎巻き部分
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14