(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-14
(45)【発行日】2022-02-10
(54)【発明の名称】フィードスルー
(51)【国際特許分類】
H01M 50/183 20210101AFI20220203BHJP
C03C 10/02 20060101ALI20220203BHJP
H01G 9/10 20060101ALI20220203BHJP
H01G 11/74 20130101ALI20220203BHJP
H01G 11/78 20130101ALI20220203BHJP
H01M 50/10 20210101ALI20220203BHJP
H01M 50/147 20210101ALI20220203BHJP
H01M 50/172 20210101ALI20220203BHJP
H01M 50/50 20210101ALI20220203BHJP
H01M 50/543 20210101ALI20220203BHJP
H01M 50/20 20210101ALN20220203BHJP
【FI】
H01M50/183
C03C10/02
H01G9/10 A
H01G11/74
H01G11/78
H01M50/10
H01M50/147
H01M50/172
H01M50/50
H01M50/543
H01M50/20
(21)【出願番号】P 2017525589
(86)(22)【出願日】2015-10-29
(86)【国際出願番号】 EP2015075065
(87)【国際公開番号】W WO2016074932
(87)【国際公開日】2016-05-19
【審査請求日】2017-07-27
【審判番号】
【審判請求日】2019-11-26
(31)【優先権主張番号】102014016600.7
(32)【優先日】2014-11-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】504299782
【氏名又は名称】ショット アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】SCHOTT AG
【住所又は居所原語表記】Hattenbergstr. 10, 55122 Mainz, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100156812
【氏名又は名称】篠 良一
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ヘルムート ハートル
【合議体】
【審判長】平塚 政宏
【審判官】池渕 立
【審判官】土屋 知久
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-511545(JP,A)
【文献】特開2007-134233(JP,A)
【文献】国際公開第2014/170219(WO,A1)
【文献】特開平9-35748(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M2/06,2/08,2/30
H01G11/74,11/78
H01G9/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯蔵装置のハウジング又はハウジングのハウジング部材(3)を貫通するフィードスルー(1)を備えたハウジング又はハウジング部材であって、前記ハウジング又はハウジング部材は、アルミニウム、アルミニウム合金、AlSiC、マグネシウム、マグネシウム合金、チタン又はチタン合金である軽金属からなり、かつ外側及び内側を備え、かつ前記ハウジング又はハウジング部材(3)は少なくとも1つの開口部を備え、前記開口部をガラス材料又はガラスセラミック材料(200)中で少なくとも1つの
ピン状の導体(20)が貫通するように案内され、かつ前記
ピン状の導体(20)は、軸方向で少なくとも2つの部分を有し、アルミニウム、アルミニウム合金、AlSiC、マグネシウム又はマグネシウム合金である軽金属からなる第1の部分(100.1)及び銅又は銅合金からなる第2の部分(100.2)、及び前記軽金属から銅又は銅合金への移行部(110)を備え、かつ前記移行部(110)は、前記ガラス材料又はガラスセラミック材料(200)の領域内にある、ハウジング又はハウジング部材において、前記ガラス材料又はガラスセラミック材料は、前記ガラス材料又はガラスセラミック材料の熱膨張係数αが、前記ハウジング又はハウジング部材の材料の熱膨張係数αより低く、そのため圧縮ガラス封止を提供するように選択されていて、このフィードスルーがガラス又はガラスセラミック材料の領域で気密に密閉していて、かつ1barの圧力差で、最大1・10
-8mbarls
-1のヘリウム漏出速度を有していて、前記フィードスルーを貫通するように案内された前記
ピン状の導体の前記第1の部分は外側に向いていて、かつ前記フィードスルーを貫通するように案内された前記
ピン状の導体の第2の部分は内側に向いていて、か
つ前記ハウジングは、ハウジングの厚みdwを示し、かつ開口部の領域で
補強領域(12)を
備え、前記補強領域中の厚みが
dvであり、かつ前記補強領域(12)の厚みdvが、前記ハウジング又はハウジング部材中での前記ガラス材料又はガラスセラミック材料のガラス封止長
さを提供
し、前記補強領域(12)の幅Bvが、ハウジングの厚みdwよりも大きいことを特徴とする、ハウジング又はハウジング部材。
【請求項2】
前記ガラス材料又はガラスセラミック材料は、13・10
-6/K~23・10
-6/Kの範囲にある熱膨張係数αを示すことを特徴とする、請求項1に記載のハウジング又はハウジング部材。
【請求項3】
前記ガラス材料は、熱膨張係数αが、13・10
-6/K~20・10
-6/Kの範囲にあるように選択されることを特徴とする、請求項1から2までのいずれか1項に記載のハウジング又はハウジング部材。
【請求項4】
前記ガラス材料は、熱膨張係数αが、13・10
-6/K~19・10
-6/Kの範囲にあるように選択されることを特徴とする、請求項3に記載のハウジング又はハウジング部材。
【請求項5】
前記ガラス材料は、モル%で示して次の成分:
P
2O
5 35~50モル%
Al
2O
3 0~14モル%
B
2O
3 2~10モル%
Na
2O 0~30モル%
M
2O 0~20モル%、ここで、Mは、K、Cs、Rbであってよい
PbO 0~10モル%
Li
2O 0~45モル%
BaO 0~20モル%
Bi
2O
3 0~10モル%
を含むことを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載のハウジング又はハウジング部材。
【請求項6】
前記ガラス材料は、
単一の材料であり、前記材料は、前記導体の前記第1の部分(100.1)の軽金属及び前記導体の前記第2の部分(100.2)の銅又は銅合金に合わせた熱膨張係数を示すことを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項に記載のハウジング又はハウジング部材。
【請求項7】
前記ガラス材料又はガラスセラミック材料は、2つの材料、つまり第1のガラス材料又はガラスセラミック材料(210.1)、第2のガラス材料又はガラスセラミック材料(210.2)からなり、前記第1のガラス材料(210.1)は、前記導体の前記第1の部分(100.1)の軽金属の熱膨張係数に合わせられていて、かつ前記第2のガラス材料(210.2)は、第2の部分の銅又は銅合金の熱膨張係数に合わせられていることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項に記載のハウジング又はハウジング部材。
【請求項8】
前記ガラス材料(200)は、少なくとも1つのカバー層(220)として、ガラス層、プラスチック層又はバリア被覆又は前記層の複数の組み合わせを備えることを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項に記載のハウジング又はハウジング部材。
【請求項9】
請求項1から8までのいずれか1項に記載のハウジング又はハウジング部材を備えた、貯蔵装置。
【請求項10】
請求項9に記載の少なくとも2つの貯蔵装置を備えた設備において、前記少なくとも2つの貯蔵装置が、アルミニウム、アルミニウム合金、AlSiC、マグネシウム又はマグネシウム合金である軽金属からなる接続ピースとしてのプレートで、電気的に接続されている及び/又は機械的に結合されている、設備。
【請求項11】
前記接続ピースとしてのプレートは、アルミニウム又はアルミニウム合金であることを特徴とする、請求項10に記載の設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、殊に、金属、殊に軽金属、好ましくはアルミニウム、アルミニウム合金、AlSiC、マグネシウム、マグネシウム合金、チタン、チタン合金、鋼、ステンレス鋼又は特殊鋼からなるハウジングのハウジング部材、殊に貯蔵装置、好ましくはバッテリー又はキャパシタのハウジングのハウジング部材を貫通するフィードスルー、並びにこの種のフィードスルーを備えた電気貯蔵装置用の、殊にバッテリー又はキャパシタ用のハウジング、並びに本発明によるハウジングを備えた貯蔵装置、殊にバッテリー又はキャパシタに関する。
【0002】
貯蔵装置、殊に本発明の意味範囲でバッテリーとは、放電後に廃棄することができる及び/又はリサイクルすることができるワンウェイバッテリー、並びに蓄電池であると解釈される。蓄電池、好ましくはリチウムイオンバッテリーは、例えばポータブル電子機器、携帯電話、電動工具、並びに殊に電気自動車のような多様な用途が予定されている。これらのバッテリーは、例えば鉛酸バッテリー、ニッケルカドミウムバッテリー又はニッケルメタルハイドライドバッテリーのような従来のエネルギー源を代替可能である。
【0003】
リチウムイオンバッテリーは数年来公知である。これに関して、例えば「Handbook of Batteries」、David Linden編、第2版、McCrawhill、1995、第36章及び第39章が指摘される。
【0004】
リチウムイオンバッテリーの多様な態様は、多くの特許に記載されている。
【0005】
例えば次のものが挙げられる:
US 961,672、US 5,952,126、US 5,900,183、US 5,874,185、US 5,849,434、US 5,853,914並びにUS 5,773,959。
【0006】
殊に自動車環境で使用するためのリチウムイオンバッテリーは、原則として、互いに直列接続される多数の個々のバッテリーセルを備える。互いに並列接続又は直列接続されたバッテリーセルは、いわゆるバッテリーパックにまとめられ、複数のバッテリーパックが、リチウムイオンバッテリーともいわれるバッテリーモジュールにまとめられる。各々の個々のバッテリーセルは、バッテリーセルのハウジングから引き出された電極を有する。
【0007】
殊に、自動車環境中でリチウムイオンバッテリーを使用するために、耐腐食性、事故の際の耐久性又は耐振動性のような多くの問題を解決しなければならない。更なる問題は、長期間にわたる気密な密閉性である。
【0008】
この密閉性は損なわれることがある、例えば、バッテリーセルの電極又はバッテリーセル内の電極フィードスルーの領域内での漏れである。この種の漏れは、例えば、温度交番負荷及び機械的交番負荷、例えば自動車内での振動又はプラスチックの老化により引き起こされることがある。
【0009】
バッテリー又はバッテリーセルの短絡又は温度変化は、バッテリー又はバッテリーセルの寿命を短縮しかねない。
【0010】
事故の際の改善された耐久性を保証するために、独国特許出願公開第10105877号明細書(DE 101 05 877 A1)は、例えば、リチウムイオンバッテリー用のハウジングを提案していて、このハウジングは金属ジャケットを備え、この金属ジャケットは両側が空いていて、かつ密閉される。
【0011】
電流接続部又は電極は、プラスチックにより絶縁されている。プラスチック絶縁の欠点は、限られた耐熱性、限られた機械強度、耐用年数にわたる老化及び不確かな密閉性である。
【0012】
したがって、電流フィードスルーは、先行技術によるリチウムイオンバッテリーの場合に、例えばリチウムイオンバッテリーのカバーに、気密に密閉して取り付けられていない。例えば、先行技術の場合に、一般に、試験規定に依存して、1barの圧力差で、最大1・10-6mbarls-1のヘリウム漏出速度が達成される。更に、電極は押し潰されていて、かつ付加的な絶縁体を備えたレーザー溶接された結合部材が、バッテリーの空間内に配置されている。
【0013】
WO 2012/167921、WO 2012/1 10242、WO 2012/1 10246、WO 2012/1 10244からは、貯蔵装置用のハウジングのハウジング部材を貫通するように案内されるフィードスルーは公知である。このフィードスルー内には、横断面がガラス材料又はガラスセラミック材料中で開口部を貫通するように案内される。
【0014】
貯蔵装置中で使用する場合に、一般に、導体を備えた2つのフィードスルー、つまりカソードとして利用される少なくとも1つの導体、電気化学セルのアノードとして利用される少なくとも1つの別の導体が予定されている。アノードの材料とカソードの材料は互いに異なり、例えば、電気化学セル又はバッテリーセルのカソードにピン状の導体が接続される場合に、ピン状の導体のために、銅又は銅合金が使用され、かつ、導体がアノードに接続される場合に、アルミニウム(Al)又はアルミニウム合金が使用される。WO 2012/167921に記載されているように他の材料も可能であり、この開示内容は、本出願に完全に組み込まれる。
【0015】
WO 2012/167921の電気化学セルの場合に、貯蔵装置又はバッテリーセルの外側接続部は、2つの異なる材料を備え、このことが殊に複数のバッテリーセルをまとめて接続する際に不利であるという問題がある。
【0016】
したがって、本発明の課題は、先行技術の問題を回避するフィードスルーを提供することである。
【0017】
欧州特許出願公開第2371419号明細書(EP 2 371 419 A2)は、医学的インプラント用のキャパシタの電気的フィードスルー並びにその製造方法及びその使用を示す。確かに、欧州特許出願公開第2371419号明細書(EP 2 371 419 A2)には、接続ピンが2つのピン部分、つまりPt、Pt/Ir、FeNi、FeNiCo、FeCr、Nb、Ta、Mo、W、Cr、FeCr、V又はFiからなる第1のピン部分及びアルミニウムを含む第2のピン部分からなることは記載されている。ただし、第1のピン部分について、欧州特許出願公開第2371419号明細書(EP 2 371 419 A2)では材料としてCuは挙げられていない。更に、欧州特許出願公開第2371419号明細書(EP 2 371 419 A2)では、熱膨張係数αについての値は示されていない。更に、欧州特許出願公開第2371419号明細書(EP 2 371 419 A2)に挙げられたハウジングによって、気密に密閉されたフィードスルーは達成できない、というのもガラスの熱膨張は、これに対して小さすぎるためである。
【0018】
DE 10 2013 006 463は、バッテリー、殊にリチウムイオンバッテリー用のフィードスルーを記載しているが、このピン状の導体は、単一の材料からなる。
【0019】
本発明の場合に、この課題は、殊に、金属、殊に、軽金属、好ましくはアルミニウム、アルミニウム合金、AlSiC、マグネシウム、マグネシウム合金、チタン、チタン合金、鋼、ステンレス鋼又は特殊鋼からなるハウジング、殊に貯蔵装置、及び好ましくはバッテリー又はキャパシタのハウジングの部材を貫通するフィードスルーにおいて、ハウジング部材が少なくとも1つの開口部を備え、この開口部をガラス材料又はガラスセラミック材料中で少なくとも1つの導体が貫通するように案内され、ここで、この導体は、軸方向で少なくとも2つの部分、つまり第1の材料からなる第1の部分及び第2の材料からなる第2の部分、並びに第1の材料から第2の材料への移行部を備えるフィードスルーにより解決される。この種の実施態様は、ピン状の導体が、電気化学セル又はバッテリーセルのカソードに接続され、かつ銅からなり、外側で他の材料、例えばアルミニウムからなる場合に生じることがある問題を解決する。
【0020】
これは、例えば、個々のセルの導体を互いに共通の部材、例えばアルミニウムプレートにより接続することにより、複数のバッテリーセルを極めて容易に相互接続することができるという利点を示す。更に、異なる導体材料の移行箇所を、ガラス材料又はガラスセラミック材料の領域に移すことにより、移行箇所がバッテリーセルの外側に存在するか又はバッテリーセルの内側に存在する場合に生じることがあるような接触腐食は避けられる。それにより、この接触腐食は、このフィードスルーがガラス又はガラスセラミックの領域で気密に密閉しているために殊に避けられる。気密に密閉したとは、ここでは、1barの圧力差で、最大1・10-8mbarls-1のヘリウム漏出速度が存在すること、つまり、ヘリウム漏出速度が、可能な全ての試験条件で常に1・10-8mbarls-1より低いことを意味する。この気密な密閉性は、移行箇所を隔離し、かつ腐食から保護することを保証する。この気密な密閉性は、導体のガラス封止が、圧縮ガラス封止であることにより達成される。適合されたガラス封止とは反対に圧縮ガラス封止は、ハウジング材料並びに導体材料の熱膨張係数がガラス材料の熱膨張係数とは異なる場合に達成される。この場合、ガラス材料の熱膨張係数は、ハウジング材料の熱膨張係数よりも低いため、ハウジング材料からのガラス材料への圧力を作り出すことができる。
【0021】
導体の、好ましくはセル内に導入される導体の外側に配置されている第1の材料は、上述されているように、軽金属、殊にアルミニウム、アルミニウム合金、AlSiC、マグネシウム、マグネシウム合金又は他の金属であってよい。第1の材料を、例えば軽金属、殊にアルミニウム又はアルミニウム合金として選択する利点は、好ましくは同様にアルミニウム又はアルミニウム合金である接合材料との容易な溶接性、並びに低い質量である。
【0022】
第2の、内側に向いた材料、つまりバッテリーセル内へ突き出た導体部分又はピン部分の材料は、例えば導体がカソードに接続される場合に、銅、銅合金、又はバッテリーセル内でカソード材料に適した他の材料であることができる。ここでは、カソードは、バッテリーセルのプラス極である、というのも、バッテリーセルの場合に、電気エネルギーは、他のエネルギー、ここでは化学エネルギーを費やして変換されるためである。異なる材料に基づきピンが空気により腐食されることを回避するために、第1の材料から第2の材料への移行部は、ガラス材料又はガラスセラミック材料の領域内にあることが予定される。本発明の第1の実施態様の場合に、移行部を含めた2つに分けられたピンを取り囲むガラスセラミック材料は、単一の材料であり、この材料は、第1の部分の材料にも、第2の部分の材料にもその熱膨張係数が合わせられているように選択されることが予定される。
【0023】
開口部内に導体がガラス封止されるハウジングの材料は、好ましくは金属、殊に軽金属、好ましくはアルミニウム、アルミニウム合金、AlSiC、マグネシウム、マグネシウム合金、チタン、鋼、ステンレス鋼又は特殊鋼である。アルミニウム又はアルミニウム合金が、更に特に好ましい。好ましくは、ハウジング用のアルミニウム又はアルミニウム合金は、高い強度により特徴付けられるアルミニウム又はアルミニウム合金である。
【0024】
別の実施態様の場合に、導体も、ガラス材料又はガラスセラミック材料も、同様に2つの材料からなり、かつ例えばガラス複合材料を生じ、この場合、第1のガラス材料は、導体の第1の部分の熱膨張係数に合わせられていて、かつ第2のガラス材料は、第2のガラス材料の熱膨張係数に合わせられている。
【0025】
ガラス材料を合わせることは、ここでは、一方で、ガラス材料の圧縮圧力に基づいて確実な気密な密閉性を提供し、他方で、ガラス封止中の亀裂が回避されるように行われるべきである。
【0026】
モル%で示す次の成分を含むガラス材料が特に好ましい:
P2O5 35~50モル%、殊に39~48モル%
Al2O3 0~14モル%、殊に2~12モル%
B2O3 2~10モル%、殊に4~8モル%
Na2O 0~30モル%、殊に0~20モル%
M2O 0~20モル%、殊に12~20モル%、ここで、Mは、K、Cs、Rbであってよい
PbO 0~10モル%、殊に0~9モル%
Li2O 0~45モル%、殊に0~40モル%、特に好ましくは17~40モル%
BaO 0~20モル%、殊に0~20モル%、特に好ましくは5~20モル%
Bi2O3 0~10モル%、殊に1~5モル%、特に好ましくは2~5モル%
【0027】
好ましくは、ガラス材料は、20℃~300℃の範囲内の膨張係数αが、≧13・10-6/K、好ましくは13・10-6/K~25・10-6/Kの範囲、殊に13・10-6/K~23・10-6/Kの範囲、好ましくは13・10-6/K~20・10-6/Kの範囲、殊に13・10-6/K~19・10-6/Kの範囲、殊に好ましくは13・10-6/K~18・10-6/Kの範囲を示すように選択される。ガラス材料のための膨張係数のこのような選択は、ハウジング材料が、例えばアルミニウム又はアルミニウム合金であり、かつ導体の第1の領域のピン材料、好ましくは導体の外側のピン材料がアルミニウムであり、かつ導体の内側の第2の領域の材料が銅である場合に、圧縮ガラス封止を得るために必要である。このような場合に、αは、13・10-6/Kと20・10-6/K未満の間に選択される。アルミニウムの膨張係数は、約23・10-6/Kであるため、アルミニウムは、殊にハウジングの側面から、この種のガラス材料に圧縮圧力を加え、それによりピンのガラス封止が行われる。Cuの膨張係数は約18・10-6/Kであるため、α<18・10-6/Kを示すガラス材料の使用は、ガラス封止の際に導体又はコンタクトピンが収縮して、導体又はコンタクトピンに対してガラス封止の気密な密閉性は生じないことが期待される。しかしながら、意外にも、ガラス組成がα<18・10-6/K、好ましくは15・10-6/K~17・10-6/Kを示す場合でも、気密に密閉したガラス封止が得られることが確認された。この気密に密閉したフィードスルーは、銅からなる導体の第2の部分に対してだけでなく、αが23・10-6/Kを示すアルミニウムからなる第1の部分に対しても得られる。アルミニウムに対して、ガラス材料の膨張係数の相違又はミスマッチは、銅に対するよりも明らかに大きい。
【0028】
フィードスルーのガラス材料がカバー層で覆われている又はカバー層を備える場合が特に好ましい。このカバー層は、多様な形を示してよい。一方で、カバー層は、ガラス層の形で、殊にカバーガラス層の形でガラス材料を含んでよく、又はプラスチック層又はバリア被覆、又は上述の層の複数の組み合わせであってよい。導体をガラス封止しているガラス材料上にカバー層を施すことにより、ガラス封止のガラス材料は、電解質、例えばフッ酸により攻撃されず、腐食もされないことが保証され、これは例えば低い耐水性のリン酸塩ガラスの場合に重要である。
【0029】
更に、特により好ましい実施形態の場合に、ハウジング部材は、できる限り薄く形成されていて、かつ必要な圧縮圧力を及ぼすために、フィードスルーの領域でだけ補強部材又は補強領域が形成されることが予定されていてよい。これにより、殊に材料コストを節約することができる。
【0030】
好ましくは、本発明によるフィードスルーは、ハウジング内で、殊に、バッテリーであってもキャパシタであってもよい電気貯蔵装置用のハウジング内で使用される。したがって、本発明は、この種のハウジングを備えた貯蔵装置、殊にバッテリー又はキャパシタも提供する。
【0031】
バッテリーセルの外側に向いた、アルミニウムからなる導体により、簡単な方法様式で、多数の個々のバッテリーセルを、複数のバッテリーセルを備えた1つのバッテリーブロックに接続することが可能である。したがって、本発明は、少なくとも2つの貯蔵装置が、接続ピース、特に接続材料からなるプレートにより、殊に電気的に接続されている及び/又は機械的に結合されている本発明による少なくとも2つの貯蔵装置を備えた設備、殊にバッテリーブロックも提供する。好ましくは、接続材料としてアルミニウム又はアルミニウム合金が選択される。
【0032】
本発明を、次に図面を用いて説明する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】2つに分けられた導体並びに2つに分けられたガラス材料を備えたバッテリーハウジング中の、本発明によるフィードスルー。
【
図2】本発明によるフィードスルー、2つに分けられた導体及び
単一のガラス材料を備えたバッテリーセルハウジングの別の実施態様。
【0034】
図1では、ハウジング、殊に貯蔵セルハウジングの、殊にバッテリーセルハウジングのハウジングカバー3中に通されている本発明によるフィードスルー1が示されている。
【0035】
ハウジングカバーの厚みは、dwで表されている。
図1から明白であるように、フィードスルー1の領域内で、バッテリーセルハウジング又はハウジングカバー3は補強されていて、つまり補強領域12を備え、この厚みは、ハウジング部材の厚みdwよりも本質的に大きい。補強領域中の厚みはdvである。補強領域の厚みは、ここではガラス材料200についてのガラス封止長さを提供する。
【0036】
必要な圧縮圧力を加えるために、フィードスルーの領域で補強領域は、厚みdwよりも幅広に形成されている、つまり補強領域の幅Bvは、カバーの厚みdwよりも大きい。
【0037】
カソードに接続されているフィードスルー1では、ピン状の導体が2つに分けられていて、つまり第1の領域100.1と第2の領域100.2とを備えている。第1の領域は、好ましくはアルミニウムからなり、第2の領域は、銅からなるピン状の導体である。貯蔵装置又はバッテリーセル内に向けられた銅から形成されたピンは、好ましくはカソードに接続される。明らかに認識できるように、2つの領域100.1、100.2からなるピン状の導体20の移行箇所は、ガラス封止200の領域内に予定されている。ガラス封止200は、
図1に示された実施形態の場合には、2つの材料を備え、つまり、ピン状の導体の第1の領域100.1の材料に合わせられている第1のガラス材料210.1と、ピン状の導体20の第2の領域100.2に合わせられている第2のガラス材料210.2とを備える。ガラス材料に合わせることは、一方では、ガラス材料の圧縮圧力に基づいて、確実な気密な密閉性が提供されるように、他方では、ガラス封止内での亀裂が避けられるように行われる。
【0038】
好ましくは、ガラス材料は、20℃~300℃の範囲内で≧13・10-6/K、好ましくは13・10-6/K~25・10-6/Kの範囲の膨張係数αを示す。
【0039】
次の表1中に、特に好ましくかつ13・10-6/K~20・10-6/Kの範囲の熱膨張係数により特徴付けされるガラス組成についての実施例が示されている。実施例AB1及びAB8について、この熱膨張係数は、銅の熱膨張係数α=18・10-6/Kを明らかに上回り、それゆえこれらのガラスは、特に気密に密閉した圧縮ガラス封止のために特に適しているが、実施例AB2、AB3、AB4、AB5、AB6、AB7は、18・10-6/Kを下回る。αについてのこのような値は、収縮プロセスに基づいて、銅又はアルミニウムからなる導体に対して気密に密閉したフィードスルーを期待できないにもかかわらず、意外にも、これらの材料も、気密に密閉した圧縮ガラス封止のために適していることが確認された。
【0040】
【0041】
僅かな浸出の他に、これらのガラスは、高い耐水性によっても特徴付けられる。
【0042】
表1中の実施例1(AB1)は、殊にアルミニウム/アルミニウムガラス封止のために、つまり取り囲むアルミニウム基体中での導体としてアルミニウムピンのガラス封止のために適している。
【0043】
表1中の実施例6は、殊にCu/Alガラス封止のために、つまり取り囲むアルミニウム基体中での導体としての銅ピンのガラス封止のために適している。
【0044】
これらの実施例のいくつかは、Cuとの接合にとって、傾向的に低すぎる膨張係数を示すにもかかわらず、この種のガラス組成を示すガラスは不安定になることなく、高いLi割合を融液中に溶解することができことが明らかとなる。
【0045】
実施例7及び8(AB7及びAB8)は、実施例6(AB6)の場合のようなPbOの代わりに、Bi2O3を含むことにより特徴付けられる。
【0046】
意外にも、Bi2O3により耐水性を明らかに高めることができることが判明した。1モル%のBi2O3の導入により、例えば実施例8(AB8)の場合に、実施例1(AB1)に対して、ほぼ同じアルカリ含有率で、10倍高い耐水性を達成することができた。このことは、当業者にとって意外である。
【0047】
Bi2O3は、殊に、実施例6(AB6)によるPbOの代わりにも使用することができる。鉛は環境に有害であるため、不純物を除いてPbOフリーである、つまり、PbOを0モル%で使用することができるガラス組成物は特に好ましい。不純物を除いてフリーであるとは、この出願において、ガラス中にその都度の物質、例えば鉛が100ppm未満、好ましくは10ppm未満、殊に1ppm未満含まれていることを意味する。
【0048】
フィードスルー1は、移行部を備えたピン状の導体を封止しているガラス材料又はガラスセラミック材料を囲むカバー層220を備えることも明らかに認識することができる。
【0049】
このカバー層220は、被覆に関してガラス材料も、プラスチック材料も含んでいてよい。このカバー層は、例えばリン酸塩ガラスであってよい第1のガラス材料210.1のような腐食されやすいガラスを保護し、かつ例えば水により余り攻撃されないことを保証する。
【0050】
任意でかつ図示されていないが、例えば第2のガラス材料210.2を、電解質、例えばHFの攻撃から保護するために、ガラスの、貯蔵装置の内側300に向いた側にカバーガラスを配置することも可能である。
【0051】
第1のガラス材料100.1から第2のガラス材料100.2への移行部110を、ガラス材料又はガラスセラミック材料200内にずらし込むことにより、局部電池が形成されずかつ導体20の金属の腐食が起こらないことが保証される。
【0052】
図1に示された、ハウジングカバー3を貫通する第2のフィードスルー1000(この導体はアノードに接続されている)は、異なる材料からなる本発明による2つに分けられた導体を備えておらず、好ましくはアノードに接続されている、
単一の材料、つまりアルミニウムからなる導体1020を備える。このガラス材料は、場合により、
単一の材料であり、かつ1010で示されている。この材料も、カバー層220を備えていてよい。
【0053】
図2では、本発明の別の実施態様が示されていて、ここでもまた、
図1の場合と同様に、2つに分けられたガラスピン20が、フィードスルー内にはめ込まれていて、この場合、このフィードスルーは、
単一のガラス又はガラスセラミック材料だけを備える。2つに分けられたピン20は、また、2つの領域100.1、100.2、つまり、好ましくはアルミニウムからなっていてよい第1の領域100.1、及び銅からなっていてよく、かつカソードに接続されている第2の領域100.2を備える。
【0054】
ここでは、カソードは、バッテリーセルのプラス極である、というのも、バッテリーセルの場合に、電気エネルギーは、他のエネルギー、ここでは化学エネルギーを費やして変換されるためである。
【0055】
図1の第1の実施例の場合と同様に、厚みdwを示すハウジングカバー3は、補強領域を提供するガラス封止の領域よりも薄く形成されている。
【0056】
図1及び
図2において同じ部材は、同じ符号で表されている。
【0057】
本発明において、初めて、貯蔵装置のハウジングの外側で、同じ材料、例えばアルミニウムを備えるが、それに対して、導体のセル内に向いた材料では、異なる材料を使用することができるフィードスルーが提供される。これは、貯蔵装置のハウジングの外側で、常に同じ接続部を使用できるという利点を有する。これにより、例えばバッテリーセルの外側で、他の材料、好ましくはアルミニウムと極めて容易に溶接することができるアルミニウム接続部を使用することができる。バッテリーの外側で本発明によりアルミニウムを使用することができる場合、アルミニウムがアルミニウムに溶接され、このことは高いプロセス安全性の結果をもたらす。更に、それにより、堅固で安全な製造プロセスが保証される。更に、このように製造された接続は、特に長寿命でかつ疲労することがない。第1及び第2のピン材料又は導体材料の移行部をガラス材料中に導入することにより、異なる材料からなる導体の腐食、つまり接触腐食は避けられる。
【0058】
本発明は、次の箇条書きに記されている態様を含み、この態様は明細書の部分であり、特許請求の範囲ではない。
【0059】
箇条書き
1. 殊に、金属、殊に軽金属、好ましくはアルミニウム、アルミニウム合金、AlSiC、マグネシウム、マグネシウム合金、チタン、鋼、ステンレス鋼又は特殊鋼からなるハウジング、殊に貯蔵装置、好ましくはバッテリー又はキャパシタのハウジングのハウジング部材(3)を貫通するフィードスルー(1)であって、前記ハウジング部材(3)は、少なくとも1つの開口部を備え、前記開口部をガラス材料又はガラスセラミック材料(200)中で少なくとも1つの導体(20)が貫通するように案内されるフィードスルー(1)において、前記導体(20)は軸方向で少なくとも2つの部分、つまり第1の材料からなる第1の部分(100.1)及び第2の材料からなる第2の部分(100.2)、並びに第1の材料から第2の材料への移行部(110)を備えることを特徴とする、フィードスルー(1)。
2. 前記第1の材料は、好ましくは軽金属、殊にアルミニウム、アルミニウム合金、AlSiC、マグネシウム、マグネシウム合金又は他の金属であることを特徴とする、1項に記載のフィードスルー。
3. 前記第2の材料は、好ましくは金属、殊に銅又は銅合金であることを特徴とする、1項又は2項に記載のフィードスルー。
4. 第1の材料から第2の材料への前記移行部(110)は、前記ガラス材料又はガラスセラミック材料(200)の領域内にあることを特徴とする、1項から3項に記載のフィードスルー。
5. 前記ガラス材料又はガラスセラミック材料は、単一の材料であり、前記単一の材料は、好ましくは、前記導体の前記第1の部分(100.1)の材料及び前記導体の前記第2の部分(100.2)の材料に合わせられた熱膨張係数αを示し、前記熱膨張係数αは、好ましくは13・10-6/K~25・10-6/Kの範囲にあることを特徴とする、1項から4項に記載のフィードスルー。
6. 前記ガラス材料又はガラスセラミック材料は、2つの材料、つまり第1のガラス材料又はガラスセラミック材料(210.1)と第2のガラス材料又はガラスセラミック材料(210.2)からなり、前記第1のガラス材料(210.1)は、前記第1の部分の熱膨張係数に合わせられていて、かつ前記第2のガラス材料(210.2)は、前記第2の部分の熱膨張係数に合わせられていることを特徴とする、1項から4項に記載のフィードスルー。
7. 前記ガラス材料(200)は、少なくとも1つのカバー層(220)、好ましくはガラス層、殊にカバーガラス層、プラスチック層又はバリア被覆又は前記層の複数の組み合わせを備えることを特徴とする、1項から6項に記載のフィードスルー。
8. 前記ハウジングは、ハウジングの厚みdwを示し、かつ、前記開口部の領域で補強部材又は補強部分を、ハウジングの厚み及び補強部材の厚み又は補強部分の厚みが、前記ハウジング又はハウジング部材中の前記ガラス材料又はガラスセラミック材料のガラス封止長さ(EL)を提供するように備えることを特徴とする、1項から7項に記載のフィードスルー。
9. 1項から8項に記載のフィードスルーを備えたハウジング、殊に、電気貯蔵装置用の、殊にバッテリー又はキャパシタ用のハウジング。
10. 9項に記載のハウジング又はハウジング部材を備えた、貯蔵装置、殊にバッテリー又はキャパシタ。