(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-14
(45)【発行日】2022-01-25
(54)【発明の名称】熱分解油ならびにその製造のための方法および設備
(51)【国際特許分類】
C10G 1/00 20060101AFI20220118BHJP
C10L 1/02 20060101ALI20220118BHJP
C10G 45/02 20060101ALI20220118BHJP
C08J 11/12 20060101ALI20220118BHJP
B09B 3/40 20220101ALI20220118BHJP
【FI】
C10G1/00 C ZAB
C10L1/02
C10G45/02
C08J11/12
B09B3/00 302Z
(21)【出願番号】P 2017545348
(86)(22)【出願日】2015-12-01
(86)【国際出願番号】 EP2015078143
(87)【国際公開番号】W WO2016134794
(87)【国際公開日】2016-09-01
【審査請求日】2018-08-29
(31)【優先権主張番号】102015102819.0
(32)【優先日】2015-02-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】102015108552.6
(32)【優先日】2015-05-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】594102418
【氏名又は名称】フラウンホーファー-ゲゼルシャフト ツル フェルデルング デル アンゲヴァンテン フォルシュング エー ファウ
【氏名又は名称原語表記】Fraunhofer-Gesellschaft zur Foerderung der angewandten Forschung e.V.
【住所又は居所原語表記】Hansastrasse 27c, D-80686 Muenchen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス ホアヌング
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス アプフェルバッハー
(72)【発明者】
【氏名】ミルード ウアディ
(72)【発明者】
【氏名】ヨハネス ノイマン
【審査官】齊藤 光子
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-511940(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0117860(US,A1)
【文献】特表2013-504651(JP,A)
【文献】国際公開第2013/185149(WO,A1)
【文献】Dabai et al.,,Tar formation and destruction in a fixed bed reactor simulating downdraft gasification: effect of reaction conditions on tar cracking products,Energy & fuels,28(3),米国,ACS Publications,2014年02月14日,1970-1982
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10G 1/00-99/00
C10L 1/02
C08J 11/12
B09B 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程
A)
出発材料として使用される少なくとも部分的に生物由来の材料を、実質的に酸素の非存在下に、出発材料が250℃から700℃までの温度に加熱される熱分解帯域において熱分解する工程、ここで、熱分解される材料の熱分解帯域における滞留時間は、1秒から
30分までであり、かつ熱分解された固形物と熱分解蒸気とが形成され、
B)少なくとも、熱分解蒸気が触媒床と接触する後コンディショニング帯域で熱分解蒸気を脱酸する工程、ここで、触媒は、方法工程A)によって得られた熱分解された固形物を含むか、またはそれからなるものであり、かつここで、後コンディショニングは、450℃から
750℃までの温度で行われ、
かつここで、後コンディショニング帯域での熱分解蒸気の滞留時間は1秒から180秒であり、かつここで、熱分解油が形成されるが、ただし、後コンディショニング帯域の温度が、熱分解帯域の温度より少なくとも50℃高く、ここで、工程B)で使用される熱分解された固形物が、熱分解帯域から直接供給されるか、またはその製造後に酸化条件に曝されておらず、
C)熱分解油と、さらなる形成された熱分解生成物とを分離装置で分離する工程
を含む、熱分解油を製造するための方法。
【請求項2】
工程A)が、300℃から600℃までの温度で行われることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
熱分解される材料の熱分解帯域における滞留時間は、5秒から10分までであることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
工程B)が、500℃から750℃までの温度で行われることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
出発材料は、発酵残渣、セルロース含有材料、農業廃棄物およびワラ、工業用バイオマス廃棄物、発酵残渣、ビールかす、ブドウの絞りかす、オリーブの絞りかす、クルミの殻またはコーヒーの出し殻、使用済み油脂または動物性脂肪、紙再生の残りかす、糞尿を含む材料ならびに汚泥またはそれらの混合物から選択されることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
出発材料は、ポリマーから選択されていることを特徴とする、請求項1から
5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
工程B)で使用される触媒の製造のための出発材料は、少なくとも1質量%の、DIN EN 14775に準拠する灰含有率を有することを特徴とする、請求項1から
6までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
出発材料は、少なくとも5質量%の、DIN EN 14775に準拠する灰含有率を有することを特徴とする、請求項
7に記載の方法。
【請求項9】
出発材料は、以下の化学元素:亜鉛、鉄、白金、レニウム、クロム、銅、マンガン、ニッケル、チタン、アルミニウムまたはケイ素の少なくとも1つを含むことを特徴とする、請求項1から
8までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
出発材料が、10質量%超の湿分含有率を有することを特徴とする、請求項1から
9までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
出発材料は、酸を含むものか、または熱分解中に酸が形成されるように選択されることを特徴とする、請求項1から
10までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
出発材料の生物由来の含分のリグノセルロース含有率は、5質量%超であることを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
工程B)において、触媒として、新たに形成された熱分解された固形物を使用すること、かつ工程B)で使用される触媒および工程B)で形成される熱分解油は、少なくとも部分的に同一の出発材料から得られたものであることを特徴とする、請求項1から
12までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
工程B)において、触媒として、工程A)で新たに形成された触媒を使用すること、かつ触媒の後コンディショニング帯域における滞留時間は、最大12時間であることを特徴とする、請求項1から
13までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
工程B)において、熱分解蒸気を、熱分解蒸気の体積流が実質的にすべて触媒床中に存在している流路を通して運ばれるように、後コンディショニング帯域に供給し、ここで、触媒床は、流れ方向に垂直に配置された後コンディショニング帯域の断面領域が、実質的に完全に触媒床で充填されて存在しているように後コンディショニング帯域に配置されていることを特徴とする、請求項1から
14までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
工程B)において、触媒として、連続的に新たに形成された熱分解された固形物を供給すること、かつ熱分解蒸気と最終的に供給された触媒とが方法工程B)の開始と同時に接触するように、熱分解蒸気の体積流を、触媒床を通して運ぶことを特徴とする、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
工程B)において、熱分解蒸気の後コンディショニング帯域における滞留時間は、
5秒から
60秒までであることを特徴とする、請求項1から
16までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
熱分解蒸気の後コンディショニング帯域における滞留時間は、1秒から60秒までであり、工程B)における温度は、少なくとも600℃であることを特徴とする、請求項
17に記載の方法。
【請求項19】
熱分解生成物を工程B)または工程C)の後に接触水素化することを特徴とする、請求項1から
18までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
工程C)において、得られた熱分解油の蒸留を行うことを特徴とする、請求項1から
19までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
75質量%超の炭素含有率、6質量%から11質量%までの水素含有率、および3質量%から9質量%までの酸素含有率、少なくとも0.1ppTの
14C-含有量および15mgKOH/g未満の酸価を有する、請求項1から
20までのいずれか1項に記載の方法によって得られる熱分解油。
【請求項22】
酸価は、10mgKOH/g未満であることを特徴とする、請求項
21に記載の熱分解油。
【請求項23】
酸素含有率は、8質量%未満であることを特徴とする、請求項
21または
22に記載の熱分解油。
【請求項24】
水素/炭素の質量比は、0.10より大きいことを特徴とする、請求項
21から
23までのいずれか1項に記載の熱分解油。
【請求項25】
含水率は、3質量%未満であることを特徴とする、請求項
21から
24までのいずれか1項に記載の熱分解油。
【請求項26】
熱分解油の少なくとも80質量%は、分解せずに蒸留可能であることを特徴とする、請求項
21から
25までのいずれか1項に記載の熱分解油。
【請求項27】
少なくとも5質量%の芳香族炭化水素が含まれていることを特徴とする、請求項
21から
26までのいずれか1項に記載の熱分解油。
【請求項28】
最大8質量%の多環芳香族炭化水素が含まれていることを特徴とする、請求項
21から
27までのいずれか1項に記載の熱分解油。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱分解油、ならびにとりわけ少なくとも部分的に生物由来の出発材料からのその製造のための熱接触法(thermokatalytisches Verfahren)および設備に関する。
【0002】
熱分解は、炭素含有出発材料、例えばバイオマスから、熱分解生成物としての液状の熱分解濃縮液(熱分解油)、固体の熱分解コークおよび熱分解ガスへの熱による反応に利用され、かつ酸素排除下または少なくとも実質的に酸素の非存在で行われる。熱分解生成物の割合および品質は、出発材料の選択により(とりわけ同じくその残留水分によっても)影響を受けやすい一方、特に、最も優勢な方法条件による影響を受けやすい。ここで、とりわけ熱分解温度、熱分解帯域における滞留時間および場合によって行われる後処理工程が挙げられる。
【0003】
つまり、熱分解は、250℃から1050℃の間の温度で、酸素の非存在での特殊な条件下で、前述の熱分解生成物を幅広い多様な用途のために製造することができる方法である。熱分解は、実質的に使用された出発材料の加熱速度に依存して、急速熱分解(flashおよびfast pyrolysis)と低速熱分解(slow pyrolysis)とに区別される。その他に、さらに中程度の温度領域における中程度の滞留時間でのいわゆる中速熱分解もある(例えば、国際公開第2010/130988号(WO2010/130988A1)に開示されている)。これらのさまざまな熱分解の種類はそれぞれ、熱分解法によって固形物、気体および液体(およびここでさらにまた水相および有機相)がどの程度形成するかによって特徴づけることもできる。
【0004】
急速熱分解によって、大量の凝縮可能な有機液体が得られる。これらの油は、多数の有機化合物(例えばアルコール、糖、フラン、フェノール、その他の芳香族化合物、ケトン、カルボン酸および水)を含んでいる。生物由来の出発材料が使用される場合、これらの成分は、とりわけその中に含まれているセルロース誘導体、ヘミセルロース誘導体およびリグニン誘導体の分解に由来するものである。形成された油は、とりわけその比較的高いエネルギー密度および比較的容易な貯蔵性および輸送性のゆえに固形物より優れている。
【0005】
しかし、急速熱分解を用いて生成された熱分解油は、自動車エンジンの駆動のための燃料には適していないという欠点がある。生成された熱分解油は、きわめて高い酸素含分を有しており、このことが、熱分解油を不安定にし、かつ劣化作用(例えば重合)を起こしやすくする。さらに、得られた油は、きわめて粘性が高く(分子量の高いオリゴマーおよび化合物の含有量が多いため)、さらに腐食性がある(酸が存在しているため)。最後に、これらの油の含水率は、25質量%より多い。このことが、慣用の燃料、例えばベンジンまたはディーゼルとの不充分な混和性、発熱量の減少および不充分な燃焼特性をもたらす。
【0006】
低速熱分解は、数十年にわたって石炭製造に用いられている。ここで、熱分解される材料の熱分解帯域における滞留時間は、数時間から数日である。25%未満の低い湿分含有率を有する出発材料、とりわけ木材が使用される。その他のバイオマテリアルを出発物質とする場合、その方法は好適ではないか、またはあまり好適でない。
【0007】
急速熱分解および低速熱分解の他に、中程度の温度領域における中程度の滞留時間での中速熱分解を用いることができる。国際公開第2010/130988号(WO2010/130988A1)は、使用される出発材料の粒径に依存して、滞留時間が数分であってよい方法を開示している。ここで、熱分解は、タール含有量を減少させる生成物をもたらす。しかし、ここでも、自動車用の燃料としての適性の不足が示されている。
【0008】
S. Renら(RSC Adv.、2014、4、10731)によれば、おがくずのペレットのマイクロ波熱分解の方法が記載されており、この方法は、それ自体生物由来の出発材料から得られた触媒の存在下に行われる。しかし、ここで得られた熱分解油は、とりわけ糖、グアイアコールおよびフェノールの形態で、酸素の高い含分を有している。
【0009】
出願人によって刊行された、J.NeumannらのJournal of Analytical and Applied Pyrolysis 113 (2013) 137には、発酵残渣の中速熱分解が記載されている。熱分解を行った後、形成された生成物は改質器に供給される。しかし、この刊行物は、価値の高い熱分解油を再生するために、改質器で使用される触媒についても、講じられうる具体的な措置についても教示していない。
【0010】
したがって、本発明の基礎をなす課題は、先行技術による熱分解油およびその製造方法を改良すること、およびとりわけ、自動車エンジン、定置エンジンおよびガスエンジンでの使用に好適な熱分解油が得られる方法、ならびにそのために好適な装置を示すことである。さらなる課題は、熱分解油の発熱量、粘度、腐食性、酸素含有量、硫黄含有量および/または含水量に関して、現行の熱分解法およびそれによって製造された熱分解油の改良である。
【0011】
これらの課題の少なくとも1つは、独立請求項に記載の熱分解油を製造するための方法、および熱分解油、および方法を実施するための設備により解決される。従属請求項、以下の記載および実施例は、有利なさらなる態様を教示する。
【0012】
熱分解油を製造するための方法は、以下の工程を含む:
A)まず、処理される出発材料を反応器の熱分解帯域に供給し、そこで250℃から700℃までの温度(熱分解反応器の反応器壁の内部表面上の測定された材料温度)で熱分解する工程、ここで、熱分解される材料の熱分解帯域における滞留時間は、1秒から1時間までである。熱分解帯域の終端部で得られる材料は、「熱分解された材料」と呼ばれる。熱分解された材料は、熱分解された固形物および熱分解蒸気を含む。
【0013】
B)次に、少なくとも、熱分解蒸気が450℃から1200℃までの温度で触媒床と接触する後コンディショニング帯域に熱分解蒸気を供給する工程、ここで、(凝縮不可能な熱分解ガスの他に)熱分解油が形成される。ここで、触媒としては、前述の方法工程A)から生じる熱分解された固形物が使用される。ここで、触媒は、「in situ」で使用することができる。しかし、本発明による方法によらずに生成され、かつ前述の方法工程A)を含む方法によって得られる触媒を添加することもできる。
【0014】
C)最後に、熱分解油と、さらなる形成された熱分解生成物とを分離装置で分離する工程。ここで、とりわけ、熱分解油と、同じく形成された水相とを分離することができる。
【0015】
つまり、方法工程A)は、急速熱分解または中速熱分解(intermediaere Pyrolyse)であってよい。とりわけ、この熱分解の温度は、300℃から600℃まで、頻繁には400℃から500℃までである。滞留時間は、(前述の通り)基本的に1秒から1時間までであってよいが、とりわけ5秒から30分までであってよく、中速熱分解の実施の場合、頻繁には3分から10分までであってよい。
【0016】
熱分解帯域における滞留時間とは、本発明によれば、固形小片(例えばペレット)が熱分解帯域への流入から流出までに必要とする固形物含分の平均滞留時間であると理解される。ここで、熱分解帯域の始端部は、熱分解物/出発材料において250℃の最低熱分解温度の達成によって定義され、熱分解帯域の終端部は、後コンディショニング帯域への移行部を形成する。通常、これは、熱分解帯域で用いられる輸送手段、例えばスクリューコンベヤの終端部を伴う。さらに、それは、最終的に、熱分解蒸気が固形物と分離される場合、熱分解された固形物から作られた(または製造された)触媒床に蒸気を通すために、熱分解帯域の終端部に達しているようにもなっている。ここで、熱分解帯域における滞留時間は、標準法を用いてプレキシガラスコールドモデルで求められ、このコールドモデルは、本発明によるモデルを、熱接触設備の熱分解帯域を形成している材料および加熱装置に至るまで(とりわけ、場合によって生じうる運搬手段に関して)縮尺どおりに模造されたものである。「出発材料」としては、20mmから30mmまでの長さを有するサイズ等級D25の木質ペレットが使用される。まず、市販の木質ペレットを、コールドモデルに通す。熱分解帯域全体に木質ペレットが充填された後、25の着色された木質ペレットの装入物(Charge)が加えられて、着色されたそれぞれ個々のペレットが、熱分解帯域の流入から流出までに必要とする時間を測定した。平均滞留時間は、直接視覚的に測定することができる(とりわけ、これが、反応器直径およびペレットの大きさの比に基づいて可能である場合)。比較的大きい(純粋に視覚的な検出が可能ではない)反応器の場合、またはプレキシガラスモデルの準備に費用がかかる場合、滞留時間は、それぞれ個々のペレットの、反応器への流入から熱分解帯域の流出までに測定される時間を計測して、熱分解帯域の前に配置された、場合によってありうるさらなる設備領域を通る(一定の)貫通時間をこれから差し引くことによって、直接反応器で測定することができる。平均滞留時間
【数1】
は、滞留時間t
iの合計を、着色されたペレットの数で割った商であり、ここで、前述の標準法は、2回行われる:
【数2】
【0017】
1つの実施形態によれば、本発明による方法のための熱分解帯域は、多段階スクリュー反応器または回転管反応器のように構成されていてよい。一般的に言えば、熱分解帯域は、通常、出発材料もしくは熱分解物の輸送のための運搬手段を有しており、ここで、とりわけスクリューコンベヤ(Foerderschnecken)、スパイラルコンベヤ(Foerderspiralen)および/またはベルトコンベヤが挙げられる。
【0018】
しかし、高品質の本発明による熱分解油の形成に重要であるのは、(前述の説明から読み取れる通り)基本的に急速または中速のいずれの熱分解でも実施することができる熱分解工程A)ではなく、後コンディショニング工程B)である。この後コンディショニング工程は、熱分解蒸気の精製に基づいて改質とも呼ばれる。熱分解蒸気の改質は、触媒床との接触を用いて行われ、ここで、触媒は、前述の熱分解工程A)によって得られるものである。ここで、熱分解蒸気と触媒床との接触は、あらゆる形態で行うこともできる。熱分解蒸気を触媒床に通すことができ、接触は、流動層で行うこともできるが、多くの場合、熱分解蒸気を床に通すことが有利であることが明らかになった、それというのは、その場合、特に強い接触が実現可能であるからである。後コンディショニングもしくは改質は、450℃から1200℃まで、とりわけ500℃から800℃まで、頻繁には600℃から700℃までの温度で行われる。約700℃から750℃までを上回る温度は、経済的観点から、頻繁には、あまり有利ではない一方、500℃を下回る温度は、頻繁には品質的にあまり高くない製品をもたらす。特に高品質の製品は、大多数の出発材料の場合、650℃から750℃の間の温度ウィンドウで得られる。工程B)で使用される触媒は、使用された出発材料から直接(もしくは「in situで」)生成されるものではなく、後コンディショニング帯域にその他の供給源から供給される場合、触媒は、その間に酸化条件に、とりわけ大気酸素の形態の酸化条件に曝されないか、またはせいぜい短時間しか曝されないことが望ましく、その結果、その触媒活性は低下しない。
【0019】
通常、本発明による方法は、工程B)における後コンディショニングの温度が、工程A)における熱分解の温度より高いように実施される。通常、温度は、少なくとも50℃高く、頻繁には少なくとも100℃高くなる。その理由は、多くの場合、形成された熱分解油の品質は、工程B)による600℃を上回る温度での改質の実施で改善される一方、工程A)による熱分解は、すでに経済的な理由のみから、頻繁にはこの値を少なくとも100℃下回る温度で行われるという点にある。個々の場合、とりわけ、熱分解帯域および後コンディショニング帯域が互いに流動的に移行する、連続的に稼働する固定床反応器を使用する場合、工程A)および工程B)の温度は、ほぼ同じ高さであってよく、例えば600℃から650℃までの間であってよい。
【0020】
前述の方法によって、以下においてさらに詳しく記載される高品質の熱分解油、すなわち、従来、先行技術によって得られなかった品質の熱分解油を製造することができる。これに限定されるものではないが、このことは、とりわけ工程B)の間に行われる熱分解蒸気の脱酸によって説明される。得られた油は、比較的低い酸素含有率、高い発熱量、低い粘度、低い酸価および低い含水率を有している。さらに、得られた油は、ほとんど分解されずに留去可能であり、先行技術による熱分解油のような劣化作用も有していない。
【0021】
当然、両方の工程A)およびB)の他に、さらなる工程が本発明による方法に含まれていてよく、とりわけ、出発材料がすでに工程A)の熱分解帯域の温度を下回る温度に加熱される前コンディショニングが含まれていてよい。当然、その他に追加的な後コンディショニング工程、例えば別の触媒を使用するか、もしくは触媒を使用しない高められた温度での後コンディショニング工程が行われるか、または同じく熱分解で得られた水素ガスもしくは合成ガスによる水素化が行われてもよい。さらに、熱分解油中で含水率を高める出発材料の場合、例えばバイオディーゼル製造から当業者に公知の方法を用いて、熱分解油の含水率を減少させることもできる。最後に、得られた熱分解油の後コンディショニングは、蒸留または分別凝縮を用いて行うこともできる。追加的な後コンディショニングによって、とりわけ、酸素含有率、粘度および酸価をさらに減少させて、発熱量をさらに高めることができる。しかし、得られた熱分解油の品質に重要なのは、(すでに記載の通り)とりわけ後コンディショニング工程B)である。
【0022】
1つの実施形態によれば、工程C)において、得られた熱分解油は、蒸留装置に供給される。頻繁には、この蒸留は減圧で行われ、例えば200hPa未満で行われる。通常、蒸留によって硫黄含有率を低下させて、酸価をさらに減少させることもできる。さらに、重油などの分離により、明らかに比較的低い粘度を有する油が得られる。
【0023】
別の実施形態によれば、工程B)またはC)によって得られた熱分解生成物は、水素化工程(または水素化脱酸素)、とりわけ接触水素化に供給される。そのために必要な反応器、反応条件および触媒は、当業者に公知である。水素化によって硫黄含有率および酸価をきわめて大幅に減少させることができる。酸素含有率、窒素含有率および含水率も明らかに減少する。
【0024】
1つの実施形態によれば、出発材料として、少なくとも部分的に生物由来の材料が使用される、それというのは、その場合、本発明による方法がその利点を特に良好に発揮することができるからである。頻繁には、とりわけ生物学をベースにする燃料を製造することを考慮して、実質的に完全に生物由来の材料が使用される。さらに、方法工程B)で使用される触媒の製造には、とりわけ生物由来の出発材料が好適である。生物由来とは、この関連においては、出発材料が、実質的に「生物学または有機由来」であることと理解される。つまり、その用語には、化学合成起源の材料は含まれない。したがって、とりわけ、その用語には、実質的に植物、動物または微生物によって形成される出発材料が含まれる。
【0025】
しかし、高品質の熱分解油を得るために、非生物由来の材料を使用することもでき、ここで、本発明による方法の利点は、これらの出発材料が、酸を含有しているか、もしくは熱分解において酸を形成する成分を含む場合にも効果を発揮する、それというのは、本発明による方法の後コンディショニングによって、熱分解油の酸含有率を明らかに減少させることができるからである。
【0026】
生物由来の出発材料としては、先行技術ですでに挙げられた発酵残渣(とりわけバイオガス法およびバイオエタノール法からのもの)だけでなく、その他の生物由来の出発材料を使用することもでき、特に、発酵残渣の使用の際には、通常、熱分解油中のきわめて高い含水率が生じ、これは、おそらく熱分解油中の高い割合のオキソ化合物に起因するとされる。「その他の生物由来の出発材料」としては、とりわけ以下:セルロース含有材料(とりわけ端材、農業廃棄物およびワラ)、工業用バイオマス廃棄物(とりわけ発酵残渣、ビールかす、ブドウの絞りかす、オリーブの絞りかす、クルミの殻またはコーヒーの出し殻)、使用済み油脂(Altfette)ならびに飲食および飼料製造に許可されていない動物性脂肪、紙再生の残りかすならびに糞尿を含む材料および汚泥が挙げられる。これらの材料同士の混合物を出発材料として使用するか、または前述の材料とさらなる生物由来の物質との、発酵残渣もしくは非生物由来の物質との混合物を使用することもできることは自明である。しかし、その他に、生物由来および非生物由来の材料からの分離できない混合物が使用されてもよく、これは、例えば使用済みオムツの場合、または紙再生時に生じるリジェクト(Spuckstoffen)の場合である。
【0027】
最後に、大概は生物由来と呼ばれない出発材料として、ポリマーを使用することもできる。ここで、とりわけポリアクリレート、ポリウレタン、ポリエステル、ポリオレフィンおよびゴム(例えば古タイヤの形態で大量に生じるもの)が挙げられる。ここでも、これらの物質は、相互またはその他の物質との混合物として存在していてもよいことは自明である。しかし、本発明によれば、ハロゲン含有の非生物由来の出発材料、とりわけ塩素含有の非生物由来の出発材料は使用されない。とりわけ、非生物由来の出発材料は、頻繁には生物由来の出発材料と混合される、それというのは、その場合、いずれの場合も「in situで」触媒が生成され、その触媒によって、本発明による有利な熱分解油が形成されるからである。しかし、(すでに記載の通り)本発明による方法のための触媒は、その他の供給源からも改質帯域に供給することができる。
【0028】
別の実施形態によれば、出発材料は、少なくとも0.5質量%、とりわけ少なくとも5質量%、頻繁には少なくとも8質量%の灰含有率を有している。ここで、灰含有率は、DIN EN 14775に準拠して、ただし815℃で測定される。すなわち、使用される出発材料の灰含有率が増加するとともに、触媒として使用される熱分解された残余物の灰含有率も増加することが明らかになった。触媒が、形成された熱分解油の、いずれの場合もきわめて低い灰含有率に影響を与えないか、または少なくとも著しい影響を与えないことに注意すべきである。ここで、そのような触媒が使用される場合、(少なくとも15質量%までの出発材料の灰含有率の場合)触媒の灰含有率が増加するとともに、通常、(形成された熱分解ガス中に含まれている)生成された水素の量も増加する。しかし、さらに、灰含有率の増加は、通常、形成された熱分解油の比較的高い品質ももたらし、とりわけ、このことは、熱分解油の酸含有率に関する。
【0029】
それに応じて、後コンディショニング工程B)では、とりわけ、高められた含有率の酸を有するか、もしくは熱分解の際に高められた割合の酸を形成する物質が使用される場合、高い灰含有率を有する触媒が出発材料として有意義である。しかし、基本的に、例えば改質なしで、比較的少ない酸含有率を有する熱分解油をすでにもたらす出発材料が熱分解および改質される場合、1質量%未満の灰含有率を有する出発材料から形成された触媒が併用されることも可能であり、これは、例えば、リグノセルロースが比較的低い割合しか含まれていない紙スラリーの場合である。
【0030】
しかし、本発明により方法工程B)で使用される触媒は、必ずしも方法工程A)によって生成されるものである必要はない。むしろ、触媒は、そのような触媒が模造されたものであってもよく、このことは、とりわけ灰成分によって引き起こされうる触媒作用特性に関する。したがって、例えば、灰成分を含まない熱分解コークに、灰成分中に含まれている化学化合物が後から加えられてよく、ここで、灰成分は、所与の出発材料から、本発明により工程A)によって得られた熱分解された固形物を指している。
【0031】
別の実施形態によれば、出発材料は、以下の化学元素:亜鉛、鉄、白金、レニウム、クロム、銅、マンガン、ニッケル、チタン、アルミニウム、ケイ素の少なくとも1つが含まれているように選択される。この元素は、元素状の形態で存在している必要はなく、イオン形態、または結合した形態で(例えば酸化物化合物として、もしくは錯体の形態で)存在していてもよい。そのような金属は、例えば糞尿などに常に含まれている、それというのは、例えば、そのような金属は、微量元素であるからか、またはその他の形態で物質循環流に供給されるからであるが、それらは、特定の廃棄物が得られた特異的な製造条件により廃棄物に導入されることがあり、例えば銅槽からの銅である。本発明によれば、とりわけ前述の金属の場合、触媒である固体の熱分解生成物の卓越した触媒作用が行われることが判明した。このことを保証するために、これらの金属を含まないバイオマスは、特に効率的な処理操作を保証するために、高い金属割合を有するバイオマス、例えば糞尿に添加されてもよい。しかし、さらに、とりわけ廃材(およびここでさらにまた非生物学的廃材)から、少量の金属が出発材料に添加されてもよい。
【0032】
1つの実施形態によれば、出発材料として、10質量%超の湿分含有率を有する材料が使用される。それどころか、25質量%までの湿分含有率を有する材料を使用することが可能であり、40質量%までの湿分含有率を有する材料を用いることもできる。しかし、本発明による方法は、多くの有益な熱分解生成物を提供するため、本発明による設備の加熱手段の運転に加えて、熱分解生成物の熱利用による比較的湿分の高い出発材料の予備乾燥が可能である。高い含水率は、本発明によれば可能である、それというのは、用いられる中速熱分解の範囲では、とりわけ均一および不均一な水性ガスシフト反応ならびに水蒸気改質によって、出発原料からの水を消費し、水素を形成することができるからである。ここで、本発明による方法は、通常、固体の熱分解生成物の触媒による有効性によって、まさにこの水素がいっそう多く形成されることをとりわけ特徴としている。それゆえ、本発明による方法の場合、先行技術によるものより明らかに高い含水率を有する出発材料が使用可能であり、それどころかきわめて有意義である。それとは異なり、例えば低速熱分解の場合、25質量%の水の場合に自然の限界が示され、フラッシュ熱分解の場合、通常、それどころか10質量%未満の含水率であるか、もしくは出発材料の著しい予備乾燥が必要である。
【0033】
本発明による方法は、形成された熱分解油の酸価を(改質なしで得られた熱分解油と比べて)明らかに低下させることができる場合にその特別な利点を発揮することができるため、別の実施形態によれば、出発材料は、酸を含むか、または熱分解の間に酸を形成するものが選択される。ここで、酸としては、さらにまたとりわけ、その他の有機酸、例えばフェノール系酸と比べて、通常、明らかに比較的腐食性が高いカルボン酸が挙げられる。しかし、基本的に(有利な熱分解油を得るために)さまざまなレベルの酸含有率を有する種々の物質の混合物からなる出発材料を準備して、工程B)の後に比較的高い酸含有率を有する熱分解油を得ないようにすることができる、それというのは、工程B)において、酸価は、確かに明らかに減少するが、残留酸含分が残っているからである。例えば、発酵残渣および比較的低い改質温度の場合、通常、きわめてわずかな酸含有率しか有していない紙の残りかすまたはポリオレフィンを添加することができる。
【0034】
別の実施形態によれば、出発材料は、リグノセルロースの割合を有している。このリグノセルロースの割合は、本発明による方法では、それどころか100%までであってよい、それというのは、形成された酸は、実質的に中間的にしか存在していないからである。しかし、リグノセルロースが出発材料中に含まれている場合、出発材料の生物由来の割合における、しかしながら頻繁には全体の出発材料におけるその割合は、5質量%超、とりわけ10質量%超であってよい。リグノセルロースが、工程A)における熱分解の間に著しい酸形成をもたらすため、先行技術による方法によれば、リグノセルロースの割合が比較的高い場合、通常、自動車用の燃料として好適な熱分解油を得ることはできない。本発明ではこの点が異なる:ここで、いずれの場合も本発明によれば、15質量%超のリグノセルロースの割合で、とりわけ30質量%超の割合でも、きわめて優れた熱分解油が得られ、先行技術によれば、その割合では上述の目的に適していない熱分解油が得られる。
【0035】
工程A)における熱分解は、前述の通り、一連の多様な熱分解法によって実施することができる。しかし、熱分解油の特に高い収率を得るために、熱分解油は、有機出発材料が、可能な限り小さいフラグメント(Bruchstuecke)にクラッキングされるように実施されるのが望ましい、それというのは、特に長鎖のフラグメントは、タール形成をもたらし、小さいフラグメントは、熱分解油の粘度の減少の原因となりうるからである。したがって、1つの実施形態では、熱分解は、熱分解帯域を通り抜ける材料が、連続的に返送手段によって、後コンディショニング帯域の反対側の熱分解帯域の領域に返送されるように行うことができる。ここで、その場合、すでに熱分解帯域においてある程度まで(ただし、通常、本願の工程B)より低い温度で)熱分解された材料の接触処理は、とりわけクラッキングプロセスの形態で行われる。そのようなクラッキングプロセスは、形成された熱分解油の粘度を減少させる。ここで、返送手段は、とりわけ逆混合するスクリュー要素、逆向きのスクリュー要素または熱分解帯域の反応器壁上の返送用ロッドまたは返送用フックなどであってよい。ここで、これらの返送手段によって「逆運搬運動」が実現可能であることがとりわけ重要であり、その結果、熱分解帯域に存在している材料流の部分流を、常に上方に運ぶことができるか、または2つの運転状態を有する運転において、両方の運転状態の少なくとも1つで熱分解生成物流の上流への運搬が実現可能である。熱分解帯域を通り抜ける材料を、連続的に返送手段によって熱分解帯域の後コンディショニング帯域とは反対側の領域に返送する方法については、国際公開第2015/158732号(WO2015/158732A1)で詳細に説明されている。これにより、そこに記載された返送手段および熱分解帯域の特徴はすべて参照される。
【0036】
別の実施形態によれば、方法工程B)は、熱分解蒸気の後コンディショニング帯域における滞留時間が、10-3秒から3分まで、とりわけ0.1秒から120秒まで、頻繁には1秒から60秒まで、例えば5秒から20秒までであるように実施される。ここで、後コンディショニング帯域における滞留時間は、さらにまた標準法を用いて測定され、ここで、改質される「熱分解蒸気」としては、着色された蒸気が使用される。滞留時間(より正確に言えば、平均滞留時間)とは、その場合、触媒床に供給された着色されたガスの濃度の半分の濃度に相当する、流出するガスの着色が触媒床の終端部で生じるまでに、触媒床への入口と触媒床の終端部の出口との間で経過する時間である。
【0037】
したがって、滞留時間の下限は、とりわけ重要である、それというのは、そうでなければ、充分な改質が行われないからである。それに反して、滞留時間が過度に長い場合、熱分解蒸気中に含まれる材料の充分すぎるクラッキングが行われるため、最終的に、確かに生成物スペクトルの再度高められた水素の含有率が達成されるが、熱分解油の低い収率が達成されるにすぎない。さらに、とりわけ120秒超の滞留時間の場合、およびたいていすでに60秒超の場合でも(とりわけ、同時に600℃超の後コンディショニング工程の温度が選択される場合)、高級多環芳香族炭化水素(polyzyklische aromatische Kohlenwasserstoffe (PAK))が生じ、これらは、その毒性の他に、ディーゼルモーターにおけるカーボンブラックの形成を促すため不所望なものである。5秒から20秒までの滞留時間の場合、PAKの形成は充分に抑えられると同時に、きわめて高い収率の、きわめて高い品質を有する熱分解油が得られる。
【0038】
したがって、改質工程における熱分解蒸気の適切な温度操作および滞留時間の適切な選択によって、とりわけ前述の段落に記載の通り、所望の生成物化合物が適切に形成されうる。ここで、とりわけ、温度操作は、それぞれのバイオマスに合わせられる。例えば、紙スラリーが使用される場合は500℃の範囲のどちらかというと低い温度、オリーブの絞りかすが使用される場合は700℃の範囲のどちらかというと比較的高い温度が特に好適であることが明らかになった。一般的に、改質によって、オキソ化合物および極性化合物、例えばアルデヒドおよびケトンの濃度は明らかに下げられる。比較的少量のオキソ化合物によって、一般に、改質後に得られる熱分解油中の水の溶解度も、この熱分解油の成分の水への溶解度も減少する。それによって、改質後に得られる液体生成物の水相と油相の分離の改善が可能になる。さらに、熱分解油中の高い酸素含有率もしくはオキソ化合物の高い含有率は不都合である、それというのは、有機物が混じっているプロセス水は、処理に費用がかかり、熱分解油の収率も減少するからである。
【0039】
本発明によれば、約500℃での後コンディショニングでは、主にアルカンおよびアルケンが形成されることが観察された。少なくとも600℃、とりわけ700℃超に温度を高めることによって、アルカンおよびアルケンはより少なく形成され、それに対して、通常、芳香族炭化水素、例えばアルキルベンゼン、ナフタレン、スチレンおよびインドールがより多く形成される。したがって、600℃超もしくは700℃超の改質温度の選択は、形成された熱分解油が1つ以上の燃料で使用されるか、または1つ以上の燃料として使用される場合にも有意義である。芳香族炭化水素およびここでとりわけアルキルベンゼンは、ガソリンにおけるアンチノック剤として所望されるものである。ここで、アルキルベンゼンは、非毒性のベンゼン置換体として用いられる。ナフタレンおよびインドールは、同じく市販の燃料添加剤であり、燃料品質に好影響を及ぼすものである。
【0040】
通常の実施形態によれば、熱分解も改質も実質的に標準圧力(1013hPa)で行われる。しかし、圧力は、それを上回っていてもよく、例えばそれを200hPa超上回っているか、またはそれどころか1000hPa超上回っていてよい。個々の場合、それどころか、さらに明らかにより高い圧力が存在していてよい。しかし、圧力は、例えば反応器内部での促進を制御することができるように、異なる領域において異なる高さで形成されていてもよい。さらに、熱分解生成物の分離は、比較的高い圧力で行われてよいため、炭化水素およびその他の有機生成物は、すでに圧力操作により、同じく形成された水素、二酸化炭素および一酸化炭素と分離可能である。
【0041】
別の実施形態によれば、工程B)では、触媒の後コンディショニング帯域における滞留時間は、最大12時間、とりわけ10分から6時間までである。一般的に、約30分から5時間までの滞留時間である。ここで、とりわけ、触媒としては、本願による後コンディショニングに使用されていない触媒が使用される。そのためには、工程A)で形成された触媒がとりわけ好適であり、この触媒は、工程A)での形成直後に改質工程に用いることもできる。
【0042】
ここで、方法は、頻繁には、まず熱分解工程を用いて形成された熱分解された固形物がすべて改質帯域に供給される、すなわち、すべてが工程B)に使用されるように実施される。つまり、前述の段落で定義された滞留時間は、工程B)における固形物の触媒としての完全な使用、およびすべてが触媒と接触する工程A)で形成された熱分解蒸気を基準とするように定義されている。滞留時間は、確かに基本的に供給される出発材料の量、および熱分解工程の時間、および出発材料から形成された熱分解蒸気、および改質器に新たに供給された熱分解された固形物に依存する。それにもかかわらず、以下において、滞留時間の一般的な値は、熱分解蒸気を基準として示されており、この値は、熱分解された固形物がすべて改質帯域に供給されない場合にも適用可能である。その場合、上記の値は、触媒1リットルおよび1時間当たり約3000リットルの熱分解蒸気の処理能力を基準としている。
【0043】
10分もしくは30分の、触媒の後コンディショニング帯域における滞留時間の下限が選択された、それというのは、大多数の出発材料の場合、10分以後で触媒の著しい効果が観察できるからである。経時的に、熱分解蒸気と連続的に接触した熱分解された固形物の活性は失われる。これに限定されるものではないが、このことは、(固形物表面上で行われる熱分解蒸気の反応により)熱分解で形成されたメソ細孔が、改質工程においてマクロ細孔に増大し、ならびに改質によって固形物表面がコークス化し、それによって、反応性の表面積は明らかに減ることによって科学的に説明される。したがって、通常、熱分解固形物は、ある程度の滞留時間内にのみ高い活性を提供する消費触媒と見なされる。したがって、前述の触媒の滞留時間の上限は、触媒の活性の減少に起因している。しかし、一般的に、具体的に調節される滞留時間は、用いられる触媒に対して使用されるバイオマス、改質の温度操作および触媒を貫通する改質される蒸気の量に明らかに依存しており、その結果、前述の値は比較的長い期間を含むことに注意すべきである。
【0044】
連続的に実施される改質工程B)では、滞留時間は、改質反応器の最大充填高さによっても影響される。通常、(触媒の活性をできる限り広く利用するためには)できる限り高い充填レベルが実現され(ここで、少なくとも50%の充填が有利であろう)、その場合、連続的な運転において所望の充填レベルに達した後、熱分解された固形物が改質帯域に供給される程度で、消費された改質触媒が改質帯域から排出される。
【0045】
熱分解蒸気のできる限り有効な接触を可能にするために、別の実施形態によれば、工程A)で形成された熱分解蒸気は、熱分解蒸気の体積流が実質的にすべて触媒床中に存在している流路を通されるように、後コンディショニング帯域に供給される。つまり、改質帯域は、熱分解蒸気が、触媒床の上をさっと通るだけではなく、完全に貫通しなければならないように構成されている。ここで、とりわけ、触媒床は、後コンディショニング帯域において、流れ方向に垂直に配置された後コンディショニング帯域の断面領域が、実質的に完全に触媒床で充填されて存在しているように配置されている。それに応じて、熱分解蒸気の改質帯域もしくは後コンディショニング帯域における前述の滞留時間も、そのような完全な充填を見定めて示されている。ここで、そのための基礎をなす改質反応器もしくは改質帯域の形状は、容器構造の標準指針に基づいているため、通常、0.5から15までの長さ:直径比が実現される。
【0046】
別の実施形態によれば、熱分解蒸気の体積流は、熱分解蒸気がすでに改質帯域中に含まれている触媒と、同じく方法工程B)の終端部で初めて接触するように触媒床を通される。つまり、熱分解蒸気は、まず、熱分解帯域に今まさに供給された、上で説明された理論によれば最大の活性も有しているのが望ましい固形物と接触する。その後、熱分解蒸気は徐々に、触媒作用によりますます活性の少ない固形物と、最終的に排出直前の固形物との接触も行われるまで接触する。すでに経済的な理由のみから、新たに供給された触媒の場合、頻繁には、工程A)で今まさに新たに形成された熱分解された固形物が供給される。少なくとも連続法では、熱分解された固形物もしくは反応触媒の改質帯域への供給も、通常、連続的に調整される。
【0047】
上述の課題は、(少なくとも部分的に)前記方法によって得られる熱分解油によっても解決される。
【0048】
本発明による熱分解油は、65質量%以上の炭素含有率、5質量%以上の水素含有率、および16質量%以下の酸素含有率であることを特徴としている。さらに、熱分解油は、15mgKOH/g以下の酸価、ならびに少なくとも0.1ppTの14C-含有量(リビー法によってガイガー管を用いて測定)を有している。
【0049】
つまり、その油は、炭素含有率を基準として比較的低い酸素含有率、および炭素含有率を基準として比較的高い水素含有率であることを特徴としている。さらに、酸価は、比較的低い。生物由来の出発材料を使用するため、14C-原子の相当な割合を検出することもできる。化石燃料油(fossilen Oelen)の場合、14C-値は0またはほぼ0である一方、14C-値は、純粋に生物由来の出発材料の場合、約1ppTである。本発明による熱分解油は、通常、相当な割合が生物由来の出発材料から得られたものであるため、それに応じて、相当な割合の14C-原子が存在しており、この割合は、純粋に生物由来の出発材料から得られた熱分解油の場合、とりわけ0.8ppTより大きく、頻繁には0.9ppTより大きい。合成材料との混合の場合、または急冷プロセスにおける化石液体燃料(fossile Fluessigkeiten)の添加の場合、前述の0.8ppTおよび0.9ppTの値は、それに応じて減少させることができる(ここで、減少の要因は、出発材料中もしくは添加された化石液体燃料中の非生物由来の材料の割合によってもたらされる)。
【0050】
本発明により示された炭素、水素および酸素ならびにその他の化学元素の質量割合に関しては、これらが(特に記載がない限り)慣用の測定方法に相応して、熱分解油および灰の有機成分の質量のみを基準としており、熱分解油中に含まれる水は、それに応じて顧慮されないことに留意されたい。
【0051】
1つの実施形態によれば、熱分解油は、10mgKOH/g未満の酸価、とりわけ6mgKOH/g未満の酸価を有している。そのような熱分解油は、とりわけ、前述の工程B)が、一般的に高品質の熱分解油が得られる600℃から750℃の間の範囲の温度で実施される場合に得られる。したがって、例えば、実施例は、630℃超の改質温度では6mgKOH/g未満の酸価が達成され、通常、それどころかむしろ5mgKOH/g未満の酸価が達成されることを一般的に証明している。
【0052】
前述の方法の出発材料に応じて、熱分解油の組成を化学元素に関してさらに詳しく示すことができる:
大多数の出発材料の場合、(「無水」)熱分解油の酸素含有率が16質量%より明らかに少ない熱分解油が得られる。通常、酸素含有率は、8質量%未満であり、1つの例(ブドウの絞りかす)の場合にのみ比較的高い酸素値が測定された。頻繁には、酸素含有率は、5.5質量%未満でもある。酸素の炭素に対する比(つまり、それぞれ質量%の酸素割合および炭素割合からの比の値)は、通常、0.15未満であり、通常、0.12未満でもある。多くの場合、0.1未満の比も確認できる。
【0053】
それに反して、水素/炭素の質量比は、頻繁には0.08より大きく、とりわけ0.10より大きく、しばしば0.11より大きい。
【0054】
結果として、本発明による方法によって製造可能な大多数の熱分解油は、75質量%超の炭素含有率、6質量%から11質量%までの水素含有率、および9質量%まで、頻繁には3質量%から6.5質量%までの酸素含有率を有していることを確認することができる。さらに、窒素含有率は、通常、1.5質量%から4.5質量%までであるが、汚泥の場合、8質量%超であってもよい。
【0055】
すでに上で説明した通り、熱分解油は、通常、含水率がきわめて低いことも特徴としている。通常、含水率は5質量%未満であり、多くの場合、3質量%未満でもあり、頻繁には、それどころかむしろ2質量%未満の含水率が検出された。しかし、発酵残渣およびブドウの絞りかすを出発材料として使用する場合、明らかに比較的高い含水率が観察されるが、含水率を最適な相分離法によってさらに明らかに低下させることができる。その他に、10質量%超またはそれどころか20質量%超の含水率を、バイオディーゼル製造または原油産出で技術的に使用される方法によって減少させることもできる、すなわち、前述の5質量%未満またはそれどころか3質量%未満の含水率に低下させることができる。
【0056】
放射性炭素法に代わって、またはそれに加えて、熱分解油の生物由来を、ガスクロマトグラフィー法を用いて行うこともできる。多くの場合、以下の化学化合物の1つまたは複数をGC-MSを用いて0.1質量%超の量で検出することができる:1H-ピロール、1-メチル-ピリジン、2,3-ジメチル-ピラジン、2,6-ジメチル-1H-インドール、チオフェン、2-メチル-チオフェン、3-メチル-チオフェン。その他に、またはそれに加えて、特定の化合物クラスの非存在を用いることもできる。すでに上で説明した通り、先行技術によれば、リグノセルロースを含む出発材料の場合、頻繁には、大きな割合の糖、グアイアコールなどが熱分解油中に生じる。そのような出発材料が本発明による方法で使用される場合、GC-MSを用いて求められた糖、グアイアコール(メトキシ-フェノール)、および同じくシリンゴール(ジメトキシ-フェノール)の含有率が、それぞれ0.1質量%未満であり、通常、0.01質量%未満でもある熱分解油が得られる。
【0057】
最後に、得られた熱分解油は、比較的高い割合の芳香族炭化水素、とりわけベンゼン、トルエンおよびキシレンならびにそれらの誘導体を有しており、その割合は、通常、5質量%超、たいてい8質量%超、たびたび16質量%超でもあり、しばしば20質量%超である(GC-MSを用いて求められた)。芳香族化合物の割合は、後コンディショニング工程の温度操作の影響を受けることがある。好適に高い改質温度および過度に長くない滞留時間の場合、上で詳細に説明された通り、相当な割合のアルキルベンゼン、ナフタレン、スチレンおよびインドールが形成される。さらに、芳香族化合物の割合を、得られた熱分解油を蒸留することによって有利な方法でさらに高めることができる。
【0058】
熱分解油は、通常、多環芳香族炭化水素(PAK)も含み、その割合は、とりわけ熱分解油の燃料としての利用または燃料添加の場合、過度に高くないことが望ましく、例えば、ディーゼル燃料の場合、約8質量%を上回らないのが望ましい。好適な反応操作では、この限界値を問題なく維持することができる。600℃または比較的高温で最大60秒の、熱分解蒸気の改質帯域における滞留時間によって、通常、8質量%未満のPAKの割合が達成される。ほぼすべての場合、これらの値は、600℃から700℃の間の改質温度で最大20秒の、熱分解油の改質帯域における滞留時間で達成される。比較的長い滞留時間の場合も、PAKの割合は、通常、最大10質量%から15質量%までであり、蒸留により場合によって減少させることができる。
【0059】
最後に、本発明による熱分解油は、さらに、高い発熱量も有しており、これは、(出発材料に左右されず)、通常、20MJ/kg超であり、たびたび30MJ/kg超でもある。
【0060】
上に記載されたあらゆる特性値は、(特に記載がない限り)追加的な後処理がされなかった熱分解油、とりわけ触媒による水素化および蒸留がされなかった熱分解油を基準としている。前述の特性値は、むしろ、詳細に説明された方法工程B)を用いてのみ後処理された熱分解油を基準としている。
【0061】
本発明による熱分解油は、大部分が分解せずに蒸留可能であることも特徴としている。蒸留性は、100hPa(絶対圧)での真空蒸留(ガラスフラスコ装置)を用いて求められる。ここで、本発明による熱分解油は、少なくとも50質量%が分解せずに蒸留可能であり、多くの場合、少なくとも80質量%が分解せずに蒸留可能である。残留物としては、本発明による熱分解油の蒸留では、重油およびフェノプラストが残留する。
【0062】
追加的な蒸留によって、とりわけ、熱分解油の酸素含有率は下がる一方、水素/炭素の質量比はほぼ変わらない。したがって、追加的な蒸留によって得られた熱分解油は、通常、5mgKOH/g未満の酸価、および(出発材料に応じて)8質量%未満の酸素含有率を有する。
【0063】
熱分解油の他に、熱分解ガス中でもさらに高い水素含有率が検出される。この水素は、本発明による熱分解油をさらに生成して、これらをさらに脱酸素するために用いることができる。すでに上で言及した通り、水素の形成は、形成された触媒の灰含有率に大きく依存している。10質量%までの灰含有率の場合、熱分解ガス中では、通常、少なくとも15質量%、頻繁には20質量%から35質量%までの水素含有率が得られる。10質量%超の灰含有率の場合、熱分解ガス中では、通常、少なくとも30質量%、頻繁には35質量%から45質量%までの水素含有率が得られる。水素ガスは、特に熱分解油の触媒による水素化、ひいては熱分解ガスのさらなる精製のために使用することができる。
【0064】
本発明による熱分解油の触媒による水素化は、当業者に公知の通り、とりわけ不均一系触媒を用いて行うことができる。特に良好な結果は、水素化が明らかに高められた圧力で行われる場合に得られる。追加的な水素化によって、とりわけ熱分解油の酸素含有率(およびその他のヘテロ原子の含有率、とりわけ硫黄含有率も)が、きわめて大きく減少される一方、水素/炭素の質量比および水素含有率は高められる。したがって、(追加的な)水素化によって得られた熱分解油は、通常、0.1mgKOH/g未満の酸価、および1質量%未満の酸素含有率を有している。多くの場合、さらに、炭素含有率は80質量%超であり、水素含有率は10質量%超であり、硫黄含有率は0.002質量%未満である。
【0065】
要約すると、本発明による方法によって初めて、きわめて高い発熱量、低い含水率、低い酸価、低い粘度、ベンゼン、トルエンおよびキシレンの高い含有率、高い熱安定性、低い酸素含有率、オリゴフェノールの低い含有率、良好な蒸留性、ならびに最後に(通常は0.25質量%未満(815℃で測定)および頻繁には0.2質量%以下の低い灰含有率により)エアロゾルの形成が少ない熱分解油を製造できることを述べることができる。先行技術による熱分解油と比べて、酸素含有率は著しく低い。酸素含有率は、水素化されていない本発明による熱分解油の場合、先行技術の水素化された熱分解油の範囲にある。本発明による熱分解油をさらに追加的に水素化する場合、酸素含有率をさらに低下させられるだけでなく、水素/炭素の比を、(所定の出発材料の場合)先行技術によっては従来達成されない値にまで高めることもできる。
【0066】
したがって、本発明による熱分解油によって、その有利な特性のゆえに、先行技術による熱分解油によって動かすことができないエンジンを動かすことができる。ここで、例えば、ブロック式発電または火花点火エンジン、一般的に、自動車などに使用されるエンジンが挙げられる。しかし、その他に、熱分解油と非生物由来の燃料とを混合して、部分的に生物由来の材料から得られた燃料を得ることができる。
【0067】
上述の課題は、最終的に(少なくとも部分的に)上記方法に使用される設備によっても解決される。
【0068】
処理される出発材料の供給のための少なくとも1つの送り込み領域と、出発材料から熱分解蒸気と熱分解された固形物とが形成される熱分解帯域と、熱分解蒸気が触媒床を通され、ここで、改質された熱分解蒸気が得られる後コンディショニング帯域と、得られた熱分解された材料の分離のための分離装置とを含む、熱接触処理を用いて出発材料から熱分解油を得るための本発明による設備。ここで、後コンディショニングでは、熱分解蒸気を触媒床に完全に貫通させる手段が企図されている。
【0069】
設備のさらなる装備は、上および以下に詳細に説明される方法から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【
図2】クランク角度(-10°~20°)に対してプロットされたシリンダー圧力の推移(bar)を示すグラフ
【0071】
以下において、本発明は、一例の方法の流れをもとに記載される:
生物由来の出発材料は、スクリュー反応器として構成された熱分解反応器に供給される。ここで、出発材料は、300℃から600℃まで、とりわけ400℃から450℃までの温度に加熱される。この際、熱分解が行われ、ここで、熱分解は、酸素の非存在下に、または少なくとも、明らかに減圧された酸素雰囲気で実施されることに注意される。熱分解される材料の熱分解反応器における通常の滞留時間は、3分から10分までである。例えば、生物由来の出発材料として発酵残渣が用いられ、熱分解帯域内に7分残留してよい。材料の加熱は3つの帯域で行われ、ここで、第一の帯域で、200℃が達成され(つまり、この帯域は、本発明の範囲ではまだ熱分解帯域には含まれず、予備コンディショニング帯域と理解される)、第二の帯域では350℃に加熱され、第三の帯域では400℃に加熱される。熱分解によって熱分解コークおよび熱分解蒸気が得られる。熱分解蒸気中には、大きな割合のカルボン酸、シリンゴール、グアイアコールおよびオリゴフェノールが含まれている。
【0072】
熱分解工程で得られた材料は、ここで、後コンディショニング帯域もしくは改質に供給される。これは、連続管状反応器内で行うことができる。しかし、別個の改質反応器を用いることもできる。改質工程は、バッチ反応器を用いて行うか、または連続的に動作する反応器を用いて行うことができる。つまり、熱分解工程で形成された熱分解コークは、反応器の改質部に供給されて、そこで500℃から800℃に加熱される。熱分解反応器で形成された熱分解蒸気は、その後、反応器特有の構造によって、熱分解コークからなる高温の床を通して取り込まれる。ここで、後コンディショニング帯域は、7リットルの収容能力を有しており、平均して約半分が熱分解コークもしくは触媒で充填されてよく、ここで、
図1の幾何学的関係に基づいている。ここで、熱分解蒸気の滞留時間は、通常、1秒から20秒までであり、触媒の滞留時間は、通常、3時間から4時間までである。すでに上に例として挙げられた発酵残渣を使用する方法の場合、生成された熱分解コークは、改質基部において700℃に加熱されて、約5秒の熱分解コークの改質部における滞留時間を実現することができる。コーク床では、熱分解蒸気が変換されて、ここで、カルボン酸は破壊され、熱分解タールはクラッキングされる。さらに、シリンゴールおよびグアイアコールが分解されてベンゼン成分にされる。形成された熱分解縮合物は、自発的に水相および有機相を形成する。有機相は、本願の範囲では、熱分解油と呼ばれる。生物由来の内容物の高い含分を有する出発材料が継続的に用いられる連続プロセスの場合、熱分解の間に形成された熱分解コークは、循環して反応器の改質部に供給され、そこに含まれているすでに改質に用いられた触媒は交換される。しかし、上で説明した通り、基本的に、形成された熱分解コークを長期間使用して、比較的長い時間間隔でしか繰り返し交換しないことも可能である。最終的に、分離工程では、縮合可能な含分および縮合不可能な含分の分離が行われ、縮合可能な含分の場合、さらにまた、熱分解油と、同じく形成された水相との分離が行われる。
【0073】
図1は、比較的大きい反応器の部分帯域も形成しうる、本発明により使用される改質反応器の縮尺どおりの図である。反応器は、熱分解の間に形成された固形物もしくは触媒で完全に充填される比較的大きい管21を含む。管21は、例えば20cmの内径を有していてよい。通常、管は下端部25で閉じられている。開放している場合、この端部を介して、消費された触媒もしくは固形物10を排出することができる。管21の内部には、明らかにより小さい径を有する内部管22が配置されており(例えば、7.5cmの内径を有している)、その内部管は、下端部で触媒床に向かって開放している。ここで、改質反応器に、熱分解蒸気1および場合によって固体の熱分解生成物が供給される。それらは、管21中に含まれる加熱された触媒床に通された後、内部管の下端部を介して排出され、ここで、形成された改質された熱分解蒸気2をさらなる後処理または分離装置に供給することができる。
【0074】
形成された熱分解油の接触水素化が行われる場合、熱分解油は、水素化反応器に供給され、水素化反応器において、水素化は、高められた圧力下で行われてよい。例としては、370℃および140barの圧力での、硫黄で処理したNiMo-Al2O2触媒を使用する水素化が挙げられ、この水素化においては、触媒負荷(LHSV)は0.3h-1(30ml/h)であり、水素添加は、熱分解油1リットル当たり1500l(i.N.)のH2である。上に詳しく記載された方法によって、熱分解油(出発材料を基準として約10質量%から20質量%までになる)の他に、さらに水素が豊富な合成ガス(30質量%から40質量%まで)、水相(18質量%から25質量%まで)および熱分解コーク(20質量%から42質量%まで)も得られる。
【0075】
第1表は、種々の出発材料の場合の(1行目には、出発材料の起源がカッコ内に記載されている)、工程B)によって得られた熱分解蒸気の縮合不可能な含分の水素含有率を示している。第2列には、熱分解法で得られた固形物の灰含有率が記載されており、第3列から第6列までには、水素、メタン、COおよびCO2の割合が(熱分解蒸気の縮合不可能な含分の全質量を基準とする)質量%で記載されている。その他に、別の炭化水素CxHyが含まれていてよい。本願により用いられる測定法と異なり、第1表の場合、ガス組成物を赤外線光度計(CO、CO2、CH4)をベースとするガス分析器および熱伝導率検出器(H2)を使用して測定した。
【0076】
【0077】
上で詳細に説明された方法によって、一連の生物由来もしくは部分的に生物由来の出発材料を試験した。ここで明細書、請求項および実施例に記載の値は、ここで(特に記載がない限り)常に、次のように測定される:
密度 15℃でDIN EN ISO 12185に準拠、
動粘度 40℃でDIN EN ISO 3104に準拠、
酸価 DIN EN 14104に準拠、
引火点 DIN ISO 3679に準拠、
硫黄含有率 DIN EN ISO 20884に準拠、
リン含有率 DIN EN 14107に準拠、
酸素含有率 DIN EN 15296に準拠(算出)、
炭素含有率、水素含有率および窒素含有率 DIN EN 15104に準拠、
燃焼熱(Brennwert)(qV、gr) DIN EN 14918に準拠、
発熱量(qp、led) DIN EN 14918に準拠、
灰含有率 DIN EN 14775に準拠、ただし815℃で。
この箇所において、再び(特に記載がない限り)水素、酸素、炭素、硫黄および窒素の含有率は、慣用の測定法に相応して、熱分解油の有機成分および灰の質量のみを基準としており、それに応じて、熱分解油中に含まれている水は考慮されないことが示唆される。
【0078】
以下の表から種々の分析結果が読み取れる。ここで、第2表は、種々の出発材料の場合の(第1行には、出発材料の起源がカッコ内に記載されており、「第1表と同じ」という説明は、第1表におけるものと同じ材料であることを意味している)、異なる温度での(および後コンディショニング工程なしの場合の)、得られた熱分解油の重要な特性値を示している。
【0079】
第3表は、汚泥から700℃で得られた熱分解油(第2表、第2行、第3列を参照)の、その中に含まれているいくつかの有意的な有機成分の質量割合を示している。
【0080】
第4表および第5表は、(第1表の)汚泥3が出発材料である場合の、熱分解蒸気の改質反応器もしくは後コンディショニング帯域における滞留時間の影響を示している。ここで、第5表では、比較的長い滞留時間の場合、熱分解油の収率は減少し、水素:炭素の比は低下することが明らかであり、このことは、おそらく多環炭化水素化合物の形成に起因している。第5表には、全生成物(熱分解された固形物を触媒として完全および連続的に使用する場合)が記載されている。過度に長い滞留時間の場合、熱分解油の収率は明らかに低下し、その反対に、ガスの割合は上昇する。
【0081】
第6表は、本発明による熱分解油の蒸留における収率を示している。ここで、(上で)説明された通り100mbar(絶対圧)での真空蒸留は、蒸留橋(Destillierbruecke)、ガラスフラスコおよび加熱ジャケットからのガラス装置を用いて実施される。出発原料として、500℃で後コンディショニングされた(改質された)汚泥からの熱分解油、700℃で後コンディショニングされた「発酵残渣1」(第2表、第1行、第8列および第2行、第2列を参照)からの熱分解油、ならびに700℃で後コンディショニングされた木質ペレット(定尺品、Baywa)からの熱分解油が用いられる。
【0082】
第7表は、500℃で後コンディショニングされた汚泥から得られた熱分解油に対する追加的な後コンディショニング工程の結果を示している(第2表、第2行、第2列を参照)。水素化によっても蒸留によっても、ヘテロ原子(O、N、S)の割合を著しく低下させることができることを示している。これには、酸価のさらなる大幅な減少ならびに発熱量および粘度の増加も伴う。
【0083】
水素化された中間蒸留液は、実質的にEN 590に準拠するディーゼル燃料の基準値を満たしている(カッコ内には、それぞれ挙げられた規格に要求される値が記載されている):
セタン価:43(≧51)、
セタン指数:47(≧46)、
15℃での密度:840kg/m3(820~845)、
硫黄含有量:19.9mg/kg(≦10)、
引火点:86℃(≧55℃)、
灰含有率:<0.005質量%(≦0.01)、
含水率:55mg/kg(≦200)、
銅腐食性:クラス1(クラス1)、
60℃での潤滑性:196μm(≦460μm)、
40℃での粘度:2,855mm2/s(2~4.5)、
CFPP:-11℃(-20℃~0℃)、
250℃での体積:54体積%(<65)、
350℃での体積:92.7体積%(≧85)、
95体積%の残留物:360℃(≦360)。セタン価および硫黄含有率は、第一に。
【0084】
【0085】
【0086】
【0087】
【0088】
【0089】
【0090】
図2は、一連の試験の結果を示しており、これによって、本発明による熱分解油のディーゼル燃料としての適性、もしくはディーゼル添加としての適性を試験した。クランク角度(-10°~20°)に対してプロットされたシリンダー圧力の推移(bar)を示している。本発明による熱分解油として、発酵残渣から700℃の改質温度で得られた、第2表、第1行、第8列に記載の水素化されていない油(「発酵残渣1」)を使用した。これらの結果は、Kubota 型式V3300の銘柄のディーゼルエンジンを使用して求めた。ここで、
図2は、本発明による熱分解油(PO)とラプスメチルエステル(RME)との混合物(四角:PO 75%-RME 25%、ひし形:PO 50%-RME 50%、三角:PO 10%-RME 90%)が、純粋なラプスメチルエステル(円形)と同じように良好な結果を提供することを示している。