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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-14
(45)【発行日】2022-01-25
(54)【発明の名称】熱エネルギー回収装置
(51)【国際特許分類】
   F01K 25/10 20060101AFI20220118BHJP
   F01K 23/10 20060101ALI20220118BHJP
   F01N 5/02 20060101ALI20220118BHJP
【FI】
F01K25/10 C
F01K23/10 Q
F01N5/02 F
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018006213
(22)【出願日】2018-01-18
(65)【公開番号】P2019124188
(43)【公開日】2019-07-25
【審査請求日】2020-11-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100176315
【弁理士】
【氏名又は名称】荒田 秀明
(72)【発明者】
【氏名】足立 成人
(72)【発明者】
【氏名】成川 裕
(72)【発明者】
【氏名】西村 和真
【審査官】高吉 統久
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/174789(WO,A1)
【文献】特開2015-190364(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0224469(US,A1)
【文献】特開2015-017770(JP,A)
【文献】特開昭63-123988(JP,A)
【文献】特開昭61-152916(JP,A)
【文献】特開2016-121665(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 17/08
F01K 23/10
F01K 25/10
F01N 5/02
F02G 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱媒体の熱を利用することによって作動媒体を加熱する加熱器と、
前記加熱器から流出した作動媒体を膨張させる膨張機と、
前記膨張機に接続された動力回収機と、
前記膨張機から流出した作動媒体を凝縮させる凝縮器と、
前記凝縮器から流出した作動媒体を前記加熱器へ送るポンプと、
前記加熱器、前記膨張機、前記凝縮器及び前記ポンプをこの順に接続する循環流路と、
前記加熱媒体が流れる加熱媒体流路と、
前記加熱媒体と中間媒体である水とを熱交換させることによって当該水を蒸発させる熱交換器と、
前記熱交換器で生成された水蒸気が流れる中間媒体流路と、
前記加熱器から流出した前記作動媒体の温度に関する指標が、当該作動媒体の分解温度に基づき設定された設定温度以下になるように、前記加熱器での前記水蒸気から前記作動媒体への入熱量を調整する調整部と、を備え
前記加熱器は、前記中間媒体流路のうち前記熱交換器の下流側の部位に設けられており、
前記調整部は、
前記中間媒体流路のうち前記熱交換器と前記加熱器との間の部位に設けられた減圧弁と、
前記指標が前記設定温度以下になるように前記減圧弁の開度を調整する制御部と、を有する、熱エネルギー回収装置。
【請求項2】
加熱媒体の熱を利用することによって作動媒体を加熱する加熱器と、
前記加熱器から流出した作動媒体を膨張させる膨張機と、
前記膨張機に接続された動力回収機と、
前記膨張機から流出した作動媒体を凝縮させる凝縮器と、
前記凝縮器から流出した作動媒体を前記加熱器へ送るポンプと、
前記加熱器、前記膨張機、前記凝縮器及び前記ポンプをこの順に接続する循環流路と、
前記加熱媒体が流れる加熱媒体流路と、
前記加熱器から流出した前記作動媒体の温度に関する指標が設定温度以下になるように、前記加熱器での前記作動媒体への入熱量を調整する調整部と、
を備え、
前記加熱器は、前記加熱媒体流路に設けられており、
前記調整部は、
前記加熱器をバイパスするように前記加熱媒体流路に接続されたバイパス流路と、
前記バイパス流路に流入する前記加熱媒体の流量と前記加熱器に流入する前記加熱媒体の流量とを調整することによって前記加熱器から流出した前記作動媒体の温度が前記設定温度以下になるように前記加熱器での前記加熱媒体から前記作動媒体への入熱量を調整する流入量調整ユニットと、を有し、
前記流入量調整ユニットは、
前記バイパス流路に設けられており開度調整が可能なバイパス弁と、
前記加熱媒体流路のうち前記バイパス流路と並列となる部位に設けられており開度調整が可能な開閉弁と、
前記加熱器から流出した前記作動媒体の過熱度が所定範囲内に収まるように前記バイパス弁の開度、前記開閉弁の開度、及び、前記加熱器への前記作動媒体の流入量を制御する過熱度制御を行う制御部と、
を有し、
前記制御部は、前記過熱度制御において、前記過熱度が前記所定範囲の下限値よりも小さいときは、前記バイパス弁の開度を小さくする操作よりも前記開閉弁の開度を大きくする制御を優先させる、熱エネルギー回収装置。
【請求項3】
請求項2に記載の熱エネルギー回収装置において、
前記バイパス弁及び前記開閉弁は、バタフライ弁である、熱エネルギー回収装置。
【請求項4】
請求項2または3に記載の熱エネルギー回収装置において、
前記制御部は、前記過熱度制御において、前記過熱度が前記所定範囲の上限値よりも大きいときは、前記開閉弁の開度を小さくする操作よりも前記バイパス弁の開度を大きくする操作を優先させる、熱エネルギー回収装置。
【請求項5】
請求項2ないし4のいずれかに記載の熱エネルギー回収装置において、
前記制御部は、前記過熱度制御中において、前記加熱器から流出した前記作動媒体の温度が前記設定温度よりも大きくなったときに、前記バイパス弁の開度を最大にするとともに前記開閉弁の開度を小さくする緊急時制御を行う、熱エネルギー回収装置。
【請求項6】
請求項5に記載の熱エネルギー回収装置において、
前記制御部は、前記緊急時制御後、前記加熱器から流出した前記作動媒体の温度が前記設定温度以下になったときに、前記過熱度制御を行う、熱エネルギー回収装置。
【請求項7】
請求項2ないし6のいずれかに記載の熱エネルギー回収装置において、
前記制御部は、前記加熱器から流出した前記作動媒体の過熱度が前記所定範囲となり、かつ、前記加熱器から流出した前記作動媒体の温度が前記設定温度以下となる状態が維持されるように、前記加熱器への前記作動媒体の流入量と前記加熱器への前記加熱媒体の流入量とを減少させる停止制御を行う、熱エネルギー回収装置。
【請求項8】
請求項7に記載の熱エネルギー回収装置において、
前記制御部は、前記停止制御中において、前記加熱器における前記作動媒体の前記加熱媒体からの熱回収の停止を示す停止条件が成立したときに、前記開閉弁を閉じる、熱エネルギー回収装置。
【請求項9】
請求項2ないし8のいずれかに記載の熱エネルギー回収装置において、
前記制御部は、前記加熱器から流出した前記作動媒体の過熱度が前記所定範囲となり、かつ、前記加熱器から流出した前記作動媒体の温度が前記設定温度以下となる状態が維持されるように、前記加熱器への前記作動媒体の流入量と前記加熱器への前記加熱媒体の流入量とを増大させる起動制御を行う、熱エネルギー回収装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱エネルギー回収装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジンの排ガスや工場の各種設備から排出される排ガス等の加熱媒体から熱を回収する熱エネルギー回収装置が知られている。例えば、特許文献1には、船舶に搭載された原動機と、タービン及び圧縮機を有する過給機と、原動機から排出された排ガスの熱を回収する有機媒体低温熱回収機構と、を備える低温熱回収システムが開示されている。
【0003】
タービンは、原動機から排出された排ガスによって駆動される。圧縮機は、タービンに接続されており、タービンの回転に伴って前記過給空気を吐出する。有機媒体低温熱回収機構は、前記排ガスによって有機媒体(R245fa等)を加熱する第1の熱交換器と、発電機を含むタービンユニットと、タービンユニットから流出した有機媒体を凝縮させる凝縮器と、凝縮器から流出した有機媒体を第1の熱交換器に送る循環ポンプと、を備えている。第1の熱交換器は、過給機のタービンから排出された排ガスを煙突に導く流路に設けられている。この第1の熱交換器は、有機媒体が循環する正規移送ラインのうち循環ポンプとタービンユニットとの間の部位に接続されている。つまり、有機媒体低温熱回収機では、第1の熱交換器において、原動機から排出された排ガスから有機媒体が熱を受け取り、この熱エネルギーがタービンユニットの発電機によって回収される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-160870号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載される有機媒体低温熱回収機構では、第1の熱交換器に供給される排ガスの温度の上昇等に起因して第1の熱交換器から流出する有機媒体の温度が当該有機媒体の分解温度を超える懸念がある。
【0006】
本発明の目的は、作動媒体の分解を抑制可能な熱エネルギー回収装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するための手段として、本発明の一態様に係る熱エネルギー回収装置は、加熱器と、膨張器と、動力回収機と、凝縮器と、ポンプと、循環経路と、加熱媒体流路と、熱交換器と、中間媒体流路と、調整部と、を備える。前記加熱器は、加熱媒体の熱を利用することによって作動媒体を加熱する。前記膨張器は、前記加熱器から流出した作動媒体を膨張させる。前記動力回収機は、前記膨張機に接続されている。前記凝縮器は、前記膨張機から流出した作動媒体を凝縮させる。前記ポンプは、前記凝縮器から流出した作動媒体を前記加熱器へ送る。前記循環経路は、前記加熱器、前記膨張機、前記凝縮器及び前記ポンプをこの順に接続する。前記熱交換器は、前記加熱媒体が流れる加熱媒体流路と、前記加熱媒体と中間媒体である水とを熱交換させることによって当該水を蒸発させる。前記中間媒体流路は、前記熱交換器で生成された水蒸気が流れる。前記調整部は、前記加熱器から流出した前記作動媒体の温度に関する指標が、当該作動媒体の分解温度に基づき設定された設定温度以下になるように、前記加熱器での前記水蒸気から前記作動媒体への入熱量を調整する
前記加熱器は、前記中間媒体流路のうち前記熱交換器の下流側の部位に設けられている。前記調整部は、減圧弁と、制御部とを有する。前記減圧弁は、前記中間媒体流路のうち前記熱交換器と前記加熱器との間の部位に設けられている。前記制御部は、前記指標が前記設定温度以下になるように前記減圧弁の開度を調整する。
【0008】
本熱エネルギー回収装置では、前記指標(加熱器に流入する加熱媒体(排ガス等)の温度や、加熱器から流出した作動媒体の温度)が設定温度以下になるように、調整部が加熱器での作動媒体への入熱量を調整するので、前記設定温度が作動媒体の分解温度に設定されることにより、作動媒体の分解が有効に抑制される。
また、本熱エネルギー回収装置では、加熱器が中間媒体流路のうち熱交換器の下流側の部位に設けられているので、水(水蒸気)を介して加熱媒体の熱が有効に作動媒体に投入される。
【0009】
前記課題を解決するための手段として、本発明の別態様に係る熱エネルギー回収装置は、加熱器と、膨張器と、動力回収機と、凝縮器と、ポンプと、循環経路と、加熱媒体流路と、調整部と、を備える。前記加熱器は、加熱媒体の熱を利用することによって作動媒体を加熱する。前記膨張器は、前記加熱器から流出した作動媒体を膨張させる。前記動力回収機は、前記膨張機に接続されている。前記凝縮器は、前記膨張機から流出した作動媒体を凝縮させる。前記ポンプは、前記凝縮器から流出した作動媒体を前記加熱器へ送る。前記循環経路は、前記加熱器、前記膨張機、前記凝縮器及び前記ポンプをこの順に接続する。前記加熱媒体流路は、前記加熱媒体が流れる。前記調整部は、前記加熱器から流出した前記作動媒体の温度に関する指標が設定温度以下になるように、前記加熱器での前記作動媒体への入熱量を調整する。
前記加熱器は、前記加熱媒体流路に設けられている。
前記調整部は、バイパス流路と、流入量調整ユニットと、を有する。前記バイパス流路は、前記加熱器をバイパスするように前記加熱媒体流路に接続されている。前記流入量調整ユニットは、前記バイパス流路に流入する前記加熱媒体の流量と前記加熱器に流入する前記加熱媒体の流量とを調整することによって前記加熱器から流出した前記作動媒体の温度が前記設定温度以下になるように前記加熱器での前記加熱媒体から前記作動媒体への入熱量を調整する。
前記流入量調整ユニットは、バイパス弁と、開閉弁と、制御部と、を有する。前記バイパス弁は、前記バイパス流路に設けられており開度調整が可能な弁である。前記開閉弁は、前記加熱媒体流路のうち前記バイパス流路と並列となる部位に設けられており開度調整が可能な弁である。前記制御部は、前記加熱器から流出した前記作動媒体の過熱度が所定範囲内に収まるように前記バイパス弁の開度、前記開閉弁の開度、及び、前記加熱器への前記作動媒体の流入量を制御する過熱度制御を行う。
前記制御部は、前記過熱度制御において、前記過熱度が前記所定範囲の下限値よりも小さいときは、前記バイパス弁の開度を小さくする操作よりも前記開閉弁の開度を大きくする制御を優先させる。
【0010】
本熱エネルギー回収装置では、前記指標(加熱器に流入する加熱媒体(排ガス等)の温度や、加熱器から流出した作動媒体の温度)が設定温度以下になるように、調整部が加熱器での作動媒体への入熱量を調整するので、前記設定温度が作動媒体の分解温度に設定されることにより、作動媒体の分解が有効に抑制される。
また、本熱エネルギー回収装置では、加熱器が加熱媒体流路に設けられているので、加熱媒体の熱が直接作動媒体に投入される。
また、本熱エネルギー回収装置では、調整部が流入量調整ユニットを有し、当該流入量調整ユニットがバイパス流路に流入する加熱媒体の流量と加熱器に流入する加熱媒体の流量とを調整することによって加熱器から流出する作動媒体の温度が有効に設定温度以下になる。
また、本熱エネルギー回収装置では、流入量調整ユニットが制御部を有し、当該制御部がバイパス弁の開度を調整することによってバイパス流路に流入する加熱媒体の流量と加熱器に流入する加熱媒体の流量とが調整される。
また、本熱エネルギー回収装置では、制御部が加熱器から流出した作動媒体の温度が上記設定温度以下になるようにバイパス弁の開度及び開閉弁の開度を制御するので、バイパス流路に流入する加熱媒体の流量と加熱器に流入する加熱媒体の流量とをより正確に調整することが可能となる。また、加熱媒体流路とバイパス流路の上流側の端部との接続部に三方弁が設けられる場合に比べて、加熱媒体に生じる圧力損失が低減される。
また、本熱エネルギー回収装置では、制御部が過熱度制御を行うので、加熱器から流出する作動媒体の温度を有効に設定温度以下に維持しつつ、膨張機を介して動力回収機で回収する動力を向上することが可能となる。
さらに、本熱エネルギー回収装置では、制御部が、過熱度が上記所定範囲の下限値よりも小さいときにはバイパス弁の開度を小さくする操作よりも開閉弁の開度を大きくする制御を優先させることとしている。よって、本熱エネルギー回収装置では、バイパス弁の開度を小さくする操作を優先させる場合に比べて、加熱媒体に生じる圧力損失の増大を回避しつつ加熱器への加熱媒体の流入量(加熱器での加熱媒体から作動媒体への入熱量)を増大させることが可能となる。
【0033】
上記別態様に係る熱エネルギー回収装置において、前記バイパス弁及び前記開閉弁は、バタフライ弁であることが好ましい。
【0038】
また、前記制御部は、前記過熱度制御において、前記過熱度が前記所定範囲の上限値よりも大きいときは、前記開閉弁の開度を小さくする操作よりも前記バイパス弁の開度を大きくする操作を優先させることが好ましい。
【0039】
このようにすれば、開閉弁の開度を小さくする場合に比べて、加熱媒体に生じる圧力損失を低減させつつ加熱器への加熱媒体の流入量(加熱器での加熱媒体から作動媒体への入熱量)を減少させることが可能となる。
【0040】
また、前記制御部は、前記過熱度制御中において、前記加熱器から流出した前記作動媒体の温度が前記設定温度よりも大きくなったときに、前記バイパス弁の開度を最大にするとともに前記開閉弁の開度を小さくする緊急時制御を行うことが好ましい。
【0041】
この態様では、バイパス弁の開度を最大とすることによって加熱媒体に生じる圧力損失の増大を回避しつつ、加熱器への加熱媒体の流入量(加熱器での作動媒体の受熱量)を減らすことによって作動媒体の分解を有効に抑制することが可能となる。
【0042】
さらに、前記制御部は、前記緊急時制御後、前記加熱器から流出した前記作動媒体の温度が前記設定温度以下になったときに、前記過熱度制御を行うことが好ましい。
【0043】
このようにすれば、作動媒体の分解の有効な抑制と、加熱媒体の熱の有効な回収と、の双方が達成される。
【0044】
また、前記制御部は、前記加熱器から流出した前記作動媒体の過熱度が前記所定範囲となり、かつ、前記加熱器から流出した前記作動媒体の温度が前記設定温度以下となる状態が維持されるように、前記加熱器への前記作動媒体の流入量と前記加熱器への前記加熱媒体の流入量とを減少させる停止制御を行うことが好ましい。
【0045】
この態様では、作動媒体の分解の抑制と加熱媒体の熱の有効な回収との双方を両立しながら安定的に熱エネルギー回収装置を停止することが可能となる。
【0046】
さらに、前記制御部は、前記停止制御中において、前記加熱器における前記作動媒体の前記加熱媒体からの熱回収の停止を示す停止条件が成立したときに、前記開閉弁を閉じることが好ましい。
【0047】
この態様では、停止条件(ポンプの周波数が設定値以下になることや、ポンプの停止から所定時間が経過したことなど)が成立したときに開閉弁が閉じられるので、当該装置の停止時に加熱器への加熱媒体の流入が継続すること、すなわち、加熱器において作動媒体が蒸発し続けること及びそれによって加熱器から流出した作動場体の温度が上昇することが抑制される。
【0048】
また、前記制御部は、前記加熱器から流出した前記作動媒体の過熱度が前記所定範囲となり、かつ、前記加熱器から流出した前記作動媒体の温度が前記設定温度以下となる状態が維持されるように、前記加熱器への前記作動媒体の流入量と前記加熱器への前記加熱媒体の流入量とを増大させる起動制御を行うことが好ましい。
【0049】
この態様では、作動媒体の分解の抑制と加熱媒体の熱の有効な回収との双方を両立しながら安定的に熱エネルギー回収装置を起動することが可能となる。
【発明の効果】
【0050】
以上のように、本発明によれば、作動媒体の分解を抑制可能な熱エネルギー回収装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
図1】本発明の第1実施形態の熱エネルギー回収装置の構成を概略的に示す図である。
図2】第1実施形態の熱エネルギー回収装置の変形例を概略的に示す図である。
図3】本発明の第2実施形態の熱エネルギー回収装置の構成を概略的に示す図である。
図4】本発明の第3実施形態の熱エネルギー回収装置の構成を概略的に示す図である。
図5】制御部の起動制御及び過熱度制御の制御内容を示すフローチャートである。
図6】制御部の緊急時制御の制御内容を示すフローチャートである。
図7】制御部の停止制御の制御内容を示すフローチャートである。
図8】第3実施形態の熱エネルギー回収装置の変形例を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0052】
本発明の好ましい実施形態について、以下、図面を参照しながら説明する。
【0053】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態の熱エネルギー回収装置1について、図1を参照しながら説明する。この熱エネルギー回収装置1は、加熱媒体(本実施形態では排ガス)から熱を回収することによって動力を生成する装置である。本実施形態では、熱エネルギー回収装置1は、エンジン2及び過給機3を有する船舶に搭載されている。過給機3は、エンジン2から排出された排ガスによって駆動されるタービン4と、タービン4に接続されておりエンジン2に供給するための過給空気を吐出するコンプレッサー5と、を有する。コンプレッサー5から吐出された過給空気は、コンプレッサー5とエンジン2とを接続する吸気ラインL1を通じてエンジン2に供給される。エンジン2から排出された排ガスは、エンジン2とタービン4とを接続する排気ラインL2を通じてタービン4に供給される。
【0054】
図1に示されるように、熱エネルギー回収装置1は、加熱媒体流路10と、加熱器20と、膨張機22と、動力回収機24と、凝縮器26と、ポンプ28と、循環流路30と、調整部41と、を備えている。循環流路30は、加熱器20、膨張機22、凝縮器26及びポンプ28をこの順に接続している。
【0055】
加熱媒体流路10は、加熱媒体が流れる流路である。本実施形態では、加熱媒体流路10は、タービン4から排出された排ガス(加熱媒体)を煙突6に導く流路である。なお、図1では、便宜上、加熱媒体が加熱器20の下部から流入し、上部から流出するように描かれているが、加熱媒体の流れを作動媒体の流れに対して対向流とするために、実際は、加熱媒体は、加熱器20の上部から流入し、下部から流出する。また、加熱媒体流路10は、加熱器20の側面に接続される。
【0056】
加熱器20は、加熱媒体流路10に設けられている。加熱器20は、加熱媒体の熱を利用することによって作動媒体を加熱する。具体的に、加熱器20は、加熱媒体流路10を流れる加熱媒体と作動媒体(R245fa等)とを熱交換させることによって作動媒体を加熱する。本実施形態では、加熱器20として、いわゆるシェルアンドチューブ形式の熱交換器が用いられている。すなわち、加熱器20は、作動媒体が流れる伝熱管20aと、伝熱管20aを収容しており加熱媒体の流路を構成するケーシング20bと、を有している。本実施形態では、加熱器20は、作動媒体を蒸発させる蒸発器として用いられている。ただし、加熱器20は、液相の作動媒体を当該作動媒体が蒸発しない程度に加熱する(液相の作動媒体のまま流出させる)熱交換器として用いられることや、作動媒体が過熱状態となるように当該作動媒体を加熱する過熱器として用いられることも可能である。
【0057】
膨張機22は、循環流路30のうち加熱器20の下流側の部位に設けられている。膨張機22は、加熱器20から流出した気相の作動媒体を膨張させる。本実施形態では、膨張機22として、気相の作動媒体の膨張エネルギーにより回転駆動されるロータを有する容積式のスクリュ膨張機が用いられている。
【0058】
動力回収機24は、膨張機22に接続されている。動力回収機24は、膨張機22の駆動に伴って回転することにより作動媒体から動力を回収する。本実施形態では、動力回収機24として発電機が用いられている。なお、動力回収機24として、圧縮機等が用いられてもよい。
【0059】
凝縮器26は、循環流路30のうち膨張機22の下流側の部位に設けられている。凝縮器26は、膨張機22から流出した作動媒体と冷却媒体(海水等)とを熱交換させることによって作動媒体を凝縮させる。
【0060】
ポンプ28は、循環流路30のうち凝縮器26の下流側の部位(凝縮器26と加熱器20との間の部位)に設けられている。ポンプ28は、凝縮器26から流出した液相の作動媒体を加熱器20に送る。
【0061】
調整部41は、加熱器20から流出した作動媒体の温度Tが設定温度Tset以下になるように、加熱器20での加熱媒体から作動媒体への入熱量を調整する。なお、前記温度Tは、循環流路30のうち加熱器20と膨張機22との間の部位に設けられた温度センサ71によって検出される。設定温度Tsetは、作動媒体の分解温度(例えば200℃)に設定されている。なお、加熱器20に流入する加熱媒体の温度(本実施形態では、加熱媒体流路10のうち加熱器20の上流側の部位の温度)は、加熱器20から流出した作動媒体の温度Tと相関があるので、調整部41は、加熱器20から流出した作動媒体の温度Tではなく、加熱器20に流入する加熱媒体の温度が設定温度Tset以下になるように、加熱器20での加熱媒体から作動媒体への入熱量を調整してもよい。つまり、調整部41は、加熱器20から流出した作動媒体の温度Tそのもの、あるいは、当該温度Tに関する指標(加熱器20に流入する加熱媒体の温度など)に基づいて、加熱器20での作動媒体への入熱量を調整する。
【0062】
本実施形態では、調整部41は、加熱媒体流路10のうち加熱器20の上流側の部位(タービン4と加熱器20との間の部位)に設けられた冷却部50を有し、好ましくは制御部61を有する。
【0063】
冷却部50は、加熱器20に流入する加熱媒体の温度が設定温度Tset以下となるように加熱媒体を冷却する。本実施形態では、冷却部50は、加熱媒体を冷却媒体(海水等)により冷却するスクラバー51と、スクラバー51に冷却媒体を送る冷却媒体ポンプ52と、を有している。スクラバー51は、タービン4から排出された加熱媒体に冷却媒体を供給することにより、加熱媒体に含まれるSOx等を除去するとともに加熱媒体を冷却する。このスクラバー51が用いられる理由は、次のとおりである。すなわち、排ガスから直接熱を回収しようとしても、当該排ガスの温度が高いことから作動媒体が分解してしまう恐れがあること、及び、スクラバーの下流では、排ガスの温度が高くなり過ぎず、かつ、熱エネルギー回収装置1によって回収可能な熱量が存在していたこと、が判ってきたため、スクラバー51の下流に加熱器20を配置することとした。
【0064】
なお、冷却部50は、スクラバー51の代わりに、加熱媒体と冷却媒体とを熱交換させることによって加熱媒体を冷却する冷却器(シェルアンドチューブ形式の熱交換器等)を有していてもよい。あるいは、図2に示されるように、冷却部50は、加熱媒体流路10に加熱媒体の温度よりも低温のガス(空気等)を供給するファン54を有していてもよい。これらの場合、調整部41は、加熱器20から流出した作動媒体の温度Tが設定温度Tsetよりも低い基準温度(例えば150℃~180℃)以上になったときにのみ、前記冷却部(冷却器又はファン54)での加熱媒体の冷却を行ってもよい。このようにすれば、常時前記冷却部での加熱媒体の冷却を行われる場合に比べ、加熱器20で有効に加熱媒体の熱が回収され、さらに、冷却媒体ポンプ52やファン54の消費電力が削減される。なお、冷却部での加熱媒体の冷却とは、冷却器が用いられる場合には冷却媒体ポンプ52の駆動を意味し、ファン54が用いられる場合には当該ファン54の駆動を意味する。
【0065】
制御部61は、加熱器20から流出した作動媒体の温度T(前記指標)が設定温度Tset以下になるように加熱器20への作動媒体の流入量を制御する。本実施形態では、制御部61は、ポンプ28の周波数を制御することによって加熱器20への作動媒体の流入量を制御する。なお、加熱器20への作動媒体の流入量の制御は、この例に限られない。例えば、ポンプ28をバイパスするように循環流路30にポンプバイパス流路(図示略)が設けられるとともに当該ポンプバイパス流路に開閉弁(図示略)が設けられ、制御部61は、前記開閉弁の開度を調整することによって加熱器20への作動媒体の流入量を調整してもよい。
【0066】
以上に説明したように、本実施形態の熱エネルギー回収装置1では、前記指標(加熱器20に流入する加熱媒体(排ガス等)の温度、又は、加熱器20から流出した作動媒体の温度T)が設定温度Tset以下になるように、調整部41が加熱器20での作動媒体への入熱量を調整するので、設定温度Tsetが作動媒体の分解温度に設定されることにより、作動媒体の分解が有効に抑制される。
【0067】
なお、調整部41は、必ずしも積極的に冷却部50の下流側の温度を調整する必要はなく、結果的に熱エネルギー回収装置1において適した環境とすることができればよい。
【0068】
(第2実施形態)
次に、図3を参照しながら、本発明の第2実施形態の熱エネルギー回収装置1について説明する。なお、第2実施形態では、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明を行い、第1実施形態と同じ構造、作用及び効果の説明は省略する。
【0069】
本実施形態では、加熱器20は、加熱媒体(排ガス)の熱を直接作動媒体に投入する(加熱媒体と作動媒体とを直接熱交換させる)のではなく、中間媒体(本実施形態では水)を介して加熱媒体の熱を作動媒体に投入する。具体的に、本実施形態の熱エネルギー回収装置1は、熱交換器7と、中間媒体が流れる中間媒体流路8と、をさらに備えている。
【0070】
熱交換器7は、加熱媒体流路10のうちスクラバー51の下流側の部位に設けられている。熱交換器7は、加熱媒体と中間媒体とを熱交換させることによって当該中間媒体を蒸発させる。本実施形態では、熱交換器7としてボイラが用いられている。この熱交換器7には、中間媒体流路8に設けられた中間媒体ポンプ9により中間媒体が供給される。
【0071】
加熱器20は、中間媒体流路8のうち熱交換器7の下流側の部位に設けられている。このため、加熱器20では、熱交換器7から流出した気相の中間媒体(水蒸気)によって作動媒体が加熱される。
【0072】
本実施形態では、調整部42は、前記指標が設定温度Tset以下になるように、加熱器20での中間媒体から作動媒体への入熱量を調整する。具体的に、調整部42は、冷却部50に加え、中間媒体流路8のうち熱交換器7と加熱器20との間の部位に設けられた減圧弁V0と、前記指標が設定温度Tset以下になるように、減圧弁V0の開度を調整する制御部62と、を有している。ただし、加熱器20をバイパスするように中間媒体流路8に加熱器バイパス流路(図示略)が設けられるとともに当該加熱器バイパス流路に開閉弁(図示略)が設けられ、制御部62は、前記開閉弁の開度を調整することによって加熱器20への作動媒体の流入量を調整してもよい。あるいは、調整部42は、中間媒体ポンプ9の周波数を調整してもよい。また、熱交換器7に流入する加熱媒体の温度が設定温度Tset以下になっているのであれば、制御部62は、加熱器20の流入する中間媒体の流量を調整しなくてもよい。
【0073】
(第3実施形態)
次に、図4図7を参照しながら、本発明の第3実施形態の熱エネルギー回収装置1について説明する。なお、第3実施形態では、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明を行い、第1実施形態と同じ構造、作用及び効果の説明は省略する。
【0074】
本実施形態では、調整部43は、加熱器20をバイパスするように加熱媒体流路10に接続されたバイパス流路12と、流入量調整ユニット55と、を有する。
【0075】
流入量調整ユニット55は、バイパス流路12に流入する加熱媒体の流量と加熱器20に流入する加熱媒体の流量とを調整することによって加熱器20から流出した作動媒体の温度Tが設定温度Tset以下になるように加熱器20での加熱媒体から作動媒体への入熱量を調整する。
【0076】
具体的に、流入量調整ユニット55は、バイパス流路12に設けられたバイパス弁V1と、加熱媒体流路10のうちバイパス流路12と並列となる部位でかつ加熱器20の上流側の部位に設けられた開閉弁V2と、制御部63と、を有する。各弁V1,V2は、開度調整が可能である。本実施形態では、各弁V1,V2として、バタフライ弁が用いられている。なお、各弁V1,V2として、ボール弁やゲート弁が用いられてもよい。また、開閉弁V2は、省略されてもよい。
【0077】
制御部63は、加熱器20から流出した作動媒体の温度Tが設定温度Tset以下になるように各弁V1,V2の開度を制御し、好ましくは加熱器20への作動媒体の流入量(ポンプ28の周波数)をも制御する。具体的に、制御部63は、過熱度制御と、緊急時制御と、停止制御と、起動制御と、を行う。
【0078】
過熱度制御は、加熱器20から流出した作動媒体の過熱度αが所定範囲内に収まるようにバイパス弁V1の開度、開閉弁V2の開度、及び、加熱器20への作動媒体の流入量(ポンプ28の周波数)を操作する制御である。なお、過熱度αは、循環流路のうち加熱器20と膨張機22との間の部位に設けられた温度センサ72及び圧力センサ73の各検出値に基づいて算出される。また、制御部63は、過熱度制御において、前記過熱度αが所定範囲の下限値α2よりも小さいときは、バイパス弁V1の開度を小さくする操作よりも開閉弁V2の開度を大きくする制御を優先させる。また、制御部63は、過熱度制御において、前記過熱度αが所定範囲の上限値α1よりも大きいときは、開閉弁V2の開度を小さくする操作よりもバイパス弁V1の開度を大きくする操作を優先させる。
【0079】
停止制御は、加熱器20から流出した作動媒体の過熱度αが前記所定範囲となり、かつ、加熱器20から流出した作動媒体の温度Tが設定温度Tset以下となる状態が維持されるように、加熱器20への作動媒体の流入量(ポンプ28の周波数)と加熱器20への加熱媒体の流入量とを減少させる制御である。また、制御部63は、停止制御中において、加熱器20における作動媒体の加熱媒体からの熱回収の停止を示す停止条件が成立したときに、開閉弁V2を閉じる。なお、停止条件として、ポンプ28の周波数が最小値(ポンプ28の安定的な駆動が維持される下限値)以下になることや、ポンプ28の停止から所定時間が経過したことなどが挙げられる。
【0080】
起動制御は、加熱器20から流出した作動媒体の過熱度αが前記所定範囲となり、かつ、加熱器20から流出した作動媒体の温度Tが設定温度Tset以下となる状態が維持されるように、加熱器20への作動媒体の流入量(ポンプ28の周波数)と加熱器20への加熱媒体の流入量とを増大させる制御である。
【0081】
緊急時制御は、過熱度制御中、停止制御中及び起動制御中において、加熱器20から流出した作動媒体の温度Tが設定温度Tsetよりも大きくなったときに、バイパス弁V1の開度を最大にするとともに開閉弁V2の開度を小さくする制御である。制御部63は、緊急時制御後、加熱器20から流出した作動媒体の温度Tが設定温度Tset以下になったときに、前記過熱度制御を行う。
【0082】
以下、図5図7を参照しながら、制御部63の具体的な制御内容について説明する。まず、図5を参照しながら、起動制御及び過熱度制御について説明する。なお、熱エネルギー回収装置1の起動前は、バイパス弁V1が全開とされ、開閉弁V2が全閉とされている。
【0083】
この状態において、制御部63は、起動信号を受け取ると、開閉弁V2の開度を上げ(ステップST11)、ポンプ28を駆動する(ステップST12)。
【0084】
次に、制御部63は、過熱度αが上限値α1よりも大きいか否かを判断する(ステップST13)。この結果、過熱度αが上限値α1よりも大きい場合、制御部63は、ポンプ28の周波数が定格か否かを確認する(ステップST14)。その結果、ポンプ28の周波数が定格でない場合、制御部63は、ポンプ28の周波数を上げ(ステップST15)、ステップST13に戻る。これにより、過熱度αが減少するとともに動力回収機24での動力の回収量が増大する。
【0085】
一方、ステップST14においてポンプ28の周波数が定格である場合、つまり、加熱器20での加熱媒体から作動媒体への入熱量が過剰である場合、制御部63は、前記入熱量を減らすために、まず、バイパス弁V1の開度が全開か否かを判断する(ステップST16)。その結果、バイパス弁V1の開度が全開でない場合、制御部63は、バイパス弁V1の開度を上げ(ステップST17)、ステップST13に戻る。これにより、バイパス流路12への加熱媒体の流入量が増大するので、前記入熱量が減る。一方、ステップST16においてバイパス弁V1の開度が全開である場合(バイパス弁V1による前記入熱量の調整ができない場合)、制御部63は、前記入熱量を減らすために開閉弁V2の開度を下げ(ステップST18)、ステップST13に戻る。
【0086】
また、ステップST13において、過熱度αが上限値α1よりも大きくない場合(ステップST13でNOの場合)、制御部63は、過熱度αが下限値α2以上上限値α1以下であるか否かを判断する(ステップST19)。この結果、過熱度αが下限値α2以上上限値α1以下である場合、制御部63は、ステップST13に戻る。一方、過熱度αが下限値α2以上上限値α1以下ではない場合、つまり、過熱度αが下限値α2未満である場合(前記入熱量が不足している場合)、制御部63は、まず、開閉弁V2の開度が全開か否かを判断する(ステップST20)。その結果、開閉弁V2の開度が全開でない場合、制御部63は、前記入熱量が増やすために開閉弁V2の開度を上げ(ステップST21)、ステップST13に戻る。一方、ステップST20において開閉弁V2の開度が全開である場合(開閉弁V2による前記入熱量の調整ができない場合)、制御部63は、バイパス弁V1の開度が全閉か否かを判断する(ステップST22)。そして、バイパス弁V1の開度が全閉でない場合、制御部63は、バイパス弁V1の開度を下げ(ステップST23)、ステップST13に戻る。これにより、加熱器20への加熱媒体の流入量が増大するので、前記入熱量が増大する。よって、過熱度αが上昇する。
【0087】
一方、ステップST22において、バイパス弁V1の開度が全閉である場合、つまり、各弁V1,V2によって入熱量を増大させる操作ができない場合、制御部63は、ポンプ28の周波数を下げ(ステップST24)、ステップST13に戻る。これにより、過熱度αが低下する。
【0088】
続いて、図6を参照しながら、緊急時制御について説明する。この緊急時制御は、起動制御、過熱度制御及び停止制御と同時に行われている。
【0089】
まず、制御部63は、加熱器20から流出した作動媒体の温度Tが設定温度Tsetよりも大きいか否かを判断する(ステップST31)。この結果、温度Tが設定温度Tsetよりも大きくない場合、制御部63は、再度ステップST31に戻る一方、温度Tが設定温度Tsetよりも大きい場合、制御部63は、ポンプ28の周波数が定格か否かを判断する(ステップST32)。
【0090】
この結果、ポンプ28の周波数が定格でない場合、制御部63は、ポンプ28の周波数を上げ(ステップST33)、ステップST31に戻る。これにより、前記温度Tが低下するとともに動力回収機24での動力の回収量が増大する。一方、ポンプ28の周波数が定格である場合(ポンプ28の周波数の調整による前記温度Tの調整ができない場合)、制御部63は、まず、バイパス弁V1が全開か否かを判断する(ステップST34)。
【0091】
この結果、バイパス弁V1が全開でない場合、制御部63は、加熱器20への加熱媒体の流入量、つまり、入熱量を減らすためにバイパス弁V1の開度を上げ(ステップST35)、ステップST31に戻る。一方、バイパス弁V1が全開である場合(バイパス弁V1によって前記入熱量を減少させる操作ができない場合)、制御部63は、開閉弁V2を全閉とする(ステップST36)。これにより、加熱器20に流入する加熱媒体の流量、つまり、前記入熱量がゼロになる。
【0092】
そして、制御部63は、温度Tが設定温度Tsetよりも小さいか否かを判断し(ステップST37)、温度Tが設定温度Tset以上の場合は再度温度Tが設定温度Tsetよりも小さいか否かを判断する一方、温度Tが設定温度Tsetよりも小さい場合、過熱度制御のステップST11に移る。
【0093】
続いて、図7を参照しながら、停止制御について説明する。
【0094】
制御部63は、停止信号を受けると、まず、バイパス弁V1を全開(ステップST41)。これにより、加熱器20への加熱媒体の流入量、つまり、前記入熱量が減少し始める。
【0095】
そして、制御部63は、過熱度αが上限値α1以下であるか否かを判断する(ステップST42)。この結果、過熱度αが上限値α1以下である場合、制御部63は、ポンプ28の周波数が最小値(ポンプ28の安定的な駆動が維持される下限値)であるか否かを判断する(ステップST44)。この結果、ポンプ28の周波数が最小値ではない場合、つまり、ポンプ28の周波数を減少させることが可能な状態である場合、制御部63は、ポンプ28の周波数を下げ(ステップST45)、ステップST42に戻る。これにより、過熱度αが上昇する。
【0096】
一方、ステップST42において過熱度αが上限値α1よりも大きい場合、制御部63は、開閉弁V2の開度を下げ(ステップST43)、ステップST42に戻る。これにより、加熱器20への加熱媒体の流入量(入熱量)が減少するので、過熱度αが低下する。
【0097】
以上の操作が繰り返されることにより、過熱度αが上限値α1以下に維持されつつポンプ28の周波数が次第に前記最小値に向けて減少する。
【0098】
そして、ステップST44においてポンプ28の周波数が最小値である場合、制御部63は、ポンプ28を停止し(ステップST46)、開閉弁V2を閉じる(ステップST47)。なお、ステップST47は、前記停止条件が成立したときに行われればよいので、ステップST46と同時、つまり、ポンプ28の周波数が最小値になったときに行われてもよいし、ステップST46の後、所定時間経過後に行われてもよい。
【0099】
以上のように、本実施形態の熱エネルギー回収装置1では、流入量調整ユニット55がバイパス流路12に流入する加熱媒体の流量と加熱器20に流入する加熱媒体の流量とを調整するので、加熱器20から流出する作動媒体の温度Tが有効に設定温度Tset以下になる。
【0100】
また、制御部63は、過熱度制御を行うので、加熱器20から流出する作動媒体の温度Tを有効に設定温度Tset以下に維持しつつ、膨張機22を介して動力回収機24で回収する動力を向上することが可能となる。
【0101】
また、制御部63は、過熱度制御において、過熱度αが下限値α2よりも小さいときは、バイパス弁V1の開度を小さくする操作よりも開閉弁V2の開度を大きくする制御を優先させる。このため、バイパス弁V1の開度を小さくする操作を優先させる場合に比べて、加熱媒体に生じる圧力損失の増大を回避しつつ加熱器20への加熱媒体の流入量(加熱器20での加熱媒体から作動媒体への入熱量)を増大させることが可能となる。
【0102】
また、制御部63は、過熱度制御において、過熱度αが上限値α1よりも大きいときは、開閉弁V2の開度を小さくする操作よりもバイパス弁V1の開度を大きくする操作を優先させる。このため、開閉弁V2の開度を小さくする場合に比べて、加熱媒体に生じる圧力損失を低減させつつ加熱器20への加熱媒体の流入量(加熱器20での加熱媒体から作動媒体への入熱量)を減少させることが可能となる。
【0103】
また、制御部63は、緊急時制御を行う。このため、バイパス弁V1の開度を最大とすることによって加熱媒体に生じる圧力損失の増大を回避しつつ、加熱器20への加熱媒体の流入量(加熱器20での作動媒体の受熱量)を減らすことによって作動媒体の分解を有効に抑制することが可能となる。
【0104】
また、制御部63は、緊急時制御後、加熱器20から流出した作動媒体の温度Tが設定温度Tset以下になったときに、前記過熱度制御を行う。よって、作動媒体の分解の有効な抑制と、加熱媒体の熱の有効な回収と、の双方が達成される。
【0105】
また、制御部63は、停止制御を行うので、作動媒体の分解の抑制と加熱媒体の熱の有効な回収との双方を両立しながら安定的に熱エネルギー回収装置1を停止することが可能となる。
【0106】
また、制御部63は、停止制御中において、前記停止条件が成立したときに開閉弁V2を閉じるので、当該装置の停止時に加熱器20への加熱媒体の流入が継続すること、すなわち、加熱器20において作動媒体が蒸発し続けること及びそれによって加熱器20から流出した作動場体の温度Tが上昇することが抑制される。
【0107】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0108】
例えば、第3実施形態においては、バイパス弁V1及び開閉弁V2に代えて、図8に示されるように、バイパス流路12に流入する加熱媒体の流量と加熱器20に流入する加熱媒体の流量とを調整可能な三方弁V3が設けられてもよい。ただし、上記第3実施形態のように、バイパス弁V1及び開閉弁V2が設けられることにより、バイパス流路12に流入する加熱媒体の流量と加熱器20に流入する加熱媒体の流量とをより正確に調整することが可能となる。
【0109】
また、起動制御及び停止制御では、加熱器20から流出した作動媒体の過熱度αの代わりに、加熱器20に流入する加熱媒体の温度及び流量と、加熱器20から流出した加熱媒体の温度及び流量と、に基づいて算出された熱量が用いられてもよい。
【0110】
また、加熱媒体は、作動媒体の分解温度以上の温度になり得るものであれば、エンジン2の排ガスに限られない。
【符号の説明】
【0111】
1 熱エネルギー回収装置
2 エンジン
3 過給機
4 タービン
5 コンプレッサー
7 熱交換器
8 中間媒体流路
9 中間媒体ポンプ
10 加熱媒体流路
12 バイパス流路
20 加熱器
22 膨張機
24 動力回収機
26 凝縮器
28 ポンプ
30 循環流路
41 調整部
42 調整部
43 調整部
50 冷却部
51 スクラバー
52 冷却媒体ポンプ
54 ファン
55 流入量調整ユニット
61 制御部
62 制御部
63 制御部
V0 減圧弁
V1 バイパス弁
V2 開閉弁
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8