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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-14
(45)【発行日】2022-01-25
(54)【発明の名称】手術台用の体圧分布センサシート
(51)【国際特許分類】
   G01G 19/44 20060101AFI20220118BHJP
   G01G 19/52 20060101ALI20220118BHJP
   G01G 3/00 20060101ALI20220118BHJP
   G01L 5/00 20060101ALI20220118BHJP
   A61G 13/10 20060101ALI20220118BHJP
   G01L 1/14 20060101ALI20220118BHJP
   A61G 7/057 20060101ALI20220118BHJP
【FI】
G01G19/44 A
G01G19/52 F
G01G3/00 A
G01L5/00 101Z
A61G13/10
G01L1/14 L
A61G7/057
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018105959
(22)【出願日】2018-06-01
(65)【公開番号】P2019211273
(43)【公開日】2019-12-12
【審査請求日】2021-03-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000219602
【氏名又は名称】住友理工株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】510192802
【氏名又は名称】国立研究開発法人国立国際医療研究センター
(74)【代理人】
【識別番号】110001966
【氏名又は名称】特許業務法人笠井中根国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100103252
【弁理士】
【氏名又は名称】笠井 美孝
(74)【代理人】
【識別番号】100147717
【弁理士】
【氏名又は名称】中根 美枝
(72)【発明者】
【氏名】田中 秀典
(72)【発明者】
【氏名】田中 芳知
(72)【発明者】
【氏名】吉川 武明
(72)【発明者】
【氏名】前原 康宏
(72)【発明者】
【氏名】石井 光子
【審査官】森 雅之
(56)【参考文献】
【文献】特許第6247670(JP,B2)
【文献】特許第4565359(JP,B2)
【文献】特許第5167409(JP,B2)
【文献】特許第5497222(JP,B2)
【文献】特許第6013602(JP,B2)
【文献】特許第6190636(JP,B2)
【文献】特許第6297755(JP,B2)
【文献】特許第3152660(JP,B2)
【文献】米国特許第6554471(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01G
G01L
A61G
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者を載せる手術台の台板上に置かれて患者の体圧を測定する手術台用の体圧分布センサシートであって、
前記台板上でのX線観察領域に配置される体圧センサ部を備えており、
可撓性で弾性を有する誘電体層の各一方の面にそれぞれX線透過型で可撓性のある複数の表側電極および裏側電極が配されることによって、該誘電体層を挟んだ各複数の該表側電極と該裏側電極との対向部分においてX線を透過する静電容量型の前記体圧センサ部が複数構成され、全体として柔軟なシート状とされていることを特徴とする手術台用の体圧分布センサシート。
【請求項2】
前記台板上でのX線観察領域への配置部分を外れた位置に、前記複数の表側電極へ導通された表側通電路と、前記複数の裏側電極へ導通された裏側通電路とが、設けられている請求項1に記載の手術台用の体圧分布センサシート。
【請求項3】
前記台板上でのX線観察領域を外れた位置を外周に向かって延びだす延長部が設けられて、該延長部の先端側において前記複数の体圧センサ部に作用する体圧を計測する計測回路部が設けられている一方、前記複数の表側電極へ導通された表側通電路および前記複数の裏側電極へ導通された裏側通電路が該延長部を延びて該計測回路部に接続されている請求項1又は2に記載の手術台用の体圧分布センサシート。
【請求項4】
前記延長部には、シールド層を挟んで前記表側通電路と前記裏側通電路が設けられている請求項3に記載の手術台用の体圧分布センサシート。
【請求項5】
前記台板上に置かれる載置部分を少なくとも覆う別体のカバーが設けられていると共に、該カバーと該載置部分とを面方向で相対的に位置決めする位置決め部が設けられている請求項1~4の何れか一項に記載の手術台用の体圧分布センサシート。
【請求項6】
前記位置決め部が、前記体圧センサ部および前記複数の表側電極へ導通された表側通電路さらに前記複数の裏側電極へ導通された裏側通電路を何れも外れた部分に設けられている請求項5に記載の手術台用の体圧分布センサシート。
【請求項7】
前記台板上に置かれる載置部分を覆う別体のカバーが設けられていると共に、該カバーが、該台板に対して面方向での滑り移動を抑えるずれ防止機構を有している請求項5又は6に記載の手術台用の体圧分布センサシート。
【請求項8】
前記複数の表側電極および裏側電極に対して表側通電路および裏側通電路を通じて導通されて前記複数の体圧センサ部に作用する体圧を計測する計測回路部が設けられていると共に、該計測回路部には、作動電力を供給するバッテリと、計測信号を外部に送信する無線送信部とが、接続されて設けられている請求項1~7の何れか一項に記載の手術台用の体圧分布センサシート。
【請求項9】
前記複数の表側電極および裏側電極に対して表側通電路および裏側通電路を通じて導通されて前記複数の体圧センサ部に作用する体圧を計測する計測回路部が設けられている一方、該複数の体圧センサ部の設けられた領域が800mm×500mm以上の大きさとされており、且つ該計測回路部から各該体圧センサ部に至る通電抵抗値が3.2kΩ以下とされている請求項1~8の何れか一項に記載の手術台用の体圧分布センサシート。
【請求項10】
前記複数の体圧センサ部の少なくとも一方の面を覆うように、X線透過型で可撓性のあるガード電極が配されている請求項1~9の何れか一項に記載の手術台用の体圧分布センサシート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者を載せる手術台の台板上に置かれて患者の体圧を測定する手術台用の体圧分布センサシートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、関節の骨折部位の観血的手術や尿路結石の砕石術などに際しては、ポータブル撮影機などを用いて、手術中に患者のX線透視撮影が行われる場合がある。更に近年では、心臓や肺,脳などの各部位の血管や体腔に対する治療の一種として、カテーテルを用いた経皮的な治療が普及してきている。かかるカテーテル治療に際しては、手術台の台板上に臥せた患者に対して継続的にX線透視撮影を行なうことで、カテーテルの到達部位を確認しつつ治療が行なわれる。
【0003】
ところで、このようなカテーテル治療などでは、従来からの骨折部位の観血的手術や尿路結石の砕石術などに比して、施術が長時間に及ぶことがあり、そのために、手術台上に長時間にわたって同じ姿勢で臥せた患者において、褥瘡などの障害が発生しやすいという新たな問題が懸念される。
【0004】
ところが、従来構造の手術台は、例えば特開2017-046966号公報(特許文献1)にも記載されているように、処置部位の違いや施術の種類などに応じて患者が載置される台板の高さや傾斜、位置を変更する機構や、許容される載荷重の大きさや位置を確認して転倒を防止する機構などを備えたものはあるが、患者の姿勢を適切に調節するための機能を備えてはいなかった。そのために、褥瘡などの障害の発生問題に対しては、手術前や手術中にスタッフが患者の姿勢を適切に調節して対応することになるが、姿勢調節に際して具体的な指標がなく、スタッフの経験や勘に頼らざるを得ないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-046966号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述の如き、近年のX線透視撮影下での手術台上における施術の長時間化に伴って新たに懸念されるに至った、手術台上での褥瘡等の障害発生という新規な問題に対して有効なアイテムを提供するという、新規な課題を有する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
先ず、手術台上での褥瘡等の障害発生という新規な問題に対処するために、本発明者は、手術台の台板上に体圧分布センサを設置して、体圧分布状況をリアルタイムで確認したり記録等することにより、手術前や手術中にスタッフが患者の姿勢を適切に調節したり手術後にケア等するための指標を客観的なデータとして提示することが有効であるとの考えに基づいて、手術台用の体圧分布センサの実現を目指した。そして、手術台用の体圧分布センサにおいては、手術台の台板における柔軟性等を損なうことなく体圧を精度良く検出し得ることに加えて、手術中のX線撮影に悪影響を及ぼすことなく手術中にも連続的に体圧を検出し得るべきであるという、新たな知見に基づいて本発明を完成するに至ったのである。
【0008】
ここにおいて、本発明の第一の態様は、患者を載せる手術台の台板上に置かれて患者の体圧を測定する手術台用の体圧分布センサシートであって、前記台板上でのX線観察領域に配置される体圧センサ部を備えており、可撓性で弾性を有する誘電体層の各一方の面にそれぞれX線透過型で可撓性のある複数の表側電極および裏側電極が配されることによって、該誘電体層を挟んだ各複数の該表側電極と該裏側電極との対向部分においてX線を透過する静電容量型の前記体圧センサ部が複数構成され、全体として柔軟なシート状とされている手術台用の体圧分布センサシートを、特徴とするものである。
【0009】
本態様に従う構造とされた手術台用の体圧分布センサシートによれば、X線透視撮影下での手術台上の患者における褥瘡等の障害発生という新たな問題に対して有効で新規なアイテムを提供し得る。そして、全体として柔軟なシート状とされていることから、手術台の台板のクッション性などの特性を損なうことなく使用され得るし、体圧センサ部がX線を透過する静電容量型であることから、手術中に連続的に又は断続的に実施されるX線撮影に支障を及ぼすこともない。
【0010】
それ故、手術台の台板上の患者に対して施される各種の処置に対して悪影響を及ぼすことなく、例えば手術前や手術中などの任意の時期に連続的に又は断続的に体圧分布を測定したり必要に応じて記録等することが可能になり、スタッフが確認して患者の体位を調整したり手術後のケアに役立てたりすることで、褥瘡などの障害を回避又は軽減することが容易となる。
【0011】
本発明の第二の態様は、前記第一の態様に係る手術台用の体圧分布センサシートにおいて、前記台板上でのX線観察領域への配置部分を外れた位置に、前記複数の表側電極へ導通された表側通電路と、前記複数の裏側電極へ導通された裏側通電路とが、設けられているものである。
【0012】
本態様に従う構造とされた手術台用の体圧分布センサシートでは、表裏の電極へ導通されて測定用電流の通電などを行う表裏の通電路がX線観察領域を外れて設けられていることから、それらの通電路を金属ペーストなどを用いて形成することが可能となる。そして、通電路に金属を用いることで通電抵抗を下げることができ、消費電力の低減だけでなく、各センサ部における測定精度の向上にもつながる。なお、本発明の前記第一の態様では、X線観察領域を外れて設けられた通電路に加えて又は代えてX線観察領域に通電路を設けることも可能であり、その場合には、例えばカーボンペーストなどのX線透過型の通電路を採用する他、各センサ部を構成する電極を通電路としても利用することで、X線観察領域への悪影響を回避することができる。
【0013】
本発明の第三の態様は、前記第一又は第二の態様に係る手術台用の体圧分布センサシートにおいて、前記台板上でのX線観察領域を外れた位置を外周に向かって延びだす延長部が設けられて、該延長部の先端側において前記複数の体圧センサ部に作用する体圧を計測する計測回路部が設けられている一方、前記複数の表側電極へ導通された表側通電路および前記複数の裏側電極へ導通された裏側通電路が該延長部を延びて該計測回路部に接続されているものである。
【0014】
本態様に従う構造とされた手術台用の体圧分布センサシートでは、電気素子などの金属部品が用いられる計測回路部をX線観察領域から充分に外れた位置に設置することができ、計測回路部との間に柔軟なシート状の延長部を設けることで、例えば手術台の側面に引っ掛けるなど、計測回路部の配置場所の選定自由度が大きく確保されることとなり、施術の邪魔にならないスペースに置くこともできる。
【0015】
本発明の第四の態様は、上記第三の態様に係る手術台用の体圧分布センサシートにおいて、前記延長部には、シールド層を挟んで前記表側通電路と前記裏側通電路が設けられているものである。
【0016】
本態様に従う構造とされた手術台用の体圧分布センサシートでは、表裏の通電路間における浮遊容量(寄生容量)をシールド層により抑えることができて、測定精度の向上と安定性が図られ得る。それ故、体圧測定性能への悪影響を回避しつつ、延長部を比較的に長く設けたり、幅を狭くしてコンパクトにすることも可能になる。
【0017】
本発明の第五の態様は、前記第一~四の何れかの態様に係る手術台用の体圧分布センサシートにおいて、前記台板上に置かれる載置部分を少なくとも覆う別体のカバーが設けられていると共に、該カバーと該載置部分とを面方向で相対的に位置決めする位置決め部が設けられているものである。
【0018】
本態様に従う構造とされた手術台用の体圧分布センサシートでは、カバーによってセンサシートの保護が図られると共に、センサシートの性能等への影響を回避しつつ、カバーによって触感や耐久性、防水性、耐薬品性などの要求される特性に容易に対応することも可能となる。しかも、センサシートとカバーとの間での位置ずれによるシワやヨレなどの発生も、位置決め部によって防止されて、センサシートの安定した配置状態も維持され得る。なお、位置決め部は、例えば係止スナップや係合フック等を採用することも可能であるが、好適には、粘着テープや面ファスナなどの柔軟性を損なわない構造体が採用される。
【0019】
本発明の第六の態様は、上記第五の態様に係る手術台用の体圧分布センサシートにおいて、前記位置決め部が、前記体圧センサ部および前記複数の表側電極へ導通された表側通電路さらに前記複数の裏側電極へ導通された裏側通電路を何れも外れた部分に設けられているものである。
【0020】
本態様に従う構造とされた手術台用の体圧分布センサシートでは、力が集中的に作用するおそれのある位置決め部によって、センサ部が障害を受けることが回避され得る。
【0021】
本発明の第七の態様は、上記第五又は第六の態様に係る手術台用の体圧分布センサシートにおいて、前記台板上に置かれる載置部分を覆う別体のカバーが設けられていると共に、該カバーが、該台板に対して面方向での滑り移動を抑えるずれ防止機構を有しているものである。
【0022】
本態様に従う構造とされた手術台用の体圧分布センサシートでは、カバーにずれ防止機構を採用することで、センサシートの性能等への影響を回避しつつ、体圧分布センサシートの台板上での滑りによる位置ずれを防止することが可能になる。
【0023】
本発明の第八の態様は、前記第一~七の何れかの態様に係る手術台用の体圧分布センサシートにおいて、前記複数の表側電極および裏側電極に対して表側通電路および裏側通電路を通じて導通されて前記複数の体圧センサ部に作用する体圧を計測する計測回路部が設けられていると共に、該計測回路部には、作動電力を供給するバッテリと、計測信号を外部に送信する無線送信部とが、接続されて設けられているものである。
【0024】
本態様に従う構造とされた手術台用の体圧分布センサシートでは、作動電力をバッテリから給電することで、例えば手術室で使用される電気メスなどと共通の電源回路を通じて入り混むノイズを回避することができて、体圧分布の測定精度や安定性の向上が図られ得る。また、計測信号を無線送信することで、手術室内での配線を少なくすることができると共に、信号回路へのノイズの入り込みを、デジタル化などによって容易に回避することも可能になる。
【0025】
本発明の第九の態様は、前記第一~八の何れかの態様に係る手術台用の体圧分布センサシートにおいて、前記複数の表側電極および裏側電極に対して表側通電路および裏側通電路を通じて導通されて前記複数の体圧センサ部に作用する体圧を計測する計測回路部が設けられている一方、該複数の体圧センサ部の設けられた領域が800mm×500mm以上の大きさとされており、且つ該計測回路部から各該体圧センサ部に至る通電抵抗値が3.2kΩ以下とされているものである。
【0026】
本態様に従えば、手術台用に一層特化された体圧分布センサシートが実現可能になる。即ち、体圧センサ部が設けられて体圧分布を測定可能な領域が800mm×500mm以上の大きさで設けられることで、例えば臥位で台板上に載せられた患者において上半身などの褥瘡等の障害の発生しやすい領域を効率的にカバーして体圧分布を観察することが可能になる。しかも、当該領域内で計測回路部から最も遠くに位置して通電路の抵抗値が高くなるセンサ部においても、通電抵抗値が3.2kΩ以下に抑えられることにより、大きな通電抵抗による測定への悪影響が防止されて、目的とする体圧分布をより安定して精度良く行うことが可能になる。
【0027】
本発明の第十の態様は、前記第一~九の何れかの態様に係る手術台用の体圧分布センサシートにおいて、前記複数の体圧センサ部の少なくとも一方の面を覆うように、X線透過型で可撓性のあるガード電極が配されているものである。
【0028】
本態様に従う構造とされた手術台用の体圧分布センサシートでは、体圧センサ部への外部からの環境ノイズの混入を防止又は低減することができて、体圧分布の測定の精度や安定性の向上が図られ得る。
【発明の効果】
【0029】
本発明に従う構造とされた手術台用の体圧分布センサシートによれば、手術台上の患者のX線透視撮影を含む施術に悪影響を及ぼすことなく、患者の体圧分布状況をリアルタイムで確認することが可能になり、手術中の褥瘡などの障害発生を防止するのに有効な新規アイテムが提供され得る。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1図1は、本発明の一実施形態としての手術台用の体圧分布センサシートの全体を概略的に示す平面図であって、手術台の台板や患者との関係を例示的に併せて示したもの。
図2図1に示された手術台用の体圧分布センサシートの平面図。
図3図2におけるIII-III断面説明図。
図4図2におけるIV-IV断面説明図。
図5図2に示された手術台用の体圧分布センサシートの構造を説明するための分解斜視図。
図6】本発明の別の実施形態を示す、図3に対応する断面説明図。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明に係る手術台用の体圧分布センサシートの一実施形態を、図面を参照しつつ説明する。なお、本発明は以下の実施形態における具体的な説明によって限定的に解釈されるものでない。
【0032】
先ず、図1~4には、本発明の一実施形態としての手術台用の体圧分布センサシート10が示されており、図1では、体圧分布センサシート10が、患者12を載せた手術台14に設置された使用状態で示されている。なお、図1及び図2では、体圧分布センサシート10を構成する電極や通電路を透視した状態で図示してある。
【0033】
手術台14は、公知の各種のものが限定されずに採用可能であり、例えば図1に示された手術台14は、患者12を載せる台板16として、腰板及び背板を構成する中央板16aと肩板16b,頭板16cおよび各一対の腕板16d,16dと脚板16e,16eを備えている。これらの各台板16a~eは、良く知られているように、フロアに対してキャスター付きのベースによって支持されており、相対的に変位可能とされていると共に、台板16の全体としても昇降や傾動、水平移動等が可能とされている。また、手術台14には、台板16a~eに加えて、体側支持フレームや患者の固定用ストラップ、位置決め用パッド、牽引具、台板側部への付属品支持用フックやクランプなども、適宜に装備され得る。
【0034】
なお、台板16の具体的形状や大きさ、材質などは限定されるものでなく、台板16において患者12が載置される面は、硬質であっても良いし、クッション性のあるパッドによって構成されていても良い。また、台板16の表面は、一般にウレタンコート等で防水性が付与されている。
【0035】
また、手術台14は、X線撮影装置を備えている。具体的には、例えば「Cアーム」として複数メーカーから市販されている如き移動型外科用X線テレビ装置や、X線デジタル画像診断装置、X線血管造影システム、シングルプレーン/バイプレーン装置など、X線によるリアルタイムのモニタリング装置などが採用され得る。このようなX線撮影装置は、一般に、患者12の載置される台板16を挟んで一方の側に配されたX線管球を含むX線照射装置と他方の側に配された蛍光増倍管を含むX線受信装置とを備えており、台板16に載せられた患者12の施術部位などの観察部位のX線撮像をリアルタイムでモニタへ表示したり、データ記憶等ができるようになっている。
【0036】
このような手術台14における台板16上に、本実施形態の体圧分布センサシート10が配置されている。かかる体圧分布センサシート10は、単品状態が図2~4に示されていると共に、主たる構成の分解説明図が図5に示されているように、全体として柔軟で薄肉のシート状とされており、台板16上での患者12の体圧測定が要求される領域を所定間隔で網羅するように複数の体圧センサ部20が設定されたセンシングエリア(体圧検出領域)22を備えている。なお、図2~3では、内部構造を判りやすく示すために縦横や各部位の寸法比を無視して、各構造部位が誇張表示されている。
【0037】
より詳細には、体圧分布センサシート10のセンシングエリア22は、高い誘電率を有する柔軟でかつ弾性的な可圧縮性のシート状とされた誘電体層30を挟んだ表裏の両側に、何れも高い電気絶縁性を有する柔軟なシート状とされた表側基材32と裏側基材34がサンドイッチ状に配された構造となっている。また、表側基材32および裏側基材34の各対向内面には、それら各基材32,34で支持されて表側電極36および裏側電極38が設けられている。そして、表側電極36と裏側電極38が誘電体層30を挟んで対向配置されることによって静電容量型の体圧センサ部20が構成されている。即ち、体圧センサ部20は、外部から及ぼされる患者12の体圧の程度に応じて誘電体層30が圧縮変形することで表裏の電極36,38の対向面間距離が変化することとなり、それに伴う静電容量の変化を利用して作用体圧を検出するようになっている。また、体圧センサ部20は、センシングエリア22内に所定間隔で複数設けられていることから、各体圧センサ部20の圧力検出結果からセンシングエリア22における体圧分布を求めることができ、必要に応じて例えばモニタ上にリアルタイムで圧力範囲毎の色分け等をして表示することも可能である。
【0038】
ここにおいて、誘電体層30は、弾性や耐荷重性、誘電率などを考慮して、X線透過を阻害しない軟質な合成樹脂やエラストマー製で且つセンシングエリア22の全体に亘るシート状のものが好適に用いられる。厚さや重量が大きくなり過ぎると取り扱いが面倒になるので例えば非圧縮状態で0.5~15mm程度の厚さのものが望ましく、また、発泡により弾性と可圧縮性が高められた発泡シートが好適である。具体的には、ポリウレタンやポリエチレン、ポリスチレン、ナイロン、ポリプロピレンなどのフォームが好適に用いられ得る。なお、誘電体層の弾性は、予定される作用体圧によって静電容量の変化が検出可能な程度に、作用体圧や検出精度などを考慮して適宜に設定され得る。
【0039】
誘電体層30の表裏に配置される基材32,34は、誘電体層30と同様に、作用する体圧によって湾曲変形し得る程度の柔軟性を示す軟質で且つX線透過性を有する合成樹脂やエラストマーで形成された電気絶縁性のシートで構成される。そして、何れの基材32,34も、誘電体層30と同じか僅かに大きな平面形状とされて、センシングエリア22の全体に亘る大きさを有している。具体的には、例えばシリコーンゴムやポリエチレン、ポリウレタンなどの電気絶縁性の高いシートが好適に用いられる。
【0040】
そして、かかる表裏の基材32,34の対向内面に対して、例えば導電性ペーストを印刷や塗布等することで、或いは導電性膜を固着することで、基材32,34で支持された表裏の電極36,38が設けられている。これら表裏の電極36,38は、作用する体圧によって湾曲変形し得る程度の柔軟性を示すものであり、例えばシリコーンゴムやEPDM等のゴムやポリエチレンやポリウレタンなどの軟質の合成樹脂を母材として、導電性フィラーを配合することで導電性を付与した導電性ペーストを用いて形成されたものが好適に用いられる。また、導電性フィラーとしては、X線透過を阻害しない非金属フィラーが採用されることとなり、例えば導電性カーボンブラックやカーボンナノチューブ、グラファイトなどの導電性炭素系のフィラーが好適に採用され得る。
【0041】
本実施形態では、図2の平面図及び図5の分解斜視図にも示されているように、表側電極36は、表側基材32において、中央板16a及び肩板16bの幅方向となる図1,2中の上下方向に向かってストレートに延びる所定幅の帯形状を有しており、且つ、中央板16a及び肩板16bの長さ方向となる図1,2中の左右方向で互いに離隔して複数本(本実施形態では略一定の間隔をもって11本)が、互いに平行に形成されている。一方、裏側電極38は、裏側基材34において、中央板16a及び肩板16bの長さ方向となる図1,2中の左右方向に向かってストレートに延びる所定幅の帯形状を有しており、且つ、中央板16a及び肩板16bの幅方向となる図1,2中の上下方向で互いに離隔して複数本(本実施形態では略一定の間隔をもって9本)が、互いに平行に形成されている。
【0042】
さらに、表側基材32において表側電極36が設けられた内面には、表側電極36を覆って保護する表側保護コート層40が設けられており、表側電極36が誘電体層30に対して直接に接触することが回避されている。また、裏側基材34においても同様に、裏側電極38が設けられた内面に、裏側電極38を覆って保護する裏側保護コート層42が設けられており、裏側電極38が誘電体層30に対して直接に接触することが回避されている。
【0043】
なお、表裏の保護コート層40,42は、表裏の基材32,34などの柔軟性やX線透過性を損なわないように、例えばシリコーンなどの絶縁性の軟質の合成樹脂やEPDMなどの絶縁性のゴムを、表裏の電極36,38が設けられた表裏の基材32,34の内面に対して全面にわたってスクリーン印刷等で被着形成したり、シート成形したものを後接着することなどによって、設けられ得る。
【0044】
そして、表裏の保護コート層40,42で覆われた表裏の基材32,34が、誘電体層30を挟んで重ね合わされることにより、表側基材32に設けられた複数本の表側電極36と裏側基材34に設けられた複数本の裏側電極38が、平面視で互いに交差する状態で配されている。特に本実施形態では、表裏の電極36,38が略直交しており、表裏の電極36,38の何れか一方における各電極36(38)が、何れも、他方の全ての電極38(36)に対して交差するように配置されている。
【0045】
これにより、表裏の電極36,38の各対向部位(各交差部位)において、誘電体層30を挟んで一対の電極36,38が対向配置されたコンデンサを構成しており、かかるコンデンサを構成する部位が体圧センサ部20とされている。特に本実施形態では、表裏の電極36,38が配置された略矩形のセンシングエリア22において、11本の表側電極36と9本の裏側電極38とにより合計99個の体圧センサ部20が、略等間隔に配列して設けられている。
【0046】
また、体圧分布センサシート10は、体圧センサ部20の設けられたセンシングエリア22よりも一回り大きな面積で広がっており、表裏の電極36,38が設けられたセンシングエリア22の外周側において、表裏の電極36,38へ導通された表裏の通電路46,48が設けられている。
【0047】
具体的には、表裏の基材32,34は、表裏の電極36,38が形成されたセンシングエリア22よりも図1,2中で左側と下側にそれぞれ広がった配線用領域49を備えていると共に、下辺の左端部分から更に下方に向かって所定幅で延びる延長部50が一体的に設けられている。そして、配線用領域49における表側基材32の内面には、各表側電極36に導通された表側通電路46がそれぞれ電気的に独立して形成されており、配線用領域49から延長部50の先端の端子部にまで延びている。また、配線用領域49における裏側基材34の内面には、各裏側電極38に導通された裏側通電路48がそれぞれ電気的に独立して形成されており、配線用領域49から延長部50の先端の接続部にまで延びている。
【0048】
そして、これら表裏の通電路46,48を通じて、体圧分布センサシート10に対して外部から及ぼされる電圧が表裏の各電極36,38に印加されると共に、センシングエリア22に設けられた各体圧センサ部20を通じての通電による圧力信号が外部へ出力されるようになっている。
【0049】
なお、表裏の通電路46,48は、体圧分布センサシート10の柔軟性を阻害しないものであり、例えば表裏の電極36,38と同様に導電性ペーストを表裏の基材32,34の内面に印刷や塗布等すること等によって形成することも可能である。尤も、本実施形態では、何れの通電路46,48も、センシングエリア22を外れた領域に設けられていることから、X線透過性を備えている必要はない。それ故、ゴムや軟質の合成樹脂からなる母材に対して、銀や銅などの金属系の導電性フィラーを配合することで導電性を付与した導電性ペーストを用いて形成されたものも好適に用いられる。特に金属系の導電性フィラーを採用することで、導電性ペーストの電気抵抗を小さくできることから、表裏の通電路46,48の配線スペースを小さくできると共に、電気抵抗を抑えることで、各体圧センサ部20に至る通電抵抗や、各体圧センサ部20間での通電抵抗差を小さくして測定精度の向上を図ることも可能になる。
【0050】
また、配線用領域49および延長部50には、表裏の基材32,34だけでなく、上述の表裏の保護コート層40,42や誘電体層30も、センシングエリア22から延びだして設けられており、表裏の基材32,34の内面上に設けられた表裏の通電路46,48が、表裏の保護コート層40,42で覆われて保護されている。
【0051】
更にまた、本実施形態では、表裏の通電路46,48が、シート厚さ方向の投影で重なったり交差しないように、水平方向で互いにずれた位置に設けられており、相互の電磁干渉や浮遊容量が抑えられている。特に本実施形態では、図4及び図5に示されているように、表裏の通電路46,48が互いに平行に配線された延長部50において、表裏の通電路46,48間(表裏の基材32,34間)に広がるシールド層51が設けられて、表裏の通電路46,48の相互間における浮遊容量の更なる低減が図られている。
【0052】
なお、シールド層51は、体圧分布センサシート10の柔軟性を阻害しないものであり、電磁遮蔽効果を有する導電性のシート状や膜状の層によって構成されている。具体的には、例えばエラストマー等の母材に導電性フィラーを配合した導電性ペーストを印刷や塗布等することで形成することも可能であり、センシングエリア22を外れた領域に設けられることからX線透過性を備えている必要はない。それ故、金属箔や金属メッシュなどを採用することも可能である。また、シールド層51による電磁シールド効果の向上などを目的として、シールド層51を外部アースするアース配線を設けても良い。
【0053】
さらに、上述の如き構造とされた体圧分布センサシート10には、別体のカバー52を採用することが望ましい。カバー52は、体圧分布センサシート10よりも一回り大きな袋構造とされて、カバー52の中に体圧分布センサシート10が収容状態で納められる。このカバー52によって体圧分布センサシート10の全体が覆われることで保護されて、特に薬品や体液が直接に体圧分布センサシート10の表面にかからないようにし得る。
【0054】
なお、カバー52は、体圧分布センサシート10の柔軟な特性を損なわないように軟質のシートであり、且つ薬品や体液の侵入を防止し得るものが望ましく、例えば延伸PTFEとナイロン繊維の複合シートなどの防水性の樹脂シートなどによって形成され得る。更に、カバー52は、手術台14の台板16の表面に直接に載置されることから、台板16の表面に対して面方向での滑り移動を抑えるずれ防止機構を採用することが望ましい。かかるずれ防止機構は、例えばカバー52の表面において、台板16に対して係止される突起などを設けることも可能であるが、台板16の表面を構成する素材に対して大きな摩擦抵抗を示す素材をカバー52の表面に採用することでずれ防止機構を構成しても良い。なお、カバー52の表面を例えばウレタンコート等のコート層で覆うことで、表面を改質したり各種の機能や特性を追加等することも可能である。
【0055】
また、カバー52を採用する場合には、カバー52内で柔軟な体圧分布センサシート10が縒れたり皺ができたりしないように、カバー52と体圧分布センサシート10とを面方向で相互に位置決めする位置決め部を設けることが望ましい。特に患者12の体位を変更する場合などに体圧の作用によりカバー52内で体圧分布センサシート10が縒れやすい領域、即ち手術台14の台板16上に載置されるセンシングエリア22である載置部分をカバー52に対して位置決めし得るように、位置決め部を設けることが望ましい。
【0056】
具体的に本実施形態では、センシングエリア22の周囲の4箇所において、体圧分布センサシート10をカバー52に対して解除可能に固着する位置決め部54が設けられている。なお、かかる位置決め部54としては、例えば面ファスナーや、両面テープなどの粘着テープ、ステープラー、クリップ、係止構造などを採用することができる。
【0057】
而して、上述の如き構造とされてカバー52で覆われた体圧分布センサシート10は、図1に示されているように、手術台14の台板16上の所定位置に敷設状態でセッティングされて体圧分布検出に用いられる。特に本実施形態では、褥瘡などの障害発生が懸念される肩部から胴部、更に臀部から大腿部の付け根のあたりまでを含む領域を全体に網羅するセンシングエリア22をもって配置されている。具体的には、中央板16aと肩板16bにおいて患者12が載置され得る上面(表面)を略全体に亘って覆うようにして、体圧分布センサシート10のセンシングエリア22が略矩形の平面形状で設定されている。特に台板16の幅方向(図1中の上下方向)では、患者12が載置される中央部分だけでなく、実質的に全幅をセンシングエリア22として体圧分布センサシート10が配置されており、患者12に対して上下方向だけでなく傾斜方向でのX線撮影に際してのX線観察領域も考慮して、センシングエリア22が設定されている。なお、センシングエリア22は、通電路46,48のみが設けられた領域は含まない。
【0058】
尤も、体圧分布センサシート10におけるセンシングエリアの大きさや形状および台板16上への配置領域などは、患者や施術中の体位、施術内容などを考慮して、体圧測定すべき患者の部位に応じて適宜に設定され得るものであって限定されない。例えば、センシングエリアが小さい体圧分布センサシート10の複数を用いて、体圧分布検出が必要とされる台板16上の領域をカバーすることも可能であるが、できるだけ少ない体圧分布センサシート10で必要とされる領域をカバーする方が、取り扱いが容易になり、体圧検出位置の特定を含む信号処理も容易となることから、800mm×500mm以上のセンシングエリアを有することが望ましい。
【0059】
また、体圧分布センサシート10には、延長部50の先端の接続部に対して計測回路部56が電気的に接続されて設けられている。この計測回路部56は、外部電源としてバッテリ58を備えており、体圧分布センサシート10において各体圧センサ部20を構成する表裏の電極36,38へ電圧を印加すると共に、各体圧センサ部20を通じての通電による圧力信号を検出して外部へ出力するようになっている。
【0060】
具体的には、各体圧センサ部20への電圧の印加と圧力信号の検出は、例えばコンデンサを構成する体圧センサ部20に対して交流電圧を印加することによって構成される電気回路上で、作用する体圧の程度に応じてセンサ部のキャパシタンスが変化することを検出することによって行われ得る。具体的には、体圧センサ部20の容量変化に伴う印加電圧と検出値の位相変化から作用圧力を求めても良いし、一方の電極をアース等の基準電圧として他方の電極における所定時間内での保持電圧の蓄積電位から体圧センサ部20の容量ひいては作用圧力を求めても良い。また、例えば体圧センサ部20で構成されるコンデンサを含めてRCやLCの発振回路を構成することで体圧センサ部20の静電容量変化を周波数として検出することにより検出精度の向上を図ることも可能である。
【0061】
なお、複数の体圧センサ部20は、表側電極36及び/又は裏側電極38を共用して構成されているが、それら複数の体圧センサ部20について圧力の検出処理を行うには、例えば特開2009-300164号公報などに記載されているように、各複数の表側電極36と裏側電極38を行及び列として、それら行及び列の番号で特定される体圧センサ部20について順次に検出処理を走査的に行うことが有効である。
【0062】
また、各体圧センサ部20において圧力の検出処理を行うに際しては、各体圧センサ部20までの通電路46,48の長さが異なること等に起因する通電抵抗の相違が測定誤差や測定不良の一因となるおそれもある。かかる測定誤差や測定不良を軽減乃至は回避するには、何れの体圧センサ部20についても、計測回路部56から体圧センサ部20に至る通電抵抗値が3.2kΩ以下とされることが望ましい。
【0063】
更にまた、このような各体圧センサ部20による圧力信号の検出に際しては、体圧センサ部20の位置を特定し得る信号も併せて入手して処理される。例えば、本実施形態では11本の表側電極36a~kと9本の裏側電極38a~iとの各交差部分によって構成される99個の体圧センサ部20が、センシングエリア22の平面上で行列態様をもって二次元的に配置されていることから、圧力信号の検出を行う体圧センサ部20について、表側電極36の行番号と裏側電極38の列番号とによって、検出対象とされている体圧センサ部20における体圧分布センサシート10上での位置、ひいては手術台14の台板16上での位置乃至は患者12の体部位を特定する位置信号を得ることができる。
【0064】
このようにして計測回路部56において得られた位置信号を含む圧力の検出信号は、外部のモニタなどの表示装置や電磁的な記憶装置に送信される。特に本実施形態では、計測回路部56に無線送信部60が設けられており、かかる圧力検出信号が無線送信部60から外部に無線送信されるようになっている。
【0065】
そして、対応する無線樹脂装置によって検出された圧力検出信号は、所定のインターフェースなどを介して、例えば画像処理されてリアルタイムでモニタ上に体圧分布が表示されることとなる。モニタ上への体圧分布表示の態様は何ら限定されるものでないが、例えば圧力値に応じて複数段階で色分けして、各体圧センサ部20の位置に対応して座標平面のマス目状に区切られた領域に表示することで、視覚的に体圧分布を速やかに且つ容易に把握することが可能になる。
【0066】
このようにしてモニタなどに表示された体圧分布状況は、客観的なデータであって、例えば褥瘡のおそれがある部位を特定する指標となり得ることから、かかる体圧分布状況を見て必要に応じて患者の体位を調節することで褥瘡などの障害発生を防止することも可能になる。
【0067】
ここにおいて、本実施形態の体圧分布センサシート10は、施術に際してX線観察される領域に配置されるセンシングエリア22がX線透過性を有する構成となっていることから、X線観察を伴う施術に支障を及ぼすことなく、目的とする体圧分布状況を、施術中にも連続的に又は適宜に断続的に実施することが可能になる。
【0068】
以上、本発明の一実施形態について説明してきたが、本発明は上述の具体的な記載によって限定されるものでない。
【0069】
例えば、計測回路部56と各体圧センサ部20とを導通する通電路は、X線観察領域内にまでのびて設けられていても良い。X線観察領域内における通電路は、X線透過性を有する材質を採用することでX線観察を伴う施術への悪影響を回避することができる。
【0070】
また、前記実施形態を示す図1では、理解しやすくするために、体圧分布センサシート10が、計測回路部56やバッテリ58などを含めて平面的に展開した状態で示されていたが、体圧分布センサシート10そのものが柔軟性を有するシート状であることから、例えば延長部50の付け根部分(センシングエリア22側の基端部分)で鉛直下方に曲げて、延長部50の先端側を手術台14の台板16から下方に垂れ下がる状態とすることで、台板16から不必要に外周側へ突出することを避けることができる。また、延長部50の先端側に接続された計測回路部56やバッテリ58などの比較的に重さがある硬質部分は、手術台14の側方や下方に設けられたフックなどを利用して吊り下げて支持せしめるようにしても良い。
【0071】
更にまた、体圧分布センサシート10のセンシングエリア22やそこに配置される体圧センサ部20について、各具体的な大きさ(サイズ)や形状は限定されるものでなく、配置される台板16上の位置も限定されない。体圧センサ部20の配置態様や数、大きさや配置密度などについても、適宜に変更可能である。また、前記実施形態では、隣り合う体圧センサ部20,20間での通電路が、体圧センサ部20の表裏電極36,38で一体的に形成されていたが、隣り合う体圧センサ部20,20間の通電路について、体圧センサ部20の電極とは異なる形状や材質で形成することも可能である。
【0072】
さらに、本発明に従う体圧分布センサシート10は、手術台上において褥瘡の発生が懸念される体圧作用部位への使用に限定されるものでない。例えば、体圧分布センサシートのセンシングエリアを手術台において膝裏などが当たる台板上に配することで、手術中の神経圧迫による神経障害などの問題発生を回避または軽減することも可能である。
【0073】
また、体圧センサ部20に導通された表側通電路46と裏側通電路48とを、互いに離れて設けられた延長部50を通じて外部に延びださせることも可能であり、それによって、表裏通電路46,48を相互に物理的に離して両通電路46,48間における浮遊容量の低減などが図られ得る。
【0074】
さらに、例えば図6に示されているように、体圧分布センサシート10のセンシングエリア22において、少なくとも各体圧センサ部20の少なくとも表裏一方の面を覆うようにガード電極64を設けることも可能である。かかるガード電極64により、多くの電気作動機器が用いられる手術室において、体圧分布センサシート10の体圧センサ部20への外部からの環境ノイズの混入を防止又は低減することができて、体圧分布の測定の精度や安定性の向上が図られ得る。なお、かかるガード電極64は、体圧分布センサシート10の柔軟性やセンシングエリア22のX線透過性を損なわないで電磁遮蔽効果のある導電性のシートや膜が何れも採用され得、例えば表裏の電極36,38と同様に導電性ペーストを表裏の基材32,34の外面に印刷や塗布等すること等によって形成したり、別体シートを重ね合わせて配置することも可能である。また、カバー52の内面や外面にガード電極64を配設しても良いし、カバー52そのものにガード電極の機能を持たせることも可能である。なお、ガード電極64は、必要に応じて外部アースされ得る。
【0075】
また、体圧分布センサシート10を用いた体圧分布の測定結果を良否判定する判定手段を設けることも可能であり、例えば局所的に体圧集中が発生したり、敷値以上の体圧が所定時間を越えて同一場所に発生したような状況で、外部に音や光で報知する警告手段を合わせて設けることも可能である。
【0076】
その他、一々列挙はしないが、本発明は、当業者の知識に基づいて種々なる変更,修正,改良等を加えた態様において実施され得るものであり、また、そのような実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることは、言うまでもない。
【符号の説明】
【0077】
10:体圧分布センサシート、12:患者、14:手術台、16:台板、20:体圧センサ部、30:誘電体層、36:表側電極、38:裏側電極、46:表側通電路、48:裏側通電路、50:延長部、52:カバー、54:位置決め部、56:計測回路部、58:バッテリ、60:無線送信部、64:ガード電極
図1
図2
図3
図4
図5
図6