(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-14
(45)【発行日】2022-01-25
(54)【発明の名称】NOxセンサ制御装置及びNOxセンサ制御方法
(51)【国際特許分類】
G01N 27/416 20060101AFI20220118BHJP
G01N 27/407 20060101ALI20220118BHJP
【FI】
G01N27/416 331
G01N27/407
(21)【出願番号】P 2018110023
(22)【出願日】2018-06-08
【審査請求日】2020-12-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113022
【氏名又は名称】赤尾 謙一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100110249
【氏名又は名称】下田 昭
(74)【代理人】
【識別番号】100116090
【氏名又は名称】栗原 和彦
(72)【発明者】
【氏名】加藤 健次
(72)【発明者】
【氏名】中山 裕也
(72)【発明者】
【氏名】小野木 裕崇
(72)【発明者】
【氏名】都築 正雄
(72)【発明者】
【氏名】西山 拓海
【審査官】小澤 理
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/161785(WO,A1)
【文献】特開2017-116497(JP,A)
【文献】特開2003-247976(JP,A)
【文献】特開2016-109484(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0356873(US,A1)
【文献】国際公開第2013/018234(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/416 - 27/417
G01N 27/407
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体電解質体および当該固体電解質体の表面に設けられた一対の電極を備えてNOxの濃度を検出する検知セルと、該検知セルを加熱するヒータとを有して内燃機関に取付けられるNOxセンサに接続されるNOxセンサ制御装置であって、
前記内燃機関の駆動停止時に、前記NOxセンサに吸着したSOxを除去するための前記ヒータの通電制御である回復制御を行うヒータ制御手段を備え、
前記NOxセンサは、該NOxセンサの内部と外部との間で酸素を汲み出し又は汲み入れする酸素ポンプセルをさらに備え、
前記ヒータ制御手段が前記回復制御をしているときに、前記NOxセンサに酸素を汲み出すように前記酸素ポンプセルを動作させる酸素ポンプセル制御手段をさらに備えるNOxセンサ制御装置。
【請求項2】
前記回復制御において、前記ヒータ制御手段は、前記内燃機関の駆動停止時に、前記内燃機関の動作時における前記ヒータの第1の制御温度よりも高い第2の制御温度となるように前記ヒータを制御する請求項1に記載のNOxセンサ制御装置。
【請求項3】
前記ヒータ制御手段は、前記内燃機関の動作信号に基づき、前記内燃機関の駆動停止時を判定する請求項1又は2に記載のNOxセンサ制御装置。
【請求項4】
前記ヒータ制御手段は、所定のタイミングで前記内燃機関が駆動停止とみなして前記回復制御を行
い、前記内燃機関の駆動を検知すると前記回復制御を中断する請求項1又は2に記載のNOxセンサ制御装置。
【請求項5】
前記ヒータ制御手段は、前記内燃機関の動作信号を取得したときに前記回復制御を停止する請求項1~4のいずれか一項に記載のNOxセンサ制御装置。
【請求項6】
前記検知セルの温度が730℃以上となるよう、前記第2の制御温度が設定されている請求項2
に記載のNOxセンサ制御装置。
【請求項7】
前記ヒータ制御手段は、前記回復制御の積算制御時間が所定の閾値以上になった場合に、前記ヒータの制御を停止する請求項1~6のいずれか一項に記載のNOxセンサ制御装置。
【請求項8】
前記ヒータ制御手段は、前記回復制御の積算制御時間が所定の閾値以上になった場合に制御完了の旨を示す完了関連情報をセットし、前記閾値未満の場合に前記回復制御を続け、
前記完了関連情報のセットの後に、前記内燃機関の動作信号を取得しなかった場合に、前記完了関連情報に基づいて前記回復制御を行わずに待機し、前記完了関連情報のセットの後に、前記内燃機関の動作信号を取得した場合に、前記完了関連情報をリセットし、前記ヒータの第1の制御温度に前記ヒータを制御する請求項2又は3に記載のNOxセンサ制御装置。
【請求項9】
前記ヒータ制御手段は、サンプリング時間毎に前記タイミングになるまでの時間を積算し続け、
前記タイミングになるまで時間が積算された場合に、前記回復制御を現在行っている旨を示す回復処理情報をセットし、
前記セット後に前記回復制御を開始する時に前記タイミングになるまでの積算値をクリアすると共に、前記回復処理情報を基に前記回復制御を継続する請求項4、又は請求項4を引用する請求項5~7のいずれか一項に記載のNOxセンサ制御装置。
【請求項10】
固体電解質体および当該固体電解質体の表面に設けられた一対の電極を備えてNOxの濃度を検出する検知セルと、該検知セルを加熱するヒータとを有して内燃機関に取付けられるNOxセンサを制御するNOxセンサ制御方法であって、
前記内燃機関の駆動停止時に、前記NOxセンサに吸着したSOxを除去するために前記ヒータの通電を制御するヒータ制御過程を有し、
前記NOxセンサは、該NOxセンサの内部と外部との間で酸素を汲み出し又は汲み入れする酸素ポンプセルをさらに備え、前記ヒータ制御過程で前記ヒータの通電を制御しているときに、前記NOxセンサに酸素を汲み出すように前記酸素ポンプセルを動作させる酸素ポンプセル制御手段をさらに備えるNOxセンサ制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、NOxの濃度を検出するNOxセンサに接続されるNOxセンサ制御装置及びNOxセンサ制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の内燃機関の燃費向上や燃焼制御を行うガスセンサとして、排気ガス中の酸素濃度を検出する酸素センサや空燃比センサが知られている。さらに、自動車の排気ガス規制の強化に伴い、排気ガス中の窒素酸化物(NOx)量の低減が要求されており、NOx濃度を直接測定できるNOxセンサが開発されている。
このようなNOxセンサとして、ジルコニア等の酸素イオン伝導性の固体電解質体の表面に一対の電極を形成してなるセルを複数備えた構成のものが知られている。とりわけ、上記構成のNOxセンサとして、酸素ポンプセル、検知セルを積層した構造が知られている。このNOxセンサにおいては、被測定ガスを導入する第1測定室に臨むポンプセルにより、被測定ガス中の酸素濃度が一定に制御される。酸素濃度が制御された被測定ガスは第1測定室に連通する第2測定室に流入し、第2測定室に臨む検知セルに一定電圧を印加することで、被測定ガス中のNOxが分解されてNOx濃度に応じた電流が検知セルを流れ、この電流に基づきNOx濃度が検出される。
【0003】
ところで、排気ガス中にはSOx(硫黄酸化物)が含まれており、空燃比センサを構成するセルの電極がSOxにより被毒し、検出精度が低下することが知られている(特許文献1)。そして、特許文献1記載の技術では、SOxによる被毒により空燃比の変化量が変わることに基いて被毒を検出し、空燃比センサを650℃程度のSOx分解温度に上昇させる被毒回復処理を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、NOxセンサの場合、NOx濃度の検知セルの電極では、一定電圧のもと排気ガス中のNOx(具体的にはNO)を酸素とN2に分解するときの電流を検出しており、空燃比センサ等の酸素センサに比べてSOxによる被毒の影響がより大きく、センサをより長時間加熱しないと被毒を回復することが困難である。ところが、エンジン駆動中にセンサを長時間加熱すると、その間はNOx濃度を検出できないという問題がある。
そこで、本発明は、内燃機関の駆動中のNOx濃度の検出を妨げずに、NOxセンサに吸着したSOxを確実に除去することができるNOxセンサ制御装置及びNOxセンサ制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明のNOxセンサ制御装置は、固体電解質体および当該固体電解質体の表面に設けられた一対の電極を備えてNOxの濃度を検出する検知セルと、該検知セルを加熱するヒータとを有して内燃機関に取付けられるNOxセンサに接続されるNOxセンサ制御装置であって、前記内燃機関の駆動停止時に、前記NOxセンサに吸着したSOxを除去するための前記ヒータの通電制御である回復制御を行うヒータ制御手段を備え、前記NOxセンサは、該NOxセンサの内部と外部との間で酸素を汲み出し又は汲み入れする酸素ポンプセルをさらに備え、前記ヒータ制御手段が前記回復制御をしているときに、前記NOxセンサに酸素を汲み出すように前記酸素ポンプセルを動作させる酸素ポンプセル制御手段をさらに備える。
【0007】
このNOxセンサ制御装置によれば、内燃機関の駆動停止時に、ヒータを加熱する回復制御を行うことで、内燃機関の駆動中のNOx濃度の検出を妨げずに、NOxセンサを十分な時間加熱して、NOxセンサに吸着したSOxを確実に除去することができる。
本発明の発明者の得た知見では、NOxセンサが吸着したSOxはSO
4
2-
の状態で吸着しており、脱離する際はSO
2
(Gas)の状態であると考えられる。よって、SOxの脱離は還元雰囲気でより促進される。
従って、このNOxセンサ制御装置によれば、被測定ガス中の酸素を汲み出すことで酸素濃度がさらに低くなった状態で被測定ガスがNOxセンサ内に導入されるので、SOxの脱離をさらに促進できる。
【0008】
前記回復制御において、前記ヒータ制御手段は、前記内燃機関の駆動停止時に、前記内燃機関の動作時における前記ヒータの第1の制御温度よりも高い第2の制御温度となるように前記ヒータを制御してもよい。
このNOxセンサ制御装置によれば、NOxセンサをより高温に加熱して回復させるのでSOxをより確実に除去できる。
【0009】
本発明のNOxセンサ制御装置において、前記ヒータ制御手段は、前記内燃機関の動作信号に基づき、前記内燃機関の駆動停止時を判定してもよい。
このNOxセンサ制御装置によれば、内燃機関の駆動停止時を動作信号から精度良く検知し、内燃機関の駆動中のNOx濃度の検出をより妨げずに、駆動停止時にSOxを確実に除去できる。
【0010】
本発明のNOxセンサ制御装置において、前記ヒータ制御手段は、所定のタイミングで前記内燃機関が駆動停止とみなして前記回復制御を行い、前記内燃機関の駆動を検知すると前記回復制御を中断してもよい。
このNOxセンサ制御装置によれば、実際の内燃機関の駆動停止か否かに関わらず、所定のタイミング毎に回復制御を一律に行うことができる。
【0011】
本発明のNOxセンサ制御装置において、前記ヒータ制御手段は、前記内燃機関の動作信号を取得したときに前記回復制御を停止してもよい。
このNOxセンサ制御装置によれば、内燃機関が動作したときには回復制御を停止するので、内燃機関の駆動中のNOx濃度の検出を妨げない。
【0012】
本発明のNOxセンサ制御装置において、前記検知セルの温度が730℃以上となるよう、前記第2の制御温度が設定されていてもよい。
このNOxセンサ制御装置によれば、NOxセンサをさらに高温とするので、SOxをより確実に除去することができる。
【0014】
本発明のNOxセンサ制御装置において、前記ヒータ制御手段は、前記回復制御の積算制御時間が所定の閾値以上になった場合に、前記ヒータの制御を停止してもよい。
このNOxセンサ制御装置によれば、回復制御によるSOxの除去(回復)処理が十分に完了するまでの積算制御時間をカウントし、この積算時間を閾値以上になったときに回復処理を完了させるので、SOxをより確実に除去できる。
なお、明細書中の「回復処理カウンタ」が「積算制御時間」に相当する。
【0015】
本発明のNOxセンサ制御装置において、前記ヒータ制御手段は、前記回復制御の積算制御時間が所定の閾値以上になった場合に制御完了の旨を示す完了関連情報をセットし、前記閾値未満の場合に前記回復制御を続け、前記完了関連情報のセットの後に、前記内燃機関の動作信号を取得しなかった場合に、前記完了関連情報に基づいて前記回復制御を行わずに待機し、前記完了関連情報のセットの後に、前記内燃機関の動作信号を取得した場合に、前記完了関連情報をリセットし、前記ヒータの第1の制御温度に前記ヒータを制御してもよい。
回復処理が完了した後、「完了関連情報」を設けない場合には、例えば夜中の内燃機関の動作OFFの間、延々と何回も回復処理を繰り返してしまい、電力浪費等のおそれがある。そこで、このNOxセンサ制御装置によれば、完了関連情報に基づいて回復制御を停止することで、内燃機関の動作OFFの間じゅう回復処理を不必要に繰り返すことを防止できる。
なお、明細書中の「完了フラグ」が「完了関連情報」に相当する。又、「完了関連情報」とは、「回復処理が完了した」情報(完了フラグ)に限らず、後述するように、「回復処理が完了していない」旨の情報(制御未完了フラグ)でもよい。
【0016】
請求項4、又は請求項4を引用する請求項5~7のいずれか一項に記載のNOxセンサ制御装置において、前記ヒータ制御手段は、サンプリング時間毎に前記タイミングになるまでの時間を積算し続け、前記タイミングになるまで時間が積算された場合に、前記回復制御を現在行っている旨を示す回復処理情報をセットし、前記セット後に前記回復制御を開始する時に前記タイミングになるまでの積算値をクリアすると共に、前記回復処理情報を基に前記回復制御を継続してもよい。
請求項4に係る所定のタイミングで回復制御を行う場合に、回復処理中に内燃機関の駆動があったか否かの違いによって回復処理が中断すると、回復処理の完了時刻が変わり、次のタイミング後の次回の回復処理の開始時間がズレる。
【0017】
そこで、このNOxセンサ制御装置によれば、回復制御を開始する時に、上述のタイミングになるまでの時間をクリアするので、回復制御の開始後の上記の中断等による時間のズレの影響を受けずに次のタイミングを正確に積算でき、次回の回復処理を正確な時間毎に行える。又、回復制御を開始する時に時間をクリアすると、タイミングになるまでの時間が0に戻ってしまって再度待機するので回復制御が中止してしまう。そこで、回復処理情報を基に前記回復制御を継続することで、回復処理に入れないという不具合を解消して回復処理を継続することができるので、ステータスに応じつつ、正確な時間毎に回復処理を安定して行うことができる。
なお、明細書中の「処理中フラグ」が「回復処理情報」に相当する。又、「回復処理情報」とは、「回復処理中の」旨の情報(完了フラグ)に限らず、後述するように、「回復処理中でない」旨の情報(非処理中フラグ)でもよい。
【0018】
本発明のNOxセンサ制御方法は、固体電解質体および当該固体電解質体の表面に設けられた一対の電極を備えてNOxの濃度を検出する検知セルと、該検知セルを加熱するヒータとを有して内燃機関に取付けられるNOxセンサを制御するNOxセンサ制御方法であって、前記内燃機関の駆動停止時に、前記NOxセンサに吸着したSOxを除去するために前記ヒータの通電を制御するヒータ制御過程を有し、前記NOxセンサは、該NOxセンサの内部と外部との間で酸素を汲み出し又は汲み入れする酸素ポンプセルをさらに備え、前記ヒータ制御過程で前記ヒータの通電を制御しているときに、前記NOxセンサに酸素を汲み出すように前記酸素ポンプセルを動作させる酸素ポンプセル制御手段をさらに備える。
【発明の効果】
【0019】
この発明によれば、内燃機関の駆動中のNOx濃度の検出を妨げずに、NOxセンサに吸着したSOxを確実に除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の実施形態に係るNOxセンサ制御装置、及びこれに接続されたガスセンサの構成を示すブロック図である。
【
図2】エンジンの動作信号に基づいてエンジンの駆動停止時を判定した場合の回復制御処理のフローを示す図である。
【
図3】所定のタイミングでエンジンの駆動停止時を判定した場合の回復制御処理のフローを示す図である。
【
図7】
図3の回復制御における回復処理の開始時間のズレを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の実施形態に係るNOxセンサ制御装置(コントローラ)1、及びこれに接続されたNOxセンサ10の構成を示すブロック図である。NOxセンサ制御装置1は、図示しない内燃機関(以下、エンジンともいう)を備える車両に搭載され、ガスセンサ(NOxセンサ)10が有するコネクタ(図示せず)に電気的に接続されると共に、車両側制御装置(ECU)90にもハーネスを介して電気的に接続されている。
そして、NOxセンサ制御装置1は、NOxセンサ10から出力される信号に基づいてNOx濃度の検出値(濃度換算値)を算出し、その検出値をECU90に出力し、ECU90はNOx濃度に応じてエンジンの運転状態の制御や触媒に蓄積されたNOxの浄化、あるいは該触媒の異常検出などの処理を実行する。
【0022】
まず、NOxセンサ10の構成について説明する。なお、NOxセンサ10は、センサ素子100を有しており、
図1において、センサ素子100は、先端側部分における内部構造の断面図として示され、図中のNOxセンサ制御装置1に向いている側がセンサ素子100の先端側となっている。
センサ素子100は細長で長尺な板状をなし、エンジンの排気管(図示外)に取り付けるためのハウジング(図示外)内でこのセンサ素子100を保持してNOxセンサ10が構成されている。NOxセンサ10からは、このセンサ素子100の出力する信号を取り出すための信号線が引き出されており、NOxセンサ10とは離れた位置に取り付けられるNOxセンサ制御装置1に電気的に接続されている。
【0023】
センサ素子100は、3層の板状の固体電解質体111,121,131を、これらの間にアルミナ等からなる絶縁体140,145をそれぞれ挟んで層状に形成した構造を有する。また、固体電解質体131側の外層(
図1における固体電解質体121と反対側)には、アルミナを主体とするシート状の絶縁層162,163を積層し、その間にPtを主体とするヒータパターン164を埋設したヒータ素子161が設けられている。尚、ヒータパターン164に電流を流すことにより発熱を行うヒータ素子161が、特許請求の範囲における「ヒータ」に相当する。
固体電解質体111,121,131は、固体電解質であるジルコニアからなり、酸素イオン伝導性を有する。
【0024】
センサ素子10の各層の積層方向において、固体電解質体111の両面には、固体電解質体111を挟むように多孔質性の電極112,113がそれぞれ設けられている。この電極112,113は、Pt又はPt合金あるいはPtとセラミックスを含むサーメット等から形成されている。また、電極112,113の表面上にはセラミックスからなる多孔質性の保護層114が設けられており、電極112,113が排気ガスに含まれる被毒性ガス(還元雰囲気)に晒されることにより電極が劣化しないように保護している。
そして、両電極112,113間に電流を流すことで、電極112の接する雰囲気(センサ素子10の外部の雰囲気)と電極113の接する雰囲気(後述する第1測定室150内の雰囲気)との間で、固体電解質体111を介して酸素の汲み出しおよび汲み入れ(いわゆる酸素ポンピング)を行うことができる。本実施の形態では、固体電解質体111および電極112,113を、Ip1セル110と称することとする。
尚、Ip1セル110が、特許請求の範囲における「酸素ポンプセル」に相当する。
【0025】
次に、固体電解質体121は、絶縁体140を挟んで固体電解質体111と対向するように配置されている。この固体電解質体121の両面にも、固体電解質体121を挟むように多孔質性の電極122,123がそれぞれ設けられており、同様に、Pt又はPt合金あるいはPtとセラミックスを含むサーメット等から形成されている。そのうちの電極122は、固体電解質体111と向き合う側の面に形成されている。
また、固体電解質体111と固体電解質体121との間には小空間としての中空の第1測定室150が形成されており、固体電解質体111側の電極113と、固体電解質体121側の電極122とが第1測定室150内に配置されている。この第1測定室150は、排気通路内を流通する排気ガスがセンサ素子10内に最初に導入される小空間である。第1測定室150のセンサ素子10における先端側には、第1測定室150内外の仕切りとして、第1測定室150内への排気ガスの単位時間あたりの流通量を制限する多孔質性の第1拡散抵抗部151が設けられている。同様に、第1測定室150のセンサ素子10における後端側にも、後述する第2測定室160につながる開口部141と第1測定室150との仕切りとして、排気ガスの単位時間あたりの流通量を制限する第2拡散抵抗部152が設けられている。
【0026】
固体電解質体121および両電極122,123は、主として、固体電解質体121により隔てられた雰囲気(電極122の接する第1測定室150内の雰囲気と、電極123の接する後述する基準酸素室170内の雰囲気)間の酸素分圧差に応じて起電力を発生することができるものであり、本実施の形態ではVsセル120と称することとする。
Vsセル120は、両電極122,123間の内部抵抗も検出する。
【0027】
次に、固体電解質体131は、絶縁体145を挟んで固体電解質体121と対向するように配置されている。固体電解質体131の固体電解質体121側の面にも同様に、Pt又はPt合金あるいはPtとセラミックスを含むサーメット等から形成された多孔質性の電極132,133がそれぞれ設けられている。
電極132が形成された位置には絶縁体145が配置されておらず、独立した空間としての基準酸素室170が形成されている。この基準酸素室170内には、Vsセル120の電極123も配置されている。尚、基準酸素室170内には、セラミック製の多孔質体が充填されている。また、電極133が形成された位置にも絶縁体145が配置されておらず、基準酸素室170との間に絶縁体145を隔て、独立した小空間としての中空の第2測定室160が形成されている。そして、この第2測定室160に連通するように、固体電解質体121および絶縁体140のそれぞれに開口部125,141が設けられており、前述したように、第1測定室150と開口部141とが、これらの間に第2拡散抵抗部152を挟んで接続されている。
【0028】
固体電解質体131および両電極132,133は、上記のIp1セル110と同様に、絶縁体145により隔てられた雰囲気(電極132の接する基準酸素室170内の雰囲気と、電極133の接する第2測定室160内の雰囲気)間にて酸素の汲み出しを行うことができるものである。
本実施の形態では、固体電解質体131および両電極132,133を、Ip2セル130と称することとする。NOxの濃度を検出するIp2セル130が、特許請求の範囲における「セル(詳細には検知セル)」に相当し、電極132,133が、特許請求の範囲における「一対の電極」に相当する。
【0029】
尚、Ip1セル110の第1測定室150側の電極113と、Vsセル120の第1測定室150側の電極122と、Ip2セル130の第2測定室160側の電極133とは、それぞれ、コントローラ1において基準電位に接続され、ヒータ素子161の一方の電極は接地されている。
【0030】
次に、センサ素子100と電気的に接続されたNOxセンサ制御装置1の構成について説明する。NOxセンサ制御装置1は、マイクロコンピュータ60と、電気回路部58等を有している。そして、マイクロコンピュータ60は、CPU61と、RAM62およびROM63と、A/Dコンバータ65と、ECU90と通信すると共に、CPU61及びA/Dコンバータ65と接続される信号入出力部64と、図示外のタイマクロック等と、を備えている。
電気回路部58は、基準電圧比較回路51、Ip1ドライブ回路52、Vs検出回路53、Icp供給回路54、Ip2検出回路55、Vp2印加回路56、ヒータ駆動回路57および抵抗検出回路59から構成され、NOxセンサ10(センサ素子100)を用いた排気ガス中のNOx濃度検出を行う。
【0031】
Icp供給回路54は、Vsセル120の電極122,123間に電流Icpを供給し、第1測定室150内から基準酸素室170内への酸素の汲み出しを行っている。Vs検出回路53は、電極122,123間の電圧Vsを検出するための回路であり、その検出結果を基準電圧比較回路51に対し出力している。基準電圧比較回路51は、Vs検出回路53に検出されたVsセル120の電極122,123間の電圧Vsを、基準となる基準電圧(例えば425mV)と比較するための回路であり、その比較結果をIp1ドライブ回路52に対し出力している。
【0032】
Ip1ドライブ回路52は、Ip1セル110の電極112,113間に電流Ip1を供給するための回路である。電流Ip1の大きさや向きは、基準電圧比較回路51によるVsと基準電圧との比較結果に基づき、Vsセル120の電極122,123間の電圧が予め設定された基準電圧と略一致するように調整されている。その結果、Ip1セル110により、第1測定室150内からセンサ素子10外部への酸素の汲み出し、あるいはセンサ素子10外部から第1測定室150内への酸素の汲み入れが行われる。すなわち、Ip1セル110は、Vsセル120の電極122,123間の電圧が一定値(基準電圧の値)に保たれるように、第1測定室150内における酸素濃度の調整を行っている。
尚、Ip1ドライブ回路52およびCPU61が本発明の「酸素ポンプセル制御手段」に相当する。
【0033】
また、Vp2印加回路56は、Ip2セル130の電極132,133間へ、被測定ガス(排気ガス)中のNOx(具体的にはNO)を酸素とN2に分解させる一定電圧Vp2(例えば450mV)を印加するための回路であり、NOxを窒素と酸素に分解すると共に、第2測定室160内から基準酸素室170(電極133から電極132)に酸素の汲み出しを行う。Ip2検出回路55は、Ip2セル130の電極132,133間に流れた電流Ip2の値の検出を行う回路である。
【0034】
ヒータ駆動回路57は、CPU61により制御され、ヒータ素子161のヒータパターン164へ電流を流し、固体電解質体111,121,131(つまり、Ip1セル110、Vsセル120、Ip2セル130)の加熱を行うと共に、固体電解質体111,121,131の温度を所定の温度(換言すれば、目標値)に保たせるための回路である。ヒータパターン164はヒータ素子161内で繋がる一本の電極パターンであり、一方の端部が接地され、他方の端部がヒータ駆動回路57に接続されている。
このヒータ駆動回路57およびCPU61は、固体電解質体111,121,131(本実施例では、具体的に固体電解質体121)が狙いとする温度になるように、後述するVsセル120の内部抵抗値に基づいて、ヒータパターン164をPWM通電制御して当該ヒータパターン164に電流を流す制御を行えるように構成されている。
尚、ヒータ駆動回路57およびCPU61が本発明の「ヒータ制御手段」に相当する。
【0035】
次に、本実施の形態におけるVsセル120の内部抵抗(インピーダンス)値の測定方法について説明する。なお、このVsセル120の内部抵抗の測定は、所定の周期のもと定期的に実行される。Vsセル120の内部抵抗(内部抵抗値)の測定方法としては、Vsセル120に形成された電極122,123間に、抵抗検出回路59を構成する定電流源回路から定電流Iを一定時間流し、それに応答して変化する電極122,123間の電圧Vを抵抗検出回路59により測定する。そして、定電流Iを付与した際の電圧Vの変化量と、定電流Iとに基づいて、マイクロコンピュータ60のCPU61にて内部抵抗の値として演算するようにすれば良い。
【0036】
より詳細には、抵抗検出回路59に設けた定電流源回路から定電流IをVsセル120に流す前の電極122,123間の電圧と、上記定電流源回路から定電流IをVsセル120に流してから一定時間経過後(例えば、60μs経過後)の電極122,123間の電圧を抵抗検出回路59を介して、CPU61が入力し、入力した2つの電圧の差電圧(変化量)ΔVから、予め設定された計算式又はマップを用いてVsセル120の内部抵抗の値を求めるようにする。
この抵抗検出回路59の回路構成およびVsセル120の内部抵抗の測定手法自身は公知であることから、これ以上の説明は省略する。
尚、Vsセル120の内部抵抗の抵抗値の測定に限られず、Ip1セル110やIp2セル130に対しても、上記と同様にして内部抵抗の抵抗値を測定することもできる。
【0037】
次に、このような構成のNOxセンサ制御装置1によるNOx濃度の検出動作について説明する。
まず、センサ素子100を構成する固体電解質体111,121,131が、ヒータ駆動回路57から駆動電流が流されたヒータパターン164の昇温に伴い加熱され、活性化する。これにより、Ip1セル110、Vsセル120、及びIp2セル130が動作するようになる。
一方、排気通路(図示外)内を流通する排気ガスは、第1拡散抵抗部151による流通量の制限を受けつつ第1測定室150内に導入される。ここで、Icp供給回路54によりVsセル120には電極123側から電極122側へ微弱な電流Icpが流されている。このため排気ガス中の酸素は、負極側となる第1測定室150内の電極122から電子を受け取ることができ、酸素イオンとなって固体電解質体121内を流れ、基準酸素室170内に移動する。つまり、電極122,123間で電流Icpが流されることによって、第1測定室150内の酸素が基準酸素室170内に送り込まれ、電極123が基準電極として機能することになる。
【0038】
Vs検出回路53では電極122,123間の電圧が検出されており、この電圧が基準電圧比較回路51により基準電圧(425mV)と比較され、その比較結果がIp1ドライブ回路52に出力されている。ここで、電極122,123間の電位差が425mV付近で一定となるように、第1測定室150内の酸素濃度を調整すれば、第1測定室150内の排気ガス中の酸素濃度は所定値(例えば、10-8~10-9atm)に近づくこととなる。
そこで、Ip1ドライブ回路52では、第1測定室150内に導入された排気ガスの酸素濃度が所定値より薄い場合、電極112側が負極となるようにIp1セル110に電流Ip1を流し、センサ素子100外部から第1測定室150内へ酸素の汲み入れを行う。一方、第1測定室150内に導入された排気ガスの酸素濃度が所定値より濃い場合、Ip1ドライブ回路52は、電極113側が負極となるようにIp1セル110に電流Ip1を流し、第1測定室150内からセンサ素子100外部へ酸素の汲み出しを行う。
【0039】
このように、第1測定室150において酸素濃度が調整された排気ガスは、第2拡散抵抗部152を介し、第2測定室160内に導入される。第2測定室160内で電極133と接触した排気ガス中のNOxは、電極133を触媒としてN2とO2に分解(還元)される。そして分解された酸素は、電極133から電子を受け取り、酸素イオンとなって固体電解質体131内を流れ、電極132に移動する。このとき、第1測定室150で汲み残された残留酸素も同様に、Ip2セル130によって基準酸素室170内に移動する。このため、Ip2セル130を流れる電流は、NOx由来の電流および残留酸素由来の電流となる。
【0040】
ここで、第1測定室150で汲み残された残留酸素の濃度は上記のように所定値に調整されているため、その残留酸素由来の電流は略一定とみなすことができ、NOx由来の電流の変動に対し影響は小さく、Ip2セル130を流れる電流はNOx濃度に比例することとなる。NOxセンサ制御装置1では、Ip2検出回路55によりIp2セル130を流れる電流Ip2を検出し、その電流値から、マイクロコンピュータ60が公知の残留酸素由来のオフセット電流の補正計算処理を行い、排気ガス中のNOx濃度の検出を行う。
【0041】
次に、NOxセンサ10(より具体的には、Ip2セル130の電極133)に吸着したSOxを除去するためのヒータの制御処理について説明する。
排気ガス等の被測定ガス中にSOx(硫黄酸化物)が含まれると、Ip2セル130の電極133にSOxが吸着し、Ip2セル130の応答性が低下する。そして、電極133に吸着したSOxは、所定の温度以上で所定時間以上(例えば、700℃以上で3分以上)加熱すると脱離して除去され、Ip2セル130の応答性が回復することがわかった。
又、SOxは酸素と反応させると電極133から脱離し易くなる。
【0042】
そこで、本発明においては、内燃機関(エンジン)の駆動停止時に、ヒータ素子161を加熱することで、内燃機関の駆動中のNOx濃度の検出を妨げずに、NOxセンサ10(センサ素子100)を十分な時間加熱して、NOxセンサ10(電極133)に吸着したSOxを確実に除去することができる。
なお、内燃機関の駆動停止とは、自動的なアイドルストップを除き、運転者の意図によりエンジンキーやスイッチ等をOFFして内燃機関を停止することをいう。
【0043】
なお、具体的な回復制御におけるヒータ素子161の加熱制御(通電制御)は、上述のVsセル120の内部抵抗値をモニタして行うことができる。具体的には、NOxセンサ10(センサ素子100)の温度が高いほど、Vsセル120の内部抵抗値が低くなることから、ヒータ素子161を通電加熱するときのVsセル120の設定内部抵抗値(これがヒータ素子161の制御温度となる)を決めておき、この設定内部抵抗値になるようにヒータ素子161を通電制御すればよい。
【0044】
内燃機関の駆動停止時に、内燃機関の動作時におけるヒータの第1の制御温度(例えば655℃)よりも高い第2の制御温度(例えば700℃)となるようにヒータ素子161を加熱制御すると、NOxセンサ10をより高温に加熱するのでSOxをより確実に除去できる。なお、上述のように、各制御温度は、Vsセル120の設定内部抵抗値に対応する。
第2の制御温度は、Ip2セル130の温度が730℃以上となるよう設定されていると、電極133からSOxがより脱離するので好ましい。但し、第2の制御温度が高すぎると、NOxセンサ10自体が劣化するおそれがあるので、第2の制御温度は、NOxセンサ10の最高温度が1000℃以下となるように設定されることが好ましい。
又、回復制御(ヒータ素子161の制御)時に、酸素ポンプセル(Ip1セル110)を動作して第1測定室150から酸素を汲み出すと、被測定ガス中の酸素濃度がさらに低くなった状態で電極133に導入されるので、還元雰囲気でSOxの脱離をさらに促進できる。
【0045】
ここで、第1測定室150から酸素を汲み出す制御は、NOx濃度の検出動作と同様に行われる。つまり、Va検出回路53で検出された電圧が、基準電圧比較回路51により基準電圧(425mV)と比較される。そして、電極122、123間の電位差が425mV付近で一定となるように、第1測定室150内の酸素濃度を調整する。
この際、内燃機関の駆動停止中においては、NOxセンサ10周囲(排気管等)及び第1測定室150内は大気雰囲気、換言すると排気ガスよりも酸素濃度が高い雰囲気となるため、上記制御によって、酸素は第1測定室150内に汲み入れられることなく、第1測定室150から汲み出されるように動作する。
【0046】
次に、
図2~
図3を参照し、回復制御における具体的なヒータ及び酸素ポンプセルの制御処理について説明する。
図2は、エンジンの動作信号に基づいてエンジンの駆動停止時を判定した場合の回復制御処理のフロー、
図3は所定のタイミングでエンジンの駆動停止時を判定した場合の回復制御処理のフローを示す。
【0047】
図2に示すフローでは、まず、CPU61は、エンジンの動作信号に基づいてエンジンON(駆動状態)か否かを判定する(ステップS10)。ステップS10は、具体的には、例えばイグニションキーやスイッチによりエンジンをONして駆動させたときに流れるACC(アクセサリ)電流の有無を検知し、ACC電流が流れないときをエンジンOFFと判定することができる。従って、ACC電流が特許請求の範囲の「内燃機関の動作信号」に相当する。
ステップS10で「No」であれば、CPU61は「完了フラグ=1」が立っているか否かを判定する(ステップS12)。
【0048】
ステップS12で「No」であれば、CPU61は、CPU61は「回復処理カウンタが3分以上であるか否かを判定する(ステップS14)。
この「回復処理カウンタ」は、ヒータ制御処理(
図2のフロー)によるSOxの除去(回復)処理が十分に完了するまでの時間のカウンタであり、例えばステップS18でヒータの通電を3分以上連続して行った場合に回復処理が完了したものとみなすこととし、ステップS14では「3分」をカウンタの判定基準としている。
【0049】
又、ステップS12の「完了フラグ」は、上述のように例えば回復処理が3分以上連続して行われ、回復処理が完了した状態(ステータス)を示す。この完了フラグは次のような意味を持つ。つまり、ステップS12の判定を行わない場合、ステップS18、S19で回復処理が完了した後、ステップS10に戻るが、この時にエンジンOFFであれば、(例えば夜中のエンジンOFFの間)延々と何回も回復処理を(3分の倍数で)繰り返してしまう。
そこで、ステップS12で「Yes」であれば、回復処理は完了していると判定され、回復を再度行う必要が無いとみなし、以下のステップS20に移行して待機することで、エンジンOFFの間じゅう、回復処理を繰り返すことを防止する。
【0050】
従って、ステップS14で「No」であれば、回復処理の積算時間が3分未満であって回復処理が完了していないから、ステップS100の「回復処理」サブルーチンへ移行する。
図4に示すように、サブルーチンS100では、CPU61は、回復処理カウンタをインクリメント(加算)し、回復処理の時間を積算する(ステップS16)。
そして、ステップS16に続き、CPU61は、第2の制御温度にヒータ素子161を通電する制御をする(ステップS18)。
次いで、ステップS18に続き、CPU61は、酸素ポンプセル(Ip1セル110)を動作して第1測定室150から酸素の汲出しを行い(ステップS19)、サブルーチンS100を終了する。
次に、サブルーチンS100に続き、CPU61は、次のサンプリング時間になったかを判定する(ステップS20)。ステップS20で「No」であれば、次のサンプリング時間になるまで待機する。そして、次のサンプリング時間になると(ステップS20でYES)、ステップS10の処理に戻る。
このように、ステップS16~20を繰り替えすことで、回復処理が連続して進行し、回復処理時間が積算されてゆくことになる。
【0051】
一方、ステップS10で「Yes」であれば、つまりエンジンONであれば、その時に「完了フラグ=1」であっても、次にエンジンOFFになった時には回復処理を行いたいから、CPU61は、「完了フラグ=0」としステップS50)。
【0052】
ステップS50に続いて、ステップS110の「通常処理」サブルーチンへ移行する。サブルーチンS110は、通常のヒータ制御温度に制御する処理である。
図5に示すように、サブルーチンS110では、CPU61は、「回復処理カウンタをクリア」する(ステップS52)。「回復処理カウンタをクリア」することで、回復処理の積算時間が0に戻り、次にエンジンOFFになった時に回復処理を再開できる。
ステップS52に続き、CPU61は、第1の制御温度(つまり、通常のヒータ制御温度)にヒータを通電制御する(ステップS54)。
ステップS54に続き、CPU61は、電圧Vsが基準電圧と略一致するように酸素ポンプセル(Ip1セル110)を動作させて、第1測定室150から酸素の汲み出し又は汲み入れを行う(ステップS56)。なお、ステップS56は、
図2における以下のステップS120の「停止処理」サブルーチンで酸素ポンプセルの動作を停止するため、その後のエンジンON時に酸素ポンプセルを動作させるためである。
その後、サブルーチンS110を終了し、ステップS20に移行する。
【0053】
一方、ステップS14で「Yes」であれば、回復処理が完了したから、CPU61は、「完了フラグ=1」を立て(ステップS30)、ステップS120の「停止処理」サブルーチンへ移行する。サブルーチンS120は、ヒータの通電及び酸素ポンプセル110の制御を停止する処理である。
図6に示すように、サブルーチンS120では、CPU61は、「回復処理カウンタをクリア」する(ステップS32)。続いて、CPU61は、ヒータ素子161の通電OFF(ステップS34)、及び酸素ポンプセル(Ip1セル110)の動作停止(ステップS36)する制御を行い、ステップS20に移行する。
【0054】
又、
図3に示すフローでは、まず、CPU61は、所定のタイミング(時間)になったか否かを判定するため、タイマカウンタをインクリメント(加算)する(ステップS202)。
図3に示すフローは、実際のエンジンOFFか否かに関わらず、所定のタイミング毎にヒータ素子161の制御を一律に行う実施形態であり、所定のタイミングとは、例えばマイクロコンピュータ60のタイマクロックを参照して所定時刻(午前0時を基準に2時間毎)であってもよく、前回のヒータ素子161の制御の開始時間や終了時間を記憶しておき、その開始又は終了時間から所定のタイミング(例えば2時間)が経過したときとしてもよい。
ステップS202でタイマカウンタをインクリメントすることで、所定のタイミングになるまで、時間が積算されてゆくことになる。
なお、
図3に示すフローにて、
図2の実施形態と同一のステップについては、同一の「S」の符号を付して説明を省略する。
【0055】
ステップS202に続いて、CPU61は、処理中フラグが1であるか否かを判定する(ステップS204)。
この「処理中フラグ=1」は、「今回復処理中である」ことを示すフラグであり、ステップS202のタイマカウンタをいつクリアするかを判断するために用いる。つまり、例えばタイマカウンタを積算してゆき、一定時間(6h)になる毎に回復処理を行う場合、回復処理中のいずれかのタイミングでタイマカウンタをクリアし、次の一定時間を計測できるようにする。
ところで、
図3のフローのように所定のタイミング(時間)毎に回復処理を行う場合、
図7に示すように、回復処理中にエンジンON(ステップS216)があったか否かのステータスの違いにより、次の回復処理(ステップS110)の開始時間がズレる。
【0056】
具体的には、
図7において、回復処理中にエンジンONが無ければ、回復処理がスタートしてから完了まで3分である。一方、回復処理を1分経過したときに、エンジンONが1分あった場合、回復処理が3分以上連続していないから、エンジンONからOFFになってから再度回復処理を3分行った時点で完了し、回復処理がスタートしてから完了まで合計5分となる。これにより、次の一定時間(6h)待機後の次の回復処理の開始時間が2分ズレる。
このズレがあっても回復処理は可能であるが、このズレを解消して正確に一定時間(6h)毎に回復処理を行うことがより好ましい。
【0057】
このズレを解消するには、「タイマカウンタクリア」(ステップS210)をどこのステップに入れるかが問題となる。まず、例えば、
図3のステップS14の「Yes」のように、回復処理が完了(例えば3分経過)した後に、ステップS120の前後のいずれかでタイマカウンタをクリアした場合は、
図7のエンジンON無しの「3分」経過後、又はエンジンON有の「5分」経過後にタイマカウンタをクリアするので、結局、エンジンONの有無によるステータスの違いによる時刻のズレを解消できない。
【0058】
そこで、
図3のステップS210のように、「回復処理を開始するタイミング」で、タイマカウンタをクリアすれば、
図7の回復処理のスタート時の時間0でタイマカウンタをクリアするから、その後のエンジンONによる回復処理の中断等の影響を受けず、次の回復処理の開始時間がズレないことになる。
しかし、そうすると、今度は回復処理が進行しないという問題が生じる。つまり、
図3のフローにて「処理中フラグ」を無視した場合、最初にステップS202でタイマカウンタをインクリメントして積算してゆき、一定時間(6h)経過したところで、ステップS210でタイマカウンタをクリアしてステップS14、S100の回復処理に入る。
そして、ステップS20で次のサンプリング時間になるとステップS202に戻ってタイマカウンタをインクリメントし始めるが、このときはタイマカウンタが十分に積算されないので、ステップS206で「No」となってしまい、回復処理が行われるステップS14に入れないことになる。これを繰り返し、タイマカウンタが十分に積算されるまで回復処理に入れない、つまり、回復処理を1回のサンプリング時間しかできなくなる不具合が生じる。
【0059】
そこで、ステップS208で「処理中フラグ」を導入することで、1回目のサンプリング時間で回復処理を行った後に戻ったステップS204で「処理中フラグ=1」であれば、ステップS206を介さずに直接回復処理が行われるステップS14に入ることができる。つまり、「回復処理を開始するタイミング」で、タイマカウンタをクリアしつつ、回復処理に入れないという不具合を解消して回復処理を継続することができるので、ステータスに応じつつ、正確な時間毎に回復処理を安定して行うことができる。
【0060】
具体的には、ステップS204で「Yes」、つまり「今回復処理中」であれば、回復を続行すべくステップS14に移行し、ステップS14で「No」であれば、サブルーチンS100の回復処理を行う。サブルーチンS100に続き、CPU61は、エンジンON(駆動状態)か否かを判定する(ステップS216)。
ここで、ステップS216で「Yes」であれば、つまりエンジンONを検知すると、「回復処理」を中止してタイマカウンタをクリアする必要があるから、CPU61は、「処理中フラグ=0」とし(ステップS214)、ステップS110の「通常処理」サブルーチンへ移行し、サブルーチンS110を終了すると、ステップS20に移行する。
一方、ステップS216で「No」であれば、所定のタイミング(6h)が経過していないから、ステップS20に移行し、次のサンプリング時間の判定を行う。
【0061】
ステップS20で「No」であれば、次のサンプリング時間になるまで待機する。そして、次のサンプリング時間になると(ステップS20でYES)、ステップS202の処理に戻る。
一方、ステップS204で「No」であれば、「今回復処理を行っていない」から、CPU61は、続いてタイマカウンタが所定値(例えば、上述の一定時間(6h))以上になったか否かを判定する(ステップS206)。
ステップS206で「No」であれば、所定のタイミング(6h)が経過していないから、ステップS20に移行し、次のサンプリング時間の判定を行う。
一方、ステップS206で「Yes」であれば、所定のタイミング(6h)が経過したから、一定時間(6h)になる毎に回復処理を行うべく、「処理中フラグ=1」とし(ステップS208)、タイマカウンタをクリアする(ステップS210)。そして回復を行うよう、ステップS14に移行する。
【0062】
ここで、ステップS14で「Yes」であれば、回復処理が完了したから、CPU61は、「処理中フラグ=0」とし(ステップS212)、ステップS120の「停止処理」サブルーチンへ移行する。サブルーチンS120に続き、ステップS20に移行する。
【0063】
以上のように、(i)ステップS206で「No」、つまり所定のタイミング(6h)が経過するまでは、
図3の最も左のフローを繰り返してタイマカウンタを積算してゆく。
(ii)そして、ステップS206で「Yes」、つまり所定のタイミング(6h)が経過すると、ステップS208で「処理中フラグ=1」を立て、タイマカウンタをクリアしつつ回復処理が開始される(ステップS100)。この回復処理中は「処理中フラグ=1」としつつ、
図3の中央のフローを繰り返して、回復処理カウンタとタイマカウンタを積算してゆく。
(iii)回復処理中にエンジンがONになると、処理中フラグが0となり、回復処理カウンタがクリアされ、回復処理を中止して通常処理に移行する(ステップS110)。
(iv)又、回復処理カウンタが3分以上となる(ステップS14)、つまり回復処理が完了すると、処理中フラグが0となり、回復処理を終了すべく停止処理に移行する(ステップS120)。そして、前回の回復処理開始時から所定のタイミング(6h)が経過するまで、再び、(i)に戻る処理を繰り返す。
【0064】
本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の思想と範囲に含まれる様々な変形及び均等物に及ぶことはいうまでもない。
例えば、ヒータ制御手段及び酸素ポンプセル制御手段を外部装置(ECU)側に設け、ECUにてヒータ及び酸素ポンプセルの制御を行うようにしてもよい。
又、上記実施形態においては、回復処理中の酸素ポンプセルを、通常制御時と同様、電圧Vsが基準電圧と略一致するように制御したが、例えば第1測定室から酸素の汲み出すための電流Ip1の大きさ及び向きの設定テーブルを予め有し、回復処理中にそのテーブルを参照して第1測定室から酸素の汲み出してもよい。
【0065】
又、上記実施形態においては、ヒータ制御手段は、回復処理が完了すると、制御完了を示す完了フラグ(=1)を立て、その完了フラグを基に回復処理を停止したが、例えば「回復処理が完了していない」旨を示す「制御未完了フラグ」を立て、回復処理完了時に制御未完了フラグをリセットし、制御未完了フラグが立っていない(つまり、フラグが1でない)ことを基に回復処理を停止する形態としてもよい。
処理中フラグについても、完了フラグと同様、例えば「処理中でない」旨を示す「非処理中フラグ」を立て、非処理中フラグが立っていないことを基に回復処理フローを進める形態としてもよい。
【符号の説明】
【0066】
1 NOxセンサ制御装置
10 NOxセンサ
52,61 Ip1ドライブ回路、CPU(酸素ポンプセル制御手段)
57、61 ヒータ駆動回路、CPU(ヒータ制御手段)
110 Ip1セル(酸素ポンプセル)
130 Ip2セル(検知セル)
131 固体電解質体
132,133 一対の電極
161 ヒータ素子(ヒータ)