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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-14
(45)【発行日】2022-01-25
(54)【発明の名称】在庫保有計画作成装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   G05B 19/418 20060101AFI20220118BHJP
   G06Q 50/04 20120101ALI20220118BHJP
【FI】
G05B19/418 Z
G06Q50/04
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018214381
(22)【出願日】2018-11-15
(65)【公開番号】P2020086490
(43)【公開日】2020-06-04
【審査請求日】2020-11-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100111453
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻井 智
(72)【発明者】
【氏名】井本 考亮
【審査官】堀内 亮吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-215220(JP,A)
【文献】特開平06-143106(JP,A)
【文献】特開2004-030200(JP,A)
【文献】特開2016-207061(JP,A)
【文献】特開2013-196625(JP,A)
【文献】特開平02-249005(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0190913(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/418
G06Q 50/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1工程における半製品の処理終了時刻から、前記第1工程に続く第2工程における前記半製品の処理開始時刻である納期まで、前記半製品を在庫として保有する在庫保有計画を作成する在庫保有計画作成装置であって、
前記第1工程における前記半製品の処理計画である工程スケジュールを作成する工程スケジュール作成部と、
前記工程スケジュールと、前記第2工程における前記半製品の前記納期とに基づき、前記在庫として保有される前記半製品の在庫量の時間的な推移を求める在庫量処理部と、を備え、
前記工程スケジュール作成部は、
前記第2工程における前記半製品の前記納期を含む、前記第1工程に対する前記第2工程の要求内容と、前記第1工程において前記半製品を処理する設備の設備仕様と、に基づき、前記設備に前記半製品の処理を割り当てる割当て処理を行う割当て制御部と、
前記第1工程の前記設備に割り当てられた前記半製品の処理終了時刻が、前記第2工程における前記半製品の前記納期より遅くなる、納期遅れか否かを判定する判定処理を行う納期遅れ判定部と、
前記納期遅れと判定されると、前記納期遅れを解消するために前記第1工程の処理開始時刻に初期在庫として保有する前記半製品を決定する決定処理を行う初期在庫決定部と、
前記第1工程の前記設備に割り当てる割当て対象から、前記初期在庫として保有すると決定された前記半製品を除去する調整処理を行う対象調整部と、を含み、
前記割当て制御部は、前記割当て処理として、前記割当て対象から前記半製品が除去されると、除去された前記半製品以外の前記半製品の処理を前記設備に割り当て、かつ、前記納期遅れと判定されなければ、前記設備に割り当てた前記半製品の処理計画を仮に確定して、前記要求内容に含まれる他の前記半製品の処理を前記設備に割り当て、
前記工程スケジュール作成部は、前記割当て制御部、前記納期遅れ判定部、前記初期在庫決定部、及び前記対象調整部それぞれに前記割当て処理、前記判定処理、前記決定処理、及び前記調整処理それぞれを繰り返し行わせて、前記工程スケジュールを作成
前記初期在庫決定部は、前記決定処理として、前記納期遅れと判定された前記半製品である納期遅れ半製品と、前記納期遅れ半製品が割り当てられたのと同じ前記第1工程の前記設備に、前記納期遅れ半製品より時間的に早く割り当てられていた前記半製品である割当て済み半製品とのうち、所定の在庫条件を満たすと判定した前記半製品を、前記初期在庫として保有すると決定し
前記初期在庫決定部は、前記決定処理として、前記割当て済み半製品のうちで、時間的に最も早く前記第1工程の前記設備に割り当てられていた最早割当て済み半製品が、前記在庫条件を満たすと判定する、
在庫保有計画作成装置。
【請求項2】
前記初期在庫決定部は、前記決定処理として、前記納期遅れ半製品と前記割当て済み半製品とのうちで、前記第1工程での製造が有利な半製品が、前記在庫条件を満たさないと判定する、
請求項1に記載の在庫保有計画作成装置。
【請求項3】
前記初期在庫決定部は、前記決定処理として、前記納期遅れ半製品と前記割当て済み半製品とのうちで、外注先で製造すると前記第2工程における前記納期に遅れる半製品が、前記在庫条件を満たさないと判定する、
請求項1または2に記載の在庫保有計画作成装置。
【請求項4】
前記第1工程は、複数の前記設備を備え、
前記割当て制御部は、前記割当て処理として、前記複数の前記設備のうちで、前記半製品の処理を最も早く開始可能な設備に、前記半製品の処理を割り当てる、
請求項1~のいずれか1項に記載の在庫保有計画作成装置。
【請求項5】
前記設備仕様は、同時に処理可能な前記半製品の個数である同時処理個数を含み、
前記割当て制御部は、前記割当て処理として、前記第2工程における前記納期が早い前記半製品を優先して、前記同時処理個数の前記半製品の処理を前記第1工程の前記設備に割り当てる、
請求項1~のいずれか1項に記載の在庫保有計画作成装置。
【請求項6】
第1工程における半製品の処理終了時刻から、前記第1工程に続く第2工程における前記半製品の処理開始時刻である納期まで、前記半製品を在庫として保有する在庫保有計画を作成する在庫保有計画作成方法であって、
前記第1工程における前記半製品の処理計画である工程スケジュールを作成する工程スケジュール作成ステップと、
前記工程スケジュールと、前記第2工程における前記半製品の前記納期とに基づき、前記在庫として保有される前記半製品の在庫量の時間的な推移を求める在庫量処理ステップと、を備え、
前記工程スケジュール作成ステップは、
前記第2工程における前記半製品の前記納期を含む、前記第1工程に対する前記第2工程の要求内容と、前記第1工程において前記半製品を処理する設備の設備仕様と、に基づき、前記設備に前記半製品の処理を割り当てる割当て制御ステップと、
前記第1工程の前記設備に割り当てられた前記半製品の処理終了時刻が、前記第2工程における前記半製品の前記納期より遅くなる、納期遅れか否かを判定する納期遅れ判定ステップと、
前記納期遅れと判定されると、前記納期遅れを解消するために前記第1工程の処理開始時刻に初期在庫として保有する前記半製品を決定する初期在庫決定ステップと、
前記第1工程の前記設備に割り当てる割当て対象から、前記初期在庫として保有すると決定された前記半製品を除去する対象調整ステップと、を含み、
前記割当て制御ステップは、前記割当て対象から前記半製品が除去されると、除去された前記半製品以外の前記半製品の処理を前記設備に割り当て、かつ、前記納期遅れと判定されなければ、前記設備に割り当てた前記半製品の処理計画を仮に確定して、前記要求内容に含まれる他の前記半製品の処理を前記設備に割り当て、
前記工程スケジュール作成ステップは、前記割当て制御ステップ、前記納期遅れ判定ステップ、前記初期在庫決定ステップ、及び前記対象調整ステップを順に繰り返して、前記工程スケジュールを作成
前記初期在庫決定ステップは、前記決定処理として、前記納期遅れと判定された前記半製品である納期遅れ半製品と、前記納期遅れ半製品が割り当てられたのと同じ前記第1工程の前記設備に、前記納期遅れ半製品より時間的に早く割り当てられていた前記半製品である割当て済み半製品とのうち、所定の在庫条件を満たすと判定した前記半製品を、前記初期在庫として保有すると決定し
前記初期在庫決定ステップは、前記決定処理として、前記割当て済み半製品のうちで、時間的に最も早く前記第1工程の前記設備に割り当てられていた最早割当て済み半製品が、前記在庫条件を満たすと判定する、
在庫保有計画作成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の工程を経て素材又は製品を製造する場合の連続する2つの工程間における在庫の保有計画を作成する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
素材又は製品を製造する工場では、半製品が予め定められた複数の工程を通過し、各工程において各設備により半製品が処理されて、所望の素材又は製品が製造される。
【0003】
図13は、素材の製造工程の一例を概略的に示す図である。図13には、スラブを製造する造塊工程PR1と、造塊工程PR1の次に、造塊工程PR1で製造されたスラブを圧延する熱延工程PR2とが示されている。造塊工程PR1には、複数の溶解炉E1~ENが設けられている。溶解炉E1~ENの容量、溶解炉E1~ENで造塊可能なスラブのサイズ等は、互いに異なっている。また、造塊工程PR1における処理時間は、使用される溶解炉、製造されるスラブの品種及びサイズによって異なる。また、異なる品種のスラブを順次に造塊する際には、その間に段取り替え時間が必要とされる場合もある。
【0004】
造塊工程PR1で製造された製造スラブ10は、スラブ置場15において在庫として保有され、次の熱延工程PR2で処理が開始されるのを待機する。熱延工程PR2には、例えばロール等の複数の熱延設備H1~HMが設けられている。なお、熱延工程PR2には、1個の熱延設備H1のみが設けられていてもよい。熱延工程PR2では、スラブ置場15に保有されているスラブ20が順に圧延される。熱延工程PR2で圧延された圧延済みスラブは、下工程において更に処理される。
【0005】
造塊工程PR1では、次の熱延工程PR2の納期(つまり処理開始時刻)に間に合うように、処理計画を作成する必要がある。造塊工程PR1の処理計画を工夫しても、熱延工程PR2の納期に間に合わない場合には、外注先25にスラブの製造を予め依頼し、外注先からの購入スラブ30を在庫としてスラブ置場15に保有する必要がある。また、スラブ置場15のスペースには限界があるため、在庫が許容量を超える場合には、外部倉庫35を借りて在庫スラブ40を移すなどの対策を講じる必要がある。したがって、事前に、造塊工程PR1の処理計画を作成して、在庫量が必要最小限となるような在庫保有計画を作成しておくことが望まれる。
【0006】
このような在庫保有計画を作成する技術として、特許文献1で提案されている技術がある。この特許文献1に記載の技術では、生産変動や受注変動といった在庫保有計画を作成する際に必要な諸元が、過去の実績に基づく確率分布として与えられ、この確率分布に基づいて、在庫保有計画が作成されている。このため、明確なスケジュールを作成することなく、安全度合いを加味して、保管費用を最小化する在庫保有計画を作成することが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2014-119768号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1に記載の技術では、在庫保有計画を作成する際に必要な諸元が、過去の実績に基づく確率分布として与えられているため、新規の発注又は受注に対応することは困難である。
【0009】
また、図13に示されるような、例えば造塊工程PR1である第1工程と、第1工程に続く、例えば熱延工程PR2である第2工程との間では、上述のように、第2工程の納期に間に合うように、第1工程の工程スケジュールを作成する必要がある。言い換えると、第1工程に対する第2工程の要求については、納期及び品種等を含む具体的な要求内容が、既に確定している。このように、具体的な要求内容が確定している場合には、確率分布を用いる上記特許文献1に記載の技術では、正確な在庫保有計画を作成することが困難である。
【0010】
本発明は、上記問題を解決するもので、第1工程と第2工程との間における、より正確な在庫保有計画を作成する在庫保有計画作成装置及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1態様に係る在庫保有計画作成装置は、
第1工程における半製品の処理終了時刻から、前記第1工程に続く第2工程における前記半製品の処理開始時刻である納期まで、前記半製品を在庫として保有する在庫保有計画を作成する在庫保有計画作成装置であって、
前記第1工程における前記半製品の処理計画である工程スケジュールを作成する工程スケジュール作成部と、
前記工程スケジュールと、前記第2工程における前記半製品の前記納期とに基づき、前記在庫として保有される前記半製品の在庫量の時間的な推移を求める在庫量処理部と、を備え、
前記工程スケジュール作成部は、
前記第2工程における前記半製品の前記納期を含む、前記第1工程に対する前記第2工程の要求内容と、前記第1工程において前記半製品を処理する設備の設備仕様と、に基づき、前記設備に前記半製品の処理を割り当てる割当て処理を行う割当て制御部と、
前記第1工程の前記設備に割り当てられた前記半製品の処理終了時刻が、前記第2工程における前記半製品の前記納期より遅くなる、納期遅れか否かを判定する判定処理を行う納期遅れ判定部と、
前記納期遅れと判定されると、前記納期遅れを解消するために前記第1工程の処理開始時刻に初期在庫として保有する前記半製品を決定する決定処理を行う初期在庫決定部と、
前記第1工程の前記設備に割り当てる割当て対象から、前記初期在庫として保有すると決定された前記半製品を除去する調整処理を行う対象調整部と、を含み、
前記割当て制御部は、前記割当て処理として、前記割当て対象から前記半製品が除去されると、除去された前記半製品以外の前記半製品の処理を前記設備に割り当て、かつ、前記納期遅れと判定されなければ、前記設備に割り当てた前記半製品の処理計画を仮に確定して、前記要求内容に含まれる他の前記半製品の処理を前記設備に割り当て、
前記工程スケジュール作成部は、前記割当て制御部、前記納期遅れ判定部、前記初期在庫決定部、及び前記対象調整部それぞれに前記割当て処理、前記判定処理、前記決定処理、及び前記調整処理それぞれを繰り返し行わせて、前記工程スケジュールを作成するものである。
【0012】
本発明の第2態様に係る在庫保有計画作成方法は、
第1工程における半製品の処理終了時刻から、前記第1工程に続く第2工程における前記半製品の処理開始時刻である納期まで、前記半製品を在庫として保有する在庫保有計画を作成する在庫保有計画作成方法であって、
前記第1工程における前記半製品の処理計画である工程スケジュールを作成する工程スケジュール作成ステップと、
前記工程スケジュールと、前記第2工程における前記半製品の前記納期とに基づき、前記在庫として保有される前記半製品の在庫量の時間的な推移を求める在庫量処理ステップと、を備え、
前記工程スケジュール作成ステップは、
前記第2工程における前記半製品の前記納期を含む、前記第1工程に対する前記第2工程の要求内容と、前記第1工程において前記半製品を処理する設備の設備仕様と、に基づき、前記設備に前記半製品の処理を割り当てる割当て制御ステップと、
前記第1工程の前記設備に割り当てられた前記半製品の処理終了時刻が、前記第2工程における前記半製品の前記納期より遅くなる、納期遅れか否かを判定する納期遅れ判定ステップと、
前記納期遅れと判定されると、前記納期遅れを解消するために前記第1工程の処理開始時刻に初期在庫として保有する前記半製品を決定する初期在庫決定ステップと、
前記第1工程の前記設備に割り当てる割当て対象から、前記初期在庫として保有すると決定された前記半製品を除去する対象調整ステップと、を含み、
前記割当て制御ステップは、前記割当て対象から前記半製品が除去されると、除去された前記半製品以外の前記半製品の処理を前記設備に割り当て、かつ、前記納期遅れと判定されなければ、前記設備に割り当てた前記半製品の処理計画を仮に確定して、前記要求内容に含まれる他の前記半製品の処理を前記設備に割り当て、
前記工程スケジュール作成ステップは、前記割当て制御ステップ、前記納期遅れ判定ステップ、前記初期在庫決定ステップ、及び前記対象調整ステップを順に繰り返して、前記工程スケジュールを作成するものである。
【0013】
第1態様又は第2態様では、納期遅れと判定されると、納期遅れを解消するために第1工程の処理開始時刻に初期在庫として保有する半製品が決定される。初期在庫として保有すると決定された半製品は、第1工程の設備に割り当てる割当て対象から除去される割当て対象の調整が行われる。割当て対象から半製品が除去されると、除去された半製品以外の半製品の処理が設備に割り当てられる。一方、納期遅れと判定されなければ、設備に割り当てた半製品の処理計画が仮に確定されて、要求内容に含まれる他の半製品の処理が設備に割り当てられる。このような、半製品の設備への割当て、納期遅れの判定、初期在庫の決定、割当て対象の調整が、繰り返されて、工程スケジュールが作成される。
【0014】
したがって、第1態様又は第2態様によれば、第2工程における半製品の納期を満たす工程スケジュールを作成することができる。納期を満たす工程スケジュールが作成されると、第1工程における半製品の処理終了時刻が判明する。このため、半製品は、第1工程における半製品の処理終了時刻から第2工程における半製品の納期まで、在庫として保有されることになる。したがって、半製品の在庫量の時間的な推移を、より正確に求めることができ、より正確な在庫保有計画を作成することができる。その結果、半製品の在庫量が過剰になる場合には、半製品の置場を確保する等の対策を講じることが可能になる。
【0015】
上記第1態様または第2態様において、記初期在庫決定部または初期在庫決定ステップは、前記決定処理として、前記納期遅れと判定された前記半製品である納期遅れ半製品と、前記納期遅れ半製品が割り当てられたのと同じ前記第1工程の前記設備に、前記納期遅れ半製品より時間的に早く割り当てられていた前記半製品である割当て済み半製品とのうち、所定の在庫条件を満たすと判定した前記半製品を、前記初期在庫として保有すると決定する
【0016】
この態様では、納期遅れ半製品と割当て済み半製品とのうち、所定の在庫条件を満たすと判定された半製品が、初期在庫として保有されると決定される。したがって、この態様によれば、好適な在庫条件を予め設定しておくことにより、初期在庫として保有する半製品を好適に決定することができる。
【0017】
上記第1態様または第2態様において、記初期在庫決定部または初期在庫決定ステップは、前記決定処理として、前記割当て済み半製品のうちで、時間的に最も早く前記第1工程の前記設備に割り当てられていた最早割当て済み半製品が、前記在庫条件を満たすと判定する
【0018】
この態様では、割当て済み半製品のうちで、時間的に最も早く第1工程の設備に割り当てられていた最早割当て済み半製品が、在庫条件を満たすと判定される。第1工程の設備における最早割当て済み半製品の処理は、納期遅れ半製品及び他の割当て済み半製品に比べて、最も早く開始される。したがって、この態様によれば、半製品が在庫として保有されて半製品の置場を占有する時間を最も短くすることができる。
【0019】
上記第1態様において、例えば、
前記初期在庫決定部は、前記決定処理として、前記納期遅れ半製品と前記割当て済み半製品とのうちで、前記第1工程での製造が有利な半製品が、前記在庫条件を満たさないと判定してもよい。
【0020】
この態様では、納期遅れ半製品と割当て済み半製品とのうちで、第1工程での製造が有利な半製品が、在庫条件を満たさないと判定される。したがって、この態様によれば、第1工程以外の外注先で予め製造することが不利であるため初期在庫として保有することが好ましくない半製品を、初期在庫として保有すると決定されるのを避けることができる。
【0021】
上記第1態様において、例えば、
前記初期在庫決定部は、前記決定処理として、前記納期遅れ半製品と前記割当て済み半製品とのうちで、外注先で製造すると前記第2工程における前記納期に遅れる半製品が、前記在庫条件を満たさないと判定してもよい。
【0022】
この態様では、納期遅れ半製品と割当て済み半製品とのうちで、外注先で製造すると第2工程における納期に遅れる半製品は在庫条件を満たさないと判定される。したがって、この態様によれば、外注先で製造すると間に合わないため初期在庫として保有することができない半製品を初期在庫として保有すると決定されるのを避けることができる。
【0023】
上記第1態様において、例えば、
前記第1工程は、複数の前記設備を備え、
前記割当て制御部は、前記割当て処理として、前記複数の前記設備のうちで、前記半製品の処理を最も早く開始可能な設備に、前記半製品の処理を割り当ててもよい。
【0024】
この態様では、複数の設備のうちで、半製品の処理を最も早く開始可能な設備に、半製品の処理が割り当てられる。このため、半製品を処理中の設備ではなくて、半製品の処理が終了した設備に、半製品の処理が割り当てられることになる。したがって、この態様によれば、複数の設備の負荷を平準化することができる。
【0025】
上記第1態様において、例えば、
前記設備仕様は、同時に処理可能な前記半製品の個数である同時処理個数を含み、
前記割当て制御部は、前記割当て処理として、前記第2工程における前記納期が早い前記半製品を優先して、前記同時処理個数の前記半製品の処理を前記第1工程の前記設備に割り当ててもよい。
【0026】
この態様では、第2工程における納期が早い半製品を優先して、同時処理個数の半製品の処理が第1工程の設備に割り当てられる。したがって、この態様によれば、第1工程の設備の能力を最大限に活用することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明に係る在庫保有計画作成装置及び方法によれば、半製品の在庫量の時間的な推移を、より正確に求めることができ、より正確な在庫保有計画を作成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本実施形態における在庫保有計画作成装置の構成の一例を概略的に示すブロック図である。
図2】造塊工程情報の一例を概略的に示す図である。
図3】熱延工程情報の一例を概略的に示す図である。
図4】要求割当て情報を概略的に示す図である。
図5】各溶解炉への要求IDの割当ての途中経過を概略的に示す図である。
図6】各溶解炉への要求IDの割当ての途中経過を概略的に示す図である。
図7】各溶解炉への要求IDの割当ての途中経過を概略的に示す図である。
図8】造塊工程の工程スケジュールを概略的に示す図である。
図9】半製品情報を概略的に示す図である。
図10】在庫情報を概略的に示す図である。
図11】スラブ置場における在庫量の推移を概略的に示す図である。
図12】工程スケジュール作成部及び在庫量処理部の動作手順を概略的に示すフローチャートである。
図13】素材の製造工程の一例を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
(実施の形態)
以下、本発明の一実施の形態が、図面を参照しながら説明される。なお、各図面において、同じ構成要素については同じ符号が用いられ、適宜、詳細な説明は省略される。
【0030】
図1は、本実施形態における在庫保有計画作成装置100の構成の一例を概略的に示すブロック図である。図2は、造塊工程情報200の一例を概略的に示す図である。図3は、熱延工程情報300の一例を概略的に示す図である。図1に示されるように、在庫保有計画作成装置100は、ディスプレイ110、入力部120、記憶装置130、及び制御回路140を備える。制御回路140は、メモリ150、中央演算処理装置(CPU)160、及び周辺回路(図示省略)を含む。
【0031】
本実施形態の在庫保有計画作成装置100は、図13に示される素材の製造工程に適用される。すなわち、本実施形態の在庫保有計画作成装置100は、熱延工程PR2(第2工程の一例に相当)の納期を満たすように造塊工程PR1(第1工程の一例に相当)の工程スケジュールを作成する。また、本実施形態の在庫保有計画作成装置100は、造塊工程PR1の処理開始時に初期在庫として保有するスラブ(半製品の一例に相当)の量と、スラブ置場15における在庫量の時間的な推移と、を含む在庫保有計画を作成する。
【0032】
一般に、スラブのサイズ及び品種の組合せは、数百種類以上も存在する。また、スラブに対する需要の季節変動が大きい。このため、本実施形態の在庫保有計画作成装置100は、造塊工程PR1に対する熱延工程PR2の要求内容に適合するように、在庫保有計画を作成している。
【0033】
ディスプレイ110は、例えば液晶ディスプレイパネルを含む。ディスプレイ110は、CPU160により制御されて、例えば在庫量の推移を表示する。なお、ディスプレイ110は、液晶ディスプレイパネルに限られない。ディスプレイ110は、有機エレクトロルミネセンス(EL)パネルなどの他のパネルを含んでもよい。
【0034】
入力部120は、例えばマウス又はキーボードを含む。入力部120は、ユーザにより操作されると、その操作内容を表す操作信号を制御回路140に出力する。なお、ディスプレイ110がタッチパネル式ディスプレイの場合には、マウス又はキーボードに代えて、タッチパネル式ディスプレイが入力部120を兼用してもよい。
【0035】
記憶装置130は、例えばハードディスク又は半導体不揮発性メモリ等により構成される。記憶装置130は、造塊工程情報データベース(DB)131、熱延工程情報DB132、半製品情報DB133を含む。造塊工程情報DB131、熱延工程情報DB132、半製品情報DB133は、互いに別の媒体で構成されてもよい。代替的に、造塊工程情報DB131、熱延工程情報DB132、半製品情報DB133は、記憶領域が分けられた一つの媒体で構成されてもよい。半製品情報DB133は、要求IDの外注先に関する情報である半製品情報900(図9)を予め記憶する。半製品情報900については、図9を用いて、後に詳述される。
【0036】
造塊工程情報DB131は、造塊工程PR1(図13)の設備に関する情報である造塊工程情報200を予め記憶する。造塊工程情報200は、図2に示されるように、溶解炉欄201、サイズ欄202、品種欄203、処理可能本数欄204、処理時間欄205を含む。溶解炉欄201には、造塊工程PR1に設けられている溶解炉を特定する情報が記録されている。図2の例では、造塊工程PR1には、溶解炉E1、溶解炉E2の2個の溶解炉が設けられている。サイズ欄202には、各溶解炉E1,E2において製造可能なスラブのサイズが記録されている。品種欄203には、各溶解炉E1,E2において製造可能なスラブの品種が記録されている。スラブの品種は、スラブを構成する成分の比率に対応する。処理可能本数欄204には、各溶解炉E1,E2において同時に処理可能なスラブの本数(同時処理個数の一例に相当)が記録されている。処理時間欄205には、スラブを処理するのに必要な時間が記録されている。
【0037】
図2の例では、溶解炉E1において、サイズα及び品種A、サイズα及び品種Bのスラブが製造可能となっており、それらの処理可能本数がそれぞれ3本であり、それらの処理時間はそれぞれ「10」となっている。また、溶解炉E2において、サイズα及び品種B、サイズβ及び品種A、サイズβ及び品種Bのスラブがそれぞれ製造可能となっており、それらの処理可能本数がそれぞれ4本であり、それらの処理時間はそれぞれ「12」となっている。
【0038】
図1に戻って、熱延工程情報DB132は、造塊工程PR1に対する熱延工程PR2(図13)の要求内容に関する情報である熱延工程情報300を予め記憶する。熱延工程情報300は、図3に示されるように、要求識別情報(要求ID)欄301、品種欄302、サイズ欄303、納期欄304を含む。要求ID欄301には、造塊工程PR1に対して、熱延工程PR2が要求するスラブを特定する識別情報である要求IDが記録されている。品種欄302には、要求ID欄301の要求IDに対応するスラブの品種が記録されている。サイズ欄303には、要求ID欄301の要求IDに対応するスラブのサイズが記録されている。納期欄304には、要求ID欄301の要求IDに対応するスラブの納期(つまり、熱延工程PR2における処理開始時刻)が記録されている。図3の例では、熱延工程情報300は、納期の順番にソートされている。
【0039】
図1に戻って、メモリ150は、例えば半導体メモリ等により構成される。メモリ150は、例えばリードオンリーメモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、電気的に消去書き換え可能なROM(EEPROM)などを含む。CPU160は、メモリ150の例えばROMに記憶された本実施形態の制御プログラムにしたがって動作することによって、情報取得部161、工程スケジュール作成部162、在庫量処理部163として機能する。
【0040】
情報取得部161は、記憶装置130から、造塊工程情報200と、熱延工程情報300とを取得して、メモリ150の例えばRAMに保存する。情報取得部161は、メモリ150に保存された造塊工程情報200及び熱延工程情報300から、要求割当て情報400(図4)を作成して、メモリ150の例えばRAMに保存する。
【0041】
図4は、要求割当て情報400を概略的に示す図である。要求割当て情報400は、図4に示されるように、要求ID欄401、処理可能溶解炉欄402、品種欄403、サイズ欄404、納期欄405を含む。要求ID欄401、品種欄403、サイズ欄404、納期欄405には、それぞれ、熱延工程情報300の要求ID欄301、品種欄302、サイズ欄303、納期欄304と同じ情報が記録されている。すなわち、情報取得部161は、熱延工程情報300の要求ID欄301、品種欄302、サイズ欄303、納期欄304の情報を読み出し、読み出した情報を、それぞれ、要求ID欄401、品種欄403、サイズ欄404、納期欄405に記録する。
【0042】
また、情報取得部161は、熱延工程情報300の品種欄302及びサイズ欄303の情報と、造塊工程情報200の品種欄203及びサイズ欄202の情報とを、それぞれ照合して、対応する要求IDのスラブを処理可能な溶解炉を特定し、処理可能溶解炉欄402に記録する。
【0043】
例えば、熱延工程情報300の要求IDが「ID1」の品種「A」及びサイズ「α」のスラブは、造塊工程情報200では、溶解炉E1でのみ処理可能であるので、要求割当て情報400の要求IDが「ID1」に対応する処理可能溶解炉欄402には、「E1」が記録される。また、例えば、熱延工程情報300の要求IDが「ID2」の品種「B」及びサイズ「α」のスラブは、造塊工程情報200では、溶解炉E1及び溶解炉E2の両方で処理可能であるので、要求割当て情報400の要求IDが「ID2」に対応する処理可能溶解炉欄402には、「E1,E2」が記録される。
【0044】
図1に戻って、工程スケジュール作成部162は、造塊工程PR1の工程スケジュールを作成する。工程スケジュール作成部162は、割当て制御部171、納期遅れ判定部172、初期在庫決定部173、対象調整部174を含む。割当て制御部171、納期遅れ判定部172、初期在庫決定部173、対象調整部174については、後に詳述される。
【0045】
在庫量処理部163は、造塊工程PR1の工程スケジュールと、熱延工程PR2の納期と、に基づき、在庫情報1000(図10)を作成する。在庫量処理部163は、在庫情報1000に基づき、スラブ置場15における在庫量の推移(図11)を求めて、ディスプレイ110に表示する。在庫情報1000、スラブ置場15における在庫量の推移については、それぞれ、図10図11を用いて、後に詳述される。
【0046】
図5図7は、各溶解炉E1,E2への要求IDの割当ての途中経過を概略的に示す図である。図8は、造塊工程PR1の工程スケジュールを概略的に示す図である。図9は、半製品情報900を概略的に示す図である。図10は、在庫情報1000を概略的に示す図である。図11は、スラブ置場15における在庫量の推移を概略的に示す図である。図12は、工程スケジュール作成部162及び在庫量処理部163の動作手順を概略的に示すフローチャートである。図5図11等を参照しつつ、図12に従って、工程スケジュール作成部162(割当て制御部171、納期遅れ判定部172、初期在庫決定部173、対象調整部174)及び在庫量処理部163の機能が説明される。なお、この実施形態では、溶解炉E1,E2において処理される品種が変わったときに生じる可能性がある段取り替え時間は、ゼロとされている。
【0047】
図12のステップS1200において、割当て制御部171は、最も早く処理を開始できる設備を対象設備として選択する。初期状態では、溶解炉E1,E2ともに要求が割り当てられていないので、両方とも選択可能になっている。この実施形態では例えば、溶解炉E1が選択される。
【0048】
ステップS1205(割当て制御ステップの一例に相当)において、割当て制御部171は、要求割当て情報400(図4)を参照して、納期が最も早い要求IDのうち、対象設備である溶解炉E1で処理可能な要求IDを溶解炉E1に割り当てる。割当て制御部171は、例えば、最も早い納期「20」のうち、溶解炉E1で処理可能な要求ID「ID1」を、溶解炉E1に割り当てる。ステップS1210において、割当て制御部171は、造塊工程情報200(図2)を参照し、対象設備に余裕があるか否かを判定する。対象設備に余裕がなければ(ステップS1210でNO)、処理はステップS1215に進む。一方、対象設備に余裕があれば(ステップS1210でYES)、処理はステップS1205に戻る。
【0049】
造塊工程情報200(図2)によれば、溶解炉E1、品種A、サイズαのスラブは、3本まで同時処理が可能になっている。したがって、対象設備に余裕があると判定されて(ステップS1210でYES)、ステップS1205において、割当て制御部171は、同一品種A及び同一サイズαの要求ID「ID4」を溶解炉E1に割り当てる。そして、再び、対象設備に余裕があると判定されて(ステップS1210でYES)、ステップS1205において、割当て制御部171は、同一品種A及び同一サイズαの要求ID「ID7」を溶解炉E1に割り当てる。これによって、溶解炉E1には、要求ID「ID1,ID4,ID7」が割り当てられたことになる。その結果、処理可能本数である3本のスラブが溶解炉E1に割り当てられたので、ステップS1210において対象設備に余裕がない(ステップS1210でNO)と判定される。
【0050】
ステップS1215において、割当て制御部171は、溶解炉E1に割り当てられた要求ID「ID1,ID4,ID7」の処理計画を仮に一旦確定してメモリ150に保存し、要求ID「ID1,ID4,ID7」の処理時間「10」を加算する。その結果、要求ID「ID1,ID4,ID7」の処理終了時刻は、図5に示されるように「10」になる。
【0051】
ステップS1220(納期遅れ判定ステップの一例に相当)において、納期遅れ判定部172は、要求割当て情報400(図4)を参照して、ステップS1215で仮に一旦確定された処理計画が納期遅れであるか否かを判定する。納期遅れであれば(ステップS1220でYES)、処理はステップS1230に進む。一方、納期遅れでなければ(ステップS1220でNO)、処理はステップS1225に進む。
【0052】
要求ID「ID1,ID4,ID7」の処理終了時刻は、図5に示されるように「10」であり、納期は「20」であるので、納期遅れでない(ステップS1220でNO)と判定される。ステップS1225において、割当て制御部171は、全ての要求IDを溶解炉E1,E2に割り当てたか否か、つまり造塊工程PR1の工程スケジュールの作成が完了したか否かを判定する。工程スケジュールの作成が完了していれば(ステップS1225でYES)、処理はステップS1245に進む。一方、工程スケジュールの作成が完了していなければ(ステップS1225でNO)、処理はステップS1200に戻る。
【0053】
ここでは、要求ID「ID1,ID4,ID7」が溶解炉E1に割り当てられただけであるので、工程スケジュールの作成が完了していないと判定されて(ステップS1225でNO)、処理はステップS1200に戻る。図5に示されるように、1回目のステップS1210~ステップS1225でNOのループによって、溶解炉E1に要求ID「ID1,ID4,ID7」が割り当てられ、この処理計画が仮に一旦確定されてメモリ150に保存される。
【0054】
2回目のステップS1200では、溶解炉E2が対象設備として選択される。続くステップS1205では、要求ID「ID2」が、溶解炉E2に割り当てられる。そして、造塊工程情報200(図2)では、溶解炉E2の処理可能本数が4本であるので、ステップS1205及びステップS1210でYESのループにおいて、同一品種B、同一サイズαの要求ID「ID2,ID5,ID8,ID11」が、溶解炉E2に割り当てられた後で、対象設備に余裕がないと判定されて(ステップS1210でNO)、処理はステップS1215に進む。
【0055】
そして、造塊工程情報200(図2)が参照されて、要求ID「ID2,ID5,ID8,ID11」の品種B、サイズαの処理時間「12」が加算される(ステップS1215)。その結果、要求ID「ID2,ID5,ID8,ID11」の処理終了時刻は「12」になる。要求割当て情報400(図4)が参照されて、要求ID「ID2,ID5,ID8,ID11」の処理終了時刻「12」は、要求ID「ID2,ID5,ID8」の納期「20」及び要求ID「ID11」の納期「40」を満たしているので、納期遅れでないと判定されて(ステップS1220でNO)、更に、ステップS1225でNOと判定されて、ステップS1200に戻る。図5に示されるように、2回目のステップS1210~ステップS1225でNOのループによって、溶解炉E2に要求ID「ID2,ID5,ID8,ID11」が割り当てられて、この処理計画が仮に一旦確定されてメモリ150に保存される。
【0056】
3回目のステップS1200では、時刻「10」の時点で、溶解炉E1が先に空き設備になるので、溶解炉E1が対象設備に選択される。上述した手順で、図6に示されるように、溶解炉E1に要求ID「ID3,ID6,ID9」が割り当てられ、要求ID「ID3,ID6,ID9」の処理時間「10」が加算されて、要求ID「ID3,ID6,ID9」の処理終了時刻は「20」になる。要求割当て情報400(図4)が参照されて、要求ID「ID3,ID6,ID9」の処理終了時刻「20」は、要求ID「ID3,ID6,ID9」の納期「20」を満たしているので、この処理計画が仮に一旦確定されてメモリ150に保存される。
【0057】
4回目のステップS1200では、時刻「12」の時点で溶解炉E2が先に空き設備になるので、溶解炉E2が対象設備に選択される。上述した手順で、図6に示されるように、溶解炉E2に要求ID「ID12,ID15,ID18,ID21」が割り当てられ、要求ID「ID12,ID15,ID18,ID21」の処理時間「12」が加算されて、要求ID「ID12,ID15,ID18,ID21」の処理終了時刻は「24」になる。要求割当て情報400(図4)が参照されて、要求ID「ID12,ID15,ID18,ID21」の処理終了時刻「24」は、要求ID「ID12,ID15,ID18」の納期「40」及び要求ID「ID21」の納期「50」を満たしているので、この処理計画が仮に一旦確定されてメモリ150に保存される。
【0058】
5回目のステップS1200では、時刻「20」の時点で溶解炉E1が先に空き設備になるので、溶解炉E1が対象設備に選択される。上述した手順で、図6に示されるように、溶解炉E1に要求ID「ID10,ID13,ID16」が割り当てられ、要求ID「ID10,ID13,ID16」の処理時間「10」が加算されて、要求ID「ID10,ID13,ID16」の処理終了時刻が「30」になる。ステップS1220において、納期遅れ判定部172は、要求割当て情報400(図4)を参照すると、要求ID「ID10,ID13,ID16」の処理終了時刻「30」が、要求ID「ID10」の納期「20」を満たしていないので、納期遅れと判定する。
【0059】
したがって、納期遅れであるので(ステップS1220でYES)、処理はステップS1230に進む。ステップS1230において、初期在庫決定部173は、割り当てられた要求ID及び割当て済み要求IDのうちで在庫条件を満たす要求IDを判定する。ステップS1235において、初期在庫決定部173は、在庫条件を満たすと判定した要求IDのスラブ(半製品)を初期在庫に含めることを決定する。初期在庫に含められた要求IDのスラブの製造は、外注先に予め依頼される。造塊工程PR1の処理開始時には、外注先で製造された初期在庫に含められた要求IDのスラブは、スラブ置場15に既に準備されている。本実施形態において、ステップS1230,S1235は、初期在庫決定ステップの一例に相当する。
【0060】
ステップS1230において、「割り当てられた要求ID」とは、ステップS1205で割り当てられ、ステップS1220で納期遅れと判定された要求ID「ID10,ID13,ID16」である。また、「割当て済み要求ID」とは、要求ID「ID10,ID13,ID16」より時間的に早く、同じ溶解炉E1に既に割り当てられている、要求ID「ID1,ID4,ID7」及び要求ID「ID3,ID6,ID9」である。
【0061】
初期在庫決定部173は、まず、同じ溶解炉E1に割当て済みの要求IDのうち最も早く割り当てられている最早要求ID「ID1,ID4,ID7」を、在庫条件を満たす要求IDと判定する。初期在庫決定部173は、次に、半製品情報900を参照して、要求ID「ID1,ID4,ID7」が、他の在庫条件を満たすか否かを判定する。
【0062】
半製品情報900は、図9に示されるように、要求ID欄901、外注先欄902、処理時間欄903を含む。要求ID欄901には、熱延工程PR2から要求されている要求IDが記録されている。外注先欄902には、外注先を特定する情報が記録されている。処理時間欄903には、外注先で要求IDのスラブを処理するのに要する時間が記録されている。図9の例では、同じ要求ID「ID1」でも、外注先Pでは処理時間「10」、外注先Qでは処理時間「12」になっている。
【0063】
また、半製品情報900の要求ID「ID2」、「ID3」に対応する外注先欄902には、「無し」と記録されている。これは、要求ID「ID2」、「ID3」のスラブを外注先ではなくて造塊工程PR1で製造することが有利であることを意味する。「造塊工程PR1で製造することが有利」とは、例えば、要求ID「ID2」、「ID3」のスラブを造塊工程PR1以外の外注先で製造することが、精度又はコスト等の観点で不利であることを含む。ここで、「外注先」とは、造塊工程PR1以外の場所でスラブの製造を予め依頼する依頼先を意味し、自社でも他社でも構わない。
【0064】
初期在庫決定部173は、最初に在庫条件を満たす要求IDと判定した要求ID「ID1,ID4,ID7」に対応する、処理時間欄903に記録されている処理時間が、造塊工程PR1の処理開始時刻に間に合わないときは、在庫条件を満たさない要求IDと判定する。また、初期在庫決定部173は、最初に在庫条件を満たす要求IDと判定した要求ID「ID1,ID4,ID7」に対応する、外注先欄902のいずれかに「無し」が記録されているときは、在庫条件を満たさない要求IDと判定する。
【0065】
この実施形態では、初期在庫決定部173は、半製品情報900を参照した結果、要求ID「ID1,ID4,ID7」が在庫条件を満たすと判定して、要求ID「ID1,ID4,ID7」を初期在庫に決定する。
【0066】
ステップS1240(対象調整ステップの一例に相当)において、対象調整部174は、初期在庫に決定された要求ID「ID1,ID4,ID7」を処理計画から削除し、処理時間が空けば処理計画を前詰めする。その結果、図7に示されるように、要求ID「ID1,ID4,ID7」が削除され、要求ID「ID3,ID6,ID9」と、要求ID「ID10,ID13,ID16」とが、前詰めされる。
【0067】
その後、処理はステップS1220に戻って、納期遅れ判定部172は、割り当てられた要求IDが納期遅れか否かを判定する。すなわち、大幅な納期遅れの場合には、一度前詰めしただけでは、納期遅れが解消されていない可能性がある。そこで、納期遅れ判定部172は、納期遅れが解消されているかどうかを確認する。図7の例では、要求ID「ID10,ID13,ID16」の処理終了時刻が「20」となって、要求ID「ID10」の納期「20」が満たされているので、納期遅れでないと判定されて(ステップS1220でNO)、処理はステップS1225に進む。ここでは、工程スケジュールの作成が完了していないので(ステップS1225でNO)、処理はステップS1200に戻って、以上のステップが繰り返される。なお、以降のステップS1200では、要求ID「ID1,ID4,ID7」は、割当て対象から除去されている。
【0068】
そして、図8に示されるように、最後に割り当てられた要求ID「ID93,ID96,ID99」が納期「160」を満たして、納期遅れでないと納期遅れ判定部172によって判定されると(ステップS1220でNO)、全ての要求IDが溶解炉E1,E2に割り当てられたので、ステップS1225において、割当て制御部171は、図8に示される造塊工程PR1の工程スケジュール作成が完了したと判定し(ステップS1225でYES)、処理はステップS1245に進む。
【0069】
ステップS1245において、在庫量処理部163は、造塊工程PR1における工程スケジュールに基づき、在庫情報1000(図10)を作成する。在庫情報1000は、図10に示されるように、要求ID欄1001、完成時刻欄1002、使用時刻欄1003を含む。要求ID欄1001には、造塊工程PR1における工程スケジュールに含まれる要求IDが記録されている。完成時刻欄1002には、要求IDにより特定されるスラブが完成した完成時刻、つまり造塊工程PR1における処理が終了した処理終了時刻が記録されている。要求ID「ID1,ID4,ID7」の完成時刻「0」は、初期在庫として保有されていることを表す。
【0070】
使用時刻欄1003には、要求IDにより特定されるスラブが使用される使用時刻、つまり熱延工程PR2において処理が開始される処理開始時刻が記録されている。なお、使用時刻欄1003に記録されている使用時刻は、熱延工程情報300(図3)、要求割当て情報400(図4)に記録されている納期に等しい。
【0071】
在庫情報1000は、要求ID欄1001に記録されている要求IDにより特定されるスラブが、完成時刻欄1002に記録されている完成時刻から、使用時刻欄1003に記録されている使用時刻まで、スラブ置場15に保有されていることを表す。したがって、在庫情報1000から、在庫量の時間的な推移を求めることができる。ステップS1250(在庫量処理ステップの一例に相当)において、在庫量処理部163は、在庫情報1000に基づき、図11に示されるような、スラブ置場15における在庫量の時間的な推移を求めて、ディスプレイ110に表示する。その後、図12の動作は終了する。
【0072】
以上説明されたように、本実施形態では、納期遅れと判定されると、納期遅れを解消するために造塊工程PR1の処理開始時刻に初期在庫として保有するスラブが決定される。初期在庫として保有すると決定されたスラブは、造塊工程PR1の溶解炉E1,E2に割り当てる割当て対象から除去される割当て対象の調整が行われる。割当て対象からスラブが除去されると、除去されたスラブ以外のスラブの処理が溶解炉E1,E2に割り当てられる。一方、納期遅れと判定されなければ、溶解炉E1,E2に割り当てたスラブの処理計画が仮に確定されて、要求割当て情報に含まれる他のスラブの処理が溶解炉E1,E2に割り当てられる。このような、スラブの溶解炉E1,E2への割当て、納期遅れの判定、初期在庫の決定、割当て対象の調整が繰り返されて、工程スケジュールが作成される。
【0073】
したがって、本実施形態によれば、熱延工程PR2におけるスラブの納期を満たす工程スケジュールを作成することができる。納期を満たす工程スケジュールが作成されると、造塊工程PR1におけるスラブの処理終了時刻が判明する。このため、スラブは、造塊工程PR1におけるスラブの処理終了時刻から熱延工程PR2におけるスラブの納期まで、スラブ置場15に在庫として保有されることになる。したがって、スラブの在庫量の時間的な推移を、より正確に求めることができ、より正確な在庫保有計画を作成することができる。
【0074】
また、本実施形態では、要求ID「ID10」が納期遅れと判定されると、初期在庫に含める要求IDが決定されている。したがって、ユーザは、造塊工程PR1の処理が開始されるまでに、外注先に製造を依頼するなど、初期在庫を確保するための対策を講じることができる。
【0075】
また、本実施形態では、要求ID「ID10」が納期遅れと判定されると、要求ID「ID10」を処理する溶解炉E1での最も早く処理が計画されている要求ID「ID1,ID4,ID7」が初期在庫に含められている。このため、在庫として保有されてスラブ置場15を占有する期間を最短にすることができる。
【0076】
また、本実施形態では、図11に示されるような、スラブ置場15における在庫量の時間的な推移が求められて、ディスプレイ110に表示される。このため、ユーザは、在庫量がスラブ置場15の許容量を超えるか否かを容易に判断することができる。したがって、在庫量がスラブ置場15の許容量を超えている場合には、造塊工程PR1の処理が開始される前に、外部倉庫35を確保するなどの対策を講じることができる。
【0077】
また、本実施形態では、ステップS1200(図12)において、最も早く処理開始できる溶解炉が対象設備として選択され、これが繰り返されている。このため、各溶解炉E1,E2の負荷が平準化された工程スケジュールを作成することが可能となる。
【0078】
また、本実施形態では、造塊工程情報200(図2)の処理可能本数欄204に基づき、ステップS1210(図12)において対象設備に余裕があるか否かが判定され、処理可能本数欄204の本数まで、要求IDが割り当てられている。このため、造塊工程PR1での製造量を最大にすることが可能となる。
【0079】
(その他)
(1)上記実施形態では、造塊工程PR1においてスラブが入れ替えられる際に発生する段取り替え時間がゼロとされているが、これに限られず、段取り替え時間を考慮して工程スケジュールが作成されてもよい。例えば、図6において、要求ID「ID1,ID4,ID7」の処理終了後、要求ID「ID3,ID6,ID9」の処理開始までに段取り替え時間が発生する場合には、この段取り替え時間を要求ID「ID3,ID6,ID9」の処理時間に含めてもよい。すなわち、ステップS1215(図12)において、段取り替え時間を含む処理時間が加算されてもよい。
【0080】
(2)上記実施形態では、図6図7に示されるように、要求ID「ID10」が納期遅れの場合に、要求ID「ID10」を処理する溶解炉E1で最も早く処理が計画されている最早要求ID「ID1,ID4,ID7」が初期在庫に含められているが、これに限られない。例えば、納期遅れと判定された要求ID「ID10」を含む「ID10,ID13,ID16」が初期在庫に含められてもよい。この場合でも、在庫として保管される期間は長くなるが、納期遅れを解消することはできる。
【0081】
(3)上記実施形態では、CPU160(具体的には初期在庫決定部173)が、初期在庫に含める要求IDを決定しているが、これに限られない。例えば、ユーザが、入力部120を用いて、初期在庫に含める要求IDを決定してもよい。
【0082】
(4)図1において、例えば、記憶装置130と制御回路140とが、イントラネット等のネットワークを介して接続されている場合には、制御回路140は、上記周辺回路として、記憶装置130と通信するための通信回路を備えればよい。
【0083】
(5)上記実施形態では、在庫保有計画作成装置100は、素材を製造する造塊工程PR1及び熱延工程PR2に適用されているが、これに限られない。在庫保有計画作成装置100は、例えば、機械などの製品を製造する複数の工程のうち、半製品を処理する第1工程と、第1工程に続いて第1工程で処理された半製品を処理する第2工程と、に適用されてもよい。
【符号の説明】
【0084】
100 在庫保有計画作成装置
110 ディスプレイ
120 入力部
130 記憶装置
131 造塊工程情報DB
132 熱延工程情報DB
133 半製品情報DB
162 工程スケジュール作成部
163 在庫量処理部
171 割当て制御部
172 納期遅れ判定部
173 初期在庫決定部
174 対象調整部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13