(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-14
(45)【発行日】2022-01-25
(54)【発明の名称】分級機能付き粉砕装置及び被処理物の粉砕方法
(51)【国際特許分類】
B02C 23/22 20060101AFI20220118BHJP
B02C 23/26 20060101ALI20220118BHJP
B02C 23/32 20060101ALI20220118BHJP
B02C 23/18 20060101ALI20220118BHJP
【FI】
B02C23/22
B02C23/26
B02C23/32
B02C23/18
(21)【出願番号】P 2018224112
(22)【出願日】2018-11-29
【審査請求日】2020-09-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000142595
【氏名又は名称】株式会社栗本鐵工所
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】赤瀬 幸助
(72)【発明者】
【氏名】山口 和也
【審査官】瀧 恭子
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-196584(JP,A)
【文献】特開平01-215355(JP,A)
【文献】特開2002-028525(JP,A)
【文献】特開昭62-259810(JP,A)
【文献】特開2016-159267(JP,A)
【文献】特開昭63-171651(JP,A)
【文献】国際公開第2013/189889(WO,A1)
【文献】特開平09-103700(JP,A)
【文献】実開昭63-001639(JP,U)
【文献】特開2001-246281(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B02C 1/00-25/00
B03J 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部ケーシングと、
上記外部ケーシング内の仕切られた空間を形成する内部ケーシングと、
上記内部ケーシングの下方に設けられて被処理物を粉砕する粉砕部を備えた粉砕室と、
上記粉砕室に設けられ、上記粉砕部の少なくとも一部が設けられるロータの円盤と、
上記粉砕室に気流を導入する気流導入口と、
上記内部ケーシングと上記外部ケーシングとの間に形成され、上記粉砕室で粉砕されて吹き上げられた被処理物を通過させる吹き上げ通路と、
上記内部ケーシングの上部に設けられ、上記吹き上げ通路から気流搬送された被処理物を分級する分級部と、
上記被処理物を投入する投入口とを備え、
粉砕が十分でない上記被処理物を上記分級部から上記内部ケーシングを通じて上記粉砕部へ還流するように構成されており、
上記投入口よりも下方の上記内部ケーシングの内部に冷却用の水を単独で添加する給水配管が接続され、
上記給水配管は、上記外部ケーシング及び上記吹き上げ通路を通過して上記内部ケーシングの内面から所定距離離れた位置に開口し、上記円盤の上面に向かって該開口から上記冷却用の水が流れ落ちるように構成されている
ことを特徴とする分級機能付き粉砕装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉砕が十分でない被処理物を分級部から内部ケーシングを通じて粉砕部へ還流する、分級機能付き粉砕装置及び被処理物の粉砕方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、樹脂や鉱物、食品原料を粉砕する、様々な粉砕装置が使用されている。この種の粉砕装置では、粉砕後の粒度を細かくするために分級機能を備えたものがある。例えば、特許文献1のように、外部ケーシングと、外部ケーシング内の仕切られた空間を形成する内部ケーシングと、この内部ケーシングに被処理物を投入する投入口と、内部ケーシングの下方に設けられて被処理物を粉砕する粉砕部を備えた粉砕室と、この粉砕室に気流を導入する気流導入口と、内部ケーシングと外部ケーシングとの間に形成され、粉砕室で粉砕されて吹き上げられた被処理物を通過させる吹き上げ通路と、内部ケーシングの上部に設けられ、吹き上げ通路から気流搬送された被処理物を分級する分級部とを備え、粉砕が十分でない被処理物を分級部から内部ケーシングを通じて粉砕部へ還流する分級機能付き粉砕装置が知られている。
【0003】
また、特許文献2のような、上方に原料供給部が連結する粉砕室の側壁に室内中心へ向けて水平面と等角度で均等に装着した複数の粉砕ノズルを有し、上部に分級機を取り付けた気流式粉砕機が知られている。この気流式粉砕機では、複数の粉砕ノズルの先端の延長線が交叉する衝突点の真下で垂直上方へ開口する薬液の噴霧口と、この噴霧口へ連通する給気管を一体化した薬液供給部を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-159267号公報
【文献】実用新案登録第2501185号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、粉砕装置に設けられた分級機は、分級ロータを回転させることにより、粒子に旋回運動を与えて遠心力を形成し、粒子に働く遠心力と気流による向心力のバランスによって、粗粒子と微粒子を分級する。この場合、分級ロータは、高速回転ほど微粒を得ることができる。また、流量を低減するほど微粒を得ることができる。
【0006】
更なる微粒化が必要な場合、分級ロータの高速回転化が求められるが、機械設計上問題点も多く、コスト増につながる。
【0007】
一方、風量低減は、付帯設備(送風機、集塵機、ダクト等)のコンパクト化となり、コスト低減のメリットもあるが、風量を低減することにより、装置内部の温度が上昇するというデメリットもある。すなわち、発生した粉砕熱は粉砕装置に導入された空気により、外部に排気されるが、導入空気が少ないほど、装置内部の温度が上昇する。
【0008】
この温度が上昇する問題点として、耐熱性の低い原料などに温度制限があったり、排気温度が高温になるため耐熱性を考慮した装置が必要となったりすることが挙げられる。
【0009】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、簡単な構成で必要な微粒化と温度上昇抑制とを両立させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、この発明では、内部ケーシングの内部に冷却用の水を供給するようにした。
【0011】
具体的には、第1の発明では、分級機能付き粉砕装置は、
外部ケーシングと、
上記外部ケーシング内の仕切られた空間を形成する内部ケーシングと、
上記内部ケーシングの下方に設けられて被処理物を粉砕する粉砕部を備えた粉砕室と、
上記粉砕室に気流を導入する気流導入口と、
上記内部ケーシングと上記外部ケーシングとの間に形成され、上記粉砕室で粉砕されて吹き上げられた被処理物を通過させる吹き上げ通路と、
上記内部ケーシングの上部に設けられ、上記吹き上げ通路から気流搬送された被処理物を分級する分級部と、
上記被処理物を投入する投入口とを備え、
粉砕が十分でない上記被処理物を上記分級部から上記内部ケーシングを通じて上記粉砕部へ還流するように構成されており、
上記内部ケーシングの内部に冷却用の水を添加する給水配管が接続されている。
【0012】
ここで、水の蒸発潜熱は、非常に大きく、1gの水が蒸発するのに必要な熱量は、例えば20℃のとき2454(J/g)である。このため、上記の構成によると、内部ケーシング内に給水配管を通じて供給された水により効率的に装置内部の温度上昇が抑制される。一方、水を吹き上げ通路内に供給すると、水滴がすぐに舞い上がってしまって十分な冷却効果が得られないが、内部ケーシングの内部に供給することで、粉砕室に届きやすくなり、また、添加された水は、粉砕室における強い撹拌力により、全て蒸発するので、得られた被処理物の水分が上昇することはない。そして、装置内部の温度上昇が抑えられるので、装置の耐熱性を必要以上に向上させる必要はない。
【0013】
第2の発明では、第1の発明において、
上記給水配管は、上記外部ケーシングを通過して上記内部ケーシングの内面から所定距離離れた位置に開口している。
【0014】
上記の構成によると、内部ケーシングの内面に水滴が付着することなく、粉砕室内に落下していくので、水による冷却効果が十分に発揮される。
【0015】
第3の発明では、上記第1の発明と同様の分級機能付き粉砕装置を用意し、
上記投入口から上記被処理物を投入し、上記粉砕室で粉砕した被処理物を上記吹き上げ通路において吹き上げて上記分級部へ上昇させると共に、
上記内部ケーシングの内部に冷却用の水を所定流量継続して又は所定の間隔で供給し、装置内部の温度上昇を調整する。
【0016】
上記の構成によると、冷却用の水を所定流量だけ継続して又は所定の間隔で供給することにより、容易に装置内部の温度上昇を調整することができる。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように、本発明によれば、内部ケーシングの内部に冷却用の水を添加するようにしたことにより、簡単な構成で必要な微粒化と温度上昇抑制とを両立させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図2】本発明の実施形態に係る分級機能付き粉砕装置を含む粉砕システムを示す概略図である。
【
図4】実施例及び比較例における排気空気温度を比較した表である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0020】
-粉砕システムの構成-
図2は本発明の実施形態の分級機能付き粉砕装置1を含む粉砕システム10の概要を示し、この粉砕システム10は、粉砕装置1に原料を供給する供給機2を備えている。供給機2から供給される被処理物としての原料は、供給用ロータリバルブ3を介し、粉砕装置1の投入口11aに供給されるように構成されている。一方、粉砕装置1で粉砕された被処理物は、排気ファン6による気流と共にバグフィルタ4に搬送される。そして、バグフィルタ4内で気流と粉砕製品が分離され、バグフィルタ用ロータリバルブ5を運転して粉砕製品を取り出すことができるようになっている。排気ファン6は、バグフィルタ4の下流側に接続されており、粉砕システム10内の空気が大気中に排出されるように構成されている。
【0021】
図1及び
図3に示すように、粉砕装置1は、円筒状の外部ケーシング1aを有し、その内部に、それよりも小径の円筒状の内部ケーシング1bが同軸上に固定されている。内部ケーシング1bの下方に粉砕室11が、同じく同軸に結合されている。例えば粉砕室11の接線方向に、気流導入口11bが中心軸に対称に2箇所形成されている。また、気流導入口11bとロータ12との間には、中心に孔の空いた隔壁(図示せず)が形成されている。なお、気流導入口11bは1箇所でもよく、必ずしも接線方向に形成する必要もない。
【0022】
粉砕室11の下部には、ロータ12が回転するようになっている。ロータ12は、粉砕室11の下方に設けた駆動部7(
図2にのみ示す)で駆動されるようになっている。具体的には、粉砕用電動モータ13の下端に設けた駆動側プーリ(図示せず)に掛けられたVベルトに駆動された従動側プーリによって回転軸14が回転され、この回転軸14に回転一体に連結されたロータ12が回転されるように構成されている。そして、粉砕室11の内周面には、粉砕部としての円筒状(リング状)の粉砕用ライナ15が固定されている。一方、ロータ12の外周には、先端が粉砕用ライナ15に近接するように、同じく粉砕部としての複数の粉砕刃16が取り付けられている。
【0023】
また、内部ケーシング1bの上部には、例えば、分級用電動モータ17aで駆動され、粉砕された被処理物を分級する分級部17が配置されている。
【0024】
そして、内部ケーシング1bと外部ケーシング1aとの間には、粉砕室11で粉砕されて吹き上げられた被処理物を通過させる吹き上げ通路1cが形成されている。分級部17と粉砕室11の間において、内部ケーシング1b内に連通するように、被処理物を投入する投入口11aが設けられている。投入口11aは、外部ケーシング1aに対して適度な投入角を有するように挿入された円筒体の内部に形成されている。
【0025】
一方、分級部17の下面からは被処理物を排出する排出管11cが、内部ケーシング1bを貫通して外部ケーシング1aの外側まで延びている。
【0026】
気流導入口11bからの気流は、粉砕室11の底面と隔壁との間を通って回転軸14に向かい、隔壁中央の孔を通過した後、ロータ12の円盤12aと隔壁との間を通って粉砕室11へ向かい、被処理物を舞い上げながら外部ケーシング1aとその内部を区切る内部ケーシング1bとの間に形成した吹き上げ通路1cを通るようになっている。
【0027】
そして、本実施形態では、内部ケーシング1bの内部に冷却用の水を添加する給水配管20が接続されている。給水配管20は、外部ケーシング1aを通過して内部ケーシング1bの内面から所定距離(例えば給水配管20の先端と内部ケーシング1bの内面との距離が10mm程度)離れた位置に開口している。給水配管20から、内部ケーシング1bの内部に冷却用の水を例えば、5~10kg/h継続して供給する。なお、水の蒸発潜熱は、非常に大きく、1gの水が蒸発するのに必要な熱量は、例えば20℃のとき2454(J/g)である。給水配管20の内部ケーシング1bの内面からの飛び出し量や、水の流量は、特に限定されない。給水配管への水の供給方法は、水道水、工業用水など特に限定されない。
【0028】
-粉砕システムの作動-
このように構成した粉砕システム10では、
図2に示すように、供給機2に投入された被処理物は、供給機2より粉砕室11上部の投入口11aへ投入される。この投入工程に合わせ、給水配管20から、内部ケーシング1bの内部に冷却用の水を例えば、5~10kg/h継続して供給する。本実施形態によると、給水配管20の先端が内部ケーシング1bの内面から10mm程度離れているので、内部ケーシング1bの内面に水滴が付着することなく、粉砕室11内に落下していく。このため、水による冷却効果が十分に発揮される。
【0029】
次いで、投入口11aから内部ケーシング1bに投入された被処理物は、粉砕室11に落下し、粉砕刃16及び粉砕用ライナ15によって細かく粉砕された後、粉砕室11の底部から導入された気流によって舞い上げられる。
【0030】
次いで、吹き上げられた被処理物は、分級部17に到る。この分級部17では、所定粒度の被処理物は分級部17を通過し、内部ケーシング1bの排出管11cから排出される。
【0031】
次いで、排出管11cから排出された被処理物は、排気ファン6による気流と共にバグフィルタ4に搬送される。そして、バグフィルタ4内で気流と粉砕製品が分離され、バグフィルタ用ロータリバルブ5を運転して粉砕製品が取り出される。
【0032】
一方、粉砕室11に落下してきた被処理物は、粉砕刃16及び粉砕用ライナ15によって細かく粉砕された後、粉砕室11の底部から導入された気流によって舞い上げられ、吹き上げ通路1cを通って再び分級部17へと導入される。
【0033】
このように、本実施形態によると、内部ケーシング1b内に給水配管20を通じて供給された水により効率的に装置内部の温度上昇が抑制される。例えば、水を吹き上げ通路1c内に供給すると、水滴がすぐに舞い上がってしまって十分な冷却効果が得られないが、本実施形態のように内部ケーシング1bの内部に供給することで、粉砕室11に届きやすくなる。また、添加された水は、粉砕室11における強い撹拌力により、全て蒸発するので、得られた被処理物の水分が上昇することはない。このため、装置内部の温度上昇が抑えられるので、装置の耐熱性を必要以上に向上させる必要はない。
【0034】
(実施例)
本実施例では、上述した分級機能付き粉砕装置1において、直径150mmの分級部17の回転数を7000rpm、風量10Nm3/minの条件で製品粒度6μmが得られるものとし、更なる微粉が必要で、4.2μmへ調整する場合を想定した。
【0035】
分級部17の回転数で調整する場合、回転数を7000rpmから10000rpmに上昇させる必要があり、標準仕様(直径150mmで7000rpm)を大きく超えてしまう。
【0036】
ここで、もう1つの方法として、回転数ではなく、風量を10Nm3/minから5Nm3/minへ低減することにより、製品粒度を6μmから4.2μmへ調整することを想定した。
【0037】
図4の比較例1では、水を添加していない通常運転時を示し、風量は、10Nm
3/minとなっている。排気空気温度は、76.1℃で問題はない。
【0038】
比較例2では、風量を5Nm
3/minに低減し、水は添加していない。このため、
図4に示すように、排気温度が127.8℃に上昇している。この温度になると、耐熱性の低い被処理物であれば問題が生じ、また、粉砕装置1自体の耐熱性を考慮する必要がある。
【0039】
一方、実施例では、風量を5Nm3/minに低減した上で、水を添加した。水は、8.6kg/h継続して供給した。このように水を添加したことで、蒸気量が0.2Nm3/min検出されているが、粉砕室11における強い撹拌力により、水分は全て蒸発する。このため、得られた被処理物の水分量は上昇していなかった。そして、排気空気温度は76.1℃で比較例1と大差がなかった。
【0040】
以上説明したように、本実施形態に係る分級機能付き粉砕装置1によると、内部ケーシング1bの内部に冷却用の水を添加するようにしたことにより、簡単な構成で必要な微粒化と温度上昇抑制とを両立させることができる。
【0041】
(その他の実施形態)
本発明は、上記実施形態について、以下のような構成としてもよい。
【0042】
すなわち、上記実施形態では、分級用電動モータ17aに駆動される分級部17を設け、分級用電動モータ17aの回転数によって分級する粒度を調整するようにしたが、動力を使わないで流入する風速を調整することにより、粒度を調整するサイクロン式分級部としてもよい。
【0043】
上記実施形態では、冷却用の水を給水配管から所定流量を継続して供給するようにしたが、所定の間隔で供給するようにしてもよい。例えば、排気空気温度をセンサ等で測定しながら給水量を自動で調整するようにしてもよい。
【0044】
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物や用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【符号の説明】
【0045】
1 分級機能付き粉砕装置
1a 外部ケーシング
1b 内部ケーシング
1c 吹き上げ通路
2 供給機
3 供給用ロータリバルブ
4 バグフィルタ
5 バグフィルタ用ロータリバルブ
6 排気ファン
7 駆動部
10 粉砕システム
11 粉砕室
11a 投入口
11b 気流導入口
11c 排出管
12 ロータ
12a 円盤
13 粉砕用電動モータ
14 回転軸
15 粉砕用ライナ(粉砕部)
16 粉砕刃(粉砕部)
17 分級部
17a 分級用電動モータ
20 給水配管