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特許7009358グラファイト基板上でのナノワイヤ又はナノピラミッドの成長方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-14
(45)【発行日】2022-01-25
(54)【発明の名称】グラファイト基板上でのナノワイヤ又はナノピラミッドの成長方法
(51)【国際特許分類】
   C30B 29/40 20060101AFI20220118BHJP
   H01L 31/075 20120101ALI20220118BHJP
   H01L 31/0352 20060101ALI20220118BHJP
   H01L 31/10 20060101ALI20220118BHJP
   H01L 33/32 20100101ALI20220118BHJP
   C30B 25/18 20060101ALI20220118BHJP
   C30B 29/42 20060101ALI20220118BHJP
   C30B 29/38 20060101ALI20220118BHJP
   H01L 21/205 20060101ALI20220118BHJP
   H01L 21/203 20060101ALI20220118BHJP
【FI】
C30B29/40 502L
H01L31/06 500
H01L31/04 342B
H01L31/10 A
H01L33/32
C30B25/18
C30B29/42
C30B29/38 D
C30B29/38 C
H01L21/205
H01L21/203 M
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2018504896
(86)(22)【出願日】2016-08-01
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2018-10-11
(86)【国際出願番号】 EP2016068350
(87)【国際公開番号】W WO2017021380
(87)【国際公開日】2017-02-09
【審査請求日】2019-07-10
(31)【優先権主張番号】1513567.6
(32)【優先日】2015-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】1600162.0
(32)【優先日】2016-01-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】518013796
【氏名又は名称】クラヨナノ エーエス
(73)【特許権者】
【識別番号】512101187
【氏名又は名称】ノルウェージャン ユニバーシティ オブ サイエンス アンド テクノロジー(エヌティーエヌユー)
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】特許業務法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】キム、ドン-チョル
(72)【発明者】
【氏名】ホーイアース、イダ マリー
(72)【発明者】
【氏名】ムンシ、マジィド
(72)【発明者】
【氏名】フィムランド、ビョルン オヴェ
(72)【発明者】
【氏名】ヴェマン、ヘルゲ
(72)【発明者】
【氏名】レン、ディンディン
(72)【発明者】
【氏名】デーラージ、ダサ
【審査官】今井 淳一
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-506222(JP,A)
【文献】特表2015-503852(JP,A)
【文献】特表2005-532181(JP,A)
【文献】特表2009-542560(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0200540(US,A1)
【文献】特開2007-051327(JP,A)
【文献】特開2013-129548(JP,A)
【文献】特表2013-532621(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C30B 29/40
H01L 31/075
H01L 31/0352
H01L 31/10
H01L 33/32
C30B 25/18
C30B 29/42
C30B 29/38
H01L 21/205
H01L 21/203
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(I)グラファイト基板を準備し、高温で前記グラファイト基板上にAlGaN、InGaN、AlN又はAlGa(In)Nを堆積し、AlGaN、InGaN、AlN又はAlGa(In)Nのナノスケール核生成アイランドを形成することと、
(II)好ましくはMOVPE又はMBEにより、前記グラファイト基板上の前記核生成アイランド上に、複数の半導体III-V族ナノワイヤ又はナノピラミッド、好ましくはIII族窒化物ナノワイヤ又はナノピラミッドを成長させることと、
を含む、ナノワイヤ又はナノピラミッドの成長方法。
【請求項2】
(I)グラファイト基板を準備し、前記グラファイト基板を高温で窒素ガスのプラズマにより処理し、前記グラファイト基板に窒素を取り込むこと又は/及び原子ステップ/レッジを形成することと、
(II)好ましくはMOVPE又はMBEにより、処理したグラファイト表面上に複数の半導体III-V族ナノワイヤ又はナノピラミッドを成長させることと、
を含む、ナノワイヤ又はナノピラミッドの成長方法。
【請求項3】
(I)グラファイト基板を準備し、前記グラファイト基板上にAlを堆積し、ナノスケールAlアイランドを形成することと、
(II)前記ナノスケールAlアイランドを、少なくとも1種のV族種のフラックスに曝露することにより、Al-V族化合物のナノスケールアイランドを形成することと、
(III)好ましくはMOVPE又はMBEにより、前記グラファイト基板上の前記ナノスケールアイランド上に、複数の半導体III-V族ナノワイヤ又はナノピラミッド、好ましくはGaAs及び/又はGaAsSbを含むナノワイヤ又はナノピラミッドを成長させることと、
を含む、ナノワイヤ又はナノピラミッドの成長方法。
【請求項4】
III-V族ナノワイヤ又はナノピラミッドは、少なくとも1つのV族元素を含み、
前記V族元素は、Nでなく、好ましくは、Sb若しくはAs又はそれらの混合物である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
III-V族ナノワイヤ又はナノピラミッドは、少なくとも1つのV族元素を含み、前記V族元素がNである請求項3に記載の方法。
【請求項6】
(I)グラファイト基板を準備し、任意に高温で、酸素プラズマ又はオゾンにより、前記グラファイト基板を処理し、前記グラファイト基板表面上に原子ステップ/レッジを形成する、及び/又は、その表面上にエポキシド基(C-O)を有する酸化グラフェンを形成することと、
(II)水素の存在下で工程(I)の処理した基板をアニールし、前記エポキシド基の少なくとも一部をC-H結合に変換することと、
(III)好ましくはMOVPE又はMBEにより、工程(II)のアニールされた表面上に、複数の半導体III-V族ナノワイヤ又はナノピラミッドを成長させることと、
を含む、ナノワイヤ又はナノピラミッドの成長方法。
【請求項7】
(I)グラファイト基板を準備し、前記グラファイト基板上にAl層を堆積することと、
(II)前記Al層の少なくともトップ部を酸化し、酸化Al層を形成することと、
(III)前記酸化Al層上にアモルファスSi層を堆積することと、
(IV)前記Al層と前記アモルファスSi層との交換と、前記アモルファスSiの金属誘起結晶化(MIC)とを生じさせるために加熱し、結晶化Si層を形成することと、
(V)前記Al層及び任意のSi酸化物層またはAl酸化物層を、除去することと、
(VI)好ましくはMOVPE又はMBEにより、その後の結晶化Si層上に複数の半導体III-V族ナノワイヤ又はナノピラミッドを成長させることと、
を含む、ナノワイヤ又はナノピラミッドの成長方法。
【請求項8】
前記ナノワイヤ又はナノピラミッドが、基板、Si層、又は核生成アイランドからエピタキシャル成長する、請求項1~7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記グラファイト基板の厚さが、最高20nmである、請求項1~8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記ナノワイヤ又はナノピラミッドがドープされている、請求項1~9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記ナノワイヤ又はナノピラミッドが、コア-シェルナノワイヤ又はナノピラミッドである、請求項1~10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
グラファイトトップコンタクト層が、前記ナノワイヤ又はナノピラミッド上に存在する、請求項1~11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記ナノワイヤ又はナノピラミッドを、触媒の存在下又は不在下で成長させる、請求項1~12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記ナノワイヤ又はナノピラミッドが、GaN、AlGaN、AlN又はInGaNである、請求項1~13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記ナノワイヤが、[111](立方晶構造の場合)方向又は[0001](六方晶構造の場合)方向に成長する、請求項1~14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
前記ナノワイヤ又はナノピラミッドが、トンネル接合部を含む、請求項1~15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
前記ナノワイヤ又はナノピラミッドが、(Al)GaN/Al(Ga)N超格子を含む、請求項1~16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
前記ナノワイヤ又はナノピラミッドが、前記ナノワイヤ又はナノピラミッドにおける方向に沿ってAlの濃度が増加又は減少するAlGaNを含む、請求項1~17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
前記ナノワイヤ又はナノピラミッドは、従って軸方向に成長し、第1のセクション及び第2のセクションから形成され、これら2つのセクションに異なるドープをすることによりpn接合又はpin接合を生成する、請求項1~18のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、好ましくは有機金属気相エピタキシー法(MOVPE)又は分子線エピタキシー(MBE)を用いてボトムアップ法により成長させたナノワイヤ又はナノピラミッドアレイのための、透明で導電性且つフレキシブルな基板としての薄いグラファイト層の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ナノテクノロジーが重要な工学分野となるにつれ、半導体ナノワイヤへの関心が高まっている。ナノワイヤは、著者によっては、ナノウィスカー、ナノロッド、ナノピラー、ナノコラム等ともよばれ、センサー、太陽電池からLEDに至るまで様々な電気デバイス及び光電気デバイスにおいて重要な用途を見出している。
【0003】
本願において、ナノワイヤという用語は、本質的に一次元形態の構造体、すなわちその幅又は直径がナノメートル寸法であり且つその長さが通常数百nm~数μmの範囲内のものと解釈されるべきである。通常、ナノワイヤは、500nm以下、例えば350nm以下、特に300nm以下、例えば200nm以下の少なくとも2つの寸法を有すると考えられる。
【0004】
金属(例えば、Ni、Pt、Au)、半導体(例えば、Si、InP、GaN、GaAs、ZnO)、及び絶縁性(例えば、SiO2、TiO2)ナノワイヤを含む多くの異なるタイプのナノワイヤが存在する。本発明者らは主として、半導体ナノワイヤに関心があるが、以下詳細に説明する原理は、あらゆるナノワイヤ技術に適用可能であると考えられる。
【0005】
従来、半導体ナノワイヤは、ナノワイヤ自体と同一の基板上に成長させていた(ホモエピタキシャル成長)。したがって、例えば、GaAsナノワイヤは、GaAs基板上に成長させる。これは、もちろん、基板の結晶構造と成長するナノワイヤの結晶構造との格子整合を確実なものとする。基板及びナノワイヤの双方が、同一の結晶構造を有し得る。しかしながら、本発明は、グラファイト基板上に成長させるナノワイヤに関する。
【0006】
グラファイト基板は、グラフェン又はその誘導体の単層又は複数層からなる基板である。グラフェンは、その最も微細な形態では、ハニカム格子パターンに配列された二重電子結合(sp2結合と呼ばれる)により結合された炭素原子の1原子層厚のシートである。グラファイト基板は、薄く、軽く、フレキシブルでありながら非常に強い。
【0007】
ITO、ZnO/Ag/ZnO、TiO2/Ag/TiO2などの他の既存の透明導電体と比較して、グラフェンは非特許文献1の最近のレビュー論文に説明されているように優れた光電特性を有することが実証されている。
【0008】
グラフェン上でナノワイヤを成長させることは、新しいことではない。特許文献1では、分子線エピタキシーを用いてグラフェン基板上で半導体ナノワイヤを成長させることについて検討されている。特許文献2は、グラフェン上に成長させたナノワイヤ上にグラフェントップコンタクトを使用する特許文献1の開示事項の改良に関するものである。
【0009】
多くの用途において、ナノワイヤを、基板表面に垂直に成長させ得ることは重要なことである。半導体ナノワイヤは、通常、[111]方向(立方晶構造の場合)又は[0001]方向(六方晶構造の場合)に成長する。これは、基板の表面原子が六方対称に配置されている場合、基板表面は、(111)又は(0001)配向でなければならないことを意味する。
【0010】
しかしながら、グラフェン基板上におけるナノワイヤの核生成が困難であるという一つの問題がある。グラフェンの表面には、ダングリングボンドが存在しないため、ナノワイヤが成長することは困難である。また、グラフェンは不活性であることから、成長するナノワイヤと基板との間の反応は見込めない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】国際公開第2012/080252号
【文献】国際公開第2013/104723号
【非特許文献】
【0012】
【文献】Nature Photonics 4(2010)611
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、とりわけ、グラフェン表面の官能化、又はグラフェン表面上に新しい層若しくは小さなアイランドを含み、その上でナノワイヤの核生成を促進することに関する。その一方で、本発明者らは、グラフェンの強度、柔軟性、透明性及び導電性の点において、その顕著な特性からさらに恩恵を享受する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、驚くべきことに、様々な方法でナノワイヤ又はナノピラミッドの核生成を改善できることを見出した。
【0015】
従って、本発明は、一態様において、
(I)グラファイト基板を準備し、高温で前記グラファイト基板上にAlGaN、InGaN、AlN又はAlGa(In)Nを堆積し、前記化合物のバッファ層又はナノスケール核生成アイランドを形成することと、
(II)好ましくはMOVPE又はMBEにより、グラファイト基板上の前記バッファ層又は核生成アイランド上に、複数の半導体III-V族ナノワイヤ又はナノピラミッド、好ましくはIII族窒化物ナノワイヤ又はナノピラミッドを成長させることと
を含む、ナノワイヤ又はナノピラミッドの成長方法を提供する。
【0016】
本発明は、別の態様において、
(I)グラファイト基板を準備し、前記グラファイト基板を高温で窒素プラズマにより処理し、前記グラファイト基板に窒素を取り込むこと又は/及び原子ステップ/レッジを形成することと、
(II)好ましくはMOVPE又はMBEにより、処理したグラファイト表面上に複数の半導体III-V族ナノワイヤ又はナノピラミッドを成長させることと、
を含む、ナノワイヤ又はナノピラミッドの成長方法を提供する。
【0017】
本発明は、別の態様において、
(I)グラファイト基板を準備し、前記グラファイト基板上にAlを堆積し、Al層又はナノスケールAlアイランドを形成することと、
(II)前記Al層又はナノスケールAlアイランドを、例えば、As及び/又はSbなど、少なくとも1種のV族種のフラックスに曝露することにより、例えば、AlAs、AlAsSb又はAlSbなど、Al-V族化合物のバッファ層又はナノスケールアイランドを形成することと、
(III)好ましくはMOVPE又はMBEにより、グラファイト基板上の前記バッファ層又はナノスケールアイランド上に、複数の半導体III-V族ナノワイヤ又はナノピラミッド、好ましくはGaAs及び/又はGaAsSbを含むナノワイヤ又はナノピラミッドを成長させることと、
を含む、ナノワイヤ又はナノピラミッドの成長方法を提供する。
【0018】
理想的には、少なくとも1つのV族種は、Nではない。従って、本発明は、別の態様において、
(I)グラファイト基板を準備し、前記グラファイト基板上にAlを堆積し、Al層又はナノスケールAlアイランドを形成することと、
(II)前記Al層又はナノスケールAlアイランドを、例えば、As及び/又はSbなど、少なくとも1種のNではないV族種のフラックスに曝露することにより、例えば、AlAs、AlAsSb又はAlSbなど、Al-NではないV族化合物のバッファ層又はナノスケールアイランドを形成することと、
(III)好ましくはMOVPE又はMBEにより、複数の半導体III-V族ナノワイヤ又はナノピラミッド、好ましくは、GaAs及び/又はGaAsSbを含むナノワイヤ又はナノピラミッドを、グラファイト基板上の前記バッファ層又はナノスケールアイランド上に成長させることと、
を含むナノワイヤ又はナノピラミッドの成長方法を提供する。
【0019】
好ましい実施形態において、V族種は、As若しくはSb又はそれらの混合物などのV族元素である。V族元素は、As2及びSb2などの元素の単量体、二量体、三量体又は四量体の形態であってもよい。
【0020】
本発明は、別の態様において、
(I)グラファイト基板を準備し、任意に高温で、酸素プラズマ又はオゾン、例えばUVオゾンにより、前記グラファイト基板を処理し、グラファイト基板表面上に原子ステップ/レッジを形成する、及び/又は、その表面上にエポキシド基(C-O)を有する酸化グラフェンを形成することと、
(II)水素の存在下で工程(I)の処理した基板をアニールし、前記C-O結合の少なくとも一部をC-H結合に変換することと、
(III)好ましくはMOVPE又はMBEにより、工程(II)のアニールされた表面上に、複数の半導体III-V族ナノワイヤ又はナノピラミッドを成長させることと、
を含む、ナノワイヤ又はナノピラミッドの成長方法を提供する。
【0021】
本発明は、別の態様において、
(I)グラファイト基板を準備し、前記グラファイト基板上にAl層を堆積することと、
(II)前記Al層の少なくともトップ部を酸化し、酸化Al層を形成することと、
(III)前記酸化Al層上にアモルファスSi層を堆積することと、
(IV)Al層とアモルファスSi層との交換と、アモルファスSiの金属誘起結晶化(MIC)とを生じさせるために加熱し、結晶化Si層を形成することと、
(V)Al層及び酸化物層を、例えばエッチングにより、除去することと、
(VI)好ましくはMOVPE又はMBEにより、その後の結晶化Si層上に複数の半導体III-V族ナノワイヤ又はナノピラミッドを成長させることと、
を含む、ナノワイヤ又はナノピラミッドの成長方法を提供する。
【0022】
本発明は、別の態様において、上記に定義した方法により得られる生成物を提供する。
【0023】
本発明は、別の態様において、例えば、太陽電池、発光デバイス又は光検出器など、先に定義した生成物を含む、電子デバイスなどのデバイスを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1a図1(a)は、グラファイト基板上のバッファ層の堆積、それに続くナノワイヤ成長の概略図を示す。
図1b図1(b)は、グラファイト基板上の核生成アイランドの堆積、それに続くナノワイヤ成長の概略図を示す。
図2図2は、核生成アイランドの形成及びナノワイヤ成長スキームの代表的結果を示す。(a)MOVPEによりグラフェン上に成長したAlGaN核生成アイランドのSEM像。(b)MOVPEによるグラフェン上のAlGaN核生成アイランド上に成長したGaNナノワイヤのSEM像。挿入図:グラフェン上のAlGaN核生成アイランド無しでのGaN成長のSEM像であり、垂直GaNナノワイヤの成長は見られない。
図3図3(a)は、AlGaN核生成アイランドを用いてグラフェン上に成長させたGaNナノワイヤの断面高分解能走査透過型電子顕微鏡(STEM)画像である。図3(b)は、(a)と同じナノワイヤの高角度散乱暗視野STEM像であり、AlGaN核生成アイランドを示す。
図4図4aは、規則的なアレイに成長させた本発明の(Al)GaNナノピラミッドのSEM像である。AlGaN核生成アイランドを成長させた後、気相中Alを3%含むAlGaNを150秒間成長させた。図4bは、前記ナノピラミッドのクローズアップ画像である。
図5a図5は、(a)グラファイトフレーク上のナノワイヤの成長及びナノワイヤに対するトップ及びボトムコンタクトを示す概略図である。
図5b】MBEによる多層グラフェンフレーク上の選択成長させたGaNナノワイヤの斜視SEM像(b)。
図5c】MBEによる多層グラフェンフレーク上の選択成長させたGaNナノワイヤの分解能SEM像(c)。
図6図6は、初期グラファイト基板上の核生成を増強するために、AlAsSbナノスケールアイランドを用いてMBEにより成長させた自己触媒GaAsSbナノワイヤのSEM像を示す。挿入図:垂直GaAsSbナノワイヤの拡大図。
図7図7は、(a)UV-オゾン並びに(b)Ar雰囲気中でのUV-オゾン及びH2アニーリングによるグラファイトの処理後の原子間力顕微鏡(AFM)トポグラフィ画像を示す。
図8図8(a)は、UVオゾンによる処理後のグラファイト表面の、図6(a)の実線に沿ったAFM高さプロファイルを示す。図8(b)は、UV-オゾン処理及びその後のAr雰囲気中でのH2アニーリング後のグラファイト表面の、図6(b)の破線に沿ったAFM高さプロファイルを示し、原子ステップとレッジの形成を示す。(その後、ナノワイヤ又はナノピラミッドを、処理されたグラファイト基板上で成長させる。)
図9図9(a)は、未処理の初期グラファイト表面上で成長させたGaAsSbナノワイヤのSEM像を示す。図9(b)は、UVオゾン処理し、H2アニール処理したグラファイト表面上で成長させたGaAsSbナノワイヤのSEM像を示す。
図10図10は、熱活性化によりアモルファスシリコン(a-Si)層3がアルミニウム金属層2を介して拡散するグラフェン層1上のシリコンのアルミニウム誘起結晶化(MIC)の主要なプロセス工程を示す。
図11図11は、MICシリコンで覆われたアモルファス(SiO2)基板上にMBEによって成長させた自己触媒GaAsナノワイヤのSEM像を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
[定義]
III-V族化合物半導体とは、III族から少なくとも1つの元素とV族から少なくとも1つの元素とを含むものを意味する。各族から2つ以上の元素が含まれていてもよく、例えば、InGaAs、AlGaN(すなわち、三元化合物)、AlInGaN(すなわち、四元化合物)などであってもよい。半導体ナノワイヤ又はナノピラミッドという用語は、III-V族元素から成る半導体物質から作られるナノワイヤ又はナノピラミッドのことを指す。
【0026】
本明細書において使用するナノワイヤという用語は、ナノメートル寸法の固体のワイヤー状構造を指す。ナノワイヤは、好ましくは、ナノワイヤの大部分、例えば、その長さの少なくとも75%にわたって均一な直径を有する。ナノワイヤという用語は、ナノロッド、ナノピラー、ナノコラム又はナノウィスカーの使用を包含するものであり、それらのいくつかは、テーパー状末端構造を有する場合もある。ナノワイヤは、本質的に、その幅又は直径がナノメートル寸法であり且つその長さが通常数百nm~数μmの範囲内である一次元形態であるといえる。理想的には、ナノワイヤの直径は、500nm以下である。理想的には、ナノワイヤ直径は、50~500nmであるが、直径は、数ミクロンを超えてもよい(マイクロワイヤと呼ばれる)。
【0027】
理想的には、ナノワイヤのベース及びナノワイヤのトップの直径は、ほぼ同一(例えば、互いの20%以内)であるべきである。当然のことながら、基板は、複数のナノワイヤを担持する。これは、ナノワイヤのアレイと呼ばれることもある。
【0028】
ナノピラミッドという用語は、固体ピラミッド型構造を指す。本明細書において、ピラミッド型(pyramidal)という用語は、一般にベースの中心上の(ほぼ)単一の点に向かって側面が先細になるベースを有する構造を定義するのに使用されている。当然のことながら、単一の頂点が面取りされたように見える場合もある。ナノピラミッドは、3~8面又は4~7面など、複数の面を有していてもよい。従って、ナノピラミッドのベースは、正方形、五角形、六角形、七角形、八角形などであってもよい。ピラミッドは、面がベースから中心点に向かって先細になる(従って、三角形の面を形成する)ように形成される。ベース自体は、ピラミッド構造を形成すべく先細になり始めるまでは、断面が均一な部分を有していてもよい。従って、ベースの厚さは200nm以下、例えば、50nmであってもよい。
【0029】
ナノピラミッドのベースは、その最も広い点で直径が50及び500nmであり得る。ナノピラミッドの高さは500nm~数ミクロンであってもよい。
【0030】
当然のことながら、基板は、複数のナノワイヤ又はナノピラミッドを担持する。これは、ナノワイヤ又はナノピラミッドのアレイと呼ばれることもある。
【0031】
基板用又は場合によってはトップコンタクト用のグラファイト層は、単層又は複数層のグラフェン若しくはその誘導体から成る膜である。グラフェンという用語は、ハニカム結晶構造のsp2結合炭素原子の平面シートを指す。
【0032】
エピタキシーという用語は、「上方に(above)」を意味するギリシャ語起源のepiと、「規則正しい状態に(in ordered manner)」を意味するtaxisに由来する。ナノワイヤ又はナノピラミッドの原子配列は、基板の結晶構造に基づく。これは当技術分野でよく使用される用語である。本明細書において、エピタキシャル成長とは、基板の配向を模倣する、或いは、対象の実施形態によって、Si層、バッファ層又は核生成アイランドの配向を模倣するナノワイヤ又はナノピラミッドの基板上での成長を意味する。
【0033】
MBEは、結晶基板上に堆積物を形成する方法である。MBEプロセスは、真空中で結晶基板を加熱して、基板の格子構造を活性化させることにより行われる。その後、原子ビーム又は分子量ビームを基板表面に指向させる。上記で用いた元素という用語は、その元素の原子、分子又はイオンの適用を包含するものとする。指向させた原子又は分子が基板の表面に到達すると、指向させた原子又は分子は、以下に詳細に説明するように、基板の活性化された格子構造又は触媒液滴にぶつかる。時間の経過と共に、入射原子がナノワイヤを形成する。
【0034】
有機金属気相成長法(MOCVD)とも呼ばれるMOVPEは、結晶基板上に堆積物を形成するためのMBEの代替方法である。MOVPEの場合、堆積材料は有機金属前駆体の形態で供給され、高温の基板に到達すると分解し、基板表面に原子が残る。さらに、この方法は、基板表面全体にわたって堆積材料(原子/分子)を運ぶためにキャリアガス(通常、H2及び/又はN2)を必要とする。他の原子と反応するこれらの原子は、基板表面上にエピタキシャル層を形成する。堆積パラメーターを注意深く選択することにより、ナノワイヤが形成される。
【0035】
MICという用語は、金属誘導結晶化(metal-induced crystallization:MIC)を表す。グラファイト基板が、順にAl層、酸化Al層及びアモルファスSi層を担持する構造体を形成してもよい。その後、Al層及びSi層の位置を入れ替えるために組成物を加熱することが可能である。
【0036】
本発明は、ナノワイヤ若しくはナノピラミッド成長用基板として又はナノワイヤ若しくはナノピラミッドが成長する別の層を担持するための基板としての、グラファイト層の使用に関する。理想的には、グラファイト層は、透明で導電性且つフレキシブルである。半導体ナノワイヤ又はナノピラミッドアレイは、好ましくは前記グラファイト基板又は存在する最上層からエピタキシャル成長した複数のナノワイヤ又はナノピラミッドを含む。
【0037】
ナノワイヤ又はナノピラミッドをエピタキシャル成長させることにより、形成された材料に均質性が付与され、例えば、機械的、光学的又は電気的特性など、様々な最終特性を向上させ得る。
【0038】
エピタキシャルナノワイヤ又はナノピラミッドは、気体、液体又は固体の前駆体から成長させてもよい。基板は、種結晶としての機能を果たすため、堆積したナノワイヤ又はナノピラミッドは、基板と同様の格子構造及び配向になり得る。これは、多結晶膜又はアモルファス膜を単結晶基板上にさえ堆積させる、他の薄膜堆積方法とは異なる。
【0039】
[ナノワイヤ又はナノピラミッド成長用基板]
ナノワイヤ又はナノピラミッドを成長させるために使用される基板は、グラファイト基板であり、特にグラフェンである。本明細書で使用するグラフェンという用語は、ハニカム(六方晶)結晶格子に高密度に充填されたsp2結合炭素原子の平面シートのことを指す。このグラファイト基板は、好ましくは厚さ20nm以下とする。理想的には、10層以下、好ましくは5層以下のグラフェン又はその誘導体(これは、数層グラフェンと呼ばれる)を含むものとする。特に好ましいのは、グラフェンの1原子厚の平面シートである。
【0040】
結晶又は「フレーク」形態のグラファイトは、積層された多くのグラフェンシート(すなわち、11シート以上)から成る。よって、グラファイト基板とは、1枚又は複数枚のグラフェンシートから形成されたものを意味する。
【0041】
基板の厚さは一般に、20nm以下であることが好ましい。グラフェンシートを積層し、面間隔が0.335nmのグラファイトを形成する。好ましいグラファイト基板は、そのような層をほんの数層有するのみであり、理想的には厚さが10nm未満であってもよい。更により好ましくは、グラファイト基板の厚さは5nm以下であってもよい。一般に、基板の面積は制限されない。この面積は、0.5mm2以上、例えば、5mm2以下又はそれ以上、例えば10cm2以下と大きくてもよい。よって、基板の面積は、実用性により制限されるだけである。
【0042】
非常に好ましい実施形態において、基板は、単結晶グラファイトであるキッシュグラファイトから剥離された積層基板であるか、又は高配向性熱分解グラファイト(HOPG)である。或いは、基板は、化学蒸着(CVD)法を用いて、Ni膜又はCu箔上に成長させることも可能である。基板は、例えば、Cu、Ni又はPtから成る金属膜又は金属箔上、Si及びGeなどの半導体上、並びにSiO2及びAl23などの絶縁体上の化学蒸着(CVD)成長グラフェン基板であり得る。高温でのSi昇華によりSiC膜上に成長させた高品質のグラフェンも使用可能である。
【0043】
これらの成長させたグラファイト層は、成長基板から剥離し、移動させることができる。例えば、CVD成長グラファイト層は、エッチングにより又は電気化学的剥離法によりNi又はCu膜などの金属箔から化学的に剥離することができる。次いで、剥離後のグラファイト層は、ナノワイヤ又はナノピラミッド成長用の支持基板に移動させ堆積する。剥離及び移動中、電子ビームレジスト又はフォトレジストを用いて、薄いグラフェン層を支持してもよい。これらの支持材料は、堆積後にアセトンにより容易に除去することができる。
【0044】
しかしながら、上述の如く、グラフェン表面上での核生成は困難であるため、本発明者らは、グラフェン表面を改質するか、又はグラフェン表面上に別の層を付加することにより、核生成を改善するための様々な方法を提案する。
【0045】
第1の実施形態では、薄いバッファ層又はナノスケール核生成アイランドを、グラファイト表面上に成長させることが可能である。バッファ層は、GaNなどのナノワイヤ又はナノピラミッドの極性及び配向を制御すると共に、密度を高めるAlN又はAlGaN又はAlGaInN又はInGaNから作り得る。AlNバッファ層の使用は、Si基板上のGaNナノワイヤ又はナノピラミッド成長に関して、既に報告されている(Nanotechnology 26(2015)085605)が、グラファイト基板上での使用ではない。グラファイト基板上のバッファ層は、マイグレーション・エンハンスト・エピタキシー(MEE:migration enhanced epitaxy)により成長させることができる。温度及びV/III比などの成長条件や、バッファ層の厚さ、ナノワイヤ又はナノピラミッドの密度、配列及び極性の調整は、制御することができる。
【0046】
別のプロセスにおいて、本発明者らは、バッファ層を使用する代わりに、グラファイト基板上のAlN又はAlGaN又はAlGaInN又はInGaNのナノスケール核生成アイランドを用いて、ナノワイヤ又はナノピラミッドの成長を促進できることを見出した。これらの核生成アイランドは、ナノワイヤ又はナノピラミッドの密度を高め、極性及び配列を制御する。より具体的には、グラファイト基板上にAlGaNアイランドを成長させることができる。アイランドの密度は、アイランドの成長時間を長くすることにより増加させることができる。その後、ナノワイヤ又はナノピラミッド成長(例えば、GaN又はAlGaN)を当該アイランド上で開始させることができる。
【0047】
バッファ層と比較して、核生成アイランドを使用することには、いくつかの付加的な利点がある。例えば、グラファイト表面は、グラフェンの透明性を低下させ得るバッファ層により被覆されない。更に、核生成アイランドサイズ(通常、5~20nm)がナノワイヤ又はナノピラミッド直径(通常、50~500nm)よりもはるかに小さいため、ナノワイヤ又はナノピラミッドとグラフェンとの間の電気伝導経路はほとんど損なわれることはなく、特に、バッファ層がドープされていないか又はナノワイヤ若しくはナノピラミッド(例えば、GaN及びInGaN)よりも高いバンドギャップ(例えば、AlN及びAlGaN)を有する場合に関して言える。
【0048】
別の実施形態では、ナノワイヤ又はナノピラミッド成長に先立って、グラファイト表面を窒素プラズマに曝露することにより、置換型不純物としての窒素の取り込み又は/及びその表面上のレッジ及びステップエッジの形成、好ましくはその両方をもたらす。原子レッジは、上述のようにナノワイヤ又はナノピラミッドの核生成を促進する。窒素を含むことにより、フェルミ準位、ひいてはグラファイト基板の電子構造を変化させる(Nano Lett。8、4373、(2008))。また、窒素を含むことにより、グラファイト基板の化学反応性も向上し、表面上でのナノワイヤ又はナノピラミッド核生成がより容易にもなる。特に、窒素プラズマと組み合わせたグラフェンのn型ドーピングなどのドーピングにより、ナノワイヤ又はナノピラミッド成長及びその後のデバイス製造が容易になり得る。
【0049】
別のプロセスでは、本発明は、グラファイト基板上にAlAs、AlAsSb又はAlSbなどのAl-V族化合物のバッファ層又はナノスケールアイランドを導入することに関する。
【0050】
まず、Alがグラファイト基板上に堆積され、グラファイト基板上に薄いAl層又はナノスケールAlアイランドを形成する。結合エネルギーが比較的高く、よってAl原子(adatoms)の拡散係数が低いため、Alはグラファイト表面に付着する傾向がある。As及び/又はSbフラックスなどのV族元素フラックスを上記Al層又はナノスケールアイランドに供給することにより、AlAs、AlAsSb又はAlSbなどのAl-V族化合物のバッファ層又はナノスケールアイランドを形成する。バッファ層又はナノスケールアイランドの導入による表面エネルギーの変化が、ナノワイヤ又はナノピラミッドの核生成及び成長を促進する。フラックスは、As2及びSb2などの単量体、二量体、三量体又は四量体の形態であってもよい。
【0051】
特に、公称厚さ0.01~2nmのAl層を、グラファイト基板上に、例えば500~700℃の温度で堆積する。次いで、この層を、0.05~5×10-6Torr、例えば1~3×10-6Torrなどの範囲で、As及び/又はSbフラックスを供給することにより、AlAs、AlAsSb若しくはAlSbのバッファ層又はナノスケールアイランドに変換する。次に、Gaフラックスのみを供給し、好ましくはMOVPE又はMBEにより、グラファイト基板上の前記バッファ層又は核生成アイランド上における、複数の半導体III-V族ナノワイヤ、好ましくはGaAs及び/又はGaAsSbを含むナノワイヤの成長を触媒することにより、前記バッファ層又はナノスケールアイランド上にGa液滴を形成する。ナノワイヤは、基板に対して垂直に成長するのが好ましい。
【0052】
さらなる実施形態では、単一又は複数の原子層の欠陥及び孔がグラファイト基板上で深く形成される。我々は、これらの欠陥又は孔をステップ又はレッジとも呼ぶ。よって、すなわち、グラファイト基板上に、ナノワイヤ又はナノピラミッドの核生成を促進する多くのステップが形成される。これは、酸素プラズマによる処理又はオゾン、例えばUVとオゾンによる処理により実現できる。この処理は、100℃以上、理想的には125~175℃、例えば150℃などの高温で行うことが好ましい。エッチングプロセスは、これらのわずかに高い温度でより良好に行われるようである。更に、高温の使用により、以下に説明するアニーリングプロセスが開始される。
【0053】
ステップ又はレッジの導入に加えて、或いは、ステップ又はレッジの導入に代えて、この処理は、通常グラファイト表面上のエポキシド基の形成により、グラファイト層の表面に酸素原子を導入する。好ましくは、この処理は、グラファイト層の表面にレッジ/ステップ及び酸素原子の両方を導入する。処理プロセスにおける高温の使用はまた、エッチングプロセス(すなわち、レッジの形成)も促進し得る。
【0054】
この表面処理により、グラファイト基板の表面に孔及び欠陥を有する粗いグラファイト表面が形成され、炭素ダングリングボンドが酸素原子と結合することが好ましい。基板表面上へのレッジの導入により、表面粗さが増加し、基板の表面電位が変動し、基板上での核生成がより容易になる。
【0055】
UVオゾン又は酸素プラズマにより処理されたグラファイト基板の表面は、それ自体を、ナノワイヤ又はナノピラミッド核生成のための表面として使用することができる。しかしながら、本発明者らは、処理されたグラファイト基板を水素でアニールすることにより、ナノワイヤ又はナノピラミッド核生成のためのより興味深い表面が得られることを見出した。
【0056】
従って、特に、オゾン又は酸素プラズマにより処理されたグラファイト基板は、通常、不活性雰囲気中で水素の存在下でアニールする。アニーリングプロセスは、100~500℃、例えば250~400℃といった温度で行い得る。好適なグラフェン処理プロセスは、Science 330(2010)655に記載されている。不活性ガスは、通常、窒素、又はアルゴンなどの希ガスである。アニーリングプロセスは、レッジのエポキシド表面基をC-H基に還元することにより、ナノワイヤ又はナノピラミッド核生成、引いてはナノワイヤ又はナノピラミッド成長のための改善された表面を提供する。理論によって制限されることを望むものではないが、C-H結合は、ナノワイヤ又はナノピラミッドの成長に使用される高温で破壊され、表面には、ナノワイヤ又はナノピラミッド核生成が生じるためのダングリングボンドが残ると考えられる。また、酸素又はオゾン処理は、グラファイト基板の垂直エッチングを引き起こすことにより、レッジ/ステップの導入を引き起こすと考えられる。アニーリングプロセスは、横方向のエッチングにより基板表面全体の表面粗さを増加させる。
【0057】
最後の実施形態において、本発明は、金属誘起結晶化(MIC)プロセスを用いてグラファイト基板上に結晶Si層、特にα結晶Si(111)層を導入することに関する。この結晶性Si層は、[111]方向のナノワイヤ又はナノピラミッドの成長を可能にすることにより、垂直ナノワイヤ又はナノピラミッドの形成を可能にする。
【0058】
しかしながら、Si(111)層をグラファイト基板上に直接導入することは非常に困難である。従って、本発明者らは、最初に基板上にAl層を導入することを提案する。このAl層は、電子ビーム蒸着又は熱蒸着、原子層堆積(ALD)、CVDなどの任意の公知の技術により堆積することができる。特に、本発明者らは、Alの電子ビーム蒸着を使用し得ることを明らかにした。これは、前記プロセスにおいて、グラファイト表面が確実に損傷されないようにするものである。
【0059】
理想的には、グラファイト表面は、ナノワイヤが核生成するこれらのスポットでのみ改質され、グラファイト表面の残りの部分は、ナノワイヤ間又はナノピラミッド間のグラファイト表面の良好な電気的特性を維持するため、損傷を受けていない状態であるべきである。
【0060】
Al層の厚さは、好ましくは、10~30nmである。このAl層の最上層の原子層は、好ましくは、Alを空気などの酸素源に曝露することにより酸化する。最上層の原子層は、好ましくは、Al層の上部約5nmに相当する。
【0061】
その後、酸化Al層(酸化アルミニウム層)の上にSi層を適用する。ここでも、同じ適用技術を用いることができる。Si層はこの時点でアモルファスである。従って、好ましくは、グラファイト基板がAl層、酸化Al層及びアモルファスSi層をこの順に担持する構造体を形成する。Si層の厚さは、5~50nmであり得る。
【0062】
次いで、Al層及びSi層の位置を入れ替えるために組成物を加熱することが可能である。アニーリングは、300~500℃の温度で行い得る。通常、アニーリングは、不活性雰囲気、例えば窒素雰囲気中で行われる。
【0063】
理論によって制限されることを望むものではないが、一般に、任意の基板上の堆積されたままの状態のAl層は、粒子が優先配向を持たない多結晶である。この段階では、Si層もアモルファスであり、アニーリング前に結晶Siは存在しない。従って、最初の二重層は、薄い酸化物界面を有し、多結晶Alとその上のアモルファスSiからなる。アニーリングに際して、Si原子がAl層中に拡散し、自発的に結晶核を形成する。駆動力は、Siのアモルファス相と結晶相との間の自由エネルギーの差である。結晶化プロセスの終わりには、Al層とSi層は最初の積層位置が入れ替わっている。すなわち、Al層がスタックの上にある。通常、(Si)Al酸化物層が、この時点でAl層とSi層との間に位置する。Si粒子の結晶化は、Al層の結晶性とその酸化条件によって決まる。
【0064】
同様のプロセスが、Nano Lett. 13, 2743 (2013)に記載されている。同様の開示が、J. Appl. Phys. 115, 094301 (2014)にも見られる。しかしながら、これらの参考文献は、導電性基板、特にグラファイト基板上でこのプロセスを実施していない。更に、スパッタリング法を用いて、(111)配向Si膜の結晶化のための(111)配向Al層を基板上に堆積させた。しかしながら、スパッタリングによるAlの堆積は、グラファイト基板には適していない。スパッタリングプロセス中に生成されたプラズマ中の高エネルギーイオンにより、グラフェン中の炭素結合が損傷しやすい可能性がある。
【0065】
本発明者らは、グラフェン上でのAlの電子ビーム蒸着により、Al層が好ましい(111)配向を有することができ、これは、アモルファスSiO2基板上と比較して、大きく促進されていることを見出した。これにより、この後、グラフェン基板に何ら損傷を与えることなく、AICプロセス後にグラフェン上に高度に(111)配向したSi膜が得られる。
【0066】
そして、好ましくはAl層(並びに2つの層の間の任意の(Si)Al酸化物)のエッチングによって、Al層を除去することにより、グラファイト基板上の主に(111)結晶質ナノ構造Si層で被覆された基板が残る。この時点でSi層の厚さは、5~50nmであり得る。Si層は、非常に薄いため、依然として下にあるグラフェンの特性が得られ、すなわち、依然としてフレキシブルで導電性且つほぼ透明である。Si層を使用する更なる利点は、ナノワイヤ又はナノピラミッド成長方法(recipe)には、標準Si(111)基板上での成長を容易に応用し得ることである。ナノワイヤ又はナノピラミッドは、グラフィック基板の上のSi層上で成長するため、Si上のIII-Vナノワイヤ又はナノピラミッドを成長させるための標準的な方法を容易に適用することができる。また、ナノワイヤ又はナノピラミッドの密度は、被覆されていないグラファイト基板上よりもはるかに高い。更に、(不要な)寄生III-V半導体材料の二次元成長を引き起こす、低温工程を含むグラファイト基板上のナノワイヤ又はナノピラミッドの二段階成長の代わりに、Si(111)上のナノワイヤ又はナノピラミッド成長のために一般的に使用される高温でナノワイヤ又はナノピラミッドを成長させることができる。これは、基板上のIII-V半導体材料の寄生結晶成長を減少させる。Si(111)層の上に孔パターンを有するマスクを組み合わせることで、高温成長により露出した孔領域でのみナノワイヤ又はナノピラミッドを成長させることができ、位置(positon)制御成長又は選択的領域成長となる。
【0067】
[基板用支持体]
グラファイト基板は、その上にナノワイヤ又はナノピラミッドを成長させるために、支持されることが必要な場合もある。基板は、従来の半導体基板及び透明ガラスを含む任意の種類の材料上で支持することができる。基板が、デバイスに対する光の出射又は入射を妨げないように、支持体は透明であることが好ましい。
【0068】
好ましい基板の例としては、溶融シリカ、溶融石英、溶融アルミナ、炭化ケイ素又はAlNが挙げられる。溶融シリカ又はSiC、特に溶融シリカの使用が好ましい。支持体は不活性でなければならない。ナノワイヤ又はナノピラミッドの成長後且つデバイスに使用する前に、例えば、グラファイト基板から支持体を剥離することにより、支持体を除去してもよい。
【0069】
[ナノワイヤ又はナノピラミッドの成長]
商業的に重要なナノワイヤ又はナノピラミッドを製造するために、これらは、基板、Si層、バッファ層又は核生成アイランド上にエピタキシャル成長することが好ましい。また、成長表面に垂直に、よって、理想的には[111](立方晶構造の場合)方向又は[0001](六方晶構造の場合)方向に成長することも理想的である。
【0070】
本発明者らは、半導体ナノワイヤ又はナノピラミッド内の原子とグラフェンシート内の炭素原子との間の可能な格子整合を確定することにより、グラファイト基板上でのエピタキシャル成長が可能であることを見出した。
【0071】
グラフェン層における炭素-炭素結合長は、約0.142nmである。グラファイトは六方晶構造を有する。本発明者らは、成長するナノワイヤ又はナノピラミッド材料とグラファイト基板との間の格子不整合が非常に低くなり得るため、グラファイトにより、半導体ナノワイヤ又はナノピラミッドが成長できる基板を提供できることに以前気づいた。
【0072】
本発明者らは、グラファイト基板の六方対称性と、立方晶構造を有する[111]方向に成長するナノワイヤ若しくはナノピラミッドの(111)面における(又は六方晶構造を有する[0001]方向に成長するナノワイヤ若しくはナノピラミッドの(0001)面における)半導体原子の六方対称性とにより、成長するナノワイヤ又はナノピラミッドと基板との間で格子整合が得られることに気づいた。
【0073】
これに関する科学の包括的な説明は、特許文献2に見られる。
【0074】
理論によって制限されることを望むものではないが、グラファイト層内の炭素原子の六方対称性と、[111]及び[0001]結晶方向に垂直な面における、それぞれ立方晶又は六方晶半導体の原子の六方対称性とにより、(ほとんどのナノワイヤ又はナノピラミッドの成長に好ましい方向)、半導体原子がグラファイト基板の炭素原子上に、理想的には六方晶のパターンで配置された場合、グラファイト基板と半導体との間の密接な格子整合が得られる。これは新規かつ驚くべき発見であり、グラファイト基板上でのナノワイヤ又はナノピラミッドのエピタキシャル成長を可能にし得る。
【0075】
特許文献2に記載されているような半導体原子の異なる六方配列により、このような材料の半導体ナノワイヤ又はナノピラミッドが鉛直に成長し、薄い炭素系グラファイト材の上に自立ナノワイヤ又はナノピラミッドを形成することが可能になり得る。
【0076】
成長するナノピラミッドにおいて、三角形の面は、通常、(1-101)面又は(1-102)面で終端している。(1-101)ファセットを有する三角形の側面は、先端の単一の点に収束するか、又は先端に収束する前に新しいファセット((1-102)面)を形成し得る。場合によっては、ナノピラミッドは、そのトップが{0001}面で終端され、切頂されている。
【0077】
成長するナノワイヤ又はナノピラミッドと基板との間に格子不整合がないことが理想的であるが、ナノワイヤ又はナノピラミッドは、例えば、薄膜よりもはるかに大きな格子不整合に対応できる。本発明のナノワイヤ又はナノピラミッドは、基板との格子不整合が最高約10%であってもよく、エピタキシャル成長は依然として可能である。理想的には、格子不整合は、7.5%以下であるべきで、例えば、5%以下などである。
【0078】
立方晶InAs(a=6.058Å)、立方晶GaSb(a=6.093Å)などの半導体によっては、格子不整合が非常に小さい(<約1%)ため、これらの半導体の優れた成長が期待できる。
【0079】
本発明において成長させるナノワイヤ又はナノピラミッドの長さは、250nm~数ミクロン、例えば、最高5ミクロンであってもよい。好ましくは、ナノワイヤ又はナノピラミッドの長さは、1ミクロン以上である。複数のナノワイヤ又はナノピラミッドを成長させる場合、それらが全てこれらの寸法要件を満たすのが好ましい。成長させるナノワイヤの少なくとも90%は、長さが1ミクロン以上であるのが理想的である。実質的に全てのナノワイヤの長さが、1ミクロン以上であるのが好ましい。
【0080】
ナノワイヤ/ナノピラミッドの成長は、フラックス比により制御することができる。ナノピラミッドは、例えば、高いV族フラックスが使用される場合に促進される。
【0081】
さらに、成長させたナノワイヤが同じ寸法、例えば、互いの10%以内の寸法を有することが好ましい。よって、ナノワイヤの少なくとも90%(好ましくは、実質的に全て)が、同一の直径及び/又は同一の長さ(すなわち、互いの直径/長さの10%以内)であるのが好ましい。従って、本質的に、当業者は、均質性と、寸法が実質的に同一であるナノワイヤとを求めている。
【0082】
ナノワイヤ又はナノピラミッドの長さは、成長プロセスが実行される時間の長さによって制御されることが多い。プロセスの時間が長い程、通常、ナノワイヤは(かなり)長くなる。
【0083】
ナノワイヤ又はナノピラミッドは、通常、六角形の断面形状を有する。ナノワイヤ又はナノピラミッドの断面直径(すなわち、その太さ)は、25~200nmであり得る。上述の如く、直径は、理想的には、ナノワイヤの大部分にわたって一定である。ナノワイヤの直径は、下記に更に説明するように、ナノワイヤの作製に使用される原子の割合を操作することにより制御することができる。
【0084】
さらに、ナノワイヤ又はナノピラミッドの長さ及び直径は、それらが形成される温度に影響され得る。高い温度は、高いアスペクト比(すなわち、より長い及び/又はより細いナノワイヤ)をもたらす。当業者は、成長プロセスを操作し、所望の寸法のナノワイヤを設計することができる。
【0085】
本発明のナノワイヤ又はナノピラミッドは、少なくとも1種のIII-V化合物から形成される。III族の選択肢は、B、Al、Ga、In及びTlである。本発明における好ましい選択肢は、Ga、Al及びInである。
【0086】
V族の選択肢は、N、P、As、Sbである。全てが好ましい。
【0087】
勿論、III族から2つ以上の元素及び/又はV族から2つ以上の元素を使用することも可能である。ナノワイヤ又はナノピラミッド製造用の好ましい化合物としては、AlAs、GaSb、GaP、GaN、AlN、AlGaN、AlGaInN、GaAs、InP、InN、InGaAs、InSb、InAs又はAlGaAsが挙げられる。1つの選択肢としては、Nと組み合わせたAl、Ga及びInをベースとする化合物がある。特に、III族Nバッファ層又は核生成アイランドと組み合わせた、GaN、AlGaN、AlInGaN又はAlNの使用が非常に好ましい。
【0088】
実施形態によって、AlGaNのような1つのV族アニオンと共に2つのIII族カチオンが好ましい。従って、この三元化合物は、式XYZ(但し、XはIII族元素であり、YはXとは異なるIII族であり、ZはV族元素である)のものであってもよい。XYZにおけるXのYに対するモル比は、好ましくは0.1~0.9であり、すなわち、前記式は、好ましくはXx1-xZ(但し、添字xは0.1~0.9である)である。
【0089】
四元系も使用することが可能であり、式Ax1-xy1-y(但し、AとBはIII族元素であり、CとDはV族元素である)で表すことができる。ここでも、添字xとyは、通常、0.1~0.9である。他の選択肢は、当業者には明らかであろう。
【0090】
本発明のナノワイヤ又はナノピラミッドは、好ましくは、立方晶構造を有するナノワイヤ又はナノピラミッドの場合は[111]方向に、六方晶構造を有するナノワイヤ又はナノピラミッドの場合は[0001]方向に成長すべきである。成長するナノワイヤ又はナノピラミッドの結晶構造が立方晶である場合、ナノワイヤ又はナノピラミッドと触媒液滴との間の(111)界面が、軸方向成長が生じる面である。ナノワイヤ又はナノピラミッドが六方晶構造を有する場合、ナノワイヤ又はナノピラミッドと触媒液滴との間の(0001)界面が、軸方向成長が生じる面である。面(111)及び(0001)はいずれもナノワイヤの同一(六方晶の)面を示すが、成長するナノワイヤの結晶構造に応じて面の命名法が異なるだけである。
【0091】
ナノワイヤ又はナノピラミッドは、好ましくは、MBE又はMOVPEにより成長させる。MBE法では、成長表面に各反応物の分子ビームを供給し、例えば、III族元素とV族元素とを同時に供給することが好ましい。グラファイト基板上におけるナノワイヤ又はナノピラミッドの核生成及び成長は、MBE技術を用いて、例えば、III族元素とV族元素とを交互に供給することができるマイグレーション・エンハンスト・エピタキシー(MEE)又は原子層MBE(ALMBE)を使用することによって、より高度に制御し得る。
【0092】
好ましい技術は、固体ソースMBEであり、ガリウム及びヒ素等の非常に純粋な元素を、ゆっくりと蒸発(例えば、ガリウム)又は昇華(例えば、ヒ素)し始めるまで、別個のエフュージョンセル内で加熱する。しかしながら、通常、rfプラズマ窒素源を使用し低エネルギーの窒素原子ビームを生成する。その後、ガス状の元素は、基板上で凝結し、そこで互いに反応し得る。ガリウム及びヒ素の例においては、単結晶GaAsが形成される。「ビーム」という用語の使用は、蒸発した原子(例えば、ガリウム)又は分子(例えば、As4又はAs2)が、基板に到達するまで、互いに又は真空チャンバーガスと相互作用しないことを意味する。
【0093】
MBEは、バックグラウンド圧力が通常約10-10~10-9Torrの超高真空中で行われる。ナノ構造は、通常、例えば、1時間当たり最高数μm、例えば、約10μmといった速度で、ゆっくりと成長させる。これにより、ナノワイヤ又はナノピラミッドをエピタキシャル成長させ、構造性能を最大化することができる。
【0094】
MOVPE法において、基板は、反応器内に保持され、キャリアガスと、各反応物の有機金属ガス、例えば、III族元素を含む有機金属前駆体及びV族元素を含む有機金属前駆体が、基板に供給される。典型的なキャリアガスは、水素、窒素又はこれら2つの混合物である。グラファイト基板上におけるナノワイヤ又はナノピラミッドの核生成及び成長は、MOVPE技術を用いて、例えば、III族元素とV族元素とを交互に供給することができるパルス層成長技術を使用することによって、より高度に制御し得る。
【0095】
本発明のナノワイヤ又はナノピラミッドは、触媒の存在下又は不在下で成長させてもよい。触媒を導入し、ナノワイヤ又はナノピラミッド成長させるための核生成サイトを提供することができる。触媒は、ナノワイヤ又はナノピラミッドを構成する元素のうちの1つ、いわゆる自己触媒であるか、又は、ナノワイヤを構成する元素のいずれとも異なっていてもよい。
【0096】
触媒支援成長の場合、触媒はAu又はAgであってもよく、また、触媒は、ナノワイヤ又はナノピラミッドの成長に使用される族の金属(例えばIII族金属)、中でも実際のナノワイヤ又はナノピラミッドを構成する金属元素の1つであってもよい(自己触媒作用)。従って、III-V族ナノワイヤを成長させるための触媒としてIII族の別の元素を使用することが可能であり、例えば、In(V族)ナノワイヤ又はナノピラミッドなどの場合、触媒としてGaを用いることが可能である。好ましくは、触媒はAuであるか、又は成長は自己触媒される(すなわちGa(V族)ナノワイヤ又はナノピラミッドなどの場合、Ga)。触媒は、成長表面に堆積し、ナノワイヤ又はナノピラミッドを成長させるための核生成サイトとして作用し得る。理想的には、これは、成長表面上に形成される触媒材料の薄膜を設けることにより行われ得る。温度がナノワイヤ又はナノピラミッドの成長温度まで上昇するにつれて触媒膜が溶融すると、触媒は、成長表面上にナノメートルサイズの粒子状の液滴を形成し、これらの液滴がナノワイヤ又はナノピラミッドが成長できるポイントを形成する。
【0097】
これは、触媒が液体であり、分子ビームが気体であり、且つ、ナノワイヤ又はナノピラミッドが固体成分となるため、気相-液相-固相成長(VLS)と呼ばれる。場合によっては、触媒粒子は、いわゆる気相-固相-固相成長(VSS)機構により、ナノワイヤ又はナノピラミッドの成長中に固体であってもよい。ナノワイヤ又はナノピラミッドが成長する(VLS法により)につれ、液(例えば、金)滴はナノワイヤのトップに滞留する。その液滴が、成長後にナノワイヤ又はナノピラミッドのトップに滞留することにより、トップ電極と接触する際に主要な役割を果たし得る。
【0098】
成長したナノワイヤ又はナノピラミッドの高さ及び直径がより均一な自己触媒VLS成長ナノワイヤ又はナノピラミッドのより規則的なアレイを製造するために、マスクを基板上に使用することができる。このマスクには規則的な孔を設けることができ、ナノワイヤ又はナノピラミッドが基板全体にわたって規則的なアレイに均一なサイズに成長することができるように触媒粒子(III族元素の1つの粒子)を孔内に堆積する。マスクの孔パターンは、従来のフォト/電子ビームリソグラフィー又はナノインプリントを使用して容易に作製することができる。ナノワイヤ又はナノピラミッドの成長用のグラファイト表面上に規則的な核形成サイトのアレイを生成するために、集束イオンビーム技術も使用し得る。
【0099】
1つの孔内に存在する触媒粒子は1つだけであるのが理想的である。
【0100】
基板上に配置されたAu触媒ナノワイヤ又はナノピラミッドを製造するために、例えば50nm未満の厚さを有するようなAuの薄膜を、孔パターン化したフォトレジスト又は電子ビームレジスト上に堆積させることができる。いわゆる「リフトオフ」プロセスでフォトレジスト又は電子ビームレジストを除去することにより、基板表面上に規則的に配列されたAuドットのパターンを作製することができる。
【0101】
触媒不在下でのナノワイヤ又はナノピラミッドの成長も可能であり、選択領域成長法として知られている。この方法は、本明細書に記載するようにグラファイト層上に堆積されたナノ孔パターンを有するマスクを必要とする場合もある。マスク材は、酸化物又は窒化物マスキング層、好ましくは金属酸化物層若しくは金属窒化物層又は半金属酸化物若しくは半金属窒化物)であり得る。マスク層は、原子層堆積、又は他の層の堆積に関して上述した技術により適用することができる。使用される酸化物は、金属又は半金属(例えば、Siなど)ベースであるのが好ましい。マスキング層に使用されるカチオンの性質は、Al、Si又は遷移金属、特に第一3d遷移金属(Sc-Zn)であってもよい。好ましいマスキング層は、SiO2、Si34、TiO2又はAl23、W23などの酸化物をベースとする。
【0102】
マスキング層の厚さは、5~100nm、例えば、10~50nmであってもよい。
【0103】
マスキング層は、好ましくは、連続しており、基板全体を覆う。これにより、確実に、層に欠陥が無いことによりマスキング層上のナノワイヤ又はナノピラミッドの核生成を防止する。
【0104】
従って、マスクは、基板に適用し、基板表面を露出させる孔を、場合によっては規則的なパターンで、エッチングすることができる。さらに、孔のサイズ及びピッチは、慎重に制御することができる。孔を規則的に配置することにより、規則的なパターンのナノワイヤ又はナノピラミッドを成長させることができる。
【0105】
さらに、孔のサイズを制御し、各孔内に確実に1つのナノワイヤ又はナノピラミッドしか成長できないようにすることができる。最終的に、孔は、ナノワイヤ又はナノピラミッドの成長を可能にするのに十分な大きさのサイズに作ることができる。このようにして、規則的なナノワイヤのアレイを成長させることができる。
【0106】
グラファイト表面は、マスクの堆積の前又は後に、上述の技術(酸素若しくはオゾン処理及び水素化、窒素プラズマ、アモルファスシリコンのMIC、バッファ層の堆積、又は核生成アイランドの形成)を用いて処理してもよい。
【0107】
上記のように、自己触媒(self-catalysed)ナノワイヤを製造することも可能である。自己触媒化とは、ナノワイヤ又はナノピラミッドの成分の1つがその成長のための触媒として作用することを意味する。
【0108】
例えば、Ga層を、孔パターンマスク層に適用し、溶融し、Ga含有ナノワイヤを成長させるための核生成サイトとして作用する液滴を形成し得る。ここでも、Ga金属部分は、ナノワイヤのトップに配置されることになり得る。
【0109】
より詳細には、例えば、MBEの場合、Ga/Inフラックスを基板表面に一定時間供給し、基板を加熱すると同時に表面上にGa/In液滴の形成を開始させることができる。その後、基板温度は、対象のナノワイヤ又はナノピラミッドの成長に適した温度に設定することができる。成長温度は、300~700℃の範囲内であり得る。しかしながら、使用する温度は、ナノワイヤの材料、触媒材料及び基板材料の性質によって特定される。GaAs及び/又はGaAsSbの場合、好ましい温度は540~630℃、例えば、590~630℃、例としては610℃などである。InAsの場合、その範囲はより低く、例えば、420~540℃、例としては430~540℃などであり、例えば、450℃である。
【0110】
ナノワイヤ又はナノピラミッドの成長は、触媒膜が堆積され溶融された時点で、Ga/Inエフュージョンセルと対イオンエフュージョンセルのシャッターを同時に開くことにより開始することができる。
【0111】
エフュージョンセルの温度により、成長速度を制御することができる。従来の面(層ごとの)成長中に測定される、便利な成長速度は、1時間あたり0.05~2μm、例えば、1時間あたり0.1μmである。
【0112】
成長させるナノワイヤ又はナノピラミッドの性質に応じて、分子ビームの圧力を調整することもできる。好適なレベルのビーム等価圧力は、1x10-7~1x10-5Torrである。
【0113】
反応物(例えば、III族原子及びV族分子など)間のビームフラックス比は変化させることができ、好ましいフラックス比は、他の成長パラメーター及び成長させるナノワイヤ又はナノピラミッドの性質によって決まる。
【0114】
反応物間のビームフラックス比は、ナノワイヤの結晶構造に影響を及ぼし得ることが分かっている。例えば、触媒としてのAu、成長温度540℃のGaAsナノワイヤの成長、面(層ごとの)成長速度1時間当たり0.6μmに相当するGaフラックス、及びAs4の場合、9×10-6Torrのビーム等価圧力(BEP)を用いて、ウルツ鉱結晶構造が得られる。これに対して、同じ成長温度でGaAsナノワイヤを成長させるが、1時間当たり0.9μmの面成長速度に相当するGaフラックス及びAs4の場合、4×10-6TorrのBEPを用いることで、閃亜鉛鉱型結晶構造が得られる。
【0115】
場合によっては、ナノワイヤ又はナノピラミッドの直径は、成長パラメーターを変えることにより変化させることができる。例えば、軸方向ナノワイヤ又はナノピラミッド成長速度がAs4フラックスにより決定される条件下で自己触媒GaAsナノワイヤを成長させる場合、Ga:As4フラックス比を増加/減少させることにより、ナノワイヤ又はナノピラミッドの直径を増加/減少させることができる。従って、当業者は、多くの方法でナノワイヤ又はナノピラミッドを操作することができる。
【0116】
従って、本発明の一実施形態では、2段階成長法などの多段階成長法を採用し、例えば、ナノワイヤ又はナノピラミッドの核生成とナノワイヤ又はナノピラミッドの成長とを別々に最適化する。
【0117】
MBEの大きな利点は、例えば、反射高エネルギー電子回折(RHEED)を用いて、成長するナノワイヤ又はナノピラミッドをその場で分析できることである。RHEEDは、結晶材料の表面を特徴付けるために通常使用される技術である。この技術は、ナノワイヤがMOVPEなどの他の技術によって形成される場合には、それほど容易に適用することはできない。
【0118】
本発明のナノワイヤは、好ましくは立方晶(閃亜鉛鉱)又は六方晶(ウルツ鉱)構造として成長する。本発明者らは、上述のように基板に供給される反応物の量を操作することにより、成長するナノワイヤ又はナノピラミッドの結晶構造を変化させることができることを見出した。例えば、Gaの供給量を増加させると、GaAs結晶は立方晶構造となる。供給量を減少させると、六方晶構造が促進される。従って、反応物の濃度を操作することにより、ナノワイヤ又はナノピラミッド内の結晶構造を変化させることができる。
【0119】
MOVPEの大きな利点は、ナノワイヤ又はナノピラミッドを、はるかにより速い成長速度で成長させることができることである。放射状及び軸方向のヘテロ構造化されたナノワイヤは、いずれもMOVPE法を用いて成長させることができる。しかしながら、III族窒化物などの特定のIII-V半導体の場合、この方法は、例えば、真性GaN/InGaN多重量子井戸(MQW)、pドープされたAlGaN電子ブロック層(EBL)及びpドープされたGaNシェルから成るシェルを有するnドープされたGaNコアなど、放射状へテロ構造ナノワイヤ及びマイクロワイヤの成長に有利である。この方法はまた、例えば、V/IIIモル比をより低く、基板温度をより高くするなど、成長パラメーターを変更した連続成長モード又はパルス成長技術などの技術を用いて、軸方向にヘテロ構造化されたナノワイヤの成長も可能にする。
【0120】
より詳細には、反応器は、サンプルを配置した後、排気し、且つ、N2でパージし、反応器内の酸素及び水分を除去する。これは、成長温度でのグラフェンへの損傷を避けるためであり、且つ、前駆体と酸素及び水分との望ましくない反応を避けるためである。反応器の圧力は、50~400Torrになるよう設定する。反応器をN2でパージした後、約1200℃の基板温度でH2雰囲気下において基板の熱的クリーニングを行う。続いて、有機金属前駆体とNH3を導入することによりAl(In)GaN又はAlNから成る非常に薄いバッファ層又は核生成アイランドを成長させる。有機金属前駆体は、Gaの場合、トリメチルガリウム(TMGa)又はトリエチルガリウム(TEGa)、Alの場合、トリメチルアルミニウム(TMAl)又はトリエチルアルミニウム(TEAl)、Inの場合、トリメチルインジウム(TMIn)又はトリエチルインジウム(TEIn)のそれぞれいずれかであり得る。ドーパント用の金属前駆体は、シリコンの場合、SiH4、また、Mgの場合、ビス(シクロペンタジエニル)マグネシウム(Cp2Mg)又はビス(メチルシクロペンタジエニル)マグネシウム((MeCp)2Mg)であり得る。Al(In)GaN若しくはAlNバッファ層又は核生成アイランドの堆積中、基板温度は600~1200℃の範囲内に設定してもよい。TMGa、TMAl及びTMInの流量は、5~100sccmに維持することができる。NH3の流量は、5~550sccmの間で変化させることができる。TMGa/TMAl及びNH3を、一定時間、基板表面に供給し、グラファイト表面上でAl(In)GaN若しくはAlNバッファ層又は核生成アイランドの形成を開始させる。バッファ層又は核生成アイランドに使用される成長パラメーターは、ナノワイヤの密度、極性及び配列に大きな影響を及ぼし得る。よって、基板温度は、対象のナノワイヤ又はナノピラミッドの成長に適した温度に設定することができる。成長温度は、700~1200℃の範囲であってもよい。しかしながら、使用される温度は、ナノワイヤの材料の性質に特有である。GaNナノワイヤの場合、好ましい温度は、800~1150℃、例えば900~1100℃、例としては1100℃などである。AlGaNナノワイヤ又はナノピラミッドの場合、その範囲はわずかに高く、例えば900~1400℃、例えば1050~1250℃など、例としては1250℃である。
【0121】
本発明のナノワイヤ又はナノピラミッドは、エピタキシャル成長するのが好ましい。それらは、共有結合、イオン結合又は準ファンデルワールス(quasi van der Waals)結合を介して下地基板に結合する。従って、ナノワイヤのベースと成長表面との接合部において、ナノワイヤ内に結晶面がエピタキシャルに形成される。これらは、同じ結晶学的方向に互いに積み重なり合うことにより、ナノワイヤをエピタキシャル成長させる。ナノワイヤ又はナノピラミッドは、垂直に成長するのが好ましい。当然のことながら、実験科学では、成長角度は正確に90°でなくてもよいが、垂直にという用語は、ナノワイヤが、垂直方向の約10°以内、例えば、5°以内にあることを意味する。共有結合、イオン結合又は準ファンデルワールス結合を介したエピタキシャル成長により、ナノワイヤ又はナノピラミッドと成長表面とが密接に接触することが期待される。接触特性をさらに高めるために、基板をドープし、成長したナノワイヤ又はナノピラミッドの主要なキャリアと一致させることができる。
【0122】
ナノワイヤ又はナノピラミッドは、高温での成長表面への物理的及び化学的結合を伴いエピタキシャル成長させるため、ボトムコンタクトは、オーミックであるのが好ましい。
【0123】
当然のことながら、本発明の組成物は、複数のナノワイヤ又はナノピラミッドを含む。ナノワイヤ又はナノピラミッドは、互いにほぼ平行に成長するのが好ましい。従って、少なくとも90%、例えば、少なくとも95%、好ましくは実質的に全てのナノワイヤ又はナノピラミッドが、成長表面の同一面から同一方向に成長するのが好ましい。
【0124】
当然ながら、エピタキシャル成長が起こり得る多くの面が存在する。実質的に全てのナノワイヤ又はナノピラミッドが、同一面から成長するのが好ましい。その面が、基板表面に平行であることが好ましい。成長したナノワイヤ又はナノピラミッドが、実質的に平行であるのが理想である。ナノワイヤ又はナノピラミッドは、成長表面に対して実質的に垂直に成長するのが好ましい。
【0125】
[ドーピング]
本発明のナノワイヤ又はナノピラミッドは、pn又はpin接合を有し、例えば、LEDに使用できるようにすることができる。従って、本発明のナノワイヤ又はナノピラミッドは、p型半導体領域とn型半導体領域との間に非ドープ真性半導体領域を備えている。p型領域及びn型領域の全て又は一部は、オーミック接触に使用されるため、通常、高濃度にドープされる。
【0126】
従って、ナノワイヤ又はナノピラミッドは、ドープされていることが好ましい。ドーピングは、通常、例えば、MBE又はMOVPE成長中に、ナノワイヤに不純物イオンを導入することを必要とする。ドーピングレベルは、約1015/cm3~1020/cm3に制御することができる。ナノワイヤ又はナノピラミッドは、必要に応じてp型ドープ又はn型ドープすることができる。ドープされた半導体は、外因性半導体(extrinsic semiconductors)である。
【0127】
真性半導体にドナー(アクセプタ)不純物をドープすることにより、n(p)型半導体は、正孔(電子)濃度よりも高い電子(正孔)濃度を有する。III-V族化合物の好適なドナー(アクセプター)は、Te(Mg、Be及びZn)であり得る。ドーパントは、成長プロセスの間に、又は形成後のナノワイヤ若しくはナノピラミッドのイオン注入により導入することができる。
【0128】
LEDの外部量子効率(EQE)をより高くするためには、キャリア注入効率をより高くする必要がある。しかしながら、AlGaN合金中のAl含有量が増加すると共に、Mgアクセプタのイオン化エネルギーが増加することにより、Al含有量の高いAlGaN合金において正孔濃度をより高くすることは困難となる。本発明者らは、正孔注入効率(特に高含有量のAlからなるp領域層における)をより高くするために、個々に又は一緒に使用することのできるいくつかの方法を考案している。
【0129】
従って、ドーピングプロセスにおいて克服すべき問題がある。本発明のナノワイヤ又はナノピラミッドは、Alを含むことが好ましい。Alの含有量が高いほどバンドギャップが高くなることにより、ナノワイヤ又はナノピラミッドの活性層からのUV-C LED放射が可能になり、且つ/又はp領域層及び/又はn領域層における放射光の吸収を回避するため、Alの使用は有益である。バンドギャップが高い場合、ナノワイヤ又はナノピラミッドのこの部分により紫外光が吸収される可能性は低い。従って、ナノワイヤ又はナノピラミッドにおけるAlN又はAlGaNの使用が好ましい。
【0130】
しかしながら、高い導電率(高い正孔濃度)を得るためのAlGaN又はAlNのp型ドーピングは、AlGaN合金中のAl含有量の増加と共にMg又はBeアクセプタのイオン化エネルギーが増加するため困難である。本発明者らは、平均Al含有量のより高いAlGaN合金において導電率を最大にする(すなわち、正孔濃度を最大にする)ために様々な解決策を提案している。
【0131】
ナノワイヤ又はナノピラミッドがAlN又はAlGaNを含む場合、p型ドーパントを導入することにより高い導電率を得ることは困難である。
1つの解決策は、短周期超格子(SPSL)によるものである。この方法では、Al組成のより高い均一なAlGaN層の代わりに、Al含有量の異なる交互に重なる層からなる超格子構造体を成長させる。例えば、Al含有量が35%のp領域層は、例えば、交互に重なるAlxGa1-xN:Mg/AlyGa1-yN:Mg(x=0.30/y=0.40)からなる、厚さ1.8~2.0nm周期のSPSLで置き換えることができる。Al組成のより低い層におけるアクセプタの低いイオン化エネルギーにより、p領域層のバリア高さを損なうことなく、正孔注入効率が向上する。この効果は、界面の分極場によりさらに増強される。SPSLに続いて、より良好な正孔注入のために、高度にpドープされたGaN:Mg層を設けることができる。
【0132】
より一般的には、本発明者らは、p型ドープされたAlzGa1-zN合金(x<z<y)の代わりに、p型ドープされたAlxGa1-xN/AlyGa1-yN短周期超格子(すなわち、AlxGa1-xN及びAlyGa1-yNが交互に重なる薄層)(Alモル分率xは、yより低い)をナノワイヤ又はナノピラミッド構造に導入することを提案している。当然のことながら、xは0といった低い値(すなわちGaN)であってもよく、yは1といった高い値(つまりAlN)であってもよい。超格子周期は、好ましくは5nm以下でなければならず、例えば2nmなどであり、その場合、超格子は単一のAlzGa1-zN合金(zはx及びyの層厚加重平均である)として機能するが、Al含有量のより低いAlxGa1-xN層に対するp型ドーピング効率がより高いため、AlzGa1-zN合金よりも高い導電率を有する。
【0133】
p型ドープされた超格子を有するナノワイヤ又はナノピラミッドでは、p型ドーパントがMg又はBeなどのアルカリ土類金属であることが好ましい。
【0134】
Al含有ナノワイヤ/ナノピラミッドのドーピングの問題を解決するためのさらなる選択肢は、同様の原理に基づく。Al含有量が少ないか又はAlを含有しない薄いAlGaN層を含む超格子の代わりに、ナノワイヤ又はナノピラミッド内のAlGaNの成長方向にAl含有量(モル分率)の勾配を有するナノ構造を設計することができる。従って、ナノワイヤ又はナノピラミッドが成長するにつれて、Al含有量を減少/増加させ、その後、再度増加/減少させ、ナノワイヤ又はナノピラミッド内にAl含有量勾配を作り出す。
【0135】
これは、分極ドーピングと呼ばれる場合もある。一方法では、層には、GaNからAlNに向かって又はAlNからGaNに向かって勾配を付与する。GaNからAlN及びAlNからGaNへの勾配領域は、それぞれ、n型及びp型伝導をもたらし得る。これは、隣接ダイポールと比較して大きさの異なるダイポールの存在により生じ得る。GaNからAlN及びAlNからGaNへの勾配領域は、それぞれ、n型ドーパント及びp型ドーパントで更にドーピングすることができる。
【0136】
好ましい実施形態では、ドーパントとしてBeを使用し、AlGaNナノワイヤにおいてp型ドーピングが用いられる。
【0137】
従って、1つの選択肢は、GaNナノワイヤ/ナノピラミッドから開始し、Alを増加させ、Ga含有量を徐々に減少させて、おそらく成長厚100nmを超すAlNを形成することであろう。この勾配領域は、結晶面、極性、そして勾配領域においてAl含量がそれぞれ減少しているか増加しているかによって、p型又はn型領域として機能し得る。次に、反対のプロセスを実施し、GaNを再度生成し、n型又はp型領域(前に作製したものとは反対の領域)を作り出す。これらの勾配領域は、Siなどのn型ドーパントやMg又はBeなどのp型ドーパントで更にドープし、それぞれ、電荷キャリア密度の高いn型又はp型領域を得ることが可能である。結晶面及び極性は、当該技術分野において公知であるように、ナノワイヤ/ナノピラミッドのタイプによって決まる。
【0138】
従って、別の態様において、本発明のナノワイヤ又はナノピラミッドは、Al、Ga及びN原子を含み、ナノワイヤ又はナノピラミッドの成長中に、Al濃度を変化させ、ナノワイヤ又はナノピラミッド内にAl濃度勾配を作り出す。
【0139】
第3の実施形態では、Al含有ナノワイヤ又はナノピラミッドにおけるドーピングの問題に、トンネル接合を用いて対処する。トンネル接合は、2つの導電性材料の間の、薄層などのバリアである。本発明において、バリアは、半導体デバイスの中央のオーミック電気コンタクトとして機能する。
【0140】
一方法においては、薄い電子ブロック層が活性領域の直後に挿入され、その後、活性層に使用されるAl含有量より高いAl含有量を有するp型ドープされたAlGaNバリア層が続く。p型ドープされた層の後には、高濃度にp型ドープされたAlGaN層と非常に薄いトンネル接合層が続き、そして、n型ドープされたAlGaN層が続く。トンネル接合層は、電子がp-AlGaN中の価電子帯からn-AlGaN中の伝導帯へトンネルし、p-AlGaN層に注入される正孔を生成するように選択される。
【0141】
より一般的には、ナノワイヤ又はナノピラミッドが、非常に薄いAl層などのAl層により分離されたドープGaNの2つの領域(1つのpドープ領域と1つのnドープ領域)を有することが好ましい。Al層の厚さは、1~10nmなど、数nmであってもよい。当然のことながら、高濃度にドープされたInGaN層を含め、トンネル接合としての機能を果たすことができる任意の材料は他にもある。
【0142】
ドープされたGaN層をAl層上に成長させることができることは、特に驚くべきことである。
【0143】
従って、本発明は、一実施形態において、Al層により分離された、p型ドープされた(Al)GaN領域とn型ドープされた(Al)GaN領域を有するナノワイヤ又はナノピラミッドを提供する。
【0144】
本発明のナノワイヤ又はナノピラミッドは、放射状に又は軸方向にヘテロ構造形態を有するように成長させることができる。例えば、軸方向にヘテロ構造化されたナノワイヤの場合、p型ドープされたコアを最初に成長させた後、nドープされたコアを続けて成長させる(又はその逆)ことによりpn接合を軸方向に形成することができる。放射状にヘテロ構造化されたナノワイヤの場合、pドープされたナノワイヤ又はナノピラミッドコアを最初に成長させた後、nドープされた半導体シェルを成長させる(又はその逆)ことによりpn接合を放射状に形成することができる(コアシェルナノワイヤ)。真性シェルは、ドープ領域の間に成長させ、pin接合を有する放射状にヘテロ構造化されたナノワイヤ又はナノピラミッドを得ることができる。
【0145】
ナノワイヤ又はナノピラミッドは、軸方向に成長させることにより、第1のセクション及び第2のセクションから形成されることが好ましい。これら2つのセクションに異なるドープをし、pn接合又はpin接合を生成する。ナノワイヤ又はナノピラミッドのトップ又はボトムセクションが、pドープされたセクションであるかnドープされたセクションであるかは重要ではない。
【0146】
[トップコンタクト]
ナノワイヤを触媒の存在下で基板上に成長させた場合、ナノワイヤのいくらかはナノワイヤの上に触媒堆積物を有することが想定される。理想的には、ナノワイヤの大部分がそのような堆積物を有し、実質的に全てのナノワイヤがこの堆積物を含むのが好ましい。
【0147】
本発明のいくつかのデバイスを作製するためには、ナノワイヤ又はナノピラミッドのトップは、トップコンタクトを有する必要がある。
【0148】
好ましい一実施形態において、トップコンタクトは、別のグラファイト層を用いて形成される。この場合、本発明は、形成されたナノワイヤ又はナノピラミッドの上にグラファイト層を配置し、トップコンタクトを形成することを含む。グラファイトのトップコンタクト層は、基板層と実質的に平行であることが好ましい。また、当然のことながら、グラファイト層の面積は、基板の面積と同じである必要はない。ナノワイヤ又はナノピラミッドのアレイを有する基板とのトップコンタクトを形成するために、多数のグラファイト層が必要となる場合もある。
【0149】
使用されるグラファイト層は、基板に関して詳細に上述した層と同じものであり得る。トップコンタクトは、グラファイトであり、より具体的には、グラフェンである。このグラフェントップコンタクトに含まれるグラフェン又はその誘導体は、10層以下、好ましくは5層以下(これは、数層グラフェンと呼ばれる)でなければならない。特に好ましくは、グラフェンの1原子厚の平面シートである。
【0150】
結晶又は「フレーク」形態のグラファイトは、積層された多くのグラフェンシート(すなわち、11枚以上)から成る。トップコンタクトの厚さは、20nm以下であるのが好ましい。更により好ましくは、グラファイトトップコンタクトの厚さは、5nm以下であってもよい。
【0151】
グラフェンは、半導体ナノワイヤに直接接触する場合、通常、ショットキーコンタクトを形成し、これは、コンタクト接合部でバリアを形成することにより電流の流れを妨げる。この問題により、半導体上に堆積したグラフェンに関する研究は、主にグラフェン/半導体ショットキー接合部の使用に限定されていた。
【0152】
しかしながら、本発明者らは、半導体ナノワイヤの成長に金属触媒が必要となり得ることに気づいた。VLS法、例えば、MBE又はMOVPEでは、Au、Ga又はInなどの金属触媒は、好ましくはナノワイヤ又はナノピラミッドの成長のための種として使用され、ナノワイヤ又はナノピラミッドの成長完了後にナノワイヤの上にナノ粒子の形態で残留する。これらの触媒堆積物は、金属性グラフェンと半導体ナノワイヤとの間の中間材料として使用することができる。残留した触媒材料を利用することにより、金属性グラファイトのトップコンタクトと半導体ナノワイヤ又はナノピラミッドとの間の界面に形成されるショットキーコンタクトを回避でき、オーミック接触を確立することができる。
【0153】
形成されたナノワイヤへのトップコンタクトの適用は、任意の便利な方法により実現できる。グラファイト層を基板キャリアに移動させるための上述した方法と同様の方法を用いてもよい。キッシュグラファイト、高配向性熱分解グラファイト(HOPG)又はCVDに由来するグラファイト層は、機械的又は化学的方法により剥離し得る。その後、それらを、HF又は酸溶液などのエッチング溶液に移し、剥離プロセスに由来する混入物質及びCu(Ni、Pt等)(特にCVD成長グラファイト層の場合)を除去することができる。エッチング溶液は、脱イオン水などの他の溶液にさらに交換し、グラファイト層を洗浄することができる。次いで、グラファイト層は、形成されたナノワイヤ上にトップコンタクトとして容易に移動させることができる。ここでも、剥離及び移動プロセスの間、薄いグラファイト層を支持するために電子ビームレジスト又はフォトレジストを使用してもよく、これは堆積後に容易に除去することができる。
【0154】
グラファイト層は、エッチング及びすすぎ後、ナノワイヤ又はナノピラミッドアレイのトップに移動させる前に完全に乾燥させることが好ましい。グラファイト層とナノワイヤとの間の接触を強化するために、この「乾式」移動中に穏やかな圧力及び熱を加えることができる。
【0155】
あるいは、グラファイト層は、溶液(例えば、脱イオン水)と共に、ナノワイヤ又はナノピラミッドアレイの上に移動させることができる。溶液が乾燥するにつれて、グラファイト層は、下のナノワイヤとの密なコンタクトを自然に形成する。この「湿式」移動法では、乾燥プロセス中の溶液の表面張力により、ナノワイヤ又はナノピラミッドアレイが曲がったり又は破壊されたりする可能性がある。これを防ぐために、この湿式法を使用する場合、より頑強なナノワイヤを用いることが好ましい。直径80nm超のナノワイヤが好適であり得る。あるいは、垂直ナノワイヤ又はナノピラミッド構造体を支持する、孔パターンを有する基板を使用することができる。臨界点乾燥法を使用し、乾燥プロセス中に表面張力により引き起こされるダメージを回避してもよい。これを防止する別の方法は、ナノワイヤ間の充填材として電気絶縁性の支持材を使用することである。充填材は、放射光又は検出光に対し透明である必要がある。
【0156】
ナノワイヤ又はナノピラミッドアレイ上に水滴があり、それを除去する試みが、例えば、窒素ブローを伴う場合、蒸発により水滴は小さくなるが、水滴は表面張力により常に球形を維持しようとする。これは、水滴の周囲又は内部のナノ構造を破損又は破壊し得る。
【0157】
この問題は、臨界点乾燥法により回避される。温度と圧力を上昇させることにより、液体と気体との間の相境界を除去することができ、水を容易に除去することができる。
【0158】
トップコンタクトグラファイト層は、好ましくは、透明で導電性且つフレキシブルである。成長したままのナノワイヤの上の金属粒子に対するグラファイト層の電気的及び機械的接触をさらに促進するために、ポストアニールプロセスを使用してもよい。グラファイトトップコンタクトの堆積後、サンプルは、例えばアルゴンなどの不活性雰囲気又は真空中でアニールすることができる。温度は最高600℃まで可能である。アニール時間は最高10分まで可能である。
【0159】
また、グラファイトトップコンタクトのドーピングを利用することもできる。グラファイトトップコンタクトの主要なキャリアは、ドーピングにより正孔又は電子のいずれかとして制御することができる。グラファイトトップコンタクトと半導体ナノワイヤにおけるドーピングタイプが、特に金属触媒粒子の下の領域において、同じであることが好ましく、これにより、ポストアニールプロセス後に良好なオーミック挙動が得られる。例えば、シェル内にpドーピングを有するコアシェルナノワイヤ又はナノピラミッドの場合、トップグラファイト層のpドーピングは、ナノワイヤ又はナノピラミッドシェルのトップの金属粒子全体のキャリアタイプに一致する。
【0160】
従って、当然のことながら、トップグラファイト層と基板はいずれもドープすることができる。実施形態によっては、基板及び/又はグラファイト層は、化学的方法によりドープされ、その化学的方法は、金属塩化物(FeCl3、AuCl3又はGaCl3)、NO2、HNO3、芳香族分子などの有機若しくは無機分子又はアンモニアなどの化学溶液の吸着を伴う。
【0161】
基板の表面及び/又はグラファイト層は、その成長中に、置換ドーピング法により、B、N、S又はSi等のドーパントを導入し、ドープすることもできる。
【0162】
[応用]
半導体ナノワイヤ又はナノピラミッドは、広範囲にわたる有用性を有する。これらは半導体であるため、半導体技術が有用なあらゆる分野で応用されることが期待できる。これらは、主に集積ナノエレクトロニクス及びナノオプトエレクトロニクス用途に使用される。
【0163】
それらを配置するのに理想的なデバイスは、特に、太陽電池であり得る。可能なデバイスの一つは、2つの端子としての2つのグラフェン層間に挟まれたナノワイヤ又はナノピラミッド太陽電池である。
【0164】
このような太陽電池は、同時に効率的で安価且つフレキシブルである可能性がある。これは急速に発展している分野であり、これらの有益な材料に関する更なる応用が、今後数年間に見られるであろう。同一概念を用いて、発光ダイオード(LED)、光検出器、導波管及びレーザなどの他の光電子デバイスも製造することができる。
【0165】
当然のことながら、本発明のデバイスには、電極が設けられており、デバイスに電荷を流すことができる。
【0166】
ここで、以下の非限定的実施例及び図面と関連させ、本発明について更に検討する。
【0167】
[図面の簡単な説明]
図1(a)は、グラファイト基板上のバッファ層の堆積、それに続くナノワイヤ成長の概略図を示す。
【0168】
図1(b)は、グラファイト基板上の核生成アイランドの堆積、それに続くナノワイヤ成長の概略図を示す。
【0169】
図2は、核生成アイランドの形成及びナノワイヤ成長スキームの代表的結果を示す。(a)MOVPEによりグラフェン上に成長したAlGaN核生成アイランドのSEM像。(b)MOVPEによるグラフェン上のAlGaN核生成アイランド上に成長したGaNナノワイヤのSEM像。挿入図:グラフェン上のAlGaN核生成アイランド無しでのGaN成長のSEM像であり、垂直GaNナノワイヤの成長は見られない。
【0170】
図3(a)は、AlGaN核生成アイランドを用いてグラフェン上に成長させたGaNナノワイヤの断面高分解能走査透過型電子顕微鏡(STEM)画像である。図3(b)は、(a)と同じナノワイヤの高角度散乱暗視野STEM像であり、AlGaN核生成アイランドを示す。
【0171】
図4aは、規則的なアレイに成長させた本発明の(Al)GaNナノピラミッドのSEM像である。AlGaN核生成アイランドを成長させた後、気相中Alを3%含むAlGaNを150秒間成長させた。図4bは、前記ナノピラミッドのクローズアップ画像である。
【0172】
図5は、(a)グラファイトフレーク上のナノワイヤの成長及びナノワイヤに対するトップ及びボトムコンタクトを示す概略図である。MBEによる多層グラフェンフレーク上の選択成長させたGaNナノワイヤの斜視SEM像(b)及び高分解能SEM像(c)。
【0173】
図6は、初期グラファイト基板上の核生成を増強するために、AlAsSbナノスケールアイランドを用いてMBEにより成長させた自己触媒GaAsSbナノワイヤのSEM像を示す。挿入図:垂直GaAsSbナノワイヤの拡大図。
【0174】
図7は、(a)UV-オゾン並びに(b)Ar雰囲気中でのUV-オゾン及びH2アニーリングによるグラファイトの処理後の原子間力顕微鏡(AFM)トポグラフィ画像を示す。
【0175】
図8(a)は、UVオゾンによる処理後のグラファイト表面の、図6(a)の実線に沿ったAFM高さプロファイルを示す。
【0176】
図8(b)は、UV-オゾン処理及びその後のAr雰囲気中でのH2アニーリング後のグラファイト表面の、図6(b)の破線に沿ったAFM高さプロファイルを示し、原子ステップとレッジの形成を示す。(その後、ナノワイヤ又はナノピラミッドを、処理されたグラファイト基板上で成長させる。)
図9(a)は、未処理の初期グラファイト表面上で成長させたGaAsSbナノワイヤのSEM像を示す。図9(b)は、UVオゾン処理し、H2アニール処理したグラファイト表面上で成長させたGaAsSbナノワイヤのSEM像を示す。(a)と比べると、(b)では垂直ナノワイヤの密度の改善が見られる。
【0177】
図10は、熱活性化によりアモルファスシリコン(a-Si)層3がアルミニウム金属層2を介して拡散するグラフェン層1上のシリコンのアルミニウム誘起結晶化(MIC)の主要なプロセス工程を示す。グラフェン-Al界面で、シリコンは、[111]配向を有する多結晶構造(p-Si)に再配列する。p-Si構造上のアルミニウム金属層及び酸化物層は、それぞれHCl及びHFを用いてエッチングしてもよい。(その後、グラフェン上のMICシリコン上にナノワイヤ又はナノピラミッドを成長させる)。
【0178】
図11は、MICシリコンで覆われたアモルファス(SiO2)基板上にMBEによって成長させた自己触媒GaAsナノワイヤのSEM像を示す。
【0179】
[実施例1]
AlGaN核生成アイランドを用いたグラファイト表面上でのGaNナノワイヤ成長の実験手順:
この実験には、Cu箔上の市販のCVD成長グラフェンを、Si(001)、Si(111)及びサファイア支持基板上に移し使用した。GaNナノワイヤの成長は、水平流MOVPE反応器(Aixtron 200RF)内で行った。サンプルを装填した後、反応器を排気し、且つ、N2でパージし、反応器内の酸素及び水分を除去した。反応器圧力は75Torrに設定し、H2を成長のためのキャリアガスとして使用した。続いて、基板は、H2雰囲気下、基板温度約1200℃で5分間、熱的クリーニングを行った。その後、600sccmのNH3流を用いて10分間、窒化工程を実施した。続いて、TMGa及びTMAlをそれぞれ44.8及び26.3μmol/分の流量で40秒間導入し、AlGaN核生成アイランドを成長させ、続いて2分間の窒化工程を実施した。
【0180】
GaNナノワイヤを成長させるため、基板温度は、約1150℃まで下げ、NH3流を25sccmに設定した。温度が安定した時点で、それぞれ44.8及び0.03μmol/分の流量でTMGa及びシランを導入することにより約3.5分間、SiドープGaNナノワイヤを成長させた。成長後、サンプルは、温度が500℃未満に低下するまで25sccmのNH3流下で冷却した。
【0181】
[実施例2]
窒素プラズマ処理したグラファイト表面上でのナノワイヤ成長の実験手順:
この実験では、多層グラフェンをキッシュグラファイトフレークから機械的に剥離し、次にSiO2/Si支持基板にインジウム結合させた。Al23及びSiO2などのマスク材は、グラファイトフレーク上に任意に堆積させることができる。グラファイトの表面が穴の中に露出するように、フォトリソグラフィーを用いて、直径10μmの大きな穴をマスク材にエッチングする。任意に、直径約100nmの周期的に間隔を置いて配置された数個の小孔を、電子ビームリソグラフィーを用いてエッチングし、孔内に露出したグラファイト表面上でナノワイヤが選択的に成長するようにすることができる。窒素プラズマ源、Gaデュアルフィラメントセル、及びAl二重坩堝セルを備えたVeeco Gen 930 MBE システムで、窒素プラズマ処理及びナノワイヤ成長を行った。
【0182】
次いで、上記のサンプルをMBEシステムに装填し、サンプルのガス放出及びナノワイヤの成長を行う。サンプルは、基板温度550℃で30分間アニールし、基板上の酸化物残留物及び他の混入物質を除去する。次に、基板温度をGaNナノワイヤの成長に適した温度、すなわち、通常755℃まで上昇させる。
【0183】
Ga及びAlエフュージョンセルの温度は、予め設定し、それぞれ、1時間当たり0.3及び0.2μmの公称面成長速度が得られるようにする。窒素プラズマは、450WのRF電力及び2.8sccmの窒素ガス流を使用して生成する。サンプル温度が成長温度に達した後、窒素源の前のゲートバルブ及びシャッターを1分間開放し、窒素プラズマをサンプルに指向させる。次いで、サンプルは、MBEによるナノワイヤの成長に供されるか、又はMBE成長チャンバから取り出し、MOCVDによるナノワイヤ又はナノピラミッド成長に供される。MBEによるナノワイヤ成長の場合、Alフラックスを6秒以上供給した後、Alフラックスと窒素プラズマを1分間以上供給した。続いて、Ga及び窒素源の前のシャッターを開き、Gaフラックス及び窒素プラズマを同時に供給し、真性(意図的にアンドープの)GaNナノワイヤの成長を開始させた。Siドーパントを供給してn型GaNナノワイヤを得、Be又はMgドーパントのいずれかを供給してp型GaNナノワイヤを得た。成長後、全てのシャッターを閉じ、同時に基板の温度を下げる。
【0184】
[実施例3]
核生成のためのAlAsSbナノスケールアイランドを介したグラファイト表面上での高収率垂直GaAsSbナノワイヤのMBE成長の実験手順:
ナノワイヤは、Gaデュアルフィラメントセル、Al二重坩堝セル、Asバルブドクラッカーセル、及びSbバルブドクラッカーセルを備えたVarian Gen II Modular MBEシステムで成長させる。クラッカーセルは、単量体、二量体及び四量体の割合を固定させる。この例では、ヒ素及びアンチモンの主要種は、それぞれAs2及びSb2である。
【0185】
NWの成長は、高温昇華法を用いてSiC基板上に成長させたグラフェン膜上又はキッシュグラファイトフレーク上で行われる。グラフェン膜サンプルは、外部供給業者から購入する。キッシュグラファイトサンプルをイソプロパノールで洗浄し、続いて窒素でブロー乾燥し、次いでシリコンウェーハにインジウム結合させ、最後に劈開させ、NW成長用の新たなグラファイト表面を得る。グラフェン/SiC基板を、窒素でブロー乾燥した後、シリコンウェーハにインジウム結合させる。
【0186】
次に、サンプルをMBEシステムに装填し、サンプルのガス放出及びナノワイヤの成長を行う。サンプルは、基板温度550℃で30分間アニールし、基板上の酸化物残留物を除去する。次に、基板温度をGaAs又はGaAsSbナノワイヤの成長に適した温度、すなわち、630℃まで上昇させる。
【0187】
Al及びGaエフュージョンセルの温度は、予め設定し、それぞれ、1時間当たり0.1μm及び1時間当たり0.7μmの公称面成長速度が得られるようにする。GaAs(Sb)ナノワイヤを形成するために、2.5×10-6TorrのAs2フラックスを使用し、Sb2フラックスは、0~1×10-6Torrの範囲の値(意図するGaAsSb組成による)、例えば6×10-7Torrに設定する。
【0188】
まず、Alフラックスを、他の供給源のシャッター/バルブを閉じた状態で、通常、1秒間以上、表面に供給する。次いで、Alシャッターを閉じ、As及び/又はSbフラックスを、通常、60秒間、表面に供給し、グラファイト表面上にAlAs(Sb)ナノスケールアイランドを形成する。その後、V族シャッター及びバルブを閉じ、Gaシャッターを通常5秒間開け、Gaフラックスを表面に供給してナノスケールアイランドでGa液滴の形成を開始させる。その後、関連するV族シャッター及びバルブを再び開け、ナノワイヤの成長を開始させる。例えば、GaAsナノワイヤ成長の場合には、この時点でAsシャッター及びバルブのみを開け、GaAsSbナノワイヤ成長の場合には、Sbシャッター及びバルブも開ける。ナノワイヤ成長の継続時間は、ナノワイヤの意図する長さによって決まる。図6に示すGaAsSbナノワイヤのサンプルの場合、ナノワイヤの成長時間は5分であった。すべてのシャッター/バルブを閉じ、同時に基板を室温まで下げることにより、成長を停止させる。
【0189】
[実施例4]
グラファイト表面のUVオゾン処理とH2アニーリング及び垂直GaAs(Sb)ナノワイヤのMBE成長の実験手順:
この実験に際しては、キッシュグラファイトフレークをグラファイト基板として使用した。キッシュグラファイトサンプルをイソプロパノールで洗浄し、続いて窒素でブロー乾燥し、次いでシリコンウェーハにインジウム結合させ、最後に劈開させ、ナノワイヤ成長用の新たなグラファイト表面を得る。基板を約150℃で6分間UV-オゾン中で処理した後、約300℃で45分間H2中でアニールした。
【0190】
ナノワイヤは、実施例3に記載のものと同じMBEシステムにおいて成長させる。ヒ素及びアンチモンの主要種は、それぞれAs2及びSb2である。
【0191】
サンプルをMBEシステムに装填し、約550℃で30分間ガス放出させ、基板上の酸化物残留物を除去する。次いで、基板温度を、GaAs又はGaAsSbナノワイヤ成長に適した温度、すなわち630℃まで上昇させる。
【0192】
Gaエフュージョンセルの温度は、予め設定し、1時間当たり0.7μmの公称面成長速度が得られるようにする。Ga液滴を形成するために、約630℃の基板温度で10秒間Gaフラックスを供給した。その後、温度を約250℃まで下げ、8×10-7TorrのSb2フラックス及び2.5×10-6TorrのAs2フラックスをそれぞれ50秒間及び40秒間供給する。次に、基板温度を再び約630℃に上昇させる。GaAs(Sb)ナノワイヤを形成するために、Gaフラックスを2.5×10-6TorrのAs2フラックスと共に10分間供給し、Sb2フラックスは0~1×10-6Torrの範囲の値(意図するGaAsSb組成による)、例えば8×10-7Torrに設定する。成長後、全てのシャッターを閉じ、同時に基板の温度を下げる。
【0193】
[実施例5]
グラフェン上での金属誘起結晶化(MIC)によるSi(111)形成の実験手順:
グラフェンサンプル上のMICポリSi(111)は、Si(001)上に移した市販の化学蒸着(CVD)成長単層グラフェンから成るものであった。これらのサンプル上に、速度1Å/秒及び圧力約10-8Torrで電子ビーム蒸着により50nmのAlを堆積させた。サンプルをISO5クリーンルーム雰囲気中で24時間酸化させた後、速度1Å/秒及び圧力約10-8Torrで電子ビーム蒸着により50nmのアモルファスSi(a-Si)を堆積させた。全ての堆積は室温で行った。サンプルを、窒素ガス中、500℃で15時間アニールした。アニールによる層交換の後、Alの最上層をリン酸混合物中でエッチングすることにより除去した。
図1a
図1b
図2
図3
図4
図5a
図5b
図5c
図6
図7
図8
図9
図10
図11