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特許7009361膝関節を少なくとも部分的に代替する膝用体内プロテーゼ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-14
(45)【発行日】2022-01-25
(54)【発明の名称】膝関節を少なくとも部分的に代替する膝用体内プロテーゼ
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/38 20060101AFI20220118BHJP
【FI】
A61F2/38
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018517821
(86)(22)【出願日】2016-10-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2018-10-11
(86)【国際出願番号】 EP2016073640
(87)【国際公開番号】W WO2017060221
(87)【国際公開日】2017-04-13
【審査請求日】2019-10-02
(31)【優先権主張番号】102015219344.6
(32)【優先日】2015-10-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】511004645
【氏名又は名称】セラムテック ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】CeramTec GmbH
【住所又は居所原語表記】CeramTec-Platz 1-9, D-73207 Plochingen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ヴィルヘルム ブレーマー
【審査官】宮部 愛子
(56)【参考文献】
【文献】特表2000-514338(JP,A)
【文献】特表2002-506711(JP,A)
【文献】特開2002-011026(JP,A)
【文献】特表2013-501555(JP,A)
【文献】米国特許第05219362(US,A)
【文献】特開昭60-077752(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0136452(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
大腿骨遠位部に固定する、大腿骨内側顆部(1a)と大腿骨顆部(1b)とを有する大腿骨コンポーネント(1)と、脛骨近位部に固定する脛骨コンポーネント(2)と、これら2つのコンポーネント(1,2)の間の複数の滑動面とを備えた膝用体内プロテーゼにおいて、
前記脛骨コンポーネント(2)に関節接合する前記大腿骨コンポーネント(1)全体は、固く焼結されたセラミックから成っており、前記脛骨コンポーネント(2)は、固く焼結されたセラミックから成る脛骨プラトーを有しており、該脛骨プラトーは、前記大腿骨コンポーネント(1)に面した上面に球面状の内側ベアリングシェル(7)を有しており、該球面状の内側ベアリングシェル(7)は、前記脛骨プラトーの組込み構成部材でありかつ前記脛骨プラトーと一体的に形成されており、大腿骨内側顆部(1a)の関節面も同様に球面状に形成されていて、前記球面状の内側ベアリングシェル(7)と共に1つの合致したボールジョイントを成しており、前記球面状の内側ベアリングシェル(7)に並んで外側には、前記大腿骨コンポーネント(1)の回動を可能にする、前後方向において複数の半径から形成されていて、前記脛骨プラトーに対して相対的に可動のインレーである、大腿骨顆部(1b)とは合致しないベアリングシェル(8)が配置されており、
前記インレーは、前記脛骨プラトー上の溝(9)内で可動である、ことを特徴とする、膝用体内プロテーゼ。
【請求項2】
前記脛骨プラトーは、脛骨近位部に面した下面に、固定用のボルト(6)を有している、請求項1記載の膝用体内プロテーゼ。
【請求項3】
前記インレーは、UHMWPE,PEEK,PAEKまたは複合材料または固く焼結されたセラミックまたはポリエチレンから成る、請求項1または2記載の膝用体内プロテーゼ。
【請求項4】
前記溝(9)は、前後方向において直線的に形成されているか、または大腿骨回動を決定する曲率半径を備えて形成されている、請求項1から3までのいずれか1項記載の膝用体内プロテーゼ。
【請求項5】
前記大腿骨回動は、最大15度の内回りと外回りとに制限されている、請求項1から4までのいずれか1項記載の膝用体内プロテーゼ。
【請求項6】
前記大腿骨顆部(1b)とは合致しないベアリングシェル(8)またはインレーは、前方向に隆起部(10)を有している、請求項1から5までのいずれか1項記載の膝用体内プロテーゼ。
【請求項7】
前記大腿骨顆部(1b)は、前記大腿骨顆部(1b)とは合致しないベアリングシェル(8)内で関節接合しており、屈曲運動の他に、前後方向での並進運動をも行うことができる、請求項1から6までのいずれか1項記載の膝用体内プロテーゼ。
【請求項8】
請求項1から7までのいずれか1項記載の膝用体内プロテーゼの脛骨コンポーネントにおいて、該脛骨コンポーネント(2)は、固く焼結されたセラミックから成る脛骨プラトーを有しており、該脛骨プラトーは、球面状の内側ベアリングシェル(7)を有しており、該球面状の内側ベアリングシェル(7)は、前記脛骨プラトーの組込み構成部材でありかつ前記脛骨プラトーと一体的に形成されており、前記球面状の内側ベアリングシェル(7)に並んで、前記大腿骨コンポーネント(1)の回動を可能にする、前後方向において複数の半径から形成されていて、前記脛骨プラトーに対して相対的に可動なインレーである、前記大腿骨顆部とは合致しないベアリングシェル(8)が配置されていることを特徴とする、膝用体内プロテーゼの脛骨コンポーネント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大腿骨遠位部に固定する、2つの顆状面を有する大腿骨コンポーネントと、脛骨近位部に固定する脛骨コンポーネントと、これら2つのコンポーネントの間の複数の滑動面とを備えた膝用体内プロテーゼに関する。
【0002】
本発明は全体的に、膝関節を少なくとも部分的に代替する膝用体内プロテーゼの改良に関する。部分的もしくは全体的に膝関節を代替するための膝用体内プロテーゼは、典型的には大腿骨遠位部に固定する大腿骨コンポーネントと、脛骨近位部に固定する脛骨コンポーネントとから成り、この場合、脛骨コンポーネントは、大腿骨コンポーネントと関節接合するインサートまたは半月板コンポーネントを有している。
【0003】
米国特許第6013103号明細書(US 6,013,103)に記載の膝用体内プロテーゼでは、脛骨部品の表面が平らに形成されていて、この平面における半月板部品の摺動を可能にしており、この場合、半月板部品は、内側顆部滑動面と外側顆部滑動面の両方を有している。大腿骨コンポーネントの内側顆部と、半月板部品の内側ベアリングシェルとは、同様に球面状に形成されている。つまり半月板部品は3つの滑動面、すなわち内側顆部、外側顆部および脛骨部品上面/半月板部品下面を有している。
【0004】
実地において、このような構成形式の膝用体内プロテーゼにより、解剖学的および運動学的条件は確かに比較的良好に複製され得るが、合計3つの摩擦面に起因して、材料技術的に互いに最適には適合されていない各滑動面は、固定された半月板部品に対して高められた材料摩耗を有しており、ひいてはインプラントの弛緩のリスクが高くなっている、ということが判った。
【0005】
本発明の根底を成す課題は、天然膝関節の解剖学的および運動学的な特性を最適に複製すると同時に、特に適切な材料の組合せと摩耗発生面の減少とに基づき最小限の摩耗を有するように、膝用体内プロテーゼを形成することにある。
【0006】
この課題は本発明に基づき、脛骨コンポーネントに関節接合する大腿骨コンポーネント全体、ただし少なくとも大腿骨コンポーネントの各顆状面は、固く焼結されたセラミックから成っており、脛骨コンポーネントは、固く焼結されたセラミックから成る脛骨プラトーを有しており、脛骨プラトーは、大腿骨コンポーネントに面した上面に球面状の内側ベアリングシェルを有しており、球面状の内側ベアリングシェルは、脛骨プラトーの組込み構成部材でありかつ脛骨プラトーと一体的に形成されており、大腿骨内側顆部の関節面も同様に球面状に形成されていて、球面状の内側ベアリングシェルと共に1つの合致したボールジョイントを成しており、球面状の内側ベアリングシェルに並んで外側には、大腿骨コンポーネントの回動を可能にする、前後方向において複数の半径から形成されていて、脛骨プラトーと一体的に形成されているか、または脛骨プラトーに対して相対的に可動のインレーである、大腿骨顆部とは合致しないベアリングシェルが配置されていることにより、解決される。このようにして摩耗発生面が減少されたことにより、最小限の摩耗が生じることになる。
【0007】
好適には、脛骨プラトーは脛骨近位部に面した下面に、固定用のボルトを有している。有利には、このボルトは固く焼結されたセラミックから成っており、脛骨プラトーと一体的に形成されている。ボルトは非円形横断面を有していてよく、ひいては天然脛骨内に回動不能に固定されるようになっている。
【0008】
前記インレーは、好適にはUHMWPE(超高分子量ポリエチレン),PEEK(ポリエーテルエーテルケトン),PAEK(芳香族ポリエーテルケトン)または複合材料または固く焼結されたセラミックまたはポリエチレンから成る。
【0009】
インレーは、脛骨プラトー上の溝内で可動であってよく、これにより、大腿骨コンポーネントの回動が可能になっている。溝は、有利には前後方向において直線的に形成されているか、または大腿骨回動を決定する曲率半径を備えて形成されている。
【0010】
大腿骨回動は、好適には最大15度の内回りと外回りとに制限されている。
【0011】
伸展(伸長状態)におけるジョイント安定化のために、好適にはベアリングシェルまたはインレーは、前方向に隆起部を有している。
【0012】
ベアリングシェル内で関節接合する顆状面1bは、有利には屈曲運動の他に、前後方向での並進運動をも行う。
【0013】
膝用体内プロテーゼの、本発明による脛骨コンポーネントは、該脛骨コンポーネントが、固く焼結されたセラミックから成る脛骨プラトーを有しており、脛骨プラトーは、球面状の内側ベアリングシェルを有しており、球面状の内側ベアリングシェルは、脛骨プラトーの組込み構成部材でありかつ脛骨プラトーと一体的に形成されており、球面状の内側ベアリングシェルに並んで、大腿骨コンポーネントの回動を可能にする、前後方向において複数の半径から形成されていて、脛骨プラトーと一体的に形成されているか、または脛骨プラトーに対して相対的に可動なインレーである、大腿骨顆部とは合致しないベアリングシェルが配置されていることを特徴とする。
【0014】
つまり本発明は、膝用体内プロテーゼであって、脛骨部品と、2つの顆状面を有する大腿骨部品と、専ら大腿骨外側顆部と脛骨部品との間にのみ配置された唯一つの半月板部品とを備えており、該半月板部品はその上面に、大腿骨部品の外側顆状面を受容しかつ支持するためのベアリングシェルを有しており、かつその下面に、脛骨部品と固く、ただし解離可能に結合するための固定機構を有しており、内側ベアリングシェルは、脛骨プラトーの組込み構成部材であり、該ベアリングシェルは、球面状の幾何学形状を有しておりかつ大腿骨内側顆部の球面状の幾何学形状と共に1つの合致したボールジョイントを成しており、脛骨部品は、内側ベアリングシェルと共に1つの共通の構成部材(モノブロック)を形成しており、かつ好適にはセラミック材料から製造されていて、やはりセラミックから製造された大腿骨部品に関節接合するものに関する。モジュール式の外側の半月板部品-固定または可動-は、好適にはUHMWPEから製造されており、やはりセラミックの大腿骨顆部に関節接合する。
【0015】
内側ベアリングシェルが、セラミックの脛骨プラトーの組込み構成部材でありかつ球面状に形成されていることにより、この内側ボールジョイントは、腰用体内プロテーゼにおけるセラミック/セラミック関節と比較可能な、セラミック/セラミック滑り対による最大限の合致をもたらすと共に、最小の摩耗を約束する。外側では、セラミックの脛骨部品に結合されるべきまたは脛骨部品に対して相対的に可動のインレーの、大腿骨コンポーネントの回動を可能にする、大腿骨顆部とは一致しないベアリングシェルが、天然関節と十分に比較可能な動作機構を保証しており、この場合、インレーは、UHMWPE,PEEK,PAEK、例えばセラミック/ポリエチレン等の様々な材料から成る複合材料から製造されている。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明による膝関節用体内プロテーゼを示す図である。
図2図1に示した脛骨コンポーネントを上から見た図である。
図3図2に示した3-3線に沿った断面図である。
図4図3に示した4-4線に沿った断面図である。
図5図3に示した5-5線に沿った断面図である。
【0017】
図1に示す、本発明による膝関節用体内プロテーゼは、大腿骨遠位部に固定するための大腿骨コンポーネント1を有する、2つの顆状面1a,1bから成る大腿骨部品と、脛骨近位部に固定するための脛骨コンポーネント2とを備えている。脛骨コンポーネントは脛骨プラトーから成り、脛骨プラトーの、脛骨に面した固定用の下面には、ボルト6が配置されている。上面、すなわち脛骨プラトーの、大腿骨コンポーネント1に面した側には、本発明に基づき内側ベアリングシェル7が、セラミックの脛骨プラトーの組込み構成部材として配置されている。この内側ベアリングシェル7は、球面状に形成されている。大腿骨コンポーネント1と脛骨コンポーネント2とは両方共、固く焼結されたセラミックから製造されている、すなわちセラミック部品である。これにより、長期使用においてもほとんど摩耗しない、セラミック/セラミック滑り対が得られることになる。内側ベアリングシェル7に並んで外側には、大腿骨コンポーネントの回動を可能にする、前後方向において複数の半径から形成された、ひいては大腿骨顆部とは合致しないベアリングシェル8が配置されている。このベアリングシェル8は、脛骨コンポーネント2と固く結合されたベアリングシェルであってよいか、または脛骨コンポーネント2に対して相対的に可動であり、天然関節と十分に同等の動作機構を有するインレーであってよい。可動のインレーは、好適にはUHMWPE,PEEK,PAEKまたは複合材料、あるいはセラミックまたはポリエチレン等の複数の材料から成る。
【0018】
図1には、脛骨コンポーネント2の溝9内で可動のベアリングシェル8の実施形態が示されている。この溝9は、前後方向において直線的に形成されていてよいか、または大腿骨回動を決定する曲率半径を備えて形成されていてもよく、この場合、大腿骨回動は、約15度の内回りと外回りとに制限される(図示せず)。曲率半径は、大腿骨コンポーネントのそのときどきの大きさに応じて変わる。
【0019】
図2には、図1に示した脛骨コンポーネント2の、大腿骨コンポーネント1に面した脛骨プラトーを上から見た図が示されている。内側ベアリングシェル7が球面状に形成されていることを良好に認識することができる。内側ベアリングシェル7に並んで、大腿骨顆部とは合致しないベアリングシェル8が配置されており、ベアリングシェル8は、脛骨プラトーと固く結合されていてよいか(図示せず)、または脛骨プラトー上で溝9内を可動に案内されている。
【0020】
図3には、図2に示した3-3線に沿った断面図が示されている。大腿骨顆部1bとは前後方向において合致しないベアリングシェル8が、脛骨プラトーに固く固定されて、または溝9内で可動に用いられている一方で、顆状面1aは、球面状の内側ベアリングシェル7内に合致して関節接合している。
【0021】
図4には、図3に示した4-4線に沿った断面図が示されている。顆状面1aは、球面状の内側ベアリングシェル7内に合致して関節接合している。伸展(伸長状態)におけるジョイント安定化のために、ベアリングシェル7は前方向に隆起部10を有している。
【0022】
図5には、図3に示した5-5線に沿った断面図が示されている。顆状面1bは、ベアリングシェル8内で関節接合しており、かつ屈曲運動の他に、前後方向での並進運動をも可能にする。図5には、顆状面1bの2つの可能な位置ならびに並進距離が示されている。
【符号の説明】
【0023】
1 大腿骨コンポーネント、1a 顆状面
2 脛骨コンポーネント
3 線3-3
4 線4-4
5 線5-5
6 ボルト
7 内側ベアリングシェル
8 合致したベアリングシェル
9 溝
10 隆起部
図1
図2
図3
図4
図5