(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-14
(45)【発行日】2022-01-25
(54)【発明の名称】ヒートポンプネットワーク
(51)【国際特許分類】
F24D 10/00 20220101AFI20220118BHJP
F24D 3/18 20060101ALI20220118BHJP
F24H 1/50 20220101ALI20220118BHJP
F24H 4/02 20220101ALI20220118BHJP
F25B 27/00 20060101ALI20220118BHJP
【FI】
F24D10/00
F24D3/18
F24H1/50
F24H4/02 C
F25B27/00 P
(21)【出願番号】P 2018522748
(86)(22)【出願日】2016-11-03
(86)【国際出願番号】 EP2016076479
(87)【国際公開番号】W WO2017076936
(87)【国際公開日】2017-05-11
【審査請求日】2018-06-29
【審判番号】
【審判請求日】2019-08-09
(32)【優先日】2015-11-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(32)【優先日】2016-01-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】506280052
【氏名又は名称】ベーシック ホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マーティン ベッツ
【合議体】
【審判長】山崎 勝司
【審判官】平城 俊雅
【審判官】河内 誠
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-530237(JP,A)
【文献】特開平4-281130(JP,A)
【文献】特開2005-134014(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24D 3/18
F24D 10/00
F24D 11/00
F24D 17/00-17/02
F24F 5/00
F25B 30/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の個々のヒートポンプを備える分散型ヒーティングネットワークであって、各ヒートポンプは、前記ネットワークの共通のヒートソースに個々に結合され、前記ネットワークの前記共通のヒートソースは、前記ネットワーク内の単一の液体回路を備え、前記単一の液体回路は流れ回路および戻り回路を備え、前記単一の液体回路は、前記共通のヒートソースの能動的熱管理を通じて周囲温度に近くなるように維持され、各ヒートポンプは、前記共通のヒートソースから熱を独立して提供または抽出するように配置され、前記ネットワークは余分な熱を前記共通のヒートソースから逸らすために使用することができるヒートシンクをさらに備え、前記共通のヒートソースは、少なくとも1つのエネルギーソースにさらに結合され、前記少なくとも1つのエネルギーソースは、前記複数の個々のヒートポンプから熱的に切り離され、
前記ネットワークは、前記共通のヒートソースの前記単一の液体回路の温度が前記周囲温度または前記周囲温度に近くなるような温度で維持されるために、前記共通のヒートソースの温度を測定して前記単一の液体回路内の温度を上昇させるように前記共通のヒートソースに前記少なくとも1つのエネルギーソースからエネルギーを送達するように、または前記共通のヒートソースの温度を測定して前記ヒートシンクを使用して前記単一の液体回路から熱を抽出するように配置されるコントローラをさらに備え、前記共通のヒートソースが前記エネルギーソースを前記ヒートポンプから熱的に切り離し、前記共通のヒートソース
の前記単一の液体回路の温度が前記エネルギーソースによって提供されるエネルギーから独立である、分散型ヒーティングネットワーク。
【請求項2】
前記流れ回路の温度は、温度範囲摂氏15~25度内で維持される請求項1に記載のネットワーク。
【請求項3】
前記戻り回路の温度は、温度範囲摂氏10~20度内で維持される請求項2に記載のネットワーク。
【請求項4】
前記少なくとも1つのエネルギーソースは、少なくとも1つの非電気的ヒートソースを含む請求項1乃至3のいずれか一項に記載のネットワーク。
【請求項5】
前記少なくとも1つの非電気的ヒートソースは、熱を前記共通のヒートソースに提供する熱ループを備え、前記熱ループの温度は、前記共通のヒートソースの温度から切り離される請求項4に記載のネットワーク。
【請求項6】
前記個々のヒートポンプのうちの少なくとも1つは、家庭用温水の専用のタンクに結合され、そのヒートポンプからの熱がその専用のタンク内の水を加熱するために使用されるようになる請求項1乃至5のいずれか一項に記載のネットワーク。
【請求項7】
前記個々のヒートポンプのうちの少なくとも1つは、そのヒートポンプから局所的ヒーティングまたはクーリングを提供するように専用のヒーティング/クーリング回路に結合される請求項1乃至6のいずれか一項に記載のネットワーク。
【請求項8】
前記ヒートポンプのそれぞれは、複数のモードで動作可能である請求項1乃至7のいずれか一項に記載のネットワーク。
【請求項9】
前記ヒートポンプは、リバーシブルヒートポンプである請求項1乃至8のいずれか一項に記載のネットワーク。
【請求項10】
第1のモードでは、個々のヒートポンプは、前記共通のヒートソースを使用し、次いで前記専用のタンクに貯蔵される温水を提供するように構成される請求項6に記載のネットワーク。
【請求項11】
第2のモードでは、前記ヒートポンプは、暖房を提供するように構成され、前記ヒートポンプは、前記共通のヒートソースを使用し、ラジエータ回路など専用のヒーティング回路のための熱源を提供するように構成される請求項8または10に記載のネットワーク。
【請求項12】
第3のモードでは、前記ヒートポンプは、1つまたは複数のファンコイルを通じて局所的クーリングを提供するように構成され、その局所的クーリングによって生成された熱は、前記専用のタンク内に貯蔵するために温水を加熱するために使用可能である請求項6に記載のネットワーク。
【請求項13】
生成される温水の体積が貯蔵の目的にとって十分である場合、生成された余分な熱を前記共通のヒートソース内に戻すように構成される請求項12に記載のネットワーク。
【請求項14】
前記ヒートポンプは、局所的クーリングを提供するように構成される請求項1乃至11のいずれか一項に記載のネットワーク。
【請求項15】
1つのヒートポンプからの余分な熱が前記共通のヒートソース内に動作可能に戻され、別の異なるヒートポンプのための熱源として使用される請求項1乃至14のいずれか一項に記載のネットワーク。
【請求項16】
前記少なくとも1つのエネルギーソースは、前記共通のヒートソースに結合される地熱源アレイ、ガスまたはオイルボイラ、CHPプラント、バイオマスボイラ、空気熱源ヒートポンプなどから選択される1つまたは複数のヒートソース構成要素を含む請求項1乃至15のいずれか一項に記載のネットワーク。
【請求項17】
広域地域熱供給ネットワークに結合されるように構成された請求項1乃至16のいずれか一項に記載のネットワーク。
【請求項18】
可変出力ヒートポンプを含む請求項1乃至17のいずれか一項に記載のネットワーク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、ヒートポンプに関し、詳細には、地域熱供給アーキテクチャで使用される分散型ヒートポンプネットワークに関する。
【背景技術】
【0002】
ヒートポンプは、当技術分野で知られており、熱エネルギーを熱源から「ヒートシンク」と呼ばれる送り先へ提供する任意のデバイスとして定義され得る。ヒートポンプは、低温空間から熱を吸収し、それをより温かい空間に解放することによって、自然の熱流の方向とは反対にサーマルエネルギーを移動するように設計される。ヒートポンプは、ある量の外部電力を使用し、エネルギーをヒートソースからヒートシンクに伝達する仕事を達成する。定義によれば、ヒートポンプのためのヒートソースはすべて、加熱されることになる空間より温度が低温でなければならない。最も一般的には、ヒートポンプは、空気(外気または内気)から、または地面から熱を引き込む。
【0003】
建物内など空気室(air space)を加熱するための熱源として、または家庭用温水のための加熱源としてヒートポンプを使用することが知られている。典型的には、単一のヒートポンプが単一のソースに接続されることになり、次いで、そのヒートポンプからの出力は、建物内の空気に熱を伝達するために、またはヒーティング回路および家庭用温水のタンクに熱を伝達するために選択的に使用される。
【0004】
ヒートポンプの知られている応用例は、地域熱供給におけるそれらの使用を含む。地域熱供給は、暖房および水ヒーティングなど住宅および商用ヒーティング要件のために、中央の場所で生成された熱を分配するためのシステムである。熱はしばしば、化石燃料を、しかしますますバイオマスをも燃焼するコジェネレーションプラントから得られるが、熱専用ボイラステーション(heat-only boiler station)、地中熱暖房、ヒートポンプ、および中央ソーラーヒーティングもまた使用され、原子力発電も使用される。地域熱供給プラントは、局所的なボイラより高い効率およびよりよい公害防止をもたらすことができる。これらの利点にもかかわらず、地域熱供給アーキテクチャの改善を求めるニーズが引き続き存在する。
【0005】
さらに、典型的には、ヒートポンプは、単一のヒートソースに結合される。すなわち、それらは1つのタイプの環境、すなわち空気熱源ヒートポンプ、地熱源などと共に使用するための専用である。これらのヒートポンプの効率は、ヒートポンプ動作が必要とされる時点でのエネルギー源として使用可能である、ヒートポンプが基づく環境に根拠を置く。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
これらの、また他のニーズに対処するために、本技法は、第1の態様では、複数の個々のヒートポンプを備える分散型ヒーティングネットワークを提供する。
【0007】
第2の態様では、本技法は、ヒートポンプのための個々のエネルギー源に選択的に結合され得る共通のヒートソースに結合されたヒートポンプを提供する。これらの個々のエネルギー源は、独特かつ別々のエネルギー源であることが望ましい。共通のヒートソースは、個々のエネルギー源のうちの2つ以上を共通のヒートソースに同時に結合することを可能にするように構成され得る。これらの個々のエネルギー源の例は、太陽熱パネル、空気熱交換器、PVTパネル、地下水ループなどを含む。ヒートポンプは、PVTパネル、電気グリッドなど直接電源に結合されてもよい。ヒートポンプは、複数の個々のヒートポンプを備える分散型ヒーティングネットワークに結合されてもよい。そのような構成では、分散型ヒーティングネットワークの各ヒートポンプは、共通のヒートソースに個々に結合されてもよく、個々のヒートポンプのそれぞれは、共通のヒートソースから熱を個々に提供または抽出するように配置される。
【0008】
第1の構成では、共通のヒートソースは、水ベースの回路である。その例は、純水、ブラインなど塩添加剤を有する水、または様々な凍結防止成分を有する水を含む。
【0009】
単一のヒートポンプが提供される場合、または複数のヒートポンプが提供される場合には、ヒートポンプのうちの少なくとも1つが家庭用温水の専用のタンクに結合され得、そのヒートポンプからの熱がその専用のタンク内の水を加熱するために使用されるようになる。ヒートポンプは、複数のモードを提供するように構成され得る。ヒートポンプは、可逆ヒートポンプとして提供され得る。ヒートポンプのうちの1つまたは複数は、可変出力を備えてもよい。
【0010】
第1のモードでは、個々のヒートポンプは、共通のヒートソースを使用し、次いで専用のタンクに貯蔵される温水を提供するように構成される。第2のモードでは、ヒートポンプは、暖房を提供するように使用されてもよく、ヒートポンプは、共通のヒートソースを使用し、ラジエータ回路など専用のヒーティング回路のための熱源を提供するように構成される。第3のモードでは、ヒートポンプは、1つまたは複数のファンコイル、床下暖房の使用などを通じて、局所的クーリングを提供するように構成され得る。局所的クーリングによって生成される熱は、専用のタンク内に貯蔵するための温水を加熱するために使用され得る。そのような構成では、生成される温水の体積が貯蔵の目的にとって十分である場合には、余分な熱が共通のヒートソース内に戻され得る。
【0011】
分散型ネットワーク内に提供された場合、共通のヒートソースへの独立の接続を有する複数のそのようなヒートポンプを提供することによって、1つのヒートポンプからの余分な熱は共通のヒートソース回路内に戻され得、そこでそれを別の異なるヒートポンプのための熱源として使用することができる。
【0012】
このアーキテクチャは、余分な熱を共通のヒートソースから逸らすために使用することができる1つまたは複数のバッファまたはヒートシンクモジュールをも含み得る。例は、コールドストア、ウォームストア、チラーなどを含む。
【0013】
このアーキテクチャは、共通のヒートソースに結合される地熱源アレイ、ガスまたはオイルボイラ、CHPプラント、バイオマスボイラ、空気熱源ヒートポンプなど、1つまたは複数のヒートソース構成要素を備え得る。さらに、ネットワークは、より大きな都市またはコミュニティ全体の地域熱供給ネットワークの状況の中で提供されるものなど、接続広域地域熱供給ネットワークを可能にするように拡張されてもよい。
【0014】
したがって、本願の第1の実施形態は、請求項1に記載のヒートポンプを提供する。有利な実施形態は、従属請求項に提供されている。本教示は、対象とされる独立請求項に記載のヒートポンプネットワークをも提供する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
次に、本願について、添付の図面を参照して述べる。
【
図1】分散型ヒーティングネットワークを含むアーキテクチャの概略図である。
【
図2】ヒーティング負荷構成で動作可能な
図1のアーキテクチャの一例の図である。
【
図3】ヒーティングおよびクーリング構成で動作可能な
図1のアーキテクチャの一例の図である。
【
図4】クーリングおよび家庭用温水ヒーティング構成で動作可能な
図1のアーキテクチャの一例の図である。
【
図5】本教示による局所負荷に結合された、
図1の構成による個々のヒートポンプの配管ネットワークを示す概略図である。
【
図6】家庭用温水を局所シリンダに提供するための本教示による局所負荷に結合された、
図1の構成による個々のヒートポンプの配管ネットワークを示す概略図である。
【
図7】家庭用暖房を提供するための本教示による局所負荷に結合された、
図1の構成による個々のヒートポンプの配管ネットワークを示す概略図である。
【
図8】クーリングおよび家庭用温水を共に提供するために本教示による局所負荷に結合された個々のヒートポンプの配管ネットワークを示す概略図である。
【
図9】複数のヒートソースから供給される共通のヒートソースに結合されるスタンドアロンのヒートポンプを示すための前図に記載のアーキテクチャの変更形態の図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1から
図4は、本教示による地域熱供給アーキテクチャの例示的な概略図である。示されている例では、集合住宅建物100は、複数の個々の住戸101a...101hを備える。各住戸内には、個々のヒートポンプ110a...110hが設けられている。個々のヒートポンプ110a...110hのそれぞれは、典型的には水回路の形態で提供される共通のヒートソース120に個々に結合される。
【0017】
ヒートソース120に個々に結合された複数のヒートポンプを提供することの結果として、個々のヒートポンプのそれぞれは、共通のヒートソース120から熱を個々に提供または抽出することができる。ヒートソースは、周囲温度で、またはその近くで維持される。
【0018】
図5から
図8の概略図に示されているように、個々のヒートポンプ110のそれぞれは、家庭用温水の専用のタンク500に結合され得、そのヒートポンプからの熱がその専用のタンク500内の水を加熱するために使用されるようになる。ヒートポンプ110のそれぞれは、局所ヒーティングまたはクーリング回路510に結合されてもよい。
【0019】
共通のヒートソースへの独立の接続を有する複数のそのようなヒートポンプ110を提供することによって、1つのヒートポンプからの余分な熱は共通のヒートソース回路内に戻され得、そこでそれを別の異なるヒートポンプのための熱源として使用することができる。
【0020】
このアーキテクチャは、余分な熱を共通のヒートソース120から逸らすために使用することができる1つまたは複数のバッファまたはヒートシンクモジュールをも含み得る。例は、コールドストア130、ウォームストア140、チラー150などを含む。
【0021】
このアーキテクチャは、共通のヒートソース120に結合される地熱源アレイ160、ガスまたはオイルボイラ170、CHPプラント180、バイオマスボイラ190、空気熱源ヒートポンプ200など、1つまたは複数のヒートソース構成要素を備え得る。地熱源アレイは、地熱源ヒートポンプ165に結合され得る。これらのヒートソース構成要素は、共通のヒートソースにエネルギーを提供する1つまたは複数のエネルギーソースを画定する。共通のヒートソース流体ループの温度は、これらのエネルギーソースによって提供されるエネルギーから独立である、または熱的に切り離されている。このようにして、共通のヒートソースは、エネルギーソースを複数のヒートポンプから熱的に切り離す。
【0022】
個々のヒートポンプは、複数のモードを提供するように構成され得る。ヒートポンプは、可逆ヒートポンプとして提供され得る。
【0023】
図6に示されている第1のモードでは、個々のヒートポンプ110は、共通のヒートソース120を使用し、次いで専用のタンクまたはシリンダ500に貯蔵される温水を提供するように構成される。この構成では、バルビング構成を使用し、冷水を共通のヒートソース120からヒートポンプの蒸発器構成要素520を通して導く。ヒートポンプの従来の動作により、蒸発器を通る冷水のこの流れを熱交換器内で使用し、ヒートポンプの凝縮器ループ530において温水のソースを提供することができる。次いで、この温水は、シリンダ内のコイルを通って供給され、レジオネラの可能性を回避するために、そこに含まれる水を55°より高い温度に加熱する。この構成では、弁回路(この例では三方弁540として示されている)が、暖房/冷房ループ510を通る循環を回避するために切り替えられる。
【0024】
図7に示されている第2のモードでは、ヒートポンプは、暖房を提供するために使用されてもよく、弁540が作動され、凝縮器ループ530からシリンダを除去し、しかし熱を専用のヒーティング回路510に導く。共通のヒートソース120からの冷水は、-
図6と同様に-蒸発器を通って循環され、蒸発器と凝縮器との間の差熱(heat differential)を提供する。この差熱は、凝縮器リップ内に熱を提供し、次いで凝縮器リップは、暖房のための熱を提供する。ヒートポンプは、このようにして、共通のヒートソースを使用し、-ラジエータ回路など-専用のヒーティング回路のための熱源を提供するように構成される。
【0025】
図8に示されている第3のモードでは、ヒートポンプは共通のヒートソース120から分離され、その代わりに暖房/冷房回路510を蒸発器のための冷却源として使用する。暖房/冷房回路は、この構成では、1つまたは複数のファンコイルを通る局所的クーリングを備える。このクーリングから得られる冷却された液体は、
図6における水回路によって提供された冷却された液体の効果を生じる。蒸発器回路と凝縮器回路との間の差熱は、シリンダ500内の水のための加熱源を提供する。このようにして、この局所的クーリングによって生成される熱を使用し、専用のタンク内に貯蔵するために温水を加熱することができる。そのような構成では、生成される温水の体積が貯蔵の目的にとって十分である場合には、余分な熱が共通のヒートソース内に戻され得る。これは、別々のバルビングの使用によって、または、可逆ヒートポンプを提供することによって行うことができ、いくつかの構成では、回路510から戻る冷却された液体は、ヒートポンプの凝縮器側-これは、逆構成では蒸発器として機能する-で提供される。水回路120は、シリンダ500ではなくループ内に結合され、それにより、余分な熱は、水回路内に戻される。
【0026】
共通のヒートソースへの独立した接続を有する複数のそのようなヒートポンプを提供することによって、1つのヒートポンプからの余分な熱は共通のヒートソース回路内に戻され得、そこでそれを別の異なるヒートポンプのための熱源として使用することができる。そのような構成の例-例示のために理想化されていることが理解されるであろう-が
図3に示されている。建物100の左側LHSの住戸300は、能動的クーリングを有するように配置され、したがって余分な熱を回路120内に逸らしており、一方、右側RHSの住戸310は、ヒーティング構成において、その熱をとり、それらの局所環境内でヒーティングを生成するように配置される。概略図の右側の各住戸310内のヒートポンプは、共通のソース120から熱を抽出し、次いでそれは、ファンコイルを介して熱を供給するために使用される。次いで、LHSの各住戸内のヒートポンプは、ファンコイルを介して冷却される。ネットワーク全体内のヒーティングおよびクーリング要件は、発熱器160、170、180、190、200、ヒートシンク150、130、140などの選択的作動によって加減または他の方法で制御され得る共通のソース120上で平衡が保たれる。複数の個々のヒートポンプをネットワーク内に結合することにより、ヒーティングおよびクーリング負荷全体が平衡され、したがって建物のためのエネルギー要件全体が全体として低減される。
【0027】
図2の例では、すべての住戸が暖房モードで提供され、共通のソース120は、能動的管理を通じて周囲温度に近くなるように維持される。これは、地下ループおよび外部ヒートポンプ200、165を最初に使用することになることが有利である。ループ120および熱ストア130、140を使用し、共通のソース120内の負荷を平衡させることができる。各個々のヒートポンプ110は、共通のソース120のループから熱を抽出し、家庭用温水または暖房を加熱するために使用することができる局所発熱体を供給する。そのような構成では、供給ヒートポンプの高効率および低温ヒートソースの高い利用率から得られる周囲温度に近くなるように熱ネットワークが維持されるとき、ネットワーク熱損失はほとんどない。周囲の温度での、または周囲温度に近くなるようなこの維持は、共通のヒートソースの能動的管理を通じて達成される。これは、共通のソース120の温度を定期的に測定し、そのループ内の温度を上昇させるように共通のソースにエネルギーを送達するように、またはヒートシンクを使用してループから熱を抽出するように配置され得るコントローラを通じて達成され得る。共通のヒートソースのループを発熱器およびヒートシンクから切り離すことによって、コントローラの動作は、ヒートソースおよびヒートシンクの個々を選択的に結合し、共通のソースのループの温度を所定の範囲内に維持することができる。
【0028】
共通のソースは、流れ回路および戻り回路を備える液体回路を備える。流れ回路の温度は、温度範囲摂氏10~30度内、望ましくは範囲摂氏15~30度内、最適には範囲摂氏15~25度内で維持される。戻り回路は、温度範囲摂氏5~25度内、望ましくは範囲摂氏5~20度内、最適には範囲摂氏10~20度内で維持される。
【0029】
図8のシナリオに似た
図4の例では、各シリンダにおける家庭用温水ヒーティング負荷のヒーティングを通じて各住戸内でクーリング負荷の平衡が保たれる。各住戸内では非常に高いエネルギー効率があり、その結果、ネットワーク上では、必要とされる熱伝達がより少ない。必要とされる場合、ヒーティング負荷およびクーリング負荷は、共通のヒートソース120において平衡が保たれる。
【0030】
ここまで、ヒートポンプのそれぞれについて、より大きな分散型ヒーティングネットワーク内に組み込まれるものとして述べた。ヒートポンプは、そのような分散型熱ネットワークを必要としない環境内に展開され得ることが有利であることを理解されたい。たとえば、
図9に示されているように、
図6を参照して前述したものなど、ヒートポンプは、スタンドアロン構成で展開され得る。そのような構成は、ヒートポンプが単一の住居使用のために使用される住宅環境内で展開され得ることが有用である。
【0031】
以前の態様と同様に、この構成では、ヒートポンプ110は、ヒートポンプ用の個々のエネルギー源900、901、902、903に選択的に結合され得る共通のヒートソース120に結合される。これらの個々のエネルギー源は、異なるかつ別々のエネルギー源であることが望ましい。これらの個々のエネルギー源の例は、太陽熱パネル900、空気熱交換器901、分散型ヒーティングネットワーク902、地下水ループ903などを含む。これらは、非電気的エネルギー源の例である。
【0032】
分散型ヒーティングネットワーク902に結合される場合、分散型ヒーティングネットワークは、上記のものなど複数の個々のヒートポンプを備え得る。そのような構成では、分散型ヒーティングネットワークの各ヒートポンプは、共通のヒートソースに個々に結合されてもよく、個々のヒートポンプのそれぞれは、共通のヒートソースから熱を独立して提供または抽出するように配置される。
【0033】
共通のヒートソースは、個々のエネルギー源のうちの2つ以上を共通のヒートソースに同時に結合することを可能にするように構成され得る。
【0034】
ヒートポンプは、PVパネル、PVTパネル910、電気グリッド911など直接電源に結合されてもよい。PVパネルまたはPVTパネルは、ヒートポンプおよび/または共通のヒートソース-この構成では水回路120である-のためのエネルギー源に直接電気を提供するように構成されてもよい。
【0035】
ヒートポンプ110は、上記のものなど、水シリンダ500に一体化されてもよい。他の構成もまた、ヒートポンプを、図示されていない機械換気熱回収(MVHR)システムと一体化してもよい。以下を行う制御システムが提供され得る。
【0036】
暖房を制御する。
【0037】
衛生温水生産を制御する。
【0038】
MVHRシステムを制御する。
【0039】
PV生産を監視する。
【0040】
家全体の電気使用を監視する。
【0041】
局所的に生産される電気の局所エネルギー使用を最適化する。
【0042】
バッテリストアを制御および管理する。
【0043】
コントローラへの遠隔アクセスを可能にする。
【0044】
すべての機器を遠隔で監視する。
【0045】
システムが正常動作パラメータを外れて動作し始めた場合、警報を出す。
【0046】
システム性能の遠隔最適化を可能にする。
【0047】
本教示の一態様によれば、上記の要素の制御を行うためのユーザインターフェースを提供するように構成されるコントローラが提供され得る。
【0048】
本教示によるヒートポンプは、以下のことを含む、既存の空気熱源ヒートポンプに勝る多数の利点を有する。
【0049】
・ヒートポンプを建物内に置くことができる。
【0050】
・熱交換器を空気熱源ヒートポンプより目に付かない、または邪魔にならないものとすることができる。
【0051】
・シリンダと協働可能なヒートポンプは、温水が生産されるとき損失を最小限に抑え、このヒートポンプは、実際のシリンダの上方または下方に設けられてもよい。
【0052】
・建物エンベロープ内のヒートポンプは、暖房モードにおいて損失を低減する-熱は、必要とされるところで生成される。
【0053】
・サイズが小さく、したがってヒートポンプを配置する際により柔軟である。
【0054】
・その所有地で十分に大きな地下ループの設置ができない場合、地下ループからのエネルギーは、空気熱交換器または太陽熱パネルなど他のヒートソースからのエネルギーと組み合わせる、またはそれらによって補うことができる。
【0055】
・夏季には、ヒートポンプなしで太陽熱パネルが温水を提供しており、太陽熱収集器からのエネルギーが60℃温水を提供するのに十分でない冬期には、それらは、ヒートポンプのためのエネルギー収集器として使用される。
【0056】
したがって、本願の第1の実施形態は、請求項1に記載のヒートポンプを提供する。有利な実施形態は、従属請求項に提供されている。本教示は、対象とされる独立請求項に記載のヒートポンプネットワークをも提供する。
【0057】
本明細書で使用されるとき「comprises/comprising(備える、含む)」という用語は、述べられている特徴、整数、ステップ、または構成要素の存在を指定することになるが、1つまたは複数の他の特徴、整数、ステップ、構成要素、またはそれらのグループの存在または追加を排除しない。