(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-14
(45)【発行日】2022-01-25
(54)【発明の名称】吸引カテーテル及び吸引カテーテルの製造方法
(51)【国際特許分類】
A61M 1/00 20060101AFI20220118BHJP
【FI】
A61M1/00 160
(21)【出願番号】P 2018531922
(86)(22)【出願日】2017-08-01
(86)【国際出願番号】 JP2017027898
(87)【国際公開番号】W WO2018025860
(87)【国際公開日】2018-02-08
【審査請求日】2020-06-26
(31)【優先権主張番号】P 2016154003
(32)【優先日】2016-08-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100180851
【氏名又は名称】▲高▼口 誠
(72)【発明者】
【氏名】李 翠翠
(72)【発明者】
【氏名】黒瀬 陽平
【審査官】沼田 規好
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-117369(JP,A)
【文献】特開2012-034801(JP,A)
【文献】特表2009-513246(JP,A)
【文献】特開2007-244757(JP,A)
【文献】特開2012-187351(JP,A)
【文献】特表2002-537017(JP,A)
【文献】特表2006-513803(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
近位側から遠位側に延びるルーメンと、前記ルーメンにおける遠位側に形成された吸引口と、を有するチューブ、を備え、
前記吸引口は、前記ルーメンが延びる第一方向に直交する面に対して傾いた部分を有しており、
前記吸引口における遠位端を鉛直方向上側、前記吸引口における近位端を鉛直方向下側となる前記チューブの配置において、前記第一方向において前記吸引口の近位端が有る第一位置での前記ルーメンの前記第一方向に直交する断面を第一断面としたとき、
前記第一断面において前記鉛直方向に直交する幅方向に最大長さを有する最大幅部は、前記第一断面における前記鉛直方向中心位置よりも下側に位置する、吸引カテーテル。
【請求項2】
前記第一断面は、鉛直方向下端に前記幅方向に延びる底部を有している、請求項1記載の吸引カテーテル。
【請求項3】
前記第一断面の前記鉛直方向における最大長さは、前記幅方向における最大長さよりも短い、請求項1又は2記載の吸引カテーテル。
【請求項4】
前記ルーメンは、前記第一位置における前記第一断面の形状が近位側へ所定距離続いている、請求項1~3の何れか一項記載の吸引カテーテル。
【請求項5】
前記チューブは、前記第一方向における前記第一位置よりも近位側の位置において、前記第一断面から前記第一断面とは形状が異なる第二断面へ断面を変化させる断面切替部を更に有している、請求項1~4の何れか一項記載の吸引カテーテル。
【請求項6】
前記断面切替部は、前記第一断面から前記第一断面とは形状及び断面積が異なる第二断面へ断面を変化させる、請求項5記載の吸引カテーテル。
【請求項7】
前記断面切替部の端側は、前記第一方向において前記第一位置から20mm以内に位置する、請求項5又は6記載の吸引カテーテル。
【請求項8】
前記断面切替部は、前記ルーメンを形成する内面の少なくとも一部に形成されるテーパである、請求項5~7の何れか一項記載の吸引カテーテル。
【請求項9】
前記遠位端を鉛直方向上側、前記近位端を鉛直方向下側となるように前記チューブを配置したときの、前記遠位端と前記近位端とを通るように前記チューブを前記第一方向に切断した際の前記チューブの断面において、
前記ルーメンの
前記吸引口側の鉛直方向下方にお
いて、前記チューブの内面と前記チューブの外面との間の部分である下端部の外面側
における第一近位端は、前記
下端部の内面側
における第一遠位端よりも近位側に位置し、
前記ルーメンの
前記吸引口側の鉛直方向上方にお
いて、前記チューブの内面と前記チューブの外面との間の部分である上端部の外面側
における第二遠位端は、前記
上端部の内面側
における第二近位端よりも遠位側に位置し、
前記下端部が、前記第一近位端と前記第一遠位端とを繋ぐ直線に対し凹又は凸となって
おり、
前記上端部が、前記第二遠位端と前記第二近位端とを繋ぐ直線に対し凹又は凸となっている、請求項1~8の何れか一項記載の吸引カテーテル。
【請求項10】
前記下端部が、前記第一近位端と前記第一遠位端とを繋ぐ直線に対し凸となっている、請求項
9記載の吸引カテーテル。
【請求項11】
前記上端部が、前記第二遠位端と前記第二近位端とを繋ぐ直線に対し凹となっている、請求項9又は10記載の吸引カテーテル。
【請求項12】
前記第一近位端及び
前記第一遠位端を繋ぐ直線は、前記第一方向に対して2°以上60°以下の範囲で傾いており
、前記第二遠位端及び
前記第二近位端を繋ぐ直線は、前記第一方向に対して2°以上60°以下の範囲で傾いている、請求項9~
11の何れか一項記載の吸引カテーテル。
【請求項13】
前記吸引口を鉛直方向下方から見た場合に、前記吸引口の近位側端部における曲率が、遠位側端部における曲率よりも小さい、請求項
1~8の何れか一項記載の吸引カテーテル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一側面は、体内の物質を体外に吸引除去する吸引カテーテル及び吸引カテーテルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
体内に導入され、カテーテル手元端から加える陰圧によって、体内の物質を体外に吸引除去する吸引カテーテルが知られている。このような吸引カテーテルとして、例えば、特許文献1には、遠位側に吸引口を有するチューブを血管内に導入して病変部位にまで到達させ、当該吸引口から血栓を吸引除去する血栓吸引カテーテルが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようなカテーテルでは、吸引された血栓によるルーメンの閉塞を抑制することが求められている。そこで、ルーメンの内径を大きくしたカテーテルが提案されている。ルーメンの内径が大きいカテーテルは、吸引性能が高く、ルーメンの閉塞が抑制されることが考えられる。しかし、カテーテルの吸引口の末梢到達性を考慮すると、更なる改良が必要となる。
【0005】
そこで、本発明の一側面の目的は、吸引効率を向上させることができる吸引カテーテル及び吸引カテーテルの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面に係る吸引カテーテルは、近位側から遠位側に延びるルーメンと、ルーメンにおける遠位側に形成された吸引口と、を有するチューブ、を備え、吸引口は、ルーメンが延びる第一方向に直交する面に対して傾いた部分を有しており、吸引口における遠位端を鉛直方向上側、吸引口における近位端を鉛直方向下側となるチューブの配置において、第一方向において吸引口の近位端が有る第一位置でのルーメンの第一方向に直交する断面を第一断面としたとき、第一断面において鉛直方向に直交する幅方向に最大長さを有する最大幅部は、第一断面における鉛直方向中心位置よりも下側に位置する。
【0007】
上記吸引カテーテルによって吸引される血栓又は異物等の物質は、吸引口の第一方向における近位側部分からルーメンに吸い込まれる。言い換えれば、上記のように配置されたチューブを第一方向に直交する側方から見たときに、上記吸引カテーテルによって吸引される物質は、チューブの吸引口における下側部分からルーメンに吸い込まれる。本発明の一側面に係る吸引カテーテルでは、上記のように配置されたチューブを第一方向から見たときに、第一断面での最大幅部が、第一断面における鉛直方向中心位置よりも下側に位置するように形成されているので、物質がルーメンに吸い込まれる部分が広い。このため、吸引口の中でも物質が最初にルーメンに吸い込まれる部分で物質が引っ掛かることが無くなる。この結果、吸引効率を向上させることができる。なお、ここでいう直交には、略直交も含む。
【0008】
本発明の一側面に係る吸引カテーテルでは、第一断面は、鉛直方向下端に幅方向に延びる底部を有していてもよい。この構成の吸引カテーテルでは、吸引口において物質が最も吸い込まれる底部が広げられているので、物質をより効果的に吸引することができる。
【0009】
本発明の一側面に係る吸引カテーテルでは、第一断面の鉛直方向における最大長さは、幅方向における最大長さよりも短くしてもよい。上記ルーメンの第一断面は、いわゆる横長形状である。このため、同じ円周長を有する円形のルーメンよりも形状バランスがよくなるので、カテーテルの挿入時の抵抗が低減され、カテーテルの末梢到達性能が向上する。
【0010】
本発明の一側面に係る吸引カテーテルでは、ルーメンは、第一位置における第一断面形状が近位側へ所定距離続いていてもよい。上記構成の吸引カテーテルでは、よりスムーズに物質を吸い込むことができる。
【0011】
本発明の一側面に係る吸引カテーテルでは、チューブは、第一方向における第一位置よりも近位側の位置において、第一断面から第一断面とは形状が異なる第二断面へ断面を変化させる断面切替部を更に有していてもよい。この構成の吸引カテーテルでは、吸引された吸引物質がチューブの内面に衝突し易くなり、吸引物質のシャフトへの衝突による振動が強くなる。このため、吸引カテーテルの操作者は、当該振動を感知することができる。この結果、操作者は、物質の吸引状況の把握が可能になる。
【0012】
本発明の一側面に係る吸引カテーテルでは、断面切替部は、第一断面から第一断面とは形状及び断面積が異なる第二断面へ断面を変化させてもよい。この構成の吸引カテーテルでは、操作者は、物質の吸引状況の把握が可能になる。
【0013】
本発明の一側面に係る吸引カテーテルでは、断面切替部の端側は、第一方向において第一位置から20mm以内に位置してもよい。この構成の吸引カテーテルでは、吸引口近傍での閉塞をより確実に抑制することが可能になると共にチューブへの振動付与が、より確実になる。
【0014】
本発明の一側面に係る吸引カテーテルでは、断面切替部は、ルーメンを形成する内面の少なくとも一部に形成されるテーパであってもよい。この構成の吸引カテーテルでは、断面切替部を容易に形成することができる。
【0015】
本発明の一側面に係る吸引カテーテルでは、吸引口の鉛直方向上方又は下方の一方におけるチューブの内面とチューブの外面との間の端部が、吸引口を形成する吸引面に対して凹又は凸となっていてもよい。
【0016】
上記吸引カテーテルによって吸引される血栓又は異物等の物質は、吸引口の第一方向における近位側部分からルーメンに吸い込まれる。言い換えれば、上記のように配置されたチューブを第一方向に直交する側方から見たときに、上記吸引カテーテルによって吸引される物質は、チューブの吸引口における下側部分からルーメンに吸い込まれる。本発明の一側面に係る吸引カテーテルでは、上記のようなチューブの配置において、吸引口の鉛直方向上方又は下方の一方におけるチューブの内面とチューブの外面との間の端部が、吸引口を形成する吸引面に対して凹又は凸となっている。このため、凸となっている部分では血栓が入り易くなり、凹となっている部分では、チューブのエッジに接触した血栓が切断されるので、血栓の吸引が容易になる。この結果、吸引物質によるルーメンの閉塞を抑制することができる。
【0017】
本発明の一側面に係る吸引カテーテルでは、吸引口を形成する吸引面に対して凹又は凸である部分の形状が、曲面で定義されていてもよい。これにより、吸引口に近づいた血栓を吸引し易くなる。また、血管の損傷を抑制することもできる。
【0018】
本発明の一側面に係る吸引カテーテルでは、吸引口の鉛直方向下方におけるチューブの内面とチューブの外面との間の端部が、吸引口を形成する吸引面に対して凸となっていてもよい。この構成の吸引カテーテルでは、血栓がルーメンに入り易くなる。
【0019】
本発明の一側面に係る吸引カテーテルでは、吸引口の鉛直方向上方におけるチューブの内面とチューブの外面との間の端部が、吸引口を形成する吸引面に対して凹となっていてもよい。この構成の吸引カテーテルでは、チューブのエッジに接触した血栓が切断されるので、血栓の吸引が容易になる。
【0020】
本発明の一側面に係る吸引カテーテルでは、吸引面上の直線であり、チューブの上端と前記チューブの下端とを繋ぐ直線を基準線としたとき、吸引口の鉛直方向上方における上端部は、基準線に対し線対称に凹となっており、吸引口の鉛直方向下方における下端部は、基準線に対し線対称に凸となっていてもよい。
【0021】
本発明の一側面に係る吸引カテーテルでは、チューブを第一方向に切断した際の断面において、ルーメンの鉛直方向下方における端部の外面側の第一近位端は、端部の内面側の第一遠位端よりも近位側に位置し、当該第一近位端及び第一遠位端を繋ぐ直線は、第一方向に対して2°以上60°以下の範囲で傾いており、ルーメンの鉛直方向上方における端部の外面側の第二遠位端は、端部の内面側の第二近位端よりも遠位側に位置し、当該第二遠位端及び第二近位端を繋ぐ直線は、第一方向に対して2°以上60°以下の範囲で傾いていてもよい。このような構成の吸引カテーテルでは、物質の吸い込まれる方向に鋭利に尖った形状となっている。吸引口に吸い込まれる物質は、このように鋭利に尖った端部によって細断される。この結果、吸引口の近傍に大きな物質が引っ掛かることによってルーメンが閉塞されることが抑制される。
【0022】
本発明の一側面に係る吸引カテーテルでは、チューブを第一方向に切断した際の断面において、ルーメンの鉛直方向下方における端部の外面側の第一近位端は、端部の内面側の第一遠位端よりも近位側に位置し、ルーメンの鉛直方向上方における端部の外面側の第二遠位端は、端部の内面側の第二近位端よりも遠位側に位置し、第一近位端と第一遠位端とを繋ぐ直線に対し、吸引口の鉛直方向下方におけるチューブの内面とチューブの外面との間の端部が、凹又は凸となっており、第二遠位端と第二近位端とを繋ぐ直線に対し、吸引口の鉛直方向上方におけるチューブの内面とチューブの外面との間の端部が、凹又は凸となっていてもよい。これにより、吸引口に近づいた血栓をより吸引し易くなる。
【0023】
本発明の一側面に係る吸引カテーテルでは、吸引口を鉛直方向下方から見た場合に、吸引口の近位側端部における曲率が、遠位側端部における曲率よりも小さくてもよい。このような構成の吸引カテーテルでは、吸引口を鉛直方向下方から見た場合に、吸引口の近位側端部における曲率(曲がり度合)が遠位側端部における曲率よりも小さい、すなわち、吸引口の近位側端部における曲率半径が遠位側端部における曲率半径よりも大きい。このため、吸引口において血栓を切断する有効部分が大きくなるので、血栓を切断し易い。なお、ここでいう曲率には、曲率が0の場合、すなわち、直線である場合も含む。この結果、吸引物質によるルーメンの閉塞を抑制することができる。
【0024】
本発明の一側面に係る吸引カテーテルでは、吸引口を鉛直方向下方から見た場合に、吸引口の近位側端部は、第一方向と鉛直方向との両方に直交する幅方向に直線状に延びていてもよい。この吸引カテーテルの構成では、吸引口の近位側端部は、幅方向に直線状に延びているので、血栓を切断し易い。この結果、吸引物質によるルーメンの閉塞を抑制することができる。ここでいう直交には、略直交も含む。
【0025】
本発明の一側面に係る吸引カテーテルの製造方法は、遠位側に物質の吸引口を有するチューブを備える吸引カテーテルの製造方法であって、チューブに芯材を挿入する挿入工程と、挿入工程において芯材が挿入されたチューブを変形させる変形工程と、変形工程において変形されたチューブの一端を、ルーメンが延びる第一方向に直交する面に対して傾くように切断する切断工程と、切断工程の後、チューブから芯材を取り除く除去工程と、を含む。
【0026】
上記吸引カテーテルの製造方法によって製造されるチューブは、上記のようなチューブの配置において、吸引口の鉛直方向上方又は下方の一方におけるチューブの内面とチューブの外面との間の端部が、吸引口を形成する吸引面に対して凹又は凸となっている。このため、凸となっている部分では血栓が入り易くなり、凹となっている部分では、チューブのエッジに接触した血栓が切断されるので、血栓の吸引が容易になる。この結果、吸引物質によるルーメンの閉塞を抑制することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明の一側面によれば、吸引効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る吸引カテーテルを第一方向に沿って切断したときの断面図である。
【
図2】
図2は、
図1におけるA-A線に沿った断面構成を示す図である。
【
図3】
図3は、
図1におけるD-D線に沿った断面構成を示す図である。
【
図4】
図4(a)は、
図1におけるC-C線に沿った断面構成を示す図であり、
図4(b)は、
図1におけるB-B線に沿った断面構成を示す図である。
【
図5】
図5は、一実施形態に係る吸引カテーテルの吸引ルーメンにおける吸引口を鉛直方向下方から見た底面図である。
【
図6】
図6は、異なる実施形態に係る吸引ルーメンにおける吸引口を鉛直方向下方から見た底面図である。
【
図7】
図7は、変形例1に係る吸引カテーテルの第二チューブの吸引口における遠位側端面を示した斜視図である。
【
図8】
図8(a)は、変形例1に係る吸引カテーテルの第二チューブの吸引口における遠位側端面を示した第一方向の断面図であり、
図8(b)は、上端部の拡大断面図であり、
図8(c)は、下端部の拡大断面図である。
【
図9】
図9(a)~
図9(c)は、変形例1に係る吸引カテーテルの製造方法の工程の一例を説明する図である。
【
図10】
図10(a)~
図10(f)は、変形例に係るカテーテルにおける吸引ルーメンの断面図の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面を参照して一実施形態の吸引カテーテル1について説明する。吸引カテーテル1は、体内に導入されて、血管内に生成した血栓を吸引カテーテル1の手元側(近位側)から加える陰圧により体外に吸引除去するために用いられる。なお、図面の説明において、同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する場合がある。
【0030】
以下の説明においては、吸引カテーテル1が延びる第一方向において、吸引カテーテル1の操作側(
図1左側)を近位側と定義し、吸引カテーテル1の操作側とは反対側であって、人体に導入される側(
図1右側)を遠位側と定義する。また、
図1~
図6では、吸引カテーテル1が延びる第一方向をX軸方向として、鉛直方向をZ軸方向として、上記第一方向及び上記鉛直方向に直交する方向である吸引ルーメン10の幅方向をY軸方向として示す場合がある。吸引カテーテル1が延びる第一方向とは、吸引カテーテル1を側面視した場合の長手方向でもある。
【0031】
図1に示されるように、吸引カテーテル1は、近位端から遠位端まで延びる吸引ルーメン10と、吸引ルーメン10の遠位側において吸引ルーメン10に沿って延びるガイドワイヤールーメン20と、を有している。吸引ルーメン10は、吸引ルーメンの遠位端に設けられた吸引口11から吸引される血栓等の流路となる。ガイドワイヤールーメン20は、吸引ルーメン10の吸引口11を対象部位にまで案内するためのガイドワイヤ(図示せず)を通過させるルーメンとなる。以下、吸引ルーメン10が単独で延びる部分を第一シャフト3と称し、吸引ルーメン10とガイドワイヤールーメン20とが並んで延びる部分を第二シャフト5と称する。
【0032】
第一シャフト3は、吸引ルーメン10を形成する第一チューブ31から成る。
図2に示されるように、第一チューブ31は、一方向に延びる中空部材であり、長手方向に直交する断面(以下、単に「断面」と称する)が円環状の部材である。第一チューブ31の内面31aは、上記吸引ルーメン10を形成し、上記吸引ルーメン10は、近位側から遠位側に延びる。第一チューブ31は、樹脂材料により形成されている。樹脂材料の例には、ポリアミド樹脂、ポリアミドエラストマー、ポリウレタン樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、及びポリエチレン樹脂から選択される少なくとも一つが含まれる。
【0033】
第一チューブ31は、内層及び外層を含む部材であってもよい。内層を形成する材料の例には、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体(ETFE)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)等のフッ素樹脂、高密度ポリエチレン等が含まれる。外層を形成する材料の例には、ポリアミドエラストマー、ポリエステルエラストマー、ポリオレフィンエラストマー等のエラストマーが含まれる。
【0034】
第一チューブ31として、編組チューブを用いてもよい。編組チューブは、樹脂等で形成されたチューブに樹脂又は金属による編組構造を含むチューブである。編組構造とは、例えばチューブのルーメンの周囲に設けられる編まれた線状物による構造である。編組構造は、1本の線材が巻き付けられた構造又はルーメンに沿って配置された構造であってもよい。編組チューブを構成する編組の材質又は構造は本発明の一側面の効果を制限しないので、様々な材質又は構造が利用可能である。編組の材質として金属を使用することができ、SUS304、SUS316等のステンレス鋼、バネ鋼、ピアノ線、オイルテンパー線、Co-Cr合金、Ni-Ti合金等を円、楕円、四角形等各種の断面形状に加工した金属素線を1本持あるいは複数本持で編組に加工した金属を使用することができる。
【0035】
第一シャフト3は、第一チューブ31の内側又は外側に別のチューブが配置される二重管構造であってもよい。
【0036】
図1に示されるように、第一シャフト3の近位端3bには、ハブ35が設けられている。ハブ35には、例えばY字コネクタ(図示せず)を介して、シリンジ等の吸引装置(図示せず)が接続されている。吸引装置による負圧吸引力は、ハブ35を通じて、第一チューブ31の吸引ルーメン10に及ぼされる。ハブ35は、例えば、スチレン-ブタジエン共重合体により形成されている。第一チューブ31の近位端31bは、接着剤37によりハブ35に接着されている。接着剤37は、例えば、ウレタン接着剤である。第一チューブ31の吸引ルーメン10は、ハブ35の開口部35aと連通している。
【0037】
第二シャフト5は、第二チューブ(チューブ)41と第三チューブ61によって形成される。第二チューブ41は、近位側から遠位側に第一方向に延びる吸引ルーメン10を有し、第三チューブ61は、近位側から遠位側に第一方向に延びるガイドワイヤールーメン20を有している。なお、説明の便宜のため、第二チューブ41及び第三チューブ61は、
図3等に示されるように、本体樹脂71と別の部分である状態で示しているが、第二チューブ41及び第三チューブ61の外形は、
図3に示される形状を留めていなくてもよい。すなわち、第二チューブ41、第三チューブ61、及び本体樹脂71の境界が不明確な状態であってもよい。
【0038】
第二チューブ41は、第一方向に延びる中空部材であり、樹脂材料により形成されている。吸引ルーメン10は、第二チューブ41の内面41aによって形成される。第二チューブ41を形成する樹脂材料の例は、上段にて説明した第一チューブ31を形成する材料の例と同じである。同様に、第二チューブ41は、内層及び外層を含む部材であってもよく、その材料も第一チューブ31の例と同じであってもよい。また、同様に、第二チューブ41として、編組チューブを用いてもよく、その材料の例も第一チューブ31と同じであってもよい。
【0039】
第一チューブ31の遠位端(図示せず)と第二チューブ41の近位端(図示せず)とは、互いに接続され、第一チューブ31の吸引ルーメン10と第二チューブ41の吸引ルーメン10とは互いに連通している。なお、第一シャフト3と第二シャフト5とを通して、同一のチューブが配置されていてもよく、例えば、第二チューブ41が、第一シャフト3から第二シャフト5にまで延びていてもよい。
【0040】
第一チューブ31と第二チューブ41とは、一本のチューブとして一体的に形成されていてもよく、途中で異なる複数のチューブが接続されていてもよい。一体的に形成されている場合、第一チューブ31と第二チューブ41とは、同じ樹脂材料で形成されていてもよい。接続されている場合、同じ樹脂材料で形成されたチューブ同士を接続してもよく、異なる樹脂材料により形成されたチューブ同士を接続してもよい。接続部分は、接着剤又は接続用部材を用いてチューブ同士を接続してもよく、チューブを溶融して接続してもよい。
【0041】
図1に示されるように、第二チューブ41の遠位側の端面41bは、傾斜している。具体的には、第二チューブ41の遠位側の端面41bは、第二チューブ41が延びる方向(第一方向)に対して、所定の角度を成して傾斜している。詳細には、
図1に示されるように、第二チューブ41の遠位側の端面41bは、上端が遠位側でかつ下端が近位側となるように、遠位側から近位側に向かって連続して傾斜している。端面41bは、開口しており、吸引ルーメン10に連通する。端面41bの一部が、閉じている構成であってもよい。上記傾斜は、側面視、直線状であってもよく、湾曲していてもよい。直線と曲線の組み合わせであってもよい。端面41bは、上端が遠位側でかつ下端が近位側である形状であればよく、段差が設けられるなどして階段状に形状が変化してもよく、直線と曲線との組み合わせ形状であってもよい。
【0042】
第二チューブ41の遠位端には、吸引口11が設けられている。上記吸引口11は、上記端面41bの一部又は全部を含んで形成される。吸引口11は、第二チューブ41の長手方向に沿って設けられ、一方端が遠位側に、他方端が近位側に配置される。なお、吸引口11における近位端11bから遠位端11aまでの第一方向における長さL0(
図1参照)は、例えば、2.0mm以上10mm以下とすることができる。上記のとおり、第二チューブ41の遠位端の端面41bは傾斜しているので、当該端面に設けられる吸引口11は、吸引ルーメン10の第一方向に直交する面に対して傾いた状態に形成されている。第二チューブ41は、側面視において、吸引口11における遠位端11aが鉛直方向上側、吸引口11における近位端11bが鉛直方向下側となる。
【0043】
図5に示されるように、吸引口11では、鉛直下方向から見たときの近位側の近位端11bを含む近位側端部11dの曲線形状が、遠位端11aを含む遠位側端部11cの曲線形状と異なっていてもよい。具体的には、近位側端部11dの曲線形状における曲線半径が、遠位側端部11cの曲線形状における曲線半径よりも大きくてもよい。すなわち、近位側端部11dの曲線形状における曲がり具合(曲率)が、遠位側端部11cの曲線形状における曲がり具合(曲率)よりも小さくてもよい。この構成により、吸引口11において血栓を切断する有効部分が大きくなり、血栓が切断され易くなる。この結果、血栓等の吸引物質による吸引ルーメン10の閉塞を抑制することができる。例えば、吸引口11の近位側端部11dの曲率を、1.74×10
3rad/m以下としてもよい。これにより、閉塞抑制効果をより高めることができる。rad/mは、曲率の単位であり、度(角度)/周長(長さ)を示す。
【0044】
異なる実施形態の一例として、
図6に示されるように、鉛直下方向から見たときの近位側の近位端11bを含む近位側端部111dの曲線形状を、幅方向(Y軸方向)に沿って直線状に形成してもよい。これは、近位側の曲率をより小さくした場合(曲率0)の例でもある。この構成により、血栓が吸引口11により引っかかり易くなると共に、吸引口11において血栓を切断する有効部分が大きくなり、血栓が切断され易くなる。この結果、血栓等の吸引物質による吸引ルーメン10の閉塞を抑制することができる。
【0045】
図1に示されるように、第三チューブ61は、一方向に延びる中空部材であり、樹脂材料により形成されている。ガイドワイヤールーメン20は、第三チューブ61の内面61aによって形成される。第三チューブ61における遠位端及び近位端のそれぞれには、開口21及び開口22が設けられている。開口21及び開口22は、吸引ルーメン10の第一方向に直交する面に沿って形成されている。第三チューブ61は、樹脂材料により形成されている。第三チューブ61を形成する樹脂材料の例は、上段にて説明した第一チューブ31を形成する材料の例と同じである。同様に、第三チューブ61は、内層及び外層を含む部材であってもよく、その材料も第一チューブ31の例と同じであってもよい。また、同様に、第三チューブ61として、編組チューブを用いてもよく、その材料の例も第一チューブ31と同じであってもよい。
【0046】
第一チューブ31、シャフトと第二チューブ41、及び第三チューブ61は、複数の樹脂材料や他の材料を含む複層構造であってもよい。複数の樹脂材料を用いる場合、樹脂材料は同じであってもよく、互いに異なってもよい。また、例えば金属製のリング又はプレートなどをチューブのルーメンに面する部分又はそれ以外の部分に配置してもよい。樹脂製又は金属製のワイヤをチューブに巻き付けることもできる。
【0047】
第三チューブ61には、X線(放射線)が不透過である材料により形成されるマーカー(図示せず)が設けられてもよい。マーカーは、例えば、金、白金、タングステン、白金(Pt)及びインジウム(Ir)を含む合金で形成される環状の部材である。マーカーは、第三チューブ61を周方向に囲うように第三チューブ61に取り付けられる。これにより、操作者は、X線透過画像に基づいて第二シャフト5の遠位端の位置を把握することができるようになる。
【0048】
第二シャフト5において第二チューブ41と第三チューブ61とは一体的に形成されている。具体的には、第三チューブ61が第二チューブ41の鉛直方向上方に配列された状態で、樹脂材料により形成される本体樹脂71により一体化されている。本実施形態では、本体樹脂71は熱可塑性樹脂、例えば、ポリアミドエラストマー(PAE)、又はポリアミドエラストマーにより形成されている。本体樹脂71は、例えば、第二チューブ41及び第三チューブ61に被せられたシュリンクチューブを加熱することによって形成される。これにより、第二シャフト5の外面(外形)71aが形成される。ここで一体化とは、第二チューブ41、第三チューブ61、及び本体樹脂71の境界が不明確な状態であってもよく、
図3に示されるようにそれぞれの境界が明確であってもよい。第二チューブ41、第三チューブ61、及びチューブ材料の異なる3つの部材を一体化していてもよく、1の部材に2つのルーメンを形成して三者が一体化していてもよい。第二チューブ41、第三チューブ61のみを一体化してもよい。この場合、溶解した第二チューブ41、第三チューブ61によって、本体樹脂71が形成される。
【0049】
図1、
図3及び
図4に示されるように、第二チューブ41の内面41aによって形成される吸引ルーメン10は、近位側から遠位側に沿って断面が変化してもよい。第二チューブ41の第一方向において、吸引口11の近位端11bが有る第一位置P1での吸引ルーメン10の断面を第一断面とする。
図3に示されるように、上記第一断面は、円弧状の第一内面42と、第一内面42よりも曲率が小さな第二内面(底部)43とにより形成されている。
【0050】
ここで、上記第一断面において幅方向(Y軸方向)に最大長さwを有する最大幅部13は、第一断面における鉛直方向中心位置Mよりも下側に位置する。すなわち、血栓が吸引ルーメン10に吸い込まれる部分が広く形成されている。このため、吸引口11の中でも血栓が最初に吸引ルーメン10に吸い込まれる部分において血栓が引っ掛かることが無くなる。この結果、吸引効率を向上させることができる。
【0051】
また、第一断面の鉛直方向における最大長さhは、幅方向における最大長さwよりも短くしてもよい。言い換えれば、第一断面は、横長形状であってもよい。このような構成とすれば、吸引口11において血栓が吸い込まれる第一断面の下側部を広げることができるので、より効果的に吸引口11から血栓を吸引することができる。また、このような断面形状とすることで、同じ円周長を有する円形のルーメンよりも形状バランスがよくなるので、カテーテルの挿入時の抵抗が低減される。この結果、カテーテルの血管への挿入性を向上することができ、カテーテルの末梢到達性能が向上する。このような断面を有する第二チューブ41は、例えば、押出成形によって製造される断面形状が略円環状のチューブに、断面形状が第一断面と略同形状のステンレス製の芯材を挿入し、当該チューブを加熱することによって製造することができる。なお、第一断面の鉛直方向における最大長さhは、幅方向における最大長さw以上であってもよい。
【0052】
図1に示されるように、吸引ルーメン10における第一断面の形状は、第一位置P1から近位側へ所定距離L1続いていてもよい。これにより、よりスムーズに物質を吸い込むことができる。第一方向における第一位置P1よりも近位側の位置において、第一断面から第一断面とは形状が異なる第二断面(
図4(b)参照)へ切り替わる断面切替部15が、第一方向において第一位置P1から所定距離L1離れた第二位置P2を起点に形成されていてもよい。
【0053】
第一位置P1と第二位置P2との距離L1は、例えば、2mm~20mmとすることができる。また、当該距離L1の下限値は、2mm以上とすることができ、当該距離の上限値は、10mm以下とすることができる。本実施形態では、断面切替部15は、第一方向において第一位置P1から20mmの第二位置P2を起点として配置されている。これにより、吸引口11近傍での血栓による閉塞を、より確実に抑制することが可能になると共に、第二チューブ41への振動付与が、より確実になる。振動付与がより確実になるのは、吸引された吸引物質がチューブの内面に衝突し易くなり、吸引物質のシャフトへの衝突による振動が強くなるためである。
【0054】
本実施形態において断面切替部15は、吸引ルーメン10の断面形状を、第一断面(
図3参照)から第一断面とは形状及び断面積が異なる第二断面(
図4(b)参照)へと変化させてもよい。断面切替部15は、吸引ルーメン10を形成する第二チューブ41の内面41aの少なくとも一部に形成されるテーパであってもよい。断面切替部15は、第二チューブ41の第二位置P2から第三位置P3にかけて形成されている。このような形状変化により、血栓が切断され易くなる。また、このような形状変化は、血栓吸引の効率を促進し、また、第二チューブ41の中で血栓がつまり、吸引ルーメン10が閉塞してしまうことを抑制する効果もある。
【0055】
断面切替部15は、吸引ルーメン10の断面形状を、吸引ルーメン10の内面(内壁)に設けられたテーパによってなだらかに変化させてもよく、テーパの代わりに設けられた段差などによって変化させてもよい。このようなテーパ又は段差である断面切替部15は、複数設けられていてもよい。吸引ルーメンの形状の変化は、遠位側から近位側にかけて断面積が小さくなる変化だけでなく、大きくなる変化であってもよい。流路形状の変化により発生する振動が吸引カテーテル1の操作者に感知され、操作者は、血栓の吸引状況を把握することができる。第三位置P3において、第二チューブ41の内面41aによって形成される吸引ルーメン10の断面形状は、略円形である。吸引ルーメン10は、当該第二断面の形状が、第一シャフト3の近位端3b、すなわち、ハブ35にまで延びている。なお、
図4(a)及び
図4(b)に示される二点鎖線は、第一断面における内面41aの一部である第二内面43を示している。
【0056】
異なる実施形態として、第三位置P3とハブ35との間に、吸引ルーメン10の形状又は断面積(サイズ)の変化が、一又は複数回あってもよい。本実施形態の吸引カテーテル1は、吸引ルーメン10の断面形状又は断面積が変化するため、吸引された吸引物質がチューブの内面に衝突し易く、血栓の吸引状況の把握が可能である。断面形状又は断面積の変化は、遠位側が小さく近位側が大きくなる変化であってもよい。用途に応じて、遠位側が小さく近位側が大きくなる変化、及び近位側が小さく遠位側が大きくなるような変化を適宜組み合わせることができる。これにより、本実施形態の吸引カテーテル1は、よりスムーズに血管内に導入することができる。
【0057】
続いて、吸引カテーテル1の製造方法の一例について説明する。吸引カテーテル1の製造では、最初に、第一チューブ31、第二チューブ41、及び第三チューブ61が準備される。各チューブは、上記材料によって、押出成形により形成される。続いて、第三チューブ61に、マーカーが取り付けられる。マーカーは、第三チューブ61にかしめて固定される。また、第二チューブ41の近位端に、第一チューブ31の遠位端が接続される。続いて、第二チューブ41と第三チューブ61とが平行に並べられる。具体的には、第二チューブ41の遠位端に対し第三チューブ61の遠位端が遠位側に突出するように並べられる。第一チューブと第二チューブとを接続する方法は、接着剤により接着する、チューブを加熱し溶着する等、適宜選択することができる。
【0058】
次に、第二チューブ41及び第三チューブ61に、ステンレス製の芯材(図示せず)が挿入される。当該芯材の断面は、円形である。芯材の断面形状は、必要に応じて円形以外の形状を選択することもできる。第二チューブ41及び第三チューブ61にシュリンクチューブを被せられ加熱される。シュリンクチューブは、耐熱性樹脂により形成されてもよい。耐熱性樹脂の例には、オレフィン系樹脂が挙げられる。これにより、第二チューブ41及び第三チューブ61が溶着されて一体化される。これにより、本体樹脂71が形成される。次に、第二チューブ41に、ステンレス製の芯材が挿入される。当該芯材の断面は、
図3に示されるような、第二チューブ41の内面41aによって形成される第一断面と略同一の断面形状を有している。選択可能な芯材の断面形状の例として、
図6に示される形状がある。第三チューブ61に、ステンレス製の芯材が挿入される。前述の加熱工程で用いた芯材をそのまま使用してもよい。シュリンクチューブを被せて加熱したときに、第二チューブ41も加熱され、第二チューブ41の内面41aの形状が、挿入された芯材の形状に成形される。これにより、
図3に示される第一断面を有する吸引ルーメン10が形成される。
【0059】
上記第一断面と略同一の断面形状を有している芯材は、第二チューブ41の遠位側にのみ挿入される。当該芯材を挿入して加熱した熱が、第二チューブ41の当該芯材を挿入していない部分に伝わることにより、テーパ形状の断面切替部15が形成される。上記第一断面と略同一の断面形状を有している芯材からの熱が伝わることにより、最初に芯材により形成した断面円形の部分が、上記第一断面と略同一の断面形状を有している芯材により形成される第一断面部分へと連続的に変形して、テーパ形状の断面切替部15が形成される。
【0060】
最後に、第一チューブ31の近位端に、ハブ35が接着剤37により接続される。以上の工程により、吸引カテーテル1が製造される。
【0061】
以上、一実施形態について説明したが、本発明の一側面は上記実施形態に限定されない。
【0062】
<変形例1>
主に
図7~
図9を用いて、変形例に係る吸引カテーテル1について説明する。変形例に係る吸引カテーテル1は、上記実施形態の吸引カテーテル1において、吸引口11の鉛直方向上方又は下方の一方における第二チューブ(チューブ)41の内面41aと第二チューブ41の外面41cとの間の上端部45a及び下端部45bが、吸引口11を形成する吸引面Fに対して凹又は凸となっている。なお、
図7~
図9では、ガイドワイヤールーメン20を形成する第三チューブ61の図示が省略されている。
【0063】
以下、変形例1について詳細に説明する。
図7及び
図8(a)~(c)に示されるように、第二チューブ41の遠位側の端面41bは、第二チューブ41の端面及び吸引ルーメン10の端面を含む部分である。第二チューブ41の遠位端45において、鉛直方向上側が上端部45aであり、鉛直方向下側が下端部45bである。第二チューブ41における遠位側の鉛直方向上方又は下方の一方における第二チューブ41の内面41aと第二チューブ41の外面41cとの間の上端部45a及び下端部45bは、幅方向(Y軸方向)に直交する断面において、第二チューブ41の断面の最遠位点と最近位点とを繋ぐ直線に対して凹又は凸となっている。つまり、吸引口11における第二チューブ41の上端部45a及び下端部45bは、一の平面ではなく、複数の平面又は曲面により形成される。これにより、上端部45a及び下端部45bには、凸凹が形成される。上端部45a及び下端部45bにおいて、凸となっている部分では、血栓が入り易くなると共に血管へダメージを与えにくくなり、凹となっている部分では、第二チューブ41のエッジに接触した血栓が切断されるので、血栓の吸引が容易になる。
【0064】
第二チューブ41の上端部45a又は下端部45bの凹又は凸は、吸引口11に対する凹又は凸でもある。吸引面Fとは、吸引口11の形成する平面又は曲面であり、吸引口11の遠位側端部11c及び近位側端部11dにより形成される。第二チューブ41を側面視した場合において、吸引口11が直線で表される場合、吸引面Fは平面であり、曲線で表される場合、吸引面Fは曲面である。一般に、吸引口11は、第二チューブ41の一部を剃刀で削げ切ったり、鋏で切り取ったりすることにより形成される。その場合、第二チューブ41の肉厚部分の近位端から遠位端にわたって一度に切断され、吸引口11が形成される。
【0065】
第二チューブ41の上端部45a又は下端部45bの凹又は凸の形状は、曲面状とすることができる。曲面状とは、第二チューブ41の端部、つまり、吸引口11を形成する第二チューブ41の肉厚部分(第二チューブ41の内面41aと外面41cとの間の部分である上端部45a及び下端部45b)が、例えば、ドーム状の突起又は窪み、半円筒状の凸又は凹の形状である場合をいう。上端部45a又は下端部45bの形状を凹又は凸とすることにより、吸引口11に近づいた血栓を吸引し易くしたり、血管の損傷を抑制したりすることができる。
【0066】
図7に示されるように、吸引口11の鉛直方向(Z軸方向)上方における第二チューブ41の内面41aと第二チューブ41の外面41cとの間の上端部45aが、吸引口11を形成する吸引面Fに対して凹となっており、吸引口11の鉛直方向下方における第二チューブ41の内面41aと第二チューブ41の外面41cとの間の下端部45bが、吸引面Fに対して凸となっていてもよい。また、吸引面F上の直線であり、第二チューブ41における端面41bの上端部45aにおける外面側の第二遠位端46aと第二チューブ41における端面41bの下端部45bにおける外面側の第一近位端46bとを繋ぐ線を基準線BLとしたとき、吸引口11の鉛直方向上方における上端部45aは、基準線BLに対し線対称に凹となっており、吸引口11の鉛直方向下方における下端部45bは、基準線BLに対し線対称に凸となっていてもよい。
【0067】
また、本実施形態では、
図8(a)、
図8(b)及び
図8(c)に示されるように、第二チューブ41を第一方向(X軸方向)に切断した際の断面において、第二チューブ41における端面41bの上端部45aにおける外面側の第二遠位端46aは、上端部45aにおける内面側の第二近位端46c(吸引口11の遠位端11a)よりも遠位側に位置し、第二チューブ41における端面41bの下端部45bにおける外面側の第一近位端46bは、下端部45bにおける内面側の第一遠位端46d(吸引口11の近位端11b)よりも近位側に位置する。
【0068】
第二チューブ41における端面41bの上端部45aは、第一方向(X軸方向)に対して2°以上60°以下の範囲(角度α)で傾いていてもよい。角度αは、第二遠位端46aと第二近位端46cとを繋ぐ直線BL1と、第二チューブ41の内面41aのなす角である。当該角度αの下限値は、例えば、10°以上であり、上限値は、例えば、30°以下である。第二チューブ41における端面41bの下端部45bは、上端部45aと同様に、第一方向(X軸方向)に対して2°以上60°以下の範囲(角度α)で傾いていてもよい。角度αは、第一近位端46bと第一遠位端46dとを繋ぐ直線BL2と、第二チューブ41の内面41aのなす角である。当該角度αの下限値は、例えば、10°以上であり、上限値は、例えば、30°以下である。
【0069】
第二近位端46cと第二遠位端46aとを繋ぐ直線BL1に対し、吸引口11の鉛直方向上方内面と第二チューブ41の外面41cとの間の上端部45aが、凹又は凸となっていてもよい。また、第一遠位端46dと第一近位端46bとを繋ぐ直線BL2に対し、吸引口11の鉛直方向下方内面と第二チューブ41の外面41cとの間の下端部45bが、凹又は凸となっていてもよい。第二近位端46cと第二遠位端46aとを繋ぐ直線BL1又は第一遠位端46dと第一近位端46bとを繋ぐ直線BL2に対し、凹又は凸となっている構成により、吸引効率をより向上させることができる。
【0070】
なお、上記変形例1では、第二遠位端46aと第二近位端46cとを繋ぐ直線BL1及び第一近位端46bと第一遠位端46dとを繋ぐ直線BL2は、第一方向、すなわち、第二チューブ41の内面41aが延びる方向に対して2°以上60°以下の範囲で傾いている例を挙げて説明したが、当該傾きは、上記範囲とは異なる範囲で傾く構成であってもよい。
【0071】
次に、上端部45a及び下端部45bを凹又は凸に形成する方法の一例として、上端部45aを凹に形成し、下端部45bを凸に形成する方法の一例を、主に
図9(a)~
図9(c)を用いて説明する。
【0072】
吸引カテーテル1の製造では、最初に、第一チューブ31、第二チューブ41、及び第三チューブ61が準備される。
【0073】
次に、
図9(a)に示されるような第一方向に延びる第二チューブ41に、芯材80が挿入される(挿入工程)。挿入する芯材は、変形可能な材質、第二チューブの吸引ルーメン10よりも小さい外径のものが好ましい。次に、芯材80が挿入された第二チューブ41が変形させられる(変形工程)。例えば、第二チューブを押しつぶすように変形させることができる。そして、
図9(b)に示されるように、変形工程において変形された第二チューブ41の一端が、吸引ルーメン10の第一方向に直交する面に対して傾くように切断される(切断線C1:切断工程)。切断工程の後、第二チューブ41から芯材80を取り除かれると(除去工程)、
図9(c)に示されるように、第二チューブ41は上記変形から解放される。これにより、
図7及び
図8(a)に示されるように、吸引口11の鉛直方向上方における上端部45aが、吸引口11を形成する吸引面Fに対して凹となり、吸引口11の鉛直方向下方における下端部45bが、吸引面Fに対して凸となった第二チューブ41が形成される。上端部45a又は下端部45bのいずれか一方のみを切断し、吸引面Fに対して凹又は凸としてもよい。
【0074】
第二チューブの端部を凹又は凸に形成するのは、第一チューブ、第二チューブ、及び第三チューブの全てのチューブが接続され、一体になった後でもよく、第二チューブ41と第三チューブ61とが接続される前、第二チューブ41と第一チューブ31とが接続される前であってもよい。第二チューブ41と第三チューブ61とが接続された後に、第二チューブの端部を凹又は凸に形成する場合は、第三チューブを保護する芯材又はカバーを用いてもよい。
【0075】
その後、上記実施形態と同様の製造工程を経ることにより、変形例に係る吸引カテーテル1が製造される。
【0076】
また、上記実施形態に係る吸引カテーテル1を上記実施形態に記載のとおり製造した後、上端部45a及び下端部45bを切削、又は溶融等の処理を施すことにより、上端部45a及び下端部45bを凹又は凸に形成してもよい。このような方法であっても、変形例に係る吸引カテーテル1が製造することができる。
【0077】
<変形例2>
上記実施形態又は変形例では、
図3に示されるように、第一断面が、円弧状の第一内面42と、第一内面42よりも曲率が小さな第二内面43とにより形成されている例を挙げて説明したが、本発明の一側面はこれに限定されない。例えば、
図10(a)~
図10(f)に示されるように、第一断面は、その下端部に底部143A,143B,143C,143D,143E,143Fを有していてもよい。底部143A,143B,143C,143D,143E,143Fは、幅方向に延びる略直線状の部分である。また、上記実施形態において、吸引ルーメン10の第一断面における第二内面43を、幅方向に延びる略直線状としてもよい。
【0078】
ここで、上記第一断面において幅方向に最大長さwを有する最大幅部13A,13B,13C,13D,13E,13Fは、第一断面における鉛直方向中心位置Mよりも下側に位置する。このような第一断面を有する第二チューブ41を有する吸引カテーテル1では、吸引口11において血栓が最も吸い込まれる部分である底部143A,143B,143C,143D,143E,143Fが他の部分に比べて広げられているので、血栓をより効果的に吸引することができる。なお、このような第一断面を有する第二チューブ41も上記実施形態で説明した方法と同様の方法により製造することができる。
【0079】
また、第一断面の鉛直方向における最大長さhは、幅方向における最大長さwよりも短くすれば、吸引口11において血栓が吸い込まれる下側部を広げることができるので、より効果的に吸引口11から血栓を吸引することができる。
【0080】
また、上記実施形態又は変形例では、
図3に示されるように、第二チューブ41と第三チューブ61とが本体樹脂71によって一体的に形成される例を挙げて説明したが、これに限定されない。例えば、第二チューブ41と第三チューブ61とが接着剤等によって互いに固定される構成であってもよい。
【0081】
以上説明した種々の実施形態及び変形例同士は、本発明の一側面の趣旨を逸脱しない範囲で種々、組み合わせられてもよい。
【符号の説明】
【0082】
1…吸引カテーテル、3…第一シャフト、5…第二シャフト、10…吸引ルーメン(ルーメン)、11…吸引口、11a…吸引口の遠位端、11b…吸引口の近位端、11c…遠位側端部、11d…近位側端部、13,13A,13B,13C,13D,13E,13F…最大幅部、15…断面切替部、20…ガイドワイヤールーメン、41…第二チューブ(チューブ)、41a…第二チューブの内面、41b…第二チューブの端面、43…第二内面(底部)、143A,143B,143C,143D,143E,143F…底部、61…第三チューブ、M…鉛直方向中心位置、P1…第一位置。