(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-14
(45)【発行日】2022-01-25
(54)【発明の名称】医療処理デバイスおよび医療処理デバイスをモニタするための方法
(51)【国際特許分類】
A61M 1/16 20060101AFI20220118BHJP
A61M 1/36 20060101ALI20220118BHJP
【FI】
A61M1/16 111
A61M1/36 100
(21)【出願番号】P 2018552698
(86)(22)【出願日】2017-04-11
(86)【国際出願番号】 EP2017058706
(87)【国際公開番号】W WO2017182337
(87)【国際公開日】2017-10-26
【審査請求日】2020-04-09
(31)【優先権主張番号】102016004908.1
(32)【優先日】2016-04-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】501276371
【氏名又は名称】フレセニウス・メディカル・ケア・ドイチュラント・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】ノアック、ヨアヒム
【審査官】寺澤 忠司
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-230628(JP,A)
【文献】特表2010-501286(JP,A)
【文献】特開2007-222306(JP,A)
【文献】特開2000-140101(JP,A)
【文献】国際公開第2012/151077(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/14-1/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの液体を流体システムへ、および/または流体システムから運搬するための少なくとも1つのポンプと、
少なくとも前記流体システムの一部において圧力を測定するための少なくとも1つの圧力センサを有するモニタリング装置と、ここにおいて、前記モニタリング装置は、モニタリングが前記流体システム、前記流体システムの一部、または前記流体システムの複数の部分内の前記圧力の評価に基づくように構成される、
前記流体システム、前記流体システムの一部、または、前記流体システムの複数の部分におけるコンプライアンスが決定されるように構成されたコンプライアンス決定装置とを備え、
前記コンプライアンス決定装置
は、前記流体システムの前記コンプライアンスに応じて圧力ベースのモニタリングが行われるように前記モニタリング装置と協働
し、
前記モニタリング装置は、前記流体システム、前記流体システムの一部、または前記流体システムの複数の部分内の前記圧力がモニタされるように構成された耐密性モニタリング装置であり、前記コンプライアンスに応じて前記圧力の変化がある場合、前記流体システムは耐密性でないと結論づけられ、
前記耐密性モニタリング装置は、指定の時間間隔内の前記圧力の変化の量が指定の限界値と比較されるように構成され、前記圧力の前記変化の量が前記指定の限界値よりも大きい場合、前記システムは耐密性でないと結論づけられ、前記コンプライアンス決定装置が、前記圧力の前記変化についての前記限界値が前記コンプライアンスに応じて設定されるように前記耐密性モニタリング装置と協働する、医療処理デバイス。
【請求項2】
前記処理デバイスが、処理モード、および、処理に備えて、前記処理に先行する準備モードを提供し、ここにおいて、前記モニタリング装置は、前記コンプライアンスの前記決定が前記準備モードで行われ、および、コンプライアンスに依存した圧力ベースのモニタリングが前記準備モードおよび/または前記処理モードで行われるように構成されることを特徴とする、請求項1に記載の医療処理デバイス。
【請求項3】
前記モニタリング装置が、前記コンプライアンスに依存した圧力ベースのモニタリングが前記処理モードで行われるように構成されることを特徴とする、請求項2に記載の医療処理デバイス。
【請求項4】
前記モニタリング装置が、前記流体システム、前記流体システムの一部、または前記流体システムの複数の部分において閉じ込められた液体の体積が変化し、前記流体システム、前記流体システムの一部、または前記流体システムの複数の部分における前記コンプライアンスが、前記体積の変化から生じる前記流体システム、前記流体システムの一部、または前記流体システムの複数の部分内の圧力変化に基づいて決定されるように構成されることを特徴とする、請求項1から
3のいずれか1項に記載の医療処理デバイス。
【請求項5】
前記コンプライアンス決定装置が、前記流体システムの第1の部分(I)におけるコンプライアンスC(I)と前記流体システムの第2の部分(II)におけるコンプライアンスC(II)との比Kが決定され、前記流体システムの前記第2の部分(II)における前記コンプライアンスC(II)が、前記流体システムの前記第1の部分における前記コンプライアンスC(I)ならびに前記流体システムの前記第1の部分および前記第2の部分における前記コンプライアンスの前記比Kから決定され、または、前記流体システムの前記第1の部分Iにおける前記コンプライアンスC(I)が、前記流体システムの前記第2の部分における前記コンプライアンスC(II)ならびに前記流体システムの前記第1の部分および前記第2の部分における前記コンプライアンスの前記比Kから決定されるように構成されることを特徴とする、請求項1から
4のいずれか1項に記載の医療処理デバイス。
【請求項6】
前記コンプライアンスを決定するための前記装置が、前記流体システムの前記第1の部分および前記第2の部分(I、II)における前記コンプライアンスの前記比Kが、前記流体システムの前記第1の部分と前記第2の部分との間の圧力均等化の場合において、前記流体システムの前記第1の部分内の圧力変化と前記流体システムの前記第2の部分内の圧力変化との比を決定することによって決定されるように構成されることを特徴とする、請求項
5に記載の医療処理デバイス。
【請求項7】
前記処理デバイスが、前記流体システムの少なくとも一部を交換可能に受け入れるための少なくとも1つの受け器を有することを特徴とする、請求項1から
6のいずれか1項に記載の医療処理デバイス。
【請求項8】
前記医療処理デバイスが、半透膜によって血液室と透析液室とに分割される透析器と、前記血液室に至る血液供給ラインと、前記血液室から来る血液除去ラインと、前記透析液室に至る透析液供給ラインと、前記透析液室から来る透析液除去ラインとを備える流体システムを有する体外血液処理デバイスであり、前記コンプライアンスを決定するための前記装置が、前記コンプライアンスC(I)が、前記血液供給ラインの一部分と、前記血液除去ラインの一部分と、前記透析器の前記血液室および前記透析液室とを備える前記流体システムの第1の部分(I)内で決定されるように構成されることを特徴とする、請求項1から
7のいずれか1項に記載の医療処理デバイス。
【請求項9】
前記コンプライアンス決定装置が、前記流体システムの前記第1の部分(I)における前記コンプライアンスC(I)と、前記流体システムの前記第1の部分を含まない前記流体システムの第2の部分(II)における前記コンプライアンスC(II)との比Kが決定され、前記流体システムの前記第1の部分における前記コンプライアンスC(I)が、前記流体システムの前記第2の部分における前記コンプライアンスC(II)ならびに前記流体システムの前記第1の部分および前記第2の部分における前記コンプライアンスの前記比Kから決定されるように構成されることを特徴とする、請求項
8に記載の医療処理デバイス。
【請求項10】
前記医療処理デバイスが、新鮮な透析液のための透析液ソースと、使用済みの透析液のためのドレーンと、血液を運搬するための血液ポンプと、透析液を運搬するための透析液ポンプと、限外濾液を回収するための限外濾過ポンプを有する限外濾過装置とを有し、前記コンプライアンス決定装置が、指定の体積の液体が前記流体システムの前記第2の部分(II)から除去され、前記流体システムの前記第2の部分(II)における前記コンプライアンスC(II)が前記システムの前記第2の部分内
の圧力変化に基づいて決定されるように構成され、前記透析液ポンプおよび/または前記限外濾過ポンプが、前記流体システムの前記第2の部分から前記ドレーンへ透析流体を除去するために動作させられることを特徴とする、請求項
9に記載の医療処理デバイス。
【請求項11】
液体で満たし得る少なくとも1つの体積を閉じ込める流体システムを有する医療処理デバイスをモニタするための
作動方法であって、
前記医療処理デバイスは、モニタリング装置およびコンプライアンス決定装置を備え、
前記モニタリング装置は、モニタリングが、前記流体システム、前記流体システムの一部、または前記流体システムの複数の部分内の圧力の評価に基づ
くように作動し、および、前記流体システム、前記流体システムの一部、または前記流体システムの複数の部分内の前記圧力がモニタされるように作動し、ここにおいて、コンプライアンスに応じて、前記圧力の変化がある場合、前記流体システムは耐密性でないと結論づけられ、
前記コンプライアンス決定装置は、前記流体システム、前記流体システムの一部、または前記流体システムの複数の部分におけるコンプライアンスが決定され、圧力ベースのモニタリングが前記流体システムの前記コンプライアンスに応じて行われ
るように作動し、および、耐密性モニタリング装置は、指定の時間間隔内の前記圧力の変化の量が指定の限界値と比較されるように作動し、前記圧力の前記変化の量が前記指定の限界値よりも大きい場合、前記システムは耐密性でないと結論づけられ、前記コンプライアンス決定装置が、前記圧力の前記変化についての前記限界値が前記コンプライアンスに応じて設定されるように前記耐密性モニタリング装置と協働する、
作動方法。
【請求項12】
前記モニタリング装置が、前記流体システム、前記流体システムの一部、または前記流体システムの複数の部分内の前記圧力がモニタされ
るように作動し、指定の時間間隔内の前記圧力の前記変化の量が指定の限界値と比較され、前記圧力の前記変化の量が前記指定の限界値よりも大きい場合、漏れがあると結論づけられ、
前記コンプライアンス決定装置が、前記圧力の前記変化についての前記限界値が前記コンプライアンスに応じて設定される
ように作動することを特徴とする、請求項
11に記載の
作動方法。
【請求項13】
処理モード、および、処理に備えて、前記処理に先行する準備モードが提供され、
前記モニタリング装置が、前記コンプライアンスの前記決定が前記準備モードで行われ、コンプライアンスに依存した、圧力ベースのモニタリングが前記準備モードおよび/または前記処理モードで行われる
ように作動することを特徴とする、請求項
11または
12のいずれか1項に記載の
作動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モニタリングが流体システム内の圧力の評価に基づくように構成されたモニタリング装置を有する医療処理デバイスに関する。本発明は、モニタリングが流体システム内の圧力の評価に基づく、医療処理デバイスをモニタするための方法にさらに関する。
【背景技術】
【0002】
体外血液処理の一例としての透析では、処理対象の血液は、半透膜によって血液室と透析液室とに分割された透析器の血液室を通って体外血液回路内を流れる一方で、透析液は、透析液システム内の透析器の透析液室を通って流れる。体外血液回路は、血液室に至る血液供給ラインと、血液室から来る血液除去ラインとを有し、また、透析液システムは、透析液室に至る透析液供給ラインと、透析液室から来る透析液除去ラインとを有する。透析器と血液ラインとを備える流体システムの一部は、一般に、単回使用(single use)のために設計され得る。血液処理中に血液で満たされる流体システムのライン部分は、チューブセットおよび/またはカセットの形をとることができる。血液処理のために、チューブセットまたはカセットは、血液処理デバイス内に挿入され、またはこの処理デバイス内にもしくはこの処理デバイスに対して固定される。ただし、透析液ラインを備える透析液システムも、交換可能なユニット(使い捨て可能)の形をとることができる。
【0003】
血液ポンプが、血液を運搬するために体外血液回路内に設けられ、少なくとも1つの透析液ポンプが、透析液を運搬するために透析液システム内に設けられる。新鮮な透析液は透析液ソースにおいて使用可能になり、使用済み透析液はドレーンへ放出される。さらに、血液処理デバイスは、新鮮な透析液と使用済み透析液との平衡を保つための平衡ユニットと、流体システムから限外濾液を除去するための限外濾過ポンプを有する限外濾過装置とを有する。たとえば、流入する流れと流出する流れとをポンプにより制御することによって平衡装置と限外濾過装置とが組み合わされ得る透析デバイスも知られている。
【0004】
圧力保持試験により、流体システム内で過剰な圧力または陰圧が確立される密閉体積を閉じ込める流体システムの耐密性(tightness)をチェックすることが知られている。圧力が指定の時間期間内に特定の限界値を下回らない、または特定の限界値を上回る場合、流体システムは耐密性があると結論づけられ得る。
【0005】
EP1327457A1は、処理デバイスの流体システム内の漏出を検出するためのモニタリング装置を有する血液処理デバイスを開示する。このモニタリング装置は、流体システム内の圧力を測定するための圧力センサを有する。血液処理中に、流体システム内の圧力が連続的に測定され、可能な圧力の変化から漏出速度(leakage rate)が決定され、漏出速度から漏出体積が計算され、漏出体積が指定の限界値と比較される。
【0006】
処理デバイスを制御するために、血液処理デバイスの流体システム内の圧力変化も検出される。したがって、信頼性の高い血液処理デバイスのモニタリングまたは制御は、測定された圧力変化の的確な評価を必要とする。実際には、処理デバイスをモニタまたは制御するための圧力変化の評価は、問題がないわけではない。実際には、適切な限界値を設定するとき、透析器および使用されるチューブセットまたはカセットは異なる性質を有しうることから、これが、圧力変化に影響を与える可能性があるという事実を考慮することが必要であるので、デバイスをモニタするのに適した限界値を設定することは困難である。
【発明の概要】
【0007】
本発明の目的は、改善された圧力ベースのモニタリングを可能にする医療処理デバイス、特に体外血液処理デバイスを提供することである。本発明のさらなる目的は、改善された圧力ベースのモニタリングを可能にする方法を提供することである。
【0008】
これらの目的は、独立請求項の特徴によって本発明により達成される。従属請求項は、本発明の有利な実施形態に関係する。
【0009】
本発明によるデバイスおよび本発明による方法は、異なる透析器および/またはチューブラインが使用されるときですら、モニタリングプロセスのための新しい限界値またはパラメータを入力することを必要とすることなく、改善された圧力ベースのモニタリングを可能にする。
【0010】
医療処理デバイスは、少なくとも1つの液体を流体システムへ、および/または流体システムから運搬するための少なくとも1つのポンプを有する。このポンプは、処理中に体外血液回路内で血液を運搬するための血液ポンプ、透析液システム内で透析液を運搬するための透析液ポンプ、平衡システムを満たすためのポンプ、限外濾過ポンプ、または液体(補充液(substituate))を血液側流体システムへと運搬するための補充ポンプ(substitution pump)であってよい。血液処理に備えて、血液ポンプは、流体システムを満たすためにも使用可能である。流体システムを満たすための液体も、バッグの中に設けられ得る。ポンプは、密閉体積が流体システム内で作成されるように、閉塞機能によって弁として働くことができる蠕動ポンプであってよい。
【0011】
処理デバイスは、モニタリングが流体システム、流体システムの一部、または、流体システムの複数の部分内の圧力の評価に基づくように構成されたモニタリング装置をさらに有する。モニタリング装置はまた、圧力に応じて処理デバイスを制御するための制御装置の一部であってよい。1つまたは複数の圧力センサが、圧力を測定するために設けられる。1つまたは複数の圧力センサは、異なる目的で処理デバイス内に設けられてもよい。
【0012】
流体システムの少なくとも一部を受け入れるために、医療処理デバイスは、流体システムまたは流体システムの複数の部分が血液処理デバイスに挿入可能またはそれに固定可能であるように、少なくとも1つの受け器(receiver)を有することができる。
【0013】
流体システムは、意図されたとおりに、医療処理デバイスの動作中に1つまたは複数の流体を受け入れることが可能である体積(volume)または複数の体積を閉じ込めるあらゆる構成要素を意味すると理解される。体積または体積の複数の部分は、適切な部材、たとえばチューブクランプ、閉鎖用キャップなどによって、周囲から液密態様で密封可能である。流体システムは、複数の部分、たとえば複数のチューブセットまたはカセットも備えることができる。流体システムが複数の部分からなる場合、その中へ個々の部分が挿入可能な複数の受け器が設けられ得る。
【0014】
体外血液処理デバイスの場合、流体システムは、透析器と、体外血液回路と、透析液システムとを備えることができる。そのような流体システムおよび受け器は、従来技術に属する。流体システムが単回使用チューブセットとして、またはカセットとして構成される場合、血液処理デバイスは、作動部材を用いてチューブセットまたはカセットに作用することができ、たとえば、流体システム内の所与の点においてチューブラインをクランプすることができる。
【0015】
処理デバイスは、流体システム、流体システムの一部、または、流体システムの複数の部分におけるコンプライアンスを決定するためのコンプライアンス決定装置によって区別され、このコンプライアンス決定装置は、流体システムのコンプライアンスに応じて圧力ベースのモニタリングが行われるようにモニタリング装置と協働する。
【0016】
実際には、流体システムのコンプライアンスが圧力変化にかなりの程度まで影響を与えることが示されている。したがって、本発明の原理は、流体システム、流体システムの一部、または流体システムの複数の部分のコンプライアンスを決定すること、および、医療処理デバイスをモニタするための限界値またはパラメータを設定するとき、コンプライアンスを考慮に入れることである。本発明による処理デバイスでは、コンプライアンスは、限界値またはパラメータを設定するための選択基準として使用可能である。たとえば、処理デバイスを動作させるための限界値またはパラメータの、コンプライアンスに依存したセットが、自動的に選択可能である。
【0017】
本発明によるデバイスまたは本発明による方法では、モニタリングはコンプライアンスに応じて実行されるので、たとえば流体システム内に捕捉され得る空気によるコンプライアンスの変化は、圧力ベースのモニタリングに対して影響を与えない、または、コンプライアンスが考慮に入れられなかった場合よりも、圧力ベースのモニタリングに与える影響が少ない、のどちらかとすることができる。血液処理デバイスでは、換気されない透析器は、たとえば、システムのコンプライアンスに重要な貢献をすることができる。実際には、透析器が換気されていない、または完全には換気されていないことがあり得、個々のタイプの透析器は換気するのがより容易または困難である。しかしながら、モニタリング時にコンプライアンスが考慮に入れられるので、このことは、本発明によるデバイスまたは本発明による方法の場合には不利ではない。したがって、異なるチューブセットまたはカセットの性質は、モニタリングに影響を与えることはできない。
【0018】
処理デバイスがどのようにモニタされるかは、本発明にとっては重要ではなく、関連するのは、圧力ベースのモニタリングが行われることである。その点において、モニタリング装置は、さまざまな構成を有することができる。コンプライアンス決定装置およびモニタリング装置は、別個のユニットの形をとってもよいし、処理デバイスの中央制御および演算ユニットの一部であってもよい。
【0019】
医療処理デバイスの一実施形態は、処理モードと、処理に備えて、処理に先行する準備モードとを提供する。処理モードは、実際の処理が行われる処理デバイスの動作状態を意味すると理解される。血液処理デバイスでは、この動作状態は、流体システムの血液側部分が血液で満たされることを特徴とする。
【0020】
血液処理デバイスが起動される前は、流体システムの血液側部分は満たされていない。血液処理に備えて、流体システムの血液側部分は、最初に、フラッシング液または準備液(充填液と呼ばれることが頻繁である)で満たされる。
【0021】
モニタリング装置は、コンプライアンスの決定が準備モードで行われ、コンプライアンスに依存した、圧力ベースのモニタリングが準備モードおよび/または処理モードで行われるように構成可能である。これは、流体システムの一部が血液で満たされているとき、コンプライアンスの決定が処理中に行われないという利点を有する。また、処理が中断される必要はない。透析器がフラッシング液で満たされているとき、既知の方法にとって必要とされる透析器の膜全体にわたる圧力均等化は、準備モードにおいてよりすばやく行われ得るので、血液処理デバイスの透析器が流体システムの一部であるとき、コンプライアンスは、さらに、既知の方法によってより容易に決定可能である。実際の圧力ベースのモニタリングは、血液処理の前および/またはその間に準備モードで行われることが可能であり、その目的のために、処理が中断される必要はない。一実施形態は、モニタリング装置が、コンプライアンスに依存した、圧力ベースのモニタリングが処理モードでのみ行われ、準備モードでコンプライアンスが決定されるように構成されることを提供する。
【0022】
モニタリング装置は、流体システム、流体システムの一部、または、流体システムの複数の部分内に閉じ込められた液体の体積が変化し、流体システム、流体システムの一部、または、流体システムの複数の部分におけるコンプライアンスが、体積の変化から生じる流体システム、流体システムの一部、または、流体システムの複数の部分内の圧力変化に基づいて決定されるように構成することができる。その目的のために、指定の体積の液体が、流体システム、流体システムの一部、もしくは、流体システムの複数の部分に供給可能である、または、指定の体積の液体が、流体システム、流体システムの一部、もしくは、流体システムの複数の部分から除去可能であり、流体システム、流体システムの一部、もしくは流体システムの複数の部分におけるコンプライアンスが、液体の供給もしくは除去から生じる、流体システム、流体システムの一部、もしくは流体システムの複数の部分内の圧力変化に基づいて決定されることが可能である。それによって、圧力変化は、コンプライアンスが減少するにつれて増加し、あるいは、コンプライアンスが増加するにつれて減少し、すなわち、システムの柔軟性が高いほど、または、システムの剛性が低いほど、圧力変化は小さくなる。たとえば、液体が供給または除去されるとき、チューブラインまたはカセットの壁が比較的大きい程度まで変形する場合、圧力変化は比較的小さい。液体が流体システムから除去されるとき、特定の制限圧力を越えることはないため、システム内の圧力は増加する必要はない。意図は、処理デバイスの特定の動作点の領域内に圧力変化があるということである。
【0023】
モニタリング装置は、指定の時間間隔内の圧力の変化の量が指定の限界値と比較され、圧力の変化の量が指定の限界値よりも大きい場合、システムは耐密性がないと結論づけられるように構成された、耐密性モニタリング装置であってよい。指定の値だけ圧力低下がある場合、たとえば、コンプライアンスに応じて、システムは耐密性がないと結論づけられ得る。コンプライアンス決定装置は、圧力の変化のための限界値がコンプライアンスに応じて設定されるような様式で、耐密性モニタリング装置と協働する。
【0024】
より高いコンプライアンスを有する流体システムは、たとえば、一般に、より低いコンプライアンスを有する流体システムよりも低い限界値が設定されることを要求する。限界値は、たとえば、コンプライアンスについての限界値の依存を説明する式を使用して限界値を計算することによって、またはコンプライアンスに応じて指定の限界値から限界値を選択することによって、設定可能である。耐密性モニタリング装置は、剛性流体システムの場合に仮定される限界値のための補正係数が確認されるようにも構成可能であり、より小さなコンプライアンスの場合よりも、より大きなコンプライアンスの場合に、より小さい補正係数が確認される。
【0025】
一実施形態では、コンプライアンス決定装置は、流体システムの第1の部分におけるコンプライアンスと流体システムの第2の部分におけるコンプライアンスとの比が決定され、流体システムの第2の部分におけるコンプライアンスが、流体システムの第1の部分におけるコンプライアンスならびに流体システムの第1の部分および第2の部分におけるコンプライアンスの比から決定され、または、流体システムの第1の部分におけるコンプライアンスが、流体システムの第2の部分におけるコンプライアンスならびに流体システムの第1の部分および第2の部分におけるコンプライアンスの比から決定されるように構成される。これは、流体システムの1つの部分のみのコンプライアンスが知られる必要があるという利点を有する。流体システムの一部におけるコンプライアンスが決定されるべき場合、決定は、コンプライアンスがより容易におよび/またはより確実に決定され得る異なる部分において実行される。
【0026】
この実施形態では、コンプライアンスを決定するための装置は、流体システムの第1の部分および第2の部分におけるコンプライアンスの比が、流体システムの第1の部分と第2の部分との間の圧力均等化の場合における流体システムの第1の部分内の圧力変化と流体システムの第2の部分内の圧力変化との比を決定することによって決定されるように構成可能である。この実施形態の利点は、流体システムの第1の部分におけるコンプライアンスが容易にまたは確実に決定できない場合に適用できる。これは、コンプライアンスは血液で満たされた流体システム内で決定されるべきでないので、透析器の血液室ならびに血液供給ラインと血液除去ラインとを備える流体システムの一部内でコンプライアンスが決定される必要があるような体外血液処理デバイスにおいて、当てはまり得る。したがって、実施形態は、特に、血液側流体システムがまだ血液で満たされていない、血液処理の準備フェーズ中に、血液で満たされていない流体システムの一部であり得る血液処理デバイスの流体システムの異なる部分において決定されるべきコンプライアンスを提供する。システム内の圧力変化を生じさせるために、透析液ポンプまたは限外濾液ポンプを用いて、液体たとえば透析液で満たされることが可能な流体システムの部分から、液体をポンプで汲み出してもよい。次いで、透析液は、たとえば、ドレーンへと方向転換可能である。流体システムの他方の部分のみにおけるコンプライアンスを決定するために、特定の体積の液体が正確に供給または除去可能である場合、流体システムの異なる部分におけるコンプライアンスを最初に決定することも有利であり得る。
【0027】
本発明は、以下で図面を参照しながら詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明による血液処理デバイスの一実施形態の構成要素を示す図。
【
図2】漏れが発生していないときの血液処理デバイスの流体システム内の圧力の経時的なプロファイルの概略図。
【
図3】わずかな漏出が発生しているときの血液処理デバイスの流体システム内の圧力の経時的なプロファイルの概略図。
【
図4】一実施形態についてのモニタリングプロセスの個々のフェーズを示す流れ図。
【
図5】本発明による血液処理デバイスのさらなる一実施形態を示す図。
【
図6A】処理をモニタするためのパラメータの設定を示す図。
【
図6B】処理をモニタするためのパラメータの設定を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明は、体外血液処理デバイスの一例に基づいて説明される。しかしながら、本発明は、説明される血液処理デバイスの実施形態に限定されず、当業者に知られている他の実施形態にも関することができる。図面を参照しつつ、本発明に関連する血液処理デバイスの構成要素のみが説明されている。特定の実施形態が説明される場合であっても、同じ機能を有するのであれば、その要素は他の構成も有することができ、たとえば、ラインを遮断するための弁の代わりに、クランプまたは蠕動ポンプが設けられ得る。さらに、関連する構成要素のすべてが存在しなければならないとは限らない。
【0030】
図1は、血液処理デバイスの構成要素の非常に簡略化された概略図である。血液処理デバイスは、体外血液回路Aと、透析液システムBとを備える。体外血液回路Aと透析液システムBは、透析器1とともに、体外血液処理デバイスの流体システムを形成する。流体システムまたは流体システムの一部は、単回使用のための使い捨て用品の形をとることができる。以下では、血液処理デバイスは、使い捨て用品が血液処理デバイスへと挿入されているまたはこれに固定されている装備された状態において説明される。
【0031】
透析器1は、半透膜4によって分離された、血液室2と透析液室3とを有する。血液ポンプ6が設けられる血液供給ライン5は、動脈患者ポート7から血液室2の入口に至る。動脈弁8は、血液ポンプ6の上流にある血液供給ライン5内に設置可能である。液体室10が配置可能な血液除去ライン9は、血液室2の出口から静脈患者ポート11に至る。静脈弁12は、液体室10の下流にある血液除去ライン9内に置かれる。
【0032】
透析液システムBは、新鮮な透析液を提供するための透析液ソース13を有し、その透析液ソースは、透析液供給ライン14の第1の部分14Aを介して平衡ユニット15の一方の室15Aの入口に接続される。透析液供給ラインの第2の部分14Bは、平衡ユニット15の一方の室15Aの出口を透析液室3の入口に接続する。
【0033】
透析液は、フラッシング液または準備液として使用可能である。透析液室3の出口は、透析液除去ライン16の第1の部分16Aを介して平衡ユニット15の他方の室15Bの入口に接続される。透析液除去ライン16の第1の部分16A内には、透析液ポンプ17がある。平衡ユニット15の他方の室15Bの出口は、透析液除去ライン16の第2の部分16Bを介してドレーン18に接続される。平衡ユニット15は、さらなる室を有することができる。
【0034】
透析液供給ライン14内には、透析液室3の上流に弁19があり、透析液除去ライン16内には、透析液室3の下流に弁20がある。弁19、20は、電磁的に作動可能な弁であってよい。透析液供給ライン14の第2の部分14Bは、その中に第1のバイパス弁22が設けられた第1のバイパスライン21を介して、透析液除去ライン16の第1の部分16Aに接続可能である。その中に限外濾液ポンプ24が設けられた限外濾液ライン23は、透析液除去ライン16の第1の部分16Aから透析液除去ライン16の第2の部分16Bに至る。その中に第2のバイパス弁26が設けられた第2のバイパスライン25は、限外濾液ポンプ24の上流である限外濾液ライン23の一部分から、限外濾液ポンプ24の下流である限外濾液ライン23の一部分に至ることができる。血液ポンプ6、透析液ポンプ17、および限外濾液ポンプ24は、閉塞ポンプであってよい。ポンプが閉塞ポンプである場合、密閉体積を作成するための弁は省略可能である。
【0035】
本実施形態では、体外血液回路Aの血液供給ラインおよび血液除去ライン5、9は、交換可能な血液チューブセットの構成要素であり、透析液システムBの透析液供給ラインおよび透析液除去ライン14、16は、血液処理デバイスの油圧部分の固定構成要素である。血液チューブセットおよび透析器1は単回使用が意図されており、受け器(図示せず)に挿入される。チューブセットの代わりに、その中で液体、特に血液の供給および除去のためのチャネルが形成される交換可能なカセットを提供することも可能である。透析器のための受け器は、ホルダであってよい。血液供給ライン5のための受け器は、血液ポンプ6内またはその上に形成可能である。
【0036】
血液処理デバイスは、モニタリング装置27と、コンプライアンスを決定するためのコンプライアンス決定装置28とを有する。モニタリング装置27およびコンプライアンス決定装置28は、一般的な装置の一部であってよく、中央制御および演算装置29の一部であってもよい。
【0037】
モニタリング装置27および/またはコンプライアンス決定装置は、たとえば、汎用プロセッサ、デジタル信号を連続的に処理するためのデジタル信号プロセッサ(DSP)、マイクロプロセッサ、特定用途向け集積回路(ASIC)、論理素子からなる集積回路(FPGA)、または個々の方法ステップを実行するための他の集積回路(IC)もしくはハードウェア構成要素を有することができる。データ処理プログラム(ソフトウェア)は、方法ステップを実行するためにハードウェア構成要素上で実行可能である。複数のさまざまな構成要素またはそれらの組み合わせも可能である。
【0038】
モニタリング装置27およびコンプライアンス決定装置28は、ポンプ6、17、24の流量(flow rates)が設定可能であり、弁8、12、19、20およびバイパス弁22、26を作動可能とするために、制御ラインまたはデータライン(図示せず)を介して、ポンプ、弁、およびバイパス弁に接続される。弁およびバイパス弁は、チューブセットに作用できる作動部材(図示せず)を有する。
【0039】
メモリ27Aと表示装置27Bとアラームユニット27Cとを有するモニタリング装置27は、データライン30を介してコンプライアンス決定装置28に接続される。
【0040】
体外血液回路A内の圧力は、血液ポンプ6の下流および血液室2の上流にある血液供給ライン5内の圧力を測定する第1の圧力センサ31によって測定される。血液供給ライン5における圧力センサ31に加えて、またはこの代わりに、圧力センサ(
図1に示されず)も、静脈血除去ライン9において、特に弁12の上流に設けられ得る。この圧力センサは、血液供給ライン5における圧力センサ31のように、コンプライアンスを決定するために使用可能である。
【0041】
透析液システムB内では、圧力は、透析液室3の下流および透析液ポンプ17の上流にある透析液除去ライン16の第1の部分16A内の圧力を測定する第2の圧力センサ32によって測定される。コンプライアンスが決定される領域内で圧力が決定されるように配置された1つの圧力センサのみを提供することも可能である。その領域は、特に、透析器全体を含むことができる。
【0042】
モニタリング装置27およびコンプライアンス決定装置28は、信号ライン33を介して第1の圧力センサ31から信号を受け取る。コンプライアンス決定装置28は、信号ライン34を介して第2の圧力センサ32から信号を受け取る。測定された圧力値は、モニタリング装置27のメモリユニット27A内に記憶される。
【0043】
モニタリング装置27およびコンプライアンス決定装置28は、以下の方法ステップを実行するために、血液処理デバイスの個々の構成要素を次のように制御する。
図2および
図3は圧力プロファイルを示す。
図4は、個々のフェーズを示すフロー図である。
【0044】
本実施形態では、血液処理デバイスをモニタすることは、流体システムの耐密性を試験することを意味する。本実施形態では、流体システムの一部のみが、耐密性に関して試験される。その部分は、透析器1を含む流体システムの一部であるべきである。流体システムの耐密性を試験することは、圧力保持試験に基づく。
【0045】
圧力保持試験を実行するために、液体で満たされる流体システムの一部は、血液処理デバイスの流体システムから分離される。その目的のために、動脈弁12、透析器1の上流にある弁19、ならびに第1のバイパス弁および第2のバイパス弁22、26は最初、閉じられており、透析器1の下流にある第2の弁20は開いている。血液ポンプ6は閉塞性であるので、静脈弁8は、閉じられる必要はない。次いで、流体システムの密閉体積内の圧力を高めるために、血液ポンプ6が動かされる(フェーズ1)。
【0046】
血液ポンプ6と血液室2の間の血液供給ライン5の部分内で、血液室2と静脈弁12の間の血液除去ライン9の部分内で、血液室2内および透析液室3内で、ならびに透析液室3と透析液室3の上流および下流にある弁19、20の間のライン部分内で、過剰な圧力が高まる。流体システムのこの部分は、以下では、流体システムの第1の部分Iと呼ばれ、ここで、圧力保持試験が実行されることになる。透析液室3の下流にある弁20は開いているので、過剰な圧力は、バイパス弁22の下流にあるライン部分と弁26の上流にあるライン部分、ならびに透析液ポンプ17と限外濾液ポンプ24とを備える、流体システムの一部内でも高まることができる。流体システムのこの部分は、以下では、流体システムの第2の部分IIと呼ばれる。
【0047】
血液処理デバイスは、補充液を血液室2の上流または下流にある体外血液回路Aに補充液ライン36を介して供給可能である補充液ポンプ35も有することができる。さらなる弁37が補充液ライン36内に設けられる。圧力を高めるために、血液室の上流または下流にある血液供給ラインまたは血液除去ライン5、9に補充液を供給する補充液ポンプ35を、血液ポンプ6の代わりに動作させることも可能である。
【0048】
図1では、流体システムの第1の部分および第2の部分は、IおよびIIによって示されている。時間tにおいて流体システムの第1の部分I内で第1の圧力センサ31によって測定される圧力はP(t)(I)によって示され、時間tにおいて流体システムの第2の部分II内で第2の圧力センサ32によって測定される圧力はP(t)(II)によって示される。
【0049】
図2は、第1の圧力センサおよび第2の圧力センサ31、32によって測定される圧力のプロファイルを示す。このステップは、
図4ではフェーズ1として示される。第1の圧力センサ31によって測定される体外血液回路A内の圧力は実線によって示され、第2の圧力センサ32によって測定される透析液システムB内の圧力は破線によって示される。圧力を高めるために、血液ポンプ6および/または補充液ポンプ35は、半透膜4を損傷するのを避けるように、透析器1の最大許容圧力限界値および/または圧力勾配を越えないように動作する。圧力上昇中に、第1の圧力センサ31によって測定される圧力と第2の圧力センサ32によって測定される圧力の間に圧力差が生じる。ハイフラックス透析器では、ローフラックス透析器とは対照的に、透析器1の膜4の流動抵抗は無視されるべきである。時間t1において、血液ポンプ6は比較的ゆっくりと動いているので、圧力差はほぼゼロである。代替的に、または加えて、デバイスは、所定の時間にわたって待機し、次いで、コンプライアンスを決定するために、その時間における圧力値を使用するように構成可能である。代替的に、または加えて、システムは、圧力の勾配の変化が所定の値を下回るまで待機し、コンプライアンスを決定するために、その時間における圧力値を使用することができる。言い換えれば、システムは、必ずしも、圧力均等化が完了するまで待機しなければならないとは限らない。圧力P(t1)(I)およびP(t1)(II)が測定される(P(t1)(I)=P(t1)(II))。ローフラックス透析器も使用可能であるが、その場合、透析器1の血液室および透析液室2、3間の圧力均等化は、より時間がかかる、すなわち、圧力P(t1)(I)=P(t1)(II)になる時間は、より後である。圧力勾配の大きさは、液体がポンプで流体システムに注入され、または流体システムから汲み上げられるスピードにも依存する。
【0050】
圧力が正常に高められると、流体システムの第1の部分および第2の部分が各々、密閉体積を形成するように、流体システムの第1の部分IをII第2の部分から分離するために、透析液室3の下流にある弁20が時間t1において閉じられる(フェーズ2)。本実施形態では耐密性モニタリング装置であるモニタリング装置27は、ここで、血液ポンプ6と血液室2の間の血液供給ライン5の部分、血液室2と静脈チューブクランプ12の間の血液除去ライン9の部分、透析器1の血液室2および透析液室3、ならびに、透析器の結合(図示せず)が置かれる透析液供給ライン14の一部分および透析液除去ライン16の一部分とを備える、流体システムの第1の部分Iの耐密性を試験するために、流体システムのその部分内で圧力保持試験を実行することができる。補充液ポンプ35が存在する場合、弁37たとえば逆止め弁の下流にある補充液ライン36の耐密性も試験される。
【0051】
流体システムの第1の部分Iは耐密性がある場合、流体システムのその部分内の圧力は、一定のままである(P(t1)(I)=P(t2)(I))。
図2は、システムに耐密性がある場合を示す。したがって、流体システムの第1の部分I内の圧力は減少しない。
図3は、システムに耐密性がない場合を示す。流体システムの第1の部分I内の圧力が減少することがはっきりとわかる。漏れは、圧力が指定の時間間隔内に指定の限界値を下回るかどうかを試験することによって、または圧力が指定の値だけ減少する時間間隔を測定することによって検出可能である。
【0052】
流体システムの第1の部分I内の圧力保持試験中に、流体システムの第2の部分IIが換気される。その目的のために、第2のバイパス弁26は、透析液がドレーン18へと流入するように開かれる。したがって、流体システムの第2の部分II内の圧力は急激に減少する。大気圧よりも大きいまたはこれに等しい(
図2および
図3)が流体システムの一部I内の圧力よりも低い圧力P(II)が確立される。
【0053】
流体システムの第2の部分IIの換気が完了する時間t2において、流体システムの第1の部分と第2の部分との間の圧力均等化を発生するために、第2のバイパス弁26は再び閉じられ、透析液室3の下流にある弁20は再び開けられる(フェーズ3)。流体システムの第1の部分I内の圧力は減少するが、流体システムの第2の部分II内の圧力は増加する。時間t3において、圧力均等化は完了する。その時間において、圧力P(t3)(I)は圧力P(t3)(II)に等しい。
【0054】
コンプライアンス決定装置28は、次のように時間期間Δt=t3-t2内の圧力均等化を評価する(
図4)。コンプライアンス決定装置28は、時間t2における圧力P(t2)(I)と時間t3における圧力P(t3)(I)の差から、流体システムの第1の部分I内の圧力低下デルタP(I)を決定する。さらに、装置28は、時間t3における圧力P(t3)(II)および時間t2における圧力P(t2)(II)から、流体システムの第2の部分(II)の圧力差デルタP(II)を決定する。次いで、コンプライアンス決定装置28は、以下の式に従って、圧力変化デルタPの比から、流体システムの第1の部分I内のコンプライアンスC(I)と流体システムの第2の部分(II)内のコンプライアンスC(II)との比Kを計算する。
【0055】
【0056】
時間t3において圧力均等化が生じると、透析液室3の下流にある弁20が再び閉じられ、限外濾液ポンプ20または透析液ポンプ17は、短時間に動作し、そして、特定の透析液の体積が流体システムの第2の部分IIから除去され、それが圧力低下につながる。透析液ポンプ17の代わりに限外濾液ポンプ20を用いて透析液を除去することは、定義された少量の透析液であっても除去可能であるという利点を有する。特定の液体体積はまた、きわめて正確に少量を運搬するという点で優れている既知のシリンジポンプを用いて、供給または除去可能である。したがって、一般にすでに血液処理デバイス内に存在するヘパリンポンプを用いた液体の供給または除去も可能である。
【0057】
したがって、限外濾液ポンプの使用は、処理中にまさに定義された液体体積をポンプで汲み出すことが意図されるので適切であり、したがって、その構造に関して、はっきりした流れをポンプで汲み出すのに適切である。しかしながら、代替的に、当業者に知られているアーキテクチャを使用することが可能である。たとえば、流量計を有する、たとえばコリオリ検力計を有する透析液ポンプも、液体をポンプで汲み出すために使用可能である。限外濾液ポンプは膜ポンプであってよい。
【0058】
時間t4において、圧力P(t4)(II)が流体システムの第2の部分II内で確立される(フェーズ4)。装置28は、以下の式に従って、流体システムの第2の部分IIの既知の体積V(II)および確認された圧力差P(t3)(II)-P(t4)(II)から、流体システムの第2の部分II内のコンプライアンスC(II)を計算する。
【0059】
【0060】
流体システムの第1の部分と第2の部分との間のコンプライアンスの比Kが既知であるので、装置28は、流体システムの第1の部分のコンプライアンスを決定することができる。コンプライアンスCは、以下の式に従って決定される。
【0061】
【0062】
モニタリング装置27は、データライン30を介してコンプライアンスC(I)の値を受け取り、コンプライアンスに応じて血液処理デバイスをモニタする。
【0063】
血液処理デバイスは、若干の漏出を有する流体システム内でも上記で説明された方法を実行するようにさらに構成可能であり、
図3の曲線を参照されたい。この実施形態では、コンプライアンス決定装置は、時間t1からt4における1つ、複数、またはすべての圧力値を、外挿による経時的な曲線のプロファイルから決定するように構成可能である。特に、これは、時間t4に対して実行可能である。そのような外挿は、所定の時間における圧力が決定できない場合、結果を改善することができる。これは、t4の例を使用して、例として説明される。時間t4は、体積を除去するためのポンプが停止される時間である。しかしながら、システムは、次いで、圧力データを受け取るもしくは処理するために一定量の時間を必要とする、または、それらのデータは、特定の時間スライスにおいてのみ受け取られる。それらのデータが正確に時間t4に受け取られない場合、その値はわからない。さらに、小さい漏れのために圧力値がゆっくりと低下する場合、時間t4が正確にわかっているか、または、t3とt4との間の下降曲線とt4による曲線との交点が決定されるので、時間t4における正しい圧力値は、後の圧力値の外挿によって決定可能である。
【0064】
モニタリング装置27によって実行される圧力保持試験の場合、限界値Gは固定される。その限界値は、コンプライアンスCに応じて設定される(
図4)。
【0065】
本実施形態では、固定体積の理想的なシステムに適用される限界値が最初に仮定される。制御および/またはモニタリング装置27のメモリ27A内に記憶されるその限界値は、以前に確認されたコンプライアンスC(I)に応じて決定される補正係数を使用して補正される。たとえば、異なる補正係数は、個々のコンプライアンス値に割り振り可能である。これらの補正係数は、仮定された限界値が、コンプライアンスが増加するにつれて増加され、コンプライアンスが減少するにつれて減少されるように設定される。
【0066】
モニタリング装置27は、第1の圧力センサおよび第2の圧力センサ31、32によって測定された圧力P(t1)(I)とP(t2)(I)とをメモリ27Aから読み出し、指定の時間間隔Δt=t2-t1内の圧力差ΔPを、コンプライアンスC(I)に応じて確認された限界値Gと比較する。圧力差ΔPについての値が限界値よりも小さい場合、システムは耐密性があると結論づけられる。この適切な状態は、表示装置27B上に表示可能である。一方、圧力差ΔPについての値が限界値よりも大きい、すなわち、指定の時間間隔Δt=t2-t1内の圧力があまりにも大きく減少する場合、アラームユニット27Cがアラームを発する。この場合、モニタリング装置27は、血液処理を停止するために、機械制御システムに介入することもできる。
【0067】
さらに、モニタリング装置27は、以下の式に従って、時間間隔Δt=t2-t1内の以前に測定された圧力低下Δpから、漏出速度Qを計算する。
【0068】
【0069】
測定された値が記録される時間間隔Δt=t2-t1は、固定時間間隔であってよい。しかしながら、圧力における変化率dp/dt(曲線の勾配)が検出されることも可能であり、次いで、信号が十分に安定しているとき、すなわち、圧力変化率が限界値よりも小さいとき、測定された値が確認される。
【0070】
漏出速度Q(I)も、指定の限界値と比較可能である。漏出速度が限界値よりも大きい場合、アラームユニット27Cはアラームを発する。
【0071】
モニタリング装置27は、透析器を含む流体システムの一部I内のコンプライアンスCが指定の限界値よりも大きいかどうかをさらに試験する。コンプライアンスC(I)が限界値よりも大きい場合、透析器1が十分に換気されていないと結論づけられる。これは、同様に、表示装置27B上に表示可能である。
【0072】
すべての実施形態において、流体システムのコンプライアンスCに応じて、圧力ベースのモニタリングが実行されることから、たとえば、特に透析器内の空気ポケットの結果としてシステム内のコンプライアンスが変化する場合、あるいは、システムのコンプライアンスが前もってわからない場合であっても、信頼性の高いモニタリングが可能である。処理デバイスは、コンプライアンスが準備モードおよび/または処理モードで決定されるように構成可能である。限界値またはパラメータの調整が自動的に行われることが可能である。
【0073】
以下は、コンプライアンスが決定され、処理デバイスがモニタされる点の詳細な説明を提供する。
【0074】
既知の血液処理デバイスは、処理モード、および、処理に備えて、処理に先行する準備モードを提供する。血液処理中に、血液供給ライン5と、透析器1の血液室2と、返血ライン9とを備える流体システムの部分が、血液ポンプ6によって運搬された血液で満たされる。血液処理に先行する準備モードでは、流体システムのその部分は血液で満たされない。血液処理デバイスは、流体システムのその部分が血液で満たされる程度を検出することが可能な装置を有する。この装置は、血液供給ライン5において設けられる血液検出器38であってよい。血液検出器38が血液を検出するとすぐに、血液処理デバイスは処理モードになる。血液検出器は、チューブシステム内の媒体の光学濃度を決定する光検出器であってよい。したがって、血液検出器が血液を準備液体から区別することが可能であることが十分であり得る。
【0075】
モニタリング装置27は、コンプライアンスの決定が準備モードで行われ、コンプライアンスに依存した、圧力ベースのモニタリングが準備モードおよび/または処理モードで行われるように構成される。準備モードでは、問題の流体システムの一部が密閉体積を形成できるように、弁12は閉じることができ、血液ポンプ6は動作される必要はない。準備モードでは、透析器1は、透析器を含む流体システムの部分がモニタ可能であるように、流体システムの一部である。コンプライアンスが準備モードで決定されている場合、モニタリングは、準備モードまたは処理モードで生じることができる。上記で説明された初期圧力保持試験は、たとえば、準備モードで生じる。さらなるコンプライアンスに依存した圧力保持試験は、処理モードでも生じることができる。モニタリングの一例としてのみ説明された圧力保持試験の代わりに、モニタリングに関連する任意のモニタリングパラメータは、準備モードで決定されるコンプライアンスに応じて、処理モードで固定または調整可能である。
【0076】
図5は、体外血液回路Aが使い捨てカセット50の形をとる、本発明による血液処理デバイスのさらなる実施形態を示す。
図5では、
図1の要素に対応する要素は、同じ参照番号を備えている。これらの要素に関して、その説明は繰り返されず、
図1に関連して参照がなされる。可能な追加またはさらなる実施形態または2つの実施形態間の差が、ここで説明される。
【0077】
処理デバイスは、少なくとも1つの滅菌フィルタF04を有することができる。
図5は、2つの滅菌フィルタF04とF05とを有する一実施形態を示す。滅菌フィルタは、透析液ソース13内で提供および/または準備される透析液をさらに浄化する働きをする。
図5では、補充液ライン36の機械側部分36Aは、まだカセット側ライン部分36Bに接続されていない。コネクタ100は、流体接続のために処理デバイス内に設けることができ、このコネクタは、使い捨てカセットのコネクタ200と協働することができる。
【0078】
処理デバイスは、さらに、透析液供給ライン14と透析液除去ライン16の間にさらなるラインを有することができる。
図5ではより詳細に示されないこれらのラインは、たとえば、滅菌フィルタF04または滅菌フィルタF05から始まり、透析液除去ライン16に至ることができる。
【0079】
コンプライアンスを決定するために、処理デバイスは、圧力が高められる体積を閉鎖するために、流体接続のための必要な閉鎖要素をすべて有する。例として示されるこれらの要素、たとえば弁は、
図5では参照番号V19と、V21と、V22と、V23と、V31と、V32と、V33と、V42とを備える。
【0080】
別個の血液チューブセットとは対照的に、使い捨てカセット50は、動脈血供給ライン5および静脈血除去ライン9のための共通ハウジング本体を有し、そのハウジング本体内では、少なくとも、2つのラインの部分が走る。そのうえ、少なくとも補充液ライン36の一部分も、カセット50内で延在することができる。カセットは、静脈血ライン9(希釈後)に開口する補充液ライン36の分岐と、動脈血ライン6(希釈前)に開口する補充液ライン36の分岐も有することができる。そのようなラインシステムも、血液チューブセット内で実施可能である。
【0081】
補充液ライン36が静脈血ラインおよび動脈血ライン5、9に開口する点における弁、たとえば弁37は、カセット内に形成可能である。弁として、カセットは、流体チャネルを閉じるために、機械側作動部材(
図5に示されず)によってカセット内の剛性本体に押し付けられたフィルムを有することができる。処理デバイスは、静脈血ライン9に、特に静脈ライン9の空気分離室10に配置された圧力センサ40も有することができる。このセンサの圧力値は、同様に、コンプライアンスを決定するために評価可能である。圧力を測定するために、処理デバイスは、カセット50のフィルムに作用する流体圧を測定する圧力センサを有することができる。
【0082】
1つの構成要素内で動脈血ラインと静脈血ラインが1つにされるカセットの場合、透析器1を換気するために必要な方策を実行できないことがあり得る。たとえば、チューブの比較的短い長さのために、透析器が換気目的で回転されることが可能でないことがある。したがって、処理デバイスの1つまたは複数の動作パラメータを決定するためにコンプライアンスを考慮に入れることは、特に使い捨てカセットの場合に重要である。それによって、アラームおよび/またはエラーメッセージの数は減少可能であり、たとえば、それによって、使用効率すなわち透析動作が実行できる時間も、増加可能である。
【0083】
図6Aおよび
図6Bは、コンプライアンスに応じて処理をモニタするためのパラメータの設定を示す図を示す。両方の実施形態では、上限値GHおよび下限値GLが、コンプライアンスに応じて各場合において設定される。限界値GHおよびGLは各々、コンプライアンスC1のための許容作業範囲A(C1)またはコンプライアンスC2のための許容作業範囲A(C2)の範囲を定め、コンプライアンスC1はコンプライアンスC2よりも大きい。作業範囲A(C1)およびA(C2)の外側に、上方アラーム範囲および下方アラーム範囲B1、B2、B3(
図6A)ならびに上方アラーム範囲および下方アラーム範囲B1およびB2(
図6B)が設定される。
【0084】
図6Aは、上方作業範囲A(C1)および下方作業範囲A(C2)が、それらの間にアラーム範囲B3がある2つの別個の範囲である場合についてのパラメータの選定を示し、
図6Bは、上方作業範囲A(C1)および下方作業範囲A(C2)が共通作業範囲を形成する場合を示す。
【0085】
コンプライアンスCがアラーム範囲B1の範囲内にある場合、たとえば、流体システムの換気、特に透析器の換気が十分ではないと結論づけることができる。コンプライアンスがアラーム範囲B3の範囲内にある場合、たとえば、未知の透析器が使用されていると結論づけることができる。コンプライアンスCがアラーム範囲B2の範囲内にある場合、たとえば、コンプライアンスがその範囲よりも上にあると予想されるので、コンプライアンスの決定が成功しなかったと結論づけることができる。これらの動作状態は、表示装置27B上に表示可能である。作業範囲A(C1)およびA(C2)の範囲内で、パラメータ化P1およびP2が行われることができる。たとえば、コンプライアンスCに応じて、流体システムは耐密性があると仮定する場合は圧力保持試験において越えられないことがある最大圧力低下ΔP1またはΔP2が設定可能である。作業範囲A(C1)の場合、コンプライアンス(C)に応じて、コンプライアンスC2という小さい方の値の場合よりも、コンプライアンスC1という大きい方の値の場合に、より小さな最大圧力低下ΔP1が設定される。代替的に、圧力が指定の値だけ減少する時間間隔を設定することも可能である。
以下に、本願の出願当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[C1]
少なくとも1つの液体を流体システムへ、および/または流体システムから運搬するための少なくとも1つのポンプと、
少なくとも前記流体システムの一部において圧力を測定するための少なくとも1つの圧力センサを有するモニタリング装置と、ここにおいて、前記モニタリング装置は、モニタリングが前記流体システム、前記流体システムの一部、または前記流体システムの複数の部分内の前記圧力の評価に基づくように構成される、
前記流体システム、前記流体システムの一部、または、前記流体システムの複数の部分におけるコンプライアンスが決定されるように構成されたコンプライアンス決定装置とを備え、
前記コンプライアンス決定装置が、前記流体システムの前記コンプライアンスに応じて圧力ベースのモニタリングが行われるように前記モニタリング装置と協働する、医療処理デバイス。
[C2]
前記処理デバイスが、処理モード、および、処理に備えて、前記処理に先行する準備モードを提供し、ここにおいて、前記モニタリング装置は、前記コンプライアンスの前記決定が前記準備モードで行われ、および、コンプライアンスに依存した圧力ベースのモニタリングが前記準備モードおよび/または前記処理モードで行われるように構成されることを特徴とする、C1に記載の医療処理デバイス。
[C3]
前記モニタリング装置が、前記コンプライアンスに依存した圧力ベースのモニタリングが前記処理モードで行われるように構成されることを特徴とする、C2に記載の医療処理デバイス。
[C4]
前記モニタリング装置が、前記流体システム、前記流体システムの一部または前記流体システムの一部内の前記圧力がモニタされるように構成された耐密性モニタリング装置であり、前記コンプライアンスに応じて前記圧力の変化がある場合、前記流体システムは耐密性でないと結論づけられることを特徴とする、C1から3のいずれか1項に記載の医療処理デバイス。
[C5]
前記耐密性モニタリング装置が、指定の時間間隔内の前記圧力の変化の量が指定の限界値と比較されるように構成され、前記圧力の前記変化の量が前記指定の限界値よりも大きい場合、前記システムは耐密性でないと結論づけられること、および、前記コンプライアンス決定装置が、前記圧力の前記変化についての前記限界値が前記コンプライアンスに応じて設定されるように、前記耐密性モニタリング装置と協働すること、を特徴とする、C4に記載の医療処理デバイス。
[C6]
前記モニタリング装置が、前記流体システム、前記流体システムの一部または前記流体システムの複数の部分において閉じ込められた液体の体積が変化し、前記流体システム、前記流体システムの一部または前記流体システムの複数の部分における前記コンプライアンスが、前記体積の変化から生じる前記流体システム、前記流体システムの一部、または前記流体システムの複数の部分内の圧力変化に基づいて決定されるように構成されることを特徴とする、C1から5のいずれか1項に記載の医療処理デバイス。
[C7]
前記コンプライアンス決定装置が、前記流体システムの第1の部分(I)におけるコンプライアンスC(I)と前記流体システムの第2の部分(II)におけるコンプライアンスC(II)との比Kが決定され、前記流体システムの前記第2の部分(II)における前記コンプライアンスC(II)が、前記流体システムの前記第1の部分における前記コンプライアンスC(I)ならびに前記流体システムの前記第1の部分および前記第2の部分における前記コンプライアンスの前記比Kから決定され、または、前記流体システムの前記第1の部分Iにおける前記コンプライアンスC(I)が、前記流体システムの前記第2の部分における前記コンプライアンスC(II)ならびに前記流体システムの前記第1の部分および前記第2の部分における前記コンプライアンスの前記比Kから決定されるように構成されることを特徴とする、C1から6のいずれか1項に記載の医療処理デバイス。
[C8]
前記コンプライアンスを決定するための前記装置が、前記流体システムの前記第1の部分および前記第2の部分(I、II)における前記コンプライアンスの前記比Kが、前記流体システムの前記第1の部分と前記第2の部分との間の圧力均等化の場合において、前記流体システムの前記第1の部分内の圧力変化と前記流体システムの前記第2の部分内の圧力変化との比を決定することによって決定されるように構成されることを特徴とする、C7に記載の医療処理デバイス。
[C9]
前記処理デバイスが、前記流体システムの少なくとも一部を交換可能に受け入れるための少なくとも1つの受け器を有することを特徴とする、C1から8のいずれか1項に記載の医療処理デバイス。
[C10]
前記医療処理デバイスが、半透膜によって血液室と透析液室とに分割される透析器と、前記血液室に至る血液供給ラインと、前記血液室から来る血液除去ラインと、前記透析液室に至る透析液供給ラインと、前記透析液室から来る透析液除去ラインとを備える流体システムを有する体外血液処理デバイスであり、前記コンプライアンスを決定するための前記装置が、前記コンプライアンスC(I)が、前記血液供給ラインの一部分と、前記血液除去ラインの一部分と、前記透析器の前記血液室および前記透析液室とを備える前記流体システムの第1の部分(I)内で決定されるように構成されることを特徴とする、C1から9のいずれか1項に記載の医療処理デバイス。
[C11]
前記コンプライアンス決定装置が、前記流体システムの前記第1の部分(I)における前記コンプライアンスC(I)と、前記流体システムの前記第1の部分を含まない前記流体システムの第2の部分(II)における前記コンプライアンスC(II)との比Kが決定され、前記流体システムの前記第1の部分における前記コンプライアンスC(I)が、前記流体システムの前記第2の部分における前記コンプライアンスC(II)ならびに前記流体システムの前記第1の部分および前記第2の部分における前記コンプライアンスの前記比Kから決定されるように構成されることを特徴とする、C10に記載の医療処理デバイス。
[C12]
前記医療処理デバイスが、新鮮な透析液のための透析液ソースと、使用済みの透析液のためのドレーンと、血液を運搬するための血液ポンプと、透析液を運搬するための透析液ポンプと、限外濾液を回収するための限外濾過ポンプを有する限外濾過装置とを有し、前記コンプライアンス決定装置が、指定の体積の液体が前記流体システムの前記第2の部分(II)から除去され、前記流体システムの前記第2の部分(II)における前記コンプライアンスC(II)が前記システムの前記第2の部分内の前記圧力変化に基づいて決定されるように構成され、前記透析液ポンプおよび/または前記限外濾過ポンプが、前記流体システムの前記第2の部分から前記ドレーンへ透析流体を除去するために動作させられることを特徴とする、C10または11のいずれか1項に記載の医療処理デバイス。
[C13]
液体で満たし得る少なくとも1つの体積を閉じ込める流体システムを有する医療処理デバイスをモニタするための方法であって、モニタリングが、前記流体システム、前記流体システムの一部、または前記流体システムの複数の部分内の圧力の評価に基づいており、前記流体システム、前記流体システムの一部または前記流体システムの複数の部分におけるコンプライアンスが決定され、圧力ベースのモニタリングが前記流体システムの前記コンプライアンスに応じて行われる、方法。
[C14]
前記流体システム、前記流体システムの一部または前記流体システムの複数の部分内の前記圧力がモニタされ、指定の時間間隔内の前記圧力の前記変化の量が指定の限界値と比較され、前記圧力の前記変化の量が前記指定の限界値よりも大きい場合、漏れがあると結論づけられ、前記圧力の前記変化についての前記限界値が前記コンプライアンスに応じて設定されることを特徴とする、C13に記載の方法。
[C15]
処理モード、および、処理に備えて、前記処理に先行する準備モードが提供され、前記コンプライアンスの前記決定が前記準備モードで行われ、コンプライアンスに依存した、圧力ベースのモニタリングが前記準備モードおよび/または前記処理モードで行われることを特徴とする、C13または14のいずれか1項に記載の方法。