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特許7009392アルキル置換レゾルシノールの経皮送達促進のための方法及び化粧品組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-14
(45)【発行日】2022-01-25
(54)【発明の名称】アルキル置換レゾルシノールの経皮送達促進のための方法及び化粧品組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/49 20060101AFI20220118BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20220118BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20220118BHJP
【FI】
A61K8/49
A61K8/34
A61Q19/00
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2018561619
(86)(22)【出願日】2017-05-16
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-06-27
(86)【国際出願番号】 EP2017061676
(87)【国際公開番号】W WO2017215863
(87)【国際公開日】2017-12-21
【審査請求日】2020-03-16
(31)【優先権主張番号】16174517.9
(32)【優先日】2016-06-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】521193094
【氏名又は名称】ユニリーバー・アイピー・ホールディングス・ベー・フェー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】アニタ・ダモダラン
(72)【発明者】
【氏名】マノジ・クマール・ジョシ
(72)【発明者】
【氏名】バル・クンジュピライ
(72)【発明者】
【氏名】レズワン・シャリフ
【審査官】田中 雅之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/030794(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0109832(US,A1)
【文献】国際公開第2015/059001(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/KOSMET(STN)
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)式IまたはII:
【化1】
[前記式I及び前記式IIにおいて、XはSまたはOであり;R、R1、R2、R3は-H、-SH、-OH、又はC1-18飽和もしくは不飽和の直鎖状、分枝状、もしくは環状の炭化水素基であり;Yは-H、-SH、又はC1-18飽和もしくは不飽和の直鎖状、分枝状、もしくは環状の炭化水素基である]
の少なくとも1種のピリジン化合物;
(ii)アルキル置換レゾルシノール;及び
(iii)皮膚科学的に許容される基剤
を含み、
前記レゾルシノールが、ベンゼン環の4位もしくは6位に、または4位と6位との両方に、アルキル置換を有し、
前記アルキル基が、エチル、ブチル、イソプロピル、フェネチル、またはヘキシル基である、化粧品組成物。
【請求項2】
前記アルキル置換レゾルシノールと式Iまたは式IIの前記ピリジン化合物との量比が、1:0.25~1:10重量部である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
式IまたはIIの前記ピリジン化合物の量が、組成物の0.05~8質量%である、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記アルキル置換レゾルシノールの量が、組成物の0.01~2質量%である、請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記ピリジン化合物が、イソニコチンアミドまたはピコリンアミドの少なくとも1つである、請求項1から4のいずれか一項に記載の化粧品組成物。
【請求項6】
ピコリンアミド及び4-ヘキシルレゾルシノールを含む、請求項に記載の組成物。
【請求項7】
イソニコチンアミド及び4-ヘキシルレゾルシノールを含む、請求項に記載の組成物。
【請求項8】
イソニコチンアミド及び4-イソプロピルレゾルシノールを含む、請求項に記載の組成物。
【請求項9】
ピコリンアミド及び4-イソプロピルレゾルシノールを含む、請求項に記載の組成物。
【請求項10】
(i)請求項1に記載の化粧品組成物を提供する工程;及び
(ii)前記組成物の有効量を皮膚に塗布する工程
を含む、アルキル置換レゾルシノールの経皮送達を促進するための方法。
【請求項11】
アルキル置換レゾルシノールの経皮送達を促進するための、式IまたはII
【化2】
[前記式I及び前記式IIにおいて、XはSまたはOであり;R、R 1 、R 2 、R 3 は-H、-SH、-OH、又はC 1-18 飽和もしくは不飽和の直鎖状、分枝状、もしくは環状の炭化水素基であり;Yは-H、-SH、又はC 1-18 飽和もしくは不飽和の直鎖状、分枝状、もしくは環状の炭化水素基である]
のピリジン化合物の使用。
【請求項12】
アルキル置換レゾルシノールの経皮送達を促進するための化粧品組成物の調製における、式IまたはII
【化3】
[前記式I及び前記式IIにおいて、XはSまたはOであり;R、R 1 、R 2 、R 3 は-H、-SH、-OH、又はC 1-18 飽和もしくは不飽和の直鎖状、分枝状、もしくは環状の炭化水素基であり;Yは-H、-SH、又はC 1-18 飽和もしくは不飽和の直鎖状、分枝状、もしくは環状の炭化水素基である]
のピリジン化合物の使用。
【請求項13】
(i)式IまたはII:
【化4】
[前記式I及び前記式IIにおいて、XはSまたはOであり;R、R1、R2、R3は-H、-SH、-OH、又はC1-18飽和もしくは不飽和の直鎖状、分枝状、もしくは環状の炭化水素基であり;Yは-H、-SH、又はC1-18飽和もしくは不飽和の直鎖状、分枝状、もしくは環状の炭化水素基である]
の少なくとも1種のピリジン化合物;
(ii)アルキル置換レゾルシノール;及び
皮膚科学的に許容される基剤を含む、アルキル置換レゾルシノールの経皮送達を促進するための使用のための組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルキル置換レゾルシノールの経皮送達(TDD)を促進するための方法及び化粧品組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
より若々しい外観、及び健康的で均等な色調の顔色は、普遍的に望まれている。健康的な皮膚の指標は、皮膚の色及び質感の均一性である。加齢によるシミ、黒皮症、挫創病変、及び他の形態の色素沈着過剰症は、皮膚、特に顔の皮膚の特徴における望ましくない変化である。世界の少なくとも一部の地域では、人々がより明るく色白の皮膚を望む。別の地域では、より明るい肌が望まれてはいないが、均一な色調の皮膚は確実に望まれている。したがって、消費者の期待に合致した化粧品組成物が望まれている。
【0003】
過去のいくつかの試みにより、様々なスキンケア組成物及び処方計画の開発がもたらされた。しかしながら、少なくともいくつかの活性成分は、効能を示すかまたは副作用、例えば、毒性及び刺激などと関連している。このため、より新しい成分及びより効能のある製品が継続的に求められている。さらに、既知の成分の効能を増強するためのより新しい方法及び手段の必要性が存在する。
【0004】
我々の人生さまざまな段階で、ヒトは皮膚の過剰な色素沈着について懸念し、このことは、しばしば、色素沈着を除去するかまたは少なくともある程度軽減したいとの欲求につながる。
【0005】
メラニン形成は皮膚の色素沈着を引き起こす。これには以下の段階が含まれる。
チロシン→ドーパ→ドーパキノン→ドーパクロム→メラニン
最初の2つの反応は、チロシナーゼによって触媒される。チロシナーゼの活性は、メラニン形成細胞刺激ホルモンの作用または紫外線によって促進される。ある物質が、メラニン形成が通常起こる表皮メラニン細胞の活力に直接作用する場合、及び/またはそれがメラニン生合成の段階の1つを妨害する場合には、この物質は、脱色を引き起こす可能性があることが知られている。チロシナーゼが果たす役割を考慮して、その阻害に関連するアッセイは、潜在的な皮膚明色化剤をスクリーニングするためにしばしば使用される。
【0006】
欧州特許出願公開第341664号及びPCT国際公開第99/15148号は、ある種のレゾルシノール誘導体にチロシナーゼ阻害剤として言及している。
【0007】
レゾルシノール(1,3-ベンゼンジオール)誘導体は、皮膚及び毛髪に対する美容上の利益のために使用されてきた。4-置換レゾルシノール誘導体は、皮膚の明色化のために使用される。例えば、米国特許第4,959,393号、米国特許第6,132,740号、米国特許第6,504,037号、米国特許出願公開第2008/0131382号、及び特開2001-010925号及び特開2000-327557号が参照される。チロシナーゼの阻害剤であるレゾルシノール誘導体二量体は、米国特許第5,399,785号に開示されている。クマリンを出発物質として使用して合成することができるレゾルシノール型皮膚明色化剤は、米国特許出願公開第2004/0042983号に開示されている。所定のレゾルシノール誘導体は、化粧品組成物中に広く使用されている。特に、4-置換アルキルレゾルシノールは、皮膚明色化のための化粧品組成物に有用であり、そしてより広く使用されている誘導体は、4-ヘキシル、4-イソプロピル、4-ブチル、4-エチル、及び4-フェニルエチルレゾルシノールである。
【0008】
米国特許出願公開第2014/256830号(ユニリーバ)は、酸化ストレスまたは変性過程によって特徴付けられる皮膚の状態を治療、調節、または予防用の使用のための、レゾルシノール誘導体を有する組成物を開示している。皮膚の色素沈着、皮膚の老化、または他の障害に起因する皮膚の目に見える不連続性の出現を予防、軽減、または低減する方法もまた開示されている。
【0009】
米国特許出願公開第2013/281507号、欧州特許出願公開第0623339号、及び国際公開第13/190483号(すべてロレアルによる)は、ケラチン物質を脱色、明色化、及び/または白色化するためのレゾルシノールの特定の誘導体を開示している。
【0010】
ヒトの皮膚が、1つ以上の規定の機能を果たすことを企図した活性成分の投与のための理想的な部位を提供する一方で、これは、ほとんどの化合物の浸透に対してある程度の抵抗を示す。その根本的な理由、及び浸透を促進または増大させる機構が、TDDのテーマとして研究されている。
【0011】
ほとんどのTDD組成物(例えば、治療用もしくは化粧品組成物)は、皮膚浸透促進担体もしくは媒体を使用することによって表皮浸透を達成する。こうした担体または媒体(化合物または化合物の混合物)は、「浸透促進剤」または「皮膚増強剤」として当技術分野において知られている。文献記載の皮膚増強剤には、経皮吸収を促進するものがある一方で、これらは、毒性、刺激、及び菲薄化作用を含む所定の短所を有する。
【0012】
別のアプローチは、活性成分の浸透を容易にするために微小穿刺または擦過傷により局所的に皮膚を損傷することであるが、こうした方法はすべての皮膚タイプ及び年齢層には適さない。
【0013】
レゾルシノール誘導体を含有する化粧品組成物は、通常1日1回または2回適用される。組成物を適用すると、レゾルシノール誘導体を含む、前記組成物に含まれる活性物質は、皮膚の様々な層を巧妙に通り抜けてそれらの作用部位に到達する必要がある(経皮送達)。一般に既知の方法を使用して、イオン導入によってより多くの量を送達することができるが、これは、例えば、Tropical Journal of Pharmaceutical Research, April 2009; 8 (2): 173-179 (Inayat Bashir Pathan and C. Mallikarjuna Setty)に記載の皮膚浸透促進剤(SPE)により、あるいはまた小電流を適用することにより、皮膚内への極性分子の移動を補助する方法である。例には、スルホキシド、アゾン、ピロリドン、ピロリドン、脂肪酸、精油、テルペン、及びテルペノイドが含まれる。
【0014】
さらに別の方法では、米国特許出願公開第2002/120225号(McDaniel)は、活性剤を皮膚に適用した後に皮膚を超音波に曝露する、哺乳動物の皮膚を通る活性剤の輸送を促進する方法を開示しており、ここでは、皮膚に活性剤を適用する工程は、活性剤を皮膚に注入することを含む。活性剤は、その中に挙げられた数種の成分のうちの1つを含む。
【0015】
さらに別の方法としては、米国特許第5411741号(Nardo Zaias)は、有効量のメラニン阻害化合物、例えば3-ピリジンカルボキサミド(ナイアシンアミド)を、リポソームでカプセル化し、このカプセル化化合物を局所媒体内に懸濁させ、カプセル化して懸濁させたメラニン阻害化合物を皮膚の表皮に局所適用し、よってリポソームが基底細胞領域に経皮送達され、ここで原位置におけるメラニンの生化学合成を妨害し、その結果、皮膚の脱色が生じることを開示している。
【0016】
国際公開第2013/030794号(Kasraee Behrooz)は、ピコリンアミドまたはイソニコチンアミドを含有する皮膚脱色組成物を開示しており、前記組成物はさらに4-置換レゾルシノールを含む。
【0017】
国際公開第2015/059001号(ユニリーバ)は、その請求項1に規定されるピリジン化合物及び皮膚科学的に許容される基剤を含む、皮膚明色化組成物を開示している。ここに開示された皮膚明色化組成物は、4-エチルレゾルシノール、4-ヘキシルレゾルシノール、及びフェニルエチルレゾルシノールを含む追加の皮膚明色化剤をさらに含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【文献】欧州特許出願公開第341664号明細書
【文献】国際公開第99/15148号
【文献】米国特許第4,959,393号明細書
【文献】米国特許第6,132,740号明細書
【文献】米国特許第6,504,037号明細書
【文献】米国特許出願公開第2008/0131382号明細書
【文献】特開2001-010925号明細書
【文献】特開2000-327557号明細書
【文献】米国特許第5,399,785号明細書
【文献】米国特許出願公開第2004/0042983号明細書
【文献】米国特許出願公開第2014/256830号明細書
【文献】米国特許出願公開第2013/281507号
【文献】欧州特許出願公開第0623339号
【文献】国際公開第13/190483号
【文献】米国特許出願公開第2002/120225号明細書
【文献】米国特許第5411741号明細書
【文献】国際公開第2013/030794号明細書
【文献】国際公開第2015/059001号明細書
【非特許文献】
【0019】
【文献】Tropical Journal of Pharmaceutical Research, April 2009; 8 (2): 173-179 (Inayat Bashir Pathan and C. Mallikarjuna Setty)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
皮膚に有益なTDDの活性剤、例えば皮膚の明色化をもたらすものについて今日までに知られた方法には、これらに関連する何らかの欠点を有するか、あるいは上述の通りカプセル化のさらなる工程が含まれる。したがって、これまでに開示された方法に関連した欠点のすべてまたは少なくともいくつかを克服する方法を使用して、こうした活性剤の改善されたTDDを提供する必要がある
【課題を解決するための手段】
【0021】
我々は、驚くべきことに、ピコリンアミド及びアルキル置換レゾルシノールまたはイソニコチンアミド及びアルキル置換レゾルシノールが化粧品組成物中に一緒に存在する場合、ピコリンアミド並びにイソニコチンアミドが、個別に、少なくともいくつかのアルキル置換レゾルシノールのTDDを補助することを見出した。
【0022】
この知見は、化粧品組成物、例えば、アルキル置換レゾルシノール及び少なくとも1つのピコリンアミドまたはイソニコチンアミドを含有するクリーム及びローションなどの、産業上応用可能な形態を提供する。
【0023】
アルキル置換レゾルシノールの改善されたTDDを考慮して、本発明は、アルキル置換レゾルシノールの含有量が著しく少なくてよい組成物を処方する有効な方法を提供する。あるいはまた、本発明は、従来の製剤と比較して、より迅速にまたはより長期に亘って作用する組成物を処方するための有効な方法を提供する。
【0024】
第一の態様によれば、
(i)式IまたはII:
【化1】
[前記式I及び前記式IIにおいて、XはSまたはOであり;R、R1、R2、R3は-H、-SH、-OH、又はC1-18飽和もしくは不飽和の直鎖状、分枝状、もしくは環状の炭化水素基であり;Yは-H、-SH、又はC1-18飽和もしくは不飽和の直鎖状、分枝状、もしくは環状の炭化水素基である]
の少なくとも1種のピリジン化合物;
(ii)アルキル置換レゾルシノール;及び
(iii)皮膚科学的に許容される基剤
を含む化粧品組成物が開示される。
【0025】
第二の態様によれば、
(i)第一の態様による化粧品組成物を提供する工程;及び
(ii)前記組成物の有効量を皮膚に塗布する工程
を含む、アルキル置換レゾルシノールの経皮送達を促進するための方法が開示される。
【0026】
第三の態様によれば、アルキル置換レゾルシノールのTDDを促進するための、式IまたはIIのピリジン化合物の使用が開示される。
【0027】
第四の態様によれば、アルキル置換レゾルシノールのTDDを促進するための化粧品組成物の調製における、式IまたはIIのピリジン化合物の使用が開示される。
【0028】
第五の態様によれば、アルキル置換レゾルシノールのTDDを促進するための使用のための、
(i)式IまたはII:
【化2】
[前記式I及び前記式IIにおいて、XはSまたはOであり;R、R1、R2、R3は-H、-SH、-OH、又はC1-18飽和もしくは不飽和の直鎖状、分枝状、もしくは環状の炭化水素基であり;Yは-H、-SH、又はC1-18飽和もしくは不飽和の直鎖状、分枝状、もしくは環状の炭化水素基である]
の少なくとも1種のピリジン化合物;
(ii)アルキル置換レゾルシノール;及び
(iii)皮膚科学的に許容される基剤を含む組成物が開示される。
【0029】
第六の態様によれば、第一の態様による組成物を皮膚に適用する工程を含む、皮膚の明色化方法が開示される。
【0030】
(定義)
本明細書中で使用されているように、「対象」は哺乳動物、特にヒトである。対象「における使用」とは、用いられる文脈に従って、外用である対象「への使用」を含む。
【0031】
本明細書で使用されているように、「均等な色調」、「美白」、「明色化」、及び「脱色」剤なる語は、本明細書全体を通して互換的に使用される。皮膚の明色化のために、皮膚明色化剤の局所適用は、処置しようとする領域のみに明色化効果を及ぼすべきであり、好ましくは、全く刺激を生じないかまたは最小限生じるのみであり、好ましくは、炎症後二次色素沈着を全く生じないかまたは最小限生じるのみであり、また、好ましくは、アレルギー反応を引き起こさない。さらに、皮膚の明色化は、老人性黒子、肝斑、黄斑、瘢痕性褐色斑、及び光増感製品使用後の色素沈着過剰症を含むが、これらに限定されるものではない、通常の皮膚の色素沈着及びその過剰症に有効である。好ましくは、皮膚の明色化は、有効であると同時に皮膚に抗老化効果をもたらすべきである。
【0032】
本明細書で使用される、「皮膚明色化または色素沈着低減量の化合物」とは、対象、例えばヒトにおいて、任意の標準的なアッセイによって決定される、検出可能な皮膚の明色化または色素沈着低減を可能にする化合物の量または濃度を意味する。活性化合物が、望ましい皮膚脱色の結果をもたらす標準的な処置過程のための皮膚科または医薬組成物中において投与される。
【0033】
本明細書で使用される、「こうした処置を必要とする皮膚に投与する」とは、(例えば、手、あるいは以下に限定されるものではないが、ワイプ、チューブ、ローラー、スプレー、またはパッチなどのアプリケーターを使用することにより)こうした処置を必要とする皮膚領域またはこうした処置を必要とする皮膚領域に近接する皮膚領域に接触することを意味する。
【0034】
本明細書で使用される、「組成物」は、皮膚への局所投与に適した組成物を意味する。
【0035】
本明細書で使用される、「化粧品」なる語には、メイクアップ、ファンデーション、及びスキンケア製品が含まれる。「メイクアップ」なる語は、ファンデーションを含む、顔に色をつける製品を意味する。「ファンデーション」なる語は、液体、クリーム、ムース、パンケーキ、コンパクト、コンシーラーなどの、皮膚の全体的な着色を均一にする製品を意味する。ファンデーションは、潤いのある、且つ/または油を塗った皮膚上でよりよく機能するよう製造される。「スキンケア製品」なる語は、皮膚に、処置、あるいはまた手入れ、加湿、改善、または清浄化を行うために使用される製品を意味する。「スキンケア製品」なる語によって企図される製品には、以下に限定されるものではないが、絆創膏、包帯、無水閉塞性保湿剤、制汗剤、洗顔料、コールドクリーム、消臭剤、石鹸、粉末、ティッシュ、ワイプ、及び固形エマルジョンコンパクトが含まれる。
【0036】
本明細書中で使用される、「化粧品として許容される」または「皮膚科学的に許容される」なる語は、このように記載される組成物またはその成分が、過度の毒性、不適合性、不安定性、刺激、またはアレルギー反応なしに、皮膚、特にヒトの皮膚と接触する使用に適していることを意味する。
【0037】
本明細書で使用される、「化粧品として許容される担体」、「化粧品として許容される賦形剤」、「皮膚科学的に許容される担体」、または「皮膚科学的に許容される賦形剤」には、化粧品として許容されるかまたは皮膚科学的に許容される、ありとあらゆる溶媒、分散媒体、コーティング、抗菌剤、及び抗真菌剤、等張剤、及び吸収遅延剤などが含まれる。化粧品活性物質のためのこうした媒体及び作用剤の使用は、当技術分野において周知である。任意の通常の媒体または作用剤が活性成分と非適合性である場合を除いて、化粧品組成物におけるその使用が企図される。補助的な活性成分もまた、組成物に組み入れることができる。皮膚科学的に許容される担体は、皮膚への局所適用に適しており、優れた審美的特性を有し、本明細書に記載される活性剤及び他の任意の成分と適合性であり、且つ安全性もしくは毒性の懸念を全く引き起こさないかまたは最小限引き起こすのみである。基剤の有効量は、組成物の約50%~約99.99%、または約50%~約99%、好ましくは約80%~約99.9%、または約75%~約99%、より好ましくは約90%~約98%、最も好ましくは、約90%~約95%、または約85%~約95%である。百分率は質量%である。
【0038】
本明細書中で使用される、「有効量」なる語は、こうした処置を必要とする対象に投与された際に、以下に定義される効果をもたらすのに十分な、本明細書に記載の化合物の量を意味する。有効量は、処置される対象及び皮膚の状態または疾患の状態などに応じて変化するが、これらはすべて当業者によって容易に決定可能である。本明細書で使用される、「皮膚の状態の調節」には、以下に限定されるものではないが、着色、変色、及び望ましからぬ色素沈着などの皮膚の目に見える不連続性を含む皮膚の状態の外観の調節が含まれる。皮膚の状態の調節には、皮膚の色調を整えること及び色素沈着を低減することが含まれる。
【0039】
本明細書中で使用される、「局所適用」なる語は、本明細書に記載される組成物を皮膚の表面に適用または塗布することを意味する。
【0040】
本明細書で使用される「処置」及び「処置する」などの語は、こうした語が適用される障害または状態、あるいはこうした障害または状態の一つ以上の症状の逆転、緩和、または進行の抑制を意味する。本明細書で使用される「処置」なる語は、「処置する」が直前に定義されているように、処置する行為を意味する。「処置」または「処置する」には、作用機序に関わりなく皮膚の不完全な外観の低減が含まれる。当業者は、特定の場合に選択される処置の終点が、処置される疾患、状態、または障害、患者、対象、または治療する医師によって望まれる結果、並びに別の要因によって異なることを理解するであろう。組成物が、肌色の明色化、例えば、黒色腫または加齢によるシミなどの疾患によって引き起こされる色素沈着過剰症の回復などのために使用される場合、多数の終点のうちのいずれを選択してもよい。例えば、終点は、例えば、対象が処置の結果に単に「満足」した時点として、主観的に定義することができる。薬理学的組成物の場合、終点は、患者、対象、または治療医の、治療結果に対する満足度によって決定することができる。あるいはまた、終点は、客観的に定義することができる。例えば、治療領域内の患者または対象の皮膚を、カラーチャートと比較することができる。処置は、処置領域の皮膚の色が、チャート上の色と類似の外観となった時点で終了する。あるいはまた、処置された皮膚の反射率を測定することができ、処置された皮膚が特定の反射率を達成達したときに処置を終了することができる。あるいはまた、処置した皮膚のメラニン含有量を測定することができる。処置された皮膚のメラニン含有量が特定の値に達した時点で、治療を終了することができる。メラニン含有量は、メラニンの着色増大の有無にかかわらず、組織学的方法にを含む、当技術分野において公知の任意の方法で決定することができる。
【0041】
本明細書で使用される「スキンケア組成物」とは、哺乳動物、特にヒトの皮膚への局所適用のための組成物を含むことを意味する。こうした組成物は、一般に、リーブオンまたはリンスオフとして分類され、外観の改善、クレンジング、臭気制御、または一般的な審美性のために人体に適用される任意の製品を含む。本発明の組成物は、液体、ローション、クリーム、フォーム、スクラブ、ゲル、棒状石鹸、またはトナーの形態であってよく、あるいは道具を用いて、またはフェイスマスク、パッド、もしくはパッチにより適用可能である。スキンケア組成物の非限定的な例には、リーブオンスキンローション及びクリーム、シャワージェル、トイレットバー、制汗剤、消臭剤、シェービングクリーム、脱毛剤、ファンデーション、及び日焼け止めローションが含まれる。
【0042】
本明細書で使用される「皮膚」とは、顔及び身体(例えば、首、胸、背中、腕、脇の下、手、足、臀部、及び頭皮)の皮膚を含むことを意味する。本発明の組成物は、色素沈着の発生率が最も高い皮膚領域、例えば、顔及び脇の下などへの適用に特に有用であり、最も好ましくは、本発明の組成物は、皮膚明色化組成物、例えば、クリーム、消臭剤、及び制汗剤である。
【0043】
本明細書で使用される「明色化」とは、肌色の明色化並びに皮膚のシミ(色素沈着過剰症)、例えば、加齢によるシミ及びそばかすなどの明色化を意味する。
【0044】
本発明による化粧品組成物
(ピリジン化合物)
本発明による化粧品組成物は、式IまたはII:
【化3】
の少なくとも1種のピリジン化合物を含み、前記式I及び前記式IIにおいて、XはSまたはOであり;R、R1、R2、R3は-H、-SH、-OH、又はC1-18飽和もしくは不飽和の直鎖状、分枝状、もしくは環状の炭化水素基であり;Yは-H、-SH、又はC1-18飽和もしくは不飽和の直鎖状、分枝状、もしくは環状の炭化水素基である。
【0045】
式IまたはIIのピリジン化合物の量は、組成物の0.05~8質量%であることが好ましい。 より好ましくは、組成物の0.1~5質量%である。
【0046】
ピリジン化合物は、イソニコチンアミド(構造A)またはピコリンアミド(構造B)の少なくとも一方であることが好ましい。これらは、それぞれ式I及びIIの例である。
【0047】
【化4】
【0048】
本発明による組成物は、ピコリンアミドまたはイソニコチンアミドのいずれかを含むことが好ましい。あるいは、これより好ましくはないが、組成物は、ピコリンアミド及びイソニコチンアミドを含む。いずれの場合でも、個別のまたは合計で考慮される量は、好ましくは、組成物の0.05~8質量%である。
【0049】
式IまたはIIのピリジン化合物の少なくとも一部は、個別に、または本発明による組成物中に存在する他の成分と共にでも、カプセル化されない。例えば、式IまたはIIのピリジン化合物の少なくとも20%、少なくとも30%、及び少なくとも40%は、カプセル化されない。
【0050】
式IまたはIIのピリジン化合物の、好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも60%、さらにより好ましくは少なくとも80%、最も好ましくは100%が、カプセル化されない。
【0051】
(アルキル置換レゾルシノール)
開示の組成物には、アルキル置換レゾルシノールが含まれる。アルキル置換は、環炭素原子の1つ、好ましくはC4上、あるいはこれより好ましくはないがC6上である。あるいはまた、アルキル置換は、2個の環炭素原子上、好ましくはC4及びC6上にある。
【0052】
アルキル置換が1個の環炭素原子上、好ましくはC4上、あるいはまた、これより好ましくはないがC6上にある場合、置換レゾルシノールは、次の5つのうちの少なくとも1つであることが好ましい。
【0053】
【化5】
【0054】
置換レゾルシノールが、4-ブチルレゾルシノールまたは4-ヘキシルレゾルシノールまたは4-エチルレゾルシノールであることがさらに好ましい。
【0055】
あるいはまた、アルキル置換が2個の環炭素原子上、好ましくはC4及びC6上にある場合、置換レゾルシノールは、下記の式IIIまたは式IV:
【化6】
によって表され、
式中、R1及びR2は、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、またはハロであり、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、またはヘテロアリールの各々が、-OH、-OR3、-NR3R4-C(O)OR3、-C(O)NR3R4、またはハロで任意に置換されており;R3及びR4は、個別に、水素、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、シクロアルキル-アルキル、ヘテロシクロアルキル-アルキル、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキル、アリール、またはヘテロアリールであり;あるいはまた薬学的に許容されるこれらの塩を含む。いくつかの変形においては、R1はアルキルまたはハロであり、R2はアルキルまたはシクロアルキルである。いくつかの変形においては、R1は、アルキル、例えばメチルである。いくつかの変形においては、R1は、ハロアルキル、ペルハロアルキル、フルオロアルキル、またはペルフルオロアルキル、例えばトリフルオロメチルである。いくつかの変形においては、R1は、ハロ、例えば、フルオロ、クロロ、ブロモ、またはヨードである。いくつかの変形においては、R1は、フルオロまたはクロロである。いくつかの変形においては、R2は、アルキル、例えば、エチルまたはヘキシルである。いくつかの変形においては、R2は、シクロアルキル、例えばシクロヘキシルである。
【0056】
いくつかの変形においては、R1は、(C1-C6)-アルキル、(C2-C6)-アルケニル、(C3-C8)-シクロアルキル、(C3-C8)-ヘテロシクロアルキル、(C6-C12)-アリール、(C3-C12)-ヘテロアリール、またはハロであり、(C1-C6)-アルキル、(C2-C6)-アルケニル、(C3-C8)-シクロアルキル、(C3-C8)-ヘテロシクロアルキル、(C6-C12)-アリール、(C3-C12)-ヘテロアリールの各々が、-OH、-OR3、-NR3R4-C(O)OR3、-C(O)NR3R4、またはハロから成る群より選択される一つ、二つ、もしくは三つの置換基で任意に置換されており;R2は、(C1-C6)-アルキル、(C2-C6)-アルケニル、(C3-C8)-シクロアルキル、(C3-C8)-ヘテロシクロアルキル、(C6-C12)-アリール、(C3-C12)-ヘテロアリール、またはハロであり、(C1-C6)-アルキル、(C2-C6)-アルケニル、(C3-C8)-シクロアルキル、(C3-C8)-ヘテロシクロアルキル、(C6-C12)-アリール、(C3-C12)-ヘテロアリールの各々が、-OH、-OR3、-NR3R4-C(O)OR3、-C(O)NR3R4、またはハロから成る群より選択される一つ、二つ、もしくは三つの置換基で任意に置換されている。
【0057】
いくつかの変形においては、R1は、(C1-C6)-アルキル、(C2-C6)-アルケニル、(C3-C8)-シクロアルキル、(C3-C8)-ヘテロシクロアルキル、(C6-C12)-アリール、(C3-C12)-ヘテロアリール、またはハロであり、(C1-C6)-アルキル、(C2-C6)-アルケニル、(C3-C8)-シクロアルキル、(C3-C8)-ヘテロシクロアルキル、(C6-C12)-アリール、(C3-C12)-ヘテロアリールの各々が、-OH、-OR3、-NR3R4-C(O)OR3、-C(O)NR3R4、またはハロから成る群より選択される一つ、二つ、もしくは三つの置換基で任意に置換されており;R2は、シクロアルキル、例えば(C3-C8)-シクロアルキル、例えばシクロヘキシルである。
【0058】
いくつかの変形においては、R3及びR4は、個別に、水素、(C1-C6)-アルキル、(C2-C6)-アルケニル、(C3-C8)-シクロアルキル、(C3-C8)-ヘテロシクロアルキル、(C3-C8)-シクロアルキル-(C1-C6)-アルキル、(C3-C8)-ヘテロシクロアルキル-(C1-C6)-アルキル、(C6-C12)-アリール-(C1-C6)-アルキル、(C3-C12)-ヘテロアリール-(C1-C6)-アルキル、(C6-C12)-アリール、または(C3-C12)-ヘテロアリールである。
いくつかの変形においては、R1は、(C1-C6)-アルキル、(C2-C6)-アルケニル、(C3-C8)-シクロアルキル、またはハロであり、R2は、(C1-C6)-アルキル、(C2-C6)-アルケニル、または(C3-C8)-シクロアルキルである。
【0059】
いくつかの変形においては、R1は、(C1-C6)-アルキルまたはハロであり、R2は、(C1-C6)-アルキルまたは(C3-C8)-シクロアルキルである。
【0060】
いくつかの変形においては、R1は、メチル、フルオロ、またはトリフルオロメチルであり、R2は、エチル、ヘキシル、またはシクロヘキシルである。
【0061】
いずれの式においても、任意に、ただし好適性には劣るが、ヒドロキシル基(OH基の一方もしくは両方の水素)は、当技術分野で公知の方法、例えば、レゾルシノールの酸無水物とのエステル化反応などによってさらに置換されてよい。例えば、ヒドロキシル基の一方もしくは両方が、以下の酸(またはその無水物):フェルラ酸、バニリン酸、セバシン酸、アゼライン酸(azaleic acid)、安息香酸、コーヒー酸、クマル酸、サリチル酸,
システイン、シスチン、乳酸、グリコール酸のいずれかまたはこれらの組み合わせでエステル化されていてよい。
【0062】
レゾルシノールは、ベンゼン環の4位または6位に、あるいは4位と6位との両方に、アルキル置換を有することが好ましい。アルキル基が、エチル、ブチル、イソプロピル、フェネチル、またはヘキシル基であることが好ましい。
【0063】
アルキル置換レゾルシノールの量が、組成物の0.01~2質量%であることが好ましい。
【0064】
アルキル置換レゾルシノールの少なくとも一部は、個別にも、あるいは本発明による組成物中に存在する任意の別の成分と共にでも、カプセル化されていない。例えば、アルキル置換レゾルシノールの少なくとも20%、少なくとも30%、及び少なくとも40%はカプセル化されていない。
【0065】
好ましくは、少なくとも50%、より好ましくは少なくとも60%、さらにより好ましくは少なくとも80%、最も好ましくは100%のアルキル置換レゾルシノールが、カプセル化されていない。
【0066】
本発明による組成物は、以下の組合せ:ピコリンアミドと4-ブチルレゾルシノール、ピコリンアミドと4-ヘキシルレゾルシノール、ピコリンアミドと4-エチルレゾルシノール、イソニコチンアミドと4-ブチルレゾルシノール、イソニコチンアミドと4-ヘキシルレゾルシノール、及びイソニコチンアミドと4-エチルレゾルシノールのうち一つを含むことが好ましい。
【0067】
(別の皮膚明色化成分)
本発明の組成物は、別の皮膚明色化剤をさらに含んでもよい。皮膚明色化剤は、好ましくは、ビタミンB3化合物またはその誘導体、例えば、ナイアシンまたはナイアシンアミドから選択される。配合し得る別の周知の皮膚明色化剤には、アロエ抽出物、乳酸アンモニウム、アゼライン酸、コウジ酸、ブチルヒドロキシアニソール、ブチルヒドロキシトルエン、クエン酸エステル、2,5ジヒドロキシ安息香酸及びその誘導体、エラグ酸、グルコン酸、グリコール酸、緑茶抽出物、ハイドロキノン、4-ヒドロキシ安息香酸誘導体、ヒドロキシカプリル酸、レモン抽出物、リノール酸、アスコルビルリン酸マグネシウム、サリチル酸、またはビタミン類、例えばビタミンB6、ビタミンB12、ビタミンC、ビタミンA、ヒドロキシカルボン酸、例えば乳酸、及びこれらの塩、例えば、乳酸ナトリウム、及びそれらの混合物が含まれる。ビタミンB3化合物またはその誘導体、例えば、ナイアシンまたはナイアシンアミドが、本発明によるより好ましい追加の皮膚明色化剤であり、最も好ましいのはナイアシンアミドである。
【0068】
(皮膚科学的に許容される基剤)
本発明による組成物には、組成物のバランスを形成する皮膚科学的に許容される基剤が含まれる。基剤は、組成物中の皮膚に有益な成分のための希釈剤、分散剤、または担体として作用し、該組成物が皮膚に塗布された際に前記成分の分布を促進することができる。
【0069】
基剤は、水性、無水、またはエマルションであり得る。好ましくは、組成物は、水性またはエマルションであり、特に、油中水型または水中油型のエマルション、優先的には水中油型エマルションである。存在する場合の水は、5~99質量%、好ましくは20~70質量%、最適には40~70質量%の範囲の量である。
【0070】
水に加えて、比較的に揮発性の溶媒もまた本発明の組成物内の担体として作用し得る。最も好ましいのは、一価のC1-C3アルコール類である。これらには、エチルアルコール、メチルアルコール、及びイソプロピルアルコールが含まれる。一価アルコールの量は、1~70質量%、好ましくは10~50質量%、最適には15~40質量%の範囲であってよい。
【0071】
皮膚軟化剤もまた、化粧品として許容される担体として作用し得る。これらは、シリコーンオイル及び合成エステルの形態であってよい。皮膚軟化剤の量は、0.1~5質量%、好ましくは1~20質量%の範囲内のどのような値でもよい。
【0072】
シリコーンオイルは、揮発性と不揮発性の種類に分けることができる。本明細書で使用される「揮発性」なる語は、周囲温度で測定可能な蒸気圧を有する材料を意味する。揮発性シリコーンオイルは、3~9個、好ましくは4~5個のケイ素原子を含有する、環状または直鎖状のポリジメチルシロキサン類から選択されるのが好ましい。直鎖状揮発性シリコーン類は、一般に、25℃で約5センチストークス未満の粘度を有し、その一方で、環状の材料は典型的には約10センチストークス未満の粘度を有する。皮膚軟化剤として有用な不揮発性シリコーンオイルには、ポリアルキルシロキサン、ポリアルキルアリールシロキサン、及びポリエーテルシロキサンコポリマーが含まれる。本明細書で有用な、本質的に不揮発性のポリアルキルシロキサンには、例えば、25℃で約500万~約2500万センチストークの粘度を有するポリジメチルシロキサンが含まれる。本発明の組成物に有用な、好ましい不揮発性皮膚軟化剤の中には、25℃で約10~約400センチストークスの粘度を有するポリジメチルシロキサンがある。
【0073】
エステル皮膚軟化剤としては、下記が挙げられ:
(i)10~20個の炭素原子を有する脂肪酸のアルケニルまたはアルキルエステル。具体例には、イソアラキジルネオペンタノエート、イソノニルイソノナノエート、オレイルミリステート、オレイルステアレート、及びオレイルオレエートが含まれる;
(ii)エーテル-エステル、例えば、エトキシル化脂肪アルコールの脂肪酸エステル;
(iii)多価アルコールエステル、例えば、エチレングリコールモノ-及びジ-脂肪酸エステル、ジエチレングリコールモノ-及びジ-脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール(200-6000)モノ-及びジ-脂肪酸エステル、プロピレングリコールモノ-及びジ-脂肪酸エステル、ポリプロピレングリコール2000モノオレエート、ポリプロピレングリコール2000モノステアレート、エトキシル化プロピレングリコールモノステアレート、グリセリルモノ-及びジ-脂肪酸エステル、ポリグリセリンポリ脂肪エステル、エトキシル化グリセリルモノステアレート、1,3-ブチレングリコールモノステアレート、1,3-ブチレングリコールジステアレート、ポリオキシエチレンポリオール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、及びポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルは、満足のいく多価アルコールエステルである。
(iv)ワックスエステル、例えば、ミツロウ、鯨蝋、ミリスチルミリステート、ステアリルステアレート、及びアラキジルベヘネート;及び
(v)ステロールエステル、その中でコレステロール脂肪酸エステルが例である。
【0074】
10~30個の炭素原子を有する脂肪酸もまた、本発明の組成物のための化粧品として許容される担体として配合してよい。この範疇の実例は、ペラルゴン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、ヒドロキシステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リシノール酸、アラキジン酸、ベヘン酸及びエルカ酸である。
【0075】
多価アルコール型の湿潤剤もまた、本発明の組成物中の皮膚科学的に許容される基剤として使用することができる。湿潤剤は、皮膚軟化剤の有効性の増進、スケーリングの低減、蓄積したスケールの除去の促進、及び皮膚の感触の改善を助ける。典型的な多価アルコールには、グリセロール、ポリアルキレングリコール、より好ましくは、アルキレンポリオール及びこれらの誘導体が含まれ、これらにはプロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、及びこれらの誘導体、ソルビトール、ヒドロキシプロピルソルビトール、ヘキシレングリコール、1,3-ブチレングリコール、1,2,6-ヘキサントリオール、エトキシル化グリセロール、プロポキシル化グリセロール、及びこれらの混合物が含まれる。最良の結果を得るためには、湿潤剤は、好ましくは、プロピレングリコールまたはヒアルロン酸ナトリウムである。保湿剤の量は、組成物の0.5~30質量%、好ましくは1から15質量%の範囲であってよい。
【0076】
増粘剤もまた、本発明による組成物の化粧品として皮膚科学的に許容される基剤の一部として利用することができる。典型的な増粘剤には、架橋アクリレート(例えば、Carbopol(登録商標)982)、疎水変性アクリレート(例えば、Carbopol(登録商標)1382)、セルロース誘導体及び天然ゴムが含まれる。有用なセルロース誘導体には、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エチルセルロース、及びヒドロキシメチルセルロースがある。本発明に適した天然ゴムには、グアー、キサンタン、スクレロチウム、カラギーナン、ペクチン、及びこれらゴムの組み合わせが含まれる。増粘剤の量は、0.0001~5質量%、通常0.001~1質量%、最適には0.01~0.5質量%の範囲であってよい。
【0077】
水、溶媒、シリコーン、エステル、脂肪酸、湿潤剤、及び/または増粘剤は、合計で1~99.9質量%、好ましくは80~99質量%の量で、皮膚科学的に許容される基剤を構成する。
【0078】
油または油性材料が、乳化剤と共に存在してもよく、使用される乳化剤の平均親水性-親油性バランス(HLB)に大きく依存して、油中水型エマルション又は水中油型エマルションを提供する。
【0079】
界面活性剤もまた本発明の組成物中に存在し得る。界面活性剤の合計濃度は、組成物の0.1~40質量%、好ましくは1~20質量%、最適には1~5質量%の範囲となる。界面活性剤は、アニオン性、非イオン性、カチオン性、及び両性活性物質からなる群から選択することができる。
特に好ましい非イオン性界面活性剤は、疎水物1モル当たり2~100モルのエチレンオキサイドまたはプロピレンオキシドと縮合したC10-C20脂肪アルコールまたは酸疎水物を有するもの;2~20モルのアルキルオキシドと縮合したC2-C10アルキルフェノール;エチレングリコールのモノ-及びジ-脂肪酸エステル;脂肪酸モノグリセリド;ソルビタン、モノ-及びジ-C8-C20脂肪酸;ブロックコポリマー(エチレンオキシド/プロピレンオキシド);及びポリオキシエチレンソルビタン、並びにこれらの組み合わせである。アルキルポリグリコシド及びサッカリド脂肪アミド(例えば、メチルグルコンアミド)もまた適切な非イオン性界面活性剤である。
【0080】
好ましいアニオン性界面活性剤には、石鹸、アルキルエーテルスルフェート及びスルホネート、アルキルスルフェート及びスルホネート、アルキルベンゼンスルホネート、アルキル及びジアルキルのスルホサクシネート、C8-C20アシルイセチオネート、アシルグルタメート、C8-C20アルキルエーテルホスフェート、及びこれらの組み合わせが含まれる。
【0081】
皮膚科学的に許容される基剤は、好ましくはクリーム形式の製品を有するようなものであることが好ましい。好ましい形式は、バニシングクリーム基剤である。バニシングクリーム基剤は、1~25質量%、好ましくは5~25質量%、より好ましくは5~20質量%の脂肪酸を含む。この基剤はまた、0.1~10質量%、より好ましくは0.1~3質量%の石鹸を含む。好ましくは、基剤は、脂肪酸と石鹸の両方を含む。C12-C20脂肪酸が、バニシングクリーム基剤中に特に好ましく、C12-C18脂肪酸であるとより好ましい。クリームにおいては、脂肪酸は、好ましくは実質的にステアリン酸とパルミチン酸との混合物である。バニシングクリーム基剤中の石鹸には、脂肪酸のアルカリ金属塩、例えば、ナトリウム塩またはカリウム塩などが含まれる。石鹸は、好ましくは、脂肪酸混合物のカリウム塩である。バニシングクリーム基剤中の脂肪酸は、しばしば、実質的に(一般に約90~95%が)45~47%のステアリン酸と53~55%のパルミチン酸との混合物であるヒステリック酸(hysteric acid)を用いて製造される。したがって、バニシングクリーム基剤の調製にヒステリック酸及びその石鹸を含めることは、本発明の範囲内である。組成物は、7質量%より多い、好ましくは10質量%より多い、より好ましくは12質量%より多い脂肪酸を含むことが特に好ましい。化粧品として許容される基剤は、通常、組成物の10~99.9質量%、好ましくは50~99質量%である。化粧品として許容される基剤は、好ましくは水を含む。水は、好ましくは、組成物の35~90質量%、より好ましくは50~85質量%、さらにより好ましくは50~80質量%含まれる。一般に、パーソナルケア組成物中のバニシングクリーム基剤は、所望の量の全脂肪物質を取り、所望の量の水酸化カリウムと混合することによって調製される。石鹸は、通常は、混合の際に原位置で形成される。
【0082】
(さらなる任意成分)
他の補助剤または機能性成分も、好ましくは、本発明の化粧品組成物に組み込まれる。これらの成分は、着色剤、顔料、乳白剤、及び香料を含み得る。こうした別の微量補助成分は、組成物の0.001から20質量%までの範囲のどのような量でもよい。
【0083】
(サンスクリーン)
サンスクリーンとして使用するためには、金属酸化物を単独でまたは混合物として、且つ/または有機サンスクリーンと組み合わせて使用することができる。有機サンスクリーンの例には、以下が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0084】
組成物中の有機サンスクリーンの量は、好ましくは、約0.1質量%~約10質量%、より好ましくは約1質量%~5質量%の範囲である。好ましい有機サンスクリーンは、その有効性及び商業的入手性のために、Parsol(登録商標)MCX及びParsol(登録商標)1789である。
【0085】
本発明の組成物には香料を使用することができる。使用しうる香料の種類の例示的な非限定的例には、Bauer, K., et al., Common Fragrance and Flavor Materials VCH Publishers(1990)に記載のもののようなテルペン及びテルペン誘導体などを含むものが含まれる。
【0086】
本発明において使用し得る芳香剤の種類の例示的な非限定的例には、ミルセン、ジヒドロミレノール、シトラール、タゲトン、シスゲラン酸、シトロネル酸、またはシスゲラン酸ニトリル、これらの混合物などが含まれる。好ましくは、本発明の組成物に使用される香料の量は、約0.0%~約10%、より好ましくは約0.00001%~約5質量%、最も好ましくは約0.0001%~約2%の範囲である。
【0087】
様々な種類の任意の付加的活性成分を、本発明のスキンケア組成物中に使用してよい。活性剤とは、皮膚軟化剤以外の、また単に組成物の物理的特性を改善する成分以外の、皮膚に有益な作用剤として定義される。この範疇に限定されるものではないが、一般的な例には、タルク及びシリカ、ならびにα-ヒドロキシ酸、β-ヒドロキシ酸、ポリ-ヒドロキシ酸、過酸化物、及び亜鉛塩が含まれる。
【0088】
β-ヒドロキシ酸には、例えばサリチル酸が含まれる。亜鉛ピリチオンは、本発明の組成物に有用な亜鉛塩の一例である。
【0089】
多くのスキンケア組成物、特に水を含むものは、有害な可能性のある微生物の増殖に対して保護されるべきである。したがって、抗菌化合物、例えばトリクロサン、及び防腐剤が、典型的には必要である。適切な防腐剤には、p-ヒドロキシ安息香酸のアルキルエステル、ヒダントイン誘導体、プロピオン酸塩、及び様々な第四級アンモニウム化合物が含まれる。本発明の特に好ましい防腐剤は、メチルパラベン、プロピルパラベン、フェノキシエタノール、及びベンジルアルコールである。防腐剤は、通常、組成物の約0.1%~2質量%の範囲の量で使用される。
【0090】
(組成物の使用方法)
本発明による方法は、主に、ヒトの皮膚への局所適用のためのパーソナルケア製品としての使用、ならびに皮膚の明色化、皮膚の色素沈着の程度の低減、または皮膚の色調の均一化さえも意図する。
【0091】
使用時には、少量の組成物、例えば1~5mlを、皮膚の露出領域に、適当な容器もしくはアプリケーターから適用し、その後必要に応じ、手もしくは指または適当な装置を用いて皮膚表面に広げ、且つ/または皮膚に擦り込む。
【0092】
(製品形態及び包装)
本発明による組成物は、好ましくは、4,000~10,000mPasの粘度を有するローション、10,000~20,000mPasの粘度を有する流動性クリーム、または20,000~100,000mPas以上の粘度を有するクリームである。組成物は、その粘度及び消費者による企図される使用に適するように適切な容器に包装することができる。例えば、ローションまたは流体クリームは、瓶またはロールボールアプリケーターまたは推進剤駆動エアロゾル装置、または指での操作に適したポンプを備えた容器に実装することができる。組成物がクリームである場合、これは単に、変形不可能な瓶または絞り容器、例えばチューブまたは蓋付き壜に貯蔵することができる。組成物が固形または半固形のスティックである場合、これは、組成物を手動でまたは機械的に組成物を押し出すか、または押出のための適切な容器に包装されてもよい。
【0093】
(本発明の別の態様)
第二の態様により、アルキル置換レゾルシノールのTDDを促進するための方法が開示されており、これは、
(i)第一の態様による化粧品組成物を提供する工程;及び
(ii)前記組成物の有効量を皮膚に適用する工程
を含む。
この方法は、非治療的性質のものであることが好ましい。
【0094】
第三の態様によれば、アルキル置換レゾルシノールのTDDを促進するための、式IまたはIIのピリジン化合物の使用が開示される。この使用は、非治療目的、例えば化粧品用途のためであることが好ましい。
【0095】
第四の態様によれば、アルキル置換レゾルシノールのTDDを改善するための化粧品組成物の調製における、式IまたはIIのピリジン化合物の使用が開示される。この場合にも、この使用は、非治療目的、例えば、化粧品用途のためであることが好ましい。
【0096】
第五の態様によれば、アルキル置換レゾルシノールのTDDを促進するための使用ための、(i)式IまたはII:
【化7】
[前記式I及び前記式IIにおいて、XはSまたはOであり;R、R1、R2、R3は-H、-SH、-OH、又はC1-18飽和もしくは不飽和の直鎖状、分枝状、もしくは環状の炭化水素基であり;Yは-H、-SH、又はC1-18飽和もしくは不飽和の直鎖状、分枝状、もしくは環状の炭化水素基である]
の少なくとも1種のピリジン化合物;
(ii)アルキル置換レゾルシノール;及び
(iii)皮膚科学的に許容される基剤を含む組成物が開示される。
【0097】
第六の態様によれば、第一の態様による組成物を皮膚に適用する工程を含む、皮膚の明色化方法が開示される。
【0098】
したがって、本発明はまた、本明細書で定義される化粧品として許容される組成物を含む、密閉容器を提供する。
【0099】
以下の実施例は、本発明を実施する方式を詳細するための、本発明の原理の例示のためであって限定ではない、方法としてのものである。
【実施例
【0100】
(実施例1:フランツ拡散セルを使用するTDD)
ピコリンアミド及び4-ヘキシルレゾルシノールを含有する化粧品組成物(ローション)を、表1に示す成分を使用して調製した。イソニコチンアミド及び4-ヘキシルレゾルシノールを含む別のローションも調製した。これら2つの組成物に加えて、第三の組成物(比較例/本発明の範囲外)を調製した。この組成物には、ピコリンアミド並びにイソニコチンアミドが含まれていなかった。
【表1】
表1の全ての組成物を、以下に記載の手順により試験した。
【0101】
(拡散実験)
実験当日に、皮膚試料を、-20℃から0℃に、次いで4℃に、そして最後に室温に、順次解凍した。毛を電気かみそりで除去し、全厚のブタの皮膚(~1.3mm)を直径~4.5cmの円形ディスクに切断した。ディスクを、直径2.498cmのフランツ拡散セルに載せた。従って、拡散に利用可能な面積は4.91cm2であった。一連の実験毎に、皮膚の完全性を試験するためにカフェインを二重に(in duplicate)流した。これは、活性分子の透過に関するデータが許容されるために必要とされる。適切な寸法(ID:2.5cm、OD:4.4cm、レセプター量:25ml、拡散面積:4.91 cm2)を有する、Perme Gear Inc, USA製のジャケット付きフランツ拡散セルをこの実験に使用した。Tween(登録商標)80の水中1%溶液(リン酸緩衝食塩水、PBS)を、フランツ拡散セル中のレセプター溶液として使用した。内部温度を、ウォータージャケットにより32℃に維持した。表皮を有する皮膚を拡散セルに載せた後、懸かる製剤を適用する前に1~2時間に亘って32℃で平衡させた。約100mgの製剤を、アプリケーターを用いてブタの皮膚に塗布するが、塗布の前後にアプリケーターを製剤と共に秤量して、製剤の実際の塗布量を算出した。24時間の終点で、レセプター溶液をレセプター区画から抜き取り、ドナー側を、水溶液中1%のTween(登録商標)80が合計10~15mLのアリコート5mLで洗浄した。皮膚を、メスを用いて小片に切断し、水中1%のTween(登録商標)80を上限15ml用いて均質化させた。ドナー及び皮膚抽出物を、2~3時間超音波処理して、溶液中の活性分子を確実に完全抽出した。
【0102】
(皮膚の完全性の測定)
単離された皮膚試料の完全性を試験するために、PBS中の1%カフェイン溶液0.5mlを、試験しようとする皮膚の1.77cm2の領域に適用した。カフェインの濃縮のために、レセプター液を24時間及び48時間の終点で回収した。浸透したカフェインの量が適用量の0.2%を超えないように注意した。
【0103】
(製剤試料溶液の調製)
100mgの試料を(全ての製剤を個別に)メスフラスコ中で秤量した。蒸留水中のTween(登録商標)80の1%溶液(約10ml)を添加し、10分間に亘り超音波処理を行った。この溶液を、0.2μmシリンジフィルターを通して濾過し、10mg/mlの最終濃度を得た。
【0104】
(サンプル分析)
レセプター溶液、皮膚ホモジネート、及び皮膚洗浄(ドナー)試料を分析し、それぞれの場合におけるレゾルシノールの濃度を、HPLC法を用いて決定した。活性剤の回収率(%)を、各区画について以下のように計算した。
X(g/g) = ((Ci×V×100)/m)
ここで、X(g/g):試料中の活性剤含有量、単位はg/g、
m=試料質量、単位はグラム(g)、
Ci=同一溶液中の活性剤の濃度、単位はミリリットル当たりのマイクログラム(μg/ml)、及び
V=試料溶液の量、単位はミリリットル(ml)である。
【0105】
表1のデータは、ピコリンアミド及びイソニコチンアミドが、組成物2及び3の場合にレゾルシノールのTDDにどのように影響するかを明示している。比較用組成物1は、それほど顕著な効果を示さなかったが、4-ヘキシルレゾルシノール及びピコリンアミドを含有する組成物2、ならびに4-ヘキシルレゾルシノール及びイソニコチンアミドを含有する組成物3は、増大されたTDDを示した。
【0106】
(実施例2:ピコリンアミドを用いたメラニンの阻害に関するインビトロ実験)
インビトロ実験を、以下に提供される本発明による試験試料及び比較試験を用いて行った。この実験の目的は、本発明による成分の組み合わせによってもたらされる皮膚の明色化の程度を確認することであった。
【0107】
全ての試料を、細胞生存率及びメラニン含有量アッセイをチェックすることで分析し、皮膚の明色化をもたらすこれらの能力の程度を決定した。
【0108】
(以下の工程に使用される培養物の準備)
(i)0日目における24ウェルNunc(登録商標)プレート中の1ウェルあたり5×104のHeMnDP(単一ウェル/処理)に播種して、メラニン細胞単培養システムを確立した。
(ii)1ウェルあたりの培地量は、メラニン細胞増殖培地(MGM)1mlに制限した。
(iii)24時間後、活性剤を含有する新鮮な培地を再び添加した。この段階でも、1mlのMGMを使用した。
(iv)プレートをCO2インキュベーター内で37℃にて72時間に亘りインキュベートした。
(v)最後に、プレートを以下に記載するCalceinアッセイに送り、次いでメラニン含有量評価を行った。
【0109】
(Calcein-AM生存率アッセイ)
(i)使用済み培地を24ウェルプレートの各ウェルから除去し、細胞を含まないウェル(コントロールウェル)と共に、400μlの1×PBS-Ca-Mg(調製については下記を参照)で1回すすいだ。
(ii)1mMストック(例えば、10mlの1×PBS-Ca-Mg中とした100%DMSO中1mMのCalceinストック10μl)から1×PBS-Ca-Mg中1μMのCalcein-AM(実施用ストック)を調製した。コントロール細胞を含む各ウェルに、約400μlのCalcein-AM実施用ストック溶液を添加した。
(iii)プレートをアルミホイルで覆い、CO2インキュベーター中で30分間インキュベートした。
(iv)その間、蛍光を、30分間の色素インキュベーションの後にTECAN(登録商標)機器を使用して測定した(490nmでの励起及び520nmでの発光)。
(v)プレートの読み取り後、Calceinを含有する緩衝液を除去し、次いでメラニン含有量アッセイを実施した。
【0110】
(PBS-Ca-Mgの調製)
20X PBS-Ca-Mgストック緩衝液(1リットルの溶液用)
溶液A:
348mMのNa2HPO4(無水)… 49.4g
70mMのNaH2PO4(二水和物)… 10.92g
溶液B:
18mMのCaCl2 … 2.6g
70mMのKCl … 5.22g
18mMのMgCl2(六水和物)… 3.66g
2740mMのNaCl … 160.3g
【0111】
溶液A及びBの各々50mLを、オートクレーブした蒸留水中で調製し、室温で貯蔵した。
溶液A及びBの各々5mLを取り、90mLの水を添加して、実施用ストック溶液を調製し、これを使用前に濾過した。
【0112】
(1mMのCalcein-AMストックの調製)
(i)500μlの100%DMSOを、1mgのCalcein-AM(Fluka/Sigma Aldrich, CAS No 148504-34-1)に加えた。
(ii)成分を混合し、さらに500μlの100%DMSOをこれに添加した。
(iii)混合物をさらに十分混合し、アリコート20μl中に取り、これをアルミホイルで覆って、20℃で保存した。
【0113】
(メラニン含有量アッセイ)
MCA試薬の調製(1NのNaOH中10%のDMSO)
【表2】
(i)Calcein-AMの読み取り値を記録した後、Calcein-AMを含む緩衝液をすべてのウェルから除去した。
(ii)その後、150μLのMCA試薬を各ウェルに添加した。
(iii)プレートを穏やかに振盪しつつ60℃で1時間に亘りインキュベートした。
(iv)120μLの溶液を、各ウェルから384ウェルプレートに移した。
(v)吸光度を405nmで測定した。
(vi)(コントロールの+/-15%のCalceinカットオフに基づく)非細胞毒性濃度を求めて、平均MCAを計算し、コントロール試料の百分率としてMCAを報告した。次いで各場合について阻害(%)を計算した。
【0114】
阻害値(%)が高いほど、活性成分の皮膚明色化剤として作用する可能性を示す。
【0115】
【表3】
【0116】
表3のデータは、本発明による組成物の条件を刺激する試料(実施例1、2、3、4)が、コントロール(A、B、C、D、及びE)と比較して、メラニン合成において顕著により大幅の阻害を引き起こしたことを示す。
【0117】
(実施例3:イソニコチンアミドを用いたメラニンの阻害に関するインビトロ実験)
ピコリンアミドの代わりにイソニコチンアミドを用いて、実施例2の試験を繰り返した。情報を表4にまとめる。
【0118】
【表4】
【0119】
表4のデータはまた、本発明に従う組成物の条件を刺激する試料(実施例5、6、7、及び8)が、対応するコントロール試料と比較してメラニン合成において顕著により大幅の阻害を引き起こしたことを示す。