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特許7009400繊維強化熱硬化性樹脂部分間の超音波溶接
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-14
(45)【発行日】2022-01-25
(54)【発明の名称】繊維強化熱硬化性樹脂部分間の超音波溶接
(51)【国際特許分類】
   B29C 65/08 20060101AFI20220118BHJP
   B29K 101/10 20060101ALN20220118BHJP
   B29K 105/10 20060101ALN20220118BHJP
【FI】
B29C65/08
B29K101:10
B29K105:10
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018567187
(86)(22)【出願日】2017-06-07
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-07-18
(86)【国際出願番号】 EP2017063882
(87)【国際公開番号】W WO2017220327
(87)【国際公開日】2017-12-28
【審査請求日】2020-06-03
(31)【優先権主張番号】1610873.0
(32)【優先日】2016-06-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】504132032
【氏名又は名称】ヘクセル コンポジッツ、リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アルキディアコノ、マルコ
(72)【発明者】
【氏名】エリス、ジョン
(72)【発明者】
【氏名】チャウ、ベンジャミン
【審査官】池田 安希子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2008/0314498(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第102014209815(DE,A1)
【文献】国際公開第2015/141588(WO,A1)
【文献】特開2010-143156(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 65/08
B29K 101/10
B29K 105/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱硬化性樹脂マトリックスに含まれる繊維状材料の2つの部分の間に永久接合部を形成する方法であって、該方法は、
前記2つの部分を重ね合わせる段階と、
重ね合わされた部分に超音波溶接を行なって、前記2つの部分の間に永久接合部を形成する段階と
を含み、
前記永久接合部の領域には、前記熱硬化性樹脂マトリックスに含まれる繊維状材料のTgに大きな変化がなく、
前記永久接合部の厚さは、2つの部分を重ね合わせる前のそれぞれの平均厚さの50%~150%であり、
前記重ね合わせ部分の長さは、3mm~200mmであり、
前記超音波溶接される部位をアンビルで支持しつつソノトロードに接触させることにより超音波溶接を行い、
前記熱硬化性樹脂マトリックスに含まれる繊維状材料部分を成形して、それらの部分を重ね合わせる前に接合する領域の材料の一部を取り除き、
接合対象部分の両方を補完的な城郭風又は鋸歯状パターンに成形することを特徴とする方法。
【請求項2】
前記ソノトロードは、15~70kHzの周波数で作動することを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項3】
前記ソノトロードは、5~150μmの振幅で作動することを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項4】
前記ソノトロードは、0.01~0.6MPa(0.1~6バール)の圧力で作動することを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項5】
前記ソノトロードは、0.01~30秒の溶接時間にわたって作動することを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項6】
前記ソノトロードは、前記溶接時間の完了後、0.1~10秒の保持時間で作動することを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項7】
前記ソノトロードがアンビルに最も近い位置にある場合に、そのソノトロードとアンビルとの間のギャップが、ゼロから、2つの部分を重ね合わせる前のそれぞれの平均厚さの150%までとなるようソノトロードとアンビルが配置されることを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項8】
前記熱硬化性樹脂マトリックスに含まれる繊維状材料の部分の両方を成形し、その成形された各部分から除去される材料の量が25~75%であることを特徴とする請求項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接合部領域で樹脂の化学的性質を大きく変化させない超音波溶接により繊維強化熱硬化性樹脂の部分間での永久接合部を形成する方法に関するものである。とりわけ、接合部分の厚さが接合されていない部分の厚さとほぼ同じとなる方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
本発明は、自動繊維配置(AFP)装置に用いられる長いプリプレグスリットテープの製造に特に有用である。このようなテープは、通常、スリット加工後の幅が3.2mm、6.35mm、12.7mm、25.4mmとなる。このように狭い幅にスリット加工が施されるプリプレグテープのマスターロールは、一般に、75mm、150mm、300mm、600mmの幅を有することがある。このようなプリプレグテープのマスターロールは、自動繊維配置(AFP)用の長いスリットテーププリプレグを製造するためには長さを長くする必要があり、サプライヤが都合よく提供できる長さよりも長い長さが必要となる場合が多い。従って、自動繊維配置に使用する十分な長さの幅の狭いスリットテープを提供するために、2つ以上のマスタープリプレグテープを接合する必要がしばしば生じる。マスター幅のプリプレグテープ又はその部分は、通常、スリット加工工程において、それらのテープの端部を重ね合わせ、その重複部分を加圧加温することにより接合を行う。しかしながら、この方法では、連続したテープの厚さが、接合位置において、非接合領域よりもはるかに、多くの場合、80%から100%大きくなるといった問題が生じ、2つ以上の接合部がAFPプロセス又はその他のテープ敷設プロセスにおける連続した幅の狭いスリットテープから製造された部品又は完成品の厚さに一致する部分に傷や厚さの増加が生じてしまう場合がある。また、本発明は、セミプレグやトウプレグなど、熱硬化性樹脂マトリックスに含まれる繊維状材料を有するその他の材料同士を接合するのにも有用である。
【0003】
材料の接合については、接着剤などの使用をはじめとしたその他の方法が知られているが、これらの方法の多くでは、例えば、樹脂の硬化状態を促進させることにより、接合領域の熱硬化性樹脂の化学的性質を変えてしまう可能性があり、接合領域と非接合領域との間で、硬化後の最終的な性質に差異が生じてしまうことになるので、熱硬化性樹脂に含まれる繊維状材料との使用には不向きである。
【0004】
超音波溶接は、ワークピースに高周波の超音波音響振動を局所的に印加して、固体接合部を形成する産業技術である。これは、例えば、20kHz~1GHzを含む幅広い周波数を有し得る超音波と混同してはならない。超音波溶接では、ソノトロードと処理対象材料とが物理的に接触する。ここで言う超音波溶接は、15~70kHzの範囲の周波数、一般的に、20、30、35kHzの周波数で超音波を接合対象領域に印加する。この超音波溶接プロセスでは、コンバータに電気入力が行われる。このコンバータには、2つの金属製の円板間に挟持された圧電材料(PZT)が含まれる。電気入力によって、PZT材料が振動するよう促し、PZTの運動をブースタにおいて鉛直運動に変化させるよう、ブースタを用いない場合はソノトロード(ホーンともいう)に直接伝達するよう、電気エネルギーを運動エネルギーに変化させる。
【0005】
この鉛直運動は、ソノトロードと処理される材料との界面で鉛直運動のある一定の振幅が得られるよう、溶接システムの設計及びその制御パラメータによって調整が行われる。一般的に、溶接される材料は、ソノトロードとアンビルの間に配置される。このアンビルとしては、超音波ツールからの圧力を処理対象材料に効果的に印加するため、プレート、ローラ、異形ドラム、又は他の任意の支持面を用いることができる。
【0006】
炭素繊維から織られた織物などの炭素プリフォームを積層するのに超音波や超音波溶接を採用することが提案されている。Kunstoffe International、2012年10月、188-189ページに記載され、Joining Technologyにその翻訳が記載されている記事では、炭素プリフォーム間に配置された接着剤を活性化する超音波の使用が掲載されている。また、中国特許出願公開特許第103802230号、ロシア特許第2321606号、日本特許第10036531号では、超音波によって繊維状材料への樹脂材料の含浸を促進し得ることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】中国特許出願公開第103802230号明細書
【文献】ロシア特許第2321606号明細書
【文献】特許第10036531号公報
【非特許文献】
【0008】
【文献】Kunstoffe International、2012年10月、第188頁-189頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、上記問題を未然に防ぐ又は少なくとも軽減すること、及び/又は、概して利点を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、添付の請求項のいずれかに記載の方法及び材料が提供される。
第1の態様では、本発明は、熱硬化性樹脂マトリックスに含まれる繊維状材料の2つの部分間で永久接合部を形成する方法であって、該2つの部分を重ね合わせる段階、その重ね合わせ部分に対して超音波溶接を行なって該2つの部分間に永久接合部を形成する段階を含み、その永久接合部の領域において、熱硬化性樹脂マトリックスに含まれる繊維状材料のサブアンビエント(sub-ambient)Tgに大きな変化がないことを特徴とする方法を提供する。
第2の態様では、本発明は、本発明に係る方法で永久接合された熱硬化性樹脂マトリックスに含まれる繊維状材料部分を提供する。
【0011】
本発明の方法では、熱硬化性樹脂マトリックスに含まれる繊維状材料の重ね合わされた2つの部分の間に形成された接合部は、材料表面のソノトロードが鉛直運動を行うことによって生じる温度に起因するものであり、それにより、超音波溶接中に印加された圧力によりその重ね合わされた2つの部分の繊維状材料が結合できるよう熱硬化性樹脂粘度を十分に低下させる。この溶接の活動段階が終わると、熱硬化性樹脂マトリックスの粘度が再びその元の値まで上昇し、重ね合わせ部分間に永久接合部が得られる。
【0012】
本発明の文脈において、永久接合部とは、通常の使用時、例えば、自動テープ敷設プロセスや自動繊維配置プロセスなどのテープ敷設プロセスにおける使用時に材料がさらされる条件下で分離しない接合部を意味する。具体的には、本発明の方法によってはるかに強い接合部を作ることが可能な場合もあるが、永久接合部とは、14度で2分間、13Nの引張力下でも分離しない接合部を意味する。本発明の好適な実施形態では、上記方法で形成された永久接合部は、14度で2分間、40Nの引張力下でも分離しない。それに加えて又はその代わりに、本発明の方法によって形成された永久接合部の強度は、接合された材料の部分を、少なくとも13Nの負荷、場合によってはより高い負荷下で、14度などの低減した温度で30~80mmの巻角に対して巻きつける又はかけ渡すことができるような強度である。
【0013】
また、超音波溶接によって熱硬化性樹脂マトリックスに含まれる繊維状材料の2つの部分間を接合することで、熱硬化性樹脂マトリックスに含まれる繊維状材料の化学的性質に大きな影響を与えずに永久接合部を形成することができることを見出した。具体的には、本発明の方法では、永久接合部の領域において、熱硬化性樹脂マトリックスに含まれる繊維状材料のサブアンビエントTgに大きな変化が生じることがない。永久接合部の領域における熱硬化性樹脂マトリックスに含まれる繊維状材料のサブアンビエントTgと、超音波溶接前の熱硬化性樹脂マトリックスに含まれる繊維状材料のサブアンビエントTgとの違い、よって超音波溶接が行われない領域における熱硬化性樹脂マトリックスに含まれる繊維状材料のサブアンビエントTgとの違いは、好ましくはわずかプラスマイナス10度、より好ましくはわずかプラスマイナス6度、最も好ましくはわずかプラスマイナス3度である。このことは、接合部位の樹脂は他の部分とほぼ同じであることから、その接合された材料に対して敷設、成形、硬化を行なった後により均一な製品が得られる点において有利である。
【0014】
サブアンビエントTgは、DSC(示差走査熱量測定法)などの任意の適切な方法で測定できる。
【0015】
本発明の好適な実施形態では、永久接合部の厚さは、2つの部分を重ね合わせる前のそれぞれの平均厚さの50%~150%である。そのため、本実施形態では、ほぼ同じ厚さの2つの材料の部分を接合した場合、その接合部の厚さは、接合する前の材料の厚さの50%~150%である、すなわち、接合部分の厚さは、その周囲の未接合部分の50%~150%である。永久接合部の厚さは、より好ましくは、2つの部分を重ね合わせる前のそれぞれの平均厚さの60%~140%であり、さらに好ましくは75%~125%又は80%~120%、最も好ましくは90%~110%である。
【0016】
本発明の方法において超音波溶接が行われる重ね合わせ部分の長さは、超音波溶接後の接合部の強度に影響を与えることになる。具体的には、重ね合わせ溶接部分の長さが増すと、一般には、接合部の強度がある一定の値まで高まることになるが、重ね合わせ材料があまりに長いと無駄であり、その全体を溶接するのに特別な設備を設ける必要が生じる場合もある。そのため、本発明の好適な実施形態では、重ね合わせ部分の長さは、3mm~200mm、より好ましくは10mm~150mm、最も好ましくは15mm~75mmである。
【0017】
本発明の好適な実施形態では、上記重ね合わせ部分の少なくとも全長にわたって超音波溶接を行い、より好ましくは、その重ね合わせ部分の全長プラス重ね合わせ部分の各端部に直接隣接する熱硬化性樹脂に含まれる繊維状材料の5~50mmの範囲、最も好ましくはプラス10~25mmの範囲で超音波溶接が行われる。
【0018】
本発明の方法は、熱硬化性樹脂マトリックスに含まれる繊維状材料のほぼ同じ幅を有する2つの部分を接合するのに特に適しており、一般には、いかなる幅の材料の接合に用いてもよいが、接合する2つの部分のそれぞれの幅は、一般的に、3mm~3mなど、3mm~5mの範囲、例えば、3.2mm、6.35mm、12.7mm、25.4mm、75mm、150mm、300mm、600mmであればよい。
【0019】
本発明の方法では、一般に、超音波溶接を行うのに適した任意の装置を用いればよい。一方、本発明の好適な実施形態では、超音波溶接される部位をアンビルで支持しつつソノトロードに接触させることにより超音波溶接を行う。この文脈において、アンビルとは、熱硬化性樹脂マトリックスに含まれる繊維状材料の重ね合わせ部分をソノトロードに接触させつつ支持するのに適した任意の面を意味する。従って、このアンビルは、ソノトロードからのエネルギーを支持された材料に伝達可能とする適度な弾力性を有していなければならない。具体的には、アンビルは、一般的に、平板、ドラム、ローラの形状を有していてもよく、このアンビルの表面には、必要に応じて、エンボス加工が施されていてもよい。
【0020】
従来の超音波溶接装置では、超音波発生器が線間電圧を高電圧/高周波信号に電子的に変換し、それをコンバータに送る。このコンバータでは、圧電性結晶がチタン製の2枚の円板の間に挟持されて、印加された電気信号の周波数で振動(伸縮)する。この振動によって、振幅が約18ミクロン(ピーク間)と小さい、毎秒20,000サイクルの非常に高速な機械的運動が生じる。この振動の振幅は、必要に応じて、振幅カプラ(ブースタ)をコンバータに接続することにより増加させることができる。振幅カプラの一般的な利得は、1:2である。この振幅カプラの下端部に接続されるソノトロード(超音波ホーン)によって、振幅を通常2倍から3倍さらに増加させる。超音波溶接プロセス中は、接合される材料がソノトロードの接触面とアンビルの上部との間で圧縮される。ソノトロードは、一般的に、場合によっては熱処理により、チタン、アルミニウム、鋼から形成されてもよい。
【0021】
市販のソノトロードは、一般に、第1の方向の長さが、例えば25mm~35mmなど、5mm~50mmであり、第2の方向の長さが、例えば200mm~350mmなど、100mm~500mmである長方形の接触面を有している場合がある。本発明の方法の特定の実施形態では、ソノトロードの接触面の形状と重ね合わせ部分の長さとは、使用時、超音波溶接される全領域がソノトロードの接触面に覆われるように選択される。本実施形態は、50mm以下の幅を有する材料の接合に特に適している。
【0022】
本発明の他の実施形態では、ソノトロードは、単一のステップにおいて重複領域の一部にだけ超音波溶接が行われるよう、少なくとも一方向において超音波溶接される全領域よりも小さい接触面を有している。よって、本実施形態において、本発明の方法には、超音波溶接が行われる領域のほぼ全領域が永久接合されるまで、超音波溶接される領域の部分に対して超音波溶接を順次行う段階が含まれることが好ましい。本実施形態は、30mmよりも大きな幅及び/又は30mmよりも大きな重複長さを有する材料の接合に特に適している。一般に、ソノトロードと接合対象材料とは、本実施形態では、溶接ステップ間において接合対象材料をソノトロードの下方で第1及び/又は第2の方向に横方向に移動させる、及び/又は、溶接ステップ間においてソノトロードを接合対象材料の上方で第1及び/又は第2の方向に横方向に移動させるなど、任意の適切な手段により一連の溶接ステップが行われるよう、溶接ステップ中は互いに固定位置に保持される。また、例えば、回転接触面を有するソノトロードを用いることにより、溶接ステップ中に接合対象材料の表面上方を第1及び/又は第2の方向に、ソノトロードを横方向に連続的に移動させてもよい。
【0023】
周波数、超音波動作の振幅、超音波溶接プロセス中に印加される力、これらが印加される時間、及び、処理後の保持時間は、部分間を永久接合するのに重要となる5つの処理パラメータであり、形成される接合部の強度を決定するものでもある。関連し得るさらなる要因としては、ソノトロードの最下点におけるソノトロードとアンビル間の距離がある。これらの要因はいずれも永久接合部の厚さに影響を与える可能性もある。
【0024】
接合される熱硬化性樹脂マトリックスに含まれる繊維状材料の部分の物理組成及び化学組成は、形成された接合部の強度及びその接合部の厚さにも影響を与える。一方、どんな材料であっても、比較的単純なテストによって適した処理パラメータを特定できることが当業者には理解されるであろう。例えば、最適周波数は、特定の熱硬化性樹脂マトリックスに含まれる特定の繊維状材料に基づく試作品から決定してもよく、振動の好適な振幅は、利得の異なる振幅カプラを用いて、超音波発生器にて電子的な調整を行うことにより試行錯誤しながら決定することができる。適用や材料の組み合わせについて最適な周波数及び振幅が決定すると、それらを定数に設定することができ、ソノトロードが材料に加える溶接加圧力、超音波溶接の進行中にこの圧力が印加される時間、接合部のある程度の強度及び/又は厚さを得るために、超音波溶接の完了後にソノトロードを超音波運動させることなく保持する保持時間とを決定することができる。
【0025】
一般に、軽い溶接加圧力と短い溶接時間で超音波溶接プロセスを行い、その後の保持時間が短いと、接合部の強度が低下してしまう。溶接加圧力、溶接処理時間、ソノトロードの超音波運動後の保持時間を増加させると、接合部強度は最大に増大し、その後これらの変数の一定の値にわたり低下する。必要な力の量は、所望する接合部強度、所望する接合部厚み増加、超音波溶接対象の材料又は材料の組み合わせ、溶接時間や部分の移動速度、接合部の面積によって決まる。一貫した永久接合部の品質を得るためのパラメータが設定されると、5つの溶接パラメータである周波数、振幅、処理時間、力、処理後の保持時間を一定に保つことができる。ソノトロードの最下点とアンビルとの間にギャップを導入することによる効果もこのプロセス中に調べることができる。当然のことながら、上記パラメータについてのテストは、任意の順序や組み合わせで行うことができることが当業者には理解されるであろう。
【0026】
本発明の特定の実施形態では、ソノトロードは、15~70kHz、好ましくは16~35kHz、より好ましくは20~35kHzの周波数で作動する。
【0027】
本発明の特定の実施形態では、ソノトロードは、5~150μm、好ましくは50~100μmの振幅で作動する。
【0028】
本発明の特定の実施形態では、ソノトロードは、0.01~0.6MPa(0.1~6バール)、好ましくは0.05~0.3MPa(0.5殻3.0バール)の圧力で動作する。
【0029】
本発明の特定の実施形態では、ソノトロードは、0.01~30秒、好ましくは0.05~20秒、より好ましくは0.1~5秒の溶接時間にわたって作動する。
【0030】
本発明の特定の実施形態では、ソノトロードは、溶接時間の完了後、0.1~10秒、好ましくは2~8秒の保持時間で作動する。この保持時間中、ソノトロードは、超音波運動を行わずに、アンビルに最も近い位置に保持されることで、溶接部分に静圧を加える。
【0031】
本発明の特定の実施形態では、ソノトロードがアンビルに最も近い位置にある場合に、そのソノトロードとアンビルとの間のギャップが、2つの部分を重ね合わせる前のそれぞれの平均厚さのゼロから150%となるよう、すなわち、2つの重ね合わされた材料がほぼ同じ厚さを有する場合、そのギャップが単一の材料層の厚さのゼロから150%となるようソノトロードとアンビルが配置される。ギャップが2つの部分を重ね合わせる前のそれぞれの平均厚さのゼロから100%となる、すなわち、2つの重ね合わされた材料がほぼ同じ厚さを有する場合、ギャップが単一の材料層の厚さのゼロから100%となることが好ましい。
【0032】
ソノトロード接触面及び/又はアンビルなどのコンポーネントを熱硬化性樹脂マトリックスに含まれる繊維状材料の重ね合わせ部分に接触させることにより超音波溶接を行う本発明の方法では、熱硬化性樹脂マトリックスに含まれる繊維状材料の重ね合わせ部分に接触しているコンポーネントがその部分にくっつかないようにする、及び/又は、熱硬化樹脂マトリックスがそのコンポーネントに付着しないようにすることが有利である。これは、例えば、少なくとも一つの付着防止面を有する材料層をソノトロードの接触面及び/又はアンビルと熱硬化性樹脂マトリックスに含まれる繊維状材料の重ね合わせ部分との間に配置することによって達成できる。好適な材料としては、その少なくとも一つの表面に付着防止特性を有し、好ましくは非圧縮性も有する任意の材料が挙げられる。特に好適な材料としては、PTFE被覆ガラス布などのPTFE被覆材料、シリコーン被覆光沢及び非光沢紙(光沢又は非光沢材料の使用は、接合するプリプレグのグレードに基づき判断する)などのシリコーン被覆材料が挙げられる。PTFE被覆材料の例としては、PTFE被覆ガラス布(例えば、イギリスのTaconic Wildcat社から入手可能な標準グレードの7058 Tygadur(例えば、品番7058、全厚0.0045インチ、被覆重量0.44ポンド/平方ヤード、引張強度ワープ/フィル 160/150ポンド/インチ、引裂強度ワープ/フィル 5.0/5.0重量ポンド、絶縁耐力 1000ボルト/ミル)など)が挙げられる。好適な光沢紙としては、Mondi 120g GLシリコーン剥離コート紙があり、好適な非光沢紙としては、Laufenberg NSS900 シリコーンコート紙がある。
【0033】
このような付着防止面を有する材料は、その製造中であって、本発明の方法で接合が行われる前に熱硬化性樹脂マトリックスに含まれる繊維状材料の全長の一面又は両面に塗布し、接合プロセスの完了後に除去すればよい。
【0034】
本発明の方法により接合される熱硬化性樹脂マトリックスに含まれる繊維状材料は、いかなる種類のものであってもよいが、好適な実施形態では、熱硬化性樹脂マトリックスに含まれる繊維状材料の部分は、樹脂を含む繊維トウ(トウプレグともいう)や樹脂内に含まれる繊維層(プリプレグ又はセミプレグともいう)であってもよい。さらなる実施形態では、硬化樹脂のマトリックス内に含まれる繊維状材料の部分には、プリプレグテープのリール端部など、樹脂内に含まれる繊維層のテープの端部が含まれる。
【0035】
硬化樹脂のマトリックスに含まれる繊維状材料の2つの部分に、樹脂内に含まれる繊維層のテープの端部が含まれる本発明の実施形態では、接合されたテープは、その後、テープ敷設プロセス、好ましくは自動テープ敷設プロセス又は自動繊維配置プロセスへと送られてもよい。本発明の方法によって接合される材料ノン部分は比較的幅が広く、そのようなテープ敷設プロセスへと送られる前に細めのテープ状に切断加工やスリット加工が行われてもよい。
【0036】
本発明により接合可能な熱硬化性樹脂マトリックスに含まれる繊維状材料には、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ビスマレイミド樹脂をはじめとする、さまざまな熱硬化性樹脂マトリックス組成が含まれてもよい。好適な実施形態では、この熱硬化樹脂マトリックス組成には、エポキシ樹脂が含まれる。
【0037】
このエポキシ樹脂材料成分又はエポキシ樹脂ポリマー、要するに、エポキシ樹脂は、市販のビスフェノールAジグリシジルエーテルから単体もしくは組み合わせて選択したものであればよく、このクラスの一般的な材料としては、GY-6010(Huntsman Advanced Materials製、イギリス、ダックスフォード)、Epon 828(Resolution Performance Products製、オランダ、ペルニス)、DER 331(Dow Chemical製、ミシガン州ミッドランド)が挙げられる。
【0038】
上記ビスフェノールAエポキシ樹脂成分は、樹脂マトリックス全体の30~50重量%を構成することが好ましく、その残りは異なる硬化樹脂成分材料、及び/又は、熱可塑性プラスチック材料、及び/又は、硬化剤などのその他の既知の樹脂マトリックス成分、例えば、ゴム材料であってもよい。
【0039】
好適なエポキシ樹脂は、150~1500の範囲のエポキシ当量(EEW)、好ましくは200~500の範囲のEEWなどの高反応性を有している。好適なエポキシ樹脂には、単官能、二官能、三官能、及び/又は、四官能エポキシ樹脂の中から選択される2つ以上のエポキシ樹脂の混合物が含まれてもよい。
【0040】
好適な二官能性エポキシ樹脂の例としては、ビスフェノールFのジグリシジルエーテル、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル(任意に臭素化されたもの)、フェノール及びクレゾールエポキシノボラック、フェノール―アルデヒド付加物のグリシジルエーテル、脂肪族ジオールのグリシジルエーテル、ジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、芳香族エポキシ樹脂、脂肪族ポリグリシジルエーテル、エポキシ化オレフィン、臭素化樹脂、芳香族グリシジルアミン、複素環式グリシジルイミジン及びアミド,グリシジルエーテル、フッ素化エポキシ樹脂、グリシジルエステル又はこれらの任意の組み合わせに基づくものが挙げられる。
【0041】
二官能性エポキシ樹脂は、ビスフェノールFのジグリシジルエーテル、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、ジグリシジルジヒドロキシナフタレン又はこれらの任意の組み合わせから選択されてもよい。
【0042】
適切な三官能性エポキシ樹脂の例としては、フェノール及びクレゾールエポキシノボラック、フェノール―アルデヒド付加物のグリシジルエーテル、芳香族エポキシ樹脂、脂肪族トリグリシジルエーテル、ジ脂肪族トリグリシジルエーテル、脂肪族ポリグリシジルアミン、複素環式グリシジルイミジン及びアミド、グリシジルエーテル、フッ素化エポキシ樹脂、又はこれらの任意の組み合わせに基づくものが挙げられる。適切な三官能性エポキシ樹脂は、Huntsman Advanced Materials(スイス、モンテー)からMY0500及びMY0510(トリグリシジルパラ―アミノフェノール)並びにMY0600及びMY0610(トリグリシジルメタ―アミノフェノール)の商品名で入手可能である。また、トリグリシジルメタ―アミノフェノールは、住友化学株式会社(日本、大阪)からELM―120の商品名で入手可能である。
【0043】
適切な四官能性樹脂としては、N,N,N’,N’―テトラグリシジル―m―キシレンジアミン(三菱ガス化学株式会社からTetrad‐Xの名称で、及びCVC ChemicalsからErisys GA‐240として市販されている)、及び、N,N,N’,N’―テトラグリシジルメチレンジアニリン(例えば、Huntsman Advanced MaterialsからのMY0720及びMY0721)が挙げられる。他の好適な多官能性エポキシ樹脂としては、DEN438(Dow Chemicals製、ミシガン州ミッドランド)、DEN439(Dow Chemicals製)、Araldite ECN1273(Huntsman Advanced Materials製)及びAraldite ECN1299(Huntsman Advanced Materials製)が挙げられる。
【0044】
本発明の特定の実施形態では、本発明により接合可能な熱硬化性樹脂マトリックスに含まれる繊維状材料の熱硬化性樹脂マトリックスには、硬化剤が含まれてもよい。好適な硬化剤としては、既知の促進剤及び/又は硬化剤など、任意のものが使用可能である。特にエポキシ樹脂と共に使用するのに適した硬化剤としては、尿素系硬化剤があり、硬化剤のエポキシ樹脂の重量に基づき0.5~10重量%、より好ましくは1~8重量%、さらに好ましくは2~8重量%用いることが好ましい。好適な尿素系材料としては、Urone(登録商標)の商品名で入手可能な材料がある。硬化剤に加えて、潜在アミン系硬化剤などの好適な促進剤、例えば、ジシアノポリアミド(DICY)などが含まれてもよい。
【0045】
本発明の他の実施形態では、本発明により接合可能な熱硬化性樹脂マトリックスに含まれる繊維状材料の熱硬化性樹脂マトリックスは、ほぼ硬化剤フリーである。本実施形態では、超音波溶接ステップ後、例えば、熱硬化樹脂マトリックスに含まれる繊維状材料の敷設処理後又はその最中に、熱硬化樹脂マトリックスには必要に応じて硬化剤が添加されてもよい。
【0046】
本発明により接合可能な熱硬化性樹脂マトリックスに含まれる繊維状材料には、さまざまな種類の繊維、例えば、ガラス、炭素、黒鉛、ホウ素、セラミック、アラミド、ポリアミド又はポリエステル繊維、天然繊維が含まれていてもよい。好ましい繊維は、炭素及びガラス繊維である。ハイブリッド又は混合繊維系も想定され得る。破壊された(すなわち、伸長破断した)又は選択的に不連続な繊維は、本発明による製品の敷設を容易にし、成形されるその能力を改善するのに有利であり得る。一方向繊維配置が好ましいが、他の形態も使用され得る。典型的な織物形態としては、シンプルな織布、編布、綾織布、及び朱子織が挙げられる。不織布又は非捲縮繊維層の使用を想定することも可能である。
【0047】
本発明の方法において接合可能な熱硬化性樹脂マトリックスに含まれる繊維状材料の部分は、一般的に、製造時は真っ直ぐな/平らな端部を有し、本発明のいくつかの実施形態では、それらの端部に変更が加えられることなく接合が行われてもよい。一方、接合する端部のうちの一方又は両方を成形して、接合前の材料の一部を取り除くことにより、接合後の領域の厚さを減少させる場合もある。これは、比較的幅の広い材料の接合に特に有用である。よって、接合対象材料の端部のいずれか一方に対して成形を行わずに本発明の方法を実施することは、3mm~3m、例えば、3mm~35mmの幅を有する材料の接合に特に適している。
【0048】
本発明の特定の実施形態では、熱硬化性樹脂マトリックスに含まれる繊維状材料部分のうちの少なくとも一方を成形して、それらの部分を重ね合わせる前に接合する領域における材料の一部を取り除く。これは、25mm~5mの幅、より好ましくは50mm~3mの幅を有する材料の接合に特に適している。本実施形態では、熱硬化性樹脂マトリックスに含まれる繊維状材料の両方の部分を成形して、それらの部分を重ね合わせる前に接合する領域における材料の一部を取り除くことが好ましく、両方の部分の端部が嵌合又は噛合するよう成形して、接合面積を増大させ、接合部の強度及び均一性をさらに向上させることが特に好ましい。具体的には、接合対象部分のうちの少なくとも一方を城郭風又は鋸歯状パターンに成形してもよく、接合対象部分の両方を補完的な城郭風又は鋸歯状パターンに成形することが好ましく、両方の部分を補完的な鋸歯状パターンに成形することが最も好ましい。
【0049】
好適な実施形態では、熱硬化性樹脂マトリックスに含まれる繊維状材料の部分の両方を成形し、その成形された各部分から除去された材料の量が25~75%である。各部分からは同じ量の材料が除去されることがより好ましく、その材料の約50%が各端部から除去されることが最も好ましい。
【0050】
好適な実施形態では、熱硬化性樹脂マトリックスに含まれる繊維状材料の部分の両方が鋸歯状パターンに成形され、各鋸歯のベース幅が1~10mm、好ましくは3~7mmである。
【0051】
好適な実施形態では、熱硬化性樹脂マトリックスに含まれる繊維状材料の部分の両方が鋸歯状パターンに成形され、各鋸歯の高さが10~150mm、好ましくは15~100mm、より好ましくは15~75mmである。
【0052】
好適な鋸歯状パターンの例としては、ベース幅が6mmで高さが20mmのもの、ベース幅が5mmで高さが50mmのものが挙げられる。
【0053】
熱硬化性樹脂マトリックスに含まれる繊維状材料の両方の部分を補完的な鋸歯状パターンに成形した場合、それらの部分はさまざまな配置で接合されることが考えられる。例えば、一方の部分上の鋸歯の先端が他方の部分上の鋸歯の先端と一致するよう2つの部分を配置してもよい。または、一方の部分上の鋸歯の先端が他方の部分上の鋸歯間の最下位置と一致するよう2つの部分を配置してもよく、これらの極端な2つの例の間を取った任意の配置であってもよい。一般に、このように鋸歯を整列させることは、特に鋸歯のベースが比較的狭い場合には、特に重要なことではない。しかしながら、場合によっては、一方の部分上の鋸歯が他方の部分の鋸歯間の最下位置に一致するよう端部を配置することが好ましい場合もある。
【0054】
一般的に、上記部分の端部が鋸歯状パターンを有する場合に、鋸歯の高さの少なくとも50%、より好ましくは、鋸歯の高さの100%~150%が接合されるよう端部を重複させることが好ましい。
【0055】
本発明の好適な実施形態では、本発明の方法によって接合された熱硬化性樹脂マトリックスに含まれる繊維状材料の2つの部分間の接合領域は、物理的及び/又は化学的性質の点において、材料の他方の部分、すなわち、非接合部分と実質的に区別できない。その一方で、接合領域の性質を、非接合領域と比較して、少なくともいくつかの点で向上させてもよい場合もある。
【図面の簡単な説明】
【0056】
図1】本発明に係る3つの例示的な形状の接合部の構造を示す図。
図2】本発明の方法により接合される材料の城郭風の形状を有する部分を示す図。
図3】3つの配置例において本発明の方法による接合に適した材料の2つの鋸歯状部分を示す図。
図4】さらに3つの配置例において本発明の方法による接合に適した材料の2つの鋸歯状部分を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0057】
次に、以下の実施例及び図面を参照しながら本発明について説明する。
【0058】
図1に示す材料は、3つの異なる形状を有する接合部を用いて接合された複合材料の2つの狭い部分を示す。第1の接合部(S)では、複合材料の2つの部分が平らな(未成形の)端部を有し、それらを重ね合わせることで、均一の厚さを有する接合用領域が得られる。第2の接合部(P)では、複合材料の2つの部分が、三角形(鋸歯)の形状に成形された端部をそれぞれ有し、それぞれの三角形のベース同士が合うよう、すなわち、各部分の三角形状の端部が他方の部分の平坦領域上に位置するよう重ね合わされる。第3の接合部(SP)では、複合材料の2つの部分が、2つの周辺直線部分と中央の三角形(鋸歯)が形成されるよう成形された端部をそれぞれ有し、各部分の直線部分同士が合い、各部分の三角形状の端部が他方の部分の平坦領域上に位置するよう重ね合わされる。
【0059】
図2に示す材料は、52mmの幅を有する複合材料の部分を示す。この材料の一方の端部が成形されて、幅2mmの凹部によって分離された長さ10mm、幅4mmの突出部を有する城郭風の配置が形成されている。
【0060】
図3に示す材料は、ベース幅が6mmで高さが20mmの三角形を含む鋸歯状パターンに成形された端部をそれぞれ有する複合材料の2つの部分を示す。図のa)では、2つの材料部分が、第1の材料部分の山が第2の材料部分の谷に対向するよう配置され(PとV)、重複する部分がない。図のb)では、一方の部分の厚さを有する2つの領域と、両方の部分の厚さを有する中央領域とを含む2つの材料部分が結合して40mmの重複領域となるよう、第1の材料部分が第2の部分に向かって40mm前進している。図のc)では、第1の部分が第2の部分に向かって50mm進み、この場合も同様に、一方の部分の厚さを有する2つの領域と、両方の部分の厚さを有する大きめの中央領域とを含む50mmの重複領域が形成されている。例えば、第1の部分を30mmだけ第2の部分に向かって前進させることにより、より小さな重複領域を形成することも可能であり、これにより、同様に一方の部分の厚さを有する2つの領域と、両方の部分の厚さを有する小さめの中央領域とを含む30mmの重複領域が得られることが理解されよう。
【0061】
図4に示す材料は、ベース幅が6mmで高さが20mmの三角形を含む鋸歯状パターンに成形された端部をそれぞれ有する複合材料の2つの部分を示す。図のa)では、2つの材料部分が、第1の材料部分の山が第2の材料部分の山に対向するよう配置され(PとP)、重複する部分がない。図のb)では、一方の部分の厚さを有する2つの領域と、両方の部分の厚さを有する多数の中央領域とを含む2つの材料部分が結合して40mmの重複領域となるよう、第1の材料部分が第2の部分に向かって40mm前進している。図のc)では、第1の部分が第2の部分に向かって50mm進み、同様に一方の部分の厚さを有する2つの領域と、この場合では両方の部分の厚さを有する単一の大きな中央領域とを含む50mmの重複領域が形成されている。例えば、第1の部分を30mmだけ第2の部分に向かって前進させることにより、小さめの重複領域を形成することも可能であり、これにより、同様に一方の部分の厚さを有する2つの領域と、両方の部分の厚さを有する多数の中央領域と、材料が存在せず、よって厚さを有さない領域とをさらに含む30mmの重複領域が得られることが理解されよう。
【実施例1】
【0062】
超音波溶接を行なって、硬化性エポキシ樹脂を含浸した一方向炭素繊維から形成されたプリプレグ部分の接合を行なった。このプリプレグには、エポキシ樹脂M21EVを含浸したタイプAの中間弾性率炭素繊維が12k含まれ、樹脂含有量が34重量%、繊維面重量が268gmー2であった。個々の成分及びプリプレグは、Hexcel Composites Limitedより入手可能である。また、6.5mm、12.5mm、25.5mmの3つの幅を有するテープを作製した。
【0063】
以下の要素を含むテルソニック超音波ジェネレータのシリーズSG-22 2000(周波数20kHz)により超音波溶接を行なった。
MPS4コントローラを有するテルソニック超音波溶接機プレス
コンバータSE50/40 100%のジェネレータ振幅設定点で4~20kHzのアイドル頂点間振幅
1:2.2で振幅を増加させるコンバータに接続されたブースタ
チタン合金6A1 1:2で振幅を増加させるように設計されたブースタに接続された長さ270mm、幅30mmの4Vソノトロード
一定に保持された溶接パラメータは以下の通り。
ジェネレータ周波数 20kHz
ジェネレータ振幅設定点 100%
コンバータ振幅 頂点間20ミクロン
ブースタ 1:2.2で振幅を増加させる
ソノトロード 1:2で振幅を上昇させる
処理振幅 頂点間88ミクロン
ギャップ ソノトロードとアンビルとの間のギャップ、ソノトロード が超音波運動下にない間の単一の材料部分の厚さに設定される
圧力下における保持時間(超音波溶接プロセスが完了し、ソノトロードの鉛直運動停止後) 5秒間
【0064】
表1及び表2に示すように、変更されたパラメータは以下の通りである。
圧力(溶接プロセス中にソノトロードに印加された下方圧力)、超音波溶接時間、材料重複長さ、材料幅
【0065】
その結果を表1及び表2に示す。接合部分の厚さは、光学顕微鏡(キーエンスの顕微鏡、5~175倍の倍率)又はミツトヨQuantuMikeマイクロメータにより、接合部の断面か接合部の側面で(その元の幅に低下させた後に)計測された。
【0066】
2つのプリプレグ片の接合中に、繊維の広がり、すなわち、繊維と樹脂の一部が移動し、その結果、接合部に幅の広い部分が生じた。この増大した幅をナイフにより手動で切断して、幅をその元の幅(すなわち、6.5mm、1.5mm又は25.5mm)まで戻した。
【0067】
【表1】
【0068】
【表2】
【0069】
表1及び表2に示す結果から、ほぼすべての場合で非接合部分の平均厚さのプラスマイナス50%の範囲内の接合厚さが得られたこと、そして、多くの場合でプラスマイナス20%の接合厚さが、プラスマイナス5%と低いものまで得られたことが分かる。それに対し、従来の方法で、例えば、機械クランプ装置を65度で最大2分間動作させることにより同じ材料を接合すると、非接合部分の平均厚さの約200%の接合厚さとなることが予想される。
【実施例2】
【0070】
実施例1で用いたプリプレグ材料の部分ではあるが、6.35mm、12.7mm、25.4mmの幅に切断した材料部分を実施例1で設定したのと同様の設備を用いて接合を行なった。固定溶接パラメータは実施例1で用いたものと同じで、接合重複部、印加圧力、溶接時間を表3に示すように変化させた。接合材料の引張強度について、400N負荷セルを備えたInstronテスト装置を用いてテストした。サンプルを機械ウェッジグリップで保ち、室温で2mm/分の速度でテストを行った。接合部は、周囲温度(約22度)で壊れた。その結果を表3に示す。
【0071】
【表3】
【0072】
表3に示す結果から、本発明に係る方法で製造された接合部は、実質的に永久接合部であり、いずれも接合されたプリプレグの通常の取り扱いに十分耐えられる強度を有していたことが分かる。
【実施例3】
【0073】
実施例1で用いたプリプレグ材料の部分であって、12.7mmの幅に切断した材料部分を実施例1で設定したのと同様の設備を用いて接合を行なった。固定溶接パラメータは実施例1で用いたものと同じで、接合重複部を10mm、印加圧力を1バール、溶接時間を1秒とした。Mettler Toledo DSC(10度/分の温度上昇率で-50度から350度のランパラメータ)で行ったDSCにより接合領域での樹脂の化学的性質を調査して、限局性硬化や時効について調べ、サブアンビエントTgの測定も行った。2つの接合部のテストが重複して行われ、非溶接材料(標準1)の隣接領域との比較が行われた。その結果を表4に示す。
【0074】
【表4】
【0075】
表4の結果から、本発明の方法によって材料の接合を行なっても、サブアンビエントTgやケース限局性硬化又は時効には大きな変化がなかったことが分かる。
【実施例4】
【0076】
実施例1で用いた材料に対応し、いずれも12.7mmの幅を有するプリプレグを用いてさらなる接合部を作成した。これらの接合部は、実施例1で示した装置及び設定パラメータを用いて形成された。重複部は10mmに固定し、溶接時間は0.5秒に固定し、1バールの圧力が使用された(一つのサンプル“S2”については、圧力の効果を示すために0.75バールで接合が行われた)。
【0077】
前実施例で示した方法により、接合部の厚さをマイクロメータで測定し、引張強度を400N負荷セルを備えたInstron装置で測定した。
【0078】
図1に示すように、3つの異なる接合部の形状、すなわち、直線状(S)、鋸歯状(P)、直線鋸歯状(SP)の形状についてテストが行われた。
【0079】
その結果を表5及び表6に示す。
【0080】
【表5】
【0081】
【表6】
【0082】
表5及び表6に示す結果から、ほぼすべての場合で非接合部分の平均厚さのプラスマイナス10%の範囲内の接合厚さが得られたこと、そして、ほとんどの場合でプラスマイナス5%の接合厚さが得られたことが分かる。また、表5及び表6の結果からは、本発明に係る方法で製造された接合部は、ほとんどの場合で、実質的に永久接合部であり、いずれも接合されたプリプレグの通常の取り扱いに十分耐えられる強度を有していたことも分かる。
【実施例5】
【0083】
本実施例では、250mmの幅を有するプリプレグ部分の接合を行なった。このプリプレグ材料は、実施例1で使用したプリプレグ材料と同じものである。
【0084】
繊維及び樹脂の広がりを可能にするため、両方の接合対象部分の端部でパターンを切断した。このパターンとしては、図2に示すように、重複する材料の約33%を取り除く城郭風パターンを使用した。こうして切断することで生成された脚部は10mmの長さと4mmの幅を有し、各脚部間のギャップは2mmであった。この材料の切断は、Zund自動カッタにより行われた。
【0085】
もう一つ全く同じパターンのプリプレグを用いて上記4mm幅の脚部を上下に重ね合わせ、上記2mmのギャップをそのプリプレグが広がるスペースとし、重ね合わせ部分に対して超音波溶接を行なって、実施例1で説明した超音波溶接プレスにより永久接合部を作成した。
【0086】
重複部が10mm、使用した圧力が2バール、溶接時間は1秒間であった。
【0087】
キーエンス顕微鏡(倍率5~175倍)により接合部の断面で測定した平均厚さは、420ミクロンであった。
【0088】
単層の無処理領域での測定では、平均が300ミクロンであった。
【0089】
接合部での厚さ増加は、約40%であった。
【0090】
その後、マスターテープの全体にわたってサンプルが切り抜かれ、スリットテープ製品と同様のサンプルの引張強度をテストした。
【0091】
6mm幅のストリップの平均引張強度は30Nであった。すなわち、実質的に永久接合部が形成された。
【実施例6】
【0092】
実施例1で説明したプリプレグ材料のサンプルを12.7mmの幅に切断し、実施例1で説明した設備を用いて接合を行なった。固定溶接パラメータは実施例1で示したものと同じで、接合重複部、印加圧力、溶接時間を表7に示すように変化させた。前実施例で説明した方法により、接合領域の接合厚さ、接合強度、サブアンビエントTgを測定し、その結果を非溶接材料の隣接領域(参照1)についての結果と比較した。その結果を表7に示す。
【0093】
【表7】
【0094】
表7の結果から、本発明の方法によれば、接合部領域の材料の化学的性質を大きく変化させることなく(サブアンビエントTgをわずか0.3度~1.12度しか変化させず)、個別の未接合材料の厚さに極めて近い厚さを有する非常に強固な接合部、すなわち、未接合領域と厚さがほんのわずかしか違わない(すなわち、厚さが2.1%から6.2%大きな)接合領域を提供することができる。
【実施例7】
【0095】
実施例1で説明した材料と同じ成分を含み、繊維面重量を194g/mー2に軽減したサンプルを6.35mmの幅に切断し、実施例1で説明した設備を用いて接合を行なった。固定溶接パラメータは実施例1で示したものと同じで、接合重複部、印加圧力、溶接時間を表8に示すように変化させた。前実施例で説明した方法により、接合領域の接合厚さ、接合強度、サブアンビエントTgを測定し、その結果を非溶接材料の隣接領域(参照2)についての結果と比較した。その結果を表8に示す。
【0096】
【表8】
【0097】
表8の結果から、本発明の方法によれば、接合部領域の材料の化学的性質を大きく変化させることなく(1.3度~1.77度しか変化させず)、個別の未接合材料の厚さに極めて近い厚さを有する非常に強固な接合部、すなわち、未接合領域と厚さがほんのわずかしか違わない接合領域(すなわち、未接合領域の厚さの88.4%~97.6%)を提供することができる。
【実施例8】
【0098】
実施例1で説明した材料と同じ成分を含み、繊維面重量を194g/mー2に軽減したサンプルを150mmの幅で作成した。各材料の端部が、直線状(S)の端部を有する場合も、ベース幅6mm、高さ20mmの三角形を含む鋸歯状パターンに形成される場合もある。各材料の部分をさまざまな重複長さを有する対応する形状の材料部分に重ね合わせた。鋸歯状パターンの材料については、図3に示すような山谷構成(PとV)や、図4に示すような山山構成(PとP)といった2つの異なる構成が用いられた。固定パラメータは同じで、その他のパラメータを、圧力2バール、超音波溶接時間2秒間、表9に示すような材料重複長さ、材料幅150mm、表9に示すような接合パターンに変化させて、実施例1と同様に接合を行なった。また、ソノトロード に対して各サイクル毎に接合対象材料を移動させて、溶接サイクルを複数回(表9に示すように、2、3回)行なって、重複領域プラス重ね合わせ領域の両側5~10mmの範囲のすべてに確実に溶接が行われるようにした。
【0099】
このように溶接を行なった後、接合領域の厚さをマイクロメータで測定し、接合材料を6.35mm幅のテープにスリット加工を行った。
【0100】
これらのスリット材料における接合部の強度を、400N負荷セル(最大350Nの負荷測定可能)を備えたTexture AnalyzerのTA XTplusモデル(Stable Micro systemsから入手可能)により測定した。この負荷テストは、約8度で2mm/分で行われた。その結果を表9に示す。
【0101】
【表9】
【0102】
表9の結果から、本発明の方法により幅の広い材料部分を接合することができ、重複領域の長さが長くても、接合部の厚さは、ほとんどの場合で、非接合部分の平均厚さのプラスマイナス50%の範囲内であり、接合対象部分の端部を成形することにより、平均厚さのプラスマイナス20%未満の厚さが得られる場合があることが分かる。この接合材料にはスリット加工を施して幅の狭いテープを形成してもよく、それでもそれらの幅の狭いテープにおける接合部は、300Nあるいは350Nを超える強度を有することができる。
図1
図2
図3a)】
図3b)】
図3c)】
図4a)】
図4b)】
図4c)】