(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-14
(45)【発行日】2022-01-25
(54)【発明の名称】大型スクリーン洗浄装置
(51)【国際特許分類】
B08B 1/04 20060101AFI20220118BHJP
【FI】
B08B1/04
(21)【出願番号】P 2019028418
(22)【出願日】2019-02-20
【審査請求日】2020-09-16
(73)【特許権者】
【識別番号】599041606
【氏名又は名称】三菱電機プラントエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100195006
【氏名又は名称】加藤 勇蔵
(72)【発明者】
【氏名】金田 訓明
(72)【発明者】
【氏名】川口 宗久
【審査官】新井 浩士
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-000367(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106000953(CN,A)
【文献】登録実用新案第3214600(JP,U)
【文献】特開2010-207655(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B08B 1/04
A47L 11/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画面を有する大型スクリーンの上方及び下方に各々設けられ、前記大型スクリーンの幅方向に延びる一対のレールと、
前記一対のレールの間に架け渡され、前記一対のレールに沿って前記大型スクリーンの前記幅方向に移動可能なラダーと、
前記ラダーに沿って上下方向に移動可能であるとともに、前記ラダーと共に前記大型スクリーンの前記幅方向に移動可能な洗浄ユニットとを備え、
前記洗浄ユニットは
、
前記大型スクリーンの前記画面を洗浄するブラシ部
と、
前記洗浄ユニットと前記大型スクリーンの前記画面との距離を検知する距離検知部と、
前記大型スクリーンに対する前記洗浄ユニットの位置を調整する位置調整部と、
前記大型スクリーンの前記幅方向の端部を検知する端部検知部と
を有し、
前記ブラシ部は、正逆回転可能な1つの洗浄ブラシを用いて構成され、
前記洗浄ブラシの回転方向は、前記大型スクリーンの前記幅方向に前記ラダー及び前記洗浄ユニットが移動するときの移動方向に応じて
異なり、
前記距離検知部は、前記洗浄ユニットの幅方向の一端側と他端側に配置された一対の距離検知ユニットを有し、
前記位置調整部は、前記一対の距離検知ユニットの検知結果に基づいて、洗浄作業中の前記洗浄ユニットと前記大型スクリーンの前記画面との前記距離を一定に保つように、前記洗浄ユニットの位置を調整し、
前記ラダーは、
前記一対のレールのうち、上側のレールに沿って移動する上側移動部と、
前記一対のレールのうち、下側のレールに沿って移動する下側移動部と
を有し、
前記端部検知部は、前記洗浄ユニットの幅方向の一端側と他端側に配置された一対の端部検知センサを有し、
前記端部検知センサは、前記大型スクリーンの前記画面に接触していた前記距離検知ユニットが前記大型スクリーンの前記画面から外れたときに、前記距離検知ユニットの移動を検知する、大型スクリーン洗浄装置。
【請求項2】
前記洗浄ユニットは、
前記洗浄ユニットの各部の動作を制御する制御部と、
前記大型スクリーンの前記画面に水を噴射する散水ノズルとを備え、
前記制御部は、前記大型スクリーンの前記幅方向に前記洗浄ユニットを移動させる場合に、前記一対の端部検知センサ
が前記大型スクリーンの端部を検知したときに、前記散水ノズルからの水の噴射を停止する、請求項
1に記載の大型スクリーン洗浄装置。
【請求項3】
前記ラダーは、前記大型スクリーンの前記幅方向に往復移動し、前記往復移動における前記ラダーの移動方向に応じて前記洗浄ブラシの回転方向が
異なる、請求項1~
2のいずれか一項に記載の大型スクリーン洗浄装置。
【請求項4】
前記洗浄ユニットは、
前記洗浄ユニットの各部の動作を制御する制御部と、
前記大型スクリーンの前記画面に空気を吹き付ける1つのブローノズルとを備え、
前記制御部は、前記ラダーの往復移動における往路及び復路のうち、前記ラダーが前記復路を移動する場合のみ前記ブローノズルから空気を吹き付けるように制御する、請求項
3に記載の大型スクリーン洗浄装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、屋外に設置される大型スクリーンを洗浄するための大型スクリーン洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
競馬場や屋外競技場に設置される大型スクリーンは、土埃などの汚れが付着しやすく、画面の輝度の低下を防ぐために定期的な洗浄が必要となる。従来は、作業員が高所作業車に乗ってモップ等で大型スクリーンの画面を手作業で拭いて汚れを落としていた。また、高所作業車が入るスペースがない場所では、大型スクリーンの上から吊るしたゴンドラやロープブランコに作業員が乗って洗浄作業を行っていた。
【0003】
また、手作業で清掃作業を行わない場合は、スクリーン(表示部)を有する表示装置に特許文献1に示すような洗浄ユニットを設け、洗浄ユニットを移動させながらスクリーンの表示部を洗浄することも行われていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のように手作業で洗浄を行う場合は大幅な作業時間がかかってしまうという問題があった。また、作業員が高所で作業する必要があるため、安全性にも問題がある。
【0006】
さらに、大型スクリーンに、特許文献1に記載されるような洗浄ユニットを直接設けようとする場合、大型スクリーン自体の構造を既設のものから新しいものに変更しなければならないため、コストがかかりすぎてしまうという問題がある。
【0007】
この発明は、このような問題を解決するためになされ、安全かつ効率よく既設の大型スクリーンの洗浄を行うことができる大型スクリーン洗浄装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る大型スクリーン洗浄装置は、画面を有する大型スクリーンの上方及び下方に各々設けられ、大型スクリーンの幅方向に延びる一対のレールと、一対のレールの間に架け渡され、一対のレールに沿って大型スクリーンの幅方向に移動可能なラダーと、ラダーに沿って上下方向に移動可能であるとともに、ラダーと共に大型スクリーンの幅方向に移動可能な洗浄ユニットとを備え、洗浄ユニットは、大型スクリーンの画面を洗浄するブラシ部と、洗浄ユニットと大型スクリーンの画面との距離を検知する距離検知部と、大型スクリーンに対する洗浄ユニットの位置を調整する位置調整部と、大型スクリーンの幅方向の端部を検知する端部検知部とを有し、ブラシ部は、正逆回転可能な1つの洗浄ブラシを用いて構成され、洗浄ブラシの回転方向は、大型スクリーンの幅方向にラダー及び洗浄ユニットが移動するときの移動方向に応じて異なり、距離検知部は、洗浄ユニットの幅方向の一端側と他端側に配置された一対の距離検知ユニットを有し、位置調整部は、一対の距離検知ユニットの検知結果に基づいて、洗浄作業中の洗浄ユニットと大型スクリーンの画面との距離を一定に保つように、洗浄ユニットの位置を調整し、ラダーは、一対のレールのうち、上側のレールに沿って移動する上側移動部と、一対のレールのうち、下側のレールに沿って移動する下側移動部とを有し、端部検知部は、洗浄ユニットの幅方向の一端側と他端側に配置され、大型スクリーンの端部を検知する一対の端部検知センサを有し、端部検知センサは、大型スクリーンの画面に接触していた距離検知ユニットが大型スクリーンの画面から外れたときに、距離検知ユニットの移動を検知するものである。
【0009】
本発明に係る大型スクリーン洗浄装置において、洗浄ユニットは、洗浄ユニットと大型スクリーンの画面との距離を検知する距離検知部と、大型スクリーンに対する洗浄ユニットの位置を調整する位置調整部とを有し、距離検知部は、洗浄ユニットの幅方向の一端側と他端側に配置された一対の距離検知ユニットを有し、位置調整部は、一対の距離検知ユニットの検知結果に基づいて、洗浄作業中の洗浄ユニットと大型スクリーンの画面との距離を一定に保つように、洗浄ユニットの位置を調整するものであってもよい。
【0010】
本発明に係る大型スクリーン洗浄装置において、ラダーは、一対のレールのうち、上側のレールに沿って移動する上側移動部と、一対のレールのうち、下側のレールに沿って移動する下側移動部とを備え、洗浄ユニットは、大型スクリーンの幅方向の端部を検知する端部検知部と、端部検知部は、洗浄ユニットの幅方向の一端側と他端側に配置された一対の端部検知センサを有するものであってもよい。
【0011】
本発明に係る大型スクリーン洗浄装置において、洗浄ユニットは、洗浄ユニットの各部の動作を制御する制御部と、大型スクリーンの画面に水を噴射する散水ノズルとを備え、制御部は、大型スクリーンの幅方向に洗浄ユニットを移動させる場合に、一対の端部検知センサの検知結果に基づいて、散水ノズルによる水の噴射を制御するものであってもよい。
【0012】
本発明に係る大型スクリーン洗浄装置において、ラダーは、大型スクリーンの幅方向に往復移動し、往復移動におけるラダーの移動方向に応じて洗浄ブラシの回転方向が反転されるものであってもよい。
【0013】
本発明に係る大型スクリーン洗浄装置において、洗浄ユニットは、洗浄ユニットの各部の動作を制御する制御部と、大型スクリーンの画面に空気を吹き付ける1つのブローノズルとを備え、制御部は、ラダーの往復移動における往路及び復路のうち、ラダーが復路を移動する場合のみブローノズルから空気を吹き付けるように制御するものであってもよい。
【発明の効果】
【0014】
この発明に係る大型スクリーン洗浄装置によれば、安全かつ効率よく既設の大型スクリーンの洗浄を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】この発明の実施の形態に係る大型スクリーン洗浄装置の全体構造を示す正面図である。
【
図2】
図1に示す大型スクリーン洗浄装置の全体構造を示す側面図である。
【
図3】
図3は、
図1に示す大型スクリーン洗浄装置の洗浄ユニットを示す上面図である。
【
図6】
図1に示す大型スクリーン洗浄装置が洗浄する大型スクリーンの画面表面の形状を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、この発明の実施の形態について添付図面に基づいて説明する。
図1及び
図2に示すように、大型スクリーン洗浄装置100は、大型スクリーン1を挟んで上下に設けられる一対のレール2と、一対のレール2の間に架け渡されるラダー10とを有する。一対のレール2は、大型スクリーン1の上方に設けられる上側レール2aと、大型スクリーン1の下方に設けられる下側レール2bとを有する。上側レール2a及び下側レール2bは、各々、大型スクリーン1の幅方向Wに沿って延在している。
なお、この実施の形態において大型スクリーン1は、高さ約12m、幅約50mの画面1aを有している。
【0017】
ラダー10は、上側レール2aに係合する上側移動部11と、下側レール2bに係合する下側移動部12とを有する。上側移動部11及び下側移動部12は、各々、上側レール2a又は下側レール2bに係合するローラ(図示せず)を有している。また、
図2に示すように、上側移動部11及び下側移動部12は、各々、ローラを駆動させるモータ11a,12aを有する。すなわち、モータ11a,12aがローラを回転駆動させることにより、上側移動部11及び下側移動部12は、各々、上側レール2a又は下側レール2bに沿って移動することができる。なお、基本的に、上側移動部11及び下側移動部12が同じ方向にほぼ同じ速度で移動することにより、ラダー10は大型スクリーン1の幅方向Wに移動することができる。
【0018】
また、ラダー10は上下方向Hに延びる一対のラダーレール14を有する。一対のラダーレール14の間には洗浄ユニット20が取り付けられている。洗浄ユニット20はラダー10に対して着脱可能である。また、洗浄ユニット20はラダーレール14に沿って上下方向Hに移動可能である。ラダー10の下部には巻上機31が設けられている。巻上機31にはワイヤ32の一部が巻き付けられており、ワイヤ32はラダー10の上部に設けられた滑車33に架け渡されるとともに、一端が洗浄ユニット20に接続される。巻上機31は、ワイヤ32の繰り出し、または、ワイヤ32の巻き取りにより、洗浄ユニット20をラダー10に沿って上下方向Hに移動させるものである。ラダー10には、傾きセンサ15が取り付けられている。傾きセンサ15は、垂直軸に対するラダー10の傾きを検知するものである。洗浄ユニット20には制御盤5が取り付けられている。制御盤5は、大型スクリーン洗浄装置100の動作を統括的に制御する制御部を構成するものである。制御盤5には、洗浄ユニット20が備える各種の検知部(後述)の検知結果が取り込まれる。制御盤5は、ラダー10の移動や洗浄ユニット20の移動、さらには洗浄ユニット20の各部の動作を制御する。制御盤5は、制御プログラムに基づいて種々の制御処理を行う制御システムを備えている。制御盤5の制御システムは、モータ11a,12a及び傾きセンサ15に電気的に接続されている。上側移動部11及び下側移動部12の移動は、制御盤5の制御システムによって制御される。
【0019】
また、
図3~
図5に示すように、洗浄ユニット20は外側をケース28で被覆されている。ケース28には、洗浄ブラシ21と、散水ノズル22と、ブローノズル23とが設けられている。洗浄ブラシ21、散水ノズル22及びブローノズル23は、大型スクリーン1の画面1a側、すなわち洗浄ユニット20の洗浄面20aに配置される。洗浄ブラシ21は、上下方向Hに長く延在している。洗浄ブラシ21は、洗浄ユニット20に対して着脱可能となっている。洗浄ブラシ21は、図示しないブラシ毛(図示せず)を有する。洗浄ブラシ21のブラシ毛は、本出願人が先に出願した特願2017-149075号公報に記載の洗浄ブラシ21のブラシ毛(21a)と同様に螺旋形状に形成されていることが好ましい。洗浄ブラシ21は回転可能に設けられている。洗浄ブラシ21の回転軸は、上下方向Hと平行な軸となっている。また、洗浄ブラシ21は、上記の回転軸を中心に時計回り方向及び反時計回り方向の両方向に回転可能に設けられている。すなわち、洗浄ブラシ21は正逆回転可能となっている。洗浄ユニット20には洗浄ブラシ21が1つだけ設けられ、大型スクリーン1の画面1aを拭くブラシ部は、この洗浄ブラシ21を用いて構成されている。洗浄ブラシ21の回転は、制御盤5の制御システムによって制御される。
【0020】
図3に示すように、散水ノズル22は、洗浄ユニット20の幅方向において、洗浄ブラシ21の両側に1つずつ設けられている。洗浄ユニット20の幅方向は、大型スクリーン1の幅方向Wと同じ方向である。散水ノズル22の噴射口(図示せず)は、上下方向Hの洗浄ブラシ21の長さ寸法に応じて、上下方向Hに所定の間隔で複数設けられている。散水ノズル22は、大型スクリーン1の画面1aに水を噴射するものである。散水ノズル22による水の噴射は制御盤5の制御システムによって制御される。ブローノズル23は、洗浄ユニット20の幅方向の中心線をあいだに挟んで、洗浄ブラシ21と反対側に配置されている。ブローノズル23は、上下方向Hの洗浄ブラシ21の長さ寸法に応じて、上下方向Hに長く延在している。ブローノズル23は大型スクリーン1の画面1aに空気を吹き付けるものである。ブローノズル23による空気の吹き付けは制御盤5の制御システムによって制御される。また、洗浄ユニット20には給水ホース26及びケーブル27が接続される。
図1に示すように、給水ホース26は、台車8に載せられたタンク9に接続される。洗浄作業時には、タンク9は清掃用給水栓6に接続される。また、洗浄作業時には、ケーブル27は清掃用電源7に接続される。
【0021】
また、
図4に示すように、洗浄ユニット20には、ブラシモータ51と、散水ポンプ52と、ブロア53とが設けられている。ブラシモータ51は、洗浄ブラシ21を回転させるための駆動源である。散水ポンプ52は、散水ノズル22に向けて所定の水圧で水を送り込むものである。給水ホース26は、この散水ポンプ52に接続される。ブロア53は、ブローノズル23に向けて所定の風圧で空気を送り込むものである。制御盤5の制御システムは、洗浄ブラシ21の回転をブラシモータ51を介して制御する。また、制御盤5の制御システムは、散水ノズル22による水の噴射を散水ポンプ52を介して制御するとともに、ブローノズル23による空気の吹き付けをブロア53を介して制御する。
【0022】
また、
図3及び
図5に示すように、洗浄ユニット20の洗浄面20aの下側には一対の距離検知ローラ24が取り付けられている。距離検知ローラ24は、洗浄ユニット20の幅方向の一端側と他端側に1ずつ配置され、これによって一対の距離検知ローラ24が構成されている。各々の距離検知ローラ24は、たとえばゴムローラによって構成されるもので、
図4に示すように前後方向Fに移動可能に設けられている。また、各々の距離検知ローラ24は、スプリング(図示せず)によって大型スクリーン1の画面1aに押し付けられるように付勢される。ここで、洗浄ユニット20には、一対の距離検知ローラ24に対応して一対の位置検知センサ(図示せず)が設けられている。位置検知センサは、前後方向Fに移動可能な距離検知ローラ24の位置を検知するものである。一対の距離検知ローラ24及び一対の位置検知センサは、一対の距離検知ユニットを構成するものである。また、一対の距離検知ユニットは、洗浄ユニット20と大型スクリーン1の画面1aとの間の距離を検知する距離検知部を構成するものである。具体的には、洗浄ユニット20の洗浄面20aが大型スクリーン1の画面1aに近づくと、距離検知ローラ24は、破線24aに示すように、洗浄ユニット20の内側に押し込められるように移動する。また、洗浄ユニット20の洗浄面20aが大型スクリーン1の画面1aから離れると、距離検知ローラ24は、破線24bに示すように、洗浄面20aから突出した状態で大型スクリーン1の画面1aから離間する。したがって、各々の距離検知ローラ24の位置を、それぞれに対応する位置検知センサで検知することにより、洗浄ユニット20の洗浄面20aと大型スクリーン1の画面1aとの距離を検知することができる。また、一対の距離検知ローラ24及び一対の位置検知センサによって一対の距離検知ユニットを構成することにより、洗浄ユニット20の洗浄面20aと大型スクリーン1の画面1aとの距離だけでなく、洗浄面20aと画面1aとの傾きを検知することもできる。
【0023】
また、
図3に示すように、洗浄ユニット20には、一対の距離検知ローラ24に対応して一対の端部検知センサ61が設けられている。端部検知センサ61は洗浄ユニット20の幅方向の一端側と他端側に1つずつ配置され、これによって一対の端部検知センサ61が構成されている。端部検知センサ61は、たとえば、距離検知ローラ24の前後方向Fの移動を利用して、大型スクリーン1の端部を検知するものである。具体的には、端部検知センサ61は、洗浄ユニット20が大型スクリーン1の幅方向Wに移動中に距離検知ローラ24が大型スクリーン1の端部から外れて破線24bの位置へと移動することにより、大型スクリーン1の端部を検知する。なお、本実施の形態においては、距離検知ローラ24の前後方向Fの移動を利用して、大型スクリーン1の端部を検知する構成を採用しているが、本発明はこれに限らない。たとえば、端部検知センサ61に可動式の接触子(図示せず)を設け、この接触子の移動を利用して大型スクリーン1の端部を検知する構成を採用してもよい。
【0024】
また、
図3~
図5に示すように、洗浄ユニット20の両側部には、各々、2個ずつの位置調整ローラ25が設けられる。
図5に示すように、位置調整ローラ25は揺動軸Jを中心に揺動可能に設けられている。また、
図3および
図4に示すように、位置調整ローラ25は、ラダー10のラダーレール14に係合している。このため、揺動軸Jを中心に位置調整ローラ25が揺動すると、洗浄ユニット20の位置は、位置調整ローラ25の揺動方向及び揺動量に応じて前後方向Fに変化する。位置調整ローラ25は、洗浄ユニット20に搭載される位置調整モータ(図示せず)の駆動にしたがって揺動する。したがって、位置調整モータの駆動を制御盤5の制御システムが制御して、各々の位置調整ローラ25を揺動させることにより、大型スクリーン1に対する洗浄ユニット20の位置を調整することができる。その際、制御盤5の制御システムは、一対の距離検知ユニットの検知結果に基づいて位置調整モータの駆動を制御することにより、洗浄ユニット20の位置を次のように調整する。すなわち、
図5に示すように、洗浄作業中は、洗浄ブラシ21が適度な圧力で画面1aに接触し、この状態で洗浄ユニット20と画面1aとの距離を一定に保つように、洗浄ユニット20の位置を調整する。一方、洗浄ユニット20がラダー10に沿って上昇移動または下降移動している時は、画面1aが洗浄ユニット20に対して二点鎖線1a’に示す位置に離間した状態になるように、洗浄ユニット20の位置を調整する。さらに、
図5において、洗浄ユニット20には、接触防止スイッチ55が設けられている。接触防止スイッチ55は、
図5に示す方向から見て、大型スクリーン1の画面1aに対し洗浄ユニット20が傾いた場合に、この傾きに起因して洗浄面20aが画面1aに接触しないよう、画面1aに対する洗浄面20aの異常接近を検知するセンサである。画面1aに対する洗浄面20aの異常接近を接触防止スイッチ55が検知した場合は、位置調整ローラ25の揺動によって洗浄面20aが画面1aから離される。
なお、位置調整ローラ25及び位置調整モータは、位置調整部を構成するものである。
【0025】
次に、大型スクリーン洗浄装置100による大型スクリーン1の洗浄方法について説明する。大型スクリーン1の画面1aを洗浄する場合、大型スクリーン洗浄装置100の動作は、洗浄ユニット20の各部の動作を含めて、制御盤5の制御システムによって制御される。
まず、洗浄作業の準備として、上側レール2aと下側レール2bとの間にラダー10を掛け渡して取り付けるとともに、大型スクリーン1の幅方向Wにおいてラダー10を左右いずれか一方の端、大型スクリーン1の右端に配置する。また、ラダー10に洗浄ユニット20を取り付けた状態で、巻上機31によりワイヤ32を巻き上げることにより、洗浄ユニット20を大型スクリーン1の上端付近まで上昇させる。
【0026】
次に、洗浄ユニット20による大型スクリーン1の洗浄作業を開始する。この洗浄作業は、大型スクリーン1の画面1aに付着した汚れを取り除くために行われる作業である。この洗浄作業において、ラダー10及び洗浄ユニット20は、上側移動部11又は下側移動部12の移動動作により、大型スクリーン1の幅方向Wに往復移動する。本実施の形態のように、洗浄作業の開始時にラダー10を大型スクリーン1の右端に配置した場合、往復移動における往路の移動は、ラダー10及び洗浄ユニット20が左方向Lに移動する場合に相当し、往復移動における復路の移動は、ラダー10及び洗浄ユニット20が右方向Rに移動する場合に相当する。なお、洗浄ユニット20はラダー10と一緒に大型スクリーン1の幅方向Wに移動するため、大型スクリーン1の幅方向Wにおける洗浄ユニット20の移動と、大型スクリーン1の幅方向Wにおけるラダー10の移動とは同義である。洗浄作業において、洗浄ユニット20は、上下方向Hの同じ位置に保持されたまま、大型スクリーン1の幅方向Wに1回往復移動する。また、洗浄ユニット20は、1回の往復移動を終えるたびに所定量だけ下降し、そこで再び大型スクリーン1の幅方向Wに1回往復移動する。このような動作が繰り返されることにより、大型スクリーン1の画面1aが満遍なく洗浄される。以下、洗浄作業中の各部の動作についてさらに詳しく説明する。
【0027】
まず、清掃用給水栓6からタンク9に供給される水は、給水ホース26を通して散水ポンプ52に供給され、この散水ポンプ52の駆動によって各々の散水ノズル22から大型スクリーン1の画面1aに噴射される。また、洗浄作業においては、洗浄ブラシ21のブラシ毛が大型スクリーン1の画面1aに接触し、この状態で洗浄ブラシ21がブラシモータ51の駆動にしたがって回転する。これにより、大型スクリーン1の画面1aが洗浄ブラシ21によって洗浄され、画面1aの汚れが落とされる。洗浄ユニット20はこのような洗浄作業を行いながら、ラダー10と共に
図1の左方向Lに移動していく。そして、洗浄ユニット20が大型スクリーン1の左端側の移動終端に到達すると、ラダー10及び洗浄ユニット20の移動が一旦停止する。なお、洗浄ユニット20が左方向Lに移動する場合は、大型スクリーン1の画面1aに対してブローノズル23から空気は吹き付けられない。
【0028】
洗浄ユニット20による洗浄作業中において、一対の距離検知ローラ24は、いずれも大型スクリーン1の画面1aに接触した状態にある。そして、一対の距離検知ローラ24の位置によって、洗浄ユニット20が大型スクリーン1の画面1aに対して離れ過ぎている、又は、近づきすぎていると判断される場合は、位置調整ローラ25の揺動によって洗浄ユニット20の位置が調整される。これにより、洗浄ユニット20と大型スクリーン1の画面1aとの距離が一定に保持される。
【0029】
また、ラダー10及び洗浄ユニット20が大型スクリーン1の幅方向Wに移動しているときに、ラダー10が垂直軸に対して傾いていることを傾きセンサ15が検知すると、制御盤5の制御システムがラダー10の傾斜をなくすように上側移動部11又は下側移動部12の移動速度を適宜変更する。これにより、ラダー10は移動中においても垂直に維持される。また、ラダー10の移動に合わせて、作業員Pは、タンク9が搭載された台車8を適宜移動させる。なお、タンク9は、台車8に載せずに、ラダー10の下部に直接取り付けられていてもよい。
【0030】
また、洗浄ユニット20がラダー10と共に左方向Lに移動する場合、洗浄ユニット20が移動方向Lの移動終端近くまで移動すると、一対の端部検知センサ61が大型スクリーン1の左端を順に検知する。このとき、制御盤5の制御システムは、一対の端部検知センサ61の検知結果に基づいて、上側移動部11及び下側移動部12の移動を停止させる。上側移動部11及び下側移動部12の移動を停止させる場合は、一対の端部検知センサ61のいずれの検知結果を参照してもよい。たとえば、制御盤5の制御システムは、移動方向Lの下流側(
図3の左側)の端部検知センサ61が大型スクリーン1の左端を検知すると、この検知タイミングから第1の時間が経過した時点で上側移動部11及び下側移動部12の移動を停止する。また、制御盤5の制御システムは、移動方向Lの上流側(
図3の右側)の端部検知センサ61が大型スクリーン1の左端を検知すると、この検知タイミングから第1の時間よりも短い第2の時間が経過した時点で上側移動部11及び下側移動部12の移動を停止する。これにより、洗浄ユニット20は、移動方向Lの移動終端に停止する。この停止状態では、大型スクリーン1の幅方向Wにおいて洗浄ユニット20の一部またはほぼ全部が、大型スクリーン1の左端から外れた状態になる。また、制御盤5の制御システムは、洗浄ユニット20の移動方向Lの下流側に位置する端部検知センサ61が大型スクリーン1の左端を検知すると、この検知タイミングとほぼ同時に、散水ノズル22からの水の噴射を停止させる。これにより、散水ノズル22による水の噴射位置が大型スクリーン1から外れる前に、散水ノズル22からの水の噴射を停止させることができる。このため、散水ノズル22から噴射する水が大型スクリーン1を外れて周囲に飛散することを抑制することができる。
【0031】
その後、洗浄ユニット20の位置は位置調整ローラ25の揺動によって大型スクリーン1の画面1aから離れるように調整される。これにより、洗浄ブラシ21が大型スクリーン1の画面1aから離れる。次に、制御盤50の制御システムは、ラダー10及び洗浄ユニット20の移動方向を左方向Lから右方向Rに切り替えるとともに、この移動方向の切り替えにともなって洗浄ブラシ21の回転方向を反転させる。これにより、洗浄ユニット20はラダー10と共に右方向Rに移動を開始する。また、ラダー10を大型スクリーン1の幅方向Wに往復移動させる場合、この往復移動におけるラダー10の移動方向に応じて洗浄ブラシ21の回転方向が反転されるため、洗浄ブラシ21は、往路を移動するときは反対方向に回転する。
【0032】
このように洗浄ユニット20が右方向Rに移動を開始し、その移動方向Rの上流側(
図3の左側)に位置する端部検知センサ61が大型スクリーン1の左端を検知すると、制御盤5の制御システムは、散水ノズル22からの水の噴射を再開する。また、洗浄ユニット20が右方向Rに移動する場合は、ブローノズル23の送風口23aから大型スクリーン1の画面1aに空気が吹き付けられる。これにより、大型スクリーン1の画面1aから余分な水分が吹き飛ばされる。その後、洗浄ユニット20が移動方向Rの移動終端近くまで移動すると、一対の端部検知センサ61が大型スクリーン1の右端を順に検知する。これにより、制御盤5の制御システムは、上記同様の原理で、洗浄ユニット20を移動方向Rの移動終端に停止させると共に、散水ノズル22からの水の噴射を停止させる。
【0033】
このように、洗浄ユニット20が大型スクリーン1の幅方向Wに1回往復移動すると、位置調整ローラ25の揺動によって洗浄ユニット20の位置が大型スクリーン1の画面1aから離れるように調整される。次に、巻上機31から所定の長さだけワイヤ32を繰り出すことにより、洗浄ユニット20を所定量だけ下降させる。これにより、大型スクリーン1の洗浄対象領域が、洗浄済み領域の下に設定される。次に、位置調整ローラ25の揺動によって洗浄ユニット20の位置が大型スクリーン1の画面1aに近づくように調整される。これにより、洗浄ブラシ21のブラシ毛が大型スクリーン1の画面1aに接触可能に配置される。また、一対の距離検知ローラ24も大型スクリーン1の画面1aに接触可能に配置される。以後、同様の動作が繰り返されることにより、大型スクリーン1の画面1aは満遍なく洗浄される。
【0034】
なお、大型スクリーン1の幅方向Wにおけるラダー10の移動及び上下方向Hにおける洗浄ユニット20の移動は基本的に自動で行われるが、特に汚れの著しい箇所がある場合は、作業者の手動操作によってラダー10及び洗浄ユニット20を所望の場所に移動させ集中的に洗浄を行うこともできる。
また、大型スクリーン1の洗浄作業を行わない時は、ラダー10は大型スクリーン1の横又は裏側のスペースに載置されるものとする。
【0035】
以上より、この実施の形態1に係る大型スクリーン洗浄装置100では、大型スクリーン1の上方及び下方に各々設けられる上側レール2a及び下側レール2bの間にラダー10が移動可能に架け渡され、ラダー10には上下移動可能な洗浄ユニット20が設けられる。これにより、既設の大型スクリーン1を洗浄ユニット20で機械的に洗浄することが可能となる。また、手作業の洗浄作業が不要となるため、洗浄にかかる作業時間が短縮される。また、作業員が高所で洗浄を行うこともなくなるため、安全性が向上する。また、洗浄作業に当たり高所作業車が不要になるため、作業費及び車両費に係るコストを削減することもできる。さらに、この実施の形態1に係る大型スクリーン洗浄装置100では、正逆回転可能な1つの洗浄ブラシ21を洗浄ユニット20に設け、大型スクリーン1の幅方向Wにラダー10が移動するときの移動方向に応じて洗浄ブラシ21の回転方向を反転する構成を採用している。このため、大型スクリーン1の幅方向Wにラダー10及び洗浄ユニット20を往復移動させて洗浄作業を実施する場合、往路と復路でラダー10の移動方向が異なっても、洗浄ユニット20の移動方向と洗浄ブラシ21の回転方向との関係を一定に保つことができる。よって、ラダー10の移動方向の違いによる洗浄ムラの発生を抑制することができる。また、洗浄ブラシ21の個数が必要最小限の1個で済むため、洗浄ユニット20全体の質量を軽量化することができる。さらに、洗浄ブラシ21の個数にあわせてブローノズル23も1個で済むため、洗浄ユニット20のさらなる軽量化を図ることができる。また、回転する洗浄ブラシ21のブラシ毛を大型スクリーン1の画面1aに接触させると、洗浄ブラシ21のブラシ毛が一方向に倒れるため、洗浄ブラシ21を常に一方向に回転させると、ブラシ毛が一方向に倒れた状態で癖付けされ、これにともなう洗浄効果の低下によって洗浄ブラシ21の寿命が短くなってしまう。これに対し、本実施の形態1のように洗浄ブラシ21を正逆回転可能に設け、ラダー10の移動方向に応じて洗浄ブラシ21の回転方向を反転させれば、ラダー10が左方向Lに移動する場合と右方向Rに移動する場合で、洗浄ブラシ21のブラシ毛の倒れる方向が反対になる。このため、洗浄ブラシ21のブラシ毛が癖付けされにくくなる。よって、洗浄ブラシ21の寿命を延ばすことができる。
【0036】
また、大型スクリーン1の画面1aは、
図6に示すように多数のLED1bと、各々のLEDに設けられる庇1cとを有しているため、凹凸が多い。そのため、画面1aの凹凸の間に汚れが溜まりやすくなっている。ここで、大型スクリーン洗浄装置100の洗浄ユニット20に設けられた洗浄ブラシ21は正逆回転可能であるため、多方向から画面1aを擦ることができる。したがって、複数のLED1bからなる画面1aを有する大型スクリーン1であっても、よりに確実に汚れを落とすことができる。
【0037】
また、洗浄ユニット20は、洗浄ユニット20と大型スクリーン1の画面1aとの距離を検知する一対の距離検知ローラ24と、大型スクリーン1に対する洗浄ユニット20の位置を調整する位置調整ローラ25とを有する。そのため、洗浄ユニット20と大型スクリーン1の画面1aとの距離が常に一定に保持される。したがって、画面1aの汚れの落ち具合にムラができることが防止される。また、洗浄ユニット20の幅方向の一端側と他端側とにそれぞれ1つずつ距離検知ローラ24を配置しているため、洗浄ユニット20と大型スクリーン1の画面1aとの距離だけでなく、洗浄ユニット20の洗浄面20aと大型スクリーン1の画面1aとの傾きを検知することができる。このため、洗浄ユニット20の洗浄面20aと大型スクリーン1の画面1aとの傾きに起因して、洗浄面20aが画面1aに接触するおそれがある場合は、画面1aから洗浄面20aが離れるよう、一対の距離検知ローラ24の検知結果を基に位置調整ローラ25を揺動させることにより、洗浄面20aと画面1aとの接触を避けることができる。
【0038】
また、洗浄ユニット20は、大型スクリーン1の幅方向Wの端部を検知する一対の端部検知センサ61を備えている。このため、制御盤5の制御システムでは、一対の端部検知センサ61の検知結果に基づいて、上側移動部11及び下側移動部12の移動動作と洗浄ブラシ21の回転動作とを制御することができる。これにより、大型スクリーン1の幅方向Wにラダー10と共に洗浄ユニット20を移動させる場合に、大型スクリーン1の端部で所望の位置に洗浄ユニット20を精度良く停止させることができる。また、本実施の形態においては、洗浄ユニット20の幅方向の一端側と他端側に一対の端部検知センサ61を配置した構成を採用している。このため、大型スクリーン1の幅方向Wで洗浄ユニット20を左方向L及び右方向Rのどちらに移動させる場合でも、大型スクリーン1の端部から洗浄ユニット20が大きく外れる前に、いずれか一方の端部検知センサ61で大型スクリーン1の端部を検知することができる。したがって、一対の端部検知センサ61の検知結果に基づいて、散水ノズル22による水の噴射を制御することにより、洗浄ユニット20を左方向L及び右方向Rのどちらに移動させる場合でも、散水ノズル22による水の噴射タイミングを適切に制御することができる。その結果、散水ノズル22から噴射される水が大型スクリーン1から外れて周囲に飛散する状況を避けることができる。
【0039】
また、ラダー10の移動中に傾きセンサ15がラダー10の傾斜を検知すると、制御盤5は上側移動部11又は下側移動部12の移動速度を変更し、ラダー10の傾斜を修正して、ラダー10を垂直な状態に保つ。これにより、高さのあるラダー10を移動させる場合も、ラダー10を傾かせることなく、より確実に洗浄作業を行うことができる。
【符号の説明】
【0040】
1 大型スクリーン、1a 画面、2 レール、2a 上側レール、2b 下側レール、5 制御盤(制御部)、10 ラダー、11 上側移動部、12 下側移動部、20 洗浄ユニット、21 洗浄ブラシ(ブラシ部)、24 距離検知ローラ(距離検知部)、25 位置調整ローラ(位置調整部)、61 端部検知センサ、100 大型スクリーン洗浄装置、H 上下方向、W 幅方向。