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特許7009419コンクリート構造体の製造方法および保護シート
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  • 特許-コンクリート構造体の製造方法および保護シート 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-14
(45)【発行日】2022-01-25
(54)【発明の名称】コンクリート構造体の製造方法および保護シート
(51)【国際特許分類】
   E02B 5/02 20060101AFI20220118BHJP
   E04B 2/84 20060101ALI20220118BHJP
   E04B 1/62 20060101ALI20220118BHJP
   E04B 1/64 20060101ALI20220118BHJP
   E03B 11/00 20060101ALI20220118BHJP
   E03F 5/10 20060101ALI20220118BHJP
   E03F 3/04 20060101ALI20220118BHJP
   E03F 7/00 20060101ALI20220118BHJP
   B28B 1/16 20060101ALI20220118BHJP
【FI】
E02B5/02 U
E04B2/84 F
E04B2/84 A
E04B1/62 Z
E04B1/64 Z
E03B11/00 Z
E03F5/10 Z
E03F3/04 Z
E03F7/00
B28B1/16
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019106093
(22)【出願日】2019-06-06
(65)【公開番号】P2020200591
(43)【公開日】2020-12-17
【審査請求日】2020-03-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000207562
【氏名又は名称】タキロンシーアイシビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】井手元 静也
(72)【発明者】
【氏名】時吉 充亮
【審査官】柿原 巧弥
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-200518(JP,A)
【文献】特開2005-335218(JP,A)
【文献】実開平05-042391(JP,U)
【文献】特開2013-241782(JP,A)
【文献】特開平11-324104(JP,A)
【文献】特開平09-131798(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 5/02
E04B 2/84
E04B 1/62
E04B 1/64
E03B 11/00
E03F 5/10
E03F 3/04
E03F 7/00
B28B 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の面に複数のスタッドを有し、かつ、熱可塑性樹脂で成形された保護シートを、型枠に、前記スタッドをコンクリートが打設される空間に向けて仮止めする仮止め工程と、
前記保護シートが仮止めされた前記型枠内に前記コンクリートを打設する打設工程と、
前記コンクリートの打設後、前記型枠を除去する除去工程と、
互いに隣接する前記保護シートの継ぎ目を溶接する溶接工程と、
前記継ぎ目における溶接欠陥を検査する検査工程とを備え、
前記溶接工程では、前記継ぎ目あって前記保護シートの前記スタッドが設けられた面側に金属線を配置した状態で溶接し、
前記検査工程では、スパーク試験を行う
コンクリート構造体の製造方法。
【請求項2】
前記金属線は、前記型枠に対して前記保護シートが仮止めされた状態であって、かつ、前記コンクリートが打設される前に、前記保護シートの継ぎ目に仮止めされる
請求項1に記載のコンクリート構造体の製造方法。
【請求項3】
前記保護シートは、隣接する前記保護シートとの継ぎ目を構成する第1縁部と第2縁部のうちの少なくとも一方の縁部に前記金属線が配置されたシートである
請求項1に記載のコンクリート構造体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海岸部に施工されるコンクリートの表面に熱可塑性樹脂製の保護シートが一体的に配置されたコンクリート構造体の製造方法および保護シートに関する。
【背景技術】
【0002】
海岸部の発電所等で既設または新設される3面水路などのコンクリート構造体は、塩害によるコンクリートの腐食、ひび割れ、内部の鉄筋腐食などが問題となっており、定期的なメンテナンスが行われている。
【0003】
また、コンクリート部の表面には、コンクリートの保護のため、特許文献1に示すようなアンカーパネルが設けられることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特表2003-512200号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
アンカーパネルといった保護シートは、一定幅を有した長尺のシート体であって、所定長に切断されて、コンクリート部の表面に並べて配設することができる。互いに隣り合う保護シートの端部同士は、溶接によって接合されるところ、継ぎ目に溶接不良があると、その部分から浸食が始まり、内部の鉄筋腐食などの問題を発生させるおそれがある。
【0006】
本発明は、以上のような課題に鑑みてなされたものであり、保護シートの継ぎ目における溶接の信頼性向上を可能としたコンクリート構造体の製造方法および保護シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するためのコンクリート構造体の製造方法は、一方の面に複数のスタッドを有し、かつ、熱可塑性樹脂で成形された保護シートを、型枠に、前記スタッドをコンクリートが打設される空間に向けて仮止めする仮止め工程と、前記保護シートが仮止めされた前記型枠内に前記コンクリートを打設する打設工程と、前記コンクリートの打設後、前記型枠を除去する除去工程と、互いに隣接する前記保護シートの継ぎ目を溶接する溶接工程と、前記継ぎ目における溶接欠陥を検査する検査工程とを備え、前記溶接工程では、前記継ぎ目に金属線を配置した状態で溶接し、前記検査工程では、スパーク試験を行う。
【0008】
上記構成によれば、保護シートの継ぎ目に金属線が配置された状態で溶接されているので、スパーク試験による検査工程を行うことができる。したがって、保護シートの継ぎ目における溶接の信頼性を向上させることができる。溶接工程に次いで検査工程を行うことで、製造工程の効率化を実現できる。
【0009】
上記コンクリート構造体の製造方法において、前記金属線は、前記保護シートの前記スタッドが設けられた面側に配置されるようにしてもよい。上記構成によれば、スパーク試験によって溶接欠陥を高い確度で検査することができる。
【0010】
上記コンクリート構造体の製造方法において、前記金属線は、前記型枠に対して前記保護シートが仮止めされた状態であって、かつ、前記コンクリートが打設される前に、前記保護シートの継ぎ目に仮止めされるようにしてもよい。上記構成によれば、スパーク試験に必要な金属線を容易に型枠とは反対側のスタッドが設けられた面側に容易に配置することができる。
【0011】
上記コンクリート構造体の製造方法において、前記保護シートは、隣接する前記保護シートとの継ぎ目を構成する第1縁部と第2縁部のうちの少なくとも一方の縁部に前記金属線が配置されたシートとしてもよい。上記構成によれば、金属線を施工現場で継ぎ目に配置する作業を省略することができる。
【0012】
上記課題を解決するための保護シートは、コンクリート構造体の表面に一体的に配置される熱可塑性樹脂製の保護シートであって、一方の面に複数のスタッドを備え、隣接する前記保護シートの縁部と突き合わされて継ぎ目を構成する第1縁部と第2縁部のうちの少なくとも一方の縁部であって前記一方の面に付着された、スパーク試験に使用する金属線を備え、前記第1側縁部と前記第2側縁部であって前記一方の面とは反対側の他方の面側には、突き合わされる相手方の縁部とで開先を構成するテーパ部を備える。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、保護シートの継ぎ目における溶接の信頼性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】(a)は、コンクリート構造物の斜視図、(b)は、コンクリート構造物の断面構造を示す斜視図。
図2】保護シートの斜視図。
図3】(a)は、保護シートの平面図、(b)は、(a)のA-A断面図、(c)は、(a)のB-B断面図、(d)は、(b)のB部の拡大図。
図4】コンクリート構造物の製造工程を示す工程図。
図5】(a)は、型枠に保護シートを仮止めした状態の断面図、(b)は、金属線を保護シートの継ぎ目に配置した状態の断面図、(c)は、コンクリートを打設した状態の断面図、(d)は、型枠を除去した状態の断面図、(e)は、保護シートの継ぎ目部分の拡大断面図。
図6】溶接部分の検査工程を示す図。
図7】保護シートの変形例を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明が適用されたコンクリート構造物について図面を参照して説明する。
図1(a)および(b)に示すように、コンクリート構造物1は、例えば、原子力発電所、火力発電所、水力発電所などの発電所における貯水槽である。また、海岸部に設置される3面水路、浸出水集排水コンクリートピット、浸出水調整水槽、廃液貯蔵施設、調整池、水路、排水管の埋め込み部などである。
【0016】
このようなコンクリート構造物1は、コンクリート部2と、コンクリート部2の表面に設けられる保護シート3とを備えている。保護シート3は、熱可塑性樹脂シートであって、耐薬品性、耐摩耗性、耐塩素水性を有するシート材である。一例として、保護シート3は、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、超高分子量ポリエチレンなどのシート材である。なお、保護シート3の材料には、保護シート3の使用に必要な顔料、酸化防止剤、安定剤などの添加剤などを含んでいてもよいし、カップリング材が含まれていてもよい。このような保護シート3は、長尺なシートであって、隣接する保護シート3との継ぎ目8が溶接によって接合されている。保護シート3は、複数のスタッド5を一方の面に備え、スタッド5がコンクリート部2に埋め込まれることで、コンクリート部2と一体化されている。
【0017】
図2および図3(a)~(d)に示すように、保護シート3は、シート基材4と、シート基材4の一方の面に成形された複数のスタッド5とを備えている。各スタッド5は、高さ方向に、シート基材4の側から順に、基部5aと、基部5aに対して細いくびれ部5bと、くびれ部5bに対して張り出したフランジ部5cとを備えた突起部である。このようなスタッド5は、くびれ部5bやフランジ部5cによってコンクリート部2に対する抜け止めがされ、コンクリート部2に対するアンカー部となる。すなわち、保護シート3は、熱可塑性樹脂であるため、コンクリート部2に対して接着されにくいが、スタッド5がコンクリート部2に埋め込まれることによって一体化される。また、シート基材4の他方の面は、型枠21に対して対向面となり、平坦面で構成されている。
【0018】
一例として、シート基材4の厚さTは、2mm~10mmであって、好ましくは2mmである。スタッド5のシート基材4からの高さHsは、7mm~11mmであって、好ましくは9mmである。基部5aの直径Dbは、9mm~13mmであって、好ましくは11mmである。フランジ部5cの直径Dfは、5mm~9mmであって、好ましくは7mmである。
【0019】
X方向に一列に延びるスタッド5の列は、スタッド5が一定のピッチPxで設けられている。また、特定のX方向のスタッド5の列に対してY方向に隣接するスタッド5の列は、半ピッチずれている。一例として、ピッチPxは、50mm~60mmであって、好ましくは55mmである。また、Y方向に一列に延びるスタッド5の列は、一定のピッチPyで設けられている。また、特定のY方向のスタッド5の列にX方向において隣接するスタッド5の列は、半ピッチずれている。一例として、ピッチPyは、23mm~33mmであって、好ましくは28mmである。ピッチPxとピッチPyの関係は、Px≠Pyであり、ここでは、一例としてPx>Pyである。
【0020】
保護シート3は、一定幅のシート材であって、長尺のシート材が巻回体として提供され、巻回体から引き出されたシート材を、施工現場や工場で所定長に切断して使用される。コンクリート部2の表面には、所定幅の保護シート3が隙間なく並設される。一例として、保護シート3の幅は、2.4m~3.4mであって、好ましくは2.9mである。また、巻回された保護シート3の全長は、50m~90mであって、好ましくは70mである。
【0021】
次に、コンクリート構造物1の製造方法について図4を参照して説明する。
コンクリート構造物1は、型枠設置工程11と、保護シート3の仮止め工程12と、金属線配置工程13と、コンクリート打設工程14と、型枠除去工程15と、保護シート3の溶接工程16と、溶接の検査工程17と、溶接箇所の欠陥を補修する欠陥補修工程18とを備えている。
【0022】
図5(a)に示すように、型枠設置工程11では、コンクリート構造物1を設ける箇所であって、コンクリートを打設する部分に型枠21が設置される。型枠21は、木製型枠であってもよいし、鋼製型枠であってもよい。鋼製型枠の場合は、木製型枠に対して強度があり、耐久性に優れるため、次工程での保護シート3を精度よく仮止めすることができる。木製型枠の場合、加工が容易で安価となる。
【0023】
その後、仮止め工程12では、型枠21に対して保護シート3を仮止めする。具体的に、保護シート3は、コンクリート2aが打設される側にスタッド5が向くように型枠21に対して仮止めされる。仮止めの方法としては、保護シート3を型枠に対して両面テープや接着剤で貼り付けるようにしてもよいし、ビスや鋲で係止するようにしてもよい。
【0024】
保護シート3は、シート基材4の巻き出し方向に延びる第1縁部4aおよび第2縁部4bを備えている。第1縁部4aおよび第2縁部4bは、溶接の際の開先6を構成するテーパ部4xが設けられている(図5(e)参照)。第1の保護シート3を仮止めした後、第1の保護シート3に隣接するように第2の保護シート3を配置する。この際、第1の保護シート3の第2縁部4bに対して第2の保護シート3の第1縁部4aを突き合わせる。この際、第1の保護シート3の第2縁部4bと第2の保護シート3の第1縁部4aとは、当接していてもよいし、溶接で埋められる程度に若干離間していてもよい。
【0025】
次いで、図5(b)に示すように、金属線配置工程13では、スタッド5側の面であって、第1の保護シート3の第2縁部4bと第2の保護シート3の第1縁部4aとの突き合わせ部分に金属線22を配置する。金属線22は、溶接の欠陥の有無を検査するスパーク試験で使用するものである。金属線22は、いわゆるピアノ線であって、一例として、0.1mm~0.6mmの太さを有している。金属線22は、突き合わせ部分の長さに対応した長さを有している。そして、金属線22は、突き合わせ部分に途切れなく延在された状態で仮止めされる。具体的には、保護シート3のスタッド5が設けられた側の面に仮止めされる。一例として、金属線22も、第1縁部4aおよび/または第2縁部4bに対して、両面テープや接着剤で貼り付けられたり、ビスや鋲で係止される。
【0026】
図5(c)に示すように、コンクリート打設工程14では、保護シート3が仮止めされた型枠21の内側には、鉄筋などが配置された後、コンクリート2aが打設される。具体的に、型枠21内にコンクリート2aが打ち込まれ、次いで、型枠21の隅々までコンクリート2aが充填されるように締固めされ、次いで、均し作業などを行ってコンクリート2aの仕上げが行われる。コンクリートの養生期間は、一例として5日以上である。
【0027】
図5(d)に示すように、型枠除去工程15では、型枠21が除去される。型枠21が除去されると、仮止め状態の保護シート3が型枠21から外れ、コンクリート部2の表面には、保護シート3が残される。保護シート3は、スタッド5がコンクリート部2に埋め込まれることによって一体化されている。
【0028】
図5(e)に示すように、溶接工程16では、互いに隣接する保護シート3の第1縁部4aおよび第2縁部4bが突き合わされた継ぎ目8の溶接が行われる。具体的には、溶接を行う互いに隣接する保護シート3の開先6と溶加材の先端とを熱風により加熱し、溶融させた溶加材を開先6に押し付けることによって樹脂を溶接するホットジェット溶接や熱風溶接が行われる。なお、溶接の方法は、その他のプラスチック溶接を利用してもよい。ここで、溶加材は、保護シート3と同じ材料のものを使用することが好ましい。溶接は、100Vの商用電源で動作可能な溶接機で行われる。
【0029】
保護シート3の第1縁部4aおよび第2縁部4bは、開先6を構成するためのテーパ部4xが形成されている。金属線22は、第1縁部4aの先鋭の先端と第2縁部4bの先鋭の先端とが当接しているときには、開先6を構成する溝底部の裏側、スタッド5を備える面4yの側に配置され、若干離間しているときには、第2縁部4bの先鋭の先端との間に配置されている。溶接すると、第1縁部4aと第2縁部4bとの継ぎ目8には、開先6を埋めるように、溶加材や縁部4a,4bが溶融することで溶接ビード7が形成される。この際、金属線22も樹脂によって被覆される。
【0030】
図6に示すように、溶接の検査工程17では、溶接欠陥24の有無を検査する。検査工程17では、高圧高周波のスパーク試験が行われる。スパーク試験では、高電圧テスター端子部材23からのスパーク放電を保護シート3の溶接表面に走査する。そして、溶接欠陥24が存在しない正常のときは、紫色の散乱波を確認することができ、溶接欠陥24が存在する異常のときは、白色の放電を確認することができる。このように、色の違いによって、直ちに、溶接欠陥24の有無を確認することができる。
【0031】
欠陥補修工程18は、溶接欠陥24が検出されたときに行われる。溶接欠陥24が発見されたときには、直ちに、欠陥補修の溶接が行われる。
以上のようなコンクリート構造物1は、以下のように列挙する効果を得ることができる。
【0032】
(1)保護シート3の継ぎ目8は、金属線22が配置された状態で溶接されている。したがって、溶接工程16の後直ちに継ぎ目8の溶接検査として、スパーク試験を行うことができる。これにより、保護シート3の継ぎ目8における溶接の信頼性を向上させることができる。
【0033】
(2)検査工程17で溶接欠陥24が発見されたときには、直ぐに欠陥補修工程18を行うことができる。これにより、工事期間の短縮や効率化を実現できる。
(3)継ぎ目8に金属線22を仮止めしてから、コンクリート2aを打設し、互いに隣り合う保護シート3の溶接を行う。このような工程を経ることで、スパーク試験に必要な金属線22を継ぎ目8に容易に配置することができる。
【0034】
(4)金属線22は、型枠21とは反対側の面に配置される。したがって、型枠21を除去して隣り合う保護シートを溶接接合した後に、スパーク試験において、スパーク放電を継ぎ目8に照射して溶接欠陥24の有無を高い確度で確認することができる。
【0035】
(5)金属線22は、型枠21に対して保護シート3が仮止めされた状態であって、かつ、コンクリート2aが打設される前に、第1縁部4aと第2縁部4bとの継ぎ目8に仮止めされる。これにより、スパーク試験に必要な金属線22を容易に保護シート3の型枠21とは反対側の面に容易に配置することができる。
【0036】
(6)保護シート3は、熱可塑性樹脂であるため、コンクリート部2に対して接着されにくいが、スタッド5がコンクリート部2に埋め込まれることによって一体化される。したがって、コンクリート部2が温度変化によって膨張や伸縮することがあっても、保護シート3は、熱可塑性樹脂の弾性によって、コンクリート部2の膨張や伸縮に追従することができる。すなわち、コンクリート部2から保護シート3が剥がれることを抑えることができる。
【0037】
(7)保護シート3は、熱可塑性樹脂で形成されているので、FRPやコンクリートと比べても海水などによる耐腐食性に優れたものとなる。また、海洋における生物付着を少なくすることができ、長期供用が可能となる。
【0038】
なお、以上のようなコンクリート構造物1は、さらに、以下のように適宜変更して実施することもできる。
・金属線22は、開先6の底部に配置されてもよい。すなわち、金属線22は、保護シート3の厚さ方向中央よりもスタッド5側の面側に偏った位置であって、できるだけスタッド5側の面に近接した位置に配置されていることが好ましい。
【0039】
図7に示すように、保護シート3は、シート基材4の第1縁部4aおよび第2縁部4bに開先6を構成するためテーパ部4xが設けられている。第1縁部4aおよび第2縁部4bのテーパ部4xは、スタッド5が設けられた面4yとは反対側の面4z側に設けられている。そして、シート基材4の第1縁部4aに金属線22を備えている。金属線22は、スタッド5が設けられた面4y側に付着されている。具体的には、金属線22は、スタッド5が設けられた面4y側の第1縁部4aに対して、両面テープや接着剤で貼り付けられたり、ビスや鋲で係止される。例えば、金属線22は、保護シート3に対して例えば工場で付着される。
【0040】
保護シート3は、金属線22が配置された状態で型枠21に対して仮止めされる。したがって、このような保護シート3を使用したときには、施工現場で金属線22を第1縁部4aと第2縁部4bとの継ぎ目8に配置する作業を省略することができる。
【0041】
・金属線22を配置する順番は、コンクリート2aの打設後であってもよい。この場合、コンクリート2aを打ち込んでから固化するまでの間に、金属線22を、スタッド5が設けられた面4y側の継ぎ目8に配置する。すなわち、金属線22は、固化する前のコンクリートに挿し込まれる。
【0042】
・また、金属線22は、型枠21の内面に配置するようにしてもよい。この場合、金属線22は、型枠21の内面であって、保護シート3の継ぎ目8となる位置に、支持部材を用いて仮止めされる。この際、金属線22は、スタッド5が設けられた面4y側に位置するように支持部材に支持される。または、開先6の底部に位置するように支持部材に支持される。この後、型枠21には、保護シート3が仮止めされる。これにより、金属線22は、スタッド5が設けられた面4y側の継ぎ目8に位置することになる。この後、コンクリート2aが打設されることになる。
【符号の説明】
【0043】
1…コンクリート構造物、2…コンクリート部、2a…コンクリート、3…保護シート、4…シート基材、4a…第1縁部、4b…第2縁部、4x…テーパ部、4y…面、4z…面、5…スタッド、5a…基部、5b…くびれ部、5c…フランジ部、6…開先、7…溶接ビード、8…継ぎ目、11…型枠設置工程、12…仮止め工程、13…金属線配置工程、14…コンクリート打設工程、15…型枠除去工程、16…溶接工程、17…検査工程、18…欠陥補修工程、21…型枠、22…金属線、23…高電圧テスター端子、24…溶接欠陥。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7