(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-14
(45)【発行日】2022-01-25
(54)【発明の名称】外用剤組成物、及び外用剤
(51)【国際特許分類】
A61F 7/02 20060101AFI20220118BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20220118BHJP
A61K 47/30 20060101ALI20220118BHJP
A61K 47/10 20060101ALI20220118BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20220118BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20220118BHJP
A61K 9/70 20060101ALI20220118BHJP
A61K 31/60 20060101ALI20220118BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20220118BHJP
A61K 31/192 20060101ALI20220118BHJP
A61K 31/196 20060101ALI20220118BHJP
【FI】
A61F7/02 D
A61K47/02
A61K47/30
A61K47/10
A61K47/32
A61K47/38
A61K9/70 401
A61K31/60
A61P29/00
A61K31/192
A61K31/196
(21)【出願番号】P 2019502954
(86)(22)【出願日】2018-02-23
(86)【国際出願番号】 JP2018006643
(87)【国際公開番号】W WO2018159478
(87)【国際公開日】2018-09-07
【審査請求日】2020-09-17
(31)【優先権主張番号】P 2017038132
(32)【優先日】2017-03-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006769
【氏名又は名称】ライオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【氏名又は名称】廣田 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100107733
【氏名又は名称】流 良広
(74)【代理人】
【識別番号】100115347
【氏名又は名称】松田 奈緒子
(72)【発明者】
【氏名】石川 聡之
【審査官】佐藤 智弥
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-210509(JP,A)
【文献】特開2002-263130(JP,A)
【文献】特開平7-59808(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)無水塩化マグネシウム、
(B)カルボキシル基、水酸基、及び酢酸基の少なくともいずれかを有するポリマー、
(C)水溶性アルミニウム塩、並びに
(D)多価アルコール
、
を含有
し、水の含有量が1質量%以下であることを特徴とする外用剤組成物。
【請求項2】
前記(B)成分が、ポリアクリル酸、架橋型ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、メタクリル酸/アクリル酸共重合体、メタクリル酸/アクリル酸ブチル共重合体、メタクリル酸/アクリル酸2-エチルヘキシル共重合体、メタクリル酸シクロヘキシル/アクリル酸共重合体、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、及びこれらの塩からなる群より選択される1種以上である請求項1に記載の外用剤組成物。
【請求項3】
前記(C)成分が、硫酸アルミニウムカリウムである請求項1から2のいずれかに記載の外用剤組成物。
【請求項4】
前記(D)成分が、ポリアルキレングリコール、及びグリセリンの少なくともいずれかである請求項1から3のいずれかに記載の外用剤組成物。
【請求項5】
前記(B)成分の含有量
(質量%)と前記(C)成分の含有量
(質量%)との質量比(B/C)が、1~15である請求項1から4のいずれかに記載の外用剤組成物。
【請求項6】
前記(B)成分の含有量(質量%)と前記(D)成分の含有量(質量%)との質量比(B/D)が、0.1~2である請求項1から5のいずれかに記載の外用剤組成物。
【請求項7】
(E)薬効成分を更に含有する請求項1から6のいずれかに記載の外用剤組成物。
【請求項8】
前記(E)成分が、サリチル酸エステル、フェルビナク、ジクロフェナクナトリウム、及びロキソプロフェンナトリウムからなる群より選択される1種以上である請求項7に記載の外用剤組成物。
【請求項9】
基材と、
前記基材上に、請求項1から8のいずれかに記載の外用剤組成物と、
包材と、を含み、
前記基材、及び前記外用剤組成物が前記包材で密封されてなることを特徴とする外用剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外用剤組成物、及び外用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、粘着層の貼付面と反対側に発熱層を有する温熱シートが知られている(例えば、特許文献1参照)。また、粘着層自体が発熱性を有する温熱貼付剤として、無機塩と大気中の水分との水和反応による発熱を利用した温熱貼付剤が知られている(例えば、特許文献2及び3参照)。
【0003】
しかしながら、前記温熱貼付剤では、水和反応のメカニズムにより、発熱時に吸収される水分が無機塩の水溶液となって粘着層となるゲル中に蓄積されていくため、皮膚のべたつきが生じ、粘着力が低下するという問題があった。したがって、皮膚のべたつきが抑制され、粘着力の持続性が向上した外用剤組成物の提供が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-192253号公報
【文献】特開2003-210509号公報
【文献】特開2015-151394号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、温熱を付与でき、皮膚のべたつきが抑制され、粘着力の持続性が向上した外用剤組成物、及び外用剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> (A)無水塩化マグネシウム、
(B)カルボキシル基、水酸基、及び酢酸基の少なくともいずれかを有するポリマー、
(C)水溶性アルミニウム塩、並びに
(D)多価アルコールを含有することを特徴とする外用剤組成物である。
<2> 前記(B)成分が、ポリアクリル酸、架橋型ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、メタクリル酸/アクリル酸共重合体、メタクリル酸/アクリル酸ブチル共重合体、メタクリル酸/アクリル酸2-エチルヘキシル共重合体、メタクリル酸シクロヘキシル/アクリル酸共重合体、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、及びこれらの塩からなる群より選択される1種以上である前記<1>に記載の外用剤組成物である。
<3> 前記(C)成分が、硫酸アルミニウムカリウムである前記<1>から<2>のいずれかに記載の外用剤組成物である。
<4> 前記(D)成分が、ポリアルキレングリコール、及びグリセリンの少なくともいずれかである前記<1>から<3>のいずれかに記載の外用剤組成物である。
<5> 前記(B)成分の含有量と前記(C)成分の含有量との質量比(B/C)が、1~15である前記<1>から<4>のいずれかに記載の外用剤組成物である。
<6> (E)薬効成分を更に含有する前記<1>から<5>のいずれかに記載の外用剤組成物である。
<7> 前記(E)成分が、サリチル酸エステル、フェルビナク、ジクロフェナクナトリウム、及びロキソプロフェンナトリウムからなる群より選択される1種以上である前記<6>に記載の外用剤組成物である。
<8> 基材と、
前記基材上に、前記<1>から<7>のいずれかに記載の外用剤組成物と、
包材と、を含み、
前記基材、及び前記外用剤組成物が前記包材で密封されてなることを特徴とする外用剤である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によると、従来における前記諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、温熱を付与でき、皮膚のべたつきが抑制され、粘着力の持続性が向上した外用剤組成物、及び外用剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(外用剤組成物)
本発明の外用剤組成物は、(A)無水塩化マグネシウム、(B)カルボキシル基、水酸基、及び酢酸基の少なくともいずれかを有するポリマー、(C)水溶性アルミニウム塩、及び(D)多価アルコールを含有し、水を実質的に含有しないことが好ましく、(E)薬効成分を更に含有することが好ましく、更に必要に応じてその他の成分を含有する。
【0009】
<(A)無水塩化マグネシウム>
前記(A)成分の無水塩化マグネシウムは、大気中の水分や皮膚から放出される水分により潮解し、発熱する化合物であり、温熱を付与するために含有される。
【0010】
前記(A)成分の含有量としては、前記外用剤組成物全量に対して、5質量%~20質量%が好ましく、7質量%~15質量%がより好ましい。前記含有量が5質量%以上であると、温熱の付与が良好であり、20質量%以下であると、皮膚のべたつきのなさが良好である。
【0011】
<(B)カルボキシル基、水酸基、及び酢酸基の少なくともいずれかを有するポリマー>
前記(B)成分のカルボキシル基、水酸基、及び酢酸基の少なくともいずれかを有するポリマーは、金属イオンにより金属塩架橋するポリマーであり、粘着力、及びその持続性を付与するために含有される。
【0012】
前記(B)成分のカルボキシル基、水酸基、及び酢酸基の少なくともいずれかを有するポリマーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリエチレン骨格を有するポリマー[(B1)成分]、セルロース誘導体[(B2)成分]などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。粘着層の保形性の点で、前記(B1)成分と、前記(B2)成分とを併用することが好ましい。
前記(B1)成分のポリエチレン骨格を有するポリマーとしては、例えば、ポリアクリル酸、架橋型ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、メタクリル酸/アクリル酸共重合体、メタクリル酸/アクリル酸ブチル共重合体、メタクリル酸/アクリル酸2-エチルヘキシル共重合体、メタクリル酸シクロヘキシル/アクリル酸共重合体等のカルボキシル基を有するポリマー;ポリビニルアルコール等の水酸基及び/又は酢酸基を有するポリマー;これらの塩などが挙げられる。これらの中でも、ポリアクリル酸、架橋型ポリアクリル酸、ポリビニルアルコールが好ましい。
前記(B2)成分のセルロース誘導体としては、例えば、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、カルボキシメチルエチルセルロース等のカルボキシル基を有するポリマー;これらの塩などが挙げられる。これらの中でも、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルエチルセルロースが好ましい。
【0013】
前記(B)成分のカルボキシル基、水酸基、及び酢酸基の少なくともいずれかを有するポリマーの重量平均分子量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、粘着層の保形性の点から、10,000~10,000,000が好ましく、50,000~5,000,000がより好ましい。
【0014】
前記(B)成分の含有量としては、前記外用剤組成物全量に対して、10質量%~50質量%が好ましく、15質量%~35質量%がより好ましい。前記含有量が、10質量%以上であると、粘着力、及びその持続性が良好であり、50質量%以下であると、外用剤組成物の保形性が良好となる。
【0015】
前記(B1)成分のポリエチレン骨格を有するポリマーの含有量としては、前記外用剤組成物全量に対して、5質量%~35質量%が好ましく、7質量%~15質量%がより好ましい。前記含有量が、5質量%以上であると、粘着力、及びその持続性が良好であり、25質量%以下であると、外用剤組成物の保形性が良好となる。
【0016】
前記(B2)成分のセルロース誘導体の含有量としては、前記外用剤組成物全量に対して、5質量%~15質量%が好ましく、8質量%~12質量%がより好ましい。前記含有量が、5質量%以上であると、外用剤組成物の保形性が良好となり、15質量%以下であると、粘着力、及びその持続性が良好である。
【0017】
<(C)水溶性アルミニウム塩>
前記(C)成分の水溶性アルミニウム塩は、皮膚のべたつきのなさ、及び粘着力の持続性を付与するために含有される。
前記(C)成分の水溶性アルミニウム塩は、アルミニウムイオンの供給源として含有され、前記(A)成分の無水塩化マグネシウムが大気中の水分を吸収して生成した無機塩水溶液に溶解することよりアルミニウムイオンを放出し、前記(B)成分の架橋を行う。
【0018】
前記(C)成分の水溶性アルミニウム塩としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、結晶水を有していてもよく、無水物であってもよいが、製剤の特性上無水物が好ましい。
前記(C)成分の水溶性アルミニウム塩としては、例えば、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、硫酸アルミニウムカリウム、クロロヒドロキシアルミニウムなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、安全性、入手のし易さの点から、硫酸アルミニウムカリウムが好ましく、硫酸アルミニウムカリウムの無水物がより好ましい。
【0019】
前記(C)成分の含有量としては、前記外用剤組成物全量に対して、1質量%~50質量%が好ましく、1.5質量%~35質量%がより好ましい。前記含有量が、1質量%以上であると、前記(B)成分の架橋が良好となり、皮膚のべたつきのなさ、及び粘着力の持続性が良好であり、50質量%以下であると、外用剤組成物の保形性が良好となる。
【0020】
<質量比(B/C)>
前記(B)成分の含有量(質量%)と、前記(C)成分の含有量(質量%)との質量比(B/C)は、1~15が好ましく、5~15がより好ましい。前記質量比が、1以上であると、外用剤組成物の保形性、皮膚のべたつきのなさ、及び粘着力の持続性が良好となり、15以下であると、皮膚のべたつきのなさ、及び粘着力の持続性が良好となる。
【0021】
<(D)多価アルコール>
前記(D)成分の多価アルコールは、温熱を付与するための発熱基剤、及び前記(B)成分の可塑剤の少なくともいずれかとして含有される。
【0022】
前記(D)成分の多価アルコールとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、水と接触することにより水和熱を発生するものが好ましく、同質量の水と混合することにより、2℃以上温度が上昇するものが特に好ましい。また前記多価アルコールとしては、不揮発性の多価アルコールが好ましい。揮発性の多価アルコールを用いると、気化熱によって温度が低下してしまうことがある。また、水分を含まないものが好ましい。
【0023】
前記(D)成分の多価アルコールの分子内における水酸基数としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、2~4が好ましい。
【0024】
前記(D)成分の多価アルコールとしては、例えば、1,3-ブタンジオール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジエチレングリコールモノアルキルエーテル等のグリコール類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール/ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール;グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、ポリグリセリン等のグリセリン類;硬化ヒマシ油(30E.O.)、ソルビトールなどが挙げられる。
これらの中でも、グリコール類、ポリアルキレングリコール、グリセリン類等の不揮発性の多価アルコールが好ましく、温熱の付与の点から、ポリアルキレングリコール、グリセリンがより好ましい。
【0025】
前記(D)成分の含有量としては、前記外用剤組成物全量に対して、20質量%~80質量%が好ましく、30質量%~70質量%がより好ましい。前記含有量が、20質量%以上であると、展延時に外用剤組成物が硬くなりすぎることなく、外用剤組成物の保形性、及び温熱の付与が良好となり、80質量%以下であると、外用剤組成物の展延時に液ダレを生じることなく、外用剤組成物の保形性が良好となる。
【0026】
<質量比(B/D)>
前記(B)成分の含有量(質量%)と、前記(D)成分の含有量(質量%)との質量比(B/D)は、0.1~2が好ましく、0.5~1.5がより好ましい。前記質量比が、0.1以上であると、皮膚のべたつきのなさが良好となり、2以下であると、外用剤組成物の保形性が良好となる。
【0027】
<水>
本発明の外用剤組成物は、その使用時に、前記無水塩化マグネシウムが大気中の水分や皮膚から放出される水分により潮解して発熱するため、使用前の前記外用剤組成物としては、実質的に水を含有しないことが好ましく、前記外用剤組成物が密閉されて水蒸気が遮断された状態であることが好ましい。
前記水の含有量としては、前記外用剤組成物全量に対して、1質量%以下が好ましく、0.5質量%以下がより好ましい。
前記水の含有量は、例えば、赤外線水分計を用いる方法により、測定することができる。
【0028】
従来、含水系貼付剤の粘着層として、カルボキシル基を有するポリマーと、水と、アルミニウム化合物などの架橋剤とを含み、これらを反応させて得られた含水ゲルが知られている。
これに対して、本発明の外用剤組成物は、使用前は実質的に水を含まず、使用時に前記(A)成分の無水塩化マグネシウムが大気中の水分や皮膚から放出される水分により潮解して発熱すると共に、得られた無機塩水溶液に前記(C)成分の水溶性アルミニウム塩が溶解し、アルミニウムイオンを放出して、前記(B)成分のカルボキシル基、水酸基、及び酢酸基の少なくともいずれかを有するポリマーとアルミニウムイオンとの架橋反応が進行する。これにより、使用時に吸収した水分による皮膚のべたつきが抑制されると共に、前記架橋反応により含水ゲルが生じる。したがって、従来の無機塩を利用した温熱貼付剤に比べて粘着力の持続性が向上し、使用時を通じて良好な粘着力を維持することができる。
【0029】
<(E)薬効成分>
本発明の外用剤組成物は、前記(E)成分の薬効成分を更に含有することが好ましい。
本発明の外用剤組成物は、粘着層となる外用剤組成物自体が発熱し、かつ直接、患部などに貼付することができるため、直接、患部に温熱を付与しつつ、薬効成分を経皮投与できる点で有利である。
【0030】
前記(E)成分の薬効成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、サリチル酸メチル、サリチル酸グリコール等のサリチル酸エステル;インドメタシン、ケトプロフェン、フルルビプロフェン、イブプロフェン、フェルビナク、ジクロフェナクナトリウム、ロキソプロフェンナトリウム、メフェナム酸又はその誘導体、フルフェナム酸又はその誘導体、ブフェキサマック、イブフェナック、アルクロフェナック、プレドニゾロン、ヒドロコルチゾン、ヒドロコルチゾン酢酸エステル、ヒドロコルチゾンコハク酸エステル、デキサメタゾン、l-メントール、dl-カンフル、ジフェンヒドラミン塩酸塩、クロルフェニラミンマレイン酸塩、チモール、トコフェロール酢酸塩、ナプロキセン、ピロキシカム;オオバク等の生薬軟エキス;オオバク乾燥エキス等の生薬乾燥エキス;センブリ流エキス等の生薬流エキス;アルニカチンキ等の生薬チンキ;ハッカ油、ケイ皮油等の精油などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、サリチル酸エステル、フェルビナク、ジクロフェナクナトリウム、ロキソプロフェンナトリウムが好ましい。
【0031】
前記(E)成分の含有量としては、本発明の効果を損なわない範囲で必要に応じて、適宜選択することができるが、有効性及び安全性の点から、前記外用剤組成物全量に対して、0.1質量%~10質量%が好ましく、0.5質量%~5質量%がより好ましい。
【0032】
<その他の成分>
前記外用剤組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で必要に応じて、その他の成分を含んでいてもよい。
前記その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、油脂類、ワックス類、シリコーン類、炭化水素油、高級脂肪酸、前記(D)成分以外の高級アルコール、エステル油、界面活性剤、前記(B)成分以外の高分子化合物、酸化防止剤、色素、pH調整剤、収斂剤、防腐剤、紫外線吸収剤、保湿剤、増粘剤、抗炎症剤、アミノ酸、ビタミン剤、各種植物抽出エキスなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0033】
-pH-
前記外用剤組成物のpHとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、3.0~7.0が好ましく、3.5~6.5がより好ましく、4.0~6.0が特に好ましい。前記pHが、3.0以上であると、皮膚低刺激の点で良好であり、7.0以下であると、粘着力が良好である。
【0034】
-製造方法-
前記外用剤組成物の製造方法は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、以下の方法で製造することができる。
前記(A)成分、前記(B)成分、前記(C)成分、前記(D)成分、必要に応じて前記(E)成分、及び前記その他の成分を20rpm~700rpmで15分間、全体が均一な粘稠な固体となるまで冷却しながら混合し、外用剤組成物を製造することができる。
【0035】
-剤型-
前記外用剤組成物の剤型としては、使用前に大気中などの水分との反応が起こらないよう密封されるものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、貼付剤、パックなどの外用剤が挙げられる。これらの中でも、貼付剤が好ましい。
【0036】
ここで、「温熱」とは、発熱性を有することを意味する。
前記外用剤組成物の発熱性の大きさとしては、特に制限はないが、例えば、25℃において、密封した袋から開封し、相対湿度60%の条件下に放置した際、1分間経過後の上昇温度として、0.1℃以上が好ましく、0.2℃以上がより好ましく、0.5℃以上がさらに好ましい。
前記外用剤組成物の使用時の皮膚の最大上昇温度としては、25℃、相対湿度60%の条件下において、対象の皮膚に使用した場合、前記外用剤組成物の使用前(貼付前)の皮膚の温度と、前記外用剤組成物の使用時(貼付時)の皮膚の最高温度との差分として、1℃以上が好ましく、2℃以上がより好ましく、4℃以上がさらに好ましい。また、発熱し過ぎると低温やけどの恐れがある点で、実温度として42℃以下が好ましく、41℃以下がより好ましい。
前記外用剤組成物の発熱の持続時間としては、25℃において、密封した袋から開封し、相対湿度60%の条件下に放置した際、2℃以上の温度上昇した状態の持続時間として、1時間以上が好ましく、2時間以上がより好ましい。
【0037】
(外用剤)
本発明の外用剤は、基材と、外用剤組成物と、包材と、を含み、更に必要に応じて、ライナーなどのその他の部材を含み、貼付剤として好適に使用される。
前記基材、及び前記外用剤組成物が前記包材で密封されてなる。
【0038】
<基材>
前記基材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、紙、編布、織布、不織布、プラスチックフィルムなどが挙げられる。
前記基材の材質としては、例えば、レーヨン、ナイロン、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリルなどが挙げられる。
前記基材の大きさとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、通気性、使用性、外観、その他必要に応じて任意の大きさにしてもよく、必要に応じて、所定形状の空孔を設けてもよく、網目状としてもよい。
前記基材の坪量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5g/m2~500g/m2が好ましく、20g/m2~300g/m2がより好ましい。
【0039】
<外用剤組成物>
前記外用剤組成物は、本発明の前記外用剤組成物であり、前記基材上に含有される。
前記外用剤組成物は、温熱付与層、かつ粘着層として機能し、前記薬効成分を含有する場合には、直接、患部に温熱を付与しつつ、薬効成分を経皮投与できる点で有利である。
前記外用剤組成物の前記基材上における膏体量としては、単位面積(10cm×14cm)あたりの含有量で、5g~30gが好ましく、8g~20gがより好ましく、10g~15gがさらに好ましい。
【0040】
<包材>
前記包材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、水蒸気を透過せず、前記外用剤の使用前に大気中などの水分との反応が起こらないよう密封可能なものが好ましく、単層であってもよく、積層体であってもよいが、アルミニウム層を少なくとも有する積層フィルムであることが好ましい。
前記積層フィルムの層構成としては、アルミニウム層を有すれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、アルミニウム層の内側に熱可塑性樹脂層を有することが好ましい。また、アルミニウム層の外側に紙などの外層を有することが好ましい。
前記熱可塑性樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;ポリエチレンテレフタラート、ポリビニルアルコールなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0041】
前記包材の平均厚みとしては、50μm~300μmが好ましく、70μm~150μmがより好ましい。前記包材の平均厚みが50μm未満であると、密封性が低下し、前記外用剤の保存安定性が不十分となることがあり、300μmを超えると、ヒートシール効率が低下し、製造に支障をきたすことがあり、使用性が悪化することがある。
【0042】
<ライナー>
前記ライナーは、前記粘着層を被覆する被覆層である。
前記ライナーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、塩化ビニルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエステルフィルム、剥離紙(離型紙)などが挙げられる。
【0043】
-用途-
前記外用剤組成物の用途としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、身体への使用を目的としたものとして、医薬用温感タイプ貼付剤、薬効成分を含有する治療薬軟膏、治療用シート等の医療用外用剤;ニキビ治療用軟膏、美容シート、角栓取りシート、美白シート、保湿シート、ホットエステ商品、パック、保湿パック、保湿ジェル、温感タイプメイク落としシート、温感タイプマニキュアリムーバーシート、ネイルケアシート、かかと等のかさついた皮膚を滑らかにするシート、ハイヒール着用により生ずるタコ等をケアするシート、加温により目の疲れをとるシート、目のくまをケアするシート、首筋を温めるシート、毛髪用パック、毛髪用軟膏等の化粧用外用剤などが挙げられる。
【実施例】
【0044】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、以下の実施例及び比較例に記載の外用剤組成物の含有量は、全て純分換算値である。
【0045】
(実施例1~6及び比較例1~2)
下記表1及び表2に示す各組成及び含有量(質量%)の通り、実施例1~6及び比較例1~2の外用剤組成物を以下の製造方法に基づいて製造した。
【0046】
<外用剤組成物、及び外用剤の製造方法>
下記表1及び表2に示す(A)成分、(B)成分、(C)成分、及び(D)成分を300rpm~360rpmで15分間全体が均一な粘稠な固体となるまで冷却しながら混合し、実施例1~6及び比較例1~2の外用剤組成物を製造した。
得られた各外用剤組成物を、基材としての不織布(商品名:PAL90、倉敷繊維加工社製)に14g/140cm2になるように均一に展延塗布した後、10cm×14cmに裁断し、貼付剤を得た。得られた各貼付剤を、包材としての紙/アルミニウム/ポリエチレン積層シート(東海東洋アルミ販売社製)に、紙が外層となるように収容し、包材の周辺部をヒートシールして密封し、外用剤を製造した。
【0047】
得られた各外用剤を1日間保存した後、25℃、60%RHの条件下で、20代~40代の専門パネル5人(男性3人、女性2人)の前腕内側部の5cm×7cmの範囲の皮膚に4時間貼付し、下記評価方法に基づき、「温熱の付与」、「皮膚のべたつきのなさ」、及び「粘着力の持続性」について判断し、下記評価基準に基づき評価した。結果を下記表1及び表2に示した。
【0048】
-温熱の付与-
--皮膚の最大上昇温度の平均値--
専門パネル5人について、各外用剤の貼付前、及び4時間貼付している間の皮膚の温度を、携帯用温度計(商品名:DP-350、理化工業社製)によりモニターし、貼付前の皮膚の温度と、4時間貼付している間の皮膚の最高温度との差(皮膚の最大上昇温度(℃))の値を算出し、得られた値から専門パネル5人の平均値を算出し、表1及び表2に示した。
--温熱の付与--
「温熱の付与」について、得られた皮膚の最大上昇温度の平均値に基づき、下記の5段階評価の官能試験で評価し、表1及び表2に示した。
[温熱の付与の評価基準]
◎:皮膚の最大上昇温度の平均値が4℃以上
○:皮膚の最大上昇温度の平均値が2℃以上4℃未満
△:皮膚の最大上昇温度の平均値が1℃以上2℃未満
×:皮膚の最大上昇温度の平均値が1℃未満
【0049】
-皮膚のべたつきのなさ-
専門パネル5人が、各外用剤を4時間貼付して剥がした後の「皮膚のべたつきのなさ」について、下記の5段階評価の官能試験で評価し、平均値を算出し、表1及び表2に示した。
[皮膚のべたつきのなさの評価基準]
5点:べたつきがない
4点:やや湿り気があるが、べたつきがない
3点:湿り気がある
2点:ややべたつきがある
1点:べたつきがある
【0050】
-粘着力の持続性-
専門パネル5人が、各外用剤を4時間貼付して剥がす際の「粘着力の持続性」について、下記の5段階評価の官能試験で評価し、平均値を算出し、表1及び表2に示した。
[粘着力の持続性の評価基準]
5点:貼付開始時と比べて粘着力が向上している
4点:貼付開始時と比べて粘着力は変わらない
3点:貼付開始時と比べて粘着力がやや低下しているが、十分な粘着力がある
2点:貼付開始時と比べて粘着力が低下しており、粘着力が十分にない
1点:貼付開始時と比べて粘着力が非常に低下しており、貼付後4時間経過前に剥がれた
【0051】
【0052】
【0053】
(製剤処方例)
下記表3に示す各組成及び含有量(質量%)の通り、(E)成分を含む処方例1~6の外用剤組成物を実施例1における製造方法に基づいて製造した。
【0054】
【0055】
実施例及び比較例で使用した各成分は、下記表4に示すとおりである。
【0056】
【表4】
*硫酸アルミニウムカリウム(無水)として使用
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明の外用剤組成物は、温熱を付与でき、皮膚のべたつきが抑制され、粘着力の持続性が向上するため、例えば、医薬用温感タイプ貼付剤、薬効成分を含有する治療薬ジェル、治療用シート等の医療用外用剤や、化粧用外用剤などに好適に利用可能である。