(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-14
(45)【発行日】2022-01-25
(54)【発明の名称】バルブ
(51)【国際特許分類】
F16K 1/34 20060101AFI20220118BHJP
F16K 31/06 20060101ALI20220118BHJP
【FI】
F16K1/34 A
F16K31/06 305N
(21)【出願番号】P 2019534263
(86)(22)【出願日】2017-12-13
(86)【国際出願番号】 EP2017082626
(87)【国際公開番号】W WO2018114525
(87)【国際公開日】2018-06-28
【審査請求日】2019-06-21
(31)【優先権主張番号】102016226095.2
(32)【優先日】2016-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】102017202511.5
(32)【優先日】2017-02-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】519031896
【氏名又は名称】ヴィテスコ テクノロジーズ ゲー・エム・ベー・ハー
【氏名又は名称原語表記】Vitesco Technologies GmbH
【住所又は居所原語表記】Siemensstrasse 12,93055 Regensburg,Germany
(73)【特許権者】
【識別番号】501479868
【氏名又は名称】カール・フロイデンベルク・カーゲー
【氏名又は名称原語表記】Carl Freudenberg KG
【住所又は居所原語表記】Hoehnerweg 2-4, D-69469 Weinheim, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ロザリオ ボナンノ
【審査官】冨永 達朗
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/041659(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0313455(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第102008031738(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 1/34
F16K 31/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、前記ハウジング内に配置されたソレノイドと、前記ソレノイドによって移動可能なピンと、前記ピンと連結されたカップ形状のプランジャと、前記ハウジングと前記プランジャとの間に配置されたシールと、を備えるバルブであって、前記プランジャ(8)は、
その底部(9)の領域において、外側にさらなるシール(10)を有し、かつ、少なくともその開放端の領域(14)に、該プランジャの外周面から延出し、かつ前記バルブの閉状態において第2のハウジング部(13)に当接する、放射状に全周に延びるシール(15)を有し
ており、前記開放端の領域(14)の前記シール(15)と前記底部(9)の領域の前記さらなるシール(10)とは互いに一体に連結されており、前記第2のハウジング部(13)は、前記ハウジング(1)と連結していることを特徴とする、バルブ。
【請求項2】
前記シール(15)は、放射状に外側にかつ前記カップ形状のプランジャ(8)の底部(9)に向けられており、前記第2のハウジング部(13)のシール面(17)と接触する少なくとも1つのシールリップ(16)を有し、前記シール面(17)は、放射状に内側を向いたカラー(18)に配置されていることを特徴とする、請求項1に記載のバルブ。
【請求項3】
前記シール(15)はゴム製、好適にはフッ素ゴム製であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のバルブ。
【請求項4】
前記シール(15)が配置される前記領域(14)は、前記プランジャの高さの最大で30%であることを特徴とする、請求項1から3の
いずれか一項に記載のバルブ。
【請求項5】
前記プランジャ(8)は、金属製、好適には特殊鋼製、特にクロムニッケル鋼製であることを特徴とする、請求項1から4の
いずれか一項に記載のバルブ。
【請求項6】
前記プランジャ(8)は、0.3mmから1mm、好適には0.4mmから0.8mm、特に0.5mmの壁厚を有することを特徴とする、請求項5に記載のバルブ。
【請求項7】
前記プランジャ(8)は深絞り部であることを特徴とする、請求項5又は6に記載のバルブ。
【請求項8】
前記両シール(15,10)は、シール材料(21)が前記プランジャ(8)の円筒状の周面を内側でも外側でも覆うように、互いに一体に連結されていることを特徴とする、請求項
1から7のいずれか一項に記載のバルブ。
【請求項9】
前記シール(15)は、少なくとも前記開放端の領域(14)において加硫加工されていることを特徴とする、請求項1から
8の
いずれか一項に記載のバルブ。
【請求項10】
前記第2のハウジング部(13)は金属製、好適には特殊鋼製、特にクロムニッケル鋼製であることを特徴とする、請求項1から
9の
いずれか一項に記載のバルブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の対象は、ハウジングと、ハウジング内に配置されたソレノイドと、ソレノイドによって移動可能なピンと、ピンと連結されたカップ形状のプランジャと、ハウジングとプランジャとの間に配置されたシールと、を備えるバルブである。
【背景技術】
【0002】
このようなバルブは、とりわけ惰走モード時に吸込側へのバイパスを開放するために、自動車のターボチャージャにブローオフバルブとして配備されており、したがって公知である。ターボチャージャの急停止を阻止しつつも迅速な始動を保証するためには、バルブの迅速な開閉が重要な前提条件となる。特に閉弁時には、弁座に対するプランジャの当接による即時閉弁が重要である。弁座は、ターボチャージャのハウジングによって形成され、そのハウジングにバルブがフランジ接合される。また、軸方向に摺動可能なプランジャは、ハウジングに対して密封されていなければならない。そのために、ハウジング内にV字形のシールを配置することが公知である。シールの脚部は、それぞれハウジングとカップ形状のピストンの周面とに当接する。この両脚の予付勢によって、密封効果が達成される。ここで不都合なのは、プランジャに当接する一方の脚部のシールリップは、開閉時のプランジャ移動のために摩擦に曝されている、ということであり、これにより摩耗が増加する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
したがって、本発明は、改良された密封機能を有するバルブを創出するという課題に基づくものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この課題は、プランジャが、少なくともその開放端の領域に、バルブの閉状態のときにのみ第2のハウジング部に当接する放射状に全周に亘って延びるシールを備えること、及び、第2のハウジング部がハウジングと連結していることによって解決される。
【0005】
プランジャの開放端に、閉状態のときにのみ第2のハウジング部と協働する放射状に全周に延びるシールを配置することにより、密封を、プランジャが静止する直前の期間を含むプランジャが閉位置にある期間に限定することが達成される。これは、プランジャとシールとが閉位置の寸前に既に接触することを意味している。閉位置へのプランジャの最後の移動によって、シールは、第2のハウジング部に接触するように変形され、それによって予付勢を与えられる。こうして、軸方向に作用するシールによって、シールがプランジャの開閉時の移動中に第2のハウジング部に接触すること、ならびにそれに伴う摩擦に曝されることが回避される。これにより、摩擦に起因する摩耗が回避されるとともに、シールの寿命が延ばされる。
【0006】
このような軸方向に作用するシールの特に良好な密封効果は、シールが、放射状に外側にカップ形状のプランジャの底部に向けられ、且つ第2のハウジング部のシール面と接触する少なくとも1つのシールリップを備えることによって達成され、このシール面は、放射状に内側を向いたカラーに配置されている。
【0007】
シールの良好な媒体耐性は、ゴム、好適にはフッ素ゴムをシール材料として使用することによって与えられる。さらなる利点は、この種のゴムシールは、180℃までの耐熱性を有するということである。
【0008】
簡単な一実施形態においては、シールはプランジャの開放端に配置される。バルブの構成要素、例えばソレノイド、ハウジング、ばね、プランジャは、取り付け状況及び動作条件に応じて、相応に構成されなければならない。その結果、プランジャは、ある程度の高さを備えなければならなくなり、これはシールを相応に大きく形成することを伴うであろう。ここで、シールは、開放端に限らず、開放端に位置する、プランジャの高さの最大で30%を占める領域に配置することが有利であることが判明した。これには、開放端の下方でもシールをプランジャの周面に配置することができるという利点があり、このことは、シール、とりわけシールリップをより小さく寸法決めすることを可能にする。
【0009】
プランジャが特殊鋼製、好適にはクロムニッケル鋼製であると、アグレッシブな媒体に対する高い耐性と、ひいてはより長い寿命とが与えられる。金属プランジャには、それに加えて、より高い耐熱性という利点があり、したがって本発明に係るバルブは、特に高い温度において、幅広い用途をカバーすることができる。
【0010】
金属はプラスチックに比べて安定性が高いので、プランジャの壁厚をかなり薄く形成することができる。用途に応じて、プランジャの金属が0.3mmから1mm、好適には0.4mmから0.8mm、特に0.5mmの厚さを有すると有利であることが判明した。
【0011】
さらなる有利な一実施形態によれば、プランジャが深絞り部であると、特に低コストに1つの作業工程でプランジャを製造することができる。
【0012】
ターボチャージャのバイパス管路の密封は、プランジャがその底部の領域において外側にさらなるシールを備えていると、特に容易に達成することができる。
【0013】
ピストンとのシールのさらなる連結は、有利な一実施形態によれば、プランジャの底部が環状のシールの領域に少なくとも3つ、好適には4つから12、特に5つから8つの切欠部を備えており、且つシールがその切欠部を通って底部の内側まで延びていると、特に容易に行われる。
【0014】
両シールの配置の手間は、特に有利な一実施形態によれば、開放端の領域のシールと底部領域のさらなるシールとが互いに一体に連結されていることによって低減できる。このようにすれば、両シールが1つの作業工程のみでプランジャと連結される。これにより、シールの追加的な取り付けを無くすことができる。さらに、そのようなプランジャの構成要素の総数及び複雑性が低減される。
【0015】
両シールの一体連結は、もっとも単純な場合には、プランジャの円筒状の周面の外側に亘って行うことができる。この場合、プランジャは、外側をシール材料によって保護されている。もっとも、両シールの連結を、シール材料がプランジャの円筒状の周面の内側を覆うように形成することも考えられる。
【0016】
別の一実施形態においては、両シールの連結は、シール材料が円筒状の周面を内側でも外側でも覆うように形成される。これによってプランジャは、前述の領域においてシール材料によって包まれ、したがってさらに保護される。
【0017】
開放端の領域における少なくとも1つのシールの確実な連結は、さらなる一実施形態によれば、プランジャへの加硫加工によって達成される。
【0018】
第2のハウジング部が金属製、好適には特殊鋼製、特にクロムニッケル鋼製であるとさらに有利であることが判明した。これは、第2のハウジング部を深絞り部として形成することを可能にし、ひいては特に低コストの製造を可能にする。ピストンに配置されたシールのためのシール面を有するカラーもまた、同じ製造工程で完成されることができる。
【0019】
一実施例に基づいて、本発明をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1はバルブを示す。このバルブは、バルブの電気接続のために一体に成形されたブッシュ2を有するハウジング1を含む。ハウジング1はさらに、成形されたフランジ3と、3つの穿孔3aとを有している。ハウジング1はこれらの穿孔3aを介して、図示しないターボチャージャに、バイパス管路4の領域でフランジ接合されている。図示する設置状態においては、フランジ3には第2のハウジング部13が接続している。ハウジング1内には、ソレノイド5が、コイル6及び金属ピン7と共に配置されている。金属ピン7はカップ形状のプランジャ8と連結されており、プランジャはその底部9の周囲に、軸方向に離隔した環状のシール面10を備えている。図示する閉位置においては、バイパス管路4を閉鎖するために、シール面10は弁座11に当接しており、したがって媒体が管路4から管路12に流入することはできない。このとき、ばね7aは、プランジャ8を弁座11の方向に押す。ばね7aによって発生した力に対しては、管路12の圧力によって底部9に作用する力が作用する。
【0022】
図2は、0.5mmの壁厚を有するクロムニッケル鋼製のカップ形状のプランジャ8を備えたバルブを示す。開放端の領域14には、フッ素ゴムからなるシール15が配置されている。シール15は、径方向に放射状に外側に且つカップ形状のプランジャ8の底部9に向けられ、第2のハウジング部13のシール面17と接触するシールリップ16を備えている。シール面17は、径方向に放射状に内側を向いたカラー18に配置されている。第2のハウジング部13は、プランジャ8と同様、深絞り部であって、同じくクロムニッケル鋼製である。プランジャの底部9は、さらなるシール10を貫通させた8つの切欠部19を備えており、したがってこの環状の、底部9の外側に配置されたさらなるシール10は、底部の内側まで延びている。ここで、切欠部19はさらなるシール10のための一種の逃げ溝を構成するので、シールは取り外し不能にプランジャ8と連結されている。このさらなるシール10は、同時に、プランジャの円筒状の周面の外側がフッ素ゴムからなる厚さ0.5mmの層によって覆われるように、シール15と一体に連結されている。底部9にあるビード20は、ばね7aのガイド及び調心に役立つ。底部9の図示しない開口が、より容易な開弁を可能にするために、バルブの内部との均圧化を可能にする。
【0023】
図3の、本発明に係るバルブのプランジャの領域の拡大図は、基本構造が
図2のバルブに対応している。両シール10,15はやはり互いに一体に連結されており、シール材料21は、プランジャ8の円筒状の周面を、内側でも外側でも覆っている。これによってプランジャ8は、前述の領域においてシール材料21に包まれている。