(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-14
(45)【発行日】2022-02-10
(54)【発明の名称】導体の貫通のための基体、およびそのような基体を備えるハウジングの、特に電池ハウジングのハウジング部材
(51)【国際特許分類】
H01M 50/119 20210101AFI20220203BHJP
H01G 11/74 20130101ALI20220203BHJP
H01M 50/159 20210101ALI20220203BHJP
H01M 50/169 20210101ALI20220203BHJP
H01M 50/179 20210101ALI20220203BHJP
H01M 50/191 20210101ALI20220203BHJP
H01M 50/133 20210101ALI20220203BHJP
H01G 11/78 20130101ALI20220203BHJP
H01M 50/152 20210101ALN20220203BHJP
H01M 50/107 20210101ALN20220203BHJP
H01M 50/562 20210101ALN20220203BHJP
B23K 26/21 20140101ALN20220203BHJP
B23K 26/064 20140101ALN20220203BHJP
【FI】
H01M50/119
H01G11/74
H01M50/159
H01M50/169
H01M50/179
H01M50/191
H01M50/133
H01G11/78
H01M50/152
H01M50/107
H01M50/562
B23K26/21 F
B23K26/21 G
B23K26/064 N
(21)【出願番号】P 2019553635
(86)(22)【出願日】2017-12-08
(86)【国際出願番号】 EP2017082001
(87)【国際公開番号】W WO2018114392
(87)【国際公開日】2018-06-28
【審査請求日】2019-10-15
(32)【優先日】2016-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504299782
【氏名又は名称】ショット アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】SCHOTT AG
【住所又は居所原語表記】Hattenbergstr. 10, 55122 Mainz, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100156812
【氏名又は名称】篠 良一
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ヘルムート ハートル
【審査官】前田 寛之
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-522553(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M50/10-50/198
H01G11/74
H01G11/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軽金属製の少なくとも2つの物体を含む構成部材であって、第1の物体は、軽金属を含み、第2の物体は、溶接促進剤を有する軽金属を含み、ここで、前記第1の物体は、前記第2の物体の受容のための開口
部を有するハウジング部材であり、第1の物体と第2の物体との間に溶接接合が形成され、その溶接接合において溶融された第1の物体の材料と溶融された第2の物体の材料とが混合物を生じて存在し、該混合物中の溶接促進剤の含量が、第2の物体中の溶接促進剤の含量よりも低いことを特徴とする構成部材。
【請求項2】
前記第2の物体は、アルミニウム合金からなり、かつ前記アルミニウム合金中の溶接促進剤は、Mnおよび/またはMgおよび/またはSiおよび/またはZrを含むことを特徴とする、請求項1記載の構成部材。
【請求項3】
前記第2の物体は、基体(10)であり、ここで、該基体を通じて機能エレメントが貫通されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の構成部材。
【請求項4】
前記溶接接合は、重ね溶接および/または突き合わせ溶接を含むことを特徴とする、請求項1~3のいずれかに記載の構成部材。
【請求項5】
前記基体(10)を受容するためのハウジング部材の前記開口部は、平滑な側面を有し、かつ前記基体は、前記ハウジング部材(20)と溶接領域(200、202)において突き合わせ溶接により接合されており、ここで、位置(P
1、P
2)の溶接領域は、基体の第1の部分とハウジング部材の第2の部分とを含むことを特徴とする、請求項3に記載の構成部材。
【請求項6】
前記溶接領域(200、202)は、深さ(T
1、T
2)を有することを特徴とする、請求項5に記載の構成部材。
【請求項7】
前記基体(10)は、フランジまたは張り出し部(30)を備え、かつ前記ハウジング部材(20)は、抜き部または相フランジ(25)を備え、前記基体(10)と前記ハウジング部材とは、第1の溶接領域(210)において重ね溶接によって接合されており、または第2の溶接領域(300、310)において重ね溶接もしくは突き合わせ溶接によって接合されていることを特徴とする、請求項
3に記載の構成部材。
【請求項8】
前記溶接領域(
300、310)は、深さ(
TS
1
、TS
2
)を有することを特徴とする、請求項7に記載の構成部材。
【請求項9】
電気装置であって、前記電気装置は、請求項1から8までのいずれか1項記載の構成部材を備えることを特徴とする電気装置。
【請求項10】
請求項1から8までのいずれか1項記載の構成部材の製造方法であって、以下の工程:
10.1 導体(12、1261)および基体(10、1259)を準備する工程、
10.2 前記導体(12、1261)を、ガラス材料またはガラスセラミック材料(14、1262)内で前記基体(10、1259)中にガラス封止する工程、
10.3 前記基体(10、1259)を、前記構成部材の一部と、溶接によって接合させる工程、
を含む、方法。
【請求項11】
前記基体(10、1259)を、前記基体と前記構成部材との間の間隙を避けるために、張り出し部またはフランジ(30)の領域内で、溶接前に、前記構成部材の抜き部または相フランジ(25)へと押し付けることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
レーザー溶接を、前記構成部材を通じて前記基体(10、1259)へと行い、ここで、レーザー出力は、前記基体との接合領域中に存在する前記抜き部または相フランジ(25)における低減された厚さに相応して調整されることを特徴とする、請求
項11に記載の方法。
【請求項13】
電池ハウジングまたはスーパーキャパシタのハウジングにおける、請求項1から8までのいずれか1項記載の構成部材の使用。
【請求項14】
少なくとも1つの導体(12、1261)がガラス材料またはガラスセラミック材料(14、1262)内で基体の開口部を通じて貫通される少なくとも1つの開口部を有する基体(10)であって、前記基体(10)は、少なくとも2つの溝(100、102)および/または凹部を有し、それにより前記基体(10)を通じた熱流は低減され、かつ/または前記基体(10)の機械的負荷に際して前記導体(12)の軸線に対して垂直方向に変形可能であることを特徴とする基体(10)。
【請求項15】
前記導体(12)の軸線に対して垂直方向での前記基体(10)の機械的負荷に際して、前記導体の軸線は、傾かないことを特徴とする、請求項14に記載の基体(10)。
【請求項16】
前記基体(10)は、フィードスルーの領域において厚さD
2で、かつフランジ(30)または張り出し部では前記基体(10)の厚さD
2より小さい厚さD
3で段状に形成されており、ここで、少なくとも1つの第1の溝または凹部は、前記張り出し部またはフランジ(30)の領域内に存在することを特徴とする、請求項14または15に記載の基体(10)。
【請求項17】
前記第1の溝および第2の溝(100、102)、または隣り合って配置されている第1の穿孔列および第2の穿孔列は、前記基体(10)のフランジまたは張り出し部の領域における前記基体の厚さD
3の半分より大きい深さ(T
1、T
2)を有することを特徴とする、請求項16に記載の基体(10)。
【請求項18】
少なくとも1つの第2の溝または凹部(100、102)は、前記基体(10)のより大きな厚さD
2を有する領域において、前記基体の反対側にある表面(104、106)上に存在することを特徴とする、請求項14から17までのいずれか1項記載の基体(10)。
【請求項19】
前記基体の反対側にある表面(104、106)上に設けられた第1および第2の溝および/または凹部(100、102)の深さ(T
1、T
2)は、前記基体の第1の表面(104)上の第1の溝(100)の最も深い点(P
1)の平面が、前記基体の第2の表面(106)上の第2の溝の最も深い点(P
2)の平面の下方または上方に存在するように選択されることを特徴とする、請求項18に記載の基体。
【請求項20】
前記溝および/または凹部(100、102)は、周回する溝または隣り合って配置された穿孔列であることを特徴とする、請求項18または19に記載の基体。
【請求項21】
前記第1の溝および第2の溝(100、102)または前記隣り合って配置された第1の穿孔列および第2の穿孔列は、互いに間隔Aを有し、かつ前記間隔Aは、0.1mm~0.5mmの範囲内であることを特徴とする、請求項17に記載の基体。
【請求項22】
前記ガラス材料またはガラスセラミック材料は、以下の成分:
P
2O
5 35mol%~50mol%
Al
2O
3 0mol%~14mol%
B
2O
3 2mol%~10mol%
Na
2O 0mol%~30mol%
M
2O 0mol%~20mol%、ここでMは、K、Cs、Rbであり得る
PbO 0mol%~10mol%
Li
2O 0mol%~45mol%
BaO 0mol%~20mol%
Bi
2O
3 0mol%~10mol%
をmol%で含むことを特徴とする、請求項14から21までのいずれか1項記載の基体。
【請求項23】
請求項14から20までのいずれか1項記載の基体(10)、およびガラス材料またはガラスセラミック材料(14、1262)内で前記基体を通じて貫通される少なくとも1つの導体(12)を受容するための、少なくとも1つの開口部を有する、構成部材であって、前記構成部材は、前記基体(10)の一部を受容するための抜き部または相フランジ(25)を有することを特徴とする、構成部材。
【請求項24】
前記構成部材は、ハウジング部材(20)であり、かつ前記相フランジ(25)において、前記ハウジング部材の厚さD
4は、低減されていることを特徴とする、請求項23に記載の構成部材。
【請求項25】
前記相フランジ(25)は、導体に対して垂直に延びる第1の境界面(28)を有し、前記基体の部分は、導体に対して垂直に延びる第2の境界面(26)を有し、かつ前記第1および第2の境界面(26、28)は、互いに向かい合っており、ここで、前記相フランジ(25)は、前記基体の張り出し部またはフランジ(30)へとそれぞれL字型に噛み合っていることを特徴とする、請求項23または24に記載の構成部材。
【請求項26】
第1および第2の境界面(26、28)は、溶接によって固結されていることを特徴とする、請求項25に記載の構成部材。
【請求項27】
前記溶接は、重ね溶接および/または突き合わせ溶接を含むことを特徴とする、請求項26に記載の構成部材。
【請求項28】
前記基体の少なくとも2つの溝(100、102)または少なくとも2つの環状に配置された隣り合って配置された穿孔列を、第1の溝(100)または第1の隣り合って配置された穿孔列については第1の基体表面(104)に有し、かつ第2の溝(102)または第2の隣り合って配置された穿孔列については第2の基体表面(106)に有し、前記第1および第2の基体表面は、互いに反対側にあることを特徴とする、請求項23から27までのいずれか1項記載の構成部材。
【請求項29】
前記第1の溝および第2の溝(100、102)または前記隣り合って配置された第1の穿孔列および第2の穿孔列は、互いに間隔Aを有し、かつ前記間隔Aは、0.1mm~1.5mmの範囲内であることを特徴とする、請求項28に記載の構成部材。
【請求項30】
前記構成部材は、ハウジング部材(20)であり、かつ前記ハウジング部材(20)は厚さD
1を有し、かつ前記基体(10)はガラス封止長さ(EL)に相当する厚さD
2を有し、前記厚さD
1は、前記厚さD
2の20%~80%の範囲内であることを特徴とする、請求項23から29までのいずれか1項記載の構成部材。
【請求項31】
前記ガラス材料またはガラスセラミック材料は、以下の成分:
P
2O
5 35mol%~50mol%
Al
2O
3 0mol%~14mol%
B
2O
3 2mol%~10mol%
Na
2O 0mol%~30mol%
M
2O 0mol%~20mol%、ここでMは、K、Cs、Rbであり得る
PbO 0mol%~10mol%
Li
2O 0mol%~45mol%
BaO 0mol%~20mol%
Bi
2O
3 0mol%~20mol%
をmol%で含むことを特徴とする、請求項23から30までのいずれか1項記載の構成部材。
【請求項32】
前記構成部材は、ハウジング部材(20)であり、かつ前記ハウジング部材は、軽金属および/または軽金属合金からなる、請求項23から31までのいずれか1項記載の構成部材。
【請求項33】
前記基体は、軽金属および/または軽金属合金からなる、請求項23から32までのいずれか1項記載の構成部材。
【請求項34】
前記導体(12)は、銅および/または鋼および/または鋼合金および/または軽金属および/または軽金属合金を含むか、またはそれらからなる、請求項23から33までのいずれか1項記載の構成部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機能エレメントの貫通のための基体、およびそのような基体を備えるハウジングの、特に電池ハウジングのハウジング部材であって、前記基体の受容のための少なくとも1つの開口部を有するハウジング部材に関する。少なくとも1つの導体、特に本質的にピン形状の導体は、ガラス材料またはガラスセラミック材料内で前記基体を貫通する。
【0002】
本発明による基体は、非常に様々なハウジング、特にハウジング材料の場合にも使用され得る。有利には、前記基体は、ハウジング、特に電池セルハウジング、またはキャパシタおよび/もしくはスーパーキャパシタのためのハウジングにおいて使用される。
【0003】
本発明の範囲における電池とは、その放電後に廃棄および/またはリサイクルされる一次電池とも、蓄電池とも解釈される。
【0004】
スーパーキャパシタ(Supercapとも呼ばれる)は、一般的に知られているように、特に高い出力密度を有する電気化学的なエネルギー貯蔵装置である。スーパーキャパシタは、セラミックキャパシタ、薄膜キャパシタ、および電解キャパシタとは異なり、従来の意味における誘電体を有しない。スーパーキャパシタにおいては、特に電気的エネルギーの静的貯蔵の貯蔵原理は、二重層容量における電荷分離により実現され、電気的エネルギーの電気化学的貯蔵は、擬似容量におけるレドックス反応による電荷交換により実現されている。
【0005】
スーパーキャパシタには、特にハイブリッドキャパシタ、この場合に特にリチウムイオンキャパシタが含まれる。スーパーキャパシタの電解質は、通常、導電性塩、通常はリチウム塩が溶解されている溶媒を含む。スーパーキャパシタは、好ましくは、大きなエネルギー量が比較的短い時間にわたって、または非常に高い充放電サイクル数にわたって必要とされる用途において使用される。スーパーキャパシタは、特に有利には、自動車分野において、特に制動エネルギーの回生の分野において使用可能である。別の用途も当然ながら同様に可能であり、本発明に含まれる。
【0006】
蓄電池、有利にはリチウムイオン電池は、様々な用途、例えばポータブル式の電子装置、携帯電話、電動工具、および特に電気自動車のために予定されている。それらの電池は、例えば鉛酸電池、ニッケルカドミウム電池、またはニッケル金属水素化物電池等の従来のエネルギー源と置き換えることができる。
【0007】
リチウムイオン電池は、長年にわたり知られている。それに関しては、例えば“Handbook of Batteries,David Linden,Herausgeber,2.Auflage,McGrawhill,1995,Kapitel 36 und 39”が参照される。
【0008】
リチウムイオン電池の様々な態様は、多岐にわたる特許に記載されている。例えば、米国特許第961,672号(US961,672)、米国特許第5,952,126号(US5,952,126)、米国特許第5,900,183号(US5,900,183)、米国特許第5,874,185号(US5,874,185)、米国特許第5,849,434号(US5,849,434)、米国特許第5,853,914号(US5,853,914)、および米国特許第5,773,959号(US5,773,959)が挙げられる。
【0009】
特に自動車環境において使用するためのリチウムイオン電池は一般的に、互いに直列に接続されている多数の個々の電池セルを有する。互いに一列または直列に接続された電池セルは、いわゆるバッテリパックにまとめられ、複数のバッテリパックがさらに、リチウムイオン電池とも称されるバッテリモジュールにまとめられる。各々の個々の電池セルは、電池セルのハウジングから導出される電極を有する。スーパーキャパシタのハウジングについても同じことが言える。
【0010】
特に、リチウムイオン電池および/またはキャパシタおよび/またはスーパーキャパシタを、有利には自動車環境において使用するためには、耐食性、事故時耐久性、または耐振動性等の多数の問題を解決せねばならない。さらなる問題は、電池セル、ならびに/またはキャパシタおよび/もしくはスーパーキャパシタのハウジングの長時間にわたる封止性、特に気密封止性である。それらの封止性を、例えば電池セルの電極、または電池セルならびに/もしくはキャパシタおよび/もしくはスーパーキャパシタのハウジングの電極フィードスルーの領域における漏洩性が損なうことがある。そのような漏洩性は、例えば温度の交番負荷および機械的な交番負荷、例えば車両中の振動またはプラスチックの劣化により引き起こされることがある。電池または電池セルの短絡または温度変化は、電池または電池セルの寿命の低下を引き起こし得る。同様に封止性は、事故の状況および/または非常事態においても重要である。
【0011】
より良好な事故時耐久性を保証するために、独国特許出願公開第10105877号明細書(DE10105877A1)では、例えばリチウムイオン電池のハウジングであって、両側が開放し閉じられる金属カバーを備えたハウジングが提案されている。電気端子または電極は、プラスチックにより絶縁されている。プラスチック絶縁の欠点は、限られた耐熱性、限定的な機械的耐久性、耐用年数にわたる劣化および不確実な封止性である。したがって、電気フィードスルーは、先行技術によるリチウムイオン電池では、例えばリチウムイオン電池のリッド部において十分に封止性に取り付けられておらず、特に気密封止性に取り付けられていない。さらに、それらの電極は圧着またはレーザー溶接された接続構成部材であり、電池の内部空間に追加の絶縁体を有する。
【0012】
先行技術におけるリチウムイオン電池でのさらなる問題は、電池セルが大きな構造空間を有し、高電流に基づき抵抗損により非常に迅速に加熱、ひいては温度変化が生ずることであった。
【0013】
独国特許出願公開第2733948号明細書(DE2733948A1)から、絶縁体、例えばガラスまたはセラミックが、溶着により金属部材と直接的に接続されたアルカリ電池が知られている。
【0014】
金属部材の一方はアルカリ電池のアノードと電気的に接続されており、もう一方はアルカリ電池のカソードと電気的に接続されている。独国特許出願公開第2733948号明細書(DE2733948A1)で使用される金属は、鉄または鋼である。アルミニウム等の軽金属は、独国特許出願公開第2733948号明細書(DE2733948A1)に記載されていない。また、ガラス材料またはセラミック材料の溶融温度も、独国特許出願公開第2733948号明細書(DE2733948A1)には示されていない。独国特許出願公開第2733948号明細書(DE2733948A1)に記載されるアルカリ電池は、アルカリ性電解質を有する電池であり、該電解質は、独国特許出願公開第2733948号明細書(DE2733948A1)によれば水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムを含有する。独国特許出願公開第2733948号明細書(DE2733948A1)では、リチウムイオン電池について触れられていない。
【0015】
独国特許出願公開第69804378号明細書(DE69804378T2)または欧州特許第0885874号(EP0885874B1)から、不斉有機炭酸エステルの製造方法、およびアルカリイオン電池のための水不含の有機電解質の製造方法が知られている。また、再充電可能なリチウムイオンセルのための電解質も、独国特許出願公開第69804378号明細書(DE69804378T2)または欧州特許第0885874号(EP0885874B1)に記載されている。
【0016】
ビアを受容するセルソケットのための材料は記載されておらず、端子ピンのための材料だけが記載されており、それはチタン、アルミニウム、ニッケル合金、またはステンレス鋼からなっていてよい。
【0017】
独国特許出願公開第69923805号明細書(DE69923805T2)または欧州特許第0954045号(EP0954045B1)は、電気的有効性が改善されたRFフィードスルーを記載している。欧州特許第0954045号(EP0954045B1)から公知のフィードスルーは、ガラス-金属フィードスルーではない。欧州特許第0954045号(EP0954045B1)においては、例えばパッケージの金属壁の内側に直接的に形成されるガラス-金属フィードスルーは不利であると記載されている。それというのも、そのようなRFフィードスルーは、ガラスの脆化に基づき堅牢ではないからである。
【0018】
独国特許出願公開第69023071号明細書(DE69023071T2)または欧州特許第0412655号(EP0412655B1)は、電池または別の電気化学的セルのためのガラス-金属フィードスルーを記載しており、ここで、約45質量%のSiO2含量を有するガラスとして使用され、かつ金属として、特にモリブデンおよび/またはクロムおよび/またはニッケルを含む合金が使用される。軽金属の使用は、独国特許出願公開第69023071号明細書(DE69023071T2)においては、使用されるガラスに関する溶融温度または融解温度と同様にわずかしか記載されていない。また、ピン形状の導体のための材料も、独国特許出願公開第69023071号明細書(DE69023071T2)または欧州特許第0412655号(EP0412655B1)によれば、モリブデン、ニオブ、またはタンタルを含む合金である。
【0019】
米国特許第7,687,200号(US7,687,200)から、リチウムイオン電池のためのガラス-金属フィードスルーが知られている。米国特許第7,687,200号(US7,687,200)によれば、ハウジングは特殊鋼製であり、ピン形状の導体は白金/イリジウム製であった。ガラス材料として、米国特許第7,687,200号(US7,687,200)においては、ガラスTA23およびCABAL-12が示されている。米国特許第5,015,530号明細書(US5,015,530)によれば、ガラス材料は、1025℃または800℃の溶融温度を有するCaO-MgO-Al2O3-B2O3系である。さらに、米国特許第5,015,530号明細書(US5,015,530)からリチウム電池のためのガラス-金属フィードスルーのためのCaO、Al2O3、B2O3、SrO、およびBaOを含むガラス組成物が知られており、その溶融温度は、650℃~750℃の範囲内であり、したがって、軽金属と一緒に使用するためには高すぎる。
【0020】
米国特許第4,841,101号(US4,841,101)から、本質的にピン形状の導体が金属リングへとガラス材料によりガラス封止されるフィードスルーが知られている。該金属リングは、それから再びハウジングの開口部または穿孔部へとはめ込まれ、例えばソルダーリングの挿入後にろう付けにより内壁または穿孔部と、特に材料接続的に接合される。その金属リングは、電池ハウジングのアルミニウムの高い熱膨張係数を補償するために、ガラス材料とほぼ同じまたは類似の熱膨張係数を有する金属からなる。米国特許第4,841,101号(US4,841,101)に記載される実施形態では、金属リングの長さは、ハウジング中の穿孔部または開口部よりも常に短い。米国特許第4,841,101号(US4,841,101)においては、ガラス組成について示されておらず、該フィードスルーの、例えば電池、特にリチウムイオン蓄電池のための具体的な使用も記載されていない。
【0021】
国際公開第2012/110242号(WO2012/110242A4)から、有利には金属、特に軽金属、有利にはアルミニウム、アルミニウム合金、AlSiC、マグネシウム、マグネシウム合金、チタン、チタン合金、鋼、ステンレス鋼、または特殊鋼製の、特にハウジングの、特に電池ハウジングのハウジング部材を貫くフィードスルーが知られており、その際、導体が基体中にガラス封止されており、例えばガラス材料またはガラスセラミック材料でガラス封止されており、そのガラス封止された導体を含む基体はハウジング構成部材の開口部へとはめ込まれる。この場合に、国際公開第2012/110242号(WO2012/110242A4)には、ガラス封止された導体を含む基体は、レーザー溶接によりハウジング構成部材と接合されることが記載されている。国際公開第2012/110242号(WO2012/110242A4)においては、このために、その基体はハウジング部材のハウジングリッド上にレーザー溶接される。
【0022】
国際公開第2012/110242号(WO2012/110242A4)においては、同様に解放装置、例えば溝を有する基体が記載される。しかしながら、そのような溝を備えた基体は、開口部へと取り付けられ、開口部の側壁と接合されている。国際公開第2012/110242号(WO2012/110242A4)から、厚さ全体にわたって解放装置として周回する溝を有するそのような基体を、溶接法によりハウジング部材と接合させることが知られている。さらに、国際公開第2012/110242号(WO2012/110242A4)では、基体の解放装置として唯一の周回する溝しか示されていない。
【0023】
国際公開第2012/110242号(WO2012/110242A4)による実施形態の欠点は、レーザー溶接に際して、基体とハウジング構成部材との境界面に沿って溶接を行わねばならないことであった。このプロセスは、レーザー光線がハウジング構成部材の抜き部および/または基体の輪郭を非常に正確に追従せねばならないため、制御が困難である。特に、ハウジング構成部材のための材料として、そしてまた基体のための材料として軽金属が使用される場合に、不正確なプロセス操作および/またはレーザー光線のエネルギーの変動により、溶接において欠陥が生ずることがある。レーザー光線の出力は、ガラスおよび/またはガラスセラミック材料へと高い熱入力をもたらす。さらに、高温の溶接ゾーンには応力がもたらされる。こうして熱入力により該基体は伸びるが、それに対してガラス材料および/またはガラスセラミック材料は、ほぼ不変のままとなる。これにより生ずる基体の引張応力は、ガラス材料および/またはガラスセラミック材料の圧縮応力に対して基体に作用し、ガラス材料および/またはガラスセラミック材料において漏洩性を引き起こす。一般的に、基体と、軽金属、特にアルミニウム製のハウジング構成部材との溶接、特にレーザー溶接は問題がある。それは、殊に基体へのガラス封止が圧縮ガラス封止の形で行われる場合に言える。本発明者らは、アルミニウム構成部材、例えばアルミニウム基体と、ガラスフィードスルーおよび/またはガラスセラミックフィードスルーとの溶接に際してさらなる問題が生じ得ることを見出した。特に、上記のように圧縮ガラス封止が形成される場合である。これは、ガラス材料および/またはガラスセラミック材料と、それを取り囲んでいる金属の膨張係数が異なって、その金属、例えばアルミニウムがガラス材料上に圧力、したがって応力を及ぼす場合に問題になる。溶接によって、ガラス材料を取り囲んでいるアルミニウムは、その強度を失い得るか、またはその強度は、十分に高い圧力がガラス材料に及ぶにはもはや十分ではない程度まで少なくとも低下し得る。結果的にフィードスルーは漏洩性となる。そのことは、高温作用時にアルミニウムが軟化し、強度を失うため、ガラス材料に必要な圧力をかけることができないことに起因する。
【0024】
本発明の課題は、従来技術の問題および認識される問題を回避することができる基体、およびそのような基体を有する構成部材、特にハウジング部材を報告することである。
【0025】
本発明の第1の態様においては、本発明者らは、少なくとも部分的に軽金属、特にアルミニウムからなる基体へのガラス材料および/またはガラスセラミック材料のガラス封止のために、前記軽金属が、ある特定の特性、特に強度を有さねばならないことを見出した。この場合に、非常に重要な特性は、ガラス封止が中で行われる物体、特に基体の材料の降伏限界である。降伏限界は、材料特性値であり、一軸でトルクのない引張応力の場合に永久塑性変形をそれまでに示さなかったところの応力を指す。降伏限界を下回る場合は、その材料は解放後に弾性的にその当初の形に戻るのに対して、それを上回った場合には、形状変化は残り、したがってある試料では伸びたままとなる。降伏限界の代わりに、材料に関してはまた、0.2%耐力または弾性限界Rp0.2が示され得る。降伏限界とは異なり、弾性限界は、常に一義的に公称応力-全ひずみ図から求めることが可能である。0.2%耐力は、試料の初期長さに対して残る伸びが応力解放後に正確に0.2%である(一軸の)機械的応力である。完全に純粋なアルミニウムの場合に降伏限界は17N/mm2であり、慣例的なアルミニウムの場合に降伏限界は34N/mm2である。アルミニウム合金の場合は、降伏限界は、合金元素に応じて最大400N/mm2であり得る。降伏限界は、公知の方法により測定される。降伏限界は、引張試験により簡単に測定することができる。そのような引張試験は、降伏限界または耐力Rp0.2が測定されるISO 6892の引張試験である。ISO 6892による金属の引張試験は、通常は汎用試験機/引張試験機で実施される。室温での当初の状態におけるアルミニウムまたはアルミニウム合金の降伏限界と、温度処理後、例えばガラス封止時の加熱後および/または記載されるような溶接の場合の加熱後の降伏限界とは区別されるべきである。したがって、本発明は、フィードスルー、特にガラスフィードスルーおよび/またはガラスセラミックフィードスルーの形成のための、加熱後に依然として十分に高い降伏限界を有する金属、特に軽金属を含むハウジング構成部材および/または基体を含む。ガラス封止に際して、有利には450℃~600℃、特に520℃~560℃の範囲内の温度への加熱が行われる。有利には、ガラス封止に際して約540℃への加熱が行われる。
【0026】
上述の基体は、構成部材、特にハウジング部材と接合可能である。該構成部材、特にハウジング部材は、軽金属からなってよく、その基体との接合は、例えば溶接接合を用いて行われる。本発明者らは、本発明の第2の態様において、溶接接合が、有利には確実な溶接を可能にするためには、ある特定の材料組成を有することを見出した。特に有利には、溶接接合は、個々の溶接される構成部材とは異なる材料組成を有する。したがって、本発明は、基体に関してさらに詳細に記載されたある特定の材料、基体の幾何学形状、ならびに構成部材、特にハウジング部材の対応する幾何学形状および材料を含む。この認識は、一般的に軽金属構成部材の溶接接合にも適用可能である。
【0027】
基体とハウジング部材との溶接に際して、ガラス封止は、熱に誘導される機械的負荷によって損傷され得る。本発明は、本発明の第3の態様によれば、ハウジング部材へと基体を溶接する場合のガラス封止の機械的負荷を、確実なガラス封止が溶接接合の製造後にも存在する程度まで少なくとも減らす手段、特に幾何学的手段を備える基体を含む。
【0028】
本発明のさらなる態様においては、ハウジング部材は、基体の受容のために、それが前記の基体および/または上述の材料と一緒に最適に作用するように構成されている。特に、この実施形態は、基体の受容のために予定されているハウジング部材の領域において適切な幾何学形状を有する。
【0029】
本発明のすべてのこれらの個々の態様が、個々の組み合わせで、または特に有利には全体として相乗的に一緒に作用することで、軽金属製のハウジング部材を貫く確実な封止性の効率的に製造されるフィードスルーが提供される。
【0030】
本発明によれば、本発明の第1の態様は、少なくとも1つの機能エレメントが導通される少なくとも1つの開口部を有する基体により解決される。機能エレメントは、一般的に、導電体、特に本質的にピン形状の導体である。しかしながら、該機能エレメントは、機械的保持具、熱電素子、光ファイバ等であってもよい。機能エレメントは、ガラス材料および/またはガラスセラミック材料内で基体の開口部中に保持され、この開口部を貫通している。
【0031】
本発明によれば、本発明の第1の態様による物体、特に基体は、有利には520℃を上回り最大560℃までの温度に1分~60分、有利には5分~30分にわたり加熱した後に40N/mm2より大きい、有利には50N/mm2より大きい、特に80N/mm2より大きい、有利には80N/mm2~150N/mm2の範囲内の降伏限界を有する軽金属、特にアルミニウム合金を含む。本発明者らは、驚くべきことに、軽金属、特にアルミニウム、有利にはアルミニウム合金が上述の特性を有する場合にのみ、それが封止性の、特に気密封止性の圧縮ガラス封止のために十分な圧縮を提供することを見出した。降伏限界に基づき、0.5質量%より大きい、有利には1質量%より大きい、特に2.5質量%より大きく最大で8質量%までの、特に最大で5.0質量%までのMg割合を有するアルミニウム合金が特に有利である。4.0質量%~4.9質量%のMg、0.4質量%~1質量%のMn、および0.05質量%~0.25質量%のCrを有するアルミニウム合金がさらに特に有利である。ガラス封止は、軽金属製の基体へと行うことができ、その基体はハウジングの開口部中にはめ込まれる。その代わりに、導体をハウジングの開口部中に直接的にガラス封止することが可能である。そのような場合において、その際に有利には、ハウジングは、軽金属、特にアルミニウムまたはアルミニウム合金からなる。
【0032】
上述の高いMg割合を有する選択されたアルミニウム合金を用いることで、ガラス封止時の温度処理後にも十分に固い材料が得られ、該材料は冷却後にも、例えばガラス封止後にも激しく軟化されすぎず、圧縮ガラス封止のために十分に高い圧縮をもたらし、こうして持続的に気密封止性のフィードスルーが得られる。気密封止性とは、本発明においては、1barの圧力差において、1×10-8mbar・l/秒未満のヘリウム漏れ速度であると解釈される。
【0033】
圧縮ガラス封止に際して、基体の材料は、ガラス材料またはガラスセラミック材料に圧縮応力を及ぼす。それを保証するために、基体の軽金属、特にアルミニウム合金の熱膨張係数は、機能エレメント、特に導体が中でガラス封止されるガラス材料および/またはガラスセラミック材料よりも大きく選択される。
【0034】
圧縮ガラス封止は、高い機械的強度が得られ、特に気密封止性を有する機械的に堅牢なガラス封止が提供されるという利点を有する。本発明の意味における封止性、特に気密封止性とは、本出願においては、1barの圧力差において、10-8mbar・l/秒未満のヘリウム漏れ速度であると解釈される。特に、本発明によって、上述のヘリウム漏れ速度が達成される気密封止性のガラス封止を得ることができる。圧縮ガラス封止を得るためには、ガラス材料またはガラスセラミック材料の熱膨張係数は基体のそれとは異なる。基体の材料についての熱膨張係数は、例えば18×10-6/K~30×10-6/Kの範囲内であり、かつガラス材料および/またはガラスセラミック材料については15×10-6/Kから25×10-6/Kの間であり、ここで、基体の材料の熱膨張係数は、ガラス材料および/またはガラスセラミック材料のそれよりも大きく選択される。
【0035】
圧縮ガラス封止の他に、持続的に安定で負荷に耐え得るフィードスルーの形成のためには、一方の側での基体の金属の化学的適合性と、もう一方の側でのガラス材料および/またはガラスセラミック材料の化学的適合性とが重要である。多くのフィードスルーでは、基体の金属とフィードスルーのガラス材料および/またはガラスセラミック材料との間の界面領域における化学的結合力も同様に、ガラス封止の安定性、ひいてはフィードスルー全体の安定性に寄与すると推測される。原則的に、基体の金属の成分は、フィードスルーのガラス材料および/またはガラスセラミック材料へと、少なくとも界面領域で拡散し得る。拡散導入された成分は、化学的結合力を低下させることがあり、かつ/またはそれどころかガラス組織を不安定化させることがあるため、フィードスルーの破壊が生じ得る。
【0036】
基体のためのアルミニウム合金として、Mnおよび/またはMgおよび/またはSiおよび/またはZrを添加物として含有するアルミニウム合金を使用する場合にさらに特に有利である。合金、特にアルミニウム合金が、合計で2質量%~10質量%、特に3質量%~8質量%、さらに有利には4質量%~6質量%の添加物を含む場合に特に有利である。アルミニウム合金としてさらに特に有利なのは、4.5質量%のMgおよび0.7質量%のMnを含むAl 5083である。アルミニウム中の添加物、特にMgおよびMnは、高い温度のより長い時間にわたる温度作用に際しても合金が軟化せずに、アルミニウム合金が十分な強度を有するための役割を果たしている。そのことは、ガラス封止時に加熱後でもガラス材料への十分な圧縮を及ぼすことができ、こうしてフィードスルーの封止性を保証することを裏付けている。本発明者らは、これらの材料がさらに上述の意味において、通常使用されるガラス材料および/またはガラスセラミック材料と適合性であることを見出した。
【0037】
機能エレメントを受容する上記の基体がそれを取り囲んでいるハウジングと、特に溶接により接合されるべきである場合に、該基体は、アルミニウムまたはアルミニウム合金製のガラス封止によりアルミニウムまたはアルミニウム合金製のハウジングへと溶接されるべきであり、該アルミニウム合金が種々の添加物、例えばMg等を含む場合に問題が生ずる。異なるアルミニウム合金の溶接は、しばしば亀裂をもたらす。無亀裂とそれによる高い気密封止性は、困難を伴ってのみ達成することができるにすぎない。本発明者らは、合金中のMg割合またはSi割合が低減され、1.5質量%未満である場合に亀裂形成の見込みが大幅に高まることを見出した。亀裂形成は、溶接に際しての異なる成分の異なる固化温度を伴う固化過程に起因する。それを避けるために、Si、Mn、MgまたはZr等の充填材料が、少なくともハウジングおよび/または基体の溶接されるべき領域内に導入され得る。これにより、溶接ゾーンにおける亀裂形成は最小限となり得る。良好な溶接可能性のためには、3質量%超の高いMg割合を有するアルミニウム合金が特に有利である。高い強度への要求も良好な溶接可能性への要求も満たすアルミニウム合金として、本発明者らは、4.5質量%のMgおよび0.7質量%のMnを有するアルミニウム合金Al 5083を突き止めたが、それに限定されるものではない。前記充填材料は、溶接促進剤とも呼ばれ得る。添加物または溶接促進剤を、有利には合金成分の形で有する軽金属、特にMgおよび/またはSiおよび/またはZrおよび/またはMnを含むアルミニウム合金から少なくとも部分的になる基体に関しては、本発明の第2の態様によれば、これらの材料に関して軽金属、有利にはアルミニウムと、特に超高純度アルミニウムとも良好な溶接可能性が達成されることが見出された。アルミニウム合金のMg割合が2質量%~10質量%、特に3質量%~8質量%、さらに有利には4質量%~6質量%の範囲内である場合に、特に良好な溶接可能性が達成される。
【0038】
軽金属、例えばアルミニウム製の第1の物体と、添加物または溶接促進剤を有する軽金属製の第2の物体とが接合される場合に、第1の材料も第2の材料も接合領域で溶融するので、第1の材料と第2の材料とからの混合物が生ずる。有利には、その際に溶接促進剤の割合は、接合領域において第2の物体中の割合に対してより低い。接合領域における材料組成は、したがって個々の接合相手のそれとは異なる。第1の物体が軽金属であり、第2の物体が溶接促進剤を、特に合金成分の形で有する軽金属である軽金属製の2つの物体の接合に際して有利であり、こうして、第1の物体と第2の物体との間に溶接接合が形成される場合に、溶接接合において溶融された第1の物体の材料と溶融された第2の物体の材料とが混合物を生じて存在し、該混合物中の溶接促進剤の含量は、第2の構成部材中の溶接促進剤の含量よりも少ない。
【0039】
基体が、ある厚さを有する少なくとも1つのフランジを備え、該フランジ中の添加物または溶接促進剤の割合、特にMg割合が、特にフランジの厚さに適合可能な場合に特に有利である。逆に、フランジの厚さを添加物または溶接促進剤の割合に適合させることも可能である。
【0040】
驚くべきことに、溶接促進剤または添加物を有する軽金属、例えばMnおよび/またはMgおよび/またはSiおよび/またはZrを有するアルミニウム合金を使用することによって、2つの異なる構成部材、例えばアルミニウムと、Mnおよび/またはMgおよび/またはSiおよび/またはZrを含むアルミニウム合金からなる別のアルミニウムとが亀裂なく互いに溶接され得ることが保証される。亀裂のない溶接により1×10-8mbar・l/秒未満のヘリウム漏れ速度を有する気密封止性接合が得られる。
【0041】
さらに、驚くべきことに、アルミニウムとアルミニウム合金との微小亀裂のない接合は、Mn割合および/またはMg割合および/またはSi割合および/またはZr割合が1.5質量%より大きく、有利には2質量%より大きい場合に達成されることが判明した。Mn割合および/またはMg割合および/またはSi割合および/またはZr割合が1.5質量%未満である場合に、微小亀裂形成は大幅に増加する。微小亀裂形成は、溶接に際しての異なる成分の異なる固化温度を伴う固化過程に起因する。溶接領域におけるMgおよび/またはMnおよび/またはSiおよび/またはZrの割合が、微小亀裂を生じないように調整される場合に特に有利である。添加物または溶接促進剤に関する上限は、10質量%、有利には8質量%、特に6質量%である。2つの構成部材、例えばそれぞれ軽金属製の基体とハウジングとの接合に際して、添加物または溶接促進剤は、基体中に存在し得るか、しかしながらまた該基体が中にはめ込まれるハウジング中にも存在し得る。上記の良好な溶接可能性は、有利には軽金属、特にアルミニウム、有利には超高純度アルミニウム製の構成部材、特にハウジング部材が開口部中に基体を受容するに際して、該基体がガラス封止と一緒に、有利にはその開口部を閉じる場合に特に重要である。基体と構成部材、特にハウジング部材との接合のためには、該ハウジング部材が、基体の一部、特に張り出し部、有利にはフランジを受容するための抜き部または相フランジを有する場合に特に有利である。有利には、相フランジは、ハウジング部材の厚さに対して低減されている厚さを有する。ハウジング部材の相フランジは、有利には段付き穴の形で構成されている。この幾何学形状は、ハウジング部材の打ち出し加工および/または別の適切な方法によっても作製することができる。同様に、相応の方法の組み合わせも可能である。相フランジは、1つの実施形態においては、導体に対してほぼ垂直に延びる第1の境界面を有し、基体の一部、特に張り出し部またはフランジは、導体に対してほぼ垂直に延びる第2の境界面を有する。第1の境界面および第2の境界面は、互いに直接的に向かい合っており、かつ/または互いに接続しており、その際、有利にはハウジング部材の相フランジは、基体の張り出し部またはフランジへと、有利にはL字型で噛み合っている。有利には、第1の境界面と第2の境界面とは接合されており、好ましくは固結されており、特に気密封止性接合されている。該接合は、例えば溶接、有利にはレーザー溶接によって行われる。その結果、ハウジング部材と基体との間は溶接接合される。基体とハウジング部材との境界面の形成に応じて、溶接、特にレーザー溶接は、重ね溶接および/または突き合わせ溶接である。2質量%~10質量%のMg割合および/またはMn割合および/またはSi割合および/またはZr割合を有するアルミニウム合金の使用により、基体とハウジング部材との微小亀裂のない溶接接合がもたらされる。基体の一部、例えば基体のフランジまたは張り出し部を受容するための相フランジまたは抜き部を有する構成部材、特にハウジング部材の実施形態によって、該基体を、効率的かつ確実な様式および方式でハウジング部材へと継ぎ合わせることに成功し、国際公開第2012/110242号(WO2012/110242A4)でのように圧入は必要ない。さらに、基体の張り出し部またはフランジを受ける相フランジまたは抜き部の示された配置により、それらの平面を隙間なく互いに接合させることが可能である。基体の領域とハウジング部材の領域とは重なり、ハウジング部材の材料および/または基体の材料によって溶接される。国際公開第2012/110242号(WO2012/110242A4)から公知のような突き合わせ接合に対して、基体およびハウジング部材はより低いレーザーエネルギーにより互いに接合され得ることから、より細いレーザーシームを実現することもでき、かつ/またはレーザーシームの経路は、特に正確な位置決めを必要としない。この場合にレーザーエネルギー量は、貫通溶接される材料および材料の厚さにより本質的に影響される。
【0042】
基体を受容するためのハウジング部材および基体がハウジング部材と溶接領域において突き合わせ溶接により接合される場合に、位置(P1、P2)の溶接領域は、基体の第1の部分とハウジング部材の第2の部分とを含む。溶接領域の位置(P1、P2)が基体および/またはハウジング部材のアルミニウム合金のMg割合および/またはSi割合および/またはZr割合に応じて選択される場合に特に有利である。さらに、溶接領域は、深さ(T1、T2)によっても特徴付けられており、ここで、溶接領域の深さ(T1、T2)は、アルミニウム合金のMg割合および/またはSi割合および/またはZr割合に応じて選択されている。
【0043】
基体がフランジまたは張り出し部を有し、ハウジング部材が抜き部または相フランジを有する場合に、基体とハウジング部材とは、第1の溶接領域において重ね溶接によって接合され、第2の溶接領域において突き合わせ溶接によって接合され得る。そのような場合に、突き合わせ溶接の場合の第2の溶接領域は、基体および/またはハウジング部材のアルミニウム合金のMg割合に応じた位置(P1、P2)を有する。
【0044】
ハウジング部材の抜き部または相フランジが、導体に対してほぼ垂直に延びる第1の境界面を有し、基体、特にフランジまたは張り出し部の部分が、導体に対してほぼ垂直に延びる第2の境界面を有し、第1の境界面と第2の境界面とが互いに向き合っている場合に特に有利である。それは、特にハウジング部材における段付き穴によって達成され得る。この場合に、段付き穴という概念は、製造のために実際に切削加工で開削されることを意味せずに、所望の構造の非切削の製造方法、例えば打ち出しおよび/または変形が有利である。
【0045】
特に有利には、段付き穴の深さおよび基体の張り出し部またはフランジの材料厚さは、基体の表面とハウジング部材の表面とが互いに整列するように選択され得る。フランジまたは張り出し部の厚さおよび基体をフランジと接合させるべきハウジング部材の抜き部または相フランジの厚さは、とりわけ必要なエネルギーを決め、ひいては基体への熱入力を決める。フランジの厚さの相フランジの厚さに対する厚さ比は、材料の記載された選択の他に溶接パラメータを決める。基体のフランジの厚さが、相フランジの50%から100%の間、有利には70%~80%である場合に特に有利である。特に有利には、フランジの厚さは、相フランジの厚さの100%である。すなわち基体のフランジと、ハウジングの相フランジまたは抜き部は、同じ厚さを有する。有利には、ハウジングのための材料と基体のための材料は異なっていてよい。特に、フランジまたは相フランジの厚さを、その材料の添加物または溶接促進剤、例えば基体の材料に適合させることが可能である。その反対に、フランジまたは相フランジの厚さを、その材料の添加物または溶接促進剤に適合させることも可能である。
【0046】
溶接過程で生ずる熱を排出し、基体およびハウジング部材を熱的かつ機械的に解放するために、本発明の第3の態様による基体は、少なくとも2つの溝または凹部、特に2つの周回する溝または凹部を互いに間隔Aを保って有する。それらの溝によって、基体を通じた熱流は低減され、かつ/または導体の軸線に対して垂直方向の基体の機械的負荷は回避される。それというのも基体は、導体の軸線に対して垂直方向に変形可能であり、有利には可逆的に変形可能であるからである。それらの溝の代わりに、遊離には隣り合って形成される複数の穿孔が設けられていてもよい。
【0047】
互いに間隔Aで少なくとも2つの溝を有する基体の実施形態によって、特に熱流は、例えば基体の外側から内側に向かって減少するか、またはそれどころかほぼ完全に遮られる。これにより、例えばガラス封止が行われる基体の外側でのレーザー溶接による内側への熱入力は十分に回避される。それによりまたしても、ガラス封止に作用することによりガラス材料に対する圧縮を低減する応力、特に引張応力がガラス材料および/またはガラスセラミック材料にもたらされないこととなる。その圧縮は引張応力により低減されないので、ガラス封止の封止性が保証される。さらに、2つの溝は、基体が変形し得ることを可能にする。これにより、ガラス材料またはガラスセラミック材料に伝えられる機械的負荷を、効率的に受け止めることができる。
【0048】
ピンの軸線に対して垂直方向での基体の機械的負荷が避けられ、ピンの軸線が本質的に傾かないように、少なくとも2つの溝または凹部が設けられている場合に特に有利である。
【0049】
基体と、例えばハウジングとを簡単に接合し得るために、基体は、基体の張り出し部またはフランジの領域内で厚さD3をもって段状に形成されており、その際、有利には少なくとも1つの第1の溝または凹部はフランジの領域内に存在する。基体が互いに間隔Aを有する2つの周回する溝または凹部を有し、それにより基体を通じた熱流が低減される場合が特に有利である。有利には、この間隔Aは、0.1mmから1mmの間、有利には0.1mmから0.5mmの間である。間隔Aの選択によって、基体を通じた外側から内側への熱流の大きさと、有利には同様に溝の機械的解放機能を調整することができる。これによって、熱入力を調整することが可能である。組み合わせで、かつ/または代替として予定されるさらなる追加の熱入力の調整手法は、周回する溝または凹部の深さT1、T2の選択である。
【0050】
溝の代わりに、隣り合って存在する多数の穿孔が設けられていてもよい。
【0051】
第1の溝および第2の溝、または隣り合って配置されている第1の穿孔列および第2の穿孔列が、フランジまたは張り出し部の領域における基体の厚さD3の半分より大きい深さT1、T2を有する場合に有利である。溝または隣り合って存在する穿孔列が反対側、すなわちフランジの表面上に形成される場合に、基体の反対側の表面にもたらされた第1および第2の溝または凹部の深さT1、T2が、基体の断面における溝および/または穿孔の最大深さが一致するように選択されている場合に有利である。それは特に、少なくとも1つの溝および/または穿孔列が、フランジの半分の厚さよりも深いことを意味する。この場合に、少なくとも1つの溝および/または穿孔列は、フランジの領域内に配置されている。有利には、少なくとも2つの溝および/または穿孔列は、フランジの半分の厚さよりも深い。基体を断面で見たときに、この配置では、それによりバネ様の構造が形成され、その構造が、溶接に際してガラス材料および/またはガラスセラミック材料に作用する熱膨張により引き起こされる力を効果的に受け止めることが分かる。
【0052】
上記のように、基体は、少なくとも2つの溝または凹部、特に周回する溝を備える。周回する溝は、有利には一貫して基体の周りを周回している。その溝によって、基体の解放は、基体において材料が狙い通りに弱められることによりもたらされる。基体がフィードスルーの方向に対して直交方向に変形可能であり、かつバネ様に挙動し得るために、本発明の基体は、2つの周回する溝を備え、その際、第1の溝は、第1の基体表面中にもたらされ、第2の溝は、第2の基体表面中にもたらされ、第1の基体表面と第2の基体表面とは互いに反対側にある。そのことは、特に、本発明によるハウジングの製造に際してレーザー溶接時に生じ得る基体の材料の熱膨張において、しかしながら完成した構成部材の駆動の間にも、基体がバネ形状で、特にアコーディオン形状に、有利には可逆的に変形し得るという利点を有する。このバネ形状、特にアコーディオン形状の変形によって、断熱材料、特にガラス材料および/またはガラスセラミック材料への機械的負荷は、特に効果的に受け止められ得る。特に有利には、この変形の形によって、しかしながらまた導体の軸線の傾斜も十分に回避される。
【0053】
溝の形に代えて、解放装置として、隣り合って配置される穿孔列が設けられていてもよい。これらの穿孔は、基体の材料が弱められる、いわば基体の材料中のクレーターを表す。特に、前記穿孔は、クレーター形状、円柱形状、ピラミッド型、または任意の中間形状および/またはこれらの形状の組み合わせで存在し得る。溝について記載されたすべての実施形態および/または効果は、穿孔列にも当てはまる。
【0054】
第1の溝と第2の溝とが間隔をおいて配置されており、間隔Aを有する場合に特に有利である。有利には、その間隔Aは、0.1mm~1.0mm、有利には0.1mm~0.5mmの範囲内である。一般的に凹部とも称され得る2つの溝が基体に設けられる場合に、第2の溝は、溶接領域と間隔が置かれるように基体中に配置されている。すなわち、有利には第2の溝は、導体が中でガラス封止される基体の領域中にあり、その一方で第1の溝は溶接領域のより近くに存在する。ハウジングへの気密封止性のフィードスルーは、本発明の3つのすべての態様が考慮される場合に提供される。すなわち、まず基体の材料は十分な強度が提供されるように選択され、これは、ある一定の範囲で降伏限界を有する材料の選択に基づき明らかになるため、こうして基体は、決められた材料の組み合わせを有するハウジングと溶接によって接合され、その際、亀裂形成と溶接時の不所望な熱入力は周回する溝により回避される。
【0055】
気密封止性のフィードスルーのさらなる利点は、ハウジング部材の厚さが、基体中のガラス封止長さよりも明らかに薄い場合に得られる。そのような場合に、非常に軽く薄い、例えばアルミニウム、特に超高純度アルミニウム製のハウジングを実現することができる。それにもかかわらず、導体材料のために十分なガラス封止長さが提供される。ハウジング部材が厚さD1を有し、基体が厚さD2を有する場合に特に有利であり、その際、基体の厚さD2は、ほぼガラス封止長さに相当し、厚さD1に関しては、それが厚さD2の20%~80%の範囲内であることが適用される。厚さD1およびD2は、それぞれフランジまたは相フランジの外側領域において測定される。
【0056】
導体、特にピン形状の導体が中でガラス封止される追加の基体によるハウジング部材を通じたフィードスルーの実施形態においては、該フィードスルーを予め作製することが可能である。それは特に、ピン材料が基体中にガラス封止され、引き続きそれがハウジング部材、特に電池セルへと取り付けられることを意味する。その際、基体は、フィードスルーのその都度の製造技術および形、ならびにハウジング部材の製造技術および形に最適化されて設計され得る。特に、予め作製することにより、ハウジング部材へと直接的にガラス封止する場合よりも本質的に小さい加熱装置が使用され得る。それというのも、ハウジング部材全体を、例えば炉内で加熱する必要がなく、本質的により小さい寸法を有する基体だけが加熱されるからである。さらに、フィードスルーを基体および導体、特に本質的にピン形状の導体から予め作製することが可能である実施形態は、ハウジング部材の開口部へと、例えば1段階法において、例えばハウジング部材の冷間硬化手法を用いて廉価にフィードスルーを挿入することを可能にする。具体的にはそれは、まずハウジング部材、例えばリッドへと開口部を、例えば打ち抜きにより導入することを意味する。そのハウジングは、加熱されないので冷間硬化されている。これに対して、基体は、ピン形状の導体がガラス材料またはガラスセラミック材料でガラス封止される場合に加熱されるので軟質である。この様式および方式において、構造的に強固な電池セルハウジングを、特にフィードスルーの領域において作製し得ることが可能である。それというのも、例えばハウジング部材への直接的なガラス封止とは異なり、ハウジング部材、特にカバー部材の冷間硬化の損失が生じないからである。さらなる利点は、ハウジング部材の材料厚さが、ガラス封止が中で行われる基体に対して明らかにより小さく選択され得ることである。例えば、ハウジング部材の材料厚さは、1.5mm以下であり得るのに対して、基体は、強度の理由から2.0mm、特に3.0mm以上の厚さを有する。ハウジングまたはハウジング部材の材料厚さD1は、有利には1mmから3mmの間、有利には1.5mmから3mmの間であり、基体の厚さD2は、2mmから6mmの間、有利には2.5mmから5mmの間である。この場合に、基体の厚さD2は、常にフィードスルーが使用されるハウジングまたはハウジング部材の、特に電池リッドまたはキャパシタリッドの材料厚さに適合されて選択される。それに対して、直接的なガラス封止の場合には、不必要に大きな材料厚さが必要とされる。その際、厚さD2は、ガラス封止長さELに相当する。
【0057】
基体を有するフィードスルーの実施形態のさらなる利点は、基体とハウジング部材のための材料が、特に材料品質および合金の選択の点で様々に選択され得ることである。こうして、ハウジング部材のためのアルミニウム、特に超高純度アルミニウム中に、有利には2質量%~10質量%のMgおよび/またはSiおよび/またはZrの割合を有するアルミニウム合金製の基体が挿入される材料の組み合わせの使用によって、十分に亀裂なしの溶接が達成される。該フィードスルーは、ハウジング部材中で基体と、溶接、ろう付け、圧入、クリンチング、または収縮によって気密封止性接合され得る。フィードスルーとハウジング構成部材との、例えば溶接による接合に際して、ガラス材料またはガラスセラミック材料の損傷を避けるために、温度入力はできる限り低いことが留意される。この場合に、上記のように、基体の材料が、有利には2質量%~10質量%のMnおよび/またはMgおよび/またはSiおよび/またはZrの割合を有するアルミニウム合金である場合に有利である。これにより亀裂が回避され、気密封止性が達成される。気密封止性とは、本出願においては、ヘリウム漏れ速度が、1×10-8mbar・l/秒未満であることを意味する。多段階法においてフィードスルーのためにプラスチックシールを提供せねばならない従来技術に対して、本発明によるフィードスルー構成部材とハウジング部材との気密封止性接合は、単一の簡単な方法工程で製造することが可能である。
【0058】
さらに、基体の選択は、ハウジング部材の材料の観点でも行うことができ、これは、縁部の設計にも材料の硬度にも関連し、特にハウジングを閉じるための方法にも関連する。電池セルのハウジングが、例えばアルミニウム、特に超高純度アルミニウムからなる場合に、亀裂形成の回避のために、基体のための材料として、Mnおよび/またはMgおよび/またはSiおよび/またはZrを有するアルミニウム合金が選択される場合に有利である。
【0059】
さらに、電池セルのハウジングのハウジング部材におけるフィードスルーの他に、なおも別の機能、例えば安全弁および/または電池充填孔を導入することが可能である。
【0060】
記載されるMgおよび/またはSiおよび/またはZrを有するアルミニウム合金の他に、ハウジング部材および/または基体、有利には本質的にリング形状の基体は、材料として金属、特に軽金属、例えばチタン、チタン合金、マグネシウム、マグネシウム合金、AlSiC、しかしまた鋼、ステンレス鋼、または特殊鋼を含み得る。チタン合金としては、例えばTi6246および/またはTi6242が使用され得る。チタンは生体適合性材料であるので、医学的用途のために、例えば補綴物において使用される。同様に、格別の強度、耐久性、および低い重量のため、特定の用途において、例えば化学的分析または化学的合成、エネルギー生成装置において、レーシングにおいて、しかしまた航空宇宙用途のためにも好んで使用される。
【0061】
ピン形状の導体のためには、特に、ピン形状の導体が電気化学的セルまたは電池セルのカソードに接続される場合には銅(Cu)または銅合金が使用され、導体、特にピン形状の導体がアノードに接続される場合にはアルミニウム(Al)またはアルミニウム合金が使用される。ピン形状の導体のための別の材料は、マグネシウム、マグネシウム合金、銅合金、CuSiC、AlSiC、NiFe、銅芯、すなわち銅内側部を有するNiFe外被、銀、銀合金、金、金合金、ならびにコバルト-鉄合金であり得る。
【0062】
アルミニウムまたはアルミニウム合金としては、2質量%~10質量%、特に3質量%~8質量%、有利には4質量%~6質量%の範囲のMn割合および/またはMg割合および/またはSi割合および/またはZr割合を有するアルミニウム合金も該当する。Mgおよび/またはSiおよび/またはZrを有するアルミニウム合金は、特に基体のために使用される。ハウジングのためには、有利にはこれらの元素を有しないアルミニウムが使用される。これらの元素を有しないアルミニウムでの欠点は、該材料が加熱時に軟化するため、金属ピンが中でガラス封止される基体のためには適していないことである。ガラス封止における加熱時の軟化によって、ガラス材料を取り囲んでいる金属、特にアルミニウムがもはや、封止性のフィードスルーを得るために必要なガラス材料への圧縮を加えないと思われ得る。ガラス封止に際して、加熱は、有利には520℃~560℃の範囲の温度に長時間にわたり、有利には1分間超から60分間までの長時間にわたり行われる。
【0063】
40N/mm2から150N/mm2の範囲内の降伏限界と、十分に高い割合の溶接促進剤を有することで、亀裂形成が確実に回避される可能なアルミニウム合金を、以下の表1Aおよび表1Bに示す。
【0064】
表1A
ガラス封止のためのアルミニウム合金および溶接可能性
【表1】
【0065】
表1B
ガラス封止のためのアルミニウム合金
【表2】
【0066】
表1Aおよび表1Bで求められた降伏限界についてのすべての値は、引張試験によって求められた。
【0067】
ガラス封止が中で行われ得ると共に、亀裂形成なしに溶接可能性を保証する基体のための特に有利な材料として、本発明者により驚くべきことにアルミニウム合金5083が見出された。この合金は、亀裂形成なしでの良好な溶接可能性だけでなく、該合金がガラス封止において540℃に加熱した後に圧縮ガラス封止のために十分な強度を有するという点で優れている。
【0068】
特に導体のための銅としては、
Cu-PHC 2.0070
Cu-OF 2.0070
Cu-ETP 2.0065
Cu-HCP 2.0070
Cu-DHP 2.0090
が該当する。
【0069】
本出願においては、軽金属とは、5.0kg/dm3未満の比重を有する金属と解釈される。特に、軽金属の比重は、1.0kg/dm3~3.0kg/dm3の範囲内である。
【0070】
軽金属がさらに、導体、例えばピン形状の導体または電極接続構成部材のための材料として使用される場合に、該軽金属はさらに、なおも5×106S/m~50×106S/mの範囲内の比導電率を特徴とする。圧縮ガラスフィードスルーにおいて使用する場合に、さらに20℃~300℃の範囲についての熱膨張係数αは、18×10-6/K~30×10-6/Kの範囲内である。
【0071】
一般的に、軽金属は、350℃~800℃の範囲内の溶融温度を有する。
【0072】
有利には、基体は、リング形状の基体として、有利には円形、しかしまた長円形に形成されている。長円形は、特に、フィードスルーが1つ以上の開口部内に挿入されているハウジング部材、特に電池セルのリッド部が狭い縦長の形を有し、かつピン形状の導体が開口部内でハウジング部材を通じて貫通されるガラス材料またはガラスセラミック材料が完全に基体とピン形状の導体との間に導入されている場合に有利である。そのような実施形態は、本質的にピン形状の導体と本質的にリング形状の基体とからなるフィードスルーを予め作製することを可能にする。
【0073】
有利には、1つの実施形態においては、ガラス材料またはガラスセラミック材料としては、基体および/または本質的にピン形状の導体の溶融温度より低い溶融温度を有する材料が選択される。本明細書では低い溶融温度を有するガラス組成物またはガラスセラミック組成物が特に有利である。そのような特性を有する組成物は、例えば以下の成分:
P2O5 35mol%~50mol%、特に39mol%~48mol%
Al2O3 0mol%~14mol%、特に2mol%~12mol%
B2O3 2mol%~10mol%、特に4mol%~8mol%
Na2O 0mol%~30mol%、特に0mol%~20mol%
M2O 0mol%~20mol%、特に12mol%~20mol%、ここでMは、K、Cs、Rbであり得る
PbO 0mol%~10mol%、特に0mol%~9mol%
Li2O 0mol%~45mol%、特に0mol%~40mol%、有利には17mol%~40mol%
BaO 0mol%~20mol%、特に0mol%~20mol%、有利には5mol%~20mol%
Bi2O3 0mol%~10mol%、特に1mol%~5mol%、有利には2mol%~5mol%
を含む。
【0074】
以下の成分:
P2O5 38mol%~50mol%、特に39mol%~48mol%
Al2O3 3mol%~14mol%、特に2mol%~12mol%
B2O3 4mol%~10mol%、特に4mol%~8mol%
Na2O 10mol%~30mol%、特に0mol%~20mol%
K2O 10mol%~20mol%、特に12mol%~19mol%
PbO 0mol%~10mol%、特に0mol%~9mol%
を含む組成物が特に有利である。
【0075】
上述のガラス組成物は、低い溶融温度および低いTgを特徴とするだけでなく、該組成物が電池電解質に対して十分に高い耐久性を有し、その点で必要とされる長時間耐久性が保証されることも特徴とする。そのようなガラス組成物は、特に有利には少なくともフィードスルーのコア領域に導入される。
【0076】
有利であると示されるガラス材料は、公知のアルカリ金属リン酸塩ガラスより明らかに低い全アルカリ金属含量を有する安定なリン酸塩ガラスである。
【0077】
リン酸塩ガラスの一般的に高い結晶化安定性によって、ガラスの溶融は一般的に600℃未満の温度でも妨げられないことが保証される。それは、示されたガラス組成物をソルダーガラスとして使用し得ることを可能にする。それというのも、ガラス組成物の溶融が、一般的に600℃未満の温度でも妨げられないからである。
【0078】
上述のガラス組成物は、有利にはガラス構造中に導入されているLiを有する。これにより、該ガラス組成物は、特にLiを基礎とする、例えばエチレンカーボネートおよびジメチルカーボネートからの1:1混合物を含む1MのLiPF6溶液を基礎とする電解質を有するLiイオン蓄電装置のために適している。
【0079】
低ナトリウムまたはナトリウム不含のガラス組成物が特に有利である。それというのも、アルカリ金属イオンの拡散は、Na+>K+>Cs+の順序で起こり、したがって低ナトリウムまたはナトリウム不含のガラスは、電解質、特にLiイオン蓄電装置で使用される電解質に対して特に耐久性があるからである。
【0080】
さらに、そのようなガラス組成物は、14×10-6/Kより高い、特に15×10-6/Kから25×10-6/Kの間の20℃~300℃の範囲での熱膨張αを示す。上述のガラス組成物のさらなる利点は、該ガラスと共にそれを取り囲んでいる軽金属または、特に金属ピンの形の導体の金属が、保護ガス雰囲気ではないガス雰囲気下でも溶融可能であることであると考えられる。今までの方法に反してAl溶融のために、真空も必要とされない。むしろ、そのような溶融は空気下でも行うことができる。両方の種類の溶融のために、保護ガスとしてN2またはArを利用することができる。溶融のための前処理として、金属、特に軽金属は、狙い通りに酸化または被覆する必要がある場合は精製および/またはエッチングされる。その過程の間には、300℃から600℃の間の温度が、0.1K/分~30K/分の加熱速度で、かつ1分~60分の保持時間で使用される。
【0081】
溶融温度は、例えばR.Goerke,K.-J.Leers: Keram.Z.48(1996)300-305に記載されるように半球温度を介して、またはDIN 51730、ISO 540、もしくはCEN/TS 15404および15370-1に従って測定され得る(それらの開示内容は、全範囲において本出願で援用される)。半球温度の測定は、独国特許出願公開第102009011182号明細書(DE102009011182A1)に詳細に記載されている(その開示内容は、全範囲において本出願で援用される)。独国特許出願公開第102009011182号明細書(DE102009011182A1)によれば、半球温度は、検鏡法においてホットステージ顕微鏡を用いて測定され得る。半球温度は、当初は円柱形であった試料体が半球形状の状態に溶融される温度を示す。半球温度は、相応の専門文献から認められるように、約logη=4.6dPasの粘度に割り当てることができる。例えばガラス粉末の形の結晶不含のガラスが溶融され、再び冷却されて凝固する場合に、通常は、同じ溶融温度でも再び溶融され得る。そのことは、結晶不含のガラスとの接合部に関しては、その接合部が永続的にさらされ得る作業温度が溶融温度よりも高くてはならないことを意味する。本発明により使用されるガラス組成物は、一般的にしばしば、溶融され、接合されるべき構成部材と熱の作用下で接合部を生ずるガラス粉末から製造される。溶融温度または融解温度は一般的に、ほぼ、いわゆるガラスの半球温度の高さに相当する。低い溶融温度または融解温度を有するガラスは、ソルダーガラスとも呼称される。溶融温度または融解温度の代わりに、そのような場合には、はんだ付け温度またはろう付け温度により表現される。溶融温度またははんだ付け温度は、半球温度から±20Kだけ相違し得る。
【0082】
電池ハウジングまたは電池セルハウジングのハウジング部材が、外側および内側を有し、かつフィードスルーの基体とハウジング部材の内側または外側とが、特に例えば溶接によって接合される場合に特に有利である。
【0083】
このために、本発明によれば、基体が、ハウジング部材の抜き部または相フランジ中に噛み合う張り出し部またはフランジを有することが予定されている。その際、抜き部または相フランジの領域において、基体とハウジング部材とは溶接によって接合され得る。
【0084】
該フランジは、溶接ゾーン中のフランジ材料のMg含量および/またはSi含量および/またはZr含量に適合可能な厚さを有する。
【0085】
基体とハウジング部材との間の溶接接合のためには、幾つかの選択肢が存在する。ハウジング部材が張り出し部を有しない場合に、基体およびハウジング部材は、突き合わせ溶接によって互いに接合され得る。
【0086】
張り出し部が存在する場合に、基体およびハウジング部材は、重ね溶接によって接合されることが可能である。張り出し部の場合には、重ね溶接と同様に突き合わせ溶接を行うことも可能である。
【0087】
有利には、レーザー溶接領域の位置は、接合に適用される合金、特にアルミニウム合金へと適合可能であり、特にそれは、溶接ゾーンにおけるMg含量および/またはSi含量および/またはZr含量および/またはMn含量に関連する。また基体での溶接深さは、例えば溶接ゾーンにおけるMg含量および/もしくはSi含量および/もしくはZr含量および/もしくはMn含量、ならびに/または張り出し部の厚さに可変的に適合可能である。前記のように、Mg含量および/またはSi含量および/またはZr含量および/またはMn含量は、溶接過程または溶接化過程における亀裂形成を決定的に決める。
【0088】
ハウジング部材の他に、本発明はまた、電気装置、特に蓄電装置、有利には電池セルを提供する。その一方で、電気装置はまた、キャパシタ、特にスーパーキャパシタであり得る。ハウジングは、少なくとも1つの開口部を有する少なくとも1つのハウジング部材を有し、ハウジング部材の開口部が、基体中にガラス封止されている少なくとも1つのピン形状の導体を有するフィードスルーを受容することを特徴とする。
【0089】
さらに有利には、そのためにハウジングが提供される電池セルは、リチウムイオン電池のための電池セルである。
【0090】
軽金属製のハウジング中のフィードスルーは、多くの分野で使用することができる。例えば、電池またはキャパシタまたはスーパーキャパシタのための軽金属製のハウジングが考えられる。しかしながら、本発明によるフィードスルーはまた、航空宇宙技術または医療技術において使用することもできる。航空宇宙技術においては、それはとりわけ軽量構造用途のためのフィードスルーに関連している。同様に、医療技術、特に補綴物において、および/またはインプラントのために使用可能である。
【0091】
さらに、本発明は、少なくとも1つの本質的にピン形状の導体を有するフィードスルーの製造方法であって、以下の工程:
- 導体、特異本質的にピン形状の導体および基体を準備する工程、
- 前記導体、特に本質的にピン形状の導体を、前記基体中にガラス材料またはガラスセラミック材料内でガラス封止する工程、
- 前記基体を、ハウジング、特に張り出し部、有利にはフランジの一部と、ハウジング部材の抜き部とレーザー溶接により接合させる工程、
を含む、方法を提供する。
【0092】
有利には、基体は、基体とハウジング部材との間の間隙を避けるために、張り出し部、有利にはフランジの領域内で、レーザー溶接前に、有利には締結装置を用いてハウジング部材の抜き部または相フランジへと押し付けられる。
【0093】
ハウジング部材を通じた基体中へのレーザー光線溶接を行うことが特に有利である。
【0094】
以下で本発明を実施例および図面をもとに詳細に説明するつもりであるが、それらに限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【
図2】金属ピンおよび基体を有し、該基体がハウジング部材の抜き部中に挿入されている本発明によるハウジング部材の第1の実施形態を示す。
【
図3】基体/ハウジング部材の接合部の詳細図を示す。
【
図4】基体とハウジング部材とが突き合わせ溶接によって接合されている基体/ハウジング部材の接合部の詳細図を示す。
【
図5】基体とハウジング部材とが重ね溶接によって接合されている基体/ハウジング部材の接合部の詳細図を示す。
【
図6】基体とハウジング部材とが突き合わせ溶接だけでなく重ね溶接によっても接合されている基体/ハウジング部材の接合部のさらなる詳細図を示す。
【
図7】金属ピンおよび基体を有し、該基体がハウジングの抜き部中に挿入される本発明によるハウジング部材の代替的な実施形態を示す。
【0096】
図1a~
図1dにおいて、金属ピンをガラス材料またはガラスセラミック材料内で受容するための、打ち抜き法により得られるリングとして形成されている本発明による基体の1つの実施形態が示されている。基体10は、
図1aにおいては断面で示されており、
図1bにおいては上面図で示されており、
図1cにおいては立体図で示されている。基体は、導体がガラス材料またはガラスセラミック材料内で貫通する開口部13を有する。開口部13は、基体中に、有利には打ち抜きによって設けられていてよい。さらに、基体10は、ハウジング部材の抜き部または相フランジに取り付けられ得るフランジまたは張り出し部30を有する。フランジとは、本発明の場合には、特により小さい厚さを有する基体のリング形状の拡張部と解釈される。フランジは、別の部分、ここでは基体と接合させるための基体の部分である。したがって、フランジ30は、接合エレメントを表す。フランジの役割は、とりわけ接合されるべき部分の互いの位置決めである。さらに、基体のフランジは、基体を相フランジを介してハウジングと接合させる役割を担う。記載した可撓性と熱的な切り離しをもたらすために基体中に設けられている周回する両方の溝または穿孔列100、102を十分に認めることができる。
【0097】
特に
図1dは、周回する両方の溝100、102を詳細に示している。両方の溝100、102は、反対側の基体表面104、106に、有利には基体10の張り出し部またはフランジ30の領域内に形成される。前記溝は、異なる深さT
1、T
2を有する。溝100は、深さT
1に割り当てられ、溝102は、深さT
2に割り当てられる。深さT
1は、本発明の実施形態においては、限定されるものではないが、T
2より大きい。溝100の最も深い点P
1の平面は、溝102の最上部の点P
2に対して間隔Aにある。溝100と溝102との間の間隔を示す間隔Aは、例えば0.1mm~1mm、有利には0.1mm~0.5mmである。溝100の深さT
1は、例えば0.1mm~4mm、有利には1mm~3mmであり、溝の深さT
2は、特に0.1mm~4mm、有利には1mm~2mmである。
【0098】
第1の溝100は、示された例では、張り出し部またはフランジ30の領域内に形成され、第2の溝102は、基体自体に形成される。第1の溝100と第2の溝102との間の間隔Aは、先に述べたように、有利には0.1mm~1.0mm、有利には0.1mm~0.5mmである。
【0099】
基体は、厚さD2を有し、それは本質的にガラス封止長さELに相当する。基体の張り出し部またはフランジ30は、厚さD3を有し、それは、基体の厚さD2よりも小さい。有利には、D3は、厚さD2のわずか10%~50%、有利には20%~40%である。有利には、厚さD2は、3mm~7mm、有利には4mm~6mmの範囲内である。厚さD3は、0.5mm~2.5mm、有利には1.0mm~2.0mmである。基体の直径Dは、30mm~40mmであり、フランジ30の長さは、0.5mmから5mmの間である。
【0100】
開口部13へと、ガラス材料またはガラスセラミック材料内で導体、有利にはピン形状の導体がガラス封止される。それは、
図2および
図7だけに示されている。
図2および
図7に示される開口部13へのガラス材料またはガラスセラミック材料内での導体のガラス封止は、当業者によれば
図1a~6による別の実施形態に容易に転用することができる。基体およびガラス材料またはガラスセラミック材料の熱膨張係数が異なる場合に特に有利である。基体の熱膨張係数は、18×10
-6/K~30×10
-6/Kの範囲内であり、ガラス材料またはガラスセラミック材料の熱膨張係数は、15×10
-6/Kから25×10
-6/Kの間である。基体の材料の熱膨張係数が、ガラス材料またはガラスセラミック材料のそれより大きい場合に、圧縮ガラス封止が利用可能である。
【0101】
図2および
図3は、基体10においてガラス材料またはガラスセラミック材料14内でガラス封止されている金属ピン12を有する基体10が、ハウジング部材20中に挿入された本発明の1つの実施形態を示す。
【0102】
この場合に、
図2はハウジング部材と基体の全体を示し、
図3は、基体とハウジング部材の接合部を詳細に示している。ガラス封止は、いわゆる圧縮ガラス封止である。圧縮ガラス封止は、ガラス材料またはガラスセラミック材料の熱膨張係数と、それを取り囲んでいる基体の金属の熱膨張係数とが異なる場合に得られる。特に圧縮ガラス封止は、基体の熱膨張係数が、基体のフィードスルー開口部中のガラス材料および/またはガラスセラミック材料のそれより大きい場合に生ずる。圧縮ガラス封止は、1barの圧力差の場合に10
-8mbar・l/秒未満のヘリウム漏れ速度を有する熱封止性のガラス封止をもたらす。基体10は、ハウジング20の一部において使用され、ハウジングと、例えば溶接接合、特にレーザー溶接法により引き起こされるレーザー溶接接合によって固結される。基体10およびハウジング20の溶接時に亀裂形成を回避するために、基体およびハウジングが異なる材料を含む場合に有利である。有利には、ハウジングは、アルミニウム、特に高純度アルミニウムまたは超高純度アルミニウムからなり、基体は、Mg、Mn、Si、Zrを有するアルミニウム合金からなり、ここで、Mg、Mn、Si、Zrの割合は、有利には2質量%~10質量%の範囲内である。本発明によれば、ハウジング部材は、相フランジ25を有し、そこに基体の張り出し部またはフランジ30が挿入される。領域25は、基体のフランジ30に対する相フランジとも呼称される。張り出し部またはフランジ30の表面32は、その際、ハウジング部材の相フランジ25の表面28と向かい合っている。基体のフランジとハウジング部材の相フランジとの両方の向かい合った表面26および28は、小さい間隔で取り付けられ、基体とハウジング部材とは、フランジと相フランジとの向かい合った表面の領域内で、レーザー溶接法によって1つ以上の溶接点50で接合される。この種類の接合は、重ね溶接とも呼称される。本発明によれば、レーザー溶接は、ハウジング部材を通じて領域52において基体30中へと行われる。重ね溶接の場合には、溶接の深さは可変的に、特に材料に適合させることができ、アルミニウム合金の場合には、例えば材料のMg含量および/またはSi含量および/またはZr含量および/またはMn含量だけでなく、張り出し部の厚さにも適合させることができる。張り出し部またはフランジ30および相フランジ25の側面26、28が向かい合った側面であるということに基づいて、レーザー溶接は、非常に小さい間隔の大きさで可能である。これにより、突き合わせ接合の場合よりも少ないレーザーエネルギーしか必要とされず、例えば国際公開第2012/110242号(WO2012/110242A4)に開示されるような突き合わせ接合の場合よりも細いレーザーシームも可能である。他方で、基体およびハウジングは、特に基体が張り出し部またはフランジを有しない場合には突き合わせ接合によって接合させることもできる。しかしながら、基体がフランジを有する場合には、ハウジング部材中への抜き部または相フランジの厚さは、ハウジング部材の厚さD
4が、相フランジの領域において、ハウジング部材全体の厚さD
2よりも明らかに薄く、レーザー溶接法のために最適な溶接厚さが提供されるように選択される。ハウジング構成部材の厚さD
1は重量の理由から最小化され、約1.5mmであるが、基体は、ガラス封止の領域において、少なくともガラス封止長さELを提供せねばならない。ガラス封止長さELは、3mm~7mmの範囲内である。
【0103】
導体12がガラス材料またはガラスセラミック材料14内でガラス封止される基体10は、有利にはアルミニウムリングから打ち抜き部材として製造される。作製過程において、まず基体10を打ち抜き、その後に導体12のガラス封止、特に圧縮ガラス封止が行われる。次いで、張り出し部またはフランジを備える基体を、レーザー溶接により接合されるべき部分の間隙を避けるためにハウジング部材の抜き部または相フランジ中に押し付ける。張り出し部は抜き部の領域内で強く互いに押し付けられて行われるので、レーザー溶接は、ハウジング部材または相フランジの厚さD4を貫いて行われる。
【0104】
基体はさらに、穿孔とも呼ばれる2つの周回する溝100および102を有する。基体への溝または穿孔は、基体とハウジング部材との溶接が行われる場所と離れて配置されている。有利には周回する溝として形成されている両方の溝100、102によって、フィードスルーを、特にガラス封止の領域内で保護または解放するために弾性が与えられることに至る。さらに、前記穿孔または周回する溝は、溶接接合により接合されるべき場所の領域内におけるガラス封止時の熱入力を防ぐことを妨げる熱的バリアに相当する。
【0105】
示されるように、2つの周回する溝、すなわち第1の基体表面104中に設けられている周回する溝100と、第2の基体表面106中に導入されている第2の周回する溝102とを有する実施形態が特に有利であり、ここで、第1の基体表面104および第2の基体表面106は、張り出し部の領域において互いに反対側にある。有利には、両方の溝100および102の間の間隔Aは、0.1mm~1.0mm、特に0.1mm~0.5mmである。
【0106】
両方の溝は、基体がバネ形状に構成され、すなわち貫通方向に対して直交方向に変形可能であることを可能にする。特に、こうしてレーザー溶接に際してもたらされる、さもなくばガラス封止に亀裂および破断をもたらす応力を回避することができる。それは、特に溝の間隔Aを通じて熱入力を行うことにより妨げられる。
【0107】
2つの周回する溝を有する実施形態のさらなる利点は、動作時にも加熱に際して該構成部材が応力を受け止めることができ、それがガラスフィードスルー中に伝わらないことである。説明したように、基体とハウジング部材とのレーザー溶接が行われる領域は、両方の周回する溝とは離れている。
【0108】
ガラス封止のための材料としては、以下の成分:
P2O5 35mol%~50mol%、特に39mol%~48mol%
Al2O3 0mol%~14mol%、特に2mol%~12mol%
B2O3 2mol%~10mol%、特に4mol%~8mol%
Na2O 0mol%~30mol%、特に0mol%~20mol%
M2O 0mol%~20mol%、特に12mol%~20mol%、ここでMは、K、Cs、Rbであり得る
PbO 0mol%~10mol%、特に0mol%~9mol%
Li2O 0mol%~45mol%、特に0mol%~40mol%、有利には17mol%~40mol%
BaO 0mol%~20mol%、特に0mol%~20mol%、有利には5mol%~20mol%
Bi2O3 0mol%~10mol%、特に1mol%~5mol%、有利には2mol%~5mol%
をmol%で含むガラス材料またはガラスセラミック材料が該当する。
【0109】
これらのガラス組成物は、低い溶融温度および低いTgを特徴とするだけでなく、該組成物が、高い長時間耐久性と同様に、十分に高い耐久性、例えば電池電解質に対する高い耐久性を有することも特徴とする。
【0110】
図2および
図3において、工作物10とハウジング部材20との接合部の詳細図が示されており、ガラス封止が中で行われる基体がどのように構成されているかが示されている。
図2は、これまた基体10とハウジング部材20との接合部を詳細に示しており、ここで、
図2に示される基体の実施形態は、張り出し部30を有する。
図2と同様の構成部材は、同じ符号で割り当てられている。開口部の領域内でガラス封止が行われる基体10は、ガラス封止長さELに相当する厚さD
2を有する。基体の厚さD
2は、ハウジング部材の厚さD
1よりも本質的に大きい。一般的に、厚さD
1は、厚さD
2の20%~80%の範囲内である。
図2において、ハウジング部材に形成された表面28を有する抜き部25または相フランジ25を十分に認めることができ、ここで、表面28に基体10の張り出し部またはフランジ30の表面26が隣接している。表面28および26の領域においては、基体およびハウジング部材は、重ね溶接によって互いに溶接され得る。基体は、2つの周回する溝100、102を有し、ここで、溝100、102は、基体の反対側にある側面に、特にフランジの領域において形成される。さらに、それらの溝自体は互いに間隔が空けられている。溝100、102は、貫通方向に対して直交方向の変形可能性、そして基体のある程度の弾性作用を提供する。厚さD
3は、基体のフランジの厚さを指し、厚さD
4は、ハウジングの相フランジの厚さを示す。
【0111】
図4~
図6においては、基体とハウジング部材との様々な種類の接合部が示されている。
【0112】
図4は、ハウジング部材20と突き合わせ溶接により接合されている基体10の接合部を示している。
図1~
図3と同様の構成部材は、同じ符号で割り当てられている。本発明によれば、基体10は、2つの溝100および102を有し、それらは、既に
図1~
図3にも示されている。
図1~
図3における実施形態とは異なり、基体はフランジまたは張り出し部を有さず、そのため基体10およびハウジング部材20は、突き合わせ溶接によってのみ互いに接合され得る。突き合わせ溶接に関しては、2つの可能な溶接領域が表されており、それらは、符号200および202で示されている。溶接領域202は、基体10中にあり、溶接領域200は、ハウジング部材、例えばリッド20の領域にある。溶接領域200、202は、その位置P
1、P
2で基体10またはハウジング部材20の材料組成に適合され得る。特に、位置P
1、P
2を、基体10のアルミニウム合金のMg含量および/またはSi含量および/またはZr含量および/またはMn含量に適合させることが可能である。位置P
1、P
2の他に、各々の溶接領域は、深さTS
1およびTS
2によっても特徴付けられている。また深さTS
1およびTS
2は、種々の材料にも、特に基体およびハウジング部材の種々のアルミニウム合金にも適合され得る。
【0113】
図5は、基体10およびハウジング部材20の接合部の代替的な実施形態を示し、ここでは基体10はフランジ30を備える。ハウジングは、相フランジ25を有する。相フランジ25の表面28とフランジ30の表面26は、互いに向かい合っている。さらに、ハウジング部材20および基体10は、重ね溶接により互いに接合されている。重ね溶接の場合には、1つの溶接領域210だけが存在する。相フランジ25の厚さは、D
4で示されている。重ね溶接の場合に、溶接は、示されるように相フランジの厚さD
4を貫いて行われる。相フランジの厚さD
4は、材料に、特に相フランジの材料中のMg含量に適合される。ハウジング部材20の材料は、有利にはアルミニウムまたはアルミニウム合金である。両方の溝100、102は、
図1~
図3に記載されるように基体に入っている。
【0114】
図6は、基体10およびハウジング部材20の接合部の代替的な実施形態を示す。改めて、基体10は、フランジ30を有し、ハウジング部材20は、相フランジ25を有する。しかしながら、
図5とは対照的に、相フランジ25は、基体の全長LAと完全に重なっていない。その結果、基体10は、領域50において相フランジ25と1つの面で突き合わせて向かい合っている。したがって、そのような構成は、基体10およびハウジング部材20を、フランジと相フランジとが向かい合っている領域において、重ね溶接300によって接合されるだけでなく、突き合わせ溶接310によっても接合される可能性を構成する。重ね溶接300と突き合わせ溶接310に関する異なる溶接領域の位置P
1およびP
2は、溶接ゾーンにおける材料と同様に、溶接領域の深さTS
1およびTS
2にも適合させることができる。さらに、溝100、102は、基体に入っている。
【0115】
図7は、基体1259を受容するハウジング部材1255の代替的な実施形態を示す。基体およびハウジング部材は、本発明によれば互いに接合、特に溶接されている。基体およびハウジング部材の材料は、本発明によれば、軽金属として、または軽金属合金として選択され得る。任意に、示されていないが、
図7による実施形態において解放溝を設けることも可能である。ハウジング部材1255は、第1の高さまたは厚さDA
1を有する。基体1259は、第2の厚さDA
2、および第3の厚さDA
3を有する。第2の厚さDA
2は、基体の厚さを示し、それはガラス封止長さELに相当し、それに対して厚さDA
3は、基体がハウジング部材に当接する領域における基体の厚さに相当する。厚さDA
3は、ハウジング部材の厚さDA
1に対応する。ハウジング部材の厚さDA
1が厚さDA
3に対応している場合に、基体およびハウジング構成部材は、互いに揃っている。これによって、ハウジング中に電子装置または接合のためにより多くの空間を提供することが可能である。
【0116】
さらに、同じ厚さによって、ハウジング部材と基体とのろう付け接合および/または溶接接合が改善されることが保証される。それは特に、異なる厚さの2つの部分がその隅で互いに接合されるのではなく、ほぼ同じ厚さを有する2つの部分、すなわちハウジング部材および基体が互いに接合されることに起因する。それは、レーザー溶接において溶接線が、異なる厚さの部分の辺縁領域に配置される必要がないため、レーザー溶接法がより効果的になるという利点を有する。
【0117】
基体1259の厚さDA2は、基体1259の開口部1270中のガラス材料1262のガラス封入長さELに対応する。基体1259の開口部1270へと、導体、特にピン導体1261が導通される。導体1261は、ガラス材料またはガラスセラミック材料1262内にガラス封止長さELでガラス封止されている。ガラス封止長さの中央における基体の厚さDA2は、圧縮封止がもたらされるように選択され、すなわち基体1259は、ガラス封止長さELに沿ってガラス材料またはガラスセラミック材料1262に圧縮力を及ぼす。したがって、それは上記のように圧縮ガラス封止である。基体の厚さDA3は厚さDA2よりも本質的に小さいので、溶接により生ずる熱的かつ機械的応力は低減され得る。DA2およびDA3の相応の選択によって、一方で、異なる熱膨張係数により引き起こされるガラス材料またはガラスセラミック材料に対する圧縮力と同様に、レーザー溶接法により引き起こされる熱的かつ機械的な負荷も釣り合いが取られ得る。
【0118】
フランジ1260を有する基体1259は、冷間変形によって、または段付き穴として製造され得る。フランジの厚さDA3は、基体1259の厚さDA2の10%から80%の間、有利には30%から70%の間である。厚さDA2は、3mmから8mmの間であり、有利には4mm~6mmであり得、厚さDA3は、0.5mmから3mmの間であり、有利には1mmから3mmの間で選択され得る。フランジ1260と基体1259とのレーザー溶接による接合の他にも、なおも領域1280におけるハウジング1255への圧入または収縮も考えることができる。レーザー溶接が接合法として使用される場合に、1×10-8mbar・l/秒未満のヘリウム漏れ速度を有する気密封止性接合が達成される。
【0119】
本発明によれば、基体だけでなく、基体中にガラス封止された導体も含むフィードスルーおよびハウジング、特に電池ハウジングのハウジング部材が初めて提供される。こうして構成されたフィードスルーは、特に容易な製造可能性および高い可撓性を特徴とする。それというのも基体は、溝に基づきバネ形状に圧縮可能に構成されていて、特に溶接に際してのガラス封止の応力を受け入れるからである。さらに、基体およびハウジング部材のための材料の選択によって基体およびハウジング部材を亀裂形成なしに互いに接合させることが可能である。
【符号の説明】
【0120】
10 基体、 12 機能エレメント、 13 開口部、 14 ガラス材料またはガラスセラミック材料、 20 ハウジング部材、 25 抜き部または相フランジ、 26 表面、 28 表面、 30 フランジ、 32 表面、 50 溶接点、 52 領域、 100 溝、 102 溝、 104 表面、 106 表面、 200 溶接領域、 202 溶接領域、 210 溶接領域、 300 溶接領域、 310 溶接領域、 1255 ハウジング部材、 1259 基体、 1260 フランジ、 1261 導体、 1262 ガラス材料またはガラスセラミック材料、 1270 開口部、 1280 領域、 A 間隔、 D1 厚さ、 D2 厚さ、 D3 厚さ、 D4 厚さ、 T1 深さ、 T2 深さ、 P1 位置、 P2 位置、 EL ガラス封止長さ、 TS1 深さ、 TS2 深さ、 LA 基体の全長、 DA1 厚さ、 DA2 厚さ、 DA3 厚さ