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特許7009504ヤヌスキナーゼ阻害剤としての新規アミノイミダゾピリジン誘導体及びそれらの医薬としての使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-14
(45)【発行日】2022-01-25
(54)【発明の名称】ヤヌスキナーゼ阻害剤としての新規アミノイミダゾピリジン誘導体及びそれらの医薬としての使用
(51)【国際特許分類】
   C07D 471/04 20060101AFI20220118BHJP
   A61K 31/437 20060101ALI20220118BHJP
   A61P 37/00 20060101ALI20220118BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20220118BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20220118BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220118BHJP
【FI】
C07D471/04 107E
C07D471/04 CSP
A61K31/437
A61P37/00
A61P37/08
A61P17/00
A61P43/00 121
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019557681
(86)(22)【出願日】2018-01-10
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-02-06
(86)【国際出願番号】 EP2018050548
(87)【国際公開番号】W WO2018130563
(87)【国際公開日】2018-07-19
【審査請求日】2020-12-23
(31)【優先権主張番号】17151020.9
(32)【優先日】2017-01-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508069752
【氏名又は名称】レオ ファーマ アクティーゼルスカブ
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 康
(72)【発明者】
【氏名】イェンス・ラーセン
(72)【発明者】
【氏名】モーエンス・ラーセン
(72)【発明者】
【氏名】ラース・キューン・ラスムッセン
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス・リッツェン
(72)【発明者】
【氏名】ティーネ・マリアネ・ドゥース
【審査官】池上 佳菜子
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-517220(JP,A)
【文献】国際公開第2013/007768(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/117645(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第104098563(CN,A)
【文献】国際公開第2015/168246(WO,A1)
【文献】特表2014-515362(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第2518071(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 471/04
A61K 31/437
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)
【化1】
の化合物であって、
式中、
Aは任意選択で1もしくは複数の重水素で置換されたCシクロアルキルを表し、
は任意選択で1もしくは複数の重水素で置換されたCアルキルを表し、
はRから選択される置換基で置換され、且つ任意選択で1もしくは複数の重水素で置換されたCアルキルを表し、
はRから選択される置換基で置換され、且つ任意選択で1もしくは複数の重水素で置換されたCアルキルを表し、
は水素もしくは重水素を表し、
は水素もしくは重水素を表し、
はシアノを表し、
はヒドロキシルを表す
前記化合物、またはその薬学的に許容される塩、水和物、もしくは溶媒和物。
【請求項2】
一般式(I)が一般式(Ia)
【化2】
であり、
式中、
及びR、R~Rは請求項1に定義されたとおりであり、
Ra、Rb、Rc、及びRdはそれぞれ独立に、水素及び重水素から選択される、
請求項1に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩、水和物、もしくは溶媒和物
【請求項3】
一般式(I)が一般式(Ib)
【化3】
であり、
式中、
及びR、R~R、Ra、Rb、Rc、ならびにRdは、請求項1または2に定義されたとおりである、
請求項1または2に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩、水和物、もしくは溶媒和物
【請求項4】
トランス-2-[4-[2-[1-ヒドロキシエチル]-6-(メチルアミノ)イミダゾ[4,5-c]ピリジン-1-イル]シクロヘキシル]アセトニトリル、
トランス-2-[4-[2-[(1S)-1-ヒドロキシエチル]-6-(メチルアミノ)イミダゾ[4,5-c]ピリジン-1-イル]シクロヘキシル]アセトニトリル、
トランス-2-[4-[2-[(1R)-1-ヒドロキシエチル]-6-(メチルアミノ)イミダゾ[4,5-c]ピリジン-1-イル]シクロヘキシル]アセトニトリル、
トランス-2-[4-[2-[(1R)-1-ヒドロキシエチル]-6-(トリジュウテリオメチルアミノ)イミダゾ[4,5-c]ピリジン-1-イル]シクロヘキシル]アセトニトリル、
トランス-2-[4-[2-[1,2,2,2-テトラジュウテリオ-1-ヒドロキシエチル]-6-(メチルアミノ)イミダゾ[4,5-c]ピリジン-1-イル]シクロヘキシル]アセトニトリル、
シス-2-[4-[2-[1-ヒドロキシエチル]-6-(メチルアミノ)イミダゾ[4,5-c]ピリジン-1-イル]シクロヘキシル]アセトニトリル、及び
シス-2-[4-[2-[(1R)-1-ヒドロキシエチル]-6-(メチルアミノ)イミダゾ[4,5-c]ピリジン-1-イル]シクロヘキシル]アセトニトリル
から選択される、請求項1~3のいずれか1項に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩、水和物、もしくは溶媒和物。
【請求項5】
トランス-2-[4-[2-[(1R)-1-ヒドロキシエチル]-6-(メチルアミノ)イミダゾ[4,5-c]ピリジン-1-イル]シクロヘキシル]アセトニトリルである、請求項1~4のいずれか1項に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩、水和物、もしくは溶媒和物を、薬学的に許容されるビヒクルもしくは賦形剤または薬学的に許容される担体(複数可)と共に含む医薬組成物。
【請求項7】
1種または複数種の他の治療上活性な化合物を共に含む、請求項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
JAK1キナ-ゼ活性の阻害に応答性である疾患の治療における使用のための、請求項6または7に記載の医薬組成物
【請求項9】
自己免疫疾患などの免疫系の疾患、もしくは免疫系の調節解除に関連する疾患の予防及び/または治療における使用のための、請求項6~8のいずれか1項に記載の医薬組成物
【請求項10】
アトピー性皮膚炎の予防及び/または治療における使用のための、請求項6~9のいずれか1項に記載の医薬組成物
【請求項11】
2-[トランス-4-[(5-アミノ-2-クロロピリジン-4-イル)アミノ]シクロヘキシル]アセトニトリルである化合物またはその塩。
【請求項12】
2-[トランス-4-[6-クロロ-2-(1-ヒドロキシエチル)-1H-イミダゾ[4,5-c]ピリジン-1-イル]シクロヘキシル]アセトニトリル、
2-[トランス-4-[6-クロロ-2-[(1R)-1-ヒドロキシエチル]-1H-イミダゾ[4,5-c]ピリジン-1-イル]シクロヘキシル]アセトニトリル、及び
トランス-2-[4-[6-クロロ-2-(1,2,2,2-テトラジュウテリオ-1-ヒドロキシエチル)イミダゾ[4,5-c]ピリジン-1-イル]シクロヘキシル]アセトニトリル
から選択される化合物、またはその塩。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヤヌスキナーゼの阻害剤である化合物及びそれらの誘導体、上記化合物の製造のための中間体、治療における使用のための上記化合物、ならびに上記化合物を含む医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、ヤヌスキナーゼ(JAK1、JAK2、JAK3、及びTYK2)、特にはヤヌスキナーゼ1(JAK1)などのプロテインチロシンキナーゼの阻害剤である新規化合物に関する。
【0003】
プロテインチロシンキナーゼは、タンパク質基質中のチロシン残基へのアデノシン三リン酸の末端リン酸の転移を触媒する酵素のファミリーである。タンパク質基質上のチロシン残基のリン酸化によって、細胞増殖分化ならびに活性化、代謝、造血、宿主防御、及び免疫調節などの多種多様な過程を調節する細胞内シグナルの伝達が生じる。多くの炎症性疾病及び他の免疫系の障害(例えば自己免疫疾患)における分子機序の解明によって、これらの細胞内シグナル経路の重要な役割が脚光を浴びたことから、プロテインチロシンキナーゼの活性の調節が炎症性疾患の治療への魅力的な道であると思われる。受容体型プロテインチロシンキナーゼ、例えばインスリン受容体、または非受容体型プロテインチロシンキナーゼである可能性がある、多数のプロテインチロシンキナーゼが同定されている。
【0004】
プロテインチロシンキナーゼJAK1、JAK2、JAK3、及びTYK2は、種々のサイトカイン受容体鎖の細胞質ドメインと選択的に会合し、組織恒常性のサイトカイン依存性の調節、自然免疫の開始、適応免疫応答の形成、及び炎症過程において本質的な役割を有する。上記プロテインチロシンキナーゼは、サイトカイン受容体の刺激によるチロシンのリン酸化を介した該プロテインチロシンキナーゼの活性化に応答するシグナル伝達において重要である。(1) Schindler C. et al. JAK-STAT signaling: from interferons to cytokines. J. Biol. Chem 2007;282(28):20059;(2) O’Shea J.J. Targeting the Jak/STAT pathway for immunosuppression;Ann. Rheum. Dis. 2004;63 Suppl 2:ii67;(3) Schindler C. Series introduction. JAK-STAT signaling in human disease;J. Clin. Invest. 2002;109(9):1133);(4) O’Shea et. Al. Cell, Vol. 109, S121-S131, 2002;(5) Schwartz D.M. et al. Nat. Rev. Rheumatol., 2016;12(1): 25-36;(6) O’Shea et al. New. Eng. J. Med. 2013;368(2): 161-170。
【0005】
JAK1、JAK2、及びTYK2は偏在的に発現されるが、JAK3は圧倒的に造血細胞において発現される。
【0006】
JAK1は生物学的応答の媒介において重要な役割を果たし、JAK1は広く発現され、いくつかの主要なサイトカイン受容体ファミリーと会合している。JAK1は、IL-2受容体γサブユニットファミリー(IL-2、IL-4、IL-7R、IL-9R、IL-15R、及びIL-21R)、IL-4受容体ファミリー(IL-4R、IL-13R)、gp130受容体ファミリー、ならびにIL-10受容体ファミリー及びI型及びII型IFN受容体ファミリーの両方を含む、クラスIIサイトカイン受容体のメンバーによるシグナル伝達に関与する。
【0007】
JAK2は、いくつかの単鎖受容体(Epo-R、GHR、PRL-Rを含む)、IL-3受容体ファミリー、gp130受容体ファミリー、IL-12受容体ファミリー(IL-12及びIL-23)、ならびにいくつかのクラスII受容体サイトカインファミリーによるシグナル伝達に関与する。したがって、JAK2は、Epo、IL-3、GM-CSF、IL-5、及びIFNγのシグナル伝達に重要な役割を果たす。JAK2ノックアウトマウスは胚致死性表現型を示す。
【0008】
JAK3は、IL-2受容体ファミリーとしても知られるI型サイトカイン受容体ファミリー(例えば、IL-2、IL-4、IL-7、IL-9、IL-15、及びIL-21)の共通ガンマ鎖を用いる受容体によるシグナル伝達に関与する。XSCID患者集団は、JAK3タンパク質のレベルが低いまたは共通ガンマ鎖に遺伝的欠陥があることが特定されており、このことは、免疫抑制がJAK3経路によるシグナル伝達の遮断に起因するはずであることを示唆している。動物実験により、JAK3はBリンパ球及びTリンパ球の成熟において重要な役割を果たすのみならず、JAK3はT細胞機能を維持するために構成的に必要とされることが示唆されている。この新規な機序による免疫活性の調節は、免疫系疾患、特に自己免疫疾患などのT細胞増殖性障害の治療に有用であることが証明可能である。
【0009】
TYK2は、I型インターフェロン、IL-6、IL-10、IL-12、及びIL-23シグナル伝達に関与する。TYK2欠損症のヒト患者が報告されており、この患者には、ウイルス、細菌、及び真菌による多くの日和見感染症を伴う、高IgE様症候群を特徴とする原発性免疫不全障害があった。IL-23は多くの慢性炎症疾病において重要な役割を果たすことが判っていることから、TYK2阻害剤はおそらく、IL-23によって影響を受ける疾患の治療に非常に有効である可能性がある。
【0010】
貧血症及び好中球減少症は、それぞれEPO及びGM-CSFの阻害に関係している可能性があり、それは、これら2種のサイトカインによる生物学的作用は明らかに専らJAK2の活性化に依存しているからである。同様に、IL-12及びIL-23は、ウイルス、細菌、及び真菌に対する先天性免疫防御及び適応免疫防御に関与する。これらのサイトカインは、JAK2及びTYK2のシグナル伝達カスケードにおいてJAK2及びTYK2をリクルートする受容体に結合するため、選択的なJAK1阻害剤はJAK2及びTYK2の生物学的活性に影響を及ぼさず、したがってJAK1、JAK2、JAK3、及びTYK2を阻害する化合物と比較してより安全なプロファイルを有することとなると考えられる。
【0011】
JAKの活性化によってSTAT分子が活性化され、延いてはリン酸化事象によって高度に調節されるJAK/STATシグナル伝達経路を誘導する。STAT分子の活性化はJAK活性に関する有効な薬力学的マーカーと考えられ、特定のJAK分子の活性は、優先的にリクルートされる活性なSTAT分子のレベルによって評価することができる。
【0012】
特に、免疫細胞によって発現されるIL-4の受容体は、リガンド結合に際してそれぞれJAK1及びJAK3を活性化する2種の異なる鎖、リガンド高親和性及びシグナルトランスデューサーIL-4Raならびに共通γ鎖によって構成され、上記JAK1及びJAK3の活性化によってSTAT6がリクルートされ且つ活性化される。同様に、IL-6受容体は、IL-6高親和性受容体鎖(IL-6Ra)及びJAK1が優先的に会合するシグナルトランスデューサー糖タンパク質130(gp130)鎖によって形成されるヘテロ二量体受容体である。上記gp130鎖はリガンド結合に際してJAK1及びSTAT3シグナル伝達経路を活性化する。したがって、JAK1の活性を調べるために、免疫細胞における活性STAT6またはSTAT3のレベルを、それぞれIL-4またはIL-6で刺激した後に評価してもよい。
【0013】
更に、エリスロポエチンの受容体(EPOR)は、2の同一の受容体鎖によって構成されるホモ二量体受容体である。したがって、このEPOR鎖は高親和性リガンド結合鎖及びシグナルトランスデューサー鎖の両方であり、リガンド結合に際して会合したJAK2分子のみを活性化し、これによりSTAT5がリクルートされ且つ活性化される。GM-CSFの受容体は、GM-CSF高親和性受容体鎖(GM-CSFRα)及びシグナルトランスデューサー鎖(GM-CSFRβ)によって構成されるヘテロ二量体受容体であり、これにJAK2が特異的に会合する。リガンド結合に際して、α及びβ受容体鎖が会合することによって、JAK2及びSTAT5シグナル伝達経路が活性化される。したがって、JAK2の活性を調べるために、GM-CSFまたはエリスロポエチン(EPO)のいずれかで刺激した後の免疫細胞における活性STAT5のレベルを評価してもよい。
【0014】
ヤヌスキナーゼの阻害剤は、これらのキナーゼが関与する炎症性且つ非感染性の自己免疫疾患の治療において有用性を示すことが期待される。最近、汎JAK阻害剤であるトファシチニブ及びルキソリチニブが、それぞれ関節リウマチ及び骨髄線維症の治療用に発売された。JAK1阻害剤PF-04965842は現在、アトピー性皮膚炎の治療のための第III相治験中であり、JAK1阻害剤バリシチニブは関節リウマチの治療用に発売されており、且つアトピー性皮膚炎の治療のための第III相治験中であり、JAK1阻害剤ウパダシチニブは現在、関節リウマチ及び乾癬性関節炎の治療のための第III相治験中であり、且つアトピー性皮膚炎、クローン病、及び潰瘍性大腸炎の治療のための第II相治験中である。
【0015】
したがって、JAK阻害剤は更に、例えば、乾癬、アトピー性皮膚炎、強皮症、酒さ、皮膚癌、皮膚炎、疱疹状皮膚炎、膚筋炎、白斑症、円形脱毛症、接触性皮膚炎、湿疹、乾燥症、魚鱗癬、じんましん、慢性特発性そう痒、壊疽性膿皮症、皮膚エリテマトーデス、及び扁平苔癬などの皮膚疾患;喘息、慢性閉塞性肺疾患、肺線維症、嚢胞性線維症、鼻炎、細気管支炎、ビシノーシス、じん肺、気管支拡張症、過敏性肺炎、肺癌、中皮腫、及びサルコイドーシスなどの呼吸器疾患;炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、クローン病、後腹膜線維症、セリアック病、及び癌などの胃腸疾患;重症筋無力症、シェーグレン症候群、結膜炎、強膜炎、ブドウ膜炎、ドライアイ症候群、角膜炎、虹彩炎などの眼疾患;狼瘡、多発性硬化症、関節リウマチ、I型糖尿病及び糖尿病による合併症、がん、強直性脊椎炎、及び乾癬性関節炎などの全身性適応症;骨軟部腫瘍、頭頸部癌などの癌、ならびに免疫抑制が望ましい他の自己免疫疾患及び適応症、例えば臓器移植を含む、ヤヌスキナーゼの活性に関連する疾患の治療にも有用である可能性がある。
【0016】
WO2013007768は、JAK阻害剤としての、三環式ヘテロ環式化合物、それらの組成物、及びそれらの使用方法を開示する。
【0017】
WO2013007765は、ヤヌスキナーゼの阻害剤としての使用のための縮合三環式化合物を開示する。
【0018】
WO2011086053は、三環式ヘテロ環式化合物、それらの組成物、及びそれらの使用方法を開示する。
【0019】
Zak, M. et. Al, J. Med. Chem., (2013), 56, 4764-85は、JAK1阻害剤としてのイミダゾピロロピリジンを開示する。
【0020】
特定のJAK酵素を効果的かつ選択的に阻害する新規化合物、特にはJAK2に対してJAK1を選択的に阻害して、全体としての抗炎症効果に影響を与えることなく副作用を低減する阻害剤が依然として必要とされている。
【発明の概要】
【0021】
本発明の化合物はヤヌスキナーゼに対する阻害活性を示し、特に本発明の化合物はJAK1に対する阻害活性を示す。したがって、本発明の化合物はJAKキナーゼ阻害選択性を示し、特に本化合物はJAK2に対するJAK1の阻害選択性を示す。その結果として、本発明の化合物は、STAT5に対するSTAT6またはSTAT3の阻害選択性も示す場合がある。本発明のいくつかの化合物は、高い代謝安定性及び高い水溶性などの、全身的な使用に対して特に好ましい薬物動態学的特性を有する。本発明のいくつかの化合物は、高いキナーゼ選択性ならびに全般的な非特異的選択性、CYP阻害がないこと、CYP誘導が低いかまたはないこと、低細胞毒性などの特に好ましい毒物学的特性を有するのみならず、反復投与による毒物学的検討においても忍容性が高い。
【0022】
したがって、本発明は、一般式(I)
【化1】
の化合物であって、
式中、
Aは任意選択で1もしくは複数の重水素で置換されたCシクロアルキルを表し、
は任意選択で1もしくは複数の重水素で置換されたCアルキルを表し、
はRから選択される置換基で置換され、且つ任意選択で1もしくは複数の重水素で置換されたCアルキルを表し、
はRから選択される置換基で置換され、且つ任意選択で1もしくは複数の重水素で置換されたCアルキルを表し、
は水素もしくは重水素を表し、
は水素もしくは重水素を表し、
はシアノを表し、
はヒドロキシルを表す
上記化合物、あるいはその薬学的に許容される塩、水和物、または溶媒和物に関する。
【0023】
別の態様において、本発明は、本明細書で規定される一般式(I)の化合物を、薬学的に許容されるビヒクルもしくは賦形剤または薬学的に許容される担体(複数可)と共に、任意選択で1種または複数種の他の治療上活性な化合物と共に含む医薬組成物に関する。
【0024】
更に別の態様において、本発明は、医薬としての使用のための、本明細書で規定される一般式(I)の化合物に関する。
【0025】
更に別の態様において、本発明は、自己免疫疾患などの免疫系の疾患、もしくは免疫系の調節解除に関連する疾患の予防及び/または治療における使用のための、本明細書で規定される一般式(I)の化合物に関する。
【0026】
更に別の態様において、本発明は、一般式(I)の化合物の製造に有用な中間体に関する。
【発明を実施するための形態】
【0027】
用語の定義
用語「Cアルキル」は、分枝鎖状または直鎖状炭化水素から1の水素原子が除去されたときに得られる基を示すことが意図される。上記アルキルは、メチル及びエチルのように1~2の炭素原子を含む。「アルキル」中の炭素原子の数は接頭辞「C」によって示され、但し、aは当該炭化水素基中の炭素の数である。したがって、例えば、Cアルキルは、1の炭素原子を含むアルキル基、すなわちメチルを示すことが意図される。Cアルキルは、2の炭素原子を含むアルキル基、すなわちエチルを示すことが意図される。
【0028】
用語「シアノ」は、-CN基であって、当該炭素原子を介して親分子の部分に結合した上記基を示すことが意図される。
【0029】
用語「Cシクロアルキル」は、6の炭素原子を含む飽和シクロアルカン炭化水素基、すなわちシクロヘキシルを示すことが意図される。
【0030】
用語「炭化水素ラジカル」は、水素及び炭素原子のみを含有するラジカルを示すことが意図され、1もしくは複数の炭素-炭素二重結合及び/または三重結合を含有していてもよく、分枝鎖状または直鎖状部分と組み合わされた環状部分を含んでいてもよい。上記炭化水素は、1~10の炭素原子を含み、好ましくは1~6、例えば1~4、例えば1~3、例えば1~2、例えば6の炭素原子を含む。上記用語は、本明細書に示されるアルキル及びシクロアルキルを包含する。
【0031】
用語「ヒドロキシ」または「ヒドロキシル」は-OH基を示すことが意図される。
【0032】
BrettPhosは、2-(ジシクロヘキシルホスフィノ)-3,6-ジメトキシ-2’,4’,6’-トリイソプロピル-1,1’-ビフェニルを示すことが意図される。
【0033】
tBuBrettPhosは、2-(ジ-tert-ブチルホスフィノ)-2’,4’,6’-トリイソプロピル-3,6-ジメトキシ-1,1’-ビフェニルを示すことが意図される。
【0034】
tBuXPhosは、2-ジ-tert-ブチルホスフィノ-2’,4’,6’-トリイソプロピルビフェニルを示すことが意図される。
【0035】
BrettPhos Pd Glは、クロロ[2-(ジシクロヘキシルホスフィノ)-3,6-ジメトキシ-2’,4’,6’-トリイソプロピル-1,1’-ビフェニル][2-(2-アミノエチル)フェニル]パラジウム(II)を示すことが意図される。
【0036】
BrettPhos Pd G3は、[(2-ジシクロヘキシルホスフィノ-3,6-ジメトキシ-2’,4’,6’-トリイソプロピル-1,1’-ビフェニル)-2-(2’-アミノ-1,1’-ビフェニル)]パラジウム(II)メタンスルホン酸塩を示すことが意図される。
【0037】
tBuBrettPhos Pd G3は、[(2-ジ-tert-ブチルホスフィノ-3,6-ジメトキシ-2’,4’,6’-トリイソプロピル-1,1’-ビフェニル)-2-(2’-アミノ-1,1’-ビフェニル)]パラジウム(II)メタンスルホン酸塩を示すことが意図される。
【0038】
tBuXPhos Pd Glは、[2-(ジ-tert-ブチルホスフィノ)-2’,4’,6’-トリイソプロピル-1,1’-ビフェニル][2-(2-アミノエチル)フェニル)]パラジウム(II)塩化物塩を示すことが意図される。
【0039】
tBuXPhos Pd G3は、[(2-ジ-tert-ブチルホスフィノ-2’,4’,6’-トリイソプロピル-1,1’-ビフェニル)-2-(2’-アミノ-1,1’-ビフェニル)]パラジウム(II)メタンスルホン酸塩を示すことが意図される。
【0040】
複数の置換基が群から独立に選択されると記載される場合には、それぞれの置換基は他の置換基から独立に選択される。したがって、それぞれの置換基は他の置換基(複数可)と同一であってもよく、または他の置換基(複数可)と異なっていてもよい。
【0041】
用語「任意選択で置換された」とは「非置換であるかまたは置換された」を意味し、したがって、本明細書に記載の一般式は、上記指定された任意選択の置換基(複数可)を含む化合物、ならびに上記任意選択の置換基(複数可)を含まない化合物を包含する。
【0042】
用語「薬学的に許容される塩」は、塩基性部分を含む一般式(I)の化合物を、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、ギ酸、酢酸、2,2-ジクロロ酢酸、アジピン酸、アスコルビン酸、L-アスパラギン酸、L-グルタミン酸、ガラクタル酸、乳酸、マレイン酸、L-リンゴ酸、フタル酸、クエン酸、プロピオン酸、安息香酸、グルタル酸、グルコン酸、D-グルクロン酸、メタンスルホン酸、サリチル酸、コハク酸、マロン酸、酒石酸、ベンゼンスルホン酸、エタン-1,2-ジスルホン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、トルエンスルホン酸、スルファミン酸、フマル酸、アセツル酸、L-乳酸、グリコール酸、シュウ酸、糖酸、DL-マンデル酸、もしくはL-酒石酸などの適宜の無機または有機の酸と反応させるによって調製される塩を示すことが意図される。薬学的に許容される塩の更なる例は、Berge, S.M.;J. Pharm. Sci.;(1977), 66(1), 1-19に記載され、該文献は参照により本明細書に援用される。
【0043】
用語「溶媒和物」とは、化合物、例えば一般式(I)の化合物と溶媒、例えばアルコール、グリセリン、ジオキサン、または水との間の相互作用によって形成される種であって、結晶形または非晶形である上記種を示すことが意図される。水が上記溶媒である場合、上記種は水和物と呼ばれる。
【0044】
本明細書では、用語「治療」とは、疾患、障害、または疾病と戦うことを目的とした患者の管理及び保護を意味する。この用語は、上記疾患、障害、もしくは疾病の進行の遅延、症状及び合併症の改善、軽減、もしくは除去、ならびに/あるいは上記疾患、障害、もしくは疾病の治癒または除去を包含することが意図される。この用語は上記疾病の予防も包含し、ここで予防とは、上記疾患、疾病、または障害と戦うことを目的とした患者の管理及び保護として理解されるべきであり、症状または合併症の発症を防ぐための本活性化合物の投与を含む。それにもかかわらず、予防的(prophylactic)(予防的(preventive))処置と治療的(治癒的)処置とは2つの異なる態様である。
【0045】
刊行物、特許出願、及び特許を含む本明細書に引用される全ての参考文献は、本明細書の他所においていずれかの特定の文献の援用が個別に記載されているか否かにかかわらず、本記載をもって、それらの全体が且つ各文献が個別に且つ具体的に参照により本明細書に援用されることが示されているのと同様の程度に、参照により本明細書に援用される。
【0046】
本発明の実施形態
一実施形態において、本発明は、一般式(I)が一般式(Ia)
【化2】
であり、
式中、
及びR、R~Rは上記に定義されたとおりであり、
Ra、Rb、Rc、及びRdはそれぞれ独立に、水素及び重水素から選択される、
一般式(I)の化合物、またはその薬学的に許容される塩、水和物、もしくは溶媒和物を提供する。
【0047】
一実施形態において、本発明は、一般式(I)が一般式(Ib)
【化3】
であり、
式中、
及びR、R~Rは上記に定義されたとおりであり、
Ra、Rb、Rc、及びRdはそれぞれ独立に、水素及び重水素から選択される、
一般式(I)の化合物、またはその薬学的に許容される塩、水和物、もしくは溶媒和物を提供する。
【0048】
一実施形態において、本発明は、一般式(I)が一般式(Ic)
【化4】
であり、
式中、
及びR、R~Rは上記に定義されたとおりであり、
Ra、Rb、Rc、及びRdはそれぞれ独立に、水素及び重水素から選択される、
一般式(I)の化合物、またはその薬学的に許容される塩、水和物、もしくは溶媒和物を提供する。
【0049】
一実施形態において、本発明は、一般式(I)が一般式(Id)
【化5】
であり、
式中、
及びR、R~Rは上記に定義されたとおりであり、
Ra、Rb、Rc、及びRdはそれぞれ独立に、水素及び重水素から選択される、
一般式(I)の化合物、またはその薬学的に許容される塩、水和物、もしくは溶媒和物を提供する。
【0050】
一実施形態において、本発明は、本明細書において規定される一般式(I)の化合物であって、式中、AはCシクロアルキルを表し、RはCアルキルを表し、RはRから選択される置換基で置換されたCアルキルを表し、RはRから選択される置換基で置換されたCアルキルを表し、Rは水素を表し、Rは水素を表し、Rはシアノを表し、Rはヒドロキシルを表す上記化合物、またはその薬学的に許容される塩、水和物、もしくは溶媒和物を提供する。
【0051】
一実施形態において、本発明は、本明細書において規定される一般式(I)の化合物であって、式中、AはCシクロアルキルを表し、Rは任意選択で1もしくは複数の重水素で置換されたCアルキルを表し、RはRから選択される置換基で置換されたCアルキルを表し、RはRから選択される置換基で置換されたCアルキルを表し、Rは水素を表し、Rは水素を表し、Rはシアノを表し、Rはヒドロキシルを表す上記化合物、またはその薬学的に許容される塩、水和物、もしくは溶媒和物を提供する。
【0052】
本明細書に記載の2以上の実施形態の任意の組み合わせは、本発明の範囲内にあると見なされる。
【0053】
本発明は、R、R、R、R、R、R、及びRが、本明細書の何処かに記載される任意の組み合わせで組み合わされた全ての実施形態を包含する。
【0054】
一実施形態において、本発明は、
トランス-2-[4-[2-[1-ヒドロキシエチル]-6-(メチルアミノ)イミダゾ[4,5-c]ピリジン-1-イル]シクロヘキシル]アセトニトリル、
トランス-2-[4-[2-[(1S)-1-ヒドロキシエチル]-6-(メチルアミノ)イミダゾ[4,5-c]ピリジン-1-イル]シクロヘキシル]アセトニトリル、
トランス-2-[4-[2-[(1R)-1-ヒドロキシエチル]-6-(メチルアミノ)イミダゾ[4,5-c]ピリジン-1-イル]シクロヘキシル]アセトニトリル、
トランス-2-[4-[2-[(1R)-1-ヒドロキシエチル]-6-(トリジュウテリオメチルアミノ)イミダゾ[4,5-c]ピリジン-1-イル]シクロヘキシル]アセトニトリル、
トランス-2-[4-[2-[1,2,2,2-テトラジュウテリオ-1-ヒドロキシエチル]-6-(メチルアミノ)イミダゾ[4,5-c]ピリジン-1-イル]シクロヘキシル]アセトニトリル、
シス-2-[4-[2-[1-ヒドロキシエチル]-6-(メチルアミノ)イミダゾ[4,5-c]ピリジン-1-イル]シクロヘキシル]アセトニトリル、及び
シス-2-[4-[2-[(1R)-1-ヒドロキシエチル]-6-(メチルアミノ)イミダゾ[4,5-c]ピリジン-1-イル]シクロヘキシル]アセトニトリル
から選択される、本明細書において規定される一般式(I)の化合物、またはその薬学的に許容される塩、水和物、もしくは溶媒和物を提供する。
【0055】
一実施形態において、本発明は、
トランス-2-[4-[2-[1-ヒドロキシエチル]-6-(メチルアミノ)イミダゾ[4,5-c]ピリジン-1-イル]シクロヘキシル]アセトニトリル、
トランス-2-[4-[2-[(1S)-1-ヒドロキシエチル]-6-(メチルアミノ)イミダゾ[4,5-c]ピリジン-1-イル]シクロヘキシル]アセトニトリル、及び
トランス-2-[4-[2-[(1R)-1-ヒドロキシエチル]-6-(メチルアミノ)イミダゾ[4,5-c]ピリジン-1-イル]シクロヘキシル]アセトニトリル
から選択される、本明細書において規定される一般式(I)の化合物、またはその薬学的に許容される塩、水和物、もしくは溶媒和物を提供する。
【0056】
一実施形態において、本発明は、
トランス-2-[4-[2-[1-ヒドロキシエチル]-6-(メチルアミノ)イミダゾ[4,5-c]ピリジン-1-イル]シクロヘキシル]アセトニトリル、
トランス-2-[4-[2-[(1S)-1-ヒドロキシエチル]-6-(メチルアミノ)イミダゾ[4,5-c]ピリジン-1-イル]シクロヘキシル]アセトニトリル、及び
トランス-2-[4-[2-[(1R)-1-ヒドロキシエチル]-6-(メチルアミノ)イミダゾ[4,5-c]ピリジン-1-イル]シクロヘキシル]アセトニトリル
の重水素化形態から選択される、本明細書において規定される一般式(I)の化合物、またはそれらの薬学的に許容される塩、水和物、もしくは溶媒和物を提供する。
【0057】
本発明の一実施態様は、トランス-2-[4-[2-[1-ヒドロキシエチル]-6-(メチルアミノ)イミダゾ[4,5-c]ピリジン-1-イル]シクロヘキシル]アセトニトリルである一般式(I)の化合物、またはその薬学的に許容される塩、水和物、もしくは溶媒和物を提供する。
【0058】
本発明の一実施形態は、トランス-2-[4-[2-[(1S)-1-ヒドロキシエチル]-6-(メチルアミノ)イミダゾ[4,5-c]ピリジン-1-イル]シクロヘキシル]アセトニトリルである一般式(I)の化合物、またはその薬学的に許容される塩、水和物、もしくは溶媒和物を提供する。
【0059】
本発明の一実施形態は、トランス-2-[4-[2-[(1R)-1-ヒドロキシエチル]-6-(メチルアミノ)イミダゾ[4,5-c]ピリジン-1-イル]シクロヘキシル]アセトニトリルである一般式(I)の化合物、またはその薬学的に許容される塩、水和物、もしくは溶媒和物を提供する。
【0060】
本発明の一実施形態は、トランス-2-[4-[2-[(1R)-1-ヒドロキシエチル]-6-(トリジュウテリオメチルアミノ)イミダゾ[4,5-c]ピリジン-1-イル]シクロヘキシル]アセトニトリルである一般式(I)の化合物、またはその薬学的に許容される塩、水和物、もしくは溶媒和物を提供する。
【0061】
本発明の一実施形態は、トランス-2-[4-[2-[1,2,2,2-テトラジュウテリオ-1-ヒドロキシエチル]-6-(メチルアミノ)イミダゾ[4,5-c]ピリジン-1-イル]シクロヘキシル]アセトニトリルである一般式(I)の化合物、またはその薬学的に許容される塩、水和物、もしくは溶媒和物を提供する。
【0062】
本発明の一実施形態は、シス-2-[4-[2-[1-ヒドロキシエチル]-6-(メチルアミノ)イミダゾ[4,5-c]ピリジン-1-イル]シクロヘキシル]アセトニトリルである一般式(I)の化合物、またはその薬学的に許容される塩、水和物、もしくは溶媒和物を提供する。
【0063】
本発明の一実施形態は、シス-2-[4-[2-[(1R)-1-ヒドロキシエチル]-6-(メチルアミノ)イミダゾ[4,5-c]ピリジン-1-イル]シクロヘキシル]アセトニトリルである一般式(I)の化合物、またはその薬学的に許容される塩、水和物、もしくは溶媒和物を提供する。
【0064】
一実施形態において、本発明は、トランス-2-[4-[2-[(1R)-1-ヒドロキシエチル]-6-(メチルアミノ)イミダゾ[4,5-c]ピリジン-1-イル]シクロヘキシル]アセトニトリルである一般式(I)の化合物、またはその薬学的に許容される塩を提供する。
【0065】
一実施形態において、本発明は、トランス-2-[4-[2-[(1R)-1-ヒドロキシエチル]-6-(メチルアミノ)イミダゾ[4,5-c]ピリジン-1-イル]シクロヘキシル]アセトニトリルである一般式(I)の化合物、またはその水和物を提供する。
【0066】
一実施形態において、本発明は、トランス-2-[4-[2-[(1R)-1-ヒドロキシエチル]-6-(メチルアミノ)イミダゾ[4,5-c]ピリジン-1-イル]シクロヘキシル]アセトニトリルである一般式(I)の化合物、またはその溶媒和物を提供する。
【0067】
一実施形態において、本発明は、重水素化形態のトランス-2-[4-[2-[(1R)-1-ヒドロキシエチル]-6-(メチルアミノ)イミダゾ[4,5-c]ピリジン-1-イル]シクロヘキシル]アセトニトリルである一般式(I)の化合物を提供する。
【0068】
一実施形態において、本発明は、トランス-2-[4-[2-[(1R)-1-ヒドロキシエチル]-6-(メチルアミノ)イミダゾ[4,5-c]ピリジン-1-イル]シクロヘキシル]アセトニトリルである一般式(I)の化合物を提供する。
【0069】
一実施形態において、本発明は、トランス-2-[4-[2-[(1R)-1-ヒドロキシエチル]-6-(メチルアミノ)イミダゾ[4,5-c]ピリジン-1-イル]シクロヘキシル]アセトニトリルマロン酸塩である一般式(I)の化合物を提供する。
【0070】
一実施形態において、本発明は、トランス-2-[4-[2-[(1R)-1-ヒドロキシエチル]-6-(メチルアミノ)イミダゾ[4,5-c]ピリジン-1-イル]シクロヘキシル]アセトニトリルグリコール酸塩である一般式(I)の化合物を提供する。
【0071】
一実施形態において、本発明は、トランス-2-[4-[2-[(1R)-1-ヒドロキシエチル]-6-(メチルアミノ)イミダゾ[4,5-c]ピリジン-1-イル]シクロヘキシル]アセトニトリルL-酒石酸塩である一般式(I)の化合物を提供する。
【0072】
一実施形態において、本発明は、トランス-2-[4-[2-[(1R)-1-ヒドロキシエチル]-6-(メチルアミノ)イミダゾ[4,5-c]ピリジン-1-イル]シクロヘキシル]アセトニトリルL-リンゴ酸塩である一般式(I)の化合物を提供する。
【0073】
一実施形態において、本発明は、トランス-2-[4-[2-[(1R)-1-ヒドロキシエチル]-6-(メチルアミノ)イミダゾ[4,5-c]ピリジン-1-イル]シクロヘキシル]アセトニトリル硫酸塩である一般式(I)の化合物を提供する。
【0074】
一実施形態において、本発明は、トランス-2-[4-[2-[(1R)-1-ヒドロキシエチル]-6-(メチルアミノ)イミダゾ[4,5-c]ピリジン-1-イル]シクロヘキシル]アセトニトリル塩酸塩である一般式(I)の化合物を提供する。
【0075】
一実施形態において、本発明は、トランス-2-[4-[2-[(1R)-1-ヒドロキシエチル]-6-(メチルアミノ)イミダゾ[4,5-c]ピリジン-1-イル]シクロヘキシル]アセトニトリルコハク酸塩である一般式(I)の化合物を提供する。
【0076】
一実施形態において、本発明は、トランス-2-[4-[2-[(1R)-1-ヒドロキシエチル]-6-(メチルアミノ)イミダゾ[4,5-c]ピリジン-1-イル]シクロヘキシル]アセトニトリルシュウ酸塩である一般式(I)の化合物を提供する。
【0077】
一実施形態において、本発明は、トランス-2-[4-[2-[(1R)-1-ヒドロキシエチル]-6-(メチルアミノ)イミダゾ[4,5-c]ピリジン-1-イル]シクロヘキシル]アセトニトリルフマル酸塩である一般式(I)の化合物を提供する。
【0078】
一実施形態において、本発明は、トランス-2-[4-[2-[(1R)-1-ヒドロキシエチル]-6-(メチルアミノ)イミダゾ[4,5-c]ピリジン-1-イル]シクロヘキシル]アセトニトリル1,5-ナフタレンジスルホン酸塩である一般式(I)の化合物を提供する。
【0079】
一実施形態において、本発明は、トランス-2-[4-[2-[(1R)-1-ヒドロキシエチル]-6-(メチルアミノ)イミダゾ[4,5-c]ピリジン-1-イル]シクロヘキシル]アセトニトリルDL-マンデル酸塩である一般式(I)の化合物を提供する。
【0080】
1または複数の実施形態において、本発明は、一般式(II)
【化6】
の中間体であって、
式中、
AはCシクロアルキルを表し、
はRから選択される置換基で置換され、且つ任意選択で1もしくは複数の重水素で置換されたCアルキルを表し、
は水素もしくは重水素を表し、
は水素もしくは重水素を表し、
はシアノを表し、
はハロゲンを表す、
一般式(I)の化合物の製造に有用な上記中間体またはそれらの塩を提供する。
【0081】
一実施形態において、本発明は、2-[トランス-4-[(5-アミノ-2-クロロピリジン-4-イル)アミノ]シクロヘキシル]アセトニトリルから選択される中間体及びそれらの塩を提供する。
【0082】
1または複数の実施形態において、本発明は、一般式(III)
【化7】
の中間体であって、
式中、
はRから選択される置換基で置換され、且つ任意選択で1もしくは複数の重水素で置換されたCアルキルを表し、
は水素もしくは重水素を表し、
は水素もしくは重水素を表し、
はシアノを表し、
はヒドロキシルを表し、
Ra、Rb、Rc、及びRdはそれぞれ独立に、水素及び重水素から選択され、
はハロゲンを表す、
一般式(Ia)の化合物の製造に有用な上記中間体またはそれらの塩を提供する。
【0083】
一実施形態において、本発明は、
2-[トランス-4-[6-クロロ-2-(1-ヒドロキシエチル)-1H-イミダゾ[4,5-c]ピリジン-1-イル]シクロヘキシル]アセトニトリル、
2-[トランス-4-[6-クロロ-2-[(1R)-1-ヒドロキシエチル]-1H-イミダゾ[4,5-c]ピリジン-1-イル]シクロヘキシル]アセトニトリル、及び
トランス-2-[4-[6-クロロ-2-(1,2,2,2-テトラジュウテリオ-1-ヒドロキシエチル)イミダゾ[4,5-c]ピリジン-1-イル]シクロヘキシル]アセトニトリル
から選択される中間体、またはその塩を提供する。
【0084】
一実施形態において、本発明は、パラジウム触媒の存在下での化合物(III)のアミノ化を含む、化合物(III)からの化合物(Ia)の製造方法に関し、
式中、
は、任意選択で1もしくは複数の重水素で置換されたCアルキルを表し、
はRから選択される置換基で置換され、且つ任意選択で1もしくは複数の重水素で置換されたCアルキルを表し、
は水素もしくは重水素を表し、
は水素もしくは重水素を表し、
はシアノを表し、
はヒドロキシルを表し、
Ra、Rb、Rc、及びRdはそれぞれ独立に、水素及び重水素から選択され、
はハロゲンを表す、
またはそれらの塩。
【0085】
一実施形態において、本発明は、パラジウム触媒の存在下での化合物(III)のアミノ化を含む、化合物(III)からの化合物(Ia)の製造方法であって、上記パラジウム触媒が、BrettPhos、tBuBrettPhos、またはtBuXPhos配位子を含む上記製造方法に関する。
【0086】
一実施形態において、本発明は、パラジウム触媒の存在下での化合物(III)のアミノ化を含む、化合物(III)からの化合物(Ia)の製造方法であって、上記パラジウム触媒が、BrettPhos Pd G1、BrettPhos Pd G3、tBuBrettPhos Pd G3、tBuXPhos Pd G1、またはtBuXPhos Pd G3から選択される上記製造方法に関する。
【0087】
一実施形態において、本発明は、パラジウム触媒の存在下での化合物(III)のアミノ化を含む、化合物(III)からの化合物(Ia)の製造方法であって、上記パラジウム触媒が、PdCl、Pd(dba)、またはPd(OAc)などのパラジウム源から、BrettPhos、tBuBrettPhos、またはtBuXPhos配位子と組み合わせて調製される上記製造方法に関する。
【0088】
一般式(I)の化合物は、有機溶媒から濃縮することにより直接、あるいは有機溶媒もしくは上記溶媒と有機もしくは水などの無機であってもよい共溶媒との混合物から、結晶化または再結晶化することによってのいずれかで、結晶形態で得てもよい。上記結晶は、本質的に溶媒を含まない形態で、または水和物などの溶媒和物として単離されてもよい。本発明は、多形体及び偽多形体、ならびにそれらの混合物などの、全ての結晶形を包含する。
【0089】
一般式(I)の化合物は、異性体、例えば鏡像異性体及びジアステレオマーの存在を誘起する、非対称に置換された(キラル)炭素原子を含む。本発明は、光学的に純粋な形態、またはそれらの混合物(例えば、ラセミ混合物または部分的に精製された光学的混合物)としてのいずれかの、全てのかかる異性体に関する。本発明の化合物及び中間体の純粋な立体異性体は、当技術分野において公知の手順を適用することによって得ることができる。種々の異性体は、選択的結晶化及びクロマトグラフィー技法、例えばキラル固定相を用いる高速液体クロマトグラフィーなどの物理的分離方法によって分離することができる。鏡像異性体は、光学活性酸を用いて形成される場合がある上記鏡像異性体のジアステレオマー塩の選択的結晶化によって互いに分離することができる。続いて、上記精製されたジアステレオマーの塩から光学的に精製された化合物を遊離させることができる。ジアステレオマー誘導体の形成によって鏡像異性体を分割してもよい。あるいは、キラル固定相を用いたクロマトグラフィー技法によって鏡像異性体を分離してもよい。純粋な立体異性体はまた、当該の反応が立体選択的または立体特異的に起こるならば、適当な出発物質の対応する純粋な立体異性体から誘導してもよい。特定の立体異性体が所望の場合、上記化合物は、立体選択的または立体特異的調製方法によって合成されることとなることが好ましい。これらの方法では、キラルで純粋な出発物質を有利に用いることとなる。
【0090】
更に、分子内に二重結合または完全もしくは部分飽和環系が存在する場合、幾何異性体が形成される場合がある。分離された、純粋なもしくは部分的に精製された幾何異性体またはそれらの混合物としての任意の幾何異性体が本発明の範囲内に含まれることが意図される。
【0091】
2置換シクロヘキサンなどの2置換シクロアカンは、幾何異性体、すなわち、シス及びトランス異性体を形成する場合がある。シス異性体は両方の置換基を当該の環の同一側にもち、トランス異性体はそれらの置換基を当該の環の反対側にもつ。分離された、純粋なもしくは部分的に精製された幾何異性体、またはそれらの混合物としての如何なる幾何異性体も本発明の範囲内に包含されることが意図される。
【0092】
一般式(I)の化合物において、当該の原子はそれらの天然の同位体存在量を示してもよく、または1もしくは複数の当該原子が、同一の原子番号を有するが、天然に存在する原子質量または質量数と異なる原子質量または質量数を有する、特定の同位体が人工的に富化されていてもよい。本発明は、一般式(I)の化合物の全ての適当な同位体変種を包含することを意図する。例えば、異なる水素の同位体としてはH、H、及びHが挙げられ、異なる炭素の同位体としては、12C、13C、及び14Cが挙げられ、異なる窒素の同位体としては、14N及び15Nが挙げられる。重水素(H)を富化させることにより、例えば、イン・ビボ半減期を増大させるもしくは投薬計画量を低減できる場合があり、または生物学的試料のキャラクタリゼーションのための標準として有用な化合物を提供できる場合がある。一般式(I)の範囲内の同位体富化化合物は、適宜の同位体富化反応剤及び/または中間体を用いた、当業者に周知の従来の技法によって、または本明細書の概括的手順及び実施例に記載の方法と類似の方法によって調製することができる。
【0093】
本発明の1または複数の実施形態において、上記で規定された一般式(I)の化合物は、治療に有用であり、特に、例えば、増殖性及び炎症性皮膚疾患である、乾癬、アトピー性皮膚炎、強皮症、酒さ、皮膚癌、皮膚炎、疱疹状皮膚炎、膚筋炎、白斑症、円形脱毛症、接触性皮膚炎、湿疹、乾燥症、魚鱗癬、じんましん、慢性特発性そう痒、壊疽性膿皮症、皮膚エリテマトーデス、及び扁平苔癬などの皮膚疾患;喘息、慢性閉塞性肺疾患、肺線維症、嚢胞性線維症、鼻炎、細気管支炎、ビシノーシス、じん肺、気管支拡張症、過敏性肺炎、肺癌、中皮腫、及びサルコイドーシスなどの呼吸器疾患;炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、クローン病、後腹膜線維症、セリアック病、及び癌などの胃腸疾患;重症筋無力症、シェーグレン症候群、結膜炎、強膜炎、ブドウ膜炎、ドライアイ症候群、角膜炎、虹彩炎などの眼疾患;狼瘡、多発性硬化症、関節リウマチ、I型糖尿病及び糖尿病による合併症、がん、強直性脊椎炎、及び乾癬性関節炎などの全身性適応症;骨軟部腫瘍、頭頸部癌などの癌、ならびに免疫抑制が望ましい他の自己免疫疾患及び適応症、例えば臓器移植の治療に有用である。
【0094】
一実施形態において、本発明は、乾癬もしくはアトピー性皮膚炎の予防及び/または治療における使用のための、上記で規定された一般式(I)の化合物を提供する。
【0095】
一実施形態において、本発明は、アトピー性皮膚炎の予防及び/または治療における使用のための、上記で規定された一般式(I)の化合物を提供する。
【0096】
一実施形態において、本発明は、自己免疫疾患などの免疫系の疾患の予防、治療、または改善方法であって、上記疾患の少なくとも1種に罹患している人に、有効量の1種または複数種の上記一般式(I)の化合物を、任意選択で薬学的に許容される担体または1種もしくは複数種の賦形剤と共に、任意選択で他の治療上活性な化合物との併用で、投与することを含む上記方法を提供する。
【0097】
一実施形態において、本発明は、乾癬もしくはアトピー性皮膚炎の予防、治療、または改善方法であって、上記疾患の少なくとも1種に罹患している人に、有効量の1種または複数種の上記一般式(I)の化合物を、任意選択で薬学的に許容される担体または1種もしくは複数種の賦形剤と共に、任意選択で他の治療上活性な化合物との併用で、投与することを含む上記方法を提供する。
【0098】
一実施形態において、本発明は、アトピー性皮膚炎の予防、治療、または改善方法であって、上記疾患の少なくとも1種に罹患した人に、有効量の1種または複数種の上記一般式(I)の化合物を、任意選択で薬学的に許容される担体または1種もしくは複数種の賦形剤と共に、任意選択で他の治療上活性な化合物との併用で投与することを含む上記方法を提供する。
【0099】
一実施形態において、本発明は、自己免疫疾患、例えば乾癬もしくはアトピー性皮膚炎などの免疫系の疾患の予防及び/または治療用の医薬の製造における使用のための一般式(I)の化合物を提供する。
【0100】
一実施形態において、本発明は、免疫系の疾患、例えばアトピー性皮膚炎などの自己免疫疾患の予防及び/または治療用の医薬の製造における使用のための、一般式(I)の化合物を提供する。
【0101】
本発明の1または複数の実施形態において、上記で規定された一般式(I)の化合物は、JAK1、JAK2、JAK3、またはTYK2プロテインチロシンキナーゼなどのJAKファミリーのプロテインチロシンキナーゼのプロテインチロシンキナーゼの活性を調節することができる抗炎症剤として有用である。
【0102】
1または複数の実施形態において、本発明は、JAK1キナーゼ活性の阻害に応答性である疾患の治療における使用のための一般式(I)の化合物を提供する。
【0103】
本発明の化合物は、ヒトの治療に有用であることに加えて、ウマ、ウシ、ヒツジ、ブタ、イヌ、及びネコなどの哺乳動物を含む動物の獣医学的治療にも有用である場合がある。
【0104】
本発明の医薬組成物
治療に用いるための本発明の化合物は一般的に医薬組成物の形態にある。したがって本発明は、一般式(I)の化合物を、任意選択で1種または複数種の他の治療上活性な化合物と共に、薬学的に許容される賦形剤、ビヒクル、または担体(複数可)と共に含む医薬組成物に関する。上記賦形剤は、当該組成物の他の成分に適合性であり、且つ該賦形剤を摂取する者に対して有害ではないという意味で「許容される」ものである必要がある。
【0105】
本活性成分は当該製剤の0.0001~99.9重量%を構成することが好都合である。
【0106】
本化合物は、単位剤形中で、1日に1回または適宜の間隔で複数回、但し常に患者の状態に応じて、且つ医師による処方に従って投与されてもよい。単位剤形には、0.001mg~1000mg、好ましくは0.1mg~300mg、より好ましくは1~150mg、例えば3~100mgの一般式(I)の化合物が含まれることが好都合である。
【0107】
本発明の化合物の適切な投与量は、とりわけ、当該の患者の年齢及び状態、治療を受ける疾患の重篤度、ならびに医師に周知である他の因子に依存することとなる。本化合物は、経口投与、非経口投与、局所投与、経皮投与、もしくは皮内投与するか、または異なる投与計画に従って、例えば、毎日、毎週、もしくは1月の間隔で、他の経路により投与するかのいずれかであってよい。一般に、単回用量は、0.001~400mg/kg-体重、例えば0.1g~4mg/kgの範囲となる。本化合物は、急速静注として投与する(すなわち、日用量全体を一度に投与する)か、または1日に2回以上に分割して投与してもよい。
【0108】
局所治療に関しては、「使用単位」に言及することがより適切である場合があり、「使用単位」とは、患者に投与することができ、容易に取り扱う及び包装することができ、当該活性物質それ自体として、またはその、固体、半固体、もしくは液体の医薬希釈剤または担体との混合物のいずれかからなる、物理的及び化学的に安定な単位用量の状態を維持する単回用量を意味する。
【0109】
局所使用における用語「使用単位」とは、平方センチメートルの治療面積当たり0.001マイクログラム~1mg、好ましくは0.05マイクログラム~0.5mgの対象となる活性成分の塗布量で患者に局所投与することができる単位用量、すなわち単回用量を意味する。
【0110】
特定の治療レジメンにおいて、より長い間隔、例えば隔日、毎週、または更に長い間隔での投与であっても有益である場合も想定される。
【0111】
当該の治療が別の治療上活性な化合物の投与を含む場合、該化合物の有用な投与量については、Goodman & Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics, 9th Ed., J.G. Hardman and L.E. Limbird (Eds.), McGraw-Hill 1995を調べることが推奨される。
【0112】
本発明の化合物を1種または複数種の他の活性化合物と共に投与する場合、その投与は同時投与または逐次投与のいずれであってもよい。
【0113】
上記製剤としては、例えば、経口投与、経直腸投与、非経口投与(皮下、腹腔内、筋肉内、関節内、及び静脈内投与を含む)、経皮投与、皮内投与、眼科投与、局所投与、経鼻投与、舌下投与、または口腔内投与に適した形態の製剤が挙げられる。
【0114】
上記製剤は利便性のよい単位剤形で提供されてもよく、例えば、Remington, The Science and Practice of Pharmacy, 21ed ed., 2005に開示される、但しこれらに限定されない、薬学の分野で周知の任意の方法によって調製されてもよい。全ての方法は、本活性成分を1種または複数種の副成分を構成する担体と組み合わせるステップを含む。一般に、上記製剤は、本活性成分を液体担体、半固体担体、もしくは微粉固体担体、またはこれらの組み合わせと均一かつ密接に組み合わせ、次いで必要に応じて、その生成物を所望の製剤に成形することにより調製される。
【0115】
経口投与及び口腔内投与に適した本発明の製剤は、それぞれが所定量の本活性成分を含有する、カプセル剤、サシェ剤、錠剤、チューインガム剤、またはロゼンジ剤としての個別の単位の形態;散剤、顆粒剤、またはペレット剤の形態;水性液体または非水性液体中の溶液剤または懸濁液剤の形態;あるいは、ゲル剤、ナノもしくはマイクロエマルション剤、水中油型乳化液剤、油中水型乳化液剤、または他の分配系の形態であってよい。水性懸濁液剤に適した分散剤または懸濁剤としては、合成または天然の界面活性剤及び増粘剤が挙げられる。本活性成分はまた、急速静注剤、舐剤、またはペースト剤の形態で投与されてもよい。
【0116】
錠剤は、本活性成分を、任意選択で1種または複数種の副成分と共に圧縮、成型、または凍結乾燥することによって製造してもよい。圧縮錠剤は、粉末または顆粒などの自由流動形態の本活性成分(複数可)を、任意選択で結合剤及び/または充填剤、滑沢剤、崩壊剤、または分散剤と混合し、適宜の機械で圧縮することによって製剤化してもよい。成形錠剤は、粉末状の本活性成分と不活性液体希釈剤で湿らせた適宜の担体との混合物を、適宜の機械で成形することによって製造してもよい。凍結乾燥錠剤は、原薬の溶液から凍結乾燥機中で形成させてもよい。適宜の充填剤が含まれていてもよい。
【0117】
経直腸投与用製剤は、本発明の化合物が低融点の水溶性または水不溶性の固体と混合された坐剤の形態であってよい。
【0118】
非経口投与に適した製剤は、利便性のよい、無菌の本活性成分の油性または水性製剤からなり、該製剤は好ましくは被投与者の血液と等張である、等張生理学的食塩水、等張グルコース溶液、または緩衝液である。更に、上記製剤は、共溶媒、可溶化剤、及び/または錯化剤を含有していてもよい。上記製剤は、例えば、細菌保持フィルタによるろ過、当該製剤への滅菌剤の添加、当該製剤への放射線照射、または当該製剤の加熱によって利便性よく滅菌してもよい。例えば、Encyclopedia of Pharmaceutical Technology, vol.9, 1994に開示されるリポソーム製剤もまた、非経口投与に好適である。
【0119】
あるいは、一般式(I)の化合物は、使用直前に無菌溶媒に容易に溶解する無菌固形製剤、例えば凍結乾燥粉末として提供されてもよい。
【0120】
経皮投与用製剤は、プラスター剤、貼付剤、マイクロニードル剤、リポソームもしくはナノ粒子送達系、または皮膚に塗布する他の皮膚用製剤の形態であってよい。
【0121】
眼科投与に適した製剤は、本活性成分の無菌水性製剤の形態であってよく、該製剤は、微結晶形態、例えば、水性微結晶懸濁液剤の形態であってよい。例えば、Encyclopedia of Pharmaceutical Technology, vol.2, 1989に開示されるリポソーム製剤または生分解性ポリマー系も、眼科投与用の本活性成分を提供するために用いてもよい。
【0122】
経皮投与、皮内投与、または眼科投与などの局所投与に適した製剤としては、リニメント剤、ローション剤、ゲル剤、塗布剤、噴霧剤、フォーム剤、フィルム形成剤、マイクロニードル剤、マイクロまたはナノエマルション剤、クリーム剤、軟膏剤、またはペースト剤などの水中油型もしくは油中水型乳化液剤;あるいは滴剤などの溶液剤または懸濁液剤が挙げられる。
【0123】
局所投与に関しては、一般式(I)の化合物は、一般的には、上記組成物の0.001~20重量%、例えば0.01%~約10%の量で存在してもよいが、該組成物の約100%までの量で存在してもよい。
【0124】
経鼻投与または口腔内投与に適した製剤としては、散剤、エアロゾル及び霧吹き器などの自己噴射型製剤ならびに噴霧製剤が挙げられる。かかる製剤は、例えば、Modern Pharmaceutics, 2nd ed., G.S. Banker and C.T. Rhodes (Eds.), page 427-432, Marcel Dekker, New York;Modern Pharmaceutics, 3th ed., G.S. Banker and C.T. Rhodes (Eds.), page 618-619 and 718-721, Marcel Dekker, New York;及びEncyclopedia of Pharmaceutical Technology, vol. 10, J. Swarbrick and J.C. Boylan (Eds), page 191-221, Marcel Dekker, New Yorkに更に詳細に開示される。
【0125】
上記一般式(I)の化合物の製剤は、上述の成分に加えて、希釈剤、緩衝剤、香味料、着色料、界面活性剤、増粘剤、浸透促進剤、溶解促進剤、防腐剤、例えばヒドロキシ安息香酸メチル(酸化防止剤を含む)、乳化剤などの、1種または複数種の更なる成分を含んでいてもよい。
【0126】
調製方法
本発明の化合物は、合成分野の当業者に周知の多くの方法で調製することができる。一般式(I)の化合物は、例えば、有機合成化学の分野で公知の方法、または当業者に理解されるそれらの変化形と共に、以下に概説する反応及び技法を用いて調製してもよい。好ましい方法としては以下に記載されるものが挙げられるが、これらに限定はされない。これらの反応は、用いる反応剤及び材料に対して適当であり、且つ実施する変換に適した溶媒中で行われる。また、下記の合成方法において、溶媒の選択、反応雰囲気、反応温度、実験時間、及び後処理手順を含む全ての提案された反応条件は、当該の反応の標準条件となるように選択されていることを理解されたく、このことは、当業者であれば容易に認識するべきものである。所与の部類に分類される全ての化合物が、記載される方法のいくつかにおいて必要とされるいくつかの反応条件に適合するとは限らない。上記反応条件に適合する置換基に対するかかる制限は、当業者には容易に明らかであろうし、且つ代替の方法を用いることができる。本発明の化合物または任意の中間体は、必要ならば、有機合成化学者に周知の標準的な方法、例えば、“Purification of Laboratory Chemicals”, 6th ed. 2009, W. Amarego and C. Chai, Butterworth-Heinemannに記載の方法を用いて精製してもよい。出発物質は、市販されている公知の化合物であるか、または当業者に周知の慣用的な合成方法によって調製されるかのいずれであってもよい。
【0127】
概括的操作及び調製
出発物質は市販されているかまたは文献公知であった。試薬及び溶媒は市販品であり、別段の注記がない限り精製することなく使用した。クロマトグラフィーによる精製は、予め充填されたREVELERIS(登録商標)Silica Flash Cartridgesを備えたGrace REVELERIS(登録商標)システム、またはTeledyne Isco CombiFlash(登録商標)Rfシステム、またはシリカゲル60を使用して手動で実施した。H NMRスペクトルは、内部標準としてテトラメチルシラン(δ=0.00ppm)を用い、300、400、または600MHzで、Brukerの装置上で記録した。化学シフト値(δ、ppm)は、内部テトラメチルシラン(δ=0.00)標準に対する値で示す。多重腺の値は、区別した二重線(d)、三重線(t)、四重線(q)、または区別していない場合(m)のいずれにおいても、範囲を示していない限り、おおよその中心点の値で示す。(br)はブロードピークを表す一方、(s)は一重線を表す。
【0128】
全体を通して以下の略語を用いている。
AcOH 酢酸
Boc tert-ブトキシカルボニル
Cbz ベンジルオキシカルボニル
DCM ジクロロメタン
dba ジベンジリデンアセトン
DIPEA N,N-ジイソプロピルエチレンアミン
DMF N,N-ジメチルホルムアミド
DMP デス・マーチンペルヨージナン
DMSO ジメチルスルホキシド
DSC 示差走査熱量測定法
ee 鏡像異性体過剰率
Et エチル
EtOAc 酢酸エチル
EtOH エタノール
h 時間(複数可)
HATU 1-[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]-1H-1,2,3-トリアゾロ[4,5-b]ピリジニウム3-オキシドヘキサフルオロホスファート
HPLC 高速液体クロマトグラフィー
HRMS 高分解能質量分析法
L リットル
m ミリ
MeCN アセトニトリル
MeOH メタノール
min 分(複数可)
m.p. 融点
Ms メタンスルホニル
MS 質量分析法または質量スペクトル
NMR 核磁気共鳴分光法
rt 室温
RuPhos 2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,6’-ジイソプロポキシビフェニル
SFC 超臨界流体クロマトグラフィー
TBS tert-ブチルジメチルシリル
TFA トリフルオロ酢酸
THF テトラヒドロフラン
Tj 加熱ジャケット温度
TLC 薄層クロマトグラフィー
tr 保持時間
Tr 反応混合物の温度
UHPLC 超高速液体クロマトグラフィー
UPLC 超高速液体クロマトグラフィー
キサントホス 4,5-ビス(ジフェニルホスフィノ)-9,9-ジメチルキサンテン
【0129】
分取HPLC
酸性法
装置:Gilson UV/VIS-155検出器を備えるGilson HPLCシステム
カラム:Waters SunFire(商標)Prep C18 5μm OBD 19×250mm
試薬:(A)0.1%ギ酸水溶液;(B)MeCN
ポンプ: 流速:30mL/分
【0130】
塩基性方法
装置:Gilson UV/VIS-155検出器を備えるGilson HPLCシステム
カラム:Waters XBridge(登録商標)Prep C18 5μm OBD 19×250mm
試薬:(A)50mM NHHCO水溶液;(B)MeCN
ポンプ: 流速:30mL/分
【0131】
分析用LC-MS
方法A
装置: Shimadzu UHPLC 2020
カラム: Acquity UPLC HSS C18 1.8μm、2.1×50mm
試薬: ・ギ酸≧98%、Sigma-Aldrich
・HPLC用アセトニトリル UV/勾配グレード、Baker
・純ジメチルスルホキシド(DMSO)、Chempur
・HPLC用精製水
HPLC条件: ・波長:214nm±4nm、254nm±4nm
・流速:0.5ml/分
・カラム温度:25℃
・自動試料注入装置温度:20℃
・注入容量:3.0μl
・分析時間:6分間
・溶離:勾配

移動相A:ギ酸の0.1% v/v水溶液
移動相B:ギ酸の0.1% v/vアセトニトリル溶液
シリンジ洗浄用溶液:20% MeOH
MS条件:
・質量範囲:100~1000m/z
・イオン化:交互
・走査時間:0.5秒
【0132】
方法B
UPLC-MS分析を、2.1×50mmのAcquity UPLC(登録商標)HSS T3 1.8μmカラム及びポジティブモードでのエレクトロスプレーイオン化で運転するAcquity SQ検出器を備える、Waters Acquity UPLCシステムを用いて実施した。移動相は、緩衝液Aについては0.1%ギ酸を添加した10mM酢酸アンモニウム水溶液、緩衝液Bについては0.1%ギ酸を添加したアセトニトリルで構成した。流速1.2mL/分で、1.4分にわたる2元系勾配(A:B 95:5→5:95)を用い、カラム温度は60℃であった。
【0133】
方法C
高分解能質量スペクトルを用いたUPLC-MS分析を、254nmでのUV検出器及びポジティブモードでのエレクトロスプレーイオン化で運転するWaters LCT Premier XE高分解能TOF質量分析計を備えたWaters Acquity UPLCシステムを用いて実施した。方法Bと同一のカラムならびに移動相A及びBを使用したが、よりゆっくりとした勾配(4.8分にわたってA:B 99:1→1:99;0.7mL/分;カラム温度40℃)とした。
【0134】
方法D
LC-MS:質量スペクトルを、エレクトロスプレーイオン化及び大気圧化学イオン化を用いて、Shimadzu LCMS-2010EV分光計上で得た。カラム:Acquity BEH C18(50mm×2.1mm、1.7μm);移動相:A:0.1%ギ酸水溶液;B:0.1%ギ酸アセトニトリル溶液;勾配:時間(分)/Bの割合(%):0/2、0.2/2、2.3/98、3.4/98、3.41/2、3.5/2;カラム流速:0.8mL/分。
【0135】
方法E
LC-MS:質量スペクトルを、エレクトロスプレーイオン化及び大気圧化学イオン化を用いて、Shimadzu LCMS-2010EV分光計上で得た。カラム:Acquity BEH C18(50mm×2.1mm、1.7μm);移動相:A:0.1%ギ酸水溶液;B:0.1%ギ酸アセトニトリル溶液;勾配:時間(分)/Bの割合(%):0/3、0.4/3、2.5/98、3.4/98、3.5/3、4/3;カラム温度:35℃、流速:0.6mL/分。
【0136】
分析用キラル固定相SFC
キラル固定相SFC分析を、Phenomenex Lux(登録商標)3μm Cellulose-4(150×4.6mm)カラムを備えたWaters UPC2 SFC装置を用いて実施した。CO:MeOH 80:20からなる移動相及び3mL/分の流速での一定組成溶離条件を用いた。分析対象物の鏡像異性体比はUVピーク面積の積分によって決定した。
【実施例
【0137】
中間体
中間体1
2-[トランス-4-[(2-クロロ-5-ニトロピリジン-4-イル)アミノ]シクロヘキシル]アセトニトリル
【化8】
トランス-4-(シアノメチル)シクロヘキシル]アンモニウムトリフルオロ酢酸塩(Li, Y.-L. et al. US2014/0121198)(26.7g、105.8mmol)及び2,4-ジクロロ-5-ニトロピリジン(22.4g、116.3mmol)の脱水アセトニトリル溶液を氷浴中で冷却し、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(55.3mL、317mmol)を滴加した。得られた混合物を室温で20時間撹拌した。この反応混合物を飽和NaHCO水溶液で希釈し、DCM(3×500mL)で抽出した。1つにまとめた有機層をNaSO上で脱水し、ろ過し、真空下で留去した。この粗生成物をヘキサン、ジエチルエーテル、及び水で粉体化して、標記化合物(29.8g、95%)を黄色固体として得た。
UPLC-MS(方法A): t = 3.41分, m/z = 294.9 (M+H)。
H NMR (400 MHz, DMSO-d) δ 8.87 (s, 1H), 8.03 (d, J = 8.3 Hz, 1H), 7.30 (s, 1H), 3.73 (dtd, J = 11.5, 7.7, 4.2 Hz, 1H), 2.50 (d, J = 4.2 Hz, 2H) 2.04 - 1.91 (m, 2H), 1.86 - 1.75 (m, 2H), 1.64 (ddd, J = 11.6, 5.7, 3.0 Hz, 1H), 1.53 - 1.39 (m, 2H), 1.31 (ddd, J = 25.4, 12.9, 4.2 Hz, 2H)。
【0138】
中間体2
2-[トランス-4-[(5-アミノ-2-クロロピリジン-4-イル)アミノ]シクロヘキシル]アセトニトリル
【化9】
中間体1(3.5g、11.9mmol)のMeOH:水 9:1(99mL)の溶液に、鉄(1.86g、33.2mmol)及び塩化アンモニウム(1.91g、35.6mmol)を添加した。得られた混合物を5時間還流下で撹拌した。室温に冷却した後、セライト充填層に通してろ過することにより固形分を除去した。ケーキをMeOHで洗浄し、ろ液を濃縮して揮発分を除去した。残渣を飽和NaHCO水溶液(50mL)で希釈し、EtOAc(3×30mL)で抽出した。有機相をNaSO上で脱水し、真空中で濃縮して、標記化合物を褐色固体として得た(3.0g、95%)。
UPLC-MS(方法A): t = 1.85分, m/z = 265 (M+H)。
H NMR (400 MHz, DMSO-d) δ 7.37 (s, 1H), 6.37 (s, 1H), 5.38 (d, J = 7.7 Hz, 1H), 4.74 (s, 2H), 2.48 (d, J = 6.4 Hz, 2H), 2.06 - 1.92 (m, 2H), 1.87 - 1.74 (m, 2H), 1.71 - 1.57 (m, 1H), 1.33 - 1.16 (m, 5H)。
【0139】
中間体3
2-[トランス-4-[6-クロロ-2-(1-ヒドロキシエチル)-1H-イミダゾ[4,5-c]ピリジン-1-イル]シクロヘキシル]アセトニトリル
【化10】
THF(40mL)中のテトラフルオロホウ酸トリエチルオキソニウム(9.3g、49.1mmol)及びラクトアミド(4.4g、49.1mmol)の混合物を室温で2時間撹拌した(透明溶液)。この溶液を、中間体2(2.6g、9.8mmol)のEtOH(70mL)溶液に添加した。得られた混合物を18時間加熱還流した。この反応混合物を濃縮し、残渣を水(40mL)とEtOAc(25mL)との間で分配させた。水相をEtOAc(3×20mL)で抽出した。有機相をNaSO上で脱水し、真空中で濃縮した。カラムクロマトグラフィー(溶離液として20% EtOAcのDCM溶液及び10% MeOHのDCM溶液)により半固体を得、これをジエチルエーテルで粉体化して、標記化合物を赤味がかった固体として得た(2.3g、73%)。
UPLC-MS(方法A): t = 2.52分, m/z = 319 (M+H)。
H NMR (400 MHz, DMSO-d) δ 8.70 (s, 1H), 8.02 (s, 1H), 5.81 (d, J = 6.8 Hz, 1H), 5.10 (p, J = 6.5 Hz, 1H), 4.74 - 4.60 (m, 1H), 2.55 (d, J = 6.1 Hz, 2H), 2.39 - 2.17 (m, 2H), 2.16 - 2.03 (m, 1H), 1.98 - 1.84 (m, 4H), 1.60 (d, J = 6.5 Hz, 3H), 1.38 - 1.22 (m, 2H)。
【0140】
実施例
実施例1
トランス-2-[4-[2-[1-ヒドロキシエチル]-6-(メチルアミノ)イミダゾ[4,5-c]ピリジン-1-イル]シクロヘキシル]アセトニトリル(化合物1)
【化11】
ステップ1:
2-[トランス-4-[6-アミノ-2-(1-ヒドロキシエチル)-1H-イミダゾ[4,5-c]ピリジン-1-イル]シクロヘキシル]アセトニトリル
【化12】
中間体3(0.20g、0.63mmol)、カルバミン酸tert-ブチル(0.15g、1.25mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(0.06g、0.06mmol)、4,5-ビス(ジフェニルホスフィノ)-9,9-ジメチルキサンテン(0.11g、0.19mmol)、及びリン酸三カリウム(0.31g、1.44mmol)を1,4-ジオキサン(15mL)中で混合した。得られた混合物をアルゴンで20分間脱気し、次いでマイクロ波照射下、130℃で45分間加熱した。この混合物をセライト充填層に通してろ過し、ケーキをMeOH/DCM(1:9)で洗浄し、ろ液を濃縮した。マイクロ波反応器の容量制限のために、同一の量及び条件を用いてこの反応を更に4回繰り返した。得られた残渣を1つにまとめた。ショートカラムクロマトグラフィー(溶離液として2% MeOHのDCM溶液)により粗混合物(0.7g)を得、これをDCM(15mL)に溶解した。この溶液にTFA(1.3mL、17.5mmol)を滴加した。得られた混合物を室温で24時間撹拌した。この混合物を真空中で濃縮した。残渣をDCM(15mL)に溶解し、NaHCO水溶液(5mL)で洗浄した。水相をDCM(5×15mL)で抽出した。有機相をNaSO上で脱水し、真空中で濃縮した。カラムクロマトグラフィー(MeOH:DCM 4:96→7.5M NHのMeOH:DCM 5:95の溶液の勾配)により、標記化合物を黄色味がかった発泡物として得た(0.195g、21%)。
UPLC-MS(方法A): t = 1.72分, m/z = 300 (M+H)。
H NMR (400 MHz, DMSO-d) δ 8.26 (d, J = 0.9 Hz, 1H), 6.66 (d, J = 1.0 Hz, 1H), 5.59 (d, J = 6.7 Hz, 1H), 5.39 (s, 2H), 4.96 (p, J = 6.6 Hz, 1H), 4.62 - 4.47 (m, 1H), 2.57 (d, J = 6.4 Hz, 2H), 2.23 - 2.06 (m, 2H), 2.01 - 1.72 (m, 5H), 1.54 (d, J = 6.5 Hz, 3H), 1.40 - 1.22 (m, 2H)。
【0141】
ステップ2:
トランス-2-[4-[2-[1-ヒドロキシエチル]-6-(メチルアミノ)イミダゾ[4,5-c]ピリジン-1-イル]シクロヘキシル]アセトニトリル
【化13】
ステップ1の生成物(0.195g、0.65mmol)のメタノール(5mL)溶液に、パラホルムアルデヒド(0.078g、2.61mmol)及びナトリウムメトキシド(0.176g、3.26mmol)を添加した。得られた混合物を加熱還流した。2時間後、この混合物を0℃に冷却し、水素化ホウ素ナトリウム(0.099g、2.61mmol)を添加した。得られた混合物を1時間加熱還流した。室温に冷却した後、飽和NaHCO水溶液(10mL)を注意深く加えることによって反応をクエンチした。水相をEtOAc(3×10mL)で抽出した。有機相をNaSO上で脱水し、真空中で濃縮した。カラムクロマトグラフィー(溶離液として4%→10% MeOHのDCM溶液)により、標記化合物を白色発泡物として得た(0.152g、76%)。
HPLC-MS(方法C): t = 1.67分, m/z = 314.1939 (M+H)。
H NMR (400 MHz, DMSO-d) δ 8.34 (d, J = 0.9 Hz, 1H), 6.48 (d, J = 0.9 Hz, 1H), 5.90 (q, J = 4.9 Hz, 1H), 5.59 (d, J = 6.6 Hz, 1H), 4.96 (p, J = 6.6 Hz, 1H), 4.61 - 4.50 (m, 1H), 2.80 (d, J = 4.9 Hz, 3H), 2.56 (d, J = 6.2 Hz, 2H), 2.30 - 2.11 (m, 2H), 1.98 - 1.82 (m, 5H), 1.55 (d, J = 6.5 Hz, 3H), 1.39 - 1.23 (m, 2H)。
【0142】
実施例2及び3
トランス-2-[4-[2-[(1S)-1-ヒドロキシエチル]-6-(メチルアミノ)イミダゾ[4,5-c]ピリジン-1-イル]シクロヘキシル]アセトニトリル(化合物2)及びトランス-2-[4-[2-[(1R)-1-ヒドロキシエチル]-6-(メチルアミノ)イミダゾ[4,5-c]ピリジン-1-イル]シクロヘキシル]アセトニトリル(化合物3)
【化14】
実施例1の鏡像異性体(166mg)を、以下の条件を用いてキラル固定相SFCにより分離した。

(R)-ラクトアミドから調製した(R)鏡像異性体の試料と比較することにより絶対配置を確定した。後述の実施例3(別法による調製)を参照されたい。
実施例2(化合物2)
収量:73mg、>98% ee
UPLC-MS(方法C): t = 1.67分, m/z = 314.1908 (M+H)。
H NMR (300 MHz, DMSO-d) δ 8.33 (d, J = 0.8 Hz, 1H), 6.47 (d, J = 1.0 Hz, 1H), 5.89 (q, J = 5.0 Hz, 1H), 5.58 (d, J = 6.7 Hz, 1H), 4.96 (p, J = 6.5 Hz, 1H), 4.63 - 4.47 (m, 1H), 2.79 (d, J = 5.0 Hz, 3H), 2.55 (d, J = 6.1 Hz, 2H), 2.30 - 2.10 (m, 2H), 2.01 - 1.76 (m, 5H), 1.54 (d, J = 6.4 Hz, 3H), 1.40 - 1.20 (m, 2H)。
実施例3(化合物3)
収量:67mg、>98% ee
UPLC-MS(方法C): t = 1.67分, m/z = 314.1975 (M+H)。
H NMR (300 MHz, DMSO-d) δ 8.33 (d, J = 0.9 Hz, 1H), 6.47 (d, J = 1.1 Hz, 1H), 5.89 (q, J = 4.9 Hz, 1H), 5.58 (d, J = 6.5 Hz, 1H), 4.96 (p, J = 6.4 Hz, 1H), 4.63 - 4.46 (m, 1H), 2.79 (d, J = 5.0 Hz, 3H), 2.55 (d, J = 6.1 Hz, 2H), 2.29 - 2.11 (m, 2H), 2.00 - 1.77 (m, 5H), 1.54 (d, J = 6.5 Hz, 3H), 1.39 - 1.19 (m, 2H)。
H NMR (600 MHz, DMSO-d) δ 8.33 (d, J = 0.9 Hz, 1H), 6.48 (d, J = 1.0 Hz, 1H), 5.90 (q, J = 5.0 Hz, 1H), 5.59 (d, J = 6.7 Hz, 1H), 4.96 (p, J = 6.6 Hz, 1H), 4.55 (tt, J = 12.3, 4.0 Hz 1H), 2.79 (d, J = 5.0 Hz, 3H), 2.55 (d, J = 6.4 Hz, 2H), 2.20 (qdd, J = 12.8, 10.4, 3.7 Hz, 2H), 1.93 (ddd, J = 13.1, 6.3, 3.2 Hz, 2H), 1.89 - 1.86 (m, 2H), 1.86 - 1.84 (m, 1H), 1.54 (d, J = 6.5 Hz, 3H), 1.30 (qdt, J = 12.3, 7.6, 3.6 Hz, 2H)。
13C NMR (151 MHz, DMSO-d) δ 155.5, 155.4, 141.3, 139.2, 133.3, 119.5, 86.4, 61.9, 54.0, 32.9, 30.7, 30.7, 29.1, 28.8, 28.8, 22.9, 21.5。
【0143】
実施例3(別法による調製その1)
トランス-2-[4-[2-[(1R)-1-ヒドロキシエチル]-6-(メチルアミノ)イミダゾ[4,5-c]ピリジン-1-イル]シクロヘキシル]アセトニトリル(化合物3)
【化15】
ステップ1
2-[トランス-4-[6-クロロ-2-[(1R)-1-ヒドロキシエチル]-1H-イミダゾ[4,5-c]ピリジン-1-イル]シクロヘキシル]アセトニトリル
【化16】
100mLのネジ蓋式バイアルに、アルゴン下でテトラフルオロホウ酸トリエチルオキソニウム(8.00g、42.1mmol)及び脱水THF(30mL)を仕込んだ。この白色懸濁液に(R)-ラクトアミド(3.87g、42.1mmol)を一度に添加した。得られた溶液を室温で撹拌した。約6分後、弱い発熱反応が起こり、上記反応容器を水浴中で冷却した。室温で2時間後、この溶液を中間体2(2.23g、8.42mmol)の無水エタノール(45mL)懸濁液に添加し、得られた溶液を80℃で終夜撹拌した。揮発分を留去し、残渣を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(50mL)で処理した。この混合物をEtOAc(3×80mL)で抽出し、1つにまとめた有機相を飽和食塩水(50mL)で洗浄し、硫酸ナトリウム上で脱水し、ろ過した。揮発分を留去して残渣(13.5g)を得、これをフラッシュクロマトグラフィー(DCM:MeOH 98:2→95:5)を用いて精製して、褐色発泡物(1.92g)を得た。これをエーテル(20mL)で粉体化して、標記化合物を固体として得た(1.62g、57%)。
UPLC-MS(方法B): t = 0.52分, m/z = 319.2 (M+H)。
H NMR (300 MHz, DMSO-d) δ 8.69 (d, J = 0.8 Hz, 1H), 8.00 (d, J = 0.9 Hz, 1H), 5.80 (d, J = 6.8 Hz, 1H), 5.10 (p, J = 6.5 Hz, 1H), 4.74 - 4.59 (m, 1H), 2.54 (d, J = 6.4 Hz, 2H), 2.38 - 2.16 (m, 2H), 2.17 - 2.00 (m, 1H), 1.99 - 1.81 (m, 4H), 1.59 (d, J = 6.5 Hz, 3H), 1.41 - 1.18 (m, 2H)。
標記化合物の絶対配置を単結晶X線回折により確認した。
【0144】
ステップ2
2-[4-[2-[(1R)-1-[tert-ブチル(ジメチル)シリル]オキシエチル]-6-クロロイミダゾ[4,5-c]ピリジン-1-イル]シクロヘキシル]アセトニトリル
【化17】
ステップ1の生成物(2.47g、7.75mmol)のTHF(35mL)溶液を氷浴中で冷却し、イミダゾール(791mg、11.6mmol)を添加した。5分後に、TBSCl(1.28g、8.52mmol)のTHF(11mL)溶液を添加し、氷浴を取り外した。室温で5時間後に、この混合物を45℃に加温し、この温度で終夜撹拌した。完全に転化させるために、更にイミダゾール(791mg、11.6mmol)及びTBSCl(1.28g、8.52mmol)のTHF(5mL)溶液を添加した。この混合物を45℃で更に24時間撹拌し、飽和食塩水(35mL)と水(35mL)の混合液に注ぎ入れた。これをEtOAc(2×80mL)で抽出し、有機層を飽和食塩水で洗浄し、NaSO上で脱水し、ろ過し、留去した。残渣をフラッシュクロマトグラフィー(DCM:EtOAc 90:10→80:20)により精製して、標記化合物(2.95g、83%)を固体として得た。
UPLC-MS(方法B): t = 0.92分, m/z = 433.3 (M+H)。
H NMR (600 MHz, CDCl) δ 8.75 (d, J = 0.8 Hz, 1H), 7.42 (d, J = 0.9 Hz, 1H), 5.34 (q, J = 6.8 Hz, 1H), 5.00 (tt, J = 12.5, 4.1 Hz, 1H), 2.41 (d, J = 6.4 Hz, 2H), 2.31 - 2.19 (m, 2H), 2.17 - 2.09 (m, 2H), 2.09 - 2.03 (m, 2H), 2.00 - 1.91 (m, 1H), 1.62 (d, J = 6.4 Hz, 3H), 1.48 - 1.33 (m, 2H), 0.91 (s, 9H), 0.14 (s, 3H), 0.03 (s, 3H)。
【0145】
ステップ3
2-[4-[2-[(1R)-1-[tert-ブチル(ジメチル)シリル]オキシエチル]-6-[(4-メトキシフェニル)メチルメチルアミノ]イミダゾ[4,5-c]ピリジン-1-イル]シクロヘキシル]アセトニトリル
【化18】
2mLのネジ蓋式バイアルにステップ2の生成物(46.2mg、0.107mmol)及び4-メトキシ-N-メチルベンジルアミン(32.3mg、0.213mmol)を仕込んだ。このバイアルをアルゴンで置換し、ナトリウムtert-ブトキシド(12.3mg、0.128mmol)、RuPhos(3.0mg、0.0064mmol)、及び酢酸パラジウム(II)(0.72mg、0.0032mmol)の混合物を添加した。この混合物をアルゴン下、110℃で17時間撹拌した。これを室温に冷却し、ジクロロメタン(0.45mL)を加えた。この混合物を飽和食塩水:水 2:1(0.45mL)で洗浄し、水層をジクロロメタン(2×0.45mL)で抽出した。1つにまとめた有機層をNaSO上で脱水し、ろ過し、留去して、標記化合物及び対応する脱TBS類似体を含む粗生成物を得た(75.3mg)。この物質を精製することなく次のステップに用いた。
UPLC-MS(方法B): t = 0.95分, m/z = 548.4 (M+H)。
【0146】
ステップ4
トランス-2-[4-[2-[(1R)-1-ヒドロキシエチル]-6-(メチルアミノ)イミダゾ[4,5-c]ピリジン-1-イル]シクロヘキシル]アセトニトリル
【化19】
ステップ3由来の粗生成物を0℃でTFA(0.25mL)に溶解し、この混合物を室温で1.5時間撹拌した。揮発分を真空下で除去し、残渣を4M塩化水素のジオキサン溶液(0.25mL)に溶解した。この混合物を室温で18時間撹拌し、揮発分を留去し、残渣をジクロロメタン(0.25mL)に溶解した。ここに2Mアンモニアのメタノール溶液(0.60mL)を添加してpHを約10に調整した。揮発分を真空下で除去し、残渣をDCM:MeOH 95:5(2mL)に溶解し、この混合物をろ過した。ろ液を留去し、残渣をクロマトグラフィー(DCM:MeOH 96:4→94:6で溶離する、4gの予め充填されたシリカゲルカラム)により精製して、標記化合物(37.7mg)を、約30%の4-メトキシ-N-メチルベンジルアミンを含む半固体として得た。
UPLC-MS(方法B):t = 0.38分, m/z = 314.3 (M+H)。
分析用キラル固定相SFC:(S)鏡像異性体(従) t = 5.37分;(R)鏡像異性体(主) t = 5.78分。
【0147】
実施例3(別法による調製その2)
トランス-2-[4-[2-[(1R)-1-ヒドロキシエチル]-6-(メチルアミノ)イミダゾ[4,5-c]ピリジン-1-イル]シクロヘキシル]アセトニトリル(化合物3)
【化20】
ステップ1
2-[トランス-4-[(2-クロロ-5-ニトロピリジン-4-イル)アミノ]シクロヘキシル]アセトニトリル
【化21】
機械式撹拌機、還流凝縮器、及びアルゴン導入口を備えた20Lのガラス製反応器を排気し、アルゴンで2回置換した。この反応器に700gの2,4-ジクロロ-5-ニトロピリジン(3.63mol、1.0当量)、665gのトランス-4-(シアノメチル)シクロヘキシルアンモニウム塩酸塩(3.81mol、1.05当量)、及び7.00Lの2-プロパノールを仕込んだ。得られたスラリーを25℃で撹拌し、1.90Lのジイソプロピルエチルアミン(1.41kg、10.9mol、3.0当量)を添加した。添加用の管を0.100Lの2-プロパノールで洗浄し、このスラリーを還流温度に加熱した(Tj設定値=95℃)。この混合物を還流下で15時間撹拌し、次いで25℃に冷却した。インプロセス制御装置(LCMS)は99%の転化率を示した。生成物をろ過により単離し、フィルタ上で1.75Lの2-プロパノール、次いで3.80Lの2-プロパノールで洗浄した。このろ過ケーキをガラス製ボウルに移し、恒量になるまで真空中、50℃で乾燥し、1.00kg(94%)の標記化合物を黄色固体として得た。HPLC純度:98.8面積%。
【0148】
ステップ2
2-[トランス-4-[(5-アミノ-2-クロロピリジン-4-イル)アミノ]シクロヘキシル]アセトニトリル
【化22】
2.0LのParr振とう機用反応フラスコをアルゴンで置換し、5.00gの5% Pt/C(50%の水を含むペースト状、0.05g/g、1.3mmol)、100gの2-[トランス-4-[(2-クロロ-5-ニトロピリジン-4-イル)アミノ]シクロヘキシル]アセトニトリル(339mmol)、及び1.00Lのエタノールを仕込んだ。このParr振とう機用反応フラスコをParr振とう機に設置し、排気し、アルゴンで2回再充填した。次にこのフラスコを排気し、水素を再充填した。圧力を1.5バールに調整し、振とう機を始動させた。追加の水素を数回添加したが、2時間後に水素の消費はなくなった。インプロセス制御装置(HPLC)は>99%の転化率を示し、標記化合物の沈殿を防止するために600mLのジクロロメタンを加えた。得られた混合物を10分間撹拌し、セライト上でろ過した。ろ過ケーキを250mLのジクロロメタンで洗浄し、1つにまとめたろ液から、減圧下、50℃で留去することにより溶媒を除去した。残渣をガラス製ボウルに移し、恒量になるまで真空中、50℃で乾燥して、85.1g(95%)の標記化合物を褐色固体として得た。HPLC純度:94面積%。
【0149】
ステップ3
2-[トランス-4-[6-クロロ-2-[(1R)-1-ヒドロキシエチル]-1H-イミダゾ[4,5-c]ピリジン-1-イル]シクロヘキシル]アセトニトリル
【化23】
機械式撹拌機、還流凝縮器、及びアルゴン導入口を備えた20Lのガラス製反応器を排気し、アルゴンで2回置換した。この反応器に409gの(R)-ラクトアミド(4.59mol、2.5当量)及び4.90Lのテトラヒドロフランを仕込んだ。温度を23℃に調整し、872gのテトラフルオロホウ酸トリエチルオキソニウム(4.59mol、2.5当量)を一度に添加した。要注意! 反応は発熱性であり、添加後に温度は43℃に達した。反応混合物を冷却し、23℃で90分間撹拌した。この混合物を10Lのブルーキャップフラスコ(blue cap flask)に移し、アルゴン下で貯蔵した。上記反応器を2.7Lのエタノールですすぎ、清浄になった反応器に486gの2-[トランス-4-[(5-アミノ-2-クロロピリジン-4-イル)アミノ]シクロヘキシル]アセトニトリル(1.84mol、1.0当量)及び7.3Lのエタノールを仕込んだ。温度を23℃に調整し、(R)-ラクトアミド及びテトラフルオロホウ酸トリエチルオキソニウムを含有するテトラヒドロフラン溶液を約2~4分間にわたって添加した。この反応混合物を加熱還流した(Tr=70℃、Tj設定値=85℃)。白色の塩の沈殿が見られた。この反応混合物は不透明な橙色であった。6時間後、インプロセス制御装置(HPLC)は>95%の転化率を示し、この反応混合物を23℃に冷却し、更に16時間撹拌した。この混合物をろ過し、ろ過ケーキを2.0Lのテトラヒドロフランで洗浄した。ろ液を上記反応器に戻し、溶媒を減圧下、50℃で蒸留により除去した。Tr=31℃/17ミリバールで凝縮がなくなった7時間後に蒸留を停止した。残留したスラリーを7.3Lのメチルtert-ブチルエーテル及び7.3Lの10%炭酸ナトリウム水溶液で希釈した。このスラリーを23℃で14時間撹拌し、その後標記化合物をろ過により単離した。ろ過ケーキを5.0Lの水で洗浄し、吸引乾燥し、上記反応器中に戻した。次に、5.0Lの水を上記反応器に加え、得られたスラリーを23℃で60分間撹拌し、ろ過した。ろ過ケーキを5.0Lの水で洗浄し、吸引乾燥した。得られた灰白色の固体をガラス製ボウルに移し、恒量になるまで真空中、50℃で乾燥した。灰白色固体としての標記化合物の一般的な収率は70~90%、湿ったろ過ケーキのHPLC純度は95面積%。
【0150】
ステップ4
トランス-2-[4-[2-[(1R)-1-ヒドロキシエチル]-6-(メチルアミノ)イミダゾ[4,5-c]ピリジン-1-イル]シクロヘキシル]アセトニトリル
【化24】
機械式撹拌機、還流凝縮器、及びアルゴン導入口を備えた400mLのEasyMaxガラス製反応器をアルゴンで置換した。この反応器に5.43gのナトリウムtert-ブトキシド(56.5mmol、1.2当量)、5.54gのフェノール(58.8mmol、1.25当量)、及び195mLのテトラヒドロフランを仕込んだ。この混合物を25℃で20分間撹拌し、その後15.0gの2-[トランス-4-[6-クロロ-2-[(1R)-1-ヒドロキシエチル]-1H-イミダゾ[4,5-c]ピリジン-1-イル]シクロヘキシル]アセトニトリル(47.1mmol、1.0当量)を添加した。添加用ロートを30mLのテトラヒドロフランで置換し、94.1mLの2Mメチルアミンのテトラヒドロフラン溶液(188mmol、4.0当量)を添加した。得られた混合物を55℃に加熱した(Tj設定値=55℃)。別個の反応フラスコ中で、0.210gのBuBrettPhos Pd G3(0.235mmol、0.005当量)を4.0mLのテトラヒドロフランに溶解した。55℃で上記反応混合物に上記BuBrettPhos Pd G3溶液を添加した。23時間後に暗色の均一溶液を23℃に冷却し、分液ロートに移した。この反応混合物を2×225mLの2M水酸化ナトリウム水溶液で洗浄した。有機相を減圧下、50℃で留去することによって約50%の容量に濃縮し、125mLのヘプタンで希釈した。
【0151】
シリカ充填層によるろ過:105gのシリカゲル(7.0g/g)を250mLのヘプタン/酢酸エチル(1:1)で活性化し、ガラスフィルタ(直径8cm)上に注ぎ入れた。粗製の標記化合物を含有する有機相を上記シリカ充填層上にゆっくりと載置した。不純物を2×250mLのヘプタン/酢酸エチル(1:1)、次いで250mLの酢酸エチルで溶離させた。次に、標記化合物を5×200mLのテトラヒドロフランで溶離させた。標記化合物を含有する画分を1つにまとめ、溶媒を減圧下で留去することにより除去し、12.3g(83%)の粗製の標記化合物を褐色固体として得た。HPLC純度95面積%。
【0152】
Pdの除去:100mLのフラスコに3.00gの上記粗製の標記化合物(9.57mmol)及び45mLのメタノールを仕込んだ。全ての固体が溶解するまでこの混合物を撹拌し、次いで0.30gのSiliaMetS(登録商標)DMT(10% w/w ジメルカプトトリアジン、40~63μm、60Å)を添加した。このスラリーを50℃に加熱し、4時間撹拌し、その後この混合物を23℃に冷却し、セライト上でろ過した。ろ過ケーキを6.0mLのメタノールで洗浄し、1つにまとめたろ液から減圧下で留去することにより溶媒を除去し、2.75g(92%回収率)の標記化合物を得た。
【0153】
再結晶:100mLのフラスコに3.00g(9.57mmol;HPLC純度96面積%)の上記標記化合物及び20mLの酢酸エチルを仕込んだ。この混合物を還流温度に加熱し、全ての固体が溶解するまで撹拌した。この混合物を放冷し、次いで温かいこの溶液に10mLのメチルtert-ブチルエーテルを滴加した。この混合物を室温に放冷し、17時間撹拌した。沈殿をろ過により単離し、フィルタ上で2×1.0mLのメチルtert-ブチルエーテルで洗浄し、恒量になるまで真空中、50℃で乾燥して、1.81g(60%)の標記化合物を灰白色固体として得た(結晶性、m.p.(DSC立ち上がり温度)143±2℃);HPLC純度98面積%。
【0154】
実施例4
トランス-2-[4-[2-[(1R)-1-ヒドロキシエチル]-6-(トリジュウテリオメチルアミノ)イミダゾ[4,5-c]ピリジン-1-イル]シクロヘキシル]アセトニトリル(化合物4)]
【化25】
ステップ1
1,1,1-トリジュウテリオ-N-[(4-メトキシフェニル)メチル]メタンアミン
【化26】
アルゴン下、室温で、無水エタノール(3.0mL)中の4-メトキシベンズアルデヒド(0.243mL、2.00mmol)の混合物に、トリジュウテリオメタンアミン塩酸塩(282mg、4.00mmol)及びTEA(0.558mL、4.00mmol)を添加した。この懸濁液に、わずかな冷却下、テトライソプロポキシチタン(IV)を2分かけて添加した。次いでこの反応混合物を室温で終夜撹拌した。室温で17時間後に、NaBH(113mg、3.00mmol)を添加した。次いでこの懸濁液を室温で更に6.5時間撹拌し、その後2Mアンモニア水溶液(6mL)を冷却下で注意深く添加した。固体部分をろ過により除去し、ろ過ケーキをジクロロメタン(10mL)で洗浄した。有機相を単離した。ろ過ケーキを再度ジクロロメタン(10mL)で洗浄した。1つにまとめたろ液を水洗し、次いで1M HCl水溶液(5mL)で処理した。この酸性の水相をジクロロメタン(10mL)で洗浄し、その後2M NaOH水溶液の添加によってpHを約11に調整した。次いで水相をジクロロメタン(3×10mL)で抽出した。1つにまとめた有機相を飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウム上で脱水し、ろ過した。減圧下(60ミリバール/35℃)で留去して、標記化合物(268mg、83%)を無色液体として得た。
H NMR (600 MHz, CDCl) δ 7.25 - 7.21 (m, 2H), 6.89 - 6.84 (m, 2H), 3.80 (s, 3H), 3.68 (s, 2H)。
【0155】
ステップ2
トランス-2-[4-[2-[(1R)-1-[tert-ブチル(ジメチル)シリル]オキシエチル]-6-[(4-メトキシフェニル)メチルトリジュウテリオメチルアミノ]イミダゾ[4,5-c]ピリジン-1-イル]シクロヘキシル]アセトニトリル
【化27】
4mLのネジ蓋式バイアルに、トランス-2-[4-[2-[(1R)-1-[tert-ブチル(ジメチル)シリル]オキシエチル]-6-クロロイミダゾ[4,5-c]ピリジン-1-イル]シクロヘキシル]アセトニトリル(150mg、0.346mmol)及び1,1,1-トリジュウテリオ-N-[(4-メトキシフェニル)メチル]メタンアミン(107mg、0.693mmol)を仕込んだ。このバイアルをアルゴンで置換し、ナトリウムtert-ブトキシド(40mg、0.416mmol)、RuPhos(9.7mg、0.021mmol)、及び酢酸パラジウム(II)(2.3mg、0.010mmol)の混合物を添加した。この混合物をアルゴン下、110℃で18時間撹拌した。これを室温に冷却し、ジクロロメタン/EtOH 95:5溶液(1.5mL)を加えた。この混合物を飽和食塩水:水 2:1(1.2mL)で洗浄し、水層をジクロロメタン/EtOH 95:5溶液(2×1.5mL)で抽出した。1つにまとめた有機層をNaSO上で脱水し、ろ過し、留去した。カラムクロマトグラフィー(溶離液として1%→5%のMeOHのDCM溶液)により、標記化合物及び対応する脱TBS類似体(0.109g)を黄色発泡物として得た。この物質を更に精製することなく次のステップに用いた。
【0156】
ステップ3
トランス-2-[4-[2-[(1R)-1-ヒドロキシエチル]-6-(トリジュウテリオメチルアミノ)イミダゾ[4,5-c]ピリジン-1-イル]シクロヘキシル]アセトニトリル
【化28】
ステップ2由来の粗生成物を0℃でTFA(0.75mL)に溶解し、この混合物を室温で1.5時間撹拌した。揮発分を真空下で除去し、残渣を0℃で4M塩化水素のジオキサン溶液(0.75mL)に溶解した。この混合物を室温で17時間撹拌し、その後揮発分を留去により除去した。残渣に水(0.5mL)を加え、水相をEtOAc(2×0.5mL)で洗浄した。有機相を水(0.5mL)で抽出した。1つにまとめた水相のpHを飽和炭酸ナトリウム水溶液で約11に調節した。次いで水相をDCM:MeOH 95:5(3×0.5mL)で抽出し、1つにまとめた有機相をNaSO上で脱水し、ろ過し、留去した。カラムクロマトグラフィー(溶離液として3%→5%のMeOHのDCM溶液)により、標記化合物(48mg、42%)を灰白色発泡物として得た。
UPLC-MS(方法B): t = 0.38分, m/z = 317.3 (M+H)。
H NMR (600 MHz, DMSO-d) δ 8.33 (br s, 1H), 6.47 (br s, 1H), 5.87 (s, 1H), 5.59 (d, J = 6.8 Hz, 1H), 4.96 (p, J = 6.5 Hz, 1H), 4.59 - 4.49 (m, 1H), 2.55 (d, J = 6.3 Hz, 2H), 2.25 - 2.14 (m, 2H), 1.96 - 1.80 (m, 5H), 1.54 (d, J = 6.5 Hz, 3H), 1.35 - 1.24 (m, 2H)。
【0157】
実施例5
トランス-2-[4-[2-[1,2,2,2-テトラジュウテリオ-1-ヒドロキシエチル]-6-(メチルアミノ)イミダゾ[4,5-c]ピリジン-1-イル]シクロヘキシル]アセトニトリル(化合物5)
【化29】
ステップ1
トランス-2-[4-(2-アセチル-6-クロロイミダゾ[4,5-c]ピリジン-1-イル)シクロヘキシル]アセトニトリル
【化30】
0℃~5℃~室温で、2-[トランス-4-[6-クロロ-2-[(1R)-1-ヒドロキシエチル]-1H-イミダゾ[4,5-c]ピリジン-1-イル]シクロヘキシル]アセトニトリル(5.0g、15.6mmol)のDCM(50mL)溶液に、DMP(10g、23.5mmol)を少しずつ添加した。この反応混合物を室温で16時間撹拌した。完結したところで、この反応混合物をセライト床を通してろ過し、DCMで洗浄した。ろ液を飽和NaHCO水溶液(300mL)及び飽和食塩水で洗浄し、無水NaSO上で脱水し、減圧下で濃縮し、シリカゲル(100~200メッシュ)カラムクロマトグラフィー(溶離液として10→20% EtOAcの石油エーテル溶液)により精製して、標記化合物(3.5g、71%)を灰白色固体として得た。
LC-MS(方法D): t = 1.84分, m/z = 316.11 (M+H)。
H NMR (400 MHz, CDCl) δ 8.98 (s, 1H), 8.21 (s, 1H), 5.23-5.18 (m, 1H), 2.75 (s, 3H), 2.54 (d, J = 6.5, 2H), 2.31-2.23 (m, 2H), 2.08-2.05 (m, 1H), 1.94-1.89 (m, 4H) 1.30-1.27 (m, 2H)。
【0158】
ステップ2
トランス-2-[4-[6-クロロ-2-(2,2,2-トリジュウテリオアセチル)イミダゾ[4,5-c]ピリジン-1-イル]シクロヘキシル]アセトニトリル
【化31】
室温で、トランス-2-[4-(2-アセチル-6-クロロイミダゾ[4,5-c]ピリジン-1-イル)シクロヘキシル]アセトニトリル(3.5g、11.1mmol)のDMF(35mL)懸濁液に、KCO(4.5g、33.2mmol)を添加し、続いて得られた混合物をその温度で16時間撹拌した。この反応混合物をDO(10mL)でクエンチし、室温で4時間撹拌し、その後氷冷水を加えた。酢酸エチル(70mL)を加えた。相を分離した。水相を酢酸エチル(2×35mL)で抽出し、1つにまとめた有機相を飽和食塩水で洗浄し、無水NaSO上で脱水し、減圧下で濃縮し、シリカゲル(100~200メッシュ)を用いたカラムクロマトグラフィー(溶離液として10→20% EtOAcの石油エーテル溶液)により精製して、2.5gの粗生成物を灰白色固体として得た。得られた物質はアイソトポマーの混合物であった。H NMRに基づけば、アイソトポマーの分布は、未重水素化(CH):7.6%、一重水素化(CHD):26.33%、二重水素化(CHD):32.34%、三重水素化(CD):33.72%であった。
【0159】
得られた粗生成物を用いて上記の手順を繰り返し、1.8gの新たな粗生成物を灰白色固体として得た。H NMRに基づけば、アイソトポマーの分布は、未重水素化(CH):0.66%、一重水素化(CHD):4.47%、二重水素化(CHD):23.84%、三重水素化(CD):71.02%であった。
【0160】
得られた粗生成物を用いて上記の手順を再度繰り返して、1.2g(全体を通した収率35%)の「標記化合物」を灰白色固体として得た。同位体純度:99.3%。H NMRに基づけば、アイソトポマーの分布は、未重水素化(CH):0.66%、一重水素化(CHD):3.47%、二重水素化(CHD):21.85%、三重水素化(CD):74.02%であった。
LC-MS(方法E): t = 1.79分, m/z = 320.19 (M+H)。
H NMR (400 MHz, CDCl) δ 8.98 (s, 1H), 7.54 (s, 1H), 5.40-5.45 (m, 1H), 2.39 (d, J = 6.5, 2H), 2.27-2.219 (m, 2H), 2.13-2.04 (m, 4H), 1.96-1.90 (m, 1H), 1.45-1.39 (m, 2H)。
【0161】
ステップ3
トランス-2-[4-[6-クロロ-2-(1,2,2,2-テトラジュウテリオ-1-ヒドロキシエチル)イミダゾ[4,5-c]ピリジン-1-イル]シクロヘキシル]アセトニトリル
【化32】
0℃~5℃で、トランス-2-[4-[6-クロロ-2-(2,2,2-トリジュウテリオアセチル)イミダゾ[4,5-c]ピリジン-1-イル]シクロヘキシル]アセトニトリル(1.5g、4.69mmol)のCDOD(15mL)懸濁液に、NaBD(0.29g、7.04mmol)を添加した。この反応混合物を室温で1時間撹拌した。完結したところで、反応をDOでクエンチし、この混合物を減圧下で濃縮した。粗化合物をHOに溶解し、10% MeOHのDCM溶液(2×15mL)で抽出した。1つにまとめた有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水NaSO上で脱水し、減圧下で濃縮し、シリカゲル(100~200メッシュ)カラムクロマトグラフィー(溶離液として1→3% MeOHのDCM溶液)により精製して、標記化合物(1.2g、80%)を灰白色固体として得た。得られた化合物はアイソトポマーの混合物であった。H NMRに基づけば、アイソトポマーの分布は、一重水素化(CDOHCH):0.66%、二重水素化(CDOHCHD):3.47%、三重水素化(CDOHCHD):21.85%、四重水素化(CDOHCD):74.02%であった。
LC-MS(方法E): t = 1.48分, m/z = 323.23 (M+H)。
H NMR (400 MHz, CDCl) δ 8.69 (s, 1H), 8.01 (s, 1H), 5.77 (s, 1H), 4.68-4.63 (m, 1H), 2.54 (d, J = 6, 2H), 2.27-2.21 (m, 2H), 2.10-2.08 (m, 1H), 1.93-1.86 (m, 4H), 1.32-1.26 (m, 2H)。
【0162】
ステップ4
トランス-2-[4-[2-[1,2,2,2-テトラジュウテリオ-1-ヒドロキシエチル]-6-(メチルアミノ)イミダゾ[4,5-c]ピリジン-1-イル]シクロヘキシル]アセトニトリル
【化33】
封管中で、トランス-2-[4-[6-クロロ-2-(1,2,2,2-テトラジュウテリオ-1-ヒドロキシエチル)イミダゾ[4,5-c]ピリジン-1-イル]シクロヘキシル]アセトニトリル(0.10g、0.309mmol)の脱気1,4-ジオキサン(5.0mL)溶液に、CsCO(0.302g、0.927mmol)、Brettphos Pd G1(0.037g、0.046mmol)を添加し、アルゴンで10分間パージし、その後2M CHNHのTHF溶液(0.60mL、1.24mmol)を添加した。この反応混合物を80℃で16時間撹拌した。完結したところで、この反応混合物を室温に冷却し、セライトパッドを通してろ過し、EtOAcで洗浄した。ろ液を減圧下で濃縮した。得られた残渣を水中にすくい入れ、DCM(2×10mL)で2回抽出した。1つにまとめた有機相を飽和食塩水で洗浄し、無水NaSO上で脱水し、減圧下で濃縮した。粗生成物をシリカゲル(100~200メッシュ)カラムクロマトグラフィー(溶離液として3%のMeOHのDCM溶液)によって精製して、標記化合物(0.04g、41%)を淡褐色固体として得た。
LC-MS(方法E): t = 1.14分, m/z = 318 (M+H)。
推定されるジュウテリウム同位体分布(mol%):D、D、D、D、D=0、0、3、21、76。
H NMR (400 MHz, DMSO-d): δ (ppm) 8.32 (s, 1H), 6.47 (s, 1H), 5.93-5.89 (m, 1H), 5.58 (s, 1H), 4.57-4.51 (m, 1H), 2.78 (d, J = 5.2 Hz, 3H), 2.55 (d, J = 6.4 Hz, 2H), 2.24-2.17 (m, 2H), 1.94-1.86 (m, 5H), 1.31-1.23 (m, 2H)。
【0163】
実施例6
シス-2-[4-[2-[1-ヒドロキシエチル]-6-(メチルアミノ)イミダゾ[4,5-c]ピリジン-1-イル]シクロヘキシル]アセトニトリル(化合物6)
【化34】
実施例3の「別法による調製その2」に概説したものと同様の小規模での手順に従って、但し、ステップ1においてトランス-4-(シアノメチル)シクロヘキシルアンモニウム塩酸塩をシス-4-(シアノメチル)シクロヘキシルアンモニウム塩酸塩(CAS登録番号1461718-40-0)に置き換えたこと及びステップ3において(R)-ラクトアミドをラクトアミドに置き換えたことのみを主要な違いとして、シス-2-[4-[2-[1-ヒドロキシエチル]-6-(メチルアミノ)イミダゾ[4,5-c]ピリジン-1-イル]シクロヘキシル]アセトニトリルを得た。
UPLC-MS(方法C): t = 1.62分, m/z = 314.4 (M+H)。
H NMR (400 MHz, DMSO-d) δ 8.34 (s, 1H), 6.51 (s, 1H), 5.97 - 5.88 (m, 1H), 5.56 (d, J = 6.8 Hz, 1H), 4.95 (p, J = 6.5 Hz, 1H), 4.60 - 4.46 (m, 1H), 2.85 - 2.77 (m, 5H), 2.27 - 2.08 (m, 3H), 1.89 - 1.62 (m, 6H), 1.54 (d, J = 6.5 Hz, 3H)。
【0164】
実施例7
シス-2-[4-[2-[(1R)-1-ヒドロキシエチル]-6-(メチルアミノ)イミダゾ[4,5-c]ピリジン-1-イル]シクロヘキシル]アセトニトリル(化合物7)
【化35】
実施例3の「別法による調製その2」に概説したものと同様の小規模での手順に従って、但し、反応手順のステップ1においてトランス-4-(シアノメチル)シクロヘキシルアンモニウム塩酸塩をシス-4-(シアノメチル)シクロヘキシルアンモニウム塩酸塩(CAS登録番号1461718-40-0)に置き換えたことのみを主要な違いとして、シス-2-[4-[2-[(1R)-1-ヒドロキシエチル]-6-(メチルアミノ)イミダゾ[4,5-c]ピリジン-1-イル]シクロヘキシル]アセトニトリルを得た。
UPLC-MS(方法C): t = 1.62分, m/z = 314.4 (M+H)。
H NMR (400 MHz, DMSO-d) δ 8.35 (s, 1H), 6.53 (s, 1H), 5.98 (br s, 1H), 5.58 (d, J = 6.7 Hz, 1H), 4.95 (p, J = 6.5 Hz, 1H), 4.60 - 4.46 (m, 1H), 2.86 - 2.76 (m, 5H), 2.27 - 2.07 (m, 3H), 1.89 - 1.62 (m, 6H), 1.54 (d, J = 6.5 Hz, 3H)。
【0165】
実施例8
トランス-2-[4-[2-[(1R)-1-ヒドロキシエチル]-6-(メチルアミノ)イミダゾ[4,5-c]ピリジン-1-イル]シクロヘキシル]アセトニトリルマロン酸塩(化合物8)
【化36】
トランス-2-[4-[2-[(1R)-1-ヒドロキシエチル]-6-(メチルアミノ)イミダゾ[4,5-c]ピリジン-1-イル]シクロヘキシル]アセトニトリル(1.40g、4.46mmol)を45℃でイソプロパノール(50mL)に溶解した。マロン酸(232mg、2.23mmol)のイソプロパノール(5.0mL)溶液を添加した。減圧下、45℃で留去することにより、この反応混合物の容積を減少させた(約30mLのイソプロパノールを留去した)。少量の標記化合物の標準結晶を添加することによって結晶化を開始させた。減圧下で留去することにより、この反応混合物の容積を更に減少させた(約15mLのイソプロパノールを留去した)。得られた懸濁液を氷浴中で冷却し、しばらくして固体をろ過し、氷冷イソプロパノール(3×2mL)で洗浄した。減圧下で乾燥して、標記化合物(932mg、約100%)を灰白色結晶として得た。
H NMR (600 MHz, DMSO-d) δ 8.37 (s, 1H), 6.54 (s, 1H), 6.10 (br s, 1H), 5.66 (br s, 1H), 4.98 (q, J = 6.5 Hz, 1H), 4.62 - 4.51 (m, 1H), 3.17 (s, 2H), 2.81 (s, 3H), 2.55 (d, J = 6.3 Hz, 2H), 2.25 - 2.14 (m, 2H), 1.97 - 1.81 (m, 5H), 1.55 (d, J = 6.5 Hz, 3H), 1.36 - 1.24 (m, 2H)。
m.p.(DSC立ち上がり温度) 109 ± 2℃。
【0166】
実施例9
トランス-2-[4-[2-[(1R)-1-ヒドロキシエチル]-6-(メチルアミノ)イミダゾ[4,5-c]ピリジン-1-イル]シクロヘキシル]アセトニトリルグリコール酸塩(化合物9)
【化37】
トランス-2-[4-[2-[(1R)-1-ヒドロキシエチル]-6-(メチルアミノ)イミダゾ[4,5-c]ピリジン-1-イル]シクロヘキシル]アセトニトリル(1.80g、5.74mmol)を45℃でイソプロパノール(65mL)に溶解した。グリコール酸(437mg、5.74mmol)のイソプロパノール(8.0mL)溶液を添加した。減圧下、45℃で留去することにより、この反応混合物の容積を減少させた(約65mLのイソプロパノールを留去した)。少量の標記化合物の標準結晶を添加することによってゆっくりと結晶化を開始させた。EtOAc(15mL)を加えた。得られた懸濁液を氷浴中で冷却し、しばらくして固体をろ過し、氷冷した9:1のEtOAc:イソプロパノール混合物(2×2mL)で洗浄した。減圧下で乾燥して、標記化合物(1.57g、70%)を灰白色結晶として得た。
H NMR (600 MHz, DMSO-d) δ 8.33 (s, 1H), 6.47 (s, 1H), 5.90 (br s, 1H), 5.58 (d, J = 6.6 Hz, 1H), 4.96 (p, J = 5.3 Hz, 1H), 4.59 - 4.51 (m, 1H), 3.90 (s, 2H), 2.79 (s, 3H), 2.55 (d, J = 6.2 Hz, 2H), 2.25 - 2.14 (m, 2H), 1.97 - 1.80 (m, 5H), 1.54 (d, J = 6.4 Hz, 3H), 1.36 - 1.25 (m, 2H)。
m.p.(DSC立ち上がり温度) 100 ± 2℃。
【0167】
実施例10
トランス-2-[4-[2-[(1R)-1-ヒドロキシエチル]-6-(メチルアミノ)イミダゾ[4,5-c]ピリジン-1-イル]シクロヘキシル]アセトニトリルL-酒石酸塩(化合物10)
【化38】
トランス-2-[4-[2-[(1R)-1-ヒドロキシエチル]-6-(メチルアミノ)イミダゾ[4,5-c]ピリジン-1-イル]シクロヘキシル]アセトニトリル(1.50g、4.79mmol)を45℃でメタノール(25mL)に溶解した。L-酒石酸(360mg、2.40mmol)のメタノール(10mL)溶液を添加した。減圧下、45℃で留去することによりこの反応混合物の容積を減少させた(約10mLのメタノールを留去した)。少量の標記化合物の標準結晶を添加することによって結晶化を開始させた。イソプロパノール(30mL)を加え、減圧下、45℃で留去することによりこの反応混合物の容積を減少させた(約20mLを留去した)。得られた懸濁液を氷浴中で冷却し、しばらくして固体をろ過し、氷冷イソプロパノール(4×4mL)で洗浄した。減圧下で乾燥して、標記化合物(1.55g、83%)を灰白色結晶として得た。
H NMR (600 MHz, DMSO-d) δ 8.34 (s, 1H), 6.49 (s, 1H), 5.98 (br s, 1H), 5.60 (br s, 1H), 4.96 (q, J = 6.4 Hz, 1H), 4.60 - 4.49 (m, 1H), 4.28 (s, 1H), 2.80 (s, 3H), 2.55 (d, J = 6.3 Hz, 2H), 2.26 - 2.13 (m, 2H), 1.97 - 1.80 (m, 5H), 1.54 (d, J = 6.5 Hz, 3H), 1.36 - 1.25 (m, 2H)。
m.p.(DSC立ち上がり温度) 98 ± 2℃。
【0168】
実施例11
トランス-2-[4-[2-[(1R)-1-ヒドロキシエチル]-6-(メチルアミノ)イミダゾ[4,5-c]ピリジン-1-イル]シクロヘキシル]アセトニトリルL-リンゴ酸塩(化合物11)
【化39】
トランス-2-[4-[2-[(1R)-1-ヒドロキシエチル]-6-(メチルアミノ)イミダゾ[4,5-c]ピリジン-1-イル]シクロヘキシル]アセトニトリル(1.50g、4.79mmol)を45℃でメタノール(25mL)に溶解した。L-リンゴ酸(332mg、2.40mmol)のメタノール(10mL)溶液を添加した。減圧下、45℃で留去することによりこの反応混合物の容積を減少させた(約20mLのメタノールを留去した)。少量の標記化合物の標準結晶を添加することによって結晶化を開始させた。イソプロパノール(30mL)を加え、減圧下、45℃で留去することによりこの反応混合物の容積を減少させた(約10mLを留去した)。得られた懸濁液を氷浴中で冷却し、しばらくして固体をろ過し、氷冷イソプロパノール(4×4mL)で洗浄した。減圧下で乾燥して、標記化合物(1.51g、79%)を灰白色結晶として得た。
H NMR (600 MHz, DMSO-d) δ 8.34 (s, 1H), 6.49 (s, 1H), 5.95 (br s, 1H), 5.59 (d, J = 6.7 Hz, 1H), 4.96 (p, J = 6.5 Hz, 1H), 4.59 - 4.51 (m, 1H), 4.23 (dd, J = 7.5, 5.3 Hz, 0.5H), 2.79 (s, 3H), 2.60 (dd, J = 15.6, 5.3 Hz, 0.5H), 2.55 (d, J = 6.4 Hz, 2H), 2.43 (dd, J = 15.6, 7.5 Hz, 0.5H), 2.25 - 2.14 (m, 2H), 1.96 - 1.81 (m, 5H), 1.54 (d, J = 6.5 Hz, 3H), 1.36 - 1.25 (m, 2H)。
m.p.(DSC立ち上がり温度) 94 ± 2℃。
【0169】
実施例12
トランス-2-[4-[2-[(1R)-1-ヒドロキシエチル]-6-(メチルアミノ)イミダゾ[4,5-c]ピリジン-1-イル]シクロヘキシル]アセトニトリル硫酸塩(化合物12)
【化40】
トランス-2-[4-[2-[(1R)-1-ヒドロキシエチル]-6-(メチルアミノ)イミダゾ[4,5-c]ピリジン-1-イル]シクロヘキシル]アセトニトリル(1.50g、4.79mmol)を45℃でメタノール(10mL)に溶解した。硫酸(1.0M、4.79mL、4.79mmol)のイソプロパノール(5.0mL)溶液を添加した。減圧下、45℃で留去することによりこの反応混合物の容積を減少させた(約7mLを留去した)。少量の標記化合物の標準結晶を添加することによって結晶化を開始させた。得られた懸濁液を氷浴中で冷却し、しばらくして固体をろ過し、氷冷イソプロパノール(2×2mL)で洗浄した。減圧下で乾燥して、標記化合物(1.57g)を灰白色結晶として得た。
H NMR (600 MHz, DMSO-d) δ 13.32 (br s, 1H), 8.61 (s, 1H), 7.49 (br s, 1H), 6.95 (s, 1H), 5.91 (br s, 1H), 5.07 (q, J = 6.5 Hz, 1H), 4.67 - 4.58 (m, 1H), 2.96 (s, 3H), 2.56 (d, J = 6.0 Hz, 2H), 2.26 - 2.14 (m, 2H), 1.99 - 1.87 (m, 5H), 1.57 (d, J = 6.5 Hz, 3H), 1.38 - 1.27 (m, 2H)。
m.p.(DSC立ち上がり温度) 169 ± 2℃。
【0170】
実施例13
トランス-2-[4-[2-[(1R)-1-ヒドロキシエチル]-6-(メチルアミノ)イミダゾ[4,5-c]ピリジン-1-イル]シクロヘキシル]アセトニトリル塩酸塩(化合物13)
【化41】
トランス-2-[4-[2-[(1R)-1-ヒドロキシエチル]-6-(メチルアミノ)イミダゾ[4,5-c]ピリジン-1-イル]シクロヘキシル]アセトニトリル(2.00g、6.38mmol)を45℃でイソプロパノール(70mL)に溶解した。メタノール性塩酸(3.0M、6.38mL、19.1mmol)を室温で添加した。減圧下、45℃で留去することによってこの反応混合物の容積を減少させた(約45mLを留去した)。少量の標記化合物の標準結晶を添加することによって結晶化を開始させた。減圧下で留去することにより、この反応混合物の容積を更に減少させた(約5mLを留去した)。得られた懸濁液を氷浴中で冷却し、しばらくして固体をろ過し、氷冷イソプロパノール(4×4mL)で洗浄した。減圧乾燥して、標記化合物(1.30g)を灰白色結晶として得た。
H NMR (600 MHz, DMSO-d) δ 14.06 (br s, 1H), 8.60 (s, 1H), 7.84 (br s, 1H), 7.02 (s, 1H), 6.16 (br s, 1H), 5.07 (q, J = 6.5 Hz, 1H), 4.69 - 4.60 (m, 1H), 2.98 (s, 3H), 2.56 (d, J = 6.0 Hz, 2H), 2.27 - 2.16 (m, 2H), 2.01 - 1.86 (m, 5H), 1.57 (d, J = 6.5 Hz, 3H), 1.39 - 1.28 (m, 2H)。
m.p.(DSC立ち上がり温度) 148 ± 2℃。
【0171】
実施例14
トランス-2-[4-[2-[(1R)-1-ヒドロキシエチル]-6-(メチルアミノ)イミダゾ[4,5-c]ピリジン-1-イル]シクロヘキシル]アセトニトリルコハク酸塩(化合物14)
【化42】
トランス-2-[4-[2-[(1R)-1-ヒドロキシエチル]-6-(メチルアミノ)イミダゾ[4,5-c]ピリジン-1-イル]シクロヘキシル]アセトニトリル(31.3mg、0.100mmol)を約50℃でエタノール(0.20mL)に溶解した。コハク酸(11.8mg、0.100mmol)のエタノール(0.25mL)溶液を添加した。減圧下、45℃で留去することによってこの反応混合物の容積を減少させた(約0.14mLのエタノールを留去した)。結晶化が起きた後、エタノール(0.10mL)を加えた。得られた懸濁液を氷浴中で冷却し、しばらくしてろ過して、標記化合物(16mg、33%)を灰白色色結晶として得た。
H NMR (600 MHz, DMSO-d) δ 12.16 (br s, 3H), 8.33 (s, 1H), 6.48 (s, 1H), 5.91 (br s, 1H), 5.59 (d, J = 6.7 Hz, 1H), 4.96 (p, J = 6.5 Hz, 1H), 4.59 - 4.50 (m, 1H), 2.79 (s, 3H), 2.55 (d, J = 6.3 Hz, 2H), 2.42 (s, 6H), 2.25 - 2.14 (m, 2H), 1.97 - 1.80 (m, 5H), 1.54 (d, J = 6.5 Hz, 3H), 1.35 - 1.24 (m, 2H)。
m.p.(DSC立ち上がり温度) 162 ± 2℃。
【0172】
実施例15
トランス-2-[4-[2-[(1R)-1-ヒドロキシエチル]-6-(メチルアミノ)イミダゾ[4,5-c]ピリジン-1-イル]シクロヘキシル]アセトニトリルシュウ酸塩(化合物15)
【化43】
トランス-2-[4-[2-[(1R)-1-ヒドロキシエチル]-6-(メチルアミノ)イミダゾ[4,5-c]ピリジン-1-イル]シクロヘキシル]アセトニトリル(31.3mg、0.100mmol)を約50℃でエタノール(0.20mL)に溶解した。シュウ酸(4.5mg、0.050mmol)のエタノール(0.25mL)溶液を添加した。この反応混合物を氷浴中で冷却し、しばらくしてろ過して、標記化合物(27mg)を灰白色結晶として得た。
H NMR (600 MHz, DMSO-d) δ 8.39 (s, 1H), 6.57 (s, 1H), 4.98 (q, J = 6.5 Hz, 1H), 4.60 - 4.52 (m, 1H), 2.83 (s, 3H), 2.55 (d, J = 6.3 Hz, 2H), 2.25 - 2.14 (m, 2H), 1.97 - 1.82 (m, 5H), 1.55 (d, J = 6.4 Hz, 3H), 1.36 - 1.25 (m, 2H)。
m.p.(DSC立ち上がり温度) 134 ± 2℃。
【0173】
実施例16
トランス-2-[4-[2-[(1R)-1-ヒドロキシエチル]-6-(メチルアミノ)イミダゾ[4,5-c]ピリジン-1-イル]シクロヘキシル]アセトニトリルフマル酸塩(化合物16)
【化44】
トランス-2-[4-[2-[(1R)-1-ヒドロキシエチル]-6-(メチルアミノ)イミダゾ[4,5-c]ピリジン-1-イル]シクロヘキシル]アセトニトリルフマル(3.00g、9.57mmol)をエタノール(6.0mL)に溶解した。約50℃でエタノール(12mL)に溶解したフマル酸(1.11g、9.57mmol)をゆっくりと添加した。結晶化が起こった。得られた懸濁液を室温とし、しばらくして固体をろ過し、エタノール(2×0.5mL)で洗浄した。減圧下で乾燥して、標記化合物(3.26g、79%)を灰白色結晶として得た。
H NMR (600 MHz, DMSO-d) δ 8.34 (s, 1H), 6.63 (s, 2H), 6.49 (s, 1H), 4.97 (q, J = 6.5 Hz, 1H), 4.60 - 4.51 (m, 1H), 2.80 (s, 3H), 2.55 (d, J = 6.3 Hz, 2H), 2.26 - 2.14 (m, 2H), 1.97 - 1.80 (m, 5H), 1.54 (d, J = 6.5 Hz, 3H), 1.35 - 1.24 (m, 2H)。
m.p.(DSC立ち上がり温度) 111 ± 2℃。
【0174】
実施例17
トランス-2-[4-[2-[(1R)-1-ヒドロキシエチル]-6-(メチルアミノ)イミダゾ[4,5-c]ピリジン-1-イル]シクロヘキシル]アセトニトリル1,5-ナフタレンジスルホン酸塩(化合物17)
【化45】
トランス-2-[4-[2-[(1R)-1-ヒドロキシエチル]-6-(メチルアミノ)イミダゾ[4,5-c]ピリジン-1-イル]シクロヘキシル]アセトニトリル(11.8mg、0.037mmol)を約50℃で酢酸エチル(1mL)に溶解した。1,5-ナフタレンジスルホン酸(四水和物)(15.0mg、0.042mmol)のHO(150μL)溶液を添加した。この溶液を磁気撹拌機で約3日間非常にゆっくりと撹拌した上で、灰白色結晶をろ過により単離した。
H NMR (600 MHz, DMSO-d) δ 8.88 (d, J = 8.5 Hz, 2H), 8.60 (s, 1H), 7.95 (dd, J = 7.1, 1.2 Hz, 2H), 7.54 (br s, 1H), 7.42 (dd, J = 8.5, 7.1 Hz, 2H), 6.97 (s, 1H), 5.06 (q, J = 6.5 Hz, 1H), 4.63 - 4.56 (m, 3H), 2.95 (s, 3H), 2.51 (d, J = 5.4 Hz, 2H), 2.28 - 2.06 (m, 2H), 1.95 - 1.72 (m, 5H), 1.56 (d, J = 6.5 Hz, 3H), 1.38 - 1.18 (m, 2H)。
m.p.(DSC立ち上がり温度) 110 ± 2℃。
【0175】
実施例18
トランス-2-[4-[2-[(1R)-1-ヒドロキシエチル]-6-(メチルアミノ)イミダゾ[4,5-c]ピリジン-1-イル]シクロヘキシル]アセトニトリルDL-マンデル酸塩(化合物18)
【化46】
トランス-2-[4-[2-[(1R)-1-ヒドロキシエチル]-6-(メチルアミノ)イミダゾ[4,5-c]ピリジン-1-イル]シクロヘキシル]アセトニトリル(9.92mg、0.032mmol)及びDL-マンデル酸(5.3mg、0.035mmol)を約50℃で酢酸エチル(1mL)に溶解した。この溶液を磁気撹拌機で約3日間非常にゆっくりと撹拌した上で、灰白色結晶をろ過により単離した。
H NMR (600 MHz, DMSO-d) δ 8.33 (d, J = 0.9 Hz, 1H), 7.45 - 7.37 (m, 2H), 7.37 - 7.31 (m, 2H), 7.31 - 7.25 (m, 1H), 6.48 (d, J = 1.0 Hz, 1H), 5.92 (br s, 1H), 5.59 (br s, 1H), 5.00 (s, 1H), 4.96 (q, J = 6.8 Hz, 1H), 4.63 - 4.47 (m, 1H), 2.79 (s, 3H), 2.55 (d, J = 6.4 Hz, 2H), 2.27 - 2.11 (m, 2H), 1.97 - 1.75 (m, 5H), 1.54 (d, J = 6.5 Hz, 3H), 1.38 - 1.21 (m, 2H)。
m.p.(DSC立ち上がり温度) 153 ± 2℃。
【0176】
実施例19
トランス-2-[4-[2-[(1R)-1-ヒドロキシエチル]-6-(メチルアミノ)イミダゾ[4,5-c]ピリジン-1-イル]シクロヘキシル]アセトニトリルジオキサン溶媒和物(化合物19)
小さな磁気撹拌子を備え、蓋をした2.5mLのバイアル中で、約15mgのトランス-2-[4-[2-[(1R)-1-ヒドロキシエチル]-6-(メチルアミノ)イミダゾ[4,5-c]ピリジン-1-イル]シクロヘキシル]アセトニトリルの、0.4mLの1,4-ジオキサン:ヘプタン(1:1)混合物中の懸濁液を作製した。このバイアルを磁石撹拌機に載置し、室温で2週間、約600rpmで撹拌した。固体物質をろ過により単離し、乾燥した後に融点を測定した。
m.p.(DSC立ち上がり温度) 77 ± 2℃。
【0177】
JAKキナーゼアッセイ
ヒトバキュロウイルス発現ヤヌスキナーゼ(JAK)1、2、3、及びチロシンキナーゼ(TYK)2をCarna Biosciences, Inc.から購入した(それぞれ、カタログ番号08-144、-045、-046、-147)。4種全ての精製酵素は触媒ドメインのみを含む。JAK1(アミノ酸850~1154)及びTYK2(アミノ酸871~1187)はN末端融合GSTタグ付きで発現され、JAK2及びJAK3はN末端融合Hisタグ付きで発現される。合成ペプチドのリン酸化の阻害を、HTRFに基づくアッセイ(Cisbio カタログ番号62TK0PEC)で測定した。まず、Labcyte ECHO 550液体取扱装置を用いて、75nLの被験化合物溶液(100% DMSO)を白色浅底384ウェルプレート(NUNC カタログ番号264706)に添加した。その後、1μLの化合物希釈緩衝液(50mM HEPES、0.05% ウシ血清アルブミン)及び2μLのTK溶液(キナーゼ緩衝液中のTK基質-ビオチン[HTRFKinEASE TKキットの1×酵素緩衝液、1mM DTT])を添加した。次いで、5μLのキナーゼ-ATP混合物(キナーゼ緩衝液中で調製)を上記ウェルに添加し、これらのプレートを室温で20分間(JAK2、3、及びTYK2)ならびに40分間(JAK1)インキュベートした。4種全てのキナーゼについて、ATPのKmに対応する濃度のATPを用いた。緩衝液、基質、キナーゼ、及びATPの最終濃度は、JAK1:50mM Hepes緩衝液 pH7.0、0.01% BSA、10mM MgCl、1mM DTT、7μM ATP、50nM SEB、1μM TK基質-ビオチン、及び5ng/ウェル JAKl;JAK2:50mM Hepes緩衝液 pH7.0、0.01% BSA、5mM MgCl、1mM DTT、4μM ATP、1μM TK基質-ビオチン、及び0.1ng/ウェル JAK2;JAK3:50mM Hepes緩衝液 pH7.0、0.01% BSA、5mM MgCl、1mM DTT、2μM ATP、1μM TK基質-ビオチン、及び0.3ng/ウェル JAK3;TYK2:50mM Hepes緩衝液 pH7.0、0.01% BSA、5mM MgCl、1mM DTT、13μM ATP、50nM SEB、1μM TK基質-ビオチン、及び0.8ng/ウェル TYK2であった。その後、4μLの検出混合物(最終濃度:50mM Hepes緩衝液 pH7.0、0.01% BSA、0.8M KF、20mM EDTA、42nM ストレプトアビジン-XL665、及び1:400 STK Ab Cryptate)を添加することによってキナーゼ反応を停止させ、これらのプレートを暗所で終夜インキュベートした。PerkinElmer Envisionリーダーを使用し、以下のフィルタ、すなわち、320nmの励起フィルタ、665nmの発光フィルタ、及び615nmの第2発光フィルタを用いてHTRFシグナルを定量した。比((665/615)×10)を各ウェルについて算出した。
【0178】
STAT6アッセイ
25μLのSTAT6 bla-RA1(Invitrogen カタログ番号K1243)細胞懸濁液を、透明底の384ウェル黒色ViewPlate(PerkinElmer カタログ番号6007460)において、アッセイ培地(550ng/mLのCD40リガンド(Invitrogen カタログ番号PHP0025)を含む、Opti-MEM(Invitrogen カタログ番号11058-021)+0.5%熱不活化ウシ胎児血清(Invitrogen カタログ番号10082-147)+1%非必須アミノ酸(Invitrogen カタログ番号11140-050)+1%ピルビン酸ナトリウム(Invitrogen カタログ番号11360-070)+1%ペニシリン/ストレプトマイシン(インビトロジェン カタログ番号15140-122))中に30~40,000細胞/ウェルの密度で播種した。これらの細胞プレートを、加湿した37℃の空気/CO(95%/5%)のインキュベータ中で終夜インキュベートした。翌日、Labcyte ECHO 550液体取扱装置を用いて、125nLの被験化合物及び基準化合物の溶液を細胞プレートに移した。次いでこれらのプレートを加湿した37℃の空気/CO(95%/5%)のインキュベータ中で1時間インキュベートした。その後、上記プレートに組換えヒトインターロイキン4(Invitrogen カタログ番号PHC0045)を、これもLabcyte Echo 550を用いて、10ng/mLの最終濃度となるように添加した。次いで、これらの細胞を加湿した37℃の空気/CO(95%/5%)のインキュベータ中で4.5~5時間インキュベートした。次いで、8μLのLiveBLAzer基質混合物(Invitrogen カタログ番号K1095)を上記アッセイプレートに添加し、これを室温で終夜インキュベートした。次いで、励起:405nm;発光:460nm(緑色チャネル);発光:535nm(青色チャネル)で蛍光を測定した。両発光チャネルにおいてバックグラウンドを差し引き、460/535nmの比を各ウェルについて算出した。
【0179】
STAT5アッセイ
25μLのSTAT5 irf1-bla TF1(Invitrogen カタログ番号K1219)細胞懸濁液を、透明底の384ウェル黒色ViewPlate(PerkinElmer カタログ番号6007460)において、アッセイ培地(Opti-MEM(Invitrogen カタログ番号11058-021)+0.5%熱不活化ウシ胎児血清(Invitrogen カタログ番号10082-147)+1%非必須アミノ酸(Invitrogen カタログ番号11140-050)+1%ピルビン酸ナトリウム(Invitrogen カタログ番号11360-070)+1%ペニシリン/ストレプトマイシン(インビトロジェン カタログ番号15140-122))中に約10,000細胞/ウェルの密度で播種した。これらの細胞プレートを、加湿した37℃の空気/CO(95%/5%)のインキュベータ中で終夜インキュベートした。翌日、Labcyte ECHO 550液体取扱装置を用いて、125nLの被験化合物及び基準化合物の溶液を細胞プレートに移した。次いでこれらのプレートを加湿した37℃の空気/CO(95%/5%)のインキュベータ中で1時間インキュベートした。その後、上記プレートに組換えヒトエリスロポエチン(EPO)(Invitrogen カタログ番号PHC9634)を、これもLabcyte Echo 550を用いて、10ng/mLの最終濃度となるように添加した。次いで、これらの細胞を加湿した37℃の空気/CO(95%/5%)のインキュベータ中で4.5~5時間インキュベートした。次いで、8μLのLiveBLAzer基質混合物(Invitrogen カタログ番号K1095)を上記アッセイプレートに添加し、これを室温で終夜インキュベートした。次いで、励起:405nm;発光:460nm(緑色チャネル);発光:535nm(青色チャネル)で蛍光を測定した。両発光チャネルにおいてバックグラウンドを差し引き、460/535nmの比を各ウェルについて算出した。
【0180】
本発明の化合物を、JAK1、JAK2、JAK3、及びTYK2キナーゼアッセイならびにSTAT6及びSTAT5アッセイにおいて試験した。結果を表1に開示する。
【表1】


WO2011086053の実施例641及び実施例644はWO2011086053に従って調製
【0181】
JAK2またはJAK3に対するJAK1に関する選択性は、それぞれ、JAK2:JAK1またはJAK3:JAK1に関するEC50の比として算出される。STAT5に対するSTAT6に関する選択性についても、同様の計算を行う。表1から明らかなように、本発明の化合物は、JAK2阻害及びJAK3阻害に対するJAK1阻害に関する高い選択性、ならびにSTAT5阻害(JAK2阻害を反映)に対するSTAT6阻害(JAK1阻害を反映)に関する高い選択性を示す。
【0182】
キナーゼ選択性
本発明の実施例3ならびにWO2011086053の実施例644及び641のキナーゼ選択性プロファイルを、JAK1を含む23種のチロシンキナーゼ(ABL、CSK、EGFR、EPHA2、EPHB1、EPHB4、FGFR1、FLT3、IGF1R、ITK、JAK1、JAK3、KDR、LCK、MET、PDGFRα、PDGFRβ、PYK2、SRC、TIE2、TRKA、及びTYRO3)、ならびに68種のセリン及びトレオニンキナーゼ(LCK、MET、AKT1、AMPKα1/β1/γ1、AurA、AurB、AurC、BRSK2([ATP]=Km値)、CaMK1α([ATP]=Km値)、CaMK2α([ATP]=Km値)、CaMK4、CDC2/CycB1、CDC7/ASK、CDK2/CycA2、CDK2/CyE1、CDK3/CyE1([ATP]=Km値)、CDK4/CyD3、CDK6/CyD3、CDK7/CycH/MAT1、CDK9/CycT1、CHK1、CK1ε、CK2α1/β、CK2α2/β、CLK1、CLK2、DAPK1、DYRK1B、Erk2、GSK3α、GSK3β、HGK、IKKβ、IRAK4([ATP]=Km値)、JNK2、LOK([ATP]=Km値)、MAPKAP2、MLK1、MLK2、MNK2([ATP]=Km値)、MST1、MST2([ATP]=Km値)、NEK1、NEK2、NEK6、NEK7、NEK9、p38α、p70S6K、PAK1([ATP]=Km値)、PAK2、PAK5([ATP]=Km値)、PBK、PDK1、PIM1、PIM2、PKACα、PKCα、OKD2、PKN1([ATP]=Km値)、PLK1、PLK2([ATP]=Km値)、ROCK1、RSK1、SGK、skMLCK([ATP]=Km値)、及びTSSK1)からなるパネルを用いて、CARNA Biosciences Inc.において評価した。評価は、全般的には1mMのATP濃度で行ったが、特定のキナーゼについては対応するKm値に近いATP濃度を用いた(これはそれぞれの関連するキナーゼに括弧書きする)。阻害率は、JAK1 EC50の約1000倍の阻害剤濃度で測定した。結果を表2にまとめる。
【表2】

【0183】
表2に示すように、本発明の実施例3は大きなパネルのキナーゼに対して非常に高レベルの選択性を示した。すなわち、JAK1を除く被験キナーゼはいずれも50%を超えて阻害されることはなかった。
【0184】
WO2011086053の実施例644及び641は、9種のJAK1以外の他のキナーゼを50%以上阻害した。
【0185】
標的外キナーゼの阻害は副作用の危険性を増大させる、すなわち、キナーゼ選択性が高いと副作用の危険性を低減することができる。
【0186】
CYP阻害及びCYP誘導
可逆的CYP阻害、時間依存性CYP阻害(TDI)、及びCYP誘導を、当局による指針に従って、Cyprotex PLCにおいて試験した。可逆的CYP阻害については、IC50を、実施例3については50μM、WO2011086053の実施例644及び641については25μMの基質濃度まで測定した。可逆的CYP阻害の結果を表3にまとめる。
【表3】


ND=測定せず
【0187】
表3から明らかなように、実施例3は、50μMまでの基質濃度で測定した場合、CYP阻害を示さない。WO2011086053の実施例644及び641は、弱いCYP3A4阻害を示す。実施例3については、時間依存性CYP阻害は示されなかった。CYP3A4阻害は、望ましくない薬物-薬物間相互作用を示す場合がある。CYP阻害は血漿レベルに影響を及ぼし、同時投与された薬物の曝露を増加させ、潜在的に有害な薬物反応または毒性を生じる場合がある。
【0188】
CYP1A2、CYP2B6、及びCYP3A4遺伝子発現の誘導は、それぞれアリール炭化水素受容体(AhR)、プレグナンX受容体(PXR)、及び構成的アンドロスタン受容体(CAR)の活性化についての敏感な代表的評価項目として役立つ場合がある。これらの核内受容体の誘導を、妥当な濃度で、それぞれAhR、CAR、及びPXRをコードするmRNAの増加を測定することによって評価した。2倍を超える変化がCYP誘導を示す。3種の最も高いインキュベーション濃度の結果を表4にまとめる。
【表4】

【0189】
表4から明らかなように、実施例3は、少なくとも50μMの濃度まではCYP3A4誘導を、または少なくとも10μMの濃度まではCYP1A2及びCYP2B6誘導を引き起こさない。WO2011086053の実施例644は、10μMの濃度でCYP3A4誘導を、且つ10μMの濃度でCYP2B6誘導を引き起こし、WO2011086053の実施例641は、20μM以上の濃度でCYP3A4誘導を引き起こす。CYP3A4誘導は、望ましくない薬物-薬物間相互作用を示す場合がある。CYP誘導は、同時投与された薬物の曝露を低減し、その結果効力を低下させる場合がある。更に、CYP誘導はまた、反応性代謝産物形成を増加させることによって毒性に繋がる場合もある。
【0190】
結晶性物質の水溶性
異なるpHにおける結晶性の実施例3、WO2011086053の実施例644及び641の水溶性を評価した。mg/mLで表した溶解度を表5にまとめる。
【表5】

【0191】
一般に、水溶性は経口製剤の開発に影響を与える重要な特徴の1つであり、経口投与による生物学的利用能は薬物の溶解度に大きく依存する。溶解度が高ければ、消化管内での当該化合物の迅速な溶解が促進され、高い濃度に到達することにより、腸上皮を通過する吸収が促進されることとなる。それ故、高い溶解度によって、妥当な用量で高い経口投与による生物学的利用能及び所望の全身曝露を達成する可能性が顕著に高くなる場合がある。