(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-14
(45)【発行日】2022-01-25
(54)【発明の名称】オイル掻き取りピストンリング
(51)【国際特許分類】
F16J 9/06 20060101AFI20220118BHJP
F16J 9/20 20060101ALI20220118BHJP
F02F 5/00 20060101ALI20220118BHJP
【FI】
F16J9/06 Z
F16J9/20
F02F5/00 B
F02F5/00 K
(21)【出願番号】P 2019568740
(86)(22)【出願日】2018-05-17
(86)【国際出願番号】 DE2018100471
(87)【国際公開番号】W WO2018233753
(87)【国際公開日】2018-12-27
【審査請求日】2021-02-02
(31)【優先権主張番号】102017113354.2
(32)【優先日】2017-06-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】509340078
【氏名又は名称】フェデラル-モーグル ブルシェイド ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】FEDERAL-MOGUL BURSCHEID GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ペーター シュミット
(72)【発明者】
【氏名】ザビーネ バルケ
【審査官】山田 康孝
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-088946(JP,A)
【文献】特開2002-106715(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 7/00-10/04
F02F 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オイル掻き取りピストンリングであって、該オイル掻き取りピストンリングは、少なくとも2つの摺動面ウェブ(3,4)により形成された摺動面領域(2)、内周面、ならびに前記摺動面領域(2)と前記内周面との間に延在する上下の側面(5,6)を有しており、さらに、突合わせ部(8)、ならびに前記摺動面ウェブ(3,4)の間で半径方向外側から内側に向かって延在する複数のオイル通流開口(7)を有しており、場合によりばね部材と作用結合しており、
前記突合わせ部(8)は、予め設定可能な形状および寸法の、互いに直接には接続していない、間隔をあけて配置された少なくとも2つのスリット領域(9,10,11,12,13,14)により形成されており、1つのスリットにより形成される各スリット領域(9,10,11,12,13,14)は、各々の所属する前記側面(5,6)から出発して、前記少なくとも2つの摺動面ウェブ(3,4)の間に設けられた1つのオイル通流開口(7)内にまで少なくとも延在して
おり、
前記スリット領域(13,14)は、互いに異なる角度で前記各側面(5,6)から出発して、所属の前記オイル通流開口(7)に向かって延びている、
オイル掻き取りピストンリング。
【請求項2】
鋳鉄または鋼から成り、前記摺動面ウェブ(3,4)を備える基体により形成された、請求項
1記載のオイル掻き取りピストンリング。
【請求項3】
前記スリット領域(9,10,11,12,13,14)は、前記各側面(5,6)から出発して、1つの所属のオイル通流開口(7)内にまで延在している、請求項
2記載のオイル掻き取りピストンリング。
【請求項4】
前記スリット領域(9~14)は、前記各側面(5,6)から出発して、前記
鋳鉄基体または鋼基体の内部まで延在している、請求項
2記載のオイル掻き取りピストンリング。
【請求項5】
前記スリット領域(9~14)の軸方向長さは、前記基体の軸方向構成高さ
の50%に制限されている、請求項
2から
4までのいずれか1項記載のオイル掻き取りピストンリング。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オイル掻き取りピストンリングに関する。
【0002】
独国特許発明第102007059205号明細書が開示するオイル掻き取りリングは、突合わせ開口を備えた基体を有しており、基体は、その内周面においてばね部材と協働すると共に、半径方向に延在するオイル流出通路を有しており、この場合、突合わせ開口の各端縁から出発して、基体の外周面の領域には、周方向に延在する、予め設定可能な長さのスリットが設けられており、これらのスリットは、突合わせ開口を覆うように係合するシール部材の端部領域を保持しかつ/またはガイドするために設けられている。
【0003】
目下使用されるオイル掻き取りピストンリングは、直線的に延在する突合わせ部を有している。このオイル掻き取りピストンリングは、その摺動面ウェブを介してオイルを極めて良好に掻き取ることができるが、突合わせ領域内に、シリンダ上に残留する比較的多量のオイルを残してしまう。オイルは、オイル掻き取りピストンリングの上側に設けられたコンプレッションリングにより完全には分散もしくはグリップされ得ないので、シリンダ上に残留することになるか、またはそれどころかピストンに向かって投げ飛ばされる。これにより、残留オイルが燃焼室内に運ばれて、
-オイル消費量を高める恐れがある
-エミッション(粒子)を増加させる恐れがある
-ガス機関の場合には、制御されない燃焼またはノッキングにつながる恐れがある。
【0004】
本発明の根底を成す課題は、指摘した前記問題点を考慮して、突合わせ領域の追加的なシール部材無しで、それにもかかわらず油密な突合わせ部を実現することができるようにするために、突合わせ領域に関する択一的な設計を有するオイル掻き取りピストンリングを提供することにある。
【0005】
この課題を解決するオイル掻き取りピストンリングは、少なくとも2つの摺動面ウェブにより形成された摺動面領域、内周面、ならびに摺動面領域と内周面との間に延在する上下の側面を有しており、さらに、突合わせ部、ならびに摺動面ウェブの間で半径方向外側から内側に向かって延在する複数のオイル通流開口を有しており、場合によりばね部材と作用結合しており、突合わせ部は、予め設定可能な形状および寸法の、互いに直接には接続していない、間隔をあけて配置された少なくとも2つのスリット領域により形成されており、1つのスリットにより形成される各スリット領域は、各々の所属する側面から出発して、少なくとも2つの摺動面ウェブの間に設けられた1つのオイル通流開口内にまで少なくとも延在している。
【0006】
本発明の対象の有利な改良は、各下位請求項から看取され得る。
【0007】
各スリット領域は通常、予め設定可能な軸方向高さおよび幅の、直線的に延在するスリットにより形成される。
【0008】
本発明の対象の1つの形態は、各スリット領域が、所属の側面から出発して、少なくとも2つの摺動面ウェブの間に設けられた1つのオイル通流開口内にまで少なくとも延在している、ということを想定している。
【0009】
スリット領域は、必要に応じて互いに平行に延在していてよい。
【0010】
本発明によるオイル掻き取りピストンリングの設計においては、スリット領域は90°の角度で各側面から出発し、所属のオイル通流開口に向かって延びている、ということが有意であり得る。
【0011】
択一的に、スリット領域は90°未満、特に45°の角度で各側面から出発し、所属のオイル通流開口に向かって延びている、という可能性もある。
【0012】
1つの別の形態では、スリット領域は異なる角度で各側面から出発し、所属のオイル通流開口に向かって延びている、ということを想定している。
【0013】
本発明の1つの別の思想では、本発明によるオイル掻き取りピストンリングの基体は、鋳鉄または鋼から成っている。
【0014】
既に説明したように、鋳造リングまたは鋼リングにおけるスリット領域は、各側面から出発して、1つの所属のオイル通流開口内にまで延在していてよく、この場合、択一的には、スリット領域は各側面から出発して、予め設定可能な軸方向高さにおいて、鋳造基体または鋼基体の材料内で終わっている、という可能性もある。
【0015】
この場合、各スリット領域の軸方向長さは、基体の軸方向構成高さの約50%に制限されている。
【0016】
本発明の対象により形成されるオイル掻き取りピストンリングは、突合わせ領域内にオーバラップ部が設けられており、指摘した前記問題点を解消して、同様の突合わせを達成する。
【0017】
本発明の対象の利点:
-オイル消費量の削減
-エミッション(粒子)の削減
-制御されないまたはノッキングする燃焼の減少
-生産への容易な導入
【図面の簡単な説明】
【0018】
本発明の対象を、実施例に基づき図示して以下に説明する。
【
図1】オイル掻き取りピストンリングにおける油密な突合わせ領域の様々な形態を示す図である。
【
図2】オイル掻き取りピストンリングにおける油密な突合わせ領域の様々な形態を示す図である。
【
図3】オイル掻き取りピストンリングにおける油密な突合わせ領域の様々な形態を示す図である。
【0019】
図1に示すオイル掻き取りピストンリング1は、本例では2つの摺動面ウェブ3,4により形成された摺動面領域2を有している。上側の側面5、下側の側面6ならびに摺動面ウェブ3,4の軸方向の間に延在する、複数のオイル通流開口7が認められる。さらに、突合わせ部8が認められる。
【0020】
図1では、突合わせ部8は、2つのスリット9,10から形成されたスリット領域により形成され、この場合、スリット9,10は、本例では各側面5,6から出発して互いに平行に延在しており、軸方向において1つのオイル通流開口7に向かって延びている。よって摺動面ウェブ3,4の間に、スリット領域を形成するスリット9,10によりオーバラップ領域が生ぜしめられ、このオーバラップ領域により、油密な突合わせ部が形成される。
【0021】
図2および
図3にはそれぞれ、
図1に示した突合わせ部8の択一的な形態が示されている。
【0022】
図2では、やはり互いに平行に延在する2つのスリット11,12が、それぞれスリット領域として設けられているが、これらのスリット領域は、
図1とは異なり、90°未満の予め設定可能な角度αで各側面5,6から出発し、対応する1つのオイル通流開口7に向かって延びている。
【0023】
【0024】
図2とは異なり、突合わせ部8を形成するスリット13,14は、異なる傾斜角度βで各側面5,6から出発し、対応する1つのオイル通流開口7に向かって延びている。